場とは、各時刻に空間の各点で値をとる量です。力学的には「自由度が空間の点で添字づけられた無限自由度系」であり、連成振動子の格子間隔をゼロにする極限を取ると、この描像が具体的な形で現れます。
場の作用は S [ ϕ ] = ∫ d 4 x L ( ϕ a , ∂ μ ϕ a ) S[\phi] = \int d^4x\, \mathcal{L}(\phi_a, \partial_\mu \phi_a) S [ ϕ ] = ∫ d 4 x L ( ϕ a , ∂ μ ϕ a ) という形に書けます。積分の中身であるラグランジアン密度 L \mathcal{L} L がローレンツスカラーであれば、そこから出る運動方程式は自動的にローレンツ共変になります。これがラグランジュ形式から出発する最大の理由です。
変分原理 δ S = 0 \delta S = 0 δ S = 0 から、場のオイラー・ラグランジュ方程式 ∂ μ ( ∂ L / ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ) − ∂ L / ∂ ϕ a = 0 \partial_\mu\big(\partial\mathcal{L}/\partial(\partial_\mu\phi_a)\big) - \partial\mathcal{L}/\partial\phi_a = 0 ∂ μ ( ∂ L / ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ) − ∂ L / ∂ ϕ a = 0 が導かれます(定理 4.3 )。
実スカラー場に許される最も簡単なラグランジアン密度はクライン・ゴルドン場のもので、その運動方程式の平面波解は E 2 = p 2 + m 2 E^2 = \boldsymbol{p}^2 + m^2 E 2 = p 2 + m 2 を満たします。これが m m m を「質量」と呼ぶ理由です。
作用の連続対称性 1 つにつき、保存カレント ∂ μ j μ = 0 \partial_\mu j^\mu = 0 ∂ μ j μ = 0 が 1 つ対応します(ネーターの定理、定理 6.2 )。時空並進からエネルギー・運動量テンソルが、大域的 U ( 1 ) U(1) U ( 1 ) 位相変換から保存電荷が出ます。
ここで組み立てた古典場の理論が、次章以降の正準量子化と経路積分量子化の出発点になります。量子化とは「古典的な場の配位の空間の上に、量子論的な規則を載せる」操作だからです。
前章 では、相対論と量子論を両立させようとすると粒子数が保存しなくなり、「粒子の波動関数」ではなく「場」を基本的な対象に据えざるを得ないことを見ました。しかし「場を量子化する」と言うためには、量子化される前の古典的な場の理論がまず必要です。この章の目的は、その土台を作ることです。
古典力学で自由度が有限個の系を扱うとき、私たちは 3 通りの定式化を持っています。ニュートン方程式、ラグランジュ形式、ハミルトン形式です。場の理論でも同じ 3 通りが可能ですが、出発点としてはラグランジュ形式が圧倒的に有利です。理由は 4 つあります。
第 1 に、相対論的不変性が目に見える形で保たれます。 ハミルトニアンは「時間発展の生成子」ですから、時間座標を他の 3 つの空間座標と区別して扱わざるを得ません。一方、作用 S = ∫ d 4 x L S = \int d^4x\,\mathcal{L} S = ∫ d 4 x L は 4 次元時空の積分であり、L \mathcal{L} L をローレンツスカラーに選んでおけば S S S そのものがローレンツ不変になります。そして運動方程式は S S S の停留条件として決まるのですから、ローレンツ共変性は式を書いた時点で保証されます。特殊相対論の要請については ローレンツ変換 を参照してください。
第 2 に、対称性を扱う言語として自然です。 内部対称性もゲージ対称性も「L \mathcal{L} L が不変であること」として一行で書けます。そして次に述べるネーターの定理により、対称性から保存則が機械的に読み出せます。
第 3 に、経路積分が作用そのものを使います。 量子論の遷移振幅は ∫ D ϕ e i S [ ϕ ] \int \mathcal{D}\phi\, e^{iS[\phi]} ∫ D ϕ e i S [ ϕ ] という形をとります(経路積分量子化 )。ここに現れるのはハミルトニアンではなく作用です。
第 4 に、理論の「設計図」になります。 現代的な場の理論の作り方は、「場の内容と対称性を指定し、それと両立する項を質量次元の低い順に書き並べる」というものです。相互作用を天下り式に与えるのではなく、対称性と次元勘定から候補を絞り込む。この方法論が成立するのは、理論のすべての情報が L \mathcal{L} L という 1 つの関数に集約されているからです。
歴史的にも、場のラグランジュ形式は量子論より古いものです。19 世紀の弾性体力学では、連続体の振動をラグランジュ形式で扱うことが既に行われていました。ファラデーの力線に始まりマクスウェルの方程式系で完成した電磁場の理論は、20 世紀初頭までに「電磁場はエネルギーと運動量を運ぶ独立した力学的自由度である」という認識に到達していました。1918 年のネーターの論文が対称性と保存則の関係を一般的に確立し、1920 年代末からディラック、ヨルダン、ハイゼンベルク、パウリらがこの古典場を量子化する試みを始めます。私たちがこれから辿るのは、その最初の一歩です。
以下では自然単位系 ℏ = c = 1 \hbar = c = 1 ℏ = c = 1 を用います。この単位系では長さ・時間・質量の逆数がすべて同じ次元になり、あらゆる量の次元を「質量次元」1 つで表せます。記号の約束を表にまとめます。
記号 意味・約束 η μ ν = d i a g ( 1 , − 1 , − 1 , − 1 ) \eta_{\mu\nu} = \mathrm{diag}(1,-1,-1,-1) η μν = diag ( 1 , − 1 , − 1 , − 1 ) ミンコフスキー計量。η μ ν \eta^{\mu\nu} η μν はその逆行列で成分は同じ x μ = ( x 0 , x 1 , x 2 , x 3 ) = ( t , x ) x^\mu = (x^0, x^1, x^2, x^3) = (t, \boldsymbol{x}) x μ = ( x 0 , x 1 , x 2 , x 3 ) = ( t , x ) 時空座標。ギリシャ添字は 0 , 1 , 2 , 3 0,1,2,3 0 , 1 , 2 , 3 、ラテン添字 i , j i,j i , j は 1 , 2 , 3 1,2,3 1 , 2 , 3 を走る ∂ μ = ∂ / ∂ x μ \partial_\mu = \partial/\partial x^\mu ∂ μ = ∂ / ∂ x μ ∂ μ = η μ ν ∂ ν = ( ∂ t , − ∇ ) \partial^\mu = \eta^{\mu\nu}\partial_\nu = (\partial_t, -\nabla) ∂ μ = η μν ∂ ν = ( ∂ t , − ∇ ) □ = ∂ μ ∂ μ = ∂ t 2 − ∇ 2 \Box = \partial_\mu \partial^\mu = \partial_t^2 - \nabla^2 □ = ∂ μ ∂ μ = ∂ t 2 − ∇ 2 ダランベール演算子 a , b a, b a , b 場の成分(内部自由度)を区別する添字。重複した添字はすべて和を取る d 4 x = d t d 3 x d^4x = dt\, d^3x d 4 x = d t d 3 x 時空の体積要素。ローレンツ変換で不変(行列式が 1 1 1 のため)
質量次元を [ ⋅ ] [\,\cdot\,] [ ⋅ ] で表します。e i S e^{iS} e i S が意味を持つためには S S S は無次元でなければならず、[ d 4 x ] = − 4 [d^4x] = -4 [ d 4 x ] = − 4 ですから
[ L ] = 4 [\mathcal{L}] = 4 [ L ] = 4
でなければなりません。この一行が、あとで相互作用項を分類するときの物差しになります。
「場は無限自由度の力学系である」という言明を、具体例で確かめます。ばねでつながれた質点の 1 次元鎖を考え、その格子間隔をゼロに近づけます。この例はゴールドスタインの教科書以来の定番ですが、場という概念の力学的な出自を一度自分の手で追っておく価値があります。
離散系:自由度は変位 y_1(t), …, y_N(t) の N 個 a a → 0(連続極限) 連続系:自由度は各点 x ごとの値(非可算無限個) phi(x, t) x 離散的なばね・質点系(上)の格子間隔 a をゼロにする極限で、連続体の場が現れる。離散系では自由度は質点の個数だけだが、極限では空間の各点ごとに 1 個ずつの自由度になる。
例 3.1 (ばね鎖の連続極限と波動方程式 )
質量 m m m の質点が N N N 個、間隔 a a a で 1 次元的に並び、隣り合う質点がばね定数 k k k のばねで結ばれているとします。i i i 番目の質点の平衡位置からの変位を y i ( t ) y_i(t) y i ( t ) と書くと、ラグランジアンは
L = ∑ i [ 1 2 m y ˙ i 2 − 1 2 k ( y i + 1 − y i ) 2 ] L = \sum_{i} \left[ \frac{1}{2} m\, \dot{y}_i^{\,2} - \frac{1}{2} k\, (y_{i+1} - y_i)^2 \right] L = i ∑ [ 2 1 m y ˙ i 2 − 2 1 k ( y i + 1 − y i ) 2 ] です。有限自由度のラグランジュ方程式 d d t ∂ L ∂ y ˙ i = ∂ L ∂ y i \dfrac{d}{dt}\dfrac{\partial L}{\partial \dot{y}_i} = \dfrac{\partial L}{\partial y_i} d t d ∂ y ˙ i ∂ L = ∂ y i ∂ L を適用します。左辺は m y ¨ i m\ddot{y}_i m y ¨ i 、右辺は y i y_i y i を含む 2 つの項 − 1 2 k ( y i − y i − 1 ) 2 -\frac{1}{2}k(y_i - y_{i-1})^2 − 2 1 k ( y i − y i − 1 ) 2 と − 1 2 k ( y i + 1 − y i ) 2 -\frac{1}{2}k(y_{i+1} - y_i)^2 − 2 1 k ( y i + 1 − y i ) 2 からの寄与の和で
∂ L ∂ y i = − k ( y i − y i − 1 ) + k ( y i + 1 − y i ) = k ( y i + 1 − 2 y i + y i − 1 ) \frac{\partial L}{\partial y_i} = -k(y_i - y_{i-1}) + k(y_{i+1} - y_i) = k\,(y_{i+1} - 2y_i + y_{i-1}) ∂ y i ∂ L = − k ( y i − y i − 1 ) + k ( y i + 1 − y i ) = k ( y i + 1 − 2 y i + y i − 1 ) となります。よって運動方程式は m y ¨ i = k ( y i + 1 − 2 y i + y i − 1 ) m\ddot{y}_i = k(y_{i+1} - 2y_i + y_{i-1}) m y ¨ i = k ( y i + 1 − 2 y i + y i − 1 ) です。
ここで両辺を a a a で割り、線密度 μ : = m / a \mu := m/a μ := m / a とヤング率 Y : = k a Y := ka Y := k a を固定したまま a → 0 a \to 0 a → 0 、N → ∞ N \to \infty N → ∞ (全長 N a Na N a は固定)とします。i i i 番目の質点の位置を x = i a x = ia x = ia と書き、y i ( t ) → ϕ ( x , t ) y_i(t) \to \phi(x,t) y i ( t ) → ϕ ( x , t ) と読み替えると
k ( y i + 1 − 2 y i + y i − 1 ) a = ( k a ) y i + 1 − 2 y i + y i − 1 a 2 ⟶ Y ∂ 2 ϕ ∂ x 2 \frac{k(y_{i+1} - 2y_i + y_{i-1})}{a} = (ka)\,\frac{y_{i+1} - 2y_i + y_{i-1}}{a^2} \longrightarrow Y\,\frac{\partial^2 \phi}{\partial x^2} a k ( y i + 1 − 2 y i + y i − 1 ) = ( k a ) a 2 y i + 1 − 2 y i + y i − 1 ⟶ Y ∂ x 2 ∂ 2 ϕ です(中央差分商が 2 階微分に収束することを使いました)。したがって
μ ∂ 2 ϕ ∂ t 2 = Y ∂ 2 ϕ ∂ x 2 \mu\, \frac{\partial^2 \phi}{\partial t^2} = Y\, \frac{\partial^2 \phi}{\partial x^2} μ ∂ t 2 ∂ 2 ϕ = Y ∂ x 2 ∂ 2 ϕ という波動方程式が得られ、波の速さは v = Y / μ v = \sqrt{Y/\mu} v = Y / μ です。
同じ極限をラグランジアンに対して取ると
L = ∑ i a [ 1 2 m a y ˙ i 2 − 1 2 ( k a ) ( y i + 1 − y i a ) 2 ] ⟶ ∫ d x [ 1 2 μ ( ∂ t ϕ ) 2 − 1 2 Y ( ∂ x ϕ ) 2 ] ⏟ = : L L = \sum_i a \left[ \frac{1}{2}\frac{m}{a}\dot{y}_i^{\,2} - \frac{1}{2}(ka)\left(\frac{y_{i+1}-y_i}{a}\right)^2 \right]
\longrightarrow \int dx\, \underbrace{\left[ \frac{1}{2}\mu\,(\partial_t \phi)^2 - \frac{1}{2}Y (\partial_x \phi)^2 \right]}_{=:\ \mathcal{L}} L = i ∑ a [ 2 1 a m y ˙ i 2 − 2 1 ( k a ) ( a y i + 1 − y i ) 2 ] ⟶ ∫ d x =: L [ 2 1 μ ( ∂ t ϕ ) 2 − 2 1 Y ( ∂ x ϕ ) 2 ] となります。和 ∑ i a \sum_i a ∑ i a が積分 ∫ d x \int dx ∫ d x になり、被積分関数としてラグランジアン密度 L \mathcal{L} L が現れました。
この計算から、有限自由度と場の理論の対応辞書が読み取れます。
有限自由度系 場の理論 添字 i = 1 , … , N i = 1,\dots,N i = 1 , … , N 空間座標 x ∈ R 3 \boldsymbol{x} \in \mathbb{R}^3 x ∈ R 3 (連続的な「添字」) 一般化座標 q i ( t ) q_i(t) q i ( t ) 場 ϕ ( x , t ) \phi(\boldsymbol{x}, t) ϕ ( x , t ) ∑ i \sum_i ∑ i ∫ d 3 x \int d^3x ∫ d 3 x ラグランジアン L ( q i , q ˙ i ) L(q_i, \dot{q}_i) L ( q i , q ˙ i ) L = ∫ d 3 x L ( ϕ , ∂ μ ϕ ) L = \int d^3x\, \mathcal{L}(\phi, \partial_\mu\phi) L = ∫ d 3 x L ( ϕ , ∂ μ ϕ ) 作用 S = ∫ d t L S = \int dt\, L S = ∫ d t L 作用 S = ∫ d 4 x L S = \int d^4x\, \mathcal{L} S = ∫ d 4 x L ∂ L / ∂ q i \partial L/\partial q_i ∂ L / ∂ q i 汎関数微分 δ S / δ ϕ ( x ) \delta S/\delta \phi(x) δ S / δ ϕ ( x )
定義 4.1 (場の作用汎関数とラグランジアン密度 )
Ω ⊂ R 4 \Omega \subset \mathbb{R}^4 Ω ⊂ R 4 を時空の有界領域とし、その境界 ∂ Ω \partial\Omega ∂ Ω は滑らかであるとします。ϕ a : Ω → R \phi_a : \Omega \to \mathbb{R} ϕ a : Ω → R (a = 1 , … , n a = 1,\dots,n a = 1 , … , n )を C 2 C^2 C 2 級の場の組とします。
L = L ( ϕ a , ∂ μ ϕ a ) \mathcal{L} = \mathcal{L}(\phi_a, \partial_\mu \phi_a) L = L ( ϕ a , ∂ μ ϕ a ) を、n n n 個の実変数 ϕ a \phi_a ϕ a と 4 n 4n 4 n 個の実変数 ∂ μ ϕ a \partial_\mu\phi_a ∂ μ ϕ a の C 2 C^2 C 2 級関数とし、これをラグランジアン密度 と呼びます。このとき
