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重積分と累次積分:フビニの定理とヤコビアンで多変数の積分を計算する

対象読者: 本テーマ第 1〜5 章の 1 変数の積分と、多変数関数の偏微分・全微分を学んだ人。行列式の計算ができれば十分で、重積分やフビニの定理は未習でもかまいません。

前提となる記事:多変数関数の微分と偏微分:微分とは「一次近似」のことである

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丸みのある屋根の下の空間の広さを知りたいとき、床を細かい升目に区切り、それぞれの升の上に細い柱を立てて、柱の体積を足し合わせるのが素朴な方法です。この記事は、その足し算を「積分」として厳密に定義し、実際の計算は「1 変数の積分を 2 回行う」だけで済む理由を説明します。さらに、座標を取り替えて円板などの積分を楽にする方法も扱います。読み終えると、三角形や円板の上の積分を自分で式に直して計算できるようになります。

  • 2 重積分は、長方形を細かく切り、その上に立つ「柱」の体積を足し上げたリーマン和の極限として定義します。1 変数の定積分が符号付き面積だったのに対し、2 重積分は符号付き体積です。
  • 有界閉長方形の上の連続関数は可積分です。鍵になるのは一様連続性(関数の値の差を、2 点の距離だけで場所によらず小さく抑えられる性質)で、1 変数のときとまったく同じ筋道です。
  • フビニの定理は「重積分(体積)=累次積分(1 変数の積分を 2 回)」を保証します。これがないと、重積分は定義できても計算できません。
  • 一般の領域では、領域を縦線集合として書くか横線集合として書くかが、そのまま積分順序の選択になります。順序の取り替えで値が変わるのは、重積分そのものが存在しないとき(この記事の例では被積分関数が非有界なとき)です。
  • 変数変換公式 dx dy=∣det⁡JΦ∣ du dvdx\,dy = \lvert\det J_\Phi\rvert\,du\,dv に現れるヤコビアン det⁡JΦ\det J_\Phi は、写像 Φ\Phi が微小な面積を何倍に引き伸ばすかという「面積の拡大率」です。極座標では rr になります。
  • 応用として、ガウス積分 ∫−∞∞e−x2 dx=π\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2}\,dx=\sqrt{\pi} を極座標変換で計算します。

1. 動機:体積をどう定義し、どう計算するか

Section titled “1. 動機:体積をどう定義し、どう計算するか”

1 変数の定積分 ∫abf(x) dx\int_a^b f(x)\,dx は、グラフの下の符号付き面積でした。定義は「区間を細かく切り、細長い長方形の面積を足し上げ、細かくする極限を取る」というものです。詳しくは 積分の基本定理と定積分 の リーマン可積分性の定義(定義 3.1)[積分の基本定理と定積分] を参照してください。

2 変数関数 z=f(x,y)z = f(x,y) のグラフは空間内の曲面です。その下の立体の体積を測りたい、というのが 2 重積分の出発点です。定義の作り方は 1 変数と同じで、平面領域を細かい長方形に切り、その上に立つ直方体(柱)の体積 f(代表点)×(底面積)f(\text{代表点}) \times (\text{底面積}) を足し上げ、細かくする極限を取ります。

ここで素朴な疑問が出ます。「xx で積分してから yy で積分すればいいのではないか」。この操作、つまり 1 変数の積分を 2 回繰り返すことを累次積分といいます。実際これが唯一の実用的な計算法です。しかし累次積分は「操作」であって、体積の定義ではありません。定義(体積)と計算法(2 回の積分)が一致する保証は、まったく自明ではないのです。

自明でないことは、次の 2 点からわかります。第一に、累次積分には dy dxdy\,dx の順と dx dydx\,dy の順の 2 通りがあり、この 2 つの値が食い違う関数が実在します(例 5.8)。もし累次積分がいつでも体積に等しいなら、そんなことは起こりえません。第二に、累次積分は「各断面の面積 F(x)=∫f(x,y) dyF(x)=\int f(x,y)\,dy を求めてから、それを xx 方向に積み上げる」という操作ですが、断面の面積が定まっても立体の体積が定まる保証はありません。この橋渡しをするのがフビニの定理です。

歴史的にも、この橋渡しは繊細な問題として扱われてきました。リーマンが 1854 年の教授資格論文で積分を厳密に定義したあと、多変数への拡張と累次積分との関係が整理され、グイド・フビニが 1907 年に、ルベーグ積分の枠組みで一般的な定理を証明しました。翌々年にはトネリが、非負関数に対する使いやすい形(可積分性を仮定せずに済む形)を与えています。

もう一つの主役が変数変換です。1 変数では置換積分 ∫f(g(t))g′(t) dt\int f(g(t))g'(t)\,dt が積分計算の要でした。円板や楕円板の上の積分では、直交座標のままでは領域の記述が −a2−x2≤y≤a2−x2-\sqrt{a^2-x^2} \le y \le \sqrt{a^2-x^2} のように醜くなります。極座標に取り替えれば領域は長方形になり、計算が一気に楽になります。そのとき dx dydx\,dy が r dr dθr\,dr\,d\theta に化ける理由が、ヤコビ(1841 年に関数行列式を組織的に論じました)の名を冠したヤコビアンです。

この記事では、定義(リーマン和)→ フビニの定理 → 一般の領域と積分順序 → 変数変換とヤコビアン、の順に進みます。全体の見取り図は次のとおりです。

2 重積分を計算するときの流れ

この記事では次の記号を使います。

  • R=[a,b]×[c,d]R = [a,b]\times[c,d](a<ba < b, c<dc < d)を R2\mathbb{R}^2 の閉長方形とし、その面積を ∣R∣=(b−a)(d−c)\lvert R\rvert = (b-a)(d-c) と書きます。
  • 点は P=(x,y)P=(x,y) のように書き、∥P−Q∥\lVert P - Q\rVert はユークリッド距離です。
  • ff が集合 SS 上有界とは、ある KK があって SS 上つねに ∣f∣≤K\lvert f\rvert \le K となることをいいます。

前提として次の 3 つを使います。

  1. 1 変数のリーマン積分(定義、区間加法性、単調性、線形性)。積分の基本定理と定積分 の 定積分の基本性質(命題 4.1)[積分の基本定理と定積分] を参照してください。
  2. 有界閉集合上の連続関数は一様連続であり、最大値・最小値を取ること(ハイネ・カントールの定理、最大値原理)。有界閉区間では ハイネ・カントールの定理(定理 7.1)[連続関数と一様連続性]、閉長方形では 長方形上の連続関数の一様連続性(補題 3.1)[広義積分・パラメータ積分とガンマ関数]、最大値・最小値は 最大値・最小値の定理(系 6.2)[コンパクト性] を参照してください。
  3. 偏微分とヤコビ行列。多変数関数の微分と偏微分 の 偏微分係数と偏導関数の定義(定義 3.1)[多変数関数の微分と偏微分] を参照してください。

まず、いちばん素直な領域である長方形の上で積分を定義します。一般の領域は第 5 節で扱います。

定義 3.1(長方形の分割と分割の幅)↗

R=[a,b]×[c,d]R=[a,b]\times[c,d] とする。[a,b][a,b] の分点 a=x0<x1<⋯<xm=ba = x_0 < x_1 < \cdots < x_m = b と [c,d][c,d] の分点 c=y0<y1<⋯<yn=dc = y_0 < y_1 < \cdots < y_n = d の組を RR の分割 Δ\Delta と呼び、RR を小長方形

Rij=[xi−1,xi]×[yj−1,yj](1≤i≤m, 1≤j≤n)R_{ij} = [x_{i-1}, x_i]\times[y_{j-1}, y_j] \qquad (1\le i\le m,\ 1\le j\le n)

に分ける。Δxi=xi−xi−1\Delta x_i = x_i - x_{i-1}、Δyj=yj−yj−1\Delta y_j = y_j - y_{j-1}、∣Rij∣=ΔxiΔyj\lvert R_{ij}\rvert = \Delta x_i \Delta y_j と書く。また

∣Δ∣=max⁡i,j(Δxi)2+(Δyj)2\lvert \Delta\rvert = \max_{i,j}\sqrt{(\Delta x_i)^2 + (\Delta y_j)^2}

(小長方形の対角線の長さの最大値)を分割の幅という。

幅を対角線で測っておくと、「同じ小長方形に属する 2 点の距離は ∣Δ∣\lvert\Delta\rvert 以下」がそのまま言えるので、あとの一様連続性の議論が楽になります。

定義 3.2(長方形上の 2 重積分)↗

f ⁣:R→Rf\colon R\to\mathbb{R} を有界関数とする。分割 Δ\Delta と各小長方形から選んだ代表点 ξij∈Rij\xi_{ij}\in R_{ij} に対し

Σ(f,Δ,ξ)=∑i=1m∑j=1nf(ξij) Δxi Δyj\Sigma(f,\Delta,\xi) = \sum_{i=1}^{m}\sum_{j=1}^{n} f(\xi_{ij})\,\Delta x_i\,\Delta y_j

をリーマン和という。ある実数 II が存在して、任意の ε>0\varepsilon > 0 に対しある δ>0\delta > 0 があり、∣Δ∣<δ\lvert\Delta\rvert < \delta を満たすすべての分割 Δ\Delta とすべての代表点の選び方 ξ\xi について

∣Σ(f,Δ,ξ)−I∣<ε\lvert \Sigma(f,\Delta,\xi) - I\rvert < \varepsilon

が成り立つとき、ff は RR 上**(リーマン)可積分**であるといい、II を ff の RR 上の 2 重積分と呼んで

∬Rf(x,y) dx dy=I\iint_R f(x,y)\,dx\,dy = I

と書く。

f≥0f \ge 0 のとき、f(ξij)ΔxiΔyjf(\xi_{ij})\Delta x_i\Delta y_j は底面 RijR_{ij}、高さ f(ξij)f(\xi_{ij}) の直方体の体積です。リーマン和はこの柱をすべて足したもの、2 重積分はそれを細かくした極限で、これが「グラフの下の立体の体積」の定義になります。

定義はこれでよいのですが、このままでは「すべての分割とすべての代表点」を相手にしなければならず、可積分性の判定に使えません。1 変数のときと同じく、代表点を inf⁡\inf と sup⁡\sup に振り切った和を考えると扱いやすくなります。分割 Δ\Delta に対し

mij=inf⁡Rijf,Mij=sup⁡Rijf,s(f,Δ)=∑i,jmij∣Rij∣,S(f,Δ)=∑i,jMij∣Rij∣m_{ij} = \inf_{R_{ij}} f,\quad M_{ij} = \sup_{R_{ij}} f,\qquad s(f,\Delta) = \sum_{i,j} m_{ij}\lvert R_{ij}\rvert,\quad S(f,\Delta) = \sum_{i,j} M_{ij}\lvert R_{ij}\rvert

とおき、それぞれ不足和(下ダルブー和)、過剰和(上ダルブー和)と呼びます。inf⁡\inf と sup⁡\sup は、小長方形の上での ff の最小値・最大値のことです(最小値・最大値が実際には取られない場合も含めて言えるように、下限・上限という言葉を使います)。不足和は各小長方形で「いちばん低い柱」を、過剰和は「いちばん高い柱」を立てた体積の合計ですから、本当の体積があるとすれば、必ず不足和以上、過剰和以下になります。

次の命題のねらいは、「すべての分割とすべての代表点を調べる」という重い条件を、「不足和と過剰和の差を小さくできる分割が 1 つあるか」という確かめやすい条件に言い換えることです。証明の前半は、リーマン和が不足和と過剰和に挟まれることを使い、後半は、分割を細かくすると不足和は増え過剰和は減ることを使います。

命題 3.3(ダルブーの判定法)✓

f ⁣:R→Rf\colon R\to\mathbb{R} を有界関数とする。ff が RR 上可積分であるための必要十分条件は、任意の ε>0\varepsilon > 0 に対して

S(f,Δ)−s(f,Δ)<εS(f,\Delta) - s(f,\Delta) < \varepsilon

を満たす RR の分割 Δ\Delta が存在することである。またこのとき

∬Rf(x,y) dx dy=sup⁡Δs(f,Δ)=inf⁡ΔS(f,Δ)\iint_R f(x,y)\,dx\,dy = \sup_{\Delta} s(f,\Delta) = \inf_{\Delta} S(f,\Delta)

が成り立つ。

証明(命題 3.3)

準備。 任意の分割 Δ\Delta と代表点 ξ\xi に対し、ξij∈Rij\xi_{ij}\in R_{ij} だから mij≤f(ξij)≤Mijm_{ij}\le f(\xi_{ij})\le M_{ij} であり、正の数 ∣Rij∣\lvert R_{ij}\rvert を掛けて足せば

s(f,Δ)≤Σ(f,Δ,ξ)≤S(f,Δ)s(f,\Delta) \le \Sigma(f,\Delta,\xi)\le S(f,\Delta)

を得ます。さらに η>0\eta > 0 を任意に取ると、inf⁡\inf の定義から各 (i,j)(i,j) について f(ξij)<mij+ηf(\xi_{ij}) < m_{ij}+\eta となる ξij∈Rij\xi_{ij}\in R_{ij} が選べ、そのとき Σ<s(f,Δ)+η∣R∣\Sigma < s(f,\Delta) + \eta\lvert R\rvert です。η\eta は任意なので、代表点をすべて動かしたときのリーマン和の下限はちょうど s(f,Δ)s(f,\Delta) です。同様に上限は S(f,Δ)S(f,\Delta) です。

(必要性) ff が可積分で I=∬RfI = \iint_R f とします。ε>0\varepsilon > 0 に対し 定義 3.2 の δ\delta を ε/3\varepsilon/3 に対して取り、∣Δ∣<δ\lvert\Delta\rvert < \delta なる分割を 1 つ固定します。すべての代表点で I−ε/3<Σ<I+ε/3I - \varepsilon/3 < \Sigma < I + \varepsilon/3 ですから、代表点について上限・下限を取れば、上の準備より S(f,Δ)≤I+ε/3S(f,\Delta)\le I+\varepsilon/3 かつ s(f,Δ)≥I−ε/3s(f,\Delta)\ge I-\varepsilon/3。よって S−s≤2ε/3<εS - s \le 2\varepsilon/3 < \varepsilon です。

(十分性) まず細分についての単調性を確かめます。分割 Δ′\Delta' が Δ\Delta の細分(分点を追加して得られる分割)であるとし、Δ\Delta の小長方形 RijR_{ij} が Δ′\Delta' の小長方形 R1′,…,Rk′R'_1,\dots,R'_k に分かれたとします。Rl′⊂RijR'_l\subset R_{ij} なので inf⁡Rl′f≥inf⁡Rijf=mij\inf_{R'_l} f \ge \inf_{R_{ij}} f = m_{ij} であり、∑l∣Rl′∣=∣Rij∣\sum_l \lvert R'_l\rvert = \lvert R_{ij}\rvert だから

∑l(inf⁡Rl′f)∣Rl′∣ ≥ mij∣Rij∣.\sum_{l}\Bigl(\inf_{R'_l} f\Bigr)\lvert R'_l\rvert \ \ge\ m_{ij}\lvert R_{ij}\rvert .

(i,j)(i,j) について足せば s(f,Δ′)≥s(f,Δ)s(f,\Delta')\ge s(f,\Delta)、同様に S(f,Δ′)≤S(f,Δ)S(f,\Delta')\le S(f,\Delta) です。ゆえに任意の 2 つの分割 Δ1,Δ2\Delta_1,\Delta_2 に対し、両方の分点を合わせた共通細分 Δ1∨Δ2\Delta_1\vee\Delta_2 を挟んで

s(f,Δ1)≤s(f,Δ1∨Δ2)≤S(f,Δ1∨Δ2)≤S(f,Δ2)s(f,\Delta_1)\le s(f,\Delta_1\vee\Delta_2)\le S(f,\Delta_1\vee\Delta_2)\le S(f,\Delta_2)

が成り立ち、I‾:=sup⁡Δs(f,Δ)≤inf⁡ΔS(f,Δ)=:I‾\underline{I} := \sup_\Delta s(f,\Delta) \le \inf_\Delta S(f,\Delta) =: \overline{I} を得ます。仮定よりどんな ε>0\varepsilon>0 に対しても I‾−I‾≤S(f,Δ)−s(f,Δ)<ε\overline{I}-\underline{I}\le S(f,\Delta)-s(f,\Delta)<\varepsilon となる Δ\Delta が取れるので、I‾=I‾\underline I = \overline I。これを JJ とおきます。

残るは、リーマン和が ∣Δ∣→0\lvert\Delta\rvert\to 0 で JJ に収束することです。K=sup⁡R∣f∣K = \sup_R \lvert f\rvert とおき(ff は有界)、ε>0\varepsilon>0 に対し S(f,Δ0)−s(f,Δ0)<ε/2S(f,\Delta_0)-s(f,\Delta_0)<\varepsilon/2 となる Δ0\Delta_0 を取り、その内部の分点が xx 方向に pp 本、yy 方向に qq 本あるとします。C=p(d−c)+q(b−a)C = p(d-c)+q(b-a) とおきます。任意の分割 Δ\Delta に対し共通細分 Δ∨Δ0\Delta\vee\Delta_0 を考えると、Δ\Delta の小長方形のうち実際に切られるのは Δ0\Delta_0 の分点を通る直線と交わるものだけで、それらは幅 ∣Δ∣\lvert\Delta\rvert 以下の帯に含まれるので、面積の合計は C∣Δ∣C\lvert\Delta\rvert 以下です。切られた小長方形 1 つあたり過剰和の差は 2K∣Rij∣2K\lvert R_{ij}\rvert 以下(sup⁡\sup の値はどれも絶対値 KK 以下)だから

S(f,Δ)−S(f,Δ∨Δ0)≤2KC∣Δ∣.S(f,\Delta) - S(f,\Delta\vee\Delta_0) \le 2KC\lvert\Delta\rvert .

