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平成30年度 東大院 物理学専攻 修士 数学 解答

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平成29年8月21日実施、試験時間は90分です。第1問は行ベクトル AA ひとつだけを材料に、特異値分解・擬逆行列・階数1の対称行列の対角化可能性という線形代数の三点を順に問います。第2問は移流方程式から出発し、定常バーガース方程式の衝撃波解を求めたうえで、コール–ホップ変換によって非線形方程式を熱伝導方程式に帰着させます。個々の計算は重くありませんが、どちらの問も設問間の依存が強く、前の設問の結果をそのまま道具として使う設計になっています。

問題分野主題
第1問線形代数行ベクトルの直交分解、擬逆ベクトル、AnTAnA_n^T A_n の固有値と対角化
第2問微分方程式・フーリエ解析移流方程式、定常バーガース方程式、コール–ホップ変換

2問すべてに解答する形式です。

第1問 行ベクトルの分解と擬逆ベクトル

Section titled “第1問 行ベクトルの分解と擬逆ベクトル”

まず2成分の行ベクトル A=(a,b)A=(a,b) を扱います。a,ba,b はどちらもゼロでない実数で、TT は転置を表します。ATA^T は列ベクトル、AAT=a2+b2A A^T = a^2+b^21×11\times 1 行列(スカラー)、

ATA=(a2ababb2)A^T A=\begin{pmatrix} a^2 & ab \\ ab & b^2\end{pmatrix}

2×22\times2 行列です。前半では A=BVA=BVB=(c,0)B=(c,0)cc は正の実数、VV は実対称直交行列)という分解と、AA~=1A\tilde{A}=1 かつ A~A\tilde{A}A が実対称、という2条件で定まる列ベクトル A~\tilde{A} を求めます。後半は nn 成分の行ベクトル An=(a1,,an)A_n=(a_1,\dots,a_n)(各 aia_i はゼロでない実数、n3n\ge3)への一般化です。以下 II は単位行列を表します。

固有多項式を計算します。

det ⁣(ATAλI)=(a2λ)(b2λ)(ab)2=λ2(a2+b2)λ=λ(λ(a2+b2)).\begin{aligned} \det\!\left(A^T A-\lambda I\right)&=(a^2-\lambda)(b^2-\lambda)-(ab)^2\\ &=\lambda^2-(a^2+b^2)\lambda\\ &=\lambda\left(\lambda-(a^2+b^2)\right). \end{aligned}

よって固有値は λ+=a2+b2\lambda_+=a^2+b^2λ0=0\lambda_0=0 です。a,ba,b はゼロでないので a2+b2>0a^2+b^2>0 であり、この2つは異なる固有値です。

固有ベクトルは、AAT=a2+b2A A^T=a^2+b^2 がスカラーであることを使うと計算せずに読めます。

(ATA)AT=AT(AAT)=(a2+b2)AT\left(A^T A\right)A^T=A^T\left(A A^T\right)=(a^2+b^2)\,A^T

より AT=(ab)A^T=\begin{pmatrix}a\\ b\end{pmatrix}λ+\lambda_+ の固有ベクトルです。λ0=0\lambda_0=0 については、AT0A^T\neq 0 なので ATAX=AT(AX)=0A^T A X=A^T (AX)=0AX=0AX=0 が同値であり、条件は ax1+bx2=0ax_1+bx_2=0 という1本の式に帰着します。したがって (ba)\begin{pmatrix}-b\\ a\end{pmatrix} が固有ベクトルです。

答えは、固有値 a2+b2a^2+b^2 に対する固有ベクトルが α(ab)\alpha\begin{pmatrix}a\\ b\end{pmatrix}α\alpha は任意のゼロでない定数)、固有値 00 に対する固有ベクトルが β(ba)\beta\begin{pmatrix}-b\\ a\end{pmatrix}β\beta は任意のゼロでない定数)です。

検算として、固有値の和 a2+b2a^2+b^2Tr(ATA)=a2+b2\operatorname{Tr}(A^TA)=a^2+b^2 に一致し、積 00det(ATA)=a2b2(ab)2=0\det(A^TA)=a^2b^2-(ab)^2=0 に一致します。2つの固有ベクトルの内積は ab+ab=0-ab+ab=0 で、実対称行列の異なる固有値に属する固有ベクトルが直交するという性質とも整合します。

VV が実対称かつ直交という条件は VT=VV^T=VVTV=IV^TV=I を合わせたものなので、V2=IV^2=I、すなわち V1=VV^{-1}=V を意味します。

