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平成23年度 東大院 物理学専攻 修士 数学 解答

対象読者: 学部の物理数学(線形代数、微分積分、常微分方程式、複素関数論、フーリエ解析)を一通り学び、東大物理学専攻の院試問題を自分で解いた、または解こうとしている人。問題文は載せていないので、出典の問題を手元に置いて読みます。

生 Markdown

大問2題で、2問すべてが必答です(試験時間は90分)。第1問は A2=B2=EA^2=B^2=E と AB+BA=OAB+BA=O という2行の仮定だけからパウリ行列の代数構造を復元する問題で、D=A+iBD=A+iB が冪零(何乗かすると零行列になること)であることを使って固有ベクトルを具体的に作る流れが中心になります。第2問はポアソン方程式・ラプラス方程式を次元ごとに追う構成で、1次元のグリーン関数、単位円板のディリクレ問題、dd 次元の球対称解と進みます。計算量そのものは軽く、デルタ関数の飛び条件、級数の収束と境界値の一致、球対称性の根拠といった論理の詰めが得点になります。

問題分野主題
第1問線形代数反交換する対合行列とパウリ代数の再構成
第2問微分方程式・フーリエ解析・複素解析1次元グリーン関数、円板のラプラス方程式、dd 次元ポアソン方程式

第1問 反交換する対合行列とパウリ代数の再構成

Section titled “第1問 反交換する対合行列とパウリ代数の再構成”

A,BA,B は nn 次の複素正方行列で

A2=B2=E,AB+BA=OA^2=B^2=E,\qquad AB+BA=O

を満たすものとします。EE は単位行列、OO は零行列です。これらから

C=−iAB,D=A+iBC=-iAB,\qquad D=A+iB

を定義します。以下では DD の相棒として D~=A−iB\tilde{D}=A-iB も使います。なお、2乗すると単位行列になる行列を対合行列と呼びます。

仮定から直ちに分かることを先に並べておきます。A2=B2=EA^2=B^2=E より A,BA,B はどちらも正則で A−1=AA^{-1}=A、B−1=BB^{-1}=B です。AB+BA=OAB+BA=O は BA=−ABBA=-AB、すなわち AA と BB が反交換することを意味します。この反交換関係と A2=B2=EA^2=B^2=E を組み合わせると

ABA=A(BA)=−A2B=−B,BAB=(BA)B=−AB2=−AABA=A(BA)=-A^2B=-B,\qquad BAB=(BA)B=-AB^2=-A

が得られ、以下の計算はほぼこの2式の繰り返しです。また C=−iABC=-iAB の定義から AB=iCAB=iC と書き直せることも後で使います。

A2=EA^2=E なので、固有値 λ\lambda とそれに属する固有ベクトル v≠0\boldsymbol{v}\neq\boldsymbol{0} に対して

v=Ev=A2v=λ2v\boldsymbol{v}=E\boldsymbol{v}=A^2\boldsymbol{v}=\lambda^2\boldsymbol{v}

となり、v≠0\boldsymbol{v}\neq\boldsymbol{0} から λ2=1\lambda^2=1、つまり λ=±1\lambda=\pm 1 に限られます。ここまでで候補は ±1\pm 1 の2つです。

次に、この2つがどちらも実際に固有値として現れることを示します。B−1=BB^{-1}=B と BA=−ABBA=-AB から

BAB−1=BAB=−ABAB^{-1}=BAB=-A

なので、AA と −A-A は相似(正則行列で挟んで移り合う関係)で固有多項式が一致します。一方 A2−E=OA^2-E=O より AA の最小多項式(その行列を代入すると零行列になる、次数最小の多項式)は (λ−1)(λ+1)(\lambda-1)(\lambda+1) を割るので重根を持たず、AA は対角化可能です。固有値 11 の重複度を kk とすれば AA の固有多項式は (λ−1)k(λ+1)n−k(\lambda-1)^k(\lambda+1)^{n-k}、−A-A のそれは (λ+1)k(λ−1)n−k(\lambda+1)^k(\lambda-1)^{n-k} です。この2つが一致することから k=n−kk=n-k、すなわち

n=2k,k=n2n=2k,\qquad k=\frac{n}{2}

を得ます。n≥1n\ge 1 ですから k≥1k\ge 1 かつ n−k≥1n-k\ge 1 で、+1+1 と −1-1 の両方が確かに固有値です。

答えは λ=+1\lambda=+1 と λ=−1\lambda=-1 の2つで、それぞれ重複度 n/2n/2 を持ちます。とくに仮定を満たす A,BA,B が存在するためには nn が偶数でなければなりません。設問(5)(6) で n=2n=2 の場合を扱うのはこの意味で最小のケースです。

C2C^2 を計算します。C=−iABC=-iAB より

C2=(−i)2 ABAB=−A(BA)B=−(−A2B2)=A2B2=E.C^2=(-i)^2\,ABAB=-A(BA)B=-\bigl(-A^2B^2\bigr)=A^2B^2=E.