そこで δ=ε8KC+1\delta = \dfrac{\varepsilon}{8KC+1} と取れば、∣Δ∣<δ\lvert\Delta\rvert<\delta のとき右辺は ε/4\varepsilon/4 未満で、細分の単調性 S(f,Δ∨Δ0)≤S(f,Δ0)S(f,\Delta\vee\Delta_0)\le S(f,\Delta_0) と合わせて

S(f,Δ)≤S(f,Δ0)+ε4<s(f,Δ0)+ε2+ε4≤J+3ε4S(f,\Delta) \le S(f,\Delta_0) + \frac{\varepsilon}{4} < s(f,\Delta_0)+\frac{\varepsilon}{2}+\frac{\varepsilon}{4} \le J + \frac{3\varepsilon}{4}

(最後は s(f,Δ0)≤I‾=Js(f,\Delta_0)\le \underline I = J)。同じ議論で s(f,Δ)>J−3ε/4s(f,\Delta) > J - 3\varepsilon/4 です。準備の不等式 s≤Σ≤Ss\le\Sigma\le S より、∣Δ∣<δ\lvert\Delta\rvert<\delta なるすべての分割と代表点で ∣Σ−J∣<ε\lvert \Sigma - J\rvert < \varepsilon。よって ff は可積分で積分値は JJ です。

定理 3.4(連続関数の可積分性)✓

R=[a,b]×[c,d]R = [a,b]\times[c,d](a<ba<b, c<dc<d)上の連続関数 ff は RR 上可積分である。

証明(定理 3.4)

RR は有界閉集合なので、ff は RR 上一様連続です(第 2 節の前提 2)。ε>0\varepsilon>0 を与え、

∥P−Q∥<δ  ⟹  ∣f(P)−f(Q)∣<ε2∣R∣\lVert P-Q\rVert < \delta \implies \lvert f(P)-f(Q)\rvert < \frac{\varepsilon}{2\lvert R\rvert}

となる δ>0\delta>0 を取ります。∣Δ∣<δ\lvert\Delta\rvert<\delta なる分割を 1 つ取ると、定義 3.1 の幅の定義より、同じ小長方形 RijR_{ij} に属する 2 点の距離は ∣Δ∣\lvert\Delta\rvert 以下、したがって δ\delta 未満です。また RijR_{ij} は有界閉集合なので ff はそこで最大値と最小値を取り、Mij=f(Qij)M_{ij}=f(Q_{ij})、mij=f(Pij)m_{ij}=f(P_{ij}) となる点 Pij,Qij∈RijP_{ij},Q_{ij}\in R_{ij} が存在します。ゆえに

Mij−mij=f(Qij)−f(Pij)<ε2∣R∣M_{ij}-m_{ij} = f(Q_{ij})-f(P_{ij}) < \frac{\varepsilon}{2\lvert R\rvert}

であり、∑i,j∣Rij∣=∣R∣\sum_{i,j}\lvert R_{ij}\rvert = \lvert R\rvert を使って

S(f,Δ)−s(f,Δ)=∑i,j(Mij−mij)∣Rij∣≤ε2∣R∣⋅∣R∣=ε2<ε.S(f,\Delta)-s(f,\Delta) = \sum_{i,j}(M_{ij}-m_{ij})\lvert R_{ij}\rvert \le \frac{\varepsilon}{2\lvert R\rvert}\cdot\lvert R\rvert = \frac{\varepsilon}{2} < \varepsilon .

命題 3.3 より ff は可積分です。

例 3.5(リーマン和から直接計算する)

f(x,y)=xyf(x,y)=xy、R=[0,1]×[0,1]R=[0,1]\times[0,1] とします。ff は連続なので 定理 3.4 より可積分です。可積分だとわかっていれば、幅が 00 に近づく都合のよい分割・代表点の列を 1 つ選んで極限を計算すれば、それが積分値です。

xx 方向も yy 方向も nn 等分し、代表点を小長方形の右上頂点 ξij=(i/n, j/n)\xi_{ij}=(i/n,\ j/n) に取ります。Δxi=Δyj=1/n\Delta x_i = \Delta y_j = 1/n なので

Σ=∑i=1n∑j=1nin⋅jn⋅1n2=1n4(∑i=1ni)(∑j=1nj)=1n4⋅n(n+1)2⋅n(n+1)2=(n+1)24n2.\Sigma = \sum_{i=1}^{n}\sum_{j=1}^{n}\frac{i}{n}\cdot\frac{j}{n}\cdot\frac{1}{n^2} = \frac{1}{n^4}\Bigl(\sum_{i=1}^{n} i\Bigr)\Bigl(\sum_{j=1}^{n} j\Bigr) = \frac{1}{n^4}\cdot\frac{n(n+1)}{2}\cdot\frac{n(n+1)}{2} = \frac{(n+1)^2}{4n^2}.

分割の幅は 2/n→0\sqrt{2}/n\to 0 で、(n+1)24n2→14\dfrac{(n+1)^2}{4n^2}\to\dfrac14 です。したがって

∬[0,1]2xy dx dy=14.\iint_{[0,1]^2} xy\,dx\,dy = \frac14 .

可積分性を先に確かめた点が大事です。可積分性を知らずに 1 つの列だけを計算しても、他の分割で別の値になる可能性を排除できません。

命題 3.6(重積分の基本性質)✓

f,gf,g が RR 上可積分、α,β∈R\alpha,\beta\in\mathbb{R} とする。

(1)(線形性) αf+βg\alpha f+\beta g は可積分で ∬R(αf+βg)=α∬Rf+β∬Rg\iint_R(\alpha f+\beta g)=\alpha\iint_R f+\beta\iint_R g。

(2)(単調性) RR 上つねに f≤gf\le g なら ∬Rf≤∬Rg\iint_R f\le\iint_R g。とくに f≥0f\ge0 なら ∬Rf≥0\iint_R f\ge0。

(3)(領域についての加法性) Δ0\Delta_0 を RR の分割とし、その小長方形を R1,…,RNR_1,\dots,R_N とする。有界関数 ff が RR 上可積分であることと、各 RkR_k 上可積分であることは同値で、そのとき ∬Rf=∑k∬Rkf\iint_R f=\sum_k\iint_{R_k}f である。

証明(命題 3.6)

(1) 同じ分割 Δ\Delta と代表点 ξ\xi に対し Σ(αf+βg,Δ,ξ)=αΣ(f,Δ,ξ)+βΣ(g,Δ,ξ)\Sigma(\alpha f+\beta g,\Delta,\xi)=\alpha\Sigma(f,\Delta,\xi)+\beta\Sigma(g,\Delta,\xi) です。If,IgI_f,I_g を f,gf,g の積分とし、ε>0\varepsilon>0 に対し 定義 3.2 の δ\delta を ff と gg のそれぞれに ε/(∣α∣+∣β∣+1)\varepsilon/(|\alpha|+|\beta|+1) で取って小さいほうを採れば、∣Δ∣<δ\lvert\Delta\rvert<\delta なるすべての Δ,ξ\Delta,\xi で ∣Σ(αf+βg)−αIf−βIg∣<ε\lvert\Sigma(\alpha f+\beta g)-\alpha I_f-\beta I_g\rvert<\varepsilon です。

(2) f≤gf\le g なら Σ(f,Δ,ξ)≤Σ(g,Δ,ξ)\Sigma(f,\Delta,\xi)\le\Sigma(g,\Delta,\xi) です。ε>0\varepsilon>0 に対し ∣Δ∣\lvert\Delta\rvert が十分小さい分割を取ると If−ε<Σ(f)≤Σ(g)<Ig+εI_f-\varepsilon<\Sigma(f)\le\Sigma(g)<I_g+\varepsilon なので If<Ig+2εI_f<I_g+2\varepsilon で、ε\varepsilon は任意です。

(3) 小長方形の inf⁡\inf は細分で増え sup⁡\sup は減るので、細分すると SS は増えず ss は減りません。したがって S−sS-s も増えません。Δ0\Delta_0 の分点をすべて含む RR の分割 Δ\Delta は、各 RkR_k の分割 Δk\Delta_k を定め、S(f,Δ)=∑kS(f,Δk)S(f,\Delta)=\sum_kS(f,\Delta_k)、s(f,Δ)=∑ks(f,Δk)s(f,\Delta)=\sum_ks(f,\Delta_k) なので

S(f,Δ)−s(f,Δ)=∑k(S(f,Δk)−s(f,Δk)),各項≥0S(f,\Delta)-s(f,\Delta)=\sum_k\bigl(S(f,\Delta_k)-s(f,\Delta_k)\bigr),\qquad\text{各項}\ge0

です。RR 上可積分とし ε>0\varepsilon>0 とします。命題 3.3 で S−s<εS-s<\varepsilon の分割を取り、Δ0\Delta_0 の分点を加えて細分すると、各 kk で S(f,Δk)−s(f,Δk)<εS(f,\Delta_k)-s(f,\Delta_k)<\varepsilon なので、命題 3.3 より ff は RkR_k 上可積分です。逆に各 RkR_k 上可積分とし、各 kk で S(f,Δk′)−s(f,Δk′)<ε/NS(f,\Delta_k')-s(f,\Delta_k')<\varepsilon/N となる RkR_k の分割 Δk′\Delta_k' を取ります。Δ0\Delta_0 とすべての Δk′\Delta_k' の分点を合わせた RR の分割 Δ\Delta が RkR_k に定める分割 Δk\Delta_k は Δk′\Delta_k' の細分なので S(f,Δk)−s(f,Δk)<ε/NS(f,\Delta_k)-s(f,\Delta_k)<\varepsilon/N で、和を取って S(f,Δ)−s(f,Δ)<εS(f,\Delta)-s(f,\Delta)<\varepsilon、よって RR 上可積分です。

積分値。上のような Δ\Delta では s(f,Δk)≤∬Rkf≤S(f,Δk)s(f,\Delta_k)\le\iint_{R_k}f\le S(f,\Delta_k)(命題 3.3 の sup⁡s=inf⁡S=\sup s=\inf S= 積分)で、足すと s(f,Δ)≤∑k∬Rkf≤S(f,Δ)s(f,\Delta)\le\sum_k\iint_{R_k}f\le S(f,\Delta)、また s(f,Δ)≤∬Rf≤S(f,Δ)s(f,\Delta)\le\iint_Rf\le S(f,\Delta) です。S−s<εS-s<\varepsilon なので両者の差は ε\varepsilon 未満で、ε\varepsilon は任意だから ∬Rf=∑k∬Rkf\iint_Rf=\sum_k\iint_{R_k}f です。

注意 3.7(重積分の基本性質)

f,gf,g が RR 上可積分、α,β∈R\alpha,\beta\in\mathbb{R} のとき、次が成り立ちます。

  • 線形性:αf+βg\alpha f+\beta g は可積分で ∬R(αf+βg)=α∬Rf+β∬Rg\iint_R(\alpha f+\beta g) = \alpha\iint_R f+\beta\iint_R g。
  • 単調性:RR 上つねに f≤gf\le g なら ∬Rf≤∬Rg\iint_R f\le \iint_R g。とくに f≥0f\ge0 なら ∬Rf≥0\iint_R f\ge0。
  • 領域についての加法性:RR を有限個の小長方形に分けたとき、全体の積分は各部分の積分の和。

いずれもリーマン和のレベルで対応する等式・不等式(Σ(αf+βg)=αΣ(f)+βΣ(g)\Sigma(\alpha f+\beta g)=\alpha\Sigma(f)+\beta\Sigma(g)、f≤g⇒Σ(f)≤Σ(g)f\le g \Rightarrow \Sigma(f)\le\Sigma(g))が成り立ち、定義 3.2 の極限を取れば従います。証明は上の 命題 3.6 に書きました。以下ではこれらを自由に使います。

定義 4.1(累次積分)↗

f ⁣:R=[a,b]×[c,d]→Rf\colon R=[a,b]\times[c,d]\to\mathbb{R} とする。各 x∈[a,b]x\in[a,b] を固定したとき 1 変数関数 y↦f(x,y)y\mapsto f(x,y) が [c,d][c,d] 上可積分で、そうして定まる関数

F(x)=∫cdf(x,y) dyF(x) = \int_c^d f(x,y)\,dy

が [a,b][a,b] 上可積分であるとき、

∫ab ⁣(∫cdf(x,y) dy)dx=∫abF(x) dx\int_a^b\!\left(\int_c^d f(x,y)\,dy\right)dx = \int_a^b F(x)\,dx

を ff の累次積分(反復積分)という。xx と yy の役割を入れ替えた ∫cd ⁣(∫abf(x,y) dx)dy\displaystyle\int_c^d\!\left(\int_a^b f(x,y)\,dx\right)dy も同様に定める。

2 つの積分の性格の違いを並べておきます。

重積分 ∬Rf dx dy\displaystyle\iint_R f\,dx\,dy累次積分 ∫ab ⁣(∫cdf dy)dx\displaystyle\int_a^b\!\left(\int_c^d f\,dy\right)dx
定義平面の分割によるリーマン和の極限1 変数の定積分を 2 回行う操作
幾何的意味グラフの下の符号付き体積断面積 F(x)F(x) を xx 方向に積み上げたもの
存在条件有界性 + 命題 3.3各断面の可積分性 + FF の可積分性
計算ふつう直接は計算できない1 変数の技法がそのまま使える

この 2 つを結ぶのがフビニの定理です。仮定 (ii) は「切り口ごとの面積がそもそも定義できる」ことの要請で、これを落とすと右辺の意味が失われます。

定理 4.2(フビニの定理(長方形上))✓

R=[a,b]×[c,d]R=[a,b]\times[c,d] とし、f ⁣:R→Rf\colon R\to\mathbb{R} が次の 2 条件を満たすとする。

  1. ff は RR 上有界かつ可積分である。
  2. 各 x∈[a,b]x\in[a,b] に対し、1 変数関数 y↦f(x,y)y\mapsto f(x,y) は [c,d][c,d] 上可積分である。

このとき F(x)=∫cdf(x,y) dyF(x)=\displaystyle\int_c^d f(x,y)\,dy は [a,b][a,b] 上可積分で、

∫ab ⁣(∫cdf(x,y) dy)dx=∬Rf(x,y) dx dy\int_a^b\!\left(\int_c^d f(x,y)\,dy\right)dx = \iint_R f(x,y)\,dx\,dy

が成り立つ。xx と yy の役割を入れ替えた主張(各 yy について x↦f(x,y)x\mapsto f(x,y) が可積分なら ∫cd ⁣(∫abf dx)dy=∬Rf\int_c^d\!\left(\int_a^b f\,dx\right)dy = \iint_R f)も同様に成り立つ。

証明の方針は次のとおりです。各 xx での断面積 F(x)F(x) は、小長方形ごとの「いちばん低い柱」と「いちばん高い柱」の高さの和で上下から挟めます。この挟み込みを xx 方向にも行うと、FF の積分が不足和と過剰和に挟まれます。ただし FF が可積分かどうかはまだ分かっていないので、1 変数の上積分・下積分(可積分でなくても定まる、積分の下からの値と上からの値)を使い、それらが一致することを示して可積分性も同時に得ます。

証明(定理 4.2)

RR の分割 Δ\Delta を任意に取り、その xx 方向の分点だけを取り出した [a,b][a,b] の分割を Δx\Delta_x と書きます。

x∈[xi−1,xi]x\in[x_{i-1},x_i] を固定します。仮定 2 と 1 変数の積分の区間加法性から

F(x)=∫cdf(x,y) dy=∑j=1n∫yj−1yjf(x,y) dy.F(x) = \int_c^d f(x,y)\,dy = \sum_{j=1}^{n}\int_{y_{j-1}}^{y_j} f(x,y)\,dy .

y∈[yj−1,yj]y\in[y_{j-1},y_j] のとき (x,y)∈Rij(x,y)\in R_{ij} なので mij≤f(x,y)≤Mijm_{ij}\le f(x,y)\le M_{ij} であり、1 変数の積分の単調性から

mij Δyj≤∫yj−1yjf(x,y) dy≤Mij Δyj.m_{ij}\,\Delta y_j \le \int_{y_{j-1}}^{y_j} f(x,y)\,dy \le M_{ij}\,\Delta y_j .

jj について足すと、[xi−1,xi][x_{i-1},x_i] のすべての xx について

∑j=1nmijΔyj ≤ F(x) ≤ ∑j=1nMijΔyj\sum_{j=1}^{n} m_{ij}\Delta y_j \ \le\ F(x)\ \le\ \sum_{j=1}^{n} M_{ij}\Delta y_j

が成り立ちます。左辺・右辺は xx によらない定数なので、[xi−1,xi][x_{i-1},x_i] 上での FF の下限・上限について

inf⁡[xi−1,xi]F ≥ ∑jmijΔyj,sup⁡[xi−1,xi]F ≤ ∑jMijΔyj\inf_{[x_{i-1},x_i]} F \ \ge\ \sum_{j} m_{ij}\Delta y_j, \qquad \sup_{[x_{i-1},x_i]} F \ \le\ \sum_{j} M_{ij}\Delta y_j

が従います。Δxi>0\Delta x_i>0 を掛けて ii について足せば

s(f,Δ)=∑i,jmijΔyjΔxi ≤ s(F,Δx) ≤ S(F,Δx) ≤ ∑i,jMijΔyjΔxi=S(f,Δ)s(f,\Delta) = \sum_{i,j} m_{ij}\Delta y_j\Delta x_i \ \le\ s(F,\Delta_x) \ \le\ S(F,\Delta_x)\ \le\ \sum_{i,j} M_{ij}\Delta y_j \Delta x_i = S(f,\Delta)

を得ます(真ん中の不等号は不足和 ≤\le 過剰和)。ここで 1 変数の下積分・上積分は s(F,Δx)≤∫ab‾F≤∫ab‾F≤S(F,Δx)s(F,\Delta_x)\le \underline{\int_a^b} F \le \overline{\int_a^b} F\le S(F,\Delta_x) を満たすので、結局すべての分割 Δ\Delta に対して

s(f,Δ) ≤ ∫ab‾F ≤ ∫ab‾F ≤ S(f,Δ).s(f,\Delta)\ \le\ \underline{\int_a^b} F \ \le\ \overline{\int_a^b} F\ \le\ S(f,\Delta) .

仮定 1 と 命題 3.3 より sup⁡Δs(f,Δ)=inf⁡ΔS(f,Δ)=∬Rf\sup_\Delta s(f,\Delta)=\inf_\Delta S(f,\Delta)=\iint_R f ですから、Δ\Delta について上限・下限を取ると挟み撃ちで

∫ab‾F=∫ab‾F=∬Rf(x,y) dx dy.\underline{\int_a^b} F = \overline{\int_a^b} F = \iint_R f(x,y)\,dx\,dy .

上積分と下積分が一致するので FF は [a,b][a,b] 上可積分であり(1 変数版の リーマンの可積分条件(定理 3.4)[積分の基本定理と定積分])、その積分値は ∬Rf\iint_R f です。xx と yy を入れ替えても議論はまったく同じです。

系 4.3(連続関数に対するフビニの定理)✓

ff が R=[a,b]×[c,d]R=[a,b]\times[c,d] 上連続ならば、2 つの累次積分はともに存在して等しく、重積分に一致する。すなわち

∫ab ⁣(∫cdf(x,y) dy)dx=∫cd ⁣(∫abf(x,y) dx)dy=∬Rf(x,y) dx dy.\int_a^b\!\left(\int_c^d f(x,y)\,dy\right)dx = \int_c^d\!\left(\int_a^b f(x,y)\,dx\right)dy = \iint_R f(x,y)\,dx\,dy .
証明(系 4.3)

ff は有界閉集合 RR 上の連続関数なので有界で、定理 3.4 より可積分です。これで 定理 4.2 の仮定 1 が満たされます。次に x∈[a,b]x\in[a,b] を固定すると、y↦f(x,y)y\mapsto f(x,y) は [c,d][c,d] 上の連続関数なので 1 変数の意味で可積分です。これで仮定 2 も満たされ、定理 4.2 から第 1 の式と第 3 の式が等しいことがわかります。同じ議論を xx と yy を入れ替えて行えば、第 2 の式も第 3 の式に等しくなります。

例 4.4(順序の選び方で手間が変わる)

∬[0,1]×[0,π]xcos⁡(xy) dx dy\iint_{[0,1]\times[0,\pi]} x\cos(xy)\,dx\,dy

を計算します。被積分関数は連続なので 系 4.3 よりどちらの順でもよく、値は一致します。

先に yy で積分する場合。 xx を固定すると、yy の関数として cos⁡(xy)\cos(xy) の原始関数は sin⁡(xy)/x\sin(xy)/x(x≠0x\neq0)ですから

∫0πxcos⁡(xy) dy=x⋅[sin⁡(xy)x]y=0y=π=sin⁡(πx).\int_0^{\pi} x\cos(xy)\,dy = x\cdot\left[\frac{\sin(xy)}{x}\right]_{y=0}^{y=\pi} = \sin(\pi x).

x=0x=0 のときは被積分関数が 00 なので値は 00 で、これも sin⁡(π⋅0)=0\sin(\pi\cdot 0)=0 と一致します。よって

∫01sin⁡(πx) dx=[−cos⁡(πx)π]01=1+1π=2π.\int_0^1 \sin(\pi x)\,dx = \left[-\frac{\cos(\pi x)}{\pi}\right]_0^1 = \frac{1+1}{\pi} = \frac{2}{\pi}.

