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量子統計:不可弁別性から生まれるボース統計とフェルミ統計

前提:グランドカノニカル集団:粒子数を手放して化学ポテンシャルを握る

生 Markdown
  • 同種粒子は原理的に「番号を付けて区別する」ことができません。この不可弁別性は、多体状態を粒子の並べ方ではなく各 1 粒子準位の占有数で指定せよ、という要請に翻訳されます。
  • 占有数に許される値が 0,1,2,0,1,2,\ldots ならボース粒子、0011 だけ(パウリの排他律)ならフェルミ粒子です。相互作用のない気体では、この 1 点だけがボース統計とフェルミ統計を分けます。
  • グランドカノニカル分布を使うと、大分配関数が 1 粒子準位ごとの積に完全に因子化します。ここから平均占有数 ni=(eβ(εiμ)+θ)1\langle n_i\rangle = \left(e^{\beta(\varepsilon_i-\mu)}+\theta\right)^{-1}(フェルミは θ=+1\theta=+1、ボースは θ=1\theta=-1)が 2 行で出ます。
  • 縮退度 nλT3n\lambda_T^3 が小さい極限で両者はマクスウェル・ボルツマン分布に一致し、同時に古典理想気体の 1/N!1/N!(ギブスの補正因子)が自動的に現れます。
  • フェルミ気体は TTFT \ll T_F で縮退し、比熱が TT に比例します。銅の伝導電子では TF8.2×104T_F \approx 8.2\times10^4 K で、室温の電子比熱は古典値の約 1.2%1.2\,\% です。
  • ボース気体は TTcT \le T_c で最低準位にマクロな数の粒子が落ち込みます(ボース・アインシュタイン凝縮)。液体 4^4He の密度から計算すると Tc3.1T_c\approx3.1 K となり、観測される λ\lambda2.172.17 K と同程度です。

1. 動機:古典統計はどこで破綻するか

Section titled “1. 動機:古典統計はどこで破綻するか”

カノニカル集団で理想気体を扱ったとき(例 7.4[カノニカル集団])、NN 粒子の分配関数を

ZN=1N!Z1NZ_N = \frac{1}{N!}\,Z_1^{\,N}

と書きました。この 1/N!1/N! は、粒子に番号を付けて数えると同じ状態を N!N! 回重複して数えてしまうから、という説明とともに導入されたはずです。しかしこの説明は、よく考えると論理的に宙に浮いています。古典力学では粒子は軌道で追跡できるので、「粒子 1 が箱の左、粒子 2 が右」と「粒子 2 が左、粒子 1 が右」は別の状態です。にもかかわらず N!N! で割らないと、エントロピーが示量的にならない(ギブスのパラドックス、例 5.3[ミクロカノニカル集団])。ボルツマン自身もギブスも、この補正因子を経験的に入れるほかありませんでした。

もう一つ、古典統計では説明できない事実が 19 世紀末から積み上がっていました。

  • 金属中の自由電子は 1 個あたり 32kB\tfrac32 k_B の比熱を持つはずなのに、実測では室温でほとんど比熱に寄与しない。
  • 二原子分子気体の回転・振動の自由度が低温で「凍結」する。
  • 空洞放射のエネルギー密度が、古典的に計算すると紫外側で発散する(レイリー・ジーンズの破綻)。

これらはすべて、状態を数える段階に量子力学が入ってくることの帰結です。とくに最初の 2 つは、エネルギーが離散的であることに加えて、同種粒子を区別できないという第二の量子的性質を必要とします。この記事では、その第二の性質だけを正面から扱います。相互作用は最後まで無視し、「数え方を変えるとどれだけ物理が変わるか」を見ます。

flowchart TD
A["同種粒子の不可弁別性"] --> B["多体状態は置換に対して<br/>対称または反対称"]
B --> C["ボース粒子<br/>占有数 n = 0,1,2,..."]
B --> D["フェルミ粒子<br/>占有数 n = 0,1"]
C --> E["大分配関数が<br/>1粒子準位ごとに因子化"]
D --> E
E --> F["ボース・アインシュタイン分布"]
E --> G["フェルミ・ディラック分布"]
F --> H["ボース・アインシュタイン凝縮"]
G --> I["フェルミ縮退・電子比熱"]
この記事の論理の流れ。不可弁別性という 1 つの原理から 2 つの分布関数が分岐し、それぞれ低温で特徴的な現象を生みます。

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