無限に続く足し算に答えはあるのか、という素朴な疑問から始まる記事です。1+21+41+⋯ のように足し続けても全体が有限の値に落ち着くことがある一方、1+1+1+⋯ のようにいくらでも大きくなることもあります。この記事では、落ち着くかどうかを見分ける方法(判定法)と、足す順序を変えても答えが変わらない条件を学びます。読み終えると、与えられた級数が収束するかどうかを自分で判定でき、足し方に左右される級数とされない級数を区別できるようになります。
- 無限級数の「和」は、有限和である部分和 SN=a1+⋯+aN の数列としての極限で定義します。級数の問題はすべて数列の収束の問題に翻訳されます。
- 正項級数(すべての項が 0 以上)については「収束することと部分和が上に有界であることが同値」という一つの原理があり、比較判定法・積分判定法・比判定法・根判定法はいずれもその言い換えです。
- ダランベールの比判定法とコーシーの根判定法はどちらも「等比級数と比べる」道具ですが、根判定法のほうが真に強い。比判定法が結論を出せないのに根判定法が出せる例があります。
- 絶対収束すれば収束します。逆は成り立たず、その差が条件収束です。
- 条件収束する級数は、項の順序を変えると和が変わります(リーマンの再配列定理)。逆に絶対収束する級数は、並べ替えても、二重の添字の和を足す順序を変えても和が変わりません。無限和は有限和の単なる延長ではありません。
- 絶対収束する二つの級数は、展開して添字の和ごとにまとめ直した積(コーシー積)が元の和の積に収束します。指数関数の指数法則はこの定理から出ます。
有限個の数の足し算に説明は要りません。しかし 1+21+41+81+⋯ のように項が無限に続くとき、「足した結果」とは何を指すのでしょうか。実際に無限回の加法を行うことはできませんから、これは定義しなければ意味を持たない言葉です。
このことが真剣に問題になった例を挙げます。18 世紀に議論されたグランディ級数
1−1+1−1+1−1+⋯
を考えます。括弧を (1−1)+(1−1)+⋯ と付ければ 0 ですが、1+(−1+1)+(−1+1)+⋯ と付ければ 1 です。和を S と書いて S=1−S を解けば S=21 になります。どれももっともらしく、どれも決定的でない。同じ時期にオイラーは 1+2+4+8+⋯ に等比級数の公式 1−r1 を r=2 で当てはめて −1 という値を割り当てています。
こうした混乱は「無限和とは何か」が決まっていなかったことに由来します。コーシーは 1821 年の『解析教程』で、無限和を部分和の極限として定義しました。この定義のもとではグランディ級数の部分和は 1,0,1,0,… と振動して極限を持たないので、答えは「和は存在しない(発散する)」です。曖昧さは消えます。
定義が決まると、次の問いは実際的なものになります。与えられた級数は収束するのか。 和の値そのものは初等関数で表せないことが多い一方、収束するかどうかは判定できることが多い。テイラー展開がどの範囲の x で使えるか(平均値の定理とテイラーの定理 の テイラーの定理(定理 5.3)[平均値の定理とテイラーの定理])、数値計算で何項まで足せば必要な精度が出るか。どちらもこの判定の問題です。この記事はその道具立てを、証明を省かずに組み立てます。なお 0.999…=1 のような無限小数の等式も級数の収束の話です(数とは何か? の 1 = 0.999…(定理 6.3)[数とは何か])。
数列 (xn) が x に収束するとは、任意の ε>0 に対してある番号 N が存在し、n≥N ならば ∣xn−x∣<ε となることでした(極限と連続性)。この記事で実数について使う性質は次の二つです。
- 上限の存在(実数の連続性):空でなく上に有界な R の部分集合 A には最小上界 supA が存在する(数とは何か? の 実数の連続性公理(上限性質)(公理 5.1)[数とは何か])。
- 完備性:コーシー列(任意の ε>0 に対しある N があって m,n≥N ならば ∣xm−xn∣<ε となる数列)は収束する。
まず、後の議論で繰り返し使う基本定理を確認します。
定理 2.1(単調有界定理)✓
実数列 (xn) が単調増加(すなわちすべての n で xn≤xn+1)であり、かつ上に有界であるとする。このとき (xn) は収束し、limn→∞xn=supn≥1xn である。
証明(定理 2.1)
集合 A={xn:n≥1} は空でなく、仮定より上に有界です。上限の存在(§2)より x∗=supA が存在します。ε>0 を任意に取ります。x∗−ε は A の上界ではない(x∗ が最小の上界だから)ので、ある番号 N があって xN>x∗−ε となります。単調増加性より n≥N ならば xn≥xN>x∗−ε であり、一方 x∗ は上界なので xn≤x∗ です。したがって n≥N のとき ∣xn−x∗∣<ε となり、xn→x∗ が示されました。
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根判定法・比判定法を極限の存在を仮定せずに述べるために、上極限を用意します。直感的には、数列の「十分先での最大値」のことです。たとえば xn=(−1)n(1+n1) では、番号 N 以降の上限は 1 より大きい値ですが、N を増やすと 1 に近づくので、上極限は 1 です(下極限は −1)。
定義 2.2(上極限)↗
実数列 (xn) が上に有界であるとき、yN=supn≥Nxn とおく。(yN) は N について単調減少なので、下に有界ならば収束し、そうでなければ −∞ に発散する。この値を
n→∞limsupxn=N≥1infn≥Nsupxnと書き、(xn) の上極限という。(xn) が上に有界でないときは limsupn→∞xn=+∞ と約束する。下極限 liminfn→∞xn=supN≥1infn≥Nxn も同様に定める。
次の補題は、上極限を実際に使うときの二つの形((a) 十分先ではつねに r 未満、(b) r を超える項が無限個)をまとめたもので、直後の注は同じ内容を言い換えたものです。
補題 2.3(上極限・下極限の基本性質)✓
α=limsupn→∞xn が有限のとき、次が成り立つ。
(a) r>α ならば、ある N が存在して n≥N のすべてで xn<r。
(b) r<α ならば、xn>r となる n が無限個ある。
また β=liminfn→∞xn が有限のとき、(a’) r<β ならば、ある N が存在して n≥N のすべてで xn>r。
さらに (b) は α=+∞ のときも(任意の実数 r について)、(a’) は β=+∞ のときも成り立つ。
証明(補題 2.3)
(a) infNsupn≥Nxn=α<r なので、下限の定義よりある N で supn≥Nxn<r となり、n≥N では xn≤supn≥Nxn<r です。(b) 任意の N について supn≥Nxn≥α>r なので、上限の定義よりある n≥N で xn>r です。N は任意なのでそのような n はいくらでも大きく取れます。(a’) supNinfn≥Nxn=β>r なので、上限の定義よりある N で infn≥Nxn>r となり、n≥N では xn≥infn≥Nxn>r です。α=+∞ のとき (xn) は上に有界でなく、有限個の項を除いても上に有界でないので、任意の N についてある n≥N で xn>r です。β=+∞ のときは supNinfn≥Nxn=+∞>r なので、(a’) と同じ議論が使えます。
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定義 3.1(無限級数・部分和・和)↗
数列 (an)n≥1 に対し、
SN=n=1∑Nan(N=1,2,…)を第 N 部分和という。数列 (SN)N≥1 がある実数 S に収束するとき、級数 ∑n=1∞an は収束するといい、S をその和と呼んで ∑n=1∞an=S と書く。(SN) が収束しないとき、級数は発散するという。
