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可測集合とルベーグ測度:外測度とカラテオドリ条件から測度を作る

対象読者: リーマン積分と一様収束、実数の上限・下限、可算集合の基礎を学んだ人。測度論は仮定せず、外測度から順に積み上げます。

前提となる記事:関数列と一様収束:極限と積分・微分はいつ交換できるか

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「有理数だけで 1 を取り、無理数では 0 を取る」という関数の積分は、いくらでも細かく区間を刻んでも決まりません。ところが有理数は数えられるほどしかなく、実数全体に比べればごくわずかなはずです。この記事は、「どんな集合にも長さを割り当てたい」という素朴な願いがなぜそのままでは叶わないのかを見たうえで、長さを測れる集合をうまく選び出し、そこに「長さ」の拡張であるルベーグ測度を作ります。読み終えると、「有理数全体の長さは 0 である」といった主張を、証明つきで言えるようになります。

  • リーマン積分は「定義域を細かく刻んで短冊で近似する」方法です。刻んでも値の振れ幅が縮まない関数(ディリクレ関数)はどうやっても積分できません。この壁は積分の技巧では越えられず、長さの測り方そのものを作り直す必要があります。
  • ルベーグ外測度 m∗m^{*} は、集合を可算個の開区間で覆い、長さの総和の下限を取ったものです。m∗m^{*} は R\mathbb{R} のすべての部分集合に対して定義でき、単調性と可算劣加法性を持ちます。しかし互いに素な集合に対する加法性は一般には成り立ちません。
  • カラテオドリの条件「任意の試験集合 AA に対して m∗(A)=m∗(A∩E)+m∗(A∩Ec)m^{*}(A) = m^{*}(A \cap E) + m^{*}(A \cap E^{c})」を満たす EE を可測集合と呼びます。可測集合全体 M\mathcal{M} は σ-加法族(補集合と可算個の和集合で閉じた集合の族)をなし、m∗m^{*} を M\mathcal{M} に制限したものが完全加法的な測度、すなわちルベーグ測度 mm です。
  • 区間・開集合・閉集合・ボレル集合(開集合から補集合と可算個の和を繰り返して得られる集合)はすべて可測なので、解析に日常的に現れる集合はまず測れます。一方で選択公理を使うと非可測集合(ヴィタリ集合。Appendix で構成します)が作れ、M\mathcal{M} を R\mathbb{R} の部分集合全体まで広げることはできません。
  • 外測度が 00 の集合(零集合)は自動的に可測です。「零集合を除いて成り立つ」ことを**ほとんど至るところ**(a.e.)といいます。有界関数がリーマン積分可能であることは、その不連続点全体が零集合であることと同値です。

1. 動機 — リーマン積分はどこで行き詰まるのか

Section titled “1. 動機 — リーマン積分はどこで行き詰まるのか”

1.1. リーマン積分は定義域を刻む

Section titled “1.1. リーマン積分は定義域を刻む”

有界関数 f:[a,b]→Rf : [a,b] \to \mathbb{R} に対し、分割 Δ:a=x0<x1<⋯<xn=b\Delta : a = x_0 < x_1 < \cdots < x_n = b を取り、各小区間での上限と下限

Mi=sup⁡x∈[xi−1,xi]f(x),μi=inf⁡x∈[xi−1,xi]f(x)M_i = \sup_{x \in [x_{i-1}, x_i]} f(x), \qquad \mu_i = \inf_{x \in [x_{i-1}, x_i]} f(x)

を使って上ダルブー和 S(Δ)=∑i=1nMi(xi−xi−1)S(\Delta) = \sum_{i=1}^{n} M_i (x_i - x_{i-1}) と下ダルブー和 s(Δ)=∑i=1nμi(xi−xi−1)s(\Delta) = \sum_{i=1}^{n} \mu_i (x_i - x_{i-1}) を作ります。inf⁡ΔS(Δ)=sup⁡Δs(Δ)\inf_{\Delta} S(\Delta) = \sup_{\Delta} s(\Delta) となるとき ff はリーマン積分可能であり、その共通の値を ∫abf(x) dx\int_a^b f(x)\,dx と定めます。この定義は 積分の基本定理と定積分 の 上積分・下積分とリーマン可積分性の定義(定義 3.1)[積分の基本定理と定積分] で扱いました。

この構成が動くのは、次の暗黙の期待が満たされるときだけです。すなわち、定義域を短い区間に刻めば、その上での ff の値の振れ幅 Mi−μiM_i - \mu_i が小さくなる、という期待です。ff が連続なら、有界閉区間上の一様連続性(連続関数と一様連続性 の ハイネ・カントールの定理(定理 7.1)[連続関数と一様連続性])がこれを保証します。逆にいえば、この期待が破れる関数はリーマン積分の枠組みから落ちます。

期待が破れる最も単純な例が、有理数の特性関数

χQ(x)={1(x∈Q)0(x∉Q)\chi_{\mathbb{Q}}(x) = \begin{cases} 1 & (x \in \mathbb{Q}) \\ 0 & (x \notin \mathbb{Q}) \end{cases}

です。[0,1][0,1] 上でどんな分割 Δ\Delta を取っても、各小区間は長さが正である以上、有理数も無理数も含みます(有理数と無理数はどちらも R\mathbb{R} で稠密です)。したがって Mi=1M_i = 1、μi=0\mu_i = 0 が例外なく成り立ち、

S(Δ)=∑i=1n1⋅(xi−xi−1)=1,s(Δ)=∑i=1n0⋅(xi−xi−1)=0S(\Delta) = \sum_{i=1}^{n} 1 \cdot (x_i - x_{i-1}) = 1, \qquad s(\Delta) = \sum_{i=1}^{n} 0 \cdot (x_i - x_{i-1}) = 0

となります。分割をどれだけ細かくしても上下の和は 11 と 00 のまま動きません。よって χQ\chi_{\mathbb{Q}} はリーマン積分可能ではありません。

これは病的な例外というより、症状です。χQ\chi_{\mathbb{Q}} は「ほとんどの点で 00」であるように見えるのに、リーマン積分はその「ほとんど」を表現する語彙を持っていません。

もっと深刻なのは、リーマン積分可能な関数の全体が極限で閉じないことです。Q∩[0,1]={q1,q2,q3,…}\mathbb{Q} \cap [0,1] = \{q_1, q_2, q_3, \ldots\} と番号を付け、

gn=χ{q1,q2,…,qn}g_n = \chi_{\{q_1, q_2, \ldots, q_n\}}

とおきます。gng_n は有限個の点を除いて 00 ですから、リーマン積分可能で ∫01gn(x) dx=0\int_0^1 g_n(x)\,dx = 0 です。しかも 0≤g1≤g2≤⋯≤10 \le g_1 \le g_2 \le \cdots \le 1 と単調増加で、各点 x∈[0,1]x \in [0,1] で gn(x)→χQ(x)g_n(x) \to \chi_{\mathbb{Q}}(x) が成り立ちます。にもかかわらず、極限関数はリーマン積分可能ですらありません。

関数列と一様収束では、一様収束のもとで極限と積分が交換できること(項別積分定理(定理 5.2)[関数列と一様収束])を見ました。しかし一様収束は強すぎる仮定です。フーリエ級数の収束、確率論での確率変数の収束、変分問題での最小化列の収束は、いずれも一般には一様収束ではありません。各点収束や単調収束のレベルで積分と極限を交換できる枠組みが要る、というのがルベーグの出発点です。

リーマン積分は定義域 [a,b][a,b] を刻みました。ルベーグの提案は、代わりに値域を刻むことです。ff の値域を y0<y1<⋯<yNy_0 < y_1 < \cdots < y_N で刻み、

Ek={x∈[a,b]:yk−1≤f(x)<yk}E_k = \{ x \in [a,b] : y_{k-1} \le f(x) < y_k \}

とおきます。EkE_k の「大きさ」を λk\lambda_k と書くことにして、和 ∑k=1Nyk−1λk\sum_{k=1}^{N} y_{k-1} \lambda_k を考えるわけです。硬貨の山の総額を数えるとき、手前から一枚ずつ足していく(定義域を刻む)のではなく、同じ額面の硬貨をまとめて枚数を数える(値域を刻む)ほうが速い、というよく引かれる比喩がこれに当たります。

この和は、値域を刻む幅を細かくすれば自動的に精度が上がります。x∈Ekx \in E_k なら f(x)f(x) と yk−1y_{k-1} の差は高々 yk−yk−1y_k - y_{k-1} だからです。定義域を刻む場合と違って、ff が定義域上でどれだけ暴れていようと関係ありません。

代償ははっきりしています。Ek=f−1([yk−1,yk))E_k = f^{-1}([y_{k-1}, y_k)) は、ff が暴れていれば区間でも区間の有限和でもない、ひどく複雑な集合になります。χQ\chi_{\mathbb{Q}} なら EkE_k は Q∩[0,1]\mathbb{Q} \cap [0,1] そのものです。つまり値域を刻む積分を作るには、まず「複雑な集合の大きさ」を測る理論が要る。この記事の主題はそこです。積分そのものは次章 ルベーグ積分の定義と収束定理 で扱います。

では、部分集合の大きさを測る写像 μ\mu に何を要求すべきでしょうか。素朴には次の四つです。

要請内容
(M1) 正規化任意の区間 II に対して μ(I)=ℓ(I)\mu(I) = \ell(I)(ℓ\ell は区間の長さ)
(M2) 平行移動不変性任意の EE と t∈Rt \in \mathbb{R} に対して μ(E+t)=μ(E)\mu(E + t) = \mu(E)
(M3) 完全加法性互いに素な E1,E2,…E_1, E_2, \ldots に対して μ(⋃nEn)=∑nμ(En)\mu\left(\bigcup_n E_n\right) = \sum_n \mu(E_n)
(M4) 普遍性R\mathbb{R} のすべての部分集合に対して μ\mu が定義される

(M3) を有限加法性ではなく可算加法性にしているのは、§1.3 で見たとおり可算個の極限操作を扱いたいからです。ところが、この四つは同時には成り立ちません。選択公理のもとで矛盾が導かれます(この記事の Appendix で証明します)。

四つのうちどれを捨てるか。(M1) を捨てれば長さの理論でなくなり、(M2) を捨てれば座標の取り方に依存する不自然なものになり、(M3) を捨てれば極限が扱えません。残るのは (M4) です。すべての集合を測ることを諦め、「測れる集合」の族を先に切り出す。この族の元が可測集合であり、その定義がこの記事の核心です。

この記事の道筋:区間の長さから出発して完全加法的な測度に至るまで

2. 準備 — 記号と、可算個を扱う覚悟

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自然数は N={1,2,3,…}\mathbb{N} = \{1, 2, 3, \ldots\} とします。Ec=R∖EE^{c} = \mathbb{R} \setminus E、A∖B=A∩BcA \setminus B = A \cap B^{c} と書きます。「可算」は「有限または可算無限」の意味で使います。可算個の可算集合の和集合は可算である、という事実は繰り返し使います。

区間とは、端点 a≤ba \le b を持つ (a,b)(a,b)、[a,b][a,b]、[a,b)[a,b)、(a,b](a,b] のいずれか、あるいは (−∞,a)(-\infty, a)、(a,∞)(a, \infty) のような非有界なもの、あるいは R\mathbb{R} 自身、あるいは空集合を指します。その長さ ℓ(I)\ell(I) を、有界なら b−ab - a、非有界なら ∞\infty、ℓ(∅)=0\ell(\emptyset) = 0 と定めます。

値は [0,∞][0, \infty] の中で考えます。非負の項からなる級数 ∑n=1∞an\sum_{n=1}^{\infty} a_n(an∈[0,∞]a_n \in [0,\infty])は、有限部分和の上限として [0,∞][0,\infty] の元として常に定まり、しかも項の並べ替えで値が変わりません(項がすべて有限のときは 定理 7.10[級数と収束判定] の 1、二重添字の和については 定理 7.11[級数と収束判定] の 1。∞\infty の項があればどの並べ方でも和は ∞\infty です)。この事実のおかげで、可算個の区間を二重添字で並べたり順序を付け替えたりしても和が変わらず、以下の議論が回ります。∞+x=∞\infty + x = \infty、0⋅∞=00 \cdot \infty = 0 という規約も使います。

