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ストークスの定理:微分と境界の双対性

前提:ベクトル場と微分形式:切断・外積代数・外微分

生 Markdown
  • nn 次元多様体の上で nn 形式を積分するには向きが必要です。向き付け可能性は「至るところ消えない nn 形式が存在すること」と「座標変換のヤコビ行列式がつねに正となるアトラスが取れること」の二つの言い換えを持ちます。
  • 境界付き多様体 MM の境界 M\partial M(n1)(n-1) 次元多様体であり、MM の向きから「外向きベクトルを先頭に置く」という規約で M\partial M の向きが一意に決まります。
  • 積分は「1 つのチャートに台を持つ形式の積分」を定義し、1 の分割で貼り合わせて作ります。座標変換のヤコビ行列式が正であることが、この貼り合わせが矛盾しない理由です。
  • 一般化されたストークスの定理は、MM を向き付けられた nn 次元境界付き多様体、ω\omegaコンパクトな台を持つ CC^\infty(n1)(n-1) 形式とするとき Mdω=Mjω\int_M d\omega = \int_{\partial M} j^{*}\omegajj は包含写像)と述べます。外微分 dd と境界作用素 \partial が積分を仲立ちとして双対であることを言っています。
  • 微分積分学の基本定理、グリーンの定理、ガウスの発散定理、古典的ストークスの回転定理は、n=1,2,3n = 1, 2, 3 と形式の取り方を指定した特別な場合です。
  • 系として「円板から球面への CC^\infty 級レトラクションは存在しない」が出ます。積分定理が位相的な結論を導く典型例です。

微分積分学を一通り学ぶと、よく似た形の定理が三つ四つ並ぶことに気づきます。

abf(x)dx=f(b)f(a),\int_a^b f'(x)\,dx = f(b) - f(a), D(QxPy)dxdy=D(Pdx+Qdy),\iint_D \left(\frac{\partial Q}{\partial x} - \frac{\partial P}{\partial y}\right) dx\,dy = \oint_{\partial D} (P\,dx + Q\,dy), ΩdivXdV=ΩX,νdA.\iiint_\Omega \operatorname{div} \boldsymbol{X}\,dV = \iint_{\partial \Omega} \langle \boldsymbol{X}, \boldsymbol{\nu}\rangle\,dA .

どれも「領域の内部での微分の積分」が「境界での値の積分」に等しい、と言っています。左辺には微分が現れ、右辺には境界が現れる。次元も、積分の種類も、微分の種類(ff'、回転、発散)も違うのに、形だけが執拗に一致します。

19 世紀にはこれらは別々の定理として発見されました。グリーンは 1828 年にポテンシャル論の論文で二次元の公式を、オストログラツキーとガウスは発散定理を、ケルヴィンはストークスに宛てた 1850 年の手紙で回転定理を書いています(後者はケンブリッジの試験問題として出題されたため「ストークスの定理」と呼ばれるようになりました)。統一が完成したのはエリー・カルタンが微分形式と外微分を整備した後、20 世紀に入ってからです。

統一の鍵は、次の三つを認めることです。

  1. 積分される対象は「関数」ではなく kk 形式である。abfdx\int_a^b f\,dxdxdx は記号ではなく 1 形式そのものです。
  2. 三種類の微分(勾配・回転・発散)は、次数を 1 つ上げる唯一の作用素 dd の、n=3n = 3 における三つの化身にすぎない。
  3. 「境界を取る」操作 \partial と「外微分を取る」操作 dd は、積分という双一次形式に関して互いに随伴である。

三つ目が本記事の主題です。記号で書けば

dω,M=ω,M,α,N:=Nα.\langle d\omega, M\rangle = \langle \omega, \partial M\rangle, \qquad \langle \alpha, N\rangle := \int_N \alpha .

この式が意味を持つためには、多様体の上で形式を積分する方法を定義しなければなりません。ところが fdx\int f\,dxfdy\int f\,dy を座標変換で結ぶには重積分の変数変換公式が要り、そこにはヤコビ行列式の絶対値が現れます。絶対値を外して符号を統一する仕組み、それが向き付けです。したがって話は順に、向き付け、境界付き多様体、積分の構成、そして定理本体、という順序になります。

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