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群の準同型定理:核で潰した商が像と同型になる仕組み

前提:正規部分群と商群:剰余類に演算を入れるための条件

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  • 群準同型 f ⁣:GHf \colon G \to H とは積を積に写す写像です。単位元・逆元・整数べきが保たれることは要求せずとも定義から従います。
  • Kerf\operatorname{Ker} fGG正規部分群、像 Imf\operatorname{Im} fHH部分群です。逆に、任意の正規部分群はある準同型の核として現れます。つまり「正規部分群」と「準同型の核」は同じものの表と裏です。
  • ff が単射であることと Kerf={eG}\operatorname{Ker} f = \{e_G\} は同値です。核は「ff がどれだけ情報を潰したか」を測る量です。
  • 準同型定理G/KerfImfG/\operatorname{Ker} f \cong \operatorname{Im} f。証明の要は「f(x)=f(y)f(x) = f(y)xKerf=yKerfx\operatorname{Ker} f = y\operatorname{Ker} f が同値」という一点だけです。
  • 応用すると GLn(K)/SLn(K)K×GL_n(K)/SL_n(K) \cong K^{\times}Sn/AnZ/2ZS_n/A_n \cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} が、また R/Z\mathbb{R}/\mathbb{Z} が複素平面の単位円と同型であることが、いずれも数行で出ます。商群の正体を「見慣れた群」として同定する道具です。
  • GG が有限群なら G=KerfImf|G| = |\operatorname{Ker} f| \cdot |\operatorname{Im} f| が成り立ち、HH も有限群なら像の位数は G|G|H|H|共通の約数になります。

1. 動機 — 群を「比べる」ための写像、「潰す」ための写像

Section titled “1. 動機 — 群を「比べる」ための写像、「潰す」ための写像”

前章までで、部分群・剰余類・正規部分群・商群を作ってきました。商群 G/NG/N は「NN の元をすべて単位元とみなして得られる群」として構成しましたが、素朴な疑問が残っているはずです。そうやって抽象的に作った群は、いったい何者なのか、という疑問です。Z/12Z\mathbb{Z}/12\mathbb{Z} なら時計の文字盤だと納得できます。しかし GL2(R)/SL2(R)GL_2(\mathbb{R})/SL_2(\mathbb{R}) と言われて、その正体がすぐ見える人はいないでしょう。剰余類の集合という定義に戻っても、行列の集合の集合が並ぶだけで、手応えがありません。

この章の主定理である準同型定理は、この問いに一般的な答えを与えます。乱暴に言えばこうです。

商群 G/NG/N の正体を知りたければ、NN をちょうど潰すような見慣れた群への全射を 1 本見つけよ。G/NG/N はその行き先と同型である。

GL2(R)/SL2(R)GL_2(\mathbb{R})/SL_2(\mathbb{R}) なら行列式 det\det がその 1 本で、答えは R×\mathbb{R}^{\times}00 でない実数の乗法群)です。剰余類をいちいち書き下す必要はありません。

動機はもう一つあります。二つの群が「同じ」とはどういうことかという問いです。集合としての大きさだけでは足りません。Z/4Z\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}Z/2Z×Z/2Z\mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} はどちらも位数 44 ですが、前者には位数 44 の元 1ˉ\bar{1} があるのに対し、後者では単位元以外のすべての元 (1ˉ,0ˉ),(0ˉ,1ˉ),(1ˉ,1ˉ)(\bar1,\bar0), (\bar0,\bar1), (\bar1,\bar1) が位数 22 です。だから両者は「同じ群」とは言えません。比べるべきは元の個数ではなく積の表であり、積の表を保つ全単射こそが「同じ」の正しい定義になります。

そして、積を保つ写像は全単射でなくても意味を持ちます。整数を偶奇に潰す、行列を行列式に潰す、置換を符号に潰す。どれも情報を捨てていますが、捨て方が積と整合しているので、潰した先にもまた群の構造が残ります。捨てられた情報の全体がちょうど核であり、準同型定理は「捨てたぶんだけ商にとれば、残るのは像そのもの」という一種の保存則になっています。

群・環・加群に共通するこの形の定理群が現在の姿に整理されたのは、E. ネーターの 1920 年代の仕事によるとされ、今日でも「ネーターの同型定理」と呼ばれます。この記事で扱うのはその第一(準同型定理)と第三で、第二は演習に回します。


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