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ハンドル分解と手術:曲面の分類と Heegaard 分解

対象読者: Morse 関数と臨界点の理論、本テーマ第 1〜2 章の横断性・管状近傍を学んだ人。曲面の分類は既知と仮定せず、この記事で導きます。

前提となる記事:Morse 理論:臨界点から多様体の胞体構造と Morse 不等式を読む、横断性:パラメータ付き横断性定理と一般の位置、管状近傍・カラー・イソトピーの拡張

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曲面や空間のような「なめらかな形」を、関数の高さで輪切りにして、高さを上げていくと形がどう変わるかを追うと、変わるのは特定の高さを通るときだけで、そのとき「帯」や「厚みのある円板」が 1 つ貼り付きます。この記事は、その貼り付けの様子を正確に述べ、貼る順序を入れ替えたり、貼ったものを打ち消したりする規則を作ります。読み終えると、すべての連結な閉曲面が球面・トーラス・射影平面の連結和で書き尽くされることを、この規則だけから導けるようになります。

  • コンパクトな多様体や同境(境界が M0M_0 と M1M_1 の非交和になるコンパクトな多様体)は、Morse 関数の臨界点を 1 つ通過するたびにハンドル Dλ×Dn−λD^\lambda\times D^{n-\lambda} が 1 つ接着される、という形に分解できます(定理 3.6、定理 3.7)。Morse 理論の「胞体の接着」をホモトピー同値から微分同相へ精密にしたものです。
  • ハンドルは指数の小さい順に並べ替えられ(定理 4.1)、指数 λ\lambda と λ+1\lambda+1 のハンドルは、接着球面とベルト球面が横断的に 1 点で交わるなら 2 つまとめて消せます(定理 5.2。一般の指数ではこの記事では主張のみとし、証明の筋を説明します。あとで使う指数 00 と 11 の対の場合は 補題 5.6 で証明します)。
  • ハンドルの接着を境界で見たものが手術で、2 つの閉多様体が同境であることと、有限回の手術で移り合うことは同値です(定理 3.9)。
  • ハンドル鎖複体の境界作用素は接着球面とベルト球面の交点数で(命題 6.1)、−f-f を考えると双対分解が得られます(命題 6.2)。
  • 応用として、連結な閉曲面は S2S^2・トーラスの連結和・射影平面の連結和のどれか 1 つに微分同相であること(定理 7.5)と、向き付け可能な閉 3 次元多様体が Heegaard 分解(空間を 2 つの「取っ手体」に切り分ける分解)をもつこと(定理 8.1)を示します。

Morse 理論の基本定理(定理 6.1[Morse 理論])は、指数 λ\lambda の臨界点を通過すると劣位集合に λ\lambda 胞体が 1 つ付く、と述べます。ただし結論は「変位レトラクトである」というホモトピー型の主張で、多様体としての形は捨てています。同じ胞体構造をもつ多様体が微分同相とは限らないので、多様体を分類するにはこれでは足りません。

そこで胞体 DλD^\lambda を、余次元の方向に太らせたハンドル Dλ×Dn−λD^\lambda\times D^{n-\lambda} に置き換えます。ハンドルは nn 次元なので、貼った結果も nn 次元多様体です。こうすると「臨界点の通過」が微分同相の精度で記述でき、さらにハンドルの貼り方(接着写像)を横断性とイソトピーの拡張で動かして、分解を簡単な形に直せます。この「分解を簡単にする」操作が、曲面の分類でも、次々章の h 同境定理でも証明の中身になります。

解析の言葉(Morse 関数)と組合せの言葉(ハンドル)の対応を先に表にしておきます。右の列の用語は §3 と §4 で定義します。

Morse 関数と勾配状ベクトル場ハンドル
指数 λ\lambda の臨界点 pp指数 λ\lambda のハンドル Dλ×Dn−λD^\lambda\times D^{n-\lambda}
pp に流れ込む軌道の全体(下降円板)芯 Dλ×0D^\lambda\times 0
pp から流れ出る軌道の全体(上昇円板)余芯 0×Dn−λ0\times D^{n-\lambda}
下降円板と、pp より下の等位面の交わり(下降球面)接着球面 Sλ−1×0S^{\lambda-1}\times 0
上昇円板と、pp より上の等位面の交わり(上昇球面)ベルト球面 0×Sn−λ−10\times S^{n-\lambda-1}
勾配状ベクトル場を等位面のイソトピーで取り替える接着写像をイソトピーで動かす
2 つの臨界値の大小を入れ替えるハンドルを貼る順序を入れ替える
pp から qq への軌道がちょうど 1 本で、横断的接着球面とベルト球面が横断的に 1 点で交わる
ff を −f-f に替える双対ハンドル分解

この記事では、多様体は断らない限り滑らか・Hausdorff・第二可算とし、閉多様体はコンパクトで境界のないものを指します。DkD^k は Rk\mathbb{R}^k の閉単位球、D˚k\mathring D^k は開単位球、Sk−1=∂DkS^{k-1}=\partial D^k で、S−1=∅S^{-1}=\varnothing、D0D^0 は 1 点とします。

2. 同境、Morse 関数、勾配状ベクトル場

Section titled “2. 同境、Morse 関数、勾配状ベクトル場”

定義 2.1(同境と Morse 関数)↗

nn 次元のコンパクトな境界付き多様体 WW(定義 4.1[ストークスの定理])と、境界の開かつ閉な部分集合への分割 ∂W=M0⊔M1\partial W=M_0\sqcup M_1 の組を、M0M_0 から M1M_1 への同境(コボルディズム)といい、W ⁣:M0⇝M1W\colon M_0\rightsquigarrow M_1 と書く。M0M_0、M1M_1 は空でもよい(どちらも空なら WW は閉多様体)。滑らかな関数 f ⁣:W→[a,b]f\colon W\to[a,b](a<ba\lt b)が同境 WW の上の Morse 関数であるとは、

  1. f−1(a)=M0f^{-1}(a)=M_0、f−1(b)=M1f^{-1}(b)=M_1 で、∂W\partial W 上に ff の臨界点が無く、
  2. ff の臨界点がすべて非退化(定義 2.1[Morse 理論])

であることをいう。

WW はコンパクトなので、非退化な臨界点は孤立し有限個です(系 3.3[Morse 理論])。境界のある多様体の上で流れを考えるために、WW を少し外へ広げておきます。

補題 2.2(境界の外への延長)✓

WW をコンパクトな境界付き多様体とする。境界のない多様体 W^\hat W と、WW から W^\hat W の閉部分集合の上への埋め込み(以下 W⊂W^W\subset\hat W とみなす)で、WW 上の滑らかな関数と滑らかなベクトル場がすべて W^\hat W 上の台がコンパクトな滑らかな関数・ベクトル場に延長できるものが存在する。

証明(補題 2.2)

カラー近傍の定理(定理 4.2[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張])により、埋め込み c ⁣:∂W×[0,1)→Wc\colon\partial W\times[0,1)\to W で c(z,0)=zc(z,0)=z となるものがあります。W^\hat W を、WW と ∂W×(−1,1)\partial W\times(-1,1) の非交和で c(z,t)c(z,t) と (z,t)(z,t)(0≤t<10\le t\lt1)を同一視した商空間とします。W∖∂WW\setminus\partial W と ∂W×(−1,1)\partial W\times(-1,1) はともに境界のない多様体で、∂W×(0,1)\partial W\times(0,1) という開集合どうしを微分同相 cc で貼っているので、商は滑らかなアトラスをもちます。WW の点列と ∂W×(−1,0]\partial W\times(-1,0] の点列が共通の極限をもつのは極限が ∂W\partial W 上にあるときだけなので Hausdorff で、第二可算性は 2 つの部分から引き継がれます。WW は t≥0t\ge0 に対応する閉集合です。

gg を WW 上の滑らかな関数とします。境界付き多様体の上の滑らかさの定義(定義 4.1[ストークスの定理])により、各 z∈∂Wz\in\partial W の W^\hat W での開近傍 UzU_z と UzU_z 上の滑らかな関数 gzg_z で、Uz∩WU_z\cap W 上 gz=gg_z=g となるものがあります。開被覆 {W∖∂W}∪{Uz}z\{W\setminus\partial W\}\cup\{U_z\}_z に従属する 1 の分割 {ρ0}∪{ρz}\{\rho_0\}\cup\{\rho_z\}(定理 6.3[部分多様体と正則値定理])を取り、W^\hat W 上で g~=ρ0g+∑zρzgz\tilde g=\rho_0g+\sum_z\rho_zg_z とおくと(各項は台の外で 00 として延ばす)、ρ0\rho_0 の台は W∖∂WW\setminus\partial W に含まれるので g~\tilde g は滑らかで、WW 上では g~=(ρ0+∑zρz)g=g\tilde g=(\rho_0+\sum_z\rho_z)g=g です。最後に、コンパクト集合 WW 上で 11、台がコンパクトな滑らかな関数 χ\chi(系 6.4[部分多様体と正則値定理])を掛けます。ベクトル場も、チャートごとに成分を延長すれば同じ議論で延長できます。

次の命題のねらいは、境界のある場合にも「臨界点が有限個で、境界の上には臨界点が無い」関数を用意しておくことです。証明は 3 段で、まず境界の近くでは座標 tt をそのまま使った関数を作り、次に内部だけを少しずらして臨界点を非退化にし、最後に臨界値を互いに違う値にします。途中でダブル DWDW(WW を 2 枚、境界で貼り合わせた閉多様体)を使うのは、閉多様体では Morse 関数が一般の位置の議論で作れるので、それを内部へ持ち込むためです。

命題 2.3(同境の上の Morse 関数の存在)✓

任意の同境 W ⁣:M0⇝M1W\colon M_0\rightsquigarrow M_1 の上に Morse 関数 f ⁣:W→[0,1]f\colon W\to[0,1] が存在する。さらに、臨界値が互いに異なるように取れる。

証明(命題 2.3)

境界で正則な関数。 カラー c ⁣:∂W×[0,1)→Wc\colon\partial W\times[0,1)\to W(定理 4.2[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張])を取り、Ui=c(Mi×[0,1))U_i=c(M_i\times[0,1))(i=0,1i=0,1)、U2=W∖c(∂W×[0,12])U_2=W\setminus c(\partial W\times[0,\tfrac12]) とします。これは WW の開被覆で、U0∩U1=∅U_0\cap U_1=\varnothing です。従属する 1 の分割 ρ0,ρ1,ρ2\rho_0,\rho_1,\rho_2 を取り、カラーの座標を tt として

g=ρ0⋅t2+ρ1⋅(1−t2)+ρ2⋅12g=\rho_0\cdot\frac t2+\rho_1\cdot\Bigl(1-\frac t2\Bigr)+\rho_2\cdot\frac12

とおきます。3 つの値 t/2∈[0,12)t/2\in[0,\tfrac12)、1−t/2∈(12,1]1-t/2\in(\tfrac12,1]、12\tfrac12 の凸結合なので 0≤g≤10\le g\le1 で、g=0g=0 となるのは ρ0=1\rho_0=1 かつ t=0t=0 のとき、すなわち M0M_0 上だけです。同様に g−1(1)=M1g^{-1}(1)=M_1 です。c(M0×[0,12])c(M_0\times[0,\tfrac12]) 上では ρ1=ρ2=0\rho_1=\rho_2=0 なので g=t/2g=t/2、c(M1×[0,12])c(M_1\times[0,\tfrac12]) 上では g=1−t/2g=1-t/2 で、どちらにも臨界点はありません。

内部を Morse にする。 K1=W∖c(∂W×[0,14))K_1=W\setminus c(\partial W\times[0,\tfrac14))、K2=W∖c(∂W×[0,18))K_2=W\setminus c(\partial W\times[0,\tfrac18)) とします。WW を 2 つ境界で貼り合わせた閉多様体(ダブル)DWDW を作り(定理 7.2[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張])、埋め込み F ⁣:DW→RNF\colon DW\to\mathbb{R}^N を取ります(定理 8.1[部分多様体と正則値定理])。K2K_2 の近傍で 11、台が W∖∂WW\setminus\partial W に含まれる滑らかな関数 χ\chi を取り、G=χgG=\chi g を 00 で延ばして DWDW 上の滑らかな関数とみなします。定理 4.1[Morse 理論] により、測度 00 の集合を除くすべての a∈RNa\in\mathbb{R}^N で G+⟨a,F⟩G+\langle a,F\rangle は DWDW 上の Morse 関数です。K1K_1 上で 11、台が K2K_2 の内部に含まれる滑らかな関数 χ′ ⁣:W→[0,1]\chi'\colon W\to[0,1] を取り、

f=g+χ′⟨a,F⟩f=g+\chi'\langle a,F\rangle

とおきます。K1K_1 の近傍では f=G+⟨a,F⟩f=G+\langle a,F\rangle なので、そこにある臨界点は非退化です。K2K_2 の外では f=gf=g で臨界点はありません。残りの C=K2∖int⁡K1C=K_2\setminus\operatorname{int}K_1 はカラーの t∈[18,14]t\in[\tfrac18,\tfrac14] の部分に含まれるコンパクト集合で、そこでは dg=±12dt≠0dg=\pm\tfrac12dt\ne0 です。WW に Riemann 計量を 1 つ入れると ∣dg∣|dg| は CC 上で正の最小値 δ\delta をもち、∣d(χ′⟨a,F⟩)∣≤A∣a∣|d(\chi'\langle a,F\rangle)|\le A|a|(AA は χ′\chi' と FF の 1 階導関数の WW 上の上界から決まる定数)なので、∣a∣<δ/A|a|\lt\delta/A なら CC 上に ff の臨界点はありません。また K2K_2 上で 116≤g≤1516\tfrac1{16}\le g\le\tfrac{15}{16} なので、∣a∣|a| をさらに小さく取れば 0<f<10\lt f\lt1 が K2K_2 上で成り立ち、f−1(0)=M0f^{-1}(0)=M_0、f−1(1)=M1f^{-1}(1)=M_1 が保たれます。測度 00 の集合の補集合は原点の任意の近傍と交わるので、このような aa が取れます。

臨界値を分ける。 臨界点を p1,…,pkp_1,\dots,p_k とし、互いに交わらない開近傍 Vi∋piV_i\ni p_i(∂W\partial W と交わらないもの)と、pip_i の近傍で 11、台が ViV_i に含まれる滑らかな関数 βi\beta_i を取ります。f′=f+∑iεiβif'=f+\sum_i\varepsilon_i\beta_i は、βi\beta_i が定数でない領域(ff の臨界点を含まないコンパクト集合)で ∣df∣|df| が正の下界をもつので、∣εi∣|\varepsilon_i| が小さければ新しい臨界点をもちません。pip_i の近傍では f′=f+εif'=f+\varepsilon_i なので pip_i は非退化のままで、臨界値は f(pi)+εif(p_i)+\varepsilon_i です。εi\varepsilon_i を小さく取って、これらを互いに異なるようにできます。

Riemann 計量の勾配の代わりに、臨界点の近くで決まった形をしたベクトル場を使います。臨界点の近くの流れが具体的に書けるので、議論が計量によらなくなります。Rn=Rλ×Rn−λ\mathbb{R}^n=\mathbb{R}^\lambda\times\mathbb{R}^{n-\lambda} の点を (x,y)(x,y) と書き、

qλ(x,y)=−∣x∣2+∣y∣2,ηλ=−∑i=1λxi∂∂xi+∑j=1n−λyj∂∂yjq_\lambda(x,y)=-|x|^2+|y|^2,\qquad \eta_\lambda=-\sum_{i=1}^{\lambda}x_i\frac{\partial}{\partial x_i}+\sum_{j=1}^{n-\lambda}y_j\frac{\partial}{\partial y_j}

とおきます。ηλ\eta_\lambda の流れは (x,y)↦(e−sx,esy)(x,y)\mapsto(e^{-s}x,e^{s}y) で、ηλqλ=2∣x∣2+2∣y∣2\eta_\lambda q_\lambda=2|x|^2+2|y|^2、また積 ∣x∣∣y∣|x||y| は流れに沿って一定です。

定義 2.4(勾配状ベクトル場)↗

同境 WW の上の Morse 関数 ff に対し、WW 上の滑らかなベクトル場 ξ\xi が ff の勾配状ベクトル場であるとは、

  1. 臨界点以外で ξf=df(ξ)>0\xi f=df(\xi)\gt0 であり、
  2. 各臨界点 pp(指数 λ\lambda)のまわりに、pp を原点に写すチャート (U,(x,y))(U,(x,y)) で、UU 上 f=f(p)+qλf=f(p)+q_\lambda かつ ξ=ηλ\xi=\eta_\lambda となるものが存在する

ことをいう。2 のチャートを適合チャートと呼ぶ。

補題 2.5(勾配状ベクトル場の存在)✓

同境の上の任意の Morse 関数は勾配状ベクトル場をもつ。

証明(補題 2.5)

各臨界点 pp に Morse チャート (Up,(x,y))(U_p,(x,y)) を取り(定理 3.2[Morse 理論]。座標を並べ替えて f=f(p)+qλf=f(p)+q_\lambda とする)、UpU_p 上で ξp=ηλ\xi_p=\eta_\lambda とします。ξpf=2∣x∣2+2∣y∣2\xi_pf=2|x|^2+2|y|^2 は pp 以外で正です。UpU_p は互いに交わらないように取り、pp の開近傍 Up′U_p' で Up′‾⊂Up\overline{U_p'}\subset U_p となるものを選びます。臨界点でない各点 ww には、チャート (Uw,u)(U_w,u) を、UwU_w が臨界点を含まず、どの Up′‾\overline{U_p'} とも交わらず、UwU_w 上で座標に関する Euclid 勾配 ξw=∑i(∂f/∂ui) ∂/∂ui\xi_w=\sum_i(\partial f/\partial u_i)\,\partial/\partial u_i が ξwf=∑i(∂f/∂ui)2>0\xi_wf=\sum_i(\partial f/\partial u_i)^2\gt0 を満たすように取ります。開被覆 {Up}∪{Uw}\{U_p\}\cup\{U_w\} に従属する 1 の分割 {ρα}\{\rho_\alpha\}(定理 6.3[部分多様体と正則値定理])で ξ=∑αραξα\xi=\sum_\alpha\rho_\alpha\xi_\alpha とおくと、臨界点以外では ξf=∑αρα ξαf>0\xi f=\sum_\alpha\rho_\alpha\,\xi_\alpha f\gt0 です(各項は非負で、ρα>0\rho_\alpha\gt0 となる項が少なくとも 1 つあり、その ξαf\xi_\alpha f は正)。Up′U_p' と交わる台をもつのは ρp\rho_p だけなので、Up′U_p' 上では ρp=1\rho_p=1、ξ=ηλ\xi=\eta_\lambda で、(Up′,(x,y))(U_p',(x,y)) が適合チャートです。

以下、ff と ξ\xi を 補題 2.2 で W^\hat W に延長し、ξ\xi の台をコンパクトにしておきます。すると ξ\xi は完備で(命題 2.7[ベクトル場の流れ・Lie 微分・Frobenius の定理])、流れ θt\theta_t が全時刻で定まります(定理 2.5[ベクトル場の流れ・Lie 微分・Frobenius の定理])。WW の点 ww の軌道とは、θt(w)\theta_t(w) のうち WW に含まれる部分のことです。WW の中では ff は軌道に沿って狭義単調に増えます。

次の補題は、「ベクトル場に沿って点を流すと、最後にどこへ行くか」を整理するものです。高さ ff は流れに沿って増え続けるので、点は上の境界 M1M_1 に着くか、どこかの臨界点に吸い込まれるかのどちらかになります。吸い込まれる軌道は適合チャートの中で y=0y=0(または x=0x=0)の面に乗っている、という点が、後で芯・余芯を定める根拠になります。証明では、軌道が臨界点に近づくと座標 (x,y)(x,y) の形から球を出る点での ff の値が見積もれ、それが f(p)f(p) を超えてしまうので矛盾する、という流れです。

補題 2.6(軌道の行き先)✓

f ⁣:W→[a,b]f\colon W\to[a,b] を同境 W ⁣:M0⇝M1W\colon M_0\rightsquigarrow M_1 の上の Morse 関数、ξ\xi を勾配状ベクトル場とし、w∈Ww\in W を臨界点でない点とする。

  1. ww の軌道は、時間の正の向きには、有限時間で M1M_1 に達するか、t→∞t\to\infty で 1 つの臨界点に収束するかのどちらかである。負の向きには、有限時間で M0M_0 に達するか、t→−∞t\to-\infty で 1 つの臨界点に収束する。
  2. pp を臨界点、(U,(x,y))(U,(x,y)) を適合チャートとし、閉球 {∣x∣2+∣y∣2≤r2}\{|x|^2+|y|^2\le r^2\} が UU の像に含まれるとする。軌道が正の向きに pp に収束するなら、軌道はこの球の中では {y=0}\{y=0\} に含まれる。負の向きに pp に収束するなら {x=0}\{x=0\} に含まれる。
  3. 軌道が負の向きに M0M_0 に達する点の全体 D0D_0 は WW の開集合で、w∈D0w\in D_0 に到達点 π(w)∈M0\pi(w)\in M_0 を対応させる写像 π ⁣:D0→M0\pi\colon D_0\to M_0 は滑らかである。
証明(補題 2.6)

正の向きを示します(負の向きは ff を −f-f、ξ\xi を −ξ-\xi に替えれば同じです)。γ(t)=θt(w)\gamma(t)=\theta_t(w) とします。臨界点は ξ\xi の零点で流れの不動点なので、γ\gamma は臨界点を通りません。T=sup⁡{t≥0:γ([0,t])⊂W}T=\sup\{t\ge0:\gamma([0,t])\subset W\} とおきます。

T<∞T\lt\infty のとき。 WW は閉なので γ(T)∈W\gamma(T)\in W で、TT の直後に WW を出るので γ(T)∈∂W\gamma(T)\in\partial W です。T>0T\gt0 なら f(γ(T))>f(w)≥af(\gamma(T))\gt f(w)\ge a なので γ(T)∈M1\gamma(T)\in M_1 です。T=0T=0 で w∈M0w\in M_0 となることはありません。M0M_0 上で ff は最小値 aa を取り df≠0df\ne0 なので、ξf>0\xi f\gt0 は ξ\xi が M0M_0 で内向きであることを意味し、軌道は M0M_0 から WW の内部へ入るからです。

T=∞T=\infty のとき。 f(γ(t))f(\gamma(t)) は有界で単調増加なので極限 ℓ≤b\ell\le b をもち、

∫0∞(ξf)(γ(t)) dt=ℓ−f(w)<∞\int_0^\infty(\xi f)(\gamma(t))\,dt=\ell-f(w)\lt\infty

です。被積分関数は非負なので、tk→∞t_k\to\infty で (ξf)(γ(tk))→0(\xi f)(\gamma(t_k))\to0 となる列があります。WW はコンパクトなので部分列を取って γ(tk)→z∈W\gamma(t_k)\to z\in W とでき、連続性から (ξf)(z)=0(\xi f)(z)=0、すなわち zz は臨界点 pp で、ℓ=f(p)\ell=f(p) です。pp の適合チャートで γ(tk)=(xk,yk)→(0,0)\gamma(t_k)=(x_k,y_k)\to(0,0) と書きます。チャートの中で軌道は s↦(e−sxk,esyk)s\mapsto(e^{-s}x_k,e^{s}y_k) です。もし yk≠0y_k\ne0 なら、この曲線は ∣x∣2+∣y∣2=r2|x|^2+|y|^2=r^2 となる点 (x′,y′)(x',y') で球を出ますが、∣x′∣≤∣xk∣|x'|\le|x_k| なので、そこでの ff の値は f(p)−∣x′∣2+∣y′∣2=f(p)+r2−2∣x′∣2≥f(p)+r2−2∣xk∣2f(p)-|x'|^2+|y'|^2=f(p)+r^2-2|x'|^2\ge f(p)+r^2-2|x_k|^2 で、kk が大きければ f(p)f(p) より大きくなります。これは軌道上で f<ℓ=f(p)f\lt\ell=f(p) であることに反します。よって大きい kk で yk=0y_k=0 で、以後の軌道は (e−sxk,0)→(0,0)(e^{-s}x_k,0)\to(0,0)、すなわち pp に収束します。これで 1 が示されました。

2 の前半を示します。球の上では f=f(p)−∣x∣2+∣y∣2≥f(p)−r2f=f(p)-|x|^2+|y|^2\ge f(p)-r^2 で、等号は ∣x∣=r|x|=r、y=0y=0 のときに限ります。上で見たとおり、軌道はある点 (xk,0)(x_k,0)(xk≠0x_k\ne0)を通ります。そこから時間を戻すと、軌道は (esxk,0)(e^{s}x_k,0) の形で {y=0}\{y=0\} の上を動き、∣x∣=r|x|=r となる点で球の境界に達して、そこで f=f(p)−r2f=f(p)-r^2 です。ff は軌道に沿って狭義単調増加なので、それより前の軌道の点では f<f(p)−r2f\lt f(p)-r^2 で、球の中にはありません。よって、軌道のうち球の中にある部分は {y=0}\{y=0\} に含まれます。

3。 w∈D0w\in D_0 の軌道が時刻 −T0-T_0 に M0M_0 に達するとします。W^\hat W では f^(θ−T0−δ(w))<a\hat f(\theta_{-T_0-\delta}(w))\lt a となる δ>0\delta\gt0 があり、流れの連続性から ww の近傍の点 w′w' でも f^(θ−T0−δ(w′))<a\hat f(\theta_{-T_0-\delta}(w'))\lt a なので、w′w' の軌道も M0M_0 に達します。よって D0D_0 は開集合です。到達時刻 τ(w′)\tau(w') は方程式 f^(θ−τ(w′))=a\hat f(\theta_{-\tau}(w'))=a の解で、τ\tau に関する微分 −(ξf)≠0-(\xi f)\ne0 から陰関数定理(定理 2.1[部分多様体と正則値定理] の系)により滑らかです。π(w′)=θ−τ(w′)(w′)\pi(w')=\theta_{-\tau(w')}(w') も滑らかです。

定理 2.7(臨界点の無い同境は積)✓

同境 W ⁣:M0⇝M1W\colon M_0\rightsquigarrow M_1 の上の Morse 関数 f ⁣:W→[a,b]f\colon W\to[a,b] が臨界点をもたなければ、微分同相 Φ ⁣:M0×[a,b]→W\Phi\colon M_0\times[a,b]\to W で

Φ(z,a)=z,f(Φ(z,t))=t\Phi(z,a)=z,\qquad f(\Phi(z,t))=t

を満たすものが存在する。とくに M0M_0 と M1M_1 は微分同相である。

証明(定理 2.7)

勾配状ベクトル場 ξ\xi(補題 2.5)を取ります。臨界点が無いので WW 上で ξf>0\xi f\gt0 で、ξ^=ξ/(ξf)\hat\xi=\xi/(\xi f) は WW の近傍で滑らか、ξ^f=1\hat\xi f=1 です。ξ^\hat\xi を台がコンパクトなベクトル場に延長し、その流れを θ^t\hat\theta_t とします。f(θ^t(w))=f(w)+tf(\hat\theta_t(w))=f(w)+t(WW の中にいる間)です。補題 2.6 の 1 により、臨界点が無いので各軌道は M0M_0 から M1M_1 まで走ります。そこで

Φ(z,t)=θ^t−a(z),Ψ(w)=(θ^a−f(w)(w), f(w))\Phi(z,t)=\hat\theta_{t-a}(z),\qquad \Psi(w)=\bigl(\hat\theta_{a-f(w)}(w),\,f(w)\bigr)

とおくと、Φ\Phi は M0×[a,b]M_0\times[a,b] から WW への、Ψ\Psi は WW から M0×[a,b]M_0\times[a,b] への滑らかな写像で(流れは初期値と時刻について滑らか。定理 2.5[ベクトル場の流れ・Lie 微分・Frobenius の定理])、θ^s∘θ^t=θ^s+t\hat\theta_s\circ\hat\theta_t=\hat\theta_{s+t} から Ψ∘Φ=id\Psi\circ\Phi=\mathrm{id}、Φ∘Ψ=id\Phi\circ\Psi=\mathrm{id} です。Φ(z,a)=z\Phi(z,a)=z と f(Φ(z,t))=tf(\Phi(z,t))=t は定義から従います。Φ(⋅,b)\Phi(\cdot,b) は M0M_0 から M1M_1 への微分同相です。

