量子力学における状態は波動関数 ψ ( x , t ) \psi(x,t) ψ ( x , t ) で表され、その時間発展は時間依存シュレーディンガー方程式 i ℏ ∂ t ψ = H ^ ψ i\hbar\,\partial_t \psi = \hat{H}\psi i ℏ ∂ t ψ = H ^ ψ が支配します。時間について 1 階の方程式なので、ある 1 つの時刻の ψ \psi ψ が未来と過去のすべてを決めます。
∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 |\psi(x,t)|^2 ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 は位置についての確率密度 です(ボルンの規則)。この解釈が破綻しないのは、ポテンシャルが実数値のとき全確率 ∫ ∣ ψ ∣ 2 d x \int |\psi|^2 dx ∫ ∣ ψ ∣ 2 d x が時間によらず一定に保たれるからで、これは局所的な確率の保存則(連続の方程式)から従います(定理 4.2 、系 4.3 )。
運動量演算子 p ^ = − i ℏ ∂ x \hat{p} = -i\hbar\,\partial_x p ^ = − i ℏ ∂ x は天下りの規則ではありません。m d ⟨ x ⟩ / d t m \, d\langle x\rangle/dt m d ⟨ x ⟩ / d t をシュレーディンガー方程式から素直に計算すると、この形が必然的に現れます(命題 5.1 )。
期待値の時間微分は交換子で書けます(補題 5.4 )。これを位置と運動量に適用するとエーレンフェストの定理 が出て、期待値がニュートンの運動方程式に似た形を満たします(定理 5.5 )。ただし一般には ⟨ V ′ ( x ) ⟩ ≠ V ′ ( ⟨ x ⟩ ) \langle V'(x)\rangle \neq V'(\langle x\rangle) ⟨ V ′ ( x )⟩ = V ′ (⟨ x ⟩) なので、古典力学が本当に復活するのは波束が十分狭いときだけです。
ハミルトニアンが時間に依らないときは変数分離ができ、時間非依存シュレーディンガー方程式 H ^ φ = E φ \hat{H}\varphi = E\varphi H ^ φ = E φ という固有値問題に帰着します。その解(定常状態)は確率密度が時間変化せず、一般の解はそれらの重ね合わせ ∑ n c n φ n ( x ) e − i E n t / ℏ \sum_n c_n \varphi_n(x)\, e^{-iE_n t/\hbar} ∑ n c n φ n ( x ) e − i E n t /ℏ として書けます。
量子力学の誕生 で見たように、1900 年から 1925 年にかけての「前期量子論」は、黒体放射・光電効果・原子スペクトルという実験事実を、古典力学に量子条件という付帯規則 を貼り付けることで説明していました。ボーアの水素原子模型はその代表です。円軌道の角運動量が ℏ \hbar ℏ の整数倍であるという条件を課すと、バルマー系列の波長がぴたりと再現されます。
しかしこれは理論とは呼びにくいものでした。なぜ角運動量が量子化されるのかは説明されず、水素原子より複雑な系(ヘリウム原子でさえ)には手も足も出ません。何より、量子条件は運動方程式ではありません 。古典力学ならニュートンの運動方程式、あるいは同じことですがハミルトン形式 の正準方程式(定理 4.2)[ハミルトン形式の力学]
x ˙ = ∂ H ∂ p , p ˙ = − ∂ H ∂ x \dot{x} = \frac{\partial H}{\partial p}, \qquad \dot{p} = -\frac{\partial H}{\partial x} x ˙ = ∂ p ∂ H , p ˙ = − ∂ x ∂ H
が、ある時刻の状態 ( x , p ) (x, p) ( x , p ) から任意の時刻の状態を決めてくれます。前期量子論には、これに相当するものが欠けていました。
転機は 1924 年のド・ブロイの提案です。光が波であると同時に粒子でもあるなら、電子のような粒子も波としての側面をもつはずだ、そして波長は運動量と
λ = h p , すなわち p = ℏ k ( k = 2 π / λ ) \lambda = \frac{h}{p}, \qquad \text{すなわち} \qquad p = \hbar k \quad (k = 2\pi/\lambda) λ = p h , すなわち p = ℏ k ( k = 2 π / λ )
で結ばれるはずだ、というものでした。これは実験的に確かめられます(デイヴィソン・ジャーマーの電子線回折)。そして、この提案が正しいなら次の問いが避けられなくなります。その波は何という方程式に従うのか。
チューリッヒでこの問いを突きつけられたシュレーディンガーが 1926 年に発表したのが、いまシュレーディンガー方程式と呼ばれるものです。彼はまず相対論的な形(現在クライン・ゴルドン方程式と呼ばれるもの)を試しましたが、水素原子の微細構造が実験と合わなかったため、非相対論的な形に後退して発表しました。皮肉なことに、当時知られていなかった電子スピンが微細構造に効いていたためで、非相対論版のほうが「正しく」見えたのです。
もう 1 つ、方程式と同じくらい深刻な問題が残っていました。ψ \psi ψ とは何なのか です。シュレーディンガー自身は当初、∣ ψ ∣ 2 |\psi|^2 ∣ ψ ∣ 2 を電荷密度、つまり空間に広がった実体そのものだと考えていました。この解釈は自由粒子の波束が時間とともに際限なく広がってしまうこと(電子が観測されるときは常に一点で見つかること)と両立しません。1926 年、ボルンが散乱問題の論文で ∣ ψ ∣ 2 |\psi|^2 ∣ ψ ∣ 2 を確率密度 と読む解釈を提出し、これが現在の標準になりました。この記事の目標は、この 2 つ、すなわち運動方程式 と確率解釈 を、きちんと積み上げることです。
flowchart TB
subgraph CL["古典力学"]
C1["状態: 位置 x と運動量 p の組"] --> C2["運動方程式: ハミルトンの正準方程式"]
C2 --> C3["測定: x, p の値そのものが得られる"]
end
subgraph QM["量子力学"]
Q1["状態: 波動関数 ψ"] --> Q2["運動方程式: シュレーディンガー方程式"]
Q2 --> Q3["測定: ボルンの規則により確率だけが決まる"]
end
CL -.->|"対応原理: 波束が狭いとき"| QM 古典力学と量子力学の構造の対応。状態・運動方程式・測定という 3 つの層はそのままだが、中身がすべて置き換わる
以下ではまず 1 次元を運動する質量 m m m の 1 粒子系を扱います。3 次元への一般化は ∂ x 2 \partial_x^2 ∂ x 2 をラプラシアン ∇ 2 \nabla^2 ∇ 2 に、d x dx d x を d 3 r d^3\boldsymbol{r} d 3 r に置き換えるだけです。
定義 2.1 (状態と波動関数 )
時刻 t t t における系の状態は、複素数値関数 ψ ( ⋅ , t ) : R → C \psi(\cdot, t) : \mathbb{R} \to \mathbb{C} ψ ( ⋅ , t ) : R → C であって二乗可積分、すなわち
∫ − ∞ ∞ ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 d x < ∞ \int_{-\infty}^{\infty} |\psi(x,t)|^2 \, dx < \infty ∫ − ∞ ∞ ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 d x < ∞ を満たすもので表される。この ψ \psi ψ を波動関数 と呼ぶ。二乗可積分な関数全体のなす複素ベクトル空間を L 2 ( R ) L^2(\mathbb{R}) L 2 ( R ) と書く。
L 2 ( R ) L^2(\mathbb{R}) L 2 ( R ) には内積が入ります。物理の慣習に従い、第 1 引数について反線形 (複素共役が付く)と約束します。
⟨ φ ∣ ψ ⟩ : = ∫ − ∞ ∞ φ ( x ) ‾ ψ ( x ) d x , ∥ ψ ∥ : = ⟨ ψ ∣ ψ ⟩ . \langle \varphi \mid \psi \rangle := \int_{-\infty}^{\infty} \overline{\varphi(x)}\, \psi(x) \, dx, \qquad \|\psi\| := \sqrt{\langle \psi \mid \psi\rangle}. ⟨ φ ∣ ψ ⟩ := ∫ − ∞ ∞ φ ( x ) ψ ( x ) d x , ∥ ψ ∥ := ⟨ ψ ∣ ψ ⟩ .
これが内積の公理(正定値性、第 2 引数について線形、⟨ φ ∣ ψ ⟩ = ⟨ ψ ∣ φ ⟩ ‾ \langle \varphi \mid \psi\rangle = \overline{\langle \psi \mid \varphi\rangle} ⟨ φ ∣ ψ ⟩ = ⟨ ψ ∣ φ ⟩ )を満たすことは定義から直ちに確かめられます。たとえば最後の性質は、⟨ ψ ∣ φ ⟩ ‾ = ∫ ψ ‾ φ d x ‾ = ∫ ψ φ ‾ d x = ⟨ φ ∣ ψ ⟩ \overline{\langle \psi \mid \varphi\rangle} = \overline{\int \overline{\psi}\varphi\,dx} = \int \psi \overline{\varphi}\, dx = \langle \varphi\mid\psi\rangle ⟨ ψ ∣ φ ⟩ = ∫ ψ φ d x = ∫ ψ φ d x = ⟨ φ ∣ ψ ⟩ です。内積空間の一般論については 内積空間とグラム・シュミット直交化 (公理の一覧は 定義 3.1[内積空間とグラム・シュミット直交化] )を参照してください。
ディラックの記法では、状態そのものをケット ∣ ψ ⟩ |\psi\rangle ∣ ψ ⟩ と書き、関数 ψ ( x ) \psi(x) ψ ( x ) は「位置表示での成分」
ψ ( x ) = ⟨ x ∣ ψ ⟩ \psi(x) = \langle x \mid \psi \rangle ψ ( x ) = ⟨ x ∣ ψ ⟩
と読みます。これは有限次元で基底 { e i } \{\boldsymbol{e}_i\} { e i } を取って v i = ⟨ e i , v ⟩ v_i = \langle \boldsymbol{e}_i, \boldsymbol{v}\rangle v i = ⟨ e i , v ⟩ と成分表示するのと同じ発想で、x x x という連続的な添字を持つ基底を使っているだけです(この「基底」を厳密に扱う際の注意は Appendix にまとめます)。ブラ ⟨ φ ∣ \langle \varphi | ⟨ φ ∣ は、ケットに作用して数を返す線形汎関数 ∣ ψ ⟩ ↦ ⟨ φ ∣ ψ ⟩ |\psi\rangle \mapsto \langle \varphi \mid \psi\rangle ∣ ψ ⟩ ↦ ⟨ φ ∣ ψ ⟩ です。
ド・ブロイの関係式(公理 6.1)[量子力学の誕生] p = ℏ k p = \hbar k p = ℏ k とプランク・アインシュタインの関係式(公理 5.1)[量子力学の誕生] E = ℏ ω E = \hbar\omega E = ℏ ω を認めた上で、自由粒子に対応する最も単純な波、平面波
ψ ( x , t ) = A e i ( k x − ω t ) \psi(x,t) = A\, e^{i(kx - \omega t)} ψ ( x , t ) = A e i ( k x − ω t )
を微分してみます。
i ℏ ∂ ψ ∂ t = i ℏ ⋅ ( − i ω ) ψ = ℏ ω ψ = E ψ , − i ℏ ∂ ψ ∂ x = − i ℏ ⋅ ( i k ) ψ = ℏ k ψ = p ψ , − ℏ 2 ∂ 2 ψ ∂ x 2 = − ℏ 2 ⋅ ( i k ) 2 ψ = ℏ 2 k 2 ψ = p 2 ψ . \begin{aligned}
i\hbar \frac{\partial \psi}{\partial t} &= i\hbar \cdot (-i\omega)\psi = \hbar\omega\, \psi = E\,\psi, \\
-i\hbar \frac{\partial \psi}{\partial x} &= -i\hbar \cdot (ik)\psi = \hbar k\, \psi = p\,\psi, \\
-\hbar^2 \frac{\partial^2 \psi}{\partial x^2} &= -\hbar^2 \cdot (ik)^2 \psi = \hbar^2 k^2 \psi = p^2 \psi .
\end{aligned} i ℏ ∂ t ∂ ψ − i ℏ ∂ x ∂ ψ − ℏ 2 ∂ x 2 ∂ 2 ψ = i ℏ ⋅ ( − iω ) ψ = ℏ ω ψ = E ψ , = − i ℏ ⋅ ( ik ) ψ = ℏ k ψ = p ψ , = − ℏ 2 ⋅ ( ik ) 2 ψ = ℏ 2 k 2 ψ = p 2 ψ .
