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連続関数と一様連続性:δ が点に依存しないとはどういうことか

前提:実数の完備性とコーシー列:解析学を支える「穴のなさ」

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  • 連続性の定義では、ε\varepsilon に応じて選ぶ δ\delta点ごとに違ってよい。この「点ごと」を外して δ\delta を定義域全体で共通に取れるようにした条件が一様連続性である。両者を分けるのは量化子 a\forall aδ\exists \delta の順序だけであり、それだけで成り立つ定理が大きく変わる。
  • 有界閉区間 [a,b][a,b] 上の連続関数は、有界であり、最大値と最小値を実際に取る。証明の要はボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理であり、その根拠は実数の完備性(連続性公理)である。
  • 中間値の定理は区間を二等分し続ける区間縮小法で証明できる。この定理は有理数体 Q\mathbb{Q} 上では偽であり、成立の根拠が完備性そのものであることがはっきりする。
  • ハイネ・カントールの定理:有界閉区間上の連続関数は一様連続である。「有界」はボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理を使うために、「閉」は極限点が定義域に留まるために必要で、どちらを外しても反例が作れる。
  • 一様連続性はコーシー列をコーシー列に写す。これにより、開区間上の一様連続関数は閉区間上の連続関数へ一意に拡張でき、リーマン積分可能性や一様収束の議論の土台になる。

1. 動機:「連続」だけでは足りない場面

Section titled “1. 動機:「連続」だけでは足りない場面”

微分積分学では、連続性はまず「グラフがつながっている」という直観で扱われ、ε\varepsilon-δ\delta 論法はその直観を厳密に書き下すための道具として導入されます。実解析では立場が逆転します。定義そのものが研究対象になり、定義から何が言えて何が言えないかを、直観に頼らずに切り分けていきます。その最初の関門が、この記事の主題である「一様性」です。

素朴な疑問から始めましょう。ff が区間 II 上で連続だとします。すると「十分近い 2 点では ff の値も十分近い」と言いたくなります。ところが連続性の定義が保証しているのは、点 aa を 1 つ固定したうえでaa に十分近い xx では f(x)f(x)f(a)f(a) に近い」ことだけです。その「十分近い」の閾値 δ\delta は、aa ごとに違ってよいのです。aa を動かしたときに δ\delta がいくらでも小さくなってしまうなら、「II 全体でこれだけ近ければ大丈夫」という共通の δ\delta は取れません。

具体的に見ましょう。f(x)=1/xf(x) = 1/xI=(0,1]I = (0,1] 上で考えます。a=0.8a = 0.8 のあたりでは、ff の値を ε=0.3\varepsilon = 0.3 の範囲に収めるのに δ0.155\delta \approx 0.155 も許されます。しかし a=0.3a = 0.3 のあたりでは、同じ ε=0.3\varepsilon = 0.3 に対して δ0.0248\delta \approx 0.0248 しか取れません。aa00 に近づけると δ\delta00 に潰れていきます。したがって (0,1](0,1] 全体で通用する δ\delta は存在しません。

xyδ は狭いδ は広い高さ 2ε の帯高さ 2ε の帯(同じ高さ)
同じ ε に対して必要な δ が場所によって変わる例(定義域 (0,1] 上の 1/x)

歴史的にも、この違いは長いあいだ意識されませんでした。コーシーは 1821 年の『解析教程』で、連続関数からなる収束級数の和はふたたび連続になると述べています。この主張は反例をもち、正しい仮定は各点収束ではなく一様収束です(一様収束極限の連続性(定理 4.1)[関数列と一様収束])。同じ時期、コーシーが連続関数の積分可能性を論じたときには、δ\delta が点に依らないこと、すなわち一様連続性が暗黙に使われていたと指摘されています。「一様」という区別が概念として自立するのは 19 世紀半ば以降で、一様連続性を明示的に定式化し、有界閉区間上でそれが自動的に成り立つことを述べたのはハイネの 1872 年の論文だとされます(本質的な論法はディリクレやワイエルシュトラスの講義に遡ると考えられています)。

そこで本記事では、次の順序で議論を積み上げます。まず実数の完備性から区間縮小法とボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理を取り出し、それを使って有界閉区間上の連続関数の基本定理(有界性・最大値の原理・中間値の定理)を証明します。そのうえで一様連続性を定義し、ハイネ・カントールの定理を証明します。証明のたびに「完備性をどこで使ったか」を明示します。これは、微分積分学では省略されがちな部分であり、実解析の眼目でもあるからです。

2. 準備:実数の完備性から取り出す二つの道具

Section titled “2. 準備:実数の完備性から取り出す二つの道具”

この記事で前提にする実数の性質は、次の 1 つだけです。

連続性公理(上限の存在):空でなく上に有界な R\mathbb{R} の部分集合 AA は、上限 supA\sup A をもつ。すなわち AA の上界のうち最小のものが存在する。

上限の定義から、次の 2 つの性質がただちに従います。以後どちらも断りなく使います。M=supAM = \sup A とすると、(i) すべての xAx \in A に対し xMx \le M、(ii) 任意の η>0\eta > 0 に対し MηM - \eta は上界ではないので、x>Mηx > M - \eta なる xAx \in A が存在する。(ii) は「MM が上界のうち最小である」ことの言い換えです。

もう 1 つ、数列の極限について次の事実を使います。極限は順序を保ちます。すなわち、xnxx_n \to x かつすべての nnxn0x_n \le 0 ならば x0x \le 0 です。理由:もし x>0x > 0 なら、ε=x\varepsilon = x に対して十分大きい nnxnx<x|x_n - x| < x、したがって xn>0x_n > 0 となり仮定に反します。xn0x_n \ge 0 の場合も同様です。

完備性の様々な同値な形(単調有界列の収束、コーシー列の収束、上限の存在)については 実数の完備性とコーシー列、とりわけ 上限の存在(定理 4.2)[実数の完備性とコーシー列]コーシーの収束判定法(定理 7.3)[実数の完備性とコーシー列] を参照してください。ここでは、この記事で実際に使う 2 つの道具を、連続性公理から作り直しておきます。

補題 2.1区間縮小法

閉区間の列 In=[an,bn]I_n = [a_n, b_n]anbna_n \le b_nnN={1,2,}n \in \mathbb{N} = \lbrace 1, 2, \ldots \rbrace)が

I1I2I3,limn(bnan)=0I_1 \supseteq I_2 \supseteq I_3 \supseteq \cdots, \qquad \lim_{n \to \infty} (b_n - a_n) = 0

を満たすとする。このとき n=1In\bigcap_{n=1}^{\infty} I_n はちょうど 1 点からなる。その点を cc とすれば anca_n \to c かつ bncb_n \to c である。

証明(補題 2.1)

まず包含関係 In+1InI_{n+1} \subseteq I_n は、不等式 anan+1bn+1bna_n \le a_{n+1} \le b_{n+1} \le b_n と同値です。したがって (an)(a_n) は単調増加、(bn)(b_n) は単調減少です。

次に、任意の m,nm, n に対して anbma_n \le b_m が成り立ちます。実際 N=max(m,n)N = \max(m,n) とおけば、単調性から anaNbNbma_n \le a_N \le b_N \le b_m です。ゆえに集合 A={an:nN}A = \lbrace a_n : n \in \mathbb{N} \rbrace は空でなく、b1b_1 を上界にもちます。連続性公理より c=supAc = \sup A が存在します。

上限の性質 (i) からすべての nnanca_n \le c です。また各 bmb_mAA の上界なので、cc が最小の上界であることからすべての mmcbmc \le b_m です。両方を合わせると、すべての nnancbna_n \le c \le b_n、すなわち cnInc \in \bigcap_{n} I_n です。

一意性を示します。cnInc' \in \bigcap_n I_n とすると、c,cc, c' はともに [an,bn][a_n, b_n] に属するので ccbnan|c - c'| \le b_n - a_n がすべての nn で成り立ちます。仮定より右辺は 00 に収束するので、cc0|c - c'| \le 0、つまり c=cc' = c です。

最後に収束を示します。0canbnan00 \le c - a_n \le b_n - a_n \to 0 よりはさみうちで anca_n \to c、同様に 0bncbnan00 \le b_n - c \le b_n - a_n \to 0 より bncb_n \to c です。

補題 2.2ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理

有界な実数列 (xn)n1(x_n)_{n \ge 1}、すなわちある M>0M > 0 が存在してすべての nnxnM|x_n| \le M となる数列は、収束する部分列をもつ。

証明(補題 2.2)