これは 定理 5.1[Morse 理論] を、同境の言葉で微分同相として述べ直したものです。同じ議論から、a≤a′<b′≤ba\le a'\lt b'\le b が正則値のとき f−1([a′,b′])f^{-1}([a',b']) は f−1(a′)f^{-1}(a') から f−1(b′)f^{-1}(b') への同境になります(正則値の逆像は余次元 1 の部分多様体で、ff をその近くの座標の 1 つに取れるからです。定理 4.3[部分多様体と正則値定理]、定理 3.2[部分多様体と正則値定理])。

定義 3.1(ハンドル)↗

0≤λ≤n0\le\lambda\le n とする。hλ=Dλ×Dn−λh^\lambda=D^\lambda\times D^{n-\lambda} を指数 λ\lambda の nn 次元ハンドルという。Dλ×0D^\lambda\times0 を芯、0×Dn−λ0\times D^{n-\lambda} を余芯、Sλ−1×Dn−λS^{\lambda-1}\times D^{n-\lambda} を接着領域、Sλ−1×0S^{\lambda-1}\times0 を接着球面、0×Sn−λ−10\times S^{n-\lambda-1} をベルト球面という。(n−1)(n-1) 次元多様体 MM への埋め込み φ ⁣:Sλ−1×Dn−λ→M\varphi\colon S^{\lambda-1}\times D^{n-\lambda}\to M を接着写像という。接着写像とそのイソトピーは、少し大きい開円板との積 Sλ−1×D˚1+ϵn−λS^{\lambda-1}\times\mathring D^{n-\lambda}_{1+\epsilon} の上の埋め込み(イソトピー)の制限であるものだけを考える。

次の模型 LλL_\lambda のねらいは、ハンドルを貼ったときに角が出ないよう、あらかじめ角のならされた形を用意しておくことです。ηλ\eta_\lambda の流れで下側の面 qλ=−1q_\lambda=-1 から上側の面 qλ=1q_\lambda=1 へ移るとき、条件 ∣x∣∣y∣<sinh⁡1cosh⁡1|x||y|\lt\sinh1\cosh1 は、この移動で保たれ、下側の面の点を通る流線が上側の面に達する範囲を切り取っています(下で見るとおり、a−a_- の像と a+a_+ の像は流線で対応します)。sinh⁡\sinh と cosh⁡\cosh は、cosh⁡2θ−sinh⁡2θ=1\cosh^2\theta-\sinh^2\theta=1 によって双曲線 qλ=∓1q_\lambda=\mp1 を媒介変数表示するためのものです。

位相空間としては、境界に MM を含む多様体 WW にハンドルを貼ったものは W⊔hλW\sqcup h^\lambda で u∈Sλ−1×Dn−λu\in S^{\lambda-1}\times D^{n-\lambda} と φ(u)\varphi(u) を同一視した商です。ただしこのままでは φ(Sλ−1×Sn−λ−1)\varphi(S^{\lambda-1}\times S^{n-\lambda-1}) に角が残り、滑らかな多様体になりません。そこで、角をならした形をはじめから組み込んだ模型を使って定義します。Rλ×Rn−λ\mathbb{R}^\lambda\times\mathbb{R}^{n-\lambda} の部分集合

Lλ={(x,y): −1≤qλ(x,y)≤1,  ∣x∣∣y∣<sinh⁡1cosh⁡1}L_\lambda=\bigl\{(x,y):\ -1\le q_\lambda(x,y)\le1,\ \ |x||y|\lt\sinh1\cosh1\bigr\}

を考えます。LλL_\lambda は qλq_\lambda の等位面 qλ=±1q_\lambda=\pm1 を境界とする境界付き多様体(±1\pm1 は qλq_\lambda の正則値)で、条件 ∣x∣∣y∣<sinh⁡1cosh⁡1|x||y|\lt\sinh1\cosh1 は ηλ\eta_\lambda の流れで保たれます。下側と上側の境界は

a− ⁣:Sλ−1×D˚n−λ→Lλ∩qλ−1(−1),a−(u,θv)=(ucosh⁡θ, vsinh⁡θ),a+ ⁣:D˚λ×Sn−λ−1→Lλ∩qλ−1(1),a+(θu,v)=(usinh⁡θ, vcosh⁡θ)\begin{aligned} a_-&\colon S^{\lambda-1}\times\mathring D^{n-\lambda}\to L_\lambda\cap q_\lambda^{-1}(-1),&a_-(u,\theta v)&=(u\cosh\theta,\ v\sinh\theta),\\ a_+&\colon\mathring D^{\lambda}\times S^{n-\lambda-1}\to L_\lambda\cap q_\lambda^{-1}(1),&a_+(\theta u,v)&=(u\sinh\theta,\ v\cosh\theta) \end{aligned}

(u∈Sλ−1u\in S^{\lambda-1}、v∈Sn−λ−1v\in S^{n-\lambda-1}、0≤θ<10\le\theta\lt1)で表されます。w=θvw=\theta v と書けば a−(u,w)=(ucosh⁡∣w∣, wsinh⁡∣w∣/∣w∣)a_-(u,w)=(u\cosh|w|,\ w\sinh|w|/|w|) で、cosh⁡∣w∣\cosh|w| と sinh⁡∣w∣/∣w∣\sinh|w|/|w| は ∣w∣2|w|^2 の滑らかな関数なので、a−a_- は θ=0\theta=0 でも滑らかです。−∣x∣2+∣y∣2=−1-|x|^2+|y|^2=-1 かつ ∣x∣∣y∣<sinh⁡1cosh⁡1|x||y|\lt\sinh1\cosh1 を満たす点は ∣y∣=sinh⁡θ|y|=\sinh\theta、∣x∣=cosh⁡θ|x|=\cosh\theta(0≤θ<10\le\theta\lt1)とただ一通りに書けるので a−a_- は全単射で、逆写像も同じ理由で滑らかです。a+a_+ も同様です。0<θ<10\lt\theta\lt1 のとき、a−(u,θv)a_-(u,\theta v) を通る ηλ\eta_\lambda の流線 s↦(e−sucosh⁡θ, esvsinh⁡θ)s\mapsto(e^{-s}u\cosh\theta,\ e^{s}v\sinh\theta) は、es=cosh⁡θ/sinh⁡θe^{s}=\cosh\theta/\sinh\theta のとき (usinh⁡θ,vcosh⁡θ)=a+(θu,v)(u\sinh\theta,v\cosh\theta)=a_+(\theta u,v) に達します。

手術の直感は次のとおりです。MM の中にある Sλ−1×Dn−λS^{\lambda-1}\times D^{n-\lambda} の形の「太い球面」を切り抜き、同じ境界 Sλ−1×Sn−λ−1S^{\lambda-1}\times S^{n-\lambda-1} をもつ Dλ×Sn−λ−1D^\lambda\times S^{n-\lambda-1} を代わりに貼ります。たとえば n=2n=2、λ=1\lambda=1 なら、曲線(MM は 1 次元)の上の 2 つの短い弧を取り除いて、その端点を別の 2 本の弧でつなぎ替える操作です。跡は、この前後を高さ −1-1 から 11 までつなぐ 1 つの同境です。

定義 3.2(手術とその跡)↗

MM を (n−1)(n-1) 次元多様体、φ ⁣:Sλ−1×Dn−λ→M\varphi\colon S^{\lambda-1}\times D^{n-\lambda}\to M を埋め込みとする。

  1. MM に φ\varphi に沿って手術(球面改変)をした多様体 χ(M,φ)\chi(M,\varphi) を、非交和 (M∖φ(Sλ−1×0))⊔(D˚λ×Sn−λ−1)\bigl(M\setminus\varphi(S^{\lambda-1}\times0)\bigr)\sqcup\bigl(\mathring D^\lambda\times S^{n-\lambda-1}\bigr) で φ(u,θv)\varphi(u,\theta v) と (θu,v)(\theta u,v)(0<θ<10\lt\theta\lt1)を同一視した商として定める。
  2. 手術の跡 ω(M,φ)\omega(M,\varphi) を、非交和 ((M∖φ(Sλ−1×0))×[−1,1])⊔Lλ\bigl((M\setminus\varphi(S^{\lambda-1}\times0))\times[-1,1]\bigr)\sqcup L_\lambda で、0<θ<10\lt\theta\lt1、c∈[−1,1]c\in[-1,1] について (φ(u,θv),c)(\varphi(u,\theta v),c) と「a−(u,θv)a_-(u,\theta v) を通る ηλ\eta_\lambda の流線の上で qλ=cq_\lambda=c となる点」を同一視した商として定める。関数 F ⁣:ω(M,φ)→[−1,1]F\colon\omega(M,\varphi)\to[-1,1] を、F(z,c)=cF(z,c)=c、LλL_\lambda 上 F=qλF=q_\lambda で定める。

互いに交わらない像をもつ有限個の埋め込み φ1,…,φk\varphi_1,\dots,\varphi_k(指数は λ1,…,λk\lambda_1,\dots,\lambda_k)に対しても、LλiL_{\lambda_i} のコピーを kk 個使って同じように χ(M;φ1,…,φk)\chi(M;\varphi_1,\dots,\varphi_k)、ω(M;φ1,…,φk)\omega(M;\varphi_1,\dots,\varphi_k) を定める。

χ(M,φ)\chi(M,\varphi) は、MM から Sλ−1×D˚n−λS^{\lambda-1}\times\mathring D^{n-\lambda} を取り除き、同じ境界 Sλ−1×Sn−λ−1S^{\lambda-1}\times S^{n-\lambda-1} をもつ Dλ×Sn−λ−1D^\lambda\times S^{n-\lambda-1} をはめ込んだものです。λ=0\lambda=0 のときは φ\varphi の定義域が空で、χ(M,∅)=M⊔Sn−1\chi(M,\varnothing)=M\sqcup S^{n-1}、ω(M,∅)=M×[−1,1]⊔Dn\omega(M,\varnothing)=M\times[-1,1]\sqcup D^n です。

p芯余芯q = −1q = −1q = 1q = 1xy
n = 2、λ = 1 の模型 L。横軸が x(f の減る方向)、縦軸が y(増える方向)。左右の双曲線が下側の境界 q = −1、上下の双曲線が上側の境界 q = 1。太線が芯(下降円板)、破線が余芯(上昇円板)。L の外側には (M ∖ 接着球面) × [−1, 1] が流線に沿って貼られる。

補題 3.3(跡は 1 つのハンドルの同境)✓

MM を閉 (n−1)(n-1) 次元多様体、φ1,…,φk\varphi_1,\dots,\varphi_k を像が互いに交わらない接着写像(指数 λi\lambda_i)とする。ω=ω(M;φ1,…,φk)\omega=\omega(M;\varphi_1,\dots,\varphi_k) はコンパクトな nn 次元の境界付き多様体で、FF は同境 ω ⁣:M⇝χ(M;φ1,…,φk)\omega\colon M\rightsquigarrow\chi(M;\varphi_1,\dots,\varphi_k) の上の Morse 関数である。FF の臨界点は各 LλiL_{\lambda_i} の原点だけで、指数は λi\lambda_i、臨界値はすべて 00 である。境界の同一視は次のとおりである。下の境界 F−1(−1)F^{-1}(-1) は z↦(z,−1)z\mapsto(z,-1)、φi(u,w)↦a−(u,w)\varphi_i(u,w)\mapsto a_-(u,w) による MM の微分同相な像で、上の境界 F−1(1)F^{-1}(1) は、MM から接着球面を除いた部分の点 zz を (z,1)(z,1) に、D˚λi×Sn−λi−1\mathring D^{\lambda_i}\times S^{n-\lambda_i-1} のコピーの点 (θu,v)(\theta u,v) を a+(θu,v)a_+(\theta u,v) に写す写像による χ(M;φ1,…,φk)\chi(M;\varphi_1,\dots,\varphi_k) の微分同相な像である。

証明(補題 3.3)

k=1k=1 で書きます(一般の場合も同じです)。LλL_\lambda の点 (x,y)(x,y) で x≠0x\ne0 かつ y≠0y\ne0 のものを考えます。その流線上の qλq_\lambda の値 −e−2s∣x∣2+e2s∣y∣2-e^{-2s}|x|^2+e^{2s}|y|^2 は ss について狭義単調増加で R\mathbb{R} 全体を動くので、流線は qλ=−1q_\lambda=-1 の点をただ 1 つ通り、その点は ∣x′∣∣y′∣=∣x∣∣y∣∈(0,sinh⁡1cosh⁡1)|x'||y'|=|x||y|\in(0,\sinh1\cosh1) を満たすので a−(u,θv)a_-(u,\theta v)(0<θ<10\lt\theta\lt1)の形です。したがって定義の同一視は、開集合 φ(Sλ−1×(D˚n−λ∖0))×[−1,1]\varphi\bigl(S^{\lambda-1}\times(\mathring D^{n-\lambda}\setminus0)\bigr)\times[-1,1] から開集合 Lλ∩{x≠0,y≠0}L_\lambda\cap\{x\ne0,y\ne0\} への全単射で、流線上で qλ=cq_\lambda=c となる時刻は陰関数定理により (u,θ,v,c)(u,\theta,v,c) について滑らかなので、微分同相です。開集合どうしを微分同相で貼るので、ω\omega は滑らかなアトラスをもちます。

Hausdorff 性を確かめます。分離できないおそれがあるのは、積の部分の点 (z,c)(z,c) と LλL_\lambda の点 (x,y)(x,y) の組で、互いに同一視されないものだけです。z∉φ(Sλ−1×D˚n−λ)z\notin\varphi(S^{\lambda-1}\times\mathring D^{n-\lambda}) のとき、∣x∣∣y∣<sinh⁡θ0cosh⁡θ0|x||y|\lt\sinh\theta_0\cosh\theta_0 となる θ0<1\theta_0\lt1 を取ると、(x,y)(x,y) の近傍 {∣x∣∣y∣<sinh⁡θ0cosh⁡θ0}\{|x||y|\lt\sinh\theta_0\cosh\theta_0\} と、(z,c)(z,c) の近傍 (M∖φ(Sλ−1×Dθ1n−λ))×[−1,1]\bigl(M\setminus\varphi(S^{\lambda-1}\times D^{n-\lambda}_{\theta_1})\bigr)\times[-1,1](θ0<θ1<1\theta_0\lt\theta_1\lt1、Dθ1D_{\theta_1} は半径 θ1\theta_1 の閉球)は交わりません。z=φ(u,θv)z=\varphi(u,\theta v)(0<θ<10\lt\theta\lt1)で x=0x=0 または y=0y=0 のときは、(x,y)(x,y) の近傍 {∣x∣∣y∣<sinh⁡(θ/2)cosh⁡(θ/2)}\{|x||y|\lt\sinh(\theta/2)\cosh(\theta/2)\} と zz の近傍 φ({動径>θ/2})\varphi(\{\text{動径}\gt\theta/2\}) の積が交わりません。ω\omega は 2 つのコンパクト集合 (M∖φ(Sλ−1×D˚1/2))×[−1,1]\bigl(M\setminus\varphi(S^{\lambda-1}\times\mathring D_{1/2})\bigr)\times[-1,1] と {(x,y)∈Lλ:∣x∣∣y∣≤sinh⁡12cosh⁡12}\{(x,y)\in L_\lambda:|x||y|\le\sinh\tfrac12\cosh\tfrac12\} の像の和なのでコンパクトで、第二可算です。

FF は同一視と両立し(流線上で qλ=cq_\lambda=c の点を (⋅,c)(\cdot,c) と同一視した)、積の部分では dF=dc≠0dF=dc\ne0、LλL_\lambda 上では dqλ=0dq_\lambda=0 となるのは原点だけで、そこでの Hessian は diag⁡(−2,…,−2,2,…,2)\operatorname{diag}(-2,\dots,-2,2,\dots,2)(−2-2 が λ\lambda 個)なので非退化で指数 λ\lambda です。F−1(−1)F^{-1}(-1) は (M∖φ(Sλ−1×0))×{−1}(M\setminus\varphi(S^{\lambda-1}\times0))\times\{-1\} と a−a_- の像を (φ(u,θv),−1)∼a−(u,θv)(\varphi(u,\theta v),-1)\sim a_-(u,\theta v) で貼ったもので、z↦(z,−1)z\mapsto(z,-1)、φ(u,w)↦a−(u,w)\varphi(u,w)\mapsto a_-(u,w) が MM からの微分同相を与えます。F−1(1)F^{-1}(1) は (M∖φ(Sλ−1×0))×{1}(M\setminus\varphi(S^{\lambda-1}\times0))\times\{1\} と a+a_+ の像を (φ(u,θv),1)∼a+(θu,v)(\varphi(u,\theta v),1)\sim a_+(\theta u,v) で貼ったもので、これは χ(M,φ)\chi(M,\varphi) の定義の同一視そのものです。

跡の中の H={(x,y)∈Lλ:∣x∣∣y∣≤sinh⁡12cosh⁡12}H=\{(x,y)\in L_\lambda:|x||y|\le\sinh\tfrac12\cosh\tfrac12\} は Dλ×Dn−λD^\lambda\times D^{n-\lambda} と同相で、その外側は積 (M∖φ(Sλ−1×D˚1/2))×[−1,1]\bigl(M\setminus\varphi(S^{\lambda-1}\times\mathring D_{1/2})\bigr)\times[-1,1] です。つまり ω(M,φ)\omega(M,\varphi) は、位相空間としては M×[−1,1]M\times[-1,1] の上面にハンドル hλh^\lambda を φ\varphi で貼ったもので、LλL_\lambda の形が角をならす役をしています。{y=0}∩Lλ\{y=0\}\cap L_\lambda が芯、{x=0}∩Lλ\{x=0\}\cap L_\lambda が余芯で、芯の境界 a−(Sλ−1×0)a_-(S^{\lambda-1}\times0) が MM の中の接着球面、余芯の境界 a+(0×Sn−λ−1)a_+(0\times S^{n-\lambda-1}) が χ(M,φ)\chi(M,\varphi) の中のベルト球面です。

定義 3.4(ハンドルの接着とハンドル分解)↗

同境 W ⁣:M0⇝M1W\colon M_0\rightsquigarrow M_1 と接着写像 φ ⁣:Sλ−1×Dn−λ→M1\varphi\colon S^{\lambda-1}\times D^{n-\lambda}\to M_1 に対し、WW と ω(M1,φ)\omega(M_1,\varphi) を M1M_1 に沿って貼り合わせた同境(境界の一部に沿った貼り合わせ。系 7.4[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張])

W∪φhλ:=W∪M1ω(M1,φ) ⁣: M0⇝χ(M1,φ)W\cup_\varphi h^\lambda:=W\cup_{M_1}\omega(M_1,\varphi)\colon\ M_0\rightsquigarrow\chi(M_1,\varphi)

を、WW に指数 λ\lambda のハンドルを φ\varphi で接着したものという。同境 W ⁣:M0⇝M1W\colon M_0\rightsquigarrow M_1 を、M0×[0,1]M_0\times[0,1] に有限個のハンドルを順に接着したものとして表すことを WW のハンドル分解という。M0=∅M_0=\varnothing で指数 00 のハンドル 1 個と指数 11 のハンドル gg 個からなるハンドル分解をもつ多様体を、種数 gg のハンドル体という。

同境どうしは境界の一部(開かつ閉な部分 M1M_1)で貼り合わせるので、境界の全体で貼る 定理 7.2[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] ではなく、その系 系 7.4[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] を使います。結果は残りの境界 M0⊔χ(M1,φ)M_0\sqcup\chi(M_1,\varphi) を境界とするコンパクトな境界付き多様体で(同系の 1)、構造はカラーの取り方によらず微分同相を除いて定まります(同系の 2)。像が互いに交わらない有限個の接着写像 φ1,…,φk\varphi_1,\dots,\varphi_k について W∪M1ω(M1;φ1,…,φk)W\cup_{M_1}\omega(M_1;\varphi_1,\dots,\varphi_k) を作ることを、ハンドルを同時に接着するといいます。

同境 W ⁣:M0⇝M1W\colon M_0\rightsquigarrow M_1、W′ ⁣:M0′⇝M1′W'\colon M_0'\rightsquigarrow M_1' の間の微分同相 G ⁣:W→W′G\colon W\to W' で G(M0)=M0′G(M_0)=M_0'、G(M1)=M1′G(M_1)=M_1' となるものを同境の微分同相と呼びます。以下で、同境を等位面で切る・貼り直す・別の同境に運ぶという操作を繰り返すので、それらが微分同相類を変えないことを 1 つの補題にまとめておきます。

補題 3.5(切って貼り直す操作と微分同相)✓

  1. (貼り合わせの自然性)XiX_i、Mi⊂∂XiM_i\subset\partial X_i、h ⁣:M1→M2h\colon M_1\to M_2 と Xi′X_i'、Mi′⊂∂Xi′M_i'\subset\partial X_i'、h′ ⁣:M1′→M2′h'\colon M_1'\to M_2' をそれぞれ 系 7.4[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] のとおりとし、微分同相 Gi ⁣:Xi→Xi′G_i\colon X_i\to X_i'(i=1,2i=1,2)が Gi(Mi)=Mi′G_i(M_i)=M_i'、h′∘G1=G2∘hh'\circ G_1=G_2\circ h(M1M_1 上)を満たすとする。このとき、どのカラーによる貼り合わせの構造についても、微分同相 X1∪hX2→X1′∪h′X2′X_1\cup_hX_2\to X_1'\cup_{h'}X_2' で、境界の近傍で G1⊔G2G_1\sqcup G_2 に一致するものが存在する。
  2. (等位面で切る)f ⁣:W→[a,b]f\colon W\to[a,b] を同境 W ⁣:M0⇝M1W\colon M_0\rightsquigarrow M_1 の上の Morse 関数、m∈(a,b)m\in(a,b) を正則値とし、W−=f−1([a,m])W_-=f^{-1}([a,m])、W+=f−1([m,b])W_+=f^{-1}([m,b])、V=f−1(m)V=f^{-1}(m) とおく。このとき、W−W_- と W+W_+ を VV に沿って(恒等写像で)貼り合わせた多様体から WW への微分同相で、∂W\partial W の近傍で恒等写像であるものが存在する。
  3. (跡を運ぶ)MM、M′M' を閉 (n−1)(n-1) 次元多様体、g ⁣:M→M′g\colon M\to M' を微分同相、φ ⁣:Sλ−1×Dn−λ→M\varphi\colon S^{\lambda-1}\times D^{n-\lambda}\to M を接着写像、A=(A1,A2)∈O(λ)×O(n−λ)A=(A_1,A_2)\in O(\lambda)\times O(n-\lambda) とし、φ′=g∘φ∘(A1×A2)−1\varphi'=g\circ\varphi\circ(A_1\times A_2)^{-1} とおく。このとき、積の部分で (z,c)↦(g(z),c)(z,c)\mapsto(g(z),c)、LλL_\lambda の上で (x,y)↦(A1x,A2y)(x,y)\mapsto(A_1x,A_2y) と定めた写像は、関数 FF を保つ微分同相 ω(M,φ)→ω(M′,φ′)\omega(M,\varphi)\to\omega(M',\varphi') で、下の境界 MM の上では gg である。有限個の接着写像の組についても同じことが成り立つ。したがって、同境の微分同相 G ⁣:W→W′G\colon W\to W'(W ⁣:M0⇝MW\colon M_0\rightsquigarrow M、W′ ⁣:M0′⇝M′W'\colon M_0'\rightsquigarrow M')と φ′=G∣M∘φ∘(A1×A2)−1\varphi'=G|_M\circ\varphi\circ(A_1\times A_2)^{-1} について、M0M_0 の近傍で GG に一致する微分同相 W∪φhλ→W′∪φ′hλW\cup_\varphi h^\lambda\to W'\cup_{\varphi'}h^\lambda が存在する。
証明(補題 3.5)

1。 XiX_i のカラー cic_i に対し、ci′(x′,t)=Gi(ci(Gi−1(x′),t))c_i'(x',t)=G_i\bigl(c_i(G_i^{-1}(x'),t)\bigr) は Xi′X_i' のカラーです。(c1,c2)(c_1,c_2) と (c1′,c2′)(c_1',c_2') による継ぎ目のチャート κ\kappa、κ′\kappa'(定義 7.1[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] の式)について、t≤0t\le0 では G1(κ(x,t))=G1(c1(x,−t))=c1′(G1(x),−t)=κ′(G1(x),t)G_1(\kappa(x,t))=G_1(c_1(x,-t))=c_1'(G_1(x),-t)=\kappa'(G_1(x),t)、t≥0t\ge0 では G2(κ(x,t))=G2(c2(h(x),t))=c2′(G2h(x),t)=c2′(h′G1(x),t)=κ′(G1(x),t)G_2(\kappa(x,t))=G_2(c_2(h(x),t))=c_2'(G_2h(x),t)=c_2'(h'G_1(x),t)=\kappa'(G_1(x),t) です。よって G1⊔G2G_1\sqcup G_2 の誘導する全単射は、継ぎ目のチャートで見ると G1∣M1×idG_1|_{M_1}\times\mathrm{id}、ほかのチャートで見ると GiG_i で、この 2 組のカラーによる構造の間の微分同相です。ほかのカラーによる構造へは、同系の 2 の微分同相(継ぎ目を含むコンパクト集合 K⊂W∖∂WK\subset W\setminus\partial W の外で恒等写像)を合成します。KK の補集合は境界の近傍です。

2。 臨界値は有限個なので、ε>0\varepsilon\gt0 を [m−ε,m+ε]⊂(a,b)[m-\varepsilon,m+\varepsilon]\subset(a,b) が臨界値を含まないように取れます。f−1([m−ε,m+ε])f^{-1}([m-\varepsilon,m+\varepsilon]) は臨界点の無い同境なので、定理 2.7 の微分同相 Φ ⁣:f−1(m−ε)×[m−ε,m+ε]→f−1([m−ε,m+ε])\Phi\colon f^{-1}(m-\varepsilon)\times[m-\varepsilon,m+\varepsilon]\to f^{-1}([m-\varepsilon,m+\varepsilon])(f(Φ(z′,t))=tf(\Phi(z',t))=t)があります。z∈Vz\in V に対し z=Φ(z′,m)z=\Phi(z',m) となる z′z' を取り、ΦV(z,s)=Φ(z′,m+s)\Phi_V(z,s)=\Phi(z',m+s) とおくと、ΦV ⁣:V×(−ε,ε)→W\Phi_V\colon V\times(-\varepsilon,\varepsilon)\to W は開集合 f−1((m−ε,m+ε))f^{-1}((m-\varepsilon,m+\varepsilon)) への微分同相で、ΦV(z,0)=z\Phi_V(z,0)=z、f(ΦV(z,s))=m+sf(\Phi_V(z,s))=m+s です。VV の W−W_- でのカラーを (z,t)↦ΦV(z,−εt)(z,t)\mapsto\Phi_V(z,-\varepsilon t)、W+W_+ でのカラーを (z,t)↦ΦV(z,εt)(z,t)\mapsto\Phi_V(z,\varepsilon t) に取ると、継ぎ目のチャートは κ(z,t)=ΦV(z,εt)\kappa(z,t)=\Phi_V(z,\varepsilon t) で、これは WW の開集合への微分同相です。残りのチャートは WW の開集合 W−∖VW_-\setminus V、W+∖VW_+\setminus V のチャートなので、このカラーによる貼り合わせの構造は WW の構造と同じで、恒等写像が微分同相です。ほかのカラーについては 1 と同じく同系の 2 を使います。