まず cc を決めます。A=BVA=BV の両辺から

AAT=BVVTBT=BBT=c2A A^T=B V V^T B^T=B B^T=c^2

であり、AAT=a2+b2A A^T=a^2+b^2 です。c>0c>0 なので c=a2+b2c=\sqrt{a^2+b^2} です。

次に VV を決めます。V=(pqqr)V=\begin{pmatrix} p & q\\ q & r\end{pmatrix}(対称性を先に課しました)と置くと

BV=(c,0)(pqqr)=(cp,cq)=(a,b)BV=(c,0)\begin{pmatrix} p & q\\ q & r\end{pmatrix}=(cp,\,cq)=(a,b)

から p=a/cp=a/cq=b/cq=b/c が確定します。直交性 VTV=IV^TV=I は成分では p2+q2=1p^2+q^2=1q2+r2=1q^2+r^2=1q(p+r)=0q(p+r)=0 の3式です。ここで b0b\neq0 より q0q\neq0 なので、第3式から r=pr=-p が従います(q=0q=0 の枝、すなわち VV が対角行列となる場合は b0b\neq0 に矛盾するので排除されます)。残る2式は p2+q2=(a2+b2)/c2=1p^2+q^2=(a^2+b^2)/c^2=1 で自動的に満たされます。

答えは

c=a2+b2,V=1a2+b2(abba)c=\sqrt{a^2+b^2},\qquad V=\frac{1}{\sqrt{a^2+b^2}}\begin{pmatrix} a & b\\ b & -a\end{pmatrix}

で、この条件下で ccVV は一意に定まります。実際

V2=1a2+b2(a2+b200a2+b2)=I,BV=a2+b2(aa2+b2, ba2+b2)=AV^2=\frac{1}{a^2+b^2}\begin{pmatrix} a^2+b^2 & 0\\ 0 & a^2+b^2\end{pmatrix}=I, \qquad BV=\sqrt{a^2+b^2}\left(\frac{a}{\sqrt{a^2+b^2}},\ \frac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\right)=A

と確認できます。detV=1\det V=-1 なので VV は回転ではなく鏡映です。この分解は 1×21\times2 行列 AA の特異値分解にあたり、c=a2+b2c=\sqrt{a^2+b^2} が唯一の特異値、VV が右側のユニタリ因子です。設問1の固有値 a2+b2=c2a^2+b^2=c^2 が特異値の2乗になっていることも整合します。

B~=(β1β2)\tilde{B}=\begin{pmatrix}\beta_1\\ \beta_2\end{pmatrix} と置きます。BB~=cβ1=1B\tilde{B}=c\beta_1=1 から β1=1/c\beta_1=1/c です。一方

B~B=(β1β2)(c,0)=(cβ10cβ20)\tilde{B}B=\begin{pmatrix}\beta_1\\ \beta_2\end{pmatrix}(c,0)=\begin{pmatrix} c\beta_1 & 0\\ c\beta_2 & 0\end{pmatrix}

が対称であるためには非対角成分が等しい、すなわち cβ2=0c\beta_2=0 が必要で、c>0c>0 より β2=0\beta_2=0 です。逆にこのとき B~B=(1000)\tilde{B}B=\begin{pmatrix}1&0\\0&0\end{pmatrix} で実対称になります。

答えは

B~=1c(10)=BTc2\tilde{B}=\frac{1}{c}\begin{pmatrix}1\\ 0\end{pmatrix}=\frac{B^T}{c^2}

で、これが唯一の解です。

答えは A~=VB~\tilde{A}=V\tilde{B} です。2つの条件を確かめます。V2=IV^2=IA=BVA=BV を使うと

A(VB~)=BVVB~=BV2B~=BB~=1A\left(V\tilde{B}\right)=BV\cdot V\tilde{B}=B\,V^2\,\tilde{B}=B\tilde{B}=1

です。また

(VB~)A=VB~BV=V(B~B)V\left(V\tilde{B}\right)A=V\tilde{B}\,BV=V\left(\tilde{B}B\right)V

であり、VV が対称、B~B\tilde{B}B が設問3より対称なので

(V(B~B)V)T=VT(B~B)TVT=V(B~B)V\left(V(\tilde{B}B)V\right)^T=V^T\left(\tilde{B}B\right)^T V^T=V\left(\tilde{B}B\right)V