区間を二等分し続けて、「xnx_n を無限個含む」という性質を保つ閉区間の列を作ります。

I1=[M,M]I_1 = [-M, M] とおきます。仮定よりすべての nnxnI1x_n \in I_1 なので、xnI1x_n \in I_1 となる添字 nn は無限個あります。帰納的に、Ik=[αk,βk]I_k = [\alpha_k, \beta_k] が「xnIkx_n \in I_k となる添字 nn が無限個ある」を満たすとします。中点 mk=(αk+βk)/2m_k = (\alpha_k + \beta_k)/2IkI_k[αk,mk][\alpha_k, m_k][mk,βk][m_k, \beta_k] に分けると、少なくとも一方は xnx_n を無限個含みます。なぜなら、両方が有限個しか含まないとすれば、和集合である IkI_k も有限個しか含まないことになり、帰納法の仮定に反するからです。無限個含む方を(両方なら左を)Ik+1I_{k+1} とします。

こうして I1I2I_1 \supseteq I_2 \supseteq \cdots かつ βkαk=2M/2k10\beta_k - \alpha_k = 2M/2^{k-1} \to 0 となります。補題 2.1 より、kIk={c}\bigcap_k I_k = \lbrace c \rbrace となる cc が存在します。

部分列を構成します。n1=1n_1 = 1 とします(x1I1x_1 \in I_1)。n1<n2<<nk1n_1 < n_2 < \cdots < n_{k-1} が取れたとき、IkI_kxnx_n を無限個含むので、nk>nk1n_k > n_{k-1} かつ xnkIkx_{n_k} \in I_k となる添字 nkn_k が存在します。すると xnkx_{n_k}cc はともに IkI_k に属するので

xnkcβkαk=2M2k1k0|x_{n_k} - c| \le \beta_k - \alpha_k = \frac{2M}{2^{k-1}} \xrightarrow[k \to \infty]{} 0

となり、xnkcx_{n_k} \to c です。

以下で証明する定理の依存関係をまとめておきます。すべての出発点が連続性公理であることを確認してください。

flowchart TD
A["実数の連続性公理:上に有界な空でない集合は上限をもつ"] --> B["区間縮小法"]
A --> C["コーシー列は収束する(完備性)"]
B --> D["ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理"]
D --> E["有界性定理"]
E --> F["最大値の原理"]
A --> F
B --> G["中間値の定理"]
D --> H["ハイネ・カントールの定理"]
C --> I["一様連続関数の連続拡張"]
H --> I
この記事で証明する定理の依存関係

3. 連続性の復習と点列による言い換え

Section titled “3. 連続性の復習と点列による言い換え”

定義 3.1連続性

IRI \subseteq \mathbb{R}f:IRf : I \to \mathbb{R}aIa \in I とする。

ε>0, δ>0, xI,xa<δ    f(x)f(a)<ε\forall \varepsilon > 0,\ \exists \delta > 0,\ \forall x \in I,\quad |x - a| < \delta \implies |f(x) - f(a)| < \varepsilon

が成り立つとき、ffaa連続であるという。II のすべての点で連続なとき、ffII 上連続であるという。

xI\forall x \in I と定義域を明示している点に注意してください。I=[a,b]I = [a,b] の端点でも、II の外の点は考えないので、この定義がそのまま片側からの連続性を意味します。ε\varepsilon-δ\delta 論法そのものの読み方については 極限と連続性 (ε-δ論法)点における連続性の定義(定義 5.1)[極限と連続性] を参照してください。

この定義で重要なのは量化子の順序です。δ\deltaε\varepsilon の後ろにあるので ε\varepsilon に依存してよく、さらに点 aa を固定した文の中にあるので aa にも依存してよいのです。δ=δ(ε,a)\delta = \delta(\varepsilon, a) と書くのが正確です。量化子の順序が主張の意味を変えることについては 数学の国語 - 集合と論理量化子の順序(注意 5.5)[数学の国語] も参照してください。

以下の証明では、連続性を数列の言葉に翻訳した形を繰り返し使います。

命題 3.2連続性の点列による特徴づけ

IRI \subseteq \mathbb{R}f:IRf : I \to \mathbb{R}aIa \in I とする。次の 2 条件は同値である。

  1. ffaa で連続である。
  2. II の任意の点列 (xn)(x_n) に対し、xnax_n \to a ならば f(xn)f(a)f(x_n) \to f(a) である。
証明(命題 3.2)

(1 ⟹ 2)xnax_n \to axnIx_n \in I とし、ε>0\varepsilon > 0 を任意に取ります。定義 3.1 より δ>0\delta > 0 が存在して、xIx \in I かつ xa<δ|x - a| < \delta ならば f(x)f(a)<ε|f(x) - f(a)| < \varepsilon です。xnax_n \to a なので、この δ\delta に対して NN が存在して nNn \ge N ならば xna<δ|x_n - a| < \delta です。xnIx_n \in I なので nNn \ge Nf(xn)f(a)<ε|f(x_n) - f(a)| < \varepsilon となります。ε\varepsilon は任意だったので f(xn)f(a)f(x_n) \to f(a) です。

(2 ⟹ 1)対偶を示します。ffaa で連続でないとすると、定義 3.1 の否定より、ある ε0>0\varepsilon_0 > 0 が存在して、どんな δ>0\delta > 0 に対しても xIx \in Ixa<δ|x - a| < \delta かつ f(x)f(a)ε0|f(x) - f(a)| \ge \varepsilon_0 となるものが取れます。各 nn に対して δ=1/n\delta = 1/n を代入して得られる点を xnx_n とすると、xna<1/n0|x_n - a| < 1/n \to 0 より xnax_n \to a ですが、すべての nnf(xn)f(a)ε0|f(x_n) - f(a)| \ge \varepsilon_0 なので f(xn)f(a)f(x_n) \to f(a) ではありません。これは条件 2 の否定です。

この命題の値打ちは、連続性の議論をボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理と接続できる点にあります。ε\varepsilon-δ\delta のままでは点列が出てこないので、補題 2.2 を使えません。以下の 3 つの定理の証明は、いずれも「点列を作る、部分列を取る、命題 3.2ff の側に移す」という同じ骨格をもっています。

4. 有界閉区間上の連続関数:有界性と最大値の原理

Section titled “4. 有界閉区間上の連続関数:有界性と最大値の原理”

定理 4.1有界性定理

a<ba < b とし、f:[a,b]Rf : [a,b] \to \mathbb{R}[a,b][a,b] 上連続であるとする。このとき ff は有界である。すなわち、ある M>0M > 0 が存在して、すべての x[a,b]x \in [a,b] に対し f(x)M|f(x)| \le M が成り立つ。

証明(定理 4.1)

背理法で示します。ff が有界でないとすると、どんな M>0M > 0 も上界にならないので、特に各 nNn \in \mathbb{N} に対して f(xn)>n|f(x_n)| > n となる xn[a,b]x_n \in [a,b] が取れます。

(xn)(x_n)[a,b][a,b] に含まれるので xnmax(a,b)|x_n| \le \max(|a|, |b|) であり、有界です。補題 2.2 より、収束する部分列 (xnk)(x_{n_k}) が存在します。その極限を cc とします。すべての kkaxnkba \le x_{n_k} \le b なので、極限の順序保存(§2)から acba \le c \le b、すなわち c[a,b]c \in [a,b] です。ここで定義域が閉であることを使いました。

ffc[a,b]c \in [a,b] で連続なので、定義 3.1ε=1\varepsilon = 1 に対して適用すると、δ>0\delta > 0 が存在して、x[a,b]x \in [a,b] かつ xc<δ|x - c| < \delta ならば f(x)f(c)<1|f(x) - f(c)| < 1、したがって

f(x)f(x)f(c)+f(c)<f(c)+1|f(x)| \le |f(x) - f(c)| + |f(c)| < |f(c)| + 1

です。xnkcx_{n_k} \to c なので、KK が存在して kKk \ge K ならば xnkc<δ|x_{n_k} - c| < \delta、ゆえに f(xnk)<f(c)+1|f(x_{n_k})| < |f(c)| + 1 となります。

一方、作り方から f(xnk)>nkk|f(x_{n_k})| > n_k \ge k です。そこで kKk \ge K かつ kf(c)+1k \ge |f(c)| + 1 を満たす kk を取ると

f(c)+1knk<f(xnk)<f(c)+1|f(c)| + 1 \le k \le n_k < |f(x_{n_k})| < |f(c)| + 1

となり矛盾します。したがって ff は有界です。

定理 4.2最大値の原理(ワイエルシュトラスの定理)

a<ba < b とし、f:[a,b]Rf : [a,b] \to \mathbb{R}[a,b][a,b] 上連続であるとする。このとき x,x[a,b]x_*, x^* \in [a,b] が存在して、すべての x[a,b]x \in [a,b] に対し

f(x)f(x)f(x)f(x_*) \le f(x) \le f(x^*)