3。 AA は qλq_\lambda と ∣x∣∣y∣|x||y| を保つので LλL_\lambda をそれ自身に写し、ηλ\eta_\lambda の流れ (x,y)↦(e−sx,esy)(x,y)\mapsto(e^{-s}x,e^{s}y) と可換で、A a−(u,w)=a−(A1u,A2w)A\,a_-(u,w)=a_-(A_1u,A_2w) です。ω(M,φ)\omega(M,\varphi) の同一視は、(φ(u,θv),c)(\varphi(u,\theta v),c) と「a−(u,θv)a_-(u,\theta v) を通る流線の上で qλ=cq_\lambda=c となる点」PP を結びます。前者の行き先は (gφ(u,θv),c)=(φ′(A1u,θA2v),c)(g\varphi(u,\theta v),c)=(\varphi'(A_1u,\theta A_2v),c)、後者の行き先 APAP は a−(A1u,θA2v)=A a−(u,θv)a_-(A_1u,\theta A_2v)=A\,a_-(u,\theta v) を通る流線の上で qλ=cq_\lambda=c となる点なので、2 つは ω(M′,φ′)\omega(M',\varphi') の中で同一視されます。よって写像は矛盾なく定まり、積の部分と LλL_\lambda のそれぞれで滑らかです。g−1g^{-1} と A−1A^{-1} から同じように作った写像が逆を与えるので微分同相で、FF を保ちます。組の場合は LλiL_{\lambda_i} ごとに同じことをします。最後の主張は、この微分同相と GG に 1 を使ったものです(継ぎ目 MM の上で 2 つは G∣MG|_M で、両立します)。

3.2. 臨界点の通過はハンドルの接着

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定理 3.6(臨界点の通過とハンドルの接着)✓

f ⁣:W→[a,b]f\colon W\to[a,b] を同境 W ⁣:M0⇝M1W\colon M_0\rightsquigarrow M_1 の上の Morse 関数、ξ\xi をその勾配状ベクトル場とし、ff の臨界点 p1,…,pkp_1,\dots,p_k がすべて同じ臨界値 c0c_0 をもち、指数が λ1,…,λk\lambda_1,\dots,\lambda_k であるとする。このとき、像が互いに交わらない接着写像 φi ⁣:Sλi−1×Dn−λi→M0\varphi_i\colon S^{\lambda_i-1}\times D^{n-\lambda_i}\to M_0 と微分同相

κ ⁣:ω(M0;φ1,…,φk)→W\kappa\colon\omega(M_0;\varphi_1,\dots,\varphi_k)\to W

で、M0M_0 上で恒等写像となり、各 LλiL_{\lambda_i} の原点を pip_i に、芯を pip_i に収束する軌道の全体と pip_i の和(下降円板)に、余芯を pip_i から出る軌道の全体と pip_i の和(上昇円板)に写すものが存在する。とくに M1M_1 は χ(M0;φ1,…,φk)\chi(M_0;\varphi_1,\dots,\varphi_k) に微分同相で、WW は M0×[0,1]M_0\times[0,1] に指数 λ1,…,λk\lambda_1,\dots,\lambda_k のハンドルを同時に接着したものである。

さらに、φi\varphi_i と κ\kappa は次の形に取れる。pip_i のまわりの互いに交わらない適合チャート gig_i と、十分小さい任意の ε>0\varepsilon\gt0 について

φi(u,θv)=π(gi−1(εucosh⁡θ, εvsinh⁡θ))(u∈Sλi−1, v∈Sn−λi−1, 0≤θ≤1)\varphi_i(u,\theta v)=\pi\bigl(g_i^{-1}(\varepsilon u\cosh\theta,\ \varepsilon v\sinh\theta)\bigr)\qquad(u\in S^{\lambda_i-1},\ v\in S^{n-\lambda_i-1},\ 0\le\theta\le1)

(π\pi は 補題 2.6 の 3 の、軌道を負の向きにたどった到達点の写像)であり、κ\kappa は積の部分の各線分 {z}×[−1,1]\{z\}\times[-1,1] を、zz の軌道のうち WW に含まれる部分の上へ写す。

この定理の証明の方針は、臨界点の近くでは適合チャートの中の模型 LλL_\lambda そのものなので、その外側(臨界点を通らない軌道の部分)は 定理 2.7 と同じく積として貼れる、というものです。

証明(定理 3.6)

k=1k=1、p=p1p=p_1、λ=λ1\lambda=\lambda_1 で書きます。一般の場合は、互いに交わらない適合チャートを取って同じ構成を各臨界点で行います。

臨界値の近くの帯。 適合チャート g ⁣:U→Rng\colon U\to\mathbb{R}^n を取ります。LλL_\lambda の上では ∣x∣2−∣y∣2∈[−1,1]|x|^2-|y|^2\in[-1,1]、∣x∣∣y∣<sinh⁡1cosh⁡1=12sinh⁡2|x||y|\lt\sinh1\cosh1=\tfrac12\sinh2 なので

∣x∣2+∣y∣2=(∣x∣2−∣y∣2)2+4∣x∣2∣y∣2<1+sinh⁡22=cosh⁡2|x|^2+|y|^2=\sqrt{(|x|^2-|y|^2)^2+4|x|^2|y|^2}\lt\sqrt{1+\sinh^22}=\cosh2

です。ε>0\varepsilon\gt0 を、半径 εcosh⁡2\varepsilon\sqrt{\cosh2} の閉球が g(U)g(U) に含まれ、a<c0−ε2a\lt c_0-\varepsilon^2、c0+ε2<bc_0+\varepsilon^2\lt b となるように取ります。Wε=f−1([c0−ε2,c0+ε2])W_\varepsilon=f^{-1}([c_0-\varepsilon^2,c_0+\varepsilon^2])、M−=f−1(c0−ε2)M_-=f^{-1}(c_0-\varepsilon^2) とおき、

φ ⁣:Sλ−1×Dn−λ→M−,φ(u,θv)=g−1(εucosh⁡θ, εvsinh⁡θ)(0≤θ≤1)\varphi\colon S^{\lambda-1}\times D^{n-\lambda}\to M_-,\qquad\varphi(u,\theta v)=g^{-1}(\varepsilon u\cosh\theta,\ \varepsilon v\sinh\theta)\quad(0\le\theta\le1)

と定めます。f(φ(u,θv))=c0−ε2cosh⁡2θ+ε2sinh⁡2θ=c0−ε2f(\varphi(u,\theta v))=c_0-\varepsilon^2\cosh^2\theta+\varepsilon^2\sinh^2\theta=c_0-\varepsilon^2 なので像は M−M_- に入り、a−a_- のときと同じ理由で埋め込みです。

写像 k ⁣:ω(M−,φ)→Wεk\colon\omega(M_-,\varphi)\to W_\varepsilon。 LλL_\lambda の上では k(x,y)=g−1(εx,εy)k(x,y)=g^{-1}(\varepsilon x,\varepsilon y)、積の部分では k(z,c)k(z,c) を「zz の軌道の上で f=c0+ε2cf=c_0+\varepsilon^2c となる点」とします。後者が定まることを確かめます。z∈M−∖φ(Sλ−1×0)z\in M_-\setminus\varphi(S^{\lambda-1}\times0) の軌道が等位面 f=c0+ε2f=c_0+\varepsilon^2 に達しないとすると、補題 2.6 の 1 により軌道は pp に収束し、2 により pp の近くで {y=0}\{y=0\} に含まれます。チャートの中で軌道は ηλ\eta_\lambda の流線なので、時間を戻しても y=0y=0 のままで、f=c0−ε2f=c_0-\varepsilon^2 となる点は ∣x∣=ε|x|=\varepsilon、y=0y=0、すなわち φ(Sλ−1×0)\varphi(S^{\lambda-1}\times0) の点です。これは zz の取り方に反します。よって軌道は f=c0+ε2f=c_0+\varepsilon^2 に達し、ff は軌道上で狭義単調なので k(z,c)k(z,c) がただ 1 つ定まります。z=φ(u,θv)z=\varphi(u,\theta v)(0<θ<10\lt\theta\lt1)のとき、zz の軌道はチャートの中で εa−(u,θv)\varepsilon a_-(u,\theta v) を通る ηλ\eta_\lambda の流線なので、2 つの定義は ω\omega の同一視と両立します。f∘k=c0+ε2Ff\circ k=c_0+\varepsilon^2F です。

kk は微分同相。 積の部分では、kk は流れを ff の値で測り直したもので、定理 2.7 の証明と同じく滑らかで、微分は同型です。LλL_\lambda の上では g−1g^{-1} と拡大の合成です。単射性は、異なる軌道・異なる ff の値の点が異なること、および gg の単射性から従います。全射性を示します。w∈Wεw\in W_\varepsilon の軌道を負の向きにたどると、補題 2.6 により M−M_- の点 zz に達するか、pp に収束します。前者で z∉φ(Sλ−1×0)z\notin\varphi(S^{\lambda-1}\times0) なら w=k(z,c)w=k(z,c) です。z∈φ(Sλ−1×0)z\in\varphi(S^{\lambda-1}\times0) なら ww はチャートの {y=0}\{y=0\} の上にあり、後者なら {x=0}\{x=0\} の上にあって、どちらも k(Lλ)k(L_\lambda) に入ります。全単射で各点での微分が同型なので、逆関数定理(系 2.2[部分多様体と正則値定理])により kk は微分同相です。

帯を WW 全体に広げる。 滑らかで 0<ρ≤10\lt\rho\le1、[c0−ε2/2,c0+ε2/2][c_0-\varepsilon^2/2,c_0+\varepsilon^2/2] 上で ρ=1\rho=1、∫ac0ρ=∫c0bρ=ε2\int_a^{c_0}\rho=\int_{c_0}^b\rho=\varepsilon^2 となる関数 ρ\rho を取り(ε2/2<ε2<c0−a, b−c0\varepsilon^2/2\lt\varepsilon^2\lt c_0-a,\ b-c_0 なので取れます)、h(t)=c0+∫c0tρh(t)=c_0+\int_{c_0}^t\rho とします。hh は [a,b][a,b] から [c0−ε2,c0+ε2][c_0-\varepsilon^2,c_0+\varepsilon^2] への微分同相で、c0c_0 の近くで恒等写像、ρ≤1\rho\le1 なので ∣h(t)−c0∣≤∣t−c0∣|h(t)-c_0|\le|t-c_0| です。R ⁣:W→WεR\colon W\to W_\varepsilon を、R(w)=R(w)=「ww の軌道の上で f=h(f(w))f=h(f(w)) となる点」で定めます。f(w)>c0f(w)\gt c_0 のとき h(f(w))>c0h(f(w))\gt c_0 で、ww の軌道を負の向きにたどると pp に収束するか M0M_0 に達するかなので、c0c_0 より大きく f(w)f(w) 以下の値はすべて取ります。f(w)<c0f(w)\lt c_0 のときも同様です。∣f(w)−c0∣≤ε2/2|f(w)-c_0|\le\varepsilon^2/2 では R(w)=wR(w)=w なので、RR は pp の近くで恒等写像、それ以外では流れを測り直したもので、滑らかです。h−1h^{-1} から同じように作った写像が逆を与えるので RR は微分同相で、M0M_0 を M−M_- に軌道に沿って写します。この微分同相 r=R∣M0r=R|_{M_0} で φ\varphi を引き戻した φ1=r−1∘φ\varphi_1=r^{-1}\circ\varphi について、(z,c)↦(r(z),c)(z,c)\mapsto(r(z),c) と LλL_\lambda 上の恒等写像は微分同相 ω(M0,φ1)→ω(M−,φ)\omega(M_0,\varphi_1)\to\omega(M_-,\varphi) を定めます。κ\kappa をこれと kk と R−1R^{-1} の合成とします。

芯と余芯。 kk は {y=0}∩Lλ\{y=0\}\cap L_\lambda をチャートの {y=0}\{y=0\} の部分に写します。これは 補題 2.6 の 2 と、{y=0}\{y=0\} 上の点の軌道 (e−sx,0)(e^{-s}x,0) が pp に収束することから、WεW_\varepsilon の中で pp に収束する軌道の全体と pp の和です。RR は軌道を保つので、WW でも同じです。余芯も同様です。

接着写像と κ\kappa の形。 r(z)r(z) は zz の軌道の上の点なので、w∈M−w\in M_- に対し r−1(w)r^{-1}(w) は ww の軌道を負の向きにたどって M0M_0 に達した点 π(w)\pi(w) で、φ1=π∘φ\varphi_1=\pi\circ\varphi は主張の式です。ε\varepsilon は、はじめの 2 つの条件(球が g(U)g(U) に含まれることと a<c0−ε2a\lt c_0-\varepsilon^2、c0+ε2<bc_0+\varepsilon^2\lt b)を満たす限り任意でした。積の部分の点 (z,c)(z,c) は、(r(z),c)(r(z),c)、k(r(z),c)k(r(z),c)(r(z)r(z) の軌道、すなわち zz の軌道の上の点)、R−1R^{-1} によるその像(RR は軌道を保つ)へと順に写るので、κ(z,c)\kappa(z,c) は zz の軌道の上にあります。f(κ(z,c))=h−1(c0+ε2c)f(\kappa(z,c))=h^{-1}(c_0+\varepsilon^2c) は c∈[−1,1]c\in[-1,1] について aa から bb までを動くので、線分 {z}×[−1,1]\{z\}\times[-1,1] の像は、zz の軌道のうち WW に含まれる部分の全体です。

M0×[0,1]M_0\times[0,1] への接着として。 a<a′<c0a\lt a'\lt c_0 となる a′a' を取り、N=f−1(a′)N=f^{-1}(a')、W−=f−1([a,a′])W_-=f^{-1}([a,a'])、W+=f−1([a′,b])W_+=f^{-1}([a',b]) とします。W−W_- は臨界点の無い同境なので、定理 2.7 により M0M_0 の上で (z,0)↦z(z,0)\mapsto z となる同境の微分同相 G0 ⁣:M0×[0,1]→W−G_0\colon M_0\times[0,1]\to W_- があります(区間は 1 次式で付け替えます)。W+W_+ にここまでの結果を使うと、接着写像 ψi\psi_i と NN の上で恒等写像の微分同相 κ+ ⁣:ω(N;ψ1,…,ψk)→W+\kappa_+\colon\omega(N;\psi_1,\dots,\psi_k)\to W_+ があります。φi′=(G0∣M0×{1})−1∘ψi\varphi_i'=(G_0|_{M_0\times\{1\}})^{-1}\circ\psi_i とおくと、補題 3.5 の 3 により M0×[0,1]M_0\times[0,1] に φi′\varphi_i' でハンドルを同時に接着したものは W−∪Nω(N;ψ1,…,ψk)W_-\cup_N\omega(N;\psi_1,\dots,\psi_k) に、同補題の 1(恒等写像と κ+\kappa_+ に使う)によりこれは W−∪NW+W_-\cup_NW_+ に、同補題の 2 によりこれは WW に微分同相です。

定理 3.7(ハンドル分解の存在)✓

任意の同境 W ⁣:M0⇝M1W\colon M_0\rightsquigarrow M_1 はハンドル分解をもつ。とくにコンパクトな閉多様体は、有限個のハンドルを順に接着して得られる。Morse 関数 ff の指数 λ\lambda の臨界点 1 つに、指数 λ\lambda のハンドルが 1 つ対応する。

証明(定理 3.7)

命題 2.3 により、臨界値 c1<⋯<ckc_1\lt\dots\lt c_k が互いに異なる Morse 関数 f ⁣:W→[0,1]f\colon W\to[0,1] があります。k=0k=0 のときは 定理 2.7 により W≅M0×[0,1]W\cong M_0\times[0,1] です。k≥1k\ge1 のとき、0<a0<c1<a1<c2<⋯<ck<ak=10\lt a_0\lt c_1\lt a_1\lt c_2\lt\dots\lt c_k\lt a_k=1 となる実数を取ると、aia_i は正則値です。Ni=f−1(ai)N_i=f^{-1}(a_i)、W0=f−1([0,a0])W_0=f^{-1}([0,a_0])、Wi=f−1([ai−1,ai])W_i=f^{-1}([a_{i-1},a_i])(i≥1i\ge1)、W(i)=f−1([0,ai])W^{(i)}=f^{-1}([0,a_i]) とおきます。W0W_0 は臨界点の無い同境 M0⇝N0M_0\rightsquigarrow N_0 なので、定理 2.7 により M0M_0 の上で (z,0)↦z(z,0)\mapsto z となる同境の微分同相 G0 ⁣:M0×[0,1]→W0=W(0)G_0\colon M_0\times[0,1]\to W_0=W^{(0)} があります(区間は 1 次式で付け替えます)。WiW_i(i≥1i\ge1)は Ni−1N_{i-1} から NiN_i への同境で、f∣Wif|_{W_i} は臨界点を 1 つだけもつ Morse 関数なので、補題 2.5 と 定理 3.6 により、Ni−1N_{i-1} の上で恒等写像の微分同相 κi ⁣:ω(Ni−1,φi)→Wi\kappa_i\colon\omega(N_{i-1},\varphi_i)\to W_i があります。

Y0=M0×[0,1]Y_0=M_0\times[0,1] とし、i≥1i\ge1 について順に、同境の微分同相 Gi−1 ⁣:Yi−1→W(i−1)G_{i-1}\colon Y_{i-1}\to W^{(i-1)} から φi′=(Gi−1∣∂+Yi−1)−1∘φi\varphi_i'=(G_{i-1}|_{\partial_+Y_{i-1}})^{-1}\circ\varphi_i(∂+\partial_+ は上の境界)と Yi=Yi−1∪φi′hλiY_i=Y_{i-1}\cup_{\varphi_i'}h^{\lambda_i} を定めます。補題 3.5 の 3 により YiY_i は W(i−1)∪Ni−1ω(Ni−1,φi)W^{(i-1)}\cup_{N_{i-1}}\omega(N_{i-1},\varphi_i) に、同補題の 1(κi\kappa_i と恒等写像に使う)によりこれは W(i−1)∪Ni−1WiW^{(i-1)}\cup_{N_{i-1}}W_i に、同補題の 2 によりこれは W(i)W^{(i)} に、それぞれ下の境界の近傍で Gi−1G_{i-1} に一致する形で微分同相です。合成を GiG_i とします。YkY_k は M0×[0,1]M_0\times[0,1] にハンドルを kk 個順に接着したもので、Gk ⁣:Yk→W(k)=WG_k\colon Y_k\to W^{(k)}=W が求めるハンドル分解です。

命題 3.8(ハンドル体は接着写像のイソトピー類で決まる)✓

MM を閉 (n−1)(n-1) 次元多様体、φ0,φ1 ⁣:Sλ−1×Dn−λ→M\varphi_0,\varphi_1\colon S^{\lambda-1}\times D^{n-\lambda}\to M をイソトピックな接着写像とする。

  1. MM の微分同相 Ψ1\Psi_1 で、恒等写像にイソトピックかつ Ψ1∘φ0=φ1\Psi_1\circ\varphi_0=\varphi_1 となるものがあり、(z,c)↦(Ψ1(z),c)(z,c)\mapsto(\Psi_1(z),c) と LλL_\lambda 上の恒等写像は微分同相 ω(M,φ0)→ω(M,φ1)\omega(M,\varphi_0)\to\omega(M,\varphi_1) を定める。
  2. 同境 W ⁣:M0⇝MW\colon M_0\rightsquigarrow M に対し、W∪φ0hλW\cup_{\varphi_0}h^\lambda と W∪φ1hλW\cup_{\varphi_1}h^\lambda は、M0M_0 の近くで恒等写像となる微分同相で移り合う。

像が互いに交わらない有限個の接着写像の組 (φ0,i)i(\varphi_{0,i})_i、(φ1,i)i(\varphi_{1,i})_i が、各時刻で像が互いに交わらない埋め込みの族 (φt,i)i(\varphi_{t,i})_i で結ばれるとき(組としてイソトピック)も、ω(M;⋅)\omega(M;\cdot) と同時の接着について 1・2 が成り立つ。

証明(命題 3.8)

1。 イソトピー拡張定理(定理 5.2[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張]。Z=Sλ−1×D˚1+ϵn−λZ=S^{\lambda-1}\times\mathring D^{n-\lambda}_{1+\epsilon}、K=Sλ−1×Dn−λK=S^{\lambda-1}\times D^{n-\lambda} として使う)により、MM のアンビエントイソトピー Ψt\Psi_t(Ψ0=id\Psi_0=\mathrm{id})で Ψt∘φ0=φt\Psi_t\circ\varphi_0=\varphi_t となるものがあります。(z,c)↦(Ψ1(z),c)(z,c)\mapsto(\Psi_1(z),c) は (φ0(u,θv),c)(\varphi_0(u,\theta v),c) を (φ1(u,θv),c)(\varphi_1(u,\theta v),c) に写すので、LλL_\lambda 上の恒等写像と合わせて ω\omega の同一視と両立し、逆は Ψ1−1\Psi_1^{-1} から同じように作れます。

2。 MM のカラー c ⁣:M×[0,1)→Wc\colon M\times[0,1)\to W(定理 4.2[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張])と、[0,13][0,\tfrac13] 上で 11、[23,1)[\tfrac23,1) 上で 00 の滑らかな関数 τ\tau を取り、WW の微分同相 Θ\Theta を、カラーの上で c(z,t)↦c(Ψτ(t)(z),t)c(z,t)\mapsto c(\Psi_{\tau(t)}(z),t)、その外で恒等写像と定めます。カラーの像のうち t≤23t\le\tfrac23 の部分はコンパクトで M0M_0 と交わらないので、Θ\Theta は M0M_0 の近傍で恒等写像です。Θ\Theta は MM の上で Ψ1\Psi_1 で、1 の微分同相も MM の上で Ψ1\Psi_1 なので、補題 3.5 の 1(G1=ΘG_1=\Theta、G2G_2 は 1 の微分同相、貼り合わせの写像はどちらも MM の恒等写像)により、微分同相 W∪Mω(M,φ0)→W∪Mω(M,φ1)W\cup_M\omega(M,\varphi_0)\to W\cup_M\omega(M,\varphi_1) で、M0M_0 の近傍で Θ\Theta、すなわち恒等写像に一致するものが得られます(構造がカラーによらないことは 系 7.4[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] の 2)。

組の場合。 ZZ を Sλi−1×D˚1+ϵn−λiS^{\lambda_i-1}\times\mathring D^{n-\lambda_i}_{1+\epsilon} たちの非交和、KK を Sλi−1×Dn−λiS^{\lambda_i-1}\times D^{n-\lambda_i} たちの非交和とします。各時刻で像が互いに交わらないので、族 (φt,i)i(\varphi_{t,i})_i は ZZ から MM へのイソトピーで、同じ定理によりアンビエントイソトピー Ψt\Psi_t で Ψt∘φ0,i=φt,i\Psi_t\circ\varphi_{0,i}=\varphi_{t,i}(すべての ii)となるものがあります。あとは上と同じです(LλiL_{\lambda_i} のそれぞれで恒等写像とします)。

定理 3.9(手術と同境)✓

MM、M′M' を閉 (n−1)(n-1) 次元多様体とする。

  1. M′M' が MM から 1 回の手術で得られる(ある接着写像 φ\varphi で M′≅χ(M,φ)M'\cong\chi(M,\varphi))ことと、同境 W ⁣:M⇝M′W\colon M\rightsquigarrow M' で臨界点がちょうど 1 つの Morse 関数をもつものが存在することは同値である。
  2. MM と M′M' の間に同境が存在することと、M′M' が MM から有限回の手術で得られることは同値である。
証明(定理 3.9)

1。 M′≅χ(M,φ)M'\cong\chi(M,\varphi) なら、補題 3.3 により ω(M,φ)\omega(M,\varphi) が求める同境です。逆に、臨界点が 1 つの Morse 関数をもつ同境 W ⁣:M⇝M′W\colon M\rightsquigarrow M' があれば、定理 3.6 により M′≅χ(M,φ)M'\cong\chi(M,\varphi) です。

2。 同境 W ⁣:M⇝M′W\colon M\rightsquigarrow M' があれば、定理 3.7 の証明の等位面 N0,N1,…,Nk=M′N_0,N_1,\dots,N_k=M' について、N0≅MN_0\cong M(W0W_0 は積)で、1 により Ni≅χ(Ni−1,φi)N_i\cong\chi(N_{i-1},\varphi_i) です(N0N_0 を MM と同一視して接着写像を移します。臨界点が無いときは M′≅MM'\cong M です)。逆に M=N0,N1,…,Nk=M′M=N_0,N_1,\dots,N_k=M' が順に手術で得られるなら、跡 ω(Ni−1,φi) ⁣:Ni−1⇝Ni\omega(N_{i-1},\varphi_i)\colon N_{i-1}\rightsquigarrow N_i を NiN_i に沿って順に貼り合わせた(系 7.4[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張])ものが MM から M′M' への同境です。k=0k=0 なら M×[0,1]M\times[0,1] を取ります。

例 3.10(球面と、積 Sp×SqS^p × S^q の手術)

Sn⊂Rn+1S^n\subset\mathbb{R}^{n+1} の高さ関数 f=xn+1f=x_{n+1} の臨界点は南極(指数 00)と北極(指数 nn)の 2 つです。対応するハンドル分解は Sn=h0∪hnS^n=h^0\cup h^n、すなわち 2 つの円板を境界で貼ったものです。

p,q≥1p,q\ge1 とし、M=Sp×SqM=S^p\times S^q に φ ⁣:Sp×Dq→Sp×Sq\varphi\colon S^p\times D^q\to S^p\times S^q(DqD^q を SqS^q の下半球とみなす包含)で手術をします(λ=p+1\lambda=p+1、n=p+q+1n=p+q+1)。χ(M,φ)\chi(M,\varphi) は Sp×D+qS^p\times D^q_+(上半球の側)と Dp+1×Sq−1D^{p+1}\times S^{q-1} を共通の境界 Sp×Sq−1S^p\times S^{q-1} で貼ったもので、これは ∂(Dp+1×Dq)=Sp×Dq∪Dp+1×Sq−1\partial(D^{p+1}\times D^q)=S^p\times D^q\cup D^{p+1}\times S^{q-1} です。Dp+1×DqD^{p+1}\times D^q は角をならせば Dp+q+1D^{p+q+1} なので(角の平滑化は 注意 7.3[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] の (c)。Rikai では証明していない事実で、この例の結論はそれに依ります)、χ(M,φ)≅Sp+q\chi(M,\varphi)\cong S^{p+q} です。定理 3.9 により Sp×SqS^p\times S^q は Sp+qS^{p+q} と同境で、Sp+q=∂Dp+q+1S^{p+q}=\partial D^{p+q+1} に円板をかぶせれば、Sp×SqS^p\times S^q がコンパクトな多様体(Dp+1×SqD^{p+1}\times S^q と微分同相なもの)の境界であることと整合します。

f ⁣:W→[a,b]f\colon W\to[a,b] を Morse 関数、ξ\xi を勾配状ベクトル場、pp を指数 λ\lambda の臨界点とします。正則値 m>f(p)m\gt f(p) について、f(p)f(p) と mm の間に臨界値が無いとき、pp の上昇円板と等位面 V=f−1(m)V=f^{-1}(m) の交わりを pp の上昇球面といいます。定理 3.6 を f(p)f(p) のまわりの帯に使い、その上の臨界点の無い部分を 定理 2.7 の流れで運ぶと、これは VV に埋め込まれた (n−λ−1)(n-\lambda-1) 次元球面(ベルト球面の像)です。同様に、m<f(p)m\lt f(p) の側では下降円板と VV の交わりである下降球面が、埋め込まれた (λ−1)(\lambda-1) 次元球面(接着球面の像)になります。

定理 4.1(ハンドルの並べ替え)✓

f ⁣:W→[a,b]f\colon W\to[a,b] を同境 WW の上の Morse 関数、ξ\xi を勾配状ベクトル場とし、ff の臨界点の集合が P⊔QP\sqcup Q と分かれ、f(P)={c}f(P)=\{c\}、f(Q)={c′}f(Q)=\{c'\}、c≤c′c\le c' であるとする。

