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古典場の理論とラグランジアン:無限自由度の変分原理からネーターの定理まで

対象読者: 学部の解析力学(ラグランジアンと最小作用の原理)と特殊相対論を学び、本テーマ第1章の内容を読んだ人。場の理論は未習で構いません。

前提となる記事:なぜ場の量子論が必要か:一粒子の量子力学が相対論と両立しない理由

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水面の波や、空間に広がる電場のように、空間のすべての点に値があり、それが時間とともに変わる量を「場」と呼びます。この記事では、粒子の力学で習った「作用が停留するように運動が決まる」という考え方を、点ごとに値をもつ量に広げます。読み終えると、1 つの関数(ラグランジアン密度)から、場の運動方程式と、エネルギー・運動量の保存則を導けるようになります。

  • 場とは、各時刻に空間の各点で値をとる量です。力学的には「自由度が空間の点で添字づけられた無限自由度系」であり、連成振動子の格子間隔をゼロにする極限を取ると、この描像が具体的な形で現れます。
  • 場の作用は S[ϕ]=∫d4x L(ϕa,∂μϕa)S[\phi] = \int d^4x\, \mathcal{L}(\phi_a, \partial_\mu \phi_a) という形に書けます。積分の中身であるラグランジアン密度 L\mathcal{L} がローレンツスカラー(ローレンツ変換で値が変わらない量)であれば、そこから出る運動方程式は自動的にローレンツ共変(変換しても式の形が変わらない)になります。これがラグランジュ形式から出発する最大の理由です。
  • 変分原理 δS=0\delta S = 0 から、場のオイラー・ラグランジュ方程式 ∂μ(∂L/∂(∂μϕa))−∂L/∂ϕa=0\partial_\mu\big(\partial\mathcal{L}/\partial(\partial_\mu\phi_a)\big) - \partial\mathcal{L}/\partial\phi_a = 0 が導かれます(定理 4.3)。
  • 実スカラー場に許される最も簡単なラグランジアン密度はクライン・ゴルドン場のもので、その運動方程式の平面波解は E2=p2+m2E^2 = \boldsymbol{p}^2 + m^2 を満たします。これが mm を「質量」と呼ぶ理由です。
  • 作用の連続対称性 1 つにつき、保存カレント ∂μjμ=0\partial_\mu j^\mu = 0 が 1 つ対応します(ネーターの定理、定理 6.2)。時空並進からエネルギー・運動量テンソルが、大域的 U(1)U(1) 位相変換から保存電荷が出ます。
  • ここで組み立てた古典場の理論が、次章以降の正準量子化と経路積分量子化の出発点になります。量子化とは「古典的な場の配位の空間の上に、量子論的な規則を載せる」操作だからです。

前章 では、相対論と量子論を両立させようとすると粒子数が保存しなくなり、「粒子の波動関数」ではなく「場」を基本的な対象に据えざるを得ないことを見ました。しかし「場を量子化する」と言うためには、量子化される前の古典的な場の理論がまず必要です。この章の目的は、その土台を作ることです。

古典力学で自由度が有限個の系を扱うとき、私たちは 3 通りの定式化を持っています。ニュートン方程式、ラグランジュ形式、ハミルトン形式です。場の理論でも同じ 3 通りが可能ですが、出発点としてはラグランジュ形式が圧倒的に有利です。理由は 4 つあります。

第 1 に、相対論的不変性が目に見える形で保たれます。 ハミルトニアンは「時間発展の生成子」ですから、時間座標を他の 3 つの空間座標と区別して扱わざるを得ません。一方、作用 S=∫d4x LS = \int d^4x\,\mathcal{L} は 4 次元時空の積分であり、L\mathcal{L} をローレンツスカラーに選んでおけば SS そのものがローレンツ不変になります。そして運動方程式は SS の停留条件として決まるのですから、ローレンツ共変性は式を書いた時点で保証されます。特殊相対論の要請については ローレンツ変換 を参照してください。

第 2 に、対称性を扱う言語として自然です。 内部対称性もゲージ対称性も「L\mathcal{L} が不変であること」として一行で書けます。そして次に述べるネーターの定理により、対称性から保存則が機械的に読み出せます。

第 3 に、経路積分が作用そのものを使います。 量子論の遷移振幅は ∫Dϕ eiS[ϕ]\int \mathcal{D}\phi\, e^{iS[\phi]} という形をとります(経路積分量子化)。ここに現れるのはハミルトニアンではなく作用です。

第 4 に、理論の「設計図」になります。 現代的な場の理論の作り方は、「場の内容と対称性を指定し、それと両立する項を質量次元の低い順に書き並べる」というものです。相互作用を天下り式に与えるのではなく、対称性と次元勘定から候補を絞り込む。この方法論が成立するのは、理論のすべての情報が L\mathcal{L} という 1 つの関数に集約されているからです。

歴史的にも、場のラグランジュ形式は量子論より古いものです。19 世紀の弾性体力学では、連続体の振動をラグランジュ形式で扱うことが既に行われていました。ファラデーの力線に始まりマクスウェルの方程式系で完成した電磁場の理論は、20 世紀初頭までに「電磁場はエネルギーと運動量を運ぶ独立した力学的自由度である」という認識に到達していました。1918 年のネーターの論文が対称性と保存則の関係を一般的に確立し、1920 年代末からディラック、ヨルダン、ハイゼンベルク、パウリらがこの古典場を量子化する試みを始めます。私たちがこれから辿るのは、その最初の一歩です。


以下では自然単位系 ℏ=c=1\hbar = c = 1 を用います。この単位系では長さ・時間・質量の逆数がすべて同じ次元になり、あらゆる量の次元を「質量次元」1 つで表せます。記号の約束を表にまとめます。

記号意味・約束
ημν=diag(1,−1,−1,−1)\eta_{\mu\nu} = \mathrm{diag}(1,-1,-1,-1)ミンコフスキー計量。ημν\eta^{\mu\nu} はその逆行列で成分は同じ
xμ=(x0,x1,x2,x3)=(t,x)x^\mu = (x^0, x^1, x^2, x^3) = (t, \boldsymbol{x})時空座標。ギリシャ添字は 0,1,2,30,1,2,3、ラテン添字 i,ji,j は 1,2,31,2,3 を走る
∂μ=∂/∂xμ\partial_\mu = \partial/\partial x^\mu∂μ=ημν∂ν=(∂t,−∇)\partial^\mu = \eta^{\mu\nu}\partial_\nu = (\partial_t, -\nabla)
□=∂μ∂μ=∂t2−∇2\Box = \partial_\mu \partial^\mu = \partial_t^2 - \nabla^2ダランベール演算子
a,ba, b場の成分(内部自由度)を区別する添字。重複した添字はすべて和を取る
d4x=dt d3xd^4x = dt\, d^3x時空の体積要素。ローレンツ変換で不変(行列式が 11 のため)

ℏ=c=1\hbar = c = 1 とすると、長さや時間は質量の逆数、エネルギーや運動量は質量と同じ次元になるので、すべての量が「質量の何乗か」という 1 つの数で表せます。作用は ℏ\hbar と同じ次元の量なので、ℏ=1\hbar = 1 のもとで無次元になります。この数え方は §5.3 で相互作用項を分類するときに使います。

質量次元を [ ⋅ ][\,\cdot\,] で表します。eiSe^{iS} が意味を持つためには SS は無次元でなければならず、[d4x]=−4[d^4x] = -4 ですから

[L]=4[\mathcal{L}] = 4

でなければなりません。この一行が、あとで相互作用項を分類するときの物差しになります。


「場は無限自由度の力学系である」という言明を、具体例で確かめます。ばねでつながれた質点の 1 次元鎖を考え、その格子間隔をゼロに近づけます。この例はゴールドスタインの教科書以来の定番ですが、場という概念の力学的な出自を一度自分の手で追っておく価値があります。

離散系:自由度は変位 y_1(t), …, y_N(t) の N 個aa → 0(連続極限)連続系:自由度は各点 x ごとの値(非可算無限個)phi(x, t)x
離散的なばね・質点系(上)の格子間隔 a をゼロにする極限で、連続体の場が現れる。離散系では自由度は質点の個数だけだが、極限では空間の各点ごとに 1 個ずつの自由度になる。

例 3.1(ばね鎖の連続極限と波動方程式)

質量 mm の質点が NN 個、間隔 aa で 1 次元的に並び、隣り合う質点がばね定数 kk のばねで結ばれているとします。ii 番目の質点の平衡位置からの変位を yi(t)y_i(t) と書くと、ラグランジアンは

L=∑i[12m y˙i 2−12k (yi+1−yi)2]L = \sum_{i} \left[ \frac{1}{2} m\, \dot{y}_i^{\,2} - \frac{1}{2} k\, (y_{i+1} - y_i)^2 \right]

です。有限自由度のラグランジュ方程式 ddt∂L∂y˙i=∂L∂yi\dfrac{d}{dt}\dfrac{\partial L}{\partial \dot{y}_i} = \dfrac{\partial L}{\partial y_i} を適用します。左辺は my¨im\ddot{y}_i、右辺は yiy_i を含む 2 つの項 −12k(yi−yi−1)2-\frac{1}{2}k(y_i - y_{i-1})^2 と −12k(yi+1−yi)2-\frac{1}{2}k(y_{i+1} - y_i)^2 からの寄与の和で

∂L∂yi=−k(yi−yi−1)+k(yi+1−yi)=k (yi+1−2yi+yi−1)\frac{\partial L}{\partial y_i} = -k(y_i - y_{i-1}) + k(y_{i+1} - y_i) = k\,(y_{i+1} - 2y_i + y_{i-1})

となります。よって運動方程式は my¨i=k(yi+1−2yi+yi−1)m\ddot{y}_i = k(y_{i+1} - 2y_i + y_{i-1}) です。

ここで両辺を aa で割り、線密度 μ:=m/a\mu := m/a とヤング率 Y:=kaY := ka を固定したまま a→0a \to 0、N→∞N \to \infty(全長 NaNa は固定)とします。ii 番目の質点の位置を x=iax = ia と書き、yi(t)→ϕ(x,t)y_i(t) \to \phi(x,t) と読み替えると

k(yi+1−2yi+yi−1)a=(ka) yi+1−2yi+yi−1a2⟶Y ∂2ϕ∂x2\frac{k(y_{i+1} - 2y_i + y_{i-1})}{a} = (ka)\,\frac{y_{i+1} - 2y_i + y_{i-1}}{a^2} \longrightarrow Y\,\frac{\partial^2 \phi}{\partial x^2}

です(中央差分商が 2 階微分に収束することを使いました)。したがって

μ ∂2ϕ∂t2=Y ∂2ϕ∂x2\mu\, \frac{\partial^2 \phi}{\partial t^2} = Y\, \frac{\partial^2 \phi}{\partial x^2}

という波動方程式が得られ、波の速さは v=Y/μv = \sqrt{Y/\mu} です。

同じ極限をラグランジアンに対して取ると

L=∑ia[12may˙i 2−12(ka)(yi+1−yia)2]⟶∫dx [12μ (∂tϕ)2−12Y(∂xϕ)2]⏟=: LL = \sum_i a \left[ \frac{1}{2}\frac{m}{a}\dot{y}_i^{\,2} - \frac{1}{2}(ka)\left(\frac{y_{i+1}-y_i}{a}\right)^2 \right] \longrightarrow \int dx\, \underbrace{\left[ \frac{1}{2}\mu\,(\partial_t \phi)^2 - \frac{1}{2}Y (\partial_x \phi)^2 \right]}_{=:\ \mathcal{L}}