先に xx で積分する場合。 y>0y>0 を固定して部分積分(u=xu=x, dv=cos⁡(xy) dxdv=\cos(xy)\,dx, v=sin⁡(xy)/yv=\sin(xy)/y)を行うと

∫01xcos⁡(xy) dx=[xsin⁡(xy)y]01−∫01sin⁡(xy)y dx=sin⁡yy−1y[−cos⁡(xy)y]01=sin⁡yy+cos⁡y−1y2.\int_0^1 x\cos(xy)\,dx = \left[\frac{x\sin(xy)}{y}\right]_0^1 - \int_0^1\frac{\sin(xy)}{y}\,dx = \frac{\sin y}{y} - \frac{1}{y}\left[-\frac{\cos(xy)}{y}\right]_0^1 = \frac{\sin y}{y}+\frac{\cos y - 1}{y^2}.

これを G(y)G(y) と書きます。y→0y\to 0 では sin⁡y/y→1\sin y/y\to1、(cos⁡y−1)/y2→−1/2(\cos y-1)/y^2\to-1/2 なので G(0+)=1/2G(0^+)=1/2 となり、y=0y=0 での直接計算 ∫01x dx=1/2\int_0^1 x\,dx = 1/2 と一致します。次に

ddy(1−cos⁡yy)=ysin⁡y−(1−cos⁡y)y2=sin⁡yy−1−cos⁡yy2=G(y)\frac{d}{dy}\left(\frac{1-\cos y}{y}\right) = \frac{y\sin y - (1-\cos y)}{y^2} = \frac{\sin y}{y} - \frac{1-\cos y}{y^2} = G(y)

なので、(1−cos⁡y)/y(1-\cos y)/y が GG の原始関数です(y→0y\to0 での値は 00)。したがって

∫0πG(y) dy=[1−cos⁡yy]0π=2π−0=2π.\int_0^{\pi} G(y)\,dy = \left[\frac{1-\cos y}{y}\right]_{0}^{\pi} = \frac{2}{\pi} - 0 = \frac{2}{\pi}.

両者は確かに一致しました。ただし手間はまるで違います。順序を選べること自体がフビニの定理の実用的な価値です。

5. 一般の領域上の重積分と積分順序

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現実に出てくる領域は長方形ではなく、三角形・円板・2 曲線に挟まれた領域などです。これらを扱う標準的な手口は「長方形まで 00 で延長する」ことです。

定義 5.1(一般の有界領域上の重積分と面積確定)↗

D⊂R2D\subset\mathbb{R}^2 を有界集合、f ⁣:D→Rf\colon D\to\mathbb{R} を有界関数とする。D⊂RD\subset R となる閉長方形 RR を 1 つ取り、

f~(x,y)={f(x,y)((x,y)∈D)0((x,y)∈R∖D)\tilde f(x,y) = \begin{cases} f(x,y) & ((x,y)\in D)\\ 0 & ((x,y)\in R\setminus D)\end{cases}

とおく。f~\tilde f が RR 上可積分であるとき、ff は DD 上可積分であるといい

∬Df(x,y) dx dy:=∬Rf~(x,y) dx dy\iint_D f(x,y)\,dx\,dy := \iint_R \tilde f(x,y)\,dx\,dy

と定める。とくに f≡1f\equiv 1 が DD 上可積分であるとき DD は面積確定であるといい、∣D∣=∬D1 dx dy\lvert D\rvert = \iint_D 1\,dx\,dy を DD の面積という。

この定義が RR の取り方によらないことは次のようにわかります。R⊂R′R\subset R' なる長方形を取り、R′R' の分割で RR の 4 辺を分点に含むものを考えると、R′∖RR'\setminus R の側の小長方形では f~≡0\tilde f\equiv 0 なのでリーマン和に寄与せず、RR 側の和とちょうど一致します。一般の 2 つの長方形は、両方を含む長方形を経由して比べればよいです。

ここから 定理 5.6 までの補題は、すべて 1 つの目的のためにあります。DD の外を 00 で埋めた f~\tilde f は、DD の境界の上で値が飛ぶので、そのままでは可積分かどうか分かりません。そこで、境界が「面積 00」の集合であれば無視できることを示します。流れは、(1) 連続関数のグラフは面積 00 である、(2) 面積 00 とは「総面積がいくらでも小さい長方形で覆える」ことである、(3) 不連続点がそのような集合に入っていれば可積分である、の 3 段階です。なお (2) と (3) の証明に出てくる 1Z\mathbf 1_Z は、ZZ の上で 11、外で 00 とする関数(指示関数)のことです。また、DD を縦に切るように表せる領域を縦線集合、横に切るように表せる領域を横線集合といい、次の定理で正確に定義します。

補題 5.2(連続関数のグラフは面積 0)✓

φ ⁣:[a,b]→R\varphi\colon[a,b]\to\mathbb{R} を連続関数とすると、そのグラフ G={(t,φ(t))∣t∈[a,b]}G=\{(t,\varphi(t)) \mid t\in[a,b]\} は面積確定で ∣G∣=0\lvert G\rvert = 0 である。同じことは横向きのグラフ {(ψ(t),t)}\{(\psi(t),t)\} についても成り立つ。

証明(補題 5.2)

ε>0\varepsilon>0 を取ります。φ\varphi は有界閉区間上の連続関数なので一様連続で、∣t−t′∣<δ⇒∣φ(t)−φ(t′)∣<ε\lvert t-t'\rvert<\delta \Rightarrow \lvert\varphi(t)-\varphi(t')\rvert<\varepsilon となる δ>0\delta>0 があります。[a,b][a,b] を nn 等分して (b−a)/n<δ(b-a)/n<\delta とし、小区間を I1,…,InI_1,\dots,I_n とします。φ\varphi は各 IkI_k 上で最大値 βk\beta_k と最小値 αk\alpha_k を取り、IkI_k 内の 2 点での値の差は ε\varepsilon 未満なので βk−αk≤ε\beta_k-\alpha_k\le\varepsilon です。

GG を含む閉長方形 R=[a,b]×[c,d]R=[a,b]\times[c,d] を取り、GG 上で 11、R∖GR\setminus G で 00 となる関数を gg とします。RR の分割 Δ\Delta として、xx 方向は上の nn 等分、yy 方向は c,dc,d と 2n2n 個の値 α1,β1,…,αn,βn\alpha_1,\beta_1,\dots,\alpha_n,\beta_n を分点に持つものを取ります。IkI_k の上にある GG の部分は帯 Ik×[αk,βk]I_k\times[\alpha_k,\beta_k] に含まれ、αk,βk\alpha_k,\beta_k は分点なので、この帯は第 kk 列の小長方形いくつかの合併になっています。それ以外の小長方形では g≡0g\equiv0、すなわち sup⁡g=0\sup g=0 ですから

S(g,Δ)≤∑k=1nb−an (βk−αk)≤∑k=1nb−an ε=(b−a)ε.S(g,\Delta) \le \sum_{k=1}^{n} \frac{b-a}{n}\,(\beta_k-\alpha_k) \le \sum_{k=1}^{n}\frac{b-a}{n}\,\varepsilon = (b-a)\varepsilon .

一方、どの小長方形も幅と高さが正であり、各 xx 座標に対して GG の点は高々 1 個しかないので、小長方形が GG に含まれることはなく、必ず GG の外の点を含みます。そこでは g=0g=0 なので inf⁡g=0\inf g=0 となり、s(g,Δ)=0s(g,\Delta)=0 です。したがって S−s≤(b−a)εS-s\le(b-a)\varepsilon が任意の ε>0\varepsilon>0 で成り立ち、命題 3.3 より gg は可積分で、積分値は inf⁡ΔS=0\inf_\Delta S=0 です。横向きのグラフも xx と yy を入れ替えれば同じです。

補題 5.3(面積 0 の集合の被覆による特徴づけ)✓

有界集合 Z⊂R2Z\subset\mathbb{R}^2 について、次の 2 条件は同値である。

  1. ZZ は面積確定で ∣Z∣=0\lvert Z\rvert=0(定義 5.1 の意味)。
  2. 任意の ε>0\varepsilon>0 に対し、総面積が ε\varepsilon 未満の有限個の閉長方形で ZZ を覆える。

したがって、2 を満たす集合の部分集合、およびそのような集合の有限個の合併は 2 を満たし、座標軸に平行な線分も 2 を満たす。

証明(補題 5.3)

(1)⇒\Rightarrow(2)。ZZ を含む閉長方形 R0R_0 をとります。1Z\mathbf 1_Z は R0R_0 上可積分で積分値は 00 なので、命題 3.3 により S(1Z,Δ)<εS(\mathbf 1_Z,\Delta)<\varepsilon となる分割 Δ\Delta があります。sup⁡1Z=1\sup\mathbf 1_Z=1 となる小長方形は ZZ と交わるものだけで、それらが ZZ を覆い、総面積は S(1Z,Δ)S(\mathbf 1_Z,\Delta) に等しいので ε\varepsilon 未満です。

(2)⇒\Rightarrow(1)。ε>0\varepsilon>0 とし、総面積 ε\varepsilon 未満の閉長方形 P1,…,PmP_1,\dots,P_m が ZZ を覆うとします。各 PlP_l を、面積が 22 倍未満になる範囲で少し広げた閉長方形 Pl′P_l' で、PlP_l が Pl′P_l' の内部に入るものに置き換えます。Pl′P_l' をすべて含む閉長方形 R0⊃ZR_0\supset Z を取り、その分割 Δ\Delta として、すべての Pl′P_l' の辺(R0R_0 の内部を通るもの)を分点に含むものを取ります。ZZ と交わる小長方形は、どれかの PlP_l、したがって Pl′P_l' の内部と交わりますが、小長方形の内部には分点が無いので、その小長方形は Pl′P_l' に含まれます。ゆえに S(1Z,Δ)≤∑l∣Pl′∣<2εS(\mathbf 1_Z,\Delta)\le\sum_l\lvert P_l'\rvert<2\varepsilon で、s(1Z,Δ)≥0s(\mathbf 1_Z,\Delta)\ge0 です。ε\varepsilon は任意なので 命題 3.3 より 1Z\mathbf 1_Z は可積分で、積分値は inf⁡ΔS=0\inf_\Delta S=0 です。

最後の主張。部分集合は同じ被覆でよく、2 つの集合の合併は ε/2\varepsilon/2 ずつの被覆を併せればよいです。線分 [p,q]×{y0}[p,q]\times\{y_0\} は長方形 [p,q]×[y0−τ,y0+τ][p,q]\times[y_0-\tau,y_0+\tau](面積 2τ(q−p)2\tau(q-p))で覆え、τ\tau はいくらでも小さく取れます。縦の線分も同様です。

命題 5.4(リーマンの可積分条件(ジョルダン版))✓

g ⁣:R→Rg\colon R\to\mathbb{R} を有界関数とし、その不連続点全体を ZZ とする。ZZ が 補題 5.3 の条件 2(総面積がいくらでも小さい有限個の閉長方形で覆える。ZZ が面積 00 の集合に含まれればこれを満たす)を満たすならば、gg は RR 上可積分である。

証明(命題 5.4)

M=sup⁡R∣g∣M=\sup_R\lvert g\rvert とし、ε>0\varepsilon>0 を与えます。δ=ε/(2M+1)\delta=\varepsilon/(2M+1) とおきます。

被覆。 仮定により、総面積 δ/2\delta/2 未満の閉長方形 P1,…,PmP_1,\dots,P_m が ZZ を覆います。補題 5.3 の証明と同じく、各 PlP_l を少し広げた閉長方形 Pl′P_l'(PlP_l は Pl′P_l' の内部に入る)で ∑l∣Pl′∣<δ\sum_l\lvert P_l'\rvert<\delta となるものを取ります。RR の分割 Δ1\Delta_1 として、RR の内部を通る Pl′P_l' のすべての辺を分点に含むものを取ります。ZZ と交わる Δ1\Delta_1 の小長方形は、前の補題の証明と同じ理由でどれかの Pl′P_l' に含まれるので、それらの総面積は ∑l∣Pl′∣<δ\sum_l\lvert P_l'\rvert<\delta です(小長方形の内部は互いに交わりません)。これらを「悪い小長方形」、残りを「良い小長方形」と呼びます。

良い小長方形。 良い小長方形 QQ は ZZ と交わらないので、gg は QQ のすべての点で連続です(RR 上の関数として連続なので、QQ への制限も連続です)。QQ は閉長方形なので、補題 3.1[広義積分・パラメータ積分とガンマ関数] より g∣Qg|_Q は一様連続です。良い小長方形は有限個なので、それらすべてに共通の η>0\eta>0 を、「p,q∈Qp,q\in Q、∥p−q∥<η\lVert p-q\rVert<\eta ならば ∣g(p)−g(q)∣<ε\lvert g(p)-g(q)\rvert<\varepsilon」となるように取れます。

細分。 Δ1\Delta_1 に等間隔の分点を加えて、幅 ∣Δ2∣<η\lvert\Delta_2\rvert<\eta の分割 Δ2\Delta_2 を作ります。Δ2\Delta_2 の小長方形はどれも Δ1\Delta_1 のただ 1 つの小長方形に含まれます。悪い小長方形に含まれるものでは Mij−mij≤2MM_{ij}-m_{ij}\le2M で、その面積の合計は δ\delta 未満です。良い小長方形に含まれるものでは、小長方形内の 2 点の距離が η\eta 未満なので Mij−mij≤εM_{ij}-m_{ij}\le\varepsilon です。したがって

S(g,Δ2)−s(g,Δ2)≤2Mδ+ε∣R∣≤ε (1+∣R∣).S(g,\Delta_2)-s(g,\Delta_2)\le2M\delta+\varepsilon\lvert R\rvert\le\varepsilon\,(1+\lvert R\rvert).

ε\varepsilon は任意なので、命題 3.3 より gg は可積分です。

注意 5.5(面積 0 の集合とリーマンの可積分条件(ジョルダン版)について)

この先の証明では、上の 命題 5.4(有界関数は、不連続点が面積 00 の集合に含まれれば可積分)と、面積 00 の集合の有限個の合併・座標軸に平行な線分についての 補題 5.3 を使います。「不連続点が少なければ可積分」という直観の正確な形で、境界の上でだけ不連続になる f~\tilde f を扱うのにちょうど必要な道具です。

定理 5.6(縦線集合上の累次積分)✓

φ1,φ2 ⁣:[a,b]→R\varphi_1,\varphi_2\colon[a,b]\to\mathbb{R} を連続関数で φ1≤φ2\varphi_1\le\varphi_2 を満たすものとし、

D={(x,y)∈R2∣a≤x≤b, φ1(x)≤y≤φ2(x)}D = \{(x,y)\in\mathbb{R}^2 \mid a\le x\le b,\ \varphi_1(x)\le y\le \varphi_2(x)\}

とおく(このような DD を縦線集合という)。f ⁣:D→Rf\colon D\to\mathbb{R} が連続ならば、ff は DD 上可積分で

∬Df(x,y) dx dy=∫ab ⁣(∫φ1(x)φ2(x)f(x,y) dy)dx\iint_D f(x,y)\,dx\,dy = \int_a^b\!\left(\int_{\varphi_1(x)}^{\varphi_2(x)} f(x,y)\,dy\right)dx

が成り立つ。同様に、ψ1≤ψ2\psi_1\le\psi_2 を連続関数として E={(x,y)∣c≤y≤d, ψ1(y)≤x≤ψ2(y)}E=\{(x,y)\mid c\le y\le d,\ \psi_1(y)\le x\le\psi_2(y)\}(横線集合)と EE 上連続な ff に対しては

∬Ef(x,y) dx dy=∫cd ⁣(∫ψ1(y)ψ2(y)f(x,y) dx)dy.\iint_E f(x,y)\,dx\,dy = \int_c^d\!\left(\int_{\psi_1(y)}^{\psi_2(y)} f(x,y)\,dx\right)dy .
証明(定理 5.6)

φ1,φ2\varphi_1,\varphi_2 は連続だから有界で、DD は有界です。さらに DD は有界閉集合なので、その上の連続関数 ff は有界です。そこで D⊂R=[a,b]×[c,d]D\subset R=[a,b]\times[c,d] となる閉長方形を取り、定義 5.1 の f~\tilde f を考えます。

(仮定 1 の確認) f~\tilde f の不連続点を調べます。DD の内点では、その近傍で f~=f\tilde f=f であり ff は連続です。DD の外部(補集合の内点)では近傍で f~≡0\tilde f\equiv0 なので連続です。したがって不連続点は境界 ∂D\partial D に含まれます。∂D\partial D は 2 つのグラフ y=φ1(x)y=\varphi_1(x)、y=φ2(x)y=\varphi_2(x) と、2 本の縦線分 x=ax=a、x=bx=b の部分集合の合併に含まれます。補題 5.2 により 2 つのグラフは面積 00 で、補題 5.3 によりそれらと 2 本の縦線分の合併、したがってその部分集合 ∂D\partial D は、総面積がいくらでも小さい有限個の閉長方形で覆えます。よって 命題 5.4 より f~\tilde f は RR 上可積分です。これで 定理 4.2 の仮定 1 が満たされました。

(仮定 2 の確認) x∈[a,b]x\in[a,b] を固定します。y↦f~(x,y)y\mapsto\tilde f(x,y) は、[c,φ1(x))[c,\varphi_1(x)) と (φ2(x),d](\varphi_2(x),d] では 00、[φ1(x),φ2(x)][\varphi_1(x),\varphi_2(x)] では y↦f(x,y)y\mapsto f(x,y) に等しく、ff が DD 上連続なのでこの区間上連続です。つまり有界で、不連続点は高々 2 点 y=φ1(x),φ2(x)y=\varphi_1(x),\varphi_2(x) しかありません。1 変数の有界関数は不連続点が有限個なら可積分ですから、仮定 2 も満たされ、さらに区間加法性から

∫cdf~(x,y) dy=∫φ1(x)φ2(x)f(x,y) dy\int_c^d \tilde f(x,y)\,dy = \int_{\varphi_1(x)}^{\varphi_2(x)} f(x,y)\,dy

です(φ1(x)=φ2(x)\varphi_1(x)=\varphi_2(x) のときは両辺 00)。

以上より 定理 4.2 が適用でき、

∬Df=∬Rf~=∫ab ⁣(∫cdf~(x,y) dy)dx=∫ab ⁣(∫φ1(x)φ2(x)f(x,y) dy)dx\iint_D f = \iint_R\tilde f = \int_a^b\!\left(\int_c^d \tilde f(x,y)\,dy\right)dx = \int_a^b\!\left(\int_{\varphi_1(x)}^{\varphi_2(x)} f(x,y)\,dy\right)dx

を得ます。横線集合の場合は xx と yy の役割を入れ替えれば同じ議論です。

次の例の三角形 0≤y≤x≤10\le y\le x\le1 を、縦に切る場合と横に切る場合で並べると、内側の積分の範囲が違って見えます。

011xy は 0 から x までx を固定して縦に切る011yx は y から 1 までy を固定して横に切る
同じ三角形 0 ≤ y ≤ x ≤ 1 を縦に切る場合(左)と横に切る場合(右)。太線が内側の積分の範囲

例 5.7(順序を換えないと計算できない積分)

∫01 ⁣(∫y1ex2 dx)dy\int_0^1\!\left(\int_y^1 e^{x^2}\,dx\right)dy

を計算します。内側の ∫y1ex2dx\int_y^1 e^{x^2}dx は、ex2e^{x^2} の原始関数が初等関数で書けないため、この順序のままでは手が出ません。

積分領域を読み取ります。外側が 0≤y≤10\le y\le 1、内側が y≤x≤1y\le x\le 1 ですから、

D={(x,y)∣0≤y≤1, y≤x≤1}D = \{(x,y)\mid 0\le y\le 1,\ y\le x\le 1\}

で、これは (0,0),(1,0),(1,1)(0,0),(1,0),(1,1) を頂点とする三角形です(0≤y≤x≤10\le y\le x\le 1 と書くと見やすいです)。同じ三角形を縦線集合として書き直すと、各 x∈[0,1]x\in[0,1] に対して yy は 00 から xx まで動くので

D={(x,y)∣0≤x≤1, 0≤y≤x}.D = \{(x,y)\mid 0\le x\le 1,\ 0\le y\le x\}.

