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ハミルトン形式の力学:ルジャンドル変換が開く位相空間

対象読者: 本テーマ第 3〜4 章のラグランジュ形式と保存則(一般化運動量、循環座標)、学部 1 年の線形代数(行列・逆行列)と偏微分を学んだ人。位相空間の知識は仮定しません。

前提となる記事:対称性と保存則:ネーターの定理を「変換の生成子から保存量を作る機械」として読む

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物体の運動を式で表すとき、位置の変化の速さ(速度)の代わりに、運動の勢いを表す運動量を主役にして書き直すと、式の形がすっきりし、保存される量や、粒子がたくさんある系の扱い方が見えやすくなります。この記事では、その書き直しの手順と、そこから出てくる正準方程式・位相空間・ポアソン括弧を、調和振動子などの例を交えて順に導きます。読み終えると、運動方程式を 1 階の連立方程式として書き、位相空間の図で運動を眺められるようになります。

  • ラグランジアン L(q,q˙,t)L(q,\dot q,t) に対して 一般化運動量 pi=∂L/∂q˙ip_i = \partial L/\partial \dot q^i を定義し、q˙\dot q を pp に取り替える操作が ルジャンドル変換 です。これができるための条件は、LL の速度についてのヘッセ行列(速度で 2 回偏微分した係数を並べた行列)が正則であること(正則ラグランジアン)です。
  • こうして得られる ハミルトニアン H(q,p,t)=∑ipiq˙i−LH(q,p,t) = \sum_i p_i \dot q^i - L は、nn 本の 2 階方程式(オイラー・ラグランジュ方程式)を、2n2n 本の 1 階方程式(正準方程式)q˙i=∂H/∂pi\dot q^i = \partial H/\partial p_i、p˙i=−∂H/∂qi\dot p_i = -\partial H/\partial q^i に書き換えます。
  • HH がエネルギー T+VT+V に一致するのは、拘束が時間に陽に依存せず、力がポテンシャル V(q)V(q) から導かれるときだけです。回転する棒に通したビーズでは HH は保存しますがエネルギーではありません。
  • 座標 qq と運動量 pp を対等な軸とする 位相空間 の上では、力学系は 1 つのベクトル場の流れになります。この流れは発散ゼロなので体積を保ちます(リウヴィルの定理)。これが統計力学の出発点です。
  • 物理量の時間発展は ポアソン括弧 で F˙={F,H}+∂F/∂t\dot F = \lbrace F, H\rbrace + \partial F/\partial t と書けます。この構造をそのまま交換子(AB−BAAB-BA のこと)に置き換えたものが量子力学の正準量子化です。

1. 動機:なぜ速度を運動量に取り替えるのか

Section titled “1. 動機:なぜ速度を運動量に取り替えるのか”

ラグランジュ形式 は、配位空間の座標 q=(q1,…,qn)q = (q^1,\ldots,q^n) とその速度 q˙=(q˙1,…,q˙n)\dot q = (\dot q^1,\ldots,\dot q^n) を変数とし、作用 S=∫L dtS=\int L\,dt の停留条件から オイラー・ラグランジュ方程式(定理 3.4)[ラグランジュ形式の力学] を導きました。これは強力な形式で、拘束条件を座標の取り方に吸収でき、ネーターの定理(ネーターの定理(定理 4.1)[対称性と保存則])によって対称性と保存則が直結します。

それでも 2 つの不満が残ります。

第一に、方程式が qq について 2 階 であることです。nn 自由度なら nn 本の 2 階方程式で、初期条件は q(0)q(0) と q˙(0)\dot q(0) の 2n2n 個必要です。ところが方程式の側は nn 本しかない。数学的には、常微分方程式論・数値計算・力学系の理論のいずれもが「1 階の連立系 ξ˙=X(ξ)\dot{\boldsymbol{\xi}} = \boldsymbol{X}(\boldsymbol{\xi})」を標準形とします。2n2n 個の初期条件があるなら、2n2n 本の 1 階方程式で書くのが自然でしょう。

第二に、qq と q˙\dot q が対等でない ことです。q˙\dot q は qq の時間微分という従属物であり、独立変数のように扱うのは形式上の便宜にすぎません。ところが保存則を見ると、対等に見える組が現れます。ネーターの定理が与える保存量は、たとえば並進対称性なら運動量 pp、回転対称性なら角運動量です。そして 中心力の問題 では、角運動量 ℓ\ell を保存量として固定し、動径方向の運動だけを取り出す、という手続きが決定的に有効でした(動径方向の一次元問題への帰着(命題 4.2)[惑星の運動と中心力])。このとき私たちは実質的に「θ˙\dot\theta を消して ℓ\ell を変数に採用」しています。

この 2 つの不満は、同じ 1 つの操作で解消します。速度 q˙\dot q を捨て、一般化運動量 pp を独立変数に採用する のです。ハミルトンが 1834–35 年の論文で導入したこの形式は、qq と pp を対等な座標軸とする 2n2n 次元の空間(位相空間)を舞台とし、そこに 1 階の方程式系を与えます。

この書き換えは単なる記法の変更ではありません。位相空間の上では、初期条件の分布が時間とともにどう流れるかを論じられます。これが統計力学のアンサンブルの考え方です。また qq と pp を対等に扱う代数構造(ポアソン括弧)は、そのまま量子力学の交換関係に持ち上がります。第 6 章で扱う 正準変換 も、この形式でこそ意味を持ちます。

3 つの形式の関係。ルジャンドル変換が速度の空間から位相空間へ渡す。

2. 準備:ラグランジュ形式の復習と記号

Section titled “2. 準備:ラグランジュ形式の復習と記号”

以下、自由度 nn の系を考え、一般化座標を q=(q1,…,qn)q = (q^1,\ldots,q^n)、その時間微分を q˙=(q˙1,…,q˙n)\dot q = (\dot q^1,\ldots,\dot q^n) と書きます。ラグランジアン L(q,q˙,t)L(q,\dot q,t) は C2C^2 級とし、和の記号 ∑i\sum_i は i=1,…,ni=1,\ldots,n にわたるものとします。

作用 S[q]=∫t1t2L(q(t),q˙(t),t) dtS[q] = \int_{t_1}^{t_2} L(q(t),\dot q(t),t)\,dt の停留条件から、オイラー・ラグランジュ方程式

ddt∂L∂q˙i−∂L∂qi=0(i=1,…,n)\frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot q^i} - \frac{\partial L}{\partial q^i} = 0 \qquad (i=1,\ldots,n)

が得られました。以下ではこの方程式と、多変数関数の全微分・偏微分(偏微分係数と偏導関数(定義 3.1)[多変数関数の微分と偏微分])の記法を既知とします。

添字の上下は区別しますが、本記事では座標を上付き qiq^i、運動量を下付き pip_i と書く慣習に従うだけで、計量による上げ下げは行いません。

3. 一般化運動量とルジャンドル変換

Section titled “3. 一般化運動量とルジャンドル変換”

定義 3.1(一般化運動量(正準運動量))↗

ラグランジアン L(q,q˙,t)L(q,\dot q,t) に対して、座標 qiq^i に共役な 一般化運動量(正準運動量)を

pi(q,q˙,t):=∂L∂q˙i(q,q˙,t)p_i(q,\dot q,t) := \frac{\partial L}{\partial \dot q^i}(q,\dot q,t)

で定義する。

この量はすでにオイラー・ラグランジュ方程式の中に現れています。実際、方程式は p˙i=∂L/∂qi\dot p_i = \partial L/\partial q^i と書き直せます。またネーターの定理の文脈では、LL が qkq^k を含まないとき pkp_k が保存量になりました。つまり pip_i は「保存則が現れる変数」であり、力学の主役として扱うだけの理由があります。

注意すべきは、pip_i が必ずしも「質量 × 速度」ではないことです。極座標では pθ=mr2θ˙p_\theta = m r^2\dot\theta(角運動量)ですし、電磁場中の荷電粒子では p=mv+eA\boldsymbol p = m\boldsymbol v + e\boldsymbol A となります(ee は電荷)(例 6.3)。一般化運動量は座標の取り方とラグランジアンに依存して決まる量です。

q˙\dot q を独立変数から降ろし、pp を昇格させたい。ここで必要なのは、関数の「変数の取り替え」を、情報を失わずに行う手続きです。それが ルジャンドル変換 です。

1 変数で考えます。C2C^2 級で f′′(v)>0f''(v) > 0 を満たす(したがって狭義凸な)関数 f(v)f(v) が与えられたとき、その導関数 p=f′(v)p = f'(v) は狭義単調増加なので、vv と pp は 1 対 1 に対応します。そこで

f∗(p):=sup⁡v (pv−f(v))f^{*}(p) := \sup_{v}\ \bigl( p v - f(v) \bigr)

と定めます。上限を与える vv は ∂v(pv−f(v))=p−f′(v)=0\partial_v(pv - f(v)) = p - f'(v) = 0、すなわち p=f′(v)p = f'(v) で決まり、凸性からこれが最大値です。幾何的には、ff のグラフに傾き pp の接線を引いたときの yy 切片の符号を反転させた量が f∗(p)f^{*}(p) です。関数を「点の集まり」ではなく「接線の集まり」として記述し直す操作、と言い換えてもよいでしょう。

例 3.2(2 次関数のルジャンドル変換)

f(v)=12mv2f(v) = \tfrac12 m v^2(m>0m > 0)とします。p=f′(v)=mvp = f'(v) = mv より v=p/mv = p/m で、

f∗(p)=p⋅pm−12m(pm)2=p2m−p22m=p22m.f^{*}(p) = p\cdot\frac{p}{m} - \frac{1}{2}m\left(\frac{p}{m}\right)^{2} = \frac{p^2}{m} - \frac{p^2}{2m} = \frac{p^2}{2m}.

