平成26年8月25日実施、9時30分から11時00分までの90分で2問です。第1問は2次行列の特性方程式から漸化式を作り、それが満たす微分方程式をスツルム・リウヴィル型に書き換えて直交性を出す、という一本の流れになっています。第2問は1次元拡散方程式のグリーン関数を、フーリエ表示から留数計算とガウス積分で閉じた形まで落とす計算です。個々の道具は標準的で、前の設問で得た式を次の設問でそのまま使う設計になっているので、途中で筋を切らないことが得点に直結します。
| 問題 | 分野 | 主題 |
|---|
| 第1問 | 線形代数・微分方程式・特殊関数 | ケーリー・ハミルトンの定理とチェビシェフ多項式の直交性 |
| 第2問 | フーリエ解析・複素解析 | 拡散方程式の遅延グリーン関数 |
2問とも解答する形式です。
n 次正方行列 A について det(xE−A)=0 を特性方程式、左辺を特性多項式と呼びます。E は単位行列です。設問1では n=2 に限り、detA=1 のもとで AN を A と E の線形結合に書いたときの係数が満たす漸化式を調べます。
設問2以降は区間 a≤x≤b 上の2階微分演算子
Lu(x)≡dxd[p(x)dxdu(x)]
を扱います。p(x) は実関数で p(a)=p(b)=0 を満たします。固有値問題は重み w(x) 付きの
Lu(x)=λw(x)u(x)
の形で、w(x) は実関数で a<x<b において正です。設問4で、設問1の UN が満たす微分方程式がこの形に書けることを使います。
以下、u,v は [a,b] 上で2回連続微分可能な複素関数、p は [a,b] 上で1回連続微分可能とします。設問4で扱う UN は多項式なので、この仮定は自動的に満たされます。
(i) A=(aij) を2次行列とすると
det(xE−A)=x−a11−a21−a12x−a22=(x−a11)(x−a22)−a12a21=x2−(a11+a22)x+(a11a22−a12a21)
です。a11+a22=TrA、a11a22−a12a21=detA ですから、特性方程式は
x2−(TrA)x+detA=0
と書けます。答えは x2−(TrA)x+detA=0 です。
(ii) 特性多項式に x=A を代入した行列がゼロ行列であるという事実(ケーリー・ハミルトンの定理)を問題文の通りに使います。(i) の結果に detA=1、TrA=2ξ を入れると
A2−2ξA+E=O,すなわちA2=2ξA−E
です。これが AN を A の低次の冪で書き下す出発点になります。
漸化式 UN(ξ)−2ξUN−1(ξ)+UN−2(ξ)=0 を満たす関数列を、初期値
U−1(ξ)=0,U0(ξ)=1
から定めます。N≥1 に対して UN=2ξUN−1−UN−2 で順に決まり、U1=2ξ、U2=4ξ2−1、U3=8ξ3−4ξ となります。この初期値の選び方は自由ではありません。N=2 で A2=U1A−U0E が上の A2=2ξA−E と一致するには U1=2ξ、U0=1 が必要で、そこから U−1=U1−2ξU0=0 が決まります。
この UN に対して
AN=UN−1(ξ)A−UN−2(ξ)E(N≥1)
を N に関する帰納法で示します。N=1 のときは右辺が U0A−U−1E=A で成立します。N で成立するとして両辺に左から A を掛け、A2=2ξA−E を使うと
AN+1=UN−1A2−UN−2A=UN−1(2ξA−E)−UN−2A=(2ξUN−1−UN−2)A−UN−1E=UNA−UN−1E
となり、最後の等号で漸化式を使いました。これは N+1 に対する主張そのものです。よって N=2,3,… のすべてで AN=UN−1(ξ)A−UN−2(ξ)E が成り立ちます。
同じ帰納法から、UN(ξ) が実係数の N 次多項式で最高次係数が 2N であることも分かります(UN=2ξUN−1−UN−2 で次数が1つ上がり、係数の実数性は保たれます)。これは第2種チェビシェフ多項式で、ξ=cosθ と置くと UN(cosθ)=sin((N+1)θ)/sinθ が漸化式と初期値を満たすことから確かめられます。多項式であることと実係数であることは設問4で使います。
検算として N=3 を直接確かめます。A3=A⋅A2=A(2ξA−E)=2ξA2−A=2ξ(2ξA−E)−A=(4ξ2−1)A−2ξE で、これは U2A−U1E に一致します。
p が実関数で、x が実変数であることから、複素共役は微分と可換です。したがって
(Lv(x))∗=(dxd[p(x)dxdv])∗=dxd[p(x)dxdv∗]
です。左辺の積分を部分積分すると
∫abv∗dxd[pu′]dx=[pv∗u′]ab−∫abp(v∗)′u′dx
となります。u,v は [a,b] 上で C2 なので v∗u′ は端点まで有界で、p(a)=p(b)=0 より境界項は消えます。よって
∫abv∗Ludx=−∫abpu′(v∗)′dx.