S [ ϕ ] : = ∫ Ω d 4 x L ( ϕ a ( x ) , ∂ μ ϕ a ( x ) ) S[\phi] := \int_\Omega d^4x\ \mathcal{L}\big(\phi_a(x), \partial_\mu \phi_a(x)\big) S [ ϕ ] := ∫ Ω d 4 x L ( ϕ a ( x ) , ∂ μ ϕ a ( x ) ) を作用汎関数 と呼びます。
ここで L \mathcal{L} L が ϕ a \phi_a ϕ a の 1 階微分までしか含まないこと、そして座標 x x x に陽には依存しないことを仮定しています。前者は運動方程式を 2 階の微分方程式に保つための要請であり、後者は時空の並進対称性(外から与えられた背景が存在しないこと)の表明です。
変分原理を述べる前に、変分法の基本補題を用意します。「δ S \delta S δ S の積分がどんな試験関数についても消えるなら、被積分関数が消える」という主張で、これを飛ばすと運動方程式が「積分の形でしか」出てきません。
補題 4.2 (変分法の基本補題 )
Ω ⊂ R 4 \Omega \subset \mathbb{R}^4 Ω ⊂ R 4 を空でない開集合、f : Ω → R f : \Omega \to \mathbb{R} f : Ω → R を連続関数とします。Ω \Omega Ω にコンパクトな台を持つ任意の C ∞ C^\infty C ∞ 級関数 η \eta η に対して
∫ Ω f ( x ) η ( x ) d 4 x = 0 \int_\Omega f(x)\, \eta(x)\, d^4x = 0 ∫ Ω f ( x ) η ( x ) d 4 x = 0 が成り立つならば、Ω \Omega Ω 上で f ≡ 0 f \equiv 0 f ≡ 0 です。
証明(補題 4.2) 対偶を示します。ある点 x 0 ∈ Ω x_0 \in \Omega x 0 ∈ Ω で f ( x 0 ) ≠ 0 f(x_0) \ne 0 f ( x 0 ) = 0 とし、一般性を失わず c : = f ( x 0 ) > 0 c := f(x_0) > 0 c := f ( x 0 ) > 0 とします(f ( x 0 ) < 0 f(x_0) < 0 f ( x 0 ) < 0 なら f f f を − f -f − f に取り替えます)。
f f f は連続なので、Ω \Omega Ω に含まれる開球 B : = { x : ∣ x − x 0 ∣ < r } B := \{ x : |x - x_0| < r \} B := { x : ∣ x − x 0 ∣ < r } (∣ ⋅ ∣ |\cdot| ∣ ⋅ ∣ は R 4 \mathbb{R}^4 R 4 の座標に関するユークリッドノルム。計量 η μ ν \eta_{\mu\nu} η μν とは無関係な、単なる位相的な道具です)を十分小さく取れば、B B B 上で f ( x ) > c / 2 f(x) > c/2 f ( x ) > c /2 とできます。
この B B B の上に台を持つ試験関数として、標準的なバンプ関数
η ( x ) : = { exp ( − 1 r 2 − ∣ x − x 0 ∣ 2 ) ( ∣ x − x 0 ∣ < r ) 0 ( ∣ x − x 0 ∣ ≥ r ) \eta(x) := \begin{cases} \exp\!\left(\dfrac{-1}{r^2 - |x - x_0|^2}\right) & (|x - x_0| < r) \\[2mm] 0 & (|x-x_0| \ge r) \end{cases} η ( x ) := ⎩ ⎨ ⎧ exp ( r 2 − ∣ x − x 0 ∣ 2 − 1 ) 0 ( ∣ x − x 0 ∣ < r ) ( ∣ x − x 0 ∣ ≥ r ) を取ります。これは C ∞ C^\infty C ∞ 級で、B B B 上で η > 0 \eta > 0 η > 0 、B B B の外では η = 0 \eta = 0 η = 0 です。したがって
∫ Ω f η d 4 x = ∫ B f η d 4 x > c 2 ∫ B η d 4 x > 0 \int_\Omega f \eta\, d^4x = \int_B f \eta\, d^4x > \frac{c}{2}\int_B \eta\, d^4x > 0 ∫ Ω f η d 4 x = ∫ B f η d 4 x > 2 c ∫ B η d 4 x > 0 となり、仮定に反します。よって Ω \Omega Ω の全点で f = 0 f = 0 f = 0 です。
∎
定理 4.3 (場のオイラー・ラグランジュ方程式 )
定義 4.1 の設定のもとで、場の配位 ϕ = ( ϕ a ) \phi = (\phi_a) ϕ = ( ϕ a ) が次の意味で S S S の停留点であるとします。すなわち、Ω \Omega Ω にコンパクトな台を持つ任意の C ∞ C^\infty C ∞ 級関数の組 η = ( η a ) \eta = (\eta_a) η = ( η a ) に対し
d d ε ∣ ε = 0 S [ ϕ + ε η ] = 0. \left.\frac{d}{d\varepsilon}\right|_{\varepsilon = 0} S[\phi + \varepsilon \eta] = 0 . d ε d ε = 0 S [ ϕ + ε η ] = 0. このとき Ω \Omega Ω 上で
∂ μ ( ∂ L ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ) − ∂ L ∂ ϕ a = 0 ( a = 1 , … , n ) \partial_\mu \left( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi_a)} \right) - \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi_a} = 0
\qquad (a = 1, \dots, n) ∂ μ ( ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ∂ L ) − ∂ ϕ a ∂ L = 0 ( a = 1 , … , n ) が成り立ちます。逆に、この方程式系を満たす ϕ \phi ϕ は上の意味で停留点です。ここで ∂ μ \partial_\mu ∂ μ は x x x についての全 微分(ϕ a ( x ) \phi_a(x) ϕ a ( x ) を通じた依存性も込み)を表します。
証明(定理 4.3) ϕ a ε : = ϕ a + ε η a \phi_a^\varepsilon := \phi_a + \varepsilon \eta_a ϕ a ε := ϕ a + ε η a とおきます。η a \eta_a η a の台はコンパクトで Ω \Omega Ω に含まれるので、∂ Ω \partial\Omega ∂ Ω の近傍では η a = 0 \eta_a = 0 η a = 0 、したがって ∂ μ η a = 0 \partial_\mu \eta_a = 0 ∂ μ η a = 0 です。L \mathcal{L} L は C 2 C^2 C 2 級なので ε \varepsilon ε について微分と積分を交換でき、連鎖律から
d d ε ∣ 0 S [ ϕ ε ] = ∫ Ω d 4 x [ ∂ L ∂ ϕ a η a + ∂ L ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ∂ μ η a ] \left.\frac{d}{d\varepsilon}\right|_{0} S[\phi^\varepsilon]
= \int_\Omega d^4x \left[ \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi_a}\, \eta_a + \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi_a)}\, \partial_\mu \eta_a \right] d ε d 0 S [ ϕ ε ] = ∫ Ω d 4 x [ ∂ ϕ a ∂ L η a + ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ∂ L ∂ μ η a ] を得ます(∂ μ ( ϕ a + ε η a ) = ∂ μ ϕ a + ε ∂ μ η a \partial_\mu(\phi_a + \varepsilon\eta_a) = \partial_\mu\phi_a + \varepsilon\,\partial_\mu\eta_a ∂ μ ( ϕ a + ε η a ) = ∂ μ ϕ a + ε ∂ μ η a を使いました)。
第 2 項でライプニッツ則を使い、微分を η a \eta_a η a から外します。
∂ L ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ∂ μ η a = ∂ μ ( ∂ L ∂ ( ∂ μ ϕ a ) η a ) − ∂ μ ( ∂ L ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ) η a . \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi_a)}\, \partial_\mu \eta_a
= \partial_\mu\!\left( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi_a)}\, \eta_a \right) - \partial_\mu\!\left( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi_a)} \right) \eta_a . ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ∂ L ∂ μ η a = ∂ μ ( ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ∂ L η a ) − ∂ μ ( ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ∂ L ) η a . 第 1 項は発散の形なのでガウスの発散定理により境界積分になります。
∫ Ω d 4 x ∂ μ ( ∂ L ∂ ( ∂ μ ϕ a ) η a ) = ∮ ∂ Ω d Σ μ ∂ L ∂ ( ∂ μ ϕ a ) η a = 0. \int_\Omega d^4x\ \partial_\mu\!\left( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi_a)}\, \eta_a \right)
= \oint_{\partial\Omega} d\Sigma_\mu\ \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi_a)}\, \eta_a = 0 . ∫ Ω d 4 x ∂ μ ( ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ∂ L η a ) = ∮ ∂ Ω d Σ μ ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ∂ L η a = 0. 最後の等号は ∂ Ω \partial\Omega ∂ Ω 上で η a = 0 \eta_a = 0 η a = 0 であることによります。境界項が落ちるのはこの仮定のおかげであり、境界条件を課さない変分では運動方程式は出ません。 よって
d d ε ∣ 0 S [ ϕ ε ] = ∫ Ω d 4 x [ ∂ L ∂ ϕ a − ∂ μ ( ∂ L ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ) ] η a \left.\frac{d}{d\varepsilon}\right|_{0} S[\phi^\varepsilon]
= \int_\Omega d^4x\ \left[ \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi_a} - \partial_\mu\!\left( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi_a)} \right) \right] \eta_a d ε d 0 S [ ϕ ε ] = ∫ Ω d 4 x [ ∂ ϕ a ∂ L − ∂ μ ( ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ∂ L ) ] η a です。仮定によりこれが任意の η a \eta_a η a について 0 0 0 ですから、各 a a a について(他の成分の η \eta η を 0 0 0 に取ればよい)、補題 4.2 を大かっこの中身に適用して結論を得ます。ϕ a \phi_a ϕ a は C 2 C^2 C 2 級、L \mathcal{L} L は C 2 C^2 C 2 級なので大かっこの中身は連続で、補題の仮定が満たされています。
逆向きは、上の等式を右から左に読めば直ちに従います。
∎
この方程式は n n n 本の連立 2 階偏微分方程式であり、これが「場の運動方程式」です。有限自由度のラグランジュ方程式 d d t ∂ L ∂ q ˙ i − ∂ L ∂ q i = 0 \frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} - \frac{\partial L}{\partial q_i} = 0 d t d ∂ q ˙ i ∂ L − ∂ q i ∂ L = 0 と見比べると、時間微分 d / d t d/dt d / d t が時空微分 ∂ μ \partial_\mu ∂ μ に、添字 i i i の 1 本の式が場の成分 a a a の 1 本の式に置き換わっただけの形をしています。例 3.1 の弾性弦で確かめると、L = 1 2 μ ( ∂ t ϕ ) 2 − 1 2 Y ( ∂ x ϕ ) 2 \mathcal{L} = \frac{1}{2}\mu(\partial_t\phi)^2 - \frac{1}{2}Y(\partial_x\phi)^2 L = 2 1 μ ( ∂ t ϕ ) 2 − 2 1 Y ( ∂ x ϕ ) 2 に対して ∂ L / ∂ ( ∂ t ϕ ) = μ ∂ t ϕ \partial \mathcal{L}/\partial(\partial_t\phi) = \mu\,\partial_t\phi ∂ L / ∂ ( ∂ t ϕ ) = μ ∂ t ϕ 、∂ L / ∂ ( ∂ x ϕ ) = − Y ∂ x ϕ \partial\mathcal{L}/\partial(\partial_x \phi) = -Y \partial_x\phi ∂ L / ∂ ( ∂ x ϕ ) = − Y ∂ x ϕ 、∂ L / ∂ ϕ = 0 \partial\mathcal{L}/\partial\phi = 0 ∂ L / ∂ ϕ = 0 なので ∂ t ( μ ∂ t ϕ ) + ∂ x ( − Y ∂ x ϕ ) = 0 \partial_t(\mu\partial_t\phi) + \partial_x(-Y\partial_x\phi) = 0 ∂ t ( μ ∂ t ϕ ) + ∂ x ( − Y ∂ x ϕ ) = 0 、すなわち先ほど連続極限で得た波動方程式に一致します。
L \mathcal{L} L は運動方程式によって一意には決まりません。有限自由度で見た 全微分項による不定性(命題 4.4)[ラグランジュ形式の力学] が、そのまま場の理論でも成り立ちます。次の命題は、後でネーターの定理を「準不変性」まで広げるときの根拠になります。
命題 4.5 (全微分項は運動方程式を変えない )
K μ = K μ ( ϕ a , x ) K^\mu = K^\mu(\phi_a, x) K μ = K μ ( ϕ a , x ) を、場の値と座標の C 2 C^2 C 2 級関数とします(場の微分には依存しないとします)。このとき
L ′ : = L + ∂ μ K μ \mathcal{L}' := \mathcal{L} + \partial_\mu K^\mu L ′ := L + ∂ μ K μ から 定理 4.3 によって導かれる運動方程式は、L \mathcal{L} L から導かれるものと同一です。
証明(命題 4.5) S ′ [ ϕ ] = S [ ϕ ] + ∫ Ω d 4 x ∂ μ K μ S'[\phi] = S[\phi] + \int_\Omega d^4x\, \partial_\mu K^\mu S ′ [ ϕ ] = S [ ϕ ] + ∫ Ω d 4 x ∂ μ K μ です。右辺第 2 項にガウスの発散定理を適用すると
∫ Ω d 4 x ∂ μ K μ = ∮ ∂ Ω d Σ μ K μ ( ϕ a ( x ) , x ) \int_\Omega d^4x\ \partial_\mu K^\mu = \oint_{\partial\Omega} d\Sigma_\mu\ K^\mu\big(\phi_a(x), x\big) ∫ Ω d 4 x ∂ μ K μ = ∮ ∂ Ω d Σ μ K μ ( ϕ a ( x ) , x ) となり、これは境界 ∂ Ω \partial\Omega ∂ Ω 上の ϕ a \phi_a ϕ a の値だけで決まります。
