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令和6年度 東大院 物理学専攻 博士 物理学 解答

対象読者: 修士課程までの物理(量子力学、統計力学、電磁気学、解析力学)を学び、東大物理学専攻の博士課程入試の問題を自分で解いた、または解こうとしている人。問題文は載せていないので、出典の問題を手元に置いて読みます。

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3問すべてが必答で、試験時間は3時間です。3問はいずれも同年度の修士課程 専門科目と共通の問題で、博士課程では修士の第4問(複素解析と線形代数)が外され、物理の3問だけが残った構成になっています。第1問は逆さ調和振動子を古典・量子の両側から見て、古典的作用関数とスクイーズド状態の位相がどちらも q2/2q^{2}/2 に落ち着くことを見せる問題です。第2問と第3問は、理想気体からラングミュア吸着へ、双極子放射から光ピンセットへ、と定番の題材を二段構えにしたもので、設問数が多いぶん時間配分が結果を左右します。

問題分野主題
第1問解析力学・量子光学逆さ調和振動子とスクイーズド状態
第2問統計力学理想気体とラングミュア吸着
第3問電磁気学・光学レイリー散乱と光ピンセット

第1問 逆さ調和振動子とスクイーズド状態

Section titled “第1問 逆さ調和振動子とスクイーズド状態”

一般化座標 qq とその共役運動量 pp について、ハミルトニアンが

H=12p2+V(q),V(q)=−12q2H=\frac{1}{2}p^{2}+V(q),\qquad V(q)=-\frac{1}{2}q^{2}

で与えられる系を考えます。質量と振動数を 1 にとった逆さ調和振動子、すなわち不安定な放物型ポテンシャルです。設問1、設問2 は古典論、設問3 以降は正準量子化した系を扱います。量子化では p,qp,q を演算子 p^,q^\hat p,\hat q と読み替え、[q^,p^]=iℏ[\hat q,\hat p]=i\hbar を課します。

生成消滅演算子は

a^=12ℏ(q^+ip^),a^†=12ℏ(q^−ip^)\hat a=\frac{1}{\sqrt{2\hbar}}(\hat q+i\hat p),\qquad \hat a^{\dagger}=\frac{1}{\sqrt{2\hbar}}(\hat q-i\hat p)

で定義され、実数 r,ϕr,\phi を引数とするスクイーズ演算子

S^(r,ϕ)=exp⁡ ⁣[r2(a^2e−2iϕ−(a^†)2e2iϕ)]\hat S(r,\phi)=\exp\!\left[\frac{r}{2}\left(\hat a^{2}e^{-2i\phi}-(\hat a^{\dagger})^{2}e^{2i\phi}\right)\right]

については

S^†(r,ϕ) a^ S^(r,ϕ)=a^cosh⁡r−a^†e2iϕsinh⁡r,S^†(r,ϕ) a^† S^(r,ϕ)=a^†cosh⁡r−a^ e−2iϕsinh⁡r,S^†(r,ϕ) S^(r,ϕ)=1\begin{aligned} \hat S^{\dagger}(r,\phi)\,\hat a\,\hat S(r,\phi)&=\hat a\cosh r-\hat a^{\dagger}e^{2i\phi}\sinh r,\\ \hat S^{\dagger}(r,\phi)\,\hat a^{\dagger}\,\hat S(r,\phi)&=\hat a^{\dagger}\cosh r-\hat a\,e^{-2i\phi}\sinh r,\\ \hat S^{\dagger}(r,\phi)\,\hat S(r,\phi)&=1 \end{aligned}

が与えられています。a^∣0⟩=0\hat a|0\rangle=0 で定まる真空 ∣0⟩|0\rangle から ∣(r,ϕ)⟩=S^(r,ϕ)∣0⟩|(r,\phi)\rangle=\hat S(r,\phi)|0\rangle をスクイーズド状態(位置と運動量の一方のゆらぎを小さくし、他方を大きくした状態)と呼びます。この問題は令和6年度 修士課程 専門科目 第1問と同一です。

ハミルトンの運動方程式は

q˙=∂H∂p=p,p˙=−∂H∂q=−V′(q)=q\dot q=\frac{\partial H}{\partial p}=p,\qquad \dot p=-\frac{\partial H}{\partial q}=-V'(q)=q

です。右辺で pp と qq が入れ替わる形なので、和と差をとると変数が分離します。

ddt(p+q)=q+p=(p+q),ddt(p−q)=q−p=−(p−q)\frac{d}{dt}(p+q)=q+p=(p+q),\qquad \frac{d}{dt}(p-q)=q-p=-(p-q)

積分して

(p+q)(t)=(p+q)(0) et,(p−q)(t)=(p−q)(0) e−t(p+q)(t)=(p+q)(0)\,e^{t},\qquad (p-q)(t)=(p-q)(0)\,e^{-t}

です。答えは、p+qp+q と p−qp-q が互いに独立な指数関数として振る舞い、p+qp+q は時定数 1 で指数関数的に増大し、p−qp-q は同じ時定数で指数関数的に減衰する、というものです。p+qp+q の初期値がゼロでないという仮定のもとで p+qp+q は決してゼロにならないので、増大する成分が必ず生き残ります。位相空間で言えば、直線 p=qp=q が不安定方向、直線 p=−qp=-q が安定方向で、原点は双曲型不動点(ある方向からは近づき、別の方向へは遠ざかる、鞍のような釣り合い点)です。(p+q)(p−q)=p2−q2=2H(p+q)(p-q)=p^{2}-q^{2}=2H が時間に依らないことは、二つの指数因子の積が 1 になることに対応しており、エネルギー保存の確認になります。

設問1 より p−q=(p−q)(0)e−t→0p-q=(p-q)(0)e^{-t}\to0 なので、十分時間が経つと p→qp\to q となります。すなわち軌道は不安定方向 p=qp=q に漸近し、qq の関数として p(q)≃qp(q)\simeq q と書けます。これを作用関数に代入すると

S(q)=∫qp(q′) dq′≃∫qq′ dq′=q22+const.S(q)=\int^{q}p(q')\,dq'\simeq\int^{q}q'\,dq'=\frac{q^{2}}{2}+\text{const.}

答えは、S(q)S(q) が qq の 2 次関数 S(q)→q2/2S(q)\to q^{2}/2(積分定数を除く)に漸近する、というものです。逆に p=∂S/∂q=qp=\partial S/\partial q=q が設問1 の漸近関係を再現しており、整合しています。