被積分関数 ex2e^{x^2} は DD 上連続なので 定理 5.6 が両方の表示に使え、どちらの累次積分も ∬Dex2dx dy\iint_D e^{x^2}dx\,dy に等しくなります。したがって

∫01 ⁣(∫y1ex2dx)dy=∫01 ⁣(∫0xex2 dy)dx=∫01ex2[y]0x dx=∫01xex2 dx.\int_0^1\!\left(\int_y^1 e^{x^2}dx\right)dy = \int_0^1\!\left(\int_0^x e^{x^2}\,dy\right)dx = \int_0^1 e^{x^2}\bigl[y\bigr]_{0}^{x}\,dx = \int_0^1 x e^{x^2}\,dx .

最後は t=x2t=x^2 と置換して(dt=2x dxdt=2x\,dx)

∫01xex2dx=[ex22]01=e−12.\int_0^1 xe^{x^2}dx = \left[\frac{e^{x^2}}{2}\right]_0^1 = \frac{e-1}{2}.

内側の積分に現れた xx という因子は、三角形の縦の長さ(断面の長さ)です。これが xex2xe^{x^2} の xx の正体で、順序交換の御利益はここに集約されています。

例 5.8(2 つの累次積分が食い違う例)

f(x,y)=x2−y2(x2+y2)2f(x,y) = \frac{x^2-y^2}{(x^2+y^2)^2}

を [0,1]2∖{(0,0)}[0,1]^2\setminus\{(0,0)\} 上で考えます。この ff は原点に近づけると非有界です。実際 yy を固定して x→0+x\to 0^+ とすると f(x,y)→−1/y2f(x,y)\to -1/y^2 ですが、y=xy=x 上では f=0f=0、y→0+y\to0^+ を先にすると f(x,y)→1/x2f(x,y)\to 1/x^2 で、f(x,x/2)=x2−x2/4(5x2/4)2=1225x2→+∞f(x,x/2)= \frac{x^2-x^2/4}{(5x^2/4)^2}=\frac{12}{25x^2}\to+\infty です。したがって ff は [0,1]2[0,1]^2 上有界でなく、定義 3.2 の意味ではそもそも重積分が定義されません。

それでも 2 つの累次積分は計算できます。x>0x>0 を固定すると y↦f(x,y)y\mapsto f(x,y) は [0,1][0,1] 上連続です(分母は x2x^2 以上)。商の微分から

∂∂y(yx2+y2)=(x2+y2)−y⋅2y(x2+y2)2=x2−y2(x2+y2)2=f(x,y)\frac{\partial}{\partial y}\left(\frac{y}{x^2+y^2}\right) = \frac{(x^2+y^2)-y\cdot 2y}{(x^2+y^2)^2} = \frac{x^2-y^2}{(x^2+y^2)^2} = f(x,y)

なので

∫01f(x,y) dy=[yx2+y2]y=0y=1=1x2+1.\int_0^1 f(x,y)\,dy = \left[\frac{y}{x^2+y^2}\right]_{y=0}^{y=1} = \frac{1}{x^2+1}.

これを xx で積分して

∫01 ⁣(∫01f(x,y) dy)dx=∫01dx1+x2=[arctan⁡x]01=π4.\int_0^1\!\left(\int_0^1 f(x,y)\,dy\right)dx = \int_0^1\frac{dx}{1+x^2} = \Bigl[\arctan x\Bigr]_0^1 = \frac{\pi}{4}.

一方 f(y,x)=y2−x2(x2+y2)2=−f(x,y)f(y,x) = \dfrac{y^2-x^2}{(x^2+y^2)^2} = -f(x,y) という反対称性があるので、xx と yy の名前を入れ替えて同じ計算をすれば

∫01 ⁣(∫01f(x,y) dx)dy=−π4.\int_0^1\!\left(\int_0^1 f(x,y)\,dx\right)dy = -\frac{\pi}{4}.

(x=0x=0 では内側の積分 ∫01f(0,y) dy=∫01(−y−2)dy\int_0^1 f(0,y)\,dy=\int_0^1(-y^{-2})dy が発散するので、外側の積分は x∈(0,1]x\in(0,1] 上の広義積分として読みます。1/(1+x2)1/(1+x^2) は x=0x=0 まで連続に延びるので値は π/4\pi/4 のままです。)

π/4≠−π/4\pi/4 \ne -\pi/4 ですから、2 つの累次積分は食い違います。これは 定理 4.2 と矛盾しません。仮定 1(RR 上可積分)が破れているからです。フビニの定理は「重積分が存在すること」を前提に、それを累次積分に翻訳する定理であって、2 つの累次積分が勝手に一致することを主張するものではありません。

注意 5.9(二重級数でも同じことが起こる)

積分を和に置き換えても同じ現象が現れます。m,n≥1m,n\ge1 に対し

amn={1(m=n)−1(m=n+1)0(その他)a_{mn} = \begin{cases} 1 & (m=n)\\ -1 & (m=n+1)\\ 0 & (\text{その他})\end{cases}

とおきます。mm を固定して nn について足すと、m=1m=1 のときだけ a11=1a_{11}=1 で他は 00 だから和は 11、m≥2m\ge2 のときは amm=1a_{mm}=1 と am,m−1=−1a_{m,m-1}=-1 が打ち消して 00 です。よって ∑m(∑namn)=1\sum_m\bigl(\sum_n a_{mn}\bigr)=1。逆に nn を固定して mm について足すと、ann=1a_{nn}=1 と an+1,n=−1a_{n+1,n}=-1 が打ち消して毎回 00 なので ∑n(∑mamn)=0\sum_n\bigl(\sum_m a_{mn}\bigr)=0。和の順序で 11 と 00 に分かれます。

原因は 例 5.8 と同じで、∑m,n∣amn∣=∞\sum_{m,n}\lvert a_{mn}\rvert=\infty(絶対収束しない)ことです。級数の絶対収束と順序交換については 級数と収束判定 の リーマンの再配列定理(定理 7.6)[級数と収束判定] を参照してください。逆に ∑m∑n∣amn∣<∞\sum_m\sum_n\lvert a_{mn}\rvert<\infty なら和の順序を交換してよいことは、同じ記事の 二重級数の和の順序交換(定理 7.11)[級数と収束判定] で証明しています。積分については、可測な ff が f≥0f\ge0(または ∣f∣\lvert f\rvert の累次積分が有限)を満たすなら順序交換してよい、というのがトネリの定理で、無限区間や非有界関数を扱うにはルベーグ積分の枠組みが必要になります。

1 変数の 置換積分(定理 6.1)[積分の基本定理と定積分] は、gg が C1C^1 級で単調なら

∫g(α)g(β)f(x) dx=∫αβf(g(t)) g′(t) dt\int_{g(\alpha)}^{g(\beta)} f(x)\,dx = \int_{\alpha}^{\beta} f(g(t))\,g'(t)\,dt

でした。向きを気にせず「長さ」だけで読むと、gg は微小区間 [t,t+dt][t,t+dt] を長さ ∣g′(t)∣ dt\lvert g'(t)\rvert\,dt の区間に写すので、dx=∣g′(t)∣ dtdx = \lvert g'(t)\rvert\,dt という置き換えが起きています。2 変数では dx dydx\,dy が面積なので、「微小な面積を何倍にするか」を表す量が必要になります。それがヤコビアンです。

一次変換で面積が何倍になるかを、定義 5.1 の面積の定義と 定理 5.6 だけから導きます。「平行四辺形の面積 = 底辺 × 高さ」や、なす角の sin⁡\sin は使いません(三角関数を級数から定義し、扇形の面積を重積分で計算する 初等関数を級数から定義する の議論がこの節に依存するので、ここで幾何の公式を使うと循環になります)。準備として、平行移動・拡大と面積の関係から始めます。

行列式の絶対値が面積の拡大率になることは既に知っている方も多いと思いますが、以下の補題が続くのは、それを重積分の定義だけから示すためです。方針は、(1) 平行移動・拡大・線分の面積を押さえる、(2) 平行四辺形が縦線集合として書けることを示し、縦方向・横方向の「ずらし」で面積が変わらないことを確かめる、(3) ずらしを 2 回行って平行四辺形を長方形に変え、その面積を直接計算する、というものです。

補題 6.1(平行移動と拡大による面積の変化)✓

E⊂R2E\subset\mathbb{R}^2 を面積確定な有界集合、c∈R2\boldsymbol c\in\mathbb{R}^2、h>0h>0 とし、Ψ(z)=c+hz\Psi(\boldsymbol z)=\boldsymbol c+h\boldsymbol z とおく。このとき Ψ(E)={c+hz∣z∈E}\Psi(E)=\{\boldsymbol c+h\boldsymbol z\mid\boldsymbol z\in E\} は面積確定で、∣Ψ(E)∣=h2∣E∣\lvert\Psi(E)\rvert=h^2\lvert E\rvert である。とくに(h=1h=1)平行移動 c+E\boldsymbol c+E は面積確定で ∣c+E∣=∣E∣\lvert\boldsymbol c+E\rvert=\lvert E\rvert、(c=0\boldsymbol c=\boldsymbol 0)拡大 hEhE は面積確定で ∣hE∣=h2∣E∣\lvert hE\rvert=h^2\lvert E\rvert である。

証明(補題 6.1)

E⊂R=[a,b]×[c′,d′]E\subset R=[a,b]\times[c',d'] となる閉長方形を取り、c=(c1,c2)\boldsymbol c=(c_1,c_2) とします。Ψ\Psi は各座標を t↦ci+htt\mapsto c_i+ht で写す(h>0h>0 なので順序を保つ)全単射なので、Ψ(R)=[c1+ha, c1+hb]×[c2+hc′, c2+hd′]\Psi(R)=[c_1+ha,\,c_1+hb]\times[c_2+hc',\,c_2+hd'] は Ψ(E)\Psi(E) を含む閉長方形です。

RR の分割 Δ\Delta(分点 xix_i、yjy_j)に対し、分点 c1+hxic_1+hx_i、c2+hyjc_2+hy_j で決まる Ψ(R)\Psi(R) の分割を ΨΔ\Psi\Delta と書きます。逆に Ψ(R)\Psi(R) の分割は分点を Ψ−1\Psi^{-1} で戻せば RR の分割になるので、Ψ(R)\Psi(R) の分割はすべて ΨΔ\Psi\Delta の形です。ΨΔ\Psi\Delta の小長方形は Ψ(Rij)\Psi(R_{ij}) で、辺の長さが hΔxih\Delta x_i、hΔyjh\Delta y_j なので面積は h2∣Rij∣h^2\lvert R_{ij}\rvert です。

g=1Eg=\mathbf 1_E(RR 上)、g′=1Ψ(E)g'=\mathbf 1_{\Psi(E)}(Ψ(R)\Psi(R) 上)とおきます。Ψ\Psi は全単射なので g′(Ψ(z))=g(z)g'(\Psi(\boldsymbol z))=g(\boldsymbol z) で、g′g' の Ψ(Rij)\Psi(R_{ij}) 上の sup⁡\sup・inf⁡\inf は gg の RijR_{ij} 上の sup⁡\sup・inf⁡\inf に等しい。したがって

S(g′,ΨΔ)=h2S(g,Δ),s(g′,ΨΔ)=h2s(g,Δ)S(g',\Psi\Delta)=h^2S(g,\Delta),\qquad s(g',\Psi\Delta)=h^2s(g,\Delta)

です。gg は可積分なので、命題 3.3 より任意の ε>0\varepsilon>0 に対し S(g,Δ)−s(g,Δ)<ε/h2S(g,\Delta)-s(g,\Delta)<\varepsilon/h^2 となる Δ\Delta があり、そのとき S(g′,ΨΔ)−s(g′,ΨΔ)<εS(g',\Psi\Delta)-s(g',\Psi\Delta)<\varepsilon です。再び 命題 3.3 より g′g' は可積分、すなわち Ψ(E)\Psi(E) は面積確定で、

∣Ψ(E)∣=inf⁡Δ′S(g′,Δ′)=inf⁡Δh2S(g,Δ)=h2∣E∣\lvert\Psi(E)\rvert=\inf_{\Delta'}S(g',\Delta')=\inf_{\Delta}h^2S(g,\Delta)=h^2\lvert E\rvert

です(Δ′\Delta' は Ψ(R)\Psi(R) の分割全体を動き、それは ΨΔ\Psi\Delta の全体と一致する)。

補題 6.2(線分は面積 0)✓

p,q∈R2\boldsymbol p,\boldsymbol q\in\mathbb{R}^2 を結ぶ線分 [p,q]={p+t(q−p)∣0≤t≤1}[\boldsymbol p,\boldsymbol q]=\{\boldsymbol p+t(\boldsymbol q-\boldsymbol p)\mid 0\le t\le1\} は面積確定で、その面積は 00 である。その部分集合も同様である。

証明(補題 6.2)

p=(p1,p2)\boldsymbol p=(p_1,p_2)、q−p=(d1,d2)\boldsymbol q-\boldsymbol p=(d_1,d_2) とします。d1≠0d_1\ne0 なら、x=p1+td1x=p_1+td_1 と tt が 1 対 1 に対応するので、線分は 1 次関数 φ(x)=p2+d2d1(x−p1)\varphi(x)=p_2+\dfrac{d_2}{d_1}(x-p_1)(多項式なので連続。系 5.2[極限と連続性])の、p1p_1 と q1q_1 を端点とする閉区間上のグラフです。補題 5.2 より面積確定で面積 00 です。d1=0d_1=0 なら、線分は縦の線分 {p1}×[min⁡(p2,q2),max⁡(p2,q2)]\{p_1\}\times[\min(p_2,q_2),\max(p_2,q_2)](d2=0d_2=0 なら 1 点)で、一辺 τ\tau の正方形を縦に ⌈∣d2∣/τ⌉+1\lceil\lvert d_2\rvert/\tau\rceil+1 個並べれば覆え、総面積 τ(∣d2∣+2τ)\tau(\lvert d_2\rvert+2\tau) は τ\tau を小さくすればいくらでも小さくなります。補題 5.3 の (2)⇒\Rightarrow(1) より面積確定で面積 00 です。部分集合は同じ被覆で覆えるので、補題 5.3 より同じ結論です。

以下、2 次正方行列 B=(b11b12b21b22)B=\begin{pmatrix}b_{11}&b_{12}\\ b_{21}&b_{22}\end{pmatrix} の列ベクトル b1=(b11,b21)\boldsymbol b_1=(b_{11},b_{21})、b2=(b12,b22)\boldsymbol b_2=(b_{12},b_{22}) が張る平行四辺形を

P(B)={ub1+vb2∣0≤u≤1, 0≤v≤1}=B([0,1]2)P(B)=\{u\boldsymbol b_1+v\boldsymbol b_2\mid 0\le u\le1,\ 0\le v\le1\}=B\bigl([0,1]^2\bigr)

と書きます。また、縦方向のずらし Sk(x,y)=(x, y+kx)S_k(x,y)=(x,\,y+kx) と横方向のずらし Hm(x,y)=(x+my, y)H_m(x,y)=(x+my,\,y)(k,m∈Rk,m\in\mathbb{R})を使います。どちらも一次変換なので、Sk(P(B))=P(SkB)S_k(P(B))=P(S_kB)、Hm(P(B))=P(HmB)H_m(P(B))=P(H_mB) です(SkBS_kB は列ベクトルを SkS_k で写した行列)。

補題 6.3(平行四辺形は縦線集合であり、ずらしで面積は変わらない)✓

det⁡B≠0\det B\ne0 とする。

  1. 実数 a≤ba\le b と [a,b][a,b] 上の連続関数 φ1≤φ2\varphi_1\le\varphi_2 があって、P(B)={(x,y)∣a≤x≤b, φ1(x)≤y≤φ2(x)}P(B)=\{(x,y)\mid a\le x\le b,\ \varphi_1(x)\le y\le\varphi_2(x)\}(縦線集合)と書ける。同様に P(B)P(B) は横線集合としても書ける。
  2. P(B)P(B) は面積確定である。さらに任意の k,mk,m に対し Sk(P(B))S_k(P(B))、Hm(P(B))H_m(P(B)) も面積確定で、∣Sk(P(B))∣=∣Hm(P(B))∣=∣P(B)∣\lvert S_k(P(B))\rvert=\lvert H_m(P(B))\rvert=\lvert P(B)\rvert である。
証明(補題 6.3)

D=det⁡B=b11b22−b12b21≠0D=\det B=b_{11}b_{22}-b_{12}b_{21}\ne0 とし、IDI_D を 00 と DD を端点とする閉区間とします。

