この年度は大問2題で、2問すべてが必答です(試験時間は90分)。第1問は4変数のヴァンデルモンド行列式を、斉次性と零点という2つの情報だけから因数分解し、続いてその対数微分から作った有理関数の留数を計算します。第2問は2変数2階線形偏微分方程式を線形変換と指数因子で標準形に直し、係数行列の行列式の符号で楕円型・放物型・双曲型に分かれることを確かめたうえで、熱方程式の初期値問題と波動方程式の一般解に進みます。設問の大半が「示せ」なので、多項式環での割り切れ、極の位数、微分と積分の交換といった論理の詰めがそのまま得点になります。
| 問題 | 分野 | 主題 |
|---|
| 第1問 | 線形代数・複素解析 | ヴァンデルモンド行列式の因数分解、対数微分と留数 |
| 第2問 | 微分方程式・線形代数・フーリエ解析 | 2階偏微分方程式の標準形、熱核、波動方程式の一般解 |
複素数 z1,z2,z3,z4 を並べて z=(z1,z2,z3,z4) とし、
Δ(z)=1z1z12z131z2z22z231z3z32z331z4z42z43
と定めます。第 c 列が zc のべき zc0,zc1,zc2,zc3 を縦に並べたもの、すなわち (r,c) 成分が zcr−1(r,c=1,…,4)です。設問1では
Δ(z)=1≤i<j≤4∏(zi−zj)=(z1−z2)(z1−z3)(z1−z4)(z2−z3)(z2−z4)(z3−z4)
を、斉次性・零点・係数比較の3段で示します。以下この等式を式(1)と呼びます。設問2では Δ の対数微分を通して f(z)=Δ−1∂2Δ/∂z12 を計算し、z1 の関数としての極の構造から複素積分を求めます。設問2以降は z2,z3,z4 は互いに異なるとします。
(i) まず左辺です。ライプニッツの展開式(行列式の定義)に (r,c) 成分 zcr−1 を入れると
Δ(z)=σ∈S4∑sgn(σ)c=1∏4zcσ(c)−1
です。ここで S4 は {1,2,3,4} の置換全体です。各項は単項式 z1σ(1)−1z2σ(2)−1z3σ(3)−1z4σ(4)−1 で、その次数は
c=1∑4(σ(c)−1)=(1+2+3+4)−4=6
です。σ が全単射なので σ(1),…,σ(4) は 1,2,3,4 の並べ替えであり、この和は σ によらず 6 になります。つまり左辺に現れる項はすべて6次で、左辺は6次の同次多項式です。
右辺は1次の同次多項式(zi−zj)6個の積です。積を展開するとき各因子から zi か −zj のいずれか1つを選ぶので、どの項もちょうど6個の1次の文字の積、すなわち6次です。よって右辺も6次の同次多項式です。
同じことは変数のスケール変換でも確認できます。z→tz とすると行列の第 r 行は tr−1 倍されるので、行列式の多重線形性から Δ(tz)=t0+1+2+3Δ(z)=t6Δ(z) です。右辺も各因子が t 倍されて t6 倍になります。
(ii) i=j で zi=zj とすると、行列の第 i 列と第 j 列は成分ごとに一致します。行列式は列について交代的(2つの列を入れ替えると符号が変わる)なので、等しい2列をもつ行列の行列式は 0 です。したがって zi=zj のとき Δ(z)=0 です。
(iii) はじめに、(ii) から比例関係が出ることを確認します。Δ を z1 の多項式と見て、係数環 R=C[z2,z3,z4] 上で1次式 z1−z2 で割ると
Δ=(z1−z2)Q(z1,z2,z3,z4)+r(z2,z3,z4)
