大問2題で、どちらも必答です。第1問はラプラス変換で、変換そのものの計算は軽い一方、「収束条件を示せ」「たたみ込み定理を示せ」「複素積分で逆変換せよ」と、積分の順序交換の根拠と積分路の閉じ方を書かせる作りになっています。第2問は外積を行列 J(a) で表すところから出発して、射影 P(a)、指数関数の閉じた表示(ロドリゲスの公式)、共役 Rexp(φJ(b))R−1 の意味までを一続きに登ります。SO(3) とその生成子の代数を知っていれば後半は見通しがよく、知らなくても設問3と設問4の関係式だけで押し切れます。試験時間は90分です。
| 問題 | 分野 | 主題 |
|---|
| 第1問 | 複素解析・微分方程式 | ラプラス変換、たたみ込み定理、ブロムウィッチ積分 |
| 第2問 | 線形代数・群論 | 外積の行列表示と3次元回転の指数関数表示 |
t≥0 で定義された関数 f(t) に対し、複素数 s を用いてラプラス変換を
L[f(t)]=F(s)=∫0∞e−stf(t)dt
で定義します。逆変換は s に関する複素積分
L−1[F(s)]=f(t)=2πi1∫γ−i∞γ+i∞estF(s)ds
で与えられ、積分路は実部が γ の虚軸に平行な直線で、F(s) のすべての特異点が積分路の左側に来るように γ を選びます。以下、s=σ+iτ(σ=Res、τ=Ims は実数)と書き、∫0∞ は limT→∞∫0T の意味の広義積分、逆変換の直線積分は limR→∞∫γ−iRγ+iR の意味に取ります。
Res≤0 で収束しないことは、(i) と (iii) では次の観察で一度に片づきます。f が [0,∞) 上で正かつ単調非減少とし、σ≤0 とします。τ=0 なら δ=π/(3∣τ∣)、τ=0 なら δ=1 と置くと u∈[0,δ] で cosτu≥1/2 なので、e−σt≥1 を使って
Re(eiτT∫TT+δe−stf(t)dt)=∫0δe−σ(T+u)f(T+u)cos(τu)du ≥ 2δf(T)
が成り立ちます。広義積分が収束するなら幅 δ の窓の上での積分は T→∞ で 0 に近づかねばならず、∣eiτT∣=1 なので左辺も 0 に近づくはずです。しかし右辺は f(T)≥f(1)>0 で下から離れているので矛盾します。よって σ≤0 では収束しません。
(i) f(t)=t のとき。s=0 に対して部分積分すると
∫0Tte−stdt=[−ste−st]0T+s1∫0Te−stdt=s21−e−sT(sT+s21)
です(右辺を T で微分すると te−sT に戻り、T=0 で 0 になるので確かに正しい原始関数です)。σ>0 なら ∣e−sT(T/s+1/s2)∣≤e−σT(T/∣s∣+1/∣s∣2)→0 となり極限が存在します。また ∣te−st∣=te−σt なので絶対収束もします。σ≤0 では上の補題(f(t)=t は正で単調増加)から収束しません。s=0 のときは ∫0Ttdt=T2/2→∞ で発散します。したがって
F(s)=s21(Res>0)
が答えで、収束条件は Res>0 です。
(ii) f(t)=sinωt(ω>0)のとき。sinωt=(eiωt−e−iωt)/(2i) と書くと、s∓iω=0 のとき
∫0Te−(s∓iω)tdt=s∓iω1−e−(s∓iω)T,e−(s∓iω)T=e−σT
です。σ>0 ではどちらも 1/(s∓iω) に収束し、∣e−stsinωt∣≤e−σt より絶対収束します。値は
F(s)=2i1(s−iω1−s+iω1)=2i1⋅s2+ω22iω=s2+ω2ω
となります。σ≤0 の場合を見ます。σ<0 なら、T に依存する部分は e−sT の因子をもつので、T に依存しない部分と分けて
∫0Te−stsinωtdt=s2+ω2ω−e−sTs2+ω2ssinωT+ωcosωT
と書けます(s2+ω2=0 のとき)。Tn=2πn/ω に沿って第2項の絶対値は ∣ω∣e−σTn/∣s2+ω2∣→∞ となり発散します。σ=0 すなわち s=iτ のときは、τ=±ω なら e−iτtsinωt の展開に定数項 ±1/(2i) が残るので ∫0T は T に比例して増大し発散します。τ=±ω なら μ=ω−τ=0、ν=ω+τ=0 と置いて
∫0Te−iτtsinωtdt=ω2−τ2ω+h(T),h(T)=2i1(iμeiμT+iνe−iνT)