記号 ∑n=1∞an は、級数という対象そのものと、収束する場合の和の値の両方を表す慣用があります。添字の出発点は 1 でなくてもよく、∑n≥0 や ∑n≥2 も同じ流儀で定義します。
命題 3.2(有限個の項の変更・定数倍・和)✓
(1) ある n0 があって n≥n0 で an=bn ならば、∑an が収束することと ∑bn が収束することは同値である。
(2) λ=0 のとき、∑λan が収束することと ∑an が収束することは同値で、収束するとき ∑λan=λ∑an である。
(3) ∑an と ∑bn がともに収束すれば ∑(an+bn) も収束し、∑(an+bn)=∑an+∑bn である。
証明(命題 3.2)
部分和を SN(an の)、TN(bn の)とします。(1) N≥n0 に対し SN−TN=∑n<n0(an−bn) は N によらない定数なので、一方の部分和が収束することと他方が収束することは同値です。(2) ∑λan の部分和は λSN で、λ=0 なので λSN が収束することと SN が収束することは同値であり、極限は λlimSN です。(3) ∑(an+bn) の部分和は SN+TN で、極限の和の法則から収束して極限は limSN+limTN です。
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例 3.4(等比級数とグランディ級数)
r=1 のとき、∑n=0Nrn=1−r1−rN+1 です(両辺に 1−r を掛ければ確かめられます)。
∣r∣<1 のとき rN+1→0 なので、部分和は 1−r1 に収束します。すなわち
n=0∑∞rn=1−r1(∣r∣<1).∣r∣≥1 のときは ∣rn∣≥1 なので一般項は 0 に収束せず、後述の 命題 3.5 より発散します(r=1 なら部分和は N+1 で、実際に +∞ に発散します)。
したがってグランディ級数(r=−1)は発散し、「和は 0 か 1 か 21 か」という §1 の問いには「どれでもない、和は存在しない」が答えです。オイラーの 1+2+4+⋯=−1 も、∣r∣<1 でしか成り立たない公式に r=2 を形式的に代入したものにすぎません。
命題 3.5(一般項の必要条件)✓
級数 ∑n=1∞an が収束するならば limn→∞an=0 である。対偶を取れば、an が 0 に収束しない級数は発散する。
証明(命題 3.5)
和を S とすると、定義(定義 3.1)より SN→S です。N≥2 に対して aN=SN−SN−1 であり、N→∞ のとき右辺は S−S=0 に収束します。よって aN→0 です。
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命題 3.6(等比級数の収束と発散)✓
∣r∣<1 ならば ∑n=0∞rn は収束し、和は 1−r1 である。∣r∣≥1 ならば発散する。
証明(命題 3.6)
r=1 のとき、(1−r)∑n=0Nrn=1−rN+1 なので ∑n=0Nrn=1−r1−rN+1 です。∣r∣<1 のとき rN+1→0 なので部分和は 1−r1 に収束します。∣r∣≥1 のときは ∣rn∣≥1 なので一般項は 0 に収束せず、命題 3.5 より発散します。
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この命題は発散を示すためだけに使えます。逆は成り立ちません。それを見るのが次の例で、級数論で最も重要な反例です。
例 3.7(調和級数は発散する)
∑n=1∞n1 を考えます。一般項は 0 に収束しますが、この級数は発散します。14 世紀のオレームによる論法を書きます。HN=∑n=1Nn1 とおき、N=2k での部分和を項数 1,1,2,4,8,… の塊に分けます。j≥1 について、2j−1<n≤2j を満たす n は 2j−1 個あり、そのそれぞれで n1≥2j1 ですから
n=2j−1+1∑2jn1≥2j−1⋅2j1=21.これを j=1,…,k について足すと
H2k=1+j=1∑kn=2j−1+1∑2jn1≥1+2kとなり、部分和はいくらでも大きくなります。収束する数列は有界ですから、(HN) は収束しません。
発散はしますが極めて遅い。上の評価は HN が 10 を超えるのに 218 項程度でよいと言っていますが、実際には HN≈logN なので、HN が 10 を超えるのは N が 1 万 2 千を超えてからです。「計算機で足してみて増えなくなったから収束」という判断が危険なのは、このためです。
定理 3.8(級数のコーシーの判定条件)✓
級数 ∑n=1∞an が収束するための必要十分条件は、任意の ε>0 に対してある番号 N が存在して、m>n≥N を満たすすべての m,n について
k=n+1∑mak<εが成り立つことである。
証明(定理 3.8)
∑k=n+1mak=Sm−Sn ですから、条件は「数列 (SN) がコーシー列である」ことと同じ主張です。定義 3.1 より級数の収束は (SN) の収束のことであり、R の完備性(§2)より数列については収束とコーシー列であることが同値です。よって主張が従います。
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すべての項が 0 以上である級数を正項級数と呼びます。正項級数では部分和が単調増加するので、収束の問題が有界性の問題に化けます。この節の内容は、そのたった一つの観察の応用です。
命題 4.1(正項級数の収束と有界性)✓
すべての n で an≥0 とする。このとき ∑n=1∞an が収束することと、部分和の列 (SN) が上に有界であることは同値である。収束する場合、∑n=1∞an=supN≥1SN である。
証明(命題 4.1)
SN+1−SN=aN+1≥0 なので (SN) は単調増加です。上に有界ならば 定理 2.1 より収束し、極限は supNSN に一致します。逆に収束すれば、収束する数列は有界ですから、特に上に有界です。
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正項級数の部分和は上に有界か +∞ に発散するかのどちらかなので、正項級数について「∑an<∞」(収束の意味)、「∑an=∞」(発散の意味)という書き方が使えます。以下ではこの記法も用います。
定理 4.2(比較判定法)✓
ある番号 n0 が存在して、n≥n0 を満たすすべての n で 0≤an≤bn が成り立つとする。このとき、
- ∑n=1∞bn が収束すれば ∑n=1∞an も収束する。
- ∑n=1∞an が発散すれば ∑n=1∞bn も発散する。
証明(定理 4.2)
(2) は (1) の対偶なので、(1) を示せば十分です。命題 3.2 (1) より最初の n0−1 項は収束・発散に影響しないので、はじめから n0=1、すなわちすべての n で 0≤an≤bn としてよい。
T=∑n=1∞bn とおきます。bn≥an≥0 なので ∑bn は正項級数であり、命題 4.1 よりその部分和 TN はすべて T 以下です。したがって任意の N で
SN=n=1∑Nan≤n=1∑Nbn=TN≤Tとなり、∑an の部分和は T で上から押さえられます。再び 命題 4.1(今度は逆向き)より ∑an は収束します。
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比較判定法を使うには不等式を自分で見つけなければなりません。項の比の極限だけで判定できる形にしておくと実用的です。
系 4.3(極限比較判定法)✓
すべての n で an≥0、bn>0 とし、c=limn→∞bnan が(+∞ も許して)存在するとする。
- 0<c<∞ ならば、∑an と ∑bn は同時に収束し同時に発散する。
- c=0 で ∑bn が収束すれば、∑an も収束する。
- c=∞ で ∑bn が発散すれば、∑an も発散する。
証明(系 4.3)