つまり平面波に対しては、エネルギーを掛ける操作が i ℏ ∂ t i\hbar\,\partial_t i ℏ ∂ t に、運動量を掛ける操作が − i ℏ ∂ x -i\hbar\,\partial_x − i ℏ ∂ x に置き換わります 。ここで非相対論的な自由粒子のエネルギーと運動量の関係 E = p 2 / ( 2 m ) E = p^2/(2m) E = p 2 / ( 2 m ) を使うと、
i ℏ ∂ ψ ∂ t = E ψ = p 2 2 m ψ = − ℏ 2 2 m ∂ 2 ψ ∂ x 2 i\hbar \frac{\partial \psi}{\partial t} = E\psi = \frac{p^2}{2m}\psi = -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2 \psi}{\partial x^2} i ℏ ∂ t ∂ ψ = E ψ = 2 m p 2 ψ = − 2 m ℏ 2 ∂ x 2 ∂ 2 ψ
が平面波について恒等的に成り立ちます。ポテンシャル V ( x ) V(x) V ( x ) の中を動く粒子なら古典的には E = p 2 / ( 2 m ) + V ( x ) E = p^2/(2m) + V(x) E = p 2 / ( 2 m ) + V ( x ) ですから、右辺に V ( x ) ψ V(x)\psi V ( x ) ψ を加えるのが自然な推測です。
定義 3.1 (時間依存シュレーディンガー方程式 )
実数値関数 V : R → R V : \mathbb{R} \to \mathbb{R} V : R → R (ポテンシャル)が与えられているとする。質量 m m m の 1 粒子の波動関数 ψ ( x , t ) \psi(x,t) ψ ( x , t ) は
i ℏ ∂ ψ ∂ t ( x , t ) = H ^ ψ ( x , t ) , H ^ : = − ℏ 2 2 m ∂ 2 ∂ x 2 + V ( x ) i\hbar \frac{\partial \psi}{\partial t}(x,t) = \hat{H}\psi(x,t), \qquad
\hat{H} := -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2} + V(x) i ℏ ∂ t ∂ ψ ( x , t ) = H ^ ψ ( x , t ) , H ^ := − 2 m ℏ 2 ∂ x 2 ∂ 2 + V ( x ) に従う。この偏微分方程式を時間依存シュレーディンガー方程式 、演算子 H ^ \hat{H} H ^ をハミルトニアン演算子 と呼ぶ。ディラック記法では
i ℏ d d t ∣ ψ ( t ) ⟩ = H ^ ∣ ψ ( t ) ⟩ i\hbar \frac{d}{dt}|\psi(t)\rangle = \hat{H}\,|\psi(t)\rangle i ℏ d t d ∣ ψ ( t )⟩ = H ^ ∣ ψ ( t )⟩ と書く。
H ^ \hat{H} H ^ の形は、古典的なハミルトニアン H ( x , p ) = p 2 / ( 2 m ) + V ( x ) H(x,p) = p^2/(2m) + V(x) H ( x , p ) = p 2 / ( 2 m ) + V ( x ) において x → x ^ x \to \hat{x} x → x ^ (x x x を掛ける演算子)、p → p ^ = − i ℏ ∂ x p \to \hat{p} = -i\hbar\,\partial_x p → p ^ = − i ℏ ∂ x と置き換えたものになっています。この置き換えを正準量子化 と呼びます。古典力学でハミルトニアンが時間発展の生成子であったこと(ハミルトン形式の力学 )が、ここでもそのまま生き残っているわけです。
命題 3.3 (重ね合わせの原理 )
V V V を固定する。ψ 1 , ψ 2 \psi_1, \psi_2 ψ 1 , ψ 2 がともに 定義 3.1 の解であり、c 1 , c 2 ∈ C c_1, c_2 \in \mathbb{C} c 1 , c 2 ∈ C が定数(時間にも位置にも依らない)ならば、c 1 ψ 1 + c 2 ψ 2 c_1\psi_1 + c_2\psi_2 c 1 ψ 1 + c 2 ψ 2 もまた同じ方程式の解である。
証明(命題 3.3) ∂ t \partial_t ∂ t は線形です。また H ^ \hat{H} H ^ も、∂ x 2 \partial_x^2 ∂ x 2 が線形であり V ( x ) V(x) V ( x ) を掛ける操作が線形であることから線形です。よって
i ℏ ∂ ∂ t ( c 1 ψ 1 + c 2 ψ 2 ) = c 1 ( i ℏ ∂ ψ 1 ∂ t ) + c 2 ( i ℏ ∂ ψ 2 ∂ t ) = c 1 H ^ ψ 1 + c 2 H ^ ψ 2 ( ψ 1 , ψ 2 が解であることを使った ) = H ^ ( c 1 ψ 1 + c 2 ψ 2 ) \begin{aligned}
i\hbar \frac{\partial}{\partial t}\left(c_1\psi_1 + c_2\psi_2\right)
&= c_1 \left(i\hbar \frac{\partial \psi_1}{\partial t}\right) + c_2\left(i\hbar\frac{\partial \psi_2}{\partial t}\right) \\
&= c_1 \hat{H}\psi_1 + c_2 \hat{H}\psi_2 \qquad (\text{$\psi_1, \psi_2$ が解であることを使った}) \\
&= \hat{H}\left(c_1\psi_1 + c_2\psi_2\right)
\end{aligned} i ℏ ∂ t ∂ ( c 1 ψ 1 + c 2 ψ 2 ) = c 1 ( i ℏ ∂ t ∂ ψ 1 ) + c 2 ( i ℏ ∂ t ∂ ψ 2 ) = c 1 H ^ ψ 1 + c 2 H ^ ψ 2 ( ψ 1 , ψ 2 が解であることを使った ) = H ^ ( c 1 ψ 1 + c 2 ψ 2 ) となります。
∎
この単純な命題が、量子力学のほとんどすべての「不思議」の源です。二重スリットの干渉も、あとで見る定常状態の重ね合わせによる振動も、シュレーディンガー方程式が線形であるという 1 点から出ています。なお、c 1 , c 2 c_1, c_2 c 1 , c 2 が定数でなければならないことに注意してください。c 1 ( t ) c_1(t) c 1 ( t ) が時間に依ると余分な項 i ℏ c ˙ 1 ψ 1 i\hbar\dot{c}_1\psi_1 i ℏ c ˙ 1 ψ 1 が出て、この計算は成り立ちません。
定義 4.1 (ボルンの規則(位置の確率密度) )
波動関数 ψ \psi ψ が
⟨ ψ ∣ ψ ⟩ = ∫ − ∞ ∞ ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 d x = 1 \langle \psi \mid \psi \rangle = \int_{-\infty}^{\infty} |\psi(x,t)|^2\, dx = 1 ⟨ ψ ∣ ψ ⟩ = ∫ − ∞ ∞ ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 d x = 1 を満たすとき、ψ \psi ψ は規格化されている という。このとき、時刻 t t t に粒子の位置を測定して区間 [ a , b ] [a,b] [ a , b ] に見出す確率は
P ( a ≤ x ≤ b ; t ) = ∫ a b ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 d x P(a \le x \le b; t) = \int_a^b |\psi(x,t)|^2\, dx P ( a ≤ x ≤ b ; t ) = ∫ a b ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 d x で与えられる。ρ ( x , t ) : = ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 \rho(x,t) := |\psi(x,t)|^2 ρ ( x , t ) := ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 を確率密度 と呼ぶ。
ボルンの規則。確率密度 ρ の曲線の下の、区間 [a, b] にわたる面積が、その区間に粒子を見出す確率になる
この解釈が意味をなすためには、∫ ∣ ψ ∣ 2 d x = 1 \int|\psi|^2 dx = 1 ∫ ∣ ψ ∣ 2 d x = 1 がすべての時刻で 成り立つ必要があります。t = 0 t = 0 t = 0 で規格化しておいたのに t = 1 t = 1 t = 1 秒後には総和が 0.8 0.8 0.8 になっていたら、確率解釈は破綻します。これは要請ではなく、シュレーディンガー方程式から証明できる事実です。
定理 4.2 (確率の連続の方程式 )
V V V を実数値関数とし、ψ \psi ψ を 定義 3.1 の解で、x x x について 2 回連続微分可能かつ t t t について 1 回連続微分可能なものとする。
ρ ( x , t ) : = ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 , j ( x , t ) : = ℏ 2 m i ( ψ ‾ ∂ ψ ∂ x − ∂ ψ ‾ ∂ x ψ ) = ℏ m I m ( ψ ‾ ∂ ψ ∂ x ) \rho(x,t) := |\psi(x,t)|^2, \qquad
j(x,t) := \frac{\hbar}{2mi}\left(\overline{\psi}\,\frac{\partial \psi}{\partial x} - \frac{\partial\overline{\psi}}{\partial x}\,\psi\right)
= \frac{\hbar}{m}\,\mathrm{Im}\!\left(\overline{\psi}\,\frac{\partial \psi}{\partial x}\right) ρ ( x , t ) := ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 , j ( x , t ) := 2 mi ℏ ( ψ ∂ x ∂ ψ − ∂ x ∂ ψ ψ ) = m ℏ Im ( ψ ∂ x ∂ ψ ) とおくと、
∂ ρ ∂ t + ∂ j ∂ x = 0 \frac{\partial \rho}{\partial t} + \frac{\partial j}{\partial x} = 0 ∂ t ∂ ρ + ∂ x ∂ j = 0 がすべての x , t x, t x , t で成り立つ。j j j を確率流密度 と呼ぶ。
証明(定理 4.2) まず j j j の 2 つの表式が一致することを見ます。z : = ψ ‾ ∂ x ψ z := \overline{\psi}\,\partial_x\psi z := ψ ∂ x ψ とおくと z ‾ = ψ ∂ x ψ ‾ \overline{z} = \psi\,\partial_x\overline{\psi} z = ψ ∂ x ψ なので、z − z ‾ = 2 i I m ( z ) z - \overline{z} = 2i\,\mathrm{Im}(z) z − z = 2 i Im ( z ) より
ℏ 2 m i ( z − z ‾ ) = ℏ 2 m i ⋅ 2 i I m ( z ) = ℏ m I m ( z ) \frac{\hbar}{2mi}(z - \overline{z}) = \frac{\hbar}{2mi}\cdot 2i\,\mathrm{Im}(z) = \frac{\hbar}{m}\mathrm{Im}(z) 2 mi ℏ ( z − z ) = 2 mi ℏ ⋅ 2 i Im ( z ) = m ℏ Im ( z ) です。
次に本題です。定義 3.1 の両辺を i ℏ i\hbar i ℏ で割ると
∂ ψ ∂ t = 1 i ℏ H ^ ψ = i ℏ 2 m ∂ 2 ψ ∂ x 2 − i ℏ V ψ . \frac{\partial \psi}{\partial t} = \frac{1}{i\hbar}\hat{H}\psi = \frac{i\hbar}{2m}\frac{\partial^2\psi}{\partial x^2} - \frac{i}{\hbar}V\psi . ∂ t ∂ ψ = i ℏ 1 H ^ ψ = 2 m i ℏ ∂ x 2 ∂ 2 ψ − ℏ i V ψ . この式の複素共役を取ります。ここで**V V V が実数値であるという仮定**を使うと V ‾ = V \overline{V} = V V = V なので、
∂ ψ ‾ ∂ t = − i ℏ 2 m ∂ 2 ψ ‾ ∂ x 2 + i ℏ V ψ ‾ . \frac{\partial \overline{\psi}}{\partial t} = -\frac{i\hbar}{2m}\frac{\partial^2\overline{\psi}}{\partial x^2} + \frac{i}{\hbar}V\overline{\psi}. ∂ t ∂ ψ = − 2 m i ℏ ∂ x 2 ∂ 2 ψ + ℏ i V ψ . ρ = ψ ‾ ψ \rho = \overline{\psi}\psi ρ = ψ ψ を時間微分して両者を代入すると、
∂ ρ ∂ t = ∂ ψ ‾ ∂ t ψ + ψ ‾ ∂ ψ ∂ t = ( − i ℏ 2 m ψ ‾ x x + i ℏ V ψ ‾ ) ψ + ψ ‾ ( i ℏ 2 m ψ x x − i ℏ V ψ ) = i ℏ 2 m ( ψ ‾ ψ x x − ψ ‾ x x ψ ) + i ℏ V ψ ‾ ψ − i ℏ V ψ ‾ ψ = i ℏ 2 m ( ψ ‾ ψ x x − ψ ‾ x x ψ ) . \begin{aligned}
\frac{\partial \rho}{\partial t}
&= \frac{\partial \overline{\psi}}{\partial t}\psi + \overline{\psi}\frac{\partial \psi}{\partial t} \\
&= \left(-\frac{i\hbar}{2m}\overline{\psi}_{xx} + \frac{i}{\hbar}V\overline{\psi}\right)\psi
+ \overline{\psi}\left(\frac{i\hbar}{2m}\psi_{xx} - \frac{i}{\hbar}V\psi\right) \\
&= \frac{i\hbar}{2m}\left(\overline{\psi}\,\psi_{xx} - \overline{\psi}_{xx}\,\psi\right)
+ \frac{i}{\hbar}V\overline{\psi}\psi - \frac{i}{\hbar}V\overline{\psi}\psi \\
&= \frac{i\hbar}{2m}\left(\overline{\psi}\,\psi_{xx} - \overline{\psi}_{xx}\,\psi\right).
\end{aligned} ∂ t ∂ ρ = ∂ t ∂ ψ ψ + ψ ∂ t ∂ ψ = ( − 2 m i ℏ ψ xx + ℏ i V ψ ) ψ + ψ ( 2 m i ℏ ψ xx − ℏ i V ψ ) = 2 m i ℏ ( ψ ψ xx − ψ xx ψ ) + ℏ i V ψ ψ − ℏ i V ψ ψ = 2 m i ℏ ( ψ ψ xx − ψ xx ψ ) . ポテンシャルの項がちょうど打ち消し合ったことに注意してください。これは V V V が実数値であることの直接の帰結です。最後に、積の微分法から
∂ ∂ x ( ψ ‾ ψ x − ψ ‾ x ψ ) = ψ ‾ x ψ x + ψ ‾ ψ x x − ψ ‾ x x ψ − ψ ‾ x ψ x = ψ ‾ ψ x x − ψ ‾ x x ψ \frac{\partial}{\partial x}\left(\overline{\psi}\psi_x - \overline{\psi}_x\psi\right)
= \overline{\psi}_x\psi_x + \overline{\psi}\psi_{xx} - \overline{\psi}_{xx}\psi - \overline{\psi}_x\psi_x