途中で BA=−ABBA=-AB を使い、最後に A2=B2=EA^2=B^2=E を使いました。よって C2=EC^2=E です。

次に CC と AA の反交換です。ABA=−BABA=-B と A2B=BA^2B=B を使うと

CA=−iABA=iB,AC=−iA⋅AB=−iA2B=−iBCA=-iABA=iB,\qquad AC=-iA\cdot AB=-iA^2B=-iB

なので CA+AC=iB−iB=OCA+AC=iB-iB=O です。同様に BAB=−ABAB=-A と AB2=AAB^2=A から

BC=−iBAB=iA,CB=−iAB⋅B=−iAB2=−iABC=-iBAB=iA,\qquad CB=-iAB\cdot B=-iAB^2=-iA

となり BC+CB=OBC+CB=O です。以上で C2=EC^2=E と BC+CB=CA+AC=OBC+CB=CA+AC=O が示せました。

C2=EC^2=E かつ CC が A,BA,B の両方と反交換するので、A,B,CA,B,C の3つは互いに反交換する対合行列の組、つまりパウリ行列と同じ代数関係を満たします。設問(1) の議論はそのまま CC にも適用でき、CC の固有値も ±1\pm 1 で重複度は各 n/2n/2 です(CC は AA と反交換するので ACA−1=−CACA^{-1}=-C が使えます)。この事実は設問(4) で p,q\boldsymbol{p},\boldsymbol{q} の固有値が +1+1 と −1-1 に分かれることと整合します。

D=A+iBD=A+iB の平方を展開します。

D2=(A+iB)2=A2+i(AB+BA)+i2B2=E+O−E=O.D^2=(A+iB)^2=A^2+i(AB+BA)+i^2B^2=E+O-E=O.

中央項が i(AB+BA)i(AB+BA) の形にまとまるのは、AA と BB の積の順序を変えずに両方の交差項を残したからで、ここで仮定 AB+BA=OAB+BA=O がそのまま効きます。よって D2=OD^2=O です。同じ計算で D~2=(A−iB)2=A2−i(AB+BA)−B2=O\tilde{D}^2=(A-iB)^2=A^2-i(AB+BA)-B^2=O も成り立ちます。

D≠OD\neq O を示します。D=OD=O と仮定すると A=−iBA=-iB で、両辺を2乗すると

E=A2=(−i)2B2=−EE=A^2=(-i)^2B^2=-E

となり 2E=O2E=O です。これは成分を見れば 2=02=0 を意味し、複素数体では不可能です。よって D≠OD\neq O です。

D2=OD^2=O かつ D≠OD\neq O なので DD は冪零行列であって零行列ではありません。したがって DD は正則でなく、rank⁡D≥1\operatorname{rank}D\ge 1 かつ Im⁡D⊂Ker⁡D\operatorname{Im}D\subset\operatorname{Ker}D です。次の設問はこの包含関係を1本のベクトルとして書き下しているだけです。

設問(3) で D≠OD\neq O が示されたので、Dr≠0D\boldsymbol{r}\neq\boldsymbol{0} となる縦ベクトル r\boldsymbol{r} が存在します(DD のすべての列に DD を掛けて零になるなら D=OD=O です)。p=Dr\boldsymbol{p}=D\boldsymbol{r} と置けば p≠0\boldsymbol{p}\neq\boldsymbol{0} で、D2=OD^2=O より

Dp=D2r=0D\boldsymbol{p}=D^2\boldsymbol{r}=\boldsymbol{0}

が成り立ちます。そして q=12(A−iB)p\boldsymbol{q}=\frac{1}{2}(A-iB)\boldsymbol{p} です。

まず q\boldsymbol{q} を簡単な形に直しておきます。Dp=0D\boldsymbol{p}=\boldsymbol{0} は Ap=−iBpA\boldsymbol{p}=-iB\boldsymbol{p} と同じことなので

q=12(Ap−iBp)=12(Ap+Ap)=Ap\boldsymbol{q}=\frac{1}{2}\bigl(A\boldsymbol{p}-iB\boldsymbol{p}\bigr)=\frac{1}{2}\bigl(A\boldsymbol{p}+A\boldsymbol{p}\bigr)=A\boldsymbol{p}

です(−iBp=Ap-iB\boldsymbol{p}=A\boldsymbol{p} を代入しました)。AA は正則で p≠0\boldsymbol{p}\neq\boldsymbol{0} ですから

q=Ap=−iBp≠0\boldsymbol{q}=A\boldsymbol{p}=-iB\boldsymbol{p}\neq\boldsymbol{0}

が分かります。固有ベクトルを名乗るには零でないことが必要なので、この確認は省けません。

(i) p\boldsymbol{p} については CDCD を計算します。ABA=−BABA=-B、AB2=AAB^2=A を使って

CD=−iAB(A+iB)=−i(ABA+iAB2)=−i(−B+iA)=A+iB=D.CD=-iAB(A+iB)=-i\bigl(ABA+iAB^2\bigr)=-i(-B+iA)=A+iB=D.