(1) 極限の定義で ε=2c>0 と取ると、ある n0 があって n≥n0 のとき bnan−c<2c、すなわち
2cbn<an<23cbn(n≥n0)です(bn>0 を掛けました)。右の不等式と 定理 4.2(1) より、∑bn が収束すれば ∑23cbn も収束し(命題 3.2 (2) の定数倍)、∑an が収束します。左の不等式と 定理 4.2(1) より、∑an が収束すれば ∑2cbn が収束し、したがって ∑bn が収束します。
(2) c=0 なら ε=1 に対しある n0 があって n≥n0 で an<bn となるので、定理 4.2(1) から従います。(3) c=∞ なら、ある n0 があって n≥n0 で an>bn となるので、定理 4.2(2) から従います。
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∑n21 のように「n の有理式」や logn を含む級数は、比較する相手を探すより、対応する広義積分(積分の基本定理と定積分)と比べるほうが速い。単調減少関数に対して、和は面積で上下から挟めます。
積分判定法:破線の長方形(高さ f(n))が曲線を上から押さえ、塗りつぶした長方形(高さ f(n+1))が下から押さえる
次の定理の (2) の「尾部」は、和の途中から先(第 N+1 項以降)の部分のことです。これを積分で上下から押さえます。
定理 5.1(コーシーの積分判定法)✓
関数 f:[1,∞)→R が、すべての x≥1 で f(x)≥0 を満たし、単調減少(x≤y ならば f(x)≥f(y))であるとする。このとき、
- 級数 ∑n=1∞f(n) が収束することと、広義積分 ∫1∞f(x)dx=b→∞lim∫1bf(x)dx が有限の値に収束することは同値である。
- 収束する場合、任意の N≥1 について尾部が
∫N+1∞f(x)dx≤n=N+1∑∞f(n)≤∫N∞f(x)dxで評価される。
証明(定理 5.1)
まず f は単調なので任意の有界閉区間でリーマン可積分であり(リーマン可積分性の定義(定義 3.1)[積分の基本定理と定積分])、以下の積分はすべて意味を持ちます。
n≤x≤n+1 のとき、単調減少性より f(n+1)≤f(x)≤f(n) です。この不等式を区間 [n,n+1](長さ 1)で積分すると、積分の単調性(定積分の基本性質(命題 4.1)[積分の基本定理と定積分])から
f(n+1)≤∫nn+1f(x)dx≤f(n)(n≥1)を得ます。これが証明のすべての土台です。
(1) 上の右側の不等式を n=1,…,M−1 で足すと ∫1Mf≤∑n=1M−1f(n)、左側を n=1,…,M−1 で足すと ∑n=2Mf(n)≤∫1Mf となります。すなわち
n=2∑Mf(n)≤∫1Mf(x)dx≤n=1∑M−1f(n).f≥0 なので F(b)=∫1bf は b について単調増加であり、部分和 SM=∑n≤Mf(n) も単調増加です。右の不等式より、(SM) が上に有界なら (F(M)) も上に有界、左の不等式より、(F(M)) が上に有界なら (SM) も上に有界です。よって「(SM) が上に有界」と「(F(M)) が上に有界」は同値。前者は 命題 4.1 より級数の収束と同値です。後者については、F が単調増加なので、上に有界ならば 定理 2.1 と同じ議論(数列 F(M) の極限が supbF(b) に等しく、F の単調性から b→∞ の極限もその値になる)で広義積分が収束し、上に有界でなければ F(b)→∞ です。以上で (1) が示されました。
(2) 上の基本不等式の左側で添字を 1 ずらした f(n)≤∫n−1nf(x)dx を n=N+1,…,M で足すと ∑n=N+1Mf(n)≤∫NMf の形、正確には
n=N+1∑Mf(n)≤n=N+1∑M∫n−1nf(x)dx=∫NMf(x)dx≤∫N∞f(x)dxとなり(最後の不等号は f≥0)、M→∞ として右側の評価を得ます。左側は
n=N+1∑Mf(n)≥n=N+1∑M∫nn+1f(x)dx=∫N+1M+1f(x)dxで M→∞ とすればよい。
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系 5.2(p 級数)✓
実数 s に対し、∑n=1∞ns1 は s>1 のとき収束し、s≤1 のとき発散する。
証明(系 5.2)
実数の指数は xt=exp(tlogx)(x>0)です(定理 4.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])。以下、exp と log の性質は 定理 3.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] と 定理 4.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] によります。
準備:b→∞ のとき logb→∞。 log は狭義単調増加で log1=0 なので log2>0 です。log(2m)=mlog2(定理 4.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (2))なので、任意の K に対し mlog2>K となる m を取れば、b≥2m で logb≥mlog2>K です。したがって t>0 のとき bt=exp(tlogb)≥1+tlogb→∞(x≥0 で expx≥1+x)、t<0 のとき bt=1/b−t→0(exp(x)exp(−x)=exp0=1)です。
s≤0 のとき、n≥1 で logn≥0 なので −slogn≥0 で、n−s=exp(−slogn)≥1 です。一般項は 0 に収束せず、命題 3.5 より発散します。
s>0 とします。f(x)=x−s は exp の値なので正で、(x−s)′=−sx−s−1<0(命題 2.1[微分法とその応用] (2))ですから、系 3.4[平均値の定理とテイラーの定理] より [1,∞) で単調減少です。よって 定理 5.1 が使えます。
s=1 のとき、F(x)=1−sx1−s は (0,∞) で微分可能で F′(x)=x−s(同じく 命題 2.1[微分法とその応用] (2))、とくに連続です。定理 5.4[積分の基本定理と定積分] より
∫1bx−sdx=F(b)−F(1)=1−sb1−s−1です。s=1 のときは F=log が F′(x)=1/x(定理 4.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] (4))を満たすので、同じ定理から ∫1bx−1dx=logb−log1=logb です。準備より、s>1 なら 1−s<0 で b1−s→0 なので積分は s−11 に収束し、級数は収束します。0<s<1 なら 1−s>0 で b1−s→∞ なので積分は発散し、s=1 でも logb→∞ で発散します。よって級数も発散します。
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s=1 が発散側にあることは 例 3.7 と整合しています。境界がどれほど微妙かを、対数を挟んだ級数で見ます。
例 5.3(対数を含む級数の境界)
実数 s に対し n=2∑∞n(logn)s1 を調べます。まず s>0 とします。このとき f(x)=x(logx)s1 は [2,∞) で正であり、x(logx)s が増加するので単調減少です(定理 5.1 は出発点が 1 でなくても、[2,∞) 上で同じ証明が通ります)。u=logx、du=dx/x と置換すると(置換積分(定理 6.1)[積分の基本定理と定積分])
∫2bx(logx)sdx=∫log2logbusduであり、logb→∞ なので、これは 系 5.2 の証明と同じ計算により s>1 のとき s−1(log2)1−s に収束し、s≤1 のとき発散します。s≤0 のときは n(logn)s1≥n1(n≥3)と 定理 4.2(2)、例 3.7 から発散します。