  1. PP の点から QQ の点へ向かう ξ\xi の軌道が無いとする(c=c′c=c' ならつねに成り立つ)。このとき任意の α,α′∈(a,b)\alpha,\alpha'\in(a,b) に対し、WW 上の Morse 関数 g ⁣:W→[a,b]g\colon W\to[a,b] で、ξ\xi が gg の勾配状ベクトル場でもあり、臨界点と指数が ff と同じで、g(P)={α}g(P)=\{\alpha\}、g(Q)={α′}g(Q)=\{\alpha'\}、∂W\partial W の近傍で g=fg=f となるものが存在する。gg は、PP の近傍で g=f+α−cg=f+\alpha-c、QQ の近傍で g=f+α′−c′g=f+\alpha'-c' となるように取れる。
  2. c<c′c\lt c' で、PP のどの点の指数も QQ のどの点の指数以上であるとする。このとき ff の勾配状ベクトル場 ξ′\xi' で、f−1((c,c′))f^{-1}((c,c')) のあるコンパクト部分集合の外で ξ\xi と一致し、PP の点から QQ の点へ向かう軌道をもたないものが存在する。
  3. したがって、任意の同境 WW(nn 次元)の上に、(a) 臨界値が互いに異なり、臨界値の小さい順に臨界点を並べると指数が広義単調増加になる Morse 関数と、(b) 各臨界点 pp で f(p)=(p の指数)f(p)=(p\text{ の指数}) となる Morse 関数 f ⁣:W→[−12,n+12]f\colon W\to[-\tfrac12,n+\tfrac12](自己指数的な Morse 関数)が存在する。臨界点の個数は指数ごとに、もとの Morse 関数と同じに取れる。

ハンドルの言葉では、2 は「後から貼る指数 λ′\lambda' のハンドルの接着球面を、先に貼った指数 λ≥λ′\lambda\ge\lambda' のハンドルのベルト球面から外せる」、1 は「そうなっていれば 2 組のハンドルは互いに無関係に貼られていて、順序を自由に変えられる」という主張です。

証明(定理 4.1)

2 の証明。 c<m′<m<c′c\lt m'\lt m\lt c' を取り、V=f−1(m)V=f^{-1}(m) とします。PP の点の上昇球面の和を SP⊂VS_P\subset V、QQ の点の下降球面の和を SQ⊂VS_Q\subset V とします。どちらも VV のコンパクトな部分多様体で、p∈Pp\in P(指数 λ\lambda)と q∈Qq\in Q(指数 λ′≤λ\lambda'\le\lambda)について

dim⁡(上昇球面)+dim⁡(下降球面)=(n−λ−1)+(λ′−1)≤n−2<n−1=dim⁡V\dim(\text{上昇球面})+\dim(\text{下降球面})=(n-\lambda-1)+(\lambda'-1)\le n-2\lt n-1=\dim V

です。一般の位置の定理(系 9.5[横断性])を成分ごとに順に使うと、包含写像 i ⁣:SP→Vi\colon S_P\to V をいくらでも小さく動かして、像が SQS_Q と交わらない写像 i′i' にできます(すでに外した成分とは、コンパクト集合どうしの距離が正なので、十分小さく動かす限り交わりません)。この写像 i′i' は、ii を含む多径数の滑らかな族(定理 9.1[横断性] の証明の族)の中で、径数を初めの値のいくらでも近くに選んで得られます。埋め込みであることは多径数の族について安定なので(系 5.4[横断性])、径数が十分近ければ、初めの値と結ぶ線分の上の写像はすべて埋め込みで、ii から i′i' へのイソトピーが得られます。イソトピー拡張定理(定理 5.2[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張])により、VV のアンビエントイソトピー hth_t(h0=idh_0=\mathrm{id})で h1(SP)∩SQ=∅h_1(S_P)\cap S_Q=\varnothing となるものがあります。

ξ^=ξ/(ξf)\hat\xi=\xi/(\xi f) の流れで、微分同相 Φ ⁣:V×[m′,m]→f−1([m′,m])\Phi\colon V\times[m',m]\to f^{-1}([m',m])、f(Φ(z,t))=tf(\Phi(z,t))=t、Φ(z,m)=z\Phi(z,m)=z を作ります(定理 2.7 と同じ構成)。Φ\Phi で ξ^\hat\xi は ∂/∂t\partial/\partial t に対応します。m′m' の近くで 00、mm の近くで 11 の滑らかな関数 τ ⁣:[m′,m]→[0,1]\tau\colon[m',m]\to[0,1] を取り、f−1([m′,m])f^{-1}([m',m]) の微分同相 Θ\Theta を Θ(Φ(z,t))=Φ(hτ(t)(z),t)\Theta(\Phi(z,t))=\Phi(h_{\tau(t)}(z),t) で定めます。Θ\Theta は ff を保ち、m′m' の近くで恒等写像、mm の近くで Φ(z,t)↦Φ(h1(z),t)\Phi(z,t)\mapsto\Phi(h_1(z),t) です。

ξ′={(ξf)⋅Θ∗ξ^(f−1([m′,m]) 上)ξ(それ以外)\xi'=\begin{cases}(\xi f)\cdot\Theta_*\hat\xi&(f^{-1}([m',m])\text{ 上})\\ \xi&(\text{それ以外})\end{cases}

とおきます。m′m' と mm の近くでは Θ\Theta が ∂/∂t\partial/\partial t を保つので Θ∗ξ^=ξ^\Theta_*\hat\xi=\hat\xi、ξ′=ξ\xi'=\xi となり、ξ′\xi' は滑らかです。(Θ∗ξ^)f=ξ^(f∘Θ)∘Θ−1=1(\Theta_*\hat\xi)f=\hat\xi(f\circ\Theta)\circ\Theta^{-1}=1 なので ξ′f=ξf>0\xi'f=\xi f\gt0 で、臨界点の近くでは ξ′=ξ\xi'=\xi なので、ξ′\xi' は ff の勾配状ベクトル場です。帯の中の ξ′\xi' の軌道は ξ\xi の軌道の Θ\Theta による像なので、PP から出た軌道が VV に達する点の全体は h1(SP)h_1(S_P) です。mm より上では ξ′=ξ\xi'=\xi なので、QQ に収束する軌道が VV を通る点の全体は SQS_Q のままです。h1(SP)∩SQ=∅h_1(S_P)\cap S_Q=\varnothing なので、PP から QQ への軌道はありません。

1 の証明。 c<c′c\lt c' の場合を書きます(c=c′c=c' のときは、下の議論で QQ も PP と同じ扱いになり、より簡単です)。c<m<c′c\lt m\lt c' を取り、SP,SQ⊂V=f−1(m)S_P,S_Q\subset V=f^{-1}(m) を上と同じに定めると、仮定から SP∩SQ=∅S_P\cap S_Q=\varnothing です。

下の境界に落とす。 補題 2.6 の 3 の開集合 D0D_0 と π ⁣:D0→M0\pi\colon D_0\to M_0 を使います。AP⊂M0A_P\subset M_0 を、PP の点に収束する軌道の出発点の全体とします。cc より下に臨界点は無いので、APA_P は PP の点の下降球面を流れの微分同相で M0M_0 まで運んだもので、コンパクトです。AQ⊂M0A_Q\subset M_0 を、QQ の点に収束する軌道の出発点の全体とします。SQS_Q の点は SPS_P に入らないので、その軌道を負の向きにたどっても PP には収束せず、補題 2.6 の 1 により M0M_0 に達します。よって SQ⊂D0S_Q\subset D_0、AQ=π(SQ)A_Q=\pi(S_Q) で、AQA_Q はコンパクト集合の連続像としてコンパクトです。1 つの軌道が PP と QQ の両方に収束することはないので AP∩AQ=∅A_P\cap A_Q=\varnothing です。系 6.4[部分多様体と正則値定理] により、滑らかな μ0 ⁣:M0→[0,1]\mu_0\colon M_0\to[0,1] で、APA_P の開近傍 NPN_P 上で 00、AQA_Q の開近傍 NQN_Q 上で 11 となるものを取ります。

軌道に沿って定数の関数 μ\mu。 W∖D0W\setminus D_0 は、負の向きに PP の点に収束する軌道の点と PP の和 EPE_P、および QQ についての同様の集合 EQE_Q の非交和です。μ ⁣:W→[0,1]\mu\colon W\to[0,1] を、D0D_0 上で μ=μ0∘π\mu=\mu_0\circ\pi、EPE_P 上で 00、EQE_Q 上で 11 と定めます。D0D_0 上では滑らかなので、EPE_P の各点が「D0D_0 との交わりが π−1(NP)\pi^{-1}(N_P) に含まれる開近傍」をもつこと(EQE_Q と NQN_Q についても同様)を示せば、μ\mu は EPE_P の近傍で恒等的に 00、EQE_Q の近傍で恒等的に 11 となり、WW 全体で滑らかです。

まず p∈Pp\in P とします。そうでないとすると、D0D_0 の点列 wk→pw_k\to p で π(wk)∉NP\pi(w_k)\notin N_P となるものがあります。適合チャートで wk=(xk,yk)→(0,0)w_k=(x_k,y_k)\to(0,0) と書くと、xk=0x_k=0 なら軌道は負の向きに pp に収束してしまうので xk≠0x_k\ne0 です。δ>0\delta\gt0 を小さく固定し、軌道 (esxk,e−syk)(e^{s}x_k,e^{-s}y_k)(s≥0s\ge0 が時間を戻す向き)が等位面 f=c−δ2f=c-\delta^2 に達する点を (xk′,yk′)(x_k',y_k') とすると、∣xk′∣2−∣yk′∣2=δ2|x_k'|^2-|y_k'|^2=\delta^2、∣xk′∣∣yk′∣=∣xk∣∣yk∣→0|x_k'||y_k'|=|x_k||y_k|\to0 なので、∣xk′∣≥δ|x_k'|\ge\delta から ∣yk′∣→0|y_k'|\to0、∣xk′∣→δ|x_k'|\to\delta です。すなわち (xk′,yk′)(x_k',y_k') は pp の下降球面 {∣x∣=δ,y=0}\{|x|=\delta,y=0\} に近づきます。等位面 f=c−δ2f=c-\delta^2 から M0M_0 への流れは微分同相で、下降球面を APA_P の中へ写すので、π(wk)\pi(w_k) はコンパクト集合 APA_P に近づき、十分大きい kk で NPN_P に入ります。これは矛盾です。よって pp は求める開近傍 OpO_p をもちます。EPE_P の一般の点 ww は、負の向きに p∈Pp\in P に収束するので、ある T>0T\gt0 で θ−T(w)∈Op\theta_{-T}(w)\in O_p です。ww の軌道の θ−t(w)\theta_{-t}(w)(0≤t≤T0\le t\le T)の部分はコンパクトで M0M_0 と交わらないので、流れの連続性から、ww の開近傍 O⊂θT(Op)∩WO\subset\theta_T(O_p)\cap W を、w′∈Ow'\in O なら θ−t(w′)\theta_{-t}(w')(0≤t≤T0\le t\le T)が M0M_0 に達しないように取れます。w′∈O∩D0w'\in O\cap D_0 なら θ−T(w′)∈Op∩D0\theta_{-T}(w')\in O_p\cap D_0 は w′w' と同じ軌道の上にあるので、π(w′)=π(θ−T(w′))∈NP\pi(w')=\pi(\theta_{-T}(w'))\in N_P です。q∈Qq\in Q についても、qq に近い D0D_0 の点から時間を戻した軌道は qq の下降球面の近くを通って VV の SQS_Q の近くに達し、SQS_Q は D0D_0 の開集合 π−1(NQ)\pi^{-1}(N_Q) に含まれるコンパクト集合なので、同じ議論が成り立ちます。

新しい関数。 [a,b][a,b] の向きを保つ微分同相 G0,G1G_0,G_1 を、端点の近くで恒等写像、cc の近くで G0(t)=t+α−cG_0(t)=t+\alpha-c、c′c' の近くで G1(t)=t+α′−c′G_1(t)=t+\alpha'-c' となるように取ります(α,α′∈(a,b)\alpha,\alpha'\in(a,b) なので、正の滑らかな関数を積分して作れます)。G(t,s)=(1−s)G0(t)+sG1(t)G(t,s)=(1-s)G_0(t)+sG_1(t) とし、

g=G(f,μ)g=G(f,\mu)

とおきます。∂G/∂t>0\partial G/\partial t\gt0 で、μ\mu は軌道に沿って定数(ξμ=0\xi\mu=0)なので、臨界点以外で

ξg=∂G∂t(f,μ)⋅ξf+∂G∂s(f,μ)⋅ξμ=∂G∂t(f,μ)⋅ξf>0\xi g=\frac{\partial G}{\partial t}(f,\mu)\cdot\xi f+\frac{\partial G}{\partial s}(f,\mu)\cdot\xi\mu=\frac{\partial G}{\partial t}(f,\mu)\cdot\xi f\gt0

です。よって gg は新しい臨界点をもちません。PP の近傍では μ=0\mu=0 で g=f+α−cg=f+\alpha-c、QQ の近傍では μ=1\mu=1 で g=f+α′−c′g=f+\alpha'-c' なので、適合チャートはそのまま gg の適合チャートで、臨界点は非退化、指数は同じ、g(P)={α}g(P)=\{\alpha\}、g(Q)={α′}g(Q)=\{\alpha'\} です。∂W\partial W の近傍では ff が aa か bb に近く G(t,s)=tG(t,s)=t なので g=fg=f です。

3 の証明。 命題 2.3 により臨界値 c1<⋯<ckc_1\lt\dots\lt c_k が互いに異なる Morse 関数 ff があり、対応する臨界点を p1,…,pkp_1,\dots,p_k とします。ある ii で pip_i の指数が pi+1p_{i+1} の指数より大きいとします。ci−1<a′<cic_{i-1}\lt a'\lt c_i、ci+1<b′<ci+2c_{i+1}\lt b'\lt c_{i+2} となる正則値を取ると、f−1([a′,b′])f^{-1}([a',b']) は臨界点が pi,pi+1p_i,p_{i+1} だけの同境で、2 と 1 を P={pi}P=\{p_i\}、Q={pi+1}Q=\{p_{i+1}\} に使えば、境界の近くで ff と一致し g(pi)>g(pi+1)g(p_i)\gt g(p_{i+1}) となる Morse 関数 gg が得られます。これを外側の ff とつなぐと、指数の逆転している対が 1 つ減った Morse 関数になります。逆転の個数は有限なので、有限回で (a) の形になります。

(a) の関数で、同じ指数の臨界点の臨界値を 1 つにまとめます。指数 λ\lambda の臨界点の一部 PP がすでに同じ臨界値にあり、次に低い臨界値の臨界点 qq も指数 λ\lambda なら、P∪{q}P\cup\{q\} だけを含む帯に 2 と 1 を α=α′\alpha=\alpha' で使います。これを繰り返すと、臨界値が指数ごとに 1 つの値 dλd_\lambda で、λ<λ′\lambda\lt\lambda' なら dλ<dλ′d_\lambda\lt d_{\lambda'} となります。最後に、各 dλd_\lambda の近くで t↦t−dλ+λt\mapsto t-d_\lambda+\lambda に一致する微分同相 [a,b]→[−12,n+12][a,b]\to[-\tfrac12,n+\tfrac12] を合成します。どの操作も臨界点と指数を変えません。

5. ハンドルの消去・生成・滑らせ

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準備として、境界の一部に沿って「厚みのある板」を貼っても多様体は変わらないことを示します。

補題 5.1(境界に沿って板を貼っても変わらない)✓

XX をコンパクトな境界付き多様体、X^\hat X を 補題 2.2 の延長とし、∂X×(−1,1)⊂X^\partial X\times(-1,1)\subset\hat X をカラーの座標(XX の側が t≥0t\ge0)とする。滑らかな β ⁣:∂X→[0,1)\beta\colon\partial X\to[0,1) に対し

Xβ=X∪{(z,t): −β(z)≤t≤0}⊂X^X_\beta=X\cup\{(z,t):\ -\beta(z)\le t\le0\}\subset\hat X

とおくと、XβX_\beta は XX に微分同相である。微分同相は、β=0\beta=0 となる開集合の上のカラーと、カラーの t≥23t\ge\tfrac23 の部分およびその外で、恒等写像に取れる。

証明(補題 5.1)

[0,1)[0,1) 上の滑らかで広義単調減少な関数 σ\sigma を、00 の近くで 11、t≥23t\ge\tfrac23 で 00 となるように取ります。カラーの上で (z,t)↦(z, t−β(z)σ(t))(z,t)\mapsto(z,\,t-\beta(z)\sigma(t))、その外で恒等写像と定めます。tt についての微分は 1−β(z)σ′(t)≥11-\beta(z)\sigma'(t)\ge1 なので、各 zz について [0,1)[0,1) から [−β(z),1)[-\beta(z),1) への微分同相で、t≥23t\ge\tfrac23 では恒等写像です。全体として XX から XβX_\beta への全単射で、Jacobi 行列は三角形で対角成分が正なので、逆関数定理により微分同相です。

E⊂∂XE\subset\partial X をコンパクトな余次元 00 の部分多様体(境界付き)とし、β\beta を EE の内部でだけ正に取ると、XβX_\beta は XX に板 E×[0,1]E\times[0,1] を E×0=EE\times0=E で貼って角をならしたものです。以下「板を貼る」と言えばこの XβX_\beta を指します。

定理 5.2(ハンドルの消去)※

f ⁣:W→[a,b]f\colon W\to[a,b] を同境 W ⁣:M0⇝M1W\colon M_0\rightsquigarrow M_1 の上の Morse 関数、ξ\xi を勾配状ベクトル場とし、ff の臨界点が指数 λ\lambda の pp と指数 λ+1\lambda+1 の qq のちょうど 2 つで、f(p)<m<f(q)f(p)\lt m\lt f(q) とする。V=f−1(m)V=f^{-1}(m) の中で、qq の下降球面 AA(λ\lambda 次元。接着球面)と pp の上昇球面 BB(n−λ−1n-\lambda-1 次元。ベルト球面)が、ちょうど 1 点で横断的に交わるとする。このとき WW は M0×[a,b]M_0\times[a,b] に微分同相である。さらに、WW 上の臨界点をもたない Morse 関数で、∂W\partial W の近傍で ff と一致するものが存在する。

注意 5.3

定理 5.2 は主張のみで、この記事では証明しません。省略のない証明は、pp から qq への 1 本の軌道の近くで勾配状ベクトル場を標準形に直し、そこで零点の無いベクトル場に取り替えたうえで、新しいベクトル場の軌道がすべて M0M_0 から M1M_1 へ走ることを確かめるもので、J. Milnor『Lectures on the h-Cobordism Theorem』(Princeton University Press, 1965)§5(第 1 消去定理)に、1 つの節の全体をかけて書かれています。ハンドルの言葉による短い説明(下の「証明の筋」)は、角のある図形どうしの同相を「角をならせば微分同相」として使う段を含み、角の平滑化とその一意性(注意 7.3[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] の (c))を Rikai ではまだ証明していないので、証明としては完結しません。ただし λ=0\lambda=0 の場合(指数 00 と 11 の対)と、その双対(指数 n−1n-1 と nn の対)は、補題 5.6 で別の方法により省略なしに証明します。以下の 系 5.9、定理 7.5、定理 8.1 が使うのはこの場合だけなので、これらは 定理 5.2 に依存しません。一般の λ\lambda の 定理 5.2 を使うのは、例 5.10 の説明と、次々章の h 同境定理の証明の筋だけです。

証明の筋(ハンドルの言葉で)。 なぜ 2 つのハンドルが消えるのかを、3 段に分けて説明します。これは証明ではなく、とくに第 2 段は上の注意のとおり、Rikai で証明していない事実に依ります。

定理 3.6 により、f−1([a,m])≅ω(M0,φ)f^{-1}([a,m])\cong\omega(M_0,\varphi)、V≅χ(M0,φ)V\cong\chi(M_0,\varphi)、f−1([m,b])≅ω(V,ψ)f^{-1}([m,b])\cong\omega(V,\psi) で、A=ψ(Sλ×0)A=\psi(S^\lambda\times0)、BB は χ(M0,φ)\chi(M_0,\varphi) の定義に現れる D˚λ×Sn−λ−1\mathring D^\lambda\times S^{n-\lambda-1} の 0×Sn−λ−10\times S^{n-\lambda-1} です。T=D˚λ×Sn−λ−1⊂VT=\mathring D^\lambda\times S^{n-\lambda-1}\subset V は BB の開近傍で、Tr=Drλ×Sn−λ−1T_r=D^\lambda_r\times S^{n-\lambda-1}(DrD_r は半径 r<1r\lt1 の閉球)と書きます。交点を b0=(0,e)b_0=(0,e) とします。

第 1 段:交点の近くの標準形。 VV のアンビエントイソトピーで AA を動かして

A∩T1/2=D1/2λ×{e}A\cap T_{1/2}=D^\lambda_{1/2}\times\{e\}

とできることを示します。

(a) 横断性は Tb0A⊕Tb0B=Tb0VT_{b_0}A\oplus T_{b_0}B=T_{b_0}V を意味し(定理 3.3[横断性] の定義)、Tb0BT_{b_0}B は射影 pr1 ⁣:T→D˚λ\mathrm{pr}_1\colon T\to\mathring D^\lambda の微分の核なので、d(pr1∣A)b0d(\mathrm{pr}_1|_A)_{b_0} は同型です。逆関数定理により、δ>0\delta\gt0 と b0b_0 の AA での開近傍 NN で、NN が滑らかな写像 g ⁣:D˚2δ→Sn−λ−1g\colon\mathring D_{2\delta}\to S^{n-\lambda-1}(g(0)=eg(0)=e)のグラフとなるものがあります。

(b) A∖NA\setminus N はコンパクトで BB と交わらないので、δ\delta を小さく取り直せば (A∖N)∩Tδ=∅(A\setminus N)\cap T_\delta=\varnothing です(そうでなければ ∣x∣→0|x|\to0 となる A∖NA\setminus N の点列の集積点が (A∖N)∩B(A\setminus N)\cap B に入ります)。よって A∩TδA\cap T_\delta は gg の DδD_\delta 上のグラフです。

(c) ee を原点に写す Sn−λ−1S^{n-\lambda-1} のチャートを取り、ee の近くを Rn−λ−1\mathbb{R}^{n-\lambda-1} の半径 ρ\rho の球と同一視します。δ\delta をさらに小さくして DδD_\delta 上 ∣g∣<ρ/8|g|\lt\rho/8 とします。滑らかな関数 ζ ⁣:Rn−λ−1→[0,1]\zeta\colon\mathbb{R}^{n-\lambda-1}\to[0,1] を、∣y∣≤ρ/2|y|\le\rho/2 で 11、台が ∣y∣<ρ|y|\lt\rho、∣dζ∣≤4/ρ|d\zeta|\le4/\rho となるように、β ⁣:D˚λ→[0,1]\beta\colon\mathring D^\lambda\to[0,1] を ∣x∣≤δ/2|x|\le\delta/2 で 11、台が ∣x∣<δ|x|\lt\delta となるように取り、s∈[0,1]s\in[0,1] に対して

Gs(x,y)=(x, y−s β(x) ζ(y) g(x))G_s(x,y)=\bigl(x,\ y-s\,\beta(x)\,\zeta(y)\,g(x)\bigr)

とおきます(チャートの外では恒等写像)。yy についての写像 y↦y−sβζ(y)gy\mapsto y-s\beta\zeta(y)g は、摂動項の微分のノルムが (4/ρ)(ρ/8)=12(4/\rho)(\rho/8)=\tfrac12 以下なので ∣ ⋅ ∣|\,\cdot\,| を 12\tfrac12 倍以上に保つ単射の局所微分同相で、コンパクト集合の外で恒等写像なので像は開かつ閉、したがって微分同相です。よって GsG_s は VV のアンビエントイソトピーで、xx 座標を保ちます。グラフの点 (x,g(x))(x,g(x)) では ζ=1\zeta=1 なので G1(x,g(x))=(x,(1−β(x))g(x))G_1(x,g(x))=(x,(1-\beta(x))g(x)) で、∣x∣≤δ/2|x|\le\delta/2 では (x,0)=(x,e)(x,0)=(x,e) です。G1G_1 は Tδ/2T_{\delta/2} とその補集合をそれぞれ保つので、G1(A)∩Tδ/2=Dδ/2×{e}G_1(A)\cap T_{\delta/2}=D_{\delta/2}\times\{e\} です。

(d) [0,1)[0,1) の微分同相 ν\nu を、00 の近くで線形、ν(δ/2)=12\nu(\delta/2)=\tfrac12、11 の近くで恒等写像となるように取り、D˚λ\mathring D^\lambda の微分同相 x↦ν(∣x∣)x/∣x∣x\mapsto\nu(|x|)x/|x| を作ります。(1−s) id+sν(1-s)\,\mathrm{id}+s\nu から同じように作った族が恒等写像とのイソトピーを与えます。これと Sn−λ−1S^{n-\lambda-1} の恒等写像の積は TT のコンパクト集合の外で恒等写像なので VV のアンビエントイソトピーで、Tδ/2T_{\delta/2} を T1/2T_{1/2} に写します。

以上のアンビエントイソトピーの終わりの微分同相を Ψ1\Psi_1 とすると、命題 3.8 により、ψ\psi を Ψ1∘ψ\Psi_1\circ\psi に替えても WW は微分同相なままです。さらに、ψ\psi は AA の管状近傍を与えていて、D1/2×{e}D_{1/2}\times\{e\} の上では D1/2×DeD_{1/2}\times D_e(DeD_e は ee を中心とする Sn−λ−1S^{n-\lambda-1} の小さい閉円板)も管状近傍なので、管状近傍の一意性(アンビエントな形。系 5.5[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張])と 命題 3.8 により、ψ(Sλ×Dn−λ−1)∩T1/2=D1/2×De\psi(S^\lambda\times D^{n-\lambda-1})\cap T_{1/2}=D_{1/2}\times D_e で、ψ\psi がそこで積の形になっているとしてかまいません(同系が与える一致は、円板を少し縮めたコンパクト集合の上で、ファイバーごとの線形同型 λ\lambda を挟んだ形です。λ\lambda は可縮な円板の上の GLGL 値の写像なので定数に変形でき、もう一度イソトピー拡張定理を使って積の形に直します。この細部はここでは省きます)。また ψ−1(D1/2×{e})\psi^{-1}(D_{1/2}\times\{e\}) は SλS^\lambda に埋め込まれた λ\lambda 次元閉円板で、円板定理(定理 6.2[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張])により SλS^\lambda の恒等写像にイソトピックな微分同相(必要なら鏡映と合成したもの)で上半球 D+λD^\lambda_+ に写せます。このような微分同相は Dλ+1D^{\lambda+1} の微分同相に延びるので、ψ−1(D1/2×{e})=D+λ\psi^{-1}(D_{1/2}\times\{e\})=D^\lambda_+ とできます。

第 2 段:2 つのハンドルの和は板。 補題 3.3 のあとで述べたとおり、f−1([a,m])f^{-1}([a,m]) は M0×[−1,1]M_0\times[-1,1] にハンドル H≈Dλ×Dn−λH\approx D^\lambda\times D^{n-\lambda} を貼ったもので、H∩V=T1/2=Dλ×Sn−λ−1H\cap V=T_{1/2}=D^\lambda\times S^{n-\lambda-1}(半径を付け替えて D1/2D_{1/2} を DλD^\lambda と書きます)です。WW はこれに hλ+1=Dλ+1×Dn−λ−1h^{\lambda+1}=D^{\lambda+1}\times D^{n-\lambda-1} を ψ\psi で貼ったものです。C=H∪hλ+1C=H\cup h^{\lambda+1}、E=C∩(M0×{1})E=C\cap(M_0\times\{1\}) とおき、対 (C,E)(C,E) が (E×[0,1],E×0)(E\times[0,1],E\times0) と同じ形であることを見ます。以下の同一視はどれも角のある図形どうしの同相で、「角をならしたあとで微分同相になる」ことはここでは証明しません。