となります。和 ∑ia\sum_i a が積分 ∫dx\int dx になり、被積分関数としてラグランジアン密度 L\mathcal{L} が現れました。

この計算から、有限自由度と場の理論の対応辞書が読み取れます。

有限自由度系場の理論
添字 i=1,…,Ni = 1,\dots,N空間座標 x∈R3\boldsymbol{x} \in \mathbb{R}^3(連続的な「添字」)
一般化座標 qi(t)q_i(t)場 ϕ(x,t)\phi(\boldsymbol{x}, t)
∑i\sum_i∫d3x\int d^3x
ラグランジアン L(qi,q˙i)L(q_i, \dot{q}_i)L=∫d3x L(ϕ,∂μϕ)L = \int d^3x\, \mathcal{L}(\phi, \partial_\mu\phi)
作用 S=∫dt LS = \int dt\, L作用 S=∫d4x LS = \int d^4x\, \mathcal{L}
∂L/∂qi\partial L/\partial q_i汎関数微分 δS/δϕ(x)\delta S/\delta \phi(x)

注意 3.2(場は「何かの変位」である必要はない)

上の例では ϕ\phi は弾性体の変位という具体的な意味を持っていました。しかし場の理論で扱う場は、必ずしも何らかの媒質の変位ではありません。19 世紀の物理学者は電磁場をエーテルの歪みとして理解しようとしましたが、マイケルソン・モーリーの実験と特殊相対論はその描像を否定しました。電磁場も、次節以降で扱うスカラー場も、それ自体が基本的な力学的自由度であって、背後に振動する媒質は存在しません。

連続極限の議論は「無限自由度系をどう扱うか」という数学的な雛形を与えるものであって、場の存在論を与えるものではない、と割り切ってください。実際、a→0a \to 0 の極限で L\mathcal{L} が有限に残るように μ,Y\mu, Y を調節したことに注意してください。この「極限の取り方の調節」は、後にくりこみ理論で再登場する操作の原型でもあります(くりこみ理論入門)。


4. 場の変分原理とオイラー・ラグランジュ方程式

Section titled “4. 場の変分原理とオイラー・ラグランジュ方程式”

定義 4.1(場の作用汎関数とラグランジアン密度)↗

Ω⊂R4\Omega \subset \mathbb{R}^4 を時空の有界領域とし、その境界 ∂Ω\partial\Omega は滑らかであるとします。ϕa:Ω→R\phi_a : \Omega \to \mathbb{R}(a=1,…,na = 1,\dots,n)を C2C^2 級の場の組とします。

L=L(ϕa,∂μϕa)\mathcal{L} = \mathcal{L}(\phi_a, \partial_\mu \phi_a) を、nn 個の実変数 ϕa\phi_a と 4n4n 個の実変数 ∂μϕa\partial_\mu\phi_a の C2C^2 級関数とし、これをラグランジアン密度と呼びます。このとき

S[ϕ]:=∫Ωd4x L(ϕa(x),∂μϕa(x))S[\phi] := \int_\Omega d^4x\ \mathcal{L}\big(\phi_a(x), \partial_\mu \phi_a(x)\big)

を作用汎関数と呼びます。

ここで L\mathcal{L} が ϕa\phi_a の 1 階微分までしか含まないこと、そして座標 xx に陽には依存しないことを仮定しています。前者は運動方程式を 2 階の微分方程式に保つための要請であり、後者は時空の並進対称性(外から与えられた背景が存在しないこと)の表明です。

変分原理を述べる前に、変分法の基本補題を用意します。「δS\delta S の積分がどんな試験関数についても消えるなら、被積分関数が消える」という主張で、これを飛ばすと運動方程式が「積分の形でしか」出てきません。

補題 4.2(変分法の基本補題)✓

Ω⊂R4\Omega \subset \mathbb{R}^4 を空でない開集合、f:Ω→Rf : \Omega \to \mathbb{R} を連続関数とします。Ω\Omega にコンパクトな台を持つ任意の C∞C^\infty 級関数 η\eta に対して

∫Ωf(x) η(x) d4x=0\int_\Omega f(x)\, \eta(x)\, d^4x = 0

が成り立つならば、Ω\Omega 上で f≡0f \equiv 0 です。

証明の方針は、ff が 0 でない点があれば、その点のごく近くだけに山をもつ関数 η\eta を掛けて積分すると 0 にならない、という矛盾を作ることです。その山を作るために使うのが、ある球の内側でだけ正で外では 0 になる、何度でも微分できる関数(バンプ関数)です。台とは、関数が 0 でない点の集まり(の閉包)のことです。

証明(補題 4.2)

対偶を示します。ある点 x0∈Ωx_0 \in \Omega で f(x0)≠0f(x_0) \ne 0 とし、一般性を失わず c:=f(x0)>0c := f(x_0) > 0 とします(f(x0)<0f(x_0) < 0 なら ff を −f-f に取り替えます)。

ff は連続なので、Ω\Omega に含まれる開球 B:={x:∣x−x0∣<r}B := \{ x : |x - x_0| < r \}(∣⋅∣|\cdot| は R4\mathbb{R}^4 の座標に関するユークリッドノルム。計量 ημν\eta_{\mu\nu} とは無関係な、単なる位相的な道具です)を十分小さく取れば、BB 上で f(x)>c/2f(x) > c/2 とできます。

この BB の上に台を持つ試験関数として、標準的なバンプ関数

η(x):={exp⁡ ⁣(−1r2−∣x−x0∣2)(∣x−x0∣<r)0(∣x−x0∣≥r)\eta(x) := \begin{cases} \exp\!\left(\dfrac{-1}{r^2 - |x - x_0|^2}\right) & (|x - x_0| < r) \\[2mm] 0 & (|x-x_0| \ge r) \end{cases}

を取ります。これは C∞C^\infty 級で、BB 上で η>0\eta > 0、BB の外では η=0\eta = 0 です。したがって

∫Ωfη d4x=∫Bfη d4x>c2∫Bη d4x>0\int_\Omega f \eta\, d^4x = \int_B f \eta\, d^4x > \frac{c}{2}\int_B \eta\, d^4x > 0

となり、仮定に反します。よって Ω\Omega の全点で f=0f = 0 です。

4.2. オイラー・ラグランジュ方程式

Section titled “4.2. オイラー・ラグランジュ方程式”

定理 4.3(場のオイラー・ラグランジュ方程式)✓

定義 4.1 の設定のもとで、場の配位 ϕ=(ϕa)\phi = (\phi_a) が次の意味で SS の停留点であるとします。すなわち、Ω\Omega にコンパクトな台を持つ任意の C∞C^\infty 級関数の組 η=(ηa)\eta = (\eta_a) に対し

ddε∣ε=0S[ϕ+εη]=0.\left.\frac{d}{d\varepsilon}\right|_{\varepsilon = 0} S[\phi + \varepsilon \eta] = 0 .

このとき Ω\Omega 上で

∂μ(∂L∂(∂μϕa))−∂L∂ϕa=0(a=1,…,n)\partial_\mu \left( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi_a)} \right) - \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi_a} = 0 \qquad (a = 1, \dots, n)

が成り立ちます。逆に、この方程式系を満たす ϕ\phi は上の意味で停留点です。ここで ∂μ\partial_\mu は xx についての全微分(ϕa(x)\phi_a(x) を通じた依存性も込み)を表します。

証明(定理 4.3)

ϕaε:=ϕa+εηa\phi_a^\varepsilon := \phi_a + \varepsilon \eta_a とおきます。ηa\eta_a の台はコンパクトで Ω\Omega に含まれるので、∂Ω\partial\Omega の近傍では ηa=0\eta_a = 0、したがって ∂μηa=0\partial_\mu \eta_a = 0 です。L\mathcal{L} は C2C^2 級なので ε\varepsilon について微分と積分を交換でき、連鎖律から

ddε∣0S[ϕε]=∫Ωd4x[∂L∂ϕa ηa+∂L∂(∂μϕa) ∂μηa]\left.\frac{d}{d\varepsilon}\right|_{0} S[\phi^\varepsilon] = \int_\Omega d^4x \left[ \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi_a}\, \eta_a + \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi_a)}\, \partial_\mu \eta_a \right]

を得ます(∂μ(ϕa+εηa)=∂μϕa+ε ∂μηa\partial_\mu(\phi_a + \varepsilon\eta_a) = \partial_\mu\phi_a + \varepsilon\,\partial_\mu\eta_a を使いました)。

第 2 項でライプニッツ則を使い、微分を ηa\eta_a から外します。

∂L∂(∂μϕa) ∂μηa=∂μ ⁣(∂L∂(∂μϕa) ηa)−∂μ ⁣(∂L∂(∂μϕa))ηa.\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi_a)}\, \partial_\mu \eta_a = \partial_\mu\!\left( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi_a)}\, \eta_a \right) - \partial_\mu\!\left( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi_a)} \right) \eta_a .

第 1 項は発散の形なのでガウスの発散定理により境界積分になります。

∫Ωd4x ∂μ ⁣(∂L∂(∂μϕa) ηa)=∮∂ΩdΣμ ∂L∂(∂μϕa) ηa=0.\int_\Omega d^4x\ \partial_\mu\!\left( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi_a)}\, \eta_a \right) = \oint_{\partial\Omega} d\Sigma_\mu\ \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi_a)}\, \eta_a = 0 .

最後の等号は ∂Ω\partial\Omega 上で ηa=0\eta_a = 0 であることによります。境界項が落ちるのはこの仮定のおかげであり、境界条件を課さない変分では運動方程式は出ません。 よって

ddε∣0S[ϕε]=∫Ωd4x [∂L∂ϕa−∂μ ⁣(∂L∂(∂μϕa))]ηa\left.\frac{d}{d\varepsilon}\right|_{0} S[\phi^\varepsilon] = \int_\Omega d^4x\ \left[ \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \phi_a} - \partial_\mu\!\left( \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial (\partial_\mu \phi_a)} \right) \right] \eta_a

です。仮定によりこれが任意の ηa\eta_a について 00 ですから、各 aa について(他の成分の η\eta を 00 に取ればよい)、補題 4.2 を大かっこの中身に適用して結論を得ます。ϕa\phi_a は C2C^2 級、L\mathcal{L} は C2C^2 級なので大かっこの中身は連続で、補題の仮定が満たされています。

逆向きは、上の等式を右から左に読めば直ちに従います。

この方程式は nn 本の連立 2 階偏微分方程式であり、これが「場の運動方程式」です。有限自由度のラグランジュ方程式 ddt∂L∂q˙i−∂L∂qi=0\frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} - \frac{\partial L}{\partial q_i} = 0 と見比べると、時間微分 d/dtd/dt が時空微分 ∂μ\partial_\mu に、添字 ii の 1 本の式が場の成分 aa の 1 本の式に置き換わっただけの形をしています。例 3.1 の弾性弦で確かめると、L=12μ(∂tϕ)2−12Y(∂xϕ)2\mathcal{L} = \frac{1}{2}\mu(\partial_t\phi)^2 - \frac{1}{2}Y(\partial_x\phi)^2 に対して ∂L/∂(∂tϕ)=μ ∂tϕ\partial \mathcal{L}/\partial(\partial_t\phi) = \mu\,\partial_t\phi、∂L/∂(∂xϕ)=−Y∂xϕ\partial\mathcal{L}/\partial(\partial_x \phi) = -Y \partial_x\phi、∂L/∂ϕ=0\partial\mathcal{L}/\partial\phi = 0 なので ∂t(μ∂tϕ)+∂x(−Y∂xϕ)=0\partial_t(\mu\partial_t\phi) + \partial_x(-Y\partial_x\phi) = 0、すなわち先ほど連続極限で得た波動方程式に一致します。

注意 4.4(なぜラグランジアン密度がスカラーだと嬉しいのか)