と書けます(余りは z1 について0次)。ここで z1=z2 を代入すると (ii) より左辺は 0 なので r=0、つまり z1−z2 は Δ を割ります。他の5組についても変数の名前を取り替えるだけで同じ議論が通り、6個の1次式 zi−zj はすべて Δ を割ります。C[z1,z2,z3,z4] は一意分解環で、1次式は既約、しかも異なる組 (i,j) に対する zi−zj は互いに定数倍ではない(同伴でない)ので、それらの積も Δ を割ります。(i) より Δ と積はともに6次の同次多項式なので、商は0次すなわち定数 c です。
Δ(z)=c1≤i<j≤4∏(zi−zj)
比例定数を決めるため、単項式 z13z22z31z40 の係数を両辺で比べます。
左辺では、∏czcσ(c)−1 の指数の組がそのまま σ を決める(σ(c)= (指数)+1)ので、1つの単項式は高々1つの σ からしか出ません。指数の組 (3,2,1,0) に対応するのは σ(1)=4, σ(2)=3, σ(3)=2, σ(4)=1 で、これは互換の積 (1 4)(2 3) なので sgn(σ)=(−1)2=+1 です。よって左辺での係数は +1 です。
右辺では、z13 を作るには z1 を含む3因子 (z1−z2),(z1−z3),(z1−z4) からすべて z1 を選ぶしかありません。残る因子は (z2−z3),(z2−z4),(z3−z4) で、z22 を作るには前2つから z2 を選ぶしかなく、最後の因子からは z3 を選ぶしかありません。選び方は一意で、負号を1つも拾わないので、右辺での係数は c⋅1=c です。
両者を比べて c=1、すなわち式(1)が成り立ちます。
検算として z=(0,1,2,3) を入れると、第1列が (1,0,0,0)T なので余因子展開で
Δ=1112483927=36−36+12=12
であり、右辺は (−1)(−2)(−3)(−1)(−2)(−1)=12 で一致します。なお Δ を「行 = べき、列 = 変数」で作った本問の並べ方だと符号は (−1)4⋅3/2=+1 で、たまたま ∏i<j(zi−zj) の側と一致します(変数が2個や3個なら符号が付きます)。
(i) g が正則かつ g=0 の領域では、局所的に λ=logg の枝が選べて g=eλ と書けます。枝の取り替えは λ を 2πi の整数倍だけずらすだけなので、以下に現れる λ の導関数は一価です。g=eλ を微分すると
dzdg=dzdλeλ,dz2d2g=[dz2d2λ+(dzdλ)2]eλ
なので、g=eλ で割って
g1dzdg=dzdλ,g1dz2d2g=dz2d2λ+(dzdλ)2
が答えです。
(ii) 式(1)から、z1 を変数、z2,z3,z4 を定数と見ると
Δ(z)=P(z1)(z1−z2)(z1−z3)(z1−z4)⋅(z2−z3)(z2−z4)(z3−z4)
です。後半の因子は z1 を含まず、z2,z3,z4 が互いに異なるので 0 ではありません。λ=logΔ とすると、z1 に依存しない因子は λ の定数部分に落ちるので
∂z1∂λ=j=2∑4z1−zj1,∂z12∂2λ=−j=2∑4(z1−zj)21
です。設問2(i) の第2式を z1 方向に適用すると
f(z)=∂z12∂2λ+(∂z1∂λ)2=−j=2∑4(z1−zj)21+(j=2∑4z1−zj1)2
となり、2乗を展開すると対角項 ∑j(z1−zj)−2 が相殺して
f(z)=22≤j<k≤4∑(z1−zj)(z1−zk)1=(z1−z2)(z1−z3)2+(z1−z2)(z1−z4)2+(z1−z3)(z1−z4)2
が答えです。通分すれば
f(z)=(z1−z2)(z1−z3)(z1−z4)2[(z1−z4)+(z1−z3)+(z1−z2)]=(z1−z2)(z1−z3)(z1−z4)2(3z1−z2−z3−z4)
とも書けます。これは対数を経由せずに直接計算した結果とも一致します。実際 P=abc(a=z1−z2、b=z1−z3、c=z1−z4、いずれも z1 微分は 1)に対して P′′=2(a+b+c) であり、f=P′′/P が上式です。