運動エネルギーの速度表示 12mv2\tfrac12 mv^2 が、運動量表示 p2/2mp^2/2m に移りました。さらに f∗f^{*} をもう一度変換すると、v=(f∗)′(p)=p/mv = (f^{*})'(p) = p/m から f∗∗(v)=vp−p2/2m=mv2−mv2/2=12mv2=f(v)f^{**}(v) = vp - p^2/2m = mv^2 - mv^2/2 = \tfrac12 mv^2 = f(v) となり、元に戻ります。ルジャンドル変換が情報を失わない(対合的である)ことの、最も簡単な確認です。

多変数では、凸性の代わりに次の非退化条件を課すのが実用的です。

定義 3.3(正則ラグランジアン)↗

点 (q,q˙,t)(q,\dot q,t) において、n×nn\times n 行列

Wij(q,q˙,t):=∂2L∂q˙i ∂q˙j(q,q˙,t)W_{ij}(q,\dot q,t) := \frac{\partial^2 L}{\partial \dot q^i\,\partial \dot q^j}(q,\dot q,t)

(LL の速度に関するヘッセ行列)が正則、すなわち det⁡W≠0\det W \ne 0 であるとき、LL はその点で 正則 であるという。ある領域の各点で正則なとき、その領域で正則ラグランジアンという。

次の命題の狙いは、速度 q˙\dot q を運動量 pp から一意に復元できると保証することです。証明では、変数の取り替え (q,q˙,t)↦(q,p,t)(q,\dot q,t)\mapsto(q,p,t) のヤコビ行列を作ります。qq と tt は取り替えで変わらないので、第 1 行と第 3 行には対角にしか成分がなく、行列式は第 2 行のブロック ∂p/∂q˙\partial p/\partial\dot q の行列式、つまり det⁡W\det W だけで決まります。

命題 3.4(速度から運動量への変数変換)✓

LL が C2C^2 級で、点 (q0,q˙0,t0)(q_0,\dot q_0,t_0) において 正則(定義 3.3) であるとする。pi=∂L/∂q˙ip_i = \partial L/\partial\dot q^i で定まる写像

Φ:(q,q˙,t)⟼(q,  p(q,q˙,t),  t)\Phi:(q,\dot q,t)\longmapsto (q,\;p(q,\dot q,t),\;t)

は、(q0,q˙0,t0)(q_0,\dot q_0,t_0) のある近傍から (q0,p0,t0)(q_0,p_0,t_0)(ただし p0=p(q0,q˙0,t0)p_0 = p(q_0,\dot q_0,t_0))のある近傍への C1C^1 級微分同相である。とくに、その近傍で速度は

q˙i=vi(q,p,t)\dot q^i = v^i(q,p,t)

と C1C^1 級関数として一意に表される。

証明(命題 3.4)

Φ\Phi の (q,q˙,t)(q,\dot q,t) に関するヤコビ行列を、変数を (q,q˙,t)(q,\dot q,t) の順に並べてブロックで書きます。Φ\Phi の第 1 成分と第 3 成分は恒等写像なので、

DΦ=(InO0∂p∂q∂p∂q˙∂p∂t0O1)D\Phi = \begin{pmatrix} I_n & O & 0\\[2pt] \dfrac{\partial p}{\partial q} & \dfrac{\partial p}{\partial \dot q} & \dfrac{\partial p}{\partial t}\\[6pt] 0 & O & 1 \end{pmatrix}

という下三角に近い形になります。行列式は対角ブロックの行列式の積で、

det⁡DΦ=det⁡In⋅det⁡ ⁣(∂p∂q˙)⋅1=det⁡W.\det D\Phi = \det I_n \cdot \det\!\left(\frac{\partial p}{\partial \dot q}\right)\cdot 1 = \det W .

ここで ∂pi/∂q˙j=∂2L/∂q˙j∂q˙i=Wij\partial p_i/\partial \dot q^j = \partial^2 L/\partial \dot q^j\partial\dot q^i = W_{ij} を使いました(LL が C2C^2 級なので シュワルツの定理(定理 9.9)[多変数関数の微分と偏微分] により混合偏微分は順序によらず、WW は対称行列です)。仮定 det⁡W≠0\det W \ne 0 より det⁡DΦ≠0\det D\Phi\ne 0 なので、逆関数定理が適用でき、Φ\Phi は局所的に C1C^1 級の逆写像をもちます。その逆写像の第 2 成分が q˙i=vi(q,p,t)\dot q^i = v^i(q,p,t) です。

注意 3.5

正則性は本質的な仮定です。たとえば LL が速度について 1 次の項しか持たない場合、W=OW = O となり pp は q˙\dot q に依存しません。このとき pp と q˙\dot q の対応は 1 対 1 ではなく、以下の議論は成り立ちません。こうした系を 特異系 と呼び、ゲージ場(電磁場そのもののラグランジアンなど)がその典型です。電磁場の中を動く荷電粒子のラグランジアンは W=mIW = mI で正則なので、これには当たりません(例 6.3)。特異系にはディラックによる拘束系の正準形式という別の処方が必要で、本記事の範囲外とします。以下では常に正則性を仮定します。

定義 3.6(ハミルトニアン)↗

L(q,q˙,t)L(q,\dot q,t) を 正則ラグランジアン(定義 3.3) とし、命題 3.4 により定まる q˙i=vi(q,p,t)\dot q^i = v^i(q,p,t) を用いて、

H(q,p,t):=∑i=1npi vi(q,p,t)−L(q, v(q,p,t), t)H(q,p,t) := \sum_{i=1}^{n} p_i\, v^i(q,p,t) - L\bigl(q,\,v(q,p,t),\,t\bigr)

と定める。HH を系の ハミルトニアン と呼ぶ。

定義式の右辺は、いったん ∑ipiq˙i−L(q,q˙,t)\sum_i p_i\dot q^i - L(q,\dot q,t) を作ってから、q˙\dot q をすべて (q,p,t)(q,p,t) の関数で置き換えたものです。この「置き換えを最後に行う」という手順が重要で、HH の独立変数はあくまで (q,p,t)(q,p,t) です。

定義 4.1(位相空間と正準座標)↗

2n2n 個の変数の組 (q1,…,qn,p1,…,pn)(q^1,\ldots,q^n,p_1,\ldots,p_n) が動く 2n2n 次元の空間を系の 位相空間 といい、この座標の組を 正準座標 という。位相空間の 1 点は系の運動状態を完全に指定する。

定理 4.2(ハミルトンの正準方程式)✓

L(q,q˙,t)L(q,\dot q,t) を C2C^2 級の 正則ラグランジアン(定義 3.3) とし、H(q,p,t)H(q,p,t) を そのハミルトニアン(定義 3.6) とする。曲線 t↦q(t)t\mapsto q(t) がオイラー・ラグランジュ方程式

ddt∂L∂q˙i−∂L∂qi=0(i=1,…,n)\frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot q^i} - \frac{\partial L}{\partial q^i} = 0 \qquad (i=1,\ldots,n)

を満たすことと、pi(t):=∂L/∂q˙i(q(t),q˙(t),t)p_i(t) := \partial L/\partial\dot q^i\bigl(q(t),\dot q(t),t\bigr) とおいた曲線 t↦(q(t),p(t))t\mapsto (q(t),p(t)) が

q˙i=∂H∂pi,p˙i=−∂H∂qi(i=1,…,n)\dot q^i = \frac{\partial H}{\partial p_i}, \qquad \dot p_i = -\frac{\partial H}{\partial q^i} \qquad (i=1,\ldots,n)

を満たすことは同値である。さらに、恒等的に

∂H∂t=−∂L∂t\frac{\partial H}{\partial t} = -\frac{\partial L}{\partial t}

が成り立つ。

証明の方針は、HH の全微分を 2 通りに書いて係数を比べることです。1 つ目は HH を (q,p,t)(q,p,t) の関数と見た全微分、2 つ目は定義式 ∑ipiq˙i−L\sum_i p_i\dot q^i - L を q,q˙,p,tq,\dot q,p,t のすべてについて動かした全微分です。後者では q˙\dot q の微小変化にかかる項が打ち消し合う(ルジャンドル変換の要点)ので、q˙\dot q を含まない関係式が残り、それが正準方程式を与えます。

証明(定理 4.2)

第 1 段:全微分を 2 通りに書く。 HH を (q,p,t)(q,p,t) の関数として全微分すると、定義により

dH=∑i∂H∂qi dqi+∑i∂H∂pi dpi+∂H∂t dt.dH = \sum_i \frac{\partial H}{\partial q^i}\,dq^i + \sum_i \frac{\partial H}{\partial p_i}\,dp_i + \frac{\partial H}{\partial t}\,dt .

一方、定義 3.6 の右辺 ∑ipiq˙i−L(q,q˙,t)\sum_i p_i \dot q^i - L(q,\dot q,t) を、q,q˙,p,tq,\dot q,p,t すべてを動かして形式的に全微分すると

dH=∑iq˙i dpi+∑ipi dq˙i−∑i∂L∂qi dqi−∑i∂L∂q˙i dq˙i−∂L∂t dt.dH = \sum_i \dot q^i\,dp_i + \sum_i p_i\,d\dot q^i - \sum_i \frac{\partial L}{\partial q^i}\,dq^i - \sum_i \frac{\partial L}{\partial \dot q^i}\,d\dot q^i - \frac{\partial L}{\partial t}\,dt .