L\mathcal{L} がローレンツスカラー、すなわちローレンツ変換 x→Λxx \to \Lambda x のもとで L′(x′)=L(x)\mathcal{L}'(x') = \mathcal{L}(x) を満たすとします。d4xd^4x は不変(∣det⁡Λ∣=1|\det\Lambda| = 1)なので SS も不変です。運動方程式は SS の停留条件で決まりますから、ある慣性系で解であるものは、別の慣性系に移してもやはり解になります。つまり運動方程式のローレンツ共変性が、L\mathcal{L} を書いた瞬間に保証されます。

これはハミルトン形式では得られない利点です。ハミルトニアン H=∫d3x HH = \int d^3x\,\mathcal{H} は特定の時刻の空間断面上の積分なので、ローレンツ変換のもとでの振る舞いが自明ではありません。

4.3. ラグランジアン密度の自由度

Section titled “4.3. ラグランジアン密度の自由度”

L\mathcal{L} は運動方程式によって一意には決まりません。有限自由度で見た 全微分項による不定性(命題 4.4)[ラグランジュ形式の力学] が、そのまま場の理論でも成り立ちます。次の命題は、後でネーターの定理を「準不変性」まで広げるときの根拠になります。

命題 4.5(全微分項は運動方程式を変えない)✓

Kμ=Kμ(ϕa,x)K^\mu = K^\mu(\phi_a, x) を、場の値と座標の C2C^2 級関数とします(場の微分には依存しないとします)。このとき

L′:=L+∂μKμ\mathcal{L}' := \mathcal{L} + \partial_\mu K^\mu

から 定理 4.3 によって導かれる運動方程式は、L\mathcal{L} から導かれるものと同一です。

証明(命題 4.5)

S′[ϕ]=S[ϕ]+∫Ωd4x ∂μKμS'[\phi] = S[\phi] + \int_\Omega d^4x\, \partial_\mu K^\mu です。右辺第 2 項にガウスの発散定理を適用すると

∫Ωd4x ∂μKμ=∮∂ΩdΣμ Kμ(ϕa(x),x)\int_\Omega d^4x\ \partial_\mu K^\mu = \oint_{\partial\Omega} d\Sigma_\mu\ K^\mu\big(\phi_a(x), x\big)

となり、これは境界 ∂Ω\partial\Omega 上の ϕa\phi_a の値だけで決まります。

定理 4.3 の変分では ηa\eta_a が ∂Ω\partial\Omega の近傍で 00 ですから、∂Ω\partial\Omega 上で ϕaε=ϕa\phi_a^\varepsilon = \phi_a、したがってこの境界積分は ε\varepsilon に依存しません。よって

ddε∣0S′[ϕε]=ddε∣0S[ϕε]\left.\frac{d}{d\varepsilon}\right|_0 S'[\phi^\varepsilon] = \left.\frac{d}{d\varepsilon}\right|_0 S[\phi^\varepsilon]

であり、停留条件は両者で完全に一致します。補題 4.2 を経て得られる運動方程式も同一です。

(KμK^\mu が場の微分にも依存する場合は、境界上で ∂μηa\partial_\mu\eta_a が消えるとは限らないため、この議論はそのままでは通りません。以下で必要になるのは上の形だけです。)


実数値の場 ϕ(x)\phi(x) が 1 つだけあり、それがローレンツ変換のもとでスカラーとして振る舞う(ϕ′(x′)=ϕ(x)\phi'(x') = \phi(x))とします。この場に対して許されるラグランジアン密度を、次の 3 つの要請で絞り込みます。

  1. L\mathcal{L} はローレンツスカラーである(注意 4.4)。
  2. L\mathcal{L} は ϕ\phi の 1 階微分までしか含まない(運動方程式が 2 階になるように)。
  3. L\mathcal{L} は ϕ\phi について 2 次までである(重ね合わせの原理が成り立つ「自由場」を作りたい)。

要請 1・2 から、微分を含む項として作れるスカラーは ∂μϕ ∂μϕ\partial_\mu\phi\,\partial^\mu\phi だけです(∂μϕ\partial_\mu\phi を 1 個だけ含むスカラーは作れません。添字を潰す相手がないからです)。要請 3 と合わせると、最も一般的な形は定数 A,B,C,DA, B, C, D を用いて

L=A ∂μϕ ∂μϕ+B ϕ2+C ϕ+D\mathcal{L} = A\, \partial_\mu\phi\,\partial^\mu\phi + B\, \phi^2 + C\,\phi + D

です。ここで DD は運動方程式に寄与しない定数、CϕC\phi は ϕ→ϕ+const\phi \to \phi + \text{const} の平行移動で Bϕ2B\phi^2 に吸収できます(B≠0B \ne 0 のとき)。AA は ϕ\phi の定数倍のスケール変換で 1/21/2 に規格化できます。残った BB を B=−12m2B = -\frac{1}{2}m^2 と書けば、

LKG=12 ∂μϕ ∂μϕ−12 m2ϕ2=12ϕ˙2−12(∇ϕ)2−12m2ϕ2\mathcal{L}_{\mathrm{KG}} = \frac{1}{2}\, \partial_\mu\phi\, \partial^\mu\phi - \frac{1}{2}\, m^2 \phi^2 = \frac{1}{2}\dot\phi^2 - \frac{1}{2}(\nabla\phi)^2 - \frac{1}{2}m^2\phi^2

に到達します。これがクライン・ゴルドン(Klein–Gordon)場のラグランジアン密度です。

符号の選び方には物理的な意味があります。A>0A > 0(運動項が正)でなければ、後で見るようにエネルギー密度が下に有界でなくなります。m2>0m^2 > 0 でなければ、ϕ=0\phi = 0 という配位はポテンシャル V(ϕ)=12m2ϕ2V(\phi) = \frac{1}{2}m^2\phi^2 の極大点になり不安定です。m2<0m^2 < 0 の場合に何が起きるかは自発的対称性の破れの話題であり、ゲージ理論と自発的対称性の破れ で扱います。

例 5.1(クライン・ゴルドン方程式と分散関係)

LKG\mathcal{L}_{\mathrm{KG}} に 定理 4.3 を適用します。まず

∂LKG∂ϕ=−m2ϕ.\frac{\partial \mathcal{L}_{\mathrm{KG}}}{\partial \phi} = -m^2\phi .

次に微分についての偏微分です。∂μϕ ∂μϕ=ηαβ ∂αϕ ∂βϕ\partial_\mu\phi\,\partial^\mu\phi = \eta^{\alpha\beta}\,\partial_\alpha\phi\,\partial_\beta\phi と書いて ∂ρϕ\partial_\rho\phi で微分すると、2 つの因子それぞれから寄与が出て

∂∂(∂ρϕ)(12ηαβ∂αϕ ∂βϕ)=12(ηρβ∂βϕ+ηαρ∂αϕ)=∂ρϕ\frac{\partial}{\partial(\partial_\rho\phi)}\Big( \tfrac{1}{2}\eta^{\alpha\beta}\partial_\alpha\phi\,\partial_\beta\phi \Big) = \tfrac{1}{2}\big( \eta^{\rho\beta}\partial_\beta\phi + \eta^{\alpha\rho}\partial_\alpha\phi \big) = \partial^\rho \phi

となります(η\eta が対称であることを使いました)。よってオイラー・ラグランジュ方程式は

(□+m2) ϕ=∂μ∂μϕ+m2ϕ=0(\Box + m^2)\,\phi = \partial_\mu\partial^\mu\phi + m^2\phi = 0

です。これがクライン・ゴルドン方程式です。

平面波 ϕ(x)=e−ik⋅x\phi(x) = e^{-i k\cdot x}(k⋅x=kμxμ=k0t−k⋅xk\cdot x = k_\mu x^\mu = k^0 t - \boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{x})を代入します。∂μe−ik⋅x=−ikμe−ik⋅x\partial_\mu e^{-ik\cdot x} = -i k_\mu e^{-ik\cdot x} ですから □e−ik⋅x=(−ikμ)(−ikμ)e−ik⋅x=−kμkμ e−ik⋅x\Box e^{-ik\cdot x} = (-ik_\mu)(-ik^\mu) e^{-ik\cdot x} = -k_\mu k^\mu\, e^{-ik\cdot x} となり、

(−kμkμ+m2) e−ik⋅x=0  ⟺  kμkμ=m2  ⟺  (k0)2=∣k∣2+m2.(-k_\mu k^\mu + m^2)\, e^{-ik\cdot x} = 0 \iff k_\mu k^\mu = m^2 \iff (k^0)^2 = |\boldsymbol{k}|^2 + m^2 .

ℏ=c=1\hbar = c = 1 の下で k0=Ek^0 = E、k=p\boldsymbol{k} = \boldsymbol{p} と読めば、これは相対論的なエネルギー・運動量関係

E2=p2+m2E^2 = \boldsymbol{p}^2 + m^2

に他なりません(相対論的力学 の エネルギー・運動量関係式(定理 4.4)[相対論的力学] を参照)。パラメータ mm が質量と呼ばれるのはこのためです。 ϕ\phi が実であることから、一般解は ωk:=∣k∣2+m2\omega_{\boldsymbol{k}} := \sqrt{|\boldsymbol{k}|^2 + m^2} として

ϕ(x)=∫d3k(2π)3 2ωk[α(k) e−ik⋅x+α(k)∗ eik⋅x]k0=ωk\phi(x) = \int \frac{d^3k}{(2\pi)^3\, 2\omega_{\boldsymbol{k}}} \left[ \alpha(\boldsymbol{k})\, e^{-ik\cdot x} + \alpha(\boldsymbol{k})^{*}\, e^{ik\cdot x} \right]_{k^0 = \omega_{\boldsymbol{k}}}

と書けます。α(k)\alpha(\boldsymbol{k}) が a^(k)\hat{a}(\boldsymbol{k}) という演算子に化けるのが正準量子化です(スカラー場の正準量子化)。

5.2. 静的な源と湯川ポテンシャル

Section titled “5.2. 静的な源と湯川ポテンシャル”

mm が本当に「質量」として物理に効くことを、もう 1 つ別の角度から確かめます。クライン・ゴルドン場に静的な点源を置くと、力の到達距離が 1/m1/m になります。湯川秀樹が 1935 年に中間子の存在を予言したのは、まさにこの計算によってでした。

計算の流れは、(1) 場の方程式をフーリエ変換して微分を掛け算に直し、(2) 逆変換の積分を極座標で角度部分だけ先に実行し、(3) 残った 1 変数の積分を複素平面での留数定理で求める、という 3 段です。結果は、点源からの距離 rr に対して e−mr/re^{-mr}/r の形で減る場になります。

12345r1201/r(m = 0)e^(-r)/r(m = 1)
湯川ポテンシャル(実線、m = 1)とクーロン型(破線、m = 0)の比較。縦軸は g/(4π) を単位とし、横軸は距離 r。質量があると、距離 1/m を超えたあたりから急速に小さくなる。

例 5.2(点源が作る場と核力の到達距離)

原点に静止した点源があり、それが場と結合している状況を

L=12∂μϕ ∂μϕ−12m2ϕ2+g ϕ δ3(x)\mathcal{L} = \frac{1}{2}\partial_\mu\phi\,\partial^\mu\phi - \frac{1}{2}m^2\phi^2 + g\,\phi\,\delta^3(\boldsymbol{x})

で表します。定理 4.3 より ∂L/∂ϕ=−m2ϕ+gδ3(x)\partial\mathcal{L}/\partial\phi = -m^2\phi + g\delta^3(\boldsymbol{x})、∂μ(∂L/∂(∂μϕ))=□ϕ\partial_\mu(\partial\mathcal{L}/\partial(\partial_\mu\phi)) = \Box\phi なので

(□+m2)ϕ=g δ3(x).(\Box + m^2)\phi = g\,\delta^3(\boldsymbol{x}) .