まとめると、この級数は s>1 のときだけ収束します。つまり ∑n1(発散)と ∑n1+ε1(収束)の間には、nlogn1(発散)、n(logn)21(収束)という細かい階層があります。次節の比判定法・根判定法はこれらすべてに対して「判定不能」を返します。判定法には守備範囲があるということです。
例 3.4 の等比級数は、収束・発散が完全にわかっている数少ない級数です。この節の二つの判定法は、いずれも「与えられた級数を等比級数と比べる」ための仕掛けで、階乗や n 乗を含む級数に強い。
定理 6.1(コーシーの根判定法)✓
数列 (an) に対し α=limsupn→∞∣an∣1/n とおく(定義 2.2)。
- α<1 ならば ∑n=1∞∣an∣ は収束する(したがって 定理 7.2 より ∑an も収束する)。
- α>1 ならば an は 0 に収束せず、∑n=1∞an は発散する。
- α=1 のときは、収束することも発散することもあり、この判定法だけでは決まらない。
(3) の証明では、α=1 でも収束する例と発散する例の両方を挙げます。収束する例で n1/n→1 を示す部分が長くなりますが、これは α=1 を確かめるための準備です。
証明(定理 6.1)
(1) α<r<1 となる実数 r を取ります。補題 2.3(a) より、ある N があって n≥N のとき ∣an∣1/n<r、すなわち ∣an∣<rn です。0<r<1 なので ∑nrn は収束し(命題 3.6)、定理 4.2(1) より ∑∣an∣ が収束します。
(2) 1<α なので 補題 2.3(b) を r=1 に適用すると、∣an∣1/n>1 すなわち ∣an∣>1 となる n が無限個あります(α=+∞ のときも同じ結論です)。よって an→0 ではなく、命題 3.5 より級数は発散します。
(3) 収束する例と発散する例を 1 つずつ挙げます。正の数の n 乗根 x1/n(定理 2.2[指数関数と対数関数])は、一意性から (xy)1/n=x1/ny1/n を満たし(右辺の n 乗が xy)、0<x≤y なら x1/n≤y1/n です(逆なら n 乗して x>y)。
発散する例。 an=1 なら ∣an∣1/n=1 で α=1 ですが、一般項が 0 に収束しないので発散します(命題 3.5)。
収束する例。 an=n(n+1)1 とします。n(n+1)1=n1−n+11 なので部分和は 1−N+11→1 で、級数は収束します。α=1 を示します。まず n1/n→1 です。実際 hn=n1/n−1≥0 とおくと、h≥0 に対する不等式 (1+h)n≥1+nh+2n(n−1)h2(n についての帰納法。n で成り立てば、両辺に 1+h を掛けて h3 の項を捨てると n+1 の場合を得る)から n≥2n(n−1)hn2、すなわち 0≤hn≤2/(n−1)(n≥2)で、hn→0 です。n≥2 では 1≤n(n+1)≤n3 なので、上の性質から 1≤(n(n+1))1/n≤(n1/n)3→1 で、はさみうち(命題 2.2[数列と関数の極限] (3)(6))により xn:=∣an∣1/n=1/(n(n+1))1/n→1 です(同 (4))。最後に、ε>0 に対しある Nε から先で 1−ε<xn<1+ε なので、N≥Nε で supn≥Nxn∈[1−ε,1+ε]、また任意の N で supn≥Nxn≥xmax(N,Nε)>1−ε です。よって α=infNsupn≥Nxn∈[1−ε,1+ε](定義 2.2)で、ε は任意なので α=1 です。
2 つの例はどちらも α=1 ですが、収束・発散が異なります。
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定理 6.2(ダランベールの比判定法)✓
ある n0 以上のすべての n で an=0 とする。
- limsupn→∞anan+1<1 ならば ∑n=1∞∣an∣ は収束する。
- ある n1≥n0 が存在して n≥n1 のすべてで anan+1≥1 ならば、∑n=1∞an は発散する。特に liminfn→∞anan+1>1 ならば発散する。
- anan+1→1 のときは、この判定法だけでは決まらない。
証明(定理 6.2)
(1) limsup∣an+1/an∣<r<1 となる r を取ると、補題 2.3(a) よりある N≥n0 があって n≥N で ∣an+1∣≤r∣an∣ です。これを n=N,N+1,… と繰り返して(n についての帰納法)
∣an∣≤rn−N∣aN∣=(∣aN∣r−N)rn(n≥N)を得ます。C=∣aN∣r−N は n によらない定数で、∑Crn は収束します(命題 3.6 と 命題 3.2 (2) の定数倍)。よって 定理 4.2(1) より ∑∣an∣ が収束します。
(2) 仮定より n≥n1 で ∣an+1∣≥∣an∣ なので、∣an∣≥∣an1∣>0 が n≥n1 で成り立ちます。よって an→0 ではなく、命題 3.5 より発散します。後半は、liminf∣an+1/an∣>1 ならば 補題 2.3 (a’) から、ある番号以降つねに比が 1 を超えるからです。
(3) an=1 なら比はつねに 1 ですが、一般項が 0 に収束しないので発散します(命題 3.5)。an=n(n+1)1 なら比は n+2n=1−n+22→1 ですが、n(n+1)1=n1−n+11 より部分和は 1−N+11→1 で、級数は収束します。比が 1 に収束する点は同じでも、収束・発散は異なります。
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次の注は、比判定法で収束がわかる級数なら根判定法でも必ず収束がわかる、ということを示します。
例 6.5(根判定法は効くが比判定法は効かない級数)
an=2−n+(−1)n(n≥1)とします。n が偶数なら an=2−n+1、奇数なら an=2−n−1 です。
根判定法:∣an∣1/n=2−1+(−1)n/n であり、指数は −1 に収束するので α=21<1。定理 6.1(1) より収束します。
比判定法:anan+1=2−1+(−1)n+1−(−1)n なので、n が偶数なら 2−1−2=81、奇数なら 2−1+2=2 です。よって limsup=2>1、liminf=81<1 となり、定理 6.2 の (1) も (2) も適用できません。判定不能です。
和も求まります。奇数番号の項の和は ∑k≥02−(2k+1)−1=41∑k≥04−k=41⋅1−1/41=31、偶数番号の項の和は ∑k≥12−2k+1=2∑k≥14−k=2⋅1−1/41/4=32 です(正項級数なので、この二つに分けて足してよい)。合わせて ∑n=1∞an=31+32=1 です。
例 6.6(指数級数と打ち切り誤差)
任意の実数 x について n=0∑∞n!xn は絶対収束します。x=0 のとき an=n!xn=0 で
anan+1=(n+1)!xn+1⋅xnn!=n+1∣x∣⟶0<1なので 定理 6.2(1) から従います(x=0 なら第 0 項以外が 0)。この和が ex に等しいことは、テイラーの定理の剰余項評価から出ます(平均値の定理とテイラーの定理 の e^x のマクローリン展開(例 6.1)[平均値の定理とテイラーの定理])。
x=1 での打ち切り誤差を評価します。n>N のとき n!1=(N+1)!1⋅(N+2)⋯n1≤(N+1)!1⋅(N+1)n−N−11 なので
n>N∑n!1≤(N+1)!1j≥0∑(N+1)j1=(N+1)!1⋅NN+1=N!N1.N=10 なら 10!⋅101=362880001≈2.8×10−8 です。11 項で e が小数第 7 位まで正しく求まります。例 3.7 の調和級数とは対照的な速さです。
ここまでの判定法(比較・積分・比・根)は、いずれも ∣an∣ の級数を扱っていました。符号が入り混じる級数を扱うには、絶対値を付けた級数との関係を整理する必要があります。