= \overline{\psi}\psi_{xx} - \overline{\psi}_{xx}\psi ∂ x ∂ ( ψ ψ x − ψ x ψ ) = ψ x ψ x + ψ ψ xx − ψ xx ψ − ψ x ψ x = ψ ψ xx − ψ xx ψ なので、
∂ ρ ∂ t = i ℏ 2 m ∂ ∂ x ( ψ ‾ ψ x − ψ ‾ x ψ ) = − ∂ ∂ x [ ℏ 2 m i ( ψ ‾ ψ x − ψ ‾ x ψ ) ] = − ∂ j ∂ x \frac{\partial \rho}{\partial t} = \frac{i\hbar}{2m}\frac{\partial}{\partial x}\left(\overline{\psi}\psi_x - \overline{\psi}_x\psi\right)
= -\frac{\partial}{\partial x}\left[\frac{\hbar}{2mi}\left(\overline{\psi}\psi_x - \overline{\psi}_x\psi\right)\right]
= -\frac{\partial j}{\partial x} ∂ t ∂ ρ = 2 m i ℏ ∂ x ∂ ( ψ ψ x − ψ x ψ ) = − ∂ x ∂ [ 2 mi ℏ ( ψ ψ x − ψ x ψ ) ] = − ∂ x ∂ j を得ます。途中で i ℏ / ( 2 m ) = − ℏ / ( 2 m i ) i\hbar/(2m) = -\hbar/(2mi) i ℏ/ ( 2 m ) = − ℏ/ ( 2 mi ) を使いました(1 / i = − i 1/i = -i 1/ i = − i より)。
∎
この形は流体力学や電磁気学の連続の方程式(電荷保存則)とまったく同じです。「確率は湧き出しも消滅もせず、流れとして移動するだけである」という主張だと読めます。
系 4.3 (規格化の保存 )
定理 4.2 の仮定に加えて、各時刻で ∣ x ∣ → ∞ |x| \to \infty ∣ x ∣ → ∞ のとき ψ ( x , t ) → 0 \psi(x,t) \to 0 ψ ( x , t ) → 0 かつ ∂ x ψ ( x , t ) → 0 \partial_x \psi(x,t) \to 0 ∂ x ψ ( x , t ) → 0 であり、∫ ∣ ψ ∣ 2 d x \int |\psi|^2 dx ∫ ∣ ψ ∣ 2 d x の時間微分と積分が交換できるとする。このとき
d d t ∫ − ∞ ∞ ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 d x = 0 \frac{d}{dt}\int_{-\infty}^{\infty} |\psi(x,t)|^2 dx = 0 d t d ∫ − ∞ ∞ ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 d x = 0 である。特に、t = 0 t = 0 t = 0 で規格化されていれば、すべての時刻で規格化されている。
証明(系 4.3) 微分と積分の交換を認めた上で 定理 4.2 を使うと
d d t ∫ − ∞ ∞ ρ d x = ∫ − ∞ ∞ ∂ ρ ∂ t d x = − ∫ − ∞ ∞ ∂ j ∂ x d x = − [ j ( x , t ) ] x = − ∞ x = + ∞ . \frac{d}{dt}\int_{-\infty}^{\infty}\rho\, dx
= \int_{-\infty}^{\infty}\frac{\partial \rho}{\partial t}\, dx
= -\int_{-\infty}^{\infty}\frac{\partial j}{\partial x}\, dx
= -\Bigl[\, j(x,t) \,\Bigr]_{x=-\infty}^{x=+\infty}. d t d ∫ − ∞ ∞ ρ d x = ∫ − ∞ ∞ ∂ t ∂ ρ d x = − ∫ − ∞ ∞ ∂ x ∂ j d x = − [ j ( x , t ) ] x = − ∞ x = + ∞ . j = ( ℏ / m ) I m ( ψ ‾ ∂ x ψ ) j = (\hbar/m)\,\mathrm{Im}(\overline{\psi}\,\partial_x\psi) j = ( ℏ/ m ) Im ( ψ ∂ x ψ ) は ψ \psi ψ と ∂ x ψ \partial_x\psi ∂ x ψ の積なので、仮定よりどちらも 0 0 0 に収束し、j → 0 j \to 0 j → 0 です。したがって右辺は 0 0 0 になります。
∎
つまり、規格化は最初に 1 回やれば済みます。これは決して自明ではなく、V V V が実数値であることに支えられた性質です。
例 4.5 (ガウス型波束の規格化と確率の計算 )
a > 0 a > 0 a > 0 を定数として ψ ( x ) = A e − x 2 / ( 2 a 2 ) \psi(x) = A\,e^{-x^2/(2a^2)} ψ ( x ) = A e − x 2 / ( 2 a 2 ) (A > 0 A > 0 A > 0 )を規格化します。
∫ − ∞ ∞ ∣ ψ ∣ 2 d x = A 2 ∫ − ∞ ∞ e − x 2 / a 2 d x = A 2 ⋅ a π \int_{-\infty}^{\infty}|\psi|^2 dx = A^2\int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2/a^2}\,dx = A^2 \cdot a\sqrt{\pi} ∫ − ∞ ∞ ∣ ψ ∣ 2 d x = A 2 ∫ − ∞ ∞ e − x 2 / a 2 d x = A 2 ⋅ a π です(ガウス積分 ∫ − ∞ ∞ e − α x 2 d x = π / α \int_{-\infty}^{\infty}e^{-\alpha x^2}dx = \sqrt{\pi/\alpha} ∫ − ∞ ∞ e − α x 2 d x = π / α に α = 1 / a 2 \alpha = 1/a^2 α = 1/ a 2 を代入しました)。これが 1 1 1 に等しいので
A = 1 ( π a 2 ) 1 / 4 , ψ ( x ) = 1 ( π a 2 ) 1 / 4 e − x 2 / ( 2 a 2 ) . A = \frac{1}{(\pi a^2)^{1/4}}, \qquad \psi(x) = \frac{1}{(\pi a^2)^{1/4}}\,e^{-x^2/(2a^2)} . A = ( π a 2 ) 1/4 1 , ψ ( x ) = ( π a 2 ) 1/4 1 e − x 2 / ( 2 a 2 ) . この状態で粒子を ∣ x ∣ ≤ a |x| \le a ∣ x ∣ ≤ a に見出す確率を求めます。u = x / a u = x/a u = x / a と置換すると
P ( ∣ x ∣ ≤ a ) = 1 a π ∫ − a a e − x 2 / a 2 d x = 1 π ∫ − 1 1 e − u 2 d u = 2 π ∫ 0 1 e − u 2 d u = erf ( 1 ) ≈ 0.8427. P(|x| \le a) = \frac{1}{a\sqrt{\pi}}\int_{-a}^{a} e^{-x^2/a^2}dx
= \frac{1}{\sqrt{\pi}}\int_{-1}^{1}e^{-u^2}du
= \frac{2}{\sqrt{\pi}}\int_0^1 e^{-u^2}du
= \operatorname{erf}(1) \approx 0.8427 . P ( ∣ x ∣ ≤ a ) = a π 1 ∫ − a a e − x 2 / a 2 d x = π 1 ∫ − 1 1 e − u 2 d u = π 2 ∫ 0 1 e − u 2 d u = erf ( 1 ) ≈ 0.8427. 途中で被積分関数が偶関数であることを使いました。erf \operatorname{erf} erf は誤差関数 erf ( z ) = ( 2 / π ) ∫ 0 z e − u 2 d u \operatorname{erf}(z) = (2/\sqrt{\pi})\int_0^z e^{-u^2}du erf ( z ) = ( 2/ π ) ∫ 0 z e − u 2 d u です。約 84% ということになります。
確率密度がわかれば、位置の平均値は確率論の定義どおりに書けます。
⟨ x ⟩ = ∫ − ∞ ∞ x ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 d x = ∫ − ∞ ∞ ψ ‾ x ψ d x = ⟨ ψ ∣ x ^ ∣ ψ ⟩ . \langle x \rangle = \int_{-\infty}^{\infty} x\,|\psi(x,t)|^2\,dx = \int_{-\infty}^{\infty}\overline{\psi}\,x\,\psi\,dx = \langle \psi \mid \hat{x} \mid \psi\rangle . ⟨ x ⟩ = ∫ − ∞ ∞ x ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 d x = ∫ − ∞ ∞ ψ x ψ d x = ⟨ ψ ∣ x ^ ∣ ψ ⟩ .
問題は運動量です。運動量は位置の関数ではないので、∫ p ∣ ψ ∣ 2 d x \int p\,|\psi|^2 dx ∫ p ∣ ψ ∣ 2 d x という式は意味をもちません。ではどう定義すべきか。手がかりは古典力学との対応です。古典的には p = m x ˙ p = m\dot{x} p = m x ˙ でしたから、量子力学でも ⟨ p ⟩ \langle p \rangle ⟨ p ⟩ は m d ⟨ x ⟩ / d t m\,d\langle x\rangle/dt m d ⟨ x ⟩ / d t であってほしい。実は、これを定義ではなく計算 として実行すると、運動量演算子の形が出てきます。
命題 5.1 (運動量演算子の導出 )
系 4.3 と同じ仮定(V V V は実数値、ψ \psi ψ は規格化された解、∣ x ∣ → ∞ |x|\to\infty ∣ x ∣ → ∞ で ψ → 0 \psi \to 0 ψ → 0 、∂ x ψ → 0 \partial_x\psi \to 0 ∂ x ψ → 0 、さらに x j ( x , t ) → 0 x\,j(x,t) \to 0 x j ( x , t ) → 0 )のもとで
m d ⟨ x ⟩ d t = ∫ − ∞ ∞ ψ ‾ ( − i ℏ ∂ ∂ x ) ψ d x m\frac{d\langle x\rangle}{dt} = \int_{-\infty}^{\infty} \overline{\psi}\left(-i\hbar\frac{\partial}{\partial x}\right)\psi\, dx m d t d ⟨ x ⟩ = ∫ − ∞ ∞ ψ ( − i ℏ ∂ x ∂ ) ψ d x が成り立つ。
証明(命題 5.1) 微分と積分を交換し、定理 4.2 を使います。
d ⟨ x ⟩ d t = ∫ − ∞ ∞ x ∂ ρ ∂ t d x = − ∫ − ∞ ∞ x ∂ j ∂ x d x . \frac{d\langle x\rangle}{dt} = \int_{-\infty}^{\infty} x\,\frac{\partial \rho}{\partial t}\,dx
= -\int_{-\infty}^{\infty} x\,\frac{\partial j}{\partial x}\,dx . d t d ⟨ x ⟩ = ∫ − ∞ ∞ x ∂ t ∂ ρ d x = − ∫ − ∞ ∞ x ∂ x ∂ j d x . 部分積分すると
− ∫ − ∞ ∞ x ∂ j ∂ x d x = − [ x j ] − ∞ ∞ + ∫ − ∞ ∞ j d x = ∫ − ∞ ∞ j d x -\int_{-\infty}^{\infty} x\,\frac{\partial j}{\partial x}\,dx
= -\Bigl[\,x\,j\,\Bigr]_{-\infty}^{\infty} + \int_{-\infty}^{\infty} j\,dx
= \int_{-\infty}^{\infty} j\,dx − ∫ − ∞ ∞ x ∂ x ∂ j d x = − [ x j ] − ∞ ∞ + ∫ − ∞ ∞ j d x = ∫ − ∞ ∞ j d x となります(第 1 項は仮定 x j → 0 x\,j \to 0 x j → 0 により消えます)。次に j j j の定義を代入し、第 2 項を部分積分します。
∫ − ∞ ∞ ∂ ψ ‾ ∂ x ψ d x = [ ψ ‾ ψ ] − ∞ ∞ − ∫ − ∞ ∞ ψ ‾ ∂ ψ ∂ x d x = − ∫ − ∞ ∞ ψ ‾ ∂ ψ ∂ x d x \int_{-\infty}^{\infty} \frac{\partial \overline{\psi}}{\partial x}\,\psi\, dx
= \Bigl[\,\overline{\psi}\psi\,\Bigr]_{-\infty}^{\infty} - \int_{-\infty}^{\infty}\overline{\psi}\,\frac{\partial \psi}{\partial x}\,dx
= -\int_{-\infty}^{\infty}\overline{\psi}\,\frac{\partial\psi}{\partial x}\,dx ∫ − ∞ ∞ ∂ x ∂ ψ ψ d x = [ ψ ψ ] − ∞ ∞ − ∫ − ∞ ∞ ψ ∂ x ∂ ψ d x = − ∫ − ∞ ∞ ψ ∂ x ∂ ψ d x (境界項は ψ → 0 \psi \to 0 ψ → 0 より消えます)。よって
∫ − ∞ ∞ j d x = ℏ 2 m i ∫ ( ψ ‾ ψ x − ψ ‾ x ψ ) d x = ℏ 2 m i ⋅ 2 ∫ ψ ‾ ψ x d x = 1 m ∫ ψ ‾ ( ℏ i ∂ ∂ x ) ψ d x . \int_{-\infty}^{\infty} j\,dx
= \frac{\hbar}{2mi}\int \left(\overline{\psi}\psi_x - \overline{\psi}_x\psi\right)dx
= \frac{\hbar}{2mi}\cdot 2\int \overline{\psi}\,\psi_x\,dx
= \frac{1}{m}\int \overline{\psi}\left(\frac{\hbar}{i}\frac{\partial}{\partial x}\right)\psi\,dx . ∫ − ∞ ∞ j d x = 2 mi ℏ ∫ ( ψ ψ x − ψ x ψ ) d x = 2 mi ℏ ⋅ 2 ∫ ψ ψ x d x = m 1 ∫ ψ ( i ℏ ∂ x ∂ ) ψ d x . ℏ / i = − i ℏ \hbar/i = -i\hbar ℏ/ i = − i ℏ ですから、両辺に m m m を掛けて主張を得ます。
∎
この結果は、p ^ : = − i ℏ ∂ x \hat{p} := -i\hbar\,\partial_x p ^ := − i ℏ ∂ x という演算子を導入して ⟨ p ⟩ : = ⟨ ψ ∣ p ^ ∣ ψ ⟩ \langle p\rangle := \langle \psi \mid \hat{p}\mid\psi\rangle ⟨ p ⟩ := ⟨ ψ ∣ p ^ ∣ ψ ⟩ と定義せよ、と言っています。§3.1 で平面波から読み取った形とぴったり一致しました。一般に次のように定めます。
定義 5.2 (物理量の期待値 )
規格化された波動関数 ψ \psi ψ と、ψ \psi ψ に作用する線形演算子 A ^ \hat{A} A ^ に対し、
⟨ A ^ ⟩ ψ : = ⟨ ψ ∣ A ^ ∣ ψ ⟩ = ∫ − ∞ ∞ ψ ( x ) ‾ ( A ^ ψ ) ( x ) d x \langle \hat{A}\rangle_\psi := \langle \psi \mid \hat{A} \mid \psi\rangle = \int_{-\infty}^{\infty}\overline{\psi(x)}\,\bigl(\hat{A}\psi\bigr)(x)\,dx ⟨ A ^ ⟩ ψ := ⟨ ψ ∣ A ^ ∣ ψ ⟩ = ∫ − ∞ ∞ ψ ( x ) ( A ^ ψ ) ( x ) d x を A ^ \hat{A} A ^ の期待値 と呼ぶ。特に x ^ \hat{x} x ^ (x x x を掛ける)、p ^ = − i ℏ ∂ x \hat{p} = -i\hbar\,\partial_x p ^ = − i ℏ ∂ x 、H ^ = p ^ 2 / ( 2 m ) + V ( x ^ ) \hat{H} = \hat{p}^2/(2m) + V(\hat{x}) H ^ = p ^ 2 / ( 2 m ) + V ( x ^ ) に対して、位置・運動量・エネルギーの期待値が定まる。