ここで 定義 3.1 により pi=∂L/∂q˙ip_i = \partial L/\partial\dot q^i ですから、dq˙id\dot q^i を含む 2 つの項

∑ipi dq˙i−∑i∂L∂q˙i dq˙i=∑i(pi−∂L∂q˙i)dq˙i=0\sum_i p_i\,d\dot q^i - \sum_i \frac{\partial L}{\partial \dot q^i}\,d\dot q^i = \sum_i\left(p_i - \frac{\partial L}{\partial \dot q^i}\right) d\dot q^i = 0

はちょうど打ち消し合います。これがルジャンドル変換の要点です。q˙\dot q の微小変化は HH の変化に寄与しないので、残るのは

dH=∑iq˙i dpi−∑i∂L∂qi dqi−∂L∂t dtdH = \sum_i \dot q^i\,dp_i - \sum_i \frac{\partial L}{\partial q^i}\,dq^i - \frac{\partial L}{\partial t}\,dt

です。命題 3.4 により q˙\dot q は (q,p,t)(q,p,t) の関数として一意に決まっているので、この式は (q,p,t)(q,p,t) の全微分としての表示です。

第 2 段:係数を比較する。 dqi, dpi, dtdq^i,\,dp_i,\,dt は独立な微分なので、2 つの表示の係数が一致します。

∂H∂pi=q˙i,∂H∂qi=−∂L∂qi,∂H∂t=−∂L∂t.\frac{\partial H}{\partial p_i} = \dot q^i, \qquad \frac{\partial H}{\partial q^i} = -\frac{\partial L}{\partial q^i}, \qquad \frac{\partial H}{\partial t} = -\frac{\partial L}{\partial t}.

第 1 式と第 3 式は、まだ運動方程式を使っていない 恒等式 であることに注意してください。第 3 式が定理の最後の主張です。

第 3 段:運動方程式を入れる。 pi=∂L/∂q˙ip_i = \partial L/\partial\dot q^i とおいたので、オイラー・ラグランジュ方程式は p˙i=∂L/∂qi\dot p_i = \partial L/\partial q^i と同値です。これを第 2 段の第 2 式に代入すると

p˙i=∂L∂qi=−∂H∂qi\dot p_i = \frac{\partial L}{\partial q^i} = -\frac{\partial H}{\partial q^i}

を得ます。逆に p˙i=−∂H/∂qi\dot p_i = -\partial H/\partial q^i が成り立てば、第 2 段の第 2 式から p˙i=∂L/∂qi\dot p_i = \partial L/\partial q^i、すなわちオイラー・ラグランジュ方程式が復元されます。また q˙i=∂H/∂pi\dot q^i = \partial H/\partial p_i は第 2 段の恒等式そのもので、曲線が「q˙\dot q が実際に qq の時間微分である」ことを表しています。以上で同値性が示されました。

正準方程式の形は覚えやすく、qq と pp の役割がマイナス符号 1 つを除いて対称です。この符号の非対称性こそが位相空間の幾何(シンプレクティック構造。位相空間で面積の測り方を与える構造、くらいの理解で今は十分です)の源で、正準変換 の章で主題になります。

系 4.3(ハミルトニアンの保存)✓

正準方程式の解 t↦(q(t),p(t))t\mapsto (q(t),p(t)) に沿って

ddtH(q(t),p(t),t)=∂H∂t(q(t),p(t),t)\frac{d}{dt}H\bigl(q(t),p(t),t\bigr) = \frac{\partial H}{\partial t}\bigl(q(t),p(t),t\bigr)

が成り立つ。とくに HH が時間 tt を陽に含まないならば、HH は運動の定数である。

証明(系 4.3)

連鎖律により

dHdt=∑i∂H∂qiq˙i+∑i∂H∂pip˙i+∂H∂t.\frac{dH}{dt} = \sum_i \frac{\partial H}{\partial q^i}\dot q^i + \sum_i \frac{\partial H}{\partial p_i}\dot p_i + \frac{\partial H}{\partial t}.

ここに 定理 4.2 の q˙i=∂H/∂pi\dot q^i = \partial H/\partial p_i と p˙i=−∂H/∂qi\dot p_i = -\partial H/\partial q^i を代入すると、第 1 項と第 2 項は

∑i∂H∂qi∂H∂pi+∑i∂H∂pi(−∂H∂qi)=0\sum_i \frac{\partial H}{\partial q^i}\frac{\partial H}{\partial p_i} + \sum_i \frac{\partial H}{\partial p_i}\left(-\frac{\partial H}{\partial q^i}\right) = 0

と相殺します。よって dH/dt=∂H/∂tdH/dt = \partial H/\partial t です。HH が tt を陽に含まなければ ∂H/∂t=0\partial H/\partial t = 0 なので HH は一定です。

命題 4.4(循環座標と運動量保存)✓

ある番号 kk について HH が qkq^k を陽に含まない、すなわちすべての (q,p,t)(q,p,t) で ∂H/∂qk=0\partial H/\partial q^k = 0 であるとする(このとき qkq^k を 循環座標 という)。このとき正準方程式の任意の解に沿って pkp_k は一定である。

証明(命題 4.4)

定理 4.2 の第 2 式より p˙k=−∂H/∂qk=0\dot p_k = -\partial H/\partial q^k = 0 です。よって pkp_k は tt によらず一定です。

この 1 行の証明が、ラグランジュ形式では「d(∂L/∂q˙k)/dt=0d(\partial L/\partial\dot q^k)/dt = 0 を積分する」という手続きだったものに対応します。さらに実用上重要なのは、pkp_k が定数 cc だと分かった時点で、H(q,p,t)H(q,p,t) の中の pkp_k を単に cc と置き換えれば、自由度が 1 つ減った n−1n-1 自由度の系のハミルトニアンが得られることです。ラグランジュ形式では q˙k\dot q^k を消去するのに手間がかかりました。例 6.2 でこの利点を確認します。

5. ハミルトニアンはエネルギーか

Section titled “5. ハミルトニアンはエネルギーか”

H=∑piq˙i−LH = \sum p_i\dot q^i - L という表式は、素朴には「エネルギー」を思わせます。実際に多くの例で H=T+VH = T + V になります。しかしこれは無条件ではありません。条件を正確に述べます。

定理 5.1(ハミルトニアンがエネルギーに一致する条件)✓

系の各質点の直交座標 xα\boldsymbol x_\alpha が、一般化座標のみの関数 xα=xα(q)\boldsymbol x_\alpha = \boldsymbol x_\alpha(q) として書け(拘束が時間に陽に依存しない)、かつラグランジアンが

L(q,q˙)=T(q,q˙)−V(q),T(q,q˙)=12∑i,jaij(q) q˙iq˙jL(q,\dot q) = T(q,\dot q) - V(q), \qquad T(q,\dot q) = \frac{1}{2}\sum_{i,j} a_{ij}(q)\,\dot q^i \dot q^j

の形であるとする(ここで aij=ajia_{ij}=a_{ji}、VV は速度を含まないポテンシャル)。このとき

H(q,p)=T+V=EH(q,p) = T + V = E

であり、系 4.3 により HH は保存する。

証明の方針は、運動エネルギー TT が速度の 2 次同次式であることを使い、オイラーの同次関数定理から ∑ipiq˙i=2T\sum_i p_i\dot q^i = 2T を導くことです。すると H=2T−(T−V)H = 2T - (T-V) となり、T+VT+V が得られます。

証明(定理 5.1)

第 1 段:オイラーの同次関数定理。 関数 f(q˙)f(\dot q) が次数 kk の同次関数、すなわち任意の λ>0\lambda>0 について f(λq˙)=λkf(q˙)f(\lambda\dot q) = \lambda^k f(\dot q) を満たすとします。両辺を λ\lambda で微分すると、左辺は連鎖律により ∑iq˙i (∂f/∂q˙i)(λq˙)\sum_i \dot q^i\,(\partial f/\partial \dot q^i)(\lambda \dot q)、右辺は kλk−1f(q˙)k\lambda^{k-1}f(\dot q) です。λ=1\lambda = 1 とおいて

∑iq˙i∂f∂q˙i(q˙)=k f(q˙)\sum_i \dot q^i \frac{\partial f}{\partial \dot q^i}(\dot q) = k\,f(\dot q)

を得ます(オイラーの同次関数定理(補題 5.5)[対称性と保存則])。

第 2 段:TT は速度の 2 次同次式。 仮定より x˙α=∑i(∂xα/∂qi)q˙i\boldsymbol{\dot x}_\alpha = \sum_i (\partial \boldsymbol x_\alpha/\partial q^i)\dot q^i で、右辺は q˙\dot q について 1 次同次です(xα\boldsymbol x_\alpha が tt を陽に含まないので ∂xα/∂t\partial \boldsymbol x_\alpha/\partial t の項が出ません)。したがって T=12∑αmα∣x˙α∣2T = \tfrac12\sum_\alpha m_\alpha|\boldsymbol{\dot x}_\alpha|^2 は q˙\dot q について 2 次同次で、実際に定理の主張どおり T=12∑i,jaij(q)q˙iq˙jT = \tfrac12\sum_{i,j}a_{ij}(q)\dot q^i\dot q^j の形になります。

第 3 段:計算。 VV が q˙\dot q を含まないので、定義 3.1 より

pi=∂L∂q˙i=∂T∂q˙i.p_i = \frac{\partial L}{\partial \dot q^i} = \frac{\partial T}{\partial \dot q^i}.

第 1 段を f=Tf = T、k=2k = 2 に適用すると

∑ipiq˙i=∑iq˙i∂T∂q˙i=2T.\sum_i p_i\dot q^i = \sum_i \dot q^i\frac{\partial T}{\partial \dot q^i} = 2T .