Dλ+1D^{\lambda+1} を Dλ×[0,1]D^\lambda\times[0,1] と見て、上半球 D+λD^\lambda_+ を Dλ×0D^\lambda\times0 に、下半球 D−λD^\lambda_- を ∂Dλ×[0,1]∪Dλ×1\partial D^\lambda\times[0,1]\cup D^\lambda\times1 に対応させます。すると hλ+1=Dλ×([0,1]×De)h^{\lambda+1}=D^\lambda\times([0,1]\times D_e) で、第 1 段の標準形により、これは H=Dλ×Dn−λH=D^\lambda\times D^{n-\lambda} に Dλ×(0×De)D^\lambda\times(0\times D_e) で、DλD^\lambda の各点の上で同じように貼られています。したがって

C=Dλ×D^,D^=Dn−λ∪De([0,1]×De)C=D^\lambda\times\hat D,\qquad\hat D=D^{n-\lambda}\cup_{D_e}\bigl([0,1]\times D_e\bigr)

です。D^\hat D は円板 Dn−λD^{n-\lambda} の境界の一部 DeD_e から指を伸ばしたもので、指の先 F=1×DeF=1\times D_e について (D^,F)(\hat D,F) は (F×[0,1],F×1)(F\times[0,1],F\times1) と同じ形です。hλ+1h^{\lambda+1} が M0×{1}M_0\times\{1\} に貼られるのは ψ(D−λ×Dn−λ−1)\psi(D^\lambda_-\times D^{n-\lambda-1})、すなわち ∂Dλ×([0,1]×De)∪Dλ×F\partial D^\lambda\times([0,1]\times D_e)\cup D^\lambda\times F で、HH が貼られるのは ∂Dλ×Dn−λ\partial D^\lambda\times D^{n-\lambda} なので、

E=∂Dλ×D^ ∪ Dλ×F=F×(∂Dλ×[0,1]∪Dλ×1)E=\partial D^\lambda\times\hat D\ \cup\ D^\lambda\times F=F\times\bigl(\partial D^\lambda\times[0,1]\cup D^\lambda\times1\bigr)

です(2 つ目の等号は D^=F×[0,1]\hat D=F\times[0,1] による)。(Dλ×[0,1], ∂Dλ×[0,1]∪Dλ×1)(D^\lambda\times[0,1],\ \partial D^\lambda\times[0,1]\cup D^\lambda\times1) は (Dλ×[0,1], Dλ×1)(D^\lambda\times[0,1],\ D^\lambda\times1) と同じ形(側面と上面を合わせたものを上面に押し広げる)なので、(C,E)(C,E) は (E×[0,1],E×0)(E\times[0,1],E\times0) と同じ形です。よって WW は M0×[−1,1]M_0\times[-1,1] に板 E×[0,1]E\times[0,1] を貼ったもので、補題 5.1 により M0×[−1,1]M_0\times[-1,1] に微分同相です。

第 3 段:臨界点の無い関数。 微分同相 Φ ⁣:M0×[a,b]→W\Phi\colon M_0\times[a,b]\to W から g0=pr2∘Φ−1g_0=\mathrm{pr}_2\circ\Phi^{-1} を作ると、臨界点をもたず、g0−1(a)=M0g_0^{-1}(a)=M_0、g0−1(b)=M1g_0^{-1}(b)=M_1 です。ff と g0g_0 のそれぞれの勾配状ベクトル場の流れは、∂W\partial W のカラーで ff(または g0g_0)がカラーの座標になるものを与えます。カラーの一意性(全空間の微分同相による形。系 4.4[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張])により、WW の微分同相 Θ\Theta で g0g_0 のカラーを ff のカラーに(∂W\partial W の近くで)写すものがあり、g0∘Θ−1g_0\circ\Theta^{-1} は臨界点をもたず、∂W\partial W の近傍で ff と一致します。

注意 5.4

交点が 1 点であることは本質的で、λ\lambda 次元の AA と n−λ−1n-\lambda-1 次元の BB が符号つきで ±1\pm1 回交わっていても、幾何的に 3 点以上で交わっていれば上の議論も Milnor の証明も使えません。余分な交点を対にして消すのが Whitney の技巧で、h 同境定理の証明の中心になります。

系 5.5(ハンドルの生成)✓

M0M_0 を空でない閉 (n−1)(n-1) 次元多様体、0≤λ≤n−10\le\lambda\le n-1 とする。M0×[0,1]M_0\times[0,1] の上に、臨界点が指数 λ\lambda と λ+1\lambda+1 のちょうど 2 つで、ある小さい球の外では射影 pr2\mathrm{pr}_2 に一致する Morse 関数 M0×[0,1]→[0,1]M_0\times[0,1]\to[0,1] が存在する。指数 λ\lambda の臨界点での値は、指数 λ+1\lambda+1 の臨界点での値より小さく取れる。

証明(系 5.5)

Rn=R×Rλ×Rn−λ−1\mathbb{R}^n=\mathbb{R}\times\mathbb{R}^\lambda\times\mathbb{R}^{n-\lambda-1} の座標を (t,x,y)(t,x,y)、r2=t2+∣x∣2+∣y∣2r^2=t^2+|x|^2+|y|^2 とします。滑らかで広義単調減少な σ ⁣:[0,∞)→[−1,1]\sigma\colon[0,\infty)\to[-1,1] を、[0,4][0,4] 上で 11、[100,∞)[100,\infty) 上で −1-1、∣σ′∣≤132|\sigma'|\le\tfrac1{32} となるように取り(平均の傾きは 2/962/96 なので取れます)、

G(t,x,y)=t3−3t σ(r2)−∣x∣2+∣y∣2G(t,x,y)=t^3-3t\,\sigma(r^2)-|x|^2+|y|^2

とおきます。偏微分は

∂G∂t=3t2−3σ−6t2σ′,∇xG=−2x(1+3tσ′),∇yG=2y(1−3tσ′)\frac{\partial G}{\partial t}=3t^2-3\sigma-6t^2\sigma',\qquad\nabla_xG=-2x(1+3t\sigma'),\qquad\nabla_yG=2y(1-3t\sigma')

です。σ′≠0\sigma'\ne0 となるのは r≤10r\le10 の範囲だけで、そこでは ∣3tσ′∣≤30/32<1|3t\sigma'|\le30/32\lt1 なので、臨界点では x=0x=0、y=0y=0、したがって r2=t2r^2=t^2 です。t2≤4t^2\le4 では σ=1\sigma=1、σ′=0\sigma'=0 で ∂G/∂t=3t2−3\partial G/\partial t=3t^2-3、これは t=±1t=\pm1 で 00 です。t2≥4t^2\ge4 では σ≤1\sigma\le1、σ′≤0\sigma'\le0 なので ∂G/∂t≥3t2−3≥9>0\partial G/\partial t\ge3t^2-3\ge9\gt0 です。よって臨界点は (±1,0,0)(\pm1,0,0) の 2 つで、そこでの Hessian は diag⁡(±6,−2,…,−2,2,…,2)\operatorname{diag}(\pm6,-2,\dots,-2,2,\dots,2)(−2-2 が λ\lambda 個)なので非退化、指数は t=1t=1 で λ\lambda、t=−1t=-1 で λ+1\lambda+1 です。

r≥10r\ge10 では G=G∞:=t3+3t−∣x∣2+∣y∣2G=G_\infty:=t^3+3t-|x|^2+|y|^2 です。Ξ(t,x,y)=(G∞(t,x,y),x,y)\Xi(t,x,y)=(G_\infty(t,x,y),x,y) は、t↦t3+3tt\mapsto t^3+3t が R\mathbb{R} の微分同相なので Rn\mathbb{R}^n の微分同相で、G∞∘Ξ−1G_\infty\circ\Xi^{-1} は第 1 座標です。よって G∘Ξ−1G\circ\Xi^{-1} は、コンパクト集合 K=Ξ({r≤10})K=\Xi(\{r\le10\}) の外で第 1 座標に一致し、臨界点が指数 λ\lambda、λ+1\lambda+1 の 2 つだけの関数です。ε>0\varepsilon\gt0 に対し Gε(z)=ε (G∘Ξ−1)(z/ε)G_\varepsilon(z)=\varepsilon\,(G\circ\Xi^{-1})(z/\varepsilon) も同じ性質をもち、εK\varepsilon K の外で第 1 座標に一致します。M0×(0,1)M_0\times(0,1) の点のまわりに、pr2\mathrm{pr}_2 が第 1 座標に定数を足したものになるチャートを取り、εK\varepsilon K がチャートに入るように ε\varepsilon を小さくして、チャートの中で pr2\mathrm{pr}_2 を Gε+定数G_\varepsilon+\text{定数} に取り替えます。εK\varepsilon K の上で ∣Gε∣≤εmax⁡K∣G∘Ξ−1∣|G_\varepsilon|\le\varepsilon\max_K|G\circ\Xi^{-1}| なので、ε\varepsilon をさらに小さくすれば、取り替えた関数の値は εK\varepsilon K の上で (0,1)(0,1) に入り、M0×{0}M_0\times\{0\}、M0×{1}M_0\times\{1\} がそれぞれ値 00、11 の逆像のままです。臨界値を比べます。G(1,0,0)=1−3=−2G(1,0,0)=1-3=-2、G(−1,0,0)=−1+3=2G(-1,0,0)=-1+3=2 で、Ξ−1\Xi^{-1} との合成は値を変えず、ε>0\varepsilon\gt0 を掛けて定数を足しても大小は変わらないので、指数 λ\lambda の臨界点での値のほうが小さいです。

これを使って、指数 00 と 11 の対の場合に、消去を省略なしに証明します。定理 5.2 の λ=0\lambda=0 の場合にあたり、0-ハンドルは 1 点を芯とするので、角のある図形を経由せずに、接着写像の取り替えだけで議論できます。

補題 5.6(指数 0 と 1 の対の消去)✓

n≥1n\ge1 とし、f ⁣:W→[a,b]f\colon W\to[a,b] を nn 次元の同境 W ⁣:M0⇝M1W\colon M_0\rightsquigarrow M_1 の上の Morse 関数、ξ\xi を勾配状ベクトル場とする。ff の臨界点が指数 00 の pp と指数 11 の qq のちょうど 2 つで、正の向きに qq に収束する 2 本の軌道のうち、ちょうど 1 本が負の向きに pp に収束するとする。このとき、

  1. WW 上の臨界点をもたない Morse 関数 g ⁣:W→[a,b]g\colon W\to[a,b] で、∂W\partial W の近傍で ff と一致するものが存在する。
  2. M0M_0 の上で (z,a)↦z(z,a)\mapsto z となる微分同相 M0×[a,b]→WM_0\times[a,b]\to W が存在する。

ff の臨界点が指数 nn と指数 n−1n-1 のちょうど 2 つで、指数 n−1n-1 の臨界点から出る 2 本の軌道のうちちょうど 1 本が指数 nn の臨界点に収束するときも、同じ結論が成り立つ。

証明(補題 5.6)

適合チャートの中で、正の向きに qq に収束する軌道は xx 軸(1 次元)の正の部分と負の部分の 2 本です(補題 2.6 の 2)。ff は軌道に沿って増えるので、これらは負の向きに qq には収束せず、補題 2.6 の 1 により pp に収束するか M0M_0 に達します。仮定から、一方が pp から、他方が M0M_0 から来ます。とくに f(p)<f(q)f(p)\lt f(q)、M0≠∅M_0\ne\varnothing です。

P=M0×[−1,1]⊔DnP=M_0\times[-1,1]\sqcup D^n とおきます。これは ω(M0,∅)\omega(M_0,\varnothing)(指数 00 の跡。L0=DnL_0=D^n)で、M0=M0×{−1}M_0=M_0\times\{-1\} から N0:=M0⊔Sn−1N_0:=M_0\sqcup S^{n-1}(M0×{1}M_0\times\{1\} を M0M_0 と同一視)への同境です。接着写像 φ ⁣:S0×Dn−1→N0\varphi\colon S^0\times D^{n-1}\to N_0 で φ({−1}×Dn−1)⊂M0\varphi(\{-1\}\times D^{n-1})\subset M_0、φ({1}×Dn−1)⊂Sn−1\varphi(\{1\}\times D^{n-1})\subset S^{n-1} となるものを橋と呼び、Y(φ)=P∪φh1Y(\varphi)=P\cup_\varphi h^1 と書きます。

第 1 段:標準的な表示。 次を示します。

(*) 同境 W′ ⁣:M0⇝M1′W'\colon M_0\rightsquigarrow M_1' の上の Morse 関数 f′f' と勾配状ベクトル場 ξ′\xi' について、臨界点が指数 00 の p′p' と指数 11 の q′q' のちょうど 2 つで f′(p′)<f′(q′)f'(p')\lt f'(q') ならば、接着写像 φ ⁣:S0×Dn−1→N0\varphi\colon S^0\times D^{n-1}\to N_0 と、M0M_0 の上で恒等写像((z,−1)↦z(z,-1)\mapsto z)の微分同相 ι ⁣:P∪φh1→W′\iota\colon P\cup_\varphi h^1\to W' で、DnD^n の中心を p′p' に写すものがある(P∪φh1P\cup_\varphi h^1 の貼り合わせの構造を定めるカラーは、下の証明のとおりに選ぶ。位相空間としての P∪φh1P\cup_\varphi h^1 はカラーによらない)。φ(±1,0)\varphi(\pm1,0) のうち Sn−1S^{n-1} に入るものの個数は、q′q' に収束する 2 本の軌道のうち p′p' から来るものの本数に等しい。

f′(p′)<m<f′(q′)f'(p')\lt m\lt f'(q') となる mm を取り、W−′=f′−1((−∞,m])W'_-=f'^{-1}((-\infty,m])、V=f′−1(m)V=f'^{-1}(m)、W+′=f′−1([m,∞))W'_+=f'^{-1}([m,\infty)) とします。定理 3.6 を W−′W'_-(臨界点は p′p' だけ、指数 00、接着写像の定義域は空)に使うと、M0M_0 の上で恒等写像の微分同相 κ− ⁣:P→W−′\kappa_-\colon P\to W'_- で、DnD^n の中心を p′p' に、DnD^n(余芯)を p′p' の上昇円板に写すものがあります。上の境界への制限を ν ⁣:N0→V\nu\colon N_0\to V とすると、ν(Sn−1)\nu(S^{n-1}) は p′p' の上昇円板と VV の交わりです。W+′W'_+(臨界点は q′q' だけ)に使うと、接着写像 ψ ⁣:S0×Dn−1→V\psi\colon S^0\times D^{n-1}\to V と VV の上で恒等写像の微分同相 κ+ ⁣:ω(V,ψ)→W+′\kappa_+\colon\omega(V,\psi)\to W'_+ で、芯を q′q' の下降円板に写すものがあります。芯の両端 ψ(±1,0)\psi(\pm1,0) は、q′q' に収束する 2 本の軌道が VV を横切る点です。φ=ν−1∘ψ\varphi=\nu^{-1}\circ\psi とおくと、φ(±1,0)∈Sn−1\varphi(\pm1,0)\in S^{n-1} となるのは、対応する軌道が p′p' の上昇円板に入る、すなわち p′p' から来るときです。補題 3.5 の 3(g=νg=\nu、AA は恒等写像)により ω(N0,φ)≅ω(V,ψ)\omega(N_0,\varphi)\cong\omega(V,\psi)(下の境界の上で ν\nu)で、これと κ+\kappa_+ の合成 κ+′ ⁣:ω(N0,φ)→W+′\kappa_+'\colon\omega(N_0,\varphi)\to W'_+ は N0N_0 の上で ν=κ−∣N0\nu=\kappa_-|_{N_0} です。補題 3.5 の 2 の証明のとおり、W′W' の構造は、W−′W'_- と W+′W'_+ を VV に沿って、流れから作ったカラーの組 (c−,c+)(c_-,c_+) で貼り合わせた構造と同じです。PP と ω(N0,φ)\omega(N_0,\varphi) のカラーとして、c−c_-、c+c_+ を κ−\kappa_-、κ+′\kappa_+' で引き戻したものを取ると、同補題の 1 の証明のとおり、ι=κ−⊔κ+′\iota=\kappa_-\sqcup\kappa_+' は、このカラーによる P∪φh1=P∪N0ω(N0,φ)P\cup_\varphi h^1=P\cup_{N_0}\omega(N_0,\varphi) から W′W' への微分同相です。ι\iota は PP の上で κ−\kappa_- なので、M0M_0 の上で恒等写像で、DnD^n の中心を p′p' に写します。これで (*) が示されました。ほかのカラーによる構造は、これと微分同相です(系 7.4[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] の 2。その微分同相は境界の近傍で恒等写像)。以下、Y(φ)Y(\varphi) の微分同相類だけを問題にするときはカラーを指定しません。

(*) を (W,f,ξ)(W,f,\xi) に使います。足は M0M_0 と Sn−1S^{n-1} に 1 つずつあります。φ(−1,0)∈Sn−1\varphi(-1,0)\in S^{n-1} のときは、補題 3.5 の 3 を A=(−1,I)A=(-1,I)、G=idPG=\mathrm{id}_P で使って φ\varphi を φ∘(A1×I)\varphi\circ(A_1\times I) に替えれば、φ\varphi は橋で、W≅Y(φ)W\cong Y(\varphi) です。φ(−1,0)\varphi(-1,0) を含む M0M_0 の連結成分を CC とします。

第 2 段:橋の足が同じ成分にあれば同じ多様体。 φ\varphi、φ′\varphi' を橋とし、φ(−1,0)\varphi(-1,0) と φ′(−1,0)\varphi'(-1,0) が M0M_0 の同じ連結成分 CC にあるとします。同境の微分同相 Y(φ)→Y(φ′)Y(\varphi)\to Y(\varphi') を作ります。補題 3.5 の 3 により、同境 PP の微分同相 GG と A=(1,A2)A=(1,A_2)(A2∈O(n−1)A_2\in O(n-1))で φ′=G∣N0∘φ∘(1×A2)−1\varphi'=G|_{N_0}\circ\varphi\circ(1\times A_2)^{-1} となるものを見つければ十分です。

n=1n=1 のとき。M0M_0 は有限個の点、Dn−1D^{n-1} は 1 点で、φ(−1)=φ′(−1)\varphi(-1)=\varphi'(-1) は点 CC、φ(1),φ′(1)∈S0={±1}=∂D1\varphi(1),\varphi'(1)\in S^0=\{\pm1\}=\partial D^1 です。φ(1)=φ′(1)\varphi(1)=\varphi'(1) なら G=idG=\mathrm{id}、そうでなければ GG を M0×[−1,1]M_0\times[-1,1] の上で恒等写像、D1D^1 の上で y↦−yy\mapsto-y とします。

n≥2n\ge2 のとき。接着写像は少し大きい開球 BRB_R(R>1R\gt1)の上の埋め込みの制限です(定義 3.1)。e=φ(−1,⋅)e=\varphi(-1,\cdot)、e′=φ′(−1,⋅) ⁣:BR→Ce'=\varphi'(-1,\cdot)\colon B_R\to C とします。

(i) 定理 5.4[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] の 1 により、CC の微分同相 Ψ\Psi で Ψ(e(0))=e′(0)\Psi(e(0))=e'(0) となるものがあります。YC=e′(BR)Y_C=e'(B_R) は CC の開集合で、e′e' により Rn−1\mathbb{R}^{n-1} の向きを移して、連結な向き付けられた境界のない多様体とみなします。Ψ(e(0))∈YC\Psi(e(0))\in Y_C なので、ϵ0∈(0,1]\epsilon_0\in(0,1] を Ψ(e(ϵ0BR))⊂YC\Psi(e(\epsilon_0B_R))\subset Y_C となるように取れます。埋め込み e♯ ⁣:BR→YCe^\sharp\colon B_R\to Y_C、e♯(x)=Ψ(e(ϵ0x))e^\sharp(x)=\Psi(e(\epsilon_0x)) について、det⁡D(e′−1∘e♯)\det D(e'^{-1}\circ e^\sharp) は連結な BRB_R の上で符号が一定です。正なら A2=IA_2=I、負なら A2A_2 を第 1 座標の符号を変える鏡映とすると、e♯∘A2e^\sharp\circ A_2 は向きを保ちます。円板定理(定理 6.2[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張])を YCY_C の中の e♯∘A2e^\sharp\circ A_2 と e′e' に使うと、YCY_C の微分同相 Φ1\Phi^1 で、YCY_C のコンパクト集合の外で恒等写像、Φ1∘e♯∘A2=e′\Phi^1\circ e^\sharp\circ A_2=e'(Dn−1D^{n-1} 上)となるものがあります。Φ1\Phi^1 は恒等写像で CC の微分同相に延びます。また (x,t)↦e(A2((1−t+tϵ0)x))(x,t)\mapsto e\bigl(A_2((1-t+t\epsilon_0)x)\bigr) は e∘A2e\circ A_2 から x↦e(A2ϵ0x)x\mapsto e(A_2\epsilon_0x) へのイソトピーなので、イソトピー拡張定理(定理 5.2[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張]。K=Dn−1K=D^{n-1})により、CC の微分同相 Φ2\Phi^2 で Φ2(e(A2x))=e(ϵ0A2x)\Phi^2(e(A_2x))=e(\epsilon_0A_2x)(x∈Dn−1x\in D^{n-1})となるものがあります。Φ0=Φ1∘Ψ∘Φ2\Phi_0=\Phi^1\circ\Psi\circ\Phi^2 とおくと、x∈Dn−1x\in D^{n-1} について

Φ0(e(A2x))=Φ1(Ψ(e(ϵ0A2x)))=Φ1(e♯(A2x))=e′(x)\Phi_0\bigl(e(A_2x)\bigr)=\Phi^1\bigl(\Psi(e(\epsilon_0A_2x))\bigr)=\Phi^1\bigl(e^\sharp(A_2x)\bigr)=e'(x)

です。Φ0\Phi_0 を M0M_0 のほかの成分の上で恒等写像として M0M_0 の微分同相に延ばします。

(ii) e1=φ(1,⋅)∘A2e_1=\varphi(1,\cdot)\circ A_2、e1′=φ′(1,⋅) ⁣:BR→Sn−1e_1'=\varphi'(1,\cdot)\colon B_R\to S^{n-1} とします。Sn−1S^{n-1} は連結で向き付け可能です(n≥2n\ge2)。e1e_1 と e1′e_1' がある向きについてともに向きを保つなら ρˉ=I\bar\rho=I、そうでなければ ρˉ∈O(n)\bar\rho\in O(n) を超平面についての鏡映とし、ρ=ρˉ∣Sn−1\rho=\bar\rho|_{S^{n-1}} とします。鏡映は Sn−1S^{n-1} の向きを逆にするので、どちらの場合も、Sn−1S^{n-1} の向きを選べば ρ∘e1\rho\circ e_1 と e1′e_1' はともに向きを保ちます。円板定理により、Sn−1S^{n-1} のディフェオトピー ΦtS\Phi^S_t(Φ0S=id\Phi^S_0=\mathrm{id})で Φ1S∘ρ∘e1=e1′\Phi^S_1\circ\rho\circ e_1=e_1'(Dn−1D^{n-1} 上)となるものがあります。[0,1][0,1] 上の滑らかな関数 τ\tau を [0,13][0,\tfrac13] で 00、[23,1][\tfrac23,1] で 11 に取り、G^(ru)=r Φτ(r)S(u)\hat G(ru)=r\,\Phi^S_{\tau(r)}(u)(u∈Sn−1u\in S^{n-1}、0≤r≤10\le r\le1)とおくと、G^\hat G は r≤13r\le\tfrac13 で恒等写像の滑らかな写像で、(ΦtS)−1(\Phi^S_t)^{-1} から同じように作った写像が逆を与えるので、DnD^n の微分同相です。GS=G^∘ρˉG_S=\hat G\circ\bar\rho は DnD^n の微分同相で、Sn−1S^{n-1} の上で Φ1S∘ρ\Phi^S_1\circ\rho です。

(iii) G=(Φ0×id[−1,1])⊔GS ⁣:P→PG=(\Phi_0\times\mathrm{id}_{[-1,1]})\sqcup G_S\colon P\to P は同境の微分同相で、N0N_0 の上で Φ0⊔(Φ1S∘ρ)\Phi_0\sqcup(\Phi^S_1\circ\rho) です。A2−1=A2A_2^{-1}=A_2 なので、w∈Dn−1w\in D^{n-1} について G(φ(−1,A2−1w))=Φ0(e(A2w))=e′(w)=φ′(−1,w)G(\varphi(-1,A_2^{-1}w))=\Phi_0(e(A_2w))=e'(w)=\varphi'(-1,w)、G(φ(1,A2−1w))=Φ1S(ρ(e1(w)))=e1′(w)=φ′(1,w)G(\varphi(1,A_2^{-1}w))=\Phi^S_1(\rho(e_1(w)))=e_1'(w)=\varphi'(1,w) です。よって φ′=G∣N0∘φ∘(1×A2)−1\varphi'=G|_{N_0}\circ\varphi\circ(1\times A_2)^{-1} です。

第 3 段:積の上の例。 系 5.5 を閉多様体 CC と λ=0\lambda=0 に使い、C×[0,1]C\times[0,1] の上の Morse 関数で、臨界点が指数 00 の pep_e と指数 11 の qeq_e のちょうど 2 つで、pep_e での値のほうが小さいものを取ります。M0M_0 のほかの成分の上では pr2\mathrm{pr}_2 として、X=M0×[0,1]X=M_0\times[0,1] 上の Morse 関数 FF を得ます。勾配状ベクトル場を取り(補題 2.5)、(*) を使うと、接着写像 φe\varphi_e と、M0M_0 の上で (z,−1)↦(z,0)(z,-1)\mapsto(z,0) となる微分同相 ι ⁣:P∪φeh1→X\iota\colon P\cup_{\varphi_e}h^1\to X があります。

φe\varphi_e の足の位置を調べます。XX の連結成分は M0M_0 の連結成分と [0,1][0,1] の積なので、XX の空でない開かつ閉な部分集合はどれも M0×{0}M_0\times\{0\} と交わります。もし 2 つの足がどちらも M0M_0 にあれば、ω(N0,φe)=ω(M0,φe)⊔Sn−1×[−1,1]\omega(N_0,\varphi_e)=\omega(M_0,\varphi_e)\sqcup S^{n-1}\times[-1,1] なので、Dn∪Sn−1×[−1,1]D^n\cup S^{n-1}\times[-1,1] は P∪φeh1P\cup_{\varphi_e}h^1 の空でない開かつ閉な部分集合で、M0×{−1}M_0\times\{-1\} と交わりません。ι\iota で写すと上に反します。2 つの足がどちらも Sn−1S^{n-1} にあれば、Dn∪ω(Sn−1,φe)D^n\cup\omega(S^{n-1},\varphi_e) が同じ理由で矛盾を与えます。よって足は M0M_0 と Sn−1S^{n-1} に 1 つずつあります。M0M_0 にある足の中心を含む M0M_0 の成分を C′C' とすると、(M0∖C′)×[−1,1](M_0\setminus C')\times[-1,1] の 2 つのコピー(PP の中のものと跡の中のもの)の和は P∪φeh1P\cup_{\varphi_e}h^1 の開かつ閉な部分集合で、その補集合 Y2Y_2 は DnD^n を含み、M0×{−1}M_0\times\{-1\} とは C′×{−1}C'\times\{-1\} で交わります。ι(Y2)\iota(Y_2) は XX の開かつ閉な部分集合で pe∈C×[0,1]p_e\in C\times[0,1] を含むので C×{0}C\times\{0\} を含み、一方 ι(Y2)∩(M0×{0})=C′×{0}\iota(Y_2)\cap(M_0\times\{0\})=C'\times\{0\} です。よって C′=CC'=C です(ここまでは ι\iota が同相写像で、M0M_0 の上で (z,−1)↦(z,0)(z,-1)\mapsto(z,0)、DnD^n の中心を pep_e に写すことだけを使いました)。最後に、φe(−1,0)∈Sn−1\varphi_e(-1,0)\in S^{n-1} のときは、第 1 段の最後と同じく φe\varphi_e を φe∘(A1×I)\varphi_e\circ(A_1\times I)(A1=−1A_1=-1)に替えます。足の像は変わらないので、φe\varphi_e は橋で、φe(−1,0)∈C\varphi_e(-1,0)\in C、Y(φe)≅X=M0×[0,1]Y(\varphi_e)\cong X=M_0\times[0,1](下の境界を下の境界に写す)です。