定常解を探すので ∂tϕ=0\partial_t\phi = 0 とすると □ϕ=−∇2ϕ\Box\phi = -\nabla^2\phi で、

(−∇2+m2) ϕ(x)=g δ3(x).(-\nabla^2 + m^2)\,\phi(\boldsymbol{x}) = g\,\delta^3(\boldsymbol{x}) .

フーリエ変換 ϕ(x)=∫d3k(2π)3ϕ~(k)eik⋅x\phi(\boldsymbol{x}) = \int \frac{d^3k}{(2\pi)^3} \tilde\phi(\boldsymbol{k}) e^{i\boldsymbol{k}\cdot\boldsymbol{x}} を代入すると (∣k∣2+m2)ϕ~=g(|\boldsymbol{k}|^2 + m^2)\tilde\phi = g、すなわち ϕ~(k)=g/(∣k∣2+m2)\tilde\phi(\boldsymbol{k}) = g/(|\boldsymbol{k}|^2+m^2) です。逆変換を極座標で実行します。r:=∣x∣r := |\boldsymbol{x}|、k:=∣k∣k := |\boldsymbol{k}| とし、x\boldsymbol{x} を極軸に取ると

ϕ(r)=g(2π)3∫02π ⁣dφ∫0π ⁣dθ sin⁡θ∫0∞ ⁣dk k2 eikrcos⁡θk2+m2=g(2π)2∫0∞dk k2k2+m2⋅2sin⁡(kr)kr=g2π2r∫0∞dk k sin⁡(kr)k2+m2.\begin{aligned} \phi(r) &= \frac{g}{(2\pi)^3}\int_0^{2\pi}\! d\varphi \int_0^\pi\! d\theta\,\sin\theta \int_0^\infty\! dk\ \frac{k^2\, e^{ikr\cos\theta}}{k^2+m^2} \\ &= \frac{g}{(2\pi)^2}\int_0^\infty dk\ \frac{k^2}{k^2+m^2}\cdot \frac{2\sin(kr)}{kr} = \frac{g}{2\pi^2 r}\int_0^\infty dk\ \frac{k\,\sin(kr)}{k^2+m^2} . \end{aligned}

2 行目では ∫0πdθsin⁡θ eikrcos⁡θ=[eikrcos⁡θ/(−ikr)]θ=0π=2sin⁡(kr)/(kr)\int_0^\pi d\theta \sin\theta\, e^{ikr\cos\theta} = \big[ e^{ikr\cos\theta}/(-ikr) \big]_{\theta=0}^{\pi} = 2\sin(kr)/(kr) を使いました。

残った積分を II とおきます。被積分関数は kk の偶関数なので I=12∫−∞∞ksin⁡(kr)k2+m2dkI = \frac{1}{2}\int_{-\infty}^{\infty} \frac{k\sin(kr)}{k^2+m^2}dk です。また kcos⁡(kr)/(k2+m2)k\cos(kr)/(k^2+m^2) は奇関数で積分が 00 ですから

∫−∞∞k eikrk2+m2 dk=0+i⋅2I.\int_{-\infty}^{\infty} \frac{k\,e^{ikr}}{k^2+m^2}\,dk = 0 + i\cdot 2I .

左辺を留数定理で計算します。r>0r > 0 なので上半平面に閉じる半円を取ると、被積分関数の上半平面の極は k=imk = im のみで、留数は im ei(im)r2im=e−mr2\dfrac{im\, e^{i(im)r}}{2im} = \dfrac{e^{-mr}}{2} です。よって左辺は 2πi⋅e−mr2=iπe−mr2\pi i \cdot \frac{e^{-mr}}{2} = i\pi e^{-mr} となり、I=π2e−mrI = \frac{\pi}{2}e^{-mr} を得ます。したがって

ϕ(r)=g2π2r⋅π2e−mr=g4π e−mrr.\phi(r) = \frac{g}{2\pi^2 r}\cdot\frac{\pi}{2}e^{-mr} = \frac{g}{4\pi}\,\frac{e^{-mr}}{r} .

これが湯川ポテンシャルです。m→0m \to 0 とすると g/(4πr)g/(4\pi r) というクーロン型の長距離力になり、m≠0m \ne 0 では e−mre^{-mr} によって距離 1/m1/m 程度で急速に減衰します。

数値を入れてみます。核力の到達距離はおよそ 1.4 fm1.4\ \mathrm{fm} です。ℏc=197.3 MeV⋅fm\hbar c = 197.3\ \mathrm{MeV\cdot fm} を使って

m≈ℏc1.4 fm=197.3 MeV⋅fm1.4 fm≈1.4×102 MeVm \approx \frac{\hbar c}{1.4\ \mathrm{fm}} = \frac{197.3\ \mathrm{MeV\cdot fm}}{1.4\ \mathrm{fm}} \approx 1.4 \times 10^2\ \mathrm{MeV}

となります。実際に 1947 年に発見された π\pi 中間子の質量は約 135135–140 MeV140\ \mathrm{MeV} で、この見積もりとよく合っています。

自由場だけでは何も起こりません。散乱も崩壊も相互作用があってこそです。要請 3(ϕ\phi について 2 次)を外し、ポテンシャル項を付けます。

L=12∂μϕ ∂μϕ−12m2ϕ2−∑n≥3λnn!ϕn.\mathcal{L} = \frac{1}{2}\partial_\mu\phi\,\partial^\mu\phi - \frac{1}{2}m^2\phi^2 - \sum_{n \ge 3}\frac{\lambda_n}{n!}\phi^n .

次の注意に出てくる「くりこみ可能」などの呼び名は、量子化したときの無限大の扱いに関する分類です(くりこみ可能性の分類)。ここでは、結合定数の質量次元で項が分類される、という点だけを押さえてください。

注意 5.3(質量次元が相互作用を分類する)

§2 で [L]=4[\mathcal{L}] = 4 を確かめました。運動項 ∂μϕ ∂μϕ\partial_\mu\phi\,\partial^\mu\phi から 2+2[ϕ]=42 + 2[\phi] = 4、つまり

[ϕ]=1[\phi] = 1

です。よって [λn]=4−n[\lambda_n] = 4 - n となり、次のように分類されます。

項結合定数の質量次元呼び名
ϕ3\phi^3[λ3]=1[\lambda_3] = 1超くりこみ可能
ϕ4\phi^4[λ4]=0[\lambda_4] = 0くりこみ可能
ϕ5,ϕ6,…\phi^5, \phi^6, \dots[λn]<0[\lambda_n] < 0くりこみ不可能(有効理論としてのみ意味を持つ)

「4 次元時空の実スカラー場の相互作用として最初に書くのは ϕ4\phi^4」という慣習は、この次元勘定から来ています。なぜ負の質量次元が問題になるのかは くりこみ理論入門 の くりこみ可能性の分類(定義 5.4)[くりこみ理論入門] で扱います。ここでは、L\mathcal{L} を書き下すという行為が単なる形式ではなく、理論に許される相互作用を数え上げる作業でもあることを押さえてください。


6. ネーターの定理(場の理論版)

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エミー・ネーターが 1918 年に示した定理は、「作用の連続対称性 1 つにつき保存量が 1 つ対応する」という主張です。有限自由度版(対称性と保存則)では保存されるのは時間の関数 1 個でしたが、場の理論では局所的な保存則、すなわち連続の方程式 ∂μjμ=0\partial_\mu j^\mu = 0 という、より強い形で得られます。これは「電荷が消えて別の場所に現れる」ようなことが起きないという主張であり、相対論的な因果律とも整合します。

この章の論理構造。ラグランジアン密度という 1 つの関数から、運動方程式と保存則の両方が導かれる。

対称性の定義には注意が要ります。「作用が不変」だけでは 命題 4.5 の自由度を取りこぼすので、L\mathcal{L} が全微分だけずれることを許した準不変性を採用します。

この定義では、座標 xx と場の値 ϕ\phi を同時に少しだけずらす変換を考えます。たとえば時空並進では xx だけが動き、後で見る位相の回転では ϕ\phi だけが動きます。両方を一度に扱えるように、動き方を XμX^\mu と FaF_a で表します。座標を動かすと積分の体積要素 d4xd^4x も変わるので、その補正としてヤコビ行列式が左辺に入ります。

定義 6.1(作用の連続対称性(準不変性))↗

ε\varepsilon を実パラメータとする滑らかな 1 パラメータ変換族

xμ⟼x′μ=xμ+ε Xμ(x)+O(ε2),ϕa(x)⟼ϕa′(x′)=ϕa(x)+ε Fa(x)+O(ε2)x^\mu \longmapsto x'^\mu = x^\mu + \varepsilon\, X^\mu(x) + O(\varepsilon^2), \qquad \phi_a(x) \longmapsto \phi'_a(x') = \phi_a(x) + \varepsilon\, F_a(x) + O(\varepsilon^2)

を考えます。ここで XμX^\mu は xx の、FaF_a は ϕb(x)\phi_b(x)、∂μϕb(x)\partial_\mu\phi_b(x) および xx の滑らかな関数です。

ある KμK^\mu(ϕb\phi_b、∂μϕb\partial_\mu\phi_b、xx の滑らかな関数)が存在して、恒等式

L(ϕ′(x′), ∂′ϕ′(x′)) det⁡ ⁣(∂x′∂x)=L(ϕ(x), ∂ϕ(x))+ε ∂μKμ+O(ε2)\mathcal{L}\big(\phi'(x'),\, \partial' \phi'(x')\big)\ \det\!\left( \frac{\partial x'}{\partial x} \right) = \mathcal{L}\big(\phi(x),\, \partial\phi(x)\big) + \varepsilon\, \partial_\mu K^\mu + O(\varepsilon^2)

が任意の(運動方程式を満たすとは限らない)場の配位に対して成り立つとき、この変換族を作用の連続対称性と呼びます。Kμ=0K^\mu = 0 の場合を厳密不変、一般の場合を準不変といいます。

左辺の因子 det⁡(∂x′/∂x)\det(\partial x'/\partial x) は積分測度の変化 d4x′=det⁡(∂x′/∂x) d4xd^4x' = \det(\partial x'/\partial x)\, d^4x を表しており、これを含めることで左辺は「変換後の理論の作用密度を元の座標で測ったもの」になります。

条件を「運動方程式によらず恒等的に成り立つ」としたのが要点です。運動方程式の上でだけ成り立つ式からは、何も新しい情報は出てきません。

定理 6.2(ネーターの定理)✓

L=L(ϕa,∂μϕa)\mathcal{L} = \mathcal{L}(\phi_a, \partial_\mu\phi_a) は座標 xx に陽には依存しないとします。定義 6.1 の意味の連続対称性が与えられたとき、

πμa:=∂L∂(∂μϕa)\pi^\mu{}_a := \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu \phi_a)}

とおき、ネーターカレントを

jμ:=πμa(Fa−Xν∂νϕa)+L Xμ−Kμj^\mu := \pi^\mu{}_a \big( F_a - X^\nu \partial_\nu \phi_a \big) + \mathcal{L}\, X^\mu - K^\mu

で定めます。このとき、オイラー・ラグランジュ方程式(定理 4.3)の任意の解の上で

∂μjμ=0\partial_\mu j^\mu = 0

が成り立ちます。

証明の流れは 3 段です。第 1 段では対称性の条件を ε\varepsilon の 1 次の項で書き出して恒等式にします。第 2 段では運動方程式を使い、その恒等式の各項を「∂μ\partial_\mu の形」にまとめ直します。第 3 段では、座標の変化 XX に由来する余分な項が打ち消し合うことを確かめ、∂μjμ=0\partial_\mu j^\mu = 0 の形にします。長い式変形のほとんどは、ライプニッツ則で微分を付け替える作業です。

証明(定理 6.2)

第 1 段:対称性条件を O(ε)O(\varepsilon) で書き下す。

まずヤコビ行列は ∂x′μ/∂xν=δνμ+ε ∂νXμ+O(ε2)\partial x'^\mu/\partial x^\nu = \delta^\mu_\nu + \varepsilon\,\partial_\nu X^\mu + O(\varepsilon^2) なので、行列式は

det⁡ ⁣(∂x′∂x)=1+ε ∂μXμ+O(ε2)\det\!\left( \frac{\partial x'}{\partial x} \right) = 1 + \varepsilon\, \partial_\mu X^\mu + O(\varepsilon^2)

です(det⁡(I+εM)=1+ε tr M+O(ε2)\det(I + \varepsilon M) = 1 + \varepsilon\,\mathrm{tr}\,M + O(\varepsilon^2))。

次に微分の変換です。逆写像は ∂xν/∂x′μ=δμν−ε ∂μXν+O(ε2)\partial x^\nu/\partial x'^\mu = \delta^\nu_\mu - \varepsilon\,\partial_\mu X^\nu + O(\varepsilon^2) なので、連鎖律より

∂μ′ϕa′(x′)=∂xν∂x′μ ∂ν[ϕa(x)+εFa(x)]=∂μϕa+ε(∂μFa−(∂μXν) ∂νϕa)+O(ε2).\partial'_\mu \phi'_a(x') = \frac{\partial x^\nu}{\partial x'^\mu}\,\partial_\nu\big[\phi_a(x) + \varepsilon F_a(x)\big] = \partial_\mu \phi_a + \varepsilon\big( \partial_\mu F_a - (\partial_\mu X^\nu)\, \partial_\nu\phi_a \big) + O(\varepsilon^2) .

