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ガロア理論への招待:方程式の対称性が「解の公式」の有無を決める

対象読者: 本テーマ第 3〜6 章の正規部分群・商群・環と体・イデアルと、線形代数のベクトル空間の次元を学んだ人。体の拡大は概要から説明します。

前提となる記事:イデアルと剰余環:環を「割る」ための正規部分群

生 Markdown

方程式 x2−2=0x^2 - 2 = 0 の 2 つの解 2\sqrt2 と −2-\sqrt2 は、整数や分数だけを使った計算の上では、入れ替えても何も変わりません。同じことは高次の方程式でも起こり、「どの解をどう入れ替えてよいか」という対称性の形を調べると、その方程式に解の公式があるかどうかが分かります。この記事では、その対称性を群として取り出し、5 次方程式 x5−4x+2=0x^5 - 4x + 2 = 0 には、四則演算と根号(平方根、立方根など)だけを使う解の公式がないことを示すところまで進みます。

  • 方程式 f(x)=0f(x) = 0 に対して、その根がすべて現れる最小の体(最小分解体)LL を作り、LL の自己同型(足し算と掛け算を保つ、LL から LL への一対一の写像)のうち係数体 KK(方程式の係数が属する体)を動かさないもの全体がなす群 Gal(L/K)\mathrm{Gal}(L/K) を対応させます。これは「KK の立場から見て根たちがどれくらい区別できないか」を測る有限群です。
  • ガロア理論の基本定理は、L/KL/K の中間体全体と Gal(L/K)\mathrm{Gal}(L/K) の部分群全体が包含関係を逆にして 1 対 1 に対応することを主張します。体という無限集合の問題が、有限群の部分群を数える問題に翻訳されます。
  • この対応のもとで「中間体が KK 上ガロア」は「対応する部分群が正規」と同値になり、そのとき中間体のガロア群は商群として現れます。群の準同型定理の体版です。
  • 「根号で解ける」とは、最小分解体が巾根を次々に添加した体の塔に含まれることです。この塔は群の側で、商がアーベル群(掛け算の順序を入れ替えても結果が変わらない群)であるような正規列(可解列)に翻訳されます。
  • 一般の nn 次方程式のガロア群は対称群 SnS_n(nn 個の文字の並べ替え全体)です。S2,S3,S4S_2, S_3, S_4 は可解群ですが S5S_5 は可解群ではありません。これが「4 次まで公式があって 5 次で止まる」ことの正体です。
  • 具体例として、x5−4x+2x^5 - 4x + 2 のガロア群が S5S_5 であることを、既約性・実根の個数・複素共役という 3 つの材料だけから完全に証明します。この方程式は根号では解けません。

1. 動機:解の公式はなぜ 4 次で止まるのか

Section titled “1. 動機:解の公式はなぜ 4 次で止まるのか”

2 次方程式 ax2+bx+c=0ax^2 + bx + c = 0 の解の公式は、平方完成という形で古代バビロニアの粘土板にすでに現れます。3 次方程式が解かれたのは 16 世紀のイタリアで、デル・フェッロとタルタリアの発見をカルダーノが『Ars Magna』(1545 年)に公表しました。カルダーノの弟子フェラーリは同じ頃に 4 次方程式を根号で解いています。4 次までが 1 世代で片づいたのですから、5 次も時間の問題に見えたはずです。

ところが、そこから 250 年間、誰も 5 次方程式の解の公式を書けませんでした。転機は 1770 年、ラグランジュが『方程式の代数的解法についての省察』で、3 次・4 次の古典的解法はいずれも「根の置換に対して分解式(レゾルベント)がどう振る舞うか」という一つの原理で説明できると見抜いたことです。彼は同じ方法が 5 次では破綻することにも気づいていました。1799 年にルフィニが不可能性の証明を試み(論証には隙がありました)、1824 年にアーベルが完全な証明を与えます。そして 1830 年から 1832 年にかけて、20 歳で決闘に倒れたガロアが、「どの方程式が根号で解けるか」という問いそのものに完全な答えを与えました。

ここで立ち止まって考えてほしいのは、「公式が存在しないこと」をどうやって証明するのかという点です。公式の候補は無限にあります。ひとつずつ試して潰すことはできません。必要なのは、「もし根号で解けるならば、その方程式は必ずこういう性質を持っているはずだ」という不変量です。ガロアの発見は、その不変量が群だということでした。

素朴な観察から入りましょう。x2−2=0x^2 - 2 = 0 の 2 根は 2\sqrt{2} と −2-\sqrt{2} です。有理数係数の代数的な式だけを使って、この 2 つを区別できるでしょうか。2\sqrt{2} が満たす有理数係数の多項式関係は、そっくりそのまま −2-\sqrt{2} も満たします。つまり有理数の世界から見ると、この 2 根は入れ替えても何も壊れないのです。

一方、x4−5x2+6=(x2−2)(x2−3)x^4 - 5x^2 + 6 = (x^2 - 2)(x^2 - 3) の 4 根 2,−2,3,−3\sqrt{2}, -\sqrt{2}, \sqrt{3}, -\sqrt{3} はどうでしょうか。2\sqrt{2} を 3\sqrt{3} に移す「入れ替え」は許されません。2\sqrt{2} は α2=2\alpha^2 = 2 という有理数係数の関係を満たしますが、3\sqrt{3} は満たさないからです。許される入れ替えは {2,−2}\{\sqrt2, -\sqrt2\} と {3,−3}\{\sqrt3, -\sqrt3\} をそれぞれ保つものだけで、全部で高々 4 通り。4 文字の置換は 4!=244! = 24 通りあるのに、この方程式の「対称性」はその 6 分の 1 しかないわけです。

この「許される入れ替え全体」が群をなします。これがガロア群です。方程式が根号で解けるかは、この群の形だけで決まる——それがガロア理論の結論です。

2. 準備:体の拡大と最小分解体

Section titled “2. 準備:体の拡大と最小分解体”

以降、体はすべて標数 0 とします(1+1+⋯+11 + 1 + \cdots + 1 をいくら足しても 00 にならない体のことです)。具体的には Q\mathbb{Q} を含む体、実際には C\mathbb{C} の部分体を思い浮かべてかまいません。標数 0 を仮定するのは、既約多項式が重根を持つという標数正の体特有の現象(非分離性)を避けるためです。体そのものの定義や基本性質は 環と体の基礎(体の定義(定義 5.1)[環と体の基礎])を参照してください。

定義 2.1(体の拡大・拡大次数・最小多項式)↗

体 KK が体 LL の部分体であるとき、組 L/KL/K を体の拡大といいます。このとき LL は KK 上のベクトル空間になります(加法は LL のもの、スカラー倍は KK の元による LL の中での乗法)。その次元

[L:K]:=dim⁡KL[L : K] := \dim_K L

を拡大次数といい、[L:K][L:K] が有限のとき L/KL/K を有限次拡大といいます。

α∈L\alpha \in L が KK 上代数的であるとは、f(α)=0f(\alpha) = 0 を満たす 00 でない f∈K[X]f \in K[X] が存在することをいいます。このとき、α\alpha を根に持つモニック多項式のうち次数が最小のものはただ一つに定まり、これを α\alpha の KK 上の最小多項式といって mα,Km_{\alpha, K} と書きます。

S⊆LS \subseteq L に対し、KK と SS をともに含む LL の部分体のうち最小のものを K(S)K(S) と書きます。SS が有限集合 {α1,…,αn}\{\alpha_1, \ldots, \alpha_n\} のときは K(α1,…,αn)K(\alpha_1, \ldots, \alpha_n) と書きます。

最小多項式の一意性は次のように確かめられます。同じ最小次数 dd のモニック多項式 f,gf, g がともに α\alpha を根に持てば、差 f−gf - g は次数が dd 未満(最高次の項が消える)で α\alpha を根に持つので、次数最小性から f−g=0f - g = 0 です。また LL が KK 上のベクトル空間になるという点は、線形代数がそのまま道具として使えることを意味します(ベクトル空間と線形変換、とくに 次元の定義(定義 5.6)[ベクトル空間と線形変換])。ガロア理論の議論の半分は次元の勘定です。

注意 2.2(単拡大は剰余環である)

α∈L\alpha \in L が KK 上代数的で d=deg⁡mα,Kd = \deg m_{\alpha,K} とします。代入写像 φ:K[X]→L\varphi : K[X] \to L, φ(g)=g(α)\varphi(g) = g(\alpha) は環準同型で、その核は mα,Km_{\alpha,K} が生成するイデアル (mα,K)(m_{\alpha,K}) です。実際、K[X]K[X] は単項イデアル整域なので ker⁡φ=(h)\ker\varphi = (h) と書けますが、hh は ker⁡φ\ker\varphi の 00 でない元のうち次数最小のもの、すなわち mα,Km_{\alpha,K} の定数倍です。

mα,Km_{\alpha,K} は既約です。mα,K=ghm_{\alpha,K} = gh と、g,hg, h の次数がともに dd 未満になるように分解できたとすると g(α)h(α)=0g(\alpha)h(\alpha) = 0 となり、LL は整域なので g(α)=0g(\alpha) = 0 または h(α)=0h(\alpha) = 0、これは次数最小性に反するからです。既約元が生成するイデアルは K[X]K[X] の極大イデアルなので、極大イデアルと体(定理 6.3)[イデアルと剰余環] と準同型定理により

K[X]/(mα,K)  ≅  Im φ=K[α]K[X]/(m_{\alpha,K}) \;\cong\; \mathrm{Im}\,\varphi = K[\alpha]

は体になり、したがって K[α]=K(α)K[\alpha] = K(\alpha) です。さらに除法の原理から 1,α,…,αd−11, \alpha, \ldots, \alpha^{d-1} が K(α)K(\alpha) の KK 上の基底になるので [K(α):K]=d[K(\alpha):K] = d です。詳細は イデアルと剰余環(環の準同型定理(定理 5.1)[イデアルと剰余環])と 群の準同型定理 のとおりで、「既約な元で割ると体ができる」という現象が Z/pZ\mathbb{Z}/p\mathbb{Z} と同じ形で現れています。

命題 2.3(次数の連鎖律)✓

K⊆M⊆LK \subseteq M \subseteq L を体の拡大の列とします。このとき

[L:K]=[L:M] [M:K][L : K] = [L : M]\,[M : K]

が成り立ちます(両辺が同時に有限、または同時に無限であることを含みます)。とくに [L:K][L:K] が有限なら、[M:K][M:K] と [L:M][L:M] はともに [L:K][L:K] の約数です。

証明(命題 2.3)

まず [L:M]=m<∞[L:M] = m < \infty, [M:K]=n<∞[M:K] = n < \infty の場合を示します。u1,…,umu_1, \ldots, u_m を LL の MM 上の基底、v1,…,vnv_1, \ldots, v_n を MM の KK 上の基底とし、mnmn 個の積 uivju_i v_j が LL の KK 上の基底であることを示します。

生成すること。 x∈Lx \in L を任意に取ります。uiu_i が MM 上の基底なので x=∑i=1mciuix = \sum_{i=1}^m c_i u_i(ci∈Mc_i \in M)と書けます。各 cic_i は MM の元なので ci=∑j=1ndijvjc_i = \sum_{j=1}^n d_{ij} v_j(dij∈Kd_{ij} \in K)と書けます。代入して

x=∑i=1m(∑j=1ndijvj)ui=∑i,jdij uivjx = \sum_{i=1}^m \Bigl(\sum_{j=1}^n d_{ij} v_j\Bigr) u_i = \sum_{i,j} d_{ij}\, u_i v_j

となり、xx は uivju_i v_j たちの KK 係数一次結合です。

一次独立性。 ∑i,jdijuivj=0\sum_{i,j} d_{ij} u_i v_j = 0(dij∈Kd_{ij} \in K)とします。uiu_i について整理すると ∑i=1m(∑jdijvj)ui=0\sum_{i=1}^m \bigl(\sum_j d_{ij} v_j\bigr) u_i = 0 となり、括弧の中は MM の元です。uiu_i が MM 上一次独立なので、すべての ii について ∑jdijvj=0\sum_j d_{ij} v_j = 0。今度は vjv_j が KK 上一次独立なので、すべての i,ji, j について dij=0d_{ij} = 0 です。

よって [L:K]=mn[L:K] = mn が示されました。

無限の場合も確認します。[M:K]=∞[M:K] = \infty なら MM の中に KK 上一次独立な元がいくらでも取れ、それらは LL の中でも KK 上一次独立なので [L:K]=∞[L:K] = \infty。[L:M]=∞[L:M] = \infty なら LL の中に MM 上一次独立な元がいくらでも取れますが、K⊆MK \subseteq M よりそれらは KK 上も一次独立なので、やはり [L:K]=∞[L:K] = \infty。逆に両方が有限なら前半より [L:K][L:K] は有限です。

定義 2.4(最小分解体)↗

KK を体、f∈K[X]f \in K[X] を次数 11 以上の多項式とします。拡大 L/KL/K が ff の KK 上の最小分解体であるとは、次の 2 条件が成り立つことをいいます。

  1. ff は L[X]L[X] の中で 1 次式の積に完全に分解する。すなわち f=c(X−α1)⋯(X−αn)f = c(X - \alpha_1)\cdots(X - \alpha_n)(c∈K×c \in K^\times, αi∈L\alpha_i \in L)と書ける。
  2. L=K(α1,…,αn)L = K(\alpha_1, \ldots, \alpha_n)、すなわち LL は KK に ff の根をすべて添加して得られる。

最小分解体は、K[X]/(p)K[X]/(p)(pp は ff の既約因子)を作って根を 1 つずつ付け加える操作を繰り返せば必ず構成でき(クロネッカーの構成)、KK 上の同型を除いて一意に定まります。この 2 つは以下で自由に使いますが、証明は参考文献 [1] [4] に譲ります。

注意 2.5(標数 0 では既約多項式に重根がない)

KK を標数 00 の体、f∈K[X]f \in K[X] を既約、deg⁡f=n≥1\deg f = n \ge 1 とすると、ff は(ff が分解する任意の拡大体の中で)重根を持ちません。

形式微分 f′f' を考えます。ff の最高次の係数を an≠0a_n \ne 0 とすると f′f' の Xn−1X^{n-1} の係数は nann a_n で、標数 00 なので nan≠0n a_n \ne 0、したがって f′≠0f' \ne 0 かつ deg⁡f′=n−1\deg f' = n - 1 です。d=gcd⁡(f,f′)d = \gcd(f, f') とおくと d∣fd \mid f で、ff が既約だから dd は定数か ff の定数倍に限られます。後者なら f∣f′f \mid f' ですが 0≤deg⁡f′<deg⁡f0 \le \deg f' < \deg f なのでこれは f′=0f' = 0 を意味し、矛盾です。よって gcd⁡(f,f′)=1\gcd(f, f') = 1。K[X]K[X] は単項イデアル整域なので uf+vf′=1uf + vf' = 1 となる u,v∈K[X]u, v \in K[X] が存在します。もし α\alpha が ff の重根なら f=(X−α)2gf = (X-\alpha)^2 g と書けて f′=2(X−α)g+(X−α)2g′f' = 2(X-\alpha)g + (X-\alpha)^2 g' なので f(α)=f′(α)=0f(\alpha) = f'(\alpha) = 0 となり、上の等式に α\alpha を代入すると 0=10 = 1 という矛盾が出ます。