となって対称です。成分はすべて実数なので実対称行列です。

一意性も直接確認できます。A~=(pq)\tilde{A}=\begin{pmatrix}p\\ q\end{pmatrix} とすると条件は ap+bq=1ap+bq=1 と、A~A=(papbqaqb)\tilde{A}A=\begin{pmatrix}pa & pb\\ qa & qb\end{pmatrix} の対称性 pb=qapb=qa です。a0a\neq0 より q=pb/aq=pb/a で、これを第1式に入れると p(a2+b2)/a=1p(a^2+b^2)/a=1、すなわち p=a/(a2+b2)p=a/(a^2+b^2)q=b/(a2+b2)q=b/(a^2+b^2) と一意に決まります。つまり

A~=VB~=1c1c(ab)=ATa2+b2\tilde{A}=V\tilde{B}=\frac{1}{c}\cdot\frac{1}{c}\begin{pmatrix}a\\ b\end{pmatrix}=\frac{A^T}{a^2+b^2}

で、両者は確かに一致します。この A~\tilde{A}AA のムーア–ペンローズ擬逆行列です。

Ni=1nai2=AnAnTN\equiv\sum_{i=1}^{n}a_i^2=A_nA_n^T と書きます。各 aia_i がゼロでないので N>0N>0 です。

A~nAnT/N\tilde{A}_n\equiv A_n^T/N と置くと AnA~n=AnAnT/N=1A_n\tilde{A}_n=A_nA_n^T/N=1 なので、X=vA~nX=v\tilde{A}_nAnX=vA_nX=v の特殊解です。AnX=vA_nX=v は1本の線形方程式なので、一般解は

X=vA~n+Y,AnY=0X=v\tilde{A}_n+Y,\qquad A_nY=0

と書けます(Y=XvA~nY=X-v\tilde{A}_nAnY=vv=0A_nY=v-v=0 を満たすことから逆も言えます)。ここで A~n\tilde{A}_nYY は直交します。実際

A~nTY=(AnT)TYN=AnYN=0\tilde{A}_n^{\,T}Y=\frac{\left(A_n^T\right)^T Y}{N}=\frac{A_nY}{N}=0

です。したがって

X2=v2A~n2+2vA~nTY+Y2=v2N+Y2  v2N|X|^2=v^2\left|\tilde{A}_n\right|^2+2v\,\tilde{A}_n^{\,T}Y+|Y|^2=\frac{v^2}{N}+|Y|^2\ \ge\ \frac{v^2}{N}

となり(A~n2=AnAnT/N2=1/N|\tilde{A}_n|^2=A_nA_n^T/N^2=1/N を使いました)、等号は Y=0Y=0 のときに限ります。よって最小値を与える解は一意で、

X0=vi=1nai2AnT=va12++an2(a1an),X02=v2i=1nai2X_0=\frac{v}{\sum_{i=1}^{n}a_i^2}A_n^T=\frac{v}{a_1^2+\cdots+a_n^2}\begin{pmatrix}a_1\\ \vdots\\ a_n\end{pmatrix}, \qquad |X_0|^2=\frac{v^2}{\sum_{i=1}^{n}a_i^2}

です。これは X0=vA~nX_0=v\tilde{A}_n の形をしており、A~n=AnT/N\tilde{A}_n=A_n^T/Nvv を含みません。

主張の証明に移ります。AnA~n=AnAnT/N=N/N=1A_n\tilde{A}_n=A_nA_n^T/N=N/N=1 は上で示したとおりです。また

A~nAn=AnTAnN\tilde{A}_nA_n=\frac{A_n^TA_n}{N}

で、転置の公式 (XY)T=YTXT(XY)^T=Y^TX^T(AnT)T=An(A_n^T)^T=A_n から

(AnTAn)T=AnT(AnT)T=AnTAn\left(A_n^TA_n\right)^T=A_n^T\left(A_n^T\right)^T=A_n^TA_n

なので A~nAn\tilde{A}_nA_n は対称です。NNaia_i が実数なので成分も実数で、実対称行列です。

なお n=2n=2 とすれば A~2=AT/(a2+b2)\tilde{A}_2=A^T/(a^2+b^2) で、設問4の A~\tilde{A} と一致します。幾何的には、X0X_0 は超平面 AnX=vA_nX=v 上で原点に最も近い点、すなわち原点から超平面へ下ろした垂線の足であり、その方向が法線方向 AnTA_n^T になるという内容です。

前半を示します。MM を(一般には長方形の)実行列とし、λ0\lambda\neq0MTMM^TM の固有値、x0x\neq0 をその固有ベクトルとします。

MTMx=λx.M^TMx=\lambda x.