したがって

Cp=CDr=Dr=pC\boldsymbol{p}=CD\boldsymbol{r}=D\boldsymbol{r}=\boldsymbol{p}

で、p\boldsymbol{p} は固有値 +1+1 に属する CC の固有ベクトルです。q\boldsymbol{q} については設問(2) の CA=−ACCA=-AC をそのまま使えば

Cq=CAp=−ACp=−Ap=−qC\boldsymbol{q}=CA\boldsymbol{p}=-AC\boldsymbol{p}=-A\boldsymbol{p}=-\boldsymbol{q}

なので、q\boldsymbol{q} は固有値 −1-1 に属する CC の固有ベクトルです。どちらも零ベクトルでないことは上で確認済みです。答えは、p\boldsymbol{p} の固有値が +1+1、q\boldsymbol{q} の固有値が −1-1 です。

(ii) 固有値が異なる固有ベクトルなので線型独立です。実際、複素数 α,β\alpha,\beta が

αp+βq=0\alpha\boldsymbol{p}+\beta\boldsymbol{q}=\boldsymbol{0}

を満たすとします。両辺に左から CC を掛けると Cp=pC\boldsymbol{p}=\boldsymbol{p}、Cq=−qC\boldsymbol{q}=-\boldsymbol{q} より

αp−βq=0\alpha\boldsymbol{p}-\beta\boldsymbol{q}=\boldsymbol{0}

です。2式を足すと 2αp=02\alpha\boldsymbol{p}=\boldsymbol{0} で、p≠0\boldsymbol{p}\neq\boldsymbol{0} だから α=0\alpha=0。引くと 2βq=02\beta\boldsymbol{q}=\boldsymbol{0} で、q≠0\boldsymbol{q}\neq\boldsymbol{0} だから β=0\beta=0 です。よって自明な線型関係しかなく、p,q\boldsymbol{p},\boldsymbol{q} は線型独立です。

以下 n=2n=2 とし、p,q\boldsymbol{p},\boldsymbol{q} は2次元縦ベクトルです。

(i) P=(p q)P=(\boldsymbol{p}\ \boldsymbol{q}) が正則でないとすると、Pc=0P\boldsymbol{c}=\boldsymbol{0} となる零でない c=t(α,β)\boldsymbol{c}={}^{t}(\alpha,\beta) が存在します。ところが Pc=αp+βqP\boldsymbol{c}=\alpha\boldsymbol{p}+\beta\boldsymbol{q} ですから、これは p,q\boldsymbol{p},\boldsymbol{q} の間の自明でない線型関係になり、設問(4)(ii) に矛盾します。よって PP は正則、すなわち det⁡P≠0\det P\neq 0 です。言い換えれば p,q\boldsymbol{p},\boldsymbol{q} は C2\mathbb{C}^2 の基底をなします。

(ii) 列ごとに CC を作用させます。設問(4)(i) より

CP=(Cp  Cq)=(p  −q)=P(100−1)CP=(C\boldsymbol{p}\ \ C\boldsymbol{q})=(\boldsymbol{p}\ \ -\boldsymbol{q})=P\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}

なので、左から P−1P^{-1} を掛けて

P−1CP=(100−1)P^{-1}CP=\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}

です。CC は p,q\boldsymbol{p},\boldsymbol{q} を基底に取ると対角化されます。

(iii) D=A+iBD=A+iB と D~=A−iB\tilde{D}=A-iB を p,q\boldsymbol{p},\boldsymbol{q} に作用させます。まず

DA=(A+iB)A=A2+iBA=E−iAB=E−i(iC)=E+C,DA=(A+iB)A=A^2+iBA=E-iAB=E-i(iC)=E+C, D~A=(A−iB)A=A2−iBA=E+iAB=E+i(iC)=E−C\tilde{D}A=(A-iB)A=A^2-iBA=E+iAB=E+i(iC)=E-C

です(BA=−ABBA=-AB と AB=iCAB=iC を使いました)。q=Ap\boldsymbol{q}=A\boldsymbol{p} と Cp=pC\boldsymbol{p}=\boldsymbol{p} から

Dp=0,Dq=DAp=(E+C)p=2p,D\boldsymbol{p}=\boldsymbol{0},\qquad D\boldsymbol{q}=DA\boldsymbol{p}=(E+C)\boldsymbol{p}=2\boldsymbol{p}, D~p=2q,D~q=D~Ap=(E−C)p=0\tilde{D}\boldsymbol{p}=2\boldsymbol{q},\qquad \tilde{D}\boldsymbol{q}=\tilde{D}A\boldsymbol{p}=(E-C)\boldsymbol{p}=\boldsymbol{0}

となります(D~p=2q\tilde{D}\boldsymbol{p}=2\boldsymbol{q} は q\boldsymbol{q} の定義そのもの、D~q=12D~2p=0\tilde{D}\boldsymbol{q}=\frac{1}{2}\tilde{D}^2\boldsymbol{p}=\boldsymbol{0} からも確かめられます)。列ごとに書き直すと

DP=(0  2p)=P(0200),D~P=(2q  0)=P(0020)DP=(\boldsymbol{0}\ \ 2\boldsymbol{p})=P\begin{pmatrix}0&2\\0&0\end{pmatrix},\qquad \tilde{D}P=(2\boldsymbol{q}\ \ \boldsymbol{0})=P\begin{pmatrix}0&0\\2&0\end{pmatrix}