よって

H=∑ipiq˙i−L=2T−(T−V)=T+V=E.H = \sum_i p_i \dot q^i - L = 2T - (T - V) = T + V = E .

なお det⁡(aij)≠0\det(a_{ij}) \ne 0(運動エネルギーが正定値)ならヘッセ行列 Wij=aijW_{ij} = a_{ij} は正則なので、正則性(定義 3.3) は自動的に満たされ、定義 3.6 の手続きが実行できます。

仮定を落とすと結論は壊れます。拘束が時間に陽に依存する場合(xα=xα(q,t)\boldsymbol x_\alpha = \boldsymbol x_\alpha(q,t))には、TT に q˙\dot q の 1 次項・0 次項が混ざり、上の計算は成立しません。例 6.4 がその反例です。また速度に依存するポテンシャル(電磁場)でも H≠T+VH \ne T+V の形になります(例 6.3)。

例 6.1(1 次元調和振動子を最後まで解く)

質量 mm の質点がばね定数 kk のばねにつながれている系を考えます。ω:=k/m\omega := \sqrt{k/m} とおきます。

ラグランジアンから出発。 L=12mx˙2−12mω2x2L = \tfrac12 m\dot x^2 - \tfrac12 m\omega^2 x^2 です。

運動量。 定義 3.1 より p=∂L/∂x˙=mx˙p = \partial L/\partial \dot x = m\dot x。ヘッセ行列は 1×11\times1 行列 (m)(m) で m≠0m\ne0 ですから 正則(定義 3.3) であり、逆に解いて x˙=p/m\dot x = p/m です。

ハミルトニアン。 定義 3.6 に代入します。

H=px˙−L=p⋅pm−(12mp2m2−12mω2x2)=p2m−p22m+12mω2x2=p22m+12mω2x2.H = p\dot x - L = p\cdot\frac{p}{m} - \left(\frac{1}{2}m\frac{p^2}{m^2} - \frac12 m\omega^2x^2\right) = \frac{p^2}{m} - \frac{p^2}{2m} + \frac12 m\omega^2 x^2 = \frac{p^{2}}{2m} + \frac{1}{2}m\omega^{2}x^{2}.

これは 定理 5.1 の予言どおり T+VT+V になっています。

正準方程式。

x˙=∂H∂p=pm,p˙=−∂H∂x=−mω2x.\dot x = \frac{\partial H}{\partial p} = \frac{p}{m}, \qquad \dot p = -\frac{\partial H}{\partial x} = -m\omega^{2}x .

第 1 式を微分して第 2 式を代入すると x¨=p˙/m=−ω2x\ddot x = \dot p/m = -\omega^2 x となり、見慣れた方程式に戻ります。一般解は x(t)=Acos⁡(ωt+φ)x(t) = A\cos(\omega t+\varphi)、これを第 1 式に入れて p(t)=mx˙(t)=−mωAsin⁡(ωt+φ)p(t) = m\dot x(t) = -m\omega A\sin(\omega t+\varphi) です。

位相空間での軌道。 cos⁡2+sin⁡2=1\cos^2+\sin^2=1 より

x2A2+p2(mωA)2=1\frac{x^{2}}{A^{2}} + \frac{p^{2}}{(m\omega A)^{2}} = 1

という楕円です。半軸は AA と mωAm\omega A なので、この楕円が囲む面積は

S=π⋅A⋅mωA=πmωA2.S = \pi\cdot A\cdot m\omega A = \pi m\omega A^{2}.

一方エネルギーは E=H=12mω2A2E = H = \tfrac12 m\omega^2A^2 なので A2=2E/(mω2)A^2 = 2E/(m\omega^2) を代入して

S=πmω⋅2Emω2=2πEω.S = \pi m\omega\cdot\frac{2E}{m\omega^{2}} = \frac{2\pi E}{\omega}.

「位相空間で軌道が囲む面積」が、エネルギーと振動数だけで決まりました。この面積 ∮p dx\oint p\,dx(を 2π2\pi で割ったものが作用変数です)は、前期量子論のボーア・ゾンマーフェルト条件 ∮p dx=nh\oint p\,dx = nh に現れる量です。S=2πE/ω=nhS = 2\pi E/\omega = nh とおけば E=nℏωE = n\hbar\omega となり、調和振動子のエネルギー量子化(正しくは E=(n+12)ℏωE=(n+\tfrac12)\hbar\omega)に驚くほど近い答えが出ます。位相空間の面積が量子力学と直結する最初の例です。

qpOエネルギーが大きいほど外側の楕円
調和振動子の位相空間。エネルギーの異なる楕円が入れ子になり、流れは時計回りに一定の面積を保って回る。

例 6.2(中心力場:循環座標で自由度を落とす)

平面内を動く質量 mm の質点が、中心からの距離だけに依存するポテンシャル V(r)V(r) を受けるとします。極座標 (r,θ)(r,\theta) を使うと

L=m2(r˙2+r2θ˙2)−V(r).L = \frac{m}{2}\left(\dot r^{2} + r^{2}\dot\theta^{2}\right) - V(r).

運動量は

pr=∂L∂r˙=mr˙,pθ=∂L∂θ˙=mr2θ˙p_r = \frac{\partial L}{\partial \dot r} = m\dot r, \qquad p_\theta = \frac{\partial L}{\partial \dot\theta} = m r^{2}\dot\theta

で、pθp_\theta は角運動量そのものです。ヘッセ行列は diag(m, mr2)\mathrm{diag}(m,\,mr^2) で、r≠0r\neq 0 なら正則です。逆に解いて r˙=pr/m\dot r = p_r/m、θ˙=pθ/(mr2)\dot\theta = p_\theta/(mr^2)。代入すると

H=prr˙+pθθ˙−L=pr2m+pθ2mr2−m2(pr2m2+r2pθ2m2r4)+V(r)=pr22m+pθ22mr2+V(r).H = p_r\dot r + p_\theta\dot\theta - L = \frac{p_r^{2}}{m} + \frac{p_\theta^{2}}{mr^{2}} - \frac{m}{2}\left(\frac{p_r^{2}}{m^{2}} + r^{2}\frac{p_\theta^{2}}{m^{2}r^{4}}\right) + V(r) = \frac{p_r^{2}}{2m} + \frac{p_\theta^{2}}{2mr^{2}} + V(r).

HH は θ\theta を含みません。命題 4.4 より pθ=ℓp_\theta = \ell(定数)です。ここで pθp_\theta を定数 ℓ\ell に置き換えると、動径方向だけの 1 自由度のハミルトニアン

Hrad(r,pr)=pr22m+Veff(r),Veff(r):=V(r)+ℓ22mr2H_{\mathrm{rad}}(r,p_r) = \frac{p_r^{2}}{2m} + V_{\mathrm{eff}}(r), \qquad V_{\mathrm{eff}}(r) := V(r) + \frac{\ell^{2}}{2mr^{2}}

が得られます。有効ポテンシャルが自動的に現れる のがハミルトン形式の効き目です。実際、正準方程式は

r˙=prm,p˙r=−∂H∂r=ℓ2mr3−V′(r)\dot r = \frac{p_r}{m}, \qquad \dot p_r = -\frac{\partial H}{\partial r} = \frac{\ell^{2}}{mr^{3}} - V'(r)

であり、2 つを合わせて mr¨=−Veff′(r)m\ddot r = -V_{\mathrm{eff}}'(r) となります。遠心力項 ℓ2/(mr3)\ell^2/(mr^3) を「見かけの力」として後から足す必要はありません。この先の軌道の分類は 惑星の運動と中心力 を参照してください。

例 6.3(電磁場中の荷電粒子:p は mv ではない)

電荷 ee、質量 mm の粒子が、スカラーポテンシャル ϕ(x,t)\phi(\boldsymbol x,t) とベクトルポテンシャル A(x,t)\boldsymbol A(\boldsymbol x,t) で表される電磁場の中を動くとき、ラグランジアンは

L=m2∣v∣2−eϕ(x,t)+e A(x,t)⋅v,v=x˙L = \frac{m}{2}|\boldsymbol v|^{2} - e\phi(\boldsymbol x,t) + e\,\boldsymbol A(\boldsymbol x,t)\cdot\boldsymbol v, \qquad \boldsymbol v = \dot{\boldsymbol x}

です。運動量は成分ごとに

pj=∂L∂vj=mvj+eAj,すなわちp=mv+eA.p_j = \frac{\partial L}{\partial v_j} = m v_j + e A_j, \qquad\text{すなわち}\qquad \boldsymbol p = m\boldsymbol v + e\boldsymbol A .

一般化運動量が mvm\boldsymbol v とずれました。ヘッセ行列は mI3m I_3 で正則なので、v=(p−eA)/m\boldsymbol v = (\boldsymbol p - e\boldsymbol A)/m と逆に解けます。ハミルトニアンは

H=p⋅v−L=(mv+eA)⋅v−m2∣v∣2+eϕ−eA⋅v=m2∣v∣2+eϕ,H = \boldsymbol p\cdot\boldsymbol v - L = (m\boldsymbol v + e\boldsymbol A)\cdot\boldsymbol v - \frac{m}{2}|\boldsymbol v|^{2} + e\phi - e\boldsymbol A\cdot\boldsymbol v = \frac{m}{2}|\boldsymbol v|^{2} + e\phi,

ここで A\boldsymbol A の項が完全に消えました。最後に v\boldsymbol v を p\boldsymbol p で書き直して

H(x,p,t)=∣p−eA(x,t)∣22m+eϕ(x,t).H(\boldsymbol x,\boldsymbol p,t) = \frac{\bigl|\boldsymbol p - e\boldsymbol A(\boldsymbol x,t)\bigr|^{2}}{2m} + e\phi(\boldsymbol x,t).