定理 4.3 の変分では η a \eta_a η a が ∂ Ω \partial\Omega ∂ Ω の近傍で 0 0 0 ですから、∂ Ω \partial\Omega ∂ Ω 上で ϕ a ε = ϕ a \phi_a^\varepsilon = \phi_a ϕ a ε = ϕ a 、したがってこの境界積分は ε \varepsilon ε に依存しません。よって
d d ε ∣ 0 S ′ [ ϕ ε ] = d d ε ∣ 0 S [ ϕ ε ] \left.\frac{d}{d\varepsilon}\right|_0 S'[\phi^\varepsilon] = \left.\frac{d}{d\varepsilon}\right|_0 S[\phi^\varepsilon] d ε d 0 S ′ [ ϕ ε ] = d ε d 0 S [ ϕ ε ] であり、停留条件は両者で完全に一致します。補題 4.2 を経て得られる運動方程式も同一です。
(K μ K^\mu K μ が場の微分にも依存する場合は、境界上で ∂ μ η a \partial_\mu\eta_a ∂ μ η a が消えるとは限らないため、この議論はそのままでは通りません。以下で必要になるのは上の形だけです。)
∎
実数値の場 ϕ ( x ) \phi(x) ϕ ( x ) が 1 つだけあり、それがローレンツ変換のもとでスカラーとして振る舞う(ϕ ′ ( x ′ ) = ϕ ( x ) \phi'(x') = \phi(x) ϕ ′ ( x ′ ) = ϕ ( x ) )とします。この場に対して許されるラグランジアン密度を、次の 3 つの要請で絞り込みます。
L \mathcal{L} L はローレンツスカラーである(注意 4.4 )。
L \mathcal{L} L は ϕ \phi ϕ の 1 階微分までしか含まない(運動方程式が 2 階になるように)。
L \mathcal{L} L は ϕ \phi ϕ について 2 次までである(重ね合わせの原理が成り立つ「自由場」を作りたい)。
要請 1・2 から、微分を含む項として作れるスカラーは ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ \partial_\mu\phi\,\partial^\mu\phi ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ だけです(∂ μ ϕ \partial_\mu\phi ∂ μ ϕ を 1 個だけ含むスカラーは作れません。添字を潰す相手がないからです)。要請 3 と合わせると、最も一般的な形は定数 A , B , C , D A, B, C, D A , B , C , D を用いて
L = A ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ + B ϕ 2 + C ϕ + D \mathcal{L} = A\, \partial_\mu\phi\,\partial^\mu\phi + B\, \phi^2 + C\,\phi + D L = A ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ + B ϕ 2 + C ϕ + D
です。ここで D D D は運動方程式に寄与しない定数、C ϕ C\phi C ϕ は ϕ → ϕ + const \phi \to \phi + \text{const} ϕ → ϕ + const の平行移動で B ϕ 2 B\phi^2 B ϕ 2 に吸収できます(B ≠ 0 B \ne 0 B = 0 のとき)。A A A は ϕ \phi ϕ の定数倍のスケール変換で 1 / 2 1/2 1/2 に規格化できます。残った B B B を B = − 1 2 m 2 B = -\frac{1}{2}m^2 B = − 2 1 m 2 と書けば、
L K G = 1 2 ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ − 1 2 m 2 ϕ 2 = 1 2 ϕ ˙ 2 − 1 2 ( ∇ ϕ ) 2 − 1 2 m 2 ϕ 2 \mathcal{L}_{\mathrm{KG}} = \frac{1}{2}\, \partial_\mu\phi\, \partial^\mu\phi - \frac{1}{2}\, m^2 \phi^2
= \frac{1}{2}\dot\phi^2 - \frac{1}{2}(\nabla\phi)^2 - \frac{1}{2}m^2\phi^2 L KG = 2 1 ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ − 2 1 m 2 ϕ 2 = 2 1 ϕ ˙ 2 − 2 1 ( ∇ ϕ ) 2 − 2 1 m 2 ϕ 2
に到達します。これがクライン・ゴルドン(Klein–Gordon)場 のラグランジアン密度です。
符号の選び方には物理的な意味があります。A > 0 A > 0 A > 0 (運動項が正)でなければ、後で見るようにエネルギー密度が下に有界でなくなります。m 2 > 0 m^2 > 0 m 2 > 0 でなければ、ϕ = 0 \phi = 0 ϕ = 0 という配位はポテンシャル V ( ϕ ) = 1 2 m 2 ϕ 2 V(\phi) = \frac{1}{2}m^2\phi^2 V ( ϕ ) = 2 1 m 2 ϕ 2 の極大点になり不安定です。m 2 < 0 m^2 < 0 m 2 < 0 の場合に何が起きるかは自発的対称性の破れの話題であり、ゲージ理論と自発的対称性の破れ で扱います。
例 5.1 (クライン・ゴルドン方程式と分散関係 )
L K G \mathcal{L}_{\mathrm{KG}} L KG に 定理 4.3 を適用します。まず
∂ L K G ∂ ϕ = − m 2 ϕ . \frac{\partial \mathcal{L}_{\mathrm{KG}}}{\partial \phi} = -m^2\phi . ∂ ϕ ∂ L KG = − m 2 ϕ . 次に微分についての偏微分です。∂ μ ϕ ∂ μ ϕ = η α β ∂ α ϕ ∂ β ϕ \partial_\mu\phi\,\partial^\mu\phi = \eta^{\alpha\beta}\,\partial_\alpha\phi\,\partial_\beta\phi ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ = η α β ∂ α ϕ ∂ β ϕ と書いて ∂ ρ ϕ \partial_\rho\phi ∂ ρ ϕ で微分すると、2 つの因子それぞれから寄与が出て
∂ ∂ ( ∂ ρ ϕ ) ( 1 2 η α β ∂ α ϕ ∂ β ϕ ) = 1 2 ( η ρ β ∂ β ϕ + η α ρ ∂ α ϕ ) = ∂ ρ ϕ \frac{\partial}{\partial(\partial_\rho\phi)}\Big( \tfrac{1}{2}\eta^{\alpha\beta}\partial_\alpha\phi\,\partial_\beta\phi \Big)
= \tfrac{1}{2}\big( \eta^{\rho\beta}\partial_\beta\phi + \eta^{\alpha\rho}\partial_\alpha\phi \big) = \partial^\rho \phi ∂ ( ∂ ρ ϕ ) ∂ ( 2 1 η α β ∂ α ϕ ∂ β ϕ ) = 2 1 ( η ρβ ∂ β ϕ + η α ρ ∂ α ϕ ) = ∂ ρ ϕ となります(η \eta η が対称であることを使いました)。よってオイラー・ラグランジュ方程式は
( □ + m 2 ) ϕ = ∂ μ ∂ μ ϕ + m 2 ϕ = 0 (\Box + m^2)\,\phi = \partial_\mu\partial^\mu\phi + m^2\phi = 0 ( □ + m 2 ) ϕ = ∂ μ ∂ μ ϕ + m 2 ϕ = 0 です。これがクライン・ゴルドン方程式 です。
平面波 ϕ ( x ) = e − i k ⋅ x \phi(x) = e^{-i k\cdot x} ϕ ( x ) = e − ik ⋅ x (k ⋅ x = k μ x μ = k 0 t − k ⋅ x k\cdot x = k_\mu x^\mu = k^0 t - \boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{x} k ⋅ x = k μ x μ = k 0 t − k ⋅ x )を代入します。∂ μ e − i k ⋅ x = − i k μ e − i k ⋅ x \partial_\mu e^{-ik\cdot x} = -i k_\mu e^{-ik\cdot x} ∂ μ e − ik ⋅ x = − i k μ e − ik ⋅ x ですから □ e − i k ⋅ x = ( − i k μ ) ( − i k μ ) e − i k ⋅ x = − k μ k μ e − i k ⋅ x \Box e^{-ik\cdot x} = (-ik_\mu)(-ik^\mu) e^{-ik\cdot x} = -k_\mu k^\mu\, e^{-ik\cdot x} □ e − ik ⋅ x = ( − i k μ ) ( − i k μ ) e − ik ⋅ x = − k μ k μ e − ik ⋅ x となり、
( − k μ k μ + m 2 ) e − i k ⋅ x = 0 ⟺ k μ k μ = m 2 ⟺ ( k 0 ) 2 = ∣ k ∣ 2 + m 2 . (-k_\mu k^\mu + m^2)\, e^{-ik\cdot x} = 0 \iff k_\mu k^\mu = m^2 \iff (k^0)^2 = |\boldsymbol{k}|^2 + m^2 . ( − k μ k μ + m 2 ) e − ik ⋅ x = 0 ⟺ k μ k μ = m 2 ⟺ ( k 0 ) 2 = ∣ k ∣ 2 + m 2 . ℏ = c = 1 \hbar = c = 1 ℏ = c = 1 の下で k 0 = E k^0 = E k 0 = E 、k = p \boldsymbol{k} = \boldsymbol{p} k = p と読めば、これは相対論的なエネルギー・運動量関係
E 2 = p 2 + m 2 E^2 = \boldsymbol{p}^2 + m^2 E 2 = p 2 + m 2 に他なりません(相対論的力学 の エネルギー・運動量関係式(定理 4.4)[相対論的力学] を参照)。パラメータ m m m が質量と呼ばれるのはこのためです。 ϕ \phi ϕ が実であることから、一般解は ω k : = ∣ k ∣ 2 + m 2 \omega_{\boldsymbol{k}} := \sqrt{|\boldsymbol{k}|^2 + m^2} ω k := ∣ k ∣ 2 + m 2 として
ϕ ( x ) = ∫ d 3 k ( 2 π ) 3 2 ω k [ α ( k ) e − i k ⋅ x + α ( k ) ∗ e i k ⋅ x ] k 0 = ω k \phi(x) = \int \frac{d^3k}{(2\pi)^3\, 2\omega_{\boldsymbol{k}}} \left[ \alpha(\boldsymbol{k})\, e^{-ik\cdot x} + \alpha(\boldsymbol{k})^{*}\, e^{ik\cdot x} \right]_{k^0 = \omega_{\boldsymbol{k}}} ϕ ( x ) = ∫ ( 2 π ) 3 2 ω k d 3 k [ α ( k ) e − ik ⋅ x + α ( k ) ∗ e ik ⋅ x ] k 0 = ω k と書けます。α ( k ) \alpha(\boldsymbol{k}) α ( k ) が a ^ ( k ) \hat{a}(\boldsymbol{k}) a ^ ( k ) という演算子に化けるのが正準量子化です(スカラー場の正準量子化 )。
m m m が本当に「質量」として物理に効くことを、もう 1 つ別の角度から確かめます。クライン・ゴルドン場に静的な点源を置くと、力の到達距離が 1 / m 1/m 1/ m になります。湯川秀樹が 1935 年に中間子の存在を予言したのは、まさにこの計算によってでした。
例 5.2 (点源が作る場と核力の到達距離 )
原点に静止した点源があり、それが場と結合している状況を
L = 1 2 ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ − 1 2 m 2 ϕ 2 + g ϕ δ 3 ( x ) \mathcal{L} = \frac{1}{2}\partial_\mu\phi\,\partial^\mu\phi - \frac{1}{2}m^2\phi^2 + g\,\phi\,\delta^3(\boldsymbol{x}) L = 2 1 ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ − 2 1 m 2 ϕ 2 + g ϕ δ 3 ( x ) で表します。定理 4.3 より ∂ L / ∂ ϕ = − m 2 ϕ + g δ 3 ( x ) \partial\mathcal{L}/\partial\phi = -m^2\phi + g\delta^3(\boldsymbol{x}) ∂ L / ∂ ϕ = − m 2 ϕ + g δ 3 ( x ) 、∂ μ ( ∂ L / ∂ ( ∂ μ ϕ ) ) = □ ϕ \partial_\mu(\partial\mathcal{L}/\partial(\partial_\mu\phi)) = \Box\phi ∂ μ ( ∂ L / ∂ ( ∂ μ ϕ )) = □ ϕ なので
( □ + m 2 ) ϕ = g δ 3 ( x ) . (\Box + m^2)\phi = g\,\delta^3(\boldsymbol{x}) . ( □ + m 2 ) ϕ = g δ 3 ( x ) . 定常解を探すので ∂ t ϕ = 0 \partial_t\phi = 0 ∂ t ϕ = 0 とすると □ ϕ = − ∇ 2 ϕ \Box\phi = -\nabla^2\phi □ ϕ = − ∇ 2 ϕ で、
( − ∇ 2 + m 2 ) ϕ ( x ) = g δ 3 ( x ) . (-\nabla^2 + m^2)\,\phi(\boldsymbol{x}) = g\,\delta^3(\boldsymbol{x}) . ( − ∇ 2 + m 2 ) ϕ ( x ) = g δ 3 ( x ) . フーリエ変換 ϕ ( x ) = ∫ d 3 k ( 2 π ) 3 ϕ ~ ( k ) e i k ⋅ x \phi(\boldsymbol{x}) = \int \frac{d^3k}{(2\pi)^3} \tilde\phi(\boldsymbol{k}) e^{i\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{x}} ϕ ( x ) = ∫ ( 2 π ) 3 d 3 k ϕ ~ ( k ) e i k ⋅ x を代入すると ( ∣ k ∣ 2 + m 2 ) ϕ ~ = g (|\boldsymbol{k}|^2 + m^2)\tilde\phi = g ( ∣ k ∣ 2 + m 2 ) ϕ ~ = g 、すなわち ϕ ~ ( k ) = g / ( ∣ k ∣ 2 + m 2 ) \tilde\phi(\boldsymbol{k}) = g/(|\boldsymbol{k}|^2+m^2) ϕ ~ ( k ) = g / ( ∣ k ∣ 2 + m 2 ) です。逆変換を極座標で実行します。r : = ∣ x ∣ r := |\boldsymbol{x}| r := ∣ x ∣ 、k : = ∣ k ∣ k := |\boldsymbol{k}| k := ∣ k ∣ とし、x \boldsymbol{x} x を極軸に取ると
ϕ ( r ) = g ( 2 π ) 3 ∫ 0 2 π d φ ∫ 0 π d θ sin θ ∫ 0 ∞ d k k 2 e i k r cos θ k 2 + m 2 = g ( 2 π ) 2 ∫ 0 ∞ d k k 2 k 2 + m 2 ⋅ 2 sin ( k r ) k r = g 2 π 2 r ∫ 0 ∞ d k k sin ( k r ) k 2 + m 2 . \begin{aligned}
\phi(r) &= \frac{g}{(2\pi)^3}\int_0^{2\pi}\! d\varphi \int_0^\pi\! d\theta\,\sin\theta \int_0^\infty\! dk\ \frac{k^2\, e^{ikr\cos\theta}}{k^2+m^2} \\
&= \frac{g}{(2\pi)^2}\int_0^\infty dk\ \frac{k^2}{k^2+m^2}\cdot \frac{2\sin(kr)}{kr}
= \frac{g}{2\pi^2 r}\int_0^\infty dk\ \frac{k\,\sin(kr)}{k^2+m^2} .