測定値の平均は実数でなければなりません。この要求が、物理量に対応する演算子を強く制限します。
命題 5.3 (エルミート演算子の期待値は実数 )
線形演算子 A ^ \hat{A} A ^ が、考えている波動関数の族に属する任意の φ , ψ \varphi, \psi φ , ψ に対して ⟨ φ ∣ A ^ ψ ⟩ = ⟨ A ^ φ ∣ ψ ⟩ \langle \varphi \mid \hat{A}\psi\rangle = \langle \hat{A}\varphi \mid \psi\rangle ⟨ φ ∣ A ^ ψ ⟩ = ⟨ A ^ φ ∣ ψ ⟩ を満たすとする(このとき A ^ \hat{A} A ^ はエルミート であるという)。このとき任意の規格化された ψ \psi ψ について ⟨ A ^ ⟩ ψ ∈ R \langle \hat{A}\rangle_\psi \in \mathbb{R} ⟨ A ^ ⟩ ψ ∈ R である。また x ^ \hat{x} x ^ と p ^ = − i ℏ ∂ x \hat{p} = -i\hbar\partial_x p ^ = − i ℏ ∂ x は、無限遠で 0 0 0 に収束する滑らかな関数の族の上でエルミートである。
証明(命題 5.3) まず前半です。内積の性質 ⟨ φ ∣ ψ ⟩ = ⟨ ψ ∣ φ ⟩ ‾ \langle \varphi\mid\psi\rangle = \overline{\langle \psi\mid\varphi\rangle} ⟨ φ ∣ ψ ⟩ = ⟨ ψ ∣ φ ⟩ (§2)とエルミート性から
⟨ A ^ ⟩ ψ = ⟨ ψ ∣ A ^ ψ ⟩ = ⟨ A ^ ψ ∣ ψ ⟩ = ⟨ ψ ∣ A ^ ψ ⟩ ‾ = ⟨ A ^ ⟩ ψ ‾ \langle \hat{A}\rangle_\psi = \langle \psi \mid \hat{A}\psi \rangle = \langle \hat{A}\psi \mid \psi\rangle = \overline{\langle \psi \mid \hat{A}\psi\rangle} = \overline{\langle \hat{A}\rangle_\psi} ⟨ A ^ ⟩ ψ = ⟨ ψ ∣ A ^ ψ ⟩ = ⟨ A ^ ψ ∣ ψ ⟩ = ⟨ ψ ∣ A ^ ψ ⟩ = ⟨ A ^ ⟩ ψ となり、自分自身の複素共役と等しい複素数は実数です。
次に x ^ \hat{x} x ^ です。x x x が実数であることから
⟨ φ ∣ x ^ ψ ⟩ = ∫ φ ‾ x ψ d x = ∫ x φ ‾ ψ d x = ⟨ x ^ φ ∣ ψ ⟩ . \langle \varphi \mid \hat{x}\psi\rangle = \int \overline{\varphi}\,x\psi\,dx = \int \overline{x\varphi}\,\psi\,dx = \langle \hat{x}\varphi\mid\psi\rangle . ⟨ φ ∣ x ^ ψ ⟩ = ∫ φ x ψ d x = ∫ x φ ψ d x = ⟨ x ^ φ ∣ ψ ⟩ . 最後に p ^ \hat{p} p ^ です。部分積分により
⟨ φ ∣ p ^ ψ ⟩ = ∫ − ∞ ∞ φ ‾ ( − i ℏ ψ x ) d x = − i ℏ [ φ ‾ ψ ] − ∞ ∞ + i ℏ ∫ − ∞ ∞ φ ‾ x ψ d x = ∫ − ∞ ∞ ( − i ℏ φ x ) ‾ ψ d x = ⟨ p ^ φ ∣ ψ ⟩ \begin{aligned}
\langle \varphi \mid \hat{p}\psi\rangle
&= \int_{-\infty}^{\infty} \overline{\varphi}\,\left(-i\hbar\,\psi_x\right) dx \\
&= -i\hbar\Bigl[\,\overline{\varphi}\psi\,\Bigr]_{-\infty}^{\infty} + i\hbar\int_{-\infty}^{\infty}\overline{\varphi}_x\,\psi\,dx \\
&= \int_{-\infty}^{\infty}\overline{\left(-i\hbar\,\varphi_x\right)}\,\psi\,dx
= \langle \hat{p}\varphi\mid\psi\rangle
\end{aligned} ⟨ φ ∣ p ^ ψ ⟩ = ∫ − ∞ ∞ φ ( − i ℏ ψ x ) d x = − i ℏ [ φ ψ ] − ∞ ∞ + i ℏ ∫ − ∞ ∞ φ x ψ d x = ∫ − ∞ ∞ ( − i ℏ φ x ) ψ d x = ⟨ p ^ φ ∣ ψ ⟩ です。境界項は φ , ψ → 0 \varphi, \psi \to 0 φ , ψ → 0 より消えました。また最後から 2 つ目の等号では − i ℏ φ x ‾ = + i ℏ φ ‾ x \overline{-i\hbar\varphi_x} = +i\hbar\,\overline{\varphi}_x − i ℏ φ x = + i ℏ φ x を使いました。ここで p ^ \hat{p} p ^ の定義にある − i -i − i が効いていることに注意してください。もし p ^ \hat{p} p ^ を ∂ x \partial_x ∂ x (i i i なし)と定義すると部分積分で符号が反転し、⟨ φ ∣ ∂ x ψ ⟩ = − ⟨ ∂ x φ ∣ ψ ⟩ \langle \varphi\mid\partial_x\psi\rangle = -\langle \partial_x\varphi\mid\psi\rangle ⟨ φ ∣ ∂ x ψ ⟩ = − ⟨ ∂ x φ ∣ ψ ⟩ となってエルミートになりません。
∎
演算子のエルミート性、固有値の実性、固有関数の直交性といった話題は 演算子と物理量 で本格的に扱います(定理 3.5[演算子と物理量] )。数学的な背景は スペクトル定理 が有限次元版です。
補題 5.4 (期待値の時間微分 )
ψ \psi ψ を 定義 3.1 の規格化された解、A ^ \hat{A} A ^ をエルミートな演算子(時間に陽に依存してもよい)とし、H ^ \hat{H} H ^ もエルミートであるとする。必要な微分と積分の交換、および部分積分の境界項の消失を仮定すると、
d d t ⟨ A ^ ⟩ ψ = i ℏ ⟨ [ H ^ , A ^ ] ⟩ ψ + ⟨ ∂ A ^ ∂ t ⟩ ψ , [ H ^ , A ^ ] : = H ^ A ^ − A ^ H ^ \frac{d}{dt}\langle \hat{A}\rangle_\psi
= \frac{i}{\hbar}\bigl\langle\, [\hat{H}, \hat{A}\,]\,\bigr\rangle_\psi
+ \Bigl\langle \frac{\partial \hat{A}}{\partial t}\Bigr\rangle_\psi ,
\qquad [\hat{H},\hat{A}] := \hat{H}\hat{A} - \hat{A}\hat{H} d t d ⟨ A ^ ⟩ ψ = ℏ i ⟨ [ H ^ , A ^ ] ⟩ ψ + ⟨ ∂ t ∂ A ^ ⟩ ψ , [ H ^ , A ^ ] := H ^ A ^ − A ^ H ^ が成り立つ。
証明(補題 5.4) 積の微分法より
d d t ⟨ ψ ∣ A ^ ∣ ψ ⟩ = ⟨ ∂ ψ ∂ t ∣ A ^ ψ ⟩ + ⟨ ψ ∣ ∂ A ^ ∂ t ψ ⟩ + ⟨ ψ ∣ A ^ ∂ ψ ∂ t ⟩ . \frac{d}{dt}\langle \psi \mid \hat{A}\mid \psi\rangle
= \Bigl\langle \frac{\partial \psi}{\partial t}\;\Bigm|\; \hat{A}\,\psi\Bigr\rangle
+ \Bigl\langle \psi \Bigm| \frac{\partial \hat{A}}{\partial t}\,\psi\Bigr\rangle
+ \Bigl\langle \psi \Bigm| \hat{A}\,\frac{\partial \psi}{\partial t}\Bigr\rangle . d t d ⟨ ψ ∣ A ^ ∣ ψ ⟩ = ⟨ ∂ t ∂ ψ A ^ ψ ⟩ + ⟨ ψ ∂ t ∂ A ^ ψ ⟩ + ⟨ ψ A ^ ∂ t ∂ ψ ⟩ . 定義 3.1 より ∂ t ψ = − ( i / ℏ ) H ^ ψ \partial_t\psi = -(i/\hbar)\hat{H}\psi ∂ t ψ = − ( i /ℏ ) H ^ ψ です。第 3 項はこれをそのまま代入して
⟨ ψ ∣ A ^ ( − i ℏ H ^ ψ ) ⟩ = − i ℏ ⟨ ψ ∣ A ^ H ^ ∣ ψ ⟩ . \Bigl\langle \psi \Bigm| \hat{A}\left(-\frac{i}{\hbar}\hat{H}\psi\right)\Bigr\rangle
= -\frac{i}{\hbar}\langle \psi \mid \hat{A}\hat{H}\mid\psi\rangle . ⟨ ψ A ^ ( − ℏ i H ^ ψ ) ⟩ = − ℏ i ⟨ ψ ∣ A ^ H ^ ∣ ψ ⟩ . 第 1 項は、内積が第 1 引数について反線形 であることに注意します。係数 − i / ℏ -i/\hbar − i /ℏ は複素共役されて + i / ℏ +i/\hbar + i /ℏ になり、
⟨ − i ℏ H ^ ψ ∣ A ^ ψ ⟩ = + i ℏ ⟨ H ^ ψ ∣ A ^ ψ ⟩ = + i ℏ ⟨ ψ ∣ H ^ A ^ ψ ⟩ \Bigl\langle -\frac{i}{\hbar}\hat{H}\psi \;\Bigm|\; \hat{A}\psi\Bigr\rangle
= +\frac{i}{\hbar}\bigl\langle \hat{H}\psi \mid \hat{A}\psi\bigr\rangle
= +\frac{i}{\hbar}\bigl\langle \psi \mid \hat{H}\hat{A}\psi\bigr\rangle ⟨ − ℏ i H ^ ψ A ^ ψ ⟩ = + ℏ i ⟨ H ^ ψ ∣ A ^ ψ ⟩ = + ℏ i ⟨ ψ ∣ H ^ A ^ ψ ⟩ となります。最後の等号で H ^ \hat{H} H ^ のエルミート性(命題 5.3 の意味で)を使いました。以上を足すと
d d t ⟨ A ^ ⟩ ψ = i ℏ ⟨ ψ ∣ H ^ A ^ − A ^ H ^ ∣ ψ ⟩ + ⟨ ∂ A ^ ∂ t ⟩ ψ \frac{d}{dt}\langle \hat{A}\rangle_\psi
= \frac{i}{\hbar}\langle \psi\mid \hat{H}\hat{A} - \hat{A}\hat{H}\mid\psi\rangle + \Bigl\langle \frac{\partial\hat{A}}{\partial t}\Bigr\rangle_\psi d t d ⟨ A ^ ⟩ ψ = ℏ i ⟨ ψ ∣ H ^ A ^ − A ^ H ^ ∣ ψ ⟩ + ⟨ ∂ t ∂ A ^ ⟩ ψ が得られます。
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この補題は「物理量が保存するのはハミルトニアンと交換するときだ」という一般原理を含んでいます。A ^ \hat{A} A ^ が時間に陽に依らず [ H ^ , A ^ ] = 0 [\hat{H},\hat{A}] = 0 [ H ^ , A ^ ] = 0 なら ⟨ A ^ ⟩ \langle \hat{A}\rangle ⟨ A ^ ⟩ は時間によらず一定です。古典力学でポアソン括弧 { H , A } \{H, A\} { H , A } が同じ役割を果たしていたこと(正準変換とポアソン括弧 の 定理 6.1[正準変換とポアソン括弧] 、対称性と保存則 )と見比べてください。交換子はポアソン括弧の量子版です。
定理 5.5 (エーレンフェストの定理 )
V V V を実数値で微分可能な関数、ψ \psi ψ を 定義 3.1 の規格化された解とし、補題 5.4 の技術的仮定を満たすとする。このとき
d ⟨ x ^ ⟩ d t = ⟨ p ^ ⟩ m , d ⟨ p ^ ⟩ d t = − ⟨ V ′ ( x ^ ) ⟩ \frac{d\langle \hat{x}\rangle}{dt} = \frac{\langle \hat{p}\rangle}{m},
\qquad
\frac{d\langle \hat{p}\rangle}{dt} = -\bigl\langle V'(\hat{x})\bigr\rangle d t d ⟨ x ^ ⟩ = m ⟨ p ^ ⟩ , d t d ⟨ p ^ ⟩ = − ⟨ V ′ ( x ^ ) ⟩ が成り立つ。ここで V ′ ( x ^ ) V'(\hat{x}) V ′ ( x ^ ) は関数 V ′ ( x ) = d V / d x V'(x) = dV/dx V ′ ( x ) = d V / d x を掛ける演算子である。
証明(定理 5.5) 準備として交換関係を計算します。任意の滑らかな ψ \psi ψ について
[ x ^ , p ^ ] ψ = x ( − i ℏ ψ x ) − ( − i ℏ ) ∂ ∂ x ( x ψ ) = − i ℏ x ψ x + i ℏ ( ψ + x ψ x ) = i ℏ ψ [\hat{x},\hat{p}]\psi = x(-i\hbar\psi_x) - (-i\hbar)\frac{\partial}{\partial x}(x\psi)
= -i\hbar x\psi_x + i\hbar(\psi + x\psi_x) = i\hbar\,\psi [ x ^ , p ^ ] ψ = x ( − i ℏ ψ x ) − ( − i ℏ ) ∂ x ∂ ( x ψ ) = − i ℏ x ψ x + i ℏ ( ψ + x ψ x ) = i ℏ ψ なので、正準交換関係(定理 4.3)[演算子と物理量] [ x ^ , p ^ ] = i ℏ [\hat{x},\hat{p}] = i\hbar [ x ^ , p ^ ] = i ℏ (恒等演算子の i ℏ i\hbar i ℏ 倍)を得ます。したがって [ p ^ , x ^ ] = − i ℏ [\hat{p},\hat{x}] = -i\hbar [ p ^ , x ^ ] = − i ℏ です。
第 1 式。 A ^ = x ^ \hat{A} = \hat{x} A ^ = x ^ は時間に陽に依らないので、補題 5.4 より d ⟨ x ^ ⟩ / d t = ( i / ℏ ) ⟨ [ H ^ , x ^ ] ⟩ d\langle\hat x\rangle/dt = (i/\hbar)\langle[\hat{H},\hat{x}]\rangle d ⟨ x ^ ⟩ / d t = ( i /ℏ ) ⟨[ H ^ , x ^ ]⟩ です。V ( x ^ ) V(\hat x) V ( x ^ ) は x ^ \hat x x ^ と交換する(どちらも x x x の関数を掛ける操作なので順序を入れ替えても同じ)ので、
[ H ^ , x ^ ] = 1 2 m [ p ^ 2 , x ^ ] . [\hat{H},\hat{x}] = \frac{1}{2m}[\hat{p}^2, \hat{x}] . [ H ^ , x ^ ] = 2 m 1 [ p ^ 2 , x ^ ] . 交換子の恒等式 [ B ^ C ^ , D ^ ] = B ^ [ C ^ , D ^ ] + [ B ^ , D ^ ] C ^ [\hat{B}\hat{C}, \hat{D}] = \hat{B}[\hat{C},\hat{D}] + [\hat{B},\hat{D}]\hat{C} [ B ^ C ^ , D ^ ] = B ^ [ C ^ , D ^ ] + [ B ^ , D ^ ] C ^ (両辺を展開すれば確かめられます)を B ^ = C ^ = p ^ \hat B = \hat C = \hat p B ^ = C ^ = p ^ 、D ^ = x ^ \hat D = \hat x D ^ = x ^ に適用すると