値としては H=12m∣v∣2+eϕH = \tfrac12 m|\boldsymbol v|^2 + e\phi でエネルギーに等しいのですが、T+VT+V という 定理 5.1 の形ではありません(VV が速度に依存するため定理の仮定を満たしません)。この p→p−eA\boldsymbol p \to \boldsymbol p - e\boldsymbol A という置き換えは 極小結合 と呼ばれ、量子力学で磁場を扱うときの標準的な処方箋になります。ハミルトン形式を経由しないと、この形は書けません。

例 6.4(回転する棒に通したビーズ:H は保存するがエネルギーではない)

水平面内で、原点を通る直線状の棒が一定の角速度 ω\omega で回転しています。この棒に質量 mm のビーズが摩擦なく通してあり、棒に沿った位置を rr とします。重力は面に垂直なので運動には効きません。

棒の方向は θ=ωt\theta = \omega t で与えられるので、ビーズの位置は x=(rcos⁡ωt, rsin⁡ωt)\boldsymbol x = (r\cos\omega t,\ r\sin\omega t) です。これは tt を陽に含むので 定理 5.1 の仮定を満たしません。速度は ∣x˙∣2=r˙2+r2ω2|\dot{\boldsymbol x}|^2 = \dot r^2 + r^2\omega^2 なので

L=m2(r˙2+r2ω2).L = \frac{m}{2}\left(\dot r^{2} + r^{2}\omega^{2}\right).

自由度は rr の 1 つだけです。p=∂L/∂r˙=mr˙p = \partial L/\partial\dot r = m\dot r より r˙=p/m\dot r = p/m で、

H=pr˙−L=p2m−m2p2m2−m2r2ω2=p22m−12mω2r2.H = p\dot r - L = \frac{p^{2}}{m} - \frac{m}{2}\frac{p^{2}}{m^{2}} - \frac{m}{2}r^{2}\omega^{2} = \frac{p^{2}}{2m} - \frac{1}{2}m\omega^{2}r^{2}.

HH は tt を陽に含みませんから、系 4.3 により保存します。ところが系の運動エネルギー(=全エネルギー)は

E=T=m2(r˙2+r2ω2)=p22m+12mω2r2E = T = \frac{m}{2}\left(\dot r^{2} + r^{2}\omega^{2}\right) = \frac{p^{2}}{2m} + \frac{1}{2}m\omega^{2}r^{2}

であって、E=H+mω2r2E = H + m\omega^{2}r^{2} です。正準方程式は

r˙=pm,p˙=−∂H∂r=mω2r\dot r = \frac{p}{m},\qquad \dot p = -\frac{\partial H}{\partial r} = m\omega^{2}r

なので r¨=ω2r\ddot r = \omega^2 r、一般解は r(t)=Ceωt+De−ωtr(t) = Ce^{\omega t} + De^{-\omega t} です。一般には rr が指数的に増大し、したがって EE も増大します。エネルギーが増えるのは、棒がビーズを押して仕事をしているからで、外部から角速度 ω\omega を保つために動力が供給されているのです。

教訓:HH の保存とエネルギーの保存は別の主張です。HH が保存するのは HH が tt を陽に含まないときであり、それが T+VT+V に等しいかどうかは 定理 5.1 の仮定次第です。この HH は回転系におけるヤコビ積分と呼ばれ、天体力学の制限三体問題でも同じ役割を果たします。

ωtrO基準の向き棒(角速度 ω で回転)ビーズ
回転する棒に通したビーズ。棒は原点のまわりを一定の角速度 ω で回り、ビーズの位置は棒に沿った距離 r で表す。

7. 位相空間の幾何:リウヴィルの定理

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位相空間 R2n\mathbb{R}^{2n} の点を ξ=(q1,…,qn,p1,…,pn)\boldsymbol\xi = (q^1,\ldots,q^n,p_1,\ldots,p_n) と書くと、正準方程式は 1 本のベクトル場

XH(ξ,t)=(∂H∂p1,…,∂H∂pn, −∂H∂q1,…,−∂H∂qn)\boldsymbol X_H(\boldsymbol\xi,t) = \left(\frac{\partial H}{\partial p_1},\ldots,\frac{\partial H}{\partial p_n},\ -\frac{\partial H}{\partial q^1},\ldots,-\frac{\partial H}{\partial q^n}\right)

に対する ξ˙=XH(ξ,t)\dot{\boldsymbol\xi} = \boldsymbol X_H(\boldsymbol\xi,t) という形にまとまります。位相空間の各点を通る解はただ 1 本(XH\boldsymbol X_H が C1C^1 級ならピカール・リンデレフの定理。初期値問題の解の一意性(命題 4.1)[ニュートン力学の基礎] と同じ議論です)なので、位相空間の軌道は交わりません。例 6.1 の入れ子の楕円は、まさにその図です。

このベクトル場には際立った性質があります。

次の補題は、リウヴィルの定理の証明で、流れのヤコビ行列の行列式 det⁡J(t)\det J(t) が時間とともにどう変わるかを調べるために使います。証明の考え方は、行列式の ε\varepsilon の 1 次の項がトレースになることを見て、それを A(t+h)A(t+h) と A(t)A(t) の比較に当てはめることです。

補題 7.1(ヤコビの公式(行列式の微分))✓

A(t)A(t) を tt の C1C^1 級関数である N×NN\times N 行列とし、ある tt で A(t)A(t) が正則であるとする。このとき

ddtdet⁡A(t)=det⁡A(t)⋅tr⁡ ⁣(A(t)−1A˙(t)).\frac{d}{dt}\det A(t) = \det A(t)\cdot \operatorname{tr}\!\left(A(t)^{-1}\dot A(t)\right).
証明(補題 7.1)

まず det⁡(I+εB)=1+εtr⁡B+O(ε2)\det(I + \varepsilon B) = 1 + \varepsilon\operatorname{tr}B + O(\varepsilon^{2})(ε→0\varepsilon\to0)を示します。行列式をライプニッツ展開すると、置換 σ\sigma に対応する項は ∏i(I+εB)iσ(i)\prod_{i}(I+\varepsilon B)_{i\sigma(i)} です。σ\sigma が恒等置換でなければ、少なくとも 2 つの ii で σ(i)≠i\sigma(i)\neq i となるので、その項は ε2\varepsilon^2 以上の因子をもちます。恒等置換の項は ∏i(1+εBii)=1+ε∑iBii+O(ε2)\prod_i(1+\varepsilon B_{ii}) = 1 + \varepsilon\sum_i B_{ii} + O(\varepsilon^2) です。合わせて主張が従います。

次に、h→0h\to0 で A(t+h)=A(t)+hA˙(t)+o(h)=A(t)(I+hA(t)−1A˙(t)+o(h))A(t+h) = A(t) + h\dot A(t) + o(h) = A(t)\bigl(I + hA(t)^{-1}\dot A(t) + o(h)\bigr) と書けます(A(t)A(t) が正則なので A(t)A(t) を括り出せます)。行列式の乗法性から

det⁡A(t+h)=det⁡A(t)⋅(1+htr⁡(A(t)−1A˙(t))+o(h)).\det A(t+h) = \det A(t)\cdot\Bigl(1 + h\operatorname{tr}\bigl(A(t)^{-1}\dot A(t)\bigr) + o(h)\Bigr).

両辺から det⁡A(t)\det A(t) を引いて hh で割り、h→0h\to0 とすれば主張を得ます。

定理 7.2(リウヴィルの定理(位相体積の保存))✓

HH を C2C^{2} 級のハミルトニアンとし、Φt\Phi_t を正準方程式が定める位相空間の流れ(時刻 00 の状態 ξ0\boldsymbol\xi_0 を時刻 tt の状態 Φt(ξ0)\Phi_t(\boldsymbol\xi_0) に写す写像)とする。解が考えている時間区間で存在するとき、位相空間の任意の可測な有界領域 DD について

vol⁡(Φt(D))=vol⁡(D)\operatorname{vol}\bigl(\Phi_t(D)\bigr) = \operatorname{vol}(D)

が成り立つ。ここで vol⁡\operatorname{vol} は R2n\mathbb{R}^{2n} のルベーグ測度 dq1⋯dqn dp1⋯dpndq^1\cdots dq^n\,dp_1\cdots dp_n である。

ここで「可測な領域」「ルベーグ測度」は、体積が意味をもつ領域とその体積のことと読めば十分です。証明の方針は、(1) ベクトル場の発散がゼロであることを確かめ、(2) それを使って、流れのヤコビ行列の行列式が 1 のまま変わらないことを示し、(3) 変数変換公式で体積を計算する、の 3 段です。第 2 段に出てくる変分方程式とは、初期値を少しずらしたときの解のずれが満たす方程式のことです。

証明(定理 7.2)

第 1 段:ベクトル場の発散はゼロ。 XH\boldsymbol X_H の発散を計算します。

div⁡XH=∑i∂∂qi(∂H∂pi)+∑i∂∂pi(−∂H∂qi)=∑i(∂2H∂qi∂pi−∂2H∂pi∂qi)=0.\operatorname{div}\boldsymbol X_H = \sum_{i}\frac{\partial}{\partial q^{i}}\left(\frac{\partial H}{\partial p_{i}}\right) + \sum_{i}\frac{\partial}{\partial p_{i}}\left(-\frac{\partial H}{\partial q^{i}}\right) = \sum_{i}\left(\frac{\partial^{2}H}{\partial q^{i}\partial p_{i}} - \frac{\partial^{2}H}{\partial p_{i}\partial q^{i}}\right) = 0 .