2次の極が無いことを示します。上の通分した表式で、分母 P(z1)=(z1−z2)(z1−z3)(z1−z4) の零点は z1=z2,z3,z4 の3点で、z2,z3,z4 が互いに異なるという仮定からこれらはすべて1位の零点です。分子は z1 の1次多項式で、いたるところ正則です。したがって f は有限複素平面内で高々1位の極しか持たず、2次(以上)の極はありません。分子が z1=zj で偶然消える場合はその点が極でなくなるだけで、結論は変わりません。
和の形からも同じことが読めます。z1=z2 の近傍では第3項は正則、第1項と第2項が 1/(z1−z2) の1位の極を出すだけです。構造的には、(∂λ/∂z1)2 が持っていた2位の極が ∂2λ/∂z12 の2位の極とちょうど打ち消す、というのが2次の極が消える理由です。
(iii) 被積分関数 z1f(z) は z1 の有理関数で、極は z1=z2,z3,z4(いずれも高々1位)だけです。積分路 C はこの3点をすべて内部に含む円を反時計回りに1周するので、留数定理から
∮C2πidz1z1f(z)=j=2∑4z1=zjRes[z1f(z)]
です。和の表式を使うと、z1=zj で特異なのは j を含む2つの項だけなので
z1=zjRes[z1f]=2zjk=j∑zj−zk1
(k は {2,3,4}∖{j} を走る)となります。これを組 (j,k) ごとにまとめると、1つの組からの寄与は
2(zj−zkzj+zk−zjzk)=2zj−zkzj−zk=2
です。組は (2,3),(2,4),(3,4) の3つなので、答えは
∮C2πidz1z1f(z)=2×3=6
です。z2,z3,z4 の値によらない定数になります。
検算を2通りしておきます。第1に (z2,z3,z4)=(0,1,2) とすると、留数は z1=0 で 0、z1=1 で 2/1+2/(−1)=0、z1=2 で 4/2+4/1=6 となり和は 6 です。第2に無限遠での挙動を見ると、通分表式から ∣z1∣→∞ で z1f=6/z1+O(∣z1∣−2) です。C を大円に連続変形しても新たな極をまたがないので、積分値は 1/z1 の係数 6 に等しく、同じ答えを与えます。
実変数 x1,x2 の関数 ψ に対し、実定数係数の微分演算子
L=i=1∑2j=1∑2ai,j∂xi∂xj∂2+i=1∑2bi∂xi∂,aj,i=ai,j
による方程式 Lψ=Eψ(E は定数)を考えます。ai,j のうち少なくとも1つは 0 でないとし、A={ai,j}、D=detA=a1,1a2,2−a1,22、b=(b1,b2)T と書きます。A は実対称行列です。以下、線形変換 ξ=Cx(detC=0)と指数因子 ψ=eλ1ξ1+λ2ξ2ϕ で L を整理し、D の符号に応じた3つの標準形(順に式(2)、式(3)、式(4))に到達します。
ξk=∑j=12ck,jxj なので ∂ξk/∂xi=ck,i です。detC=0 より x=C−1ξ と逆に解けるので、x の関数を ξ の関数と見なすことができ、連鎖律が使えます。
∂xi∂=k=1∑2∂xi∂ξk∂ξk∂=k=1∑2ck,i∂ξk∂
成分で書けば答えは
∂x1∂=c1,1∂ξ1∂+c2,1∂ξ2∂,∂x2∂=c1,2∂ξ1∂+c2,2∂ξ2∂
です。行列で書くと、∂x を成分に並べた列ベクトルは C の転置で移ります。
(∂/∂x1∂/∂x2)=CT(∂/∂ξ1∂/∂ξ2)
変数が C で移るのに対し微分は CT で移る、という向きの違いが以下で効きます。
設問1の関係を2階の項に入れます。ai,j は定数で偏微分は可換なので
i,j∑ai,j∂xi∂xj∂2=i,j∑ai,jk,l∑ck,icl,j∂ξk∂ξl∂2=k,l∑a~k,l∂ξk∂ξl∂2,A~=CACT
