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くりこみ理論入門:ループ発散の正則化から、くりこみ群の流れまで

前提:経路積分量子化:時間分割から生成汎関数とファインマン則へ

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  • 摂動計算に現れる紫外発散は、理論が破綻していることの証拠ではありません。ラグランジアンに書き込んだ「裸のパラメータ」と、実験で測る「くりこまれたパラメータ」を取り違えたことの帰結です。
  • 手続きは 3 段階です。(1) カットオフ Λ\Lambda などで積分を正則化し、(2) 裸のパラメータを Λ\Lambda の関数として選び直し、(3) 有限個のくりこみ条件で観測量に合わせる。これで Λ\Lambda \to \infty の極限が取れます。
  • 有限個の条件で済むかどうかは、結合定数の質量次元だけで判定できます。4 次元 ϕ4\phi^4 理論では 1PI 図の表面的発散次数が D=4ED = 4 - E となり、発散するのは外線 E=2E = 2E=4E = 4 の 2 種類だけです(系 5.3)。
  • くりこみ条件は必ず基準スケール μ\mu を含むので、くりこまれた結合は μ\mu に依存します。この依存性を支配するのがくりこみ群方程式(定理 6.2)とベータ関数です。
  • 4 次元 ϕ4\phi^4 理論では β(λ)=3λ2/(16π2)>0\beta(\lambda) = 3\lambda^2/(16\pi^2) > 0 で、高エネルギーほど結合が強くなります。QCD はこの符号が逆転し、漸近的に自由になります。
  • くりこみ不可能な理論も、あるカットオフ以下でだけ通用する近似理論(有効場の理論)として完全な予言能力を持ちます。弱い相互作用のフェルミ理論がその典型です。

1. 動機 — 無限大はどこから来たのか

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場の量子論の摂動論は、最低次では信じがたいほどうまく機能します。電子の異常磁気モーメントは木レベルで g=2g = 2、1 ループのシュウィンガー項を足すと

g22=α2π=0.0011614\frac{g-2}{2} = \frac{\alpha}{2\pi} = 0.0011614\ldots

となり、実測値 0.001159650.00115965\ldots と 3 桁一致します。ところが同じ 1 ループの範囲で電子の自己エネルギーを計算しようとすると、ループ運動量 kk についての積分が k|k| \to \infty で発散します。摂動級数の第 2 項が無限大なのですから、これは小さな技術的不都合ではありません。

この問題は 1930 年に J. R. オッペンハイマーが指摘して以来、四半世紀にわたって場の量子論の正当性そのものを脅かしました。転機は実験から来ます。1947 年、ラムとレザフォードは水素原子の 2s1/22s_{1/2}2p1/22p_{1/2} の縮退が約 1000 MHz1000\ \mathrm{MHz} 破れていることを測定しました(現在の値は約 1057 MHz1057\ \mathrm{MHz})。ディラック方程式はこの 2 準位を厳密に縮退させるので、これは輻射補正の直接の証拠です。ベーテはこの直後、自由電子の自己エネルギーを束縛電子のそれから差し引くという処方で、非相対論的近似のもとに 1040 MHz1040\ \mathrm{MHz} という値を得ました。差を取ると発散が消えたのです。

ここに、くりこみの発想の核心があります。発散するのは「観測できない量」であって、「観測できる量の差」ではない。1947 年から 1949 年にかけて、朝永振一郎、シュウィンガー、ファインマンがこの処方を相対論的に共変な形に整え、ダイソンが摂動論の全次数で整合的に実行できることを示しました。

1.1. 古典物理にも同じことが起こる

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無限大が量子論に特有の病だと考えるのは誤りです。古典電磁気学で半径 aa の一様帯電球の静電エネルギーは

U=35e24πε0aU = \frac{3}{5}\cdot\frac{e^2}{4\pi\varepsilon_0 a}

で、点電荷の極限 a0a \to 0 で発散します。このエネルギーは U/c2U/c^2 だけ電子の慣性質量に寄与するので、電子の質量は発散するはずです。しかし実験室で測れるのは「裸の質量 ++ 電磁的自己エネルギー」という和だけであり、その和は 0.511 MeV/c20.511\ \mathrm{MeV}/c^2 という有限値です。二つの項を個別に問うこと自体に意味がありません。

もっと日常的な例もあります。密度 ρ\rho の非粘性流体の中で半径 aa の球を加速すると、球は自分の質量 mm ではなく

meff=m+12ρ43πa3m_{\text{eff}} = m + \tfrac{1}{2}\rho\cdot\tfrac{4}{3}\pi a^3

という有効質量を持つように振る舞います(付加質量)。流体中の実験者が測るのは常に meffm_{\text{eff}} であって mm ではありません。mm は「流体を取り去ったら測れるはずの量」ですが、真空という流体は取り去れません。

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