が成り立つ。すなわち ff[a,b][a,b] 上で最大値 f(x)f(x^*) と最小値 f(x)f(x_*) を取る。

証明(定理 4.2)

値域 S=f([a,b])={f(x):x[a,b]}S = f([a,b]) = \lbrace f(x) : x \in [a,b] \rbrace を考えます。a[a,b]a \in [a,b] より SS \ne \emptyset であり、定理 4.1 より SS は上に有界です。よって連続性公理から M=supSM = \sup S が存在します。ここが完備性の第 1 の使いどころです。

上限の性質 (ii) より、各 nNn \in \mathbb{N} に対して M1/nM - 1/nSS の上界ではないので、f(xn)>M1/nf(x_n) > M - 1/n となる xn[a,b]x_n \in [a,b] が存在します。同時に上限の性質 (i) より f(xn)Mf(x_n) \le M です。したがって

M1n<f(xn)MM - \frac{1}{n} < f(x_n) \le M

となり、はさみうちの原理から f(xn)Mf(x_n) \to M です。

(xn)[a,b](x_n) \subseteq [a,b] は有界なので、補題 2.2 より収束部分列 xnkxx_{n_k} \to x^* が取れます。**ここが完備性の第 2 の使いどころです。**極限の順序保存から x[a,b]x^* \in [a,b] です(定義域が閉であることを使いました)。

ffxx^* で連続なので、命題 3.2 より f(xnk)f(x)f(x_{n_k}) \to f(x^*) です。一方 f(xn)Mf(x_n) \to M なので、その部分列も同じ極限をもち f(xnk)Mf(x_{n_k}) \to M です。極限の一意性から f(x)=Mf(x^*) = M となります。よってすべての x[a,b]x \in [a,b] に対し f(x)M=f(x)f(x) \le M = f(x^*) であり、最大値が実現されました。

最小値については g=fg = -f に上の結果を適用します。gg[a,b][a,b] 上連続です(g(x)g(y)=f(x)f(y)|g(x) - g(y)| = |f(x) - f(y)| なので 定義 3.1δ\delta がそのまま使えます)。よって、すべての x[a,b]x \in [a,b] に対し g(x)g(x)g(x) \le g(x_*) となる x[a,b]x_* \in [a,b] が存在します。これは f(x)f(x)-f(x) \le -f(x_*)、すなわち f(x)f(x)f(x_*) \le f(x) を意味します。

例 4.3仮定を 1 つずつ外すと何が壊れるか

最大値の原理では「有界」「閉」「連続」の 3 つがすべて必要です。

  • 有界を外すf(x)=xf(x) = x[0,)[0, \infty) 上連続ですが、値域 [0,)[0,\infty) は上に有界でなく、最大値をもちません。証明のどこが壊れたかというと、(xn)(x_n) が有界でなくなり 補題 2.2 が使えません。
  • 閉を外すf(x)=xf(x) = x(0,1)(0,1) 上連続で有界ですが、supf=1\sup f = 1 は値として実現されません。実際 f(x)=1f(x) = 1 なら x=1(0,1)x = 1 \notin (0,1) です。証明では、部分列の極限 xx^* が定義域に属さなくなります。
  • 連続を外すf(0)=0f(0) = 00<x10 < x \le 1f(x)=1/xf(x) = 1/x と定めた f:[0,1]Rf : [0,1] \to \mathbb{R}[0,1][0,1] 上で有界ではありません。定義域は有界閉ですが ff00 で連続でないためです。

有界性定理と最大値の原理は「値の大きさ」に関する定理でした。次は「値の取りこぼしがない」ことを主張する定理です。証明には 補題 2.1 を直接使います。区間を二等分し、符号が変わる側を選び続ける、という手続きは実際に数値計算で根を求める二分法そのものです。

定理 5.1中間値の定理

a<ba < b とし、f:[a,b]Rf : [a,b] \to \mathbb{R}[a,b][a,b] 上連続であるとする。γ\gamma

min{f(a),f(b)}<γ<max{f(a),f(b)}\min\lbrace f(a), f(b) \rbrace < \gamma < \max\lbrace f(a), f(b) \rbrace

を満たす実数とする。このとき f(c)=γf(c) = \gamma となる c(a,b)c \in (a,b) が存在する。

証明(定理 5.1)

まず f(a)<γ<f(b)f(a) < \gamma < f(b) の場合に帰着させます。f(b)<γ<f(a)f(b) < \gamma < f(a) の場合は f~=f\tilde f = -fγ~=γ\tilde\gamma = -\gamma を考えると f~\tilde f は連続で f~(a)=f(a)<γ=γ~<f(b)=f~(b)\tilde f(a) = -f(a) < -\gamma = \tilde\gamma < -f(b) = \tilde f(b) となり、f~(c)=γ~\tilde f(c) = \tilde\gammaf(c)=γf(c) = \gamma と同値だからです。

そこで f(a)<γ<f(b)f(a) < \gamma < f(b) とし、g(x)=f(x)γg(x) = f(x) - \gamma とおきます。gg[a,b][a,b] 上連続で(定数を引いても同じ δ\delta が使えます)、g(a)<0<g(b)g(a) < 0 < g(b) です。g(c)=0g(c) = 0 となる cc を作ります。

[a1,b1]=[a,b][a_1, b_1] = [a, b] とおきます。a1<b1a_1 < b_1 かつ g(a1)<0<g(b1)g(a_1) < 0 < g(b_1) です。帰納的に、an<bna_n < b_ng(an)<0<g(bn)g(a_n) < 0 < g(b_n) を満たす [an,bn][a,b][a_n, b_n] \subseteq [a,b] が作れたとし、中点 mn=(an+bn)/2m_n = (a_n + b_n)/2 を取ります。

  • g(mn)=0g(m_n) = 0 なら、c=mnc = m_n とおいて構成を打ち切ります。
  • g(mn)>0g(m_n) > 0 なら [an+1,bn+1]=[an,mn][a_{n+1}, b_{n+1}] = [a_n, m_n] とします。このとき g(an+1)=g(an)<0<g(mn)=g(bn+1)g(a_{n+1}) = g(a_n) < 0 < g(m_n) = g(b_{n+1}) です。
  • g(mn)<0g(m_n) < 0 なら [an+1,bn+1]=[mn,bn][a_{n+1}, b_{n+1}] = [m_n, b_n] とします。このとき g(an+1)=g(mn)<0<g(bn)=g(bn+1)g(a_{n+1}) = g(m_n) < 0 < g(b_n) = g(b_{n+1}) です。

いずれの場合も [an+1,bn+1][an,bn][a_{n+1}, b_{n+1}] \subseteq [a_n, b_n]an+1<bn+1a_{n+1} < b_{n+1}g(an+1)<0<g(bn+1)g(a_{n+1}) < 0 < g(b_{n+1}) が保たれ、区間の長さは

bnan=ba2n1n0b_n - a_n = \frac{b-a}{2^{n-1}} \xrightarrow[n\to\infty]{} 0

です。

構成が有限回で打ち切られた場合は g(c)=0g(c) = 0 なる cc が直接得られます。打ち切られない場合、補題 2.1 より n[an,bn]={c}\bigcap_n [a_n, b_n] = \lbrace c \rbrace となる c[a,b]c \in [a,b] が存在し、anca_n \to cbncb_n \to c です。この一点の存在が完備性の帰結です。

ggcc で連続なので、命題 3.2 より g(an)g(c)g(a_n) \to g(c) かつ g(bn)g(c)g(b_n) \to g(c) です。すべての nng(an)<0g(a_n) < 0 なので、極限の順序保存から g(c)0g(c) \le 0。すべての nng(bn)>0g(b_n) > 0 なので、同じく g(c)0g(c) \ge 0。ゆえに g(c)=0g(c) = 0、すなわち f(c)=γf(c) = \gamma です。

最後に c(a,b)c \in (a,b) を確認します。f(c)=γf(c) = \gamma であり、f(a)<γf(a) < \gamma より f(c)f(a)f(c) \ne f(a)f(b)>γf(b) > \gamma より f(c)f(b)f(c) \ne f(b) なので cac \ne a かつ cbc \ne b です。c[a,b]c \in [a,b] と合わせて c(a,b)c \in (a,b) です。