なので

P−1(A+iB)P=(0200),P−1(A−iB)P=(0020)P^{-1}(A+iB)P=\begin{pmatrix}0&2\\0&0\end{pmatrix},\qquad P^{-1}(A-iB)P=\begin{pmatrix}0&0\\2&0\end{pmatrix}

です。A=12(D+D~)A=\frac{1}{2}(D+\tilde{D})、B=12i(D−D~)B=\frac{1}{2i}(D-\tilde{D}) と分解すれば

P−1AP=12[(0200)+(0020)]=(0110),P^{-1}AP=\frac{1}{2}\left[\begin{pmatrix}0&2\\0&0\end{pmatrix}+\begin{pmatrix}0&0\\2&0\end{pmatrix}\right]=\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}, P−1BP=12i[(0200)−(0020)]=1i(01−10)=(0−ii0)P^{-1}BP=\frac{1}{2i}\left[\begin{pmatrix}0&2\\0&0\end{pmatrix}-\begin{pmatrix}0&0\\2&0\end{pmatrix}\right]=\frac{1}{i}\begin{pmatrix}0&1\\-1&0\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0&-i\\i&0\end{pmatrix}

が答えです。これはパウリ行列 σx,σy\sigma_x,\sigma_y そのものです。

検算をしておきます。P−1APP^{-1}AP と P−1BPP^{-1}BP はどちらも2乗して単位行列になり、積の順序を入れ替えると符号が変わるので、仮定 A2=B2=EA^2=B^2=E、AB+BA=OAB+BA=O が相似変換後も保たれています。さらに

−i (P−1AP)(P−1BP)=−i(0110)(0−ii0)=−i(i00−i)=(100−1)-i\,(P^{-1}AP)(P^{-1}BP)=-i\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}\begin{pmatrix}0&-i\\i&0\end{pmatrix}=-i\begin{pmatrix}i&0\\0&-i\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}

で、これは P−1CP=P−1(−iAB)PP^{-1}CP=P^{-1}(-iAB)P が設問(5)(ii) の結果と一致することを示しています。P−1APP^{-1}AP の固有値は ±1\pm 1 でそれぞれ重複度 1=n/21=n/2 なので、設問(1) とも合っています。

設問(5)(iii) は、n=2n=2 で仮定を満たす組が相似変換でパウリ行列に移ることを示しています。そこでその形をそのまま採用します。

A=(0110),B=(0−ii0),C=(100−1)A=\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix},\qquad B=\begin{pmatrix}0&-i\\i&0\end{pmatrix},\qquad C=\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}

が一組の具体形です。仮定を満たすことを確認します。

A2=(0110)2=(1001)=E,B2=(0−ii0)2=(1001)=E,A^2=\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}^2=\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix}=E,\qquad B^2=\begin{pmatrix}0&-i\\i&0\end{pmatrix}^2=\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix}=E, AB=(i00−i),BA=(−i00i)AB=\begin{pmatrix}i&0\\0&-i\end{pmatrix},\qquad BA=\begin{pmatrix}-i&0\\0&i\end{pmatrix}

なので AB+BA=OAB+BA=O です。さらに C=−iAB=−i(i00−i)=(100−1)C=-iAB=-i\begin{pmatrix}i&0\\0&-i\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix} で、CC の定義とも整合しています。この AA の固有値は ±1\pm 1 で、設問(1) の結論(各重複度 n/2=1n/2=1)を満たします。

なお、VV を任意の2次正則行列として (A,B,C)↦(VAV−1,VBV−1,VCV−1)(A,B,C)\mapsto(VAV^{-1},VBV^{-1},VCV^{-1}) とすればいくらでも別の組が作れますが、設問(5)(iii) により n=2n=2 ではこれで尽くされます。

第2問 グリーン関数と各次元のポアソン方程式

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ポアソン方程式とラプラス方程式を、空間次元 dd と境界条件を変えながら解いていきます。d=1d=1 では区間 [0,1][0,1] の両端で消える境界条件のもとでデルタ関数源に対する解(グリーン関数)を作り、それを使って一般の右辺に対する解を積分で表します。d=2d=2 では単位円板の内部でラプラス方程式を解き(境界での値を与えて内部の解を求める問題を、ディリクレ問題といいます)、境界値が ∣θ∣|\theta| であるディリクレ問題をフーリエ級数で処理します。d≥3d\ge 3 では全空間で原点にデルタ関数源を置き、無限遠で消える解を発散定理から決めます。2次元では直交座標 (x,y)(x,y)、複素座標 z=x+iyz=x+iy、zˉ=x−iy\bar{z}=x-iy、極座標 r,θr,\theta(x=rcos⁡θx=r\cos\theta、y=rsin⁡θy=r\sin\theta)を併用します。

(i) x≠yx\neq y では右辺が消えるので u′′=0u''=0、つまり uu は [0,y][0,y] と [y,1][y,1] のそれぞれで1次関数です。境界条件 u(0)=u(1)=0u(0)=u(1)=0 を最初から組み込むと、定数 a,ba,b を使って

u(x)={a x(0≤x≤y)b (1−x)(y≤x≤1)u(x)=\begin{cases} a\,x & (0\le x\le y)\\ b\,(1-x) & (y\le x\le 1) \end{cases}

と書けます。残る2つの条件で a,ba,b が決まります。

第1は連続性です。uu は [0,1][0,1] 上の連続関数と仮定されているので x=yx=y で左右の値が一致し、

a y=b (1−y).a\,y=b\,(1-y).