(1) (x,y)=ub1+vb2(x,y)=u\boldsymbol b_1+v\boldsymbol b_2 すなわち x=ub11+vb12x=ub_{11}+vb_{12}、y=ub21+vb22y=ub_{21}+vb_{22} を満たす (u,v)(u,v) は、第 1 式の b22b_{22} 倍から第 2 式の b12b_{12} 倍を引き、また第 2 式の b11b_{11} 倍から第 1 式の b21b_{21} 倍を引くと

u=b22x−b12yD,v=−b21x+b11yDu=\frac{b_{22}x-b_{12}y}{D},\qquad v=\frac{-b_{21}x+b_{11}y}{D}

に限られ、逆にこの (u,v)(u,v) は 2 式を満たします(代入して確かめられる)。したがって

(x,y)∈P(B)  ⟺  b22x−b12y∈ID かつ −b21x+b11y∈ID(x,y)\in P(B)\iff b_{22}x-b_{12}y\in I_D\ \text{かつ}\ -b_{21}x+b_{11}y\in I_D

です。それぞれの条件を書き直します。

  • 第 1 の条件。b12≠0b_{12}\ne0 なら、yy が b22xb12\dfrac{b_{22}x}{b_{12}} と b22x−Db12\dfrac{b_{22}x-D}{b_{12}} を端点とする閉区間にあることと同値です。2 つの端点の差は定数 D/b12D/b_{12} なので、小さいほうは L1(x)=b22xb12−max⁡ ⁣(0,Db12)L_1(x)=\dfrac{b_{22}x}{b_{12}}-\max\!\left(0,\dfrac D{b_{12}}\right)、大きいほうは U1(x)=L1(x)+∣D∣∣b12∣U_1(x)=L_1(x)+\dfrac{\lvert D\rvert}{\lvert b_{12}\rvert} で、どちらも xx の 1 次式です。b12=0b_{12}=0 なら D=b11b22D=b_{11}b_{22} で b22≠0b_{22}\ne0 なので、条件は xx が 00 と b11b_{11} を端点とする閉区間 J1J_1 にあることと同値です。
  • 第 2 の条件。b11≠0b_{11}\ne0 なら同様に、yy が 1 次式 L2(x)L_2(x) と U2(x)=L2(x)+∣D∣∣b11∣U_2(x)=L_2(x)+\dfrac{\lvert D\rvert}{\lvert b_{11}\rvert} の間にあることと同値です(端点は b21xb11\dfrac{b_{21}x}{b_{11}} と b21x+Db11\dfrac{b_{21}x+D}{b_{11}})。b11=0b_{11}=0 なら D=−b12b21D=-b_{12}b_{21} で b21≠0b_{21}\ne0 なので、条件は xx が 00 と b12b_{12} を端点とする閉区間 J2J_2 にあることと同値です。

b11=b12=0b_{11}=b_{12}=0 なら D=0D=0 なので、少なくとも一方の条件は yy の区間の条件です。

b12=0b_{12}=0 のときは P(B)={x∈J1, L2(x)≤y≤U2(x)}P(B)=\{x\in J_1,\ L_2(x)\le y\le U_2(x)\}、b11=0b_{11}=0 のときは P(B)={x∈J2, L1(x)≤y≤U1(x)}P(B)=\{x\in J_2,\ L_1(x)\le y\le U_1(x)\} で、主張の形です。b11,b12b_{11},b_{12} がともに 00 でないときは、φ1=max⁡(L1,L2)\varphi_1=\max(L_1,L_2)、φ2=min⁡(U1,U2)\varphi_2=\min(U_1,U_2)(連続関数の最大・最小なので連続)とおけば P(B)={(x,y)∣x∈X, φ1(x)≤y≤φ2(x)}P(B)=\{(x,y)\mid x\in X,\ \varphi_1(x)\le y\le\varphi_2(x)\}、X={x∣φ1(x)≤φ2(x)}X=\{x\mid\varphi_1(x)\le\varphi_2(x)\} です。Li≤UiL_i\le U_i なので X={x∣L1(x)≤U2(x)}∩{x∣L2(x)≤U1(x)}X=\{x\mid L_1(x)\le U_2(x)\}\cap\{x\mid L_2(x)\le U_1(x)\} で、各集合は 1 次式の不等式の解なので R\mathbb{R}、空集合、または (−∞,t](-\infty,t]・[t,∞)[t,\infty) の形の閉半直線です。XX は x=0x=0 を含み(u=v=0u=v=0 の点 0∈P(B)\boldsymbol 0\in P(B))、x∈Xx\in X なら (x,φ1(x))∈P(B)(x,\varphi_1(x))\in P(B) なので ∣x∣≤∣b11∣+∣b12∣\lvert x\rvert\le\lvert b_{11}\rvert+\lvert b_{12}\rvert と有界です。有界で空でない、2 つの閉半直線(または R\mathbb{R})の共通部分は閉区間 [a,b][a,b] です。

横線集合としての表示は、xx と yy の役割を入れ替えた行列 (b21b22b11b12)\begin{pmatrix}b_{21}&b_{22}\\ b_{11}&b_{12}\end{pmatrix}(行列式は −D≠0-D\ne0)に同じ議論を使えば得られます。

(2) (1) の縦線集合の表示と 定理 5.6(f≡1f\equiv1)により、P(B)P(B) は面積確定で

∣P(B)∣=∫ab(∫φ1(x)φ2(x)1 dy)dx=∫ab(φ2(x)−φ1(x)) dx\lvert P(B)\rvert=\int_a^b\Bigl(\int_{\varphi_1(x)}^{\varphi_2(x)}1\,dy\Bigr)dx=\int_a^b\bigl(\varphi_2(x)-\varphi_1(x)\bigr)\,dx

です(定数の積分 ∫αβc dt=c(β−α)\int_\alpha^\beta c\,dt=c(\beta-\alpha) は、F(t)=ctF(t)=ct に 定理 5.4[積分の基本定理と定積分] を使えば得られる)。(x,y)∈P(B)(x,y)\in P(B) と (x,y+kx)∈Sk(P(B))(x,y+kx)\in S_k(P(B)) は同値なので

Sk(P(B))={(x,y)∣a≤x≤b, φ1(x)+kx≤y≤φ2(x)+kx}S_k(P(B))=\{(x,y)\mid a\le x\le b,\ \varphi_1(x)+kx\le y\le\varphi_2(x)+kx\}

で、これも連続関数で挟まれた縦線集合です。定理 5.6 から面積確定で、面積は ∫ab((φ2(x)+kx)−(φ1(x)+kx))dx=∣P(B)∣\int_a^b\bigl((\varphi_2(x)+kx)-(\varphi_1(x)+kx)\bigr)dx=\lvert P(B)\rvert です。HmH_m については、(1) の横線集合の表示を使って xx と yy の役割を入れ替えた同じ議論をします。

補題 6.4(平行四辺形の面積は行列式の絶対値)✓

任意の 2 次正方行列 BB に対し、P(B)P(B) は面積確定で ∣P(B)∣=∣det⁡B∣\lvert P(B)\rvert=\lvert\det B\rvert である。

証明(補題 6.4)

det⁡B=0\det B=0 の場合。 b1=b2=0\boldsymbol b_1=\boldsymbol b_2=\boldsymbol 0 なら P(B)={0}P(B)=\{\boldsymbol 0\} で、1 点は線分の部分集合なので 補題 6.2 より面積 00 です。そうでなければ、b1,b2\boldsymbol b_1,\boldsymbol b_2 のうち 0\boldsymbol 0 でないほうを w=(w1,w2)\boldsymbol w=(w_1,w_2)、他方を w′=(w1′,w2′)\boldsymbol w'=(w_1',w_2') とします。行列式が 00 なので w1w2′=w2w1′w_1w_2'=w_2w_1' です。w1≠0w_1\ne0 なら λ=w1′/w1\lambda=w_1'/w_1 とおくと λw1=w1′\lambda w_1=w_1'、λw2=w2w1′/w1=w2′\lambda w_2=w_2w_1'/w_1=w_2' です。w1=0w_1=0 なら w2≠0w_2\ne0 で、w2w1′=0w_2w_1'=0 から w1′=0w_1'=0、λ=w2′/w2\lambda=w_2'/w_2 とおけば同様です。いずれにせよ w′=λw\boldsymbol w'=\lambda\boldsymbol w なので、P(B)P(B) の点は twt\boldsymbol w(∣t∣≤1+∣λ∣=:M\lvert t\rvert\le1+\lvert\lambda\rvert=:M)の形で、P(B)P(B) は線分 [−Mw,Mw][-M\boldsymbol w,M\boldsymbol w] に含まれます。補題 6.2 より P(B)P(B) は面積確定で、面積は 0=∣det⁡B∣0=\lvert\det B\rvert です。

det⁡B≠0\det B\ne0 の場合。 D=det⁡BD=\det B とします。b11=0b_{11}=0 なら b1\boldsymbol b_1 と b2\boldsymbol b_2 を入れ替えます。P(B)P(B) は変わらず、行列式は符号だけが変わり、入れ替えた後の (1,1)(1,1) 成分 b12b_{12} は 00 ではありません(b11=b12=0b_{11}=b_{12}=0 なら D=0D=0)。そこで b11≠0b_{11}\ne0 と仮定してよい。

k=−b21/b11k=-b_{21}/b_{11} とすると Skb1=(b11,0)S_k\boldsymbol b_1=(b_{11},0)、Skb2=(b12, b22+kb12)=(b12, D/b11)S_k\boldsymbol b_2=(b_{12},\,b_{22}+kb_{12})=(b_{12},\,D/b_{11}) です。B1=SkBB_1=S_kB の行列式は b11⋅D/b11=D≠0b_{11}\cdot D/b_{11}=D\ne0 で、補題 6.3 (2) より ∣P(B1)∣=∣Sk(P(B))∣=∣P(B)∣\lvert P(B_1)\rvert=\lvert S_k(P(B))\rvert=\lvert P(B)\rvert です。

次に d=D/b11≠0d=D/b_{11}\ne0、m=−b12/dm=-b_{12}/d とすると Hm(b11,0)=(b11,0)H_m(b_{11},0)=(b_{11},0)、Hm(b12,d)=(b12+md, d)=(0,d)H_m(b_{12},d)=(b_{12}+md,\,d)=(0,d) です。補題 6.3 (2) を B1B_1 に使うと ∣P(B2)∣=∣P(B1)∣\lvert P(B_2)\rvert=\lvert P(B_1)\rvert、B2=(b1100d)B_2=\begin{pmatrix}b_{11}&0\\0&d\end{pmatrix} です。

P(B2)={(ub11,vd)}P(B_2)=\{(ub_{11},vd)\} は長方形 [min⁡(0,b11),max⁡(0,b11)]×[min⁡(0,d),max⁡(0,d)][\min(0,b_{11}),\max(0,b_{11})]\times[\min(0,d),\max(0,d)] で、φ1,φ2\varphi_1,\varphi_2 を定数とする縦線集合なので、定理 5.6(f≡1f\equiv1)と定数の積分(定理 5.4[積分の基本定理と定積分] を F(t)=ctF(t)=ct に使う)から ∣P(B2)∣=∣b11∣ ∣d∣=∣D∣\lvert P(B_2)\rvert=\lvert b_{11}\rvert\,\lvert d\rvert=\lvert D\rvert です。以上で ∣P(B)∣=∣det⁡B∣\lvert P(B)\rvert=\lvert\det B\rvert です。

命題 6.5(一次変換による面積の拡大率)✓

A=(a11a12a21a22)A=\begin{pmatrix} a_{11} & a_{12}\\ a_{21} & a_{22}\end{pmatrix} を実 2 次正方行列とし、T(u)=AuT(\boldsymbol u)=A\boldsymbol u とする。

  1. 単位正方形 [0,1]×[0,1][0,1]\times[0,1] の像 T([0,1]2)T([0,1]^2) は AA の 2 つの列ベクトル a1=(a11,a21)\boldsymbol a_1=(a_{11},a_{21})、a2=(a12,a22)\boldsymbol a_2=(a_{12},a_{22}) の張る平行四辺形であり、その面積は ∣det⁡A∣\lvert\det A\rvert に等しい。
  2. さらに det⁡A≠0\det A\ne0 とすると、面積確定な有界集合 E⊂R2E\subset\mathbb{R}^2 に対し T(E)T(E) も面積確定で ∣T(E)∣=∣det⁡A∣⋅∣E∣\lvert T(E)\rvert = \lvert\det A\rvert\cdot\lvert E\rvert が成り立つ。
証明(命題 6.5)

(1) u=(u,v)∈[0,1]2\boldsymbol u=(u,v)\in[0,1]^2 に対し T(u)=ua1+va2T(\boldsymbol u)=u\boldsymbol a_1+v\boldsymbol a_2 ですから、像は a1,a2\boldsymbol a_1,\boldsymbol a_2 が張る平行四辺形 P(A)P(A) そのものです。補題 6.4 より、これは面積確定で面積は ∣det⁡A∣\lvert\det A\rvert です。

(2) E⊂R=[a,b]×[c,d]E\subset R=[a,b]\times[c,d] となる閉長方形を取り、ε>0\varepsilon>0 とします。1E\mathbf 1_E は RR 上可積分なので、命題 3.3 より S(1E,Δ)−s(1E,Δ)<εS(\mathbf 1_E,\Delta)-s(\mathbf 1_E,\Delta)<\varepsilon となる分割 Δ\Delta があり、s(1E,Δ)≤∣E∣≤S(1E,Δ)s(\mathbf 1_E,\Delta)\le\lvert E\rvert\le S(\mathbf 1_E,\Delta) です。1E\mathbf 1_E の小長方形 RijR_{ij} 上の sup⁡\sup は RijR_{ij} が EE と交わるとき 11、そうでないとき 00、inf⁡\inf は Rij⊂ER_{ij}\subset E のとき 11、そうでないとき 00 なので

s(1E,Δ)=∑Rij⊂E∣Rij∣,S(1E,Δ)=∑Rij∩E≠∅∣Rij∣s(\mathbf 1_E,\Delta)=\sum_{R_{ij}\subset E}\lvert R_{ij}\rvert,\qquad S(\mathbf 1_E,\Delta)=\sum_{R_{ij}\cap E\ne\emptyset}\lvert R_{ij}\rvert

です。

小長方形の像。 Rij=p+[0,w]×[0,k]R_{ij}=\boldsymbol p+[0,w]\times[0,k](w=Δxiw=\Delta x_i、k=Δyjk=\Delta y_j)と書くと、TT の線形性から T(p+(uw,vk))=T(p)+u wa1+v ka2T(\boldsymbol p+(uw,vk))=T(\boldsymbol p)+u\,w\boldsymbol a_1+v\,k\boldsymbol a_2 なので、T(Rij)=T(p)+P(A diag(w,k))T(R_{ij})=T(\boldsymbol p)+P\bigl(A\,\mathrm{diag}(w,k)\bigr) です。補題 6.4 と 補題 6.1(h=1h=1)より T(Rij)T(R_{ij}) は面積確定で、∣T(Rij)∣=∣det⁡A∣ wk=∣det⁡A∣ ∣Rij∣\lvert T(R_{ij})\rvert=\lvert\det A\rvert\,wk=\lvert\det A\rvert\,\lvert R_{ij}\rvert です。また RijR_{ij} の周は 4 本の線分で、TT は線分 [q,q′][\boldsymbol q,\boldsymbol q'] を線分 [Tq,Tq′][T\boldsymbol q,T\boldsymbol q'] に写すので、補題 6.2 と 補題 5.3(有限個の合併)より T(∂Rij)T(\partial R_{ij}) は面積 00 です。det⁡A≠0\det A\ne0 より TT は単射(補題 6.3 の証明の (1) と同じ計算で、TuT\boldsymbol u から u\boldsymbol u が決まる)なので T(int Rij)=T(Rij)∖T(∂Rij)T(\mathrm{int}\,R_{ij})=T(R_{ij})\setminus T(\partial R_{ij})、したがって 1T(int Rij)=1T(Rij)−1T(∂Rij)\mathbf 1_{T(\mathrm{int}\,R_{ij})}=\mathbf 1_{T(R_{ij})}-\mathbf 1_{T(\partial R_{ij})} は可積分で、積分は ∣det⁡A∣ ∣Rij∣\lvert\det A\rvert\,\lvert R_{ij}\rvert です(命題 3.6 (1))。

挟み撃ち。 T(R)T(R) は平行四辺形の平行移動なので有界です。T(R)T(R) を含む閉長方形 R′R' を取り、以下の関数はすべて R′R' 上で考えます(集合の外では 00。定義 5.1)。

g1=∑Rij⊂E1T(int Rij),f=1T(E),g2=∑Rij∩E≠∅1T(Rij)g_1=\sum_{R_{ij}\subset E}\mathbf 1_{T(\mathrm{int}\,R_{ij})},\qquad f=\mathbf 1_{T(E)},\qquad g_2=\sum_{R_{ij}\cap E\ne\emptyset}\mathbf 1_{T(R_{ij})}

とおきます。異なる小長方形の内部は交わらず TT は単射なので、g1g_1 の値は 00 か 11 で、g1=1g_1=1 となる点は EE に含まれる RijR_{ij} の点の像、つまり T(E)T(E) の点です。よって g1≤fg_1\le f です。T(E)T(E) の点は EE の点 z\boldsymbol z の像で、z\boldsymbol z を含む RijR_{ij} は EE と交わるので g2≥1g_2\ge1 です。よって f≤g2f\le g_2 です。命題 3.6 (1) と上の計算から、L=∣det⁡A∣ ∣E∣L=\lvert\det A\rvert\,\lvert E\rvert とおくと

∬R′g1=∣det⁡A∣ s(1E,Δ)>L−∣det⁡A∣ε,∬R′g2=∣det⁡A∣ S(1E,Δ)<L+∣det⁡A∣ε\iint_{R'}g_1=\lvert\det A\rvert\,s(\mathbf 1_E,\Delta)>L-\lvert\det A\rvert\varepsilon,\qquad \iint_{R'}g_2=\lvert\det A\rvert\,S(\mathbf 1_E,\Delta)<L+\lvert\det A\rvert\varepsilon

です(s>S−ε≥∣E∣−εs>S-\varepsilon\ge\lvert E\rvert-\varepsilon、S<s+ε≤∣E∣+εS<s+\varepsilon\le\lvert E\rvert+\varepsilon)。定義 3.2 を g1,g2g_1,g_2 に使うと、ある δ>0\delta>0 があって、R′R' の分割 Δ′\Delta' で ∣Δ′∣<δ\lvert\Delta'\rvert<\delta のものとすべての代表点 ξ\xi について Σ(g1,Δ′,ξ)>∬g1−ε\Sigma(g_1,\Delta',\xi)>\iint g_1-\varepsilon、Σ(g2,Δ′,ξ)<∬g2+ε\Sigma(g_2,\Delta',\xi)<\iint g_2+\varepsilon です。g1≤f≤g2g_1\le f\le g_2 よりリーマン和も Σ(g1)≤Σ(f)≤Σ(g2)\Sigma(g_1)\le\Sigma(f)\le\Sigma(g_2) なので

∣Σ(f,Δ′,ξ)−L∣<(∣det⁡A∣+1) ε\bigl\lvert\Sigma(f,\Delta',\xi)-L\bigr\rvert<(\lvert\det A\rvert+1)\,\varepsilon

