コンテンツにスキップ

連続写像と同相写像:開集合の逆像で連続性を捉え直す

前提:位相空間の定義と基本概念:距離を捨てても「近さ」は残る

生 Markdown
  • 連続性は「終域の開集合の逆像が始域の開集合になること」だけで定義できます。距離も ε\varepsilonδ\delta も要りません。
  • この定義は、距離空間どうしの写像に限れば ε\varepsilon-δ\delta 論法による連続性と完全に一致します(定理 4.1)。ε\varepsilon-δ\delta の量化子の順序が、そのまま開集合の言葉に翻訳されます。
  • 「像」ではなく「逆像」を使うのは、逆像の操作が合併・共通部分・補集合と可換だからです。連続写像は開集合を開集合に写すとは限りません(例 3.8)。
  • 同相写像とは、連続な全単射であって逆写像も連続なものです。この最後の条件は独立で、落とすと成り立たなくなります(例 5.7)。
  • 同相な 2 つの空間は、位相だけを使って記述できるあらゆる性質を共有します。逆に、同相でないことは「一方だけがもつ位相的性質」を見つけて示します。
  • R(0,1)\mathbb{R} \cong (0,1) ですが R≇[0,1]\mathbb{R} \not\cong [0,1] です。ただし理由は「有界かどうか」ではありません。有界性は位相的性質ではないからです(例 6.1、および Appendix)。

1. 動機 — 距離を捨てても連続性は残るか

Section titled “1. 動機 — 距離を捨てても連続性は残るか”

微分積分学で最初に習う連続性の定義は、コーシーとワイエルシュトラスに遡る次の形をしています。関数 f:RRf : \mathbb{R} \to \mathbb{R} が点 aa で連続であるとは、

ε>0, δ>0, xR,xa<δ    f(x)f(a)<ε\forall \varepsilon > 0,\ \exists \delta > 0,\ \forall x \in \mathbb{R},\quad |x - a| < \delta \implies |f(x) - f(a)| < \varepsilon

が成り立つことでした。この定義は「f(a)f(a) からの誤差を ε\varepsilon 以内に抑えたいなら、aa からの距離を δ\delta 以内に抑えればよい」という契約として読めます。

ところがこの定義は、絶対値 xa|x - a|、つまり距離に全面的に依存しています。では距離が最初から与えられていない場所では、連続性を語れないのでしょうか。実際には、距離が無い、あるいは自然な距離が一意に決まらない状況は数学のいたるところに現れます。多項式の零点集合に入るザリスキ位相、群を部分群で割った商空間、関数の集合に入れる各点収束の位相 — どれも距離では定義しにくい、あるいは定義できないものです。それでも私たちは「連続な準同型」「連続な作用」といった言葉を使います。

そこで問いを立て直します。ε\varepsilon-δ\delta 定義のうち、本当に必要な情報は何でしょうか。上の式で f(x)f(a)<ε|f(x) - f(a)| < \varepsilon という条件は「f(x)f(x)f(a)f(a) を中心とする開球 B(f(a),ε)B(f(a), \varepsilon) に入る」と言い換えられ、xa<δ|x - a| < \delta は「xx が開球 B(a,δ)B(a,\delta) に入る」と言い換えられます。すると定義は

ε>0, δ>0,f(B(a,δ))B(f(a),ε)\forall \varepsilon > 0,\ \exists \delta > 0,\quad f\bigl(B(a,\delta)\bigr) \subset B\bigl(f(a), \varepsilon\bigr)

となります。ここで「半径 ε\varepsilon の開球」という具体的な形はもう使われておらず、使われているのは**「f(a)f(a) を含む開集合をひとつ与えられたら、aa を含む開集合をひとつ返す」**という関係だけです。半径という数値情報を捨て、「開集合の族」だけを残しても、この条件は書けます。これが位相空間における連続性の定義です。

さらにもう一歩進めます。「すべての点で連続」という大域的な条件は、点をひとつずつ調べる必要のない、驚くほど簡潔な形にまとまります。それが「開集合の逆像が開集合」です。なぜ像ではなく逆像なのか、なぜこの一行で十分なのか — 本記事はその二点を丁寧に確かめることから始めます。

そして連続写像が手に入れば、位相空間の「同型」が定義できます。集合の同型は全単射、群の同型は全単射準同型でした。位相空間の同型は同相写像、すなわち連続な全単射で逆写像も連続なものです。「コーヒーカップとドーナツは同じ」という有名な標語は、この同型の下で区別できないという意味です。標語を定理に変えるところまでが本記事の目標です。

位相空間の定義は 位相空間の定義と基本概念 で扱ったもの(位相空間の定義(定義 4.1)[位相空間の定義と基本概念])を使います。ここで記号を確認します。

集合 XX とその部分集合族 OX2X\mathcal{O}_X \subset 2^{X} の組 (X,OX)(X, \mathcal{O}_X)位相空間であるとは、

  • (O1) OX\emptyset \in \mathcal{O}_X かつ XOXX \in \mathcal{O}_X
  • (O2) OX\mathcal{O}_X の元の任意個(無限個でもよい)の合併は再び OX\mathcal{O}_X に属する、
  • (O3) OX\mathcal{O}_X の元の有限個の共通部分は再び OX\mathcal{O}_X に属する

を満たすことをいい、OX\mathcal{O}_X の元を開集合と呼びます。補集合が開集合であるような部分集合を閉集合といいます。AXA \subset X閉包 A\overline{A}AA を含む閉集合すべての共通部分であり、AA を含む最小の閉集合です。混乱の恐れがないときは OX\mathcal{O}_X を省略して単に「位相空間 XX」と書きます。

部分集合 AXA \subset X には部分空間位相 OA={UA:UOX}\mathcal{O}_A = \{\, U \cap A : U \in \mathcal{O}_X \,\} を入れます。以下、R\mathbb{R} の部分集合(区間など)はつねに R\mathbb{R} の通常の位相からの部分空間位相をもつものとします。

写像 f:XYf : X \to YBYB \subset Y に対し、逆像

f1(B):={xX:f(x)B}f^{-1}(B) := \{\, x \in X : f(x) \in B \,\}

と定めます。ここで f1f^{-1} は記号であって、ff が可逆であることを要求しません。逆像がなぜ扱いやすいのかは、次の三つの等式に尽きます。{Bλ}λΛ\{B_\lambda\}_{\lambda \in \Lambda}YY の部分集合の族、BYB \subset Y とすると

f1(λBλ)=λf1(Bλ),f1(λBλ)=λf1(Bλ),f1(YB)=Xf1(B)f^{-1}\Bigl(\bigcup_{\lambda} B_\lambda\Bigr) = \bigcup_{\lambda} f^{-1}(B_\lambda), \qquad f^{-1}\Bigl(\bigcap_{\lambda} B_\lambda\Bigr) = \bigcap_{\lambda} f^{-1}(B_\lambda), \qquad f^{-1}(Y \setminus B) = X \setminus f^{-1}(B)

が成り立ちます。いずれも定義をほどくだけです。たとえば一つ目は、xf1(λBλ)x \in f^{-1}(\bigcup_\lambda B_\lambda)     \iff f(x)λBλf(x) \in \bigcup_\lambda B_\lambda     \iff ある λ\lambda について f(x)Bλf(x) \in B_\lambda     \iff ある λ\lambda について xf1(Bλ)x \in f^{-1}(B_\lambda)     \iff xλf1(Bλ)x \in \bigcup_\lambda f^{-1}(B_\lambda)、という同値の連鎖から従います。三つ目も、xf1(YB)x \in f^{-1}(Y \setminus B)     \iff f(x)Bf(x) \notin B     \iff xf1(B)x \notin f^{-1}(B) です。

対照的に、はこの性質をもちません。f:RRf : \mathbb{R} \to \mathbb{R}, f(x)=x2f(x) = x^{2}A=[1,0]A = [-1, 0], B=[0,1]B = [0,1] を取ると AB={0}A \cap B = \{0\} なので f(AB)={0}f(A \cap B) = \{0\} ですが、f(A)=f(B)=[0,1]f(A) = f(B) = [0,1] なので f(A)f(B)=[0,1]f(A) \cap f(B) = [0,1] であり、両者は一致しません。一般には f(AB)f(A)f(B)f(A \cap B) \subset f(A) \cap f(B) しか言えず、補集合に至っては包含関係すら定まりません。位相の公理 (O2), (O3) が合併と共通部分についての条件である以上、これらと可換な逆像のほうが相性がよいのです。