定義 3.1(ルベーグ外測度)↗

A⊂RA \subset \mathbb{R} に対し、

m∗(A)=inf⁡{∑n=1∞ℓ(In)  |  I1,I2,… は開区間で A⊂⋃n=1∞In}m^{*}(A) = \inf \left\{ \sum_{n=1}^{\infty} \ell(I_n) \;\middle|\; I_1, I_2, \ldots \text{ は開区間で } A \subset \bigcup_{n=1}^{\infty} I_n \right\}

と定め、これを AA のルベーグ外測度という。値は [0,∞][0, \infty] に属する。

下限を取る集合は空ではありません。In=(−n,n)I_n = (-n, n) と取れば ⋃nIn=R⊃A\bigcup_n I_n = \mathbb{R} \supset A だからです(このとき総和は ∞\infty ですが、下限を取る対象としては適格です)。したがって m∗(A)m^{*}(A) は常に定義されます。外測度は R\mathbb{R} のすべての部分集合に対して定義されることに注意してください。§1.5 の (M4) はここでは生きています。失われるのは加法性のほうです。

被覆は可算無限列としましたが、有限個の開区間 I1,…,INI_1, \ldots, I_N で AA を覆えるときも、n>Nn > N に対して In=(−ε2−n,ε2−n)I_n = (-\varepsilon 2^{-n}, \varepsilon 2^{-n}) を付け足せば可算列になり、総和は ∑n>Nε2−n+1≤2ε\sum_{n > N} \varepsilon 2^{-n+1} \le 2\varepsilon しか増えません。ε>0\varepsilon > 0 は任意なので、下限を計算するうえでは有限被覆も許してよいことになります。以下ではこの言い換えを断りなく使います。

開区間による覆い(可算個まで許す)I₁I₂I₃I₄I₅I₆集合 A ⊆ ℝ
ルベーグ外測度:集合 A を可算個の開区間で覆い、長さの総和の下限を取る

命題 3.2(外測度の基本性質)✓

外測度 m∗m^{*} について次が成り立つ。

  1. m∗(∅)=0m^{*}(\emptyset) = 0。
  2. (単調性)A⊂BA \subset B ならば m∗(A)≤m∗(B)m^{*}(A) \le m^{*}(B)。
  3. (可算劣加法性)A1,A2,…⊂RA_1, A_2, \ldots \subset \mathbb{R} に対し m∗(⋃n=1∞An)≤∑n=1∞m∗(An)\displaystyle m^{*}\left( \bigcup_{n=1}^{\infty} A_n \right) \le \sum_{n=1}^{\infty} m^{*}(A_n)。
  4. (平行移動不変性)t∈Rt \in \mathbb{R} と A⊂RA \subset \mathbb{R} に対し m∗(A+t)=m∗(A)m^{*}(A + t) = m^{*}(A)。ここで A+t={a+t:a∈A}A + t = \{a + t : a \in A\}。
証明(命題 3.2)

(1) 任意の ε>0\varepsilon > 0 に対し、In=(−ε2−n,ε2−n)I_n = (-\varepsilon 2^{-n}, \varepsilon 2^{-n}) とおくと ∅⊂⋃nIn\emptyset \subset \bigcup_n I_n であり、∑n=1∞ℓ(In)=∑n=1∞2ε2−n=2ε\sum_{n=1}^{\infty} \ell(I_n) = \sum_{n=1}^{\infty} 2\varepsilon 2^{-n} = 2\varepsilon です。よって m∗(∅)≤2εm^{*}(\emptyset) \le 2\varepsilon が任意の ε>0\varepsilon > 0 で成り立ち、m∗(∅)=0m^{*}(\emptyset) = 0 を得ます。

(2) {In}\{I_n\} が BB の開区間被覆なら、A⊂B⊂⋃nInA \subset B \subset \bigcup_n I_n より {In}\{I_n\} は AA の被覆でもあります。したがって m∗(A)m^{*}(A) の定義で下限を取る数の集合は m∗(B)m^{*}(B) のそれを含みます。より大きい集合の下限は小さいので m∗(A)≤m∗(B)m^{*}(A) \le m^{*}(B) です。

(3) ある nn で m∗(An)=∞m^{*}(A_n) = \infty なら右辺は ∞\infty となり主張は明らかに成り立つので、すべての nn で m∗(An)<∞m^{*}(A_n) < \infty とします。ε>0\varepsilon > 0 を取ります。下限の定義より、各 nn に対して開区間の列 {In,k}k∈N\{I_{n,k}\}_{k \in \mathbb{N}} で

An⊂⋃k=1∞In,k,∑k=1∞ℓ(In,k)≤m∗(An)+ε2−nA_n \subset \bigcup_{k=1}^{\infty} I_{n,k}, \qquad \sum_{k=1}^{\infty} \ell(I_{n,k}) \le m^{*}(A_n) + \varepsilon 2^{-n}

を満たすものが取れます(下限より真に大きい数 m∗(An)+ε2−nm^{*}(A_n) + \varepsilon 2^{-n} は、下限の定義から、ある被覆の総和以上になります)。族 {In,k}(n,k)∈N×N\{I_{n,k}\}_{(n,k) \in \mathbb{N} \times \mathbb{N}} は可算個の開区間からなり、⋃nAn\bigcup_n A_n を覆います。§2 で述べたとおり非負項の可算和は並べ方によらないので(ここでは各 ℓ(In,k)\ell(I_{n,k}) は有限で、全単射 N→N×N\mathbb{N}\to\mathbb{N}\times\mathbb{N} に沿って一列に並べた和が累次和 ∑n∑kℓ(In,k)\sum_n\sum_k\ell(I_{n,k}) に等しいことは 定理 7.11[級数と収束判定] の 1)、これを一列に並べ替えて

m∗(⋃nAn)≤∑n=1∞∑k=1∞ℓ(In,k)≤∑n=1∞(m∗(An)+ε2−n)=∑n=1∞m∗(An)+εm^{*}\left( \bigcup_{n} A_n \right) \le \sum_{n=1}^{\infty} \sum_{k=1}^{\infty} \ell(I_{n,k}) \le \sum_{n=1}^{\infty} \left( m^{*}(A_n) + \varepsilon 2^{-n} \right) = \sum_{n=1}^{\infty} m^{*}(A_n) + \varepsilon

を得ます。ε>0\varepsilon > 0 は任意なので主張が従います。

(4) {In}\{I_n\} が AA の開区間被覆であることと、{In+t}\{I_n + t\} が A+tA + t の開区間被覆であることは同値です(I+tI + t はまた開区間です)。そして ℓ(I+t)=ℓ(I)\ell(I + t) = \ell(I) です。したがって m∗(A)m^{*}(A) と m∗(A+t)m^{*}(A+t) は、まったく同じ数の集合の下限として定義されており、一致します。

(3) で A3=A4=⋯=∅A_3 = A_4 = \cdots = \emptyset と取れば有限劣加法性 m∗(A1∪A2)≤m∗(A1)+m∗(A2)m^{*}(A_1 \cup A_2) \le m^{*}(A_1) + m^{*}(A_2) が出ます。この形は後で何度も使います。

命題 3.3(可算集合の外測度は 0)✓

E⊂RE \subset \mathbb{R} が高々可算集合ならば m∗(E)=0m^{*}(E) = 0 である。

証明(命題 3.3)

EE が空集合なら明らかなので、E={x1,x2,x3,…}E = \{x_1, x_2, x_3, \ldots\} と並べます(有限集合なら同じ点を繰り返して並べます)。ε>0\varepsilon > 0 に対して In=(xn−ε2−n−1, xn+ε2−n−1)I_n = \left( x_n - \varepsilon 2^{-n-1},\ x_n + \varepsilon 2^{-n-1} \right) とおけば xn∈Inx_n \in I_n なので E⊂⋃nInE \subset \bigcup_n I_n であり、∑n=1∞ℓ(In)=∑n=1∞ε2−n=ε\sum_{n=1}^{\infty} \ell(I_n) = \sum_{n=1}^{\infty} \varepsilon 2^{-n} = \varepsilon です。よって m∗(E)≤εm^{*}(E) \le \varepsilon が任意の ε>0\varepsilon > 0 で成り立ち、m∗(E)=0m^{*}(E) = 0 を得ます。

例 3.4(可算集合の外測度は 0)

E={x1,x2,x3,…}E = \{x_1, x_2, x_3, \ldots\} を可算集合とすると m∗(E)=0m^{*}(E) = 0 である。

実際、ε>0\varepsilon > 0 に対して In=(xn−ε2−n−1, xn+ε2−n−1)I_n = \left( x_n - \varepsilon 2^{-n-1},\ x_n + \varepsilon 2^{-n-1} \right) とおけば xn∈Inx_n \in I_n なので E⊂⋃nInE \subset \bigcup_n I_n であり、

∑n=1∞ℓ(In)=∑n=1∞2⋅ε2−n−1=ε∑n=1∞2−n=ε\sum_{n=1}^{\infty} \ell(I_n) = \sum_{n=1}^{\infty} 2 \cdot \varepsilon 2^{-n-1} = \varepsilon \sum_{n=1}^{\infty} 2^{-n} = \varepsilon

です。よって m∗(E)≤εm^{*}(E) \le \varepsilon が任意の ε>0\varepsilon > 0 で成り立ち、m∗(E)=0m^{*}(E) = 0 を得ます。EE が有限集合の場合も、同じ区間列で覆えば同じ結論です。

特に m∗(Q)=0m^{*}(\mathbb{Q}) = 0 です。有理数全体は R\mathbb{R} で稠密で、どの区間にも無限個入っているのに、長さは 00 です。稠密さと大きさは別物であることを、この例はきっぱり示しています。

3.2. 区間の外測度は長さに一致する

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外測度が「長さの一般化」を名乗るには、少なくとも区間の上で長さと一致していなければなりません。これは定義から自明ではありません。[0,1][0,1] を覆う開区間の総和が 11 より小さくできないことを示すには、実数の完備性が要ります。

次の命題では、「≤\le」は覆いを 1 つ作るだけで示せますが、「≥\ge」はあらゆる覆いを相手にしなければならず、そこが難所です。証明の方針は、コンパクト性で有限個の開区間に絞り、左端から順に「次の区間は前の区間の右端を含むもの」と鎖のようにつないでいくことです。つないだ区間の長さの和は、端から端までの距離 b−ab-a を超えます。

命題 3.5(区間の外測度)✓

任意の区間 I⊂RI \subset \mathbb{R}(開・閉・半開、有界・非有界を問わない)に対して m∗(I)=ℓ(I)m^{*}(I) = \ell(I) が成り立つ。

証明(命題 3.5)

第 1 段:I=[a,b]I = [a,b](a≤ba \le b)の場合の m∗([a,b])≤b−am^{*}([a,b]) \le b - a。 ε>0\varepsilon > 0 に対し I1=(a−ε,b+ε)I_1 = (a - \varepsilon, b + \varepsilon) は [a,b][a,b] を覆う開区間で ℓ(I1)=b−a+2ε\ell(I_1) = b - a + 2\varepsilon です。§3 の言い換えより有限被覆で下限を評価してよいので m∗([a,b])≤b−a+2εm^{*}([a,b]) \le b - a + 2\varepsilon、ε→0\varepsilon \to 0 として m∗([a,b])≤b−am^{*}([a,b]) \le b - a を得ます。

第 2 段:m∗([a,b])≥b−am^{*}([a,b]) \ge b - a。 {In}n∈N\{I_n\}_{n \in \mathbb{N}} を [a,b][a,b] の任意の開区間被覆とします。[a,b][a,b] は有界閉集合なのでハイネ・ボレルの定理よりコンパクトで、有限個の In1,…,InNI_{n_1}, \ldots, I_{n_N} がすでに [a,b][a,b] を覆います。ここで実数の完備性を使いました。 総和は非負なので ∑n=1∞ℓ(In)≥∑j=1Nℓ(Inj)\sum_{n=1}^{\infty} \ell(I_n) \ge \sum_{j=1}^{N} \ell(I_{n_j}) です。よって、この有限被覆について ∑j=1Nℓ(Inj)>b−a\sum_{j=1}^{N} \ell(I_{n_j}) > b - a を示せば十分です。