まず Mx0Mx\neq0 です。もし Mx=0Mx=0 なら左辺が MT(Mx)=0M^T(Mx)=0 となり λx=0\lambda x=0 を得ますが、λ0\lambda\neq0 かつ x0x\neq0 に矛盾します。そこで上式の両辺に左から MM を掛けると

MMT(Mx)=M(MTMx)=λ(Mx)MM^T(Mx)=M\left(M^TMx\right)=\lambda\, (Mx)

となり、Mx0Mx\neq0MMTMM^T の固有ベクトルで、固有値は λ\lambda です。よって MTMM^TM のゼロでない固有値は MMTMM^T の固有値でもあります。

後半に使います。M=AnM=A_n とすると MTM=AnTAnM^TM=A_n^TA_nn×nn\times n)、MMT=AnAnT=NMM^T=A_nA_n^T=N1×11\times1)です。1×11\times1 行列 NN の固有値は NN のみなので、AnTAnA_n^TA_n のゼロでない固有値は N=iai2N=\sum_i a_i^2 に限られます。つまり AnTAnA_n^TA_n の固有値はすべて NN00 です。

NN の重複度(代数的重複度)を mm とすると、固有値の総和が跡に等しいことから

mN=Tr(AnTAn)=i=1nai2=N.mN=\operatorname{Tr}\left(A_n^TA_n\right)=\sum_{i=1}^{n}a_i^2=N.

N0N\neq0 なので m=1m=1 です。答えは、固有値 i=1nai2\sum_{i=1}^{n}a_i^2 が重複度1、固有値 00 が重複度 n1n-1 です。

NN が実際に固有値であることは AnTAnAnT=AnT(AnAnT)=NAnTA_n^TA_n\,A_n^T=A_n^T(A_nA_n^T)=N A_n^T からも直接分かります。また AnTAnA_n^TA_n の階数は1(すべての行が AnA_n の定数倍)なので核の次元が n1n-1、これが固有値 00 の重複度 n1n-1 と一致します。n3n\ge3 なので 00 は必ず重複した固有値です。

AnTAnA_n^TA_n は対角化可能です。理由は2つの言い方ができます。

第一に、設問5で見たように AnTAnA_n^TA_n は実対称行列です。実対称行列はスペクトル定理により、実直交行列で必ず対角化できます。固有値が重複していても、実対称性があれば重複度の分だけ独立な固有ベクトルが取れることが保証されるので、設問文にある「重複固有値をもつと対角化可能とは限らない」という一般論はここでは効きません。

第二に、固有空間の次元を直接数えても確認できます。固有値 00 の固有空間は AnTAnX=0A_n^TA_nX=0 の解空間ですが、左から XTX^T を掛けると AnX2=XTAnTAnX=0|A_nX|^2=X^TA_n^TA_nX=0、すなわち AnX=0A_nX=0 が従い、逆も明らかなので

ker(AnTAn)=kerAn={X | i=1naixi=0}\ker\left(A_n^TA_n\right)=\ker A_n=\left\{X\ \middle|\ \sum_{i=1}^{n}a_ix_i=0\right\}

で、これは n1n-1 次元の超平面です。固有値 00 の幾何的重複度 n1n-1 が設問6で求めた代数的重複度 n1n-1 に一致します。固有値 NN については幾何的重複度が1以上で代数的重複度が1なので、こちらも一致します。幾何的重複度の和が 1+(n1)=n1+(n-1)=n となるので対角化可能です。

具体的な固有基底も書けます。AnTA_n^T と、wi=ai+1eiaiei+1w_i=a_{i+1}e_i-a_ie_{i+1}i=1,,n1i=1,\dots,n-1eie_i は標準基底)の組です。wiw_i の第 ii 成分は ai+10a_{i+1}\neq0 で、w1,,wn1w_1,\dots,w_{n-1} を並べた行列は階段形になるので1次独立であり、いずれも Anwi=aiai+1ai+1ai=0A_nw_i=a_ia_{i+1}-a_{i+1}a_i=0 を満たします。これらを列に並べた PP を使えば

P1(AnTAn)P=diag(i=1nai2, 0, , 0)P^{-1}\left(A_n^TA_n\right)P=\operatorname{diag}\left(\sum_{i=1}^{n}a_i^2,\ 0,\ \dots,\ 0\right)