注意 5.2中間値の定理は有理数体では偽

中間値の定理が完備性に依存していることは、有理数だけで同じ主張を作ってみるとはっきりします。f:Q[0,2]Qf : \mathbb{Q} \cap [0,2] \to \mathbb{Q}f(x)=x22f(x) = x^2 - 2 とします。この ffε\varepsilon-δ\delta の意味で(定義域を Q[0,2]\mathbb{Q} \cap [0,2] とみて)連続で、f(0)=2<0<2=f(2)f(0) = -2 < 0 < 2 = f(2) です。しかし f(c)=0f(c) = 0 すなわち c2=2c^2 = 2 となる有理数 cc は存在しません。定義域は「有界閉」に見えますが、Q\mathbb{Q} には連続性公理が成り立たないため 補題 2.1 が使えず、証明が止まります。中間値の定理は連続性の定理であると同時に、実数の完備性の定理でもあるのです。

例 5.3奇数次の実係数多項式は実根をもつ

m0m \ge 0 を整数、c0,,c2mRc_0, \ldots, c_{2m} \in \mathbb{R} として

p(x)=x2m+1+c2mx2m++c1x+c0p(x) = x^{2m+1} + c_{2m}x^{2m} + \cdots + c_1 x + c_0

とします。p(c)=0p(c) = 0 となる実数 cc が存在することを示します。

R=1+j=02mcjR = 1 + \sum_{j=0}^{2m} |c_j| とおきます。R1R \ge 1 です。q(x)=c2mx2m++c0q(x) = c_{2m}x^{2m} + \cdots + c_0 と書くと、xR (1)|x| \ge R \ (\ge 1) のとき xjx2m|x|^j \le |x|^{2m}0j2m0 \le j \le 2m)なので

q(x)j=02mcjxj(j=02mcj)x2m=(R1)x2m<Rx2mxx2m=x2m+1|q(x)| \le \sum_{j=0}^{2m} |c_j|\,|x|^j \le \Bigl(\sum_{j=0}^{2m} |c_j|\Bigr) |x|^{2m} = (R-1)|x|^{2m} < R\,|x|^{2m} \le |x| \cdot |x|^{2m} = |x|^{2m+1}

が成り立ちます。最後の不等号で xR|x| \ge R を使いました。

したがって x=Rx = R では

p(R)=R2m+1+q(R)R2m+1q(R)>R2m+1R2m+1=0,p(R) = R^{2m+1} + q(R) \ge R^{2m+1} - |q(R)| > R^{2m+1} - R^{2m+1} = 0,

x=Rx = -R では (R)2m+1=R2m+1(-R)^{2m+1} = -R^{2m+1} なので

p(R)=R2m+1+q(R)R2m+1+q(R)<R2m+1+R2m+1=0p(-R) = -R^{2m+1} + q(-R) \le -R^{2m+1} + |q(-R)| < -R^{2m+1} + R^{2m+1} = 0

です。pp は多項式なので [R,R][-R, R] 上連続であり、p(R)<0<p(R)p(-R) < 0 < p(R) です。定理 5.1γ=0\gamma = 0 に対して適用すると、p(c)=0p(c) = 0 となる c(R,R)c \in (-R, R) が存在します。

例えば p(x)=x33x+1p(x) = x^3 - 3x + 1 なら R=1+0+3+1=5R = 1 + 0 + 3 + 1 = 5 で、(5,5)(-5,5) に根があることが分かります。より狭く追うこともできます。p(0)=1>0p(0) = 1 > 0p(1)=13+1=1<0p(1) = 1 - 3 + 1 = -1 < 0 なので、定理 5.1[0,1][0,1] 上で γ=0\gamma = 0 に対して使うと根は (0,1)(0,1) にあります。証明中の二分法をそのまま実行すると、p(0.5)=0.1251.5+1=0.375<0p(0.5) = 0.125 - 1.5 + 1 = -0.375 < 0 なので次の区間は (0,0.5)(0, 0.5)p(0.25)=0.0156250.75+1=0.265625>0p(0.25) = 0.015625 - 0.75 + 1 = 0.265625 > 0 なので次は (0.25,0.5)(0.25, 0.5)、というように区間が半分ずつ縮んでいきます。これが 定理 5.1 の証明で作った区間列そのものです。

定義 6.1一様連続性

IRI \subseteq \mathbb{R}f:IRf : I \to \mathbb{R} とする。

ε>0, δ>0, x,yI,xy<δ    f(x)f(y)<ε\forall \varepsilon > 0,\ \exists \delta > 0,\ \forall x, y \in I,\quad |x - y| < \delta \implies |f(x) - f(y)| < \varepsilon

が成り立つとき、ffII一様連続であるという。

ここで 定義 3.1定義 6.1 を並べて書いてみると、違いは量化子の順序だけです。

連続:ε>0, aI, δ>0, xI, (xa<δf(x)f(a)<ε)一様連続:ε>0, δ>0, aI, xI, (xa<δf(x)f(a)<ε)\begin{aligned} \text{連続} \quad&:\quad \forall \varepsilon > 0,\ \forall a \in I,\ \exists \delta > 0,\ \forall x \in I,\ \bigl(|x-a| < \delta \Rightarrow |f(x)-f(a)| < \varepsilon\bigr) \\[2pt] \text{一様連続} \quad&:\quad \forall \varepsilon > 0,\ \exists \delta > 0,\ \forall a \in I,\ \forall x \in I,\ \bigl(|x-a| < \delta \Rightarrow |f(x)-f(a)| < \varepsilon\bigr) \end{aligned}

前者では δ\exists \deltaa\forall a の内側にあるので δ=δ(ε,a)\delta = \delta(\varepsilon, a)、後者では外側にあるので δ=δ(ε)\delta = \delta(\varepsilon) です。「一様」とは「II の点を通じて一様に(同じものが)使える」という意味です。

なお、一様連続性は関数と定義域の組に対する性質です。同じ式で書かれた関数でも、定義域を変えれば一様連続かどうかが変わります(例 6.3 を見てください)。連続性が各点ごとの局所的な性質であるのに対し、一様連続性は定義域全体を見渡す大域的な性質です。

命題 6.2一様連続性の基本性質

IRI \subseteq \mathbb{R}f:IRf : I \to \mathbb{R} とする。

  1. ffII 上一様連続ならば、ffII 上連続である。
  2. 次の 2 条件は同値である。
    • (a) ffII 上一様連続ではない。
    • (b) ある ε0>0\varepsilon_0 > 0II の点列 (xn),(yn)(x_n), (y_n) が存在して、limn(xnyn)=0\lim_{n\to\infty}(x_n - y_n) = 0 かつすべての nnf(xn)f(yn)ε0|f(x_n) - f(y_n)| \ge \varepsilon_0 となる。
証明(命題 6.2)

(1)aIa \in Iε>0\varepsilon > 0 を任意に取ります。定義 6.1 より δ>0\delta > 0 が存在して、x,yIx, y \in I かつ xy<δ|x-y| < \delta ならば f(x)f(y)<ε|f(x)-f(y)| < \varepsilon です。ここで y=ay = a と特殊化すると、xIx \in I かつ xa<δ|x - a| < \delta ならば f(x)f(a)<ε|f(x) - f(a)| < \varepsilon となります。これは 定義 3.1 の条件そのものなので、ffaa で連続です。aa は任意だったので ffII 上連続です。

(2)まず 定義 6.1 の否定を書き下します。

ε0>0, δ>0, x,yI,xy<δ かつ f(x)f(y)ε0.\exists \varepsilon_0 > 0,\ \forall \delta > 0,\ \exists x, y \in I,\quad |x-y| < \delta \ \text{かつ}\ |f(x)-f(y)| \ge \varepsilon_0 .