定義を代入して展開します。[q^,q^]=[p^,p^]=0[\hat q,\hat q]=[\hat p,\hat p]=0 を使うと

[a^,a^†]=12ℏ [q^+ip^, q^−ip^]=12ℏ(−i[q^,p^]+i[p^,q^])=−2i2ℏ[q^,p^]=−2i2ℏ⋅iℏ=1[\hat a,\hat a^{\dagger}]=\frac{1}{2\hbar}\,[\hat q+i\hat p,\ \hat q-i\hat p] =\frac{1}{2\hbar}\left(-i[\hat q,\hat p]+i[\hat p,\hat q]\right) =\frac{-2i}{2\hbar}[\hat q,\hat p]=\frac{-2i}{2\hbar}\cdot i\hbar=1

答えは [a^,a^†]=1[\hat a,\hat a^{\dagger}]=1 です。定義に入れた因子 1/2ℏ1/\sqrt{2\hbar} が [q^,p^]=iℏ[\hat q,\hat p]=i\hbar の ℏ\hbar をちょうど打ち消し、無次元の標準形になります。

定義式を q^,p^\hat q,\hat p について逆に解くと

q^=ℏ2 (a^+a^†),p^=−iℏ2 (a^−a^†)\hat q=\sqrt{\frac{\hbar}{2}}\,(\hat a+\hat a^{\dagger}),\qquad \hat p=-i\sqrt{\frac{\hbar}{2}}\,(\hat a-\hat a^{\dagger})

です。これを 2 乗します。a^\hat a と a^†\hat a^{\dagger} は交換しないので、交差項は a^a^†+a^†a^\hat a\hat a^{\dagger}+\hat a^{\dagger}\hat a の形にまとめておきます。

p^2=−ℏ2(a^2+(a^†)2−a^a^†−a^†a^),q^2=  ℏ2(a^2+(a^†)2+a^a^†+a^†a^)\begin{aligned} \hat p^{2}&=-\frac{\hbar}{2}\left(\hat a^{2}+(\hat a^{\dagger})^{2}-\hat a\hat a^{\dagger}-\hat a^{\dagger}\hat a\right),\\ \hat q^{2}&=\ \ \frac{\hbar}{2}\left(\hat a^{2}+(\hat a^{\dagger})^{2}+\hat a\hat a^{\dagger}+\hat a^{\dagger}\hat a\right) \end{aligned}

H^\hat H は両者の差なので、a^a^†+a^†a^\hat a\hat a^{\dagger}+\hat a^{\dagger}\hat a の項が消えます。

H^=12p^2−12q^2=−ℏ2(a^2+(a^†)2)\hat H=\frac{1}{2}\hat p^{2}-\frac{1}{2}\hat q^{2}=-\frac{\hbar}{2}\left(\hat a^{2}+(\hat a^{\dagger})^{2}\right)

が答えです。検算として逆向きに a^2+(a^†)2=(q^2−p^2)/ℏ\hat a^{2}+(\hat a^{\dagger})^{2}=(\hat q^{2}-\hat p^{2})/\hbar を確かめれば、上式が (p^2−q^2)/2(\hat p^{2}-\hat q^{2})/2 に戻ります。通常の調和振動子では交差項が生き残って ℏω(a^†a^+1/2)\hbar\omega(\hat a^{\dagger}\hat a+1/2) という数演算子の形になりますが、ここでは逆に a^2\hat a^{2} と (a^†)2(\hat a^{\dagger})^{2} だけが残り、零点エネルギーに相当する定数項が現れません。これがハミルトニアンがスクイーズ演算子の生成子そのものになっている理由です。

真空の時間発展は ∣ψ(t)⟩=e−iH^t/ℏ∣0⟩|\psi(t)\rangle=e^{-i\hat Ht/\hbar}|0\rangle です。設問4 の結果を代入すると

e−iH^t/ℏ=exp⁡ ⁣[−itℏ⋅(−ℏ2)(a^2+(a^†)2)]=exp⁡ ⁣[it2(a^2+(a^†)2)]e^{-i\hat Ht/\hbar}=\exp\!\left[-\frac{it}{\hbar}\cdot\left(-\frac{\hbar}{2}\right)\left(\hat a^{2}+(\hat a^{\dagger})^{2}\right)\right]=\exp\!\left[\frac{it}{2}\left(\hat a^{2}+(\hat a^{\dagger})^{2}\right)\right]

となります。一方、スクイーズ演算子の定義で r=tr=t、ϕ=−π/4\phi=-\pi/4 とすると e−2iϕ=eiπ/2=ie^{-2i\phi}=e^{i\pi/2}=i、e2iϕ=e−iπ/2=−ie^{2i\phi}=e^{-i\pi/2}=-i なので

S^ ⁣(t,−π4)=exp⁡ ⁣[t2(i a^2−(−i)(a^†)2)]=exp⁡ ⁣[it2(a^2+(a^†)2)]\hat S\!\left(t,-\frac{\pi}{4}\right)=\exp\!\left[\frac{t}{2}\left(i\,\hat a^{2}-(-i)(\hat a^{\dagger})^{2}\right)\right]=\exp\!\left[\frac{it}{2}\left(\hat a^{2}+(\hat a^{\dagger})^{2}\right)\right]

です。二つの指数演算子は指数の中身まで完全に一致します。したがって

∣ψ(t)⟩=e−iH^t/ℏ∣0⟩=S^ ⁣(t,−π4)∣0⟩=∣(t,−π4)⟩|\psi(t)\rangle=e^{-i\hat Ht/\hbar}|0\rangle=\hat S\!\left(t,-\frac{\pi}{4}\right)|0\rangle=\left|\left(t,-\frac{\pi}{4}\right)\right\rangle

が示されました。H^\hat H は時間に陽に依らないので時間発展演算子が単一の指数で書けること、および ℏ\hbar が指数の中で完全に相殺することを使っています。スクイーズパラメータ rr が経過時間そのものになっていて、時間が経つほど強くスクイーズされていく点がこの系の特徴です。

設問4 で得た q^,p^\hat q,\hat p の表式に、与えられた変換公式を適用します。表記を簡単にするため引数 (r,ϕ)(r,\phi) を省き、c=cosh⁡rc=\cosh r、s=sinh⁡rs=\sinh r と置きます。