最後に開基位相の基底(定義 5.1)[位相空間の定義と基本概念])を復習します。BOY\mathcal{B} \subset \mathcal{O}_Y が位相 OY\mathcal{O}_Y開基であるとは、任意の開集合 VOYV \in \mathcal{O}_YB\mathcal{B} の元の合併として書けることをいいます。たとえば R\mathbb{R} の通常の位相の開基として開区間全体 {(a,b):a<b}\{\, (a,b) : a < b \,\} が取れ、距離空間 (Y,d)(Y, d) では開球全体 {Bd(y,r):yY, r>0}\{\, B_d(y, r) : y \in Y,\ r > 0 \,\} が開基になります。

定義 3.1連続写像

(X,OX)(X, \mathcal{O}_X), (Y,OY)(Y, \mathcal{O}_Y) を位相空間とします。写像 f:XYf : X \to Y連続であるとは、

VOY,f1(V)OX\forall V \in \mathcal{O}_Y,\quad f^{-1}(V) \in \mathcal{O}_X

が成り立つこと、すなわち YY の任意の開集合の逆像が XX の開集合になることをいいます。

定義に XX, YY の位相が両方現れていることに注意してください。連続性は写像 ff だけの性質ではなく、ff と始域・終域に入れた位相の三つ組の性質です。同じ集合写像でも位相を変えれば連続性は変わります(例 3.7)。

定義 3.2点における連続性

f:XYf : X \to Y を写像、xXx \in X とします。ffxx で連続であるとは、f(x)f(x) を含む任意の開集合 VYV \subset Y に対して、xx を含む開集合 UXU \subset Xf(U)Vf(U) \subset V を満たすものが存在することをいいます。

XYxf(x)f⁻¹(V) は開集合V は開集合f逆像をとる(向きが逆になる)
連続性は「終域の開集合をひとつ指定するたびに、始域で開集合が返ってくる」という条件です。矢印 f と逆像の矢印は向きが逆であることに注意してください

次の定理が本記事の土台です。これがあるおかげで、状況に応じて最も扱いやすい条件を選べます。開集合が扱いにくい場面(閉包を評価したいときなど)では (iv) が、点ごとの議論では (iii) が便利です。

定理 3.3連続性の同値条件

XX, YY を位相空間、f:XYf : X \to Y を写像とします。次の 4 条件は同値です。

  • (i) 任意の開集合 VYV \subset Y に対し f1(V)f^{-1}(V)XX の開集合である(すなわち ff は連続である)。
  • (ii) 任意の閉集合 FYF \subset Y に対し f1(F)f^{-1}(F)XX の閉集合である。
  • (iii) ffXX のすべての点で 定義 3.2 の意味で連続である。
  • (iv) 任意の部分集合 AXA \subset X に対し f(A)f(A)f(\overline{A}) \subset \overline{f(A)} が成り立つ。
証明(定理 3.3)

(i) \Rightarrow (iii) を示します。xXx \in X と、f(x)f(x) を含む開集合 VYV \subset Y を任意に取ります。U:=f1(V)U := f^{-1}(V) とおくと、(i) より UUXX の開集合です。f(x)Vf(x) \in V なので xUx \in U であり、また f(U)=f(f1(V))Vf(U) = f(f^{-1}(V)) \subset V です(uf1(V)u \in f^{-1}(V) なら定義から f(u)Vf(u) \in V だから)。よって 定義 3.2 の条件が xx で満たされます。xx は任意なので (iii) が成り立ちます。

(iii) \Rightarrow (i) を示します。VYV \subset Y を開集合とします。f1(V)=f^{-1}(V) = \emptyset ならば (O1) より開集合です。そうでないとき、各 xf1(V)x \in f^{-1}(V) に対し f(x)Vf(x) \in V であり、VVf(x)f(x) を含む開集合ですから、(iii) より xx を含む開集合 UxXU_x \subset Xf(Ux)Vf(U_x) \subset V となるものが取れます。f(Ux)Vf(U_x) \subset VUxf1(V)U_x \subset f^{-1}(V) と同値です。したがって

f1(V)=xf1(V){x}xf1(V)Uxf1(V)f^{-1}(V) = \bigcup_{x \in f^{-1}(V)} \{x\} \subset \bigcup_{x \in f^{-1}(V)} U_x \subset f^{-1}(V)

となり、f1(V)=xUxf^{-1}(V) = \bigcup_{x} U_x を得ます。これは開集合の合併なので (O2) より開集合です。

(i) \Leftrightarrow (ii) を示します。FYF \subset Y を閉集合とすると YFY \setminus F は開集合で、§2 の逆像の補集合則により

f1(YF)=Xf1(F)f^{-1}(Y \setminus F) = X \setminus f^{-1}(F)

です。(i) を仮定すると左辺は開集合なので、f1(F)f^{-1}(F) は閉集合となり (ii) が従います。逆に (ii) を仮定し、VYV \subset Y を開集合とすると YVY \setminus V は閉集合なので f1(YV)=Xf1(V)f^{-1}(Y \setminus V) = X \setminus f^{-1}(V) は閉集合、よって f1(V)f^{-1}(V) は開集合となり (i) が従います。ここで「FF が閉     \iff YFY \setminus F が開」という対応が閉集合全体と開集合全体の間の全単射であることを使いました。

(ii) \Rightarrow (iv) を示します。AXA \subset X を任意に取り、C:=f(A)C := \overline{f(A)} とおきます。CCYY の閉集合なので、(ii) より f1(C)f^{-1}(C)XX の閉集合です。また f(A)Cf(A) \subset C から Af1(f(A))f1(C)A \subset f^{-1}(f(A)) \subset f^{-1}(C) が成り立ちます。A\overline{A}AA を含む最小の閉集合であり、f1(C)f^{-1}(C)AA を含む閉集合ですから Af1(C)\overline{A} \subset f^{-1}(C)、すなわち f(A)C=f(A)f(\overline{A}) \subset C = \overline{f(A)} です。

(iv) \Rightarrow (ii) を示します。FYF \subset Y を閉集合とし、A:=f1(F)A := f^{-1}(F) とおきます。f(A)=f(f1(F))Ff(A) = f(f^{-1}(F)) \subset F であり FF は閉なので f(A)F=F\overline{f(A)} \subset \overline{F} = F です。(iv) より

f(A)f(A)Ff(\overline{A}) \subset \overline{f(A)} \subset F

となり、両辺の逆像を考えると Af1(F)=A\overline{A} \subset f^{-1}(F) = A を得ます。つねに AAA \subset \overline{A} ですから A=A\overline{A} = A、すなわち A=f1(F)A = f^{-1}(F) は閉集合です。

以上で (i) \Leftrightarrow (iii)、(i) \Leftrightarrow (ii)、(ii) \Leftrightarrow (iv) が示され、4 条件はすべて同値です。

条件 (iv) は「ff は極限をこわさない」という直観の位相版です。xxAA の触点(A\overline{A} の元)ならば f(x)f(x)f(A)f(A) の触点になる、と読めます。点列の言葉に翻訳すれば「xnxx_n \to x ならば f(xn)f(x)f(x_n) \to f(x)」に対応しますが、一般の位相空間では点列だけでは連続性を特徴づけられないため、閉包で述べるのが正しい一般化です。

開集合をすべて調べるのは大変です。実際には開基だけ調べれば十分です。

補題 3.4開基による連続性の判定

XX, YY を位相空間、B\mathcal{B}YY の位相の開基とします。写像 f:XYf : X \to Y が連続であるための必要十分条件は、任意の BBB \in \mathcal{B} に対し f1(B)f^{-1}(B)XX の開集合となることです。

証明(補題 3.4)

必要性は明白です。BOY\mathcal{B} \subset \mathcal{O}_Y なので、ff が連続ならば 定義 3.1 をそのまま BBB \in \mathcal{B} に適用すればよいからです。

十分性を示します。VYV \subset Y を任意の開集合とします。B\mathcal{B} が開基であることから、ある添字集合 Λ\LambdaBλBB_\lambda \in \mathcal{B} (λΛ)(\lambda \in \Lambda) が存在して V=λΛBλV = \bigcup_{\lambda \in \Lambda} B_\lambda と書けます。§2 の逆像と合併の可換性より

f1(V)=f1(λBλ)=λf1(Bλ)f^{-1}(V) = f^{-1}\Bigl(\bigcup_{\lambda} B_\lambda\Bigr) = \bigcup_{\lambda} f^{-1}(B_\lambda)

です。仮定より各 f1(Bλ)f^{-1}(B_\lambda) は開集合ですから、(O2) によりその合併も開集合です。よって ff は連続です。

命題 3.5恒等写像と合成写像の連続性

XX, YY, ZZ を位相空間とします。

  1. 恒等写像 idX:XX\mathrm{id}_X : X \to X は連続である。
  2. f:XYf : X \to Yg:YZg : Y \to Z がともに連続ならば、合成 gf:XZg \circ f : X \to Z は連続である。
証明(命題 3.5)