注意 2.6(アイゼンシュタインの既約判定法)

f=anXn+⋯+a1X+a0∈Z[X]f = a_n X^n + \cdots + a_1 X + a_0 \in \mathbb{Z}[X](n≥1n \ge 1)とします。素数 pp が

p∤an,p∣ai  (0≤i≤n−1),p2∤a0p \nmid a_n, \qquad p \mid a_i \ \ (0 \le i \le n-1), \qquad p^2 \nmid a_0

を満たすならば、ff は Q[X]\mathbb{Q}[X] で既約です。証明はガウスの補題と、 mod  p\bmod\ p で見ると f≡anXnf \equiv a_n X^n になることの観察によります(アイゼンシュタインの判定法(定理 4.1)[多項式環と体の拡大]で証明しています)。以下ではこの判定法を繰り返し使います。

定義 3.1(自己同型群・ガロア拡大・ガロア群)↗

体の拡大 L/KL/K に対し、

Aut(L/K):={ σ:L→L 体の同型 ∣ σ(a)=a  (∀a∈K) }\mathrm{Aut}(L/K) := \{\, \sigma : L \to L \ \text{体の同型} \ \mid \ \sigma(a) = a \ \ (\forall a \in K) \,\}

とおきます。写像の合成について Aut(L/K)\mathrm{Aut}(L/K) は群になります。恒等写像は KK を固定し、σ,τ\sigma, \tau が固定すれば σ∘τ\sigma \circ \tau も固定し、a=σ−1(σ(a))=σ−1(a)a = \sigma^{-1}(\sigma(a)) = \sigma^{-1}(a) より σ−1\sigma^{-1} も固定するからです。

有限次拡大 L/KL/K が、ある f∈K[X]f \in K[X] の KK 上の最小分解体になっているとき、L/KL/K をガロア拡大といい、Gal(L/K):=Aut(L/K)\mathrm{Gal}(L/K) := \mathrm{Aut}(L/K) と書いてガロア群と呼びます。また f∈K[X]f \in K[X] に対し、ff の最小分解体 LL についての群 Gal(L/K)\mathrm{Gal}(L/K) を、ff の KK 上のガロア群といいます。

KK を動かさない自己同型とは、「KK の中で書ける関係式をすべて保つ変換」のことです。幾何学で図形の対称性を「距離を保ち、ある部分を固定する変換」として捉えるのと同じ発想だと言えます。

補題 3.2(自己同型は根を置換する)✓

L/KL/K を体の拡大、σ∈Aut(L/K)\sigma \in \mathrm{Aut}(L/K) とします。

  1. f∈K[X]f \in K[X] と α∈L\alpha \in L について、f(α)=0f(\alpha) = 0 ならば f(σ(α))=0f(\sigma(\alpha)) = 0 です。すなわち σ\sigma は ff の LL における根の集合を、それ自身の上へ置換します。
  2. さらに、f∈K[X]f \in K[X] の LL における相異なる根の全体を α1,…,αn\alpha_1, \ldots, \alpha_n とし、L=K(α1,…,αn)L = K(\alpha_1, \ldots, \alpha_n) が成り立つとします。このとき、σ\sigma を根の集合上の置換に制限する写像
ρ:Aut(L/K)⟶S({α1,…,αn})≅Sn\rho : \mathrm{Aut}(L/K) \longrightarrow \mathfrak{S}(\{\alpha_1, \ldots, \alpha_n\}) \cong S_n

は単射な群準同型です。とくに Aut(L/K)\mathrm{Aut}(L/K) は SnS_n の部分群と同型な有限群で、その位数は n!n! の約数です。

証明(補題 3.2)

(1) f=∑i=0mciXif = \sum_{i=0}^m c_i X^i(ci∈Kc_i \in K)とします。σ\sigma は環準同型であり、しかも ci∈Kc_i \in K を固定するので

f(σ(α))=∑i=0mciσ(α)i=∑i=0mσ(ci) σ(αi)=σ(∑i=0mciαi)=σ(f(α))=σ(0)=0f(\sigma(\alpha)) = \sum_{i=0}^m c_i \sigma(\alpha)^i = \sum_{i=0}^m \sigma(c_i)\,\sigma(\alpha^i) = \sigma\Bigl(\sum_{i=0}^m c_i \alpha^i\Bigr) = \sigma(f(\alpha)) = \sigma(0) = 0

となります。第 2 の等号で σ(ci)=ci\sigma(c_i) = c_i(σ\sigma が KK を固定するという仮定)を、第 3 の等号で σ\sigma が和と積を保つことを使いました。よって σ\sigma は根の有限集合 R={α1,…,αn}R = \{\alpha_1,\ldots,\alpha_n\} を RR の中へ写します。σ\sigma は単射で、有限集合からそれ自身への単射は全射なので、σ∣R\sigma|_R は RR の置換です。

(2) ρ\rho が群準同型なのは、制限が合成と両立する((στ)∣R=σ∣R∘τ∣R(\sigma\tau)|_R = \sigma|_R \circ \tau|_R)からです。単射性を示します。ρ(σ)=id\rho(\sigma) = \mathrm{id}、つまり σ(αi)=αi\sigma(\alpha_i) = \alpha_i(1≤i≤n1 \le i \le n)と仮定します。σ\sigma で固定される元の全体

Lσ={ x∈L∣σ(x)=x }L^{\sigma} = \{\, x \in L \mid \sigma(x) = x \,\}

は LL の部分体です。実際 σ(x)=x\sigma(x) = x, σ(y)=y\sigma(y) = y なら σ(x±y)=x±y\sigma(x \pm y) = x \pm y, σ(xy)=xy\sigma(xy) = xy であり、x≠0x \ne 0 のとき σ(x−1)=σ(x)−1=x−1\sigma(x^{-1}) = \sigma(x)^{-1} = x^{-1} だからです。この部分体は KK を含み(σ∈Aut(L/K)\sigma \in \mathrm{Aut}(L/K) だから)、仮定よりすべての αi\alpha_i を含みます。よって Lσ⊇K(α1,…,αn)=LL^\sigma \supseteq K(\alpha_1,\ldots,\alpha_n) = L、すなわち σ=idL\sigma = \mathrm{id}_L です。核が単位元のみなので ρ\rho は単射です。

最後に、Aut(L/K)\mathrm{Aut}(L/K) は SnS_n の部分群と同型なので、ラグランジュの定理(定理 6.1)[部分群と剰余類](部分群と剰余類)よりその位数は ∣Sn∣=n!|S_n| = n! の約数です。

補題 3.2 は、この理論の入口にして急所です。体の自己同型という一見つかみどころのない対象が、有限個の根の置換という完全に具体的な対象に翻訳されました。第 1 節の「有理数の世界からは 2\sqrt2 と −2-\sqrt2 を区別できない」という素朴な直感が、群準同型として定式化されたことになります。以下ガロア群を SnS_n の部分群として扱うのはこの補題によります。対称群そのものについては 群論入門 の 置換と対称群(定義 5.2)[群論入門] を参照してください。

例 3.3(2 次拡大 Q(√2) のガロア群)

L=Q(2)L = \mathbb{Q}(\sqrt2) とします。x2−2x^2 - 2 は Q\mathbb{Q} 上既約(有理根の候補 ±1,±2\pm1, \pm2 を代入すると −1,−1,2,2-1, -1, 2, 2 でどれも 00 にならない)なので [L:Q]=2[L:\mathbb{Q}] = 2 で、1,21, \sqrt2 が基底です。LL は x2−2x^2-2 の最小分解体(根 ±2\pm\sqrt2 がともに LL に属し、L=Q(2,−2)L = \mathbb{Q}(\sqrt2, -\sqrt2))なのでガロア拡大です。

σ∈Gal(L/Q)\sigma \in \mathrm{Gal}(L/\mathbb{Q}) は 補題 3.2 より σ(2)=±2\sigma(\sqrt2) = \pm\sqrt2 を満たし、L=Q(2)L = \mathbb{Q}(\sqrt2) だからこの値で σ\sigma は決まります。よって候補は 2 つです。σ(a+b2)=a−b2\sigma(a + b\sqrt2) = a - b\sqrt2 が実際に体の自己同型であることを確かめます。加法を保つのは成分ごとの計算から従い、乗法については

σ((a+b2)(c+d2))=σ((ac+2bd)+(ad+bc)2)=(ac+2bd)−(ad+bc)2,σ(a+b2) σ(c+d2)=(a−b2)(c−d2)=(ac+2bd)−(ad+bc)2\begin{aligned} \sigma\bigl((a+b\sqrt2)(c+d\sqrt2)\bigr) &= \sigma\bigl((ac+2bd) + (ad+bc)\sqrt2\bigr) = (ac+2bd) - (ad+bc)\sqrt2, \\ \sigma(a+b\sqrt2)\,\sigma(c+d\sqrt2) &= (a-b\sqrt2)(c-d\sqrt2) = (ac+2bd) - (ad+bc)\sqrt2 \end{aligned}

で一致します。σ∘σ=id\sigma \circ \sigma = \mathrm{id} なので σ\sigma は全単射です。したがって

Gal(Q(2)/Q)={id,σ}≅Z/2Z,∣Gal(L/Q)∣=2=[L:Q].\mathrm{Gal}(\mathbb{Q}(\sqrt2)/\mathbb{Q}) = \{\mathrm{id}, \sigma\} \cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}, \qquad |\mathrm{Gal}(L/\mathbb{Q})| = 2 = [L:\mathbb{Q}] .

例 3.4(対称性が足りない拡大 Q(∛2))

L=Q(23)⊂RL = \mathbb{Q}(\sqrt[3]{2}) \subset \mathbb{R} とします(23\sqrt[3]{2} は実の 3 乗根)。x3−2x^3 - 2 は アイゼンシュタインの判定法(定理 4.1)[多項式環と体の拡大](p=2p=2)より既約なので [L:Q]=3[L:\mathbb{Q}] = 3 です。

σ∈Aut(L/Q)\sigma \in \mathrm{Aut}(L/\mathbb{Q}) を取ります。補題 3.2 より σ(23)\sigma(\sqrt[3]2) は x3−2x^3-2 の**LL の中での**根です。C\mathbb{C} における根は 23, ω23, ω223\sqrt[3]2,\ \omega\sqrt[3]2,\ \omega^2\sqrt[3]2(ω=e2πi/3\omega = e^{2\pi i/3})の 3 つですが、後の 2 つは虚部が 00 でない複素数であり、L⊂RL \subset \mathbb{R} には属しません。したがって LL の中にある根は 23\sqrt[3]2 だけで、σ(23)=23\sigma(\sqrt[3]2) = \sqrt[3]2、よって σ=id\sigma = \mathrm{id} です。つまり

∣Aut(L/Q)∣=1<3=[L:Q].|\mathrm{Aut}(L/\mathbb{Q})| = 1 < 3 = [L:\mathbb{Q}] .

L/QL/\mathbb{Q} はガロア拡大ではありません。原因ははっきりしています。LL は x3−2x^3-2 の根を 1 つしか含んでおらず、定義 2.4 の条件 1 を満たさないのです。対称性を測ろうにも、移す先が体の中に用意されていません。最小分解体は Q(23,ω)\mathbb{Q}(\sqrt[3]2, \omega) で、これは次数 6 の拡大になります(例 4.4)。「ガロア拡大」という条件は飾りではなく、根を全部入れておかないと対称性は現れないのです。

4. ガロア対応:中間体と部分群の辞書

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次の定理が、この記事の中心です。やっていることは、体の側にある「中間体」(KK と LL の間にある体)と、群の側にある「部分群」を、辞書のように 1 対 1 で結ぶことです。中間体 MM には「MM を動かさない自己同型の全体」を、部分群 HH には「HH のどの元でも動かない LL の元の全体(固定体)」を対応させ、この 2 つの操作が互いに逆になります。大きい体には小さい群が対応するので、包含関係が逆になります。項目 3 は、次数と指数が同じ数になる、という数の対応を述べています。

定理 4.1(ガロア理論の基本定理)✓

L/KL/K を標数 00 の体の有限次ガロア拡大とし、G=Gal(L/K)G = \mathrm{Gal}(L/K) とおきます。部分群 H≤GH \le G に対し

LH:={ x∈L∣σ(x)=x  (∀σ∈H) }L^H := \{\, x \in L \mid \sigma(x) = x \ \ (\forall \sigma \in H) \,\}

とおき(補題 3.2 の証明と同じ計算によりこれは KK を含む LL の部分体で、HH の固定体といいます)、中間体 MM には Gal(L/M)=Aut(L/M)\mathrm{Gal}(L/M) = \mathrm{Aut}(L/M) を対応させます。このとき次が成り立ちます。

  1. ∣G∣=[L:K]|G| = [L:K] であり、LG=KL^G = K です。
  2. 任意の中間体 MM に対して L/ML/M はガロア拡大であり、2 つの対応
H⟼LH,M⟼Gal(L/M)H \longmapsto L^H, \qquad M \longmapsto \mathrm{Gal}(L/M)

は互いに逆写像で、GG の部分群全体と中間体全体との間の全単射を与えます。どちらも包含関係を逆にします。すなわち H1⊆H2  ⟺  LH1⊇LH2H_1 \subseteq H_2 \iff L^{H_1} \supseteq L^{H_2} であり、M1⊆M2  ⟺  Gal(L/M1)⊇Gal(L/M2)M_1 \subseteq M_2 \iff \mathrm{Gal}(L/M_1) \supseteq \mathrm{Gal}(L/M_2) です。 3. 各 H≤GH \le G に対し [L:LH]=∣H∣[L : L^H] = |H|、[LH:K]=[G:H][L^H : K] = [G : H](HH の GG における指数)です。 4. 中間体 MM について、M/KM/K がガロア拡大であることと Gal(L/M)\mathrm{Gal}(L/M) が GG の正規部分群であることは同値です。このとき制限写像

π:G⟶Gal(M/K),σ⟼σ∣M\pi : G \longrightarrow \mathrm{Gal}(M/K), \qquad \sigma \longmapsto \sigma|_M

は well-defined な全射群準同型で ker⁡π=Gal(L/M)\ker \pi = \mathrm{Gal}(L/M)、したがって準同型定理により

Gal(M/K)  ≅  G/Gal(L/M)\mathrm{Gal}(M/K) \;\cong\; G/\mathrm{Gal}(L/M)

が成り立ちます。

注意 4.2(基本定理の証明について)