右辺の積分も同様に
∫abudxd[p(v∗)′]dx=[pu(v∗)′]ab−∫abpu′(v∗)′dx=−∫abpu′(v∗)′dx
となり、やはり境界項は p(a)=p(b)=0 で消えます。両者の右辺が同一なので
∫abv∗(x)Lu(x)dx=∫abu(x)(Lv(x))∗dx
が示されました。使った仮定は、p が実であること、p(a)=p(b)=0 であること、そして境界項 pv∗u′ と pu(v∗)′ が両端で 0 になること(ここでは u,v の C2 性から従う)の3つです。p(a)=p(b)=0 の代わりに u,v が u(a)=u(b)=0 などの境界条件を満たす場合でも同じ結論が出ますが、本問では p の側の条件で境界項を落としています。
まず λ が実であることを示します。u を Lu=λwu の恒等的に零でない解とし、∫abw∣u∣2dx が有限であるとします。設問2の等式で v=u と取ると
∫abu∗Ludx=∫abu(Lu)∗dx
です。左辺は Lu=λwu から λ∫abw∣u∣2dx、右辺は w が実であることから (Lu)∗=λ∗wu∗ なので λ∗∫abw∣u∣2dx です。よって
(λ−λ∗)∫abw(x)∣u(x)∣2dx=0.
ここで u は連続で恒等的に零でないので、ある x0∈(a,b) で u(x0)=0 となり、その近傍で ∣u∣2>0 かつ w>0 です。したがって ∫abw∣u∣2dx>0 であり、λ−λ∗=0、すなわち λ は実数です。重み w が (a,b) で正であるという条件が、ここで積分を落とさないために効いています。
次に直交性を示します。Lu1=λ1wu1、Lu2=λ2wu2 とし、前半より λ1,λ2 はともに実数です。設問2の等式で u=u1、v=u2 と取ると
∫abu2∗Lu1dx=∫abu1(Lu2)∗dx
であり、左辺は λ1∫abu1u2∗wdx、右辺は λ2∗∫abu1u2∗wdx=λ2∫abu1u2∗wdx です。よって
(λ1−λ2)∫abu1(x)u2∗(x)w(x)dx=0
となり、λ1=λ2 という仮定から
∫abu1(x)u2∗(x)w(x)dx=0
が従います。λ2∗=λ2 と置き換えられたのは前半の結果があるからで、この2段構えが問題の設計です。
設問1の UN の変数を x と書き直します。UN(x) は
(1−x2)UN′′(x)−3xUN′(x)+N(N+2)UN(x)=0
を満たします。これを自己共役形にするため、未知の関数 μ(x) を掛けて左辺の微分の部分が (pUN′)′=pUN′′+p′UN′ の形になる条件を課します。p=μ(1−x2) かつ p′=−3μx が要求で、前者を微分した p′=μ′(1−x2)−2μx と後者を比べると
μ′(1−x2)=−μx,μμ′=1−x2−x
です。−1<x<1 で積分して lnμ=21ln(1−x2)+const、定数を1に選んで
μ(x)=(1−x2)1/2,p(x)=(1−x2)3/2
を得ます。実際に代入すると
dxd[(1−x2)3/2dxdUN]=(1−x2)3/2UN′′−3x(1−x2)1/2UN′=(1−x2)1/2[(1−x2)UN′′−3xUN′]
となり、微分方程式を使えば
dxd[(1−x2)3/2dxdUN]=−N(N+2)(1−x2)1/2UN(x)