(a) ⟹ (b):この ε0\varepsilon_0 を固定します。各 nNn \in \mathbb{N} に対して δ=1/n\delta = 1/n を代入すると、xn,ynIx_n, y_n \in Ixnyn<1/n|x_n - y_n| < 1/n かつ f(xn)f(yn)ε0|f(x_n) - f(y_n)| \ge \varepsilon_0 となるものが取れます。xnyn<1/n0|x_n - y_n| < 1/n \to 0 より xnyn0x_n - y_n \to 0 です。

(b) ⟹ (a):そのような ε0,(xn),(yn)\varepsilon_0, (x_n), (y_n) があるとして、ff が一様連続だと仮定します。この ε0\varepsilon_0 に対して 定義 6.1δ>0\delta > 0 が取れます。xnyn0x_n - y_n \to 0 なので、十分大きい nnxnyn<δ|x_n - y_n| < \delta となり、xn,ynIx_n, y_n \in I だから f(xn)f(yn)<ε0|f(x_n) - f(y_n)| < \varepsilon_0 です。これは仮定「すべての nnf(xn)f(yn)ε0|f(x_n)-f(y_n)| \ge \varepsilon_0」に矛盾します。

条件 (b) は、一様連続でないことを示すための実用的な道具です。「限りなく接近するのに値の差が縮まらない 2 つの点列」を 1 組見つければよい、という形になっています。

例 6.32 乗関数:定義域で結論が変わる

f(x)=x2f(x) = x^2 を考えます。

R\mathbb{R} 上では一様連続ではありません。 xn=n+1nx_n = n + \dfrac{1}{n}yn=ny_n = n と取ります。すると

xnyn=1n0,f(xn)f(yn)=(n+1n)2n2=2+1n22.x_n - y_n = \frac{1}{n} \to 0, \qquad f(x_n) - f(y_n) = \Bigl(n + \frac1n\Bigr)^2 - n^2 = 2 + \frac{1}{n^2} \ge 2 .

ε0=2\varepsilon_0 = 2 として 命題 6.2 の (b) が成り立つので、ffR\mathbb{R} 上一様連続ではありません。直観的には、傾き 2x2x がいくらでも大きくなるため、同じ ε\varepsilon を保つのに必要な δ\deltaxx とともに 00 に潰れるからです。

任意の R>0R > 0 に対し [R,R][-R, R] 上では一様連続です。 x,y[R,R]x, y \in [-R,R] に対し

x2y2=x+yxy(x+y)xy2Rxy|x^2 - y^2| = |x+y|\,|x-y| \le (|x| + |y|)|x-y| \le 2R\,|x-y|

なので、ε>0\varepsilon > 0 に対して δ=ε/(2R)\delta = \varepsilon/(2R) と取れば、xy<δ|x-y| < \delta から x2y22Rxy<2Rε/(2R)=ε|x^2-y^2| \le 2R|x-y| < 2R \cdot \varepsilon/(2R) = \varepsilon が従います。この δ\deltaxx にも yy にも依存していません。

例 6.41/x:有界な定義域でも一様連続とは限らない

f(x)=1/xf(x) = 1/xI=(0,1]I = (0,1] 上で考えます。ffII 上連続です(各 aIa \in I1/x1/a=xa/(xa)|1/x - 1/a| = |x-a|/(|x|a) を評価すればよく、例えば δ=min(a/2, εa2/2)\delta = \min(a/2,\ \varepsilon a^2/2) と取れば xa<δ|x-a| < \delta から x>a/2x > a/2、よって 1/x1/a<2xa/a2<ε|1/x - 1/a| < 2|x-a|/a^2 < \varepsilon となります。この δ\deltaaa に強く依存していることに注意してください)。

しかし一様連続ではありません。xn=1nx_n = \dfrac{1}{n}yn=12ny_n = \dfrac{1}{2n} と取ると

xnyn=12n0,f(xn)f(yn)=n2n=n1|x_n - y_n| = \frac{1}{2n} \to 0, \qquad |f(x_n) - f(y_n)| = |n - 2n| = n \ge 1

なので、ε0=1\varepsilon_0 = 1 として 命題 6.2 の (b) が成り立ちます。

定義域 (0,1](0,1] は有界ですが閉ではありません。この例は、次節のハイネ・カントールの定理で「閉」の仮定を外せないことを示しています。

例 6.5有界性だけでは足りない

f(x)=sin(x2)f(x) = \sin(x^2)R\mathbb{R} 上連続で、f(x)1|f(x)| \le 1 と有界です。それでも一様連続ではありません。

xn=2nπ+π2,yn=2nπ(nN)x_n = \sqrt{2n\pi + \frac{\pi}{2}}, \qquad y_n = \sqrt{2n\pi} \qquad (n \in \mathbb{N})

と取ります。分子の有理化により

xnyn=xn2yn2xn+yn=π/22nπ+π/2+2nπn0x_n - y_n = \frac{x_n^2 - y_n^2}{x_n + y_n} = \frac{\pi/2}{\sqrt{2n\pi + \pi/2} + \sqrt{2n\pi}} \xrightarrow[n\to\infty]{} 0

です(分母が \infty に発散するため)。一方

f(xn)=sin(2nπ+π2)=1,f(yn)=sin(2nπ)=0f(x_n) = \sin\Bigl(2n\pi + \frac{\pi}{2}\Bigr) = 1, \qquad f(y_n) = \sin(2n\pi) = 0

なので f(xn)f(yn)=1|f(x_n) - f(y_n)| = 1 です。ε0=1\varepsilon_0 = 1 として 命題 6.2 の (b) が成り立ち、一様連続ではありません。ff の値そのものは有界でも、振動が速くなるため δ\delta が潰れるのです。

定義 6.6リプシッツ連続

IRI \subseteq \mathbb{R}f:IRf : I \to \mathbb{R} とする。ある定数 L0L \ge 0 が存在して、すべての x,yIx, y \in I に対し

f(x)f(y)Lxy|f(x) - f(y)| \le L\,|x - y|

が成り立つとき、ffIIリプシッツ連続であるといい、LL をリプシッツ定数という。

例 6.7平方根:一様連続だがリプシッツ連続ではない

まず一般に、リプシッツ連続ならば一様連続です。L=0L = 0 なら ff は定数なので任意の δ\delta が使えます。L>0L > 0 のとき、ε>0\varepsilon > 0 に対して δ=ε/L\delta = \varepsilon/L と取れば、xy<δ|x-y| < \delta から f(x)f(y)Lxy<Lε/L=ε|f(x)-f(y)| \le L|x-y| < L \cdot \varepsilon/L = \varepsilon が従います。δ\deltax,yx, y に依存していません。

逆は成り立ちません。f(x)=xf(x) = \sqrt{x}I=[0,)I = [0,\infty) 上で考えます。

一様連続であること。 任意の x,y0x, y \ge 0 に対し xyxy|\sqrt{x} - \sqrt{y}| \le \sqrt{|x-y|} を示します。対称なので xy0x \ge y \ge 0 としてよく、このとき xyyy=y\sqrt{xy} \ge \sqrt{y \cdot y} = y なので

(xy)2=x2xy+yx2y+y=xy.(\sqrt{x} - \sqrt{y})^2 = x - 2\sqrt{xy} + y \le x - 2y + y = x - y .

左辺は xyx \ge y より xy0\sqrt{x} - \sqrt{y} \ge 0 の 2 乗なので、両辺の非負の平方根を取って xyxy\sqrt{x} - \sqrt{y} \le \sqrt{x-y} を得ます。よって ε>0\varepsilon > 0 に対し δ=ε2\delta = \varepsilon^2 と取れば、xy<δ|x - y| < \delta から

xyxy<ε2=ε|\sqrt{x} - \sqrt{y}| \le \sqrt{|x-y|} < \sqrt{\varepsilon^2} = \varepsilon

です。この δ\deltax,yx, y に依らないので、ff[0,)[0,\infty) 上一様連続です。

リプシッツ連続ではないこと。 ある L0L \ge 0 がすべての x,y0x,y \ge 0xyLxy|\sqrt x - \sqrt y| \le L|x-y| を満たすとします。y=0y = 0 とすると、すべての t>0t > 0tLt\sqrt{t} \le L t、すなわち L1/tL \ge 1/\sqrt{t} です。L=0L = 0 なら t=1t = 1101 \le 0 となり矛盾。L>0L > 0 のとき t=1/(2L)2>0t = 1/(2L)^2 > 0 を代入すると 1/t=2L>L1/\sqrt{t} = 2L > L となり、L2LL \ge 2L すなわち L0L \le 0 が導かれ矛盾します。よってリプシッツ定数は存在しません。

原点付近でグラフの傾きが \infty に発散しているのに、一様連続性は保たれている、というのがこの例の面白いところです。

注意 6.8連続率による言い換え

f:IRf : I \to \mathbb{R} に対して、δ>0\delta > 0 の関数

ωf(δ)=sup{f(x)f(y):x,yI, xyδ}[0,+]\omega_f(\delta) = \sup \bigl\lbrace |f(x)-f(y)| : x, y \in I,\ |x-y| \le \delta \bigr\rbrace \in [0, +\infty]

ff連続率(modulus of continuity)といいます。ωf\omega_f は単調非減少です。このとき

f が I 上一様連続    limδ0+ωf(δ)=0f \ \text{が} \ I \ \text{上一様連続} \iff \lim_{\delta \to 0+} \omega_f(\delta) = 0