\end{aligned} ϕ ( r ) = ( 2 π ) 3 g ∫ 0 2 π d φ ∫ 0 π d θ sin θ ∫ 0 ∞ d k k 2 + m 2 k 2 e ik r c o s θ = ( 2 π ) 2 g ∫ 0 ∞ d k k 2 + m 2 k 2 ⋅ k r 2 sin ( k r ) = 2 π 2 r g ∫ 0 ∞ d k k 2 + m 2 k sin ( k r ) . 2 行目では ∫ 0 π d θ sin θ e i k r cos θ = [ e i k r cos θ / ( − i k r ) ] θ = 0 π = 2 sin ( k r ) / ( k r ) \int_0^\pi d\theta \sin\theta\, e^{ikr\cos\theta} = \big[ e^{ikr\cos\theta}/(-ikr) \big]_{\theta=0}^{\pi} = 2\sin(kr)/(kr) ∫ 0 π d θ sin θ e ik r c o s θ = [ e ik r c o s θ / ( − ik r ) ] θ = 0 π = 2 sin ( k r ) / ( k r ) を使いました。
残った積分を I I I とおきます。被積分関数は k k k の偶関数なので I = 1 2 ∫ − ∞ ∞ k sin ( k r ) k 2 + m 2 d k I = \frac{1}{2}\int_{-\infty}^{\infty} \frac{k\sin(kr)}{k^2+m^2}dk I = 2 1 ∫ − ∞ ∞ k 2 + m 2 k s i n ( k r ) d k です。また k cos ( k r ) / ( k 2 + m 2 ) k\cos(kr)/(k^2+m^2) k cos ( k r ) / ( k 2 + m 2 ) は奇関数で積分が 0 0 0 ですから
∫ − ∞ ∞ k e i k r k 2 + m 2 d k = 0 + i ⋅ 2 I . \int_{-\infty}^{\infty} \frac{k\,e^{ikr}}{k^2+m^2}\,dk = 0 + i\cdot 2I . ∫ − ∞ ∞ k 2 + m 2 k e ik r d k = 0 + i ⋅ 2 I . 左辺を留数定理で計算します。r > 0 r > 0 r > 0 なので上半平面に閉じる半円を取ると、被積分関数の上半平面の極は k = i m k = im k = im のみで、留数は i m e i ( i m ) r 2 i m = e − m r 2 \dfrac{im\, e^{i(im)r}}{2im} = \dfrac{e^{-mr}}{2} 2 im im e i ( im ) r = 2 e − m r です。よって左辺は 2 π i ⋅ e − m r 2 = i π e − m r 2\pi i \cdot \frac{e^{-mr}}{2} = i\pi e^{-mr} 2 π i ⋅ 2 e − m r = iπ e − m r となり、I = π 2 e − m r I = \frac{\pi}{2}e^{-mr} I = 2 π e − m r を得ます。したがって
ϕ ( r ) = g 2 π 2 r ⋅ π 2 e − m r = g 4 π e − m r r . \phi(r) = \frac{g}{2\pi^2 r}\cdot\frac{\pi}{2}e^{-mr} = \frac{g}{4\pi}\,\frac{e^{-mr}}{r} . ϕ ( r ) = 2 π 2 r g ⋅ 2 π e − m r = 4 π g r e − m r . これが湯川ポテンシャル です。m → 0 m \to 0 m → 0 とすると g / ( 4 π r ) g/(4\pi r) g / ( 4 π r ) というクーロン型の長距離力になり、m ≠ 0 m \ne 0 m = 0 では e − m r e^{-mr} e − m r によって距離 1 / m 1/m 1/ m 程度で急速に減衰します。
数値を入れてみます。核力の到達距離はおよそ 1.4 f m 1.4\ \mathrm{fm} 1.4 fm です。ℏ c = 197.3 M e V ⋅ f m \hbar c = 197.3\ \mathrm{MeV\cdot fm} ℏ c = 197.3 MeV ⋅ fm を使って
m ≈ ℏ c 1.4 f m = 197.3 M e V ⋅ f m 1.4 f m ≈ 1.4 × 10 2 M e V m \approx \frac{\hbar c}{1.4\ \mathrm{fm}} = \frac{197.3\ \mathrm{MeV\cdot fm}}{1.4\ \mathrm{fm}} \approx 1.4 \times 10^2\ \mathrm{MeV} m ≈ 1.4 fm ℏ c = 1.4 fm 197.3 MeV ⋅ fm ≈ 1.4 × 1 0 2 MeV となります。実際に 1947 年に発見された π \pi π 中間子の質量は約 135 135 135 –140 M e V 140\ \mathrm{MeV} 140 MeV で、この見積もりとよく合っています。
自由場だけでは何も起こりません。散乱も崩壊も相互作用があってこそです。要請 3(ϕ \phi ϕ について 2 次)を外し、ポテンシャル項を付けます。
L = 1 2 ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ − 1 2 m 2 ϕ 2 − ∑ n ≥ 3 λ n n ! ϕ n . \mathcal{L} = \frac{1}{2}\partial_\mu\phi\,\partial^\mu\phi - \frac{1}{2}m^2\phi^2 - \sum_{n \ge 3}\frac{\lambda_n}{n!}\phi^n . L = 2 1 ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ − 2 1 m 2 ϕ 2 − n ≥ 3 ∑ n ! λ n ϕ n .
エミー・ネーターが 1918 年に示した定理は、「作用の連続対称性 1 つにつき保存量が 1 つ対応する」という主張です。有限自由度版(対称性と保存則 )では保存されるのは時間の関数 1 個でしたが、場の理論では局所的な保存則 、すなわち連続の方程式 ∂ μ j μ = 0 \partial_\mu j^\mu = 0 ∂ μ j μ = 0 という、より強い形で得られます。これは「電荷が消えて別の場所に現れる」ようなことが起きないという主張であり、相対論的な因果律とも整合します。
flowchart TD
L["ラグランジアン密度 L"] --> S["作用 S = ∫ d⁴x L"]
S --> V["変分原理 δS = 0"]
V --> EL["オイラー・ラグランジュ方程式"]
S --> SY["作用の連続対称性"]
SY --> N["ネーターの定理"]
EL --> N
N --> J["保存カレント ∂μ jμ = 0"]
J --> Q["保存電荷 Q = ∫ d³x j⁰"] この章の論理構造。ラグランジアン密度という 1 つの関数から、運動方程式と保存則の両方が導かれる。
対称性の定義には注意が要ります。「作用が不変」だけでは 命題 4.5 の自由度を取りこぼすので、L \mathcal{L} L が全微分だけずれることを許した準不変性 を採用します。
定義 6.1 (作用の連続対称性(準不変性) )
ε \varepsilon ε を実パラメータとする滑らかな 1 パラメータ変換族
x μ ⟼ x ′ μ = x μ + ε X μ ( x ) + O ( ε 2 ) , ϕ a ( x ) ⟼ ϕ a ′ ( x ′ ) = ϕ a ( x ) + ε F a ( x ) + O ( ε 2 ) x^\mu \longmapsto x'^\mu = x^\mu + \varepsilon\, X^\mu(x) + O(\varepsilon^2), \qquad
\phi_a(x) \longmapsto \phi'_a(x') = \phi_a(x) + \varepsilon\, F_a(x) + O(\varepsilon^2) x μ ⟼ x ′ μ = x μ + ε X μ ( x ) + O ( ε 2 ) , ϕ a ( x ) ⟼ ϕ a ′ ( x ′ ) = ϕ a ( x ) + ε F a ( x ) + O ( ε 2 ) を考えます。ここで X μ X^\mu X μ は x x x の、F a F_a F a は ϕ b ( x ) \phi_b(x) ϕ b ( x ) 、∂ μ ϕ b ( x ) \partial_\mu\phi_b(x) ∂ μ ϕ b ( x ) および x x x の滑らかな関数です。
ある K μ K^\mu K μ (ϕ b \phi_b ϕ b 、∂ μ ϕ b \partial_\mu\phi_b ∂ μ ϕ b 、x x x の滑らかな関数)が存在して、恒等式
L ( ϕ ′ ( x ′ ) , ∂ ′ ϕ ′ ( x ′ ) ) det ( ∂ x ′ ∂ x ) = L ( ϕ ( x ) , ∂ ϕ ( x ) ) + ε ∂ μ K μ + O ( ε 2 ) \mathcal{L}\big(\phi'(x'),\, \partial' \phi'(x')\big)\ \det\!\left( \frac{\partial x'}{\partial x} \right)
= \mathcal{L}\big(\phi(x),\, \partial\phi(x)\big) + \varepsilon\, \partial_\mu K^\mu + O(\varepsilon^2) L ( ϕ ′ ( x ′ ) , ∂ ′ ϕ ′ ( x ′ ) ) det ( ∂ x ∂ x ′ ) = L ( ϕ ( x ) , ∂ ϕ ( x ) ) + ε ∂ μ K μ + O ( ε 2 ) が任意の(運動方程式を満たすとは限らない)場の配位に対して 成り立つとき、この変換族を作用の連続対称性と呼びます。K μ = 0 K^\mu = 0 K μ = 0 の場合を厳密不変、一般の場合を準不変といいます。
左辺の因子 det ( ∂ x ′ / ∂ x ) \det(\partial x'/\partial x) det ( ∂ x ′ / ∂ x ) は積分測度の変化 d 4 x ′ = det ( ∂ x ′ / ∂ x ) d 4 x d^4x' = \det(\partial x'/\partial x)\, d^4x d 4 x ′ = det ( ∂ x ′ / ∂ x ) d 4 x を表しており、これを含めることで左辺は「変換後の理論の作用密度を元の座標で測ったもの」になります。
条件を「運動方程式によらず恒等的に成り立つ」としたのが要点です。運動方程式の上でだけ成り立つ式からは、何も新しい情報は出てきません。
定理 6.2 (ネーターの定理 )
L = L ( ϕ a , ∂ μ ϕ a ) \mathcal{L} = \mathcal{L}(\phi_a, \partial_\mu\phi_a) L = L ( ϕ a , ∂ μ ϕ a ) は座標 x x x に陽には依存しないとします。定義 6.1 の意味の連続対称性が与えられたとき、
π μ a : = ∂ L ∂ ( ∂ μ ϕ a ) \pi^\mu{}_a := \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu \phi_a)} π μ a := ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ∂ L とおき、ネーターカレント を
j μ : = π μ a ( F a − X ν ∂ ν ϕ a ) + L X μ − K μ j^\mu := \pi^\mu{}_a \big( F_a - X^\nu \partial_\nu \phi_a \big) + \mathcal{L}\, X^\mu - K^\mu j μ := π μ a ( F a − X ν ∂ ν ϕ a ) + L X μ − K μ で定めます。このとき、オイラー・ラグランジュ方程式(定理 4.3 )の任意の解の上で
∂ μ j μ = 0 \partial_\mu j^\mu = 0 ∂ μ j μ = 0 が成り立ちます。
証明(定理 6.2) 第 1 段:対称性条件を O ( ε ) O(\varepsilon) O ( ε ) で書き下す。
まずヤコビ行列は ∂ x ′ μ / ∂ x ν = δ ν μ + ε ∂ ν X μ + O ( ε 2 ) \partial x'^\mu/\partial x^\nu = \delta^\mu_\nu + \varepsilon\,\partial_\nu X^\mu + O(\varepsilon^2) ∂ x ′ μ / ∂ x ν = δ ν μ + ε ∂ ν X μ + O ( ε 2 ) なので、行列式は
det ( ∂ x ′ ∂ x ) = 1 + ε ∂ μ X μ + O ( ε 2 ) \det\!\left( \frac{\partial x'}{\partial x} \right) = 1 + \varepsilon\, \partial_\mu X^\mu + O(\varepsilon^2) det ( ∂ x ∂ x ′ ) = 1 + ε ∂ μ X μ + O ( ε 2 ) です(det ( I + ε M ) = 1 + ε t r M + O ( ε 2 ) \det(I + \varepsilon M) = 1 + \varepsilon\,\mathrm{tr}\,M + O(\varepsilon^2) det ( I + εM ) = 1 + ε tr M + O ( ε 2 ) )。
次に微分の変換です。逆写像は ∂ x ν / ∂ x ′ μ = δ μ ν − ε ∂ μ X ν + O ( ε 2 ) \partial x^\nu/\partial x'^\mu = \delta^\nu_\mu - \varepsilon\,\partial_\mu X^\nu + O(\varepsilon^2) ∂ x ν / ∂ x ′ μ = δ μ ν − ε ∂ μ X ν + O ( ε 2 ) なので、連鎖律より
∂ μ ′ ϕ a ′ ( x ′ ) = ∂ x ν ∂ x ′ μ ∂ ν [ ϕ a ( x ) + ε F a ( x ) ] = ∂ μ ϕ a + ε ( ∂ μ F a − ( ∂ μ X ν ) ∂ ν ϕ a ) + O ( ε 2 ) . \partial'_\mu \phi'_a(x') = \frac{\partial x^\nu}{\partial x'^\mu}\,\partial_\nu\big[\phi_a(x) + \varepsilon F_a(x)\big]