です。これは a=−1、b=1、p(x)=(1−x2)3/2、w(x)=(1−x2)1/2、λN=−N(N+2) とした LUN=λNwUN にほかなりません。したがって UN の微分方程式は、p を適当に選んだ L による方程式 (6) の形になります。
積分 (9) を求める筋道は次の通りです。いま得た p,w が設問2と設問3の前提を満たすことを確認します。p(x)=(1−x2)3/2 は実関数で p(±1)=0 を満たし、w(x)=(1−x2)1/2 は実関数で −1<x<1 において正です。UN は設問1(ii) で見たように実係数多項式なので [−1,1] 上で C2 であり、UN∗=UN です。境界項 pUMUN′ は UN′ が端点で有限、p(±1)=0 なので確かに消えます。積分 ∫−11UMUN(1−x2)1/2dx 自体も、有界な被積分関数の有界区間上の積分なので有限です。
固有値が相異なることも確認します。M,N を 0 以上の整数とすると
λM=λN⟺M(M+2)=N(N+2)⟺(M+1)2=(N+1)2⟺M+1=±(N+1)
で、M+1 と N+1 はともに正なので M=N に限られます。よって M=N なら λM=λN です。
そこで設問3の後半を u1=UM、u2=UN、w=(1−x2)1/2 に適用すれば
∫−11UM(x)UN(x)(1−x2)1/2dx=0(M=N)
です。答えは 0 です。
検算として最小の例を直接計算します。U0=1、U2=4x2−1 で、∫−11x2(1−x2)1/2dx=π/8、∫−11(1−x2)1/2dx=π/2 を使うと 4⋅(π/8)−π/2=0 となり、確かに消えます。なお M=N のときは π/2 で、直交関係が自明な理由(片方が恒等的に零など)で成り立っているのではないことも分かります。
実変数 t,x の複素関数 f(t,x) が
∂t∂f(t,x)=λ∂x2∂2f(t,x)+S(t,x)
を満たすとします。λ は正の実定数、S は与えられた関数です。f は x についてフーリエ変換可能とします。以下、フーリエ変換の符号の約束は問題文の (2) 式に合わせて
f(t,x)=∫−∞∞2πdkf^(t,k)e−ikx,f^(t,k)=∫−∞∞dxf(t,x)eikx
を用います。虚数単位は i と書きます。積分と微分の順序交換、および積分の収束は、以下では被積分関数の減衰によって保証されているものとします(デルタ関数を含む式は超関数の意味で読みます)。
S=0 の場合を考えます。f の x に関するフーリエ表示を方程式に代入します。∂x2e−ikx=−k2e−ikx なので
∫−∞∞2πdk[∂t∂f^(t,k)+λk2f^(t,k)]e−ikx=0
がすべての x で成り立ちます。左辺は角括弧の中身の逆フーリエ変換なので、フーリエ変換の一意性から
∂t∂f^(t,k)=−λk2f^(t,k)
が(ほとんどすべての)k で成り立ちます。これは各 k ごとに t の1階線形常微分方程式で、一般解は
f^(t,k)=f~(k)e−λk2t,f~(k)≡f^(0,k)
です。積分定数が k ごとに1つ、すなわち k の任意関数 f~(k) が1つだけ残ります。これを逆変換に戻すと
f(t,x)=∫−∞∞2πdkf~(k)exp(−λk2t−ikx)
となり、(2) の形が得られます。逆に、この形の f は(微分と積分の交換が許される限り)代入すれば方程式を満たします。自由度が初期値 f(0,x) のフーリエ変換 f~(k) ただ1つに尽きているので、これが一般解です。
G は