となります。h は 0 でない振動数 μ と −ν(μ−(−ν)=2ω=0 なので互いに異なる)の三角多項式です。もし h(T)→L なら T1∫0ThdT′→L ですが、各項の平均は 0 なので L=0、他方 T1∫0T∣h∣2dT′→41(μ−2+ν−2)>0 で h→0 と両立しません。よって極限は存在せず、収束しません。まとめると
F(s)=s2+ω2ω(Res>0)
で、収束条件は Res>0 です。ω が実数である以上、±iω の極は虚軸上にあり、収束領域の境界がちょうど虚軸になっていることと整合します。
(iii) f(t)=t のとき。t→0 では t は有界で可積分、t→∞ では σ>0 なら指数因子が勝つので
∫0∞te−σtdt<∞(σ>0)
となり絶対収束します。σ≤0 では t が正で単調増加なので、冒頭の補題から収束しません。よって収束条件は Res>0 です。値を求めます。まず s>0 が実数の場合、t=x/s と置換して
∫0∞te−stdt=s3/21∫0∞x1/2e−xdx=s3/2Γ(3/2)=2s3/2π
です。ここで Γ(3/2)=21Γ(1/2) と、x=y2 の置換による Γ(1/2)=2∫0∞e−y2dy=π を使いました。次に複素の s へ広げます。Res>0 の任意のコンパクト集合上で ∣te−st∣≤te−σ0t(σ0>0 はその集合での Res の下限)と評価できるので、∫0T は T→∞ で局所一様収束します。各 ∫0T は s の整関数なので、ワイエルシュトラスの定理より F(s) は右半平面で正則です。s−3/2 を正の実軸上で正の値をとる主枝(切断は負の実軸で右半平面には入りません)に取れば、これも右半平面で正則です。両者は正の実軸上で一致するので、一致の定理から連結開集合 Res>0 の全体で一致します。答えは
F(s)=2s3/2π(Res>0, s3/2 は主枝)
です。s=2 で数値積分すると 0.31333、右辺は π/(2⋅23/2)=0.31333 で一致します。
(i) たたみ込み定理を示します。f1,f2 は [0,∞) 上区分連続で指数型、すなわち定数 Mi>0、αi があって ∣fi(t)∣≤Mieαit を満たすとします(これがラプラス変換の存在を保証する標準的な仮定で、以下 Res>α:=max(α1,α2) で考えます)。このとき
∣(f1∗f2)(t)∣≤M1M2∫0teα1(t−t′)+α2t′dt′≤M1M2teαt
なので (f1∗f2)(t) も指数型で、そのラプラス変換の積分は Res>α で収束します。
定義を書き下すと、これは領域 D={(t,t′)∣0≤t′≤t<∞} 上の2重積分です。
L[(f1∗f2)(t)]=∫0∞dte−st∫0tdt′f1(t−t′)f2(t′)=∬De−stf1(t−t′)f2(t′)dtdt′
変数変換 u=t−t′、v=t′ は D から第1象限 {u≥0, v≥0} への線形全単射で、ヤコビアンの絶対値は 1、そして e−st=e−sue−sv です。絶対値を取った積分は
∬u,v≥0e−σ(u+v)∣f1(u)∣∣f2(v)∣dudv=(∫0∞e−σu∣f1(u)∣du)(∫0∞e−σv∣f2(v)∣dv)<∞
と有限なので(σ>α)、トネリの定理で絶対可積分性が保証され、フビニの定理により累次積分の順序交換と変数変換が許されます。したがって
L[(f1∗f2)(t)]=∫0∞e−suf1(u)du∫0∞e−svf2(v)dv=F1(s)F2(s)
が得られます。使った仮定は、両者が指数型であること(絶対収束の確保)と Res>α であることだけです。
(ii) 式(2) の右辺第2項は sint と f(t) のたたみ込みそのものです。f が指数型でラプラス変換 F(s) をもつと仮定して(得られた解が実際に式(2)を満たすことは (iii) で直接確かめるので、この仮定は最後に正当化されます)、Res が十分大きい領域で両辺を変換します。設問1(ii) で ω=1 と置くと L[sint]=1/(s2+1) なので、式(3) より
F(s)=s2+11+s2+11F(s)
です。Res>0 では s=0 かつ s2+1=0(s2=−1 の解は虚軸上)なので、移項して
(1−s2+11)F(s)=s2+1s2F(s)=s21⋅s2+1s2
すなわち
F(s)=s21
が答えです。
(iii) 設問1(i) より L[t]=1/s2 なので、f(t)=t が候補です。連続関数のラプラス変換は一致すれば関数も一致する(レルヒの定理)ので、これが解です。ここでは仮定を使わずに直接代入して確認します。u=t−t′ と置くと