となります。すなわち2階の項の係数行列は合同変換 A↦CACT で移り、問題は「実対称行列 A=O を実正則行列 C による合同変換でどこまで簡単にできるか」に帰着します。A~ も実対称です。
A は実対称なので、実直交行列 R(RTR=I)と実固有値 μ1,μ2 を用いて RART=diag(μ1,μ2) と対角化できます。固有値の順序は R の行の入れ替え(直交行列である置換行列を掛ける操作)で自由に選べます。さらに S=diag(s1,s2)(s1s2=0)を掛けて C=SR とすると detC=s1s2detR=0 で
CACT=Sdiag(μ1,μ2)ST=diag(s12μ1, s22μ2)
です。sk2>0 なので、固有値の絶対値は自由に変えられますが符号は変えられません。また detA=μ1μ2=D です。場合分けはこの積の符号で尽きます。
D>0 の場合。μ1μ2>0 なので両固有値は 0 でなく同符号で、その符号を ε=±1 とします。sk=∣μk∣−1/2 と選べば CACT=εI となり、2階の項は
ε(∂ξ12∂2+∂ξ22∂2)=±(∂ξ12∂2+∂ξ22∂2)
になります。
D=0 の場合。μ1μ2=0 です。もし μ1=μ2=0 なら RART=O から A=O となり、「ai,j の少なくとも1つは 0 でない」という仮定に反します。よってちょうど一方が 0 です。固有値の順序を選んで μ1=0、μ2=0 とし、s1=1、s2=∣μ2∣−1/2 とすれば CACT=diag(0,ε)(ε=sgnμ2)となり、2階の項は
ε∂ξ22∂2=±∂ξ22∂2
です。生き残る変数を ξ2 にするのが、上で固有値の順序を選んだ理由です。
D<0 の場合。μ1μ2<0 なので固有値は異符号です。順序を選んで μ1>0>μ2 とし、sk=∣μk∣−1/2 とすれば CACT=diag(1,−1) となり、2階の項は
∂ξ12∂2−∂ξ22∂2
です。
以上で3つの標準形が得られました。この分類が D の符号だけで決まることは、det(CACT)=(detC)2detA と (detC)2>0 から D の符号が合同変換で不変であることに対応します。実際、3つの標準形の行列式はそれぞれ +1、0、−1 で、符号が一致しています。また D>0 と D=0 の場合の ± は実の C では消せません(全体の符号を反転するには sk を純虚数にする必要があります)。± は A が正定値か負定値か(D=0 なら 0 でない固有値の符号、すなわち trA の符号)で決まります。
なお a1,1=0 のときは平方完成でも同じことができます。C1=(1−a1,2/a1,101) とすると C1AC1T=diag(a1,1,D/a1,1) となり、あとは符号を見て拡大縮小と(必要なら)2変数の入れ替えをするだけです。固有値を使う上の議論は a1,1=a2,2=0 の場合も含めて一様に扱えます。
設問1と設問2で選んだ C で変数変換すると、1階の項も同じ連鎖律で移ります。
i∑bi∂xi∂=k∑(i∑ck,ibi)∂ξk∂=k∑Bk∂ξk∂,B=Cb
C と b が実なので B1,B2 は実定数です。以下 ∂k=∂/∂ξk と略記します。
次に指数因子です。λ1,λ2 を定数として
∂k(eλ1ξ1+λ2ξ2ϕ)=eλ1ξ1+λ2ξ2(∂k+λk)ϕ
が積の微分から従い、これを繰り返せば、定数係数多項式 P について
P(∂1,∂2)(eλ1ξ1+λ2ξ2ϕ)=eλ1ξ1+λ2ξ2P(∂1+λ1,∂2+λ2)ϕ
が成り立ちます。ψ=eλ1ξ1+λ2ξ2ϕ を Lψ=Eψ に入れて eλ1ξ1+λ2ξ2=0 で割れば、ϕ の方程式は「L の中の ∂k をすべて ∂k+λk に置き換えたもの」=E になります。方程式全体に 0 でない定数を掛けても同値なので、それも使います。