この定理の証明は長くなるので Appendix に置きます。骨格は、(i) デデキントによる指標の一次独立性(補題 7.6)、(ii) それを用いたアルティンの定理「HH が体 LL の自己同型からなる有限群なら [L:LH]=∣H∣[L : L^H] = |H|」(補題 7.7)、(iii) 同型の延長定理(補題 7.5)の 3 本柱です。参考文献 [1] 第 4 章、[3]、[4] Chapter 14 にも証明があります。以下ではこの定理を使って具体例を調べます。

項目 4 は、この理論のうちで最も「準同型定理らしい」部分です。正規部分群と商群 の 商群(定理 5.1)[正規部分群と商群] と 群の準同型定理 の 準同型定理(定理 5.1)[群の準同型定理] が支える「正規部分群で割ると商群ができる」という操作が、体の側では「小さいガロア拡大を取り出す」ことに対応しています。構造を保つ写像を作って核で割るという群論の手続きが、そのまま方程式論の道具になっているわけです。

例 4.3(Q(√2, √3) のガロア対応を全部書き下す)

L=Q(2,3)L = \mathbb{Q}(\sqrt2, \sqrt3) とします。

第 1 段:次数は 4。 まず 3∉Q(2)\sqrt3 \notin \mathbb{Q}(\sqrt2) を示します。3=a+b2\sqrt3 = a + b\sqrt2(a,b∈Qa, b \in \mathbb{Q})と書けたとして両辺を 2 乗すると 3=a2+2b2+2ab23 = a^2 + 2b^2 + 2ab\sqrt2 です。もし ab≠0ab \ne 0 なら 2=(3−a2−2b2)/(2ab)∈Q\sqrt2 = (3 - a^2 - 2b^2)/(2ab) \in \mathbb{Q} となり、2\sqrt2 が無理数であること(平方根 2 の無理性(定理 7.5)[証明の技術])に反します。証明の技術 の背理法の典型例です。よって ab=0ab = 0。b=0b = 0 なら 3=a∈Q\sqrt3 = a \in \mathbb{Q} で矛盾。a=0a = 0 なら 3=2b23 = 2b^2、すなわち (2b)2=6(2b)^2 = 6 で 6∈Q\sqrt6 \in \mathbb{Q} ですが、6=p/q\sqrt6 = p/q(既約分数)とすると p2=6q2p^2 = 6q^2 から 2∣p2 \mid p、p=2p′p = 2p' を代入して 2p′2=3q22p'^2 = 3q^2 から 2∣q2 \mid q となり、既約分数であることに反します。以上より 3∉Q(2)\sqrt3 \notin \mathbb{Q}(\sqrt2) です。

したがって x2−3x^2 - 3 は Q(2)\mathbb{Q}(\sqrt2) 上に根を持たず、2 次式なので既約です。ゆえに [L:Q(2)]=2[L : \mathbb{Q}(\sqrt2)] = 2 で、命題 2.3 より

[L:Q]=[L:Q(2)]⋅[Q(2):Q]=2⋅2=4[L : \mathbb{Q}] = [L : \mathbb{Q}(\sqrt2)] \cdot [\mathbb{Q}(\sqrt2) : \mathbb{Q}] = 2 \cdot 2 = 4

で、1,2,3,61, \sqrt2, \sqrt3, \sqrt6 が Q\mathbb{Q} 上の基底になります。

第 2 段:ガロア拡大であること。 LL は f=(x2−2)(x2−3)=x4−5x2+6f = (x^2-2)(x^2-3) = x^4 - 5x^2 + 6 の Q\mathbb{Q} 上の最小分解体です(根は ±2,±3\pm\sqrt2, \pm\sqrt3 ですべて LL にあり、それらで生成されます)。よって L/QL/\mathbb{Q} はガロア拡大で、定理 4.1(1) より ∣G∣=4|G| = 4 です(G=Gal(L/Q)G = \mathrm{Gal}(L/\mathbb{Q}))。

第 3 段:ガロア群の決定。 σ∈G\sigma \in G は 補題 3.2 より σ(2)=±2\sigma(\sqrt2) = \pm\sqrt2, σ(3)=±3\sigma(\sqrt3) = \pm\sqrt3 を満たし、L=Q(2,3)L = \mathbb{Q}(\sqrt2,\sqrt3) なのでこの 2 つの値で σ\sigma は完全に決まります。候補は 4 通りしかなく、∣G∣=4|G| = 4 なので 4 通りすべてが実現します。

σ:2↦−2, 3↦3,τ:2↦2, 3↦−3\sigma : \sqrt2 \mapsto -\sqrt2,\ \sqrt3 \mapsto \sqrt3, \qquad \tau : \sqrt2 \mapsto \sqrt2,\ \sqrt3 \mapsto -\sqrt3

とおくと G={id,σ,τ,στ}G = \{\mathrm{id}, \sigma, \tau, \sigma\tau\} です。σ2=τ2=id\sigma^2 = \tau^2 = \mathrm{id} で στ=τσ\sigma\tau = \tau\sigma(生成元 2,3\sqrt2, \sqrt3 での値が両辺で一致する)なので、GG はクラインの四元群 Z/2Z×Z/2Z\mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} に同型です。

第 4 段:部分群を数える。 ∣G∣=4|G| = 4 なので、ラグランジュの定理より真の非自明部分群の位数は 2 で、位数 2 の元 1 つで生成されます。位数 2 の元は σ,τ,στ\sigma, \tau, \sigma\tau の 3 つです。よって部分群は

{id},⟨σ⟩,⟨τ⟩,⟨στ⟩,G\{\mathrm{id}\},\quad \langle\sigma\rangle,\quad \langle\tau\rangle,\quad \langle\sigma\tau\rangle,\quad G

のちょうど 5 個です。

第 5 段:固定体を求める。 定理 4.1(3) より [L⟨σ⟩:Q]=[G:⟨σ⟩]=2[L^{\langle\sigma\rangle} : \mathbb{Q}] = [G : \langle\sigma\rangle] = 2 です。一方 σ(3)=3\sigma(\sqrt3) = \sqrt3 なので Q(3)⊆L⟨σ⟩\mathbb{Q}(\sqrt3) \subseteq L^{\langle\sigma\rangle} であり、[Q(3):Q]=2[\mathbb{Q}(\sqrt3):\mathbb{Q}] = 2。同じ次数の体の包含なので L⟨σ⟩=Q(3)L^{\langle\sigma\rangle} = \mathbb{Q}(\sqrt3) です。まったく同様に L⟨τ⟩=Q(2)L^{\langle\tau\rangle} = \mathbb{Q}(\sqrt2)。最後に στ\sigma\tau については

στ(6)=στ(2⋅3)=(−2)⋅(−3)=6\sigma\tau(\sqrt6) = \sigma\tau(\sqrt2 \cdot \sqrt3) = (-\sqrt2)\cdot(-\sqrt3) = \sqrt6

なので Q(6)⊆L⟨στ⟩\mathbb{Q}(\sqrt6) \subseteq L^{\langle\sigma\tau\rangle} となり、同じ次数の議論で L⟨στ⟩=Q(6)L^{\langle\sigma\tau\rangle} = \mathbb{Q}(\sqrt6) です。

結論。 LL の中間体はちょうど

Q,Q(2),Q(3),Q(6),L\mathbb{Q},\quad \mathbb{Q}(\sqrt2),\quad \mathbb{Q}(\sqrt3),\quad \mathbb{Q}(\sqrt6),\quad L

の 5 個で、これ以外にはありません。「中間体を探し尽くした」と言い切れるのは、体だけを眺めていては到底得られない結論です。それが位数 4 の群の部分群を数えるだけで決着しました。

なお GG はアーベル群なのですべての部分群が正規で、定理 4.1(4) よりすべての中間体が Q\mathbb{Q} 上ガロアです。実際 Q(2),Q(3),Q(6)\mathbb{Q}(\sqrt2), \mathbb{Q}(\sqrt3), \mathbb{Q}(\sqrt6) はそれぞれ x2−2,x2−3,x2−6x^2-2, x^2-3, x^2-6 の最小分解体になっています。

Q(√2, √3)/Q のガロア対応。左の中間体の階層と右の部分群の階層が、上下を逆さにしたまま点線で 1 対 1 に対応する。

例 4.4(x³ - 2 の最小分解体とガロア群 S₃)

L=Q(23,ω)L = \mathbb{Q}(\sqrt[3]2, \omega)(ω=e2πi/3\omega = e^{2\pi i/3})とします。これは x3−2x^3 - 2 の Q\mathbb{Q} 上の最小分解体です。実際、3 根 23,ω23,ω223\sqrt[3]2, \omega\sqrt[3]2, \omega^2\sqrt[3]2 はすべて LL に属し、逆にこの 3 根から ω=(ω23)/23\omega = (\omega\sqrt[3]2)/\sqrt[3]2 が作れます。

次数。 例 3.4 より [Q(23):Q]=3[\mathbb{Q}(\sqrt[3]2):\mathbb{Q}] = 3。ω\omega は x2+x+1x^2 + x + 1 の根で、ω∉R⊇Q(23)\omega \notin \mathbb{R} \supseteq \mathbb{Q}(\sqrt[3]2) なのでこの 2 次式は Q(23)\mathbb{Q}(\sqrt[3]2) 上に根を持たず、既約です。よって [L:Q(23)]=2[L : \mathbb{Q}(\sqrt[3]2)] = 2 となり、命題 2.3 より [L:Q]=6[L:\mathbb{Q}] = 6。

ガロア群。 LL は最小分解体なのでガロア拡大で、定理 4.1(1) より ∣G∣=6|G| = 6(G=Gal(L/Q)G = \mathrm{Gal}(L/\mathbb{Q}))。補題 3.2(2) より GG は 3 根の置換群 S3S_3 の部分群と同型で、∣S3∣=6=∣G∣|S_3| = 6 = |G| なので G≅S3G \cong S_3 です。

対応。 S3S_3 の部分群は {e}\{e\}、位数 2 のもの 3 個(各互換が生成)、A3A_3、S3S_3 自身の計 6 個なので、中間体もちょうど 6 個あります。Q(23)\mathbb{Q}(\sqrt[3]2) は次数 3 なので 定理 4.1(3) より対応する部分群 HH は ∣H∣=2|H| = 2。具体的には、複素共役の LL への制限 κ\kappa が 23\sqrt[3]2(実数)を固定し ω23\omega\sqrt[3]2 と ω223\omega^2\sqrt[3]2 を入れ替えるので、H=⟨κ⟩H = \langle\kappa\rangle です。

S3S_3 の位数 2 の部分群は正規ではありません。たとえば (1 2 3)(1 2)(1 2 3)−1=(2 3)≠(1 2)(1\,2\,3)(1\,2)(1\,2\,3)^{-1} = (2\,3) \ne (1\,2) です(共役の公式 π(a b)π−1=(π(a) π(b))\pi(a\ b)\pi^{-1} = (\pi(a)\ \pi(b)) を使いました。補題 6.4 の証明で改めて確認します)。したがって 定理 4.1(4) より Q(23)/Q\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)/\mathbb{Q} はガロア拡大ではないという結論が出ます。例 3.4 で直接計算した事実と一致しました。群の言葉に翻訳してしまえば、正規性を確かめるだけで体の性質が読めるわけです。

一方 A3A_3 は指数 2 なので正規部分群で、対応する中間体は次数 [G:A3]=2[G:A_3] = 2、ω\omega が A3A_3 の元で固定されることから Q(ω)\mathbb{Q}(\omega) です。定理 4.1(4) より

Gal(Q(ω)/Q)≅S3/A3≅Z/2Z\mathrm{Gal}(\mathbb{Q}(\omega)/\mathbb{Q}) \cong S_3/A_3 \cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}

となります。x3−2=0x^3-2=0 を「まず ω\omega(−3\sqrt{-3} を含む 2 次の量)を作り、次に 22 の 3 乗根を取る」と解く古典的手順は、群の側の 2 段階 S3⊇A3⊇{e}S_3 \supseteq A_3 \supseteq \{e\} にそのまま対応しています。

Q(∛2, ω) 次数 6Q(∛2) 次数 3Q(ω∛2) 次数 3Q(ω²∛2) 次数 3Q(ω) 次数 2Q 次数 1単位群 指数 6⟨(2 3)⟩ 指数 3⟨(1 3)⟩ 指数 3⟨(1 2)⟩ 指数 3A₃ 指数 2S₃ 指数 1中間体(上ほど大きい)G の部分群(上ほど小さい)
Q(∛2, ω)/Q のガロア対応。3 根 ∛2, ω∛2, ω²∛2 に 1, 2, 3 と番号を付けた。左の体の次数 [M:Q] と右の群の指数 [G:H] が同じ数になり、体が大きいほど群は小さい。

5. 根号で解けるとはどういうことか

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ここまでで「方程式 → 群」という辞書ができました。次は「根号で解ける」という条件をこの辞書で翻訳します。

定義 5.1(根号拡大の塔・根号で解ける)↗

標数 00 の体 KK の拡大 M/KM/K が根号拡大の塔(累巾根拡大)であるとは、体の列

K=K0⊆K1⊆⋯⊆Km=MK = K_0 \subseteq K_1 \subseteq \cdots \subseteq K_m = M

であって、各 ii について Ki+1=Ki(αi)K_{i+1} = K_i(\alpha_i) かつ αini∈Ki\alpha_i^{n_i} \in K_i となる αi∈Ki+1\alpha_i \in K_{i+1} と正整数 nin_i が存在するもののことをいいます。

f∈K[X]f \in K[X] が KK 上根号で解けるとは、ff の KK 上の最小分解体 LL が、ある根号拡大の塔 MM に含まれることをいいます。

この定義は「根を、係数から四則演算と巾根を有限回使って書き表せる」という日常的な言い回しを、そのまま数学の言葉に直したものです。2 次方程式 ax2+bx+c=0ax^2+bx+c=0 なら K1=K(b2−4ac)K_1 = K(\sqrt{b^2-4ac}) と 1 段登れば根 (−b±b2−4ac)/(2a)(-b \pm \sqrt{b^2-4ac})/(2a) が K1K_1 に入ります。3 次のカルダーノの公式なら、K1=K(−3)K_1 = K(\sqrt{-3})(1 の原始 3 乗根 ω=(−1+−3)/2\omega = (-1+\sqrt{-3})/2 が使えるようになる)、判別式の平方根を添加して K2K_2、3 乗根を添加して K3K_3、という 3 段の塔です。

定義 5.2(可解群)↗

群 GG が可解であるとは、部分群の列

G=G0⊇G1⊇⋯⊇Gr={e}G = G_0 \supseteq G_1 \supseteq \cdots \supseteq G_r = \{e\}

であって、各 ii について Gi+1G_{i+1} が GiG_i の正規部分群であり、かつ商群 Gi/Gi+1G_i/G_{i+1} がアーベル群であるものが存在することをいいます。この列を可解列といいます。各 GiG_i が GG 全体の正規部分群であることまでは要求しません。

アーベル群 GG は G⊇{e}G \supseteq \{e\} という長さ 1 の可解列を持つので可解です。S3S_3 は S3⊇A3⊇{e}S_3 \supseteq A_3 \supseteq \{e\} が可解列(S3/A3≅Z/2ZS_3/A_3 \cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}、A3≅Z/3ZA_3 \cong \mathbb{Z}/3\mathbb{Z} でともにアーベル群)なので可解です。

