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水素原子:中心力場のシュレーディンガー方程式から n, l, m が現れるまで

前提:1次元の簡単な系:無限井戸・トンネル効果・調和振動子

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  • ポテンシャルが原点からの距離 rr だけの関数であるとき、ハミルトニアン HH、角運動量の大きさの 22L2\boldsymbol{L}^2、その zz 成分 LzL_z は互いに可換になります。したがって 33 つの同時固有関数を ψ=R(r)Y(θ,φ)\psi = R(r)\,Y(\theta,\varphi) の形に分離できます。
  • 角度部分はポテンシャルの形に一切依らず決まります。波動関数が一価かつ有界であることだけを要求すると、L2\boldsymbol{L}^2 の固有値は 2l(l+1)\hbar^2 l(l+1)l=0,1,2,l = 0,1,2,\ldots)、LzL_z の固有値は m\hbar mm=l,l+1,,lm = -l,-l+1,\ldots,l)に量子化されます。
  • 動径部分は u=rRu = rR と置き換えると、有効ポテンシャル Veff(r)=V(r)+2l(l+1)/(2μr2)V_{\mathrm{eff}}(r) = V(r) + \hbar^2 l(l+1)/(2\mu r^2) を持つ 1 次元の問題にそのまま帰着します。第 2 項が遠心力障壁です。
  • クーロン場 V=k/rV = -k/r では、べき級数解が有限次で切れることが束縛状態の条件になり、そこから n=nr+l+1l+1n = n_r + l + 1 \ge l+1 という整数が現れます。エネルギーは En=μk2/(22n2)=13.60eV/n2E_n = -\mu k^2/(2\hbar^2 n^2) = -13.60\,\mathrm{eV}/n^2 で、ll にも mm にも依りません。
  • 準位 EnE_n の縮退度は l=0n1(2l+1)=n2\sum_{l=0}^{n-1}(2l+1) = n^2 です。mm についての縮退は回転対称性の帰結ですが、ll についての縮退は 1/r1/r ポテンシャルに固有の「隠れた対称性」(ラプラス–ルンゲ–レンツベクトル)から来ます。

1. 動機:スペクトル線の規則性から波動方程式へ

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水素の放電管が出す光をプリズムで分けると、連続でない、とびとびの明るい線が並びます。1885 年、バーゼルの高校教師ヨハン・バルマーは、可視域に見える 4 本の線の波長 λ\lambda

λ=Bn2n24,n=3,4,5,6,B364.6 nm\lambda = B\,\frac{n^2}{n^2 - 4},\qquad n = 3,4,5,6,\qquad B \approx 364.6\ \mathrm{nm}

という 1 つの式にきれいに乗ることに気づきました。のちにリュードベリはこれを一般化し、水素のすべての線が

1λ=RH(1n121n22),n1<n2\frac{1}{\lambda} = R_{\mathrm{H}}\left(\frac{1}{n_1^{2}} - \frac{1}{n_2^{2}}\right),\qquad n_1 < n_2

n1,n2n_1, n_2 は正の整数)と書けることを見出します。整数の 2 乗の逆数の差。これは明らかに何かの「引き算」であり、1913 年にボーアは、原子のエネルギーが En1/n2E_n \propto -1/n^2 という離散値しか取らず、光子はその差として放出されると考えました(量子力学の誕生、とくに ボーア模型の水素原子(例 6.6)[量子力学の誕生])。

しかしボーアの理論は、電子が古典的な円軌道を描くと仮定したうえで、角運動量が \hbar の整数倍になるという条件を外から手で課したものでした。なぜその条件なのかは説明できず、ヘリウム以降では数値も合わず、そもそも「軌道」という描像は不確定性関係と両立しません。

1926 年、シュレーディンガーは最初の論文でこの問題を作り直しました。エネルギーの離散性を仮定するのではなく、偏微分方程式の固有値問題として自然に出てくるようにしたのです。境界条件(波動関数が至るところ一価・有界で、22 乗可積分であること)を課すと、解が存在する EE が自動的にとびとびになります。1 次元の井戸型ポテンシャルで見たのと同じ仕組みです(1 次元の簡単な系無限井戸のスペクトル(定理 3.1)[1次元の簡単な系])。

この記事では、その計算を最後まで実行します。目標は数値 13.6 eV13.6\ \mathrm{eV} を出すことだけではありません。nn, ll, mm という 3 つの整数が、それぞれ計算のどの段階で、どんな要請から現れるのかを見分けることが本題です。

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