有限個の開区間から次のように連鎖を選びます。a∈[a,b]a \in [a,b] は覆われているので、aa を含むものがあります。それを (α1,β1)(\alpha_1, \beta_1) とすると α1<a<β1\alpha_1 < a < \beta_1 です。(α1,β1),…,(αk,βk)(\alpha_1,\beta_1), \ldots, (\alpha_k,\beta_k) まで選べていて β1<β2<⋯<βk\beta_1 < \beta_2 < \cdots < \beta_k かつ βk≤b\beta_k \le b であるとします。βk≥β1>a\beta_k \ge \beta_1 > a なので βk∈[a,b]\beta_k \in [a,b] であり、βk\beta_k を含む区間が取れます。それを (αk+1,βk+1)(\alpha_{k+1}, \beta_{k+1}) とすると αk+1<βk<βk+1\alpha_{k+1} < \beta_k < \beta_{k+1} となり、β\beta の狭義増加が保たれます。β1<β2<⋯\beta_1 < \beta_2 < \cdots は狭義単調増加なので、選ばれる区間は互いに異なります。区間は有限個 NN しかないので、この操作は高々 NN 回で止まります。止まるのは βK>b\beta_K > b となったときです。

このとき、選んだ区間の長さの総和は

∑k=1K(βk−αk)=(βK−α1)+∑k=1K−1(βk−αk+1)\sum_{k=1}^{K} (\beta_k - \alpha_k) = (\beta_K - \alpha_1) + \sum_{k=1}^{K-1} (\beta_k - \alpha_{k+1})

と書けます(右辺を展開すると ∑kβk−∑kαk\sum_k \beta_k - \sum_k \alpha_k となり、左辺と一致します)。αk+1<βk\alpha_{k+1} < \beta_k より右辺第 2 項の各項は正なので(K=1K = 1 のときは空和で 00)、

∑j=1Nℓ(Inj)≥∑k=1K(βk−αk)≥βK−α1>b−a\sum_{j=1}^{N} \ell(I_{n_j}) \ge \sum_{k=1}^{K} (\beta_k - \alpha_k) \ge \beta_K - \alpha_1 > b - a

を得ます(最後の不等号は βK>b\beta_K > b と α1<a\alpha_1 < a から)。{In}\{I_n\} は任意だったので下限を取って m∗([a,b])≥b−am^{*}([a,b]) \ge b - a です。第 1 段と合わせて m∗([a,b])=b−am^{*}([a,b]) = b - a が示せました。

第 3 段:有界区間一般。 II を端点 a≤ba \le b の有界区間とします。a=ba = b なら II は空集合か一点集合で、命題 3.2 の (1) と 命題 3.3 より m∗(I)=0=ℓ(I)m^{*}(I) = 0 = \ell(I) です。a<ba < b とし、0<η<(b−a)/20 < \eta < (b-a)/2 を取ると

[a+η, b−η]⊂I⊂[a,b][a + \eta,\ b - \eta] \subset I \subset [a, b]

です。命題 3.2 の単調性と第 2 段までの結果から

b−a−2η=m∗([a+η,b−η])≤m∗(I)≤m∗([a,b])=b−ab - a - 2\eta = m^{*}([a+\eta, b-\eta]) \le m^{*}(I) \le m^{*}([a,b]) = b - a

となり、η→0\eta \to 0 として m∗(I)=b−a=ℓ(I)m^{*}(I) = b - a = \ell(I) を得ます。

第 4 段:非有界区間。 II が非有界なら、任意の M>0M > 0 に対して II は長さ MM の閉区間 JJ を含みます。単調性と第 2 段より m∗(I)≥m∗(J)=Mm^{*}(I) \ge m^{*}(J) = M です。MM は任意なので m∗(I)=∞=ℓ(I)m^{*}(I) = \infty = \ell(I) です。

注意 3.6(外測度に足りないもの)

命題 3.2 は劣加法性しか主張していません。互いに素な A,BA, B に対する等式 m∗(A∪B)=m∗(A)+m∗(B)m^{*}(A \cup B) = m^{*}(A) + m^{*}(B) は、外測度に対しては一般には成り立ちません。この記事の Appendix で構成するヴィタリ集合 VV は、VV の平行移動たちが互いに素であるにもかかわらず加法性が破れる例を与えます。

そして、これは外測度の定義がまずいのではありません。§1.5 で述べたとおり (M1) から (M4) が両立しない以上、R\mathbb{R} の部分集合全体の上で完全加法的な長さは原理的に存在しないのです。次節では、加法性が成り立つ集合だけを選び出します。

4. カラテオドリの条件と可測集合

Section titled “4. カラテオドリの条件と可測集合”

次の定義の考え方を先に述べます。集合 EE が「測れる」とは、EE を物差しとして世の中のどんな集合 AA に当てても、AA を EE の内側の部分と外側の部分に切り分けたとき、2 つの部分の外測度を足すと元の AA の外測度にちょうど戻る、ということです。切り口で外測度が余分に増えたり減ったりしない集合だけを「可測」と呼びます。AA はこの切れ味を試す役なので試験集合といいます。

EA切り分けE(点線より右の区間)A∩EᶜA∩EA∩EᶜA∩E
試験集合 A を E で切る:A の外測度が、切った 2 つの部分の外測度の和に一致するかを確かめる(区間の場合の様子)

この図は区間で切る簡単な場合です。切り口が複雑な集合(たとえばヴィタリ集合)では、ある試験集合に対してこの等式が破れます。

定義 4.1(ルベーグ可測集合(カラテオドリの条件))↗

E⊂RE \subset \mathbb{R} がルベーグ可測であるとは、任意の集合 A⊂RA \subset \mathbb{R} に対して

m∗(A)=m∗(A∩E)+m∗(A∩Ec)m^{*}(A) = m^{*}(A \cap E) + m^{*}(A \cap E^{c})

が成り立つことをいう。ここで AA を試験集合と呼ぶ。ルベーグ可測集合全体のなす族を M\mathcal{M} と書く。

補題 4.2(可測性の検証は片側の不等式で足りる)✓

E⊂RE \subset \mathbb{R} とする。m∗(A)<∞m^{*}(A) < \infty を満たすすべての A⊂RA \subset \mathbb{R} に対して m∗(A)≥m∗(A∩E)+m∗(A∩Ec)m^{*}(A) \ge m^{*}(A \cap E) + m^{*}(A \cap E^{c}) が成り立つならば、E∈ME \in \mathcal{M} である。

証明(補題 4.2)

A⊂RA \subset \mathbb{R} を任意に取ります。A=(A∩E)∪(A∩Ec)A = (A \cap E) \cup (A \cap E^{c}) なので、命題 3.2 の劣加法性から m∗(A)≤m∗(A∩E)+m∗(A∩Ec)m^{*}(A) \le m^{*}(A \cap E) + m^{*}(A \cap E^{c}) は EE が何であっても成り立ちます。m∗(A)<∞m^{*}(A) < \infty なら仮定が逆向きの不等式を与えるので等号です。m∗(A)=∞m^{*}(A) = \infty なら、上の不等式から右辺も ∞\infty で等号が成り立ちます。よって 定義 4.1 の条件が成り立ちます。

注意 4.3(この条件をどう読むか)

三つの注意を述べます。

第一に、示すべきは片側の不等式だけです。 A=(A∩E)∪(A∩Ec)A = (A \cap E) \cup (A \cap E^{c}) なので、命題 3.2 の劣加法性から m∗(A)≤m∗(A∩E)+m∗(A∩Ec)m^{*}(A) \le m^{*}(A \cap E) + m^{*}(A \cap E^{c}) は EE が何であっても常に成り立ちます。よって可測性の検証で確かめるべきは

m∗(A)≥m∗(A∩E)+m∗(A∩Ec)m^{*}(A) \ge m^{*}(A \cap E) + m^{*}(A \cap E^{c})

のみです。さらに m∗(A)=∞m^{*}(A) = \infty のときこれは自明なので、m∗(A)<∞m^{*}(A) < \infty なる AA だけを考えれば十分です。

第二に、条件は EE と EcE^{c} について完全に対称です。 (Ec)c=E(E^{c})^{c} = E なので、E∈ME \in \mathcal{M} ならただちに Ec∈ME^{c} \in \mathcal{M} が従います。補集合について閉じていることが、定義から労なく手に入るわけです。

第三に、直観です。 条件は「EE はどんな試験集合 AA を持ってきても、AA を EE の内側と外側にきれいに切り分ける」と読めます。切り口が「ぼやけている」集合、たとえばヴィタリ集合のような集合は、適当な AA に対してこの等式を破ります。

歴史的には、ルベーグ自身は有界集合 E⊂IE \subset I に対して内測度 ℓ(I)−m∗(I∖E)\ell(I) - m^{*}(I \setminus E) を定義し、これが外測度と一致することを可測性の定義としました。カラテオドリが 1914 年に導入した上の形は、有界性を前提とせず、Rd\mathbb{R}^d にも抽象的な外測度にもそのまま移せる点で優れています。実際、この記事の第 4 節の議論は m∗m^{*} の具体的な形を一切使っておらず、命題 3.2 の (1)(2)(3) だけから従います。

命題 4.4(外測度零の集合は可測)✓

E⊂RE \subset \mathbb{R} が m∗(E)=0m^{*}(E) = 0 を満たすならば E∈ME \in \mathcal{M} である。

証明(命題 4.4)

A⊂RA \subset \mathbb{R} を任意に取ります。補題 4.2 より m∗(A)≥m∗(A∩E)+m∗(A∩Ec)m^{*}(A) \ge m^{*}(A \cap E) + m^{*}(A \cap E^{c}) を示せば十分です。

A∩E⊂EA \cap E \subset E なので、命題 3.2 の単調性より m∗(A∩E)≤m∗(E)=0m^{*}(A \cap E) \le m^{*}(E) = 0、すなわち m∗(A∩E)=0m^{*}(A \cap E) = 0 です。また A∩Ec⊂AA \cap E^{c} \subset A なので、同じく単調性より m∗(A∩Ec)≤m∗(A)m^{*}(A \cap E^{c}) \le m^{*}(A) です。二つを足して

m∗(A∩E)+m∗(A∩Ec)≤0+m∗(A)=m∗(A)m^{*}(A \cap E) + m^{*}(A \cap E^{c}) \le 0 + m^{*}(A) = m^{*}(A)

を得ます。

例 3.4 と合わせると、Q\mathbb{Q} をはじめとするすべての可算集合が可測で測度 00 であることが分かります。第 5 節で見るように、非可算だが外測度 00 の集合もあります。

4.2. 可測集合の族は σ-加法族をなす

Section titled “4.2. 可測集合の族は σ-加法族をなす”

次の定理の証明は長いので、先に筋道を述べます。(a)(b) は定義からすぐ出ます。(c) では「2 つの可測集合の和集合がまた可測」を、E1E_1 で切ってから、残りを E2E_2 で切る、という 2 段階の切り分けで示します。このとき、2 回目の切り分けでは試験集合として最初の AA ではなく A∩E1cA \cap E_1^{c} を使う点がカギです。(d) は互いに素な有限個の場合の加法性、(e) は (d) の極限をとって可算個に広げる部分です。(e) の最後は、m∗(A)m^{*}(A) が両側から同じ値ではさまれて等号になる、という論法です。

定理 4.5(可測集合族の構造)✓

M\mathcal{M} は R\mathbb{R} 上の σ-加法族である。すなわち次の三つが成り立つ。

  1. ∅∈M\emptyset \in \mathcal{M} かつ R∈M\mathbb{R} \in \mathcal{M}。
  2. E∈ME \in \mathcal{M} ならば Ec∈ME^{c} \in \mathcal{M}。
  3. E1,E2,…∈ME_1, E_2, \ldots \in \mathcal{M} ならば ⋃n=1∞En∈M\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty} E_n \in \mathcal{M}。

さらに、E1,E2,…∈ME_1, E_2, \ldots \in \mathcal{M} が互いに素(i≠ji \ne j ならば Ei∩Ej=∅E_i \cap E_j = \emptyset)ならば、任意の試験集合 A⊂RA \subset \mathbb{R} に対して

m∗(A∩⋃n=1∞En)=∑n=1∞m∗(A∩En)m^{*}\left( A \cap \bigcup_{n=1}^{\infty} E_n \right) = \sum_{n=1}^{\infty} m^{*}(A \cap E_n)

が成り立つ。

証明(定理 4.5)

(a) ∅,R∈M\emptyset, \mathbb{R} \in \mathcal{M}。 命題 3.2 より m∗(∅)=0m^{*}(\emptyset) = 0 なので、命題 4.4 から ∅∈M\emptyset \in \mathcal{M} です。R=∅c\mathbb{R} = \emptyset^{c} なので (b) から R∈M\mathbb{R} \in \mathcal{M} が従います。

