大問2題で、2問すべてが必答です(試験時間は60分)。第1問は3次元回転の集合 SO(3) を題材に、群としての性質の真偽判定から始めて、回転の固有値、無限小回転の生成子、交代行列の指数関数が回転になることまでを一本の線でたどります。第2問は fn(x)=ex2(d/dx)ne−x2 で定義される多項式(符号を除いてエルミート多項式)の問題で、部分積分によるガウス型積分、コーシーの積分表示から母関数を導く部分、母関数が満たす偏微分方程式から各 fn の常微分方程式を取り出す部分が山になります。どちらの問題も「示せ」「説明せよ」が多く、極限操作や場合分けの詰めがそのまま得点になります。
| 問題 | 分野 | 主題 |
|---|
| 第1問 | 線形代数・群論・微分方程式 | 3次元回転群、回転の固有値、交代行列と行列指数関数 |
| 第2問 | 特殊関数・複素解析・微分方程式 | エルミート多項式、ガウス型積分、複素積分による母関数 |
R は3次元空間の回転を表す実 3×3 行列全体の集合で、単位行列 I も含みます。ここで回転とは、原点を固定する線形変換のうち、長さ(したがって内積)を保ち、かつ右手系を右手系に写す(行列式が正の)もの、という意味で使います。この解釈のもとで R=SO(3) です。
Ω(n,θ) は単位ベクトル n を軸とする角 θ の回転行列で、回転の正の向きは n の方向に進む右ねじを回す向きとします。任意の実3次元ベクトル v0 に対して v(θ)=Ω(n,θ)v0 と置きます。また A(a) は、任意の u に対して A(a)u=a×u を満たす実 3×3 行列です。標準基底を e1,e2,e3 と書きます。
以下で繰り返し使う道具を1つ先に用意します。単位ベクトル n に対して、(f1,f2,n) が右手系の正規直交系(つまり f1×f2=n、n×f1=f2、f2×n=f1)となるように f1,f2 を取ると、Ω(n,θ) の作用は
Ω(n,θ)n=n,Ω(n,θ)f1=cosθf1+sinθf2,Ω(n,θ)f2=−sinθf1+cosθf2
で尽くされます。これは「軸を動かさず、軸に垂直な平面内を右ねじの向きに角 θ だけ回す」という定義をそのまま書き下したものです。
(a) ○ です。X,Y が長さを保つなら合成 XY も長さを保ちます。また det(XY)=detXdetY>0 なので向きも保ちます。よって XY も回転で、R は行列の積について閉じています(実際 R は群をなします)。
(b) × です。軸の異なる回転は一般に交換しません。X=Ω(e1,π/2)、Y=Ω(e3,π/2)、すなわち
X=1000010−10,Y=010−100001
を取ると
XY=001−1000−10,YX=010001100
で、たとえば XYe1=(0,0,1) に対し YXe1=(0,1,0) となり一致しません。
(c) ○ です。X∈R は内積を保つので、任意の u,w に対して
tu(tXX)w=t(Xu)(Xw)=tuw
が成り立ちます。u=ei、w=ej と取れば (tXX)ij=δij、つまり tXX=I です。これで X は正則で逆行列が tX と分かるので、XtX=I も従います。
(d) × です。直交性だけでは行列式の符号が決まりません。反例は鏡映
X=10001000−1
で、tXX=XtX=I を満たしますが detX=−1 であり、右手系を左手系に写すので回転ではありません(X=−I でも同じです)。直交行列全体 O(3) のうち det=+1 の部分だけが R=SO(3) です。
(e) ○ です。(c) より X は実直交行列なので X†=tX=X−1 であり、X†X=XX†=I が成り立ちます。すなわち X はユニタリ行列であり、特に正規行列(X†X=XX† を満たす行列のこと)です。正規行列はユニタリ行列で対角化できる(スペクトル定理。固有ベクトルからなる正規直交基底が取れる、という内容です)ので、U†XU が対角行列となるユニタリ U が存在します。U の具体形は設問(ii)(2)で作ります。
まとめると (a)○、(b)×、(c)○、(d)×、(e)○ が答えです。