S^†q^ S^=ℏ2(S^†a^S^+S^†a^†S^)=ℏ2[a^(c−e−2iϕs)+a^†(c−e2iϕs)],S^†p^ S^=−iℏ2(S^†a^S^−S^†a^†S^)=−iℏ2[a^(c+e−2iϕs)−a^†(c+e2iϕs)]\begin{aligned} \hat S^{\dagger}\hat q\,\hat S&=\sqrt{\frac{\hbar}{2}}\left(\hat S^{\dagger}\hat a\hat S+\hat S^{\dagger}\hat a^{\dagger}\hat S\right) =\sqrt{\frac{\hbar}{2}}\left[\hat a\left(c-e^{-2i\phi}s\right)+\hat a^{\dagger}\left(c-e^{2i\phi}s\right)\right],\\ \hat S^{\dagger}\hat p\,\hat S&=-i\sqrt{\frac{\hbar}{2}}\left(\hat S^{\dagger}\hat a\hat S-\hat S^{\dagger}\hat a^{\dagger}\hat S\right) =-i\sqrt{\frac{\hbar}{2}}\left[\hat a\left(c+e^{-2i\phi}s\right)-\hat a^{\dagger}\left(c+e^{2i\phi}s\right)\right] \end{aligned}

これを真空に作用させます。a^∣0⟩=0\hat a|0\rangle=0 なので a^\hat a に比例する項が落ちて

S^†q^ S^∣0⟩=ℏ2(c−e2iϕs)a^†∣0⟩,S^†p^ S^∣0⟩=iℏ2(c+e2iϕs)a^†∣0⟩\hat S^{\dagger}\hat q\,\hat S|0\rangle=\sqrt{\frac{\hbar}{2}}\left(c-e^{2i\phi}s\right)\hat a^{\dagger}|0\rangle,\qquad \hat S^{\dagger}\hat p\,\hat S|0\rangle=i\sqrt{\frac{\hbar}{2}}\left(c+e^{2i\phi}s\right)\hat a^{\dagger}|0\rangle

となります。両者は同じベクトル a^†∣0⟩\hat a^{\dagger}|0\rangle の定数倍なので、c−e2iϕs≠0c-e^{2i\phi}s\neq0 のもとで比をとることができ、

S^†p^ S^∣0⟩=i cosh⁡r+e2iϕsinh⁡rcosh⁡r−e2iϕsinh⁡r S^†q^ S^∣0⟩=α(r,ϕ) S^†q^ S^∣0⟩\hat S^{\dagger}\hat p\,\hat S|0\rangle=i\,\frac{\cosh r+e^{2i\phi}\sinh r}{\cosh r-e^{2i\phi}\sinh r}\ \hat S^{\dagger}\hat q\,\hat S|0\rangle=\alpha(r,\phi)\,\hat S^{\dagger}\hat q\,\hat S|0\rangle

が得られます。S^\hat S は反エルミートな演算子の指数なのでユニタリで、S^S^†=S^†S^=1\hat S\hat S^{\dagger}=\hat S^{\dagger}\hat S=1 が成り立ちます。そこで両辺に左から S^\hat S を掛けると

p^ S^∣0⟩=α(r,ϕ) q^ S^∣0⟩⟺p^ ∣(r,ϕ)⟩=α(r,ϕ) q^ ∣(r,ϕ)⟩\hat p\,\hat S|0\rangle=\alpha(r,\phi)\,\hat q\,\hat S|0\rangle \quad\Longleftrightarrow\quad \hat p\,|(r,\phi)\rangle=\alpha(r,\phi)\,\hat q\,|(r,\phi)\rangle

となり、示すべき等式が得られました。使った仮定は、与えられた 3 つの公式、a^∣0⟩=0\hat a|0\rangle=0、および分母 cosh⁡r−e2iϕsinh⁡r≠0\cosh r-e^{2i\phi}\sinh r\neq0 です。最後の条件は e2iϕ=coth⁡re^{2i\phi}=\coth r となる場合を除くという意味で、∣coth⁡r∣>1|\coth r|>1 に対して ∣e2iϕ∣=1|e^{2i\phi}|=1 なので、r≠0r\neq0 の有限の rr では常に満たされます(r=0r=0 なら分母は 1 です)。

設問5 より ∣ψ(t)⟩|\psi(t)\rangle は r=tr=t、ϕ=−π/4\phi=-\pi/4 のスクイーズド状態です。e2iϕ=−ie^{2i\phi}=-i を代入し、分母を実数化します。

α ⁣(t,−π4)=i cosh⁡t−isinh⁡tcosh⁡t+isinh⁡t=i (cosh⁡t−isinh⁡t)2cosh⁡2t+sinh⁡2t=i 1−isinh⁡2tcosh⁡2t=tanh⁡2t+icosh⁡2t\alpha\!\left(t,-\frac{\pi}{4}\right)=i\,\frac{\cosh t-i\sinh t}{\cosh t+i\sinh t} =i\,\frac{(\cosh t-i\sinh t)^{2}}{\cosh^{2}t+\sinh^{2}t} =i\,\frac{1-i\sinh 2t}{\cosh 2t} =\tanh 2t+\frac{i}{\cosh 2t}

ここで cosh⁡2t−sinh⁡2t=1\cosh^{2}t-\sinh^{2}t=1、2cosh⁡tsinh⁡t=sinh⁡2t2\cosh t\sinh t=\sinh2t、cosh⁡2t+sinh⁡2t=cosh⁡2t\cosh^{2}t+\sinh^{2}t=\cosh2t を使いました。座標表示では q^→q\hat q\to q、p^→−iℏ d/dq\hat p\to-i\hbar\,d/dq なので、設問6 の等式は 1 階の常微分方程式になります。

−iℏdψdq=α q ψ⟺1ψdψdq=iαℏ q-i\hbar\frac{d\psi}{dq}=\alpha\,q\,\psi \qquad\Longleftrightarrow\qquad \frac{1}{\psi}\frac{d\psi}{dq}=\frac{i\alpha}{\hbar}\,q

積分して

ψ(q,t)=N(t)exp⁡ ⁣[iα(t)2ℏq2],α(t)=tanh⁡2t+icosh⁡2t\psi(q,t)=N(t)\exp\!\left[\frac{i\alpha(t)}{2\hbar}q^{2}\right],\qquad \alpha(t)=\tanh 2t+\frac{i}{\cosh 2t}