D>0 の場合。L=ε(∂12+∂22)+B1∂1+B2∂2(ε=±1)です。置き換えて展開すると
ε(∂12+∂22)ϕ+(2ελ1+B1)∂1ϕ+(2ελ2+B2)∂2ϕ+[ε(λ12+λ22)+B1λ1+B2λ2]ϕ=Eϕ
です。λk=−εBk/2(実数)と選べば1階微分の項が両方消えます。このとき定数部分は −ε(B12+B22)/4 になるので、全体に ε を掛けて(ε2=1)
(∂ξ12∂2+∂ξ22∂2)ϕ=Fϕ,F=εE+4B12+B22
すなわち式(2)の形になります。
D=0 の場合。L=ε∂22+B1∂1+B2∂2 です。置き換えると
ε∂22ϕ+(2ελ2+B2)∂2ϕ+B1∂1ϕ+[ελ22+B1λ1+B2λ2]ϕ=Eϕ
です。λ2=−εB2/2 とすれば ∂2 の項が消えます。∂1 は1階のままですが、これは標準形(3)が許している形です。定数部分を K=B1λ1−εB22/4 と書き、全体に −ε を掛けると
(β∂ξ1∂−∂ξ22∂2)ϕ=Fϕ,β=−εB1,F=ε(K−E)
となり式(3)の形です。λ1 は使わずに残っているので、B1=0 なら λ1 で F を好きな値(たとえば 0)にできます。また D=0 の標準形 ε∂22 は ξ1 の定数倍を許す(ξ1 を定数倍しても ∂22 は変わらない)ので、β=0 なら ξ1 を β 倍のスケールで測り直して β=1 に規格化できます。設問4がこの F=0, β=1 の場合です。B1=0 のときは β=0 となり、式(3)は ξ1 を助変数とする ξ2 の常微分方程式に退化します。
D<0 の場合。L=∂12−∂22+B1∂1+B2∂2 です。置き換えると
(∂12−∂22)ϕ+(2λ1+B1)∂1ϕ+(−2λ2+B2)∂2ϕ+[λ12−λ22+B1λ1+B2λ2]ϕ=Eϕ
なので、λ1=−B1/2、λ2=B2/2 とすれば1階微分の項が消え、
(∂ξ12∂2−∂ξ22∂2)ϕ=Fϕ,F=E+4B12−4B22
すなわち式(4)の形になります。以上3つの場合すべてで λ1,λ2 は実数に取れており、ψ と ϕ の対応は eλ1ξ1+λ2ξ2=0 より1対1です。D>0 が楕円型(ラプラス型)、D=0 が放物型(熱伝導型)、D<0 が双曲型(波動型)という標準的な分類がこれで出ました。
F=0, β=1 とした式(3)は
(∂ξ1∂−∂ξ22∂2)ϕ(ξ1,ξ2)=0
で、ξ1 を時間、ξ2 を空間座標と読めば拡散係数 1 の熱方程式です。
(i) 与えられた表式
ϕ(ξ1,ξ2)=∫−∞∞f(y)e−y2ξ1eiyξ2dy
の被積分関数を ξ1、ξ2 で微分すると、e−y2ξ1eiyξ2 に対して
∂ξ1∂(e−y2ξ1eiyξ2)=−y2e−y2ξ1eiyξ2,∂ξ22∂2(e−y2ξ1eiyξ2)=(iy)2e−y2ξ1eiyξ2=−y2e−y2ξ1eiyξ2
となり、両者は y ごとに一致します。したがって微分と積分の交換が許されれば
∂ξ1∂ϕ=−∫−∞∞y2f(y)e−y2ξ1eiyξ2dy=∂ξ22∂2ϕ
すなわち ϕ は式(3)(F=0,β=1)を満たします。
交換の正当化を確認します。ξ1>0 の任意の点を含む閉領域 ξ1≥c>0 を取ると、n=0,1,2 に対し
ynf(y)e−y2ξ1eiyξ2≤∣y∣n∣f(y)∣e−cy2
という ξ1,ξ2 に依らない上界が取れます。e−cy2 はガウス型に減衰するので、f に課された収束条件(少なくとも ∫∣y∣n∣f(y)∣e−cy2dy<∞、n≤2)のもとでこの上界は可積分です。よって ξ1>0 で各積分は絶対かつ局所一様に収束し、優収束定理により微分と積分を交換できます。f が高々多項式増大なら、ξ1>0 でこの条件は自動的に満たされます。