です。ε>0\varepsilon>0 は任意なので、定義 3.2 により ff は R′R' 上可積分で積分は LL、すなわち T(E)T(E) は面積確定で ∣T(E)∣=∣det⁡A∣ ∣E∣\lvert T(E)\rvert=\lvert\det A\rvert\,\lvert E\rvert です。

6.2. ヤコビアン:局所的な面積の拡大率

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定義 6.6(ヤコビ行列とヤコビアン)↗

U⊂R2U\subset\mathbb{R}^2 を開集合、Φ ⁣:U→R2\Phi\colon U\to\mathbb{R}^2、Φ(u,v)=(x(u,v), y(u,v))\Phi(u,v)=\bigl(x(u,v),\,y(u,v)\bigr) を C1C^1 級写像とする。

JΦ(u,v)=(∂x∂u∂x∂v∂y∂u∂y∂v)J_\Phi(u,v) = \begin{pmatrix} \dfrac{\partial x}{\partial u} & \dfrac{\partial x}{\partial v}\\[10pt] \dfrac{\partial y}{\partial u} & \dfrac{\partial y}{\partial v} \end{pmatrix}

を Φ\Phi のヤコビ行列、その行列式

det⁡JΦ(u,v)=∂x∂u∂y∂v−∂x∂v∂y∂u  (=∂(x,y)∂(u,v) とも書く)\det J_\Phi(u,v) = \frac{\partial x}{\partial u}\frac{\partial y}{\partial v}-\frac{\partial x}{\partial v}\frac{\partial y}{\partial u} \ \ \left(=\frac{\partial(x,y)}{\partial(u,v)} \text{ とも書く}\right)

をヤコビアン(関数行列式)という。

ヤコビ行列は Φ\Phi の全微分(1 次近似)を表す行列でした。多変数関数の微分と偏微分 の C¹ 級ならば全微分可能(定理 4.5)[多変数関数の微分と偏微分] で見たとおり、C1C^1 級写像は各点で

Φ(u+Δu, v+Δv)=Φ(u,v)+JΦ(u,v)(ΔuΔv)+o(∥(Δu,Δv)∥)\Phi(u+\Delta u,\ v+\Delta v) = \Phi(u,v) + J_\Phi(u,v)\begin{pmatrix}\Delta u\\ \Delta v\end{pmatrix} + o\bigl(\lVert(\Delta u,\Delta v)\rVert\bigr)

と 1 次近似できます。そこで uvuv 平面の微小な長方形 [u,u+Δu]×[v,v+Δv][u,u+\Delta u]\times[v,v+\Delta v] を Φ\Phi で写すと、誤差項を無視すれば、Φ(u,v)\Phi(u,v) を頂点として 2 つのベクトル

∂Φ∂uΔu,∂Φ∂vΔv\frac{\partial\Phi}{\partial u}\Delta u,\qquad \frac{\partial\Phi}{\partial v}\Delta v

が張る平行四辺形になります。この 2 ベクトルを列とする行列は JΦ diag(Δu,Δv)J_\Phi\,\mathrm{diag}(\Delta u,\Delta v) ですから、命題 6.5 よりその面積は

∣det⁡JΦ(u,v)∣ Δu Δv\lvert\det J_\Phi(u,v)\rvert\,\Delta u\,\Delta v

です。「微小面積 ΔuΔv\Delta u\Delta v がヤコビアンの絶対値倍に化ける」——これが変数変換公式の正体です。

uv 平面xy 平面uvxyΦΔuΔv(u, v)Φu ΔuΦv Δv面積 = Δu Δv面積 ≒ |det J| Δu Δv
ヤコビアンは微小な面積の拡大率。uv 平面の小長方形は、1 次近似の下で偏微分ベクトルが張る平行四辺形に写る

定理 6.7(重積分の変数変換公式)✓

U,V⊂R2U,V\subset\mathbb{R}^2 を開集合、Φ ⁣:U→V\Phi\colon U\to V を全単射な C1C^1 級写像で、すべての (u,v)∈U(u,v)\in U において det⁡JΦ(u,v)≠0\det J_\Phi(u,v)\ne0 を満たすものとする。EE を有界閉かつ面積確定な集合で E⊂UE\subset U を満たすものとすると、Φ(E)\Phi(E) も有界閉かつ面積確定であり、Φ(E)\Phi(E) 上の任意の連続関数 ff に対して

∬Φ(E)f(x,y) dx dy=∬Ef(Φ(u,v)) ∣det⁡JΦ(u,v)∣ du dv\iint_{\Phi(E)} f(x,y)\,dx\,dy = \iint_{E} f\bigl(\Phi(u,v)\bigr)\,\bigl\lvert\det J_\Phi(u,v)\bigr\rvert\,du\,dv

が成り立つ。

注意 6.8(境界での例外は許される)

実用上は、Φ\Phi の単射性や det⁡JΦ≠0\det J_\Phi\ne0 が EE の中の面積 00 の集合の上で崩れていても公式はそのまま成り立ちます。次の 例 6.11 の極座標変換では、r=0r=0 の辺(θ\theta 軸上の線分)が 1 点 (0,0)(0,0) に潰れて単射性が崩れ、そこでは det⁡JΦ=r=0\det J_\Phi = r = 0 ですが、この辺は面積 00 なので積分に寄与せず、結論は変わりません。直観的には、EE から面積 00 の閉集合を除いた開集合に定理を適用し、除いた部分の寄与が 00 であることを確かめればよい、ということです。厳密な形が次の系です。

系 6.9(面積 0 の例外集合を許す変数変換公式)✓

W⊂R2W\subset\mathbb{R}^2 を開集合、Φ ⁣:W→R2\Phi\colon W\to\mathbb{R}^2 を C1C^1 級写像、E⊂WE\subset W を有界閉かつ面積確定な集合、Z⊂EZ\subset E を面積 00 の有界閉集合とする。Φ\Phi が int E∖Z\mathrm{int}\,E\setminus Z の上で単射で、そこで det⁡JΦ≠0\det J_\Phi\ne0 ならば、Φ(E)\Phi(E) は有界閉かつ面積確定であり、Φ(E)\Phi(E) 上の任意の連続関数 ff に対して

∬Φ(E)f(x,y) dx dy=∬Ef(Φ(u,v)) ∣det⁡JΦ(u,v)∣ du dv\iint_{\Phi(E)} f(x,y)\,dx\,dy = \iint_{E} f\bigl(\Phi(u,v)\bigr)\,\bigl\lvert\det J_\Phi(u,v)\bigr\rvert\,du\,dv

が成り立つ。

証明は 定理 6.7 の証明のあと、Appendix に置きます。

注意 6.10(この定理の証明について)

定理 6.7 の完全な証明は長くなるので Appendix に置きます。標準的な文献(杉浦光夫『解析入門 II』、W. Rudin, Principles of Mathematical Analysis 第 10 章、M. Spivak, Calculus on Manifolds 第 3 章)でよく使われる方針は次のとおりです。Appendix の証明は 1・3・4 を使い、2 の代わりに「小さな正方形の像の面積は ∣det⁡JΦ∣\lvert\det J_\Phi\rvert 倍で上から抑えられる」ことから不等号を示し、それを逆写像 Φ−1\Phi^{-1} にも適用して等号を得ます。

  1. 一次変換に対しては、公式は 命題 6.5 そのものです(f≡1f\equiv1 の場合が面積の関係式、一般の ff はリーマン和を移し替えれば従います)。
  2. 一般の Φ\Phi は、各点の近くで「uu だけを動かす写像」と「vv だけを動かす写像」の合成に分解できます(Rudin の primitive mapping)。1 変数の置換積分と 定理 4.2 を組み合わせると、この種の写像については公式が示せます。
  3. 微分可能性から、小さな正方形の上では Φ\Phi は一次変換 JΦJ_\Phi で近似でき、誤差は ∣Δ∣\lvert\Delta\rvert について高位の無限小です。逆関数定理でこの近似を制御します。
  4. コンパクト性(有限被覆)で局所的な結果を貼り合わせます。

例 6.11(極座標変換とそのヤコビアン)

Φ(r,θ)=(rcos⁡θ, rsin⁡θ)\Phi(r,\theta) = (r\cos\theta,\ r\sin\theta)

とします。x=rcos⁡θx=r\cos\theta、y=rsin⁡θy=r\sin\theta の偏微分を並べると

JΦ=(cos⁡θ−rsin⁡θsin⁡θrcos⁡θ),det⁡JΦ=rcos⁡2θ+rsin⁡2θ=r.J_\Phi = \begin{pmatrix}\cos\theta & -r\sin\theta\\ \sin\theta & r\cos\theta\end{pmatrix}, \qquad \det J_\Phi = r\cos^2\theta + r\sin^2\theta = r .

Φ\Phi は開集合 U={(r,θ)∣r>0, 0<θ<2π}U=\{(r,\theta)\mid r>0,\ 0<\theta<2\pi\} の上で単射で det⁡JΦ=r>0\det J_\Phi=r>0、像は平面から半直線 {(x,0)∣x≥0}\{(x,0)\mid x\ge0\} を除いた開集合です。半径 aa の円板 Da={(x,y)∣x2+y2≤a2}D_a=\{(x,y)\mid x^2+y^2\le a^2\} に対しては E=[0,a]×[0,2π]E=[0,a]\times[0,2\pi] と取れば Φ(E)=Da\Phi(E)=D_a で、単射性が崩れるのは r=0r=0 の辺と θ=0,2π\theta=0,2\pi の 2 辺だけ、いずれも面積 00 です。正確には、W=R2W=\mathbb{R}^2、Z=∂EZ=\partial E(長方形の周、面積 00)とすると int E∖Z=(0,a)×(0,2π)⊂U\mathrm{int}\,E\setminus Z=(0,a)\times(0,2\pi)\subset U の上で Φ\Phi は単射で det⁡JΦ=r≠0\det J_\Phi=r\ne0 なので、系 6.9(定理 6.7 の系)が適用でき、連続関数 ff について

∬Daf(x,y) dx dy=∫02π ⁣ ⁣∫0af(rcos⁡θ, rsin⁡θ)  r dr dθ\iint_{D_a} f(x,y)\,dx\,dy = \int_0^{2\pi}\!\!\int_0^{a} f(r\cos\theta,\ r\sin\theta)\;r\,dr\,d\theta

が使えます(右辺は長方形上の累次積分なので 系 4.3 で順序も自由です)。

確認 1(円の面積)。 f≡1f\equiv1 とすると

∫02π ⁣ ⁣∫0ar dr dθ=∫02πa22 dθ=πa2.\int_0^{2\pi}\!\!\int_0^a r\,dr\,d\theta = \int_0^{2\pi}\frac{a^2}{2}\,d\theta = \pi a^2 .

確認 2(半球の体積)。 f(x,y)=a2−x2−y2f(x,y)=\sqrt{a^2-x^2-y^2} とすると f(Φ(r,θ))=a2−r2f(\Phi(r,\theta))=\sqrt{a^2-r^2} で

∫02π ⁣ ⁣∫0aa2−r2  r dr dθ=2π[−(a2−r2)3/23]0a=2π⋅a33=23πa3.\int_0^{2\pi}\!\!\int_0^{a}\sqrt{a^2-r^2}\;r\,dr\,d\theta = 2\pi\left[-\frac{(a^2-r^2)^{3/2}}{3}\right]_0^{a} = 2\pi\cdot\frac{a^3}{3} = \frac{2}{3}\pi a^3 .

これは半径 aa の球の体積 43πa3\frac43\pi a^3 のちょうど半分で、正しい値です。

因子 rr を忘れるとどうなるかも見ておきます。∫02π∫0aa2−r2 dr dθ=2π⋅πa24\int_0^{2\pi}\int_0^a\sqrt{a^2-r^2}\,dr\,d\theta = 2\pi\cdot\frac{\pi a^2}{4} となり、半球の体積とは似ても似つきません。rr は「外側の θ\theta 方向の弧が半径に比例して長くなる」ことを表す、なくてはならない因子です。

例 6.12(ガウス積分)

I=∫−∞∞e−x2 dxI = \int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2}\,dx

を求めます。まず収束を確認します。∣x∣≥1\lvert x\rvert\ge1 では x2≥∣x∣x^2\ge \lvert x\rvert なので e−x2≤e−∣x∣e^{-x^2}\le e^{-\lvert x\rvert} であり、∫1∞e−xdx=e−1<∞\int_1^{\infty}e^{-x}dx = e^{-1}<\infty ですから広義積分は収束します。

IR=∫−RRe−x2dxI_R=\int_{-R}^{R}e^{-x^2}dx とおきます。e−(x2+y2)=e−x2e−y2e^{-(x^2+y^2)}=e^{-x^2}e^{-y^2} は連続なので 系 4.3 が使え、正方形 SR=[−R,R]2S_R=[-R,R]^2 上で

∬SRe−(x2+y2)dx dy=∫−RR ⁣(∫−RRe−x2e−y2 dx)dy=∫−RRe−y2IR dy=IR 2.\iint_{S_R} e^{-(x^2+y^2)}dx\,dy = \int_{-R}^{R}\!\left(\int_{-R}^{R} e^{-x^2}e^{-y^2}\,dx\right)dy = \int_{-R}^{R} e^{-y^2}I_R\,dy = I_R^{\,2}.

次に円板で挟みます。DR⊂SR⊂D2RD_R\subset S_R\subset D_{\sqrt2 R}(正方形の外接円の半径は 2R\sqrt2R)であり、被積分関数は正なので、注意 3.7 の加法性と単調性から

∬DRe−(x2+y2) dx dy ≤ IR 2 ≤ ∬D2Re−(x2+y2) dx dy.\iint_{D_R} e^{-(x^2+y^2)}\,dx\,dy \ \le\ I_R^{\,2}\ \le\ \iint_{D_{\sqrt2 R}} e^{-(x^2+y^2)}\,dx\,dy .

円板上の積分は 例 6.11 の極座標公式で計算できます。t=r2t=r^2 と置換して(dt=2r drdt=2r\,dr)

∬Dae−(x2+y2)dx dy=∫02π ⁣ ⁣∫0ae−r2 r dr dθ=2π[−e−r22]0a=π(1−e−a2).\iint_{D_a} e^{-(x^2+y^2)}dx\,dy = \int_0^{2\pi}\!\!\int_0^{a} e^{-r^2}\,r\,dr\,d\theta = 2\pi\left[-\frac{e^{-r^2}}{2}\right]_0^{a} = \pi\bigl(1-e^{-a^2}\bigr).

したがって

π(1−e−R2) ≤ IR 2 ≤ π(1−e−2R2).\pi\bigl(1-e^{-R^2}\bigr)\ \le\ I_R^{\,2}\ \le\ \pi\bigl(1-e^{-2R^2}\bigr).

R→∞R\to\infty とすると両端はともに π\pi に収束し、IR→II_R\to I なので、はさみうちの原理から I2=πI^2=\pi。e−x2>0e^{-x^2}>0 より I>0I>0 ですから

∫−∞∞e−x2 dx=π.\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2}\,dx = \sqrt{\pi}.

1 変数のままでは e−x2e^{-x^2} の原始関数が初等関数で書けないため手が出ませんが、2 乗して 2 次元にし、極座標に移ると r drr\,dr の rr が e−r2e^{-r^2} の微分の因子をちょうど供給してくれます。ヤコビアンが計算を可能にした、いちばん有名な例です。

演習 7.1易

∬[0,1]×[0,2](x+y2) dx dy\displaystyle\iint_{[0,1]\times[0,2]}(x+y^2)\,dx\,dy を、2 通りの累次積分で計算し、値が一致することを確かめてください。

解答

被積分関数 x+y2x+y^2 は長方形 R=[0,1]×[0,2]R=[0,1]\times[0,2] 上で連続なので、系 4.3 よりどちらの順序でもよく、値は重積分に一致します。

先に yy で積分すると

∫01 ⁣(∫02(x+y2) dy)dx=∫01[xy+y33]y=0y=2dx=∫01(2x+83)dx=[x2]01+83=1+83=113.\int_0^1\!\left(\int_0^2 (x+y^2)\,dy\right)dx = \int_0^1\left[xy+\frac{y^3}{3}\right]_{y=0}^{y=2}dx = \int_0^1\left(2x+\frac83\right)dx = \bigl[x^2\bigr]_0^1+\frac83 = 1+\frac83 = \frac{11}{3}.

先に xx で積分すると

∫02 ⁣(∫01(x+y2) dx)dy=∫02[x22+xy2]x=0x=1dy=∫02(12+y2)dy=1+83=113.\int_0^2\!\left(\int_0^1 (x+y^2)\,dx\right)dy = \int_0^2\left[\frac{x^2}{2}+xy^2\right]_{x=0}^{x=1}dy = \int_0^2\left(\frac12+y^2\right)dy = 1+\frac83 = \frac{11}{3}.

どちらも 113\dfrac{11}{3} です。

演習 7.2標準

∫01 ⁣(∫y1sin⁡xx dx)dy\int_0^1\!\left(\int_y^1 \frac{\sin x}{x}\,dx\right)dy

の値を求めてください。ただし x=0x=0 では被積分関数の値を 11 と定めます(lim⁡x→0sin⁡x/x=1\lim_{x\to0}\sin x/x=1 なので、こうすると [0,1][0,1] 上連続になります)。

解答

g(x)=sin⁡xxg(x)=\dfrac{\sin x}{x}(x≠0x\ne0)、g(0)=1g(0)=1 とおくと gg は [0,1][0,1] 上連続です。∫y1g(x) dx\int_y^1 g(x)\,dx の原始関数は初等関数で書けないので、この順序では計算できません。積分順序を交換します。

積分領域は、外側が 0≤y≤10\le y\le 1、内側が y≤x≤1y\le x\le 1 ですから

D={(x,y)∣0≤y≤1, y≤x≤1}={(x,y)∣0≤y≤x≤1}D = \{(x,y)\mid 0\le y\le 1,\ y\le x\le 1\} = \{(x,y)\mid 0\le y\le x\le 1\}

で、(0,0),(1,0),(1,1)(0,0),(1,0),(1,1) を頂点とする三角形です。これを縦線集合として書き直すと、各 x∈[0,1]x\in[0,1] に対し yy は 00 から xx まで動きます。g(x)g(x) は DD 上連続なので 定理 5.6 を両方の表示に適用でき、

∫01 ⁣(∫y1g(x) dx)dy=∬Dg(x) dx dy=∫01 ⁣(∫0xg(x) dy)dx=∫01x g(x) dx.\int_0^1\!\left(\int_y^1 g(x)\,dx\right)dy = \iint_D g(x)\,dx\,dy = \int_0^1\!\left(\int_0^x g(x)\,dy\right)dx = \int_0^1 x\,g(x)\,dx .

x g(x)=sin⁡xx\,g(x)=\sin x(x=0x=0 でも両辺 00)なので

∫01sin⁡x dx=[−cos⁡x]01=1−cos⁡1.\int_0^1 \sin x\,dx = \bigl[-\cos x\bigr]_0^1 = 1-\cos 1 .