です。iα=−1/cosh⁡2t+itanh⁡2ti\alpha=-1/\cosh2t+i\tanh2t なので、実部と虚部を分けると

ψ(q,t)=N(t) exp⁡ ⁣[−q22ℏcosh⁡2t]exp⁡ ⁣[i q2tanh⁡2t2ℏ]\psi(q,t)=N(t)\,\exp\!\left[-\frac{q^{2}}{2\hbar\cosh 2t}\right]\exp\!\left[\frac{i\,q^{2}\tanh 2t}{2\hbar}\right]

が答えです。N(t)N(t) は規格化定数で、指示により計算しません。ガウス因子の指数の実部は cosh⁡2t>0\cosh2t>0 より常に負なので、波動関数は各時刻で規格化可能です。t=0t=0 とすると α=i\alpha=i から ψ∝e−q2/2ℏ\psi\propto e^{-q^{2}/2\hbar} となり、これは a^∣0⟩=0\hat a|0\rangle=0 すなわち (q+ℏ d/dq)ψ=0(q+\hbar\,d/dq)\psi=0 の解、つまり真空の波動関数に一致します。

得られた波動関数は、実のガウス包絡線と 2 次の位相の積です。位相の部分を t→∞t\to\infty で見ると tanh⁡2t→1\tanh2t\to1 より

q2tanh⁡2t2ℏ ⟶ 1ℏ⋅q22=S(q)ℏ\frac{q^{2}\tanh 2t}{2\hbar}\ \longrightarrow\ \frac{1}{\hbar}\cdot\frac{q^{2}}{2}=\frac{S(q)}{\hbar}

となり、設問2 で求めた古典的作用関数 S(q)→q2/2S(q)\to q^{2}/2 がそのまま量子的位相として現れます。つまり ψ≃A(q,t) eiS(q)/ℏ\psi\simeq A(q,t)\,e^{iS(q)/\hbar}(AA は qq についてゆるやかに変わるガウス振幅)という半古典(WKB、波動関数を振幅と古典的作用に比例する位相の積で近似する形)形になり、局所的な運動量は p^ψ≃(∂S/∂q)ψ=qψ\hat p\psi\simeq(\partial S/\partial q)\psi=q\psi、すなわち古典軌道 p=qp=q の上に乗ります。スクイーズド状態は、不安定方向に張り付いた古典軌道を再現する状態だということです。

一方、包絡線 exp⁡[−q2/(2ℏcosh⁡2t)]\exp[-q^{2}/(2\hbar\cosh 2t)] の幅は cosh⁡2t\sqrt{\cosh2t} に比例して広がり、tt が大きいところでは ete^{t} で増大します。実際、上の波動関数から

⟨q2⟩=⟨p2⟩=ℏ2cosh⁡2t,12⟨q^p^+p^q^⟩=ℏ2sinh⁡2t\langle q^{2}\rangle=\langle p^{2}\rangle=\frac{\hbar}{2}\cosh 2t,\qquad \frac{1}{2}\langle \hat q\hat p+\hat p\hat q\rangle=\frac{\hbar}{2}\sinh 2t

が得られ、45∘45^{\circ} 回転した直交する組み合わせの分散は

⟨(p^+q^2)2⟩=ℏ2e2t,⟨(p^−q^2)2⟩=ℏ2e−2t\left\langle\left(\frac{\hat p+\hat q}{\sqrt2}\right)^{2}\right\rangle=\frac{\hbar}{2}e^{2t},\qquad \left\langle\left(\frac{\hat p-\hat q}{\sqrt2}\right)^{2}\right\rangle=\frac{\hbar}{2}e^{-2t}

となります。積は (ℏ/2)2(\hbar/2)^{2} で時間に依存せず、最小不確定性が保たれたままです。

以上をまとめると、スクイーズド状態は次の性質を持ちます。位相空間上の最小不確定性ガウス分布であって、その誤差楕円が不安定方向 p+qp+q には ete^{t} で伸び、安定方向 p−qp-q には e−te^{-t} で縮む、という変形(スクイーズ)を受けます。これは設問1 で見た古典的な指数増大・指数減衰とまったく同じ振る舞いで、指数の時定数まで一致します。座標分布が指数関数的に広がるので位置は次々に不確定になりますが、そのぶん p−qp-q 方向は鋭く決まり、波動関数の位相は古典的作用関数 q2/2q^{2}/2 に収束していきます。逆さ調和振動子では、量子ゆらぎが古典不安定性に沿って引き伸ばされ、状態が古典軌道に近づいていくわけです。

第2問 理想気体とラングミュア吸着

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ピストン付きの容器に、質量 mm の同種単原子分子 N (≫1)N\ (\gg1) 個からなる理想気体が入っています。分子は互いに区別できません。古典統計力学で扱い、プランク定数を hh、ボルツマン定数を kk とします。ガウス積分 ∫−∞+∞exp⁡(−ax2) dx=π/a\int_{-\infty}^{+\infty}\exp(-ax^{2})\,dx=\sqrt{\pi/a}(a>0a>0)とスターリングの公式 log⁡N!≃Nlog⁡N−N\log N!\simeq N\log N-N、および略記

α=(2πmh2)3/2\alpha=\left(\frac{2\pi m}{h^{2}}\right)^{3/2}

を使ってよいとされています。設問1 から設問5 は温度 TT と体積 VV を保った平衡状態、設問6 と設問7 は温度 TT と圧力 pp を保った状態を扱います。設問8 以降は容器底面の MM 個の吸着サイト(N≫M≫1N\gg M\gg1)を考えます。1 サイトは高々 1 分子を吸着し、吸着時のエネルギーは −ϵ (ϵ>0)-\epsilon\ (\epsilon>0)、非吸着時は 00 で、各サイトは独立に分子を吸着します。以下 β=1/kT\beta=1/kT と書きます。この問題は令和6年度 修士課程 専門科目 第2問と同一です。

1 分子の分配関数は、位相空間の積分を h3h^{3} で割ったものです。ハミルトニアンは運動エネルギーだけなので、空間積分は体積 VV を与えます。

z1(T,V)=1h3∫Vd3r∫d3p exp⁡ ⁣(−p22mkT)=Vh3(2πmkT)3=αV(kT)3/2z_{1}(T,V)=\frac{1}{h^{3}}\int_{V}d^{3}r\int d^{3}p\ \exp\!\left(-\frac{\boldsymbol{p}^{2}}{2mkT}\right) =\frac{V}{h^{3}}\left(\sqrt{2\pi mkT}\right)^{3} =\alpha V (kT)^{3/2}