定義 7.1(絶対収束と条件収束)↗
級数 ∑n=1∞an について、∑n=1∞∣an∣ が収束するとき ∑an は絶対収束するという。∑an は収束するが ∑∣an∣ は発散するとき、∑an は条件収束するという。
定理 7.2(絶対収束すれば収束する)✓
∑n=1∞∣an∣ が収束するならば ∑n=1∞an も収束し、さらに
n=1∑∞an≤n=1∑∞∣an∣が成り立つ。
証明(定理 7.2)
ε>0 とします。∑∣an∣ は収束するので、定理 3.8 より、ある N があって m>n≥N のとき ∑k=n+1m∣ak∣<ε です(∣ak∣≥0 なので絶対値記号は外れています)。三角不等式より
k=n+1∑mak≤k=n+1∑m∣ak∣<εとなるので、∑an もコーシーの判定条件を満たし、定理 3.8 より収束します。
不等式については、各 N で ∣SN∣=∑n≤Nan≤∑n≤N∣an∣≤∑n=1∞∣an∣(最後は 命題 4.1 より部分和が和以下)であり、N→∞ とすると絶対値の連続性から ∣SN∣→∣∑an∣、不等号は極限で保たれるので結論を得ます。
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逆は成り立ちません。それが条件収束であり、典型例は交項級数です。
定理 7.3(ライプニッツの交項級数判定法)✓
数列 (bn)n≥1 が、すべての n で bn≥0、単調減少(bn+1≤bn)、かつ limn→∞bn=0 を満たすとする。このとき交項級数
n=1∑∞(−1)n−1bn=b1−b2+b3−b4+⋯は収束する。さらにその和を S、第 N 部分和を SN とすると、すべての N について
∣S−SN∣≤bN+1が成り立ち、S は SN と SN+1 の間にある。
証明(定理 7.3)
偶数番目と奇数番目の部分和を別々に見ます。
S2m+2−S2m=b2m+1−b2m+2≥0,S2m+1−S2m−1=−b2m+b2m+1≤0(どちらも単調減少性 bn+1≤bn を使いました)。よって (S2m)m は単調増加、(S2m−1)m は単調減少です。また S2m+1−S2m=b2m+1≥0 なので
S2≤S4≤⋯≤S2m≤S2m+1≤⋯≤S3≤S1となり、(S2m) は S1 で上に有界、(S2m−1) は S2 で下に有界です。定理 2.1(下に有界な単調減少列については符号を変えて適用)より両者は収束します。極限をそれぞれ S′、S′′ とすると、S2m+1−S2m=b2m+1→0 より S′′−S′=0、すなわち S′=S′′=:S です。偶数番と奇数番の部分和が同じ値に収束するので、(SN) 全体が S に収束します。
誤差評価を示します。上の並びから、S は任意の m について S2m と S2m+1 の間にあり、また S2m+1 と S2m+2 の間にあります。一般に S は SN と SN+1 の間にあるので
∣S−SN∣≤∣SN+1−SN∣=bN+1です。
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例 7.4(交項調和級数は条件収束する)
n=1∑∞n(−1)n−1=1−21+31−41+⋯ を考えます。bn=n1 は正で単調減少、0 に収束するので 定理 7.3 より収束します。一方 ∑n(−1)n−1=∑n1 は発散します(例 3.7)。したがってこの級数は条件収束します。定理 7.2 の逆が成り立たないことの実例です。
和は log2 です。偶数番の部分和を調和数 HN=∑n≤Nn1 で書くと
S2m=n=1∑2mn1−2k=1∑m2k1=H2m−Hmであり(負の項をいったん足してから 2 倍を引きました)、HN=logN+γ+o(1) を使えば S2m→log2 です。テイラー展開 log(1+x)=∑n≥1n(−1)n−1xn(log(1+x) のマクローリン展開(例 6.3)[平均値の定理とテイラーの定理])に x=1 を代入した値でもあります。
収束は遅い。m=5 すなわち N=10 では S10=H10−H5=2.9289…−2.2833…=0.64563… で、log2=0.69314… との差は約 0.0475。定理 7.3 の評価 ∣S−S10∣≤b11=111=0.0909 と整合しています。誤差を 10−6 以下にするには、この評価では N+11≤10−6、つまり 106−1 項を要します。
条件収束の級数は、絶対収束の級数とは質的に違います。その違いが最もはっきり出るのが、項の並べ替えです。
定義 7.5(級数の並べ替え)↗
σ:N→N を全単射とするとき、級数 ∑n=1∞aσ(n) を ∑n=1∞an の並べ替え(再配列)という。ここで N={1,2,…} とする。
定理 7.6(リーマンの再配列定理)✓
∑n=1∞an が条件収束するとする。このとき任意の実数 α に対して、ある全単射 σ:N→N が存在して
n=1∑∞aσ(n)=αとなる。α=+∞、α=−∞ に発散させる並べ替えや、部分和が振動する並べ替えも存在する。
絶対収束が効くもう一つの場面が、級数どうしの掛け算です。有限和なら (a0+a1+⋯)(b0+b1+⋯) を展開して、添字の和 k+l=n ごとにまとめ直せます。無限和でこれが許されるのは、絶対収束のときです。指数関数の指数法則 exp(z+w)=expzexpw はこの定理から出るので(複素数)、項が複素数の場合まで含めて述べます。
複素数の数列 (zn) が z に収束するとは、∣zn−z∣→0(∣⋅∣ は複素数の絶対値。定義 3.1[複素数と複素平面])となることとし、複素数の級数の収束・和・絶対収束も 定義 3.1、定義 7.1 と同じ言葉で定めます。項が実数なら、これまでの定義と一致します。
補題 7.8(複素数の数列・級数の基本性質)✓
(zn)、(wn) を複素数の数列、z,w∈C とする。
- zn→z であることと、Rezn→Rez かつ Imzn→Imz であることは同値である。
- zn→z、wn→w ならば znwn→zw。
- 複素数の級数 ∑an について ∑∣an∣ が収束するならば、∑an も収束し、∣∑an∣≤∑∣an∣ である。
証明(補題 7.8)
以下、三角不等式・∣Reζ∣≤∣ζ∣・∣Imζ∣≤∣ζ∣・逆向きの三角不等式は 定理 3.4[複素数と複素平面] (1)(2)(3)、∣ζη∣=∣ζ∣∣η∣ は 命題 3.2[複素数と複素平面] (4) です。
(1) zn→z なら ∣Rezn−Rez∣=∣Re(zn−z)∣≤∣zn−z∣→0 で、虚部も同様です。逆に実部・虚部が収束すれば、ζ=zn−z に ∣ζ∣=∣Reζ+iImζ∣≤∣Reζ∣+∣i∣∣Imζ∣=∣Reζ∣+∣Imζ∣ を使って ∣zn−z∣→0 です。
(2) ある番号から先で ∣zn−z∣<1 なので ∣zn∣≤∣z∣+1 です。そこで
∣znwn−zw∣=∣zn(wn−w)+w(zn−z)∣≤(∣z∣+1)∣wn−w∣+∣w∣∣zn−z∣→0です。
(3) ∣Rean∣≤∣an∣ なので 定理 4.2 (1) より ∑∣Rean∣ は収束し、定理 7.2 より実数の級数 ∑Rean は収束します。虚部も同様です。部分和 SN=∑n≤Nan の実部・虚部はそれぞれ ∑n≤NRean、∑n≤NIman なので収束し、(1) より (SN) は収束します。極限を S とします。不等式は、三角不等式と 命題 4.1 から ∣SN∣≤∑n≤N∣an∣≤∑n∣an∣ で、∣SN∣−∣S∣≤∣SN−S∣→0 なので、極限を取って(命題 2.2[数列と関数の極限] (5))∣S∣≤∑∣an∣ です。
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定理 7.9(絶対収束する級数のコーシー積)✓
(an)n≥0、(bn)n≥0 を実数または複素数の数列とし、∑n=0∞∣an∣ と ∑n=0∞∣bn∣ がともに収束するとする。