L\mathcal{L} は xx に陽に依存しないので、連鎖律で

L(ϕ′(x′),∂′ϕ′(x′))=L+ε[∂L∂ϕaFa+πμa(∂μFa−(∂μXν)∂νϕa)]+O(ε2).\mathcal{L}\big(\phi'(x'), \partial'\phi'(x')\big) = \mathcal{L} + \varepsilon\left[ \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi_a}F_a + \pi^\mu{}_a\big( \partial_\mu F_a - (\partial_\mu X^\nu)\partial_\nu\phi_a \big) \right] + O(\varepsilon^2) .

行列式を掛けて 定義 6.1 の右辺と O(ε)O(\varepsilon) で比較すると、恒等式

L ∂μXμ+∂L∂ϕaFa+πμa ∂μFa−πμa (∂μXν) ∂νϕa=∂μKμ\mathcal{L}\,\partial_\mu X^\mu + \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi_a}F_a + \pi^\mu{}_a\,\partial_\mu F_a - \pi^\mu{}_a\,(\partial_\mu X^\nu)\,\partial_\nu\phi_a = \partial_\mu K^\mu

を得ます。これを対称性恒等式と呼ぶことにします。ここまでは運動方程式を一切使っていないこと、そして 定義 6.1 で「任意の場の配位について成り立つ」と要求したからこそこれが恒等式になっていることを確認してください。

第 2 段:運動方程式を使って左辺を発散の形にまとめる。

以下、ϕ\phi はオイラー・ラグランジュ方程式の解とします。すなわち ∂L∂ϕa=∂μπμa\dfrac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi_a} = \partial_\mu \pi^\mu{}_a です。

第 2・第 3 項をまとめます。ライプニッツ則より

∂L∂ϕaFa+πμa∂μFa=(∂μπμa)Fa+πμa∂μFa=∂μ(πμaFa).\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi_a}F_a + \pi^\mu{}_a\partial_\mu F_a = (\partial_\mu \pi^\mu{}_a) F_a + \pi^\mu{}_a \partial_\mu F_a = \partial_\mu\big( \pi^\mu{}_a F_a \big) .

第 1 項を処理します。L\mathcal{L} の xx についての全微分は、xx への陽な依存性がないので

∂μL=∂L∂ϕa∂μϕa+πνa ∂ν∂μϕa=(∂νπνa) ∂μϕa+πνa ∂ν∂μϕa=∂ν(πνa ∂μϕa)\partial_\mu \mathcal{L} = \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi_a}\partial_\mu\phi_a + \pi^\nu{}_a\, \partial_\nu\partial_\mu \phi_a = (\partial_\nu \pi^\nu{}_a)\,\partial_\mu\phi_a + \pi^\nu{}_a\,\partial_\nu\partial_\mu\phi_a = \partial_\nu\big( \pi^\nu{}_a\, \partial_\mu \phi_a \big)

(2 番目の等号で再び運動方程式を使いました)。したがって

L ∂μXμ=∂μ(LXμ)−Xμ ∂μL=∂μ(LXμ)−Xμ ∂ν(πνa∂μϕa).\mathcal{L}\,\partial_\mu X^\mu = \partial_\mu\big(\mathcal{L}X^\mu\big) - X^\mu\,\partial_\mu\mathcal{L} = \partial_\mu\big(\mathcal{L}X^\mu\big) - X^\mu\, \partial_\nu\big( \pi^\nu{}_a \partial_\mu\phi_a \big) .

第 4 項も同様にライプニッツ則で分けます。

−πμa(∂μXν)∂νϕa=−∂μ(Xνπμa∂νϕa)+Xν∂μ(πμa∂νϕa).-\pi^\mu{}_a (\partial_\mu X^\nu)\partial_\nu\phi_a = -\partial_\mu\big( X^\nu \pi^\mu{}_a \partial_\nu\phi_a \big) + X^\nu \partial_\mu\big( \pi^\mu{}_a \partial_\nu\phi_a \big) .

第 3 段:XX を含む余分な項が相殺する。

上の 2 つの式に現れた XX 付きの項は

−Xμ∂ν(πνa∂μϕa)+Xν∂μ(πμa∂νϕa)- X^\mu \partial_\nu\big( \pi^\nu{}_a \partial_\mu\phi_a \big) + X^\nu \partial_\mu\big( \pi^\mu{}_a \partial_\nu\phi_a \big)

ですが、第 2 項で和を取る添字の名前を μ↔ν\mu \leftrightarrow \nu と付け替えれば第 1 項の符号違いに一致するので、和は 00 です。

以上を対称性恒等式に代入すると

∂μ[LXμ+πμaFa−Xνπμa∂νϕa]=∂μKμ\partial_\mu\Big[ \mathcal{L}X^\mu + \pi^\mu{}_a F_a - X^\nu \pi^\mu{}_a \partial_\nu\phi_a \Big] = \partial_\mu K^\mu

すなわち ∂μ[πμa(Fa−Xν∂νϕa)+LXμ−Kμ]=0\partial_\mu\big[ \pi^\mu{}_a(F_a - X^\nu\partial_\nu\phi_a) + \mathcal{L}X^\mu - K^\mu \big] = 0 を得ます。これが求める式です。

局所的な保存則 ∂μjμ=0\partial_\mu j^\mu = 0 から、大域的な保存量が出ます。ただし「無限遠でカレントが十分速く落ちる」という物理的な仮定が要ることに注意してください。

系 6.3(ネーター電荷の保存)✓

定理 6.2 の状況で、解 ϕ\phi に対するカレント jμj^\mu が各時刻 tt で次を満たすとします。半径 RR の球面 SRS_R 上で

lim⁡R→∞∮SRji ni dS=0\lim_{R\to\infty} \oint_{S_R} j^i\, n^i\, dS = 0

(nin^i は外向き単位法線。例えば ∣ji∣=o(R−2)|j^i| = o(R^{-2}) なら成り立ちます)。また j0j^0 は各時刻で R3\mathbb{R}^3 上可積分で、時間微分と積分が交換できるとします。このとき

Q(t):=∫R3d3x j0(t,x)Q(t) := \int_{\mathbb{R}^3} d^3x\ j^0(t, \boldsymbol{x})

は時間に依らない定数です。

証明(系 6.3)

∂μjμ=∂0j0+∂iji=0\partial_\mu j^\mu = \partial_0 j^0 + \partial_i j^i = 0 ですから、

dQdt=∫R3d3x ∂0j0=−∫R3d3x ∂iji=−lim⁡R→∞∫∣x∣≤Rd3x ∇⋅j=−lim⁡R→∞∮SRjini dS=0.\frac{dQ}{dt} = \int_{\mathbb{R}^3} d^3x\ \partial_0 j^0 = -\int_{\mathbb{R}^3} d^3x\ \partial_i j^i = -\lim_{R\to\infty}\int_{|\boldsymbol{x}| \le R} d^3x\ \nabla\cdot \boldsymbol{j} = -\lim_{R\to\infty}\oint_{S_R} j^i n^i\, dS = 0 .

1 番目の等号で微分と積分の交換、3 番目でガウスの発散定理、最後で仮定を使いました。

注意 6.4(カレントには曖昧さがある)

jμj^\mu に ∂νΣνμ\partial_\nu \Sigma^{\nu\mu}(Σνμ=−Σμν\Sigma^{\nu\mu} = -\Sigma^{\mu\nu} は任意の反対称テンソル)を加えても、∂μ∂νΣνμ=0\partial_\mu\partial_\nu\Sigma^{\nu\mu} = 0(対称な微分と反対称なテンソルの縮約)なので保存則は保たれます。さらに、Σ\Sigma が無限遠で十分速く落ちれば電荷 QQ も変わりません。ネーターカレントは一意ではない、ということです。この自由度は §6.5 で使います。

6.3. 時空並進とエネルギー・運動量テンソル

Section titled “6.3. 時空並進とエネルギー・運動量テンソル”

定義 6.5(正準エネルギー・運動量テンソル)↗

L\mathcal{L} が xx に陽に依存しないとき、

Tμν:=πμa ∂νϕa−δνμ L,Tμν=ηνρ Tμρ=πμa ∂νϕa−ημνLT^\mu{}_\nu := \pi^\mu{}_a\, \partial_\nu \phi_a - \delta^\mu_\nu\, \mathcal{L}, \qquad T^{\mu\nu} = \eta^{\nu\rho}\,T^\mu{}_\rho = \pi^\mu{}_a\, \partial^\nu\phi_a - \eta^{\mu\nu}\mathcal{L}

を正準エネルギー・運動量テンソルと呼びます。

時空並進 x′μ=xμ+ε ξμx'^\mu = x^\mu + \varepsilon\,\xi^\mu(ξμ\xi^\mu は定ベクトル。場の成分の添字 aa と紛れないよう ξ\xi と書きます)を考えます。場は ϕa′(x′)=ϕa(x)\phi'_a(x') = \phi_a(x) と運ばれるだけなので Xμ=ξμX^\mu = \xi^\mu、Fa=0F_a = 0 です。ヤコビ行列は単位行列で det⁡=1\det = 1、そして L\mathcal{L} が xx に陽に依存しないことから 定義 6.1 の左辺は L(ϕ(x),∂ϕ(x))\mathcal{L}(\phi(x),\partial\phi(x)) そのものになり、Kμ=0K^\mu = 0 が取れます。定理 6.2 を適用すると

jμ=πμa(0−ξν∂νϕa)+L ξμ=−ξν(πμa∂νϕa−δνμL)=−ξν Tμν.j^\mu = \pi^\mu{}_a\big( 0 - \xi^\nu \partial_\nu\phi_a \big) + \mathcal{L}\,\xi^\mu = -\xi^\nu\Big( \pi^\mu{}_a \partial_\nu\phi_a - \delta^\mu_\nu \mathcal{L} \Big) = -\xi^\nu\, T^\mu{}_\nu .