数値では 1−cos⁡1=0.4597…1-\cos 1 = 0.4597\ldots です。

演習 7.3標準

a,b,c>0a,b,c>0 とする。楕円体

{(x,y,z) | x2a2+y2b2+z2c2≤1}\left\{(x,y,z)\ \middle|\ \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}+\frac{z^2}{c^2}\le 1\right\}

の体積が 43πabc\dfrac43\pi abc であることを、変数変換 Φ(r,θ)=(arcos⁡θ, brsin⁡θ)\Phi(r,\theta)=(ar\cos\theta,\ br\sin\theta) を使って示してください。

解答

楕円体は、楕円板 D={(x,y) | x2a2+y2b2≤1}D=\left\{(x,y)\ \middle|\ \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}\le1\right\} の上で、グラフ z=h(x,y)z=h(x,y) と z=−h(x,y)z=-h(x,y) に挟まれた立体です。ここで

h(x,y)=c1−x2a2−y2b2.h(x,y)=c\sqrt{1-\frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}} .

したがって体積は V=∬D2h(x,y) dx dyV=\displaystyle\iint_D 2h(x,y)\,dx\,dy です。

Φ(r,θ)=(arcos⁡θ, brsin⁡θ)\Phi(r,\theta)=(ar\cos\theta,\ br\sin\theta) のヤコビ行列と行列式は

JΦ=(acos⁡θ−arsin⁡θbsin⁡θbrcos⁡θ),det⁡JΦ=abrcos⁡2θ+abrsin⁡2θ=abr.J_\Phi=\begin{pmatrix} a\cos\theta & -ar\sin\theta\\ b\sin\theta & br\cos\theta\end{pmatrix}, \qquad \det J_\Phi = abr\cos^2\theta+abr\sin^2\theta = abr .

E=[0,1]×[0,2π]E=[0,1]\times[0,2\pi] とすると Φ(E)=D\Phi(E)=D で、単射性が崩れるのは r=0r=0 と θ=0,2π\theta=0,2\pi の辺(面積 00)だけです。Z=∂EZ=\partial E とすると int E∖Z=(0,1)×(0,2π)\mathrm{int}\,E\setminus Z=(0,1)\times(0,2\pi) 上で Φ\Phi は単射で det⁡JΦ=abr≠0\det J_\Phi=abr\ne0 なので、系 6.9 により変数変換が使えます。また

h(Φ(r,θ))=c1−r2cos⁡2θ−r2sin⁡2θ=c1−r2h(\Phi(r,\theta)) = c\sqrt{1-r^2\cos^2\theta-r^2\sin^2\theta}=c\sqrt{1-r^2}

なので、系 6.9 と 系 4.3 より

V=∫02π ⁣ ⁣∫012c1−r2⋅abr dr dθ=2abc⋅2π∫01r1−r2 dr.V = \int_0^{2\pi}\!\!\int_0^1 2c\sqrt{1-r^2}\cdot abr\,dr\,d\theta = 2abc\cdot 2\pi\int_0^1 r\sqrt{1-r^2}\,dr .

最後の 1 変数積分は t=1−r2t=1-r^2(dt=−2r drdt=-2r\,dr)と置換して

∫01r1−r2 dr=[−(1−r2)3/23]01=13.\int_0^1 r\sqrt{1-r^2}\,dr = \left[-\frac{(1-r^2)^{3/2}}{3}\right]_0^1 = \frac13 .

よって V=4πabc⋅13=43πabcV = 4\pi abc\cdot\dfrac13 = \dfrac43\pi abc です。a=b=ca=b=c とすれば球の体積 43πa3\frac43\pi a^3 に一致します。

演習 7.4難

DD を (0,0),(1,0),(0,1)(0,0),(1,0),(0,1) を頂点とする三角形、すなわち D={(x,y)∣x≥0, y≥0, x+y≤1}D=\{(x,y)\mid x\ge0,\ y\ge0,\ x+y\le1\} とする。

∬Dexp⁡(y−xy+x)dx dy\iint_D \exp\left(\frac{y-x}{y+x}\right)dx\,dy

を求めてください(原点では被積分関数が定義されませんが、値を任意に 11 と定めます)。

解答

下準備。 (x,y)∈D(x,y)\in D かつ (x,y)≠(0,0)(x,y)\ne(0,0) のとき x+y>0x+y>0 で、∣y−x∣≤x+y\lvert y-x\rvert\le x+y より指数の値は [−1,1][-1,1] に入ります。よって被積分関数は [e−1,e][e^{-1},e] の範囲に収まり有界で、不連続点は原点と ∂D\partial D だけ、すなわち面積 00 の集合に含まれます。命題 5.4 より DD 上可積分です。

変数変換。 u=y−xu=y-x、v=y+xv=y+x と置きたいので、その逆写像

Φ(u,v)=(v−u2, v+u2)\Phi(u,v)=\left(\frac{v-u}{2},\ \frac{v+u}{2}\right)

を考えます。Φ\Phi は R2\mathbb{R}^2 全体の線形同型で

JΦ=(−12121212),det⁡JΦ=−14−14=−12,∣det⁡JΦ∣=12.J_\Phi = \begin{pmatrix} -\tfrac12 & \tfrac12\\[2pt] \tfrac12 & \tfrac12\end{pmatrix}, \qquad \det J_\Phi = -\frac14-\frac14 = -\frac12, \qquad \lvert\det J_\Phi\rvert = \frac12 .

Φ(u,v)=(x,y)\Phi(u,v)=(x,y) とすると、x≥0  ⟺  u≤vx\ge0\iff u\le v、y≥0  ⟺  u≥−vy\ge0\iff u\ge -v、x+y=v≤1x+y=v\le1 なので

E={(u,v)∣0≤v≤1, −v≤u≤v}E=\{(u,v)\mid 0\le v\le 1,\ -v\le u\le v\}

が Φ\Phi によって DD に全単射に写ります(EE も (0,0),(1,1),(−1,1)(0,0),(1,1),(-1,1) を頂点とする三角形です)。

適用。 被積分関数 ff は原点で連続でないので、η∈(0,1)\eta\in(0,1) を取り Eη={(u,v)∈E∣η≤v≤1}E_\eta=\{(u,v)\in E\mid \eta\le v\le1\} に 定理 6.7 を適用します。EηE_\eta 上で f(Φ(u,v))=eu/vf(\Phi(u,v))=e^{u/v} は連続です。EηE_\eta は縦線集合(vv を「横軸」と見て、各 vv に対し uu が −v-v から vv まで)なので 定理 5.6 が使え、

∬Φ(Eη)f dx dy=12∫η1 ⁣(∫−vveu/v du)dv=12∫η1v[eu/v]u=−vu=vdv=e−e−12∫η1v dv.\iint_{\Phi(E_\eta)} f\,dx\,dy = \frac12\int_\eta^1\!\left(\int_{-v}^{v} e^{u/v}\,du\right)dv = \frac12\int_\eta^1 v\Bigl[e^{u/v}\Bigr]_{u=-v}^{u=v}dv = \frac{e-e^{-1}}{2}\int_\eta^1 v\,dv .

(内側で ∫−vveu/vdu=v (e1−e−1)\int_{-v}^{v}e^{u/v}du = v\,(e^{1}-e^{-1}) を使いました。v>0v>0 なので u↦eu/vu\mapsto e^{u/v} の原始関数は v eu/vv\,e^{u/v} です。)

一方 D∖Φ(Eη)D\setminus\Phi(E_\eta) は Φ(E∩{v≤η})\Phi(E\cap\{v\le\eta\}) で、その面積は ∣det⁡JΦ∣⋅η2=η2/2\lvert\det J_\Phi\rvert\cdot\eta^2=\eta^2/2(命題 6.5、E∩{v≤η}E\cap\{v\le\eta\} は面積 η2\eta^2 の三角形)。∣f∣≤e\lvert f\rvert\le e なので、この部分の積分の寄与は eη2/2e\eta^2/2 以下で、η→0\eta\to0 とすれば 00 に収束します。したがって

∬Dexp⁡(y−xy+x)dx dy=e−e−12∫01v dv=e−e−12⋅12=e−e−14.\iint_D \exp\left(\frac{y-x}{y+x}\right)dx\,dy = \frac{e-e^{-1}}{2}\int_0^1 v\,dv = \frac{e-e^{-1}}{2}\cdot\frac12 = \frac{e-e^{-1}}{4}.

数値では 0.5876…0.5876\ldots です。y−xy-x と y+xy+x という「斜めの座標」に乗り換えることで、絡み合っていた変数が分離した点がこの問題の要点です。

  • 杉浦光夫『解析入門 II』東京大学出版会、1985 — 重積分、フビニの定理、変数変換公式を扱う章。この記事で証明を省いた事実(リーマンの可積分条件、変数変換公式)の完全な証明があります。
  • 高木貞治『解析概論』改訂第三版、岩波書店、1961 — 重積分と面積・体積を扱う章。古典的な記述で、累次積分の扱いが丁寧です。
  • W. Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed., McGraw-Hill, 1976 — Chapter 10。primitive mapping への分解による変数変換定理の証明。
  • M. Spivak, Calculus on Manifolds, W. A. Benjamin, 1965 — Chapter 3 (Integration)。フビニの定理と変数変換定理を、ルベーグ測度 00 の言葉で簡潔に扱っています。
  • G. Fubini, “Sugli integrali multipli”, Rendiconti della Reale Accademia dei Lincei 16 (1907) — 累次積分と重積分の関係を一般的に論じた原論文。
  • T. Tao, An Introduction to Measure Theory, American Mathematical Society, 2011 — ルベーグ積分の枠組みでのフビニ・トネリの定理。非有界関数や無限区間を扱いたいときはこちらへ。

ここまでの議論は次元を上げてもそのまま通用します。R3\mathbb{R}^3 の直方体を小直方体に分割してリーマン和を作れば 3 重積分が定義でき、定理 4.2 と同じ論法で「3 重積分 = 1 変数の積分 3 回」が示せます。変数変換公式も、命題 6.5 の ∣det⁡A∣\lvert\det A\rvert が「平行六面体の体積」を表すことに置き換えれば、同じ形

∭Φ(E)f dx dy dz=∭Ef(Φ(u,v,w)) ∣det⁡JΦ∣ du dv dw\iiint_{\Phi(E)} f\,dx\,dy\,dz = \iiint_{E} f(\Phi(u,v,w))\,\lvert\det J_\Phi\rvert\,du\,dv\,dw

で成り立ちます。Appendix の 定理 6.7 と 系 6.9 の証明は、正方形を立方体に、L2L^2 を L3L^3 に、(1+η)2(1+\eta)^2 を (1+η)3(1+\eta)^3 に替えればそのまま 3 次元で通ります。2 次元の証明から持ち込めない材料は 命題 6.5 の 3 次元版(一次変換 AA は体積を ∣det⁡A∣\lvert\det A\rvert 倍する)だけで、この記事ではそれを証明していません。ルベーグ積分の枠での一般次元の証明は、ℝ^d の変数変換公式と極座標 の 定理 3.4[ℝ^d の変数変換公式と極座標](線形写像)と 定理 4.5[ℝ^d の変数変換公式と極座標](C1C^1 微分同相)にあり、例外集合を許す形は 系 5.2[ℝ^d の変数変換公式と極座標]、球座標とその面積要素は 命題 6.10[ℝ^d の変数変換公式と極座標] です。以下の球座標の計算は、この 3 次元版の系を、E=[0,a]×[0,π]×[0,2π]E=[0,a]\times[0,\pi]\times[0,2\pi]、例外集合 Z=∂EZ=\partial E に適用したものです(int E\mathrm{int}\,E の上では Φ\Phi は単射で、ヤコビアンは下で計算するとおり r2sin⁡θ>0r^2\sin\theta\gt0)。

もっともよく使うのが球座標

Φ(r,θ,φ)=(rsin⁡θcos⁡φ, rsin⁡θsin⁡φ, rcos⁡θ)(r>0, 0<θ<π, 0<φ<2π)\Phi(r,\theta,\varphi) = (r\sin\theta\cos\varphi,\ r\sin\theta\sin\varphi,\ r\cos\theta) \qquad (r>0,\ 0<\theta<\pi,\ 0<\varphi<2\pi)

です(θ\theta が天頂角、φ\varphi が方位角)。ヤコビ行列は

JΦ=(sin⁡θcos⁡φrcos⁡θcos⁡φ−rsin⁡θsin⁡φsin⁡θsin⁡φrcos⁡θsin⁡φrsin⁡θcos⁡φcos⁡θ−rsin⁡θ0)J_\Phi = \begin{pmatrix} \sin\theta\cos\varphi & r\cos\theta\cos\varphi & -r\sin\theta\sin\varphi\\ \sin\theta\sin\varphi & r\cos\theta\sin\varphi & r\sin\theta\cos\varphi\\ \cos\theta & -r\sin\theta & 0 \end{pmatrix}

で、第 3 行に沿って余因子展開します。第 (3,1)(3,1) 余因子は

+det⁡(rcos⁡θcos⁡φ−rsin⁡θsin⁡φrcos⁡θsin⁡φrsin⁡θcos⁡φ)=r2sin⁡θcos⁡θ(cos⁡2φ+sin⁡2φ)=r2sin⁡θcos⁡θ,+\det\begin{pmatrix} r\cos\theta\cos\varphi & -r\sin\theta\sin\varphi\\ r\cos\theta\sin\varphi & r\sin\theta\cos\varphi\end{pmatrix} = r^2\sin\theta\cos\theta(\cos^2\varphi+\sin^2\varphi) = r^2\sin\theta\cos\theta,

第 (3,2)(3,2) 余因子は

−det⁡(sin⁡θcos⁡φ−rsin⁡θsin⁡φsin⁡θsin⁡φrsin⁡θcos⁡φ)=−rsin⁡2θ(cos⁡2φ+sin⁡2φ)=−rsin⁡2θ-\det\begin{pmatrix}\sin\theta\cos\varphi & -r\sin\theta\sin\varphi\\ \sin\theta\sin\varphi & r\sin\theta\cos\varphi\end{pmatrix} = -r\sin^2\theta(\cos^2\varphi+\sin^2\varphi) = -r\sin^2\theta

なので

det⁡JΦ=cos⁡θ⋅r2sin⁡θcos⁡θ+(−rsin⁡θ)⋅(−rsin⁡2θ)=r2sin⁡θ (cos⁡2θ+sin⁡2θ)=r2sin⁡θ.\det J_\Phi = \cos\theta\cdot r^2\sin\theta\cos\theta + (-r\sin\theta)\cdot(-r\sin^2\theta) = r^2\sin\theta\,(\cos^2\theta+\sin^2\theta) = r^2\sin\theta .

0<θ<π0<\theta<\pi では sin⁡θ>0\sin\theta>0 なので絶対値も r2sin⁡θr^2\sin\theta です。これを使えば半径 aa の球の体積は

∫02π ⁣ ⁣∫0π ⁣ ⁣∫0ar2sin⁡θ dr dθ dφ=2π⋅[−cos⁡θ]0π⋅a33=2π⋅2⋅a33=43πa3\int_0^{2\pi}\!\!\int_0^{\pi}\!\!\int_0^{a} r^2\sin\theta\,dr\,d\theta\,d\varphi = 2\pi\cdot\bigl[-\cos\theta\bigr]_0^{\pi}\cdot\frac{a^3}{3} = 2\pi\cdot2\cdot\frac{a^3}{3} = \frac43\pi a^3

と一息で求まります。例 6.11 の rr が「弧長が半径に比例する」ことの反映だったのと同じく、r2sin⁡θr^2\sin\theta は「球面の面積要素が r2sin⁡θ dθ dφr^2\sin\theta\,d\theta\,d\varphi である」ことの反映です。

証明(定理 6.7)

記号を決めます。x=(x1,x2)\boldsymbol x=(x_1,x_2) に対し ∣x∣∞=max⁡(∣x1∣,∣x2∣)|\boldsymbol x|_\infty=\max(|x_1|,|x_2|)、2 次正方行列 B=(bij)B=(b_{ij}) に対し ∥B∥=max⁡i(∣bi1∣+∣bi2∣)\|B\|=\max_i(|b_{i1}|+|b_{i2}|) とおくと ∣Bx∣∞≤∥B∥ ∣x∣∞|B\boldsymbol x|_\infty\le\|B\|\,|\boldsymbol x|_\infty です。Q(a,r)={x:∣x−a∣∞≤r}Q(\boldsymbol a,r)=\{\boldsymbol x:|\boldsymbol x-\boldsymbol a|_\infty\le r\} は中心 a\boldsymbol a、一辺 2r2r の閉正方形です。積分の線形性・単調性(g≤hg\le h なら ∬g≤∬h\iint g\le\iint h。命題 3.6 (1)(2))と、平行移動で面積が変わらず hh 倍の拡大で面積が h2h^2 倍になること(補題 6.1)を使います。とくに Q(a,r)=a+r Q(0,1)Q(\boldsymbol a,r)=\boldsymbol a+r\,Q(\boldsymbol 0,1) なので ∣Q(a,r)∣=r2∣Q(0,1)∣=4r2\lvert Q(\boldsymbol a,r)\rvert=r^2\lvert Q(\boldsymbol 0,1)\rvert=4r^2 です。

第 0 段:面積 00 の集合。 有界集合 ZZ が面積 00(定義 5.1 の意味で面積確定かつ ∣Z∣=0|Z|=0)であることは、任意の ε>0\varepsilon\gt0 に対し総面積 ε\varepsilon 未満の有限個の閉長方形で ZZ を覆えることと同値です。実際、前者なら 命題 3.3 により過剰和 S(1Z,Δ)<εS(\mathbf 1_Z,\Delta)\lt\varepsilon となる分割があり、sup⁡1Z=1\sup\mathbf 1_Z=1 となる小長方形(ZZ と交わるもの)が ZZ を覆います。後者なら各長方形を面積が 2 倍未満になる範囲で少し広げて内部で ZZ を覆い、それらの辺を分点に含む分割をとると、ZZ と交わる小長方形はどれかの広げた長方形に含まれるので S(1Z,Δ)<2εS(\mathbf 1_Z,\Delta)\lt2\varepsilon、s(1Z,Δ)≥0s(\mathbf 1_Z,\Delta)\ge0 で、命題 3.3 から ∣Z∣=0|Z|=0 です。

第 1 段:面積確定と境界。 有界集合 EE が面積確定   ⟺  \iff 境界 ∂E\partial E が面積 00 です。(⇐\Leftarrow) 1E\mathbf 1_E は ∂E\partial E の外で連続で、∂E\partial E は面積 00 なので 補題 5.3 によりその条件を満たし、命題 5.4 により可積分です。(⇒\Rightarrow) E⊂RE\subset R とし、S(1E,Δ)−s(1E,Δ)<εS(\mathbf 1_E,\Delta)-s(\mathbf 1_E,\Delta)\lt\varepsilon となる分割 Δ\Delta をとります。∂E\partial E の点が小長方形 RijR_{ij} の内部にあれば RijR_{ij} は EE の点と EE の外の点をともに含み、Mij−mij=1M_{ij}-m_{ij}=1 です。そうでない点は分割の線分(有限個、面積 00)の上にあります。よって ∂E\partial E は総面積 ε\varepsilon 未満の長方形と面積 00 の集合で覆え、第 0 段より面積 00 です。