∫0tsin(t−t′)t′dt′=∫0tsinu(t−u)du=t(1−cost)−∫0tusinudu
で、∫0tusinudu=[−ucosu]0t+∫0tcosudu=−tcost+sint です。よって
∫0tsin(t−t′)t′dt′=t−tcost+tcost−sint=t−sint
となり、式(2) の右辺は sint+(t−sint)=t です。左辺と一致するので f(t)=t は確かに式(2)の解です。答えは
f(t)=t(t≥0)
です。t=0.3,1,2.5,5 で右辺を数値積分しても 0.3,1,2.5,5 が返り、恒等的に成り立っていることが確かめられます。
F(s)=s/(s−1)2 の特異点は s=1 の2位の極だけなので、γ>1 と取ります。t>0 とし、直線上の区間 γ−iR→γ+iR に、中心 γ 半径 R の円のうち Res≤γ にある半円 CR(反時計回りに閉じる向き)を継ぎ足して閉曲線を作ります。
まず CR 上の寄与が消えることを示します。s=γ+Reiϕ(π/2≤ϕ≤3π/2)と書くと ∣est∣=eγteRtcosϕ です。∣s∣≥R−∣γ∣ より R が大きいところで ∣F(s)∣≤C/R(C は定数)と評価できます。ϕ=π/2+ψ と置き cosϕ=−sinψ、さらに [0,π/2] で sinψ≥2ψ/π を使うと
∫CRestF(s)ds≤RCeγtR∫0πe−Rtsinψdψ=12Ceγt∫0π/2e−Rtsinψdψ≤2Ceγt∫0π/2e−2Rtψ/πdψ≤RtπCeγt
となり、t>0 なら R→∞ で 0 に収束します(ジョルダンの補題のブロムウィッチ型)。
R>1+∣γ∣ なら s=1 は閉曲線の内部にあり、他に特異点はないので留数定理から
2πi1∮estF(s)ds=Ress=1(s−1)2sest=dsd(sest)s=1=[est+stest]s=1=(1+t)et
です。R→∞ で半円部分が落ちるので、直線積分の値がこれに等しく
f(t)=(1+t)et
が答えです。t=0 では f(0)=1 で、これは右極限としての値と一致します。
検算を2通りします。部分分数分解では
(s−1)2s=(s−1)2(s−1)+1=s−11+(s−1)21
で、L[et]=1/(s−1)、L[tet]=1/(s−1)2(設問1(i) の計算で s→s−1 と置いたもの)なので f(t)=et+tet です。順方向の変換で直接確かめると、Res>1 で
∫0∞e−st(1+t)etdt=∫0∞(1+t)e−(s−1)tdt=s−11+(s−1)21=(s−1)2s
となり元に戻ります(s=3 での数値積分は 0.750、s/(s−1)2=0.75)。なお設問2の F(s)=1/s2 に同じ手続きを当てると、s=0 の2位の極の留数は dsdest∣s=0=t で、f(t)=t を再現します。
3次元実ベクトル空間を考え、
a=a1a2a3,i=1∑3ai2=1
を単位ベクトルとします。任意の3次元ベクトル x に対する外積を行列で a×x=J(a)x と表し、P(a)=−J(a)2、行列の指数関数は exp(θJ(a))=∑n=0∞n!θnJ(a)n で定義します。I は3行3列の単位行列、xT は転置、繰り返す添字は 1 から 3 まで和を取る規約を使います。εijk は完全反対称テンソル(ε123=1)で、恒等式 εijkεilm=δjlδkm−δjmδkl と巡回性 εijk=εjki=εkij を使います。
外積の成分は (a×x)i=εijkajxk なので、J(a)ik=εijkaj です。成分を並べると
J(a)=0a3−a2−a30a1a2−a10
が答えです。実際に掛けると第1成分は a2x3−a3x2、第2成分は a3x1−a1x3、第3成分は a1x2−a2x1 で、外積の定義と一致します。J(a)T=−J(a)、つまり実交代行列であることに注意しておきます。これは x⋅(a×x)=0 の行列版です。
固有多項式を計算します。
det(λI−J(a))=detλ−a3a2a3λ−a1−a2a1λ
を第1行で展開すると
det(λI−J(a))=λ(λ2+a12)−a3(−a3λ−a1a2)−a2(a1a3−λa2)=λ3+(a12+a22+a32)λ+a1a2a3−a1a2a3=λ3+λ=λ(λ2+1)
となります(∣a∣=1 を使いました)。したがって固有値は
λ=0, +i, −i