が成り立ちます。

(⟸)ε>0\varepsilon > 0 に対し ωf(δ)<ε\omega_f(\delta) < \varepsilon となる δ>0\delta > 0 を取れば、xy<δ|x-y| < \delta なる x,yIx,y \in I に対し f(x)f(y)ωf(δ)<ε|f(x)-f(y)| \le \omega_f(\delta) < \varepsilon です。

(⟹)ε>0\varepsilon > 0 に対し、定義 6.1ε/2\varepsilon/2 に適用して δ>0\delta > 0 を取ります。xyδ/2<δ|x-y| \le \delta/2 < \delta なるすべての x,yIx,y \in If(x)f(y)<ε/2|f(x)-f(y)| < \varepsilon/2 なので、上限を取って ωf(δ/2)ε/2<ε\omega_f(\delta/2) \le \varepsilon/2 < \varepsilonωf\omega_f の単調性から 0<ηδ/20 < \eta \le \delta/2ωf(η)<ε\omega_f(\eta) < \varepsilon です。

なお 定義 6.6ωf(δ)Lδ\omega_f(\delta) \le L\delta例 6.7x\sqrt{x}ωf(δ)=δ\omega_f(\delta) = \sqrt{\delta} に対応します。連続率が 00 に収束する速さが、一様連続性の「強さ」を測っているわけです。

定理 7.1ハイネ・カントールの定理

a<ba < b とし、f:[a,b]Rf : [a,b] \to \mathbb{R}[a,b][a,b] 上連続であるとする。このとき ff[a,b][a,b] 上一様連続である。

証明(定理 7.1)

背理法で示します。ff[a,b][a,b] 上一様連続でないとすると、命題 6.2 の (b) より、ある ε0>0\varepsilon_0 > 0[a,b][a,b] の点列 (xn),(yn)(x_n), (y_n) が存在して

xnyn0,f(xn)f(yn)ε0  (n)x_n - y_n \to 0, \qquad |f(x_n) - f(y_n)| \ge \varepsilon_0 \ \ (\forall n)

となります。

(xn)(x_n)[a,b][a,b] に含まれるので有界です。ここで定義域が有界であることを使い補題 2.2 を適用すると、収束部分列 xnkcx_{n_k} \to c が取れます。すべての kkaxnkba \le x_{n_k} \le b なので、極限の順序保存から c[a,b]c \in [a,b] です。ここで定義域が閉であることを使いました。 cc[a,b][a,b] に属するからこそ、ffcc で定義され、そこで連続なのです。

次に (ynk)(y_{n_k})cc に収束します。実際、三角不等式から

ynkcynkxnk+xnkc|y_{n_k} - c| \le |y_{n_k} - x_{n_k}| + |x_{n_k} - c|

であり、右辺の第 1 項は xnyn0x_n - y_n \to 0 の部分列なので 00 に、第 2 項も 00 に収束するからです。

ffcc で連続なので、命題 3.2 を 2 つの点列に適用して

f(xnk)f(c),f(ynk)f(c)f(x_{n_k}) \to f(c), \qquad f(y_{n_k}) \to f(c)

を得ます。よって

f(xnk)f(ynk)f(xnk)f(c)+f(c)f(ynk)k0|f(x_{n_k}) - f(y_{n_k})| \le |f(x_{n_k}) - f(c)| + |f(c) - f(y_{n_k})| \xrightarrow[k\to\infty]{} 0

です。したがって十分大きい kk に対して f(xnk)f(ynk)<ε0|f(x_{n_k}) - f(y_{n_k})| < \varepsilon_0 となりますが、これはすべての nnf(xn)f(yn)ε0|f(x_n) - f(y_n)| \ge \varepsilon_0 という仮定に矛盾します。

ゆえに ff[a,b][a,b] 上一様連続です。

この定理は「点ごとの δ\delta を集めて共通の δ\delta を作る」操作を正当化しています。無限個の δ(ε,a)\delta(\varepsilon, a) の下限は一般には 00 になりかねません(例 6.4 がまさにその状況です)。それが 00 にならないことを保証しているのが、定義域の有界閉性、突き詰めれば実数の完備性です。仮定の役割を表にまとめます。

主張完備性を使う箇所有界性を外すと閉であることを外すと
有界性定理ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理[0,)[0,\infty) 上の f(x)=xf(x)=x が反例(0,1](0,1] 上の f(x)=1/xf(x)=1/x が反例
最大値の原理上限の存在とボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理[0,)[0,\infty) 上の f(x)=xf(x)=x が反例(0,1)(0,1) 上の f(x)=xf(x)=x が反例
中間値の定理区間縮小法非有界区間でも成立する開区間でも成立する(ただし Q\mathbb{Q} 上では偽)
ハイネ・カントールの定理ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理R\mathbb{R} 上の f(x)=x2f(x)=x^2 が反例(0,1](0,1] 上の f(x)=1/xf(x)=1/x が反例

一様連続性の御利益は、次の系にはっきり現れます。鍵になるのは、一様連続な写像がコーシー列をコーシー列に写すという性質です。連続なだけではこれは成り立ちません。(0,1](0,1] 上の f(x)=1/xf(x) = 1/xxn=1/nx_n = 1/n を取ると、(xn)(x_n) は収束列なのでコーシー列ですが、(f(xn))=(n)(f(x_n)) = (n) はコーシー列ではないからです。

系 7.2一様連続関数の連続拡張

<a<b<-\infty < a < b < \infty とし、f:(a,b)Rf : (a,b) \to \mathbb{R}(a,b)(a,b) 上一様連続であるとする。このとき、[a,b][a,b] 上の連続関数 f~:[a,b]R\tilde f : [a,b] \to \mathbb{R} で、(a,b)(a,b) への制限が ff に一致するものがただ 1 つ存在する。さらにこの f~\tilde f[a,b][a,b] 上一様連続である。

証明(系 7.2)

端点での値の定義。 xn=a+ban+1(a,b)x_n = a + \dfrac{b-a}{n+1} \in (a,b) とおくと xnax_n \to a です。収束列はコーシー列なので (xn)(x_n) はコーシー列です。(f(xn))(f(x_n)) もコーシー列であることを示します。ε>0\varepsilon > 0 に対し 定義 6.1δ>0\delta > 0 を取り、(xn)(x_n) のコーシー性からこの δ\delta に対する NN を取ると、m,nNm, n \ge Nxmxn<δ|x_m - x_n| < \delta、したがって f(xm)f(xn)<ε|f(x_m) - f(x_n)| < \varepsilon です。ここで一様連続性が本質的に効いていますδ\delta が点に依らないので、xm,xnx_m, x_n の位置と無関係に使えます)。

実数の完備性(コーシー列は収束する(定理 7.3)[実数の完備性とコーシー列])より α=limnf(xn)\alpha = \lim_n f(x_n) が存在します。これが完備性の使いどころです。

値が列の取り方に依らないこと。 (xn)(x_n')(a,b)(a,b) の別の列で xnax_n' \to a とします。交互に並べた列 z1=x1,z2=x1,z3=x2,z4=x2,z_1 = x_1, z_2 = x_1', z_3 = x_2, z_4 = x_2', \ldotsaa に収束します(ε>0\varepsilon > 0 に対し xka<ε|x_k - a| < \varepsilonxka<ε|x_k' - a| < \varepsilonkKk \ge K で成り立つなら、n2K1n \ge 2K-1zna<ε|z_n - a| < \varepsilon)。上と同じ議論で (f(zn))(f(z_n)) は収束し、その部分列である (f(xn))(f(x_n))(f(xn))(f(x_n')) は同じ極限をもちます。よって limnf(xn)=α\lim_n f(x_n') = \alpha です。

そこで f~(a)=α\tilde f(a) = \alpha と定めます。bb についても同様に f~(b)=β\tilde f(b) = \beta を定め、x(a,b)x \in (a,b) では f~(x)=f(x)\tilde f(x) = f(x) とします。

f~\tilde f の一様連続性。x[a,b]x \in [a,b] に対し、(a,b)(a,b) の点列 (xn)(x_n)xnxx_n \to x かつ f(xn)f~(x)f(x_n) \to \tilde f(x) となるものが取れます。x=ax = ax=bx = b では上の構成がそれを与え、x(a,b)x \in (a,b) では定数列 xn=xx_n = x が使えます。