ξν\xi^\nu は任意なので、4 本の保存則

∂μTμν=0(ν=0,1,2,3)\partial_\mu T^\mu{}_\nu = 0 \qquad (\nu = 0,1,2,3)

が成り立ちます。対応する保存量は 系 6.3 より

Pν=∫d3x T0νP^\nu = \int d^3x\ T^{0\nu}

で、P0P^0 がエネルギー、PiP^i が運動量です。実際 T00=π0aϕ˙a−LT^0{}_0 = \pi^0{}_a\dot\phi_a - \mathcal{L} は有限自由度でのルジャンドル変換 H=pq˙−LH = p\dot q - L(ハミルトニアンの定義(定義 3.6)[ハミルトン形式の力学])と同じ形をしています。

例 6.6(クライン・ゴルドン場のエネルギー・運動量)

LKG\mathcal{L}_{\mathrm{KG}} では 例 5.1 で計算したとおり πμ=∂μϕ\pi^\mu = \partial^\mu\phi なので

Tμν=∂μϕ ∂νϕ−ημν[12∂αϕ ∂αϕ−12m2ϕ2].T^{\mu\nu} = \partial^\mu\phi\,\partial^\nu\phi - \eta^{\mu\nu}\left[ \frac{1}{2}\partial_\alpha\phi\,\partial^\alpha\phi - \frac{1}{2}m^2\phi^2 \right] .

∂αϕ ∂αϕ=ϕ˙2−(∇ϕ)2\partial_\alpha\phi\,\partial^\alpha\phi = \dot\phi^2 - (\nabla\phi)^2 に注意して μ=ν=0\mu = \nu = 0 成分を計算します。

T00=ϕ˙2−[12ϕ˙2−12(∇ϕ)2−12m2ϕ2]=12ϕ˙2+12(∇ϕ)2+12m2ϕ2.T^{00} = \dot\phi^2 - \left[ \frac{1}{2}\dot\phi^2 - \frac{1}{2}(\nabla\phi)^2 - \frac{1}{2}m^2\phi^2 \right] = \frac{1}{2}\dot\phi^2 + \frac{1}{2}(\nabla\phi)^2 + \frac{1}{2}m^2\phi^2 .

3 項すべてが非負であり、エネルギー密度は下に有界です。これが「運動項の係数が正」「m2>0m^2 > 0」を要求した理由です。運動量密度は

T0i=∂0ϕ ∂iϕ=−ϕ˙ ∂ϕ∂xi,P=−∫d3x ϕ˙ ∇ϕ.T^{0i} = \partial^0\phi\,\partial^i\phi = -\dot\phi\, \frac{\partial\phi}{\partial x^i}, \qquad \boldsymbol{P} = -\int d^3x\ \dot\phi\, \nabla\phi .

符号を確かめます。+x+x 方向に進む波 ϕ=Acos⁡(ωt−kx)\phi = A\cos(\omega t - k x)(k>0k > 0)では ϕ˙=−Aωsin⁡(ωt−kx)\dot\phi = -A\omega\sin(\omega t - kx)、∂ϕ/∂x=Aksin⁡(ωt−kx)\partial\phi/\partial x = A k \sin(\omega t - kx) なので −ϕ˙ ∂xϕ=A2ωksin⁡2(ωt−kx)≥0-\dot\phi\,\partial_x\phi = A^2\omega k \sin^2(\omega t - kx) \ge 0 となり、確かに運動量は +x+x 方向を向いています。

また TμνT^{\mu\nu} が対称であること(∂μϕ ∂νϕ\partial^\mu\phi\,\partial^\nu\phi も ημν\eta^{\mu\nu} も対称)に注意してください。これは §6.5 で効いてきます。

次は時空を動かさず、場の空間の中だけで回す変換です。複素スカラー場 ϕ\phi(と、その複素共役 ϕˉ\bar\phi を独立変数とみなしたもの)に対して

L=∂μϕˉ ∂μϕ−m2ϕˉϕ\mathcal{L} = \partial_\mu \bar\phi\, \partial^\mu\phi - m^2 \bar\phi \phi

を考えます。実場 2 個 ϕ1,ϕ2\phi_1, \phi_2 を ϕ=(ϕ1+iϕ2)/2\phi = (\phi_1 + i\phi_2)/\sqrt{2} とまとめたものと思っても構いません。

例 6.7(大域的 U(1) 対称性と保存カレント)

変換

ϕ′(x)=e−iεϕ(x)=ϕ−iεϕ+O(ε2),ϕˉ′(x)=e+iεϕˉ(x)=ϕˉ+iεϕˉ+O(ε2)\phi'(x) = e^{-i\varepsilon}\phi(x) = \phi - i\varepsilon\phi + O(\varepsilon^2), \qquad \bar\phi'(x) = e^{+i\varepsilon}\bar\phi(x) = \bar\phi + i\varepsilon\bar\phi + O(\varepsilon^2)

を考えます。ε\varepsilon は時空に依らない定数なので「大域的」対称性です。定義 6.1 の記号では Xμ=0X^\mu = 0、Fϕ=−iϕF_\phi = -i\phi、Fϕˉ=+iϕˉF_{\bar\phi} = +i\bar\phi です。L\mathcal{L} は ϕˉϕ\bar\phi\phi と ∂μϕˉ ∂μϕ\partial_\mu\bar\phi\,\partial^\mu\phi の組み合わせだけでできており、位相因子が e+iεe−iε=1e^{+i\varepsilon}e^{-i\varepsilon} = 1 と打ち消すので厳密に不変です。よって Kμ=0K^\mu = 0 が取れます。

運動量共役は

πμϕ=∂L∂(∂μϕ)=∂μϕˉ,πμϕˉ=∂L∂(∂μϕˉ)=∂μϕ\pi^\mu{}_{\phi} = \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\phi)} = \partial^\mu\bar\phi, \qquad \pi^\mu{}_{\bar\phi} = \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\bar\phi)} = \partial^\mu\phi

なので、定理 6.2 より

jμ=πμϕFϕ+πμϕˉFϕˉ=∂μϕˉ (−iϕ)+∂μϕ (iϕˉ)=i(ϕˉ ∂μϕ−ϕ ∂μϕˉ).j^\mu = \pi^\mu{}_\phi F_\phi + \pi^\mu{}_{\bar\phi} F_{\bar\phi} = \partial^\mu\bar\phi\,(-i\phi) + \partial^\mu\phi\,(i\bar\phi) = i\big( \bar\phi\,\partial^\mu\phi - \phi\,\partial^\mu\bar\phi \big) .

保存を直接確かめます。L\mathcal{L} のオイラー・ラグランジュ方程式は ϕˉ\bar\phi で変分して (□+m2)ϕ=0(\Box + m^2)\phi = 0、ϕ\phi で変分して (□+m2)ϕˉ=0(\Box+m^2)\bar\phi = 0 です。したがって

∂μjμ=i(∂μϕˉ ∂μϕ+ϕˉ □ϕ−∂μϕ ∂μϕˉ−ϕ □ϕˉ)=i(ϕˉ(−m2ϕ)−ϕ(−m2ϕˉ))=0.\partial_\mu j^\mu = i\big( \partial_\mu\bar\phi\,\partial^\mu\phi + \bar\phi\,\Box\phi - \partial_\mu\phi\,\partial^\mu\bar\phi - \phi\,\Box\bar\phi \big) = i\big( \bar\phi(-m^2\phi) - \phi(-m^2\bar\phi) \big) = 0 .

第 1 項と第 3 項が相殺し、残りが運動方程式で消えました。保存電荷は

Q=∫d3x j0=i∫d3x (ϕˉ ϕ˙−ϕ ϕˉ˙)Q = \int d^3x\ j^0 = i\int d^3x\ \big( \bar\phi\,\dot\phi - \phi\,\dot{\bar\phi} \big)

です。この U(1)U(1) を局所化(ε\varepsilon を xx の関数に)すると電磁場との結合が必然的に現れ、QQ は電荷そのものになります(ゲージ理論と自発的対称性の破れ)。

注意 6.8(j⁰ は確率密度ではない)

上の j0=i(ϕˉϕ˙−ϕϕˉ˙)j^0 = i(\bar\phi\dot\phi - \phi\dot{\bar\phi}) は符号が定まりません。実際、負振動数解 ϕ=e+iωt\phi = e^{+i\omega t} を取れば j0<0j^0 < 0 になります。クライン・ゴルドン方程式を「相対論的な 1 粒子シュレーディンガー方程式」として読もうとした初期の試みが破綻したのは、この j0j^0 を確率密度と解釈できなかったからでした(なぜ場の量子論が必要か の クライン・ゴルドンのカレントとその非正値性(命題 3.2)[なぜ場の量子論が必要か])。

古典場の理論の枠内では、これは何の問題も起こしません。QQ は電荷であって確率ではなく、電荷が正にも負にもなるのは当たり前だからです。量子化した後には、QQ の固有値が「粒子数マイナス反粒子数」を数えていることが分かります。

命題 6.9(スカラー場の角運動量テンソル)✓

L\mathcal{L} をローレンツスカラーの実スカラー場のラグランジアン密度とします。無限小ローレンツ変換 x′μ=xμ+ε ωμνxνx'^\mu = x^\mu + \varepsilon\,\omega^\mu{}_\nu x^\nu(ωμν=−ωνμ\omega_{\mu\nu} = -\omega_{\nu\mu})と ϕ′(x′)=ϕ(x)\phi'(x') = \phi(x) に対応するネーターの保存量として、

Mμαρ:=xα Tμρ−xρ TμαM^{\mu\alpha\rho} := x^\alpha\, T^{\mu\rho} - x^\rho\, T^{\mu\alpha}

が ∂μMμαρ=0\partial_\mu M^{\mu\alpha\rho} = 0 を満たします。さらにこのことから、正準エネルギー・運動量テンソルは対称 Tαρ=TραT^{\alpha\rho} = T^{\rho\alpha} です。

証明の方針は、ネーターカレントを書き下し、ω\omega が反対称であることを使って xαTμρ−xρTμαx^\alpha T^{\mu\rho} - x^\rho T^{\mu\alpha} の形(添字 α,ρ\alpha, \rho を入れ替えると符号が変わる形)に整理することです。その保存則から、TT の対称性が従います。

証明(命題 6.9)

定義 6.1 の記号で Xμ=ωμνxνX^\mu = \omega^\mu{}_\nu x^\nu、F=0F = 0 です。ヤコビアンは 1+ε ∂μXμ=1+ε ωμμ1 + \varepsilon\,\partial_\mu X^\mu = 1 + \varepsilon\,\omega^\mu{}_\mu ですが、ωμμ=ημαωαμ\omega^\mu{}_\mu = \eta^{\mu\alpha}\omega_{\alpha\mu} は対称テンソル η\eta と反対称テンソル ω\omega の縮約なので 00 です。L\mathcal{L} はスカラーなので L(ϕ′(x′),∂′ϕ′(x′))=L(ϕ(x),∂ϕ(x))\mathcal{L}(\phi'(x'),\partial'\phi'(x')) = \mathcal{L}(\phi(x),\partial\phi(x)) であり、Kμ=0K^\mu = 0 が取れます。よって

jμ=−TμνXν=−Tμν ωνρ xρ=−Tμα ωαρ xρj^\mu = -T^\mu{}_\nu X^\nu = -T^\mu{}_\nu\, \omega^\nu{}_\rho\, x^\rho = -T^{\mu\alpha}\,\omega_{\alpha\rho}\, x^\rho

(Tμνηνα=TμαT^\mu{}_\nu \eta^{\nu\alpha} = T^{\mu\alpha} を使いました)。ω\omega の反対称性を使って明示的に反対称化すると

jμ=−12ωαρ(xρTμα−xαTμρ)=12 ωαρ Mμαρ.j^\mu = -\frac{1}{2}\omega_{\alpha\rho}\big( x^\rho T^{\mu\alpha} - x^\alpha T^{\mu\rho} \big) = \frac{1}{2}\,\omega_{\alpha\rho}\, M^{\mu\alpha\rho} .