cn=k=0∑nakbn−k=a0bn+a1bn−1+⋯+anb0とおくと(この級数 ∑cn をコーシー積という)、∑n=0∞cn は絶対収束し、
n=0∑∞cn=(n=0∑∞an)(n=0∑∞bn)が成り立つ。
証明は二段です。まず格子のうち三角形が正方形に含まれることから絶対収束を示し、次に角の部分の和が N→∞ で 0 に近づくことから和の値を示します。添字 (k,l) の格子で見ると、CN は対角線 k+l≤N の三角形の和、ANBN は正方形 k,l≤N の和で、差は正方形から三角形を除いた角の部分です。
N = 4 の場合。塗りつぶした点が k + l ≤ N(C_N の項)、白抜きの点が k, l ≤ N かつ k + l > N(A_N B_N − C_N の項)
証明(定理 7.9)
α=∑∣an∣、β=∑∣bn∣ とし、補題 7.8 (3) により ∑an=A、∑bn=B が存在します(項が実数なら 定理 7.2)。部分和を AN=∑k=0Nak、BN=∑l=0Nbl、CN=∑n=0Ncn とします。
絶対収束。 CN は、k,l≥0、k+l≤N を満たす組 (k,l) についての akbl の和です(cn は k+l=n の組の和)。三角不等式(定理 3.4[複素数と複素平面] (2))と ∣akbl∣=∣ak∣∣bl∣(命題 3.2[複素数と複素平面] (4))より
n=0∑N∣cn∣≤k+l≤N∑∣ak∣∣bl∣≤k=0∑Nl=0∑N∣ak∣∣bl∣=(k=0∑N∣ak∣)(l=0∑N∣bl∣)≤αβです(2 番目の不等号は、k+l≤N の組が k,l≤N の組に含まれ、項が 0 以上だから。最後は 命題 4.1)。部分和が上に有界なので、命題 4.1 より ∑∣cn∣ は収束します。
和の値。 ANBN=∑k=0N∑l=0Nakbl から CN を引くと、k,l≤N かつ k+l>N の組の和
ANBN−CN=k,l≤Nk+l>N∑akblが残ります。k+l>N なら k>N/2 または l>N/2 なので、τa(M)=∑k>M∣ak∣、τb(M)=∑l>M∣bl∣(収束する級数の尾部)とおくと
∣ANBN−CN∣≤(N/2<k≤N∑∣ak∣)(l≤N∑∣bl∣)+(k≤N∑∣ak∣)(N/2<l≤N∑∣bl∣)≤τa(N/2)β+ατb(N/2)です。τa(M)=α−∑k≤M∣ak∣→0(M→∞)で τb も同様なので、ANBN−CN→0 です。一方 補題 7.8 (2) より ANBN→AB なので、CN=ANBN−(ANBN−CN)→AB です。
∎
条件は「両方とも絶対収束」より弱めることができ、一方が絶対収束し他方が収束すればコーシー積は収束して和は積になります(メルテンスの定理)。両方が条件収束だと、コーシー積は発散することがあります。たとえば an=bn=n+1(−1)n は 定理 7.3 で収束しますが、∣cn∣=∑k=0n(k+1)(n−k+1)1≥∑k=0n(n+2)/21=n+22(n+1)(相加平均・相乗平均の不等式)は 0 に収束しないので、命題 3.5 よりコーシー積は発散します。
注意 7.7 で予告した、並べ替えについての絶対収束の効き目を証明します。正項級数については、発散する場合にも和を +∞ と書くことにします。命題 4.1 により、正項級数の和は収束・発散のどちらの場合も部分和の上限 supNSN∈[0,+∞] に一致します。
定理 7.10(ディリクレの定理(絶対収束する級数の並べ替え))✓
(an)n≥1 を実数または複素数の数列、σ:N→N を全単射とする。
- すべての n で an≥0(実数)ならば、∑n=1∞aσ(n)=∑n=1∞an が [0,+∞] の値として成り立つ。とくに一方が収束することと他方が収束することは同値である。
- ∑n=1∞an が絶対収束するならば、並べ替え ∑n=1∞aσ(n) も絶対収束し、
n=1∑∞∣aσ(n)∣=n=1∑∞∣an∣,n=1∑∞aσ(n)=n=1∑∞anが成り立つ。
証明(定理 7.10)
部分和を SM=∑k=1Mak、TN=∑n=1Naσ(n) とし、FN={σ(1),…,σ(N)} とおきます。σ は単射なので FN は N 個の相異なる番号からなり、TN=∑k∈FNak です(有限和なので足す順序によりません)。
(1) MN=maxFN とすると FN⊂{1,…,MN} で、残りの項も 0 以上なので TN≤SMN≤supMSM です。よって supNTN≤supMSM です。逆向きは、bn=aσ(n) とおくと ak=bσ−1(k)、つまり ∑ak は ∑bn の全単射 σ−1 による並べ替えなので、同じ議論で supMSM≤supNTN です。正項級数の和は部分和の上限なので(命題 4.1)、両者の和は [0,+∞] の値として等しく、一方が有限(収束)であることと他方が有限であることは同値です。
(2) (1) を ∣an∣ に使うと ∑∣aσ(n)∣=∑∣an∣<∞ なので、並べ替えも絶対収束し、補題 7.8 (3)(項が実数なら 定理 7.2)により ∑an、∑aσ(n) はともに収束します。和をそれぞれ S、T とし、S=T を示します。
α=∑∣ak∣ とし、尾部を τ(K)=α−∑k≤K∣ak∣ とおきます。τ(K)→0(K→∞)で、τ は K について単調減少です。K<M ならば、命題 4.1 より ∑k≤M∣ak∣≤α なので
k=K+1∑M∣ak∣=k≤M∑∣ak∣−k≤K∑∣ak∣≤τ(K)です。とくに M′>M なら三角不等式から ∣SM′−SM∣≤∑k=M+1M′∣ak∣≤τ(M) で、M′→∞ とすると ∣SM′−SM∣−∣S−SM∣≤∣SM′−S∣→0 なので、極限を取って(命題 2.2[数列と関数の極限] (5))∣S−SM∣≤τ(M) です。
ε>0 とし、τ(K)<ε となる K を取ります。N0=max{σ−1(1),…,σ−1(K)} とおくと、N≥N0 では {1,…,K}⊂FN です。このとき M=maxFN(≥K)とすると
TN−SM=k∈FN∑ak−k=1∑Mak=−k∈{1,…,M}∖FN∑akで、右辺に現れる k はどれも K<k≤M を満たします(k≤K の番号はすべて FN に入っているから)。したがって
∣TN−S∣≤∣TN−SM∣+∣SM−S∣≤k=K+1∑M∣ak∣+τ(M)≤τ(K)+τ(K)<2εです(M≥K と τ の単調性を使いました)。N≥N0 で ∣TN−S∣<2ε なので TN→S、すなわち T=S です。
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この定理によって、絶対収束する級数については「どの順に足したか」を気にせずに和を語れます。応用でよく使うのは、添字が二つある級数を行ごと・列ごと・対角線ごとなど好きなまとまりで足してよい、という形です。有限集合 F⊂N2 と二重に添字付けられた数 (akl)k,l≥1 に対し、aF=∑(k,l)∈Fakl(有限和)と書きます。I⊂N2 が可算無限集合(自然数と一対一に対応づけられる無限集合)のときは、全単射 ψ:N→I を一つ取って級数 ∑m=1∞aψ(m) を考えます。N2 自身から N への全単射の例は、対角線 k+l=d(d=2,3,…)の順に、各対角線の中では k の小さい順に番号を振る (k,l)↦2(k+l−2)(k+l−1)+k です(k+l<d の組はちょうど 1+2+⋯+(d−2) 個あるから)。
次の定理は条件が長いですが、言っていることは二つです。(1) 項が 0 以上なら、行ごと・列ごと・どんな順でも和は同じです(+∞ も含めて)。(2) 絶対収束するなら、どのようにまとめて足しても和は同じです。
定理 7.11(二重級数の和の順序交換)✓
(akl)k,l≥1 を実数または複素数の族とする。
- すべての k,l で akl≥0(実数)ならば、[0,+∞] の値として
k=1∑∞(l=1∑∞akl)=l=1∑∞(k=1∑∞akl)=FsupaFが成り立つ(sup は有限集合 F⊂N2 にわたる。内側の和が +∞ になる場合も、外側の和は部分和の上限と約束する)。さらに任意の全単射 φ:N→N2 について ∑n=1∞aφ(n)=supFaF である。