ε>0\varepsilon > 0 を取り、定義 6.1δ>0\delta > 0 を取ります。x,y[a,b]x, y \in [a,b]xy<δ|x - y| < \delta を満たすとし、上のような (xn),(yn)(x_n), (y_n) を取ります。xnynxy<δ|x_n - y_n| \to |x-y| < \delta なので、十分大きい nnxnyn<δ|x_n - y_n| < \delta、したがって f(xn)f(yn)<ε|f(x_n) - f(y_n)| < \varepsilon です。nn \to \infty とすると(絶対値は連続なので)

f~(x)f~(y)ε|\tilde f(x) - \tilde f(y)| \le \varepsilon

を得ます。以上より「任意の ε>0\varepsilon > 0δ>0\delta > 0 が対応して、xy<δ|x-y| < \delta ならば f~(x)f~(y)ε|\tilde f(x) - \tilde f(y)| \le \varepsilon」が示せました。これを ε/2\varepsilon/2 に適用すれば f~(x)f~(y)ε/2<ε|\tilde f(x) - \tilde f(y)| \le \varepsilon/2 < \varepsilon となるので、f~\tilde f[a,b][a,b] 上一様連続です。特に 命題 6.2 の 1 より連続です。

一意性。 f^\hat f[a,b][a,b] 上連続で (a,b)(a,b)ff に一致するとします。xnax_n \to axn(a,b)x_n \in (a,b) を取ると、命題 3.2 より f^(a)=limnf^(xn)=limnf(xn)=α=f~(a)\hat f(a) = \lim_n \hat f(x_n) = \lim_n f(x_n) = \alpha = \tilde f(a) です。bb でも同様で、(a,b)(a,b) 上は定義から一致するので f^=f~\hat f = \tilde f です。

注意 7.3一様連続性が使われる場面

一様連続性は、次のような場面で「δ\delta が点に依らない」ことが必要になるために現れます。

  • リーマン積分可能性。 ff[a,b][a,b] 上連続なら 定理 7.1 より一様連続なので、ε>0\varepsilon > 0 に対して δ\delta を取り、幅が δ\delta 未満の分割 Δ\Delta を取れば、各小区間上での ff の振動が ε\varepsilon 以下に抑えられます。したがって上積分と下積分の差は ε(ba)\varepsilon(b-a) 以下となり、ε\varepsilon が任意なので ff は積分可能です。ここで分割のすべての小区間に同じ ε\varepsilon を使えることが鍵で、点ごとの連続性だけでは足りません。この議論は 連続関数の可積分性(定理 3.5)[積分の基本定理と定積分] としてまとめられています。詳しくは 積分の基本定理と定積分 を参照してください。
  • 関数列の極限。 一様連続性は 1 つの関数の中で点をそろえる概念ですが、関数列 (fn)(f_n) に対して「nn をそろえる」概念が一様収束です。両者は形が似ており、コーシーが混同した点でもあります。一様収束の定義(定義 3.2)[関数列と一様収束] をはじめ、関数列と一様収束 で扱います。
  • 稠密な部分集合からの拡張。 系 7.2 は、より一般に「完備距離空間へ値を取る一様連続写像は、定義域の閉包へ一意に拡張される」という形に一般化されます。関数解析で有界線形作用素を稠密な部分空間から全体へ延ばすとき、この原理が使われます。

演習 8.1

IRI \subseteq \mathbb{R} とし、f,g:IRf, g : I \to \mathbb{R} がともに II 上一様連続であるとする。

  1. f+gf + gII 上一様連続であることを示せ。
  2. I=RI = \mathbb{R} のとき、fgfg が一様連続とは限らないことを反例で示せ。
解答

1. ε>0\varepsilon > 0 を取ります。ff の一様連続性を ε/2\varepsilon/2 に適用して δ1>0\delta_1 > 0 を、gg の一様連続性を ε/2\varepsilon/2 に適用して δ2>0\delta_2 > 0 を取り、δ=min(δ1,δ2)>0\delta = \min(\delta_1, \delta_2) > 0 とおきます。x,yIx, y \in Ixy<δ|x-y| < \delta を満たすとすると、xy<δ1|x-y| < \delta_1 かつ xy<δ2|x-y| < \delta_2 なので

(f+g)(x)(f+g)(y)f(x)f(y)+g(x)g(y)<ε2+ε2=ε|(f+g)(x) - (f+g)(y)| \le |f(x)-f(y)| + |g(x)-g(y)| < \frac{\varepsilon}{2} + \frac{\varepsilon}{2} = \varepsilon

です。δ\deltax,yx, y に依らないので 定義 6.1 が成り立ちます。

2. f(x)=g(x)=xf(x) = g(x) = x とします。f(x)f(y)=xy|f(x)-f(y)| = |x-y| なので δ=ε\delta = \varepsilon と取れば一様連続です。しかし (fg)(x)=x2(fg)(x) = x^2例 6.3 より R\mathbb{R} 上一様連続ではありません。したがって一様連続関数の積は一様連続とは限りません。

(積が一様連続になる十分条件としては「f,gf, g がともに有界」があります。f(x)g(x)f(y)g(y)f(x)g(x)g(y)+g(y)f(x)f(y)|f(x)g(x) - f(y)g(y)| \le |f(x)||g(x)-g(y)| + |g(y)||f(x)-f(y)| と分解すればわかります。)

演習 8.2標準

f:RRf : \mathbb{R} \to \mathbb{R} が連続であり、ある T>0T > 0 に対しすべての xRx \in \mathbb{R}f(x+T)=f(x)f(x+T) = f(x) を満たすとする(周期 TT の周期関数)。このとき ffR\mathbb{R} 上一様連続であることを示せ。

解答

まず周期性から、すべての整数 kk とすべての xx に対して f(x+kT)=f(x)f(x + kT) = f(x) が成り立ちます(k0k \ge 0 については f(x+T)=f(x)f(x+T)=f(x)kk 回の適用、k<0k < 0 については f(x)=f((xkT)+kT)=f(xkT)f(x) = f((x - |k|T) + |k|T) = f(x-|k|T) から従います)。

ff は有界閉区間 [T,2T][-T, 2T] 上連続なので、定理 7.1 よりそこで一様連続です。ε>0\varepsilon > 0 に対し、[T,2T][-T,2T] 上の一様連続性から δ>0\delta' > 0 を取り、δ=min(δ,T)>0\delta = \min(\delta', T) > 0 とおきます。

x,yRx, y \in \mathbb{R}xy<δ|x - y| < \delta を満たすとします。k=x/Tk = \lfloor x/T \rfloor とおくと x=xkT[0,T)x' = x - kT \in [0, T) です。y=ykTy' = y - kT とおくと xy=xy<δT|x' - y'| = |x - y| < \delta \le T なので yy' は開区間 (xT, x+T)(x' - T,\ x' + T) に入ります。ここで x0x' \ge 0 より xTTx' - T \ge -Tx<Tx' < T より x+T<2Tx' + T < 2T なので

TxT<y<x+T<2T-T \le x' - T < y' < x' + T < 2T

となり y(T,2T)y' \in (-T, 2T) です。よって x,y[T,2T]x', y' \in [-T, 2T] かつ xy<δδ|x' - y'| < \delta \le \delta' なので f(x)f(y)<ε|f(x') - f(y')| < \varepsilon です。

周期性より f(x)=f(x+kT)=f(x)f(x) = f(x' + kT) = f(x')f(y)=f(y+kT)=f(y)f(y) = f(y' + kT) = f(y') なので f(x)f(y)<ε|f(x) - f(y)| < \varepsilon を得ます。δ\deltax,yx, y に依らないので ffR\mathbb{R} 上一様連続です。

(例:sinx\sin xcosx\cos xR\mathbb{R} 上一様連続です。一方 例 6.5sin(x2)\sin(x^2) は周期関数ではないので、この議論は使えません。)

演習 8.3

f:[0,)Rf : [0,\infty) \to \mathbb{R} が連続で、極限 limxf(x)=LR\displaystyle\lim_{x \to \infty} f(x) = L \in \mathbb{R} が存在するとする。このとき ff[0,)[0,\infty) 上一様連続であることを示せ。

解答

ε>0\varepsilon > 0 を取ります。

遠方の評価。 極限の定義より、R>0R > 0 が存在して xRx \ge R ならば f(x)L<ε/2|f(x) - L| < \varepsilon/2 です。よって x,yRx, y \ge R ならば

f(x)f(y)f(x)L+Lf(y)<ε2+ε2=ε|f(x) - f(y)| \le |f(x) - L| + |L - f(y)| < \frac{\varepsilon}{2} + \frac{\varepsilon}{2} = \varepsilon

となります。この評価に δ\delta は要りません。

近傍の評価。 ff は有界閉区間 [0,R+1][0, R+1] 上連続なので、定理 7.1 よりそこで一様連続です。ε\varepsilon に対する δ0>0\delta_0 > 0 を取り、δ=min(δ0,1)>0\delta = \min(\delta_0, 1) > 0 とおきます。