(b) 補集合について閉じる。 定義 4.1 の等式は EE と EcE^{c} を入れ替えても同じ式です。よって E∈M⇒Ec∈ME \in \mathcal{M} \Rightarrow E^{c} \in \mathcal{M}。

(c) 有限和について閉じる。 E1,E2∈ME_1, E_2 \in \mathcal{M} とし、AA を任意の試験集合とします。まず E1E_1 の可測性を AA に適用して

m∗(A)=m∗(A∩E1)+m∗(A∩E1c)m^{*}(A) = m^{*}(A \cap E_1) + m^{*}(A \cap E_1^{c})

を得ます。次に E2E_2 の可測性を試験集合 A∩E1cA \cap E_1^{c} に適用して

m∗(A∩E1c)=m∗(A∩E1c∩E2)+m∗(A∩E1c∩E2c)m^{*}(A \cap E_1^{c}) = m^{*}(A \cap E_1^{c} \cap E_2) + m^{*}(A \cap E_1^{c} \cap E_2^{c})

を得ます。二つを合わせると

m∗(A)=m∗(A∩E1)+m∗(A∩E1c∩E2)+m∗(A∩(E1∪E2)c)m^{*}(A) = m^{*}(A \cap E_1) + m^{*}(A \cap E_1^{c} \cap E_2) + m^{*}\bigl( A \cap (E_1 \cup E_2)^{c} \bigr)

です(最後の項ではド・モルガンの法則 E1c∩E2c=(E1∪E2)cE_1^{c} \cap E_2^{c} = (E_1 \cup E_2)^{c} を使いました)。ところが

A∩(E1∪E2)=(A∩E1)∪(A∩E1c∩E2)A \cap (E_1 \cup E_2) = (A \cap E_1) \cup (A \cap E_1^{c} \cap E_2)

なので(左辺の点は E1E_1 に入るか、入らずに E2E_2 に入るかのどちらかです)、命題 3.2 の劣加法性より

m∗(A∩(E1∪E2))≤m∗(A∩E1)+m∗(A∩E1c∩E2)m^{*}\bigl( A \cap (E_1 \cup E_2) \bigr) \le m^{*}(A \cap E_1) + m^{*}(A \cap E_1^{c} \cap E_2)

です。したがって

m∗(A)≥m∗(A∩(E1∪E2))+m∗(A∩(E1∪E2)c)m^{*}(A) \ge m^{*}\bigl( A \cap (E_1 \cup E_2) \bigr) + m^{*}\bigl( A \cap (E_1 \cup E_2)^{c} \bigr)

となり、補題 4.2 より E1∪E2∈ME_1 \cup E_2 \in \mathcal{M} です。帰納法により有限和 E1∪⋯∪EnE_1 \cup \cdots \cup E_n も可測です。(b) とド・モルガンの法則から有限交叉 E1∩E2=(E1c∪E2c)cE_1 \cap E_2 = (E_1^{c} \cup E_2^{c})^{c} も可測、したがって差 E1∖E2=E1∩E2cE_1 \setminus E_2 = E_1 \cap E_2^{c} も可測です。

(d) 互いに素な有限個に対する加法性(試験集合つき)。 F1,…,Fn∈MF_1, \ldots, F_n \in \mathcal{M} が互いに素なとき、任意の AA に対して

m∗(A∩⋃k=1nFk)=∑k=1nm∗(A∩Fk)m^{*}\left( A \cap \bigcup_{k=1}^{n} F_k \right) = \sum_{k=1}^{n} m^{*}(A \cap F_k)

が成り立つことを nn についての帰納法で示します。n=1n = 1 は自明です。n−1n - 1 で成り立つとし、G=⋃k=1nFkG = \bigcup_{k=1}^{n} F_k とおきます。FnF_n の可測性を試験集合 A∩GA \cap G に適用します。FkF_k たちが互いに素なので

(A∩G)∩Fn=A∩Fn,(A∩G)∩Fnc=A∩⋃k=1n−1Fk(A \cap G) \cap F_n = A \cap F_n, \qquad (A \cap G) \cap F_n^{c} = A \cap \bigcup_{k=1}^{n-1} F_k

です。よって

m∗(A∩G)=m∗(A∩Fn)+m∗(A∩⋃k=1n−1Fk)=m∗(A∩Fn)+∑k=1n−1m∗(A∩Fk)m^{*}(A \cap G) = m^{*}(A \cap F_n) + m^{*}\left( A \cap \bigcup_{k=1}^{n-1} F_k \right) = m^{*}(A \cap F_n) + \sum_{k=1}^{n-1} m^{*}(A \cap F_k)

となり(最後の等号は帰納法の仮定)、主張が従います。

(e) 可算和について閉じること、および最後の等式。 E1,E2,…∈ME_1, E_2, \ldots \in \mathcal{M} とし E=⋃n=1∞EnE = \bigcup_{n=1}^{\infty} E_n とおきます。互いに素な形に直すため

F1=E1,Fn=En∖(E1∪⋯∪En−1)(n≥2)F_1 = E_1, \qquad F_n = E_n \setminus (E_1 \cup \cdots \cup E_{n-1}) \quad (n \ge 2)

とおきます。(c) より Fn∈MF_n \in \mathcal{M} で、FnF_n たちは互いに素、そして ⋃nFn=E\bigcup_{n} F_n = E です。GN=⋃n=1NFnG_N = \bigcup_{n=1}^{N} F_n とおくと (c) より GN∈MG_N \in \mathcal{M} です。

任意の試験集合 AA に対して、GNG_N の可測性と (d) から

m∗(A)=m∗(A∩GN)+m∗(A∩GNc)=∑n=1Nm∗(A∩Fn)+m∗(A∩GNc)m^{*}(A) = m^{*}(A \cap G_N) + m^{*}(A \cap G_N^{c}) = \sum_{n=1}^{N} m^{*}(A \cap F_n) + m^{*}(A \cap G_N^{c})

です。GN⊂EG_N \subset E より Ec⊂GNcE^{c} \subset G_N^{c} なので、命題 3.2 の単調性から m∗(A∩GNc)≥m∗(A∩Ec)m^{*}(A \cap G_N^{c}) \ge m^{*}(A \cap E^{c}) です。よって

m∗(A)≥∑n=1Nm∗(A∩Fn)+m∗(A∩Ec)m^{*}(A) \ge \sum_{n=1}^{N} m^{*}(A \cap F_n) + m^{*}(A \cap E^{c})

が任意の NN で成り立ちます。左辺は NN に依らないので N→∞N \to \infty として

m∗(A)≥∑n=1∞m∗(A∩Fn)+m∗(A∩Ec)m^{*}(A) \ge \sum_{n=1}^{\infty} m^{*}(A \cap F_n) + m^{*}(A \cap E^{c})

を得ます。ここで A∩E=⋃n(A∩Fn)A \cap E = \bigcup_{n} (A \cap F_n) なので、命題 3.2 の可算劣加法性より ∑nm∗(A∩Fn)≥m∗(A∩E)\sum_{n} m^{*}(A \cap F_n) \ge m^{*}(A \cap E) です。したがって

m∗(A)≥∑n=1∞m∗(A∩Fn)+m∗(A∩Ec)≥m∗(A∩E)+m∗(A∩Ec)≥m∗(A)m^{*}(A) \ge \sum_{n=1}^{\infty} m^{*}(A \cap F_n) + m^{*}(A \cap E^{c}) \ge m^{*}(A \cap E) + m^{*}(A \cap E^{c}) \ge m^{*}(A)

となります(最後は劣加法性)。両端が一致するので、途中の不等号はすべて等号です。特に E∈ME \in \mathcal{M} であり、かつ

∑n=1∞m∗(A∩Fn)=m∗(A∩E)\sum_{n=1}^{\infty} m^{*}(A \cap F_n) = m^{*}(A \cap E)

が成り立ちます。もとの EnE_n たちが互いに素であった場合は Fn=EnF_n = E_n なので、これが定理の最後の等式です。

補集合と可算和が使えるので、ド・モルガンの法則により可算交叉 ⋂nEn=(⋃nEnc)c\bigcap_{n} E_n = \left( \bigcup_{n} E_n^{c} \right)^{c} も M\mathcal{M} に属します。以後この事実も断りなく使います。

定義 4.6(ルベーグ測度)↗

外測度 m∗m^{*} を可測集合族 M\mathcal{M} に制限したものを mm と書き、ルベーグ測度という。すなわち E∈ME \in \mathcal{M} に対し m(E)=m∗(E)m(E) = m^{*}(E)。

系 4.7(ルベーグ測度の完全加法性)✓

m(∅)=0m(\emptyset) = 0 である。また E1,E2,…∈ME_1, E_2, \ldots \in \mathcal{M} が互いに素ならば

m(⋃n=1∞En)=∑n=1∞m(En)m\left( \bigcup_{n=1}^{\infty} E_n \right) = \sum_{n=1}^{\infty} m(E_n)

が成り立つ。さらに mm は平行移動不変である。すなわち E∈ME \in \mathcal{M} と t∈Rt \in \mathbb{R} に対し E+t∈ME + t \in \mathcal{M} かつ m(E+t)=m(E)m(E+t) = m(E)。

証明(系 4.7)

m(∅)=m∗(∅)=0m(\emptyset) = m^{*}(\emptyset) = 0 は 命題 3.2 の (1) です。完全加法性は、定理 4.5 の最後の等式で試験集合を A=RA = \mathbb{R} と取れば得られます。実際、R∩En=En\mathbb{R} \cap E_n = E_n であり、和集合も M\mathcal{M} に属するので、両辺は mm の値として読めます。

平行移動不変性を示します。E∈ME \in \mathcal{M} と t∈Rt \in \mathbb{R} を取り、AA を任意の試験集合とします。(E+t)c=Ec+t(E + t)^{c} = E^{c} + t および A∩(E+t)=((A−t)∩E)+tA \cap (E + t) = \bigl( (A - t) \cap E \bigr) + t に注意して、命題 3.2 の (4) を三度使うと

m∗(A∩(E+t))+m∗(A∩(E+t)c)=m∗((A−t)∩E)+m∗((A−t)∩Ec)=m∗(A−t)=m∗(A)\begin{aligned} m^{*}\bigl( A \cap (E+t) \bigr) + m^{*}\bigl( A \cap (E+t)^{c} \bigr) &= m^{*}\bigl( (A - t) \cap E \bigr) + m^{*}\bigl( (A-t) \cap E^{c} \bigr) \\ &= m^{*}(A - t) = m^{*}(A) \end{aligned}

となります(2 行目の最初の等号は EE の可測性を試験集合 A−tA - t に適用したものです)。よって E+t∈ME + t \in \mathcal{M} で、m(E+t)=m∗(E+t)=m∗(E)=m(E)m(E+t) = m^{*}(E+t) = m^{*}(E) = m(E) です。

命題 4.4 と合わせると、mm は完備でもあります。すなわち m(N)=0m(N) = 0 となる N∈MN \in \mathcal{M} の部分集合はすべて M\mathcal{M} に属し、測度 00 です(部分集合の外測度は単調性より 00 だからです)。この性質は「ほとんど至るところ」の議論を滑らかにします。第 6 節で立ち返ります。

前節までで M\mathcal{M} が良い構造を持つことは分かりましたが、M={∅,R}\mathcal{M} = \{\emptyset, \mathbb{R}\} でも σ-加法族です。M\mathcal{M} が十分大きいことを確かめなければ理論に中身がありません。

定理 5.1(区間・開集合・ボレル集合の可測性)✓

次が成り立つ。

  1. 任意の a∈Ra \in \mathbb{R} に対して (a,∞)∈M(a, \infty) \in \mathcal{M} である。
  2. すべての区間、すべての開集合、すべての閉集合は M\mathcal{M} に属する。さらに、開集合全体を含む最小の σ-加法族(ボレル集合族)B\mathcal{B} について B⊂M\mathcal{B} \subset \mathcal{M} が成り立つ。
  3. 任意の区間 II に対して m(I)=ℓ(I)m(I) = \ell(I) である。
証明(定理 5.1)

(1) E=(a,∞)E = (a, \infty) とおき、AA を任意の試験集合とします。補題 4.2 より m∗(A)<∞m^{*}(A) < \infty の場合に m∗(A∩E)+m∗(A∩Ec)≤m∗(A)m^{*}(A \cap E) + m^{*}(A \cap E^{c}) \le m^{*}(A) を示せば十分です。