n=(0,0,1) のときは設定で述べた作用そのままで、f1=e1、f2=e2 と取れて
Ω(n,θ)=cosθsinθ0−sinθcosθ0001
です。固有方程式は
det(Ω−λI)=(1−λ){(cosθ−λ)2+sin2θ}=(1−λ)(λ2−2λcosθ+1)=0
となり、λ2−2λcosθ+1=0 の根は λ=cosθ±isinθ です。答えは
λ=1,eiθ,e−iθ
の3つです。検算として TrΩ=1+2cosθ が固有値の和 1+eiθ+e−iθ に、detΩ=1 が積 1⋅eiθ⋅e−iθ に一致します。
任意の単位ベクトル n についても固有値は同じで、答えは λ=1, eiθ, e−iθ です。
理由は基底の取り替えです。設定で用意した右手系正規直交系 (f1,f2,n) を列に並べた行列を P=(f1 f2 n) とすると P は直交行列で、Ω(n,θ) のこの基底での表現行列は設定で書いた作用より設問(ii)(1) と同じ形の行列 M(θ) になります。すなわち
Ω(n,θ)=PM(θ)tP,M(θ)=cosθsinθ0−sinθcosθ0001
です。相似変換(上のように基底を取り替えて表現行列を書き直すこと)で固有値は変わらないので、設問(ii)(1) の結果がそのまま使えます。
固有ベクトルも書き下せます。設定の作用から
Ω(n,θ)(f1∓if2)=e±iθ(f1∓if2),Ω(n,θ)n=n
が直接確かめられます。(f1−if2)/2、(f1+if2)/2、n はエルミート内積について正規直交なので、これらを列に並べた U はユニタリで
U†Ω(n,θ)U=eiθ000e−iθ0001
となります。これが設問(i)(e) の U の具体形です。
同じ軸のまわりの回転は角度が足し算になります。実際、設定の基底 (f1,f2,n) では Ω(n,θ) は M(θ) で表され、三角関数の加法定理から M(Δθ)M(θ)=M(θ+Δθ) が成り立つので
v(θ+Δθ)=Ω(n,θ+Δθ)v0=Ω(n,Δθ)v(θ)
です。つまり、θ から θ+Δθ への変化は、いまの位置 v(θ) を軸 n のまわりに Δθ だけ回すことに等しくなります。
そこで u=v(θ) を軸に平行な成分と垂直な成分に分けます。
u∥=(n⋅u)n,u⊥=u−u∥
u⊥=0 の場合を先に扱います。ρ=∣u⊥∣>0 と置き、f1=u⊥/ρ、f2=n×f1 と取れば (f1,f2,n) は右手系の正規直交系です。回転は軸方向成分を動かさず、垂直成分を f1f2 平面内で Δθ 回すので
Ω(n,Δθ)u=u∥+ρ(cosΔθf1+sinΔθf2)
となります。ここで ρf2=n×u⊥=n×u(n×u∥=0 を使いました)なので
v(θ+Δθ)−v(θ)=(cosΔθ−1)u⊥+sinΔθ(n×u)
が厳密に成り立ちます。cosΔθ−1=−Δθ2/2+O(Δθ4)、sinΔθ=Δθ+O(Δθ3) より、Δθ の1次までで
v(θ+Δθ)−v(θ)=n×v(θ)Δθ+O(Δθ2)
となり、これが示すべき式です。誤差は Δθ2 のオーダーで、軸に平行な向きには生じません。
幾何的には次の絵になります。v(θ) の終点は、軸上の点 u∥ を中心とし軸に垂直な平面内にある半径 ρ=∣n×v(θ)∣ の円周上を動きます。θ が Δθ 増えると終点はこの円周上を弧長 ρΔθ だけ進みます。進む向きは円の接線方向で、右ねじの正の向きに取れば単位接ベクトルは f2=(n×v)/ρ です。したがって変位は ρΔθ⋅(n×v)/ρ=n×vΔθ となります。弧と弦の差が Δθ の2次であることが、上の展開に対応します。
残る場合として u⊥=0、つまり v(θ) が軸に平行なときは、終点が軸上にあって回転しても動かず v(θ+Δθ)−v(θ)=0 です。一方 n×v(θ)=0 なので、示すべき式は両辺ともゼロベクトルとなって成立します。これで場合が尽くされました。
設問(ii)(3) の式を Δθ で割って Δθ→0 とすると、右辺の誤差項は O(Δθ)→0 なので v(θ) は微分可能で
dθdv=n×v(θ)=A(n)v(θ)
を満たします。これが定数係数の線形常微分方程式で、初期条件は v(0)=Ω(n,0)v0=v0 です。