[ p ^ 2 , x ^ ] = p ^ [ p ^ , x ^ ] + [ p ^ , x ^ ] p ^ = − i ℏ p ^ − i ℏ p ^ = − 2 i ℏ p ^ . [\hat{p}^2,\hat{x}] = \hat{p}[\hat{p},\hat{x}] + [\hat{p},\hat{x}]\hat{p} = -i\hbar\hat{p} - i\hbar\hat{p} = -2i\hbar\,\hat{p} . [ p ^ 2 , x ^ ] = p ^ [ p ^ , x ^ ] + [ p ^ , x ^ ] p ^ = − i ℏ p ^ − i ℏ p ^ = − 2 i ℏ p ^ . よって
d ⟨ x ^ ⟩ d t = i ℏ ⋅ 1 2 m ⋅ ( − 2 i ℏ ) ⟨ p ^ ⟩ = − 2 i 2 2 m ⟨ p ^ ⟩ = ⟨ p ^ ⟩ m . \frac{d\langle \hat x\rangle}{dt} = \frac{i}{\hbar}\cdot\frac{1}{2m}\cdot(-2i\hbar)\langle \hat{p}\rangle
= \frac{-2i^2}{2m}\langle \hat p\rangle = \frac{\langle \hat{p}\rangle}{m}. d t d ⟨ x ^ ⟩ = ℏ i ⋅ 2 m 1 ⋅ ( − 2 i ℏ ) ⟨ p ^ ⟩ = 2 m − 2 i 2 ⟨ p ^ ⟩ = m ⟨ p ^ ⟩ . 第 2 式。 A ^ = p ^ \hat{A} = \hat{p} A ^ = p ^ も時間に陽に依らないので d ⟨ p ^ ⟩ / d t = ( i / ℏ ) ⟨ [ H ^ , p ^ ] ⟩ d\langle \hat p\rangle/dt = (i/\hbar)\langle [\hat{H},\hat{p}]\rangle d ⟨ p ^ ⟩ / d t = ( i /ℏ ) ⟨[ H ^ , p ^ ]⟩ です。p ^ 2 \hat{p}^2 p ^ 2 は p ^ \hat p p ^ と交換するので [ H ^ , p ^ ] = [ V ( x ^ ) , p ^ ] [\hat{H},\hat{p}] = [V(\hat x),\hat p] [ H ^ , p ^ ] = [ V ( x ^ ) , p ^ ] であり、任意の滑らかな ψ \psi ψ に対して
[ V , p ^ ] ψ = V ⋅ ( − i ℏ ψ x ) − ( − i ℏ ) ∂ ∂ x ( V ψ ) = − i ℏ V ψ x + i ℏ ( V ′ ψ + V ψ x ) = i ℏ V ′ ( x ) ψ [V,\hat{p}]\psi = V\cdot(-i\hbar\psi_x) - (-i\hbar)\frac{\partial}{\partial x}(V\psi)
= -i\hbar V\psi_x + i\hbar\left(V'\psi + V\psi_x\right) = i\hbar V'(x)\,\psi [ V , p ^ ] ψ = V ⋅ ( − i ℏ ψ x ) − ( − i ℏ ) ∂ x ∂ ( V ψ ) = − i ℏ V ψ x + i ℏ ( V ′ ψ + V ψ x ) = i ℏ V ′ ( x ) ψ です(積の微分法を使いました)。したがって
d ⟨ p ^ ⟩ d t = i ℏ ⋅ i ℏ ⟨ V ′ ( x ^ ) ⟩ = − ⟨ V ′ ( x ^ ) ⟩ . \frac{d\langle\hat p\rangle}{dt} = \frac{i}{\hbar}\cdot i\hbar\,\langle V'(\hat x)\rangle = -\langle V'(\hat x)\rangle . d t d ⟨ p ^ ⟩ = ℏ i ⋅ i ℏ ⟨ V ′ ( x ^ )⟩ = − ⟨ V ′ ( x ^ )⟩ . ∎
例 5.7 (ガウス波束の分散と不確定性 )
例 4.5 の ψ ( x ) = ( π a 2 ) − 1 / 4 e − x 2 / ( 2 a 2 ) \psi(x) = (\pi a^2)^{-1/4}e^{-x^2/(2a^2)} ψ ( x ) = ( π a 2 ) − 1/4 e − x 2 / ( 2 a 2 ) について、位置と運動量の分散を最後まで計算します。N 2 = 1 / ( a π ) N^2 = 1/(a\sqrt{\pi}) N 2 = 1/ ( a π ) と書きます。
位置。 x ∣ ψ ∣ 2 x|\psi|^2 x ∣ ψ ∣ 2 は奇関数なので ⟨ x ^ ⟩ = 0 \langle \hat x\rangle = 0 ⟨ x ^ ⟩ = 0 。次に、ガウス積分 ∫ − ∞ ∞ x 2 e − α x 2 d x = 1 2 π / α 3 \int_{-\infty}^{\infty}x^2 e^{-\alpha x^2}dx = \tfrac12\sqrt{\pi/\alpha^3} ∫ − ∞ ∞ x 2 e − α x 2 d x = 2 1 π / α 3 に α = 1 / a 2 \alpha = 1/a^2 α = 1/ a 2 を入れると ∫ x 2 e − x 2 / a 2 d x = 1 2 a 3 π \int x^2 e^{-x^2/a^2}dx = \tfrac12 a^3\sqrt{\pi} ∫ x 2 e − x 2 / a 2 d x = 2 1 a 3 π なので
⟨ x ^ 2 ⟩ = 1 a π ⋅ a 3 π 2 = a 2 2 , Δ x = a 2 . \langle \hat x^2\rangle = \frac{1}{a\sqrt{\pi}}\cdot\frac{a^3\sqrt{\pi}}{2} = \frac{a^2}{2},
\qquad \Delta x = \frac{a}{\sqrt{2}} . ⟨ x ^ 2 ⟩ = a π 1 ⋅ 2 a 3 π = 2 a 2 , Δ x = 2 a . 運動量。 ψ \psi ψ は実数値なので
⟨ p ^ ⟩ = ∫ ψ ( − i ℏ ψ x ) d x = − i ℏ ∫ ψ ψ x d x = − i ℏ [ ψ 2 2 ] − ∞ ∞ = 0. \langle \hat p\rangle = \int \psi\,(-i\hbar\,\psi_x)\,dx = -i\hbar\int \psi\psi_x\,dx = -i\hbar\left[\frac{\psi^2}{2}\right]_{-\infty}^{\infty} = 0 . ⟨ p ^ ⟩ = ∫ ψ ( − i ℏ ψ x ) d x = − i ℏ ∫ ψ ψ x d x = − i ℏ [ 2 ψ 2 ] − ∞ ∞ = 0. ⟨ p ^ 2 ⟩ \langle \hat p^2\rangle ⟨ p ^ 2 ⟩ は部分積分して
⟨ p ^ 2 ⟩ = ∫ ψ ( − ℏ 2 ψ x x ) d x = − ℏ 2 ( [ ψ ψ x ] − ∞ ∞ − ∫ ψ x 2 d x ) = ℏ 2 ∫ − ∞ ∞ ψ x 2 d x . \langle \hat p^2\rangle = \int \psi\left(-\hbar^2\psi_{xx}\right)dx
= -\hbar^2\left(\Bigl[\psi\psi_x\Bigr]_{-\infty}^{\infty} - \int \psi_x^2\,dx\right)
= \hbar^2\int_{-\infty}^{\infty}\psi_x^2\,dx . ⟨ p ^ 2 ⟩ = ∫ ψ ( − ℏ 2 ψ xx ) d x = − ℏ 2 ( [ ψ ψ x ] − ∞ ∞ − ∫ ψ x 2 d x ) = ℏ 2 ∫ − ∞ ∞ ψ x 2 d x . ψ x = − ( x / a 2 ) ψ \psi_x = -(x/a^2)\psi ψ x = − ( x / a 2 ) ψ なので ∫ ψ x 2 d x = a − 4 ∫ x 2 ψ 2 d x = a − 4 ⟨ x ^ 2 ⟩ = a − 4 ⋅ a 2 / 2 = 1 / ( 2 a 2 ) \int\psi_x^2 dx = a^{-4}\int x^2\psi^2 dx = a^{-4}\langle \hat x^2\rangle = a^{-4}\cdot a^2/2 = 1/(2a^2) ∫ ψ x 2 d x = a − 4 ∫ x 2 ψ 2 d x = a − 4 ⟨ x ^ 2 ⟩ = a − 4 ⋅ a 2 /2 = 1/ ( 2 a 2 ) 。したがって
⟨ p ^ 2 ⟩ = ℏ 2 2 a 2 , Δ p = ℏ 2 a . \langle \hat p^2\rangle = \frac{\hbar^2}{2a^2}, \qquad \Delta p = \frac{\hbar}{\sqrt{2}\,a} . ⟨ p ^ 2 ⟩ = 2 a 2 ℏ 2 , Δ p = 2 a ℏ . 積。
Δ x Δ p = a 2 ⋅ ℏ 2 a = ℏ 2 . \Delta x\,\Delta p = \frac{a}{\sqrt 2}\cdot\frac{\hbar}{\sqrt2 a} = \frac{\hbar}{2} . Δ x Δ p = 2 a ⋅ 2 a ℏ = 2 ℏ . a a a が消えました。波束を狭くすれば Δ x \Delta x Δ x は小さくなりますが、そのぶん Δ p \Delta p Δ p が大きくなり、積は ℏ / 2 \hbar/2 ℏ/2 のまま動きません。これは不確定性関係 Δ x Δ p ≥ ℏ / 2 \Delta x\,\Delta p \ge \hbar/2 Δ x Δ p ≥ ℏ/2 の等号を実現する状態であり、ガウス波束が「最小不確定状態」と呼ばれる理由です。不確定性関係そのものの証明は 演算子と物理量 で扱います(系 5.4[演算子と物理量] 、等号を達成するのがガウス波束であることは 例 5.5[演算子と物理量] )。
ポテンシャル V V V が時間に依らない場合、H ^ \hat{H} H ^ も時間に依りません。このとき偏微分方程式の定石である変数分離が使えます。ψ ( x , t ) = φ ( x ) T ( t ) \psi(x,t) = \varphi(x)T(t) ψ ( x , t ) = φ ( x ) T ( t ) (どちらも恒等的に 0 0 0 ではない)と仮定して 定義 3.1 に代入すると
i ℏ φ ( x ) T ′ ( t ) = T ( t ) ( H ^ φ ) ( x ) . i\hbar\,\varphi(x)\,T'(t) = T(t)\,\bigl(\hat{H}\varphi\bigr)(x) . i ℏ φ ( x ) T ′ ( t ) = T ( t ) ( H ^ φ ) ( x ) .
φ ( x ) T ( t ) ≠ 0 \varphi(x)T(t) \ne 0 φ ( x ) T ( t ) = 0 である点で両辺を φ ( x ) T ( t ) \varphi(x)T(t) φ ( x ) T ( t ) で割ると
i ℏ T ′ ( t ) T ( t ) ⏟ t のみの関数 = ( H ^ φ ) ( x ) φ ( x ) ⏟ x のみの関数 . \underbrace{i\hbar\frac{T'(t)}{T(t)}}_{t \text{ のみの関数}} = \underbrace{\frac{(\hat{H}\varphi)(x)}{\varphi(x)}}_{x \text{ のみの関数}} . t のみの関数 i ℏ T ( t ) T ′ ( t ) = x のみの関数 φ ( x ) ( H ^ φ ) ( x ) .
左辺は x x x に依らず、右辺は t t t に依りません。両者が等しいので、どちらも定数でなければなりません。この定数はエネルギーの次元をもつので E E E と書きます。すると 2 つの方程式に分かれます。
i ℏ T ′ ( t ) = E T ( t ) ⟹ T ( t ) = T ( 0 ) e − i E t / ℏ , i\hbar\,T'(t) = E\,T(t) \quad\Longrightarrow\quad T(t) = T(0)\,e^{-iEt/\hbar}, i ℏ T ′ ( t ) = E T ( t ) ⟹ T ( t ) = T ( 0 ) e − i E t /ℏ ,
H ^ φ = E φ , すなわち − ℏ 2 2 m φ ′ ′ ( x ) + V ( x ) φ ( x ) = E φ ( x ) . \hat{H}\varphi = E\varphi, \qquad\text{すなわち}\qquad -\frac{\hbar^2}{2m}\varphi''(x) + V(x)\varphi(x) = E\,\varphi(x) . H ^ φ = E φ , すなわち − 2 m ℏ 2 φ ′′ ( x ) + V ( x ) φ ( x ) = E φ ( x ) .
定義 6.1 (時間非依存シュレーディンガー方程式と定常状態 )
時間に依らないポテンシャル V V V に対する固有値問題
H ^ φ = E φ , H ^ = − ℏ 2 2 m d 2 d x 2 + V ( x ) \hat{H}\varphi = E\varphi, \qquad \hat{H} = -\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2} + V(x) H ^ φ = E φ , H ^ = − 2 m ℏ 2 d x 2 d 2 + V ( x ) を時間非依存シュレーディンガー方程式 と呼ぶ。φ ∈ L 2 ( R ) \varphi \in L^2(\mathbb{R}) φ ∈ L 2 ( R ) が φ ≠ 0 \varphi \neq 0 φ = 0 でこれを満たすとき、φ \varphi φ を固有関数、E E E を固有値(エネルギー準位)と呼び、これに対応する
ψ ( x , t ) = φ ( x ) e − i E t / ℏ \psi(x,t) = \varphi(x)\,e^{-iEt/\hbar} ψ ( x , t ) = φ ( x ) e − i E t /ℏ を定常状態 と呼ぶ。
「定常」という名前の理由は次の定理です。
定理 6.2 (定常状態の性質 )
φ \varphi φ を 定義 6.1 の規格化された固有関数、E E E をその固有値、ψ ( x , t ) = φ ( x ) e − i E t / ℏ \psi(x,t) = \varphi(x)e^{-iEt/\hbar} ψ ( x , t ) = φ ( x ) e − i E t /ℏ とする。このとき
ψ \psi ψ は各時刻で規格化されている。
確率密度 ρ ( x , t ) = ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 = ∣ φ ( x ) ∣ 2 \rho(x,t) = |\psi(x,t)|^2 = |\varphi(x)|^2 ρ ( x , t ) = ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 = ∣ φ ( x ) ∣ 2 は時間に依らない。
時間に陽に依らない任意の演算子 A ^ \hat{A} A ^ について、期待値 ⟨ A ^ ⟩ ψ ( t ) \langle \hat{A}\rangle_{\psi(t)} ⟨ A ^ ⟩ ψ ( t ) は時間に依らない。
エネルギーは分散をもたない。すなわち ⟨ H ^ ⟩ = E \langle \hat{H}\rangle = E ⟨ H ^ ⟩ = E 、⟨ H ^ 2 ⟩ = E 2 \langle \hat{H}^2\rangle = E^2 ⟨ H ^ 2 ⟩ = E 2 、よって Δ E = 0 \Delta E = 0 Δ E = 0 である。
証明(定理 6.2) E E E は実数です(H ^ \hat H H ^ はエルミートなので 命題 5.3 より ⟨ H ^ ⟩ φ = ⟨ φ ∣ E φ ⟩ = E ∥ φ ∥ 2 = E \langle \hat H\rangle_\varphi = \langle \varphi\mid E\varphi\rangle = E\|\varphi\|^2 = E ⟨ H ^ ⟩ φ = ⟨ φ ∣ E φ ⟩ = E ∥ φ ∥ 2 = E が実数)。したがって ∣ e − i E t / ℏ ∣ = 1 |e^{-iEt/\hbar}| = 1 ∣ e − i E t /ℏ ∣ = 1 です。
(2) ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 = ∣ φ ( x ) ∣ 2 ∣ e − i E t / ℏ ∣ 2 = ∣ φ ( x ) ∣ 2 |\psi(x,t)|^2 = |\varphi(x)|^2\,|e^{-iEt/\hbar}|^2 = |\varphi(x)|^2 ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 = ∣ φ ( x ) ∣ 2 ∣ e − i E t /ℏ ∣ 2 = ∣ φ ( x ) ∣ 2 で、t t t を含みません。