ε>0\varepsilon > 0 を取り、開区間の被覆 {In}\{I_n\} で A⊂⋃nInA \subset \bigcup_n I_n かつ ∑nℓ(In)≤m∗(A)+ε\sum_n \ell(I_n) \le m^{*}(A) + \varepsilon となるものを取ります。各 nn について

In′=In∩(a,∞),In′′=In∩(−∞,a]I_n' = I_n \cap (a, \infty), \qquad I_n'' = I_n \cap (-\infty, a]

とおきます。In′I_n' と In′′I_n'' は(空かもしれない)区間で、InI_n を点 aa で切ったものですから

ℓ(In′)+ℓ(In′′)=ℓ(In)\ell(I_n') + \ell(I_n'') = \ell(I_n)

が成り立ちます(a∉Ina \notin I_n なら一方が InI_n で他方が空、a∈Ina \in I_n なら In=(c,d)I_n = (c,d) に対して ℓ(In′)=d−a\ell(I_n') = d - a、ℓ(In′′)=a−c\ell(I_n'') = a - c です)。さて A∩E⊂⋃nIn′A \cap E \subset \bigcup_n I_n' かつ A∩Ec⊂⋃nIn′′A \cap E^{c} \subset \bigcup_n I_n'' なので、命題 3.2 の単調性と可算劣加法性、および 命題 3.5 より

m∗(A∩E)≤∑nm∗(In′)=∑nℓ(In′),m∗(A∩Ec)≤∑nℓ(In′′)m^{*}(A \cap E) \le \sum_{n} m^{*}(I_n') = \sum_{n} \ell(I_n'), \qquad m^{*}(A \cap E^{c}) \le \sum_{n} \ell(I_n'')

です。足すと

m∗(A∩E)+m∗(A∩Ec)≤∑n(ℓ(In′)+ℓ(In′′))=∑nℓ(In)≤m∗(A)+εm^{*}(A \cap E) + m^{*}(A \cap E^{c}) \le \sum_{n} \bigl( \ell(I_n') + \ell(I_n'') \bigr) = \sum_{n} \ell(I_n) \le m^{*}(A) + \varepsilon

となり、ε→0\varepsilon \to 0 として主張を得ます。

(2) (1) と 定理 4.5 から順に積み上げます。まず補集合を取って (−∞,a]∈M(-\infty, a] \in \mathcal{M} です。次に

(−∞,b)=⋃n=1∞(−∞, b−1n](-\infty, b) = \bigcup_{n=1}^{\infty} \left( -\infty,\ b - \tfrac{1}{n} \right]

は可算和なので M\mathcal{M} に属します(右辺の和が左辺に等しいのは、x<bx < b ならある nn で x≤b−1/nx \le b - 1/n となるからです)。したがって

(a,b)=(a,∞)∩(−∞,b)∈M(a, b) = (a, \infty) \cap (-\infty, b) \in \mathcal{M}

です。一点集合 {a}\{a\} は 命題 3.3 と 命題 4.4 より可測なので、[a,b]=(a,b)∪{a}∪{b}[a,b] = (a,b) \cup \{a\} \cup \{b\}、[a,b)=(a,b)∪{a}[a,b) = (a,b) \cup \{a\} なども可測です。非有界区間も上で扱いました。以上ですべての区間が可測です。

U⊂RU \subset \mathbb{R} を開集合とします。UU の各点 xx に対し、x∈(c,d)⊂Ux \in (c, d) \subset U なる開区間があり、有理数の稠密性(定理 5.2[実数の完備性とコーシー列])から p,q∈Qp, q \in \mathbb{Q} で c<p<x<q<dc < p < x < q < d を満たすものが取れます。このとき x∈(p,q)⊂Ux \in (p,q) \subset U です。よって

U=⋃{(p,q)  :  p,q∈Q, p<q, (p,q)⊂U}U = \bigcup \bigl\{ (p,q) \;:\; p, q \in \mathbb{Q},\ p < q,\ (p,q) \subset U \bigr\}

であり、右辺は Q×Q\mathbb{Q} \times \mathbb{Q} の部分集合で添字づけられているので可算個の開区間の和です。定理 4.5 より U∈MU \in \mathcal{M} です。閉集合は開集合の補集合なので可測です。

最後に、M\mathcal{M} はすべての開集合を含む σ-加法族です。B\mathcal{B} は開集合全体を含む σ-加法族のうち最小のものですから、B⊂M\mathcal{B} \subset \mathcal{M} です。

(3) 区間 II は (2) より可測で、m(I)=m∗(I)=ℓ(I)m(I) = m^{*}(I) = \ell(I) は 命題 3.5 です。

ボレル集合族には開集合・閉集合・可算交叉(GδG_\delta 集合)・可算和(FσF_\sigma 集合)とその繰り返しがすべて含まれます。連続関数の不連続点集合や、関数列の収束点集合といった、解析で自然に現れる集合はほぼすべてボレル集合です。定理 5.1 はそれらがすべて測れることを保証しています。

例 5.2(カントール集合:非可算だが測度 0)

C0=[0,1]C_0 = [0,1] とし、Cn−1C_{n-1} を構成する各閉区間から、その中央にある長さ 3−n3^{-n} の開区間を取り除いて CnC_n を作る(n=1,2,…n = 1, 2, \ldots)。CnC_n は長さ 3−n3^{-n} の閉区間 2n2^n 個の和である。カントール集合を C=⋂n=0∞CnC = \bigcap_{n=0}^{\infty} C_n と定める。

CC は閉集合の可算交叉なので閉集合であり、定理 5.1 より可測です。測度を計算します。C⊂CnC \subset C_n と単調性、および CnC_n が互いに素な 2n2^n 個の閉区間の和であることと 系 4.7、定理 5.1 の (3) から

m(C)≤m(Cn)=2n⋅3−n=(23)nm(C) \le m(C_n) = 2^n \cdot 3^{-n} = \left( \frac{2}{3} \right)^n

です。(2/3)n→0(2/3)^n \to 0(n→∞n \to \infty)なので m(C)=0m(C) = 0 を得ます。

一方、CC は非可算です。x∈[0,1]x \in [0,1] の 33 進展開 x=∑k=1∞ak3−kx = \sum_{k=1}^{\infty} a_k 3^{-k}(ak∈{0,1,2}a_k \in \{0,1,2\})を使うと、CC はすべての aka_k を 00 か 22 に取れる xx の全体と一致します。写像 (ak)k↦∑kak3−k(a_k)_k \mapsto \sum_k a_k 3^{-k} は {0,2}N\{0,2\}^{\mathbb{N}} から CC への全単射を与えるので、CC の濃度は連続体濃度 2ℵ02^{\aleph_0} です(濃度と無限 の 連続体濃度の定義(定義 6.5)[濃度と無限])。

つまり濃度と測度は独立です。Q\mathbb{Q} は可算で測度 00、CC は非可算で測度 00、[0,1][0,1] は非可算で測度 11。可算集合が零集合であることは 例 3.4 で見ましたが、逆は成り立ちません。

注意 5.3(ボレル集合族はルベーグ可測集合族より真に小さい)

例 5.2 から B⊊M\mathcal{B} \subsetneq \mathcal{M} が濃度の比較で分かります。m(C)=0m(C) = 0 なので、CC の任意の部分集合は外測度 00 であり、命題 4.4 より可測です。よって M\mathcal{M} は CC の冪集合を含み、その濃度は 22ℵ02^{2^{\aleph_0}} 以上です。一方、B\mathcal{B} の濃度は 2ℵ02^{\aleph_0} であることが(超限帰納法による構成から)知られています。2ℵ0<22ℵ02^{\aleph_0} < 2^{2^{\aleph_0}} なので、可測だがボレル集合でない集合が存在します。

差はちょうど零集合の分です。E∈ME \in \mathcal{M} なら、あるボレル集合 BB と零集合 NN を使って E=B∖NE = B \setminus N の形に書けることが知られています。ルベーグ可測集合族は、ボレル集合族を零集合で「完備化」したものです。

6. 測度零集合と「ほとんど至るところ」

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定義 6.1(測度零集合とほとんど至るところ)↗

N⊂RN \subset \mathbb{R} が m∗(N)=0m^{*}(N) = 0 を満たすとき、NN を測度零集合(零集合)という。命題 4.4 より零集合は可測で m(N)=0m(N) = 0 である。

x∈Rx \in \mathbb{R} に関する命題 P(x)P(x) について、ある零集合 NN が存在して x∉Nx \notin N を満たすすべての xx で P(x)P(x) が成り立つとき、PP はほとんど至るところ(almost everywhere、a.e.)成り立つという。集合 EE 上で考える場合は、EE に含まれるある零集合 NN について E∖NE \setminus N 上で PP が成り立つことをいい、「EE 上 a.e. で PP」と書く。

零集合の扱いやすさは、次の二点に集約されます。第一に、零集合の部分集合はまた零集合です(単調性)。第二に、可算個の零集合の和集合はまた零集合です(可算劣加法性)。これは演習 1 で確かめてもらいます。可算個の例外を無視できるというこの性質が、以後の理論の柔軟さの源です。

例 6.2(ディリクレ関数はほとんど至るところ 0)

例 3.4 より Q\mathbb{Q} は零集合です。x∉Qx \notin \mathbb{Q} なら χQ(x)=0\chi_{\mathbb{Q}}(x) = 0 なので、χQ=0\chi_{\mathbb{Q}} = 0 は R\mathbb{R} 上 a.e. で成り立ちます。

この言い方ができると、§1.2 の困難の位置がはっきりします。χQ\chi_{\mathbb{Q}} は「ほとんど至るところ 00 の関数」であり、積分は 00 であってほしい。リーマン積分はこれを表現できませんでしたが、次章のルベーグ積分は零集合の上での値の違いを一切見ない(零集合は積分に影響しない(命題 6.4)[ルベーグ積分の定義と収束定理])ので、∫01χQ dm=0\int_0^1 \chi_{\mathbb{Q}} \, dm = 0 となります。さらに §1.3 の列 gng_n については ∫01gn dm=0→0=∫01χQ dm\int_0^1 g_n \, dm = 0 \to 0 = \int_0^1 \chi_{\mathbb{Q}} \, dm で、極限と積分の交換も成立します。

一般に、f=gf = g が a.e. で成り立てば両者のルベーグ積分は一致します。この同一視を突き詰めると、関数そのものではなく「a.e. で等しい関数の同値類」を要素とする空間、すなわち L^p 空間と関数解析への導入 の 定義 3.1[L^p 空間と関数解析への導入] が定める空間 LpL^p が現れます。「ほとんど至るところ」は便利な言い回しではなく、理論の対象そのものを決める概念です。

6.1. リーマン積分可能性の完全な特徴づけ

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零集合の言葉があると、「どの関数がリーマン積分可能か」という問いに完全な答えが与えられます。

後に続く証明の流れを先に述べます。各点での値の振れ幅(振動)が α\alpha 以上の点を、不連続点の集合が零集合であることを使って、総長の小さい有限個の開区間で覆います。覆った部分は小さいので無視でき、残りの部分では振れ幅が小さいので、ダルブー和の差が小さくなる分割が取れる、という筋です。

定理 6.3(リーマン積分可能性のルベーグの判定条件)✓

f:[a,b]→Rf : [a,b] \to \mathbb{R} を有界関数とし、DfD_f を ff の不連続点全体の集合とする。ff が [a,b][a,b] 上リーマン積分可能であるための必要十分条件は m∗(Df)=0m^{*}(D_f) = 0、すなわち DfD_f が零集合であることである。

注意 6.4(判定条件の証明の骨組み)

証明の鍵は振動です。x∈[a,b]x \in [a,b] に対し

ωf(x)=lim⁡δ→0+(sup⁡∣y−x∣<δf(y)−inf⁡∣y−x∣<δf(y))\omega_f(x) = \lim_{\delta \to 0+} \left( \sup_{|y - x| < \delta} f(y) - \inf_{|y-x| < \delta} f(y) \right)

とおきます(括弧内は δ\delta を小さくすると増えず、00 以上なので極限が存在します)。定義から、ff が xx で連続であることと ωf(x)=0\omega_f(x) = 0 は同値です。α>0\alpha > 0 に対し Dα={x∈[a,b]:ωf(x)≥α}D_\alpha = \{ x \in [a,b] : \omega_f(x) \ge \alpha \} とおくと、DαD_\alpha は閉集合であり、Df=⋃k=1∞D1/kD_f = \bigcup_{k=1}^{\infty} D_{1/k} と書けます。