4 次までは可解群なので解の公式がある、という主張の中身を、S4S_4 で確かめておきます。

例 5.3(S₄ の可解列と「3 次分解方程式」の正体)

V={e,(1 2)(3 4),(1 3)(2 4),(1 4)(2 3)}V = \{e, (1\,2)(3\,4), (1\,3)(2\,4), (1\,4)(2\,3)\} とおきます。

VV は S4S_4 のアーベルな正規部分群。 各元は 2 乗すると ee なので逆元について閉じています。積については、(1 2)(3 4)⋅(1 3)(2 4)(1\,2)(3\,4)\cdot(1\,3)(2\,4) を右から順に施すと 1→3→41 \to 3 \to 4, 2→4→32 \to 4 \to 3, 3→1→23 \to 1 \to 2, 4→2→14 \to 2 \to 1 で (1 4)(2 3)∈V(1\,4)(2\,3) \in V、順序を逆にした (1 3)(2 4)⋅(1 2)(3 4)(1\,3)(2\,4)\cdot(1\,2)(3\,4) は 1→2→41 \to 2 \to 4, 2→1→32 \to 1 \to 3, 3→4→23 \to 4 \to 2, 4→3→14 \to 3 \to 1 でやはり (1 4)(2 3)(1\,4)(2\,3) です。他の組合せも同様で、相異なる 2 元の積は順序によらず残りの 1 元になります。よって VV は位数 4 のアーベル部分群で V≅Z/2Z×Z/2ZV \cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}。正規性は、共役が巡回型を保ち、S4S_4 で「互いに素な 2 つの互換の積」という型を持つ元が上の 3 個で尽きることから従います。

これを使って

S4⊇A4⊇V⊇⟨(1 2)(3 4)⟩⊇{e}S_4 \supseteq A_4 \supseteq V \supseteq \langle (1\,2)(3\,4) \rangle \supseteq \{e\}

が可解列になります。商はそれぞれ Z/2Z\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}(A4A_4 は指数 2 なので正規)、位数 12/4=312/4 = 3 なので Z/3Z\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}、位数 2 なので Z/2Z\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}、そして Z/2Z\mathbb{Z}/2\mathbb{Z} で、すべてアーベル群です。

ここで注目したいのは商群 S4/VS_4/V です。位数は 24/4=624/4 = 6 で、実は S4/V≅S3S_4/V \cong S_3 です(S4S_4 は 4 文字を 2 個ずつに分ける 3 通りの分割に作用し、この作用が全射 S4→S3S_4 \to S_3 を与えて、その核が VV になります)。定理 4.1(4) を 4 次方程式の最小分解体 L/KL/K に適用すると、VV に対応する中間体 M=LVM = L^V は KK 上ガロアで

Gal(M/K)≅S4/V≅S3\mathrm{Gal}(M/K) \cong S_4/V \cong S_3

となります。この MM こそ、フェラーリの解法に現れる3 次分解方程式(レゾルベント)の最小分解体です。歴史的には「うまい補助方程式を思いつく」という技巧に見えたものが、群の言葉では「正規部分群 VV で割る」という一つの操作だったわけです。

この定理で、方程式の問題が群の問題になります。右辺の「可解」は、群を正規部分群で次々に割っていき、毎回アーベル群が残るようにできる、という性質で、根号を 1 つずつ付け加える操作に対応します。

定理 5.4(ガロアの可解性判定)✓

KK を標数 00 の体、f∈K[X]f \in K[X] を定数でない多項式、LL を ff の KK 上の最小分解体、G=Gal(L/K)G = \mathrm{Gal}(L/K) とします。このとき

f が K 上根号で解ける  ⟺  G が可解群であるf \text{ が } K \text{ 上根号で解ける} \iff G \text{ が可解群である}

が成り立ちます。

注意 5.5(判定法の証明の所在と、その機構)

この定理の完全な証明は Appendix に置き、ここでは、なぜ「根号」と「可解列」が対応するのか、その機構を述べておきます。

鍵は、KK が 1 の原始 nn 乗根 ζn\zeta_n を含むとき、αn=a∈K\alpha^n = a \in K となる α\alpha による拡大 K(α)/KK(\alpha)/K はガロア拡大で、そのガロア群は巡回群になるという事実です。a≠0a \ne 0 としてよく、xn−ax^n - a の根 α,ζnα,…,ζnn−1α\alpha, \zeta_n\alpha, \ldots, \zeta_n^{n-1}\alpha はすべて K(α)K(\alpha) に属するので K(α)K(\alpha) は最小分解体、すなわちガロア拡大です。σ∈Gal(K(α)/K)\sigma \in \mathrm{Gal}(K(\alpha)/K) に対し σ(α)n=σ(αn)=σ(a)=a=αn\sigma(\alpha)^n = \sigma(\alpha^n) = \sigma(a) = a = \alpha^n なので (σ(α)/α)n=1(\sigma(\alpha)/\alpha)^n = 1、つまり σ(α)/α\sigma(\alpha)/\alpha は 1 の nn 乗根です。KK が 1 の nn 乗根をすべて含むことから σ↦σ(α)/α\sigma \mapsto \sigma(\alpha)/\alpha は群準同型になり、σ(α)=α\sigma(\alpha) = \alpha なら σ\sigma は K(α)K(\alpha) 上恒等写像なので単射です。1 の nn 乗根全体は巡回群なので、その部分群であるガロア群も巡回群です。

したがって根号の塔の各段は(1 の巾根をあらかじめ添加しておけば)巡回拡大であり、定理 4.1(4) により群の側では「正規部分群で割ると巡回群になる段」に翻訳されます。積み重ねれば可解列です。逆向きは、可解列の各段を巾根の添加として実現します(クンマー理論、本質はヒルベルトの定理 90)。完全な証明は参考文献 [1] 第 4 章、[4] Chapter 14、[5] にあります。

6. アーベル–ルフィニの定理と、根号で解けない具体的な 5 次方程式

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命題 6.1(S₅ は可解群でない)✓

対称群 S5S_5 は可解群ではありません。より一般に、n≥5n \ge 5 ならば SnS_n は可解群ではありません。

証明(命題 6.1)

段階 1:可解群の部分群は可解。 GG を可解群、G=G0⊇⋯⊇Gr={e}G = G_0 \supseteq \cdots \supseteq G_r = \{e\} を可解列、H≤GH \le G を部分群とし、Hi:=H∩GiH_i := H \cap G_i とおきます。H0=HH_0 = H, Hr={e}H_r = \{e\} です。

Hi+1=Hi∩Gi+1H_{i+1} = H_i \cap G_{i+1} が HiH_i の正規部分群であることを見ます。h∈Hih \in H_i, x∈Hi+1x \in H_{i+1} とすると、h,x∈Hh, x \in H より hxh−1∈Hhxh^{-1} \in H であり、また h∈Gih \in G_i, x∈Gi+1x \in G_{i+1} と Gi+1◃GiG_{i+1} \triangleleft G_i より hxh−1∈Gi+1hxh^{-1} \in G_{i+1} です。よって hxh−1∈H∩Gi+1=Hi+1hxh^{-1} \in H \cap G_{i+1} = H_{i+1}。

次に、包含写像 Hi↪GiH_i \hookrightarrow G_i と自然な射影 Gi→Gi/Gi+1G_i \to G_i/G_{i+1} を合成した準同型 ψ:Hi→Gi/Gi+1\psi : H_i \to G_i/G_{i+1} を考えます。その核は {h∈Hi∣h∈Gi+1}=Hi∩Gi+1=Hi+1\{h \in H_i \mid h \in G_{i+1}\} = H_i \cap G_{i+1} = H_{i+1} です。準同型定理(群の準同型定理)より

Hi/Hi+1≅Im ψ≤Gi/Gi+1H_i/H_{i+1} \cong \mathrm{Im}\,\psi \le G_i/G_{i+1}

で、アーベル群の部分群はアーベル群なので Hi/Hi+1H_i/H_{i+1} はアーベル群です。よって H=H0⊇⋯⊇Hr={e}H = H_0 \supseteq \cdots \supseteq H_r = \{e\} は HH の可解列であり、HH は可解です。

段階 2:A5A_5 は非可換。 A5A_5 は 3 次巡回置換 (1 2 3)(1\,2\,3), (1 2 4)(1\,2\,4) を含みます(3 次巡回置換は 2 個の互換の積なので偶置換です)。右から順に施す規約で計算すると

(1 2 3)(1 2 4)=(1 3)(2 4),(1 2 4)(1 2 3)=(1 4)(2 3)(1\,2\,3)(1\,2\,4) = (1\,3)(2\,4), \qquad (1\,2\,4)(1\,2\,3) = (1\,4)(2\,3)

です。実際、前者は 1→2→31 \to 2 \to 3, 2→4→42 \to 4 \to 4, 4→1→24 \to 1 \to 2, 3→3→13 \to 3 \to 1 より (1 3)(2 4)(1\,3)(2\,4)、後者は 1→2→41 \to 2 \to 4, 2→3→32 \to 3 \to 3, 3→1→23 \to 1 \to 2, 4→4→14 \to 4 \to 1 より (1 4)(2 3)(1\,4)(2\,3) です。11 の行き先が 33 と 44 で異なるので両者は一致せず、A5A_5 はアーベル群ではありません。

段階 3:A5A_5 は可解でない。 ここでは「A5A_5 は単純群である(位数 60 で、正規部分群は {e}\{e\} と A5A_5 のみ)」という群論の標準的な定理を使います(証明は参考文献 [1] [4])。

A5A_5 が可解だと仮定し、可解列 A5=H0⊇H1⊇⋯⊇Hr={e}A_5 = H_0 \supseteq H_1 \supseteq \cdots \supseteq H_r = \{e\} を取ります。Hr={e}≠A5H_r = \{e\} \ne A_5 なので、Hj≠A5H_j \ne A_5 となる最小の添字 j≥1j \ge 1 が存在します。最小性より Hj−1=A5H_{j-1} = A_5 で、可解列の条件から HjH_j は Hj−1=A5H_{j-1} = A_5 の正規部分群です。A5A_5 は単純で Hj≠A5H_j \ne A_5 なので Hj={e}H_j = \{e\} となります。すると

Hj−1/Hj=A5/{e}≅A5H_{j-1}/H_j = A_5/\{e\} \cong A_5

がアーベル群でなければなりませんが、これは段階 2 に反します。よって A5A_5 は可解ではありません。

段階 4:結論。 A5≤S5A_5 \le S_5 であり A5A_5 は可解でないので、段階 1 の対偶により S5S_5 は可解ではありません。n≥5n \ge 5 のときは、{1,…,5}\{1,\ldots,5\} の偶置換で 6,…,n6, \ldots, n を動かさないもの全体が SnS_n の部分群として A5A_5 と同型なので、同じく段階 1 の対偶より SnS_n も可解ではありません。

定理 6.2(アーベル–ルフィニの定理)✓

kk を標数 00 の体、t1,…,tnt_1, \ldots, t_n を kk 上代数的独立な不定元とし、K=k(t1,…,tn)K = k(t_1, \ldots, t_n)、

f(X)=Xn+t1Xn−1+t2Xn−2+⋯+tn∈K[X]f(X) = X^n + t_1 X^{n-1} + t_2 X^{n-2} + \cdots + t_n \in K[X]

とおきます(一般 nn 次方程式)。このとき ff の KK 上のガロア群は SnS_n に同型です。したがって n≥5n \ge 5 ならば、ff は KK 上根号で解けません。

言い換えると、n≥5n \ge 5 のとき、nn 次方程式の根を係数から四則演算と巾根だけを有限回用いて表す一般的な「解の公式」は存在しません。

注意 6.3(アーベル–ルフィニの定理の証明について)

証明は Appendix に置きます。骨格だけ述べると、(i) 一般方程式のガロア群が SnS_n になることは、基本対称式が代数的独立であることとアルティンの定理(補題 7.7)から従い、(ii) n≥5n \ge 5 のとき SnS_n が可解でないことは 命題 6.1、(iii) 両者を 定理 5.4 に代入すれば結論が出ます。参考文献 [1] [4] [5] を参照してください。歴史的には、ルフィニ(1799)とアーベル(1824)の証明はガロア理論の成立以前のもので、ラグランジュの分解式の議論を精密化したものです。

一般方程式は「文字を係数とする方程式」なので、「Q\mathbb{Q} 係数の具体的な 5 次方程式で根号で解けないものはあるのか」という疑問が残ります。あります。準備として群論の補題を 1 つ用意します。

次の補題は、次の命題で「ガロア群が S5S_5 全体になる」ことを言うための道具です。ガロア群が 5 個の文字を 1 周させる置換と 2 個の文字を入れ替える置換の両方を含むとき、どんな並べ替えも作れてしまう、という主張です。証明の方針は、互換を巡回置換で次々に「ずらして」隣り合う文字の互換をすべて作り、それらから任意の置換を組み立てる、というものです。

補題 6.4(p 次巡回置換と互換は Sp を生成する)✓

pp を素数とします。部分群 G≤SpG \le S_p が、ある pp 次巡回置換と、ある互換をともに含むならば、G=SpG = S_p です。

証明(補題 6.4)

はじめに、任意の π∈Sp\pi \in S_p と互換 (a b)(a\ b) について

π (a b) π−1=(π(a)  π(b))\pi\,(a\ b)\,\pi^{-1} = (\pi(a)\ \ \pi(b))

が成り立つことを確かめます。左辺を π(a)\pi(a) に施すと π(a)→a→b→π(b)\pi(a) \to a \to b \to \pi(b)、π(b)\pi(b) に施すと π(b)→b→a→π(a)\pi(b) \to b \to a \to \pi(a)、それ以外の点 π(x)\pi(x)(x≠a,bx \ne a, b)に施すと π(x)→x→x→π(x)\pi(x) \to x \to x \to \pi(x) となり、右辺と一致します。

σ∈G\sigma \in G を pp 次巡回置換、τ=(a b)∈G\tau = (a\ b) \in G を互換とします。

段階 1:aa を bb に移す pp 次巡回置換が GG にある。 σ\sigma は pp 文字を 1 つの輪に並べるので、⟨σ⟩\langle\sigma\rangle は {1,…,p}\{1,\ldots,p\} に推移的に作用します。よって σk(a)=b\sigma^k(a) = b となる k∈{1,…,p−1}k \in \{1, \ldots, p-1\} が存在します。σ\sigma の位数は pp で pp は素数なので σk\sigma^k の位数も pp です。ここで、SpS_p の位数 pp の元は pp 次巡回置換に限ります。なぜなら、置換の位数は互いに素な巡回置換に分解したときの長さの最小公倍数であり、それが素数 pp になるには長さ pp の輪が必要で、pp 文字しかないのでその輪 1 つだけになるからです。そこで c:=σk∈Gc := \sigma^k \in G とおくと、cc は pp 次巡回置換で c(a)=bc(a) = b です。

