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リーマン予想とは何か:ゼータ関数の零点が素数を支配する

前提:合同式とフェルマーの小定理:余りだけの世界で計算する

生 Markdown
  • リーマン・ゼータ関数 ζ(s)=n1ns\zeta(s) = \sum_{n \ge 1} n^{-s}Res>1\operatorname{Re} s > 1 で絶対収束し、そこでオイラー積 p(1ps)1\prod_p (1-p^{-s})^{-1} に等しくなります。この一つの等式が「和(すべての自然数)」と「積(素数)」を橋渡しし、ゼータ関数を素数の言語に変えます。
  • ζ\zetas=1s = 1 を唯一の極(単純極、留数 11)として複素平面全体へ有理型に解析接続され、ss1s1-s を結ぶ関数等式を満たします。
  • 関数等式から s=2,4,6,s = -2, -4, -6, \ldots が零点になります(自明な零点)。それ以外の零点は帯 0Res10 \le \operatorname{Re} s \le 1 に閉じ込められます。
  • リーマン予想とは「非自明零点の実部はすべて 1/21/2 である」という主張です。1859 年にリーマンが提示して以来、証明も反証もされていません。
  • 重要性の核心は明示公式にあります。素数の個数の誤差項は ρxρ/ρ\sum_\rho x^{\rho}/\rho という零点にわたる和で書かれ、誤差の大きさは零点の実部そのものです。リーマン予想は π(x)=li(x)+O(xlogx)\pi(x) = \operatorname{li}(x) + O(\sqrt{x}\log x)同値です。

1. 動機:素数の分布を「関数の零点」に翻訳する

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素数は 2,3,5,7,11,2, 3, 5, 7, 11, \ldots と、規則がありそうでない並び方をします。素数の魅力 - 素数定理 で見たように、xx 以下の素数の個数 π(x)\pi(x) は大域的には x/logxx/\log x に近づきます(素数定理(定理 6.2)[素数の魅力と素数定理])。しかし「近づく」だけでは足りません。数論の実際の問題では、π(x)\pi(x) と近似値のがどれくらい小さいかが決定的に効きます。差が x0.9x^{0.9} 程度なのか x\sqrt{x} 程度なのかで、そこから導ける結論はまるで変わります。

素数そのものを直接眺めても、この誤差の大きさは見えてきません。オイラーは 18 世紀に、まったく別の入口を見つけました。s>1s > 1 の実数に対し

n=11ns=p: 素数11ps\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^{s}} = \prod_{p:\ \text{素数}} \frac{1}{1 - p^{-s}}

が成り立つ、というのです。左辺には素数が一つも現れず、右辺は素数だけでできています。両者が等しいのは、素因数分解の一意性という算術の根本事実の言い換えにほかなりません(合同式とフェルマーの小定理 で使った一意分解、すなわち 算術の基本定理(定理 4.2)[素数の魅力と素数定理] が、ここで解析の道具に化けます)。

リーマンは 1859 年の論文で決定的な一歩を踏み出しました。ss複素数に拡張し、ζ(s)\zeta(s) を複素平面全体で定義しなおしたのです。すると素数の個数を表す明示的な公式が得られ、その公式の中に ζ\zeta の零点が現れました。素数の分布のゆらぎは、零点の位置によって完全に支配されていたのです。零点がどこにあるか——それがリーマン予想です。

この章では、ζ(s)\zeta(s) の定義から出発して、オイラー積・解析接続・関数等式を経て、リーマン予想の主張と、それが素数分布と同値である仕組みまでを追います。

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