第 4 段:WW は積。 第 1〜3 段から W≅Y(φ)≅Y(φe)≅M0×[0,1]W\cong Y(\varphi)\cong Y(\varphi_e)\cong M_0\times[0,1] で、どの微分同相も下の境界を下の境界に写します。区間を付け替えて、微分同相 Φ ⁣:M0×[a,b]→W\Phi\colon M_0\times[a,b]\to W で Φ(M0×{a})=M0\Phi(M_0\times\{a\})=M_0、Φ(M0×{b})=M1\Phi(M_0\times\{b\})=M_1 となるものを得ます。

第 5 段:境界の近くで ff に合わせる。 g0=pr2∘Φ−1 ⁣:W→[a,b]g_0=\mathrm{pr}_2\circ\Phi^{-1}\colon W\to[a,b] は臨界点をもたず、g0−1(a)=M0g_0^{-1}(a)=M_0、g0−1(b)=M1g_0^{-1}(b)=M_1 です。ϵ>0\epsilon\gt0 を、[a,a+ϵ][a,a+\epsilon] と [b−ϵ,b][b-\epsilon,b] が ff の臨界値を含まず、2ϵ<b−a2\epsilon\lt b-a となるように取ります。∂W\partial W のカラー c0c_0 を、z=Φ(z′,a)∈M0z=\Phi(z',a)\in M_0 に対し c0(z,t)=Φ(z′,a+ϵt)c_0(z,t)=\Phi(z',a+\epsilon t)、z=Φ(z′,b)∈M1z=\Phi(z',b)\in M_1 に対し c0(z,t)=Φ(z′,b−ϵt)c_0(z,t)=\Phi(z',b-\epsilon t) で定めます。g0(c0(z,t))g_0(c_0(z,t)) は M0M_0 の側で a+ϵta+\epsilon t、M1M_1 の側で b−ϵtb-\epsilon t です。同じ性質を ff についてもつカラー c1c_1 を作ります。f−1([a,a+ϵ])f^{-1}([a,a+\epsilon]) は臨界点の無い同境なので、定理 2.7 の微分同相 Φa ⁣:M0×[a,a+ϵ]→f−1([a,a+ϵ])\Phi_a\colon M_0\times[a,a+\epsilon]\to f^{-1}([a,a+\epsilon])(Φa(z,a)=z\Phi_a(z,a)=z、f∘Φa=pr2f\circ\Phi_a=\mathrm{pr}_2)があり、z∈M0z\in M_0 に対し c1(z,t)=Φa(z,a+ϵt)c_1(z,t)=\Phi_a(z,a+\epsilon t) とします。M1M_1 の側は、同境 f−1([b−ϵ,b])f^{-1}([b-\epsilon,b]) と関数 −f-f に同じ定理を使って Φb ⁣:M1×[−b,−b+ϵ]→f−1([b−ϵ,b])\Phi_b\colon M_1\times[-b,-b+\epsilon]\to f^{-1}([b-\epsilon,b])(Φb(z,−b)=z\Phi_b(z,-b)=z、f∘Φb=−pr2f\circ\Phi_b=-\mathrm{pr}_2)を取り、c1(z,t)=Φb(z,−b+ϵt)c_1(z,t)=\Phi_b(z,-b+\epsilon t) とします。c1c_1 は ∂W×[0,1)\partial W\times[0,1) から開集合 f−1([a,a+ϵ)∪(b−ϵ,b])f^{-1}([a,a+\epsilon)\cup(b-\epsilon,b]) への微分同相です。

カラーの一意性(系 4.4[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張])により、ϵ′∈(0,1)\epsilon'\in(0,1) と WW の微分同相 Θ\Theta で Θ(c0(z,t))=c1(z,t)\Theta(c_0(z,t))=c_1(z,t)(t≤ϵ′t\le\epsilon')、Θ∣∂W=id\Theta|_{\partial W}=\mathrm{id} となるものがあります。g=g0∘Θ−1g=g_0\circ\Theta^{-1} は臨界点をもたず、g−1(a)=M0g^{-1}(a)=M_0、g−1(b)=M1g^{-1}(b)=M_1 で、∂W\partial W の近傍 c1(∂W×[0,ϵ′))c_1(\partial W\times[0,\epsilon')) の点 w=c1(z,t)w=c_1(z,t) では g(w)=g0(c0(z,t))=f(w)g(w)=g_0(c_0(z,t))=f(w) です。これで 1 が示されました。2 は 定理 2.7 を gg に使ったものです。

指数 n−1n-1 と nn の場合。 −f ⁣:W→[−b,−a]-f\colon W\to[-b,-a] は同境 W ⁣:M1⇝M0W\colon M_1\rightsquigarrow M_0 の上の Morse 関数、−ξ-\xi はその勾配状ベクトル場です。実際、ff の適合チャート (x,y)(x,y) で −f=−f(p)+∣x∣2−∣y∣2-f=-f(p)+|x|^2-|y|^2、−ξ=x ∂x−y ∂y-\xi=x\,\partial_x-y\,\partial_y なので、xx と yy の役割を入れ替えたものが −f-f と −ξ-\xi の適合チャートで、指数 λ\lambda は n−λn-\lambda に変わり、(−ξ)(−f)=ξf>0(-\xi)(-f)=\xi f\gt0 です。−ξ-\xi の軌道は ξ\xi の軌道の向きを逆にしたものです。よって仮定は (−f,−ξ)(-f,-\xi) についてのはじめの仮定で、1 の関数の符号を変えたものと、それに 定理 2.7 を使ったものが結論を与えます。

準備として、互いに交わらない接着写像で貼るハンドルは、同時に貼っても、2 組に分けて順に貼っても同じであることを示します。

補題 5.7(同時に貼ることと順に貼ること)✓

W ⁣:M0⇝MW\colon M_0\rightsquigarrow M を nn 次元の同境とし、(φi)i∈I1(\varphi_i)_{i\in I_1}、(φj)j∈I2(\varphi_j)_{j\in I_2} を、像がすべて互いに交わらない MM への有限個の接着写像とする。M′=χ(M;(φi)i∈I1)M'=\chi(M;(\varphi_i)_{i\in I_1}) とし、φj\varphi_j(j∈I2j\in I_2)を M∖⋃i∈I1φi(Sλi−1×0)⊂M′M\setminus\bigcup_{i\in I_1}\varphi_i(S^{\lambda_i-1}\times0)\subset M' への接着写像とみなす。このとき

W∪Mω(M;(φi)i∈I1⊔I2) ≅ (W∪Mω(M;(φi)i∈I1))∪M′ω(M′;(φj)j∈I2)W\cup_M\omega\bigl(M;(\varphi_i)_{i\in I_1\sqcup I_2}\bigr)\ \cong\ \Bigl(W\cup_M\omega\bigl(M;(\varphi_i)_{i\in I_1}\bigr)\Bigr)\cup_{M'}\omega\bigl(M';(\varphi_j)_{j\in I_2}\bigr)

で、微分同相は M0M_0 の近傍で恒等写像に取れる。

証明(補題 5.7)

Ω=ω(M;(φi)i∈I1⊔I2)\Omega=\omega(M;(\varphi_i)_{i\in I_1\sqcup I_2})、F ⁣:Ω→[−1,1]F\colon\Omega\to[-1,1] を 補題 3.3 の Morse 関数とし、LλiL_{\lambda_i} のコピーを L(i)L^{(i)}、その原点を oio_i と書きます。

第 1 段:軌道が縦の線分になる勾配状ベクトル場。 Hi={(x,y)∈L(i):∣x∣∣y∣≤sinh⁡12cosh⁡12}H_i=\{(x,y)\in L^{(i)}:|x||y|\le\sinh\tfrac12\cosh\tfrac12\} はコンパクトです。Ω\Omega は、開集合 O1=⋃iL(i)O_1=\bigcup_iL^{(i)} と O2=Ω∖⋃iHiO_2=\Omega\setminus\bigcup_iH_i(積の部分に含まれる)で覆われます。従属する 1 の分割 ρ1,ρ2\rho_1,\rho_2(定理 6.3[部分多様体と正則値定理])を取り、O1O_1 の上の ηλi\eta_{\lambda_i} と、積の座標 (z,c)(z,c) による ∂/∂c\partial/\partial c から ξ=ρ1η+ρ2 ∂/∂c\xi=\rho_1\eta+\rho_2\,\partial/\partial c とおきます。O1∩O2O_1\cap O_2 では、積の線分 c↦(z,c)c\mapsto(z,c) は η\eta の流線を qλq_\lambda の値で径数づけたものなので ∂/∂c=η/(ηqλ)\partial/\partial c=\eta/(\eta q_\lambda) で、ξ=(ρ1+ρ2/(ηqλ)) η\xi=(\rho_1+\rho_2/(\eta q_\lambda))\,\eta は η\eta の正の関数倍です。よって oio_i 以外で ξF>0\xi F\gt0 で、HiH_i の内部では ξ=η\xi=\eta なので L(i)L^{(i)} の座標が適合チャートを与え、ξ\xi は FF の勾配状ベクトル場です。ξ\xi の軌道は、積の部分の線分 {z}×[−1,1]\{z\}\times[-1,1](L(i)L^{(i)} の中では η\eta の流線)に含まれます。

第 2 段:臨界値を分けて切る。 定理 4.1 の 1(c=c′=0c=c'=0、P={oi}i∈I1P=\{o_i\}_{i\in I_1}、Q={oj}j∈I2Q=\{o_j\}_{j\in I_2}、α=−12\alpha=-\tfrac12、α′=12\alpha'=\tfrac12)により、Ω\Omega 上の Morse 関数 G ⁣:Ω→[−1,1]G\colon\Omega\to[-1,1] で、ξ\xi を勾配状ベクトル場にもち、PP の近傍で G=F−12G=F-\tfrac12、QQ の近傍で G=F+12G=F+\tfrac12、∂Ω\partial\Omega の近傍で G=FG=F となるものがあります。Ω−=G−1([−1,0])\Omega_-=G^{-1}([-1,0])、N=G−1(0)N=G^{-1}(0)、Ω+=G−1([0,1])\Omega_+=G^{-1}([0,1]) とおきます。補題 3.5 の 2 により、Ω≅Ω−∪NΩ+\Omega\cong\Omega_-\cup_N\Omega_+(境界の近傍で恒等写像)です。

第 3 段:2 つの部分の接着写像。 ε∈(0,1]\varepsilon\in(0,1] を小さく取り、定理 3.6 の後半を、L(i)L^{(i)} の座標を適合チャートとして使います。L(i)L^{(i)} の点 (εucosh⁡θ,εvsinh⁡θ)(\varepsilon u\cosh\theta,\varepsilon v\sinh\theta) を通る流線の上で ∣x∣∣y∣=12ε2sinh⁡2θ|x||y|=\tfrac12\varepsilon^2\sinh2\theta は一定で、流線が qλ=−1q_\lambda=-1 に達する点は a−(u,θ′v)a_-(u,\theta'v)、ただし

sinh⁡2θ′=ε2sinh⁡2θ,すなわちθ′=σε(θ):=12arsinh⁡(ε2sinh⁡2θ)\sinh2\theta'=\varepsilon^2\sinh2\theta,\qquad\text{すなわち}\quad\theta'=\sigma_\varepsilon(\theta):=\tfrac12\operatorname{arsinh}\bigl(\varepsilon^2\sinh2\theta\bigr)

です(θ=0\theta=0 のときは芯の上の点で、a−(u,0)a_-(u,0) に達します)。a−(u,θ′v)a_-(u,\theta'v) は Ω\Omega の下の境界 MM の点 φi(u,θ′v)\varphi_i(u,\theta'v) です。sε(θv)=σε(θ)vs_\varepsilon(\theta v)=\sigma_\varepsilon(\theta)v とおき、φi♭=φi∘(id×sε)\varphi_i^\flat=\varphi_i\circ(\mathrm{id}\times s_\varepsilon) と書きます。

Ω−\Omega_-(臨界点は oio_i、i∈I1i\in I_1、臨界値 −12-\tfrac12)に定理を使うと、MM の上で恒等写像の微分同相 κ− ⁣:ω(M;(φi♭)i∈I1)→Ω−\kappa_-\colon\omega(M;(\varphi_i^\flat)_{i\in I_1})\to\Omega_- を得ます(接着写像は「(εucosh⁡θ,εvsinh⁡θ)(\varepsilon u\cosh\theta,\varepsilon v\sinh\theta) から軌道を戻って MM に達した点」で、上の計算から φi♭(u,θv)\varphi_i^\flat(u,\theta v) です)。上の境界への制限を ν ⁣:χ(M;(φi♭)i∈I1)→N\nu\colon\chi(M;(\varphi_i^\flat)_{i\in I_1})\to N とすると、定理の後半から、z∈M∖⋃i∈I1φi♭(Sλi−1×0)z\in M\setminus\bigcup_{i\in I_1}\varphi_i^\flat(S^{\lambda_i-1}\times0) に対し ν(z)\nu(z) は zz の軌道と NN の交点です。Ω+\Omega_+(臨界点は ojo_j、j∈I2j\in I_2)に使うと、NN の上で恒等写像の微分同相 κ+ ⁣:ω(N;(ψj)j∈I2)→Ω+\kappa_+\colon\omega(N;(\psi_j)_{j\in I_2})\to\Omega_+ を得て、ψj(u,θv)\psi_j(u,\theta v) は、L(j)L^{(j)} の点 (εucosh⁡θ,εvsinh⁡θ)(\varepsilon u\cosh\theta,\varepsilon v\sinh\theta) から軌道を戻って NN に達した点です。この軌道は MM の点 z=φj(u,θ′v)z=\varphi_j(u,\theta'v) の軌道なので、ψj(u,θv)=ν(φj♭(u,θv))\psi_j(u,\theta v)=\nu(\varphi_j^\flat(u,\theta v))、すなわち ν−1∘ψj=φj♭\nu^{-1}\circ\psi_j=\varphi_j^\flat です。補題 3.5 の 3(g=νg=\nu)と 1 により

Ω ≅ ω(M;(φi♭)i∈I1)∪M♭ω(M♭;(φj♭)j∈I2),M♭=χ(M;(φi♭)i∈I1)\Omega\ \cong\ \omega\bigl(M;(\varphi_i^\flat)_{i\in I_1}\bigr)\cup_{M^\flat}\omega\bigl(M^\flat;(\varphi_j^\flat)_{j\in I_2}\bigr),\qquad M^\flat=\chi\bigl(M;(\varphi_i^\flat)_{i\in I_1}\bigr)

で、微分同相は MM の上で恒等写像です。

第 4 段:♭\flat を外す。 σε\sigma_\varepsilon は奇関数で、σε(θ)/θ\sigma_\varepsilon(\theta)/\theta は θ2\theta^2 の滑らかな正の関数、σε′(θ)=ε2cosh⁡2θ (1+ε4sinh⁡22θ)−1/2>0\sigma_\varepsilon'(\theta)=\varepsilon^2\cosh2\theta\,(1+\varepsilon^4\sinh^22\theta)^{-1/2}\gt0、ε≤1\varepsilon\le1 なので σε(θ)≤θ\sigma_\varepsilon(\theta)\le\theta です。t∈[0,1]t\in[0,1] に対し st(θv)=((1−t)θ+tσε(θ))vs_t(\theta v)=\bigl((1-t)\theta+t\sigma_\varepsilon(\theta)\bigr)v とおくと、動径の関数の微分が正なので sts_t は D˚1+ϵn−λ\mathring D^{n-\lambda}_{1+\epsilon} からそれ自身の中への埋め込みで、s0=ids_0=\mathrm{id}、s1=sεs_1=s_\varepsilon です。φi\varphi_i を延長した Sλi−1×D˚1+ϵn−λiS^{\lambda_i-1}\times\mathring D^{n-\lambda_i}_{1+\epsilon} の上の埋め込みの像も、ϵ\epsilon を小さく取り直せば互いに交わりません(もとの像はコンパクトで互いに交わらないからです)。したがって (φi∘(id×st))i∈I1⊔I2(\varphi_i\circ(\mathrm{id}\times s_t))_{i\in I_1\sqcup I_2} は、各時刻で像が互いに交わらない接着写像の族で、(φi)(\varphi_i) と (φi♭)(\varphi_i^\flat) を結びます。命題 3.8 の 1(組の場合)により、MM のアンビエントイソトピー Ψt\Psi_t(Ψ0=id\Psi_0=\mathrm{id})で Ψ1∘φi=φi♭\Psi_1\circ\varphi_i=\varphi_i^\flat(すべての i∈I1⊔I2i\in I_1\sqcup I_2)となるものがあります。補題 3.5 の 3(g=Ψ1g=\Psi_1)の微分同相 ω(M;(φi)i∈I1)→ω(M;(φi♭)i∈I1)\omega(M;(\varphi_i)_{i\in I_1})\to\omega(M;(\varphi_i^\flat)_{i\in I_1}) は、上の境界 M′→M♭M'\to M^\flat の上で、M∖⋃i∈I1φi(Sλi−1×0)M\setminus\bigcup_{i\in I_1}\varphi_i(S^{\lambda_i-1}\times0) では Ψ1\Psi_1 なので、φj\varphi_j を φj♭\varphi_j^\flat(j∈I2j\in I_2)に写します。同補題の 3 をもう一度使うと、第 3 段と合わせて

ω(M;(φi)i∈I1)∪M′ω(M′;(φj)j∈I2) ≅ Ω\omega\bigl(M;(\varphi_i)_{i\in I_1}\bigr)\cup_{M'}\omega\bigl(M';(\varphi_j)_{j\in I_2}\bigr)\ \cong\ \Omega

で、微分同相は MM の上で Ψ1\Psi_1 です。

第 5 段:WW に貼る。 命題 3.8 の 2 の証明と同じく、MM のカラーの上で c(z,t)↦c(Ψτ(t)(z),t)c(z,t)\mapsto c(\Psi_{\tau(t)}(z),t)、その外で恒等写像と定めた WW の微分同相 Θ\Theta は、MM の近くで Ψ1×id\Psi_1\times\mathrm{id}、M0M_0 の近くで恒等写像です。Θ\Theta と第 4 段の微分同相は MM の上でともに Ψ1\Psi_1 なので、補題 3.5 の 1 により、右辺から左辺への微分同相で M0M_0 の近傍で恒等写像のものが得られます(右辺は、WW、ω(M;(φi)i∈I1)\omega(M;(\varphi_i)_{i\in I_1})、ω(M′;(φj)j∈I2)\omega(M';(\varphi_j)_{j\in I_2}) を 2 つの継ぎ目で貼ったもので、貼る順序によりません。構造は 2 つの継ぎ目のチャートで決まるからです)。

命題 5.8(ハンドルの滑らせ)✓

同境 W ⁣:M0⇝MW\colon M_0\rightsquigarrow M に、像が交わらない接着写像 φ1,φ2 ⁣:Sλ−1×Dn−λ→M\varphi_1,\varphi_2\colon S^{\lambda-1}\times D^{n-\lambda}\to M で指数 λ\lambda のハンドル h1,h2h_1,h_2 を貼る。M′=χ(M,φ1)M'=\chi(M,\varphi_1) とし、φ2\varphi_2 を M′M' への接着写像とみなす。φ2′\varphi_2' が M′M' の中で φ2\varphi_2 にイソトピックな接着写像で、像が M∖φ1(Sλ−1×Dn−λ)M\setminus\varphi_1(S^{\lambda-1}\times D^{n-\lambda}) に含まれるなら、

W∪φ1h1∪φ2h2 ≅ W∪φ1h1∪φ2′h2W\cup_{\varphi_1}h_1\cup_{\varphi_2}h_2\ \cong\ W\cup_{\varphi_1}h_1\cup_{\varphi_2'}h_2

で、右辺は WW に φ1\varphi_1 と φ2′\varphi_2' で 2 つのハンドルを同時に貼ったもの W∪Mω(M;φ1,φ2′)W\cup_M\omega(M;\varphi_1,\varphi_2') にも微分同相である。φ1\varphi_1、φ2\varphi_2、φ2′\varphi_2' のそれぞれを、像が互いに交わらない有限個の接着写像の組(指数は異なってよく、φ2\varphi_2 と φ2′\varphi_2' は組としてイソトピック)に替えても、同じことが成り立つ。

証明(命題 5.8)

はじめの微分同相は、命題 3.8 の 2 を同境 W∪φ1h1 ⁣:M0⇝M′W\cup_{\varphi_1}h_1\colon M_0\rightsquigarrow M' と、M′M' の中でイソトピックな φ2\varphi_2、φ2′\varphi_2' に使ったものです。後半は 補題 5.7(I1I_1 を φ1\varphi_1、I2I_2 を φ2′\varphi_2' として)そのものです。φ2′\varphi_2' の像は M∖φ1(Sλ−1×Dn−λ)M\setminus\varphi_1(S^{\lambda-1}\times D^{n-\lambda}) に含まれるので、φ1\varphi_1 と φ2′\varphi_2' は像が交わらない MM への接着写像で、補題の右辺が W∪φ1h1∪φ2′h2W\cup_{\varphi_1}h_1\cup_{\varphi_2'}h_2 です。組の場合も、命題 3.8 の組の場合と 補題 5.7 から同じように従います。

イソトピーの途中で φ2\varphi_2 の像が h1h_1 のベルト球面の近傍 D˚λ×Sn−λ−1⊂M′\mathring D^\lambda\times S^{n-\lambda-1}\subset M' を横切ってよい、というのが要点です。MM の中だけで見ると、h2h_2 の接着球面は h1h_1 の接着球面の平行なコピー φ1(Sλ−1×{v})\varphi_1(S^{\lambda-1}\times\{v\}) と帯でつながった形に変わります。これを「h2h_2 を h1h_1 の上で滑らせる」といいます。§7 では曲面の場合(n=2n=2、λ=1\lambda=1)に、この操作を具体的に使います。

系 5.9(0-ハンドルと n-ハンドルは 1 つずつにできる)✓

MM を連結な閉 nn 次元多様体(n≥1n\ge1)とする。MM の上に、指数 00 の臨界点と指数 nn の臨界点をちょうど 1 つずつもつ自己指数的な Morse 関数が存在する。

証明(系 5.9)

自己指数的な Morse 関数 ff と勾配状ベクトル場 ξ\xi を取り(定理 4.1 の 3)、指数 00 の臨界点が k0≥2k_0\ge2 個あるとします。M(0)=f−1([−12,12])M_{(0)}=f^{-1}([-\tfrac12,\tfrac12])、N=f−1(12)N=f^{-1}(\tfrac12)、M(1)=f−1([−12,32])M_{(1)}=f^{-1}([-\tfrac12,\tfrac32]) とおきます。定理 3.6 により M(0)M_{(0)} は k0k_0 個の円板 D1,…,Dk0D_1,\dots,D_{k_0} の非交和で、f−1([12,32])≅ω(N;φ1,…,φm)f^{-1}([\tfrac12,\tfrac32])\cong\omega(N;\varphi_1,\dots,\varphi_m)、各 φj ⁣:S0×Dn−1→N=⨆i∂Di\varphi_j\colon S^0\times D^{n-1}\to N=\bigsqcup_i\partial D_i です。

M(1)M_{(1)} は連結。 n=1n=1 なら M(1)=MM_{(1)}=M です。n≥2n\ge2 のとき、MM は M(1)M_{(1)} から指数 22 以上の臨界値を通過して得られます。各段で、劣位集合は指数 λ≥2\lambda\ge2 の胞体を貼った空間にホモトピー同値な形で大きくなり(定理 6.1[Morse 理論])、相対ホモロジーは次数 0,10,1 で消えるので(系 6.3[Morse 理論])、対の長完全列から H0H_0 は変わりません。よって H0(M(1))≅H0(M)≅ZH_0(M_{(1)})\cong H_0(M)\cong\mathbb{Z} で、M(1)M_{(1)} は連結です。

異なる円板をつなぐ 1-ハンドル。 どの φj\varphi_j も 2 つの足を同じ ∂Di\partial D_i にもつなら、M(1)M_{(1)} は「DiD_i と、そこに足をもつハンドル」の和 k0k_0 個の非交和になり、連結性に反します。よって、足が異なる成分 ∂Di\partial D_i、∂Di′\partial D_{i'} にある φj\varphi_j があります。対応する臨界点を qq、Di′D_{i'} の最小点を pp とします。

2 つを隣り合わせる。 定理 4.1 の 1(c=c′c=c' の場合)を、帯 f−1([12,32])f^{-1}([\tfrac12,\tfrac32]) では P={q}P=\{q\}、Q={ほかの指数 1 の臨界点}Q=\{\text{ほかの指数 1 の臨界点}\}、α=34\alpha=\tfrac34、α′=1\alpha'=1 で、M(0)M_{(0)} では P={ほかの最小点}P=\{\text{ほかの最小点}\}、Q={p}Q=\{p\}、α=0\alpha=0、α′=14\alpha'=\tfrac14 で使います。得られる Morse 関数 gg は ξ\xi を勾配状ベクトル場にもち、S=g−1([18,78])S=g^{-1}([\tfrac18,\tfrac78]) に含まれる臨界点は pp(指数 00)と qq(指数 11)だけです。ξ\xi は変えていないので軌道はもとのままです。qq の下降円板は 2 本の軌道からなり、一方は Di′D_{i'} に、他方は DiD_i に入ります。Di′D_{i'} は境界の下側が空の同境 ∅⇝∂Di′\varnothing\rightsquigarrow\partial D_{i'} で臨界点は pp だけなので、補題 2.6 の 1 により、Di′D_{i'} に入った軌道は負の向きに pp に収束します。DiD_i に入った軌道は pp には収束しません。よって V=g−1(12)V=g^{-1}(\tfrac12) の中で、qq の下降球面 AA(2 点)と pp の上昇球面 BB はちょうど 1 点で交わります。BB は (n−1)(n-1) 次元多様体 VV に埋め込まれた (n−1)(n-1) 次元球面なので VV の開集合で、TsB=TsVT_sB=T_sV から交わりは横断的です。

消去。 同境 SS の上の Morse 関数 g∣Sg|_S と勾配状ベクトル場 ξ\xi について、臨界点は指数 00 の pp と指数 11 の qq だけで、上で見たとおり、qq に収束する 2 本の軌道のうち pp から来るのはちょうど 1 本です。補題 5.6 の 1 により、SS の上に臨界点をもたず ∂S\partial S の近傍で gg と一致する関数があります。これを SS の外の gg とつなぐと、指数 00 の臨界点が k0−1k_0-1 個、指数 11 の臨界点が m−1m-1 個で、ほかは同じ Morse 関数になります。これを 定理 4.1 の 3 の証明の操作で自己指数的に直し(臨界点の個数は指数ごとに変わりません)、同じことを繰り返して指数 00 の臨界点を 1 つにします。

指数 nn。 −f-f に同じ議論を使うと(消去は 補題 5.6 の後半)、ff の指数 nn と n−1n-1 の臨界点が対で消えます。n≥2n\ge2 なら指数 00 の臨界点の個数は変わりません。n=1n=1 のときは、指数 00 の臨界点が 1 つになった時点で、χ(M)=0\chi(M)=0(MM は S1S^1 にホモトピー同値な閉 1 次元多様体。定理 4.4[横断性])と 定理 7.3[Morse 理論] の 2 から指数 11 の臨界点も 1 つです。最後に 定理 4.1 の 3 で自己指数的に直します(臨界点の個数は変わりません)。

例 5.10(球面の 2 通りの分解と消去)

