0. この記事の要点
Section titled “0. この記事の要点”- **最尤推定(MLE)**は「観測データが最も出やすくなるパラメータ」を選ぶ方法です。データが少ないと極端な答え(確率 や無限大の重み)を平然と返します。
- ベイズの定理は、データを見る前の信念(事前分布)とデータの当てはまり(尤度)を掛けて、データを見た後の信念(事後分布)を作る規則です。MAP 推定は事後分布の最頻値を取ることです。
- これまで「過学習を防ぐおまじない」として導入してきた正則化は、事前分布そのものです。L2 正則化はガウス事前分布の、L1 正則化はラプラス事前分布の MAP 推定に一致し、正則化係数は (観測ノイズの分散と事前分散の比)という意味を持ちます。
- 事後分布を 1 点に潰さず、パラメータについて積分すると事後予測分布が得られます。その分散は「観測ノイズ」と「パラメータの不確実性」の和に分解され、外挿するほど後者が効きます。
- MAP は事後分布のたった 1 点であり、座標変換で不変ではありません。L1 のスパース性も「最頻値の性質」であって「事後平均の性質」ではありません。
1. 動機:点で答えるか、分布で答えるか
Section titled “1. 動機:点で答えるか、分布で答えるか”線形回帰と最小二乗法では、残差平方和 を最小にする を求めました(最小二乗問題(定義 3.1)[線形回帰と最小二乗法])。ロジスティック回帰では交差エントロピー(交差エントロピー誤差(定義 4.1)[ロジスティック回帰])を最小にしました。そして過学習を抑えるために、どちらでも罰則項 を足しました。
ここで素朴な疑問が 3 つ残ります。
- なぜ残差の 2 乗なのですか。絶対値でも 4 乗でもよいはずです。
- なぜ罰則が なのですか。 はどうやって決めるのですか。単位は何ですか。
- モデルが返すのは という 1 つの数だけです。「この予測はどのくらい信用してよいか」はどこに書いてあるのですか。
この章の主張は、3 つとも確率モデルを明示すれば同時に答えが出る、というものです。1 の答えは「観測ノイズをガウス分布と仮定したから」、2 の答えは「重みの事前分布をガウス分布と仮定したから、 はノイズ分散と事前分散の比」、3 の答えは「点推定を捨てて事後分布のまま積分すればよい」です。
歴史的には、この見方は機械学習より 250 年ほど古いものです。トーマス・ベイズの遺稿(1763 年)と、それを独立に一般の形で展開したラプラスの 1774 年の論文は、「結果から原因の確率を測る」問題として条件付き確率の反転を扱いました。一方、20 世紀初頭の R. A. フィッシャーは事前分布を持ち込むことを嫌い、尤度だけを使う最尤推定を統計学の中心に据えました。現代の機械学習はこの両方を、目的に応じて使い分けています。損失関数の設計は前者の言葉で、汎化性能の議論は後者の言葉で語られることが多い、という具合です。
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