第2は導関数の飛びです。方程式を [y−ε,y+ε][y-\varepsilon,y+\varepsilon] で積分すると

u′(y+ε)−u′(y−ε)=−∫y−εy+εδ(x−y) dx=−1u'(y+\varepsilon)-u'(y-\varepsilon)=-\int_{y-\varepsilon}^{y+\varepsilon}\delta(x-y)\,dx=-1

で、ε→+0\varepsilon\to+0 とすれば u′(y+0)=−bu'(y+0)=-b、u′(y−0)=au'(y-0)=a だから

−b−a=−1,つまりa+b=1-b-a=-1,\qquad\text{つまり}\qquad a+b=1

です。2式から a y=(1−a)(1−y)a\,y=(1-a)(1-y)、整理すると a=1−ya=1-y、b=yb=y を得ます。

答えは

u(x)={(1−y) x(0≤x≤y)y (1−x)(y≤x≤1)u(x)=\begin{cases} (1-y)\,x & (0\le x\le y)\\ y\,(1-x) & (y\le x\le 1) \end{cases}

すなわち u(x)=min⁡(x,y)−xyu(x)=\min(x,y)-xy です。上の導出では各段階で係数が一意に定まっているので、これが唯一の解です。念のため一意性を独立に確認すると、2つの解の差 ww は w′′=0w''=0 と w(0)=w(1)=0w(0)=w(1)=0 を満たすので w≡0w\equiv 0 です。

yy を固定して xx の関数として見ると、x=yx=y で最大値 y(1−y)y(1-y) を取り両端で 00 になる折れ線で、頂点で傾きが 1−y1-y から −y-y へ、ちょうど −1-1 だけ跳んでいます。また min⁡(x,y)−xy\min(x,y)-xy は xx と yy の交換で不変で、自己共役な演算子 d2/dx2d^2/dx^2 のグリーン関数に期待される対称性を持っています。

(ii) G(x,y)=min⁡(x,y)−xyG(x,y)=\min(x,y)-xy は、xx について ∂x2G(x,y)=−δ(x−y)\partial_x^2G(x,y)=-\delta(x-y) と G(0,y)=G(1,y)=0G(0,y)=G(1,y)=0 を満たします。そこで

v(x)=−∫01G(x,y) ρ(y) dyv(x)=-\int_0^1 G(x,y)\,\rho(y)\,dy

と置きます。これが答えです。実際、微分と積分を交換して

d2vdx2=−∫01∂x2G(x,y) ρ(y) dy=∫01δ(x−y) ρ(y) dy=ρ(x)\frac{d^2v}{dx^2}=-\int_0^1\partial_x^2G(x,y)\,\rho(y)\,dy=\int_0^1\delta(x-y)\,\rho(y)\,dy=\rho(x)

となり、G(0,y)=G(1,y)=0G(0,y)=G(1,y)=0 から v(0)=v(1)=0v(0)=v(1)=0 も満たされます。解の一意性は (i) と同じ理由で保証されるので、これが唯一の解です。

GG の場合分けを開くと、y<xy<x では G=y(1−x)G=y(1-x)、y>xy>x では G=x(1−y)G=x(1-y) なので

v(x)=−(1−x)∫0xy ρ(y) dy−x∫x1(1−y) ρ(y) dyv(x)=-(1-x)\int_0^x y\,\rho(y)\,dy-x\int_x^1(1-y)\,\rho(y)\,dy

という明示的な形になります。この式を直接微分すると、積分の端点から出る項 −(1−x)xρ(x)-(1-x)x\rho(x) と +x(1−x)ρ(x)+x(1-x)\rho(x) が打ち消し合って

v′(x)=∫0xy ρ(y) dy−∫x1(1−y) ρ(y) dy,v′′(x)=xρ(x)+(1−x)ρ(x)=ρ(x)v'(x)=\int_0^x y\,\rho(y)\,dy-\int_x^1(1-y)\,\rho(y)\,dy,\qquad v''(x)=x\rho(x)+(1-x)\rho(x)=\rho(x)

となり、確かに元の方程式に戻ります。なお仮定 ρ(0)=ρ(1)=0\rho(0)=\rho(1)=0 はこの表示自体には不要で、ρ\rho が [0,1][0,1] で可積分であれば上の式が解を与えます。

(i) z=x+iyz=x+iy を x,yx,y の関数と見ると ∂z/∂x=1\partial z/\partial x=1、∂z/∂y=i\partial z/\partial y=i なので、n≥2n\ge 2 に対して