段階 2:番号の付け替え。 cc を aa から書き始めて c=(a  b  c(b)  c2(b) ⋯ )c = (a\ \ b\ \ c(b)\ \ c^2(b)\ \cdots) と表し、この順に文字を 1,2,3,…,p1, 2, 3, \ldots, p と付け替えます。この付け替えを与える置換を π∈Sp\pi \in S_p とすると、πGπ−1\pi G \pi^{-1} は πτπ−1=(1 2)\pi\tau\pi^{-1} = (1\ 2) と πcπ−1=(1 2 3⋯p)\pi c \pi^{-1} = (1\,2\,3\cdots p) を含みます。G=SpG = S_p であることと πGπ−1=Sp\pi G \pi^{-1} = S_p であることは同値なので、はじめから τ=(1 2)\tau = (1\ 2), c=(1 2 3⋯p)c = (1\,2\,3\cdots p) としてよいことになります。

段階 3:隣接互換をすべて作る。 c(j)=j+1c(j) = j+1(j<pj < p)、c(p)=1c(p) = 1 なので、冒頭の共役の公式から i=0,1,…,p−2i = 0, 1, \ldots, p-2 に対し

c i (1 2) c−i=(c i(1)  c i(2))=( i+1   i+2 )c^{\,i}\,(1\ 2)\,c^{-i} = (c^{\,i}(1)\ \ c^{\,i}(2)) = (\,i+1\ \ \ i+2\,)

となり、隣接互換 (1 2),(2 3),…,(p−1  p)(1\ 2), (2\ 3), \ldots, (p-1\ \ p) がすべて GG に属します。

段階 4:隣接互換は SpS_p を生成する。 まず任意の互換 (i j)(i\ j)(i<ji < j)が隣接互換の積で書けることを j−ij - i についての帰納法で示します。j−i=1j - i = 1 なら隣接互換そのものです。j−i≥2j - i \ge 2 のときは i<j−1<ji < j-1 < j なので、共役の公式から

(j−1  j) (i  j−1) (j−1  j)−1=(i  j)(j-1\ \ j)\,(i\ \ j-1)\,(j-1\ \ j)^{-1} = (i\ \ j)

が成り立ち、(i  j−1)(i\ \ j-1) は帰納法の仮定より隣接互換の積なので (i j)(i\ j) もそうです。次に、任意の巡回置換は

(a1 a2⋯am)=(a1 am)(a1 am−1)⋯(a1 a2)(a_1\,a_2\cdots a_m) = (a_1\ a_m)(a_1\ a_{m-1})\cdots(a_1\ a_2)

と互換の積に分解でき(右から順に施すと a1→a2a_1 \to a_2、ai→a1→ai+1a_i \to a_1 \to a_{i+1}、am→a1a_m \to a_1 となって左辺と一致します)、任意の置換は互いに素な巡回置換の積です。よってすべての置換は互換の積、したがって隣接互換の積として書けます。

以上より G⊇SpG \supseteq S_p、すなわち G=SpG = S_p です。

証明は 3 つの材料を順に集めます。多項式が既約であること、実根がちょうど 3 個あること、複素共役という自己同型があることです。既約性からは 5 次巡回置換が、実根の個数と複素共役からは互換が得られ、直前の補題で S5S_5 全体になります。

命題 6.5(x⁵ - 4x + 2 のガロア群は S₅)✓

f(X)=X5−4X+2∈Q[X]f(X) = X^5 - 4X + 2 \in \mathbb{Q}[X] の Q\mathbb{Q} 上のガロア群は S5S_5 に同型です。

証明(命題 6.5)

段階 1:既約性。 係数を (a5,a4,a3,a2,a1,a0)=(1,0,0,0,−4,2)(a_5, a_4, a_3, a_2, a_1, a_0) = (1, 0, 0, 0, -4, 2) と書きます。素数 p=2p = 2 について 2∤12 \nmid 1、2∣0,0,0,−4,22 \mid 0, 0, 0, -4, 2、4∤24 \nmid 2 が成り立つので、アイゼンシュタインの判定法(定理 4.1)[多項式環と体の拡大] より ff は Q[X]\mathbb{Q}[X] で既約です。

段階 2:実根はちょうど 3 個。 まず整数点での値を計算します。

f(−2)=−32+8+2=−22,f(−1)=−1+4+2=5,f(0)=2,f(1)=1−4+2=−1,f(2)=32−8+2=26.f(-2) = -32 + 8 + 2 = -22, \quad f(-1) = -1 + 4 + 2 = 5, \quad f(0) = 2, \quad f(1) = 1 - 4 + 2 = -1, \quad f(2) = 32 - 8 + 2 = 26 .

符号が −,+,+,−,+-, +, +, -, + と変化するので、中間値の定理より (−2,−1)(-2,-1), (0,1)(0,1), (1,2)(1,2) の各区間に少なくとも 1 個ずつ、合計 3 個以上の実根があります。

次に上からの評価です。f′(X)=5X4−4f'(X) = 5X^4 - 4 の実零点は X=±(4/5)1/4X = \pm(4/5)^{1/4} のちょうど 2 個です。ff は既約なので 分離性の判定(命題 6.11)[多項式環と体の拡大] より重根を持たず、実根はすべて単純です。もし ff が相異なる実根を 4 個以上持てば、隣り合う 2 根の間にロルの定理を適用して f′f' の相異なる実零点が 3 個以上得られ、矛盾します。よって実根はちょうど 3 個です。

deg⁡f=5\deg f = 5 で、実係数多項式の非実根は共役の対で現れるので、残りの 2 根は互いに複素共役な非実根です。

段階 3:ガロア群を S5S_5 の部分群と見る。 L⊂CL \subset \mathbb{C} を ff の Q\mathbb{Q} 上の最小分解体、G=Gal(L/Q)G = \mathrm{Gal}(L/\mathbb{Q}) とします。ff の 5 根は相異なり(段階 2)、LL はそれらで生成されるので、補題 3.2(2) により GG は S5S_5 の部分群と同一視できます。

段階 4:GG は 5 次巡回置換を含む。 α∈L\alpha \in L を ff の根の 1 つとします。段階 1 より ff は既約なので α\alpha の最小多項式は ff 自身であり、代数的な元による単拡大(命題 6.2)[多項式環と体の拡大] より [Q(α):Q]=5[\mathbb{Q}(\alpha):\mathbb{Q}] = 5 です。塔 Q⊆Q(α)⊆L\mathbb{Q} \subseteq \mathbb{Q}(\alpha) \subseteq L に 命題 2.3 を適用すると 5∣[L:Q]5 \mid [L:\mathbb{Q}] であり、L/QL/\mathbb{Q} はガロア拡大なので 定理 4.1(1) より [L:Q]=∣G∣[L:\mathbb{Q}] = |G|、したがって 5∣∣G∣5 \mid |G| です。

コーシーの定理(有限群の位数が素数 pp で割り切れるならば、その群は位数 pp の元を持つ。系 4.3[群の作用と Sylow の定理])より、GG は位数 5 の元を持ちます。補題 6.4 の段階 1 で見たとおり、S5S_5 の位数 5 の元は 5 次巡回置換に限ります。

段階 5:GG は互換を含む。 複素共役 κ:C→C\kappa : \mathbb{C} \to \mathbb{C}, z↦zˉz \mapsto \bar z は体の自己同型で Q\mathbb{Q} を固定します。ff は実係数なので κ\kappa は ff の根の集合を保ち、LL は Q\mathbb{Q} と根たちで生成されるので κ(L)=L\kappa(L) = L です。よって制限 κ∣L\kappa|_L は GG の元です。段階 2 より κ∣L\kappa|_L は 3 個の実根を固定し、2 個の非実根を入れ替えるので、S5S_5 の中ではちょうど 1 個の互換です。

段階 6:結論。 GG は 5 次巡回置換と互換をともに含む S5S_5 の部分群なので、補題 6.4(p=5p = 5 は素数)より G=S5G = S_5 です。ついでに [L:Q]=∣S5∣=120[L:\mathbb{Q}] = |S_5| = 120 も分かります。

-11-224xy-1.51850.50851.2436極大 約 5.03極小 約 -1.03
y = x⁵ - 4x + 2 のグラフ。極大値 (約 5.03) が正、極小値 (約 -1.03) が負なので、x 軸との交点はちょうど 3 個。残る 2 根は互いに共役な虚根になり、複素共役が 1 個の互換を与える。

系 6.6(根号で解けない具体的な 5 次方程式)✓

f(X)=X5−4X+2f(X) = X^5 - 4X + 2 は Q\mathbb{Q} 上根号で解けません。すなわち、ff の Q\mathbb{Q} 上の最小分解体はどんな根号拡大の塔にも含まれません。さらに、ff の 5 個の複素根はどれ 1 つとして、有理数から出発して四則演算と巾根を有限回組み合わせた式では表せません。

証明(系 6.6)

命題 6.5 より ff の Q\mathbb{Q} 上のガロア群は S5S_5 に同型です。命題 6.1 より S5S_5 は可解群ではありません。よって 定理 5.4(K=QK = \mathbb{Q} は標数 00)の対偶により、ff は Q\mathbb{Q} 上根号で解けません。これが前半です。

後半を導きます。ff の根 α\alpha の 1 つが有理数から四則と巾根で書けたとすると、定義 5.1 の意味の根号拡大の塔 M/QM/\mathbb{Q} で α∈M\alpha \in M となるものが存在します。ここで「根号拡大の塔のガロア閉包は、ふたたび根号拡大の塔である」という標準的な補題(参考文献 [1] 第 4 章、[4] Chapter 14)を使うと、MM を含む根号拡大の塔 NN で N/QN/\mathbb{Q} がガロア拡大となるものが取れます。ff は既約(命題 6.5 の証明の段階 1)でモニックなので α\alpha の最小多項式です。ここで α\alpha の Gal(N/Q)\mathrm{Gal}(N/\mathbb{Q}) による像全体を β1,…,βs\beta_1, \ldots, \beta_s(相異なるものを並べる)とし、h(X)=(X−β1)⋯(X−βs)h(X) = (X-\beta_1)\cdots(X-\beta_s) とおきます。Gal(N/Q)\mathrm{Gal}(N/\mathbb{Q}) の元はこの像の集合を置換するので hh の係数はすべて固定され、定理 4.1(1) の NGal(N/Q)=QN^{\mathrm{Gal}(N/\mathbb{Q})} = \mathbb{Q} より h∈Q[X]h \in \mathbb{Q}[X] です。h(α)=0h(\alpha) = 0 と最小性から f∣hf \mid h、一方 補題 3.2 より各 βi\beta_i は ff の根なので h∣fh \mid f。ゆえに f=hf = h となり、ff は NN の中で完全に分解します。すると ff の最小分解体が NN に含まれることになり、ff が根号で解けることになって前半に矛盾します。

注意 6.7(「解けない」の意味を取り違えないために)

系 6.6 は「根が存在しない」とは言っていません。代数学の基本定理により ff は C\mathbb{C} の中に重複を込めてちょうど 5 個の根を持ち、実根はニュートン法などで好きな精度まで計算できます(−1.5185…, 0.5085…, 1.2436…-1.5185\ldots,\ 0.5085\ldots,\ 1.2436\ldots)。存在しないのは「有理数・四則・巾根」という限られた語彙で書かれた表示のほうです。語彙を広げれば表示は得られ、エルミートは 1858 年に、一般の 5 次方程式の根が楕円モジュラー関数で表せることを示しました。

また「5 次方程式は解けない」という言い方も不正確です。たとえば X5−2X^5 - 2 の最小分解体は Q(25,ζ5)\mathbb{Q}(\sqrt[5]2, \zeta_5) で次数 20、ガロア群は位数 20 の可解群(Z/5Z\mathbb{Z}/5\mathbb{Z} を正規部分群に持ち商が Z/4Z\mathbb{Z}/4\mathbb{Z})なので、定理 5.4 より根号で解けます——見てのとおり 25\sqrt[5]{2} と 1 の 5 乗根で書けています。決めているのは次数そのものではなく、ガロア群の形です。

次数ごとの状況をまとめると、次のようになります。

次数 nn一般 nn 次方程式のガロア群可解列根号による解の公式
2S2≅Z/2ZS_2 \cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}S2⊇{e}S_2 \supseteq \{e\}平方完成(古代から)
3S3S_3S3⊇A3⊇{e}S_3 \supseteq A_3 \supseteq \{e\}カルダーノ(1545)
4S4S_4S4⊇A4⊇V⊇⟨(1 2)(3 4)⟩⊇{e}S_4 \supseteq A_4 \supseteq V \supseteq \langle(1\,2)(3\,4)\rangle \supseteq \{e\}フェラーリ(16 世紀)
≥5\ge 5SnS_n存在しない(命題 6.1)存在しない

演習 7.1易

L=Q(2,3)L = \mathbb{Q}(\sqrt2, \sqrt3)、γ=2+3\gamma = \sqrt2 + \sqrt3 とします。Q(γ)=L\mathbb{Q}(\gamma) = L を示してください。

解答

γ2=2+3+26=5+26\gamma^2 = 2 + 3 + 2\sqrt6 = 5 + 2\sqrt6 なので

6=γ2−52∈Q(γ).\sqrt6 = \frac{\gamma^2 - 5}{2} \in \mathbb{Q}(\gamma) .