最後の等号は、HH が C2C^2 級なのでシュワルツの定理により混合偏微分が微分の順序によらないことによります。正準方程式のマイナス符号がここで効いています。

第 2 段:ヤコビ行列の行列式は 1 のまま。 J(t):=∂Φt/∂ξ0J(t) := \partial\Phi_t/\partial\boldsymbol\xi_0(2n×2n2n\times2n 行列)とおきます。Φ0\Phi_0 は恒等写像なので J(0)=IJ(0) = I、したがって det⁡J(0)=1\det J(0)=1 です。また Φt\Phi_t は逆写像(時刻 tt の状態を時刻 00 の状態に戻す写像)をもつ微分同相なので、連鎖律より J(t)J(t) は各 tt で正則です。

Φt(ξ0)\Phi_t(\boldsymbol\xi_0) が ξ˙=XH(ξ,t)\dot{\boldsymbol\xi} = \boldsymbol X_H(\boldsymbol\xi,t) を満たすことを ξ0\boldsymbol\xi_0 で偏微分すると(HH が C2C^2 級なので微分の順序交換が許されます)、変分方程式

J˙(t)=DXH(Φt(ξ0),t) J(t)\dot J(t) = D\boldsymbol X_H\bigl(\Phi_t(\boldsymbol\xi_0),t\bigr)\,J(t)

を得ます。ここで DXHD\boldsymbol X_H は XH\boldsymbol X_H のヤコビ行列です。補題 7.1 を A=JA = J に適用すると

ddtdet⁡J=det⁡J⋅tr⁡(J−1J˙)=det⁡J⋅tr⁡(J−1 DXH J)=det⁡J⋅tr⁡(DXH),\frac{d}{dt}\det J = \det J\cdot\operatorname{tr}\bigl(J^{-1}\dot J\bigr) = \det J\cdot\operatorname{tr}\bigl(J^{-1}\,D\boldsymbol X_H\,J\bigr) = \det J\cdot\operatorname{tr}\bigl(D\boldsymbol X_H\bigr),

最後の等号はトレースの相似不変性 tr⁡(J−1MJ)=tr⁡(M)\operatorname{tr}(J^{-1}MJ) = \operatorname{tr}(M) によります。ところが tr⁡(DXH)=div⁡XH=0\operatorname{tr}(D\boldsymbol X_H) = \operatorname{div}\boldsymbol X_H = 0(第 1 段)なので ddtdet⁡J=0\dfrac{d}{dt}\det J = 0、よって det⁡J(t)=det⁡J(0)=1\det J(t) = \det J(0) = 1 です。

第 3 段:体積の計算。 重積分の変数変換公式(定理 6.7)[重積分と累次積分] より

vol⁡(Φt(D))=∫Φt(D)dξ=∫D∣det⁡J(t)∣ dξ0=∫D1 dξ0=vol⁡(D).\operatorname{vol}\bigl(\Phi_t(D)\bigr) = \int_{\Phi_t(D)} d\boldsymbol\xi = \int_{D}\bigl|\det J(t)\bigr|\,d\boldsymbol\xi_0 = \int_D 1\,d\boldsymbol\xi_0 = \operatorname{vol}(D).

この定理は、位相空間の流れが「非圧縮性流体の流れ」だと言っています。領域は形を変え、細く引き伸ばされて折り畳まれますが、体積だけは決して変わりません。

8. ポアソン括弧と、統計力学・量子力学への橋

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定義 8.1(ポアソン括弧)↗

位相空間上の C1C^1 級関数 F(q,p,t)F(q,p,t)、G(q,p,t)G(q,p,t) に対して、その ポアソン括弧 を

{F,G}:=∑i=1n(∂F∂qi∂G∂pi−∂F∂pi∂G∂qi)\lbrace F, G\rbrace := \sum_{i=1}^{n}\left( \frac{\partial F}{\partial q^{i}}\frac{\partial G}{\partial p_{i}} - \frac{\partial F}{\partial p_{i}}\frac{\partial G}{\partial q^{i}} \right)

で定める。とくに正準座標どうしについて

{qi,qj}=0,{pi,pj}=0,{qi,pj}=δ ji\lbrace q^{i}, q^{j}\rbrace = 0,\qquad \lbrace p_{i}, p_{j}\rbrace = 0,\qquad \lbrace q^{i}, p_{j}\rbrace = \delta^{i}_{\ j}

が成り立つ(基本ポアソン括弧)。

基本ポアソン括弧は定義から直接確かめられます。たとえば {qi,pj}\lbrace q^i,p_j\rbrace では ∂qi/∂qk=δ ki\partial q^i/\partial q^k = \delta^i_{\ k}、∂pj/∂pk=δjk\partial p_j/\partial p_k = \delta_{jk}、∂qi/∂pk=0\partial q^i/\partial p_k = 0、∂pj/∂qk=0\partial p_j/\partial q^k = 0 なので、和は ∑kδ kiδjk=δ ji\sum_k \delta^i_{\ k}\delta_{jk} = \delta^i_{\ j} となります。

命題 8.2(物理量の時間発展)✓

F(q,p,t)F(q,p,t) を C1C^1 級関数とし、t↦(q(t),p(t))t\mapsto(q(t),p(t)) を正準方程式の解とする。このとき

ddtF(q(t),p(t),t)={F,H}+∂F∂t.\frac{d}{dt}F\bigl(q(t),p(t),t\bigr) = \lbrace F, H\rbrace + \frac{\partial F}{\partial t}.

とくに FF が tt を陽に含まないとき、FF が保存量であることと {F,H}=0\lbrace F,H\rbrace = 0 が恒等的に成り立つことは同値である。

証明(命題 8.2)

連鎖律により

dFdt=∑i∂F∂qiq˙i+∑i∂F∂pip˙i+∂F∂t.\frac{dF}{dt} = \sum_i\frac{\partial F}{\partial q^i}\dot q^i + \sum_i \frac{\partial F}{\partial p_i}\dot p_i + \frac{\partial F}{\partial t}.

ここに 定理 4.2 の q˙i=∂H/∂pi\dot q^i = \partial H/\partial p_i、p˙i=−∂H/∂qi\dot p_i = -\partial H/\partial q^i を代入すると

dFdt=∑i(∂F∂qi∂H∂pi−∂F∂pi∂H∂qi)+∂F∂t={F,H}+∂F∂t\frac{dF}{dt} = \sum_i\left(\frac{\partial F}{\partial q^i}\frac{\partial H}{\partial p_i} - \frac{\partial F}{\partial p_i}\frac{\partial H}{\partial q^i}\right) + \frac{\partial F}{\partial t} = \lbrace F,H\rbrace + \frac{\partial F}{\partial t}

となり、定義 8.1 により主張が従います。後半:∂F/∂t=0\partial F/\partial t=0 なら dF/dt={F,H}dF/dt = \lbrace F,H\rbrace です。{F,H}\lbrace F,H\rbrace が恒等的に 00 なら任意の解に沿って FF は一定であり、逆にすべての初期条件から出る解に沿って FF が一定なら、位相空間の各点で {F,H}=0\lbrace F,H\rbrace = 0 です(各点を通る解が存在するため)。

F=HF = H とすれば {H,H}=0\lbrace H,H\rbrace = 0 は定義から明らかで、系 4.3 が再現されます。F=qiF = q^i や F=piF = p_i とすれば正準方程式そのものが出ます。つまり正準方程式・保存則・エネルギー保存が、{⋅,⋅}\lbrace\cdot,\cdot\rbrace という 1 つの演算の下に統一されました。ポアソン括弧が満たすヤコビ恒等式(ポアソン括弧の代数的性質(命題 5.2)[正準変換とポアソン括弧])や、それを不変に保つ変換(正準変換(定義 3.1)[正準変換とポアソン括弧])については 正準変換とポアソン括弧 で扱います。

現実の気体は 102310^{23} 個程度の分子からなり、初期条件を知ることはできません。そこで、位相空間上の確率密度 ρ(q,p,t)\rho(q,p,t) を考え、多数の同等な系の集まり(アンサンブル)として扱います。

代表点は正準方程式に従って流れ、途中で生成も消滅もしないので、ρ\rho は連続の方程式 ∂ρ/∂t+div⁡(ρXH)=0\partial\rho/\partial t + \operatorname{div}(\rho\boldsymbol X_H) = 0 を満たします(連続の方程式とは、ある領域の中の量が増減するのは境界から出入りする流れの分だけ、という保存を式にしたものです)。ここで積の微分法則と 定理 7.2 の第 1 段(div⁡XH=0\operatorname{div}\boldsymbol X_H = 0)を使うと div⁡(ρXH)=XH⋅∇ρ\operatorname{div}(\rho\boldsymbol X_H) = \boldsymbol X_H\cdot\nabla\rho となり、

∂ρ∂t+{ρ,H}=0\frac{\partial\rho}{\partial t} + \lbrace \rho, H\rbrace = 0

が得られます(リウヴィル方程式)。これは 命題 8.2 と合わせると「流れに乗って見た ρ\rho の全微分がゼロ」、すなわち位相空間の密度は非圧縮流体のように運ばれる、という主張です。

平衡状態は ∂ρ/∂t=0\partial\rho/\partial t = 0 ですから、{ρ,H}=0\lbrace\rho,H\rbrace=0 が必要です。これを満たす最も自然な選び方は「ρ\rho が HH だけの関数である」ことで({f(H),H}=f′(H){H,H}=0\lbrace f(H),H\rbrace = f'(H)\lbrace H,H\rbrace=0)、ρ\rho を等エネルギー面上の一様分布に取ればミクロカノニカル分布、ρ∝e−βH(q,p)\rho\propto e^{-\beta H(q,p)} に取ればカノニカル分布になります。統計力学の基本的な分布がハミルトニアンの関数として書かれるのは、この事情によります。

量子力学では、物理量は演算子になり、ポアソン括弧は交換子に置き換わります。

{F,G}  ⟼  1iℏ[F^,G^],[F^,G^]=F^G^−G^F^.\lbrace F, G\rbrace \;\longmapsto\; \frac{1}{i\hbar}\bigl[\hat F,\hat G\bigr], \qquad \bigl[\hat F,\hat G\bigr] = \hat F\hat G - \hat G\hat F .