= \partial_\mu \phi_a + \varepsilon\big( \partial_\mu F_a - (\partial_\mu X^\nu)\, \partial_\nu\phi_a \big) + O(\varepsilon^2) . ∂ μ ′ ϕ a ′ ( x ′ ) = ∂ x ′ μ ∂ x ν ∂ ν [ ϕ a ( x ) + ε F a ( x ) ] = ∂ μ ϕ a + ε ( ∂ μ F a − ( ∂ μ X ν ) ∂ ν ϕ a ) + O ( ε 2 ) . L \mathcal{L} L は x x x に陽に依存しないので、連鎖律で
L ( ϕ ′ ( x ′ ) , ∂ ′ ϕ ′ ( x ′ ) ) = L + ε [ ∂ L ∂ ϕ a F a + π μ a ( ∂ μ F a − ( ∂ μ X ν ) ∂ ν ϕ a ) ] + O ( ε 2 ) . \mathcal{L}\big(\phi'(x'), \partial'\phi'(x')\big) = \mathcal{L} + \varepsilon\left[ \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi_a}F_a + \pi^\mu{}_a\big( \partial_\mu F_a - (\partial_\mu X^\nu)\partial_\nu\phi_a \big) \right] + O(\varepsilon^2) . L ( ϕ ′ ( x ′ ) , ∂ ′ ϕ ′ ( x ′ ) ) = L + ε [ ∂ ϕ a ∂ L F a + π μ a ( ∂ μ F a − ( ∂ μ X ν ) ∂ ν ϕ a ) ] + O ( ε 2 ) . 行列式を掛けて 定義 6.1 の右辺と O ( ε ) O(\varepsilon) O ( ε ) で比較すると、恒等式
L ∂ μ X μ + ∂ L ∂ ϕ a F a + π μ a ∂ μ F a − π μ a ( ∂ μ X ν ) ∂ ν ϕ a = ∂ μ K μ \mathcal{L}\,\partial_\mu X^\mu + \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi_a}F_a + \pi^\mu{}_a\,\partial_\mu F_a - \pi^\mu{}_a\,(\partial_\mu X^\nu)\,\partial_\nu\phi_a = \partial_\mu K^\mu L ∂ μ X μ + ∂ ϕ a ∂ L F a + π μ a ∂ μ F a − π μ a ( ∂ μ X ν ) ∂ ν ϕ a = ∂ μ K μ を得ます。これを対称性恒等式 と呼ぶことにします。ここまでは運動方程式を一切使っていないこと、そして 定義 6.1 で「任意の場の配位について成り立つ」と要求したからこそこれが恒等式になっていることを確認してください。
第 2 段:運動方程式を使って左辺を発散の形にまとめる。
以下、ϕ \phi ϕ はオイラー・ラグランジュ方程式の解とします。すなわち ∂ L ∂ ϕ a = ∂ μ π μ a \dfrac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi_a} = \partial_\mu \pi^\mu{}_a ∂ ϕ a ∂ L = ∂ μ π μ a です。
第 2・第 3 項をまとめます。ライプニッツ則より
∂ L ∂ ϕ a F a + π μ a ∂ μ F a = ( ∂ μ π μ a ) F a + π μ a ∂ μ F a = ∂ μ ( π μ a F a ) . \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi_a}F_a + \pi^\mu{}_a\partial_\mu F_a
= (\partial_\mu \pi^\mu{}_a) F_a + \pi^\mu{}_a \partial_\mu F_a = \partial_\mu\big( \pi^\mu{}_a F_a \big) . ∂ ϕ a ∂ L F a + π μ a ∂ μ F a = ( ∂ μ π μ a ) F a + π μ a ∂ μ F a = ∂ μ ( π μ a F a ) . 第 1 項を処理します。L \mathcal{L} L の x x x についての全微分は、x x x への陽な依存性がないので
∂ μ L = ∂ L ∂ ϕ a ∂ μ ϕ a + π ν a ∂ ν ∂ μ ϕ a = ( ∂ ν π ν a ) ∂ μ ϕ a + π ν a ∂ ν ∂ μ ϕ a = ∂ ν ( π ν a ∂ μ ϕ a ) \partial_\mu \mathcal{L} = \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi_a}\partial_\mu\phi_a + \pi^\nu{}_a\, \partial_\nu\partial_\mu \phi_a
= (\partial_\nu \pi^\nu{}_a)\,\partial_\mu\phi_a + \pi^\nu{}_a\,\partial_\nu\partial_\mu\phi_a
= \partial_\nu\big( \pi^\nu{}_a\, \partial_\mu \phi_a \big) ∂ μ L = ∂ ϕ a ∂ L ∂ μ ϕ a + π ν a ∂ ν ∂ μ ϕ a = ( ∂ ν π ν a ) ∂ μ ϕ a + π ν a ∂ ν ∂ μ ϕ a = ∂ ν ( π ν a ∂ μ ϕ a ) (2 番目の等号で再び運動方程式を使いました)。したがって
L ∂ μ X μ = ∂ μ ( L X μ ) − X μ ∂ μ L = ∂ μ ( L X μ ) − X μ ∂ ν ( π ν a ∂ μ ϕ a ) . \mathcal{L}\,\partial_\mu X^\mu = \partial_\mu\big(\mathcal{L}X^\mu\big) - X^\mu\,\partial_\mu\mathcal{L}
= \partial_\mu\big(\mathcal{L}X^\mu\big) - X^\mu\, \partial_\nu\big( \pi^\nu{}_a \partial_\mu\phi_a \big) . L ∂ μ X μ = ∂ μ ( L X μ ) − X μ ∂ μ L = ∂ μ ( L X μ ) − X μ ∂ ν ( π ν a ∂ μ ϕ a ) . 第 4 項も同様にライプニッツ則で分けます。
− π μ a ( ∂ μ X ν ) ∂ ν ϕ a = − ∂ μ ( X ν π μ a ∂ ν ϕ a ) + X ν ∂ μ ( π μ a ∂ ν ϕ a ) . -\pi^\mu{}_a (\partial_\mu X^\nu)\partial_\nu\phi_a
= -\partial_\mu\big( X^\nu \pi^\mu{}_a \partial_\nu\phi_a \big) + X^\nu \partial_\mu\big( \pi^\mu{}_a \partial_\nu\phi_a \big) . − π μ a ( ∂ μ X ν ) ∂ ν ϕ a = − ∂ μ ( X ν π μ a ∂ ν ϕ a ) + X ν ∂ μ ( π μ a ∂ ν ϕ a ) . 第 3 段:X X X を含む余分な項が相殺する。
上の 2 つの式に現れた X X X 付きの項は
− X μ ∂ ν ( π ν a ∂ μ ϕ a ) + X ν ∂ μ ( π μ a ∂ ν ϕ a ) - X^\mu \partial_\nu\big( \pi^\nu{}_a \partial_\mu\phi_a \big) + X^\nu \partial_\mu\big( \pi^\mu{}_a \partial_\nu\phi_a \big) − X μ ∂ ν ( π ν a ∂ μ ϕ a ) + X ν ∂ μ ( π μ a ∂ ν ϕ a ) ですが、第 2 項で和を取る添字の名前を μ ↔ ν \mu \leftrightarrow \nu μ ↔ ν と付け替えれば第 1 項の符号違いに一致するので、和は 0 0 0 です。
以上を対称性恒等式に代入すると
∂ μ [ L X μ + π μ a F a − X ν π μ a ∂ ν ϕ a ] = ∂ μ K μ \partial_\mu\Big[ \mathcal{L}X^\mu + \pi^\mu{}_a F_a - X^\nu \pi^\mu{}_a \partial_\nu\phi_a \Big] = \partial_\mu K^\mu ∂ μ [ L X μ + π μ a F a − X ν π μ a ∂ ν ϕ a ] = ∂ μ K μ すなわち ∂ μ [ π μ a ( F a − X ν ∂ ν ϕ a ) + L X μ − K μ ] = 0 \partial_\mu\big[ \pi^\mu{}_a(F_a - X^\nu\partial_\nu\phi_a) + \mathcal{L}X^\mu - K^\mu \big] = 0 ∂ μ [ π μ a ( F a − X ν ∂ ν ϕ a ) + L X μ − K μ ] = 0 を得ます。これが求める式です。
∎
局所的な保存則 ∂ μ j μ = 0 \partial_\mu j^\mu = 0 ∂ μ j μ = 0 から、大域的な保存量が出ます。ただし「無限遠でカレントが十分速く落ちる」という物理的な仮定が要ることに注意してください。
系 6.3 (ネーター電荷の保存 )
定理 6.2 の状況で、解 ϕ \phi ϕ に対するカレント j μ j^\mu j μ が各時刻 t t t で次を満たすとします。半径 R R R の球面 S R S_R S R 上で
lim R → ∞ ∮ S R j i n i d S = 0 \lim_{R\to\infty} \oint_{S_R} j^i\, n^i\, dS = 0 R → ∞ lim ∮ S R j i n i d S = 0 (n i n^i n i は外向き単位法線。例えば ∣ j i ∣ = o ( R − 2 ) |j^i| = o(R^{-2}) ∣ j i ∣ = o ( R − 2 ) なら成り立ちます)。また j 0 j^0 j 0 は各時刻で R 3 \mathbb{R}^3 R 3 上可積分で、時間微分と積分が交換できるとします。このとき
Q ( t ) : = ∫ R 3 d 3 x j 0 ( t , x ) Q(t) := \int_{\mathbb{R}^3} d^3x\ j^0(t, \boldsymbol{x}) Q ( t ) := ∫ R 3 d 3 x j 0 ( t , x ) は時間に依らない定数です。
証明(系 6.3) ∂ μ j μ = ∂ 0 j 0 + ∂ i j i = 0 \partial_\mu j^\mu = \partial_0 j^0 + \partial_i j^i = 0 ∂ μ j μ = ∂ 0 j 0 + ∂ i j i = 0 ですから、
d Q d t = ∫ R 3 d 3 x ∂ 0 j 0 = − ∫ R 3 d 3 x ∂ i j i = − lim R → ∞ ∫ ∣ x ∣ ≤ R d 3 x ∇ ⋅ j = − lim R → ∞ ∮ S R j i n i d S = 0. \frac{dQ}{dt} = \int_{\mathbb{R}^3} d^3x\ \partial_0 j^0 = -\int_{\mathbb{R}^3} d^3x\ \partial_i j^i
= -\lim_{R\to\infty}\int_{|\boldsymbol{x}| \le R} d^3x\ \nabla\cdot \boldsymbol{j}
= -\lim_{R\to\infty}\oint_{S_R} j^i n^i\, dS = 0 . d t d Q = ∫ R 3 d 3 x ∂ 0 j 0 = − ∫ R 3 d 3 x ∂ i j i = − R → ∞ lim ∫ ∣ x ∣ ≤ R d 3 x ∇ ⋅ j = − R → ∞ lim ∮ S R j i n i d S = 0. 1 番目の等号で微分と積分の交換、3 番目でガウスの発散定理、最後で仮定を使いました。
∎
定義 6.5 (正準エネルギー・運動量テンソル )
L \mathcal{L} L が x x x に陽に依存しないとき、
T μ ν : = π μ a ∂ ν ϕ a − δ ν μ L , T μ ν = η ν ρ T μ ρ = π μ a ∂ ν ϕ a − η μ ν L T^\mu{}_\nu := \pi^\mu{}_a\, \partial_\nu \phi_a - \delta^\mu_\nu\, \mathcal{L},
\qquad
T^{\mu\nu} = \eta^{\nu\rho}\,T^\mu{}_\rho = \pi^\mu{}_a\, \partial^\nu\phi_a - \eta^{\mu\nu}\mathcal{L} T μ ν := π μ a ∂ ν ϕ a − δ ν μ L , T μν = η ν ρ T μ ρ = π μ a ∂ ν ϕ a − η μν L を正準エネルギー・運動量テンソル と呼びます。
時空並進 x ′ μ = x μ + ε ξ μ x'^\mu = x^\mu + \varepsilon\,\xi^\mu x ′ μ = x μ + ε ξ μ (ξ μ \xi^\mu ξ μ は定ベクトル。場の成分の添字 a a a と紛れないよう ξ \xi ξ と書きます)を考えます。場は ϕ a ′ ( x ′ ) = ϕ a ( x ) \phi'_a(x') = \phi_a(x) ϕ a ′ ( x ′ ) = ϕ a ( x ) と運ばれるだけなので X μ = ξ μ X^\mu = \xi^\mu X μ = ξ μ 、F a = 0 F_a = 0 F a = 0 です。ヤコビ行列は単位行列で det = 1 \det = 1 det = 1 、そして L \mathcal{L} L が x x x に陽に依存しないことから 定義 6.1 の左辺は L ( ϕ ( x ) , ∂ ϕ ( x ) ) \mathcal{L}(\phi(x),\partial\phi(x)) L ( ϕ ( x ) , ∂ ϕ ( x )) そのものになり、K μ = 0 K^\mu = 0 K μ = 0 が取れます。定理 6.2 を適用すると
j μ = π μ a ( 0 − ξ ν ∂ ν ϕ a ) + L ξ μ = − ξ ν ( π μ a ∂ ν ϕ a − δ ν μ L ) = − ξ ν T μ ν . j^\mu = \pi^\mu{}_a\big( 0 - \xi^\nu \partial_\nu\phi_a \big) + \mathcal{L}\,\xi^\mu
= -\xi^\nu\Big( \pi^\mu{}_a \partial_\nu\phi_a - \delta^\mu_\nu \mathcal{L} \Big) = -\xi^\nu\, T^\mu{}_\nu . j μ = π μ a ( 0 − ξ ν ∂ ν ϕ a ) + L ξ μ = − ξ ν ( π μ a ∂ ν ϕ a − δ ν μ L ) = − ξ ν T μ ν .