貼り合わせ。 x,y[0,)x, y \in [0,\infty)xy<δ|x-y| < \delta を満たすとします。対称性より xyx \le y としてよいです。

  • yR+1y \le R+1 のとき:0xyR+10 \le x \le y \le R+1 なので x,y[0,R+1]x, y \in [0, R+1] であり、xy<δδ0|x-y| < \delta \le \delta_0 から f(x)f(y)<ε|f(x)-f(y)| < \varepsilon です。
  • y>R+1y > R+1 のとき:x>yδy1>Rx > y - \delta \ge y - 1 > R なので x>Rx > R かつ y>R+1>Ry > R+1 > R です。よって遠方の評価から f(x)f(y)<ε|f(x)-f(y)| < \varepsilon です。

いずれの場合も f(x)f(y)<ε|f(x)-f(y)| < \varepsilon であり、δ\deltax,yx, y に依らないので ff[0,)[0,\infty) 上一様連続です。

(この結果から、例えば f(x)=11+xf(x) = \dfrac{1}{1+x}f(x)=sinx1+xf(x) = \dfrac{\sin x}{1+x}[0,)[0,\infty) 上一様連続だとわかります。後者は xx \to \infty00 に収束するからです。)

演習 8.4標準

f:RRf : \mathbb{R} \to \mathbb{R} が連続で、周期 2π2\pi をもつとする。このとき f(c+π)=f(c)f(c + \pi) = f(c) となる実数 cc が存在することを示せ。(赤道上の気温を ff とみれば、「気温が等しい対蹠点の組が存在する」という主張になります。)

解答

g(x)=f(x+π)f(x)g(x) = f(x + \pi) - f(x) とおきます。xf(x+π)x \mapsto f(x+\pi) は連続関数と平行移動の合成なので連続であり、連続関数の差である ggR\mathbb{R} 上連続です。

周期性 f(x+2π)=f(x)f(x + 2\pi) = f(x) を使うと

g(0)=f(π)f(0),g(π)=f(2π)f(π)=f(0)f(π)=g(0)g(0) = f(\pi) - f(0), \qquad g(\pi) = f(2\pi) - f(\pi) = f(0) - f(\pi) = -g(0)

です。

g(0)=0g(0) = 0 ならば c=0c = 0 が求めるものです。g(0)0g(0) \ne 0 とします。このとき g(0)g(0)g(π)=g(0)g(\pi) = -g(0) は符号が反対なので

min{g(0),g(π)}<0<max{g(0),g(π)}\min\lbrace g(0), g(\pi) \rbrace < 0 < \max\lbrace g(0), g(\pi) \rbrace

が成り立ちます。gg[0,π][0,\pi] 上連続なので、定理 5.1γ=0\gamma = 0 に対して適用すると、g(c)=0g(c) = 0 となる c(0,π)c \in (0,\pi) が存在します。g(c)=0g(c) = 0f(c+π)=f(c)f(c+\pi) = f(c) を意味します。

  • 高木貞治『解析概論』改訂第三版、岩波書店、1961 — 第 1 章(実数論・連続関数の基本性質)。中間値の定理と最大値の原理を実数の連続性から導く古典的な記述。
  • 杉浦光夫『解析入門 I』東京大学出版会、1980 — 第 I 章(連続関数、一様連続性)。仮定の役割と反例が丁寧に扱われています。
  • W. Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed., McGraw-Hill, 1976 — Chapter 4 (Continuity). 一様連続性をコンパクト性の言葉で扱う標準的な文献。
  • S. Abbott, Understanding Analysis, 2nd ed., Springer, 2015 — Chapter 4 (Functional Limits and Continuity). 一様連続性が必要になる動機づけが詳しい入門書。
  • E. Heine, “Die Elemente der Functionenlehre”, Journal für die reine und angewandte Mathematik 74 (1872), 172–188. 一様連続性を明示的に定式化した論文。
  • B. Bolzano, Rein analytischer Beweis des Lehrsatzes, dass zwischen je zwey Werthen, die ein entgegengesetztes Resultat gewähren, wenigstens eine reelle Wurzel der Gleichung liege, Prague, 1817. 中間値の定理を解析的に証明しようとした最初期の試み。

Appendix: 被覆の言葉による別証明

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ハイネ・ボレルの被覆定理。 有界閉区間には、もう 1 つの重要な性質があります。[a,b][a,b] が開区間の族 U\mathcal{U} で覆われている、すなわち [a,b]UUU[a,b] \subseteq \bigcup_{U \in \mathcal{U}} U であるとき、U\mathcal{U} から有限個 U1,,UNU_1, \ldots, U_N を選んで [a,b]U1UN[a,b] \subseteq U_1 \cup \cdots \cup U_N とできる、という主張です。これがハイネ・ボレルの被覆定理で、この記事で使った 補題 2.2 と同じく、実数の完備性から導かれます。

被覆によるハイネ・カントールの定理の証明。 この定理を認めると、定理 7.1 は背理法を使わずに直接証明できます。ff[a,b][a,b] 上連続とし、ε>0\varepsilon > 0 を取ります。各点 x[a,b]x \in [a,b]ff は連続なので、定義 3.1ε/2\varepsilon/2 に適用して δx>0\delta_x > 0 が取れ、y[a,b]y \in [a,b] かつ yx<δx|y - x| < \delta_x ならば f(y)f(x)<ε/2|f(y) - f(x)| < \varepsilon/2 となります。開区間の族

U={Ux=(xδx2, x+δx2) : x[a,b]}\mathcal{U} = \Bigl\lbrace\, U_x = \Bigl(x - \frac{\delta_x}{2},\ x + \frac{\delta_x}{2}\Bigr) \ :\ x \in [a,b] \,\Bigr\rbrace

[a,b][a,b] を覆います(各 xxUxU_x に属するからです)。被覆定理より有限個の点 x1,,xN[a,b]x_1, \ldots, x_N \in [a,b] が取れて [a,b]Ux1UxN[a,b] \subseteq U_{x_1} \cup \cdots \cup U_{x_N} となります。そこで

δ=min1iNδxi2>0\delta = \min_{1 \le i \le N} \frac{\delta_{x_i}}{2} > 0

とおきます。有限個の正数の最小値なので正であることに注意してください。「有限個に減らせる」という被覆定理の結論が、ここで δ\delta00 に潰れないことを保証しています。

y,z[a,b]y, z \in [a,b]yz<δ|y - z| < \delta を満たすとします。yUxiy \in U_{x_i} となる ii を取ると yxi<δxi/2<δxi|y - x_i| < \delta_{x_i}/2 < \delta_{x_i} です。また

zxizy+yxi<δ+δxi2δxi2+δxi2=δxi|z - x_i| \le |z - y| + |y - x_i| < \delta + \frac{\delta_{x_i}}{2} \le \frac{\delta_{x_i}}{2} + \frac{\delta_{x_i}}{2} = \delta_{x_i}

です(δδxi/2\delta \le \delta_{x_i}/2 を使いました)。よって δxi\delta_{x_i} の取り方から f(y)f(xi)<ε/2|f(y) - f(x_i)| < \varepsilon/2 かつ f(z)f(xi)<ε/2|f(z) - f(x_i)| < \varepsilon/2 となり

f(y)f(z)f(y)f(xi)+f(xi)f(z)<ε|f(y) - f(z)| \le |f(y) - f(x_i)| + |f(x_i) - f(z)| < \varepsilon

を得ます。δ\deltay,zy, z に依らないので ff は一様連続です。

コンパクト性へ。 2 つの証明を比べると、点列を使う議論(点列コンパクト性)と被覆を使う議論(コンパクト性)が、有界閉区間という同じ性質の 2 つの顔であることが見えてきます。Rn\mathbb{R}^n の部分集合については、有界閉であること・点列コンパクトであること・任意の開被覆が有限部分被覆をもつことの 3 つが同値です(ハイネ・ボレルの定理)。一般の距離空間では最後の 2 つが同値で、「有界閉」はそれより弱い条件になります。この記事で証明した 定理 4.1定理 4.2定理 7.1 は、いずれも「[a,b][a,b] がコンパクトである」ことの帰結であり、その形のまま距離空間や位相空間へ一般化されます。一方 定理 5.1 だけは性格が違い、「[a,b][a,b] が連結である」ことの帰結です。連続写像は連結集合を連結集合に写し、R\mathbb{R} の連結部分集合は区間に限るからです。いずれにせよ、出発点は実数の完備性でした。そこから始めた議論が、そのまま関数空間の理論へつながっていきます。

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