この対応(正準量子化)の下で、基本ポアソン括弧 {q,p}=1\lbrace q,p\rbrace = 1 は正準交換関係 [q^,p^]=iℏ[\hat q,\hat p] = i\hbar に、命題 8.2 はハイゼンベルク方程式

dF^dt=1iℏ[F^,H^]+∂F^∂t\frac{d\hat F}{dt} = \frac{1}{i\hbar}\bigl[\hat F,\hat H\bigr] + \frac{\partial \hat F}{\partial t}

に移ります。式の形が完全に平行であることを確認してください。例 6.3 で得た H=∣p−eA∣2/2m+eϕH = |\boldsymbol p - e\boldsymbol A|^2/2m + e\phi をそのまま演算子に読み替えれば、磁場中の電子のハミルトニアンになります。

演習 9.1易

鉛直上向きに xx 軸をとり、質量 mm の質点が一様重力(重力加速度 gg)の下で落下する系を考えます。ラグランジアンは L=12mx˙2−mgxL = \tfrac12 m\dot x^2 - mgx です。 (1) 一般化運動量 pp とハミルトニアン H(x,p)H(x,p) を求めなさい。 (2) 正準方程式を書き下し、初期条件 x(0)=x0, p(0)=p0x(0)=x_0,\ p(0)=p_0 の下で解きなさい。 (3) HH が保存することを、(2) の解に直接代入して確かめなさい。

解答

(1) 定義 3.1 より p=∂L/∂x˙=mx˙p = \partial L/\partial\dot x = m\dot x。ヘッセ行列は (m)(m) で正則なので x˙=p/m\dot x = p/m と逆に解けます。定義 3.6 より

H=px˙−L=p2m−(p22m−mgx)=p22m+mgx.H = p\dot x - L = \frac{p^2}{m} - \left(\frac{p^2}{2m} - mgx\right) = \frac{p^{2}}{2m} + mgx .

これは 定理 5.1 の仮定(時間に依存しない座標変換、速度によらないポテンシャル)を満たすので H=T+V=EH = T+V = E です。

(2) 正準方程式は

x˙=∂H∂p=pm,p˙=−∂H∂x=−mg.\dot x = \frac{\partial H}{\partial p} = \frac{p}{m}, \qquad \dot p = -\frac{\partial H}{\partial x} = -mg .

第 2 式は直ちに積分できて p(t)=p0−mgtp(t) = p_0 - mgt。これを第 1 式に代入して

x˙=p0−mgtm=p0m−gt  ⟹  x(t)=x0+p0mt−12gt2.\dot x = \frac{p_0 - mgt}{m} = \frac{p_0}{m} - gt \;\Longrightarrow\; x(t) = x_0 + \frac{p_0}{m}t - \frac{1}{2}gt^{2}.

初速度 v0=p0/mv_0 = p_0/m と書けば、見慣れた等加速度運動の式です。1 階方程式が「積分できる順序で並んでいる」ため、2 階方程式を解くより手数が少ない点に注目してください。

(3) 代入します。

H(t)=(p0−mgt)22m+mg(x0+p0mt−g2t2).H(t) = \frac{(p_0-mgt)^{2}}{2m} + mg\left(x_0 + \frac{p_0}{m}t - \frac{g}{2}t^{2}\right).

第 1 項は p02−2p0mgt+m2g2t22m=p022m−p0gt+mg2t22\dfrac{p_0^2 - 2p_0mgt + m^2g^2t^2}{2m} = \dfrac{p_0^2}{2m} - p_0 g t + \dfrac{mg^2t^2}{2}、第 2 項は mgx0+p0gt−mg2t22mgx_0 + p_0gt - \dfrac{mg^2t^2}{2} です。tt の 1 次項 −p0gt-p_0gt と +p0gt+p_0gt、2 次項 +mg2t2/2+mg^2t^2/2 と −mg2t2/2-mg^2t^2/2 がそれぞれ相殺し、

H(t)=p022m+mgx0=H(0)H(t) = \frac{p_0^{2}}{2m} + mgx_0 = H(0)

となって一定です。HH は tt を陽に含まないので、系 4.3 の主張と一致します。

演習 9.2標準

1 次元を運動する質量 mm の相対論的自由粒子のラグランジアンは

L(x˙)=−mc21−x˙2c2(∣x˙∣<c)L(\dot x) = -mc^{2}\sqrt{1 - \frac{\dot x^{2}}{c^{2}}} \qquad (|\dot x| < c)

で与えられます。 (1) 一般化運動量 pp を求め、∣x˙∣<c|\dot x| < c の範囲で x˙\dot x が p∈Rp\in\mathbb{R} の関数として一意に定まることを示しなさい。 (2) ハミルトニアン H(p)H(p) を求めなさい。 (3) ∣p∣≪mc|p| \ll mc のときの HH の展開を 2 次まで求め、非相対論的極限と比較しなさい。

解答

(1) γ:=(1−x˙2/c2)−1/2\gamma := \bigl(1-\dot x^2/c^2\bigr)^{-1/2} とおきます。

p=∂L∂x˙=−mc2⋅12(1−x˙2c2)−1/2⋅(−2x˙c2)=mx˙1−x˙2/c2=mγx˙.p = \frac{\partial L}{\partial\dot x} = -mc^{2}\cdot\frac{1}{2}\left(1-\frac{\dot x^{2}}{c^{2}}\right)^{-1/2}\cdot\left(-\frac{2\dot x}{c^{2}}\right) = \frac{m\dot x}{\sqrt{1-\dot x^{2}/c^{2}}} = m\gamma\dot x .

u:=x˙/c∈(−1,1)u := \dot x/c \in (-1,1) とおくと p=mc u/1−u2p = mc\,u/\sqrt{1-u^2} です。u↦u/1−u2u\mapsto u/\sqrt{1-u^2} は (−1,1)(-1,1) 上で微分すると (1−u2)−3/2>0(1-u^2)^{-3/2} > 0 なので狭義単調増加で、u→±1u\to\pm1 で ±∞\pm\infty に発散します。よって (−1,1)(-1,1) から R\mathbb{R} への全単射であり、x˙\dot x は pp から一意に定まります。実際、p2(1−u2)=m2c2u2p^2(1-u^2) = m^2c^2u^2 を解いて u=p/p2+m2c2u = p/\sqrt{p^2+m^2c^2}、すなわち

x˙=pcp2+m2c2.\dot x = \frac{pc}{\sqrt{p^{2}+m^{2}c^{2}}} .

(正則性(定義 3.3) は ∂2L/∂x˙2=m(1−u2)−3/2≠0\partial^2L/\partial\dot x^2 = m(1-u^2)^{-3/2} \ne 0 からも確認できます。)

(2) 1−u2=1−p2p2+m2c2=m2c2p2+m2c21-u^2 = 1 - \dfrac{p^2}{p^2+m^2c^2} = \dfrac{m^2c^2}{p^2+m^2c^2} なので 1−u2=mcp2+m2c2\sqrt{1-u^2} = \dfrac{mc}{\sqrt{p^2+m^2c^2}} です。したがって

H=px˙−L=p2cp2+m2c2+mc2⋅mcp2+m2c2=p2c+m2c3p2+m2c2=cp2+m2c2.H = p\dot x - L = \frac{p^{2}c}{\sqrt{p^{2}+m^{2}c^{2}}} + mc^{2}\cdot\frac{mc}{\sqrt{p^{2}+m^{2}c^{2}}} = \frac{p^{2}c + m^{2}c^{3}}{\sqrt{p^{2}+m^{2}c^{2}}} = c\sqrt{p^{2}+m^{2}c^{2}} .

有名な相対論的エネルギー・運動量関係 E2=p2c2+m2c4E^2 = p^2c^2 + m^2c^4 が、ルジャンドル変換の計算結果として出てきました。

(3) H=mc21+p2/(m2c2)H = mc^{2}\sqrt{1 + p^{2}/(m^{2}c^{2})} と書き、1+z=1+12z−18z2+O(z3)\sqrt{1+z} = 1 + \tfrac12 z - \tfrac18 z^{2}+O(z^3) を z=p2/(m2c2)z = p^{2}/(m^{2}c^{2}) に適用します。

H=mc2(1+p22m2c2−p48m4c4+⋯ )=mc2+p22m−p48m3c2+⋯ .H = mc^{2}\left(1 + \frac{p^{2}}{2m^{2}c^{2}} - \frac{p^{4}}{8m^{4}c^{4}} + \cdots\right) = mc^{2} + \frac{p^{2}}{2m} - \frac{p^{4}}{8m^{3}c^{2}} + \cdots .