です。

第2問 移流方程式とバーガース方程式

Section titled “第2問 移流方程式とバーガース方程式”

1次元の第一階偏微分方程式から出発して、非線形なバーガース方程式

ut+uux=D2ux2(D>0)\frac{\partial u}{\partial t}+u\frac{\partial u}{\partial x}=D\frac{\partial^2u}{\partial x^2} \qquad (D>0)

を線形の熱伝導方程式に帰着させる筋道をたどる問題です。設問1は移流方程式の初期値問題、設問2は時間に依らない場合の常微分方程式(定常解)、設問3はポテンシャル ss の導入と s=S(ϕ)s=S(\phi) という変換(コール–ホップ変換)による線形化、そしてフーリエ変換による解法です。問題文の式番号にしたがって、udu/dx=d2u/dx2u\,du/dx=d^2u/dx^2 を式(1)、上のバーガース方程式を式(2)、ss の方程式を式(3)、ϕ\phi の熱伝導方程式を式(4)と呼びます。

答えは u(t,x)=f(xt)u(t,x)=f(x-t) です。

導き方は特性線に沿った書き換えです。w(t,ξ)u(t,ξ+t)w(t,\xi)\equiv u(t,\xi+t) と置くと、合成関数の微分から

wt(t,ξ)=(ut+ux)(t,ξ+t)=0\frac{\partial w}{\partial t}(t,\xi)=\left.\left(\frac{\partial u}{\partial t}+\frac{\partial u}{\partial x}\right)\right|_{(t,\xi+t)}=0

なので wwtt に依りません。よって w(t,ξ)=w(0,ξ)=u(0,ξ)=f(ξ)w(t,\xi)=w(0,\xi)=u(0,\xi)=f(\xi) であり、ξ=xt\xi=x-t と戻して u(t,x)=f(xt)u(t,x)=f(x-t) を得ます。この計算は同時に、微分可能な解がこれ以外にないことも示しています。

検算します。ff は微分可能なので ut=f(xt)u_t=-f'(x-t)ux=f(xt)u_x=f'(x-t) が存在し、和はゼロです。t=0t=0u=f(x)u=f(x) となり初期条件も満たします。解は初期波形が速度1で xx の正方向へ平行移動したものです。

(i) 左辺は udu/dx=ddx(u22)u\,du/dx=\dfrac{d}{dx}\left(\dfrac{u^2}{2}\right) と書けるので、式(1)は

ddx(dudxu22)=0\frac{d}{dx}\left(\frac{du}{dx}-\frac{u^2}{2}\right)=0

と表せます。答えは

F=dudxu22F=\frac{du}{dx}-\frac{u^2}{2}

です(定数倍と定数の付加は任意ですが、以下ではこの形を使います)。

(ii) (i) より FF は定数です。その値を KK と書くと

dudx=u22+K\frac{du}{dx}=\frac{u^2}{2}+K

が実軸全体で成り立ちます。

まず KK を境界条件から決めます。x+x\to+\inftyuWu\to-W なので、上式の右辺は αW2/2+K\alpha\equiv W^2/2+K に収束し、u(x)αu'(x)\to\alpha です。もし α0\alpha\neq0 なら、u(x)=u(0)+0xu(y)dyu(x)=u(0)+\int_0^xu'(y)\,dy の右辺を xx で割った量が xx\to\inftyα\alpha に収束するので u(x)|u(x)|\to\infty となり、uWu\to-W という有限の極限に反します。したがって α=0\alpha=0、すなわち K=W2/2K=-W^2/2 です(xx\to-\infty の条件からも同じ値が出て、両者は無矛盾です)。よって

dudx=u2W22.\frac{du}{dx}=\frac{u^2-W^2}{2}.

次に解の存在範囲を押さえます。右辺は uu の多項式なので局所リプシッツで、初期値問題の解は一意です。uWu\equiv WuWu\equiv -W はこの方程式の解ですが u(0)=0u(0)=0 を満たしません。解の一意性から u(x)u(x) はこれらの定数解と交わることができないので、u(0)=0(W,W)u(0)=0\in(-W,W) より

W<u(x)<W-W<u(x)<W

がすべての xx で成り立ちます。この範囲では du/dx=(u2W2)/2<0du/dx=(u^2-W^2)/2<0 で、uu は狭義単調減少です。これは xx\to-\inftyWWx+x\to+\inftyW-W という条件と整合しています。