したがって γ6=(2+3)6=12+18=23+32\gamma\sqrt6 = (\sqrt2+\sqrt3)\sqrt6 = \sqrt{12} + \sqrt{18} = 2\sqrt3 + 3\sqrt2 も Q(γ)\mathbb{Q}(\gamma) の元です。一方 3γ=32+333\gamma = 3\sqrt2 + 3\sqrt3 なので、差を取ると

3γ−γ6=(32+33)−(32+23)=33\gamma - \gamma\sqrt6 = (3\sqrt2 + 3\sqrt3) - (3\sqrt2 + 2\sqrt3) = \sqrt3

となり 3∈Q(γ)\sqrt3 \in \mathbb{Q}(\gamma)、続いて 2=γ−3∈Q(γ)\sqrt2 = \gamma - \sqrt3 \in \mathbb{Q}(\gamma) です。よって L=Q(2,3)⊆Q(γ)L = \mathbb{Q}(\sqrt2,\sqrt3) \subseteq \mathbb{Q}(\gamma)。逆の包含 Q(γ)⊆L\mathbb{Q}(\gamma) \subseteq L は γ∈L\gamma \in L から明らかなので Q(γ)=L\mathbb{Q}(\gamma) = L です。とくに 例 4.3 より [Q(γ):Q]=4[\mathbb{Q}(\gamma):\mathbb{Q}] = 4 で、γ\gamma の最小多項式は 44 次です(γ2−5=26\gamma^2 - 5 = 2\sqrt6 の両辺を 2 乗すると γ4−10γ2+1=0\gamma^4 - 10\gamma^2 + 1 = 0 なので、それは x4−10x2+1x^4 - 10x^2 + 1 です)。

演習 7.2標準

f=X4−2∈Q[X]f = X^4 - 2 \in \mathbb{Q}[X] の Q\mathbb{Q} 上の最小分解体 LL について [L:Q][L:\mathbb{Q}] を求め、ガロア群 G=Gal(L/Q)G = \mathrm{Gal}(L/\mathbb{Q}) の位数と同型類を決定してください。さらに GG が可解群であることを、可解列を書いて確かめてください。

解答

最小分解体。 X4−2X^4 - 2 の C\mathbb{C} における根は ±β,±iβ\pm\beta, \pm i\beta(β=24\beta = \sqrt[4]2 は正の実 4 乗根)です。これらすべてを含む最小の体は L=Q(β,i)L = \mathbb{Q}(\beta, i) です(i=(iβ)/βi = (i\beta)/\beta で作れます)。

次数。 X4−2X^4 - 2 は アイゼンシュタインの判定法(定理 4.1)[多項式環と体の拡大](p=2p = 2:係数 1,0,0,0,−21,0,0,0,-2 について 2∤12 \nmid 1, 2∣0,0,0,−22 \mid 0,0,0,-2, 4∤−24 \nmid -2)より既約なので、代数的な元による単拡大(命題 6.2)[多項式環と体の拡大] より [Q(β):Q]=4[\mathbb{Q}(\beta):\mathbb{Q}] = 4 です。Q(β)⊂R\mathbb{Q}(\beta) \subset \mathbb{R} なので i∉Q(β)i \notin \mathbb{Q}(\beta) であり、X2+1X^2+1 は Q(β)\mathbb{Q}(\beta) 上に根を持たない 2 次式なので既約、よって [L:Q(β)]=2[L : \mathbb{Q}(\beta)] = 2。命題 2.3 より

[L:Q]=2⋅4=8.[L:\mathbb{Q}] = 2 \cdot 4 = 8 .

LL は最小分解体なのでガロア拡大であり、定理 4.1(1) より ∣G∣=8|G| = 8 です。

群の同定。 GG の元は β\beta と ii の行き先で決まり、補題 3.2 より β\beta の行き先は 4 個の根、ii の行き先は X2+1X^2+1 の 2 根に限られるので候補は高々 8 通り、∣G∣=8|G| = 8 なのですべてが実現します。ρ(β)=iβ\rho(\beta) = i\beta, ρ(i)=i\rho(i) = i で定まる ρ∈G\rho \in G と、複素共役の制限 κ\kappa(κ(β)=β\kappa(\beta) = \beta, κ(i)=−i\kappa(i) = -i)を取ると、ρk(β)=ikβ\rho^k(\beta) = i^k\beta より ρ\rho の位数は 4、κ\kappa の位数は 2 です。さらに κρκ(β)=κ(iβ)=−iβ\kappa\rho\kappa(\beta) = \kappa(i\beta) = -i\beta、κρκ(i)=i\kappa\rho\kappa(i) = i であり、一方 ρ(−iβ)=(−i)(iβ)=β\rho(-i\beta) = (-i)(i\beta) = \beta より ρ−1(β)=−iβ\rho^{-1}(\beta) = -i\beta、ρ−1(i)=i\rho^{-1}(i) = i なので、生成元での値が一致して κρκ−1=ρ−1\kappa\rho\kappa^{-1} = \rho^{-1} です。この関係式より ⟨ρ,κ⟩\langle\rho,\kappa\rangle の元はすべて ρaκb\rho^a\kappa^b(0≤a≤30 \le a \le 3, 0≤b≤10 \le b \le 1)の形に書けて位数は高々 8、κ∉⟨ρ⟩\kappa \notin \langle\rho\rangle(⟨ρ⟩\langle\rho\rangle の元は ii を固定する)なので 8 個は相異なり、G=⟨ρ,κ⟩G = \langle\rho,\kappa\rangle は位数 8 の二面体群 D4D_4 に同型です。ρ\rho は 4 根を正方形の頂点と見たときの 90 度回転、κ\kappa は実軸に関する折り返しにあたります。

可解列。

G⊇⟨ρ⟩⊇⟨ρ2⟩⊇{e}G \supseteq \langle\rho\rangle \supseteq \langle\rho^2\rangle \supseteq \{e\}

とします。⟨ρ⟩\langle\rho\rangle は指数 2 なので GG の正規部分群で、G/⟨ρ⟩G/\langle\rho\rangle は位数 2 の群、すなわち Z/2Z\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}。⟨ρ2⟩\langle\rho^2\rangle は巡回群(したがってアーベル群)⟨ρ⟩\langle\rho\rangle の部分群なので正規で、商は位数 2 の Z/2Z\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}。最下段の商は ⟨ρ2⟩≅Z/2Z\langle\rho^2\rangle \cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}。すべての商がアーベル群なので GG は可解です。定理 5.4 と整合して、実際 X4−2X^4-2 の根は 24\sqrt[4]2 と −1\sqrt{-1} という巾根だけで書けています。

演習 7.3難

ζ=e2πi/7\zeta = e^{2\pi i/7}、L=Q(ζ)L = \mathbb{Q}(\zeta) とします。[L:Q]=6[L:\mathbb{Q}] = 6 であり、σa(ζ)=ζa\sigma_a(\zeta) = \zeta^a による同型 Gal(L/Q)≅(Z/7Z)×≅Z/6Z\mathrm{Gal}(L/\mathbb{Q}) \cong (\mathbb{Z}/7\mathbb{Z})^\times \cong \mathbb{Z}/6\mathbb{Z} があることは認めてよいものとします。

(1) LL の中間体が全部で何個あるかを答え、それぞれの Q\mathbb{Q} 上の次数を求めてください。 (2) 次数 2 の中間体を具体的に決定してください。

解答

(1) G≅Z/6ZG \cong \mathbb{Z}/6\mathbb{Z} は巡回群なので、位数 6 の各約数 d∈{1,2,3,6}d \in \{1,2,3,6\} に対して位数 dd の部分群がちょうど 1 個ずつ、合計 4 個の部分群を持ちます。定理 4.1(2) より中間体もちょうど 4 個です。定理 4.1(3) より位数 dd の部分群 HH に対応する中間体の次数は [G:H]=6/d[G:H] = 6/d なので、中間体の次数は 1,2,3,61, 2, 3, 6、すなわち Q\mathbb{Q}、次数 2 の体、次数 3 の体、LL 自身です。

(2) (Z/7Z)×(\mathbb{Z}/7\mathbb{Z})^\times は 33 を生成元とする巡回群です(31=3, 32=2, 33=6, 34=4, 35=5, 36=13^1=3,\ 3^2=2,\ 3^3=6,\ 3^4=4,\ 3^5=5,\ 3^6=1)。位数 3 の部分群は ⟨2⟩={1,2,4}\langle 2 \rangle = \{1, 2, 4\} で、対応する H={σ1,σ2,σ4}H = \{\sigma_1,\sigma_2,\sigma_4\}(σ1=id\sigma_1 = \mathrm{id})の固定体 LHL^H が、求める次数 [G:H]=2[G:H] = 2 の体です。

そこでガウス周期

η0=ζ+ζ2+ζ4,η1=ζ3+ζ6+ζ5\eta_0 = \zeta + \zeta^2 + \zeta^4, \qquad \eta_1 = \zeta^3 + \zeta^6 + \zeta^5

を考えます。ζ7=1\zeta^7 = 1 より σ2(η0)=ζ2+ζ4+ζ8=η0\sigma_2(\eta_0) = \zeta^2 + \zeta^4 + \zeta^8 = \eta_0、σ4(η0)=ζ4+ζ8+ζ16=η0\sigma_4(\eta_0) = \zeta^4+\zeta^8+\zeta^{16} = \eta_0 なので η0∈LH\eta_0 \in L^H です。基本対称式を計算します。1+ζ+⋯+ζ6=01 + \zeta + \cdots + \zeta^6 = 0(ζ\zeta は x7−1=(x−1)(x6+⋯+1)x^7-1 = (x-1)(x^6+\cdots+1) の根で ζ≠1\zeta \ne 1)より

η0+η1=ζ+ζ2+ζ3+ζ4+ζ5+ζ6=−1.\eta_0 + \eta_1 = \zeta+\zeta^2+\zeta^3+\zeta^4+\zeta^5+\zeta^6 = -1 .

積は、指数の和を 77 で割った余りに直して数えます。i=1i = 1 の行は 1+3=4, 1+5=6, 1+6=7≡01+3=4,\ 1+5=6,\ 1+6=7\equiv 0、i=2i = 2 の行は 5, 0, 15,\ 0,\ 1、i=4i = 4 の行は 0, 2, 30,\ 2,\ 3 なので

η0η1=∑i∈{1,2,4}∑j∈{3,5,6}ζi+j=(ζ4+ζ6+1)+(ζ5+1+ζ)+(1+ζ2+ζ3)=3+(−1)=2.\eta_0\eta_1 = \sum_{i \in \{1,2,4\}} \sum_{j \in \{3,5,6\}} \zeta^{i+j} = (\zeta^4 + \zeta^6 + 1) + (\zeta^5 + 1 + \zeta) + (1 + \zeta^2 + \zeta^3) = 3 + (-1) = 2 .

よって η0,η1\eta_0, \eta_1 は t2+t+2=0t^2 + t + 2 = 0 の 2 根であり、

η0=−1+−72または−1−−72\eta_0 = \frac{-1 + \sqrt{-7}}{2} \quad \text{または} \quad \frac{-1 - \sqrt{-7}}{2}

です(η0\eta_0 の虚部 sin⁡(2π/7)+sin⁡(4π/7)+sin⁡(8π/7)\sin(2\pi/7)+\sin(4\pi/7)+\sin(8\pi/7) は正なので実際には前者ですが、どちらでも生成する体は同じです)。したがって Q(η0)=Q(−7)\mathbb{Q}(\eta_0) = \mathbb{Q}(\sqrt{-7}) で、これは Q\mathbb{Q} 上次数 2 です(−7-7 は有理数の平方ではありません)。Q(η0)⊆LH\mathbb{Q}(\eta_0) \subseteq L^H と [LH:Q]=2[L^H:\mathbb{Q}] = 2 から

LH=Q(−7)L^H = \mathbb{Q}(\sqrt{-7})

と決まります。残る次数 3 の中間体は、位数 2 の部分群 ⟨σ6⟩\langle\sigma_6\rangle(σ6\sigma_6 は複素共役)の固定体、すなわち実部分体 Q(ζ+ζ−1)=Q(2cos⁡(2π/7))\mathbb{Q}(\zeta + \zeta^{-1}) = \mathbb{Q}(2\cos(2\pi/7)) です。

演習 7.4難

g(X)=X5−6X+3∈Q[X]g(X) = X^5 - 6X + 3 \in \mathbb{Q}[X] のガロア群が S5S_5 に同型であることを示し、g(X)=0g(X) = 0 の根が根号では表せないことを結論してください。

解答

命題 6.5 の証明をそのままなぞります。

既約性。 係数は (1,0,0,0,−6,3)(1, 0, 0, 0, -6, 3) です。素数 p=3p = 3 について 3∤13 \nmid 1、3∣0,0,0,−6,33 \mid 0, 0, 0, -6, 3、9∤39 \nmid 3 が成り立つので、アイゼンシュタインの判定法(定理 4.1)[多項式環と体の拡大] より gg は Q[X]\mathbb{Q}[X] で既約です。

実根はちょうど 3 個。

g(−2)=−32+12+3=−17,g(−1)=−1+6+3=8,g(0)=3,g(1)=1−6+3=−2,g(2)=32−12+3=23g(-2) = -32 + 12 + 3 = -17, \quad g(-1) = -1+6+3 = 8, \quad g(0) = 3, \quad g(1) = 1 - 6 + 3 = -2, \quad g(2) = 32 - 12 + 3 = 23

より、中間値の定理から (−2,−1)(-2,-1), (0,1)(0,1), (1,2)(1,2) に少なくとも 1 個ずつ実根があります。一方 g′(X)=5X4−6g'(X) = 5X^4 - 6 の実零点は ±(6/5)1/4\pm(6/5)^{1/4} の 2 個だけです。gg は既約なので 分離性の判定(命題 6.11)[多項式環と体の拡大] より重根を持たず、相異なる実根が 4 個以上あればロルの定理から g′g' の相異なる実零点が 3 個以上になって矛盾します。よって実根はちょうど 3 個で、残る 2 根は互いに複素共役な非実根です。

ガロア群。 L⊂CL \subset \mathbb{C} を最小分解体、G=Gal(L/Q)G = \mathrm{Gal}(L/\mathbb{Q}) とすると、補題 3.2(2) より G≤S5G \le S_5 とみなせます。根 α\alpha について [Q(α):Q]=5[\mathbb{Q}(\alpha):\mathbb{Q}] = 5(既約性と 代数的な元による単拡大(命題 6.2)[多項式環と体の拡大])なので、命題 2.3 と 定理 4.1(1) より 5∣∣G∣5 \mid |G| です。コーシーの定理(系 4.3[群の作用と Sylow の定理])より GG は位数 5 の元、すなわち 5 次巡回置換を含みます。また複素共役の LL への制限は GG の元で、3 個の実根を固定し 2 個の非実根を入れ替えるので互換です。補題 6.4(p=5p = 5)より G=S5G = S_5。

結論。 命題 6.1 より S5S_5 は可解でないので、定理 5.4 の対偶より gg は Q\mathbb{Q} 上根号で解けません。系 6.6 の後半と同じ議論により、gg のどの根も有理数から四則と巾根では表せません。同じ議論は、5 次のアイゼンシュタイン多項式で実根がちょうど 3 個になるものすべてに使えます。「根号で解けない 5 次方程式」は例外ではなく、いくらでも作れるのです。

  1. 雪江明彦『代数学2 環と体とガロア理論』日本評論社、2010 — 第 4 章がガロア理論。基本定理、可解性判定、アーベル–ルフィニの定理まで日本語で通して読めます。群の単純性やコーシーの定理は同シリーズ『代数学1 群論入門』にあります。
  2. 藤崎源二郎『体とガロア理論』岩波書店(岩波基礎数学選書)、1991 — 体論からの標準的な構成。
  3. E. Artin, Galois Theory, University of Notre Dame Press, 1944(Dover 復刊 1998)— 線形代数だけを前提に基本定理へ到達する古典的な小冊子。
  4. D. S. Dummit and R. M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004 — Chapter 14 が体論とガロア理論。AnA_n の単純性やアイゼンシュタインの判定法も同書内で完結しています。
  5. I. Stewart, Galois Theory, 4th ed., CRC Press, 2015 — 歴史的経緯と定理の関係を丁寧に追う入門書。
  6. S. Lang, Algebra, revised 3rd ed., Springer GTM 211, 2002 — Chapter VI。無限次ガロア理論やクンマー理論まで含む標準的な参照。