十分性は次のように示します。m∗(Df)=0m^{*}(D_f) = 0 とすると単調性より各 DαD_\alpha も零集合で、しかも有界閉集合なのでコンパクトです。よって長さの総和が ε\varepsilon 未満の有限個の開区間で覆えます。その外側の点では振動が α\alpha 未満なので、その部分をさらに細かく分割すれば上下ダルブー和の差を α(b−a)+2sup⁡∣f∣⋅ε\alpha (b-a) + 2 \sup|f| \cdot \varepsilon 程度に抑えられます。α\alpha と ε\varepsilon を小さく取れば差は任意に小さくなります。

必要性は逆をたどります。ff がリーマン積分可能なら、上下ダルブー和の差が ε/k\varepsilon / k 未満の分割が取れます。差が小さいことから、D1/kD_{1/k} のうち分割点でない部分は、長さの総和が ε\varepsilon 未満の有限個の区間で覆えます。分割点は有限個なので零集合です。よって m∗(D1/k)=0m^{*}(D_{1/k}) = 0 となり、可算劣加法性から m∗(Df)=0m^{*}(D_f) = 0 です。

詳細は W. Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed. の第 11 章を参照してください。

証明(定理 6.3)

B=sup⁡[a,b]∣f∣B=\sup_{[a,b]}|f| とします。x∈[a,b]x\in[a,b] に対し振動

ωf(x)=lim⁡δ→0+(sup⁡∣y−x∣<δf(y)−inf⁡∣y−x∣<δf(y))\omega_f(x) = \lim_{\delta \to 0+} \left( \sup_{|y - x| < \delta} f(y) - \inf_{|y-x| < \delta} f(y) \right)

を定め(yy は [a,b][a,b] の中だけを動かします。括弧内は δ\delta を小さくすると増えず、00 以上なので極限が存在します)、α>0\alpha > 0 に対し Dα={x∈[a,b]:ωf(x)≥α}D_\alpha = \{ x \in [a,b] : \omega_f(x) \ge \alpha \} とおきます。分割とダルブー和の記号は 積分の基本定理と定積分 の 定義 2.1[積分の基本定理と定積分] に従います。

準備。 (i) δ↦sup⁡∣y−x∣<δf(y)−inf⁡∣y−x∣<δf(y)\delta\mapsto\sup_{|y-x|\lt\delta}f(y)-\inf_{|y-x|\lt\delta}f(y) は単調非減少なので、各 δ>0\delta\gt0 でその値は ωf(x)\omega_f(x) 以上です。(ii) ff が xx で連続   ⟺  \iff ωf(x)=0\omega_f(x)=0 は連続性の定義そのものなので、Df=⋃k≥1D1/kD_f=\bigcup_{k\ge1}D_{1/k} です。(iii) DαD_\alpha は閉集合です。実際 x∉Dαx\notin D_\alpha なら、ある δ>0\delta\gt0 で ∣y−x∣<δ|y-x|\lt\delta 上の振幅(sup⁡−inf⁡\sup-\inf)が α\alpha 未満です。∣x′−x∣<δ/2|x'-x|\lt\delta/2 なら ∣y−x′∣<δ/2|y-x'|\lt\delta/2 の点は ∣y−x∣<δ|y-x|\lt\delta を満たすので、x′x' の δ/2\delta/2 近傍での振幅も α\alpha 未満、したがって ωf(x′)<α\omega_f(x')\lt\alpha です。よって DαD_\alpha の補集合は([a,b][a,b] の中で)開集合です。

必要性。 ff が可積分とし、k≥1k\ge1 を固定します。ε>0\varepsilon\gt0 に対し、定理 3.4[積分の基本定理と定積分] により S(Δ,f)−s(Δ,f)<ε/kS(\Delta,f)-s(\Delta,f)\lt\varepsilon/k となる分割 Δ\Delta があります。x∈D1/kx\in D_{1/k} が Δ\Delta の分点でなければ、xx はある小区間 IiI_i の内部にあり、十分小さい δ\delta で (x−δ,x+δ)⊂Ii(x-\delta,x+\delta)\subset I_i なので、(i) から Mi−mi≥ωf(x)≥1/kM_i-m_i\ge\omega_f(x)\ge1/k です。そこで Mi−mi≥1/kM_i-m_i\ge1/k となる ii の集合を B\mathcal{B} とすると

1k∑i∈BΔxi≤∑i(Mi−mi)Δxi<εk,\frac1k\sum_{i\in\mathcal{B}}\Delta x_i\le\sum_{i}(M_i-m_i)\Delta x_i\lt\frac\varepsilon k,

すなわち ∑i∈BΔxi<ε\sum_{i\in\mathcal{B}}\Delta x_i\lt\varepsilon です。D1/kD_{1/k} は ⋃i∈BIi\bigcup_{i\in\mathcal{B}}I_i と有限個の分点の合併に含まれるので、単調性と劣加法性(命題 3.2)と 命題 3.5(1 点は長さ 00 の閉区間)から m∗(D1/k)≤εm^*(D_{1/k})\le\varepsilon。ε\varepsilon は任意なので m∗(D1/k)=0m^*(D_{1/k})=0、(ii) と可算劣加法性から m∗(Df)=0m^*(D_f)=0 です。

十分性。 m∗(Df)=0m^*(D_f)=0 とし、α>0\alpha\gt0、ε>0\varepsilon\gt0 を取ります。単調性より m∗(Dα)=0m^*(D_\alpha)=0 なので、定義 3.1 から DαD_\alpha は総長が ε\varepsilon 未満の開区間の可算族で覆えます。DαD_\alpha は有界閉集合なのでコンパクトで(ハイネ・ボレル)、そのうち有限個 I1,…,INI_1,\dots,I_N で覆えます。G=⋃jIjG=\bigcup_jI_j、C=[a,b]∖GC=[a,b]\setminus G とおきます。

CC も有界閉集合で、CC の各点 xx は DαD_\alpha に属さないので ωf(x)<α\omega_f(x)\lt\alpha、したがってある δx>0\delta_x\gt0 で ff の (x−2δx,x+2δx)(x-2\delta_x,x+2\delta_x) 上の振幅は α\alpha 未満です。開区間 (x−δx,x+δx)(x-\delta_x,x+\delta_x)(x∈Cx\in C)は CC を覆うので、有限個 x1,…,xrx_1,\dots,x_r で覆え、δ=min⁡lδxl\delta=\min_l\delta_{x_l} とおきます。すると、長さが δ\delta 未満で CC に含まれる閉区間 JJ の上で ff の振幅は α\alpha 未満です(JJ の 1 点は (xl−δxl,xl+δxl)(x_l-\delta_{x_l},x_l+\delta_{x_l}) に属し、J⊂(xl−2δxl,xl+2δxl)J\subset(x_l-2\delta_{x_l},x_l+2\delta_{x_l}) となるので)。

分割 Δ\Delta を、a,ba,b と (a,b)(a,b) に入る IjI_j の端点をすべて分点に含み、さらに分点を足してすべての小区間の長さを δ\delta 未満にしたものとします。小区間 Ii=[xi−1,xi]I_i=[x_{i-1},x_i] の内部 (xi−1,xi)(x_{i-1},x_i) は、どの IjI_j の端点も含みません。

  • 内部が GG と交わらないとき、内部は CC に含まれ、CC は閉なので Ii⊂CI_i\subset C。長さは δ\delta 未満なので Mi−mi<αM_i-m_i\lt\alpha です。
  • 内部がある IjI_j と交わるとき、IjI_j の端点が内部にないことから内部全体が IjI_j に含まれます(内部に IjI_j の点 tt と IjI_j の外の点 ss があれば、IjI_j の端点が tt と ss の間、つまり内部に現れてしまう)。このような小区間を 1 つの jj に割り当てると、同じ jj に割り当てられた小区間は内部が交わらず Iˉj\bar I_j に含まれるので、長さの和は ℓ(Ij)\ell(I_j) 以下です。よってこの種の小区間の長さの総和は ∑jℓ(Ij)<ε\sum_j\ell(I_j)\lt\varepsilon で、各々で Mi−mi≤2BM_i-m_i\le2B です。

以上から

S(Δ,f)−s(Δ,f)≤α(b−a)+2Bε.S(\Delta,f)-s(\Delta,f)\le\alpha(b-a)+2B\varepsilon .

η>0\eta\gt0 に対し α=η/(2(b−a))\alpha=\eta/(2(b-a))、ε=η/(4B+1)\varepsilon=\eta/(4B+1) と取れば右辺は η\eta 未満なので、定理 3.4[積分の基本定理と定積分] により ff は可積分です。

定理 6.3 は §1.2 の結論をただちに再現します。χQ\chi_{\mathbb{Q}} の不連続点集合は [0,1][0,1] 全体で、m([0,1])=1≠0m([0,1]) = 1 \ne 0 ですから、リーマン積分可能ではありません。より面白いのは次の例です。

例 6.5(トマエ関数:無限個の不連続点を持つがリーマン積分可能)

t:[0,1]→Rt : [0,1] \to \mathbb{R} を

t(x)={1/q(x=p/q, p∈Z, q∈N, gcd⁡(p,q)=1)0(x∉Q)t(x) = \begin{cases} 1/q & \left( x = p/q,\ p \in \mathbb{Z},\ q \in \mathbb{N},\ \gcd(p,q) = 1 \right) \\ 0 & (x \notin \mathbb{Q}) \end{cases}

で定める(0=0/10 = 0/1 なので t(0)=1t(0) = 1)。この tt はすべての無理点で連続、すべての有理点で不連続である。

まず有理点 rr での不連続性です。t(r)=1/q>0t(r) = 1/q > 0 ですが、rr のどんな近傍にも無理数があり、そこでの値は 00 です。よって tt は rr で連続ではありません。

次に無理点 x0x_0 での連続性です。ε>0\varepsilon > 0 を取ります。区間 [x0−1,x0+1][x_0 - 1, x_0 + 1] に属する既約分数 p/qp/q で q<1/εq < 1/\varepsilon を満たすものは有限個しかありません。実際、qq の候補は 1≤q<1/ε1 \le q < 1/\varepsilon を満たす有限個の自然数であり、各 qq に対して pp は長さ 2q2q の区間に入る整数なので有限個です。x0x_0 は無理数なのでそれらのどれとも異なり、δ\delta を x0x_0 からそれら有限個の点までの距離の最小値より小さく取れます。すると ∣x−x0∣<δ|x - x_0| < \delta のとき、xx が無理数なら t(x)=0t(x) = 0、x=p/qx = p/q(既約)なら q≥1/εq \ge 1/\varepsilon なので t(x)=1/q≤εt(x) = 1/q \le \varepsilon です。いずれにせよ ∣t(x)−t(x0)∣=∣t(x)∣≤ε|t(x) - t(x_0)| = |t(x)| \le \varepsilon で、連続性が示されました。

したがって Dt=Q∩[0,1]D_t = \mathbb{Q} \cap [0,1] で、例 3.4 よりこれは零集合です。定理 6.3 より tt はリーマン積分可能です。積分の値は、上ダルブー和が任意に小さくできること(上の議論で t(x)>εt(x) > \varepsilon となる点は有限個)と t≥0t \ge 0 から ∫01t(x) dx=0\int_0^1 t(x)\,dx = 0 です。

χQ\chi_{\mathbb{Q}} と tt はどちらも不連続点が Q\mathbb{Q} 上に稠密にありますが、χQ\chi_{\mathbb{Q}} は [0,1][0,1] 全体で不連続、tt は Q\mathbb{Q} でのみ不連続です。この差がリーマン積分可能性を分けています。

6.2. ルベーグ可測集合・可測関数とボレル集合・ボレル可測関数

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ルベーグ可測集合族 M\mathcal{M} はボレル集合族 B\mathcal{B} より真に大きい(注意 5.3)ものの、その差は零集合だけです。この事実があるので、実際の議論ではルベーグ可測関数をボレル可測関数に取り替えて差し支えありません(たとえば積測度とフビニの定理では、L1L^1 の元の代表元としてボレル可測関数を取ります)。まず集合についての主張から示します。