変数分離します。u<W|u|<W

2u2W2=1W(1uW1u+W)\frac{2}{u^2-W^2}=\frac{1}{W}\left(\frac{1}{u-W}-\frac{1}{u+W}\right)

なので、00 から xx まで積分して u(0)=0u(0)=0 を使うと

1W[lnWuW+u]u=0u=u(x)=x,すなわちWu(x)W+u(x)=eWx\frac{1}{W}\left[\ln\frac{W-u}{W+u}\right]_{u=0}^{u=u(x)}=x, \qquad\text{すなわち}\qquad \frac{W-u(x)}{W+u(x)}=e^{Wx}

を得ます(u<W|u|<W なので対数の中身は正で、絶対値記号は不要です)。uu について解くと W(1eWx)=u(1+eWx)W\left(1-e^{Wx}\right)=u\left(1+e^{Wx}\right) から

u(x)=W1eWx1+eWx=WtanhWx2u(x)=W\,\frac{1-e^{Wx}}{1+e^{Wx}}=-W\tanh\frac{Wx}{2}

です。上の議論はすべて必要条件をたどったものなので、これが唯一の解です。

検算します。u=W22sech2Wx2u'=-\dfrac{W^2}{2}\operatorname{sech}^2\dfrac{Wx}{2}u=W32sech2Wx2tanhWx2u''=\dfrac{W^3}{2}\operatorname{sech}^2\dfrac{Wx}{2}\tanh\dfrac{Wx}{2} で、

uu=(WtanhWx2)(W22sech2Wx2)=W32sech2Wx2tanhWx2=uu\,u'=\left(-W\tanh\frac{Wx}{2}\right)\left(-\frac{W^2}{2}\operatorname{sech}^2\frac{Wx}{2}\right)=\frac{W^3}{2}\operatorname{sech}^2\frac{Wx}{2}\tanh\frac{Wx}{2}=u''

と式(1)を満たします。また

F=uu22=W22(sech2Wx2+tanh2Wx2)=W22F=u'-\frac{u^2}{2}=-\frac{W^2}{2}\left(\operatorname{sech}^2\frac{Wx}{2}+\tanh^2\frac{Wx}{2}\right)=-\frac{W^2}{2}

で、確かに定数 K=W2/2K=-W^2/2 です。極限は tanh()=1\tanh(\mp\infty)=\mp1 より u()=Wu(-\infty)=Wu(+)=Wu(+\infty)=-W、原点では u(0)=0u(0)=0 と3つの境界条件すべてを満たします。

式(1)は式(2)で D=1D=1 とし時間依存を落としたものなので、この解はバーガース方程式の定常な衝撃波(テイラー衝撃波)です。一般の DD では同じ計算で u=Wtanh(Wx/2D)u=-W\tanh\left(Wx/2D\right) となり、遷移層の厚みは D/WD/W 程度です。

(i) s(t,x)s(t,x) は式(3)の解で、以下の計算に必要な範囲で滑らか(xx について3回微分可能で、stx=sxts_{tx}=s_{xt} が成り立つ)とします。式(3)

st=12(sx)2+D2sx2\frac{\partial s}{\partial t}=\frac{1}{2}\left(\frac{\partial s}{\partial x}\right)^2+D\frac{\partial^2s}{\partial x^2}

の両辺を xx で微分すると

2sxt=sx2sx2+D3sx3\frac{\partial^2 s}{\partial x\partial t}=\frac{\partial s}{\partial x}\frac{\partial^2s}{\partial x^2}+D\frac{\partial^3s}{\partial x^3}

です。u=s/xu^*=-\partial s/\partial x を代入すると、各項は

ut=2stx=sx2sx2D3sx3,uux=(sx)(2sx2)=sx2sx2,D2ux2=D3sx3\begin{aligned} \frac{\partial u^*}{\partial t}&=-\frac{\partial^2s}{\partial t\partial x}=-\frac{\partial s}{\partial x}\frac{\partial^2s}{\partial x^2}-D\frac{\partial^3s}{\partial x^3},\\ u^*\frac{\partial u^*}{\partial x}&=\left(-\frac{\partial s}{\partial x}\right)\left(-\frac{\partial^2s}{\partial x^2}\right)=\frac{\partial s}{\partial x}\frac{\partial^2s}{\partial x^2},\\ D\frac{\partial^2u^*}{\partial x^2}&=-D\frac{\partial^3s}{\partial x^3} \end{aligned}