(1) 任意の開集合 UXU \subset X に対し idX1(U)=U\mathrm{id}_X^{-1}(U) = U であり、これは開集合です。

(2) まず集合の等式 (gf)1(W)=f1(g1(W))(g \circ f)^{-1}(W) = f^{-1}(g^{-1}(W)) を確かめます。x(gf)1(W)x \in (g\circ f)^{-1}(W)     \iff g(f(x))Wg(f(x)) \in W     \iff f(x)g1(W)f(x) \in g^{-1}(W)     \iff xf1(g1(W))x \in f^{-1}(g^{-1}(W)) です。さて WZW \subset Z を開集合とすると、gg の連続性(定義 3.1)より g1(W)g^{-1}(W)YY の開集合、続いて ff の連続性より f1(g1(W))f^{-1}(g^{-1}(W))XX の開集合です。上の等式よりこれは (gf)1(W)(g\circ f)^{-1}(W) に等しいので、gfg \circ f は連続です。

命題 3.5 は、位相空間を対象、連続写像を射とすると圏 Top\mathbf{Top} が得られる、という主張にほかなりません。同型射が何になるかが §5 の主題です。

注意 3.6部分空間への写像・部分空間からの写像

YY を位相空間、AYA \subset Y に部分空間位相を入れ、ι:AY\iota : A \to Y を包含写像とします。次の 2 点がこの後の例で繰り返し使われます。

(1) 包含写像は連続。 VYV \subset Y が開ならば ι1(V)=VA\iota^{-1}(V) = V \cap A であり、これは部分空間位相の定義から AA の開集合です。

(2) 終域を部分空間に取り替えてよい。 XX を位相空間、f:XAf : X \to A を写像とすると、ff が連続であることと ιf:XY\iota \circ f : X \to Y が連続であることは同値です。実際、AA の開集合は VAV \cap AVVYY の開集合)の形をしており、ff の値はつねに AA に属するので

f1(VA)={xX:f(x)V かつ f(x)A}={xX:f(x)V}=(ιf)1(V)f^{-1}(V \cap A) = \{\, x \in X : f(x) \in V \ \text{かつ}\ f(x) \in A \,\} = \{\, x \in X : f(x) \in V \,\} = (\iota \circ f)^{-1}(V)

が成り立ちます。したがって「AA のすべての開集合の ff による逆像が開」という条件と「YY のすべての開集合の ιf\iota \circ f による逆像が開」という条件は、文字どおり同じ集合の族についての条件です。

要するに、「R\mathbb{R} への連続写像で値が (0,1)(0,1) に入るもの」と「(0,1)(0,1) への連続写像」は同じものだ、ということです。

例 3.7極端な位相のもとでの連続性

集合 XX離散位相 OX=2X\mathcal{O}_X = 2^{X}(すべての部分集合が開)を入れると、任意の位相空間 YY と任意の写像 f:XYf : X \to Y について f1(V)f^{-1}(V)XX の部分集合なので自動的に開集合です。よって ff は連続です。

集合 YY密着位相 OY={,Y}\mathcal{O}_Y = \{\emptyset, Y\} を入れると、任意の写像 f:XYf : X \to Y について f1()=f^{-1}(\emptyset) = \emptysetf1(Y)=Xf^{-1}(Y) = X であり、(O1) よりどちらも XX の開集合です。よって ff は連続です。

定値写像 fy0f \equiv y_0 はつねに連続です。VYV \subset Y が開のとき、y0Vy_0 \in V なら f1(V)=Xf^{-1}(V) = Xy0Vy_0 \notin V なら f1(V)=f^{-1}(V) = \emptyset であり、どちらも (O1) より開集合だからです。

一方、X=RX = \mathbb{R} に通常の位相、Y=RY = \mathbb{R} に離散位相を入れると、恒等写像 id:XY\mathrm{id} : X \to Y は連続ではありません。{0}\{0\}YY の開集合ですが、id1({0})={0}\mathrm{id}^{-1}(\{0\}) = \{0\}R\mathbb{R} の通常の位相で開集合ではないからです(00 を含む開区間 (δ,δ)(-\delta, \delta) はつねに 00 以外の点を含むので {0}\{0\} に含まれません)。同じ集合写像でも、位相を変えれば連続性は失われます。

例 3.8連続だが開写像でも閉写像でもない写像

f:RRf : \mathbb{R} \to \mathbb{R}, f(x)=x2f(x) = x^{2} は連続です(例 3.9 で確かめます)。しかし開集合 (1,1)(-1,1) の像は

f((1,1))={x2:x<1}=[0,1)f\bigl((-1,1)\bigr) = \{\, x^{2} : |x| < 1 \,\} = [0, 1)

です。00 は像に属しますが、任意の δ>0\delta > 0 に対し δ/2(δ,δ)-\delta/2 \in (-\delta, \delta) かつ δ/2[0,1)-\delta/2 \notin [0,1) なので、00 の近傍が [0,1)[0,1) に含まれることはありません。よって [0,1)[0,1) は開集合ではなく、ff は開写像ではありません。

次に g:RRg : \mathbb{R} \to \mathbb{R}, g(x)=1/(1+x2)g(x) = 1/(1 + x^{2}) を考えます。分母は 1+x21>01 + x^{2} \ge 1 > 0 で消えないので、これは連続な有理関数です。R\mathbb{R}R\mathbb{R} の閉集合ですが、x2x^{2}[0,)[0,\infty) 全体を動くので 1+x21 + x^{2}[1,)[1,\infty) を動き、したがって

g(R)={11+x2:xR}=(0,1]g(\mathbb{R}) = \Bigl\{\, \tfrac{1}{1+x^{2}} : x \in \mathbb{R} \,\Bigr\} = (0, 1]

です。1/n(0,1]1/n \in (0,1] かつ 1/n0(0,1]1/n \to 0 \notin (0,1] なので (0,1](0,1] は閉集合ではありません。よって gg は閉写像でもありません。

連続性は像についての条件ではない、という点をこの 2 つの例が示しています。

例 3.9開基で連続性を確かめる

f:RRf : \mathbb{R} \to \mathbb{R}, f(x)=x2f(x) = x^{2} が連続であることを、ε\varepsilon-δ\delta を使わずに 補題 3.4 で示します。R\mathbb{R} の通常の位相の開基として開区間全体を取り、a<ba < b に対し f1((a,b))={xR:a<x2<b}f^{-1}((a,b)) = \{\, x \in \mathbb{R} : a < x^{2} < b \,\} を場合分けで計算します。

b0b \le 0 のとき。 x20bx^{2} \ge 0 \ge b なので x2<bx^{2} < b を満たす xx は存在しません。よって f1((a,b))=f^{-1}((a,b)) = \emptyset であり、(O1) よりこれは開集合です。

a<0<ba < 0 < b のとき。 不等式 a<x2a < x^{2}x20>ax^{2} \ge 0 > a より自動的に成り立つので、条件は x2<bx^{2} < b だけになります。これは x<b|x| < \sqrt{b} と同値なので f1((a,b))=(b,b)f^{-1}((a,b)) = (-\sqrt{b}, \sqrt{b}) であり、開集合です。

0a<b0 \le a < b のとき。 ttt \mapsto \sqrt{t}[0,)[0,\infty) 上で狭義単調増加なので、a<x2<ba < x^{2} < ba<x<b\sqrt{a} < |x| < \sqrt{b} と同値です。よって

f1((a,b))=(b,a)(a,b)f^{-1}\bigl((a,b)\bigr) = (-\sqrt{b}, -\sqrt{a}) \cup (\sqrt{a}, \sqrt{b})

となり、2 つの開区間の合併なので (O2) より開集合です。a=0a = 0 のときはこれが (b,0)(0,b)(-\sqrt{b},0) \cup (0,\sqrt{b}) になります。

いずれの場合も開基の元の逆像が開集合なので、補題 3.4 より ff は連続です。ε\varepsilonδ\delta を一度も書かずに済んだことに注目してください。

定義 3.1 が微分積分学の連続性の一般化であることを、ここで証明します。まず距離空間の位相を確認します。

距離空間 (X,d)(X, d) において、aXa \in X, r>0r > 0 に対し開球Bd(a,r):={xX:d(a,x)<r}B_d(a, r) := \{\, x \in X : d(a,x) < r \,\} と定め、