ξ ν \xi^\nu ξ ν は任意なので、4 本の保存則
∂ μ T μ ν = 0 ( ν = 0 , 1 , 2 , 3 ) \partial_\mu T^\mu{}_\nu = 0 \qquad (\nu = 0,1,2,3) ∂ μ T μ ν = 0 ( ν = 0 , 1 , 2 , 3 )
が成り立ちます。対応する保存量は 系 6.3 より
P ν = ∫ d 3 x T 0 ν P^\nu = \int d^3x\ T^{0\nu} P ν = ∫ d 3 x T 0 ν
で、P 0 P^0 P 0 がエネルギー、P i P^i P i が運動量です。実際 T 0 0 = π 0 a ϕ ˙ a − L T^0{}_0 = \pi^0{}_a\dot\phi_a - \mathcal{L} T 0 0 = π 0 a ϕ ˙ a − L は有限自由度でのルジャンドル変換 H = p q ˙ − L H = p\dot q - L H = p q ˙ − L (ハミルトニアンの定義(定義 3.6)[ハミルトン形式の力学] )と同じ形をしています。
例 6.6 (クライン・ゴルドン場のエネルギー・運動量 )
L K G \mathcal{L}_{\mathrm{KG}} L KG では 例 5.1 で計算したとおり π μ = ∂ μ ϕ \pi^\mu = \partial^\mu\phi π μ = ∂ μ ϕ なので
T μ ν = ∂ μ ϕ ∂ ν ϕ − η μ ν [ 1 2 ∂ α ϕ ∂ α ϕ − 1 2 m 2 ϕ 2 ] . T^{\mu\nu} = \partial^\mu\phi\,\partial^\nu\phi - \eta^{\mu\nu}\left[ \frac{1}{2}\partial_\alpha\phi\,\partial^\alpha\phi - \frac{1}{2}m^2\phi^2 \right] . T μν = ∂ μ ϕ ∂ ν ϕ − η μν [ 2 1 ∂ α ϕ ∂ α ϕ − 2 1 m 2 ϕ 2 ] . ∂ α ϕ ∂ α ϕ = ϕ ˙ 2 − ( ∇ ϕ ) 2 \partial_\alpha\phi\,\partial^\alpha\phi = \dot\phi^2 - (\nabla\phi)^2 ∂ α ϕ ∂ α ϕ = ϕ ˙ 2 − ( ∇ ϕ ) 2 に注意して μ = ν = 0 \mu = \nu = 0 μ = ν = 0 成分を計算します。
T 00 = ϕ ˙ 2 − [ 1 2 ϕ ˙ 2 − 1 2 ( ∇ ϕ ) 2 − 1 2 m 2 ϕ 2 ] = 1 2 ϕ ˙ 2 + 1 2 ( ∇ ϕ ) 2 + 1 2 m 2 ϕ 2 . T^{00} = \dot\phi^2 - \left[ \frac{1}{2}\dot\phi^2 - \frac{1}{2}(\nabla\phi)^2 - \frac{1}{2}m^2\phi^2 \right]
= \frac{1}{2}\dot\phi^2 + \frac{1}{2}(\nabla\phi)^2 + \frac{1}{2}m^2\phi^2 . T 00 = ϕ ˙ 2 − [ 2 1 ϕ ˙ 2 − 2 1 ( ∇ ϕ ) 2 − 2 1 m 2 ϕ 2 ] = 2 1 ϕ ˙ 2 + 2 1 ( ∇ ϕ ) 2 + 2 1 m 2 ϕ 2 . 3 項すべてが非負であり、エネルギー密度は下に有界です。これが「運動項の係数が正」「m 2 > 0 m^2 > 0 m 2 > 0 」を要求した理由です。運動量密度は
T 0 i = ∂ 0 ϕ ∂ i ϕ = − ϕ ˙ ∂ ϕ ∂ x i , P = − ∫ d 3 x ϕ ˙ ∇ ϕ . T^{0i} = \partial^0\phi\,\partial^i\phi = -\dot\phi\, \frac{\partial\phi}{\partial x^i},
\qquad \boldsymbol{P} = -\int d^3x\ \dot\phi\, \nabla\phi . T 0 i = ∂ 0 ϕ ∂ i ϕ = − ϕ ˙ ∂ x i ∂ ϕ , P = − ∫ d 3 x ϕ ˙ ∇ ϕ . 符号を確かめます。+ x +x + x 方向に進む波 ϕ = A cos ( ω t − k x ) \phi = A\cos(\omega t - k x) ϕ = A cos ( ω t − k x ) (k > 0 k > 0 k > 0 )では ϕ ˙ = − A ω sin ( ω t − k x ) \dot\phi = -A\omega\sin(\omega t - kx) ϕ ˙ = − A ω sin ( ω t − k x ) 、∂ ϕ / ∂ x = A k sin ( ω t − k x ) \partial\phi/\partial x = A k \sin(\omega t - kx) ∂ ϕ / ∂ x = A k sin ( ω t − k x ) なので − ϕ ˙ ∂ x ϕ = A 2 ω k sin 2 ( ω t − k x ) ≥ 0 -\dot\phi\,\partial_x\phi = A^2\omega k \sin^2(\omega t - kx) \ge 0 − ϕ ˙ ∂ x ϕ = A 2 ω k sin 2 ( ω t − k x ) ≥ 0 となり、確かに運動量は + x +x + x 方向を向いています。
また T μ ν T^{\mu\nu} T μν が対称であること(∂ μ ϕ ∂ ν ϕ \partial^\mu\phi\,\partial^\nu\phi ∂ μ ϕ ∂ ν ϕ も η μ ν \eta^{\mu\nu} η μν も対称)に注意してください。これは §6.5 で効いてきます。
次は時空を動かさず、場の空間の中だけで回す変換です。複素スカラー場 ϕ \phi ϕ (と、その複素共役 ϕ ˉ \bar\phi ϕ ˉ を独立変数とみなしたもの)に対して
L = ∂ μ ϕ ˉ ∂ μ ϕ − m 2 ϕ ˉ ϕ \mathcal{L} = \partial_\mu \bar\phi\, \partial^\mu\phi - m^2 \bar\phi \phi L = ∂ μ ϕ ˉ ∂ μ ϕ − m 2 ϕ ˉ ϕ
を考えます。実場 2 個 ϕ 1 , ϕ 2 \phi_1, \phi_2 ϕ 1 , ϕ 2 を ϕ = ( ϕ 1 + i ϕ 2 ) / 2 \phi = (\phi_1 + i\phi_2)/\sqrt{2} ϕ = ( ϕ 1 + i ϕ 2 ) / 2 とまとめたものと思っても構いません。
例 6.7 (大域的 U(1) 対称性と保存カレント )
変換
ϕ ′ ( x ) = e − i ε ϕ ( x ) = ϕ − i ε ϕ + O ( ε 2 ) , ϕ ˉ ′ ( x ) = e + i ε ϕ ˉ ( x ) = ϕ ˉ + i ε ϕ ˉ + O ( ε 2 ) \phi'(x) = e^{-i\varepsilon}\phi(x) = \phi - i\varepsilon\phi + O(\varepsilon^2), \qquad
\bar\phi'(x) = e^{+i\varepsilon}\bar\phi(x) = \bar\phi + i\varepsilon\bar\phi + O(\varepsilon^2) ϕ ′ ( x ) = e − i ε ϕ ( x ) = ϕ − i εϕ + O ( ε 2 ) , ϕ ˉ ′ ( x ) = e + i ε ϕ ˉ ( x ) = ϕ ˉ + i ε ϕ ˉ + O ( ε 2 ) を考えます。ε \varepsilon ε は時空に依らない定数なので「大域的」対称性です。定義 6.1 の記号では X μ = 0 X^\mu = 0 X μ = 0 、F ϕ = − i ϕ F_\phi = -i\phi F ϕ = − i ϕ 、F ϕ ˉ = + i ϕ ˉ F_{\bar\phi} = +i\bar\phi F ϕ ˉ = + i ϕ ˉ です。L \mathcal{L} L は ϕ ˉ ϕ \bar\phi\phi ϕ ˉ ϕ と ∂ μ ϕ ˉ ∂ μ ϕ \partial_\mu\bar\phi\,\partial^\mu\phi ∂ μ ϕ ˉ ∂ μ ϕ の組み合わせだけでできており、位相因子が e + i ε e − i ε = 1 e^{+i\varepsilon}e^{-i\varepsilon} = 1 e + i ε e − i ε = 1 と打ち消すので厳密に不変です。よって K μ = 0 K^\mu = 0 K μ = 0 が取れます。
運動量共役は
π μ ϕ = ∂ L ∂ ( ∂ μ ϕ ) = ∂ μ ϕ ˉ , π μ ϕ ˉ = ∂ L ∂ ( ∂ μ ϕ ˉ ) = ∂ μ ϕ \pi^\mu{}_{\phi} = \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\phi)} = \partial^\mu\bar\phi,
\qquad
\pi^\mu{}_{\bar\phi} = \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\bar\phi)} = \partial^\mu\phi π μ ϕ = ∂ ( ∂ μ ϕ ) ∂ L = ∂ μ ϕ ˉ , π μ ϕ ˉ = ∂ ( ∂ μ ϕ ˉ ) ∂ L = ∂ μ ϕ なので、定理 6.2 より
j μ = π μ ϕ F ϕ + π μ ϕ ˉ F ϕ ˉ = ∂ μ ϕ ˉ ( − i ϕ ) + ∂ μ ϕ ( i ϕ ˉ ) = i ( ϕ ˉ ∂ μ ϕ − ϕ ∂ μ ϕ ˉ ) . j^\mu = \pi^\mu{}_\phi F_\phi + \pi^\mu{}_{\bar\phi} F_{\bar\phi}
= \partial^\mu\bar\phi\,(-i\phi) + \partial^\mu\phi\,(i\bar\phi)
= i\big( \bar\phi\,\partial^\mu\phi - \phi\,\partial^\mu\bar\phi \big) . j μ = π μ ϕ F ϕ + π μ ϕ ˉ F ϕ ˉ = ∂ μ ϕ ˉ ( − i ϕ ) + ∂ μ ϕ ( i ϕ ˉ ) = i ( ϕ ˉ ∂ μ ϕ − ϕ ∂ μ ϕ ˉ ) . 保存を直接確かめます。L \mathcal{L} L のオイラー・ラグランジュ方程式は ϕ ˉ \bar\phi ϕ ˉ で変分して ( □ + m 2 ) ϕ = 0 (\Box + m^2)\phi = 0 ( □ + m 2 ) ϕ = 0 、ϕ \phi ϕ で変分して ( □ + m 2 ) ϕ ˉ = 0 (\Box+m^2)\bar\phi = 0 ( □ + m 2 ) ϕ ˉ = 0 です。したがって
∂ μ j μ = i ( ∂ μ ϕ ˉ ∂ μ ϕ + ϕ ˉ □ ϕ − ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ ˉ − ϕ □ ϕ ˉ ) = i ( ϕ ˉ ( − m 2 ϕ ) − ϕ ( − m 2 ϕ ˉ ) ) = 0. \partial_\mu j^\mu = i\big( \partial_\mu\bar\phi\,\partial^\mu\phi + \bar\phi\,\Box\phi - \partial_\mu\phi\,\partial^\mu\bar\phi - \phi\,\Box\bar\phi \big)
= i\big( \bar\phi(-m^2\phi) - \phi(-m^2\bar\phi) \big) = 0 . ∂ μ j μ = i ( ∂ μ ϕ ˉ ∂ μ ϕ + ϕ ˉ □ ϕ − ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ ˉ − ϕ □ ϕ ˉ ) = i ( ϕ ˉ ( − m 2 ϕ ) − ϕ ( − m 2 ϕ ˉ ) ) = 0. 第 1 項と第 3 項が相殺し、残りが運動方程式で消えました。保存電荷は
Q = ∫ d 3 x j 0 = i ∫ d 3 x ( ϕ ˉ ϕ ˙ − ϕ ϕ ˉ ˙ ) Q = \int d^3x\ j^0 = i\int d^3x\ \big( \bar\phi\,\dot\phi - \phi\,\dot{\bar\phi} \big) Q = ∫ d 3 x j 0 = i ∫ d 3 x ( ϕ ˉ ϕ ˙ − ϕ ϕ ˉ ˙ ) です。この U ( 1 ) U(1) U ( 1 ) を局所化(ε \varepsilon ε を x x x の関数に)すると電磁場との結合が必然的に現れ、Q Q Q は電荷そのものになります(ゲージ理論と自発的対称性の破れ )。
命題 6.9 (スカラー場の角運動量テンソル )
L \mathcal{L} L をローレンツスカラーの実スカラー場のラグランジアン密度とします。無限小ローレンツ変換 x ′ μ = x μ + ε ω μ ν x ν x'^\mu = x^\mu + \varepsilon\,\omega^\mu{}_\nu x^\nu x ′ μ = x μ + ε ω μ ν x ν (ω μ ν = − ω ν μ \omega_{\mu\nu} = -\omega_{\nu\mu} ω μν = − ω ν μ )と ϕ ′ ( x ′ ) = ϕ ( x ) \phi'(x') = \phi(x) ϕ ′ ( x ′ ) = ϕ ( x ) に対応するネーターの保存量として、
M μ α ρ : = x α T μ ρ − x ρ T μ α M^{\mu\alpha\rho} := x^\alpha\, T^{\mu\rho} - x^\rho\, T^{\mu\alpha} M μα ρ := x α T μ ρ − x ρ T μα が ∂ μ M μ α ρ = 0 \partial_\mu M^{\mu\alpha\rho} = 0 ∂ μ M μα ρ = 0 を満たします。さらにこのことから、正準エネルギー・運動量テンソルは対称 T α ρ = T ρ α T^{\alpha\rho} = T^{\rho\alpha} T α ρ = T ρ α です。
証明(命題 6.9) 定義 6.1 の記号で X μ = ω μ ν x ν X^\mu = \omega^\mu{}_\nu x^\nu X μ = ω μ ν x ν 、F = 0 F = 0 F = 0 です。ヤコビアンは 1 + ε ∂ μ X μ = 1 + ε ω μ μ 1 + \varepsilon\,\partial_\mu X^\mu = 1 + \varepsilon\,\omega^\mu{}_\mu 1 + ε ∂ μ X μ = 1 + ε ω μ μ ですが、ω μ μ = η μ α ω α μ \omega^\mu{}_\mu = \eta^{\mu\alpha}\omega_{\alpha\mu} ω μ μ = η μα ω α μ は対称テンソル η \eta η と反対称テンソル ω \omega ω の縮約なので 0 0 0 です。L \mathcal{L} L はスカラーなので L ( ϕ ′ ( x ′ ) , ∂ ′ ϕ ′ ( x ′ ) ) = L ( ϕ ( x ) , ∂ ϕ ( x ) ) \mathcal{L}(\phi'(x'),\partial'\phi'(x')) = \mathcal{L}(\phi(x),\partial\phi(x)) L ( ϕ ′ ( x ′ ) , ∂ ′ ϕ ′ ( x ′ )) = L ( ϕ ( x ) , ∂ ϕ ( x )) であり、K μ = 0 K^\mu = 0 K μ = 0 が取れます。よって
j μ = − T μ ν X ν = − T μ ν ω ν ρ x ρ = − T μ α ω α ρ x ρ j^\mu = -T^\mu{}_\nu X^\nu = -T^\mu{}_\nu\, \omega^\nu{}_\rho\, x^\rho = -T^{\mu\alpha}\,\omega_{\alpha\rho}\, x^\rho j μ = − T μ ν X ν = − T μ ν ω ν ρ x ρ = − T μα ω α ρ x ρ (T μ ν η ν α = T μ α T^\mu{}_\nu \eta^{\nu\alpha} = T^{\mu\alpha} T μ ν η ν α = T μα を使いました)。ω \omega ω の反対称性を使って明示的に反対称化すると
j μ = − 1 2 ω α ρ ( x ρ T μ α − x α T μ ρ ) = 1 2 ω α ρ M μ α ρ . j^\mu = -\frac{1}{2}\omega_{\alpha\rho}\big( x^\rho T^{\mu\alpha} - x^\alpha T^{\mu\rho} \big)
= \frac{1}{2}\,\omega_{\alpha\rho}\, M^{\mu\alpha\rho} . j μ = − 2 1 ω α ρ ( x ρ T μα − x α T μ ρ ) = 2 1 ω α ρ M μα ρ . ω α ρ \omega_{\alpha\rho} ω α ρ は任意の反対称定数行列なので、定理 6.2 の結論 ∂ μ j μ = 0 \partial_\mu j^\mu = 0 ∂ μ j μ = 0 は各 ( α , ρ ) (\alpha,\rho) ( α , ρ ) について ∂ μ M μ α ρ = 0 \partial_\mu M^{\mu\alpha\rho} = 0 ∂ μ M μα ρ = 0 を意味します。