ωαρ\omega_{\alpha\rho} は任意の反対称定数行列なので、定理 6.2 の結論 ∂μjμ=0\partial_\mu j^\mu = 0 は各 (α,ρ)(\alpha,\rho) について ∂μMμαρ=0\partial_\mu M^{\mu\alpha\rho} = 0 を意味します。

最後の主張を示します。∂μxα=δμα\partial_\mu x^\alpha = \delta^\alpha_\mu とライプニッツ則から

∂μMμαρ=Tαρ−Tρα+xα ∂μTμρ−xρ ∂μTμα.\partial_\mu M^{\mu\alpha\rho} = T^{\alpha\rho} - T^{\rho\alpha} + x^\alpha\,\partial_\mu T^{\mu\rho} - x^\rho\,\partial_\mu T^{\mu\alpha} .

§6.3 で示した ∂μTμν=0\partial_\mu T^{\mu\nu} = 0 により後ろの 2 項が消えるので、∂μMμαρ=Tαρ−Tρα=0\partial_\mu M^{\mu\alpha\rho} = T^{\alpha\rho} - T^{\rho\alpha} = 0 です。

MμαρM^{\mu\alpha\rho} の空間成分から Ji=12ϵijk∫d3x M0jkJ^i = \frac{1}{2}\epsilon^{ijk}\int d^3x\, M^{0jk} を作れば、これが通常の角運動量です。r×p\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{p} の場の理論版になっていることが M0jk=xjT0k−xkT0jM^{0jk} = x^j T^{0k} - x^k T^{0j} から読み取れます。

注意 6.10(スピンを持つ場では正準テンソルは対称にならない)

命題 6.9 の議論はスカラー場に固有のものです。ベクトル場やスピノル場ではローレンツ変換のもとで場の成分同士が混ざるので Fa≠0F_a \ne 0 となり、カレントに「スピン部分」SμαρS^{\mu\alpha\rho} が加わって Mμαρ=xαTμρ−xρTμα+SμαρM^{\mu\alpha\rho} = x^\alpha T^{\mu\rho} - x^\rho T^{\mu\alpha} + S^{\mu\alpha\rho} の形になります。このとき ∂μM=0\partial_\mu M = 0 が要求するのは Tαρ−Tρα=−∂μSμαρT^{\alpha\rho} - T^{\rho\alpha} = -\partial_\mu S^{\mu\alpha\rho} であって、TT の対称性ではありません。

実際、電磁場の正準テンソルは対称でもゲージ不変でもありません。注意 6.4 の自由度を使ってスピン部分を吸収し、対称かつゲージ不変なテンソルに直す処方がベリンファンテ・ローゼンフェルドの改良で、その結果が一般相対論で重力源として現れる TμνT^{\mu\nu} と一致します。詳細は Weinberg の教科書などを参照してください。


7. ハミルトン形式へ:量子化の準備

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正準量子化に進むには、ラグランジュ形式からハミルトン形式に移る必要があります。ここは時間を特別扱いする段階なので、ローレンツ共変性は目に見えなくなります(理論としては保たれています)。

定義 7.1(共役運動量密度とハミルトニアン密度)↗

場 ϕa\phi_a に共役な運動量密度を

πa(x):=∂L∂ϕ˙a=π0a(x)\pi_a(x) := \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial \dot\phi_a} = \pi^0{}_a(x)

で定めます。ϕ˙a\dot\phi_a を πa\pi_a で解けると仮定して(ルジャンドル変換が可能であるとして)、ハミルトニアン密度を

H:=πaϕ˙a−L\mathcal{H} := \pi_a \dot\phi_a - \mathcal{L}

と定め、H:=∫d3x HH := \int d^3x\ \mathcal{H} をハミルトニアンと呼びます。

定義 6.5 と見比べると H=T00=T00\mathcal{H} = T^0{}_0 = T^{00} であり、H=P0H = P^0 です。つまりハミルトニアンは時空並進対称性のネーター電荷の時間成分にほかなりません。「エネルギーが保存するのは時間並進対称性のため」という命題が、場の理論でもそのまま成り立ちます。

クライン・ゴルドン場では π=ϕ˙\pi = \dot\phi なので

H=ϕ˙2−LKG=12π2+12(∇ϕ)2+12m2ϕ2\mathcal{H} = \dot\phi^2 - \mathcal{L}_{\mathrm{KG}} = \frac{1}{2}\pi^2 + \frac{1}{2}(\nabla\phi)^2 + \frac{1}{2}m^2\phi^2

となり、例 6.6 の T00T^{00} と一致します。∇ϕ\nabla\phi の項は隣接する点の値の差を罰する項で、例 3.1 のばねの弾性エネルギーがそのまま残ったものだと読めます。

同時刻ポアソン括弧は、有限自由度の {qi,pj}=δij\{q_i, p_j\} = \delta_{ij} を連続添字に読み替えて

{ϕa(t,x), πb(t,y)}=δab δ3(x−y),{ϕa(t,x), ϕb(t,y)}={πa(t,x), πb(t,y)}=0\{\phi_a(t,\boldsymbol{x}),\, \pi_b(t,\boldsymbol{y})\} = \delta_{ab}\,\delta^3(\boldsymbol{x} - \boldsymbol{y}), \qquad \{\phi_a(t,\boldsymbol{x}),\, \phi_b(t,\boldsymbol{y})\} = \{\pi_a(t,\boldsymbol{x}),\, \pi_b(t,\boldsymbol{y})\} = 0

で定義されます。クロネッカーのデルタがディラックのデルタ関数になったのが唯一の変更点です(ハミルトン形式の力学、正準変換とポアソン括弧)。

次章では、この括弧を { , }→−i[ , ]\{\ ,\ \} \to -i[\ ,\ ] で交換子に置き換えます。すなわち

[ϕ^(t,x), π^(t,y)]=i δ3(x−y)[\hat\phi(t,\boldsymbol{x}),\, \hat\pi(t,\boldsymbol{y})] = i\,\delta^3(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{y})

を課すのが スカラー場の正準量子化(実スカラー場の正準量子化(定義 3.1)[スカラー場の正準量子化])です。一方、時間を特別扱いせずに作用 S[ϕ]S[\phi] をそのまま使う道が 経路積分量子化 です。どちらの道を通るにせよ、出発点は本章で作った L\mathcal{L} であり、そこに込めた対称性が量子論に受け継がれます(あるいは、量子効果によって破れます。これがアノマリーです)。


演習 8.1難

電磁場のラグランジアン密度

L=−14FμνFμν−AμJμ,Fμν:=∂μAν−∂νAμ\mathcal{L} = -\frac{1}{4}F_{\mu\nu}F^{\mu\nu} - A_\mu J^\mu, \qquad F_{\mu\nu} := \partial_\mu A_\nu - \partial_\nu A_\mu

を考えます(JμJ^\mu は与えられた外部電流で、AμA_\mu には依存しないとします)。基本場は 4 成分 AνA_\nu です。

  1. 定理 4.3 を適用して運動方程式を導いてください。
  2. 得られた式の ν=0\nu = 0 成分が、ガウスの法則になっていることを確かめてください。
解答

1. まず場そのものによる微分は、FμνF_{\mu\nu} が AA の微分だけを含むことから

∂L∂Aν=−Jν.\frac{\partial \mathcal{L}}{\partial A_\nu} = -J^\nu .

次に ∂μAν\partial_\mu A_\nu による微分です。Fαβ=∂αAβ−∂βAαF_{\alpha\beta} = \partial_\alpha A_\beta - \partial_\beta A_\alpha より

∂Fαβ∂(∂μAν)=δαμδβν−δανδβμ\frac{\partial F_{\alpha\beta}}{\partial(\partial_\mu A_\nu)} = \delta^\mu_\alpha \delta^\nu_\beta - \delta^\nu_\alpha \delta^\mu_\beta

です。よって連鎖律から

∂∂(∂μAν)(FαβFαβ)=2Fαβ(δαμδβν−δανδβμ)=2(Fμν−Fνμ)=4Fμν\frac{\partial}{\partial(\partial_\mu A_\nu)}\big( F_{\alpha\beta}F^{\alpha\beta} \big) = 2F^{\alpha\beta}\big( \delta^\mu_\alpha\delta^\nu_\beta - \delta^\nu_\alpha\delta^\mu_\beta \big) = 2\big( F^{\mu\nu} - F^{\nu\mu} \big) = 4F^{\mu\nu}

(最後に FF の反対称性を使いました)。したがって

πμ(ν)=∂L∂(∂μAν)=−14⋅4Fμν=−Fμν.\pi^\mu{}_{(\nu)} = \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu A_\nu)} = -\frac{1}{4}\cdot 4 F^{\mu\nu} = -F^{\mu\nu} .

オイラー・ラグランジュ方程式 ∂μ(∂L/∂(∂μAν))−∂L/∂Aν=0\partial_\mu\big(\partial\mathcal{L}/\partial(\partial_\mu A_\nu)\big) - \partial\mathcal{L}/\partial A_\nu = 0 に代入すると

−∂μFμν+Jν=0⟺∂μFμν=Jν.-\partial_\mu F^{\mu\nu} + J^\nu = 0 \qquad\Longleftrightarrow\qquad \partial_\mu F^{\mu\nu} = J^\nu .

これがマクスウェル方程式の非斉次な 2 本(ガウスの法則とアンペール・マクスウェルの法則)です。斉次な 2 本(磁束の非存在とファラデーの法則)は F=dAF = dA という定義から恒等式として従うので、変分原理からは出てきません。

2. Aμ=(φ,A)A^\mu = (\varphi, \boldsymbol{A}) とすると Aμ=(φ,−A)A_\mu = (\varphi, -\boldsymbol{A}) で、F0i=∂0Ai−∂iA0=−∂tAi−∂iφ=EiF_{0i} = \partial_0 A_i - \partial_i A_0 = -\partial_t A^i - \partial_i\varphi = E^i です(E=−∇φ−∂tA\boldsymbol{E} = -\nabla\varphi - \partial_t\boldsymbol{A})。添字を上げると F0i=η00ηiiF0i=−EiF^{0i} = \eta^{00}\eta^{ii}F_{0i} = -E^i、つまり Fi0=EiF^{i0} = E^i です。F00=0F^{00} = 0(反対称性)に注意して ν=0\nu = 0 成分を書くと

∂μFμ0=∂0F00+∂iFi0=∇⋅E=J0=ρ\partial_\mu F^{\mu 0} = \partial_0 F^{00} + \partial_i F^{i0} = \nabla\cdot\boldsymbol{E} = J^0 = \rho

となり、ガウスの法則が得られます。

演習 8.2標準

質量ゼロの実スカラー場 L0=12∂μϕ ∂μϕ\mathcal{L}_0 = \frac{1}{2}\partial_\mu\phi\,\partial^\mu\phi を考えます。

  1. 定数 cc による平行移動 ϕ′(x)=ϕ(x)+εc\phi'(x) = \phi(x) + \varepsilon c(時空座標は動かさない)が 定義 6.1 の意味の対称性であることを確かめ、ネーターカレントを求めてください。また、それが保存することを運動方程式から直接確認してください。
  2. 質量項 −12m2ϕ2-\frac{1}{2}m^2\phi^2(m≠0m \ne 0)を加えると、この変換はもはや対称性ではないことを示してください。
解答

1. Xμ=0X^\mu = 0、F=cF = c です。L0\mathcal{L}_0 は ϕ\phi そのものを含まず ∂μϕ\partial_\mu\phi しか含みません。∂μ(ϕ+εc)=∂μϕ\partial_\mu(\phi + \varepsilon c) = \partial_\mu\phi ですから L0\mathcal{L}_0 は厳密に不変で、Kμ=0K^\mu = 0 が取れます。座標を動かさないのでヤコビアンは 11 です。

πμ=∂μϕ\pi^\mu = \partial^\mu\phi なので、定理 6.2 より

jμ=πμF=c ∂μϕ.j^\mu = \pi^\mu F = c\,\partial^\mu\phi .