∂2∂x2zn=n(n−1)zn−2,∂2∂y2zn=i2 n(n−1)zn−2=−n(n−1)zn−2\frac{\partial^2}{\partial x^2}z^n=n(n-1)z^{n-2},\qquad \frac{\partial^2}{\partial y^2}z^n=i^2\,n(n-1)z^{n-2}=-n(n-1)z^{n-2}

となり、和は 00 です。zˉ=x−iy\bar{z}=x-iy については ∂zˉ/∂x=1\partial\bar{z}/\partial x=1、∂zˉ/∂y=−i\partial\bar{z}/\partial y=-i で、(−i)2=−1(-i)^2=-1 なのでまったく同様に

(∂2∂x2+∂2∂y2)zˉ n=n(n−1)zˉ n−2−n(n−1)zˉ n−2=0\left(\frac{\partial^2}{\partial x^2}+\frac{\partial^2}{\partial y^2}\right)\bar{z}^{\,n} =n(n-1)\bar{z}^{\,n-2}-n(n-1)\bar{z}^{\,n-2}=0

です。よって n≥2n\ge 2 では un=zn+zˉ nu_n=z^n+\bar{z}^{\,n} はラプラス方程式の解です。n=0n=0 では u0=2u_0=2、n=1n=1 では u1=z+zˉ=2xu_1=z+\bar{z}=2x で、どちらも2階偏導関数がすべて消えるので解です。以上ですべての n=0,1,2,…n=0,1,2,\dots について ∇2un=0\nabla^2u_n=0 が示せました。

別の見方として、∂z=12(∂x−i∂y)\partial_z=\frac12(\partial_x-i\partial_y)、∂zˉ=12(∂x+i∂y)\partial_{\bar{z}}=\frac12(\partial_x+i\partial_y) と置くと

∂2∂x2+∂2∂y2=4 ∂z∂zˉ\frac{\partial^2}{\partial x^2}+\frac{\partial^2}{\partial y^2}=4\,\partial_z\partial_{\bar{z}}

であり、znz^n は zˉ\bar{z} を含まず zˉ n\bar{z}^{\,n} は zz を含まないので、どちらもこの演算子で消えます。

境界 r=1r=1 では z=eiθz=e^{i\theta}、zˉ=e−iθ\bar{z}=e^{-i\theta} なので

un∣r=1=einθ+e−inθ=2cos⁡nθu_n\big|_{r=1}=e^{in\theta}+e^{-in\theta}=2\cos n\theta

です。円板全体では zn=rneinθz^n=r^ne^{in\theta} より un=2rncos⁡nθu_n=2r^n\cos n\theta で、r=1r=1 で上の値になります。次の設問ではこの rncos⁡nθr^n\cos n\theta を部品として使います。

(ii) 境界値 f(θ)=∣θ∣f(\theta)=|\theta|(−π≤θ≤π-\pi\le\theta\le\pi)をフーリエ級数に展開します。ff は偶関数なので sin⁡\sin の項は現れず、

∣θ∣=a02+∑n=1∞ancos⁡nθ,an=1π∫−ππ∣θ∣cos⁡nθ dθ=2π∫0πθcos⁡nθ dθ|\theta|=\frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}a_n\cos n\theta,\qquad a_n=\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi}|\theta|\cos n\theta\,d\theta=\frac{2}{\pi}\int_0^{\pi}\theta\cos n\theta\,d\theta

です。n=0n=0 では a0=2π⋅π22=πa_0=\frac{2}{\pi}\cdot\frac{\pi^2}{2}=\pi。n≥1n\ge 1 では部分積分して

∫0πθcos⁡nθ dθ=[θsin⁡nθn]0π−1n∫0πsin⁡nθ dθ=0+1n2[cos⁡nθ]0π=(−1)n−1n2\int_0^{\pi}\theta\cos n\theta\,d\theta =\left[\frac{\theta\sin n\theta}{n}\right]_0^{\pi}-\frac{1}{n}\int_0^{\pi}\sin n\theta\,d\theta =0+\frac{1}{n^2}\bigl[\cos n\theta\bigr]_0^{\pi}=\frac{(-1)^n-1}{n^2}

なので an=2π⋅(−1)n−1n2a_n=\dfrac{2}{\pi}\cdot\dfrac{(-1)^n-1}{n^2}、すなわち

a2m=0  (m≥1),a2m+1=−4π(2m+1)2  (m≥0)a_{2m}=0\ \ (m\ge 1),\qquad a_{2m+1}=-\frac{4}{\pi(2m+1)^2}\ \ (m\ge 0)

です。したがって

∣θ∣=π2−4π∑m=0∞cos⁡((2m+1)θ)(2m+1)2.|\theta|=\frac{\pi}{2}-\frac{4}{\pi}\sum_{m=0}^{\infty}\frac{\cos\bigl((2m+1)\theta\bigr)}{(2m+1)^2}.