Od:={UX:aU, r>0, Bd(a,r)U}\mathcal{O}_d := \{\, U \subset X : \forall a \in U,\ \exists r > 0,\ B_d(a,r) \subset U \,\}

dd の定める距離位相といいます。この Od\mathcal{O}_d が位相の公理を満たすこと(距離空間の開集合族の性質(定理 3.3)[位相空間の定義と基本概念])、および開球全体が Od\mathcal{O}_d の開基になることは前章で確かめました。念のため「開球は開集合である」ことだけ再掲します。xBd(a,r)x \in B_d(a,r) とし s:=rd(a,x)>0s := r - d(a,x) > 0 とおくと、yBd(x,s)y \in B_d(x,s) に対して三角不等式から

d(a,y)d(a,x)+d(x,y)<d(a,x)+s=rd(a,y) \le d(a,x) + d(x,y) < d(a,x) + s = r

となるので Bd(x,s)Bd(a,r)B_d(x,s) \subset B_d(a,r) です。よって Bd(a,r)OdB_d(a,r) \in \mathcal{O}_d です。

定理 4.1位相的連続性と ε-δ 連続性の一致

(X,dX)(X, d_X), (Y,dY)(Y, d_Y) を距離空間とし、それぞれに距離位相を入れます。写像 f:XYf : X \to Y について、次の 2 条件は同値です。

  • (i) ff定義 3.1 の意味で連続である。すなわち YY の任意の開集合 VV に対し f1(V)f^{-1}(V)XX の開集合である。
  • (ii) 任意の aXa \in X と任意の ε>0\varepsilon > 0 に対し δ>0\delta > 0 が存在して、dX(x,a)<δd_X(x, a) < \delta を満たすすべての xXx \in X について dY(f(x),f(a))<εd_Y(f(x), f(a)) < \varepsilon が成り立つ。
証明(定理 4.1)

(i) \Rightarrow (ii)。aXa \in Xε>0\varepsilon > 0 を任意に取り、V:=BdY(f(a),ε)V := B_{d_Y}(f(a), \varepsilon) とおきます。上で見たとおり VVYY の開集合なので、(i) より f1(V)f^{-1}(V)XX の開集合です。dY(f(a),f(a))=0<εd_Y(f(a), f(a)) = 0 < \varepsilon より f(a)Vf(a) \in V、したがって af1(V)a \in f^{-1}(V) です。距離位相の定義 OdX\mathcal{O}_{d_X}U=f1(V)U = f^{-1}(V)aa に適用すると、δ>0\delta > 0 が存在して BdX(a,δ)f1(V)B_{d_X}(a, \delta) \subset f^{-1}(V) となります。これは、dX(x,a)<δd_X(x,a) < \delta ならば f(x)V=BdY(f(a),ε)f(x) \in V = B_{d_Y}(f(a), \varepsilon)、すなわち dY(f(x),f(a))<εd_Y(f(x), f(a)) < \varepsilon である、ということです。

(ii) \Rightarrow (i)。VYV \subset Y を開集合とし、af1(V)a \in f^{-1}(V) を任意に取ります。f(a)Vf(a) \in V と距離位相の定義から、ε>0\varepsilon > 0 が存在して BdY(f(a),ε)VB_{d_Y}(f(a), \varepsilon) \subset V となります。この ε\varepsilonaa に対して (ii) を適用すると δ>0\delta > 0 が取れて、dX(x,a)<δd_X(x,a) < \delta ならば dY(f(x),f(a))<εd_Y(f(x), f(a)) < \varepsilon、すなわち f(x)BdY(f(a),ε)Vf(x) \in B_{d_Y}(f(a),\varepsilon) \subset V が成り立ちます。言い換えると BdX(a,δ)f1(V)B_{d_X}(a, \delta) \subset f^{-1}(V) です。af1(V)a \in f^{-1}(V) は任意だったので、距離位相の定義より f1(V)f^{-1}(V)XX の開集合です。よって ff は連続です。

注意 4.2量化子の対応表

証明を読み返すと、ε\varepsilon-δ\delta 定義の各部分がどこへ翻訳されたかがはっきりします。

ε\varepsilon-δ\delta 論法位相の言葉
任意の ε>0\varepsilon > 0f(a)f(a) を含む任意の開集合 VV
ある δ>0\delta > 0 が存在aa を含むある開集合 UU が存在
dX(x,a)<δd_X(x,a) < \deltaxUx \in U
dY(f(x),f(a))<εd_Y(f(x), f(a)) < \varepsilonf(x)Vf(x) \in V

εδx\forall \varepsilon\, \exists \delta\, \forall x という量化子の順序が VUxU\forall V\, \exists U\, \forall x \in U にそのまま移っています。位相が捨てたのは「ε\varepsilon という数値」だけで、「先に目標精度が指定され、後から許容誤差を選ぶ」という論理構造は完全に保存されています。

なお、δ\deltaaa に依らずに取れるという条件(一様連続性)は、この翻訳では表現できません。UUaa ごとに選ばれるものであり、「同じ大きさの UU」という言い方が位相にはないからです。詳しくは 連続関数と一様連続性 と本記事の Appendix を参照してください。

5. 同相写像 — 位相的に同じであるということ

Section titled “5. 同相写像 — 位相的に同じであるということ”

定義 5.1開写像・閉写像

f:XYf : X \to Y を位相空間の間の写像とします。XX の任意の開集合 UU に対し f(U)f(U)YY の開集合となるとき ff開写像XX の任意の閉集合 FF に対し f(F)f(F)YY の閉集合となるとき ff閉写像といいます。

例 3.8 が示すとおり、連続性・開写像であること・閉写像であることは、互いに独立な条件です。同相写像はこのうち連続性と(結果的に)開写像性を同時に要求します。

定義 5.2同相写像

XX, YY を位相空間とします。写像 f:XYf : X \to Y同相写像(homeomorphism)であるとは、

  1. ff が全単射であり、
  2. ff が連続であり、
  3. 逆写像 f1:YXf^{-1} : Y \to X も連続である

の 3 条件が成り立つことをいいます。同相写像 f:XYf : X \to Y が存在するとき、XXYY同相であるといい、XYX \cong Y と書きます。

条件 3 を落とせないことは 例 5.7 で確かめます。群やベクトル空間では「全単射準同型の逆写像は自動的に準同型」なので、この 3 条件目にあたるものは不要でした。位相空間ではそうならない、というのが最初の驚きどころです。

命題 5.3連続全単射が同相になるための条件

XX, YY を位相空間、f:XYf : X \to Y を連続な全単射とします。次の 3 条件は同値です。

  • (i) ff は同相写像である。
  • (ii) ff は開写像である。
  • (iii) ff は閉写像である。
証明(命題 5.3)

ff は全単射なので逆写像 g:=f1:YXg := f^{-1} : Y \to X が定まります。まず鍵となる等式

g1(A)=f(A)(AX は任意)g^{-1}(A) = f(A) \qquad (A \subset X \text{ は任意})

を示します。yg1(A)y \in g^{-1}(A) とすると g(y)Ag(y) \in A であり、y=f(g(y))f(A)y = f(g(y)) \in f(A) です。逆に yf(A)y \in f(A) とすると y=f(a)y = f(a) なる aAa \in A があり、g(y)=g(f(a))=aAg(y) = g(f(a)) = a \in A なので yg1(A)y \in g^{-1}(A) です。以上より等式が成り立ちます。

(i) \Leftrightarrow (ii)。gg が連続であるとは、定義 3.1 より「XX の任意の開集合 UU に対し g1(U)g^{-1}(U)YY の開集合」ということです。上の等式で A=UA = U とすれば g1(U)=f(U)g^{-1}(U) = f(U) なので、この条件は「任意の開集合 UU に対し f(U)f(U) が開」、すなわち ff が開写像であることと同じです。ff は仮定より連続な全単射ですから、gg が連続であることが ff が同相写像であることと同値です。

(ii) \Leftrightarrow (iii)。ff が全単射なので、任意の AXA \subset X に対し f(XA)=Yf(A)f(X \setminus A) = Y \setminus f(A) が成り立ちます。実際、yYy \in Y に対し ff の全単射性より y=f(x0)y = f(x_0) となる x0Xx_0 \in X がただ一つ存在し、yf(XA)    x0A    yf(A)y \in f(X\setminus A) \iff x_0 \notin A \iff y \notin f(A) だからです(右の同値でも x0x_0 の一意性を使いました)。さて (ii) を仮定し FXF \subset X を閉集合とすると XFX \setminus F は開なので f(XF)=Yf(F)f(X\setminus F) = Y \setminus f(F) は開、よって f(F)f(F) は閉で (iii) が従います。逆も同様に、UXU \subset X が開なら XUX\setminus U は閉なので f(XU)=Yf(U)f(X \setminus U) = Y \setminus f(U) は閉、よって f(U)f(U) は開です。

命題 5.4同相であることは同値関係

位相空間の任意の集まりの上で、関係「XYX \cong Y」は反射的・対称的・推移的です。

証明(命題 5.4)

反射律。idX\mathrm{id}_X は全単射で、命題 3.5 の (1) より連続、その逆写像も idX\mathrm{id}_X なので連続です。よって idX\mathrm{id}_X は同相写像であり XXX \cong X です。