(1) (2) より ∫ ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 d x = ∫ ∣ φ ∣ 2 d x = 1 \int|\psi(x,t)|^2 dx = \int|\varphi|^2dx = 1 ∫ ∣ ψ ( x , t ) ∣ 2 d x = ∫ ∣ φ ∣ 2 d x = 1 が各 t t t で成り立ちます。
(3) 位相因子はブラ側で複素共役されるので
⟨ ψ ( t ) ∣ A ^ ∣ ψ ( t ) ⟩ = e − i E t / ℏ ‾ e − i E t / ℏ ⟨ φ ∣ A ^ ∣ φ ⟩ = ⟨ φ ∣ A ^ ∣ φ ⟩ \langle \psi(t)\mid \hat{A}\mid\psi(t)\rangle
= \overline{e^{-iEt/\hbar}}\,e^{-iEt/\hbar}\,\langle \varphi\mid\hat{A}\mid\varphi\rangle
= \langle \varphi\mid \hat A\mid\varphi\rangle ⟨ ψ ( t ) ∣ A ^ ∣ ψ ( t )⟩ = e − i E t /ℏ e − i E t /ℏ ⟨ φ ∣ A ^ ∣ φ ⟩ = ⟨ φ ∣ A ^ ∣ φ ⟩ となり t t t を含みません(注意 2.2 と同じ計算です)。
(4) H ^ φ = E φ \hat{H}\varphi = E\varphi H ^ φ = E φ より ⟨ H ^ ⟩ = ⟨ φ ∣ E φ ⟩ = E \langle \hat H\rangle = \langle \varphi\mid E\varphi\rangle = E ⟨ H ^ ⟩ = ⟨ φ ∣ E φ ⟩ = E 。また H ^ 2 φ = H ^ ( E φ ) = E H ^ φ = E 2 φ \hat{H}^2\varphi = \hat{H}(E\varphi) = E\hat{H}\varphi = E^2\varphi H ^ 2 φ = H ^ ( E φ ) = E H ^ φ = E 2 φ なので ⟨ H ^ 2 ⟩ = E 2 \langle \hat H^2\rangle = E^2 ⟨ H ^ 2 ⟩ = E 2 。よって ( Δ E ) 2 = E 2 − E 2 = 0 (\Delta E)^2 = E^2 - E^2 = 0 ( Δ E ) 2 = E 2 − E 2 = 0 です。
∎
定理 6.3 (固有関数展開による一般解 )
H ^ \hat H H ^ が時間に依らず、規格直交系をなす固有関数の族 { φ n } n ∈ N \{\varphi_n\}_{n\in\mathbb{N}} { φ n } n ∈ N が存在して、H ^ φ n = E n φ n \hat{H}\varphi_n = E_n\varphi_n H ^ φ n = E n φ n 、⟨ φ m ∣ φ n ⟩ = δ m n \langle \varphi_m\mid\varphi_n\rangle = \delta_{mn} ⟨ φ m ∣ φ n ⟩ = δ mn を満たし、かつ考えている波動関数の空間で完全 である(任意の ψ ∈ L 2 \psi \in L^2 ψ ∈ L 2 が { φ n } \{\varphi_n\} { φ n } の線形結合の極限で表せる)と仮定する。このとき初期条件 ψ ( x , 0 ) = ψ 0 ( x ) \psi(x,0) = \psi_0(x) ψ ( x , 0 ) = ψ 0 ( x ) に対する 定義 3.1 の解は
ψ ( x , t ) = ∑ n c n φ n ( x ) e − i E n t / ℏ , c n = ⟨ φ n ∣ ψ 0 ⟩ \psi(x,t) = \sum_{n} c_n\,\varphi_n(x)\,e^{-iE_n t/\hbar}, \qquad c_n = \langle \varphi_n\mid\psi_0\rangle ψ ( x , t ) = n ∑ c n φ n ( x ) e − i E n t /ℏ , c n = ⟨ φ n ∣ ψ 0 ⟩ で与えられる。さらに ψ 0 \psi_0 ψ 0 が規格化されていれば ∑ n ∣ c n ∣ 2 = 1 \sum_n |c_n|^2 = 1 ∑ n ∣ c n ∣ 2 = 1 である。
証明(定理 6.3) 解であること。 各項 φ n ( x ) e − i E n t / ℏ \varphi_n(x)e^{-iE_nt/\hbar} φ n ( x ) e − i E n t /ℏ は 定義 6.1 の導出から 定義 3.1 の解です。実際
i ℏ ∂ ∂ t ( φ n e − i E n t / ℏ ) = i ℏ ( − i E n ℏ ) φ n e − i E n t / ℏ = E n φ n e − i E n t / ℏ = H ^ ( φ n e − i E n t / ℏ ) i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\left(\varphi_n e^{-iE_nt/\hbar}\right)
= i\hbar\left(-\frac{iE_n}{\hbar}\right)\varphi_n e^{-iE_nt/\hbar}
= E_n\varphi_n e^{-iE_nt/\hbar}
= \hat{H}\left(\varphi_n e^{-iE_nt/\hbar}\right) i ℏ ∂ t ∂ ( φ n e − i E n t /ℏ ) = i ℏ ( − ℏ i E n ) φ n e − i E n t /ℏ = E n φ n e − i E n t /ℏ = H ^ ( φ n e − i E n t /ℏ ) です。命題 3.3 (と、項別微分が許されるという仮定)より、その線形結合も解です。
初期条件を満たすこと。 t = 0 t = 0 t = 0 とすると ψ ( x , 0 ) = ∑ n c n φ n ( x ) \psi(x,0) = \sum_n c_n\varphi_n(x) ψ ( x , 0 ) = ∑ n c n φ n ( x ) です。完全性より ψ 0 = ∑ n a n φ n \psi_0 = \sum_n a_n\varphi_n ψ 0 = ∑ n a n φ n と展開でき、両辺に ⟨ φ m ∣ ⋅ ⟩ \langle \varphi_m\mid\cdot\rangle ⟨ φ m ∣ ⋅ ⟩ を作用させると規格直交性から
⟨ φ m ∣ ψ 0 ⟩ = ∑ n a n ⟨ φ m ∣ φ n ⟩ = ∑ n a n δ m n = a m \langle \varphi_m\mid\psi_0\rangle = \sum_n a_n\langle\varphi_m\mid\varphi_n\rangle = \sum_n a_n\delta_{mn} = a_m ⟨ φ m ∣ ψ 0 ⟩ = n ∑ a n ⟨ φ m ∣ φ n ⟩ = n ∑ a n δ mn = a m なので、a m = c m a_m = c_m a m = c m です。
係数の二乗和。 規格直交性を使って
1 = ⟨ ψ 0 ∣ ψ 0 ⟩ = ⟨ ∑ m c m φ m ∣ ∑ n c n φ n ⟩ = ∑ m , n c m ‾ c n δ m n = ∑ n ∣ c n ∣ 2 1 = \langle \psi_0\mid\psi_0\rangle
= \Bigl\langle \sum_m c_m\varphi_m \Bigm| \sum_n c_n\varphi_n\Bigr\rangle
= \sum_{m,n}\overline{c_m}c_n\,\delta_{mn}
= \sum_n |c_n|^2 1 = ⟨ ψ 0 ∣ ψ 0 ⟩ = ⟨ m ∑ c m φ m n ∑ c n φ n ⟩ = m , n ∑ c m c n δ mn = n ∑ ∣ c n ∣ 2 を得ます(第 1 引数について反線形なので c m c_m c m に複素共役が付きます)。
∎
完全性の仮定は軽くありません。有限次元なら スペクトル定理 (定理 4.2[スペクトル定理] )がエルミート行列に対する正規直交固有基底の存在を保証しますが、無限次元では自己共役作用素のスペクトル定理が必要で、しかも連続スペクトルが現れる場合には和が積分に置き換わります(自由粒子がその例です。Appendix を参照)。
∣ c n ∣ 2 |c_n|^2 ∣ c n ∣ 2 は「エネルギーを測ったときに値 E n E_n E n が得られる確率」と解釈されます。∑ n ∣ c n ∣ 2 = 1 \sum_n|c_n|^2 = 1 ∑ n ∣ c n ∣ 2 = 1 はその確率の総和が 1 1 1 であることに対応しており、位置についてのボルンの規則がエネルギーについても同じ形で成り立つことを示唆しています。この一般化は 演算子と物理量 で定式化します。
例 6.4 (無限に深い井戸のエネルギー準位と確率 )
L > 0 L > 0 L > 0 とし、
V ( x ) = { 0 ( 0 < x < L ) + ∞ ( それ以外 ) V(x) = \begin{cases} 0 & (0 < x < L) \\ +\infty & (\text{それ以外})\end{cases} V ( x ) = { 0 + ∞ ( 0 < x < L ) ( それ以外 ) とします。ポテンシャルが無限大の領域では φ = 0 \varphi = 0 φ = 0 でなければならず(そうでないと H ^ φ \hat H\varphi H ^ φ が発散します)、φ \varphi φ の連続性から境界条件 φ ( 0 ) = φ ( L ) = 0 \varphi(0) = \varphi(L) = 0 φ ( 0 ) = φ ( L ) = 0 が課されます。井戸の内部では V = 0 V = 0 V = 0 なので
− ℏ 2 2 m φ ′ ′ = E φ ⟺ φ ′ ′ = − k 2 φ , k : = 2 m E ℏ . -\frac{\hbar^2}{2m}\varphi'' = E\varphi
\quad\Longleftrightarrow\quad
\varphi'' = -k^2\varphi, \qquad k := \frac{\sqrt{2mE}}{\hbar} . − 2 m ℏ 2 φ ′′ = E φ ⟺ φ ′′ = − k 2 φ , k := ℏ 2 m E . E > 0 E > 0 E > 0 の場合、一般解は φ ( x ) = A sin k x + B cos k x \varphi(x) = A\sin kx + B\cos kx φ ( x ) = A sin k x + B cos k x です。φ ( 0 ) = 0 \varphi(0) = 0 φ ( 0 ) = 0 より B = 0 B = 0 B = 0 。φ ( L ) = A sin k L = 0 \varphi(L) = A\sin kL = 0 φ ( L ) = A sin k L = 0 で A ≠ 0 A \ne 0 A = 0 (さもないと φ ≡ 0 \varphi \equiv 0 φ ≡ 0 で状態になりません)なので sin k L = 0 \sin kL = 0 sin k L = 0 、すなわち
k L = n π ( n = 1 , 2 , 3 , … ) . k L = n\pi \quad (n = 1, 2, 3, \ldots) . k L = nπ ( n = 1 , 2 , 3 , … ) . n = 0 n = 0 n = 0 は φ ≡ 0 \varphi\equiv 0 φ ≡ 0 を与えるので除き、n n n が負の場合は全体の符号が変わるだけで同じ状態です(注意 2.2 )。エネルギーは
E n = ℏ 2 k 2 2 m = n 2 π 2 ℏ 2 2 m L 2 . E_n = \frac{\hbar^2 k^2}{2m} = \frac{n^2\pi^2\hbar^2}{2mL^2} . E n = 2 m ℏ 2 k 2 = 2 m L 2 n 2 π 2 ℏ 2 . 規格化は ∫ 0 L A 2 sin 2 ( n π x / L ) d x = A 2 L / 2 = 1 \int_0^L A^2\sin^2(n\pi x/L)dx = A^2 L/2 = 1 ∫ 0 L A 2 sin 2 ( nπ x / L ) d x = A 2 L /2 = 1 から A = 2 / L A = \sqrt{2/L} A = 2/ L で、
φ n ( x ) = 2 L sin n π x L . \varphi_n(x) = \sqrt{\frac{2}{L}}\,\sin\frac{n\pi x}{L} . φ n ( x ) = L 2 sin L nπ x . 数値。 電子(m = 9.109 × 10 − 31 k g m = 9.109\times10^{-31}\,\mathrm{kg} m = 9.109 × 1 0 − 31 kg )を L = 0.5 n m L = 0.5\,\mathrm{nm} L = 0.5 nm に閉じ込めると
E 1 = π 2 ( 1.055 × 10 − 34 ) 2 2 ( 9.109 × 10 − 31 ) ( 0.5 × 10 − 9 ) 2 ≈ 2.41 × 10 − 19 J ≈ 1.50 e V E_1 = \frac{\pi^2 (1.055\times10^{-34})^2}{2(9.109\times10^{-31})(0.5\times10^{-9})^2}
\approx 2.41\times10^{-19}\,\mathrm{J} \approx 1.50\,\mathrm{eV} E 1 = 2 ( 9.109 × 1 0 − 31 ) ( 0.5 × 1 0 − 9 ) 2 π 2 ( 1.055 × 1 0 − 34 ) 2 ≈ 2.41 × 1 0 − 19 J ≈ 1.50 eV です。E 2 − E 1 = 3 E 1 ≈ 4.51 e V E_2 - E_1 = 3E_1 \approx 4.51\,\mathrm{eV} E 2 − E 1 = 3 E 1 ≈ 4.51 eV で、この差に対応する光子の波長は λ = h c / Δ E ≈ ( 1240 e V ⋅ n m ) / ( 4.51 e V ) ≈ 275 n m \lambda = hc/\Delta E \approx (1240\,\mathrm{eV\cdot nm})/(4.51\,\mathrm{eV}) \approx 275\,\mathrm{nm} λ = h c /Δ E ≈ ( 1240 eV ⋅ nm ) / ( 4.51 eV ) ≈ 275 nm 、紫外線です。原子や分子のスケールの閉じ込めが可視・紫外の光と結びつくという、量子力学の最も基本的な数値感覚がここに出ています。
確率。 基底状態 n = 1 n = 1 n = 1 で、粒子を中央の 3 分の 1、すなわち [ L / 3 , 2 L / 3 ] [L/3, 2L/3] [ L /3 , 2 L /3 ] に見出す確率を計算します。sin 2 θ = ( 1 − cos 2 θ ) / 2 \sin^2\theta = (1-\cos 2\theta)/2 sin 2 θ = ( 1 − cos 2 θ ) /2 を使うと
P = ∫ L / 3 2 L / 3 2 L sin 2 π x L d x = 1 L ∫ L / 3 2 L / 3 ( 1 − cos 2 π x L ) d x = 1 L [ x − L 2 π sin 2 π x L ] L / 3 2 L / 3 = 1 L [ L 3 − L 2 π ( sin 4 π 3 − sin 2 π 3 ) ] . \begin{aligned}
P &= \int_{L/3}^{2L/3}\frac{2}{L}\sin^2\frac{\pi x}{L}dx
= \frac{1}{L}\int_{L/3}^{2L/3}\left(1 - \cos\frac{2\pi x}{L}\right)dx \\
&= \frac{1}{L}\left[x - \frac{L}{2\pi}\sin\frac{2\pi x}{L}\right]_{L/3}^{2L/3}
= \frac{1}{L}\left[\frac{L}{3} - \frac{L}{2\pi}\left(\sin\frac{4\pi}{3} - \sin\frac{2\pi}{3}\right)\right].
