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1次元の簡単な系:無限井戸・トンネル効果・調和振動子

前提:演算子と物理量:エルミート演算子と交換関係から不確定性関係へ

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  • 1 次元の定常シュレーディンガー方程式は 2 階の線形常微分方程式です。エネルギーが離散化するのは方程式そのものからではなく、規格化可能性(あるいは壁での境界条件) が課す制約からです。この一点が本記事全体を貫きます。
  • 無限に深い井戸では En=π222mL2n2E_n = \dfrac{\pi^2\hbar^2}{2mL^2}\,n^2n=1,2,n = 1, 2, \ldots)となり、最低エネルギーが 00 にならない(零点エネルギー)。これは不確定性関係の直接の帰結です。
  • 矩形障壁では E<V0E < V_0 でも透過率 TT は正です。厚い障壁では T16E(V0E)V02e2κaT \simeq \dfrac{16E(V_0-E)}{V_0^{2}}e^{-2\kappa a} となり、幅 aa に指数的に依存します。走査トンネル顕微鏡が原子分解能を持つ理由がここにあります。
  • 調和振動子は、微分方程式を一度も解かずに、交換関係 [a^,a^]=1[\hat a, \hat a^{\dagger}] = 1a^a^0\hat a^{\dagger}\hat a \ge 0 だけからスペクトル En=(n+12)ωE_n = \left(n + \tfrac12\right)\hbar\omega が完全に決まります。
  • 三つの系に共通する構造は「ヒルベルト空間に属せという要求が、連続だったパラメータを離散集合へ絞り込む」ことです。水素原子でも同じ論理が働きます。

1. 動機:なぜ 1 次元から始めるのか

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ボーアが 1913 年に水素原子のスペクトルを説明したとき、エネルギーの離散性は仮定でした。角運動量が \hbar の整数倍に限られる、という量子条件を外から課したのです。なぜそんな条件が成り立つのかは説明されませんでした。詳しくは 量子力学の誕生、とくに ボーアの量子条件のド・ブロイによる解釈(命題 6.5)[量子力学の誕生] を参照してください。

1926 年にシュレーディンガーが与えた答えは、見方を根本から変えるものでした。エネルギーの離散性は追加の仮定ではなく、波動関数が「まともな関数」であれという要求から自動的に出てくる、というのです。弦の固有振動数が離散的なのは、両端が固定されているからです。それと同じことが原子の中で起きている。これがシュレーディンガーの主張でした。

この主張は、3 次元の水素原子でいきなり検証するには複雑すぎます。そこで本章では 1 次元の系を三つ取り上げます。

  1. 無限に深い井戸:離散性がどこから来るのかを、もっとも裸の形で見ます。
  2. 矩形ポテンシャル障壁:古典力学が「絶対に通れない」と断言する壁を、粒子が有限の確率で通り抜けます。
  3. 1 次元調和振動子:微分方程式を解く代わりに、演算子の代数だけでスペクトルを決めます。

1 次元にこだわるのは、単に計算が楽だからではありません。第一に、シュレーディンガー方程式と波動関数 で導入した波動関数の確率解釈と、演算子と物理量 で扱った演算子形式が、余計な角運動量の技術に埋もれずに正面から見えます。第二に、3 次元の中心力問題は角度部分を分離すると動径方向の 1 次元問題に帰着します水素原子命題 4.1[水素原子] を参照)。1 次元は特殊な練習問題ではなく、量子力学の主要な計算技術がそこに集約されている場所です。

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