第 2 段:Φ\Phi と Φ−1\Phi^{-1}。 y0=Φ(u0)\boldsymbol y_0=\Phi(\boldsymbol u_0) とすると、逆関数定理(定理 4.1[逆関数定理・陰関数定理と条件付き極値])により u0\boldsymbol u_0 の開近傍 WW で Φ∣W\Phi|_W は開集合 Φ(W)\Phi(W) への全単射で逆写像は C1C^1 級です。Φ\Phi は単射なので Φ−1\Phi^{-1} は Φ(W)\Phi(W) 上でこの逆写像に一致します。よって Φ\Phi は開集合を開集合に写し、Φ−1 ⁣:V→U\Phi^{-1}\colon V\to U は C1C^1 級で JΦ−1(y)=JΦ(Φ−1(y))−1J_{\Phi^{-1}}(\boldsymbol y)=J_\Phi(\Phi^{-1}(\boldsymbol y))^{-1}、とくに det⁡JΦ−1≠0\det J_{\Phi^{-1}}\ne0 です。

第 3 段:コンパクト集合の近くでの一様な評価。 K⊂UK\subset U を有界閉集合とします。UcU^c は閉で KK と交わらないので、x↦inf⁡z∉U∣x−z∣∞\boldsymbol x\mapsto\inf_{\boldsymbol z\notin U}|\boldsymbol x-\boldsymbol z|_\infty の KK 上の最小値は正で、K′={x:inf⁡k∈K∣x−k∣∞≤2r0}⊂UK'=\{\boldsymbol x:\inf_{\boldsymbol k\in K}|\boldsymbol x-\boldsymbol k|_\infty\le2r_0\}\subset U となる r0>0r_0\gt0 があります。K′K' は有界閉集合なので、その上で JΦJ_\Phi の成分と det⁡JΦ\det J_\Phi は一様連続で、C=max⁡K′∥JΦ−1∥C=\max_{K'}\|J_\Phi^{-1}\| と D=max⁡K′∣det⁡JΦ∣D=\max_{K'}|\det J_\Phi| は有限です(JΦ−1J_\Phi^{-1} の成分は連続)。KK と交わる一辺 2r≤2r02r\le2r_0 の正方形は K′K' に含まれます。

(i) 面積 00 の像。 L=max⁡K′∥JΦ∥L=\max_{K'}\|J_\Phi\| とおきます。Z⊂KZ\subset K が面積 00 なら、総面積 ε\varepsilon 未満の有限個の長方形 PlP_l(辺の長さ hl,klh_l,k_l)で覆います。一辺 2r2r の正方形の格子のうち PlP_l と交わるものは辺が hl+4rh_l+4r、kl+4rk_l+4r の長方形に含まれるので、r≤r0r\le r_0 を十分小さくとれば、⋃lPl\bigcup_lP_l と交わる格子の正方形の総面積は ∑l(hl+4r)(kl+4r)<2ε\sum_l(h_l+4r)(k_l+4r)\lt2\varepsilon です。そのうち ZZ と交わるものだけを残すと ZZ を覆い、どれも KK と交わるので K′K' に含まれます。そのような正方形 Q(a,r)⊂K′Q(\boldsymbol a,r)\subset K' の点 x\boldsymbol x について、線分 [a,x]⊂Q[\boldsymbol a,\boldsymbol x]\subset Q 上で Φ(x)−Φ(a)=∫01JΦ(a+t(x−a))(x−a) dt\Phi(\boldsymbol x)-\Phi(\boldsymbol a)=\int_0^1J_\Phi(\boldsymbol a+t(\boldsymbol x-\boldsymbol a))(\boldsymbol x-\boldsymbol a)\,dt なので ∣Φ(x)−Φ(a)∣∞≤Lr|\Phi(\boldsymbol x)-\Phi(\boldsymbol a)|_\infty\le Lr、すなわち Φ(Q)⊂Q(Φ(a),Lr)\Phi(Q)\subset Q(\Phi(\boldsymbol a),Lr) で、この正方形の面積は 4L2r2=L2∣Q∣4L^2r^2=L^2\lvert Q\rvert です(L=0L=0 なら Φ(Q)\Phi(Q) は 1 点で面積 00)。よって Φ(Z)\Phi(Z) は総面積 2L2ε2L^2\varepsilon 未満の正方形で覆え、第 0 段より面積 00 です。

(ii) 小さな正方形の像。 η>0\eta\gt0 に対し、∣x−y∣∞≤2r1|\boldsymbol x-\boldsymbol y|_\infty\le2r_1(x,y∈K′\boldsymbol x,\boldsymbol y\in K')なら ∥JΦ(x)−JΦ(y)∥≤η/C\|J_\Phi(\boldsymbol x)-J_\Phi(\boldsymbol y)\|\le\eta/C となる r1≤r0r_1\le r_0 をとります。KK と交わる Q=Q(a,r)Q=Q(\boldsymbol a,r)(r≤r1r\le r_1、a∈K′\boldsymbol a\in K')と A=JΦ(a)A=J_\Phi(\boldsymbol a) について、x∈Q\boldsymbol x\in Q なら

A−1(Φ(x)−Φ(a))=(x−a)+∫01A−1(JΦ(a+t(x−a))−A)(x−a) dtA^{-1}\bigl(\Phi(\boldsymbol x)-\Phi(\boldsymbol a)\bigr)=(\boldsymbol x-\boldsymbol a)+\int_0^1A^{-1}\bigl(J_\Phi(\boldsymbol a+t(\boldsymbol x-\boldsymbol a))-A\bigr)(\boldsymbol x-\boldsymbol a)\,dt

で、右辺第 2 項の ∣⋅∣∞|\cdot|_\infty は C⋅(η/C)⋅r=ηrC\cdot(\eta/C)\cdot r=\eta r 以下です。よって Φ(Q)⊂Φ(a)+A Q(0,(1+η)r)\Phi(Q)\subset\Phi(\boldsymbol a)+A\,Q(\boldsymbol 0,(1+\eta)r) です。Φ(Q)\Phi(Q) は有界閉集合で、境界は第 2 段により Φ(∂Q)\Phi(\partial Q) に含まれ(Φ\Phi は QQ の内部を Φ(Q)\Phi(Q) の内部に写す)、(i)(KK を有界閉集合 Q⊂UQ\subset U に取り替えて適用。∂Q\partial Q は 4 本の線分なので面積 00)により面積 00 なので、第 1 段より面積確定です。一方 Q(0,(1+η)r)Q(\boldsymbol 0,(1+\eta)r) は面積 (1+η)2∣Q∣(1+\eta)^2\lvert Q\rvert の正方形(補題 6.1)で、命題 6.5 の 2 によりその AA による像の面積は ∣det⁡A∣(1+η)2∣Q∣\lvert\det A\rvert(1+\eta)^2\lvert Q\rvert、補題 6.1(平行移動)により Φ(a)+A Q(0,(1+η)r)\Phi(\boldsymbol a)+A\,Q(\boldsymbol 0,(1+\eta)r) の面積も同じです。面積の単調性(命題 3.6 (2) を指示関数に使う)から

∣Φ(Q)∣≤∣det⁡JΦ(a)∣ (1+η)2∣Q∣.|\Phi(Q)|\le|\det J_\Phi(\boldsymbol a)|\,(1+\eta)^2|Q| .

第 4 段:Φ(E)\Phi(E) は面積確定。 Φ(E)\Phi(E) は有界閉集合(連続写像によるコンパクト集合の像)です。Φ(int E)\Phi(\mathrm{int}\,E) は開集合で Φ(E)\Phi(E) に含まれるので Φ(E)\Phi(E) の内部に含まれ、∂Φ(E)=Φ(E)∖int Φ(E)⊂Φ(E∖int E)=Φ(∂E)\partial\Phi(E)=\Phi(E)\setminus\mathrm{int}\,\Phi(E)\subset\Phi(E\setminus\mathrm{int}\,E)=\Phi(\partial E) です。第 1 段より ∂E\partial E は面積 00、第 3 段 (i)(K=EK=E)より Φ(∂E)\Phi(\partial E) も面積 00 なので、第 1 段より Φ(E)\Phi(E) は面積確定です。同じ理由で、Φ(E)\Phi(E) 上の連続関数を 00 で延長した関数は ∂Φ(E)\partial\Phi(E) の外で連続で、∂Φ(E)\partial\Phi(E) は面積 00(上で示しました)なので、両辺の積分は 補題 5.3 と 命題 5.4 により存在します。

第 5 段:f≥0f\ge0 なら左辺 ≤\le 右辺。 g=(f∘Φ)∣det⁡JΦ∣g=(f\circ\Phi)|\det J_\Phi| を EE 上の連続関数とし、g~\tilde g を EE の外で 00 とした延長とします。K=EK=E として第 3 段を使い、η>0\eta\gt0 に対する r1r_1 をとります。∣det⁡JΦ∣|\det J_\Phi| の一様連続性から、r1r_1 を小さくとり直して ∣x−y∣∞≤2r1|\boldsymbol x-\boldsymbol y|_\infty\le2r_1 なら ∣∣det⁡JΦ(x)∣−∣det⁡JΦ(y)∣∣≤η\bigl||\det J_\Phi(\boldsymbol x)|-|\det J_\Phi(\boldsymbol y)|\bigr|\le\eta としておきます。K′K' を含む正方形 RR を、一辺 2r2r(r≤r1r\le r_1)の正方形の格子で分割し、その分割を Δr\Delta_r、EE と交わる正方形を Q1,…,QNQ_1,\dots,Q_N(中心 aj\boldsymbol a_j)とします。

Φ(E)=⋃jΦ(E∩Qj)\Phi(E)=\bigcup_j\Phi(E\cap Q_j) で、各 Φ(E∩Qj)\Phi(E\cap Q_j) は第 4 段と同じ理由で面積確定(∂(E∩Qj)⊂∂E∪∂Qj\partial(E\cap Q_j)\subset\partial E\cup\partial Q_j)です。f≥0f\ge0 なので 1Φ(E)f≤∑j1Φ(E∩Qj)f\mathbf 1_{\Phi(E)}f\le\sum_j\mathbf 1_{\Phi(E\cap Q_j)}f で、積分の単調性と第 3 段 (ii) から

∬Φ(E)f≤∑j(max⁡E∩Qjf∘Φ)∣Φ(Qj)∣≤(1+η)2∑j(max⁡E∩Qjf∘Φ)∣det⁡JΦ(aj)∣ ∣Qj∣.\iint_{\Phi(E)}f\le\sum_j\Bigl(\max_{E\cap Q_j}f\circ\Phi\Bigr)|\Phi(Q_j)|\le(1+\eta)^2\sum_j\Bigl(\max_{E\cap Q_j}f\circ\Phi\Bigr)|\det J_\Phi(\boldsymbol a_j)|\,|Q_j| .

E∩QjE\cap Q_j の点 x\boldsymbol x では ∣det⁡JΦ(aj)∣≤∣det⁡JΦ(x)∣+η|\det J_\Phi(\boldsymbol a_j)|\le|\det J_\Phi(\boldsymbol x)|+\eta なので、Mf=max⁡Φ(E)fM_f=\max_{\Phi(E)}f とおくと (max⁡E∩Qjf∘Φ)∣det⁡JΦ(aj)∣≤sup⁡Qjg~+Mfη\bigl(\max_{E\cap Q_j}f\circ\Phi\bigr)|\det J_\Phi(\boldsymbol a_j)|\le\sup_{Q_j}\tilde g+M_f\eta です(g≥0g\ge0 なので sup⁡Qjg~=max⁡E∩Qjg\sup_{Q_j}\tilde g=\max_{E\cap Q_j}g)。EE と交わらない格子の正方形では g~=0\tilde g=0 なので、∑j(sup⁡Qjg~)∣Qj∣\sum_j(\sup_{Q_j}\tilde g)|Q_j| は過剰和 S(g~,Δr)S(\tilde g,\Delta_r) に等しく、

∬Φ(E)f≤(1+η)2(S(g~,Δr)+Mfη∣R∣).\iint_{\Phi(E)}f\le(1+\eta)^2\bigl(S(\tilde g,\Delta_r)+M_f\eta|R|\bigr).

g~\tilde g は可積分(第 4 段)なので、定義 3.2 と、過剰和が代表点を動かしたリーマン和の上限であること(命題 3.3 の証明の準備)から、r→0r\to0 で S(g~,Δr)→∬EgS(\tilde g,\Delta_r)\to\iint_E g です。r→0r\to0 ののち η→0\eta\to0 とすれば ∬Φ(E)f≤∬Eg\iint_{\Phi(E)}f\le\iint_Eg を得ます。

第 6 段:等号。 第 2 段より Φ−1 ⁣:V→U\Phi^{-1}\colon V\to U は定理の仮定を満たし、Φ(E)⊂V\Phi(E)\subset V は有界閉かつ面積確定(第 4 段)です。第 5 段を Φ−1\Phi^{-1}、集合 Φ(E)\Phi(E)、関数 g≥0g\ge0 に適用すると、g(Φ−1(y))∣det⁡JΦ−1(y)∣=f(y)g(\Phi^{-1}(\boldsymbol y))|\det J_{\Phi^{-1}}(\boldsymbol y)|=f(\boldsymbol y) なので

∬Eg≤∬Φ(E)g∘Φ−1 ∣det⁡JΦ−1∣=∬Φ(E)f.\iint_Eg\le\iint_{\Phi(E)}g\circ\Phi^{-1}\,|\det J_{\Phi^{-1}}|=\iint_{\Phi(E)}f .

第 5 段と合わせて、f≥0f\ge0 のとき等号が成り立ちます。一般の連続関数 ff は f=f+−f−f=f_+-f_-(f±=max⁡(±f,0)f_\pm=\max(\pm f,0) は連続で非負)と分けて、積分の線形性から等号を得ます。

証明(系 6.9)

上の証明の記号と段を使います。まず、第 3 段 (i) の議論は Φ\Phi の単射性も det⁡JΦ≠0\det J_\Phi\ne0 も使わず、有界閉集合 KK を含む開集合の上で Φ\Phi が C1C^1 級であることだけを使っています。そこで (i) を開集合 WW と K=EK=E に対して使い、その r0r_0、K′⊂WK'\subset W、L=max⁡K′∥JΦ∥L=\max_{K'}\|J_\Phi\| をとります。

定理を当てはめる開集合。 U0=int E∖ZU_0=\mathrm{int}\,E\setminus Z は開集合で、仮定から Φ∣U0\Phi|_{U_0} は単射、det⁡JΦ≠0\det J_\Phi\ne0 です。第 2 段の議論(逆関数定理)から V0=Φ(U0)V_0=\Phi(U_0) は開集合で、Φ∣U0 ⁣:U0→V0\Phi|_{U_0}\colon U_0\to V_0 は 定理 6.7 の仮定を満たします。Z′=Z∪∂EZ'=Z\cup\partial E とおくと、EE は閉なので ∂E⊂E\partial E\subset E で、E∖Z′=U0E\setminus Z'=U_0 です。第 1 段より ∂E\partial E は面積 00 なので、Z′Z' は面積 00 の有界閉集合です。

Φ(E)\Phi(E) は面積確定。 Φ(E)\Phi(E) は有界閉集合です。開集合 Φ(U0)\Phi(U_0) は Φ(E)\Phi(E) に含まれるので Φ(E)\Phi(E) の内部に含まれ、∂Φ(E)⊂Φ(E∖U0)=Φ(Z′)\partial\Phi(E)\subset\Phi(E\setminus U_0)=\Phi(Z') です。(i) より Φ(Z′)\Phi(Z') は面積 00 なので、第 1 段より Φ(E)\Phi(E) は面積確定で、第 4 段と同じ理由で両辺の積分が存在します。

例外集合を小さな正方形で取り除く。 ε>0\varepsilon\gt0 とします。(i) の証明と同じく、Z′Z' と交わる一辺 2r2r の格子の正方形で総面積 2ε2\varepsilon 未満のものをとり(r≤r0/2r\le r_0/2)、各正方形を中心を保って一辺 2r′2r'(r<r′≤r0r\lt r'\le r_0、総面積が 4ε4\varepsilon 未満に収まる範囲)に広げたものを P1,…,PNP_1,\dots,P_N とします。各 PlP_l は Z′⊂EZ'\subset E と交わり一辺が 2r02r_0 以下なので K′K' に含まれ、Z′Z' は内部の和 O=⋃lint PlO=\bigcup_l\mathrm{int}\,P_l に含まれます。Eε=E∖OE_\varepsilon=E\setminus O は有界閉集合で Eε⊂E∖Z′=U0E_\varepsilon\subset E\setminus Z'=U_0、境界は ∂E∪⋃l∂Pl\partial E\cup\bigcup_l\partial P_l に含まれて面積 00 なので、第 1 段より面積確定です。定理 6.7 を Φ∣U0\Phi|_{U_0} と EεE_\varepsilon に適用すると

∬Φ(Eε)f=∬Eεg,g=(f∘Φ) ∣det⁡JΦ∣.\iint_{\Phi(E_\varepsilon)}f=\iint_{E_\varepsilon}g,\qquad g=(f\circ\Phi)\,|\det J_\Phi| .

差の評価。 Mf=max⁡Φ(E)∣f∣M_f=\max_{\Phi(E)}|f|、Mg=max⁡E∣g∣M_g=\max_E|g| とおきます。E∖Eε⊂⋃lPlE\setminus E_\varepsilon\subset\bigcup_lP_l なので、積分の線形性と単調性から

∣∬Eg−∬Eεg∣=∣∬1E∖Eε g∣≤Mg∑l∣Pl∣<4Mgε.\Bigl|\iint_Eg-\iint_{E_\varepsilon}g\Bigr|=\Bigl|\iint\mathbf 1_{E\setminus E_\varepsilon}\,g\Bigr|\le M_g\sum_l|P_l|\lt4M_g\varepsilon .

一方 Φ(E)∖Φ(Eε)⊂Φ(E∖Eε)⊂⋃lΦ(Pl)\Phi(E)\setminus\Phi(E_\varepsilon)\subset\Phi(E\setminus E_\varepsilon)\subset\bigcup_l\Phi(P_l) で、(i) の証明のとおり Φ(Pl)\Phi(P_l) は面積 L2∣Pl∣L^2|P_l| の正方形に含まれるので、同様に

∣∬Φ(E)f−∬Φ(Eε)f∣≤MfL2∑l∣Pl∣<4MfL2ε.\Bigl|\iint_{\Phi(E)}f-\iint_{\Phi(E_\varepsilon)}f\Bigr|\le M_fL^2\sum_l|P_l|\lt4M_fL^2\varepsilon .

3 つの式を合わせると ∣∬Φ(E)f−∬Eg∣<4(MfL2+Mg)ε\bigl|\iint_{\Phi(E)}f-\iint_Eg\bigr|\lt4(M_fL^2+M_g)\varepsilon で、ε>0\varepsilon\gt0 は任意なので等号が成り立ちます。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 8 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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