∂t∂G(t,x,t′,x′)=λ∂x2∂2G(t,x,t′,x′)+δ(t−t′)δ(x−x′)
を満たすとします。(4) で定義される f に演算子 ∂t−λ∂x2 を作用させます。微分は非積分変数 t,x についてのものなので積分の中に入れられて
(∂t∂−λ∂x2∂2)f(t,x)=∫−∞∞dt′∫−∞∞dx′(∂t∂−λ∂x2∂2)G(t,x,t′,x′)S(t′,x′)=∫−∞∞dt′∫−∞∞dx′δ(t−t′)δ(x−x′)S(t′,x′)=S(t,x)
となります。すなわち f は方程式 (1) を満たします。使った仮定は、G の方程式、デルタ関数の定義、そして微分と積分の順序交換が許されること(S が十分よい減衰をもち、得られる積分が収束すること)です。なお (4) は (1) の特殊解であり、これに S=0 の一般解(設問1の形)を足したものも (1) の解です。解を一意にするには境界条件が必要で、設問6ではそれが t<0 で f=0 という条件で与えられます。
(5) の形の G に演算子を作用させます。∂teiω(t−t′)=iωeiω(t−t′)、∂x2e−ik(x−x′)=−k2e−ik(x−x′) なので
(∂t∂−λ∂x2∂2)G=C∫−∞∞2πdω∫−∞∞2πdkω−iαλk2iω+λk2eiω(t−t′)−ik(x−x′)
です。分子は iω+λk2=i(ω−iλk2) と因数分解できるので、α=1 のとき分母と約せて被積分関数の係数は定数 i になります。このとき
∫−∞∞2πdωeiω(t−t′)=δ(t−t′),∫−∞∞2πdke−ik(x−x′)=δ(x−x′)
(デルタ関数は偶関数なので後者の符号は問いません)を使って
(∂t∂−λ∂x2∂2)G=iCδ(t−t′)δ(x−x′)
となります。これが δ(t−t′)δ(x−x′) に一致する条件は iC=1、すなわち C=1/i=−i です。よって
C=−i,α=1
とすれば (5) は (3) を満たします。
α=1 が必要であることも確かめられます。一般の α に対して
ω−iαλk2iω+λk2=iω−iαλk2ω−iλk2=i−ω−iαλk2(α−1)λk2
と分解でき、第1項は上と同じデルタ関数を与えます。第2項が残るとき、ω 積分を設問4と同じ留数計算で実行すると(α が正の実数なら)t>t′ でのみ k2e−αλk2(t−t′) に比例する寄与が現れ、これは t=t′ でも 0 になりません。つまり δ(t−t′)δ(x−x′) の形に収まらないので、α=1 でなければなりません。
C=−i、α=1 を代入し、τ≡t−t′、ξ≡x−x′ と書きます。ω 積分を先に行うので
G=−i∫−∞∞2πdke−ikξI(τ,k),I(τ,k)≡∫−∞∞2πdωω−iλk2eiωτ
と分けます。I を複素 ω 平面での留数計算で求めます。極は ω=iλk2 の1位の極1つだけで、λ>0 かつ k=0 なので上半平面にあります。被積分関数は ∣ω∣→∞ で O(1/∣ω∣) なので、τ=0 ならジョルダンの補題が使えて、大半円上の寄与は消えます。
τ>0(すなわち t>t′)のときは ∣eiωτ∣=e−τImω が上半平面で減衰するので、実軸と上半平面の大半円からなる反時計回りの閉曲線をとります。極を1つ囲むので
I(τ,k)=2π1⋅2πieiωτω=iλk2=ie−λk2τ.
τ<0(すなわち t<t′)のときは下半平面で eiωτ が減衰するので下半平面側に閉じますが、そこには極がないので
I(τ,k)=0.