\end{aligned} P = ∫ L /3 2 L /3 L 2 sin 2 L π x d x = L 1 ∫ L /3 2 L /3 ( 1 − cos L 2 π x ) d x = L 1 [ x − 2 π L sin L 2 π x ] L /3 2 L /3 = L 1 [ 3 L − 2 π L ( sin 3 4 π − sin 3 2 π ) ] . sin ( 4 π / 3 ) = − 3 / 2 \sin(4\pi/3) = -\sqrt3/2 sin ( 4 π /3 ) = − 3 /2 、sin ( 2 π / 3 ) = + 3 / 2 \sin(2\pi/3) = +\sqrt3/2 sin ( 2 π /3 ) = + 3 /2 なので括弧の中は − 3 -\sqrt3 − 3 です。よって
P = 1 3 + 3 2 π ≈ 0.333 + 0.276 = 0.609. P = \frac{1}{3} + \frac{\sqrt3}{2\pi} \approx 0.333 + 0.276 = 0.609 . P = 3 1 + 2 π 3 ≈ 0.333 + 0.276 = 0.609. 古典的な粒子が井戸の中を等速で往復していれば、中央 3 分の 1 にいる確率は 1 / 3 ≈ 0.333 1/3 \approx 0.333 1/3 ≈ 0.333 です。量子力学の基底状態は約 0.609 0.609 0.609 で、中央に強く偏っています。
例 6.5 (2 つの定常状態の重ね合わせと期待値の振動 )
同じ井戸で、初期状態を
ψ ( x , 0 ) = 1 2 ( φ 1 ( x ) + φ 2 ( x ) ) \psi(x,0) = \frac{1}{\sqrt2}\bigl(\varphi_1(x) + \varphi_2(x)\bigr) ψ ( x , 0 ) = 2 1 ( φ 1 ( x ) + φ 2 ( x ) ) とします。φ 1 , φ 2 \varphi_1,\varphi_2 φ 1 , φ 2 は規格直交なので ∥ ψ ( 0 ) ∥ 2 = ( 1 / 2 ) ( 1 + 1 ) = 1 \|\psi(0)\|^2 = (1/2)(1+1) = 1 ∥ ψ ( 0 ) ∥ 2 = ( 1/2 ) ( 1 + 1 ) = 1 で規格化されています。定理 6.3 より
ψ ( x , t ) = 1 2 ( φ 1 ( x ) e − i E 1 t / ℏ + φ 2 ( x ) e − i E 2 t / ℏ ) . \psi(x,t) = \frac{1}{\sqrt2}\left(\varphi_1(x)e^{-iE_1t/\hbar} + \varphi_2(x)e^{-iE_2t/\hbar}\right). ψ ( x , t ) = 2 1 ( φ 1 ( x ) e − i E 1 t /ℏ + φ 2 ( x ) e − i E 2 t /ℏ ) . 位置の期待値を計算します。ω : = ( E 2 − E 1 ) / ℏ \omega := (E_2 - E_1)/\hbar ω := ( E 2 − E 1 ) /ℏ とおくと
⟨ x ^ ⟩ ( t ) = 1 2 ( ⟨ φ 1 ∣ x ^ ∣ φ 1 ⟩ + ⟨ φ 2 ∣ x ^ ∣ φ 2 ⟩ + e − i ω t ⟨ φ 1 ∣ x ^ ∣ φ 2 ⟩ + e i ω t ⟨ φ 2 ∣ x ^ ∣ φ 1 ⟩ ) . \langle \hat x\rangle(t) = \frac{1}{2}\Bigl(\langle\varphi_1|\hat x|\varphi_1\rangle + \langle\varphi_2|\hat x|\varphi_2\rangle
+ e^{-i\omega t}\langle\varphi_1|\hat x|\varphi_2\rangle + e^{i\omega t}\langle\varphi_2|\hat x|\varphi_1\rangle\Bigr). ⟨ x ^ ⟩ ( t ) = 2 1 ( ⟨ φ 1 ∣ x ^ ∣ φ 1 ⟩ + ⟨ φ 2 ∣ x ^ ∣ φ 2 ⟩ + e − iω t ⟨ φ 1 ∣ x ^ ∣ φ 2 ⟩ + e iω t ⟨ φ 2 ∣ x ^ ∣ φ 1 ⟩ ) . 必要な積分を計算します。まず ∫ 0 L x cos ( k π x / L ) d x \int_0^L x\cos(k\pi x/L)dx ∫ 0 L x cos ( k π x / L ) d x を部分積分すると、k k k が整数のとき sin k π = 0 \sin k\pi = 0 sin k π = 0 、cos k π = ( − 1 ) k \cos k\pi = (-1)^k cos k π = ( − 1 ) k より
∫ 0 L x cos k π x L d x = [ L x k π sin k π x L ] 0 L + [ L 2 k 2 π 2 cos k π x L ] 0 L = ( ( − 1 ) k − 1 ) L 2 k 2 π 2 \int_0^L x\cos\frac{k\pi x}{L}dx = \left[\frac{Lx}{k\pi}\sin\frac{k\pi x}{L}\right]_0^L + \left[\frac{L^2}{k^2\pi^2}\cos\frac{k\pi x}{L}\right]_0^L
= \frac{\bigl((-1)^k - 1\bigr)L^2}{k^2\pi^2} ∫ 0 L x cos L k π x d x = [ k π Lx sin L k π x ] 0 L + [ k 2 π 2 L 2 cos L k π x ] 0 L = k 2 π 2 ( ( − 1 ) k − 1 ) L 2 です。対角成分は ⟨ φ n ∣ x ^ ∣ φ n ⟩ = ( 1 / L ) ∫ 0 L x ( 1 − cos ( 2 n π x / L ) ) d x = ( 1 / L ) ( L 2 / 2 − 0 ) = L / 2 \langle\varphi_n|\hat x|\varphi_n\rangle = (1/L)\int_0^L x(1 - \cos(2n\pi x/L))dx = (1/L)(L^2/2 - 0) = L/2 ⟨ φ n ∣ x ^ ∣ φ n ⟩ = ( 1/ L ) ∫ 0 L x ( 1 − cos ( 2 nπ x / L )) d x = ( 1/ L ) ( L 2 /2 − 0 ) = L /2 (k = 2 n k = 2n k = 2 n は偶数なので上の積分は 0 0 0 )。非対角成分は積和公式 sin A sin B = 1 2 [ cos ( A − B ) − cos ( A + B ) ] \sin A\sin B = \tfrac12[\cos(A-B) - \cos(A+B)] sin A sin B = 2 1 [ cos ( A − B ) − cos ( A + B )] より
⟨ φ 1 ∣ x ^ ∣ φ 2 ⟩ = 2 L ∫ 0 L x sin π x L sin 2 π x L d x = 1 L ∫ 0 L x ( cos π x L − cos 3 π x L ) d x = 1 L ( − 2 L 2 π 2 − − 2 L 2 9 π 2 ) = − 16 L 9 π 2 ≈ − 0.180 L . \begin{aligned}
\langle \varphi_1|\hat x|\varphi_2\rangle
&= \frac{2}{L}\int_0^L x\sin\frac{\pi x}{L}\sin\frac{2\pi x}{L}dx
= \frac{1}{L}\int_0^L x\left(\cos\frac{\pi x}{L} - \cos\frac{3\pi x}{L}\right)dx \\
&= \frac{1}{L}\left(\frac{-2L^2}{\pi^2} - \frac{-2L^2}{9\pi^2}\right)
= -\frac{16L}{9\pi^2} \approx -0.180\,L .
\end{aligned} ⟨ φ 1 ∣ x ^ ∣ φ 2 ⟩ = L 2 ∫ 0 L x sin L π x sin L 2 π x d x = L 1 ∫ 0 L x ( cos L π x − cos L 3 π x ) d x = L 1 ( π 2 − 2 L 2 − 9 π 2 − 2 L 2 ) = − 9 π 2 16 L ≈ − 0.180 L . これは実数で、x ^ \hat x x ^ がエルミートかつ φ n \varphi_n φ n が実数値なので ⟨ φ 2 ∣ x ^ ∣ φ 1 ⟩ \langle\varphi_2|\hat x|\varphi_1\rangle ⟨ φ 2 ∣ x ^ ∣ φ 1 ⟩ も同じ値です。e − i ω t + e i ω t = 2 cos ω t e^{-i\omega t} + e^{i\omega t} = 2\cos\omega t e − iω t + e iω t = 2 cos ω t を使うと
⟨ x ^ ⟩ ( t ) = L 2 − 16 L 9 π 2 cos ω t , ω = E 2 − E 1 ℏ = 3 π 2 ℏ 2 m L 2 . \langle \hat x\rangle(t) = \frac{L}{2} - \frac{16L}{9\pi^2}\cos\omega t,
\qquad \omega = \frac{E_2 - E_1}{\hbar} = \frac{3\pi^2\hbar}{2mL^2} . ⟨ x ^ ⟩ ( t ) = 2 L − 9 π 2 16 L cos ω t , ω = ℏ E 2 − E 1 = 2 m L 2 3 π 2 ℏ . 期待値が振幅 0.180 L 0.180L 0.180 L で井戸の中を往復します。定理 6.2 により定常状態単独では期待値は動きませんでしたが、重ね合わせると動くわけです。振動数を決めるのはエネルギー差だけであり、これはボーアの振動数条件 Δ E = ℏ ω \Delta E = \hbar\omega Δ E = ℏ ω そのものです。先ほどの数値(電子、L = 0.5 n m L = 0.5\,\mathrm{nm} L = 0.5 nm )では Δ E ≈ 4.51 e V \Delta E \approx 4.51\,\mathrm{eV} Δ E ≈ 4.51 eV なので周期は T = 2 π / ω = h / Δ E ≈ 9.2 × 10 − 16 s T = 2\pi/\omega = h/\Delta E \approx 9.2\times10^{-16}\,\mathrm{s} T = 2 π / ω = h /Δ E ≈ 9.2 × 1 0 − 16 s 、約 0.92 0.92 0.92 フェムト秒です。
演習 7.1 標準
λ > 0 \lambda > 0 λ > 0 を定数として、ψ ( x ) = A e − ∣ x ∣ / λ \psi(x) = A\,e^{-|x|/\lambda} ψ ( x ) = A e − ∣ x ∣/ λ (A > 0 A > 0 A > 0 )を考えます。
ψ \psi ψ を規格化して A A A を求めてください。
⟨ x ^ ⟩ \langle \hat x\rangle ⟨ x ^ ⟩ と ⟨ x ^ 2 ⟩ \langle \hat x^2\rangle ⟨ x ^ 2 ⟩ 、および Δ x \Delta x Δ x を求めてください。
粒子を ∣ x ∣ ≤ λ |x| \le \lambda ∣ x ∣ ≤ λ に見出す確率を求めてください。
解答 1. ∣ ψ ∣ 2 = A 2 e − 2 ∣ x ∣ / λ |\psi|^2 = A^2 e^{-2|x|/\lambda} ∣ ψ ∣ 2 = A 2 e − 2∣ x ∣/ λ は偶関数なので
∫ − ∞ ∞ A 2 e − 2 ∣ x ∣ / λ d x = 2 A 2 ∫ 0 ∞ e − 2 x / λ d x = 2 A 2 ⋅ λ 2 = A 2 λ . \int_{-\infty}^{\infty}A^2e^{-2|x|/\lambda}dx = 2A^2\int_0^{\infty}e^{-2x/\lambda}dx
= 2A^2\cdot\frac{\lambda}{2} = A^2\lambda . ∫ − ∞ ∞ A 2 e − 2∣ x ∣/ λ d x = 2 A 2 ∫ 0 ∞ e − 2 x / λ d x = 2 A 2 ⋅ 2 λ = A 2 λ . これが 1 1 1 なので A = 1 / λ A = 1/\sqrt{\lambda} A = 1/ λ 、すなわち ψ ( x ) = λ − 1 / 2 e − ∣ x ∣ / λ \psi(x) = \lambda^{-1/2}e^{-|x|/\lambda} ψ ( x ) = λ − 1/2 e − ∣ x ∣/ λ です。
2. x ∣ ψ ( x ) ∣ 2 x|\psi(x)|^2 x ∣ ψ ( x ) ∣ 2 は奇関数(偶関数 ∣ ψ ∣ 2 |\psi|^2 ∣ ψ ∣ 2 に奇関数 x x x を掛けた)で、積分は絶対収束するので ⟨ x ^ ⟩ = 0 \langle \hat x\rangle = 0 ⟨ x ^ ⟩ = 0 です。次に、ガンマ関数の公式 ∫ 0 ∞ x 2 e − β x d x = 2 / β 3 \int_0^\infty x^2 e^{-\beta x}dx = 2/\beta^3 ∫ 0 ∞ x 2 e − β x d x = 2/ β 3 に β = 2 / λ \beta = 2/\lambda β = 2/ λ を代入すると ∫ 0 ∞ x 2 e − 2 x / λ d x = 2 λ 3 / 8 = λ 3 / 4 \int_0^\infty x^2e^{-2x/\lambda}dx = 2\lambda^3/8 = \lambda^3/4 ∫ 0 ∞ x 2 e − 2 x / λ d x = 2 λ 3 /8 = λ 3 /4 なので
⟨ x ^ 2 ⟩ = 1 λ ⋅ 2 ∫ 0 ∞ x 2 e − 2 x / λ d x = 2 λ ⋅ λ 3 4 = λ 2 2 . \langle \hat x^2\rangle = \frac{1}{\lambda}\cdot 2\int_0^\infty x^2 e^{-2x/\lambda}dx
= \frac{2}{\lambda}\cdot\frac{\lambda^3}{4} = \frac{\lambda^2}{2} . ⟨ x ^ 2 ⟩ = λ 1 ⋅ 2 ∫ 0 ∞ x 2 e − 2 x / λ d x = λ 2 ⋅ 4 λ 3 = 2 λ 2 . よって Δ x = ⟨ x ^ 2 ⟩ − ⟨ x ^ ⟩ 2 = λ / 2 \Delta x = \sqrt{\langle \hat x^2\rangle - \langle \hat x\rangle^2} = \lambda/\sqrt2 Δ x = ⟨ x ^ 2 ⟩ − ⟨ x ^ ⟩ 2 = λ / 2 です。
3.
P ( ∣ x ∣ ≤ λ ) = 2 λ ∫ 0 λ e − 2 x / λ d x = 2 λ ⋅ λ 2 ( 1 − e − 2 ) = 1 − e − 2 ≈ 0.865. P(|x|\le\lambda) = \frac{2}{\lambda}\int_0^{\lambda}e^{-2x/\lambda}dx
= \frac{2}{\lambda}\cdot\frac{\lambda}{2}\left(1 - e^{-2}\right)
= 1 - e^{-2} \approx 0.865 . P ( ∣ x ∣ ≤ λ ) = λ 2 ∫ 0 λ e − 2 x / λ d x = λ 2 ⋅ 2 λ ( 1 − e − 2 ) = 1 − e − 2 ≈ 0.865.