命題 6.6(可測集合はボレル集合と零集合の差でしか違わない)✓

E⊂RE \subset \mathbb{R} について、次の 3 条件は同値である。

  1. E∈ME \in \mathcal{M}。
  2. 任意の ε>0\varepsilon > 0 に対し、開集合 O⊃EO \supset E で m∗(O∖E)<εm^{*}(O \setminus E) < \varepsilon となるものが存在する。
  3. FσF_\sigma 集合(閉集合の可算和)FF と GδG_\delta 集合(開集合の可算交叉)GG で F⊂E⊂GF \subset E \subset G かつ m(G∖F)=0m(G \setminus F) = 0 となるものが存在する。

とくに E∈ME \in \mathcal{M} ならば E=F∪NE = F \cup N(F∈BF \in \mathcal{B}、N=E∖FN = E \setminus F は零集合)と書ける。

証明(命題 6.6)

(2) ⇒ (1) 各 nn に対し開集合 On⊃EO_n \supset E で m∗(On∖E)<1/nm^{*}(O_n \setminus E) < 1/n となるものを取り、G=⋂nOnG = \bigcap_n O_n とおきます。GG は可測(定理 5.1 と 定理 4.5)で E⊂GE \subset G です。G∖E⊂On∖EG \setminus E \subset O_n \setminus E から m∗(G∖E)≤1/nm^{*}(G \setminus E) \le 1/n がすべての nn で成り立つので G∖EG \setminus E は零集合、命題 4.4 より可測です。よって E=G∖(G∖E)∈ME = G \setminus (G \setminus E) \in \mathcal{M} です。

(1) ⇒ (2) まず m(E)<∞m(E) < \infty とします。ε>0\varepsilon > 0 に対し外測度の定義から、開区間 InI_n で E⊂⋃nInE \subset \bigcup_n I_n かつ ∑nℓ(In)<m∗(E)+ε\sum_n \ell(I_n) < m^{*}(E) + \varepsilon となるものが取れます。O=⋃nInO = \bigcup_n I_n は開集合で、命題 3.2 の可算劣加法性と 命題 3.5 より m∗(O)≤∑nm∗(In)=∑nℓ(In)<m(E)+εm^{*}(O) \le \sum_n m^{*}(I_n) = \sum_n \ell(I_n) < m(E) + \varepsilon です。OO も O∖EO \setminus E も可測(定理 5.1、定理 4.5)で OO は EE と O∖EO\setminus E の互いに素な和ですから、系 4.7 と m(E)<∞m(E)<\infty より m(O∖E)=m(O)−m(E)<εm(O \setminus E) = m(O) - m(E) < \varepsilon です。

一般の E∈ME \in \mathcal{M} では Ek=E∩[−k,k]E_k = E \cap [-k, k](k∈Nk \in \mathbb{N})が可測で m(Ek)≤2k<∞m(E_k) \le 2k < \infty です。ε>0\varepsilon > 0 に対し上の結果を EkE_k に ε/2k+1\varepsilon/2^{k+1} で適用して開集合 Ok⊃EkO_k \supset E_k、m∗(Ok∖Ek)<ε2−k−1m^{*}(O_k \setminus E_k) < \varepsilon 2^{-k-1} を取り、O=⋃kOkO = \bigcup_k O_k とおくと OO は開集合で E⊂OE \subset O です。O∖E⊂⋃k(Ok∖Ek)O \setminus E \subset \bigcup_k (O_k \setminus E_k) なので、命題 3.2 より m∗(O∖E)≤∑kε2−k−1=ε/2<εm^{*}(O \setminus E) \le \sum_k \varepsilon 2^{-k-1} = \varepsilon/2 < \varepsilon です。

(1) ⇒ (3) E∈ME \in \mathcal{M} なら Ec∈ME^{c} \in \mathcal{M} でもあるので、(2) を EE と EcE^{c} に適用できます。各 nn について開集合 On⊃EO_n \supset E、On′⊃EcO_n' \supset E^{c} で m∗(On∖E)<1/nm^{*}(O_n \setminus E) < 1/n、m∗(On′∖Ec)<1/nm^{*}(O_n' \setminus E^{c}) < 1/n となるものを取り、閉集合 Cn=(On′)cC_n = (O_n')^{c} を作ります。Cn⊂EC_n \subset E で E∖Cn=E∩On′=On′∖EcE \setminus C_n = E \cap O_n' = O_n' \setminus E^{c} です。G=⋂nOnG = \bigcap_n O_n、F=⋃nCnF = \bigcup_n C_n とおくと、FF は FσF_\sigma 集合、GG は GδG_\delta 集合で F⊂E⊂GF \subset E \subset G です。さらに各 nn で G∖E⊂On∖EG \setminus E \subset O_n \setminus E、E∖F⊂E∖CnE \setminus F \subset E \setminus C_n なので m∗(G∖E)=m∗(E∖F)=0m^{*}(G \setminus E) = m^{*}(E\setminus F) = 0 です。G∖F=(G∖E)∪(E∖F)G \setminus F = (G \setminus E) \cup (E \setminus F) だから m∗(G∖F)=0m^{*}(G \setminus F) = 0 です。

(3) ⇒ (1) E∖F⊂G∖FE \setminus F \subset G \setminus F は零集合の部分集合なので零集合、したがって 命題 4.4 で可測です。FF は 定理 5.1 で可測なので、E=F∪(E∖F)∈ME = F \cup (E \setminus F) \in \mathcal{M} です。

最後の主張は (3) の FF をとれば E∖F⊂G∖FE \setminus F \subset G\setminus F が零集合です。

次に関数についての主張です。ルベーグ可測関数・ボレル可測関数とは、可測関数(定義 3.1)[ルベーグ積分の定義と収束定理] の定義で σ\sigma-加法族をそれぞれ M\mathcal{M}、B\mathcal{B} とした関数、すなわちすべての a∈Ra \in \mathbb{R} について {f>a}∈M\{f > a\} \in \mathcal{M}(∈B\in \mathcal{B})となる f:R→R‾f:\mathbb{R}\to\overline{\mathbb{R}} のことです。

補題 6.7(ルベーグ可測関数はボレル可測関数とほとんど至るところ等しい)✓

f:R→R‾f : \mathbb{R} \to \overline{\mathbb{R}} がルベーグ可測ならば、ボレル可測関数 g:R→R‾g : \mathbb{R} \to \overline{\mathbb{R}} と、ボレル集合である零集合 N0N_0 で、x∉N0x \notin N_0 ならば f(x)=g(x)f(x) = g(x) となるものが存在する。すなわち f=gf = g は a.e. で成り立つ。ff が実数値なら gg も実数値に取れる。

証明(補題 6.7)

各有理数 qq について Eq={f>q}∈ME_q = \{f > q\} \in \mathcal{M} です。命題 6.6 (3) により、FσF_\sigma 集合 FqF_q と GδG_\delta 集合 GqG_q で Fq⊂Eq⊂GqF_q \subset E_q \subset G_q、m(Gq∖Fq)=0m(G_q \setminus F_q) = 0 となるものが取れます。Gq∖FqG_q \setminus F_q はボレル集合であり零集合です。有理数は可算なので

N0=⋃q∈Q(Gq∖Fq)N_0 = \bigcup_{q \in \mathbb{Q}} (G_q \setminus F_q)

はボレル集合で、命題 3.2 の可算劣加法性より零集合です。gg を g=fg = f(x∉N0x \notin N_0)、g=0g = 0(x∈N0x \in N_0)で定めます。x∉N0x\notin N_0 では f=gf = g なので、gg がボレル可測であることを示せば十分です。

各有理数 qq について Eq∖N0=Fq∖N0E_q \setminus N_0 = F_q \setminus N_0 です。実際、Fq⊂EqF_q \subset E_q から ⊃\supset が従い、Eq∖Fq⊂Gq∖Fq⊂N0E_q \setminus F_q \subset G_q \setminus F_q \subset N_0 から x∈Eq∖N0x \in E_q \setminus N_0 は FqF_q に入るので ⊂\subset も従います。a∈Ra \in \mathbb{R} に対し {f>a}=⋃q∈Q, q>aEq\{f > a\} = \bigcup_{q \in \mathbb{Q},\,q > a} E_q なので(f(x)>af(x) > a なら f(x)>q>af(x) > q > a となる有理数 qq がある)

{g>a}={⋃q∈Q, q>a(Fq∖N0)∪N0(a<0)⋃q∈Q, q>a(Fq∖N0)(a≥0)\{g > a\} = \begin{cases} \displaystyle\bigcup_{q \in \mathbb{Q},\, q > a} (F_q \setminus N_0) \cup N_0 & (a < 0) \\[2mm] \displaystyle\bigcup_{q \in \mathbb{Q},\, q > a} (F_q \setminus N_0) & (a \ge 0)\end{cases}

です(N0N_0 上では g=0g = 0 なので、a<0a < 0 のときだけ N0N_0 全体が入ります)。FqF_q、N0N_0 はボレル集合で、B\mathcal{B} は可算和・差で閉じているので {g>a}∈B\{g > a\} \in \mathcal{B} です。ff が実数値なら、gg は N0cN_0^{c} で ff に等しく N0N_0 上で 00 なので実数値です。

注意 6.8(部分集合上の関数)

可測集合 X⊂RX \subset \mathbb{R} 上の関数は、XX の外で 00 と定めて R\mathbb{R} 上に拡張すれば 補題 6.7 が使えます。ff の XX への制限が可測なことと、拡張が可測なことは同値です。この補題のおかげで、ルベーグ測度に関する積分論では L1L^1 や LpL^p の元の代表元としてボレル可測関数を取れます。

演習 7.1易

  1. N1,N2,…N_1, N_2, \ldots がすべて零集合ならば N=⋃n=1∞NnN = \bigcup_{n=1}^{\infty} N_n も零集合であることを示してください。
  2. 零集合の部分集合は零集合であることを示してください。
解答

1. 命題 3.2 の可算劣加法性より

0≤m∗(N)=m∗(⋃n=1∞Nn)≤∑n=1∞m∗(Nn)=∑n=1∞0=00 \le m^{*}(N) = m^{*}\left( \bigcup_{n=1}^{\infty} N_n \right) \le \sum_{n=1}^{\infty} m^{*}(N_n) = \sum_{n=1}^{\infty} 0 = 0

なので m∗(N)=0m^{*}(N) = 0 です。

2. M⊂NM \subset N で m∗(N)=0m^{*}(N) = 0 とすると、命題 3.2 の単調性より 0≤m∗(M)≤m∗(N)=00 \le m^{*}(M) \le m^{*}(N) = 0、よって m∗(M)=0m^{*}(M) = 0 です。

2 と 命題 4.4 を合わせると、零集合の部分集合はすべて可測で測度 00 です。この性質を測度の完備性といいます。これは自明な性質ではありません。たとえばルベーグ測度をボレル集合族 B\mathcal{B} に制限した測度は完備ではありません。注意 5.3 で見たように、カントール集合の部分集合にはボレル集合でないものがあるからです。

演習 7.2標準

E⊂RE \subset \mathbb{R} が次の条件を満たすとします。すなわち、任意の ε>0\varepsilon > 0 に対して開集合 OO で E⊂OE \subset O かつ m∗(O∖E)<εm^{*}(O \setminus E) < \varepsilon を満たすものが存在する。このとき EE が可測であることを示してください。

解答

各 n∈Nn \in \mathbb{N} に対し、仮定を ε=1/n\varepsilon = 1/n に適用して開集合 On⊃EO_n \supset E で m∗(On∖E)<1/nm^{*}(O_n \setminus E) < 1/n となるものを取ります。G=⋂n=1∞OnG = \bigcap_{n=1}^{\infty} O_n とおきます。

OnO_n は開集合なので 定理 5.1 より可測、そして可算交叉も可測なので(定理 4.5 の補集合と可算和からド・モルガンの法則で従います)G∈MG \in \mathcal{M} です。

E⊂GE \subset G であり、各 nn について G∖E⊂On∖EG \setminus E \subset O_n \setminus E なので、命題 3.2 の単調性より

m∗(G∖E)≤m∗(On∖E)<1nm^{*}(G \setminus E) \le m^{*}(O_n \setminus E) < \frac{1}{n}

が任意の nn で成り立ちます。よって m∗(G∖E)=0m^{*}(G \setminus E) = 0 であり、命題 4.4 より G∖E∈MG \setminus E \in \mathcal{M} です。

最後に E⊂GE \subset G から E=G∖(G∖E)=G∩(G∖E)cE = G \setminus (G \setminus E) = G \cap (G \setminus E)^{c} です。定理 4.5 より M\mathcal{M} は補集合と有限交叉について閉じているので E∈ME \in \mathcal{M} です。