係数が O(n−2)O(n^{-2}) で絶対総和可能なので、この級数は一様収束します。∣θ∣|\theta| は円周上の関数として連続(θ=±π\theta=\pm\pi で値が一致)かつ区分的に C1C^1 なので、級数の和は ∣θ∣|\theta| そのものです。検算として θ=0\theta=0 を入れると、∑m≥0(2m+1)−2=π2/8\sum_{m\ge0}(2m+1)^{-2}=\pi^2/8 より右辺は π2−4π⋅π28=0\frac{\pi}{2}-\frac{4}{\pi}\cdot\frac{\pi^2}{8}=0 で左辺と一致します。

設問(2)(i) より rncos⁡nθr^n\cos n\theta は円板内で調和なので、境界値の各項を cos⁡nθ→rncos⁡nθ\cos n\theta\to r^n\cos n\theta と内部へ延長して

u(r,θ)=π2−4π∑m=0∞r2m+1cos⁡((2m+1)θ)(2m+1)2u(r,\theta)=\frac{\pi}{2}-\frac{4}{\pi}\sum_{m=0}^{\infty}\frac{r^{2m+1}\cos\bigl((2m+1)\theta\bigr)}{(2m+1)^2}

が答えです。複素座標では

u=π2−2π∑m=0∞z2m+1+zˉ 2m+1(2m+1)2u=\frac{\pi}{2}-\frac{2}{\pi}\sum_{m=0}^{\infty}\frac{z^{2m+1}+\bar{z}^{\,2m+1}}{(2m+1)^2}

と書けます。

これが要求をすべて満たすことを確認します。まず内部での調和性です。n=2m+1n=2m+1 とすると第 mm 項は多項式 (zn+zˉ n)/n2(z^n+\bar{z}^{\,n})/n^2 で、その kk 階偏導関数の絶対値は ∣z∣≤ρ<1|z|\le\rho<1 において

1n2∣n(n−1)⋯(n−k+1)∣ ρn−k×2≤2 nk−2ρn−k\frac{1}{n^2}\bigl|n(n-1)\cdots(n-k+1)\bigr|\,\rho^{n-k}\times 2\le 2\,n^{k-2}\rho^{n-k}

で押さえられ、∑nnk−2ρn−k<∞\sum_n n^{k-2}\rho^{n-k}<\infty(ρ<1\rho<1)なので、級数は開円板の任意のコンパクト部分集合上で何回でも項別微分できます。各項は調和なので uu は r<1r<1 で ∇2u=0\nabla^2u=0 を満たします。次に境界値です。∣r2m+1cos⁡((2m+1)θ)∣≤1\bigl|r^{2m+1}\cos((2m+1)\theta)\bigr|\le 1 と ∑(2m+1)−2<∞\sum(2m+1)^{-2}<\infty から級数は閉円板 r≤1r\le 1 上で一様収束するので、uu は閉円板上で連続で、r=1r=1 での値は上のフーリエ級数の和、つまり ∣θ∣|\theta| に一致します。閉円板で連続かつ内部で調和な関数は境界値で一意に決まる(最大値原理。調和な関数の最大値・最小値は境界で取られる、という性質です)ので、これが唯一の解です。

検算をもう1つ。中心での値は u(0,θ)=π/2u(0,\theta)=\pi/2 で、境界値の平均 12π∫−ππ∣θ∣ dθ=π/2\frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}|\theta|\,d\theta=\pi/2 に等しく、調和関数の平均値の性質と合っています。また uu は θ→−θ\theta\to-\theta で不変で、境界値 ∣θ∣|\theta| の偶対称性を保っています。この級数は初等関数には閉じません(次の級数で定める特殊関数、ルジャンドルのカイ関数 χ2(w)=∑m≥0w2m+1/(2m+1)2\chi_2(w)=\sum_{m\ge0}w^{2m+1}/(2m+1)^2 を使えば u=π2−4πRe⁡χ2(z)u=\frac{\pi}{2}-\frac{4}{\pi}\operatorname{Re}\chi_2(z) です)ので、フーリエ級数の形が最終解答になります。

∏a=1dδ(xa)=δ(d)(x)\prod_{a=1}^{d}\delta(x_a)=\delta^{(d)}(\boldsymbol{x}) は原点に置かれた dd 次元デルタ関数で、∫Rdddx δ(d)(x)=1\int_{\mathbb{R}^d}d^dx\,\delta^{(d)}(\boldsymbol{x})=1 と規格化されています。

最初に解の一意性と球対称性を押さえます。2つの解の差 ww はデルタ関数が相殺して Rd\mathbb{R}^d 全体で調和になり、∣x∣→∞|\boldsymbol{x}|\to\infty で 00 に収束します。半径 RR の球で最大値原理を使うと

max⁡∣x∣≤R∣w∣=max⁡∣x∣=R∣w∣→R→∞0\max_{|\boldsymbol{x}|\le R}|w|=\max_{|\boldsymbol{x}|=R}|w|\xrightarrow[R\to\infty]{}0

なので w≡0w\equiv 0、すなわち解は一意です。一方、任意の直交行列(長さを変えない回転・反転を表す行列)Q∈O(d)Q\in O(d) に対し ∣det⁡Q∣=1|\det Q|=1 より δ(d)(Qx)=δ(d)(x)\delta^{(d)}(Q\boldsymbol{x})=\delta^{(d)}(\boldsymbol{x}) で、ラプラシアンも境界条件も回転で不変ですから u(Qx)u(Q\boldsymbol{x}) も同じ問題の解です。一意性から u(Qx)=u(x)u(Q\boldsymbol{x})=u(\boldsymbol{x}) となり、uu は r=∣x∣r=|\boldsymbol{x}| だけの関数 u=u(r)u=u(r) です。