運動量積分は 3 成分それぞれにガウス積分 ∫−∞+∞e−p2/(2mkT) dp=2πmkT\int_{-\infty}^{+\infty}e^{-p^{2}/(2mkT)}\,dp=\sqrt{2\pi mkT} を使いました。答えは z1(T,V)=αV(kT)3/2z_{1}(T,V)=\alpha V(kT)^{3/2} です。NN 個の分子は互いに相互作用せず、かつ区別できないので、同じ配置を N!N! 通り重複して数えた分を割ります。

Z(T,V,N)=1N! z1(T,V)NZ(T,V,N)=\frac{1}{N!}\,z_{1}(T,V)^{N}

が答えです。

F=−kTlog⁡ZF=-kT\log Z にスターリングの公式を使います。

F=−kT(Nlog⁡z1−log⁡N!)≃−kT(Nlog⁡z1−Nlog⁡N+N)F=-kT\left(N\log z_{1}-\log N!\right)\simeq-kT\left(N\log z_{1}-N\log N+N\right)

log⁡z1−log⁡N=log⁡(z1/N)\log z_{1}-\log N=\log(z_{1}/N) とまとめると

F(T,V,N)=−NkT[log⁡αV(kT)3/2N+1]F(T,V,N)=-NkT\left[\log\frac{\alpha V (kT)^{3/2}}{N}+1\right]

が答えです。

示量性とは、TT を固定して V→λVV\to\lambda V、N→λNN\to\lambda N としたとき F→λFF\to\lambda F となることです。設問2 の FF では VV と NN が比 V/NV/N の形でしか現れていない点が鍵で、

F(T,λV,λN)=−λNkT[log⁡α(λV)(kT)3/2λN+1]=λ⋅(−NkT[log⁡αV(kT)3/2N+1])=λF(T,V,N)F(T,\lambda V,\lambda N)=-\lambda NkT\left[\log\frac{\alpha (\lambda V)(kT)^{3/2}}{\lambda N}+1\right] =\lambda\cdot\left(-NkT\left[\log\frac{\alpha V(kT)^{3/2}}{N}+1\right]\right)=\lambda F(T,V,N)

となります。よって FF は (V,N)(V,N) について 1 次の同次関数であり、示量的です。対数の中の λ\lambda が分子と分母で相殺したことが本質で、これは設問1 で分配関数に 1/N!1/N! を入れたおかげです。1/N!1/N! を落として Z=z1NZ=z_{1}^{N} とすると F=−NkTlog⁡(αV(kT)3/2)F=-NkT\log\left(\alpha V(kT)^{3/2}\right) となり、−NkTlog⁡V-NkT\log V の項が λ\lambda 倍のもとで −λNkT(log⁡V+log⁡λ)-\lambda NkT(\log V+\log\lambda) となって示量性が破れます。いわゆるギブスのパラドックスです。

log⁡Z=Nlog⁡z1−log⁡N!\log Z=N\log z_{1}-\log N! で、z1∝β−3/2z_{1}\propto\beta^{-3/2} より log⁡z1=log⁡(αV)−32log⁡β\log z_{1}=\log(\alpha V)-\tfrac32\log\beta です。N!N! の項は β\beta に依らないので微分では落ちます。エネルギーの期待値は

⟨E⟩=−∂log⁡Z∂β=3N2β=32NkT\langle E\rangle=-\frac{\partial \log Z}{\partial\beta}=\frac{3N}{2\beta}=\frac{3}{2}NkT

となり、単原子理想気体のエネルギー等分配則を再現します。ゆらぎは log⁡Z\log Z の 2 階微分です。

⟨(E−⟨E⟩)2⟩=∂2log⁡Z∂β2=∂∂β(−3N2β)=3N2β2=32N(kT)2\langle (E-\langle E\rangle)^{2}\rangle=\frac{\partial^{2}\log Z}{\partial\beta^{2}}=\frac{\partial}{\partial\beta}\left(-\frac{3N}{2\beta}\right)=\frac{3N}{2\beta^{2}}=\frac{3}{2}N(kT)^{2}

これは熱力学的な関係 ⟨(ΔE)2⟩=kT2CV=kT2⋅32Nk\langle(\Delta E)^{2}\rangle=kT^{2}C_{V}=kT^{2}\cdot\tfrac32Nk と一致します。比をとると

⟨(E−⟨E⟩)2⟩⟨E⟩2=32N(kT)2(32NkT)2=23N\frac{\langle (E-\langle E\rangle)^{2}\rangle}{\langle E\rangle^{2}}=\frac{\tfrac32 N(kT)^{2}}{\left(\tfrac32NkT\right)^{2}}=\frac{2}{3N}

答えは 2/(3N)2/(3N) で、N−1N^{-1} のオーダーです。相対的なゆらぎの大きさそのものは 2/3N∼N−1/2\sqrt{2/3N}\sim N^{-1/2} で、N≫1N\gg1 では無視できます。これがカノニカル分布とミクロカノニカル分布が熱力学的極限で等価になる理由です。

S=−(∂F/∂T)V,NS=-(\partial F/\partial T)_{V,N} を計算します。TT 依存性を見やすくするため F=−NkT[log⁡(αV/N)+32log⁡(kT)+1]F=-NkT\left[\log(\alpha V/N)+\tfrac32\log(kT)+1\right] と書き直すと

∂F∂T=−Nk[log⁡αV(kT)3/2N+1]−NkT⋅32T\frac{\partial F}{\partial T}=-Nk\left[\log\frac{\alpha V(kT)^{3/2}}{N}+1\right]-NkT\cdot\frac{3}{2T}

なので

S=Nk[log⁡αV(kT)3/2N+52]=Nk[log⁡{VN(2πmkTh2)3/2}+52]S=Nk\left[\log\frac{\alpha V(kT)^{3/2}}{N}+\frac{5}{2}\right] =Nk\left[\log\left\{\frac{V}{N}\left(\frac{2\pi mkT}{h^{2}}\right)^{3/2}\right\}+\frac{5}{2}\right]

が答えです。これはザックール・テトロードの式です。検算として S=(⟨E⟩−F)/TS=(\langle E\rangle-F)/T を使うと、32Nk+Nk[log⁡(z1/N)+1]=Nk[log⁡(z1/N)+52]\tfrac32Nk+Nk\left[\log(z_{1}/N)+1\right]=Nk\left[\log(z_{1}/N)+\tfrac52\right] となって一致します。対数の引数は (V/N)λT−3(V/N)\lambda_{T}^{-3}(λT=h/2πmkT\lambda_{T}=h/\sqrt{2\pi mkT} は熱的ドブロイ波長)で無次元であり、次元も合っています。