最後の主張を示します。∂ μ x α = δ μ α \partial_\mu x^\alpha = \delta^\alpha_\mu ∂ μ x α = δ μ α とライプニッツ則から
∂ μ M μ α ρ = T α ρ − T ρ α + x α ∂ μ T μ ρ − x ρ ∂ μ T μ α . \partial_\mu M^{\mu\alpha\rho} = T^{\alpha\rho} - T^{\rho\alpha} + x^\alpha\,\partial_\mu T^{\mu\rho} - x^\rho\,\partial_\mu T^{\mu\alpha} . ∂ μ M μα ρ = T α ρ − T ρ α + x α ∂ μ T μ ρ − x ρ ∂ μ T μα . §6.3 で示した ∂ μ T μ ν = 0 \partial_\mu T^{\mu\nu} = 0 ∂ μ T μν = 0 により後ろの 2 項が消えるので、∂ μ M μ α ρ = T α ρ − T ρ α = 0 \partial_\mu M^{\mu\alpha\rho} = T^{\alpha\rho} - T^{\rho\alpha} = 0 ∂ μ M μα ρ = T α ρ − T ρ α = 0 です。
∎
M μ α ρ M^{\mu\alpha\rho} M μα ρ の空間成分から J i = 1 2 ϵ i j k ∫ d 3 x M 0 j k J^i = \frac{1}{2}\epsilon^{ijk}\int d^3x\, M^{0jk} J i = 2 1 ϵ ij k ∫ d 3 x M 0 j k を作れば、これが通常の角運動量です。r × p \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{p} r × p の場の理論版になっていることが M 0 j k = x j T 0 k − x k T 0 j M^{0jk} = x^j T^{0k} - x^k T^{0j} M 0 j k = x j T 0 k − x k T 0 j から読み取れます。
正準量子化に進むには、ラグランジュ形式からハミルトン形式に移る必要があります。ここは時間を特別扱いする段階なので、ローレンツ共変性は目に見えなくなります(理論としては保たれています)。
定義 7.1 (共役運動量密度とハミルトニアン密度 )
場 ϕ a \phi_a ϕ a に共役な運動量密度を
π a ( x ) : = ∂ L ∂ ϕ ˙ a = π 0 a ( x ) \pi_a(x) := \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \dot\phi_a} = \pi^0{}_a(x) π a ( x ) := ∂ ϕ ˙ a ∂ L = π 0 a ( x ) で定めます。ϕ ˙ a \dot\phi_a ϕ ˙ a を π a \pi_a π a で解けると仮定して(ルジャンドル変換が可能であるとして)、ハミルトニアン密度を
H : = π a ϕ ˙ a − L \mathcal{H} := \pi_a \dot\phi_a - \mathcal{L} H := π a ϕ ˙ a − L と定め、H : = ∫ d 3 x H H := \int d^3x\ \mathcal{H} H := ∫ d 3 x H をハミルトニアンと呼びます。
定義 6.5 と見比べると H = T 0 0 = T 00 \mathcal{H} = T^0{}_0 = T^{00} H = T 0 0 = T 00 であり、H = P 0 H = P^0 H = P 0 です。つまりハミルトニアンは時空並進対称性のネーター電荷の時間成分にほかなりません。「エネルギーが保存するのは時間並進対称性のため」という命題が、場の理論でもそのまま成り立ちます。
クライン・ゴルドン場では π = ϕ ˙ \pi = \dot\phi π = ϕ ˙ なので
H = ϕ ˙ 2 − L K G = 1 2 π 2 + 1 2 ( ∇ ϕ ) 2 + 1 2 m 2 ϕ 2 \mathcal{H} = \dot\phi^2 - \mathcal{L}_{\mathrm{KG}} = \frac{1}{2}\pi^2 + \frac{1}{2}(\nabla\phi)^2 + \frac{1}{2}m^2\phi^2 H = ϕ ˙ 2 − L KG = 2 1 π 2 + 2 1 ( ∇ ϕ ) 2 + 2 1 m 2 ϕ 2
となり、例 6.6 の T 00 T^{00} T 00 と一致します。∇ ϕ \nabla\phi ∇ ϕ の項は隣接する点の値の差を罰する項で、例 3.1 のばねの弾性エネルギーがそのまま残ったものだと読めます。
同時刻ポアソン括弧は、有限自由度の { q i , p j } = δ i j \{q_i, p_j\} = \delta_{ij} { q i , p j } = δ ij を連続添字に読み替えて
{ ϕ a ( t , x ) , π b ( t , y ) } = δ a b δ 3 ( x − y ) , { ϕ a ( t , x ) , ϕ b ( t , y ) } = { π a ( t , x ) , π b ( t , y ) } = 0 \{\phi_a(t,\boldsymbol{x}),\, \pi_b(t,\boldsymbol{y})\} = \delta_{ab}\,\delta^3(\boldsymbol{x} - \boldsymbol{y}),
\qquad
\{\phi_a(t,\boldsymbol{x}),\, \phi_b(t,\boldsymbol{y})\} = \{\pi_a(t,\boldsymbol{x}),\, \pi_b(t,\boldsymbol{y})\} = 0 { ϕ a ( t , x ) , π b ( t , y )} = δ ab δ 3 ( x − y ) , { ϕ a ( t , x ) , ϕ b ( t , y )} = { π a ( t , x ) , π b ( t , y )} = 0
で定義されます。クロネッカーのデルタがディラックのデルタ関数になったのが唯一の変更点です(ハミルトン形式の力学 、正準変換とポアソン括弧 )。
次章では、この括弧を { , } → − i [ , ] \{\ ,\ \} \to -i[\ ,\ ] { , } → − i [ , ] で交換子に置き換えます。すなわち
[ ϕ ^ ( t , x ) , π ^ ( t , y ) ] = i δ 3 ( x − y ) [\hat\phi(t,\boldsymbol{x}),\, \hat\pi(t,\boldsymbol{y})] = i\,\delta^3(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{y}) [ ϕ ^ ( t , x ) , π ^ ( t , y )] = i δ 3 ( x − y )
を課すのが スカラー場の正準量子化 (実スカラー場の正準量子化(定義 3.1)[スカラー場の正準量子化] )です。一方、時間を特別扱いせずに作用 S [ ϕ ] S[\phi] S [ ϕ ] をそのまま使う道が 経路積分量子化 です。どちらの道を通るにせよ、出発点は本章で作った L \mathcal{L} L であり、そこに込めた対称性が量子論に受け継がれます(あるいは、量子効果によって破れます。これがアノマリーです)。
演習 8.1 難
電磁場のラグランジアン密度
L = − 1 4 F μ ν F μ ν − A μ J μ , F μ ν : = ∂ μ A ν − ∂ ν A μ \mathcal{L} = -\frac{1}{4}F_{\mu\nu}F^{\mu\nu} - A_\mu J^\mu,
\qquad F_{\mu\nu} := \partial_\mu A_\nu - \partial_\nu A_\mu L = − 4 1 F μν F μν − A μ J μ , F μν := ∂ μ A ν − ∂ ν A μ を考えます(J μ J^\mu J μ は与えられた外部電流で、A μ A_\mu A μ には依存しないとします)。基本場は 4 成分 A ν A_\nu A ν です。
定理 4.3 を適用して運動方程式を導いてください。
得られた式の ν = 0 \nu = 0 ν = 0 成分が、ガウスの法則になっていることを確かめてください。
解答 1. まず場そのものによる微分は、F μ ν F_{\mu\nu} F μν が A A A の微分だけを含むことから
∂ L ∂ A ν = − J ν . \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial A_\nu} = -J^\nu . ∂ A ν ∂ L = − J ν . 次に ∂ μ A ν \partial_\mu A_\nu ∂ μ A ν による微分です。F α β = ∂ α A β − ∂ β A α F_{\alpha\beta} = \partial_\alpha A_\beta - \partial_\beta A_\alpha F α β = ∂ α A β − ∂ β A α より
∂ F α β ∂ ( ∂ μ A ν ) = δ α μ δ β ν − δ α ν δ β μ \frac{\partial F_{\alpha\beta}}{\partial(\partial_\mu A_\nu)} = \delta^\mu_\alpha \delta^\nu_\beta - \delta^\nu_\alpha \delta^\mu_\beta ∂ ( ∂ μ A ν ) ∂ F α β = δ α μ δ β ν − δ α ν δ β μ です。よって連鎖律から
∂ ∂ ( ∂ μ A ν ) ( F α β F α β ) = 2 F α β ( δ α μ δ β ν − δ α ν δ β μ ) = 2 ( F μ ν − F ν μ ) = 4 F μ ν \frac{\partial}{\partial(\partial_\mu A_\nu)}\big( F_{\alpha\beta}F^{\alpha\beta} \big)
= 2F^{\alpha\beta}\big( \delta^\mu_\alpha\delta^\nu_\beta - \delta^\nu_\alpha\delta^\mu_\beta \big)
= 2\big( F^{\mu\nu} - F^{\nu\mu} \big) = 4F^{\mu\nu} ∂ ( ∂ μ A ν ) ∂ ( F α β F α β ) = 2 F α β ( δ α μ δ β ν − δ α ν δ β μ ) = 2 ( F μν − F ν μ ) = 4 F μν (最後に F F F の反対称性を使いました)。したがって
π μ ( ν ) = ∂ L ∂ ( ∂ μ A ν ) = − 1 4 ⋅ 4 F μ ν = − F μ ν . \pi^\mu{}_{(\nu)} = \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu A_\nu)} = -\frac{1}{4}\cdot 4 F^{\mu\nu} = -F^{\mu\nu} . π μ ( ν ) = ∂ ( ∂ μ A ν ) ∂ L = − 4 1 ⋅ 4 F μν = − F μν . オイラー・ラグランジュ方程式 ∂ μ ( ∂ L / ∂ ( ∂ μ A ν ) ) − ∂ L / ∂ A ν = 0 \partial_\mu\big(\partial\mathcal{L}/\partial(\partial_\mu A_\nu)\big) - \partial\mathcal{L}/\partial A_\nu = 0 ∂ μ ( ∂ L / ∂ ( ∂ μ A ν ) ) − ∂ L / ∂ A ν = 0 に代入すると
− ∂ μ F μ ν + J ν = 0 ⟺ ∂ μ F μ ν = J ν . -\partial_\mu F^{\mu\nu} + J^\nu = 0
\qquad\Longleftrightarrow\qquad
\partial_\mu F^{\mu\nu} = J^\nu . − ∂ μ F μν + J ν = 0 ⟺ ∂ μ F μν = J ν . これがマクスウェル方程式の非斉次な 2 本(ガウスの法則とアンペール・マクスウェルの法則)です。斉次な 2 本(磁束の非存在とファラデーの法則)は F = d A F = dA F = d A という定義から恒等式として従うので、変分原理からは出てきません。
2. A μ = ( φ , A ) A^\mu = (\varphi, \boldsymbol{A}) A μ = ( φ , A ) とすると A μ = ( φ , − A ) A_\mu = (\varphi, -\boldsymbol{A}) A μ = ( φ , − A ) で、F 0 i = ∂ 0 A i − ∂ i A 0 = − ∂ t A i − ∂ i φ = E i F_{0i} = \partial_0 A_i - \partial_i A_0 = -\partial_t A^i - \partial_i\varphi = E^i F 0 i = ∂ 0 A i − ∂ i A 0 = − ∂ t A i − ∂ i φ = E i です(E = − ∇ φ − ∂ t A \boldsymbol{E} = -\nabla\varphi - \partial_t\boldsymbol{A} E = − ∇ φ − ∂ t A )。添字を上げると F 0 i = η 00 η i i F 0 i = − E i F^{0i} = \eta^{00}\eta^{ii}F_{0i} = -E^i F 0 i = η 00 η ii F 0 i = − E i 、つまり F i 0 = E i F^{i0} = E^i F i 0 = E i です。F 00 = 0 F^{00} = 0 F 00 = 0 (反対称性)に注意して ν = 0 \nu = 0 ν = 0 成分を書くと
∂ μ F μ 0 = ∂ 0 F 00 + ∂ i F i 0 = ∇ ⋅ E = J 0 = ρ \partial_\mu F^{\mu 0} = \partial_0 F^{00} + \partial_i F^{i0} = \nabla\cdot\boldsymbol{E} = J^0 = \rho ∂ μ F μ 0 = ∂ 0 F 00 + ∂ i F i 0 = ∇ ⋅ E = J 0 = ρ となり、ガウスの法則が得られます。
演習 8.2 標準
質量ゼロの実スカラー場 L 0 = 1 2 ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ \mathcal{L}_0 = \frac{1}{2}\partial_\mu\phi\,\partial^\mu\phi L 0 = 2 1 ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ を考えます。
定数 c c c による平行移動 ϕ ′ ( x ) = ϕ ( x ) + ε c \phi'(x) = \phi(x) + \varepsilon c ϕ ′ ( x ) = ϕ ( x ) + ε c (時空座標は動かさない)が 定義 6.1 の意味の対称性であることを確かめ、ネーターカレントを求めてください。また、それが保存することを運動方程式から直接確認してください。
質量項 − 1 2 m 2 ϕ 2 -\frac{1}{2}m^2\phi^2 − 2 1 m 2 ϕ 2 (m ≠ 0 m \ne 0 m = 0 )を加えると、この変換はもはや対称性ではないことを示してください。
解答 1. X μ = 0 X^\mu = 0 X μ = 0 、F = c F = c F = c です。L 0 \mathcal{L}_0 L 0 は ϕ \phi ϕ そのものを含まず ∂ μ ϕ \partial_\mu\phi ∂ μ ϕ しか含みません。∂ μ ( ϕ + ε c ) = ∂ μ ϕ \partial_\mu(\phi + \varepsilon c) = \partial_\mu\phi ∂ μ ( ϕ + ε c ) = ∂ μ ϕ ですから L 0 \mathcal{L}_0 L 0 は厳密に不変で、K μ = 0 K^\mu = 0 K μ = 0 が取れます。座標を動かさないのでヤコビアンは 1 1 1 です。
π μ = ∂ μ ϕ \pi^\mu = \partial^\mu\phi π μ = ∂ μ ϕ なので、定理 6.2 より
j μ = π μ F = c ∂ μ ϕ . j^\mu = \pi^\mu F = c\,\partial^\mu\phi . j μ = π μ F = c ∂ μ ϕ . 保存の直接確認は ∂ μ j μ = c ∂ μ ∂ μ ϕ = c □ ϕ = 0 \partial_\mu j^\mu = c\,\partial_\mu\partial^\mu\phi = c\,\Box\phi = 0 ∂ μ j μ = c ∂ μ ∂ μ ϕ = c □ ϕ = 0 です。最後の等号は m = 0 m = 0 m = 0 のクライン・ゴルドン方程式そのものです。対応する電荷は Q = c ∫ d 3 x ϕ ˙ Q = c\int d^3x\,\dot\phi Q = c ∫ d 3 x ϕ ˙ で、これは場の「平均的な速度」が変わらないことを述べています。