そこで V={x:∣x∣<r}V=\{\boldsymbol{x}:|\boldsymbol{x}|<r\}、F=∇u\boldsymbol{F}=\nabla u として発散定理を使います。左辺は方程式から

∫Vddx ∇⋅∇u=−∫Vddx δ(d)(x)=−1\int_V d^dx\,\nabla\cdot\nabla u=-\int_V d^dx\,\delta^{(d)}(\boldsymbol{x})=-1

です(原点は VV の内部にあります)。右辺は、uu が rr のみの関数なので ∇u=u′(r) n\nabla u=u'(r)\,\boldsymbol{n}(n\boldsymbol{n} は球面の外向き単位法線)であることと、半径 rr の球面の超面積(dd 次元での球面の「面積」)が単位球面の値の rd−1r^{d-1} 倍であることから

∫∂VdS n⋅∇u=u′(r)∫∂VdS=u′(r) Sd−1 rd−1,Sd−1=2πd/2Γ(d/2)\int_{\partial V}dS\,\boldsymbol{n}\cdot\nabla u=u'(r)\int_{\partial V}dS=u'(r)\,S_{d-1}\,r^{d-1}, \qquad S_{d-1}=\frac{2\pi^{d/2}}{\Gamma(d/2)}

です。ここで Γ\Gamma はガンマ関数(階乗を一般化した関数)です。両者を等置して

u′(r)=−1Sd−1rd−1=−Γ(d/2)2πd/2 r1−d.u'(r)=-\frac{1}{S_{d-1}r^{d-1}}=-\frac{\Gamma(d/2)}{2\pi^{d/2}}\,r^{1-d}.

右辺が rr に依らない全流束 −1-1 から決まっていることは、r>0r>0 で ∇⋅∇u=0\nabla\cdot\nabla u=0(源は原点だけ)であることの言い換えです。あとは境界条件で積分定数を決めます。d≥3d\ge 3 なので ∫r∞s1−dds=r2−dd−2\int_r^{\infty}s^{1-d}ds=\dfrac{r^{2-d}}{d-2} は有限で、u(∞)=0u(\infty)=0 を使うと

u(r)=−∫r∞u′(s) ds=Γ(d/2)2πd/2∫r∞s1−d ds=Γ(d/2)2(d−2)πd/2 r2−du(r)=-\int_r^{\infty}u'(s)\,ds=\frac{\Gamma(d/2)}{2\pi^{d/2}}\int_r^{\infty}s^{1-d}\,ds =\frac{\Gamma(d/2)}{2(d-2)\pi^{d/2}}\,r^{2-d}

を得ます。答えは

u(x)=Γ(d/2)2(d−2)πd/2 ∣x∣2−d=Γ(d2−1)4πd/2 ∣x∣2−du(\boldsymbol{x})=\frac{\Gamma(d/2)}{2(d-2)\pi^{d/2}}\,|\boldsymbol{x}|^{2-d} =\frac{\Gamma\left(\frac{d}{2}-1\right)}{4\pi^{d/2}}\,|\boldsymbol{x}|^{2-d}

です。2つ目の形は Γ(d/2)=(d2−1)Γ(d2−1)\Gamma(d/2)=\left(\frac{d}{2}-1\right)\Gamma\left(\frac{d}{2}-1\right) を使って書き直したものです。

検算します。球対称関数のラプラシアンは ∇⋅∇u=u′′+d−1ru′\nabla\cdot\nabla u=u''+\dfrac{d-1}{r}u' なので、u∝r2−du\propto r^{2-d} を入れると

(2−d)(1−d)r−d+(d−1)(2−d)r−d=(2−d)[(1−d)+(d−1)]r−d=0(2-d)(1-d)r^{-d}+(d-1)(2-d)r^{-d}=(2-d)\bigl[(1-d)+(d-1)\bigr]r^{-d}=0

で、r>0r>0 で確かに調和です。d=3d=3 では Γ(3/2)=π/2\Gamma(3/2)=\sqrt{\pi}/2 より u=14πru=\dfrac{1}{4\pi r} となり、∇2u=−δ(3)\nabla^2u=-\delta^{(3)} を満たす点源のクーロンポテンシャルに一致します。d=4d=4 では Γ(1)=1\Gamma(1)=1 より u=14π2r2u=\dfrac{1}{4\pi^2r^2} です。uu は正で rr について単調減少、r→0r\to 0 で発散し r→∞r\to\infty で 00 に収束するので、境界条件とも整合しています。

なお d=2d=2 では係数の d−2d-2 が消えて表式が壊れます。これは2次元の解が u=−12πln⁡ru=-\frac{1}{2\pi}\ln r という対数型で、無限遠で 00 に収束させられないことに対応し、問題が d≥3d\ge 3 に限定されている理由でもあります。

出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 平成23年度 修士課程 入学試験問題 数学。問題文は要約して引用しています。

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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