Appendix: 基本定理・可解性判定・アーベル–ルフィニの定理の証明

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本文で証明を後回しにした 定理 4.1、定理 5.4、定理 6.2 をここで証明します。体はすべて標数 00 です。まず 3 つの補題を用意します。

補題 7.5(同型の延長の個数)✓

φ:K→K′\varphi : K \to K' を体の同型、f∈K[X]f \in K[X] を次数 11 以上の多項式、LL を ff の KK 上の最小分解体、L′L' を φ(f)\varphi(f)(係数に φ\varphi を施した多項式)の K′K' 上の最小分解体とする。このとき φ\varphi を延長する体の準同型 ψ:L→L′\psi : L \to L' はちょうど [L:K][L:K] 個あり、どれも同型である。とくに L/KL/K がガロア拡大なら ∣Aut(L/K)∣=[L:K]|\mathrm{Aut}(L/K)| = [L:K] である。

証明(補題 7.5)

[L:K][L:K] についての帰納法で示します(K,K′,φ,fK, K', \varphi, f はすべて動かしてよいとします)。

[L:K]=1[L:K] = 1 なら ff は KK 上で 1 次式の積に分解するので、φ(f)\varphi(f) も K′K' 上で分解し、L′L' は K′K' に K′K' の元を添加したもの、すなわち L′=K′L' = K' です。延長は φ\varphi 自身だけで、これは同型です。

[L:K]>1[L:K] \gt 1 とします。ff の根 α∈L\alpha \in L で α∉K\alpha \notin K なるものがあり、その最小多項式 p=mα,Kp = m_{\alpha,K} は ff を割り切る既約多項式で d=deg⁡p≥2d = \deg p \ge 2 です。φ\varphi は環の同型 K[X]→K′[X]K[X] \to K'[X] を引き起こすので φ(p)\varphi(p) は既約で φ(f)\varphi(f) を割り切り、φ(f)\varphi(f) は L′L' で 1 次式の積に分解するので φ(p)\varphi(p) も分解します。分離性の判定(命題 6.11)[多項式環と体の拡大] より φ(p)\varphi(p) の根 β1,…,βd∈L′\beta_1, \ldots, \beta_d \in L' は相異なります。

φ\varphi を延長する準同型 χ:K(α)→L′\chi : K(\alpha) \to L' は、p(α)=0p(\alpha) = 0 に χ\chi を施して φ(p)(χ(α))=0\varphi(p)(\chi(\alpha)) = 0 となるので χ(α)\chi(\alpha) はある βi\beta_i で、K(α)=K[α]K(\alpha) = K[\alpha] なので χ(α)\chi(\alpha) で χ\chi は決まります。逆に各 βi\beta_i について、命題 6.2[多項式環と体の拡大] の同型 K(α)≅K[X]/(p)K(\alpha) \cong K[X]/(p)、K′(βi)≅K′[X]/(φ(p))K'(\beta_i) \cong K'[X]/(\varphi(p)) と、φ\varphi が引き起こす同型 K[X]/(p)≅K′[X]/(φ(p))K[X]/(p) \cong K'[X]/(\varphi(p)) を合成すれば、α↦βi\alpha \mapsto \beta_i となる同型 χi:K(α)→K′(βi)\chi_i : K(\alpha) \to K'(\beta_i) が得られます。よって K(α)K(\alpha) への延長はちょうど dd 個です。

LL は ff の K(α)K(\alpha) 上の最小分解体(ff は LL で分解し、LL は KK 上、したがって K(α)K(\alpha) 上も ff の根で生成される)で、同様に L′L' は χi(f)=φ(f)\chi_i(f) = \varphi(f) の K′(βi)K'(\beta_i) 上の最小分解体です。命題 2.3 より [L:K(α)]=[L:K]/d<[L:K][L:K(\alpha)] = [L:K]/d \lt [L:K] なので、帰納法の仮定から各 χi\chi_i の LL への延長はちょうど [L:K]/d[L:K]/d 個で、どれも同型です。φ\varphi の延長はどれも K(α)K(\alpha) に制限するとある χi\chi_i になるので、総数は d⋅[L:K]/d=[L:K]d \cdot [L:K]/d = [L:K] です。最後の主張は K′=KK' = K、φ=id\varphi = \mathrm{id}、L′=LL' = L とした場合です。

補題 7.6(デデキントの補題(指標の一次独立性))✓

σ1,…,σn:L→M\sigma_1, \ldots, \sigma_n : L \to M を相異なる体の準同型とする(この補題に限り、体 L,ML, M の標数は任意とする)。c1,…,cn∈Mc_1, \ldots, c_n \in M がすべての x∈Lx \in L について ∑iciσi(x)=0\sum_i c_i \sigma_i(x) = 0 を満たすならば、c1=⋯=cn=0c_1 = \cdots = c_n = 0 である。

証明(補題 7.6)

そうでない関係式があったとして、00 でない係数の個数 mm が最小のものを取り、番号を付け替えて c1,…,cm≠0c_1, \ldots, c_m \ne 0、残りは 00 とします。σ1(1)=1\sigma_1(1) = 1 なので m=1m = 1 はありえず、m≥2m \ge 2 です。σ1≠σm\sigma_1 \ne \sigma_m なので σ1(y)≠σm(y)\sigma_1(y) \ne \sigma_m(y) となる y∈Ly \in L があります。xx を yxyx に替えた関係式 ∑iciσi(y)σi(x)=0\sum_i c_i \sigma_i(y)\sigma_i(x) = 0 から、元の関係式の σm(y)\sigma_m(y) 倍を引くと

∑i=1m−1ci(σi(y)−σm(y))σi(x)=0(∀x∈L)\sum_{i=1}^{m-1} c_i\bigl(\sigma_i(y) - \sigma_m(y)\bigr)\sigma_i(x) = 0 \qquad (\forall x \in L)

です。i=1i = 1 の係数は 00 でなく、00 でない係数は mm 個未満なので、mm の最小性に反します。この議論は体の標数を使っていません。

補題 7.7(アルティンの定理)✓

HH を体 LL の自己同型からなる有限群とし、F=LHF = L^H とする。このとき [L:F]=∣H∣[L:F] = |H| である。

証明(補題 7.7)

n=∣H∣n = |H| とします。

[L:F]≥n[L:F] \ge n。 [L:F]=m<n[L:F] = m \lt n として FF 上の基底 ω1,…,ωm\omega_1, \ldots, \omega_m を取ります。LL の未知数 xσx_\sigma(σ∈H\sigma \in H)についての連立一次方程式 ∑σ∈Hxσσ(ωj)=0\sum_{\sigma \in H} x_\sigma \sigma(\omega_j) = 0(j=1,…,mj = 1, \ldots, m)は、式が mm 本で未知数が nn 個なので自明でない解を持ちます。x=∑jajωjx = \sum_j a_j\omega_j(aj∈Fa_j \in F)について σ(aj)=aj\sigma(a_j) = a_j だから ∑σxσσ(x)=∑jaj∑σxσσ(ωj)=0\sum_\sigma x_\sigma \sigma(x) = \sum_j a_j \sum_\sigma x_\sigma\sigma(\omega_j) = 0 となり、補題 7.6 に反します。

[L:F]≤n[L:F] \le n。 任意の ω1,…,ωn+1∈L\omega_1, \ldots, \omega_{n+1} \in L が FF 上一次従属であることを示します。連立方程式 ∑j=1n+1σ(ωj)yj=0\sum_{j=1}^{n+1}\sigma(\omega_j)y_j = 0(σ∈H\sigma \in H)は式が nn 本で未知数が n+1n+1 個なので自明でない解を持ちます。00 でない成分の個数 rr が最小の解を取り、番号を付け替えて y1,…,yr≠0y_1, \ldots, y_r \ne 0、y1=1y_1 = 1 とします(解の定数倍も解)。τ∈H\tau \in H を方程式に施すと ∑jτσ(ωj)τ(yj)=0\sum_j \tau\sigma(\omega_j)\tau(y_j) = 0 で、σ\sigma が HH を動くとき τσ\tau\sigma も HH 全体を動くので、(τ(yj))j(\tau(y_j))_j も解です。差 (yj−τ(yj))j(y_j - \tau(y_j))_j は解で、第 1 成分と第 r+1r+1 以降の成分が 00 なので、00 でない成分は rr 個未満であり、最小性から零解です。よってすべての τ\tau で τ(yj)=yj\tau(y_j) = y_j、すなわち yj∈Fy_j \in F です。σ=id\sigma = \mathrm{id} の式 ∑jωjyj=0\sum_j \omega_j y_j = 0 は FF 上の自明でない一次関係です。

証明(定理 4.1)

LL を f∈K[X]f \in K[X] の KK 上の最小分解体とします。

(1) 補題 7.5 より ∣G∣=[L:K]|G| = [L:K]。F=LGF = L^G とおくと K⊆FK \subseteq F で、補題 7.7 より [L:F]=∣G∣=[L:K][L:F] = |G| = [L:K]。命題 2.3 の [L:K]=[L:F][F:K][L:K] = [L:F][F:K] から [F:K]=1[F:K] = 1、すなわち LG=KL^G = K です。

(2) 中間体 MM について、f∈M[X]f \in M[X] は LL で分解し、LL は MM 上 ff の根で生成されるので、LL は ff の MM 上の最小分解体です。よって L/ML/M はガロア拡大で、(1) を L/ML/M に使うと LGal(L/M)=ML^{\mathrm{Gal}(L/M)} = M。逆に H≤GH \le G について、H⊆Gal(L/LH)H \subseteq \mathrm{Gal}(L/L^H) は定義から明らかで、(1) を L/LHL/L^H に使うと ∣Gal(L/LH)∣=[L:LH]|\mathrm{Gal}(L/L^H)| = [L:L^H]、補題 7.7 より [L:LH]=∣H∣[L:L^H] = |H| なので Gal(L/LH)=H\mathrm{Gal}(L/L^H) = H。よって 2 つの対応は互いに逆写像です。H1⊆H2⇒LH1⊇LH2H_1 \subseteq H_2 \Rightarrow L^{H_1} \supseteq L^{H_2} と M1⊆M2⇒Gal(L/M1)⊇Gal(L/M2)M_1 \subseteq M_2 \Rightarrow \mathrm{Gal}(L/M_1) \supseteq \mathrm{Gal}(L/M_2) は定義から明らかで、逆向きの含意は、たとえば LH1⊇LH2L^{H_1} \supseteq L^{H_2} なら H1=Gal(L/LH1)⊆Gal(L/LH2)=H2H_1 = \mathrm{Gal}(L/L^{H_1}) \subseteq \mathrm{Gal}(L/L^{H_2}) = H_2 のように、逆写像であることから従います。

(3) [L:LH]=∣H∣[L:L^H] = |H| は 補題 7.7。命題 2.3 とラグランジュの定理から [LH:K]=[L:K]/[L:LH]=∣G∣/∣H∣=[G:H][L^H:K] = [L:K]/[L:L^H] = |G|/|H| = [G:H] です。

(4) σ∈G\sigma \in G と中間体 MM について、τ\tau が σ(M)\sigma(M) の各点を固定することと σ−1τσ\sigma^{-1}\tau\sigma が MM の各点を固定することは同値なので、Gal(L/σ(M))=σ Gal(L/M) σ−1\mathrm{Gal}(L/\sigma(M)) = \sigma\,\mathrm{Gal}(L/M)\,\sigma^{-1} です。N=Gal(L/M)N = \mathrm{Gal}(L/M) とおきます。

M/KM/K がガロアなら NN は正規。 MM を g∈K[X]g \in K[X] の最小分解体とし、gg の MM における根を β1,…,βr\beta_1, \ldots, \beta_r とすると M=K(β1,…,βr)M = K(\beta_1, \ldots, \beta_r) で、gg は M[X]⊆L[X]M[X] \subseteq L[X] で 1 次式の積なので、gg の LL における根もこれで尽きます。σ∈G\sigma \in G は gg の根を根に写すので(補題 3.2 の 1)σ(M)=K(σ(β1),…,σ(βr))⊆M\sigma(M) = K(\sigma(\beta_1), \ldots, \sigma(\beta_r)) \subseteq M で、σ\sigma は KK 線形な単射なので次元を比べて σ(M)=M\sigma(M) = M。よって σNσ−1=N\sigma N\sigma^{-1} = N です。

NN が正規なら M/KM/K はガロア。 σ∈G\sigma \in G について Gal(L/σ(M))=σNσ−1=N=Gal(L/M)\mathrm{Gal}(L/\sigma(M)) = \sigma N\sigma^{-1} = N = \mathrm{Gal}(L/M) なので、(2) の全単射性から σ(M)=M\sigma(M) = M です。α∈M\alpha \in M に対し、軌道 {σ(α):σ∈G}\{\sigma(\alpha) : \sigma \in G\} の相異なる元を γ1,…,γs\gamma_1, \ldots, \gamma_s として gα=∏l(X−γl)g_\alpha = \prod_l (X - \gamma_l) とおくと、各 σ∈G\sigma \in G は γl\gamma_l たちを置換するので gαg_\alpha の係数は GG で固定され、(1) より KK に属します。また γl∈σ(M)=M\gamma_l \in \sigma(M) = M です。MM の KK 上の基底 α1,…,αt\alpha_1, \ldots, \alpha_t を取り g=∏igαi∈K[X]g = \prod_i g_{\alpha_i} \in K[X] とすると、gg は MM で 1 次式の積に分解し、その根は MM に属して αi\alpha_i を含むので MM を生成します。よって MM は gg の KK 上の最小分解体で、M/KM/K はガロアです。

制限写像。 M/KM/K がガロアのとき、上で見たように σ(M)=M\sigma(M) = M なので π(σ)=σ∣M∈Gal(M/K)\pi(\sigma) = \sigma|_M \in \mathrm{Gal}(M/K) は well-defined な群準同型で、核は MM を各点で固定する σ\sigma の全体、すなわち NN です。像の位数は ∣G∣/∣N∣=[L:K]/[L:M]=[M:K]|G|/|N| = [L:K]/[L:M] = [M:K] で、(1) を M/KM/K に使うと ∣Gal(M/K)∣=[M:K]|\mathrm{Gal}(M/K)| = [M:K] なので π\pi は全射です。準同型定理(定理 5.1[群の準同型定理])から Gal(M/K)≅G/N\mathrm{Gal}(M/K) \cong G/N を得ます。

証明(定理 5.4)

2 つの事実を先に確かめます。

(a) 1 の巾根の添加。 FF を体、NN を Xn−1X^n - 1 が 1 次式の積に分解する FF の拡大とすると、Xn−1X^n - 1 の根は NN に nn 個あり相異なります(Xn−1X^n - 1 と nXn−1nX^{n-1} は互いに素)。それらは N×N^\times の位数 nn の部分群をなすので巡回群で(定理 7.3[多項式環と体の拡大])、生成元 ζ\zeta(1 の原始 nn 乗根)が取れます。F(ζ)F(\zeta) は Xn−1X^n - 1 の FF 上の最小分解体なのでガロアで、σ∈Gal(F(ζ)/F)\sigma \in \mathrm{Gal}(F(\zeta)/F) は ζ\zeta を位数 nn の元 ζaσ\zeta^{a_\sigma}(gcd⁡(aσ,n)=1\gcd(a_\sigma, n) = 1)に写します。σ↦aσ mod n\sigma \mapsto a_\sigma \bmod n は (Z/nZ)×(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^\times への単射準同型なので、Gal(F(ζ)/F)\mathrm{Gal}(F(\zeta)/F) はアーベル群です。