2. R=supF∑(k,l)∈F∣akl∣<∞ と仮定する(1 により、これは ∑k∑l∣akl∣<∞ とも ∑l∑k∣akl∣<∞ とも同値)。このとき、任意の全単射 φ:N→N2 について ∑naφ(n) は絶対収束し、その和 S は φ によらない。さらに N2 を有限集合または可算無限集合 I1,I2,…(空でもよい)の互いに素な合併に分けると、各 cj=∑(k,l)∈Ijakl(Ij が無限なら上の意味の級数)は絶対収束して並べ方によらず定まり、∑jcj も絶対収束して ∑j=1∞cj=S である。とくに
k=1∑∞(l=1∑∞akl)=l=1∑∞(k=1∑∞akl)=Sであり、内側の級数はどれも絶対収束する。
証明(定理 7.11)
(1) Σ∗=supFaF∈[0,+∞] とおき、行の和を rk=∑lakl=supL∑l≤Lakl∈[0,+∞] とします(命題 4.1)。
まず ∑krk≤Σ∗ を示します。K を固定すると、∑k≤K∑l≤Lakl=aF(F={1,…,K}×{1,…,L})≤Σ∗ です。L→∞ とします。r1,…,rK がすべて有限なら、各 ∑l≤Lakl は rk に収束するので、和の極限は極限の和で(命題 2.2[数列と関数の極限] (3))、不等号は極限で保たれ(同 (5))、∑k≤Krk≤Σ∗ です。ある rk が +∞ なら、aF≥∑l≤Lakl は L についていくらでも大きくなるので Σ∗=+∞ で、やはり ∑k≤Krk≤Σ∗ です。K について上限を取れば ∑krk≤Σ∗ です。
逆に、有限集合 F は十分大きい K,L について {1,…,K}×{1,…,L} に含まれ、項は 0 以上なので aF≤∑k≤K∑l≤Lakl≤∑k≤Krk≤∑krk です。よって Σ∗≤∑krk です。列の和についても k と l の役割を入れ替えれば同じです。
全単射 φ については、部分和 ∑n≤Naφ(n)=aφ({1,…,N})≤Σ∗ であり、逆に有限集合 F は N≥maxφ−1(F) なら φ({1,…,N}) に含まれるので aF≤∑n≤Naφ(n) です。よって部分和の上限は Σ∗ で、命題 4.1 よりこれが和です。
(2) (1) を ∣akl∣ に使えば、R<∞ と ∑k∑l∣akl∣<∞、∑l∑k∣akl∣<∞ が同値であることがわかります。
全単射に沿った和。 (1) を ∣akl∣ に使うと ∑n∣aφ(n)∣=R<∞ なので、∑naφ(n) は絶対収束し、補題 7.8 (3) により和 Sφ を持ちます。別の全単射 φ′ を取ると σ=φ−1∘φ′ は N の全単射で aφ′(n)=aφ(σ(n)) ですから、定理 7.10 (2) より Sφ′=Sφ です。この共通の値を S とします。
各まとまりの和。 Ij が有限集合なら cj=aIj(空なら 0)です。Ij が可算無限なら全単射 ψj:N→Ij を取ります。∑m≤M∣aψj(m)∣ は有限集合 ψj({1,…,M}) 上の ∣akl∣ の和なので R 以下で、命題 4.1 より ∑maψj(m) は絶対収束します。全単射の取り方によらないことは、上と同じく 定理 7.10 (2) からわかります。いずれの場合も、ρj=∑(k,l)∈Ij∣akl∣ とおくと ∣cj∣≤ρj です(補題 7.8 (3))。
各 j について、Ij の最初の M 個の元(Ij が無限なら ψj({1,…,M})、有限なら M が Ij の元の個数以上のときは Ij 全体)を Gj(M) とします。M→∞ のとき aGj(M)→cj、∣a∣Gj(M)→ρj です(∣a∣G は G 上の ∣akl∣ の和)。J を固定すると ∑j≤J∣a∣Gj(M) は互いに素な有限集合の合併の上の和なので R 以下で、M→∞ として(命題 2.2[数列と関数の極限] (3)(5))∑j≤Jρj≤R です。よって ∑jρj は収束し、定理 4.2 (1) から ∑j∣cj∣ も収束します。すなわち ∑jcj は絶対収束します。
和の一致。 ε>0 とします。全単射 φ を一つ取ると ∑n∣aφ(n)∣ は収束するので、ある N1 で ∑n>N1∣aφ(n)∣<ε です。有限集合 B=φ({1,…,N1}) とおくと、B と交わらない有限集合 G について ∣a∣G<ε です。実際 G⊂φ({N1+1,…,N2}) となる N2 があり、∣a∣G≤∑N1<n≤N2∣aφ(n)∣<ε です。
まず ∣S−aB∣≤ε です。N≥N1 なら ∑n≤Naφ(n)−aB=aφ({N1+1,…,N}) の絶対値は三角不等式から ε 未満で、N→∞ とすれば(上の証明と同様に絶対値の連続性と 命題 2.2[数列と関数の極限] (5))∣S−aB∣≤ε です。
次に、B は有限集合なので、ある j0 について B⊂I1∪⋯∪Ij0 です。J≥j0 を固定し、M を十分大きく取って各 j≤J で Gj(M)⊃B∩Ij とすると、
j≤J∑aGj(M)−aB=aG,G=(j≤J⋃Gj(M))∖Bで、G は B と交わらない有限集合なので ∣aG∣≤∣a∣G<ε です。M→∞ とすると左辺は ∑j≤Jcj−aB に収束するので(補題 7.8 (1) と 命題 2.2[数列と関数の極限] (3))、∑j≤Jcj−aB≤ε です。
以上から J≥j0 で ∑j≤Jcj−S≤2ε となり、∑jcj=S です。
最後に、行への分割 Ik={k}×N を取れば ck=∑lakl なので ∑k∑lakl=S、列への分割 Il=N×{l} を取れば ∑l∑kakl=S です。
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添字の集合は N2 でなくても、全単射で N2 と対応づく集合({0,1,2,…}2、Z2、Z2∖{(0,0)}、N3 など)なら、その全単射で項を移して 定理 7.11 を使えます。可算無限集合はどれも N と、したがって N2 と全単射で対応するので、添字が三つ以上ある級数や ⨆kNk のような添字集合でもそのまま使えます。また、絶対収束する r 個の級数の積 (∑kxk(1))⋯(∑kxk(r)) が Nr 上の和 ∑xk1(1)⋯xkr(r)(絶対収束し、並べ方によらない)に等しいことは、r=2 の場合(akl=xkyl とおくと ∑k∑l∣xk∣∣yl∣=∑k∣xk∣∑l∣yl∣<∞ なので、2 の行への分割から ∑(k,l)xkyl=∑kxk∑lyl)を二つずつまとめて繰り返せば得られます。項が行列の場合は、成分ごとに使います。絶対収束の仮定を外すと結論が成り立たないことは、重積分 の 注意 5.9[重積分と累次積分] の例(行ごとに足すと 1、列ごとに足すと 0)が示しています。
最後に、判定法の使い分けを一枚にまとめます。上から順に試すのが標準的な段取りです。
収束判定の段取り
演習 8.1易
級数 n=1∑∞2nn が収束することを示し、その和を求めよ。
解答
収束:an=2nn>0 で
anan+1=2n+1n+1⋅n2n=2nn+1⟶21<1なので、定理 6.2(1) より収束します。
和:部分和 SN=∑n=1N2nn について
SN−21SN=n=1∑N2nn−n=2∑N+12nn−1=21+n=2∑N2nn−(n−1)−2N+1N=n=1∑N2n1−2N+1Nです。右辺の第 1 項は 1−2−N(等比数列の和)、第 2 項は N→∞ で 0 に収束します(2N+1≥2(N+1)N より 2N+1N≤N+12)。よって 21SN→1、すなわち ∑n=1∞2nn=2 です。
演習 8.2標準
級数 n=1∑∞n2logn の収束・発散を判定せよ。
解答
収束します。t>0 で logt≤t−1≤t が成り立つので(定理 6.1 の証明で確認しました)、t=n とおくと logn=2logn≤2n です。したがって n≥1 で