対称律。f:XYf : X \to Y を同相写像とすると、g:=f1g := f^{-1} は全単射で、定義 5.2 の条件 3 より連続、さらに g1=fg^{-1} = f は条件 2 より連続です。よって gg は同相写像であり YXY \cong X です。

推移律。f:XYf : X \to Y, h:YZh : Y \to Z を同相写像とすると、hfh \circ f は全単射の合成なので全単射、命題 3.5 の (2) より連続です。また (hf)1=f1h1(h\circ f)^{-1} = f^{-1} \circ h^{-1} であり、h1h^{-1}f1f^{-1} はともに連続なので、再び 命題 3.5 の (2) より (hf)1(h\circ f)^{-1} は連続です。よって hfh \circ f は同相写像であり XZX \cong Z です。

同値関係一般の扱いについては 関係と同値関係 - 「同じ」とは何か を参照してください。命題 5.4 により、位相空間を同相で分類するという営みに意味が生まれます。位相幾何学の大きな部分は、この同値類を区別する道具を作ることに費やされます。

定義 5.5位相的性質

位相空間について述べられた性質 PP位相的性質(位相不変な性質)であるとは、XYX \cong Y かつ XXPP をもつならば必ず YYPP をもつことをいいます。

開集合系だけを使って定義された性質は、定義からすべて位相的性質です。同相写像 ff は開集合の対応 Uf(U)U \mapsto f(U) を通じて OX\mathcal{O}_XOY\mathcal{O}_Y の間の全単射を与える(命題 5.3 の (ii) とその逆向き)ので、開集合の言葉で書かれた命題は XX で成り立つことと YY で成り立つことが同値になるからです。コンパクト性(コンパクト性)、連結性(連結性)、ハウスドルフ性(分離公理と距離づけ可能性)はいずれも位相的性質です。

例 5.6R と開区間 (0,1) は同相

h:R(0,1)h : \mathbb{R} \to (0,1)

h(x):=12+x2(1+x)h(x) := \frac{1}{2} + \frac{x}{2(1 + |x|)}

で定めます。まず値域を確認します。x/(1+x)<1|x|/(1+|x|) < 1 より x/(1+x)<1|x/(1+|x|)| < 1 なので h(x)(0,1)h(x) \in (0,1) です。

次に逆写像を具体的に求めます。t=h(x)t = h(x) とおき u:=2t1=x/(1+x)u := 2t - 1 = x/(1+|x|) とします。x0x \ge 0 のとき u=x/(1+x)0u = x/(1+x) \ge 0 かつ u=u|u| = u なので、u(1+x)=xu(1+x) = x より x=u/(1u)=u/(1u)x = u/(1-u) = u/(1-|u|) です。x<0x < 0 のとき x=x|x| = -x なので u=x/(1x)<0u = x/(1-x) < 0u=u|u| = -u であり、u(1x)=xu(1-x) = x から x=u/(1+u)=u/(1u)x = u/(1+u) = u/(1-|u|) となります。どちらの場合も同じ式

x=u1u,u=2t1x = \frac{u}{1 - |u|}, \qquad u = 2t-1

が得られました。t(0,1)t \in (0,1) ならば 2t1<1|2t-1| < 1 なので分母は正で、この式は意味をもちます。

逆に、u(1,1)u \in (-1,1) に対し x:=u/(1u)x := u/(1-|u|) とおくと x=u/(1u)|x| = |u|/(1-|u|)、したがって

1+x=(1u)+u1u=11u,x1+x=u1u(1u)=u1 + |x| = \frac{(1-|u|) + |u|}{1-|u|} = \frac{1}{1-|u|}, \qquad \frac{x}{1+|x|} = \frac{u}{1-|u|}\cdot (1-|u|) = u

となります。よって uu/(1u)u \mapsto u/(1-|u|)(1,1)R(-1,1) \to \mathbb{R} の全単射で、xx/(1+x)x \mapsto x/(1+|x|) がその逆です。これより hh は全単射で

h1(t)=2t112t1(0<t<1)h^{-1}(t) = \frac{2t-1}{1 - |2t-1|} \qquad (0 < t < 1)

です。

連続性を確かめます。xxx \mapsto |x|xyxy\bigl||x| - |y|\bigr| \le |x-y| より連続(δ=ε\delta = \varepsilon と取ればよい)で、1+x1>01 + |x| \ge 1 > 0 なので商 xx/(1+x)x \mapsto x/(1+|x|) は連続、これに連続なアフィン写像を合成した h:RRh : \mathbb{R} \to \mathbb{R} は連続です(定理 4.1命題 3.5)。値が (0,1)(0,1) に入るので 注意 3.6 の (2) により h:R(0,1)h : \mathbb{R} \to (0,1) は連続です。同様に t2t1t \mapsto 2t-1 は連続、uu/(1u)u \mapsto u/(1-|u|)(1,1)(-1,1) 上で分母が正なので連続であり、包含写像 (0,1)R(0,1) \hookrightarrow \mathbb{R} の連続性(注意 3.6 の (1))と合わせて h1:(0,1)Rh^{-1} : (0,1) \to \mathbb{R} は連続です。

したがって hh は同相写像で、R(0,1)\mathbb{R} \cong (0,1) です。a<ba < b に対しアフィン写像 sa+(ba)ss \mapsto a + (b-a)s(0,1)(a,b)(0,1) \cong (a,b) を与えるので、命題 5.4 の推移律より任意の有界開区間は R\mathbb{R} と同相です。tan:(π/2,π/2)R\tan : (-\pi/2, \pi/2) \to \mathbb{R} を使っても同じ結論が得られますが、上の有理式のほうが三角関数の性質を仮定しない分だけ素朴です。

例 5.7連続な全単射だが同相でない例

S1:={(x,y)R2:x2+y2=1}S^{1} := \{\, (x,y) \in \mathbb{R}^{2} : x^{2}+y^{2} = 1 \,\}R2\mathbb{R}^{2} からの部分空間位相を入れ、

f:[0,2π)S1,f(t)=(cost,sint)f : [0, 2\pi) \to S^{1}, \qquad f(t) = (\cos t, \sin t)

を考えます([0,2π)[0,2\pi)R\mathbb{R} からの部分空間位相)。

全単射であること。 cos2t+sin2t=1\cos^{2}t + \sin^{2}t = 1 より値は S1S^{1} に入ります。全射性は次のように確かめます。(x,y)S1(x,y) \in S^{1} とすると x1|x| \le 1 であり、cos\cos[0,π][0,\pi] から [1,1][-1,1] への狭義単調減少な全単射なので t0:=arccosx[0,π]t_0 := \arccos x \in [0,\pi] が定まります。sint00\sin t_0 \ge 0 かつ sin2t0=1x2=y2\sin^{2} t_0 = 1 - x^{2} = y^{2} なので、y0y \ge 0 なら t:=t0t := t_0 が、y<0y < 0 なら t:=2πt0(π,2π)t := 2\pi - t_0 \in (\pi, 2\pi) が(cos(2πt0)=cost0=x\cos(2\pi - t_0) = \cos t_0 = x, sin(2πt0)=sint0=y\sin(2\pi-t_0) = -\sin t_0 = y より)求めるものです。単射性は加法定理から出ます。f(s)=f(t)f(s) = f(t)0st<2π0 \le s \le t < 2\pi とすると

cos(ts)=costcoss+sintsins=cos2s+sin2s=1\cos(t-s) = \cos t \cos s + \sin t \sin s = \cos^{2}s + \sin^{2}s = 1

であり、0ts<2π0 \le t - s < 2\pi の範囲で cosθ=1\cos\theta = 1 となるのは θ=0\theta = 0 のときだけなので s=ts = t です。

連続であること。 cos\cos, sin\sinR\mathbb{R} 上連続なので t(cost,sint)t \mapsto (\cos t, \sin t)RR2\mathbb{R} \to \mathbb{R}^{2} として連続であり(成分ごとの評価から ε\varepsilon-δ\delta で直接示せます)、値が S1S^{1} に入るので 注意 3.6 より S1S^{1} への写像として連続、その [0,2π)[0,2\pi) への制限も連続です。

逆写像が連続でないこと。 命題 5.3 により、ff が開写像でないことを示せば十分です。U:=[0,π)U := [0, \pi) とおくと U=(π,π)[0,2π)U = (-\pi, \pi) \cap [0,2\pi) なので UU[0,2π)[0,2\pi) の開集合です。その像は

f(U)={(cost,sint):0t<π}f(U) = \{\, (\cos t, \sin t) : 0 \le t < \pi \,\}

で、0t<π0 \le t < \pi では sint0\sin t \ge 0 ですから、f(U)f(U) は第 2 成分が負の点を一つも含みません。ところが p:=(1,0)=f(0)f(U)p := (1,0) = f(0) \in f(U) を含む S1S^{1} の開集合は、部分空間位相の定義よりある ε>0\varepsilon > 0 に対して BR2(p,ε)S1B_{\mathbb{R}^{2}}(p, \varepsilon) \cap S^{1} を含みます。η>0\eta > 0 を小さく取ると

qη:=(cos(2πη),sin(2πη))=(cosη,sinη)S1q_\eta := (\cos(2\pi - \eta), \sin(2\pi-\eta)) = (\cos \eta, -\sin \eta) \in S^{1}