となります。第1式と第2式を足すと第1項が打ち消し合って

ut+uux=D3sx3=D2ux2\frac{\partial u^*}{\partial t}+u^*\frac{\partial u^*}{\partial x}=-D\frac{\partial^3s}{\partial x^3}=D\frac{\partial^2u^*}{\partial x^2}

を得ます。これは式(2)そのものなので、u=s/xu^*=-\partial s/\partial x は式(2)の解です。uu^* が式(2)を満たすのに必要なのは xx 微分した式だけなので、ss に加わる時間だけの関数の不定性は uu^* に影響しません。

(ii) s=S(ϕ)s^*=S(\phi) を式(3)に入れます。連鎖律と式(4) ϕt=Dϕxx\phi_t=D\phi_{xx} から

st=dSdϕϕt=DdSdϕ2ϕx2,sx=dSdϕϕx,2sx2=d2Sdϕ2(ϕx)2+dSdϕ2ϕx2\begin{aligned} \frac{\partial s^*}{\partial t}&=\frac{dS}{d\phi}\frac{\partial\phi}{\partial t}=D\frac{dS}{d\phi}\frac{\partial^2\phi}{\partial x^2},\\ \frac{\partial s^*}{\partial x}&=\frac{dS}{d\phi}\frac{\partial\phi}{\partial x},\\ \frac{\partial^2s^*}{\partial x^2}&=\frac{d^2S}{d\phi^2}\left(\frac{\partial\phi}{\partial x}\right)^2+\frac{dS}{d\phi}\frac{\partial^2\phi}{\partial x^2} \end{aligned}

です。式(3)に代入すると

DdSdϕ2ϕx2=12(dSdϕ)2(ϕx)2+Dd2Sdϕ2(ϕx)2+DdSdϕ2ϕx2D\frac{dS}{d\phi}\frac{\partial^2\phi}{\partial x^2} =\frac{1}{2}\left(\frac{dS}{d\phi}\right)^2\left(\frac{\partial\phi}{\partial x}\right)^2 +D\frac{d^2S}{d\phi^2}\left(\frac{\partial\phi}{\partial x}\right)^2 +D\frac{dS}{d\phi}\frac{\partial^2\phi}{\partial x^2}

となり、ϕxx\phi_{xx} を含む項が両辺で相殺して

[Dd2Sdϕ2+12(dSdϕ)2](ϕx)2=0\left[D\frac{d^2S}{d\phi^2}+\frac{1}{2}\left(\frac{dS}{d\phi}\right)^2\right]\left(\frac{\partial\phi}{\partial x}\right)^2=0

が残ります。ϕ\phixx に依らない自明な場合を除けば ϕx0\phi_x\neq0 となる領域があり、そこでは角括弧がゼロでなければなりません。ϕ\phi を式(4)の任意の解として成り立たせるには ϕ\phi の値域全体でゼロが必要なので、SS の満たす微分方程式は

Dd2Sdϕ2+12(dSdϕ)2=0D\frac{d^2S}{d\phi^2}+\frac{1}{2}\left(\frac{dS}{d\phi}\right)^2=0

です。

これを解きます。p(ϕ)=dS/dϕp(\phi)=dS/d\phi と置くと Ddp/dϕ=p2/2D\,dp/d\phi=-p^2/2 です。p0p\equiv0 は解ですが SS が定数、すなわち u=0u^*=0 となる自明な場合なので除きます。p0p\neq0 の領域では

dpp2=dϕ2D  1p=ϕ2D+const  p=dSdϕ=2Dϕϕ0\frac{dp}{p^2}=-\frac{d\phi}{2D} \ \Longrightarrow\ -\frac{1}{p}=-\frac{\phi}{2D}+\text{const} \ \Longrightarrow\ p=\frac{dS}{d\phi}=\frac{2D}{\phi-\phi_0}

ϕ0\phi_0 は積分定数)となり、もう一度積分して

S(ϕ)=2Dlnϕϕ0+CS(\phi)=2D\ln\left|\phi-\phi_0\right|+C

を得ます。CCu=xS(ϕ)u^*=-\partial_xS(\phi) に寄与せず、ϕϕ0\phi-\phi_0 もまた式(4)の解なので ϕ0\phi_0ϕ\phi の定義に吸収できます。したがって答えは