圧力は p=−(∂F/∂V)T,Np=-(\partial F/\partial V)_{T,N} です。設問2 の FF で VV 依存性は −NkTlog⁡V-NkT\log V の項だけなので

p=−∂F∂V=NkTV⟹V=NkTpp=-\frac{\partial F}{\partial V}=\frac{NkT}{V} \qquad\Longrightarrow\qquad V=\frac{NkT}{p}

が答えです。理想気体の状態方程式そのものです。

化学ポテンシャルは μ=(∂F/∂N)T,V\mu=(\partial F/\partial N)_{T,V} です。F=−NkT[log⁡(αV(kT)3/2)−log⁡N+1]F=-NkT\left[\log\left(\alpha V(kT)^{3/2}\right)-\log N+1\right] を NN で微分すると、−N⋅(−log⁡N)-N\cdot(-\log N) の微分から +kT+kT が出て括弧内の +1+1 を打ち消します。

μ=−kT[log⁡αV(kT)3/2N+1]+kT=−kTlog⁡αV(kT)3/2N\mu=-kT\left[\log\frac{\alpha V(kT)^{3/2}}{N}+1\right]+kT=-kT\log\frac{\alpha V(kT)^{3/2}}{N}

ここに設問6 の V/N=kT/pV/N=kT/p を代入すると

μ(T,p)=−kTlog⁡α(kT)5/2p=kTlog⁡pα(kT)5/2\mu(T,p)=-kT\log\frac{\alpha (kT)^{5/2}}{p}=kT\log\frac{p}{\alpha (kT)^{5/2}}

が答えです。検算を二つ挙げます。ギブスの自由エネルギーが G=F+pV=NμG=F+pV=N\mu を満たすことは、(F+pV)/N=−kT[log⁡(αV(kT)3/2/N)+1]+kT(F+pV)/N=-kT\left[\log\left(\alpha V(kT)^{3/2}/N\right)+1\right]+kT から直ちに確認できます。次元も合っています。α(kT)3/2=λT−3\alpha(kT)^{3/2}=\lambda_{T}^{-3} なので α(kT)5/2=kT/λT3\alpha(kT)^{5/2}=kT/\lambda_{T}^{3} は圧力の次元を持ち、対数の引数は無次元です。すなわち μ=kTlog⁡(pλT3/kT)\mu=kT\log\left(p\lambda_{T}^{3}/kT\right) と書けます。

吸着サイト 1 個の状態は、空(エネルギー 00、粒子数 00)と占有(エネルギー −ϵ-\epsilon、粒子数 11)の 2 通りだけです。グランドカノニカルの重み e−β(E−μn)e^{-\beta(E-\mu n)} はそれぞれ 11 と eβ(μ+ϵ)e^{\beta(\mu+\epsilon)} なので、1 サイトの大分配関数は ξ=1+eβ(μ+ϵ)\xi=1+e^{\beta(\mu+\epsilon)} です。各サイトは独立なので MM 乗すればよく

Ξ(T,μ,M)=[1+e(μ+ϵ)/kT]M\Xi(T,\mu,M)=\left[1+e^{(\mu+\epsilon)/kT}\right]^{M}

が答えです。

1 サイトあたりの平均粒子数がそのまま占有率 θ\theta です。

θ=kTM∂log⁡Ξ∂μ=eβ(μ+ϵ)1+eβ(μ+ϵ)=1e−(μ+ϵ)/kT+1\theta=\frac{kT}{M}\frac{\partial\log\Xi}{\partial\mu} =\frac{e^{\beta(\mu+\epsilon)}}{1+e^{\beta(\mu+\epsilon)}} =\frac{1}{e^{-(\mu+\epsilon)/kT}+1}

答えは θ(T,μ)=[e−(μ+ϵ)/kT+1]−1\theta(T,\mu)=\left[e^{-(\mu+\epsilon)/kT}+1\right]^{-1} です。占有数が 00 か 11 に限られるため、−ϵ-\epsilon を 1 粒子エネルギーとするフェルミ分布の形になります。μ→−∞\mu\to-\infty で θ→0\theta\to0、μ→+∞\mu\to+\infty で θ→1\theta\to1、μ=−ϵ\mu=-\epsilon で θ=1/2\theta=1/2 です。

気体と吸着サイトは分子をやりとりして平衡にあるので、化学ポテンシャルが共通です。設問7 より eβμ=p/[α(kT)5/2]e^{\beta\mu}=p/\left[\alpha(kT)^{5/2}\right] なので、これを設問9 に代入します。

θ=eβμeβϵ1+eβμeβϵ=pp0(T)+p,p0(T)=α(kT)5/2e−ϵ/kT\theta=\frac{e^{\beta\mu}e^{\beta\epsilon}}{1+e^{\beta\mu}e^{\beta\epsilon}} =\frac{p}{p_{0}(T)+p},\qquad p_{0}(T)=\alpha (kT)^{5/2}e^{-\epsilon/kT}

これがラングミュアの吸着等温式(圧力に対する吸着サイトの占有率の関係式)です。p0p_{0} は圧力の次元を持つ、温度だけで決まる量です。TT 一定でのグラフの特徴を確定させます。

原点を通ります(θ(0)=0\theta(0)=0)。原点での傾きは θ′(0)=1/p0\theta'(0)=1/p_{0} で有限であり、p≪p0p\ll p_{0} では θ≃p/p0\theta\simeq p/p_{0} と圧力に比例します(ヘンリーの法則に相当します)。導関数は θ′(p)=p0/(p0+p)2>0\theta'(p)=p_{0}/(p_{0}+p)^{2}>0 なので単調増加、2 階導関数は θ′′(p)=−2p0/(p0+p)3<0\theta''(p)=-2p_{0}/(p_{0}+p)^{3}<0 なので p≥0p\ge0 の全域で上に凸です。p=p0p=p_{0} で θ=1/2\theta=1/2 を通ります。p→∞p\to\infty で θ→1\theta\to1 に下から漸近し、θ=1\theta=1 が水平漸近線です。θ\theta が 11 を超えないのは 1 サイトに高々 1 分子という制約の直接の帰結で、高圧側では飽和します。温度を上げると p0p_{0} が大きくなるので、同じ圧力での θ\theta は小さくなり、曲線は右へ寝ます。

pθ11/2Op₀

第3問 レイリー散乱と光ピンセット

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電磁波と荷電粒子の相互作用に関係した二つの現象を扱います。荷電粒子および微小誘電体は xx 軸上のみを運動し、xx 軸上の電場は位置 xx と時刻 tt の関数 E(x,t)E(x,t) を用いて E=(E(x,t),0,0)\boldsymbol{E}=(E(x,t),0,0) と表されるものとします。粒子の速さは光速に比べて十分小さく、磁場の影響は無視します。粒子の大きさは電磁波の波長より十分小さいものとします。