η0+\eta \to 0^{+} のとき pp に収束するので、η\eta を十分小さくすれば qηBR2(p,ε)S1q_\eta \in B_{\mathbb{R}^{2}}(p,\varepsilon) \cap S^{1} です。しかし qηq_\eta の第 2 成分は sinη<0-\sin\eta < 0 なので qηf(U)q_\eta \notin f(U) です。よって pp を含むどんな開集合も f(U)f(U) には含まれず、f(U)f(U)S1S^{1} の開集合ではありません。

したがって ff は開写像ではなく、命題 5.3 より同相写像ではありません。直観的には、ff は区間の両端を貼り合わせて円にする写像です。貼り合わせは連続にできますが、円を切り開く操作(逆写像)は切れ目のところで不連続になります。

注意 5.8この確認を自動化する定理

「連続な全単射が同相かどうか」を毎回手で確かめるのは大変です。後の章で証明する「コンパクト空間からハウスドルフ空間への連続な全単射は同相写像である」という定理(コンパクトからハウスドルフへの連続全単射は同相(系 6.5)[コンパクト性])は、この確認を不要にします。例 5.7 で同相にならなかったのは、始域 [0,2π)[0,2\pi) がコンパクトでなかったためです。詳しくは コンパクト性分離公理と距離づけ可能性 を参照してください。

6. 同相でないことをどう示すか

Section titled “6. 同相でないことをどう示すか”

同相であることを示すには写像を一つ作ればよい(存在の証明)のに対し、同相でないことを示すには「どんな写像も同相にならない」という全称命題を証明しなければなりません。まともに全数調査はできないので、定義 5.5 を使います。XX がもち YY がもたない位相的性質 PP を一つ見つければ、XYX \cong Y と仮定したときに YYPP をもつことになって矛盾します。

flowchart TD
Q["X と Y は同相か"] --> A["方向 1: 具体的な全単射 h を作る"]
Q --> B["方向 2: 位相的性質 P を探す"]
A --> A1["h が連続か確認する"]
A1 --> A2["h の逆写像が連続か確認する"]
A2 --> A3["結論: X と Y は同相"]
B --> B1["X は P をもち Y は P をもたない"]
B1 --> B2["結論: X と Y は同相でない"]
同相性を調べる二つの方向。左は写像を作る(存在証明)、右は不変量で分ける(非存在証明)

例 6.1R と [0,1]、[0,1] と [0,1) はいずれも同相でない

(1) R≇[0,1]\mathbb{R} \not\cong [0,1] 同相写像 h:[0,1]Rh : [0,1] \to \mathbb{R} が存在したと仮定します。hh は特に閉区間 [0,1][0,1] 上の連続な実数値関数なので、ワイエルシュトラスの最大値定理(最大値の原理(定理 4.2)[連続関数と一様連続性])により最大値をとります。すなわち c[0,1]c \in [0,1] が存在して、すべての s[0,1]s \in [0,1] に対し h(s)h(c)=:Mh(s) \le h(c) =: M です。したがって h([0,1])(,M]h([0,1]) \subset (-\infty, M] です。ところが hh は全射なので h([0,1])=Rh([0,1]) = \mathbb{R} であり、M+1RM + 1 \in \mathbb{R} かつ M+1>MM + 1 > M なので M+1(,M]M+1 \notin (-\infty, M]、矛盾です。よって R≇[0,1]\mathbb{R} \not\cong [0,1] です。

(2) [0,1]≇[0,1)[0,1] \not\cong [0,1) 同相写像 h:[0,1][0,1)h : [0,1] \to [0,1) が存在したと仮定します。(1) と同じく hh[0,1][0,1] 上で最大値 M=h(c)M = h(c) をとり、全射性から h([0,1])=[0,1)h([0,1]) = [0,1) なので、MM は集合 [0,1)[0,1) の最大元でなければなりません。しかし [0,1)[0,1) には最大元がありません。実際、任意の t[0,1)t \in [0,1) に対して t:=(t+1)/2t' := (t+1)/2 とおくと t<t<1t < t' < 1 なので t[0,1)t' \in [0,1) かつ t>tt' > t であり、tt は最大元になり得ないからです。矛盾により [0,1]≇[0,1)[0,1] \not\cong [0,1) です。

もう一つの強力な不変量が連結性です。位相空間 XX連結であるとは、X=V1V2X = V_1 \cup V_2V1V2=V_1 \cap V_2 = \emptysetV1,V2V_1, V_2 はともに XX の開集合、V1V_1 \ne \emptysetV2V_2 \ne \emptyset を満たす分解が存在しないことをいいます。連続写像がこの性質を保つことは、定義 3.1 だけからすぐに従います。

定理 6.2連結性は連続全射で保たれる

XX, YY を位相空間、f:XYf : X \to Y を連続な全射とします。XX が連結ならば YY も連結です。

証明(定理 6.2)

YY が連結でないと仮定し、Y=V1V2Y = V_1 \cup V_2V1V2=V_1 \cap V_2 = \emptysetV1,V2V_1, V_2 は空でない YY の開集合、という分解を取ります。

ff の連続性(定義 3.1)より f1(V1)f^{-1}(V_1), f1(V2)f^{-1}(V_2) はともに XX の開集合です。§2 の逆像の性質から

f1(V1)f1(V2)=f1(V1V2)=f1(Y)=X,f1(V1)f1(V2)=f1(V1V2)=f1()=f^{-1}(V_1) \cup f^{-1}(V_2) = f^{-1}(V_1 \cup V_2) = f^{-1}(Y) = X, \qquad f^{-1}(V_1) \cap f^{-1}(V_2) = f^{-1}(V_1 \cap V_2) = f^{-1}(\emptyset) = \emptyset

が成り立ちます。さらに ViV_i \ne \emptyset なので yiViy_i \in V_i が取れ、ff の全射性より f(xi)=yif(x_i) = y_i となる xiXx_i \in X が存在します。すると xif1(Vi)x_i \in f^{-1}(V_i) なので f1(Vi)f^{-1}(V_i) \ne \emptyset です。

以上より X=f1(V1)f1(V2)X = f^{-1}(V_1) \cup f^{-1}(V_2)XX の連結性を否定する分解になり、仮定に矛盾します。よって YY は連結です。

系 6.3連結性は位相的性質

連結性は位相的性質です。すなわち XYX \cong YXX が連結ならば YY も連結です。

証明(系 6.3)

f:XYf : X \to Y を同相写像とすると、ff定義 5.2 より連続かつ全単射、特に連続な全射です。よって 定理 6.2 が適用でき、XX が連結ならば YY も連結です。

定理 6.2 は応用が広い定理です。たとえば R\mathbb{R} の区間が連結であるという事実(連結性R の連結部分集合の決定(定理 4.1)[連結性] で証明します)と組み合わせると、区間上の連続関数の像は連結、すなわち区間になるので、中間値の定理が系として得られます。解析学の基本定理が位相の一般論から出てくるのは、この抽象化の見返りの一つだと思います。演習 7.4 では、この不変量で R\mathbb{R}R2\mathbb{R}^{2} を区別します。

演習 7.1標準

XX, YY を位相空間、A,BA, BXX の閉集合で X=ABX = A \cup B を満たすものとします。写像 f:XYf : X \to Y について、制限 fA:AYf|_A : A \to YfB:BYf|_B : B \to Y がともに連続(AA, BB には部分空間位相を入れる)ならば、ff は連続であることを示してください(貼り合わせ補題)。

解答

まず補助的な事実を確認します。AAXX の閉集合で、CAC \subset A が部分空間 AA の閉集合ならば、CCXX の閉集合です。実際、部分空間位相の定義より AA の開集合は UAU \cap AUUXX の開集合)の形なので、AA の閉集合は A(UA)=A(XU)A \setminus (U \cap A) = A \cap (X \setminus U) の形、すなわち「XX の閉集合と AA の共通部分」です。AA 自身も XX の閉集合なので、これは XX の閉集合 2 つの共通部分であり、XX の閉集合です。