の3つで、いずれも単根です。λ=0 の固有ベクトルは J(a)a=a×a=0 より a 自身です。実交代行列の固有値が純虚数または 0 であること、実行列なので虚の固有値が共役対で現れること、奇数次の交代行列は detJ=detJT=det(−J)=−detJ から detJ=0、すなわち 0 が固有値であること、これらすべてと整合しています。
まず J(a)2 を求めます。成分計算では
(J2)il=JikJkl=εijkajεkmlam=εkijεkmlajam=(δimδjl−δilδjm)ajam=aial−δil
なので、∣a∣=1 を使って
J(a)2=aaT−I,P(a)=I−aaT
です。ベクトルに作用させた形では P(a)x=x−(a⋅x)a で、P(a) は a に垂直な平面への直交射影です。これは外積の公式 a×(a×x)=(a⋅x)a−(a⋅a)x と同じ内容です。以下はこの表示から直ちに従います。
(i) P(a)a=a−(a⋅a)a=a−a=0 です。
(ii) a⋅b=0 を満たす任意の b に対して P(a)b=b−(a⋅b)a=b です。
(iii) aTa=1 を使って
P(a)2=(I−aaT)2=I−2aaT+a(aTa)aT=I−2aaT+aaT=I−aaT=P(a)
です。射影らしく冪等になっています。(i) と (ii) は、任意の x を x=(a⋅x)a+x⊥ と分解したとき P が a 方向を消し垂直成分をそのまま残すことを言っており、(iii) はその言い換えです。
J=J(a)、P=P(a) と略記します。鍵になるのは J の冪が3周期で閉じることです。Ja=0 より JP=J(I−aaT)=J−(Ja)aT=J であり、J2=−P と合わせて
J3=J⋅J2=−JP=−J
が得られます。ここから、k≥1 に対して J2k=(J2)k=(−1)kPk=(−1)kP(設問3(iii) の P2=P を使いました)、k≥0 に対して J2k+1=(−1)kJ が帰納法で従います。
級数の項の並べ替えについて一言。任意の行列 M に対し ∑n∥∣θ∣nMn/n!∥≤e∣θ∣∥M∥<∞(∥⋅∥ は作用素ノルムなど劣乗法的なノルム)なので指数級数は絶対収束し、偶数項と奇数項に分けて和を取り直してよいです。よって
exp(θJ)=I+k=1∑∞(2k)!θ2k(−1)kP+k=0∑∞(2k+1)!θ2k+1(−1)kJ=I+(cosθ−1)P+sinθJ
です。J=JP だったので、これは問題の形 f1I+f2P+f3JP に一致します。答えは
f1(θ)=1,f2(θ)=cosθ−1,f3(θ)=sinθ
で、確かに a に依存しません。係数の一意性も確かめておきます。αI+βP+γJP=αI+βP+γJ=0 とすると、交代部分を取って γJ=0、∣a∣=1 より J=0 なので γ=0。残りを a に作用させると Pa=0 から αa=0、よって α=0、続いて βP=0 から β=0 です。つまり I,P,JP は線形独立で、f1,f2,f3 は一意に決まります。
J2=−P を使って書き直すと exp(θJ)=I+sinθJ+(1−cosθ)J2 で、ロドリゲスの公式に一致します。θ=0 で I、θ の1次で I+θJ となることも確認できます。数値的にも、乱数で取った単位ベクトル a と θ=0.7 で級数和と右辺が一致します。
a と直交する単位ベクトルの一つを b、c=a×b とします。∣c∣=∣a∣∣b∣sin(π/2)=1、c⊥a、c⊥b なので a,b,c は正規直交基底で、さらに b×c=b×(a×b)=a(b⋅b)−b(b⋅a)=a、c×a=−a×(a×b)=b より右手系です。
必要な作用は Ja=a×a=0、Jb=a×b=c、Jc=a×c=(a⋅b)a−(a⋅a)b=−b、および Pa=0、Pb=b、Pc=c です。R=exp(θJ(a))=I+(cosθ−1)P+sinθJ を当てると
RaRbRc=a,=b+(cosθ−1)b+sinθc=cosθb+sinθc,=c+(cosθ−1)c−sinθb=−sinθb+cosθc
となります。すなわち基底 (a,b,c) に関する表現行列は
1000cosθsinθ0−sinθcosθ
です。これが a を軸とする角度 θ の回転であることを、次の3点で示します。