保存の直接確認は ∂μjμ=c ∂μ∂μϕ=c □ϕ=0\partial_\mu j^\mu = c\,\partial_\mu\partial^\mu\phi = c\,\Box\phi = 0 です。最後の等号は m=0m = 0 のクライン・ゴルドン方程式そのものです。対応する電荷は Q=c∫d3x ϕ˙Q = c\int d^3x\,\dot\phi で、これは場の「平均的な速度」が変わらないことを述べています。

2. L=L0−12m2ϕ2\mathcal{L} = \mathcal{L}_0 - \frac{1}{2}m^2\phi^2 に変換を施すと

L′−L=−12m2[(ϕ+εc)2−ϕ2]=−ε m2c ϕ+O(ε2)\mathcal{L}' - \mathcal{L} = -\frac{1}{2}m^2\big[ (\phi + \varepsilon c)^2 - \phi^2 \big] = -\varepsilon\, m^2 c\, \phi + O(\varepsilon^2)

です。O(ε)O(\varepsilon) の項が −m2c ϕ-m^2 c\,\phi となりますが、これがある Kμ(ϕ,x)K^\mu(\phi, x) の全微分 ∂μKμ\partial_\mu K^\mu に等しくなることはありません。実際、KμK^\mu の全微分は連鎖律で

∂μKμ=∂Kμ∂ϕ ∂μϕ+(∂μKμ)expl\partial_\mu K^\mu = \frac{\partial K^\mu}{\partial \phi}\,\partial_\mu\phi + \big( \partial_\mu K^\mu \big)_{\mathrm{expl}}

と分解されます。第 2 項は ϕ\phi を固定して xx への陽な依存性だけを微分したものです。等式 −m2c ϕ=∂μKμ-m^2c\,\phi = \partial_\mu K^\mu が任意の場の配位について成り立つとしましょう。左辺は ∂μϕ\partial_\mu\phi を含まないのに右辺の第 1 項は ∂μϕ\partial_\mu\phi に比例するので、∂Kμ/∂ϕ=0\partial K^\mu/\partial\phi = 0、すなわち KμK^\mu は xx だけの関数でなければなりません。しかしそのとき右辺は ϕ\phi に依存しないのに左辺は ϕ\phi に比例するので、m2c=0m^2 c = 0、つまり m=0m = 0 でなければ矛盾します。

よって m≠0m \ne 0 ではシフト対称性は破れます。ちなみに、質量ゼロのスカラー場がシフト対称性を持つことは、南部・ゴールドストーン粒子が質量を持てない理由と深く関係しています。

演習 8.3標準

クライン・ゴルドン場のエネルギー・運動量テンソル

Tμν=∂μϕ ∂νϕ−ημν[12∂αϕ ∂αϕ−12m2ϕ2]T^{\mu\nu} = \partial^\mu\phi\,\partial^\nu\phi - \eta^{\mu\nu}\left[ \frac{1}{2}\partial_\alpha\phi\,\partial^\alpha\phi - \frac{1}{2}m^2\phi^2 \right]

について、ネーターの定理を経由せず直接計算で ∂μTμν=0\partial_\mu T^{\mu\nu} = 0 を確かめてください(ϕ\phi はクライン・ゴルドン方程式の解とします)。

解答

ライプニッツ則で各項を微分します。

∂μ(∂μϕ ∂νϕ)=(□ϕ) ∂νϕ+∂μϕ ∂μ∂νϕ.\partial_\mu\big( \partial^\mu\phi\,\partial^\nu\phi \big) = (\Box\phi)\,\partial^\nu\phi + \partial^\mu\phi\,\partial_\mu\partial^\nu\phi .

第 2 項では ημν∂μ=∂ν\eta^{\mu\nu}\partial_\mu = \partial^\nu なので

−∂μ(ημν[12∂αϕ ∂αϕ−12m2ϕ2])=−∂ν[12∂αϕ ∂αϕ]+12m2 ∂ν(ϕ2)=−∂αϕ ∂ν∂αϕ+m2ϕ ∂νϕ.-\partial_\mu\left( \eta^{\mu\nu}\left[ \frac{1}{2}\partial_\alpha\phi\,\partial^\alpha\phi - \frac{1}{2}m^2\phi^2 \right] \right) = -\partial^\nu\left[ \frac{1}{2}\partial_\alpha\phi\,\partial^\alpha\phi \right] + \frac{1}{2}m^2\,\partial^\nu(\phi^2) = -\partial_\alpha\phi\,\partial^\nu\partial^\alpha\phi + m^2\phi\,\partial^\nu\phi .

いま ∂μϕ ∂μ∂νϕ\partial^\mu\phi\,\partial_\mu\partial^\nu\phi と ∂αϕ ∂ν∂αϕ\partial_\alpha\phi\,\partial^\nu\partial^\alpha\phi は、和を取る添字を μ→α\mu \to \alpha と付け替え、ϕ\phi が C2C^2 級であることから偏微分の順序が交換できることを使えば同じものです。したがってこの 2 つは相殺し、

∂μTμν=(□ϕ) ∂νϕ+m2ϕ ∂νϕ=(□ϕ+m2ϕ) ∂νϕ=0.\partial_\mu T^{\mu\nu} = (\Box\phi)\,\partial^\nu\phi + m^2\phi\,\partial^\nu\phi = \big( \Box\phi + m^2\phi \big)\,\partial^\nu\phi = 0 .

最後の等号がクライン・ゴルドン方程式です。運動方程式を使ったのは最後の 1 行だけで、それ以外は恒等変形だったことに注意してください。

演習 8.4易

dd 次元時空(時間 1 次元 + 空間 d−1d-1 次元)で自然単位系を取ります。

  1. 実スカラー場 ϕ\phi の質量次元 [ϕ][\phi] を求めてください。
  2. 相互作用項 −λnn!ϕn-\dfrac{\lambda_n}{n!}\phi^n の結合定数の質量次元 [λn][\lambda_n] を dd と nn で表し、d=4d = 4 と d=2d = 2 の場合に何が起こるか述べてください。
解答

1. 作用 S=∫ddx LS = \int d^dx\,\mathcal{L} が無次元で [ddx]=−d[d^dx] = -d ですから [L]=d[\mathcal{L}] = d です。運動項 ∂μϕ ∂μϕ\partial_\mu\phi\,\partial^\mu\phi の次元は 2[∂]+2[ϕ]=2+2[ϕ]2[\partial] + 2[\phi] = 2 + 2[\phi] なので

2+2[ϕ]=d  ⟺  [ϕ]=d−22.2 + 2[\phi] = d \iff [\phi] = \frac{d-2}{2} .

2. [λn]+n[ϕ]=d[\lambda_n] + n[\phi] = d より

[λn]=d−n d−22.[\lambda_n] = d - n\,\frac{d-2}{2} .

d=4d = 4 では [λn]=4−n[\lambda_n] = 4 - n です。n=3n = 3 で 11(質量の次元を持つ結合)、n=4n = 4 で 00(無次元)、n≥5n \ge 5 で負になります。負の次元を持つ結合は高エネルギーで効きが強くなり、くりこみ不可能になります(注意 5.3)。

d=2d = 2 では [ϕ]=0[\phi] = 0、すなわち場そのものが無次元です。よって [λn]=2[\lambda_n] = 2 がすべての nn について成り立ち、ϕ\phi の任意の関数 V(ϕ)V(\phi) をポテンシャルとして許せます。サイン・ゴルドン模型 V(ϕ)∝cos⁡(βϕ)V(\phi) \propto \cos(\beta\phi) のような、ϕ\phi の非多項式関数を含む理論が 2 次元で研究されるのはこのためです。


  • M. E. Peskin and D. V. Schroeder, An Introduction to Quantum Field Theory, Westview Press, 1995 — 第 2 章「The Klein-Gordon Field」の前半に、本記事とほぼ同じ道筋(ラグランジアン密度、オイラー・ラグランジュ方程式、ネーターの定理、クライン・ゴルドン場)が簡潔にまとめられています。
  • H. Goldstein, C. Poole and J. Safko, Classical Mechanics, 3rd edition, Addison-Wesley, 2002 — 第 13 章。連成振動子の連続極限から場のラグランジュ形式・ハミルトン形式までを、量子論とは独立に扱っています。例 3.1 はこの章の議論に沿ったものです。
  • S. Weinberg, The Quantum Theory of Fields, Volume I: Foundations, Cambridge University Press, 1995 — 第 7 章「The Canonical Formalism」。ネーターの定理、エネルギー・運動量テンソルの改良(ベリンファンテ・ローゼンフェルド)について、本記事より踏み込んだ扱いがあります。
  • 九後汰一郎『ゲージ場の量子論 I』培風館、1989 — 第 1 章。場の古典論とネーターの定理を日本語で丁寧に扱った標準的な文献です。
  • E. Noether, “Invariante Variationsprobleme”, Nachrichten von der Gesellschaft der Wissenschaften zu Göttingen, Mathematisch-Physikalische Klasse (1918), 235–257. 英訳: M. A. Tavel, “Invariant Variation Problems”, arXiv:physics/0503066.
  • H. Yukawa, “On the Interaction of Elementary Particles. I”, Proceedings of the Physico-Mathematical Society of Japan 17 (1935), 48–57. 例 5.2 の計算の原典です。

Appendix: 汎関数微分による書き換え

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汎関数微分の定義。 本文では変分を ε\varepsilon についての微分として扱いましたが、場の理論の文献では汎関数微分の記法が広く使われます。汎関数 S[ϕ]S[\phi] に対して、Ω\Omega にコンパクトな台を持つ任意の滑らかな ηa\eta_a について

ddε∣0S[ϕ+εη]=∫Ωd4x δSδϕa(x) ηa(x)\left.\frac{d}{d\varepsilon}\right|_{0} S[\phi + \varepsilon\eta] = \int_\Omega d^4x\ \frac{\delta S}{\delta \phi_a(x)}\,\eta_a(x)

が成り立つとき、被積分関数の係数 δSδϕa(x)\dfrac{\delta S}{\delta\phi_a(x)} を汎関数微分と呼びます。補題 4.2 により、この係数は(連続関数の範囲で)一意に定まります。

オイラー・ラグランジュ方程式の書き換え。 定理 4.3 の証明で得た式は、この記法で

δSδϕa(x)=∂L∂ϕa−∂μ ⁣(∂L∂(∂μϕa))\frac{\delta S}{\delta \phi_a(x)} = \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi_a} - \partial_\mu\!\left( \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\phi_a)} \right)

と書けます。したがって運動方程式は δSδϕa(x)=0\dfrac{\delta S}{\delta\phi_a(x)} = 0 という一行になります。有限自由度の ∂S∂qi=0\dfrac{\partial S}{\partial q_i} = 0 で添字 ii を連続変数 xx に置き換えた形であり、§3 の対応辞書の最後の行に対応します。

基本的な公式。 定義から直ちに

δϕa(x)δϕb(y)=δab δ4(x−y)\frac{\delta \phi_a(x)}{\delta \phi_b(y)} = \delta_{ab}\,\delta^4(x - y)

が従います。実際、S[ϕ]=ϕa(x)S[\phi] = \phi_a(x)(xx を固定して場の値を返す汎関数)に対して上の定義式を適用すると、左辺は ηa(x)\eta_a(x) であり、右辺が ∫d4y δϕa(x)δϕb(y)ηb(y)\int d^4y\,\frac{\delta\phi_a(x)}{\delta\phi_b(y)}\eta_b(y) ですから、両者が任意の η\eta で一致するにはデルタ関数でなければなりません。この公式は経路積分でシュウィンガー・ダイソン方程式を導くときに繰り返し使われます。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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