さて FYF \subset Y を任意の閉集合とします。xf1(F)x \in f^{-1}(F) とすると xX=ABx \in X = A \cup B なので xAx \in A または xBx \in B であり、前者なら x(fA)1(F)x \in (f|_A)^{-1}(F)、後者なら x(fB)1(F)x \in (f|_B)^{-1}(F) です。逆に x(fA)1(F)x \in (f|_A)^{-1}(F) ならば xAXx \in A \subset X かつ f(x)=fA(x)Ff(x) = f|_A(x) \in F なので xf1(F)x \in f^{-1}(F) であり、(fB)1(F)(f|_B)^{-1}(F) についても同じです。したがって

f1(F)=(fA)1(F)(fB)1(F)f^{-1}(F) = (f|_A)^{-1}(F) \cup (f|_B)^{-1}(F)

が成り立ちます。fAf|_A は連続なので 定理 3.3 の (ii) より (fA)1(F)(f|_A)^{-1}(F)AA の閉集合、上の補助事実より XX の閉集合です。同様に (fB)1(F)(f|_B)^{-1}(F)XX の閉集合です。閉集合 2 つの合併は閉集合(開集合 2 つの共通部分が開であるという (O3) の双対)なので、f1(F)f^{-1}(F)XX の閉集合です。FF は任意だったので、再び 定理 3.3 の (ii) \Rightarrow (i) により ff は連続です。

なお、AABB の両方が閉であるという仮定は落とせません。X=[0,2]X = [0,2]A=[0,1]A = [0,1]XX の閉集合)、B=(1,2]B = (1,2]XX の閉集合ではない)とし、f:XRf : X \to \mathbb{R}AA 上で 00BB 上で 11 と定めます。fAf|_AfBf|_B は定値写像なので 例 3.7 より連続です。しかし ff 自身は連続ではありません。実際、V:=(1/2,1/2)V := (-1/2, 1/2)R\mathbb{R} の開集合ですが f1(V)=[0,1]f^{-1}(V) = [0,1] であり、これは X=[0,2]X = [0,2] の開集合ではないからです(11 を含む XX の開集合は、ある δ>0\delta > 0 について (1δ,1+δ)[0,2](1-\delta, 1+\delta) \cap [0,2] を含み、この集合は 11 より大きい点を必ず含みます)。

演習 7.2標準

R\mathbb{R} 上に、半開区間の族 B={[a,b):a<b}\mathcal{B} = \{\, [a,b) : a < b \,\} を開基とする位相を入れた空間を R\mathbb{R}_\ell(下限位相、ゾルゲンフライ直線)と書きます。通常の位相の R\mathbb{R} に対し、恒等写像 id:RR\mathrm{id} : \mathbb{R}_\ell \to \mathbb{R} は連続だが、id:RR\mathrm{id} : \mathbb{R} \to \mathbb{R}_\ell は連続でないことを示してください。

解答

前半。 補題 3.4 を使います。R\mathbb{R} の通常の位相の開基は開区間全体なので、a<ba < b に対し id1((a,b))=(a,b)\mathrm{id}^{-1}((a,b)) = (a,b)R\mathbb{R}_\ell の開集合であることを示せば十分です。ここで

(a,b)=a<c<b[c,b)(a,b) = \bigcup_{a < c < b} [c, b)

が成り立ちます。実際、右辺の各 [c,b)[c,b)c>ac > a より (a,b)(a,b) に含まれ、逆に x(a,b)x \in (a,b) ならば c=xc = x と取れば x[x,b)x \in [x, b)a<x<ba < x < b だからです。右辺は B\mathcal{B} の元の合併なので R\mathbb{R}_\ell の開集合です。よって id:RR\mathrm{id} : \mathbb{R}_\ell \to \mathbb{R} は連続です。

後半。 [0,1)B[0,1) \in \mathcal{B}R\mathbb{R}_\ell の開集合ですが、id1([0,1))=[0,1)\mathrm{id}^{-1}([0,1)) = [0,1) は通常の位相では開集合ではありません。実際、0[0,1)0 \in [0,1) に対して任意の δ>0\delta > 0 を取ると δ/2(δ,δ)-\delta/2 \in (-\delta, \delta) かつ δ/2[0,1)-\delta/2 \notin [0,1) なので、00 を含むどの開区間も [0,1)[0,1) に含まれないからです。よって id:RR\mathrm{id} : \mathbb{R} \to \mathbb{R}_\ell は連続ではありません。

結論の読み方。 id:RR\mathrm{id} : \mathbb{R}_\ell \to \mathbb{R} は連続な全単射ですが、その逆写像 id:RR\mathrm{id} : \mathbb{R} \to \mathbb{R}_\ell が連続でないので、定義 5.2 の条件 3 が破れており同相写像ではありません。例 5.7 と並ぶ、条件 3 が独立であることの証拠です。

演習 7.3標準

S1={(x,y)R2:x2+y2=1}S^{1} = \{\, (x,y) \in \mathbb{R}^{2} : x^{2}+y^{2}=1 \,\} から北極 N=(0,1)N = (0,1) を除いた空間 S1{N}S^{1} \setminus \{N\}R\mathbb{R} と同相であることを、立体射影 π(x,y)=x/(1y)\pi(x,y) = x/(1-y) を使って示してください。

解答

(x,y)S1{N}(x,y) \in S^{1}\setminus\{N\} では y1y \ne 1 なので π(x,y)=x/(1y)\pi(x,y) = x/(1-y) は定義されます。逆写像の候補を

σ(t):=(2tt2+1, t21t2+1)(tR)\sigma(t) := \left( \frac{2t}{t^{2}+1},\ \frac{t^{2}-1}{t^{2}+1} \right) \qquad (t \in \mathbb{R})

とします。

σ\sigma の値が S1{N}S^{1}\setminus\{N\} に入ること。 (2t)2+(t21)2=4t2+t42t2+1=t4+2t2+1=(t2+1)2(2t)^{2} + (t^{2}-1)^{2} = 4t^{2} + t^{4} - 2t^{2} + 1 = t^{4}+2t^{2}+1 = (t^{2}+1)^{2} なので、σ(t)\sigma(t) の 2 成分の平方和は 11 であり σ(t)S1\sigma(t) \in S^{1} です。また第 2 成分が 11 になるには t21=t2+1t^{2}-1 = t^{2}+1 すなわち 1=1-1 = 1 が必要で、これは起こりません。よって σ(t)N\sigma(t) \ne N です。

πσ=idR\pi \circ \sigma = \mathrm{id}_{\mathbb{R}} 1t21t2+1=(t2+1)(t21)t2+1=2t2+11 - \dfrac{t^{2}-1}{t^{2}+1} = \dfrac{(t^{2}+1)-(t^{2}-1)}{t^{2}+1} = \dfrac{2}{t^{2}+1} なので

π(σ(t))=2t/(t2+1)2/(t2+1)=t.\pi(\sigma(t)) = \frac{2t/(t^{2}+1)}{2/(t^{2}+1)} = t .

σπ=id\sigma \circ \pi = \mathrm{id} (x,y)S1{N}(x,y) \in S^{1}\setminus\{N\} に対し t:=x/(1y)t := x/(1-y) とおきます。x2=1y2x^{2} = 1-y^{2} を使うと

t2+1=x2+(1y)2(1y)2=(1y2)+12y+y2(1y)2=2(1y)(1y)2=21yt^{2}+1 = \frac{x^{2} + (1-y)^{2}}{(1-y)^{2}} = \frac{(1-y^{2}) + 1 - 2y + y^{2}}{(1-y)^{2}} = \frac{2(1-y)}{(1-y)^{2}} = \frac{2}{1-y}

となり、したがって t21=21y2=2y1yt^{2}-1 = \dfrac{2}{1-y} - 2 = \dfrac{2y}{1-y} です。これらを代入すると

2tt2+1=2x/(1y)2/(1y)=x,t21t2+1=2y/(1y)2/(1y)=y\frac{2t}{t^{2}+1} = \frac{2x/(1-y)}{2/(1-y)} = x, \qquad \frac{t^{2}-1}{t^{2}+1} = \frac{2y/(1-y)}{2/(1-y)} = y

なので σ(π(x,y))=(x,y)\sigma(\pi(x,y)) = (x,y) です。以上より π\pi は全単射で π1=σ\pi^{-1} = \sigma です。

連続性。 π\piR2\mathbb{R}^{2} の開集合 {(x,y):y1}\{\, (x,y) : y \ne 1 \,\} 上で分母が消えない有理式なので連続であり、その S1{N}S^{1}\setminus\{N\} への制限も連続です(包含写像との合成、注意 3.6命題 3.5)。σ\sigmat2+11>0t^{2}+1 \ge 1 > 0 より RR2\mathbb{R} \to \mathbb{R}^{2} として連続で、値が S1{N}S^{1}\setminus\{N\} に入るので 注意 3.6 の (2) より RS1{N}\mathbb{R} \to S^{1}\setminus\{N\} として連続です。よって π\pi は同相写像で、S1{N}RS^{1}\setminus\{N\} \cong \mathbb{R} です。