第一に、R は正規直交基底を正規直交基底に写します。上の3つのベクトルの内積を取ると Ra⋅Ra=1、Rb⋅Rb=cos2θ+sin2θ=1、Rc⋅Rc=1、Ra⋅Rb=Ra⋅Rc=0、Rb⋅Rc=−cosθsinθ+sinθcosθ=0 です。よって R は直交行列で、長さと角度を保ちます。表現行列の行列式は cos2θ+sin2θ=1 なので R∈SO(3)、鏡映を含まない回転です。
第二に、Ra=a より a 方向は動きません。回転軸は a です(固有値 1 の固有空間は、θ が 2π の整数倍でなければ a の張る1次元だけで、表現行列から直接読めます)。
第三に、a に垂直な平面 {βb+γc} はそれ自身に写り、その中での作用はちょうど角度 θ の回転です。実際、x⊥=ρ(cosψb+sinψc)(ρ≥0)に対して
Rx⊥=ρ(cosψ(cosθb+sinθc)+sinψ(−sinθb+cosθc))=ρ(cos(ψ+θ)b+sin(ψ+θ)c)
となり、長さ ρ は変わらず、平面内の位相角が ψ から ψ+θ へちょうど θ だけ進みます。b から c へ回る向きは (a,b,c) が右手系であることから a に関する右ねじの向きで、a の先端から見て反時計回りです。任意のベクトルは x=(a⋅x)a+x⊥ と一意に分解でき、R は前者を固定し後者をこの平面回転で写すので、R=exp(θJ(a)) は a を軸とする角度 θ の回転です。
補助的な確認として、トレースは TrR=1+2cosθ で、回転角 θ の3次元回転行列の一般公式と一致します。θ→0 で R→I、θ→θ+2π で R が不変であることも上の表示から明らかです。
回転で共役を取ると外積の生成子は軸ごと回る、という事実を使います。
補題。R∈SO(3) と任意のベクトル u,w に対し R(u×w)=(Ru)×(Rw) が成り立ちます。証明は、スカラー3重積が行列式であること (u×w)⋅z=det[u,w,z] を使えば1行です。任意の z に対して
((Ru)×(Rw))⋅(Rz)=det[Ru,Rw,Rz]=detRdet[u,w,z]=(u×w)⋅z=(R(u×w))⋅(Rz)
です。1つめの等号で3重積の行列式表示、2つめで行列式の乗法性、3つめで detR=1、4つめで RTR=I(内積の保存)を使いました。z が全空間を動くとき Rz も全空間を動くので、両辺のベクトルはすべてのベクトルと同じ内積をもち、したがって等しいです。
この補題から、任意の x に対して
RJ(v)R−1x=R(v×(R−1x))=(Rv)×(RR−1x)=(Rv)×x=J(Rv)x
すなわち
RJ(v)R−1=J(Rv)(R∈SO(3))
が成り立ちます。さらに RMnR−1=(RMR−1)n と指数級数の絶対収束から Rexp(φM)R−1=exp(φRMR−1) が項別に言えるので、M=J(b) として
Rexp(φJ(b))R−1=exp(φJ(Rb))
です。ここで R=exp(θJ(a)) と取ります。θJ(a) と −θJ(a) は交換するので exp(θJ(a))exp(−θJ(a))=exp(0)=I、つまり exp(−θJ(a))=R−1 であり、設問5 より R∈SO(3) で Rb=cosθb+sinθc です。したがって
exp(θJ(a))exp(φJ(b))exp(−θJ(a))=exp(φJ(cosθb+sinθc))
となり、答えは
e=0⋅a+cosθb+sinθc,χ=φ
です。b,c が正規直交なので ∣e∣2=cos2θ+sin2θ=1 で、e は確かに単位ベクトルです。幾何的には、回転 exp(φJ(b)) を R で共役にすると、軸 b が Rb に運ばれ回転角 φ はそのまま残る、というだけの内容です。なお (χ,e) の選び方は一意ではなく、(−χ,−e) や (χ+2πn,e) も同じ行列を与えます。上の組は θ=0 で (φ,b) に戻る自然な選択です。
検算します。a=e3、b=e1、c=e3×e1=e2、θ=π/2 の場合、R は z 軸まわりの π/2 回転で e1 を e2 に写すので、共役は x 軸まわりの回転を y 軸まわりの回転に変えるはずです。公式は e=cos(π/2)e1+sin(π/2)e2=e2、χ=φ を与え、期待どおりです。一般の a、θ=0.7、φ=1.3 で両辺の行列を数値的に作っても、成分の差は倍精度の丸め誤差の範囲に収まります。
出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 平成29年度 修士課程 入学試験問題 数学。問題文は要約して引用しています。