演習 7.2 標準
定理 4.2 で定義した確率流密度 j = ( ℏ / m ) I m ( ψ ‾ ∂ x ψ ) j = (\hbar/m)\,\mathrm{Im}(\overline{\psi}\,\partial_x\psi) j = ( ℏ/ m ) Im ( ψ ∂ x ψ ) について、次を示してください。
ψ ( x , t ) = e i θ f ( x , t ) \psi(x,t) = e^{i\theta}f(x,t) ψ ( x , t ) = e i θ f ( x , t ) (θ \theta θ は実定数、f f f は実数値関数)と書けるなら、j ≡ 0 j \equiv 0 j ≡ 0 である。特に 例 6.4 の定常状態では確率の流れがない。
平面波 ψ ( x , t ) = A e i ( k x − ω t ) \psi(x,t) = A e^{i(kx - \omega t)} ψ ( x , t ) = A e i ( k x − ω t ) (A A A は複素定数)について ρ \rho ρ と j j j を求め、古典的な描像と比べてください。
解答 1. ψ ‾ = e − i θ f \overline{\psi} = e^{-i\theta}f ψ = e − i θ f 、∂ x ψ = e i θ ∂ x f \partial_x\psi = e^{i\theta}\partial_x f ∂ x ψ = e i θ ∂ x f なので
ψ ‾ ∂ x ψ = e − i θ e i θ f ∂ x f = f ∂ x f \overline{\psi}\,\partial_x\psi = e^{-i\theta}e^{i\theta}f\,\partial_x f = f\,\partial_x f ψ ∂ x ψ = e − i θ e i θ f ∂ x f = f ∂ x f となり、f f f が実数値なのでこれは実数です。実数の虚部は 0 0 0 なので j = 0 j = 0 j = 0 です。例 6.4 の定常状態は ψ = φ n ( x ) e − i E n t / ℏ \psi = \varphi_n(x)e^{-iE_nt/\hbar} ψ = φ n ( x ) e − i E n t /ℏ で、φ n \varphi_n φ n は実数値ですが位相因子 e − i E n t / ℏ e^{-iE_nt/\hbar} e − i E n t /ℏ は t t t に依るので上の形そのままではありません。しかし各時刻を固定すれば定数位相なので、同じ計算で j = 0 j = 0 j = 0 です。物理的には、井戸に閉じ込められた定常状態は右向きと左向きの波が釣り合った定在波であり、正味の流れがないことを意味します。
2. ρ = ∣ ψ ∣ 2 = ∣ A ∣ 2 \rho = |\psi|^2 = |A|^2 ρ = ∣ ψ ∣ 2 = ∣ A ∣ 2 (一様)。∂ x ψ = i k ψ \partial_x\psi = ik\psi ∂ x ψ = ik ψ なので
ψ ‾ ∂ x ψ = i k ∣ ψ ∣ 2 = i k ∣ A ∣ 2 ⟹ I m ( ψ ‾ ∂ x ψ ) = k ∣ A ∣ 2 . \overline{\psi}\,\partial_x\psi = ik|\psi|^2 = ik|A|^2
\quad\Longrightarrow\quad
\mathrm{Im}\bigl(\overline{\psi}\partial_x\psi\bigr) = k|A|^2 . ψ ∂ x ψ = ik ∣ ψ ∣ 2 = ik ∣ A ∣ 2 ⟹ Im ( ψ ∂ x ψ ) = k ∣ A ∣ 2 . よって
j = ℏ k m ∣ A ∣ 2 = p m ∣ A ∣ 2 = v ρ j = \frac{\hbar k}{m}|A|^2 = \frac{p}{m}|A|^2 = v\,\rho j = m ℏ k ∣ A ∣ 2 = m p ∣ A ∣ 2 = v ρ です(v = p / m v = p/m v = p / m は粒子の速度)。古典的な流体で「流束 = 密度 × 速度」であるのとまったく同じ形で、j j j を「単位時間に単位断面を通過する確率」と読む解釈を裏づけます。なお平面波は ∫ ∣ ψ ∣ 2 d x \int|\psi|^2dx ∫ ∣ ψ ∣ 2 d x が発散するので厳密には 定義 2.1 の意味の状態ではありません(Appendix を参照)。
演習 7.3 難
定理 5.5 について考えます。
調和振動子 V ( x ) = 1 2 m ω 2 x 2 V(x) = \tfrac12 m\omega^2x^2 V ( x ) = 2 1 m ω 2 x 2 のとき、⟨ x ^ ⟩ ( t ) \langle \hat x\rangle(t) ⟨ x ^ ⟩ ( t ) が古典的な調和振動子の運動方程式を厳密に 満たすことを示し、初期値 ⟨ x ^ ⟩ 0 , ⟨ p ^ ⟩ 0 \langle\hat x\rangle_0, \langle\hat p\rangle_0 ⟨ x ^ ⟩ 0 , ⟨ p ^ ⟩ 0 を用いて解いてください。
V ′ V' V ′ が連続であるとき、「任意の規格化された状態について ⟨ V ′ ( x ^ ) ⟩ = V ′ ( ⟨ x ^ ⟩ ) \langle V'(\hat x)\rangle = V'(\langle \hat x\rangle) ⟨ V ′ ( x ^ )⟩ = V ′ (⟨ x ^ ⟩) が成り立つ」ための必要十分条件は V ′ V' V ′ がアフィン関数(V V V が高々 2 次)であることを示してください。
解答 1. V ′ ( x ) = m ω 2 x V'(x) = m\omega^2 x V ′ ( x ) = m ω 2 x は x x x の 1 次式なので、期待値の線形性から
⟨ V ′ ( x ^ ) ⟩ = m ω 2 ⟨ x ^ ⟩ \langle V'(\hat x)\rangle = m\omega^2\langle \hat x\rangle ⟨ V ′ ( x ^ )⟩ = m ω 2 ⟨ x ^ ⟩ が近似なしに 成り立ちます。定理 5.5 の 2 式は
d ⟨ x ^ ⟩ d t = ⟨ p ^ ⟩ m , d ⟨ p ^ ⟩ d t = − m ω 2 ⟨ x ^ ⟩ \frac{d\langle \hat x\rangle}{dt} = \frac{\langle\hat p\rangle}{m},
\qquad
\frac{d\langle \hat p\rangle}{dt} = -m\omega^2\langle \hat x\rangle d t d ⟨ x ^ ⟩ = m ⟨ p ^ ⟩ , d t d ⟨ p ^ ⟩ = − m ω 2 ⟨ x ^ ⟩ となり、第 1 式を t t t で微分して第 2 式を代入すると
d 2 ⟨ x ^ ⟩ d t 2 = 1 m d ⟨ p ^ ⟩ d t = − ω 2 ⟨ x ^ ⟩ . \frac{d^2\langle \hat x\rangle}{dt^2} = \frac{1}{m}\frac{d\langle\hat p\rangle}{dt} = -\omega^2\langle \hat x\rangle . d t 2 d 2 ⟨ x ^ ⟩ = m 1 d t d ⟨ p ^ ⟩ = − ω 2 ⟨ x ^ ⟩ . これは古典的な調和振動子の方程式そのものです。初期条件 ⟨ x ^ ⟩ ( 0 ) = ⟨ x ^ ⟩ 0 \langle\hat x\rangle(0) = \langle\hat x\rangle_0 ⟨ x ^ ⟩ ( 0 ) = ⟨ x ^ ⟩ 0 、( d ⟨ x ^ ⟩ / d t ) ( 0 ) = ⟨ p ^ ⟩ 0 / m (d\langle\hat x\rangle/dt)(0) = \langle\hat p\rangle_0/m ( d ⟨ x ^ ⟩ / d t ) ( 0 ) = ⟨ p ^ ⟩ 0 / m のもとで解くと
⟨ x ^ ⟩ ( t ) = ⟨ x ^ ⟩ 0 cos ω t + ⟨ p ^ ⟩ 0 m ω sin ω t . \langle \hat x\rangle(t) = \langle \hat x\rangle_0\cos\omega t + \frac{\langle \hat p\rangle_0}{m\omega}\sin\omega t . ⟨ x ^ ⟩ ( t ) = ⟨ x ^ ⟩ 0 cos ω t + mω ⟨ p ^ ⟩ 0 sin ω t . つまり調和振動子では、波束の形がどれほど崩れても、その重心は古典軌道を厳密になぞります。
2. (十分性)V ′ ( x ) = α x + β V'(x) = \alpha x + \beta V ′ ( x ) = α x + β なら、期待値の線形性と ⟨ 1 ⟩ = ∥ ψ ∥ 2 = 1 \langle 1\rangle = \|\psi\|^2 = 1 ⟨ 1 ⟩ = ∥ ψ ∥ 2 = 1 より
⟨ V ′ ( x ^ ) ⟩ = α ⟨ x ^ ⟩ + β = V ′ ( ⟨ x ^ ⟩ ) . \langle V'(\hat x)\rangle = \alpha\langle \hat x\rangle + \beta = V'(\langle \hat x\rangle). ⟨ V ′ ( x ^ )⟩ = α ⟨ x ^ ⟩ + β = V ′ (⟨ x ^ ⟩) . (必要性)任意の x 0 ∈ R x_0 \in \mathbb{R} x 0 ∈ R と d > 0 d > 0 d > 0 を取り、x 0 − d x_0 - d x 0 − d と x 0 + d x_0 + d x 0 + d の近傍にそれぞれ幅 ϵ \epsilon ϵ 程度に集中した規格化状態を等しい重みで重ねた状態を考えます。ϵ → 0 \epsilon \to 0 ϵ → 0 の極限で ⟨ x ^ ⟩ → x 0 \langle \hat x\rangle \to x_0 ⟨ x ^ ⟩ → x 0 、⟨ V ′ ( x ^ ) ⟩ → 1 2 ( V ′ ( x 0 − d ) + V ′ ( x 0 + d ) ) \langle V'(\hat x)\rangle \to \tfrac12\bigl(V'(x_0-d) + V'(x_0+d)\bigr) ⟨ V ′ ( x ^ )⟩ → 2 1 ( V ′ ( x 0 − d ) + V ′ ( x 0 + d ) ) です(V ′ V' V ′ の連続性を使いました)。仮定よりこの 2 つは
V ′ ( x 0 − d ) + V ′ ( x 0 + d ) 2 = V ′ ( x 0 ) \frac{V'(x_0-d) + V'(x_0+d)}{2} = V'(x_0) 2 V ′ ( x 0 − d ) + V ′ ( x 0 + d ) = V ′ ( x 0 ) を満たさなければならず、これがすべての x 0 x_0 x 0 と d d d について成り立ちます。これは V ′ V' V ′ が中点についてのイェンセン方程式を等号で満たすということであり、V ′ V' V ′ が連続であれば V ′ V' V ′ はアフィン関数 α x + β \alpha x + \beta α x + β に限られます。実際 g ( x ) : = V ′ ( x ) − V ′ ( 0 ) − ( V ′ ( 1 ) − V ′ ( 0 ) ) x g(x) := V'(x) - V'(0) - (V'(1)-V'(0))x g ( x ) := V ′ ( x ) − V ′ ( 0 ) − ( V ′ ( 1 ) − V ′ ( 0 )) x とおくと g g g は同じ中点条件を満たし g ( 0 ) = g ( 1 ) = 0 g(0) = g(1) = 0 g ( 0 ) = g ( 1 ) = 0 なので、中点条件を繰り返し使うと二進有理数上で g = 0 g = 0 g = 0 、連続性からすべての x x x で g = 0 g = 0 g = 0 です。V ′ V' V ′ がアフィンであることは V V V が高々 2 次であることと同値です。
E. Schrödinger, “Quantisierung als Eigenwertproblem (Erste Mitteilung)”, Annalen der Physik 384 (1926), 361–376. doi:10.1002/andp.19263840404 — 波動方程式が初めて提出された論文。
M. Born, “Zur Quantenmechanik der Stoßvorgänge”, Zeitschrift für Physik 37 (1926), 863–867. doi:10.1007/BF01397477 — 確率解釈を導入した散乱理論の論文。
P. Ehrenfest, “Bemerkung über die angenäherte Gültigkeit der klassischen Mechanik innerhalb der Quantenmechanik”, Zeitschrift für Physik 45 (1927), 455–457. doi:10.1007/BF01329203 — 定理 5.5 の原論文。
J. J. Sakurai and J. Napolitano, Modern Quantum Mechanics , 3rd ed., Cambridge University Press, 2020 — 第 1 章・第 2 章。ディラック記法を出発点に据えた標準的な教科書。
D. J. Griffiths and D. F. Schroeter, Introduction to Quantum Mechanics , 3rd ed., Cambridge University Press, 2018 — 第 1 章・第 2 章。波動関数と 1 次元問題を丁寧に扱っています。
猪木慶治・川合光『量子力学 I』講談社サイエンティフィク、1994 — 第 2 章・第 3 章。計算の細部まで書かれた日本語の定番。
§3.1 で使った平面波 ψ p ( x ) = A e i p x / ℏ \psi_p(x) = A\,e^{ipx/\hbar} ψ p ( x ) = A e i p x /ℏ は、∣ ψ p ∣ 2 = ∣ A ∣ 2 |\psi_p|^2 = |A|^2 ∣ ψ p ∣ 2 = ∣ A ∣ 2 が一定なので
∫ − ∞ ∞ ∣ ψ p ∣ 2 d x = ∣ A ∣ 2 ∫ − ∞ ∞ d x = ∞ \int_{-\infty}^{\infty}|\psi_p|^2dx = |A|^2\int_{-\infty}^{\infty}dx = \infty ∫ − ∞ ∞ ∣ ψ p ∣ 2 d x = ∣ A ∣ 2 ∫ − ∞ ∞ d x = ∞
となり、A ≠ 0 A \ne 0 A = 0 である限り L 2 ( R ) L^2(\mathbb{R}) L 2 ( R ) に属しません。つまり 定義 2.1 の意味では状態ではなく、定義 4.1 の確率解釈も直接は適用できません。p ^ \hat p p ^ の固有値方程式 p ^ ψ = p ψ \hat p\,\psi = p\,\psi p ^ ψ = p ψ は L 2 L^2 L 2 の中に解をもたないのです。これは連続スペクトルをもつ演算子に共通の事情で、定理 6.3 の「固有関数が完全な規格直交系をなす」という仮定が自由粒子では成り立たないことを意味します。
実用上は次の 2 つの扱いがあります。
デルタ関数規格化。 ψ p ( x ) = ( 2 π ℏ ) − 1 / 2 e i p x / ℏ \psi_p(x) = (2\pi\hbar)^{-1/2}e^{ipx/\hbar} ψ p ( x ) = ( 2 π ℏ ) − 1/2 e i p x /ℏ と規格化定数を選ぶと、超関数の意味で
⟨ ψ p ′ ∣ ψ p ⟩ = 1 2 π ℏ ∫ − ∞ ∞ e i ( p − p ′ ) x / ℏ d x = 1 2 π ℏ ⋅ 2 π δ ( p − p ′ ℏ ) = δ ( p − p ′ ) \langle \psi_{p'}\mid\psi_p\rangle = \frac{1}{2\pi\hbar}\int_{-\infty}^{\infty}e^{i(p - p')x/\hbar}dx
= \frac{1}{2\pi\hbar}\cdot 2\pi\,\delta\!\left(\frac{p-p'}{\hbar}\right)
= \delta(p - p') ⟨ ψ p ′ ∣ ψ p ⟩ = 2 π ℏ 1 ∫ − ∞ ∞ e i ( p − p ′ ) x /ℏ d x = 2 π ℏ 1 ⋅ 2 π δ ( ℏ p − p ′ ) = δ ( p − p ′ )
が成り立ちます(∫ e i k x d x = 2 π δ ( k ) \int e^{ikx}dx = 2\pi\delta(k) ∫ e ik x d x = 2 π δ ( k ) と δ ( a x ) = δ ( x ) / ∣ a ∣ \delta(ax) = \delta(x)/|a| δ ( a x ) = δ ( x ) /∣ a ∣ を使いました)。クロネッカーのデルタ δ m n \delta_{mn} δ mn がディラックのデルタ δ ( p − p ′ ) \delta(p-p') δ ( p − p ′ ) に置き換わり、定理 6.3 の和が積分(フーリエ変換)になります。この枠組みを厳密に正当化するのが「装備されたヒルベルト空間」の理論です。
箱に閉じ込める。 長さ L L L の区間に周期境界条件 ψ ( x + L ) = ψ ( x ) \psi(x+L) = \psi(x) ψ ( x + L ) = ψ ( x ) を課すと、許される波数は k n = 2 π n / L k_n = 2\pi n/L k n = 2 π n / L (n ∈ Z n \in \mathbb{Z} n ∈ Z )と離散化され、ψ n ( x ) = L − 1 / 2 e i k n x \psi_n(x) = L^{-1/2}e^{ik_nx} ψ n ( x ) = L − 1/2 e i k n x は正真正銘の規格化された関数になります。最後に L → ∞ L \to \infty L → ∞ とします。固体物理でよく使われる方法です。
いずれにせよ、物理的に実現される状態は常に規格化可能な波束 であり、平面波はその展開に使う便宜的な道具だと考えてください。具体的な 1 次元問題における散乱状態と束縛状態の扱いは 1 次元の簡単な系 で詳しく見ます。