なお逆も成り立ち、「可測であること」と「任意の ε>0\varepsilon > 0 に対して上のような OO が取れること」は同値です。これを可測集合の外部正則性による特徴づけといい、カラテオドリの条件よりも直観的な可測性の言い換えを与えます。

演習 7.3難

K0=[0,1]K_0 = [0,1] とし、Kn−1K_{n-1} を構成する 2n−12^{n-1} 個の閉区間のそれぞれから、その中央にある長さ 4−n4^{-n} の開区間を取り除いて KnK_n を作ります(n=1,2,…n = 1, 2, \ldots)。K=⋂n=0∞KnK = \bigcap_{n=0}^{\infty} K_n とおきます。

  1. KnK_n を構成する各閉区間の長さ ℓn\ell_n が ℓn=(2n+1)/22n+1\ell_n = (2^n + 1) / 2^{2n+1} であることを示し、この構成が実行可能である(各段階で取り除く区間の長さが元の区間の長さより小さい)ことを確かめてください。
  2. m(K)=1/2m(K) = 1/2 を示してください。
  3. KK は空でない閉集合だが内点を持たないことを示してください。
  4. 特性関数 χK\chi_K は [0,1][0,1] 上でリーマン積分可能でないことを示してください。
解答

1. Kn−1K_{n-1} の各閉区間(長さ ℓn−1\ell_{n-1})から中央の長さ 4−n4^{-n} の開区間を除くと、長さ (ℓn−1−4−n)/2(\ell_{n-1} - 4^{-n})/2 の閉区間が 2 個残ります。よって ℓ0=1\ell_0 = 1、ℓn=(ℓn−1−4−n)/2\ell_n = (\ell_{n-1} - 4^{-n})/2 です。ℓn=(2n+1)/22n+1\ell_n = (2^n+1)/2^{2n+1} を帰納法で示します。n=0n = 0 のとき (1+1)/2=1=ℓ0(1+1)/2 = 1 = \ell_0 で成立。nn で成り立つとすると

ℓn+1=12(2n+122n+1−122n+2)=12⋅2(2n+1)−122n+2=2n+1+122n+3=2n+1+122(n+1)+1\ell_{n+1} = \frac{1}{2}\left( \frac{2^n+1}{2^{2n+1}} - \frac{1}{2^{2n+2}} \right) = \frac{1}{2} \cdot \frac{2(2^n+1) - 1}{2^{2n+2}} = \frac{2^{n+1}+1}{2^{2n+3}} = \frac{2^{n+1}+1}{2^{2(n+1)+1}}

となり成立します。構成可能性は ℓn−1>4−n\ell_{n-1} > 4^{-n} を確かめればよく、

ℓn−1=2n−1+122n−1>2n−122n−1=12n≥122n=4−n\ell_{n-1} = \frac{2^{n-1}+1}{2^{2n-1}} > \frac{2^{n-1}}{2^{2n-1}} = \frac{1}{2^{n}} \ge \frac{1}{2^{2n}} = 4^{-n}

から従います(n≥1n \ge 1 で 2n≤22n2^n \le 2^{2n})。

2. 取り除かれた開区間たちは互いに素です。第 nn 段では 2n−12^{n-1} 個の長さ 4−n4^{-n} の開区間が取り除かれるので、取り除かれた部分 [0,1]∖K[0,1] \setminus K の測度は 系 4.7 の完全加法性より

m([0,1]∖K)=∑n=1∞2n−1⋅4−n=12∑n=1∞(24)n=12⋅1/21−1/2=12m\bigl( [0,1] \setminus K \bigr) = \sum_{n=1}^{\infty} 2^{n-1} \cdot 4^{-n} = \frac{1}{2} \sum_{n=1}^{\infty} \left( \frac{2}{4} \right)^{n} = \frac{1}{2} \cdot \frac{1/2}{1 - 1/2} = \frac{1}{2}

です。KK は閉集合の可算交叉なので閉集合であり 定理 5.1 より可測、[0,1]=K∪([0,1]∖K)[0,1] = K \cup ([0,1] \setminus K) は互いに素な可測集合の和なので、再び完全加法性と m([0,1])=1m([0,1]) = 1 から

1=m(K)+12,よって m(K)=12.1 = m(K) + \frac{1}{2}, \qquad \text{よって } m(K) = \frac{1}{2}.

(m([0,1])=1<∞m([0,1]) = 1 < \infty なので引き算ができます。)

3. KK が閉であることは上で述べました。00 は各段階で最も左の閉区間の左端であり続けるので 0∈Kn0 \in K_n が任意の nn で成り立ち、0∈K0 \in K です。よって K≠∅K \ne \emptyset です。

内点を持たないことを示します。ある開区間 (u,v)(u,v)(u<vu < v)が KK に含まれたとします。ℓn=(2n+1)/22n+1≤2n+1/22n+1=2−n→0\ell_n = (2^n+1)/2^{2n+1} \le 2^{n+1}/2^{2n+1} = 2^{-n} \to 0 なので、ℓN<v−u\ell_N < v - u となる NN が取れます。(u,v)⊂K⊂KN(u,v) \subset K \subset K_N であり、KNK_N は互いに交わらない有限個の閉区間の和で、隣り合う閉区間の間には取り除かれた開区間があるので分離されています。(u,v)(u,v) は連結なので、KNK_N を構成する閉区間のうちのただ一つに含まれなければなりません。しかしその閉区間の長さは ℓN<v−u\ell_N < v - u なので矛盾です。よって KK は内点を持ちません。

4. x∈Kx \in K とします。χK(x)=1\chi_K(x) = 1 ですが、3 より xx は KK の内点ではないので、xx のどんな近傍にも KK に属さない点 yy があり、そこでは χK(y)=0\chi_K(y) = 0 です。よって χK\chi_K は xx で連続ではありません。したがって χK\chi_K の不連続点集合 DD は KK を含み、命題 3.2 の単調性と 2 から

m∗(D)≥m∗(K)=12>0m^{*}(D) \ge m^{*}(K) = \frac{1}{2} > 0

です。定理 6.3 より χK\chi_K はリーマン積分可能ではありません。

一方 KK は閉集合なので可測であり、次章で定義するルベーグ積分では ∫01χK dm=m(K)=1/2\int_0^1 \chi_K \, dm = m(K) = 1/2 となります。この KK は測度が正の閉集合でありながら区間を一つも含まないという、リーマン積分の枠内では表現しにくい対象です。

  • 伊藤清三『ルベーグ積分入門』裳華房、1963 — 第 1〜2 章。外測度から可測集合を構成する標準的な日本語の教科書です。
  • 猪狩惺『実解析入門』岩波書店、1996 — 第 1〜2 章。測度論の基礎から丁寧に積み上げています。
  • W. Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed., McGraw-Hill, 1976 — 第 11 章。リーマン積分可能性のルベーグの判定条件の証明があります。
  • G. B. Folland, Real Analysis: Modern Techniques and Their Applications, 2nd ed., Wiley, 1999 — 第 1 章。カラテオドリの条件を抽象的な外測度に対して扱っており、この記事の議論がそのまま一般化されることが分かります。
  • H. L. Royden and P. M. Fitzpatrick, Real Analysis, 4th ed., Pearson, 2010 — 第 2 章。ヴィタリ集合の構成と、外部正則性による可測性の特徴づけが詳しく書かれています。
  • H. Lebesgue, “Intégrale, longueur, aire”, Annali di Matematica Pura ed Applicata 7 (1902) — ルベーグの学位論文。測度と積分の原論文です。

Appendix: 非可測集合の存在(ヴィタリ集合)

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目標。 §1.5 で挙げた四つの要請 (M1) 正規化、(M2) 平行移動不変性、(M3) 完全加法性、(M4) R\mathbb{R} のすべての部分集合で定義されること、が両立しないことを示します。言い換えると、M≠P(R)\mathcal{M} \ne \mathcal{P}(\mathbb{R})、すなわち非可測集合が存在することを示します。ここでは選択公理を使います。1905 年のヴィタリによる構成です。

同値関係を入れる。 x,y∈[0,1]x, y \in [0,1] に対して x∼y  ⟺  x−y∈Qx \sim y \iff x - y \in \mathbb{Q} と定めます。これが同値関係であることは、0∈Q0 \in \mathbb{Q}(反射律)、Q\mathbb{Q} が符号反転で閉じること(対称律)、Q\mathbb{Q} が加法で閉じること(推移律)から従います(関係と同値関係 の 定義 3.1[関係と同値関係])。[0,1][0,1] はこの関係で同値類に分割されます。

選択する。 選択公理により、各同値類からちょうど一つずつ代表元を選んで集合 V⊂[0,1]V \subset [0,1] を作れます。この VV をヴィタリ集合といいます。VV は「具体的に書き下す」ことができません。選択公理が本質的です。

平行移動の族を作る。 Q∩[−1,1]={q1,q2,q3,…}\mathbb{Q} \cap [-1, 1] = \{q_1, q_2, q_3, \ldots\} と番号付けし(Q\mathbb{Q} は可算なのでできます)、Vn=V+qnV_n = V + q_n とおきます。次の二つが成り立ちます。

第一に、VnV_n たちは互いに素です。x∈Vi∩Vjx \in V_i \cap V_j とすると x=v+qi=w+qjx = v + q_i = w + q_j(v,w∈Vv, w \in V)と書け、v−w=qj−qi∈Qv - w = q_j - q_i \in \mathbb{Q} なので v∼wv \sim w です。VV は各同値類から一つしか元を持たないので v=wv = w、したがって qi=qjq_i = q_j、すなわち i=ji = j です。

第二に、[0,1]⊂⋃n=1∞Vn⊂[−1,2][0,1] \subset \bigcup_{n=1}^{\infty} V_n \subset [-1, 2] です。実際、x∈[0,1]x \in [0,1] を取ると、xx の属する同値類の代表元 v∈Vv \in V があり、x−v∈Qx - v \in \mathbb{Q} です。x,v∈[0,1]x, v \in [0,1] より x−v∈[−1,1]x - v \in [-1,1] なので x−v=qnx - v = q_n なる nn があり、x=v+qn∈Vnx = v + q_n \in V_n です。また Vn⊂[0,1]+[−1,1]⊂[−1,2]V_n \subset [0,1] + [-1,1] \subset [-1,2] です。

矛盾を導く。 いま (M1)〜(M4) をすべて満たす μ\mu が存在したとします。(M4) より μ(V)\mu(V) が定義されます。(M2) より μ(Vn)=μ(V)\mu(V_n) = \mu(V) がすべての nn で成り立ちます。VnV_n は互いに素なので (M3) より

μ(⋃n=1∞Vn)=∑n=1∞μ(Vn)=∑n=1∞μ(V)\mu\left( \bigcup_{n=1}^{\infty} V_n \right) = \sum_{n=1}^{\infty} \mu(V_n) = \sum_{n=1}^{\infty} \mu(V)

です。一方、[0,1]⊂⋃nVn⊂[−1,2][0,1] \subset \bigcup_n V_n \subset [-1,2] と (M1) および単調性((M3) から A⊂BA \subset B のとき μ(B)=μ(A)+μ(B∖A)≥μ(A)\mu(B) = \mu(A) + \mu(B \setminus A) \ge \mu(A) として従います)より

1=μ([0,1])≤∑n=1∞μ(V)≤μ([−1,2])=31 = \mu([0,1]) \le \sum_{n=1}^{\infty} \mu(V) \le \mu([-1,2]) = 3

です。ところが ∑n=1∞μ(V)\sum_{n=1}^{\infty} \mu(V) は同じ値を無限回足したものなので、μ(V)=0\mu(V) = 0 なら 00、μ(V)>0\mu(V) > 0 なら ∞\infty にしかなりません。0<10 < 1 でも ∞>3\infty > 3 でも上の不等式に反します。これが矛盾です。

結論。 (M1)〜(M4) を同時に満たす μ\mu は存在しません。m∗m^{*} は (M1)(命題 3.5)、(M2)(命題 3.2 の (4))、(M4)(定義 3.1 の直後の注意)を満たしているので、破れているのは (M3) です。すなわち外測度は完全加法的ではありません。同じ議論を μ=m\mu = m、定義域を M\mathcal{M} として読み直すと、V∈MV \in \mathcal{M} を仮定して矛盾が出ます。よって V∉MV \notin \mathcal{M}、非可測集合が存在します。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)、Claude Code(Opus 5.5)・監査 4 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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