これを解きます。A=A(n) と略記します。行列指数関数 eθA=∑k≥0θkAk/k! は任意の θ で絶対収束し(∥θkAk/k!∥≤(∣θ∣∥A∥)k/k! が収束級数で押さえられます)、項別微分して dθdeθA=AeθA=eθAA が成り立ちます。また eθAe−θA=I なので eθA は正則です。そこで
w(θ)=e−θAv(θ)
と置くと
dθdw=−Ae−θAv+e−θAdθdv=e−θA(−Av+Av)=0
となります(A と e−θA が交換することを使いました)。よって w は定ベクトルで w(θ)=w(0)=v0、つまり
Ω(n,θ)v0=v(θ)=eθA(n)v0
です。この式は任意の v0∈R3 について成立するので、v0=e1,e2,e3 と取れば両辺の行列の各列が一致します。ゆえに行列として
Ω(n,θ)=eθA(n)
が成り立ちます。
確認しておきます。n=(0,0,1) なら、設問(ii)(5) で求める対応から
A(n)=010−100000,A(n)2=−1000−10000,A(n)3=−A(n)
なので、指数関数の級数を偶数次と奇数次に分けると
eθA=I+sinθA+(1−cosθ)A2=cosθsinθ0−sinθcosθ0001
となり、設問(ii)(1) の Ω と一致します。なお A(n)3=−A(n) は一般の単位ベクトル n でも成り立ちます(n×(n×u)=(n⋅u)n−u から従います)。したがって上の3項の表式はどの軸でも使えて、これがロドリゲスの公式(回転行列を I、A、A2 の組み合わせで書く式のこと)です。
A(a) を成分で書きます。(a×u)1=a2u3−a3u2 などから
A(a)=0a3−a2−a30a1a2−a10
です。これを問題の X と成分ごとに比べます。(1,2) 成分から −a3=x12、(1,3) 成分から a2=x13、(2,3) 成分から −a1=x23 が決まります。交代性 xij=−xji を使えば残りの (2,1),(3,1),(3,2) 成分の条件も同じ3式に帰着し、矛盾なく解けます。よって答えは
a0=(x32,x13,x21)=(−x23,−x31,−x12)
です。添字を使えば (a0)i=−21εijkXjk とも書けます(εijk は、(i,j,k) が (1,2,3) の偶置換なら 1、奇置換なら −1、同じ添字を含めば 0 とする記号です)。対角成分が 0 で独立成分が3個という交代行列の自由度が、ベクトルの3成分とちょうど対応しています。写像 a↦A(a) は線形で、いま見たようにベクトル全体から実3次交代行列全体への全単射です。
X を実3次交代行列とし、Y=eX とします。設問(ii)(5) より X=A(a0) となる実ベクトル a0 が取れます。
a0=0 のときは X=O、Y=I で、I∈R なので主張は成り立ちます。
a0=0 のときは θ=∣a0∣>0、n=a0/θ(単位ベクトル)と置きます。A(a)u=a×u は a について線形なので A(a0)=A(θn)=θA(n) です。よって設問(ii)(4) の結果が使えて
Y=eX=eθA(n)=Ω(n,θ)
となります。これは軸 n のまわりの角 θ の回転を表す行列そのものなので、Y∈R です。以上で示せました。軸と回転角が n=a0/∣a0∣、θ=∣a0∣ と具体的に読み取れる点まで込めての結論です。
行列の性質から直接確認することもできます。X が実なら級数の各項が実なので Y は実行列です。転置は級数の各項ごとに取れて
tY=t(eX)=etX=e−X=(eX)−1=Y−1
なので tYY=YtY=I、つまり Y は実直交行列です。さらに deteX=eTrX と交代行列の対角成分が 0 であること(TrX=0)から detY=e0=1 です。設問(i)(d) で見たように直交性だけでは足りず、detY=+1 まで言えて初めて回転だと結論できます。ここまでで Y∈SO(3) が分かり、SO(3) の元が必ずある軸のまわりの回転であること(オイラーの定理)を使えば同じ結論になりますが、上の構成的な議論はその軸と角を明示的に与えている点で強い主張です。
n=0,1,2,… に対して