2. L = L 0 − 1 2 m 2 ϕ 2 \mathcal{L} = \mathcal{L}_0 - \frac{1}{2}m^2\phi^2 L = L 0 − 2 1 m 2 ϕ 2 に変換を施すと
L ′ − L = − 1 2 m 2 [ ( ϕ + ε c ) 2 − ϕ 2 ] = − ε m 2 c ϕ + O ( ε 2 ) \mathcal{L}' - \mathcal{L} = -\frac{1}{2}m^2\big[ (\phi + \varepsilon c)^2 - \phi^2 \big] = -\varepsilon\, m^2 c\, \phi + O(\varepsilon^2) L ′ − L = − 2 1 m 2 [ ( ϕ + ε c ) 2 − ϕ 2 ] = − ε m 2 c ϕ + O ( ε 2 ) です。O ( ε ) O(\varepsilon) O ( ε ) の項が − m 2 c ϕ -m^2 c\,\phi − m 2 c ϕ となりますが、これがある K μ ( ϕ , x ) K^\mu(\phi, x) K μ ( ϕ , x ) の全微分 ∂ μ K μ \partial_\mu K^\mu ∂ μ K μ に等しくなることはありません。実際、K μ K^\mu K μ の全微分は連鎖律で
∂ μ K μ = ∂ K μ ∂ ϕ ∂ μ ϕ + ( ∂ μ K μ ) e x p l \partial_\mu K^\mu = \frac{\partial K^\mu}{\partial \phi}\,\partial_\mu\phi + \big( \partial_\mu K^\mu \big)_{\mathrm{expl}} ∂ μ K μ = ∂ ϕ ∂ K μ ∂ μ ϕ + ( ∂ μ K μ ) expl と分解されます。第 2 項は ϕ \phi ϕ を固定して x x x への陽な依存性だけを微分したものです。等式 − m 2 c ϕ = ∂ μ K μ -m^2c\,\phi = \partial_\mu K^\mu − m 2 c ϕ = ∂ μ K μ が任意の 場の配位について成り立つとしましょう。左辺は ∂ μ ϕ \partial_\mu\phi ∂ μ ϕ を含まないのに右辺の第 1 項は ∂ μ ϕ \partial_\mu\phi ∂ μ ϕ に比例するので、∂ K μ / ∂ ϕ = 0 \partial K^\mu/\partial\phi = 0 ∂ K μ / ∂ ϕ = 0 、すなわち K μ K^\mu K μ は x x x だけの関数でなければなりません。しかしそのとき右辺は ϕ \phi ϕ に依存しないのに左辺は ϕ \phi ϕ に比例するので、m 2 c = 0 m^2 c = 0 m 2 c = 0 、つまり m = 0 m = 0 m = 0 でなければ矛盾します。
よって m ≠ 0 m \ne 0 m = 0 ではシフト対称性は破れます。ちなみに、質量ゼロのスカラー場がシフト対称性を持つことは、南部・ゴールドストーン粒子が質量を持てない理由と深く関係しています。
演習 8.3 標準
クライン・ゴルドン場のエネルギー・運動量テンソル
T μ ν = ∂ μ ϕ ∂ ν ϕ − η μ ν [ 1 2 ∂ α ϕ ∂ α ϕ − 1 2 m 2 ϕ 2 ] T^{\mu\nu} = \partial^\mu\phi\,\partial^\nu\phi - \eta^{\mu\nu}\left[ \frac{1}{2}\partial_\alpha\phi\,\partial^\alpha\phi - \frac{1}{2}m^2\phi^2 \right] T μν = ∂ μ ϕ ∂ ν ϕ − η μν [ 2 1 ∂ α ϕ ∂ α ϕ − 2 1 m 2 ϕ 2 ] について、ネーターの定理を経由せず直接計算で ∂ μ T μ ν = 0 \partial_\mu T^{\mu\nu} = 0 ∂ μ T μν = 0 を確かめてください(ϕ \phi ϕ はクライン・ゴルドン方程式の解とします)。
解答 ライプニッツ則で各項を微分します。
∂ μ ( ∂ μ ϕ ∂ ν ϕ ) = ( □ ϕ ) ∂ ν ϕ + ∂ μ ϕ ∂ μ ∂ ν ϕ . \partial_\mu\big( \partial^\mu\phi\,\partial^\nu\phi \big) = (\Box\phi)\,\partial^\nu\phi + \partial^\mu\phi\,\partial_\mu\partial^\nu\phi . ∂ μ ( ∂ μ ϕ ∂ ν ϕ ) = ( □ ϕ ) ∂ ν ϕ + ∂ μ ϕ ∂ μ ∂ ν ϕ . 第 2 項では η μ ν ∂ μ = ∂ ν \eta^{\mu\nu}\partial_\mu = \partial^\nu η μν ∂ μ = ∂ ν なので
− ∂ μ ( η μ ν [ 1 2 ∂ α ϕ ∂ α ϕ − 1 2 m 2 ϕ 2 ] ) = − ∂ ν [ 1 2 ∂ α ϕ ∂ α ϕ ] + 1 2 m 2 ∂ ν ( ϕ 2 ) = − ∂ α ϕ ∂ ν ∂ α ϕ + m 2 ϕ ∂ ν ϕ . -\partial_\mu\left( \eta^{\mu\nu}\left[ \frac{1}{2}\partial_\alpha\phi\,\partial^\alpha\phi - \frac{1}{2}m^2\phi^2 \right] \right)
= -\partial^\nu\left[ \frac{1}{2}\partial_\alpha\phi\,\partial^\alpha\phi \right] + \frac{1}{2}m^2\,\partial^\nu(\phi^2)
= -\partial_\alpha\phi\,\partial^\nu\partial^\alpha\phi + m^2\phi\,\partial^\nu\phi . − ∂ μ ( η μν [ 2 1 ∂ α ϕ ∂ α ϕ − 2 1 m 2 ϕ 2 ] ) = − ∂ ν [ 2 1 ∂ α ϕ ∂ α ϕ ] + 2 1 m 2 ∂ ν ( ϕ 2 ) = − ∂ α ϕ ∂ ν ∂ α ϕ + m 2 ϕ ∂ ν ϕ . いま ∂ μ ϕ ∂ μ ∂ ν ϕ \partial^\mu\phi\,\partial_\mu\partial^\nu\phi ∂ μ ϕ ∂ μ ∂ ν ϕ と ∂ α ϕ ∂ ν ∂ α ϕ \partial_\alpha\phi\,\partial^\nu\partial^\alpha\phi ∂ α ϕ ∂ ν ∂ α ϕ は、和を取る添字を μ → α \mu \to \alpha μ → α と付け替え、ϕ \phi ϕ が C 2 C^2 C 2 級であることから偏微分の順序が交換できることを使えば同じものです。したがってこの 2 つは相殺し、
∂ μ T μ ν = ( □ ϕ ) ∂ ν ϕ + m 2 ϕ ∂ ν ϕ = ( □ ϕ + m 2 ϕ ) ∂ ν ϕ = 0. \partial_\mu T^{\mu\nu} = (\Box\phi)\,\partial^\nu\phi + m^2\phi\,\partial^\nu\phi = \big( \Box\phi + m^2\phi \big)\,\partial^\nu\phi = 0 . ∂ μ T μν = ( □ ϕ ) ∂ ν ϕ + m 2 ϕ ∂ ν ϕ = ( □ ϕ + m 2 ϕ ) ∂ ν ϕ = 0. 最後の等号がクライン・ゴルドン方程式です。運動方程式を使ったのは最後の 1 行だけで、それ以外は恒等変形だったことに注意してください。
演習 8.4 易
d d d 次元時空(時間 1 次元 + 空間 d − 1 d-1 d − 1 次元)で自然単位系を取ります。
実スカラー場 ϕ \phi ϕ の質量次元 [ ϕ ] [\phi] [ ϕ ] を求めてください。
相互作用項 − λ n n ! ϕ n -\dfrac{\lambda_n}{n!}\phi^n − n ! λ n ϕ n の結合定数の質量次元 [ λ n ] [\lambda_n] [ λ n ] を d d d と n n n で表し、d = 4 d = 4 d = 4 と d = 2 d = 2 d = 2 の場合に何が起こるか述べてください。
解答 1. 作用 S = ∫ d d x L S = \int d^dx\,\mathcal{L} S = ∫ d d x L が無次元で [ d d x ] = − d [d^dx] = -d [ d d x ] = − d ですから [ L ] = d [\mathcal{L}] = d [ L ] = d です。運動項 ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ \partial_\mu\phi\,\partial^\mu\phi ∂ μ ϕ ∂ μ ϕ の次元は 2 [ ∂ ] + 2 [ ϕ ] = 2 + 2 [ ϕ ] 2[\partial] + 2[\phi] = 2 + 2[\phi] 2 [ ∂ ] + 2 [ ϕ ] = 2 + 2 [ ϕ ] なので
2 + 2 [ ϕ ] = d ⟺ [ ϕ ] = d − 2 2 . 2 + 2[\phi] = d \iff [\phi] = \frac{d-2}{2} . 2 + 2 [ ϕ ] = d ⟺ [ ϕ ] = 2 d − 2 . 2. [ λ n ] + n [ ϕ ] = d [\lambda_n] + n[\phi] = d [ λ n ] + n [ ϕ ] = d より
[ λ n ] = d − n d − 2 2 . [\lambda_n] = d - n\,\frac{d-2}{2} . [ λ n ] = d − n 2 d − 2 . d = 4 d = 4 d = 4 では [ λ n ] = 4 − n [\lambda_n] = 4 - n [ λ n ] = 4 − n です。n = 3 n = 3 n = 3 で 1 1 1 (質量の次元を持つ結合)、n = 4 n = 4 n = 4 で 0 0 0 (無次元)、n ≥ 5 n \ge 5 n ≥ 5 で負になります。負の次元を持つ結合は高エネルギーで効きが強くなり、くりこみ不可能になります(注意 5.3 )。
d = 2 d = 2 d = 2 では [ ϕ ] = 0 [\phi] = 0 [ ϕ ] = 0 、すなわち場そのものが無次元です。よって [ λ n ] = 2 [\lambda_n] = 2 [ λ n ] = 2 がすべての n n n について成り立ち、ϕ \phi ϕ の任意の関数 V ( ϕ ) V(\phi) V ( ϕ ) をポテンシャルとして許せます。サイン・ゴルドン模型 V ( ϕ ) ∝ cos ( β ϕ ) V(\phi) \propto \cos(\beta\phi) V ( ϕ ) ∝ cos ( β ϕ ) のような、ϕ \phi ϕ の非多項式関数を含む理論が 2 次元で研究されるのはこのためです。
M. E. Peskin and D. V. Schroeder, An Introduction to Quantum Field Theory , Westview Press, 1995 — 第 2 章「The Klein-Gordon Field」の前半に、本記事とほぼ同じ道筋(ラグランジアン密度、オイラー・ラグランジュ方程式、ネーターの定理、クライン・ゴルドン場)が簡潔にまとめられています。
H. Goldstein, C. Poole and J. Safko, Classical Mechanics , 3rd edition, Addison-Wesley, 2002 — 第 13 章。連成振動子の連続極限から場のラグランジュ形式・ハミルトン形式までを、量子論とは独立に扱っています。例 3.1 はこの章の議論に沿ったものです。
S. Weinberg, The Quantum Theory of Fields, Volume I: Foundations , Cambridge University Press, 1995 — 第 7 章「The Canonical Formalism」。ネーターの定理、エネルギー・運動量テンソルの改良(ベリンファンテ・ローゼンフェルド)について、本記事より踏み込んだ扱いがあります。
九後汰一郎『ゲージ場の量子論 I』培風館、1989 — 第 1 章。場の古典論とネーターの定理を日本語で丁寧に扱った標準的な文献です。
E. Noether, “Invariante Variationsprobleme”, Nachrichten von der Gesellschaft der Wissenschaften zu Göttingen, Mathematisch-Physikalische Klasse (1918), 235–257. 英訳: M. A. Tavel, “Invariant Variation Problems”, arXiv:physics/0503066 .
H. Yukawa, “On the Interaction of Elementary Particles. I”, Proceedings of the Physico-Mathematical Society of Japan 17 (1935), 48–57. 例 5.2 の計算の原典です。
汎関数微分の定義。 本文では変分を ε \varepsilon ε についての微分として扱いましたが、場の理論の文献では汎関数微分の記法が広く使われます。汎関数 S [ ϕ ] S[\phi] S [ ϕ ] に対して、Ω \Omega Ω にコンパクトな台を持つ任意の滑らかな η a \eta_a η a について
d d ε ∣ 0 S [ ϕ + ε η ] = ∫ Ω d 4 x δ S δ ϕ a ( x ) η a ( x ) \left.\frac{d}{d\varepsilon}\right|_{0} S[\phi + \varepsilon\eta] = \int_\Omega d^4x\ \frac{\delta S}{\delta \phi_a(x)}\,\eta_a(x) d ε d 0 S [ ϕ + ε η ] = ∫ Ω d 4 x δ ϕ a ( x ) δ S η a ( x )
が成り立つとき、被積分関数の係数 δ S δ ϕ a ( x ) \dfrac{\delta S}{\delta\phi_a(x)} δ ϕ a ( x ) δ S を汎関数微分 と呼びます。補題 4.2 により、この係数は(連続関数の範囲で)一意に定まります。
オイラー・ラグランジュ方程式の書き換え。 定理 4.3 の証明で得た式は、この記法で
δ S δ ϕ a ( x ) = ∂ L ∂ ϕ a − ∂ μ ( ∂ L ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ) \frac{\delta S}{\delta \phi_a(x)} = \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi_a} - \partial_\mu\!\left( \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\phi_a)} \right) δ ϕ a ( x ) δ S = ∂ ϕ a ∂ L − ∂ μ ( ∂ ( ∂ μ ϕ a ) ∂ L )
と書けます。したがって運動方程式は δ S δ ϕ a ( x ) = 0 \dfrac{\delta S}{\delta\phi_a(x)} = 0 δ ϕ a ( x ) δ S = 0 という一行になります。有限自由度の ∂ S ∂ q i = 0 \dfrac{\partial S}{\partial q_i} = 0 ∂ q i ∂ S = 0 で添字 i i i を連続変数 x x x に置き換えた形であり、§3 の対応辞書の最後の行に対応します。
基本的な公式。 定義から直ちに
δ ϕ a ( x ) δ ϕ b ( y ) = δ a b δ 4 ( x − y ) \frac{\delta \phi_a(x)}{\delta \phi_b(y)} = \delta_{ab}\,\delta^4(x - y) δ ϕ b ( y ) δ ϕ a ( x ) = δ ab δ 4 ( x − y )
が従います。実際、S [ ϕ ] = ϕ a ( x ) S[\phi] = \phi_a(x) S [ ϕ ] = ϕ a ( x ) (x x x を固定して場の値を返す汎関数)に対して上の定義式を適用すると、左辺は η a ( x ) \eta_a(x) η a ( x ) であり、右辺が ∫ d 4 y δ ϕ a ( x ) δ ϕ b ( y ) η b ( y ) \int d^4y\,\frac{\delta\phi_a(x)}{\delta\phi_b(y)}\eta_b(y) ∫ d 4 y δ ϕ b ( y ) δ ϕ a ( x ) η b ( y ) ですから、両者が任意の η \eta η で一致するにはデルタ関数でなければなりません。この公式は経路積分でシュウィンガー・ダイソン方程式を導くときに繰り返し使われます。