(b) 巡回拡大と巾根。 FF が 1 の原始 mm 乗根 ω\omega を含むとします。βm=b∈F\beta^m = b \in F、b≠0b \ne 0 なら、F(β)F(\beta) は Xm−bX^m - b(根は ωkβ\omega^k\beta)の最小分解体でガロアであり、σ↦σ(β)/β\sigma \mapsto \sigma(\beta)/\beta は 1 の mm 乗根の群への単射準同型なので、ガロア群はアーベル群です。実際、σ∈Gal(F(β)/F)\sigma \in \mathrm{Gal}(F(\beta)/F) に対し σ(β)m=σ(b)=b=βm\sigma(\beta)^m = \sigma(b) = b = \beta^m なので σ(β)/β\sigma(\beta)/\beta は 1 の mm 乗根で、ω\omega が FF に属するので 1 の mm 乗根はすべて FF の元であり、σ,τ\sigma, \tau の合成について στ(β)/β=σ(τ(β)/β)⋅σ(β)/β=(τ(β)/β)(σ(β)/β)\sigma\tau(\beta)/\beta = \sigma(\tau(\beta)/\beta)\cdot\sigma(\beta)/\beta = (\tau(\beta)/\beta)(\sigma(\beta)/\beta) が成り立ちます。また σ(β)=β\sigma(\beta) = \beta なら σ\sigma は F(β)F(\beta) 上で恒等写像です。逆に、F′/FF'/F がガロアでガロア群が位数 mm の巡回群 ⟨τ⟩\langle\tau\rangle なら、F′=F(β)F' = F(\beta)、βm∈F\beta^m \in F となる β\beta があります。実際、id,τ,…,τm−1\mathrm{id}, \tau, \ldots, \tau^{m-1} は相異なるので 補題 7.6 より β=∑k=0m−1ω−kτk(θ)≠0\beta = \sum_{k=0}^{m-1}\omega^{-k}\tau^k(\theta) \ne 0 となる θ∈F′\theta \in F' があり、τ(β)=ωβ\tau(\beta) = \omega\beta(添字を mm を法として付け替える)です。よって τ(βm)=βm\tau(\beta^m) = \beta^m で、定理 4.1 の 1 より βm∈F\beta^m \in F。τk(β)=ωkβ≠β\tau^k(\beta) = \omega^k\beta \ne \beta(0<k<m0 \lt k \lt m)なので F(β)F(\beta) を固定する元は単位元だけで、定理 4.1 の 2 より F(β)=F′F(\beta) = F' です。

(⇒\Rightarrow) L⊆ML \subseteq M、MM は 定義 5.1 の塔 K=K0⊆⋯⊆Km=MK = K_0 \subseteq \cdots \subseteq K_m = M、Ki+1=Ki(αi)K_{i+1} = K_i(\alpha_i)、αini∈Ki\alpha_i^{n_i} \in K_i とし、n=n0n1⋯nm−1n = n_0 n_1\cdots n_{m-1} とします。P=(Xn−1)∏imαi,K∈K[X]P = (X^n - 1)\prod_i m_{\alpha_i,K} \in K[X] の MM 上の最小分解体 NN を取ると(定理 6.6[多項式環と体の拡大])、MM は KK 上 PP の根 αi\alpha_i で生成されるので、NN は PP の KK 上の最小分解体で、N/KN/K はガロアです。(a) の ζ∈N\zeta \in N を取り、

E=K(ζ, σ(αi) (σ∈Gal(N/K), 0≤i<m))⊆NE = K\bigl(\zeta,\ \sigma(\alpha_i)\ (\sigma \in \mathrm{Gal}(N/K),\ 0 \le i \lt m)\bigr) \subseteq N

とおきます。各 ii について {σ(αi)}\{\sigma(\alpha_i)\} の相異なる元にわたる ∏(X−σ(αi))\prod(X - \sigma(\alpha_i)) の係数は Gal(N/K)\mathrm{Gal}(N/K) で固定されるので KK に属し、EE はそれらと Xn−1X^n - 1 の積の KK 上の最小分解体です。よって E/KE/K はガロアで、L⊆M⊆EL \subseteq M \subseteq E です。

E0=K(ζ)E_0 = K(\zeta) から始めて、σ(α0)\sigma(\alpha_0)(すべての σ\sigma)、次に σ(α1)\sigma(\alpha_1)(すべての σ\sigma)、… を 1 つずつ添加して E0⊆E1⊆⋯⊆Er=EE_0 \subseteq E_1 \subseteq \cdots \subseteq E_r = E を作ります。β=σ(αi)\beta = \sigma(\alpha_i) を添加する段では βni=σ(αini)∈σ(Ki)=K(σ(α0),…,σ(αi−1))\beta^{n_i} = \sigma(\alpha_i^{n_i}) \in \sigma(K_i) = K(\sigma(\alpha_0), \ldots, \sigma(\alpha_{i-1})) は直前の体に属し、1 の原始 nin_i 乗根 ζn/ni\zeta^{n/n_i} も E0E_0 に属します。(a) と (b) より、各段 Ej/Ej−1E_j/E_{j-1} と E0/KE_0/K はガロアでガロア群はアーベル群です(βni=0\beta^{n_i} = 0 なら β=0\beta = 0 で、その段は自明です)。定理 4.1 の 4 を E/Ej−1E/E_{j-1} に使うと、Gal(E/Ej)\mathrm{Gal}(E/E_j) は Gal(E/Ej−1)\mathrm{Gal}(E/E_{j-1}) の正規部分群で、商は Gal(Ej/Ej−1)\mathrm{Gal}(E_j/E_{j-1}) と同型なのでアーベル群です。同様に K⊆E0K \subseteq E_0 の段も扱えて、

Gal(E/K)⊇Gal(E/E0)⊇⋯⊇Gal(E/E)={e}\mathrm{Gal}(E/K) \supseteq \mathrm{Gal}(E/E_0) \supseteq \cdots \supseteq \mathrm{Gal}(E/E) = \{e\}

は可解列です。L/KL/K はガロアなので 定理 4.1 の 4 より G≅Gal(E/K)/Gal(E/L)G \cong \mathrm{Gal}(E/K)/\mathrm{Gal}(E/L) で、可解群の商群は可解(命題 6.1[群の作用と Sylow の定理] の 2)なので GG は可解です。

(⇐\Leftarrow) GG が可解とし、n=∣G∣n = |G|、L′L' を Xn−1X^n - 1 の LL 上の最小分解体とします。L′L' は (Xn−1)f(X^n-1)f の KK 上の最小分解体なので L′/KL'/K はガロアで、(a) の ζ∈L′\zeta \in L' について L′=L(ζ)L' = L(\zeta) です。H=Gal(L′/K(ζ))H = \mathrm{Gal}(L'/K(\zeta)) の元を LL に制限すると(L/KL/K はガロアなので 定理 4.1 の 4 により well-defined)H→GH \to G が得られ、LL と ζ\zeta を固定すれば L′=L(ζ)L' = L(\zeta) 全体を固定するので単射です。よって HH は GG の部分群と同型で可解です(命題 6.1[群の作用と Sylow の定理] の 1)。

HH の可解列 H=H0⊇⋯⊇Hs={e}H = H_0 \supseteq \cdots \supseteq H_s = \{e\} は、商が巡回群になるように細分できます。実際、有限アーベル群 A=Hi/Hi+1A = H_i/H_{i+1} は生成元 a1,…,ata_1, \ldots, a_t を 1 つずつ足した部分群の列 {e}=C0⊆C1⊆⋯⊆Ct=A\{e\} = C_0 \subseteq C_1 \subseteq \cdots \subseteq C_t = A(Cl=⟨Cl−1,al⟩C_{l} = \langle C_{l-1}, a_l\rangle)を持ち、Cl/Cl−1C_l/C_{l-1} は ala_l の像で生成される巡回群です。射影 Hi→AH_i \to A による ClC_l の逆像を間に挟めば、逆像は互いに正規で、商は第三同型定理により Cl/Cl−1C_l/C_{l-1} と同型です。そこで最初から各商 Hj/Hj+1H_j/H_{j+1} が巡回群だとしてよく、その位数 djd_j は ∣H∣|H| の約数、したがって nn の約数です。

Fj=L′HjF_j = L'^{H_j} とおくと、定理 4.1 の 2 より F0=K(ζ)F_0 = K(\zeta)、Fs=L′F_s = L' で、定理 4.1 の 4 を L′/FjL'/F_j(ガロア群は HjH_j)に使うと Fj+1/FjF_{j+1}/F_j はガロアでガロア群は Hj/Hj+1H_j/H_{j+1}、すなわち位数 djd_j の巡回群です。Fj⊇K(ζ)F_j \supseteq K(\zeta) は 1 の原始 djd_j 乗根 ζn/dj\zeta^{n/d_j} を含むので、(b) より Fj+1=Fj(βj)F_{j+1} = F_j(\beta_j)、βjdj∈Fj\beta_j^{d_j} \in F_j です。ζn=1∈K\zeta^n = 1 \in K でもあるので、

K⊆K(ζ)=F0⊆F1⊆⋯⊆Fs=L′K \subseteq K(\zeta) = F_0 \subseteq F_1 \subseteq \cdots \subseteq F_s = L'

は根号拡大の塔で、L⊆L′L \subseteq L' です。よって ff は根号で解けます。

証明(定理 6.2)

x1,…,xnx_1, \ldots, x_n を kk 上の不定元、k(x)=k(x1,…,xn)k(x) = k(x_1, \ldots, x_n) を有理関数体とし、e1,…,ene_1, \ldots, e_n を基本対称式(∏i(X−xi)=Xn−e1Xn−1+e2Xn−2−⋯+(−1)nen\prod_i(X - x_i) = X^n - e_1X^{n-1} + e_2X^{n-2} - \cdots + (-1)^ne_n)とします。

e1,…,ene_1, \ldots, e_n は代数的独立。 単項式を辞書式順序(x1x_1 の指数を先に比べる)で並べます。この順序は積と両立するので、多項式の積の最高次の単項式は最高次の単項式の積です。eje_j の最高次の単項式は x1x2⋯xjx_1x_2\cdots x_j なので、e1a1⋯enane_1^{a_1}\cdots e_n^{a_n} の最高次の単項式は x1a1+⋯+anx2a2+⋯+an⋯xnanx_1^{a_1+\cdots+a_n}x_2^{a_2+\cdots+a_n}\cdots x_n^{a_n} で、指数の組 (a1,…,an)(a_1, \ldots, a_n) はこの単項式から決まります。よって 00 でない多項式 P(Y1,…,Yn)P(Y_1, \ldots, Y_n) に Yj=ejY_j = e_j を代入すると、PP の項のうち対応する単項式が最大のものは他の項と打ち消し合わず、P(e1,…,en)≠0P(e_1, \ldots, e_n) \ne 0 です。

k(x)/k(e)k(x)/k(e) のガロア群は SnS_n。 SnS_n は変数の置換により k(x)k(x) に自己同型として忠実に作用し、その固定体 FF は k(e)=k(e1,…,en)k(e) = k(e_1, \ldots, e_n) を含みます。補題 7.7 より [k(x):F]=n![k(x):F] = n!。一方 k(x)=k(e)(x1,…,xn)k(x) = k(e)(x_1, \ldots, x_n) は h=∏i(X−xi)∈k(e)[X]h = \prod_i(X - x_i) \in k(e)[X] の k(e)k(e) 上の最小分解体なので、定理 4.1 の 1 と 補題 3.2 の 2 から [k(x):k(e)]=∣Gal(k(x)/k(e))∣≤n![k(x):k(e)] = |\mathrm{Gal}(k(x)/k(e))| \le n!。k(e)⊆Fk(e) \subseteq F と合わせて F=k(e)F = k(e) で、Gal(k(x)/k(e))\mathrm{Gal}(k(x)/k(e)) は SnS_n を含み位数 n!n! なので SnS_n に等しくなります。

一般方程式への移行。 代数的独立性から、ti↦(−1)ieit_i \mapsto (-1)^ie_i は体の同型 ι:K=k(t1,…,tn)→k(e)\iota : K = k(t_1, \ldots, t_n) \to k(e) に延び、ι(f)=h\iota(f) = h です。補題 7.5 により、ff の KK 上の最小分解体 LL から k(x)k(x) への ι\iota を延長する同型 ψ\psi があり、σ↦ψσψ−1\sigma \mapsto \psi\sigma\psi^{-1} は Gal(L/K)≅Gal(k(x)/k(e))≅Sn\mathrm{Gal}(L/K) \cong \mathrm{Gal}(k(x)/k(e)) \cong S_n を与えます。n≥5n \ge 5 なら SnS_n は可解でないので(命題 6.1)、定理 5.4 より ff は KK 上根号で解けません。

作図問題。 定規とコンパスで作図できる点の座標は、Q\mathbb{Q} から平方根の添加を有限回繰り返して得られる体に属します。したがって 命題 2.3 より、作図可能な数の Q\mathbb{Q} 上の次数は必ず 2 の巾です。角の三等分が一般には不可能なのは、60∘60^\circ の三等分に必要な c=cos⁡20∘c = \cos 20^\circ が 8x3−6x−1=08x^3 - 6x - 1 = 0 の根(3 倍角の公式 cos⁡3θ=4cos⁡3θ−3cos⁡θ\cos 3\theta = 4\cos^3\theta - 3\cos\theta から 4c3−3c=1/24c^3-3c = 1/2)であり、この 3 次式が有理根の候補 ±1,±1/2,±1/4,±1/8\pm 1, \pm 1/2, \pm 1/4, \pm 1/8 をどれも持たず既約なので、次数 3 が 2 の巾にならないからです。立方体の倍積が不可能なのも [Q(23):Q]=3[\mathbb{Q}(\sqrt[3]2):\mathbb{Q}] = 3 によります。正 nn 角形の作図可能性(nn が 2 の巾と相異なるフェルマー素数の積であること)は、円分体 Q(ζn)\mathbb{Q}(\zeta_n) のガロア群が (Z/nZ)×(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^\times であることから決まります。

数論への展開。 有限次拡大を貼り合わせて Q\mathbb{Q} の代数閉包を考えると、無限群 Gal(Q‾/Q)\mathrm{Gal}(\overline{\mathbb{Q}}/\mathbb{Q})(絶対ガロア群)が現れます。これに位相を入れて基本定理を拡張したものが無限次ガロア理論で、類体論やラングランズ・プログラムの舞台になっています。ガロアが方程式を解くために作った道具は、いま数論の中心にあります。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 4 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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