fn(x)=ex2dxndn(e−x2)
と定義します。以下では g(x)=e−x2 と書きます。定義は e−x2fn(x)=g(n)(x) と同値で、積分の設問ではこの形をそのまま使います。設問(iv) 以降では x を複素変数 z に置き換えますが、e−z2 が整関数(複素平面全体で微分可能な関数のこと)なので fn は複素平面全体で定義された多項式になります。
漸化式を先に用意します。定義から
fn+1(x)=ex2dxd(e−x2fn(x))=ex2(e−x2fn′(x)−2xe−x2fn(x))=fn′(x)−2xfn(x)
です。f0=1 から順に
f1=−2x,f2=4x2−2,f3=−8x3+12x,f4=16x4−48x2+12
が得られます。エルミート多項式 Hn とは fn(x)=(−1)nHn(x) という関係にあります。
もう1つ、以下で何度も使う減衰の事実を確認しておきます。g(k)(x) は(x の多項式)×e−x2 の形なので、任意の m,k≥0 に対して xmg(k)(x)→0(∣x∣→∞)であり、この形の関数の R 上の積分は絶対収束します。以下の部分積分の境界項はすべてこれで消えます。
n 次です。漸化式 fn+1=fn′−2xfn による帰納法で示します。f0=1 は 0 次で最高次係数は a0=1 です。fn が n 次で最高次係数 an=0 だとすると、右辺の fn′ は n−1 次以下、−2xfn は n+1 次で最高次係数 −2an です。次数が異なるので打ち消しは起こらず、fn+1 は n+1 次で an+1=−2an=0 となります。よって degfn=n で、最高次係数は an=(−2)n です。答えは x の n 次多項式です。
e−x2fn(x)=g(n)(x) を使うと
∫−∞∞xfn(x)e−x2dx=∫−∞∞xg(n)(x)dx
です。n>1 すなわち n≥2 のもとで部分積分すると
∫−∞∞xg(n)(x)dx=[xg(n−1)(x)]−∞∞−∫−∞∞g(n−1)(x)dx=−[g(n−2)(x)]−∞∞=0
となります。1つ目の境界項は設定で確認した減衰から 0 です。2つ目では n−1≥1 なので g(n−1) の原始関数として g(n−2)(n=2 のときは g 自身)が取れ、その境界値も 0 です。答えは 0 です。
n=1 を除外している理由もはっきりします。n=1 では ∫g(0)dx=∫e−x2dx=π が残り、積分値は −π=0 です。n≥2 で消えるのは、重み e−x2 についての直交性から fn が 1 次以下の多項式と直交することの言い換えでもあります。
同じ書き換えで
∫−∞∞xnfn(x)e−x2dx=∫−∞∞xng(n)(x)dx
です。部分積分を n 回繰り返します。j 回目の境界項は [dxj−1dj−1(xn)⋅g(n−j)(x)]−∞∞ の形で、設定の減衰からすべて 0 です。よって
∫−∞∞xng(n)(x)dx=(−1)n∫−∞∞dxndn(xn)g(x)dx=(−1)nn!∫−∞∞e−x2dx
となり、答えは
∫−∞∞xnfn(x)e−x2dx=(−1)nn!π
です。
小さい n で検算します。n=0 では ∫e−x2dx=π で、式は (−1)00!π=π を与えます。n=1 では f1=−2x から ∫(−2x2)e−x2dx=−2⋅2π=−π で、式の値 (−1)11!π と合います。n=2 では f2=4x2−2 から ∫x2(4x2−2)e−x2dx=4⋅43π−2⋅2π=2π で、2!π と一致します。
e−ω2 は整関数なので、与えられた表示は z を中心とする半径 1 の円周に対するコーシーの積分公式です。まず n 階微分の表示に持ち上げます。z を固定し C={ω:∣ω−z∣=1}(反時計回り)と書きます。∣ζ−z∣<1/2 を満たす点 ζ に対して、ζ を中心とする半径 1 の円周は、e−ω2 が正則な領域(複素平面全体)の内部で C へ連続変形でき、どちらも ζ を正の向きに1回だけ囲みます。したがってコーシーの定理から経路を C に取り替えられて
e−ζ2=2πi1∮Cω−ζe−ω2dω(∣ζ−z∣<1/2)