第 1 項は静止エネルギー(定数なので運動方程式に影響しません)、第 2 項が非相対論的な運動エネルギー p2/2mp^2/2m、第 3 項が最初の相対論的補正です。この −p4/(8m3c2)-p^4/(8m^3c^2) は、量子力学で水素原子のスペクトルの微細構造を計算するときの摂動項として現れます。

演習 9.3標準

例 6.3 の設定で、ゲージ変換

A→A′=A+∇χ,ϕ→ϕ′=ϕ−∂χ∂t\boldsymbol A \to \boldsymbol A' = \boldsymbol A + \nabla\chi, \qquad \phi \to \phi' = \phi - \frac{\partial\chi}{\partial t}

(χ(x,t)\chi(\boldsymbol x,t) は任意の C2C^2 級関数)を行います。電場 E=−∇ϕ−∂A/∂t\boldsymbol E = -\nabla\phi - \partial\boldsymbol A/\partial t と磁場 B=∇×A\boldsymbol B = \nabla\times\boldsymbol A が不変であることを確かめ、一般化運動量 p\boldsymbol p と速度 v\boldsymbol v のうち、どちらがゲージ変換で変わるかを述べなさい。

解答

場の不変性。 磁場については ∇×A′=∇×A+∇×(∇χ)=∇×A=B\nabla\times\boldsymbol A' = \nabla\times\boldsymbol A + \nabla\times(\nabla\chi) = \nabla\times\boldsymbol A = \boldsymbol B。勾配の回転が 00 になるのは、χ\chi が C2C^2 級のとき混合偏微分が順序によらない(シュワルツの定理)からです。電場については

E′=−∇ϕ′−∂A′∂t=−∇ϕ+∇∂χ∂t−∂A∂t−∂∂t∇χ=E,\boldsymbol E' = -\nabla\phi' - \frac{\partial\boldsymbol A'}{\partial t} = -\nabla\phi + \nabla\frac{\partial\chi}{\partial t} - \frac{\partial\boldsymbol A}{\partial t} - \frac{\partial}{\partial t}\nabla\chi = \boldsymbol E,

ここでも ∇(∂χ/∂t)=∂(∇χ)/∂t\nabla(\partial\chi/\partial t) = \partial(\nabla\chi)/\partial t に微分の順序交換を使いました。

運動量と速度。 電磁場が同じなら粒子に働くローレンツ力も同じなので、同じ初期条件から出る軌道 x(t)\boldsymbol x(t) は変わらず、したがって速度 v=x˙\boldsymbol v = \dot{\boldsymbol x} も変わりません。一方、例 6.3 で見たとおり

p′=mv+eA′=mv+eA+e∇χ=p+e∇χ\boldsymbol p' = m\boldsymbol v + e\boldsymbol A' = m\boldsymbol v + e\boldsymbol A + e\nabla\chi = \boldsymbol p + e\nabla\chi

なので、一般化運動量はゲージ変換で変わります。

つまり p\boldsymbol p は観測可能量ではなく、ゲージの選び方に依存する量です。観測できるのは運動学的運動量 mv=p−eAm\boldsymbol v = \boldsymbol p - e\boldsymbol A のほうです。ラグランジアン自体も L′=L+e dχ/dtL' = L + e\,d\chi/dt と全微分の分だけずれますが、これは作用に端点の値しか寄与しないので運動方程式を変えません。「正準運動量は物理的な運動量ではない」ことを最も鮮明に示す例です。

演習 9.4難

3 次元空間の 1 粒子について、正準座標 (x1,x2,x3,p1,p2,p3)(x_1,x_2,x_3,p_1,p_2,p_3) と角運動量の成分 Lk=∑i,jεkijxipjL_k = \sum_{i,j}\varepsilon_{kij}x_ip_j(ε\varepsilon はレヴィ・チヴィタ記号)を考えます。 (1) {L1,L2}=L3\lbrace L_1, L_2\rbrace = L_3 を、成分を書き下して直接計算しなさい。 (2) H=∣p∣22m+V(∣x∣)H = \dfrac{|\boldsymbol p|^{2}}{2m} + V(|\boldsymbol x|) のとき {L3,H}=0\lbrace L_3, H\rbrace = 0 を示し、これが何を意味するか述べなさい。

解答

(1) 定義より L1=x2p3−x3p2L_1 = x_2p_3 - x_3p_2、L2=x3p1−x1p3L_2 = x_3p_1 - x_1p_3、L3=x1p2−x2p1L_3 = x_1p_2 - x_2p_1 です。定義 8.1 に従って

{L1,L2}=∑i=13(∂L1∂xi∂L2∂pi−∂L1∂pi∂L2∂xi)\lbrace L_1,L_2\rbrace = \sum_{i=1}^{3}\left(\frac{\partial L_1}{\partial x_i}\frac{\partial L_2}{\partial p_i} - \frac{\partial L_1}{\partial p_i}\frac{\partial L_2}{\partial x_i}\right)

を計算します。各偏微分は

∂L1∂x=(0, p3, −p2),∂L1∂p=(0, −x3, x2),\frac{\partial L_1}{\partial x} = (0,\ p_3,\ -p_2),\quad \frac{\partial L_1}{\partial p} = (0,\ -x_3,\ x_2),∂L2∂x=(−p3, 0, p1),∂L2∂p=(x3, 0, −x1).\frac{\partial L_2}{\partial x} = (-p_3,\ 0,\ p_1),\quad \frac{\partial L_2}{\partial p} = (x_3,\ 0,\ -x_1).

したがって第 1 の和は 0⋅x3+p3⋅0+(−p2)(−x1)=x1p20\cdot x_3 + p_3\cdot 0 + (-p_2)(-x_1) = x_1p_2、第 2 の和は 0⋅(−p3)+(−x3)⋅0+x2p1=x2p10\cdot(-p_3) + (-x_3)\cdot 0 + x_2 p_1 = x_2p_1 です。差をとって

{L1,L2}=x1p2−x2p1=L3.\lbrace L_1,L_2\rbrace = x_1p_2 - x_2p_1 = L_3 .

添字を巡回させれば {L2,L3}=L1\lbrace L_2,L_3\rbrace = L_1、{L3,L1}=L2\lbrace L_3,L_1\rbrace = L_2 も同様に従います。この関係式は、正準量子化 {⋅,⋅}↦[⋅,⋅]/(iℏ)\lbrace\cdot,\cdot\rbrace\mapsto[\cdot,\cdot]/(i\hbar) の下で [L^1,L^2]=iℏL^3[\hat L_1,\hat L_2] = i\hbar\hat L_3 という角運動量の交換関係になり、量子力学のスピンや軌道角運動量の理論の出発点になります。

(2) r:=∣x∣=x12+x22+x32r := |\boldsymbol x| = \sqrt{x_1^2+x_2^2+x_3^2} とおくと ∂r/∂xi=xi/r\partial r/\partial x_i = x_i/r です。L3=x1p2−x2p1L_3 = x_1p_2 - x_2p_1 の偏微分は

∂L3∂x=(p2, −p1, 0),∂L3∂p=(−x2, x1, 0),\frac{\partial L_3}{\partial x} = (p_2,\ -p_1,\ 0), \qquad \frac{\partial L_3}{\partial p} = (-x_2,\ x_1,\ 0),

HH の偏微分は

∂H∂xi=V′(r)xir,∂H∂pi=pim\frac{\partial H}{\partial x_i} = V'(r)\frac{x_i}{r}, \qquad \frac{\partial H}{\partial p_i} = \frac{p_i}{m}

です。よって

{L3,H}=(p2p1m+(−p1)p2m+0)−((−x2)V′(r)x1r+x1V′(r)x2r+0).\lbrace L_3,H\rbrace = \left(p_2\frac{p_1}{m} + (-p_1)\frac{p_2}{m} + 0\right) - \left((-x_2)V'(r)\frac{x_1}{r} + x_1 V'(r)\frac{x_2}{r} + 0\right).

第 1 の括弧は p1p2−p1p2m=0\dfrac{p_1p_2 - p_1p_2}{m} = 0、第 2 の括弧は V′(r)r(−x2x1+x1x2)=0\dfrac{V'(r)}{r}(-x_2x_1 + x_1x_2) = 0 です。したがって {L3,H}=0\lbrace L_3,H\rbrace = 0。

L3L_3 は tt を陽に含まないので、命題 8.2 より L3L_3 は保存量です。同じ計算が L1,L2L_1,L_2 についても成り立つので、角運動量ベクトル全体が保存します。これは ネーターの定理 が「HH が回転対称(VV が rr のみに依存)ならば角運動量が保存する」と述べる内容を、ポアソン括弧の計算だけで再現したものです。ラグランジュ形式では対称変換を具体的に構成する必要がありましたが、ハミルトン形式では {F,H}=0\lbrace F,H\rbrace = 0 という代数的な条件に還元されます。

  • L. D. Landau, E. M. Lifshitz, Mechanics, 3rd ed., Butterworth-Heinemann, 1976 — 第 VII 章「正準方程式」。ハミルトン形式の導入からリウヴィルの定理、ポアソン括弧までが最短距離で書かれています。
  • H. Goldstein, C. Poole, J. Safko, Classical Mechanics, 3rd ed., Addison-Wesley, 2002 — 第 8 章「The Hamilton Equations of Motion」。ルジャンドル変換の説明と、電磁場中の荷電粒子など具体例が豊富です。
  • V. I. Arnold, Mathematical Methods of Classical Mechanics, 2nd ed., Springer, 1989 — 第 3 部「Hamiltonian Mechanics」。ルジャンドル変換を凸解析として扱い、位相空間の幾何(シンプレクティック構造)へ進む数学的に厳密な記述です。
  • 山本義隆・中村孔一『解析力学 I・II』朝倉書店、1998 — 日本語で書かれた解析力学の標準的な体系書。ルジャンドル変換と正準形式の扱いが特に丁寧です。
  • 深谷賢治『解析力学と微分形式』岩波書店、1996 — 位相空間を余接束として捉え、微分形式の言葉で正準形式を書き直す入門書。第 6 章以降への橋渡しになります。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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