一点を除くだけで円が直線になる、というのは 例 5.7 の「切り開く操作」を、始域の側で先に一点抜いておくことで正当化した形になっています。

演習 7.4

R\mathbb{R}R2\mathbb{R}^{2} は同相でないことを示してください。R\mathbb{R} の空でない区間が連結であること、および任意の pR2p \in \mathbb{R}^{2} に対し R2{p}\mathbb{R}^{2}\setminus\{p\} が連結であることは、連結性 の結果として使ってかまいません。

解答

補助事実(制限も同相)。 h:XYh : X \to Y を同相写像、AXA \subset X とすると、hA:Ah(A)h|_A : A \to h(A) は同相写像です。実際、hh が単射なので hAh|_Ah(A)h(A) への全単射です。連続性は次のように確かめます。h(A)h(A) の開集合は Wh(A)W \cap h(A)WWYY の開集合)の形で、

(hA)1(Wh(A))=Ah1(W)(h|_A)^{-1}(W \cap h(A)) = A \cap h^{-1}(W)

であり、hh の連続性より h1(W)h^{-1}(W)XX の開集合なので、これは AA の開集合です。同じ議論を h1:YXh^{-1} : Y \to Xh(A)Yh(A) \subset Y に適用すれば (hA)1(h|_A)^{-1} の連続性も従います。

本題。 RR2\mathbb{R} \cong \mathbb{R}^{2} と仮定し、同相写像 h:RR2h : \mathbb{R} \to \mathbb{R}^{2} を取ります。p:=h(0)p := h(0) とおくと、hh は全単射なので h(R{0})=R2{p}h(\mathbb{R}\setminus\{0\}) = \mathbb{R}^{2}\setminus\{p\} です。補助事実より

hR{0}:R{0}R2{p}h|_{\mathbb{R}\setminus\{0\}} : \mathbb{R}\setminus\{0\} \longrightarrow \mathbb{R}^{2}\setminus\{p\}

は同相写像です。

ところが R{0}=(,0)(0,)\mathbb{R}\setminus\{0\} = (-\infty, 0) \cup (0, \infty) であり、(,0)(-\infty,0)(0,)(0,\infty) はともに R\mathbb{R} の開集合なので部分空間 R{0}\mathbb{R}\setminus\{0\} の開集合でもあり、互いに交わらず、どちらも空でありません(1-111 がそれぞれ属します)。よって R{0}\mathbb{R}\setminus\{0\} は連結ではありません。

一方、仮定より R2{p}\mathbb{R}^{2}\setminus\{p\} は連結です。系 6.3 により連結性は位相的性質なので、同相な 2 空間の一方が連結で他方が連結でないことは起こり得ません。これは矛盾です。よって R≇R2\mathbb{R} \not\cong \mathbb{R}^{2} です。

注意。 同じ議論で R≇Rn\mathbb{R} \not\cong \mathbb{R}^{n} (n2)(n \ge 2) が示せます。しかし R2≇R3\mathbb{R}^{2} \not\cong \mathbb{R}^{3} を示すには一点を除いても連結性が壊れないため、この方法は使えません。一般の mnm \ne n に対する Rm≇Rn\mathbb{R}^{m}\not\cong\mathbb{R}^{n}(次元の不変性)は、ホモロジー群など、より強い位相不変量を必要とします。

  • J. R. Munkres, Topology, 2nd edition, Prentice Hall, 2000 — 第 2 章 §18「Continuous Functions」に、本記事の同値条件・貼り合わせ補題・同相写像がまとまっています。
  • S. Willard, General Topology, Addison-Wesley, 1970(Dover による再刊、2004)— 連続写像と同相写像の特徴づけを体系的に扱っています。
  • 松坂和夫『集合・位相入門』岩波書店、1968 — 距離空間から位相空間への移行を、初学者向けに段階を踏んで説明しています。
  • 内田伏一『集合と位相』裳華房、1986 — 連続写像・同相写像の章に、本記事と同じ路線の例が豊富にあります。
  • 高木貞治『解析概論』改訂第三版、岩波書店、1961 — 閉区間上の連続関数が最大値をとるというワイエルシュトラスの定理の証明があります。例 6.1 で使いました。

Appendix: 位相では見えないもの — 有界性・完備性・一様連続性

Section titled “Appendix: 位相では見えないもの — 有界性・完備性・一様連続性”

位相は「どれくらい近いか」を忘れます。 例 5.6R(0,1)\mathbb{R} \cong (0,1) を示しました。この一つの事実から、距離に由来する重要な概念のいくつかが位相的性質ではないことが直ちに従います。

有界性は位相的性質ではありません。 (0,1)(0,1) は通常の距離について有界(直径 11)ですが、R\mathbb{R} は有界ではありません。それでも両者は同相です。したがって「有界だから/有界でないから同相でない」という論法は成立しません。有界性は距離 dd に依存する概念であり、同じ位相を定める別の距離を取れば有界にも非有界にもなります。実際、d(x,y):=min{1,xy}d'(x,y) := \min\{1, |x-y|\}R\mathbb{R} 上の距離で、通常の距離と同じ開集合系を定めますが、(R,d)(\mathbb{R}, d') は有界です。

完備性も位相的性質ではありません。 R\mathbb{R} は通常の距離について完備です。一方 (0,1)(0,1) は完備ではありません。数列 xn=1/(n+1)x_n = 1/(n+1)(0,1)(0,1) の点からなり、xnxm0|x_n - x_m| \to 0 なのでコーシー列ですが、その極限 00(0,1)(0,1) に属さないからです。それでも R(0,1)\mathbb{R} \cong (0,1) です。完備性については 実数の完備性とコーシー列 を参照してください。

一様連続性も位相的性質ではありません。 例 5.6 の同相写像の逆 h1:(0,1)Rh^{-1} : (0,1) \to \mathbb{R}, h1(t)=(2t1)/(12t1)h^{-1}(t) = (2t-1)/(1-|2t-1|) を考えます。t[1/2,1)t \in [1/2, 1) では 2t102t-1 \ge 0、すなわち 2t1=2t1|2t-1| = 2t-1 なので

h1(t)=2t11(2t1)=2t12(1t)h^{-1}(t) = \frac{2t-1}{1-(2t-1)} = \frac{2t-1}{2(1-t)}

です。ここで tn:=11/nt_n := 1 - 1/n, sn:=11/(2n)s_n := 1 - 1/(2n)n2n \ge 2)とおくと、11/n1/21 - 1/n \ge 1/2 かつ 11/(2n)3/41 - 1/(2n) \ge 3/4 よりどちらも [1/2,1)[1/2,1) に属し

h1(tn)=2(11/n)12/n=12/n2/n=n21,h1(sn)=11/n21/(2n)=11/n1/n=n1h^{-1}(t_n) = \frac{2(1-1/n)-1}{2/n} = \frac{1 - 2/n}{2/n} = \frac{n}{2} - 1, \qquad h^{-1}(s_n) = \frac{1 - 1/n}{2 \cdot 1/(2n)} = \frac{1-1/n}{1/n} = n - 1

と計算できます。tnsn=1/(2n)0|t_n - s_n| = 1/(2n) \to 0 ですが

h1(tn)h1(sn)=n21(n1)=n2\bigl| h^{-1}(t_n) - h^{-1}(s_n) \bigr| = \Bigl| \frac{n}{2} - 1 - (n-1) \Bigr| = \frac{n}{2} \longrightarrow \infty

なので、ε=1\varepsilon = 1 に対してどんな δ>0\delta > 0 を取っても、1/(2n)<δ1/(2n) < \delta となる nn について tnsn<δ|t_n - s_n| < \delta かつ h1(tn)h1(sn)1|h^{-1}(t_n) - h^{-1}(s_n)| \ge 1 が成り立ちます。よって h1h^{-1} は一様連続ではありません。一方 R\mathbb{R} 上の恒等写像は一様連続です。同相写像で移しても一様連続性は保たれないのです。

まとめると、位相が記憶しているのは「点の近くにどんな集合があるか」という定性的な情報だけで、「距離がいくつか」という定量的な情報は捨てられています。一様連続性・完備性・有界性を扱いたければ、位相より細かい構造(距離、あるいは一様構造)を保つ写像の圏に移る必要があります。逆に言えば、位相的性質だけを使って証明された定理は、距離を取り替えても壊れないという頑健さをもちます。この線引きを意識しておくと、連続関数と一様連続性 の議論がどこで距離を使っているかが見えるようになります。

この記事の誤りを報告する ・運営: 夢現技研合同会社料金プラン利用条件特定商取引法に基づく表記

© 2026 夢現技研合同会社 ・本文の LLM への入力は自由です。コード例は MIT ライセンスです。