(ii) ξ1→+0 の極限で ϕ(0,ξ2)=∫−∞∞f(y)eiyξ2dy です(極限は超関数の意味で取ります)。デルタ関数のフーリエ表示
δ(ξ2)=2π1∫−∞∞eiyξ2dy
と比べると、フーリエ変換の一意性から f(y)=1/(2π) です。これを (i) の表式に戻すと
ϕ(ξ1,ξ2)=2π1∫−∞∞e−y2ξ1+iyξ2dy
です。ξ1>0 なので指数の肩を平方完成できます。
−y2ξ1+iyξ2=−ξ1(y−2ξ1iξ2)2−4ξ1ξ22
a=ξ2/(2ξ1) と置くと、残る積分は ∫−∞∞e−ξ1(y−ia)2dy です。被積分関数 e−ξ1z2 は整関数なので、頂点 ±R, ±R+ia の長方形にコーシーの定理を適用します。縦辺では ∣e−ξ1(±R+it)2∣=e−ξ1(R2−t2)→0(R→∞、t は 0 と a の間で有界、ξ1>0)なので寄与が消え、積分路を実軸に平行移動できます。
∫−∞∞e−ξ1(y−ia)2dy=∫−∞∞e−ξ1u2du=ξ11∫−∞∞e−x2dx=ξ1π
(x=ξ1u と置換し、既知の ∫e−x2dx=π を使いました。)したがって ξ1>0 に対する解は
ϕ(ξ1,ξ2)=2π1ξ1πe−ξ22/(4ξ1)=2πξ11e−ξ22/(4ξ1)=4πξ11e−ξ22/(4ξ1)
です。これが答えで、拡散係数 1 の熱核(ガウス核)です。
検算を3つします。第1に方程式そのもの。ϕ=(4πξ1)−1/2e−ξ22/(4ξ1) から
∂ξ1∂ϕ=(−2ξ11+4ξ12ξ22)ϕ,∂ξ2∂ϕ=−2ξ1ξ2ϕ,∂ξ22∂2ϕ=(−2ξ11+4ξ12ξ22)ϕ
で、確かに ∂ξ1ϕ=∂ξ22ϕ です。第2に規格化。∫−∞∞e−ξ22/(4ξ1)dξ2=4πξ1 なので ∫ϕdξ2=1 で、これは ξ1 に依らず、初期条件 ∫δ(ξ2)dξ2=1 と整合します。第3に初期条件そのもの。ξ1→+0 で幅 2ξ1 の程度に潰れる面積 1 のガウス関数なので、超関数の意味で δ(ξ2) に収束します。
F=0 とした式(4)は
(∂ξ12∂2−∂ξ22∂2)ϕ(ξ1,ξ2)=0
で、これは伝播速度 1 の1次元波動方程式です。左辺に2階微分が現れるので、G1,G2 は2回微分可能であると解釈します(そうでないと式(4)の左辺が古典的な意味を持ちません)。
u=ξ1−ξ2 と置くと、連鎖律から
∂ξ1∂G1(u)=G1′(u),∂ξ12∂2G1(u)=G1′′(u),∂ξ2∂G1(u)=−G1′(u),∂ξ22∂2G1(u)=G1′′(u)
です(ξ2 については ∂u/∂ξ2=−1 を2回使うので符号が2乗されて + になります)。よって
(∂ξ12∂2−∂ξ22∂2)G1(ξ1−ξ2)=G1′′−G1′′=0
です。v=ξ1+ξ2 についても同様に ∂ξ12G2=G2′′、∂ξ22G2=G2′′ なので
(∂ξ12∂2−∂ξ22∂2)G2(ξ1+ξ2)=G2′′−G2′′=0
です。演算子は線形なので、和 ϕ=G1(ξ1−ξ2)+G2(ξ1+ξ2) も式(4)(F=0)を満たします。
逆にこれが一般解であることも同じ変数で見えます。u=ξ1−ξ2, v=ξ1+ξ2 とすると ∂ξ1=∂u+∂v、∂ξ2=−∂u+∂v なので
∂ξ12∂2−∂ξ22∂2=(∂u+∂v)2−(∂v−∂u)2=4∂u∂v
です。∂u∂vϕ=0 は ∂vϕ が v だけの関数であることを意味し、v で積分すれば ϕ=G1(u)+G2(v) の形に限られます。つまり右向きと左向きの2つの進行波の重ね合わせが C2 の解全体を尽くします。
出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 平成25年度 修士課程 入学試験問題 数学。問題文は要約して引用しています。