SnS^n(n≥2n\ge2)は 例 3.10 の分解 h0∪hnh^0\cup h^n のほかに、h0∪h1∪h2∪hnh^0\cup h^1\cup h^2\cup h^n のような分解ももちます。系 5.5 を h0h^0 と hnh^n の間の積の部分 Sn−1×[0,1]S^{n-1}\times[0,1] に使えば、指数 11 と 22 の臨界点の対が生まれるからです。逆に、こうして生まれた対は 1 本の軌道で結ばれていて、定理 5.2 で消えます。n=2n=2 で絵にすると、円板 h0h^0 に帯 h1h^1 を付けて円環にし、円環の一方の境界に円板 h2h^2 をかぶせて円板に戻す、という操作です。h2h^2 の接着円周は h1h^1 のベルト球面(帯を横切る線分の両端の 2 点)のうち 1 点だけを通ります。

ハンドル分解からホモロジーを計算する鎖複体を作ります。胞体鎖複体(定理 3.4[胞体ホモロジーと写像度])の多様体版で、境界作用素が接着球面とベルト球面の交わり方で書けるのが特徴です。

命題 6.1(ハンドル鎖複体)✓

MM を閉 nn 次元多様体、ff を自己指数的な Morse 関数、ξ\xi を勾配状ベクトル場とし、Mλ=f−1((−∞,λ+12])M_\lambda=f^{-1}((-\infty,\lambda+\tfrac12])、Vλ=f−1(λ+12)V_\lambda=f^{-1}(\lambda+\tfrac12) とおく。指数 λ\lambda の各臨界点 pp の下降円板 D(p)D(p) に向きを選ぶ。

  1. Cλ:=Hλ(Mλ,Mλ−1)C_\lambda:=H_\lambda(M_\lambda,M_{\lambda-1}) は、下降円板の類 [D(p)][D(p)](pp は指数 λ\lambda の臨界点)を基底とする自由アーベル群で、k≠λk\ne\lambda では Hk(Mλ,Mλ−1)=0H_k(M_\lambda,M_{\lambda-1})=0 である。
  2. dλ+1 ⁣:Cλ+1→Cλd_{\lambda+1}\colon C_{\lambda+1}\to C_\lambda を、対の長完全列の連結準同型 Hλ+1(Mλ+1,Mλ)→Hλ(Mλ)H_{\lambda+1}(M_{\lambda+1},M_\lambda)\to H_\lambda(M_\lambda) と Hλ(Mλ)→Hλ(Mλ,Mλ−1)H_\lambda(M_\lambda)\to H_\lambda(M_\lambda,M_{\lambda-1}) の合成とすると、dλ∘dλ+1=0d_\lambda\circ d_{\lambda+1}=0 で、Hk(M)≅ker⁡dk/im⁡dk+1H_k(M)\cong\ker d_k/\operatorname{im}d_{k+1} である。
  3. 指数 λ+1\lambda+1 の臨界点 qq の下降球面 Aq⊂VλA_q\subset V_\lambda が、指数 λ\lambda のすべての臨界点 pp の上昇球面 Bp⊂VλB_p\subset V_\lambda と横断的に交わるとする。このとき dλ+1[D(q)]=∑pn(q,p) [D(p)],n(q,p)=∑s∈Aq∩Bpϵs,d_{\lambda+1}[D(q)]=\sum_pn(q,p)\,[D(p)],\qquad n(q,p)=\sum_{s\in A_q\cap B_p}\epsilon_s, ここで ϵs=±1\epsilon_s=\pm1 は、BpB_p の管状近傍 D˚λ×Sn−λ−1\mathring D^\lambda\times S^{n-\lambda-1} の射影 pr1\mathrm{pr}_1 を AqA_q に制限した写像の ss での微分が、AqA_q の向き(D(q)D(q) の境界としての向き)と Rλ\mathbb{R}^\lambda の向き(D(p)D(p) の向き)について向きを保つか逆にするかの符号である。すなわち n(q,p)n(q,p) は、BpB_p の法束を D(p)D(p) の向きで向き付けて数えた、AqA_q と BpB_p の交点の符号つきの個数で(VλV_\lambda と BpB_p が向き付けられているときは、pp、qq によらない全体の符号を除いて 定理 3.4[交点数と写像度] の交点数 I(Aq,Bp)I(A_q,B_p) に一致する)、22 を法として pp から qq への軌道の本数に等しい。
証明(命題 6.1)

1。 系 6.3[Morse 理論] と、臨界値を含まない区間での変形(定理 5.1[Morse 理論])により、Hk(Mλ,Mλ−1)H_k(M_\lambda,M_{\lambda-1}) は k=λk=\lambda のとき階数が指数 λ\lambda の臨界点の個数 cλc_\lambda の自由アーベル群、k≠λk\ne\lambda のとき 00 です。基底を調べます。指数 λ\lambda の臨界点 pp ごとに、定理 3.6 の模型 LλL_\lambda の qλ>−1q_\lambda\gt-1 の部分の像 UpU_p(MλM_\lambda の開集合)と、余芯 co(p)={x=0}⊂Up\mathrm{co}(p)=\{x=0\}\subset U_p(MλM_\lambda の閉集合)を考えます。Mλ−1⊂Mλ∖co(p)M_{\lambda-1}\subset M_\lambda\setminus\mathrm{co}(p) なので、準同型

εp ⁣:Hλ(Mλ,Mλ−1)→Hλ(Mλ,Mλ∖co(p))≅Hλ(Up,Up∖co(p))→(prx)∗Hλ(Rλ,Rλ∖0)≅Z\varepsilon_p\colon H_\lambda(M_\lambda,M_{\lambda-1})\to H_\lambda(M_\lambda,M_\lambda\setminus\mathrm{co}(p))\cong H_\lambda(U_p,U_p\setminus\mathrm{co}(p))\xrightarrow{(\mathrm{pr}_x)_*}H_\lambda(\mathbb{R}^\lambda,\mathbb{R}^\lambda\setminus0)\cong\mathbb{Z}

が定まります(2 つ目は切除定理 定理 5.3[特異ホモロジー]、prx(x,y)=x\mathrm{pr}_x(x,y)=x)。D(p)∩Up={y=0}D(p)\cap U_p=\{y=0\} は prx\mathrm{pr}_x で原点のまわりの円板に恒等的に写るので εp[D(p)]=±1\varepsilon_p[D(p)]=\pm1(向きの選び方で +1+1 とします)、p′≠pp'\ne p なら D(p′)D(p') は co(p)\mathrm{co}(p) と交わらないので εp[D(p′)]=0\varepsilon_p[D(p')]=0 です。よって (εp)p ⁣:Cλ→Zcλ(\varepsilon_p)_p\colon C_\lambda\to\mathbb{Z}^{c_\lambda} は全射で、階数 cλc_\lambda の自由アーベル群の間の全射は同型なので、[D(p)][D(p)] は基底で、類 zz の [D(p)][D(p)] の係数は εp(z)\varepsilon_p(z) です。

2。 dλ∘dλ+1d_\lambda\circ d_{\lambda+1} は、途中に対 (Mλ,Mλ−1)(M_\lambda,M_{\lambda-1}) の長完全列(系 3.2[特異ホモロジー])の隣り合う 2 つの射 Hλ(Mλ)→Hλ(Mλ,Mλ−1)→Hλ−1(Mλ−1)H_\lambda(M_\lambda)\to H_\lambda(M_\lambda,M_{\lambda-1})\to H_{\lambda-1}(M_{\lambda-1}) の合成を含むので 00 です。次に、

(i) k>λk\gt\lambda なら Hk(Mλ)=0H_k(M_\lambda)=0。λ\lambda の帰納法で、完全列 Hk(Mλ−1)→Hk(Mλ)→Hk(Mλ,Mλ−1)H_k(M_{\lambda-1})\to H_k(M_\lambda)\to H_k(M_\lambda,M_{\lambda-1}) の両端が 00 だからです(M−1=∅M_{-1}=\varnothing)。

(ii) k<λk\lt\lambda なら Hk(Mλ)→Hk(Mλ+1)H_k(M_\lambda)\to H_k(M_{\lambda+1}) は同型。完全列 Hk+1(Mλ+1,Mλ)→Hk(Mλ)→Hk(Mλ+1)→Hk(Mλ+1,Mλ)H_{k+1}(M_{\lambda+1},M_\lambda)\to H_k(M_\lambda)\to H_k(M_{\lambda+1})\to H_k(M_{\lambda+1},M_\lambda) の両端が 00 だからです。Mn=MM_n=M なので Hk(M)≅Hk(Mk+1)H_k(M)\cong H_k(M_{k+1}) です。

(iii) 完全列 Hk+1(Mk+1,Mk)→∂Hk(Mk)→Hk(Mk+1)→Hk(Mk+1,Mk)=0H_{k+1}(M_{k+1},M_k)\xrightarrow{\partial}H_k(M_k)\to H_k(M_{k+1})\to H_k(M_{k+1},M_k)=0 から Hk(Mk+1)≅Hk(Mk)/im⁡∂H_k(M_{k+1})\cong H_k(M_k)/\operatorname{im}\partial です。(i) より Hk(Mk−1)=0H_k(M_{k-1})=0 なので j ⁣:Hk(Mk)→Ckj\colon H_k(M_k)\to C_k は単射で、その像は ∂′ ⁣:Ck→Hk−1(Mk−1)\partial'\colon C_k\to H_{k-1}(M_{k-1}) の核です。Hk−1(Mk−1)→Ck−1H_{k-1}(M_{k-1})\to C_{k-1} も単射なので ker⁡∂′=ker⁡dk\ker\partial'=\ker d_k です。jj で写すと Hk(Mk)≅ker⁡dkH_k(M_k)\cong\ker d_k、im⁡∂≅im⁡dk+1\operatorname{im}\partial\cong\operatorname{im}d_{k+1} となり、主張を得ます。

3。 D(q)∩f−1([λ+12,λ+32])D(q)\cap f^{-1}([\lambda+\tfrac12,\lambda+\tfrac32]) は円板で、その境界が AqA_q です。円板と境界球面の対からの写像についての連結準同型の自然性から、∂[D(q)]∈Hλ(Mλ)\partial[D(q)]\in H_\lambda(M_\lambda) は球面 Aq≅SλA_q\cong S^\lambda の基本類の像です。その [D(p)][D(p)] の係数は εp\varepsilon_p の値で、Aq⊂VλA_q\subset V_\lambda が co(p)\mathrm{co}(p) と交わるのは Bp=co(p)∩VλB_p=\mathrm{co}(p)\cap V_\lambda の上だけです。模型では、VλV_\lambda の側の境界は a+(θu,v)=(usinh⁡θ,vcosh⁡θ)a_+(\theta u,v)=(u\sinh\theta,v\cosh\theta) で、prx∘a+\mathrm{pr}_x\circ a_+ は pr1\mathrm{pr}_1 に、原点を保ち向きを保つ動径方向の微分同相 θu↦usinh⁡θ\theta u\mapsto u\sinh\theta を合成したものです。AqA_q の BpB_p の管状近傍の外の部分を無限遠点に写すと、連続写像 Sλ→Rλ∪{∞}=SλS^\lambda\to\mathbb{R}^\lambda\cup\{\infty\}=S^\lambda が得られ、εp(∂[D(q)])\varepsilon_p(\partial[D(q)]) はその写像度です。原点の逆像は有限集合 Aq∩BpA_q\cap B_p で、横断性 TsAq⊕TsBp=TsVλT_sA_q\oplus T_sB_p=T_sV_\lambda と TsBp=ker⁡d pr1T_sB_p=\ker d\,\mathrm{pr}_1 から、各点 ss で pr1∣Aq\mathrm{pr}_1|_{A_q} は局所微分同相です。局所写像度の和公式(定理 5.4[胞体ホモロジーと写像度])と、局所微分同相の局所写像度が Jacobi 行列式の符号であること(補題 4.8[交点数と写像度])から、写像度は ∑sϵs\sum_s\epsilon_s です。Aq∩BpA_q\cap B_p の点は、pp から出て qq に収束する軌道と 1 対 1 に対応します。

命題 6.2(双対ハンドル分解)✓

f ⁣:W→[a,b]f\colon W\to[a,b] を同境 W ⁣:M0⇝M1W\colon M_0\rightsquigarrow M_1 の上の Morse 関数、ξ\xi を勾配状ベクトル場とする。

  1. −f-f は同境 W ⁣:M1⇝M0W\colon M_1\rightsquigarrow M_0 の上の Morse 関数、−ξ-\xi はその勾配状ベクトル場で、ff の指数 λ\lambda の臨界点は −f-f の指数 n−λn-\lambda の臨界点である。下降円板と上昇円板、接着球面とベルト球面が入れ替わる。したがって、WW が M0×[0,1]M_0\times[0,1] に指数 λ1,…,λk\lambda_1,\dots,\lambda_k のハンドルを貼ったものなら、WW は M1×[0,1]M_1\times[0,1] に指数 n−λk,…,n−λ1n-\lambda_k,\dots,n-\lambda_1 のハンドルを貼ったものでもある。
  2. MM が閉 nn 次元多様体なら χ(M)=(−1)nχ(M)\chi(M)=(-1)^n\chi(M) で、nn が奇数なら χ(M)=0\chi(M)=0 である。
  3. MM が向き付けられた閉 nn 次元多様体で、命題 6.1 の 3 の横断性の仮定がすべての λ\lambda で成り立つなら、−f-f(を自己指数的に付け替えた n−fn-f)のハンドル鎖複体の境界作用素の行列は、ff のそれの転置に、行と列ごとに符号 ±1\pm1 を掛けたものである。したがって rank⁡Hk(M)=rank⁡Hn−k(M)\operatorname{rank}H_k(M)=\operatorname{rank}H_{n-k}(M)。
証明(命題 6.2)

1。 適合チャート (x,y)(x,y) で −f=−f(p)+∣x∣2−∣y∣2-f=-f(p)+|x|^2-|y|^2、−ξ=x ∂x−y ∂y-\xi=x\,\partial_x-y\,\partial_y なので、xx と yy の役割を入れ替えた (y,x)(y,x) が −f-f と −ξ-\xi の適合チャートで、負の 2 乗の個数は n−λn-\lambda です。(−ξ)(−f)=ξf>0(-\xi)(-f)=\xi f\gt0 です。−ξ-\xi の軌道は ξ\xi の軌道の向きを逆にしたものなので、−f-f の下降円板は ff の上昇円板です。あとは 定理 3.7 を −f-f に使います。

2。 指数 λ\lambda の臨界点の個数を cλc_\lambda とすると、定理 7.3[Morse 理論] の 2 を ff と −f-f に使って

χ(M)=∑λ(−1)λcλ,χ(M)=∑λ(−1)n−λcλ=(−1)n∑λ(−1)λcλ\chi(M)=\sum_\lambda(-1)^\lambda c_\lambda,\qquad\chi(M)=\sum_\lambda(-1)^{n-\lambda}c_\lambda=(-1)^n\sum_\lambda(-1)^\lambda c_\lambda

です。

3。 n−fn-f は自己指数的で、その (n−λ)(n-\lambda) 番目の鎖群の基底は ff の指数 λ\lambda の臨界点 pp の上昇円板、(n−λ−1)(n-\lambda-1) 番目の基底は指数 λ+1\lambda+1 の臨界点 qq の上昇円板です。命題 6.1 の 3 を n−fn-f に使うと、[上昇円板(p)][\text{上昇円板}(p)] の境界における [上昇円板(q)][\text{上昇円板}(q)] の係数 n′(p,q)n'(p,q) は、同じ等位面 VλV_\lambda の中の同じ交点集合 Bp∩AqB_p\cap A_q の上の符号の和です。MM の向きと下降円板の向きから上昇円板の向きを決めておくと、各交点での 2 通りの符号は、交点数の対称性(命題 3.5[交点数と写像度])と同じ計算で、交点によらない符号(pp、qq の向きの選び方と次元だけで決まる)を除いて一致します。よって n′(p,q)=±n(q,p)n'(p,q)=\pm n(q,p) で、符号は行と列ごとに決まります。行や列に ±1\pm1 を掛けても行列の階数は変わらないので、rk=rank⁡dkr_k=\operatorname{rank}d_k とおくと、ff の鎖複体から rank⁡Hk(M)=ck−rk−rk+1\operatorname{rank}H_k(M)=c_k-r_k-r_{k+1}、n−fn-f の鎖複体から rank⁡Hn−k(M)=ck−rk+1−rk\operatorname{rank}H_{n-k}(M)=c_k-r_{k+1}-r_k で、両者は一致します。

3 は Betti 数の対称性 bk=bn−kb_k=b_{n-k}(系 6.5[コホモロジーと双対性] の 2)の別証明です。de Rham コホモロジーでは外積と積分の対が双対を与えましたが、ここではハンドル分解を上下逆さに見ることが双対です。向きが無い場合も、符号を忘れて Z/2\mathbb{Z}/2 係数で数えれば同じ議論が成り立ちます。

n=2n=2 の場合に、ハンドル分解を標準形に直して閉曲面を分類します。T2=S1×S1T^2=S^1\times S^1 をトーラス、RP2\mathbb{R}P^2 を実射影平面とし、Σ0=S2\Sigma_0=S^2、Σg\Sigma_g を T2T^2 の gg 個の連結和、NkN_k を RP2\mathbb{R}P^2 の kk 個の連結和とします。向き付けられた連結な多様体の連結和が、向きを保つ微分同相を除いて定まることは 系 6.4[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] のとおりです。向きを決めていない連結な閉曲面 M1M_1、M2M_2(RP2\mathbb{R}P^2 のように向き付け不可能なものを含む)については、定義 6.3[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] の構成を、円板の埋め込み f1f_1、f2f_2 を任意に 1 組選んで行ったものを連結和 M1#M2M_1\#M_2 と呼びます。曲面の場合、その微分同相類が f1f_1、f2f_2 や向きの選び方によらないことは、定理 7.5 の証明の中で示します。

MM を連結な閉曲面とします。系 5.9 の Morse 関数 ff を取ると、D0=f−1([−12,12])D_0=f^{-1}([-\tfrac12,\tfrac12]) と D2=f−1([32,52])D_2=f^{-1}([\tfrac32,\tfrac52]) は円板で、定理 3.6 により

W1:=f−1([−12,32])=D0∪S1ω(S1;φ1,…,φm),φj ⁣:S0×D1→S1=∂D0W^1:=f^{-1}([-\tfrac12,\tfrac32])=D_0\cup_{S^1}\omega(S^1;\varphi_1,\dots,\varphi_m),\qquad\varphi_j\colon S^0\times D^1\to S^1=\partial D_0

です。W1W^1 は円板 D0D_0 に mm 本の帯 hj=D1×D1h_j=D^1\times D^1 を貼ったもので、∂W1=∂D2\partial W^1=\partial D_2 は 1 つの円周です。定理 7.3[Morse 理論] の 2 により χ(M)=2−m\chi(M)=2-m です。

∂D0\partial D_0 に反時計回りの向きを入れます。帯 hjh_j の 2 つの足 φj({±1}×D1)\varphi_j(\{\pm1\}\times D^1) のそれぞれに、t↦φj(±1,t)t\mapsto\varphi_j(\pm1,t) が反時計回りなら指数 +1+1、時計回りなら −1-1 を付けます。∂D0\partial D_0 を 1 周して、出会う足を順に aj±1a_j^{\pm1}(aja_j は帯 hjh_j の名前)と書いた巡回語を、この分解の語といいます。各文字はちょうど 2 回現れます。帯の D1D^1 方向の反転 (s,t)↦(s,−t)(s,t)\mapsto(s,-t) は hjh_j の微分同相なので、1 つの文字の 2 か所の指数を同時に反転した語は同じ W1W^1 を表します。

帯 D1×D1D^1\times D^1 に向き ds∧dtds\wedge dt を入れると、境界としての向きは足 s=1s=1 で tt の増える向き、足 s=−1s=-1 で tt の減る向きです。D0D_0 の向きが帯の上に延びるのは、貼り合わせる弧の上で 2 つの境界の向きが逆になるとき、すなわち s=1s=1 の足の指数が −1-1、s=−1s=-1 の足の指数が +1+1 のとき(および、帯の向きを逆にした、両方反対の場合)です。よって

  • 2 つの足の指数が逆(⋯a⋯a−1⋯\cdots a\cdots a^{-1}\cdots)  ⟺  \iff D0∪hD_0\cup h は向き付け可能(円環)。このとき aa をねじれていないという。
  • 2 つの足の指数が同じ(⋯a⋯a⋯\cdots a\cdots a\cdots)  ⟺  \iff D0∪hD_0\cup h は向き付け不可能(Möbius の帯)。このとき aa をねじれているという。
D₀ababa⁻¹b⁻¹
円板 D₀ に 2 本の帯 a, b を貼った W¹。足の並びは a, b, a⁻¹, b⁻¹ で、境界は 1 つの円周になり、円板 D₂ でふたをするとトーラスになる。帯 b の足は、帯 a を付けた曲面の境界に沿って動かせる(滑らせ)。

補題 7.1(円周の微分同相)✓

S1S^1 の向きを保つ微分同相は恒等写像にイソトピックである。S1S^1 の任意の微分同相は D2D^2 の微分同相に延びる。

証明(補題 7.1)

S1=R/ZS^1=\mathbb{R}/\mathbb{Z} とし、向きを保つ微分同相 hh の持ち上げ h~ ⁣:R→R\tilde h\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R} を取ると(定理 3.6[基本群と被覆空間])、h~(t+1)=h~(t)+1\tilde h(t+1)=\tilde h(t)+1、h~′>0\tilde h'\gt0 です。h~s(t)=(1−s)h~(t)+st\tilde h_s(t)=(1-s)\tilde h(t)+st も同じ 2 条件を満たすので S1S^1 の微分同相 hsh_s を定め、h0=hh_0=h、h1=idh_1=\mathrm{id} です。[0,1][0,1] 上の滑らかな関数 τ\tau を [0,13][0,\tfrac13] で 11、[23,1][\tfrac23,1] で 00 に取り、H(re2πit)=re2πih~τ(r)(t)H(re^{2\pi it})=re^{2\pi i\tilde h_{\tau(r)}(t)} とおくと、HH は r≤13r\le\tfrac13 で恒等写像、r=1r=1 で hh となる D2D^2 の微分同相です。向きを逆にする微分同相は、鏡映(線形写像なので D2D^2 に延びる)と向きを保つものの合成です。

補題 7.2(語が曲面を決める)✓

語が等しい(巡回的な並べ替えと文字の名前の付け替え、1 つの文字の 2 か所の指数の同時反転を除いて等しい)2 つの「帯の付いた円板」は微分同相である。∂W1\partial W^1 が円周のとき、W1W^1 に円板を貼って得られる閉曲面は貼り方によらず、W1W^1 の微分同相類だけで決まる。

また、次が成り立つ(足の置き直し)。Σ\Sigma を S1S^1 に微分同相な向き付けられた多様体とし、e1,…,ere_1,\dots,e_r と e1′,…,er′e_1',\dots,e_r'(r≥1r\ge1)を、それぞれ像が互いに交わらない埋め込み D1→ΣD^1\to\Sigma(少し大きい開区間の埋め込みに延びるもの)の組とする。Σ\Sigma を正の向きに 1 周して像に出会う巡回順序がどちらの組でも添字の順で、各 ll について ele_l と el′e_l' がともに向きを保つか、ともに向きを逆にするならば、Σ\Sigma の向きを保つ微分同相 kk で k∘el=el′k\circ e_l=e_l'(すべての ll)となるものが存在する。

証明(補題 7.2)

足の置き直し。 最後の主張から示します。向きを保つ微分同相で Σ=R/Z\Sigma=\mathbb{R}/\mathbb{Z} としてよく、延長した開区間は、小さく取り直して、組ごとに像が互いに交わらないとしてよいです。gl=el′∘el−1g_l=e_l'\circ e_l^{-1} は、ele_l の延長の像から el′e_l' の延長の像への微分同相で、仮定により向きを保ちます。el(D1)e_l(D^1) の正の向きの側の端点から、次の el+1(D1)e_{l+1}(D^1)(er+1=e1e_{r+1}=e_1)の負の向きの側の端点までの閉じた弧を JlJ_l、e′e' について同じものを Jl′J_l' とします。巡回順序の仮定から、Σ\Sigma は el(D1)e_l(D^1) たちと JlJ_l たちの和で、これらは端点でだけ交わり、el′(D1)e_l'(D^1) と Jl′J_l' についても同じです。JlJ_l、Jl′J_l' を、R\mathbb{R} の区間の像と見て向きを保つ 1 次式でそれぞれ [0,1][0,1] と同一視すると、glg_l は 00 の近傍で、gl+1g_{l+1} は 11 の近傍で定義された導関数が正の滑らかな関数 γ0\gamma_0、γ1\gamma_1 で、γ0(0)=0\gamma_0(0)=0、γ1(1)=1\gamma_1(1)=1 となるものを与えます。δ∈(0,13)\delta\in(0,\tfrac13) を、γ0\gamma_0 が [0,δ][0,\delta]、γ1\gamma_1 が [1−δ,1][1-\delta,1] で定義され、γ0(δ)<13\gamma_0(\delta)\lt\tfrac13、γ1(1−δ)>23\gamma_1(1-\delta)\gt\tfrac23 となるように取ります。[0,1][0,1] 上の滑らかな関数 ρ0,ρ1,β\rho_0,\rho_1,\beta を、値が [0,1][0,1] に入り、ρ0\rho_0 は [0,δ2][0,\tfrac\delta2] で 11、[δ,1][\delta,1] で 00、ρ1\rho_1 は [1−δ2,1][1-\tfrac\delta2,1] で 11、[0,1−δ][0,1-\delta] で 00、β\beta は (δ2,1−δ2)(\tfrac\delta2,1-\tfrac\delta2) で正、その外で 00 となるように取り、

p=ρ0γ0′+ρ1γ1′+c β,c=(1−∫01ρ0γ0′−∫01ρ1γ1′)/∫01βp=\rho_0\gamma_0'+\rho_1\gamma_1'+c\,\beta,\qquad c=\Bigl(1-\int_0^1\rho_0\gamma_0'-\int_0^1\rho_1\gamma_1'\Bigr)\Big/\int_0^1\beta

とおきます。∫01ρ0γ0′≤γ0(δ)<13\int_0^1\rho_0\gamma_0'\le\gamma_0(\delta)\lt\tfrac13、∫01ρ1γ1′≤1−γ1(1−δ)<13\int_0^1\rho_1\gamma_1'\le1-\gamma_1(1-\delta)\lt\tfrac13 なので c>0c\gt0 で、pp は [0,1][0,1] 上で正、∫01p=1\int_0^1p=1 です。kl(x)=∫0xpk_l(x)=\int_0^xp は [0,1][0,1] の微分同相で、[0,δ2][0,\tfrac\delta2] で γ0\gamma_0 に、[1−δ2,1][1-\tfrac\delta2,1] で 1−∫x1γ1′=γ11-\int_x^1\gamma_1'=\gamma_1 に一致します。kk を、el(D1)e_l(D^1) の上で glg_l、JlJ_l の上で klk_l(Jl→Jl′J_l\to J_l' と見たもの)と定めると、JlJ_l の端点の近傍で klk_l は glg_l、gl+1g_{l+1} に一致するので kk は滑らかで、導関数は正、全単射なので、Σ\Sigma の向きを保つ微分同相で k∘el=el′k\circ e_l=e_l' です。