が成り立ちます。右辺の経路 C は ζ に依らないので、ζ について微分できます。実際、ω∈C と ∣ζ−z∣<1/2 のとき ∣ω−ζ∣≥1/2 なので分母が 0 に近づかず、被積分関数は ζ について何回でも微分可能でその導関数は ω∈C について一様有界です。C はコンパクトなので微分と積分は交換できます。ζ で n 回微分して ζ=z と置くと
dzndne−z2=2πin!∮C(ω−z)n+1e−ω2dω,つまりn!fn(z)=2πiez2∮C(ω−z)n+1e−ω2dω
です(グルサの公式。コーシーの積分公式を微分した形のことです)。
これを級数に代入します。
n=0∑∞n!tnfn(z)=ez22πi1∮Ce−ω2n=0∑∞(ω−z)n+1tndω
順序交換は問題の指示で認められていますが、根拠も明確です。C 上では ∣ω−z∣=1 なので t/(ω−z)=∣t∣<1 が ω に依らない定数で押さえられ、級数は C 上一様絶対収束します。e−ω2 は C 上有界なので、有界な連続関数を掛けても一様収束は保たれ、コンパクトな経路上での項別積分が正当化されます。
等比級数を足すと
n=0∑∞(ω−z)n+1tn=ω−z1⋅1−ω−zt1=ω−(z+t)1
なので
n=0∑∞n!tnfn(z)=ez22πi1∮Cω−(z+t)e−ω2dω
となります。∣t∣<1 より点 z+t は円 C の内部にあり、e−ω2 は整関数なので、右辺の積分にコーシーの積分公式が使えて値は e−(z+t)2 です。よって
n=0∑∞n!tnfn(z)=ez2e−(z+t)2=e−t2−2tz
が示せました。仮定 ∣t∣<1 は、等比級数の収束と z+t が C の内部に入ることの両方に使われています。
低次で確認しておきます。右辺を t で展開すると e−t2−2tz=1−2tz+(2z2−1)t2+⋯ で、左辺の t0,t1,t2 の係数は f0=1、f1=−2z、f2/2!=(4z2−2)/2=2z2−1 です。一致します。
F(t,z)=e−t2−2tz と置きます。与えられた式は直接確かめられます。∂F/∂z=−2tF、∂2F/∂z2=4t2F、∂F/∂t=−(2t+2z)F なので
∂z2∂2F−2z∂z∂F=(4t2+4tz)F=−2t(−2t−2z)F=−2t∂t∂F
です。
設問(iv) より ∣t∣<1 で F(t,z)=∑m≥0m!tmfm(z) であり、収束冪級数の係数は一意なので
fn(z)=∂tn∂nFt=0
が成り立ちます。そこで上の式の両辺を t で n 回微分して t=0 と置きます。F は (t,z) の整関数なので偏微分の順序はすべて交換できます。
左辺は z 微分と t 微分を入れ替えて
∂tn∂n(∂z2∂2F−2z∂z∂F)t=0=dz2d2fn(z)−2zdzdfn(z)
となります。右辺はライプニッツ則から
∂tn∂n(t∂t∂F)=t∂tn+1∂n+1F+n∂tn∂nF
なので、t=0 で第1項が落ちて nfn(z) が残り、全体で −2nfn(z) です。両者を等号で結べば
dz2d2fn(z)−2zdzdfn(z)+2nfn(z)=0
が得られます。これが示すべき微分方程式で、答えは λ=2n です。
λ の値は最高次の項だけを見ても確認できます。fn=anzn+⋯(an=(−2)n=0)を代入すると、zn の係数は fn′′ から寄与がなく、−2zfn′ から −2nan、λfn から λan なので、(λ−2n)an=0 すなわち λ=2n が必要です。多項式全体で成り立つことは上の議論が保証します。具体例でも確かめられます。f2=4z2−2 では f2′′=8、−2zf2′=−16z2、4f2=16z2−8 の和が 0 です。f3=−8z3+12z では f3′′=−48z、−2zf3′=48z3−24z、6f3=−48z3+72z の和が 0 です。λ=2n はエルミートの微分方程式の固有値で、設定で述べた fn=(−1)nHn という対応と整合しています。
出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 平成20年度 修士課程 入学試験問題 数学。問題文は要約して引用しています。