設問1 から設問3 では、質量 mm、電荷 qq の荷電粒子に、電場による力と原点からの変位に比例する復元力 −kx-kx(k>0k>0)がはたらく場合のレイリー散乱を調べます。設問4 以降では、xx 軸上の位置 xx にある微小誘電体に電気双極子モーメント p=αE(x,t)p=\alpha E(x,t)(α>0\alpha>0)が誘起される場合の光ピンセットを調べます。この問題は令和6年度 修士課程 専門科目 第3問と同一です。

xx 軸方向にはたらく力は、電場による力 qE(x,t)qE(x,t) と復元力 −kx-kx です。減衰項は無視するので、ニュートンの運動方程式は

md2xdt2=qE(x,t)−kxm\frac{d^{2}x}{dt^{2}}=qE(x,t)-kx

です。粒子の大きさおよび振動振幅が波長より十分小さいので、EE は粒子の位置における値として評価してよく、実質的に時間だけの関数として扱えます。

図1 のように平面波が zz 軸の負の方向から入射し、電場は xx 軸方向を向いています。粒子の位置で E=E0sin⁡(ωt)E=E_{0}\sin(\omega t) なので、運動方程式は強制振動の式

mx¨+kx=qE0sin⁡(ωt)m\ddot x+kx=qE_{0}\sin(\omega t)

になります。角周波数 ω\omega で振動する解を x(t)=Asin⁡(ωt)x(t)=A\sin(\omega t) と置いて代入すると (−mω2+k)A=qE0\left(-m\omega^{2}+k\right)A=qE_{0} となります。ω02=k/m\omega_{0}^{2}=k/m と書けば

x(t)=qE0m(ω02−ω2)sin⁡(ωt),ω0=kmx(t)=\frac{qE_{0}}{m\left(\omega_{0}^{2}-\omega^{2}\right)}\sin(\omega t), \qquad \omega_{0}=\sqrt{\frac{k}{m}}

が答えです。ω→ω0\omega\to\omega_{0} で振幅が発散するので、共振の角周波数は ω0=k/m\omega_{0}=\sqrt{k/m} です。ω≪ω0\omega\ll\omega_{0} では x≃(qE0/k)sin⁡ωtx\simeq(qE_{0}/k)\sin\omega t と静的な釣り合いに近づき、ω≫ω0\omega\gg\omega_{0} では振幅が ω−2\omega^{-2} で減り、電場と逆位相で振動します。

加速度は上の解を 2 回微分して

a=x¨ e^x=−ω2x e^x=−qE0 ω2m(ω02−ω2)sin⁡(ωt) e^x\boldsymbol{a}=\ddot x\,\hat{\boldsymbol{e}}_{x}=-\omega^{2}x\,\hat{\boldsymbol{e}}_{x} =-\frac{q E_{0}\,\omega^{2}}{m\left(\omega_{0}^{2}-\omega^{2}\right)}\sin(\omega t)\,\hat{\boldsymbol{e}}_{x}

です。散乱断面積は ∣n×(n×a)∣2|\boldsymbol{n}\times(\boldsymbol{n}\times\boldsymbol{a})|^{2} に比例し、単位面積あたりの入射強度は E02E_{0}^{2} に比例するので、断面積の ω\omega 依存性は

σ ∝ ∣a∣2E02 ∝ ω4(ω02−ω2)2 → ω≪ω0  ω4ω04\sigma\ \propto\ \frac{|\boldsymbol{a}|^{2}}{E_{0}^{2}}\ \propto\ \frac{\omega^{4}}{\left(\omega_{0}^{2}-\omega^{2}\right)^{2}} \ \xrightarrow[\ \omega\ll\omega_{0}\ ]{}\ \frac{\omega^{4}}{\omega_{0}^{4}}

となります。すなわち σ∝ω4∝λ−4\sigma\propto\omega^{4}\propto\lambda^{-4} で、これがレイリー散乱の λ−4\lambda^{-4} 則です。青い光は赤い光より角周波数が大きいので、青い光のほうが散乱されやすいです。波長を赤 700 nm700\,\mathrm{nm}、青 450 nm450\,\mathrm{nm} とすると比は (700/450)4≈6(700/450)^{4}\approx6 倍程度になります。空が青いのはこの効果です。

方向依存性は幾何因子で決まります。a\boldsymbol{a} が xx 軸方向を向いていることを使い、n\boldsymbol{n} と xx 軸のなす角を Θ\Theta とすると、n\boldsymbol{n} が単位ベクトルであることから

∣n×(n×a)∣2=∣a∣2−(n⋅a)2=∣a∣2sin⁡2Θ|\boldsymbol{n}\times(\boldsymbol{n}\times\boldsymbol{a})|^{2}=|\boldsymbol{a}|^{2}-(\boldsymbol{n}\cdot\boldsymbol{a})^{2}=|\boldsymbol{a}|^{2}\sin^{2}\Theta

です。xx 軸方向(Θ=0\Theta=0)では n∥a\boldsymbol{n}\parallel\boldsymbol{a} なので外積が消えて放射はゼロ、zz 軸方向(Θ=π/2\Theta=\pi/2)では n⊥a\boldsymbol{n}\perp\boldsymbol{a} で sin⁡2Θ=1\sin^{2}\Theta=1 となり最大です。したがって zz 軸方向のほうが散乱されやすいです。理由は、双極子放射の振幅が加速度のうち視線に垂直な成分だけで決まるためで、振動方向(ここでは xx 軸)に沿った方向には輻射が出ません。散乱光が振動方向に垂直な面内で強くなり、しかも直線偏光しているという、青空の偏光の起源でもあります。

E(x,t)=E0exp⁡(−x2/σ2)sin⁡(ωt)E(x,t)=E_{0}\exp\left(-x^{2}/\sigma^{2}\right)\sin(\omega t) を x=bx=b のまわりで 1 次まで展開します。振幅部分の微分は

ddx(E0e−x2/σ2)∣x=b=−2bσ2E0e−b2/σ2\frac{d}{dx}\left(E_{0}e^{-x^{2}/\sigma^{2}}\right)\bigg|_{x=b}=-\frac{2b}{\sigma^{2}}E_{0}e^{-b^{2}/\sigma^{2}}