S(ϕ)=2DlnϕS(\phi)=2D\ln\phi

ϕ>0\phi>0 の領域で考え、積分定数を落としました)です。確認すると S=2D/ϕS'=2D/\phiS=2D/ϕ2S''=-2D/\phi^2

DS+12S2=2D2ϕ2+124D2ϕ2=0DS''+\frac{1}{2}S'^2=-\frac{2D^2}{\phi^2}+\frac{1}{2}\cdot\frac{4D^2}{\phi^2}=0

です。(i) と合わせると

u(t,x)=xS(ϕ)=2Dϕ/xϕu^*(t,x)=-\frac{\partial}{\partial x}S(\phi)=-2D\,\frac{\partial\phi/\partial x}{\phi}

が式(2)の解になります。これがコール–ホップ変換で、非線形なバーガース方程式の解が線形な熱伝導方程式の解 ϕ\phi から作れることを意味します。

念のため独立に検算しました。ϕ=32+14πDtex2/4Dt\phi=\dfrac{3}{2}+\dfrac{1}{\sqrt{4\pi Dt}}e^{-x^2/4Dt} は式(4)の解であり、これに対する s=2Dlnϕs^*=2D\ln\phi は式(3)を満たし、u=2Dϕx/ϕu^*=-2D\phi_x/\phi は式(2)を満たします。

(iii) フーリエ表示を式(4)に代入します。kk 積分の下で ttxx の微分を行ってよいとすると(ϕ~\tilde\phikk について十分速く減衰することを仮定します)、x2eikx=k2eikx\partial_x^2e^{ikx}=-k^2e^{ikx} より

12π[ϕ~(t,k)t+Dk2ϕ~(t,k)]eikxdk=0\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty}\left[\frac{\partial\tilde\phi(t,k)}{\partial t}+Dk^2\tilde\phi(t,k)\right]e^{ikx}\,dk=0

がすべての xx で成り立ちます。逆フーリエ変換は単射なので、角括弧は(ほとんど)すべての kk でゼロです。したがって ϕ~\tilde\phi の満たす微分方程式は

ϕ~(t,k)t=Dk2ϕ~(t,k)\frac{\partial\tilde\phi(t,k)}{\partial t}=-Dk^2\,\tilde\phi(t,k)

です。xx の2階微分が k2-k^2 の掛け算に変わったことで、偏微分方程式が kk ごとに独立な tt の1階線形常微分方程式に分離しました。

kk を固定して解くと ϕ~(t,k)=ϕ~(0,k)eDk2t\tilde\phi(t,k)=\tilde\phi(0,k)e^{-Dk^2t} なので、初期条件 ϕ~(0,k)=g(k)\tilde\phi(0,k)=g(k) のもとで答えは

ϕ~(t,k)=g(k)eDk2t(t>0)\tilde\phi(t,k)=g(k)\,e^{-Dk^2t}\qquad(t>0)

です。t=0t=0g(k)g(k) に戻り、微分すると Dk2ϕ~-Dk^2\tilde\phi になることは直ちに確かめられます。D>0D>0 なので各モードは減衰し、波数が大きいほど速く減衰します。これは熱伝導方程式が細かい構造をならす性質そのものです。

整合性の確認として実空間に戻すと、eDk2te^{-Dk^2t} の逆変換が 12Dtex2/4Dt\dfrac{1}{\sqrt{2Dt}}e^{-x^2/4Dt} であることと、このフーリエ変換の規約では kk 空間の積が実空間の畳み込みの 1/2π1/\sqrt{2\pi} 倍になることから

ϕ(t,x)=14πDte(xy)2/4Dtϕ(0,y)dy\phi(t,x)=\frac{1}{\sqrt{4\pi Dt}}\int_{-\infty}^{\infty}e^{-(x-y)^2/4Dt}\,\phi(0,y)\,dy

という熱核の表式が再現されます。

以上を通すと、式(2)の初期値問題を解く手順は次のようになります。u(0,x)u(0,x) から s(0,x)=xu(0,y)dys(0,x)=-\int^x u(0,y)\,dy を作り、ϕ(0,x)=exp[s(0,x)/2D]\phi(0,x)=\exp\left[s(0,x)/2D\right] をフーリエ変換して g(k)g(k) を得、ϕ~(t,k)=g(k)eDk2t\tilde\phi(t,k)=g(k)e^{-Dk^2t} を逆変換して ϕ(t,x)\phi(t,x) を求め、最後に u(t,x)=2Dxϕ/ϕu(t,x)=-2D\,\partial_x\phi/\phi に戻します。

出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 平成30年度 修士課程 入学試験問題 数学。問題文は要約して引用しています。

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