0≤n2logn≤n22n=n3/22.∑n−3/2 は 系 5.2 より s=23>1 なので収束し、定数倍しても収束します(注意 3.3)。よって 定理 4.2(1) より与えられた級数は収束します。
なお比判定法では anan+1=lognlog(n+1)⋅(n+1)2n2→1 となって判定できません。log を含む級数で比判定法が無力なのは 例 5.3 と同じ事情です。
演習 8.3標準
級数 n=1∑∞n(−1)n−1 が条件収束することを示せ。また、和 S を部分和 SN で誤差 10−2 以内に近似するために 定理 7.3 の評価が要求する N の最小値を求めよ。
解答
収束:bn=n1 は正、単調減少(n が増加するから)、0 に収束するので、定理 7.3 より収束します。
絶対収束しないこと:∑n(−1)n−1=∑n1/21 は 系 5.2 で s=21≤1 なので発散します。よって 定義 7.1 の意味で条件収束です。
項数:定理 7.3 より ∣S−SN∣≤bN+1=N+11 です。これが 10−2 以下であるためには N+1≥102、すなわち N+1≥104 ですから、N≥9999。最小値は N=9999 です。小数第 2 位を保証するのに 1 万項というのが条件収束級数の実情で、実際の数値計算では加速法(オイラー変換など)を併用します。
演習 8.4難
(an) は単調減少で、すべての n で an≥0 とする。∑n=1∞an が収束するならば limn→∞nan=0 であることを示せ。また、単調減少の仮定を外すと結論が成り立たないことを反例で示せ。
解答
ε>0 を任意に取ります。∑an は収束するので 定理 3.8 より、ある N1 があって m>n≥N1 のとき ∑k=n+1mak<3ε です。また 命題 3.5 より an→0 なので、ある N2 があって n≥N2 で an<3ε です。N=max(N1,N2) とします。
n≥N を取り、m=2n とします。区間 n+1≤k≤2n には n 個の項があり、単調減少性よりそのいずれも a2n 以上ですから
na2n≤k=n+1∑2nak<3ε,したがって2na2n<32ε<ε.奇数番号については、a2n+1≤a2n を使って
(2n+1)a2n+1≤(2n+1)a2n=2na2n+a2n<32ε+3ε=εとなります。m≥2N なる任意の m は m=2n または m=2n+1(n≥N)と書けるので、m≥2N のとき 0≤mam<ε。ε は任意だったので nan→0 です。
反例:an=n1(n が平方数のとき)、an=0(それ以外)と定めます。このとき ∑n=1∞an=∑k=1∞k21 は 系 5.2 より収束しますが、n=k2 に対して nan=1 なので nan は 0 に収束しません。(an) は単調減少ではありません。
- W. Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed., McGraw-Hill, 1976 — 第 3 章(数列と級数)。根判定法・比判定法の上極限による定式化、上極限と比の関係、再配列定理はこの章にまとまっています。
- T. M. Apostol, Mathematical Analysis, 2nd ed., Addison-Wesley, 1974 — 第 8 章(無限級数と無限積)。
- 高木貞治『解析概論』改訂第 3 版、岩波書店 — 無限級数・一様収束の章。日本語で書かれた古典で、判定法の扱いが詳しい。
- 杉浦光夫『解析入門 I』東京大学出版会、1980 — 実数の連続性から級数までを、ε-δ 論法を省かずに展開しています。
- A.-L. Cauchy, Cours d’analyse de l’École Royale Polytechnique, 1821 — 第 6 章。級数の和を部分和の極限として定義し、比判定法・根判定法を与えた原典です。
- B. Riemann, “Ueber die Darstellbarkeit einer Function durch eine trigonometrische Reihe”, 1854 年執筆・1867 年公刊 — 条件収束級数の再配列に関する定理が述べられています。
定理 7.6 を証明します。
証明(定理 7.6)
まず α が実数の場合について証明し、最後に ±∞ と振動の場合を扱います。
準備:pn=max(an,0)、qn=max(−an,0) とおくと、pn,qn≥0 で
an=pn−qn,∣an∣=pn+qnです。まず ∑pn=∑qn=∞ を示します。もし両方収束すれば ∑∣an∣=∑(pn+qn) が収束してしまい、条件収束の仮定(定義 7.1)に反します。もし片方だけ、たとえば ∑pn が収束し ∑qn が発散したとすると、部分和について ∑n≤Nan=∑n≤Npn−∑n≤Nqn の右辺は(有限の極限を持つ量)−(+∞ に発散する量)となって −∞ に発散し、∑an の収束に反します。∑qn だけが収束する場合も同様です。よって両方発散します。
また ∑an は収束するので 命題 3.5 より an→0 であり、0≤pn,qn≤∣an∣ から pn→0、qn→0 です。
構成:an>0 となる項を番号の順に P1,P2,… と並べ、an≤0 となる項の絶対値を番号の順に Q1,Q2,… と並べます。∑kPk=∑npn=∞、∑kQk=∑nqn=∞ なので、どちらの列も無限列です。
次のように交互に取り出します。まず P1+⋯+Pm1>α となる最小の m1 を取ります(∑Pk=∞ なので存在します)。次に
P1+⋯+Pm1−Q1−⋯−Qk1<αとなる最小の k1 を取ります(∑Qk=∞ なので存在します)。以下、P 側を α を超えるまで、Q 側を α を下回るまで、最小個数ずつ交互に足していきます。この操作は各項をちょうど一度ずつ使うので、全単射 σ を定めます。
収束の証明:この並べ替えの部分和を Tj と書きます。j 番目の切り替え直後の部分和を Uj とします。Uj が P 側の切り替え(α を超えた瞬間)なら、mj の最小性より一つ手前の部分和は α 以下ですから
0<Uj−α≤Pmjです。Q 側の切り替えなら同様に 0<α−Uj≤Qkj。いずれにせよ ∣Uj−α∣≤max(Pmj,Qkj) です。
さらに、Uj と Uj+1 の間の部分和は単調に Uj から Uj+1 へ動く(P 側の区間では増加、Q 側の区間では減少)ので、その区間のすべての部分和は Uj と Uj+1 の間、特に α からの距離が max(∣Uj−α∣,∣Uj+1−α∣) 以下の範囲にあります。
j→∞ のとき使われる添字 mj,kj は無限大に向かい、Pk→0、Qk→0(準備で示しました)なので ∣Uj−α∣→0 です。したがって部分和 Tn は α に収束します。すなわち ∑n=1∞aσ(n)=α です。
α=±∞ と振動の場合:α=+∞ のときは、第 j 回目の P 側で部分和が j を超えるまで P の項を足し、続く Q 側では Q の項を1 個だけ引く、という操作を繰り返します。∑Pk=∞ なので各回の P 側は有限個で終わり、P 側・Q 側とも無限回訪れるので、ここでもすべての項がちょうど一度ずつ使われます。第 j 回目の P 側が終わった後の部分和は j より大きく、次に j+1 を超えるまでの部分和は j−Qk(Qk はその間に引いた 1 項)以上です。Qk→0 なので Qk≤1 が十分先で成り立ち、部分和は j−1 以上、したがって +∞ に発散します。−∞ は P と Q の役割を入れ替えれば同じです。部分和を振動させるには、二つの実数 β<γ を取り、P 側では γ を超えるまで、Q 側では β を下回るまで足す、という実数の場合と同じ操作を行えば、部分和は γ を超える値と β を下回る値を無限回とるので収束しません。以上で証明が終わります。
∎ 執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 6 回(Claude Code)・最終 2026-10-12