なので

E(x,t)≃E0e−b2/σ2{1−2bσ2(x−b)}sin⁡(ωt)E(x,t)\simeq E_{0}e^{-b^{2}/\sigma^{2}}\left\{1-\frac{2b}{\sigma^{2}}(x-b)\right\}\sin(\omega t)

となります。与えられた形と比べて

E1=E0exp⁡ ⁣(−b2σ2),β=−2bσ2E_{1}=E_{0}\exp\!\left(-\frac{b^{2}}{\sigma^{2}}\right),\qquad \beta=-\frac{2b}{\sigma^{2}}

が答えです。β\beta は長さの逆数の次元を持ち、相対的な電場勾配 E′/EE'/E を x=bx=b で評価したものです。b>0b>0 なら β<0\beta<0、b<0b<0 なら β>0\beta>0 で、β\beta の符号は常に「中心軸 x=0x=0 に向かう側で電場が強くなる」向きを指しています。

図2 のように、電荷 +q+q は x=b+d/2x=b+d/2、電荷 −q-q は x=b−d/2x=b-d/2 にあります。それぞれに式 (2) の電場による力が独立にはたらくとすると、和は

F=qE ⁣(b+d2,t)+(−q)E ⁣(b−d2,t)=qE1{1+βd2}sin⁡(ωt)−qE1{1−βd2}sin⁡(ωt)\begin{aligned} F&=qE\!\left(b+\frac{d}{2},t\right)+(-q)E\!\left(b-\frac{d}{2},t\right)\\ &=qE_{1}\left\{1+\beta\frac{d}{2}\right\}\sin(\omega t)-qE_{1}\left\{1-\beta\frac{d}{2}\right\}\sin(\omega t) \end{aligned}

です。定数項 11 が打ち消し、勾配の項だけが 2 倍で残ります。

F=q d β E1sin⁡(ωt)F=q\,d\,\beta\,E_{1}\sin(\omega t)

が答えです。一様電場の部分は正負の電荷に逆向きに同じ大きさではたらくので消え、電場勾配 β\beta に比例した力だけが生き残ります。β→0\beta\to0 で F→0F\to0 となることが、この力が勾配力であることの確認になります。

∣βd∣≪1|\beta d|\ll1 とすると双極子の内部では電場をほぼ一定とみなせるので、誘起される双極子モーメントは双極子中心 x=bx=b での電場で決まり、qd=p=αE(b,t)=αE1sin⁡(ωt)qd=p=\alpha E(b,t)=\alpha E_{1}\sin(\omega t) です。これを設問5 の結果に代入します。

F=βE1sin⁡(ωt)⋅αE1sin⁡(ωt)=αβE12sin⁡2(ωt)=αβE122{1−cos⁡(2ωt)}F=\beta E_{1}\sin(\omega t)\cdot\alpha E_{1}\sin(\omega t)=\alpha\beta E_{1}^{2}\sin^{2}(\omega t) =\frac{\alpha\beta E_{1}^{2}}{2}\left\{1-\cos(2\omega t)\right\}

が答えです。この力が電場について 2 次であることが決定的です。sin⁡2(ωt)≥0\sin^{2}(\omega t)\ge0 なので力の符号は αβ\alpha\beta の符号だけで決まり、1 周期のあいだ向きを変えません。したがって時間平均が残ります。

⟨F⟩=αβE122=−αbσ2E02exp⁡ ⁣(−2b2σ2)\langle F\rangle=\frac{\alpha\beta E_{1}^{2}}{2} =-\frac{\alpha b}{\sigma^{2}}E_{0}^{2}\exp\!\left(-\frac{2b^{2}}{\sigma^{2}}\right)

α>0\alpha>0 なので、b>0b>0 では ⟨F⟩<0\langle F\rangle<0、b<0b<0 では ⟨F⟩>0\langle F\rangle>0 となり、力は常に x=0x=0 の側を向きます。∣b∣≪σ|b|\ll\sigma では ⟨F⟩≃−(αE02/σ2)b\langle F\rangle\simeq-\left(\alpha E_{0}^{2}/\sigma^{2}\right)b とばね定数 αE02/σ2\alpha E_{0}^{2}/\sigma^{2} の復元力になり、中心軸は安定な釣り合い点です。これが誘電体がレーザー光の中心軸付近に引き込まれ、そこにトラップされる理由です。微視的に言えば、誘電体が中心軸から外れると、軸に近い側の端の電場のほうが強く、その側の電荷が受ける力が勝つため、全体として軸へ引かれるということです。

分極率 α\alpha の微小誘電体を電場 EE の中に置くと、双極子 p=αEp=\alpha E が誘起され、系のエネルギーは

U=−12pE=−12αE2U=-\frac{1}{2}pE=-\frac{1}{2}\alpha E^{2}

だけ下がります。係数 1/21/2 は、双極子が外から与えられたものではなく電場自身によって誘起されるため、分極させる仕事の分だけ利得が半分になることによります。α>0\alpha>0 なので U<0U<0、つまり誘電体は電場の強い領域にあるほどエネルギーが低くなります。時間平均をとると ⟨sin⁡2ωt⟩=1/2\langle\sin^{2}\omega t\rangle=1/2 より

⟨U(x)⟩=−α4E02exp⁡ ⁣(−2x2σ2)\langle U(x)\rangle=-\frac{\alpha}{4}E_{0}^{2}\exp\!\left(-\frac{2x^{2}}{\sigma^{2}}\right)

で、これは x=0x=0 を最小点とするポテンシャル井戸です。レーザー光の強度は中心軸上で最大なので、誘電体はエネルギーを最も下げられる位置、すなわち中心軸上に落ち込みます。これが光ピンセットの機構です。井戸の深さは αE02/4\alpha E_{0}^{2}/4 で、これが熱エネルギー kTkT より十分大きければ実際に捕捉されます。整合性の確認として −d⟨U⟩/dx-d\langle U\rangle/dx を計算すると −(αx/σ2)E02e−2x2/σ2-\left(\alpha x/\sigma^{2}\right)E_{0}^{2}e^{-2x^{2}/\sigma^{2}} となり、x=bx=b とおけば設問6 で求めた時間平均した力に一致します。

出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 令和6年度 博士課程 入学試験問題 物理学。問題文は要約して引用しています。

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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