k=0 では極が実軸上に来ますが、これは後続の k 積分において測度零の1点なので結果に影響しません(あるいは k→0 の極限として読みます)。まとめると、階段関数 θ を使って I=iθ(τ)e−λk2τ です。
したがって C=−i を掛けて
G(t,x,t′,x′)=⎩⎨⎧0∫−∞∞2πdkexp(−λk2(t−t′)−ik(x−x′))(t<t′)(t>t′)
となります。t<t′ で消えるので、これは遅延グリーン関数です。極が上半平面にあること、つまり設問3で決まった α=1 の符号が、この因果性を決めています。t>t′ の表式が設問1の (2) と同じ形をしていることも整合的で、t=t′ では G は同次方程式の解になっているはずだからです。
t<t′ では G=0 です。t>t′ の場合に k 積分を実行します。τ=t−t′>0、ξ=x−x′ として指数を平方完成すると
−λτk2−ikξ=−λτ(k+2λτiξ)2−4λτξ2
です。s=λτ(k+iξ/(2λτ)) と置くと積分路は実軸に平行な直線 Ims=ξ/(2λτ) になりますが、e−s2 は整関数で、Ims を有界に保ったまま ∣Res∣→∞ とすると急速に減衰するので、コーシーの定理により積分路を実軸に戻せます。τ>0 なので λτ は正の実数で、この変数変換は実軸方向のスケール変換として問題なく実行できます。与えられた公式 ∫−∞∞e−s2ds=π を使うと
∫−∞∞2πdke−λτk2−ikξ=2πλτe−ξ2/(4λτ)∫−∞∞dse−s2=4πλτ1exp(−4λτξ2)
です。よって
G(t,x,t′,x′)=⎩⎨⎧04πλ(t−t′)1exp(−4λ(t−t′)(x−x′)2)(t<t′)(t>t′)
が答えです。
検算を3つ行います。第一に規格化で、t>t′ のとき ∫−∞∞Gdx=1 です(上のガウス積分で ξ 積分を実行すればよい)。第二に t→t′+0 の極限で、幅が 4λ(t−t′)→0、面積が1のガウス関数なので G→δ(x−x′) となります。方程式 (3) を t について t′ の前後で積分すると G(t′+0)−G(t′−0)=δ(x−x′) が要求されますが、t<t′ で G=0 なのでこれが満たされています。第三に次元です。[λ]=L2/T なので (x−x′)2/(λ(t−t′)) は無次元、前因子は 1/L の次元をもち、δ(x−x′) と同じ次元です。
S(t,x)=δ(t)cos(px)(p は実定数)とします。(4) に代入して t′ 積分をデルタ関数で実行すると
f(t,x)=∫−∞∞dx′G(t,x,0,x′)cos(px′)
です。t<0 では G(t,x,0,x′)=0 なので f(t,x)=0 となり、要求された条件を自動的に満たします。この構成が一意であることも見ておきます。他の解との差は同次方程式の解で、設問1よりそれは ∫2πdkg~(k)e−λk2t−ikx の形ですが、これが t<0 のすべてで 0 なら g~(k)e−λk2t≡0、すなわち g~≡0 です。よって以下で求める f が唯一の解です。
t>0 では設問5の G を使います。cos(px′)=21(eipx′+e−ipx′) と分け、y=x′−x と置くと
4πλt1∫−∞∞dx′e−(x−x′)2/(4λt)e±ipx′=4πλte±ipx∫−∞∞dye−y2/(4λt)±ipy
です。指数を −4λt1(y∓2iλpt)2−λp2t と平方完成し、設問5と同じ要領で積分路を実軸に戻して ∫e−s2ds=π を使うと、y 積分は 4πλte−λp2t になります。したがって
f(t,x)=21(eipx+e−ipx)e−λp2t=e−λp2tcos(px)(t>0)
です。両者をまとめて、階段関数 θ を用いて
f(t,x)=θ(t)e−λp2tcos(px)
が答えです。
直接検算します。∂tf=δ(t)e−λp2tcos(px)−λp2θ(t)e−λp2tcos(px) で、δ(t)e−λp2t=δ(t) です。一方 λ∂x2f=−λp2f なので
∂t∂f−λ∂x2∂2f=δ(t)cos(px)=S(t,x)
となり、確かに (1) を満たします。t<0 で f=0 も明らかです。λp2t は [λ]=L2/T、[p]=1/L から無次元で、指数の引数として整合します。
最後に t を正の値に固定したときの x についての最大値を求めます。p,x,t が実で λ>0 なので f は実数値で、e−λp2t>0 より
f(t,x)=e−λp2tcos(px)≤e−λp2t
です。等号は cos(px)=1 のときで、p=0 なら px=2nπ(n は整数)です。よって最大値は e−λp2t、それを与える x は
x=p2nπ(n=0,±1,±2,…)
です。p=0 の場合は S=δ(t)、f=θ(t) となり、t>0 では f≡1 ですべての x が最大値 1 を与えます。最大値 e−λp2t は ∣p∣ が大きいほど速く減衰し、波長の短い成分ほど早く均されるという拡散の性質と合っています。
出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 平成27年度 修士課程 入学試験問題 数学。問題文は要約して引用しています。