語と W1W^1。 文字の名前の付け替えは接着写像の添字の付け替えです。語は、1 つの文字の 2 つの足のどちらが s=−1s=-1 の足かを区別しません。この入れ替えと、2 か所の指数の同時反転は、φj\varphi_j を φj∘(A1×A2)\varphi_j\circ(A_1\times A_2)(A1,A2∈{±1}=O(1)A_1,A_2\in\{\pm1\}=O(1))に替えることにあたり、補題 3.5 の 3(gg と GG は恒等写像)により W1W^1 の微分同相類を変えません。そこで、2 組の接着写像 (φj)(\varphi_j)、(φj′)(\varphi_j') の足が、s=±1s=\pm1 の区別も込めて、S1S^1 の上で同じ巡回順序・同じ指数で並んでいるとします。文字が無ければ示すことはありません。2m2m 個の足 φj(u,⋅)\varphi_j(u,\cdot) と φj′(u,⋅)\varphi_j'(u,\cdot)(u=±1u=\pm1)は、巡回順序が同じで、指数が同じなので対応する足は S1S^1 の向きについて同じ向きです。上で示した足の置き直しにより、S1S^1 の向きを保つ微分同相 kk で k∘φj=φj′k\circ\varphi_j=\varphi_j' となるものがあります。補題 7.1 により kk は恒等写像と微分同相の滑らかな族 ktk_t で結ばれ、(kt∘φj)j(k_t\circ\varphi_j)_j は各時刻で像が互いに交わらないので、(φj)(\varphi_j) と (φj′)(\varphi_j') は組としてイソトピックです。命題 3.8 の 2(組の場合)により、2 つの W1W^1 は微分同相です。閉曲面についての主張は、2 通りの貼り方の違いが ∂D2=S1\partial D^2=S^1 の微分同相で、それが D2D^2 に延びること(補題 7.1)から従います。

語 ww の表す W1W^1 を W(w)W(w)、∂W(w)\partial W(w) が円周のとき円板でふたをした閉曲面を M(w)M(w) と書きます。空の語では W=D0W=D_0、M=S2M=S^2(2 つの円板を境界で貼ったもの。例 3.10)です。

大文字 U,V,…U,V,\dots は語の一部(文字の列)を表し、U−1U^{-1} は UU の文字の順序を逆にしてすべての指数を反転したものとします。

補題 7.3(帯の滑らせの規則)✓

次の語の書き換えは W(w)W(w) の微分同相類を変えない。

  1. (ねじれていない帯)a U a−1 Va\,U\,a^{-1}\,V において、UU と VV をそれぞれ巡回的に並べ替える。
  2. (ねじれた帯)a U1U2 a V → a U1 a V U2−1a\,U_1U_2\,a\,V\ \to\ a\,U_1\,a\,V\,U_2^{-1}、および a U1U2 a V → a U2 a U1−1 Va\,U_1U_2\,a\,V\ \to\ a\,U_2\,a\,U_1^{-1}\,V。
  3. (閉じた部分語)w=B Tw=B\,T で、BB の各文字が BB の中に 2 回現れ、∂W(B)\partial W(B) が連結なとき、TT を巡回的に並べ替える。
証明(補題 7.3)

語 ww の接着写像を φ1,…,φm ⁣:S0×D1→S1\varphi_1,\dots,\varphi_m\colon S^0\times D^1\to S^1 とします。隙間・足の前後・グラフ Γ\Gamma の言葉は §7.4 の 補題 7.10 の直前で定めたものを、χ(S1;⋅)\chi(S^1;\cdot) の点集合としての形は同補題の 5 を使います(その証明はこの補題を使いません)。

準備 1:帯を 2 組に分ける。 文字の集合を I1I_1 と I2I_2 に分け、

X=D2∪S1ω(S1;(φi)i∈I1),S′=∂X=χ(S1;(φi)i∈I1),R=S1∖⋃i∈I1φi(S0×D1)X=D^2\cup_{S^1}\omega\bigl(S^1;(\varphi_i)_{i\in I_1}\bigr),\qquad S'=\partial X=\chi\bigl(S^1;(\varphi_i)_{i\in I_1}\bigr),\qquad R=S^1\setminus\bigcup_{i\in I_1}\varphi_i(S^0\times D^1)

とおきます。RR は S′S' の開集合で、その上で S′S' の構造は S1S^1 の構造と同じです(補題 3.3 の上の境界の記述と 定義 3.2 の 1。χ\chi は開集合どうしを微分同相で貼った商で、もとの 2 つの部分は開集合になり、構造はその上でもとのものです)。φj\varphi_j(j∈I2j\in I_2)は RR への接着写像です。(φj′)j∈I2(\varphi_j')_{j\in I_2} を、像が互いに交わらない RR への接着写像の組とし、S′S' の微分同相の滑らかな族 ktk_t(0≤t≤10\le t\le1、k0=idk_0=\mathrm{id})で k1∘φj=φj′k_1\circ\varphi_j=\varphi_j'(j∈I2j\in I_2)となるものがあるとします。(φi)i∈I1(\varphi_i)_{i\in I_1} と (φj′)j∈I2(\varphi_j')_{j\in I_2} の足の並びの語を w′w' とすると、W(w)≅W(w′)W(w)\cong W(w') です。実際、補題 5.7(W=D2 ⁣:∅⇝S1W=D^2\colon\varnothing\rightsquigarrow S^1、M=S1M=S^1)を 2 回使うと

W(w)≅X∪S′ω(S′;(φj)j∈I2),W(w′)≅X∪S′ω(S′;(φj′)j∈I2)W(w)\cong X\cup_{S'}\omega\bigl(S';(\varphi_j)_{j\in I_2}\bigr),\qquad W(w')\cong X\cup_{S'}\omega\bigl(S';(\varphi_j')_{j\in I_2}\bigr)

で、(kt∘φj)j∈I2(k_t\circ\varphi_j)_{j\in I_2} は各時刻で像が互いに交わらない S′S' への接着写像の族なので、命題 3.8 の 2(組の場合)により右辺どうしは微分同相です。

準備 2:1 つの成分の上で足を置き直す。 Σ\Sigma を S′S' の連結成分とします。Σ\Sigma はコンパクトで連結な境界のない 1 次元多様体なので円周に微分同相で(定理 4.4[横断性])、向きを 1 つ決めます。I2I_2 の足(φj({u}×D1)\varphi_j(\{u\}\times D^1)、D1D^1 の埋め込みと見る)のうち Σ\Sigma の上にあるものを、Σ\Sigma を正の向きに 1 周して出会う順に e1,…,ere_1,\dots,e_r とします。e1′,…,er′e_1',\dots,e_r' を、Σ∩R\Sigma\cap R への、像が互いに交わらない D1D^1 の埋め込み(少し大きい開区間に延びるもの)で、

  • Σ\Sigma を正の向きに 1 周すると、巡回順序として e1′,…,er′e_1',\dots,e_r' の順に出会い、
  • 各 ll について、ele_l と el′e_l' は Σ\Sigma の向きについて同じ向きである(ともに向きを保つか、ともに逆にする)

ものとします。このとき、補題 7.2 の足の置き直しの主張により、Σ\Sigma の向きを保つ微分同相 kk で k∘el=el′k\circ e_l=e_l' となるものがあります(Σ\Sigma の上に足が無ければ kk は恒等写像とします)。補題 7.1 により kk は恒等写像に微分同相の滑らかな族で結ばれます。これを各成分で行ったものが準備 1 の ktk_t です。したがって、S′S' の各成分の上で、足を、正の向きの巡回順序と成分の向きについての向きを保ったまま RR の中に置き直しても、W(w)W(w) の微分同相類は変わりません(☆)。置き直した足の指数は、置いた場所での Σ\Sigma の向きが反時計回りと一致すればもとの足の Σ\Sigma についての向きと同じ符号、逆なら反対の符号です。

準備 3:隙間の中の列は回せる。 γ\gamma を I1I_1 の語の隙間の 1 つ、Σ\Sigma を γ\gamma を含む S′S' の成分とし、Σ\Sigma の上にある I2I_2 の足がすべて γ\gamma の中にあるとします。γ\gamma は円周 Σ\Sigma の連結な開集合で Σ\Sigma 全体ではない(コンパクトでない)ので開いた弧で、γ\gamma は連結なので、Σ\Sigma の向きを γ\gamma の上で反時計回りと一致するように選べます。γ\gamma の中の足を反時計回りに e1,…,ere_1,\dots,e_r とすると、これが Σ\Sigma を正の向きに 1 周して出会う順です。el′e_l' を γ∩R\gamma\cap R の中に、反時計回りに e2′,…,er′,e1′e_2',\dots,e_r',e_1' の順に、指数を変えずに取ると、巡回順序は同じなので (☆) が使えます。これを繰り返すと、γ\gamma の中の足の列を任意に巡回的に並べ替えられます。

1。 I1={a}I_1=\{a\} とします。語 a a−1a\,a^{-1} の隙間は、aa の後ろ(=a−1=a^{-1} の前)の隙間 γU\gamma_U と、a−1a^{-1} の後ろ(=a=a の前)の隙間 γV\gamma_V の 2 つで、UU の足は γU\gamma_U に、VV の足は γV\gamma_V にあります。aa はねじれていないので、Γ(a a−1)\Gamma(a\,a^{-1}) の辺は {a の後ろ,a−1 の前}={γU,γU}\{a\text{ の後ろ},a^{-1}\text{ の前}\}=\{\gamma_U,\gamma_U\} と {γV,γV}\{\gamma_V,\gamma_V\} で、補題 7.10 の 1 により γU\gamma_U と γV\gamma_V は S′S' の異なる成分 ΣU\Sigma_U、ΣV\Sigma_V に入ります。I2I_2 の足はすべて γU∪γV\gamma_U\cup\gamma_V にあるので、ΣU\Sigma_U の上の足はすべて γU\gamma_U にあり、準備 3 により UU を巡回的に並べ替えられます。VV も同様です。

2。 I1={a}I_1=\{a\} とし、aa の 2 つの足を反時計回りに第 1、第 2 の足、その指数(等しい)を ι\iota とします。隙間は、第 1 の足の後ろ(== 第 2 の足の前)の γU\gamma_U と、第 2 の足の後ろ(== 第 1 の足の前)の γV\gamma_V です。補題 7.10 の 5 により、点集合として S′=γU⊔γV⊔{n+,n−}S'=\gamma_U\sqcup\gamma_V\sqcup\{n_+,n_-\}(nvn_v は D˚1×S0\mathring D^1\times S^0 の点 (0,v)(0,v))で、nvn_v の近傍の基は、nvn_v と、2 つの足の中心の「vι=1v\iota=1 なら反時計回り側、vι=−1v\iota=-1 なら時計回り側」の短い弧からなる集合で与えられます。γU\gamma_U、γV\gamma_V を反時計回りに径数づける微分同相 x ⁣:(0,1)→γUx\colon(0,1)\to\gamma_U、y ⁣:(0,1)→γVy\colon(0,1)\to\gamma_V を取ると、nιn_\iota の近傍は 2 つの隙間の始まりの側(x(s)x(s)、y(s)y(s) で ss が 00 に近い点)、n−ιn_{-\iota} の近傍は終わりの側(ss が 11 に近い点)からなります。よって

c ⁣:R/2Z→S′,c(0)=nι,c(s)=x(s) (0<s<1),c(1)=n−ι,c(s)=y(2−s) (1<s<2)c\colon\mathbb{R}/2\mathbb{Z}\to S',\qquad c(0)=n_\iota,\quad c(s)=x(s)\ (0\lt s\lt1),\quad c(1)=n_{-\iota},\quad c(s)=y(2-s)\ (1\lt s\lt2)

は連続な全単射で、コンパクト空間から Hausdorff 空間への写像なので同相写像です。したがって S′S' は連結で、1 つの円周 Σ\Sigma です。Σ\Sigma の向きを γU\gamma_U の上で反時計回りと一致するように選びます。向きを保つ微分同相 S1→ΣS^1\to\Sigma と cc はどちらも円周からの同相写像で、円周の間の同相写像は巡回順序を保つか逆にするかのどちらかなので(R\mathbb{R} への持ち上げは連続な単射で、狭義単調だからです)、cc は(γU\gamma_U の上で、したがって全体で)ss の増える向きを Σ\Sigma の正の向きに写します。よって Σ\Sigma の向きは γV\gamma_V の上では時計回りで、Σ\Sigma を正の向きに 1 周すると、UU の足に反時計回りの順に出会い、続いて VV の足に時計回りの順に出会います。

U=U1U2U=U_1U_2 の足を反時計回りに e1,…,eke_1,\dots,e_k(U1U_1)、ek+1,…,epe_{k+1},\dots,e_p(U2U_2)、VV の足を反時計回りに f1,…,fqf_1,\dots,f_q とすると、正の向きの巡回順序は e1,…,ep,fq,…,f1e_1,\dots,e_p,f_q,\dots,f_1 です。(☆) で次のように置き直します。第 1 に、e1′,…,ek′e_1',\dots,e_k' を γU\gamma_U に反時計回りにこの順に置き、γV\gamma_V には時計回りに ek+1′,…,ep′,fq′,…,f1′e_{k+1}',\dots,e_p',f_q',\dots,f_1' の順に置きます。巡回順序は同じです。γV\gamma_V を反時計回りに読むと f1′,…,fq′,ep′,…,ek+1′f_1',\dots,f_q',e_p',\dots,e_{k+1}' で、fl′f_l' の指数はもとのまま、γU\gamma_U から移った el′e_l' の指数は、Σ\Sigma の向きが γV\gamma_V では時計回りなので反転します。語は a U1 a V U2−1a\,U_1\,a\,V\,U_2^{-1} です。第 2 に、ek+1′,…,ep′e_{k+1}',\dots,e_p' を γU\gamma_U に反時計回りに置き、γV\gamma_V には時計回りに fq′,…,f1′,e1′,…,ek′f_q',\dots,f_1',e_1',\dots,e_k' の順に置きます。巡回順序 ek+1,…,ep,fq,…,f1,e1,…,eke_{k+1},\dots,e_p,f_q,\dots,f_1,e_1,\dots,e_k はもとと同じです。γV\gamma_V を反時計回りに読むと ek′,…,e1′,f1′,…,fq′e_k',\dots,e_1',f_1',\dots,f_q' で、語は a U2 a U1−1 Va\,U_2\,a\,U_1^{-1}\,V です。

3。 I1I_1 を BB の文字の全体とします。S′=∂W(B)S'=\partial W(B) は連結なので 1 つの成分 Σ\Sigma で、TT の足はすべて、BB の語の隙間のうち BB の最後の足の後ろ(== 最初の足の前)のもの γ\gamma の中にあります。準備 3 により TT を巡回的に並べ替えられます。

命題 7.4(語の標準形)✓

∂W(w)\partial W(w) が連結な語 ww は、補題 7.3 の書き換えと文字の名前・指数の付け替えで、

c1c1⋯ckck(k≥1)またはa1b1a1−1b1−1⋯agbgag−1bg−1(g≥0)c_1c_1\cdots c_kc_k\quad(k\ge1)\qquad\text{または}\qquad a_1b_1a_1^{-1}b_1^{-1}\cdots a_gb_ga_g^{-1}b_g^{-1}\quad(g\ge0)

のどちらかに直せる。ww にねじれた文字があれば前者、無ければ後者になり、文字の個数は変わらない。

証明(命題 7.4)

境界の成分の個数は、§7.4 の 補題 7.10(語だけから決まるグラフの連結成分の個数として数える。その証明はこの命題を使いません)で数えます。以下「書き換え」は、補題 7.3 の規則 1〜3、巡回語としての読み直し、文字の名前の付け替え、1 つの文字の 2 か所の指数の同時反転を有限回行うことを指します。

第 0 段:部分語の書き換えは全体の書き換え。 BB を、各文字が BB の中に 2 回現れ、∂W(B)\partial W(B) が連結な語とし、巡回語 TT が書き換えで T′T' になるとします。このとき BTBT は書き換えで BT′BT' になります。1 回の操作について示せば十分です。規則 3 により、BTBT の中で TT は巡回的に並べ替えられるので、TT の巡回語としての読み直しは BTBT の書き換えです。名前と指数の付け替えはそのまま行えます。

  • 規則 1。T=a U a−1 VT=a\,U\,a^{-1}\,V、T′=a U′ a−1 V2V1T'=a\,U'\,a^{-1}\,V_2V_1(U′U' は UU の巡回的な並べ替え、V=V1V2V=V_1V_2)とします。BTBT を巡回語として a U a−1 (VB)a\,U\,a^{-1}\,(VB) と読み、規則 1 で UU を U′U' に、V1V2BV_1V_2B を V2BV1V_2BV_1 に並べ替えると a U′ a−1 V2BV1=B (V1 a U′ a−1 V2)a\,U'\,a^{-1}\,V_2BV_1=B\,(V_1\,a\,U'\,a^{-1}\,V_2) で、規則 3 で括弧の中を並べ替えると B a U′ a−1 V2V1=BT′B\,a\,U'\,a^{-1}\,V_2V_1=BT' です。
  • 規則 2。T=a U1U2 a VT=a\,U_1U_2\,a\,V とします。BT=a U1U2 a (VB)BT=a\,U_1U_2\,a\,(VB) に第 1 の書き換えを使うと a U1 a VB U2−1=B (U2−1 a U1 a V)a\,U_1\,a\,VB\,U_2^{-1}=B\,(U_2^{-1}\,a\,U_1\,a\,V) で、規則 3 で B a U1 a V U2−1B\,a\,U_1\,a\,V\,U_2^{-1} になります。第 2 の書き換えを使うと a U2 a U1−1 VB=B a U2 a U1−1 Va\,U_2\,a\,U_1^{-1}\,VB=B\,a\,U_2\,a\,U_1^{-1}\,V です。
  • 規則 3。T=B′ T′′T=B'\,T''(B′B' の各文字は B′B' の中に 2 回現れ、∂W(B′)\partial W(B') は連結)で、T′′T'' を巡回的に並べ替えるとします。BB′BB' の各文字は BB′BB' の中に 2 回現れ、補題 7.10 の 2 により ∂W(BB′)\partial W(BB') の成分の個数は 1+1−1=11+1-1=1 なので、BT=(BB′) T′′BT=(BB')\,T'' に規則 3 が使えます。

第 1 段:ブロックの積にする。 cccc と aba−1b−1aba^{-1}b^{-1} の形の部分語をブロックと呼び、文字数についての帰納法で、∂W(w)\partial W(w) が連結な語 ww が書き換えでブロックの積に直せることを示します。空の語は g=0g=0 の場合です。ブロック BB について ∂W(B)\partial W(B) は連結です(補題 7.10 の 3)。

ねじれた文字があるとき。 w=a U a Vw=a\,U\,a\,V と書き、規則 2 の第 1 の書き換えを U1=∅U_1=\varnothing、U2=UU_2=U で使うと a a V U−1a\,a\,V\,U^{-1} になります。B=aaB=aa はブロックで、T=VU−1T=VU^{-1} は残りの文字の語です(各文字が TT の中に 2 回現れます)。書き換えは W(⋅)W(\cdot) の微分同相類を変えないので ∂W(BT)\partial W(BT) は連結で、補題 7.10 の 2 により ∂W(T)\partial W(T) の成分の個数は ∂W(BT)\partial W(BT) と同じ、すなわち ∂W(T)\partial W(T) も連結です(TT が空なら示すことはありません)。帰納法の仮定で、巡回語 TT は書き換えでブロックの積 T∗T^\ast になり、第 0 段により BTBT は書き換えで BT∗BT^\ast になります。

ねじれた文字が無いとき。 文字 aa を取り w=a U a−1 Vw=a\,U\,a^{-1}\,V と書きます。足を UU と VV に 1 つずつもつ文字 bb があります。そうでなければ 補題 7.10 の 4 により ∂W(w)\partial W(w) が連結でないからです。bb はねじれていないので、指数を付け替えて w=a U1 b U2 a−1 V1 b−1 V2w=a\,U_1\,b\,U_2\,a^{-1}\,V_1\,b^{-1}\,V_2 とします。規則 1 を順に使います。

a U1bU2 a−1 V1b−1V2 → a bU2U1 a−1 b−1V2V1(a について U,V を回す) = b U2U1a−1 b−1 V2V1a(巡回語として読み直す) → b a−1U2U1 b−1 V2V1a(b について回す) = a b a−1 U2U1b−1V2V1(読み直す) → a b a−1 b−1V2V1U2U1(a について回す)\begin{aligned} a\,U_1bU_2\,a^{-1}\,V_1b^{-1}V_2&\ \to\ a\,bU_2U_1\,a^{-1}\,b^{-1}V_2V_1&&(a\text{ について }U,V\text{ を回す})\\ &\ =\ b\,U_2U_1a^{-1}\,b^{-1}\,V_2V_1a&&(\text{巡回語として読み直す})\\ &\ \to\ b\,a^{-1}U_2U_1\,b^{-1}\,V_2V_1a&&(b\text{ について回す})\\ &\ =\ a\,b\,a^{-1}\,U_2U_1b^{-1}V_2V_1&&(\text{読み直す})\\ &\ \to\ a\,b\,a^{-1}\,b^{-1}V_2V_1U_2U_1&&(a\text{ について回す}) \end{aligned}

B=aba−1b−1B=aba^{-1}b^{-1} はブロックで、T=V2V1U2U1T=V_2V_1U_2U_1 について、上と同じく ∂W(T)\partial W(T) は連結です(補題 7.10 の 2)。帰納法の仮定と第 0 段により、BTBT は書き換えでブロックの積になります。

第 2 段:ブロックを並べ替える。 規則 3 により、ブロック BB の隣の語 TT は巡回的に並べ替えられるので、B T1T2→B T2T1=T1BT2B\,T_1T_2\to B\,T_2T_1=T_1BT_2(巡回語として)となり、ブロックはほかの文字の列を飛び越せます。よってブロックの順序は自由です。

第 3 段:ねじれたブロックがあれば、すべてねじれたブロックにする。 cc aba−1b−1 Rcc\,aba^{-1}b^{-1}\,R を考えます。規則 2 を、どの文字について使うかを示しながら順に使います。

c c a b a−1b−1R = c (a⋅ba−1b−1R) c → c ba−1b−1R c a−1(c について。U1=a を後ろへ) = a−1 (b−1Rc) a−1 (cb)(読み直す。a はねじれた) → a−1a−1 c b c−1R−1b(a について。U=b−1Rc を前へ) = b (a−1a−1c) b (c−1R−1)(読み直す。b はねじれた) → b b c−1R−1 c−1 a a(b について) = c−1 (R−1) c−1 (a a b b)(読み直す) → c−1c−1 a a b b R(c について)\begin{aligned} c\,c\,a\,b\,a^{-1}b^{-1}R&\ =\ c\,(a\cdot ba^{-1}b^{-1}R)\,c&&\\ &\ \to\ c\,ba^{-1}b^{-1}R\,c\,a^{-1}&&(c\text{ について。}U_1=a\text{ を後ろへ})\\ &\ =\ a^{-1}\,(b^{-1}Rc)\,a^{-1}\,(cb)&&(\text{読み直す。}a\text{ はねじれた})\\ &\ \to\ a^{-1}a^{-1}\,c\,b\,c^{-1}R^{-1}b&&(a\text{ について。}U=b^{-1}Rc\text{ を前へ})\\ &\ =\ b\,(a^{-1}a^{-1}c)\,b\,(c^{-1}R^{-1})&&(\text{読み直す。}b\text{ はねじれた})\\ &\ \to\ b\,b\,c^{-1}R^{-1}\,c^{-1}\,a\,a&&(b\text{ について})\\ &\ =\ c^{-1}\,(R^{-1})\,c^{-1}\,(a\,a\,b\,b)&&(\text{読み直す})\\ &\ \to\ c^{-1}c^{-1}\,a\,a\,b\,b\,R&&(c\text{ について}) \end{aligned}

文字の指数を付け替えれば cc aa bb Rcc\,aa\,bb\,R です。よって、ねじれたブロックが 1 つでもあれば、aba−1b−1aba^{-1}b^{-1} の形のブロックを 1 つずつ aabbaabb に替えて、すべてを cccc の形にできます。

ねじれた文字の有無。 「語にねじれた文字がある」という性質は、どの書き換えでも変わりません。規則 1・3 と読み直しは指数を変えず、名前の付け替えと同時反転は各文字の 2 つの指数が等しいかどうかを変えません。規則 2 は、ねじれた文字 aa があるときにだけ使え、aa の指数を変えないので、使う前も後もねじれた文字があります。標準形 c1c1⋯ckckc_1c_1\cdots c_kc_k にはねじれた文字があり、a1b1a1−1b1−1⋯a_1b_1a_1^{-1}b_1^{-1}\cdots には無いので、標準形がどちらになるかは ww にねじれた文字があるかどうかで決まります。どの書き換えも文字を増減しません。

定理 7.5(閉曲面の分類定理)✓

連結な閉曲面 MM は、次のどれかちょうど 1 つに微分同相である。

  • 球面 S2=Σ0S^2=\Sigma_0、またはトーラスの gg 個の連結和 Σg\Sigma_g(g≥1g\ge1)。これらは向き付け可能で χ(Σg)=2−2g\chi(\Sigma_g)=2-2g。
  • 射影平面の kk 個の連結和 NkN_k(k≥1k\ge1)。これらは向き付け不可能で χ(Nk)=2−k\chi(N_k)=2-k。

とくに、連結な閉曲面は向き付け可能性と Euler 標数で微分同相を除いて決まる。また T2#RP2≅RP2#RP2#RP2T^2\#\mathbb{R}P^2\cong\mathbb{R}P^2\#\mathbb{R}P^2\#\mathbb{R}P^2 である。

証明(定理 7.5)

標準形の曲面。 Pg=M(a1b1a1−1b1−1⋯agbgag−1bg−1)P_g=M(a_1b_1a_1^{-1}b_1^{-1}\cdots a_gb_ga_g^{-1}b_g^{-1})(g≥0g\ge0。P0=S2P_0=S^2)、Qk=M(c1c1⋯ckck)Q_k=M(c_1c_1\cdots c_kc_k)(k≥1k\ge1)とおきます。どちらの語でも ∂W(w)\partial W(w) は連結です(空の語では W=D2W=D^2。ブロック B=ccB=cc、aba−1b−1aba^{-1}b^{-1} について ∂W(B)\partial W(B) は連結で、∂W(BT)\partial W(BT) の成分の個数は ∂W(T)\partial W(T) と同じなので(補題 7.10 の 3 と 2)、ブロックの個数についての帰納法で従います)。この証明で使う補題 補題 7.7、補題 7.8、補題 7.9、補題 7.10 は §7.4 で証明します(どれもこの定理を使いません)。補題 7.8 の 2・3 により、PgP_g、QkQ_k は連結な閉曲面で、PgP_g の語にはねじれた文字が無いので PgP_g は向き付け可能、QkQ_k の語の文字はねじれているので QkQ_k は向き付け不可能で、χ(Pg)=2−2g\chi(P_g)=2-2g、χ(Qk)=2−k\chi(Q_k)=2-k です。向き付け可能性は微分同相で保たれ、Euler 標数はホモトピー不変(系 4.3[胞体ホモロジーと写像度])なので、PgP_g(g≥0g\ge0)、QkQ_k(k≥1k\ge1)はどの 2 つも微分同相ではありません。

どの閉曲面も標準形のどれかに微分同相。 補題 7.8 の 1・2 により、連結な閉曲面 MM は M(w)M(w)(ww は m=2−χ(M)m=2-\chi(M) 文字の語で ∂W(w)\partial W(w) は連結)に微分同相です。命題 7.4 と 補題 7.2 により M≅PgM\cong P_g または M≅QkM\cong Q_k です。前段と合わせると、MM が向き付け可能なら M≅PgM\cong P_g(g=1−12χ(M)g=1-\tfrac12\chi(M))、向き付け不可能なら M≅QkM\cong Q_k(k=2−χ(M)k=2-\chi(M))で、連結な閉曲面は向き付け可能性と Euler 標数で微分同相を除いて決まります。とくに、向き付け可能な連結閉曲面の Euler 標数は偶数です。

連結和の Euler 標数と向き付け可能性。 M1M_1、M2M_2 を連結な閉曲面、M1#M2M_1\#M_2 を円板の埋め込み fi ⁣:BR→Mif_i\colon B_R\to M_i から作った連結和とします。系 6.4[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] の最後の主張(向きを決めていない場合)により、M1#M2M_1\#M_2 は連結な境界のない曲面で、Mi∖{fi(0)}M_i\setminus\{f_i(0)\} はその開部分多様体です。また、2 つのコンパクト集合 Xi=Mi∖fi(B1/2)X_i=M_i\setminus f_i(B_{1/2}) の像の和なのでコンパクトです。次の (i)(ii) を示します。

(i) χ(M1#M2)=χ(M1)+χ(M2)−2\chi(M_1\#M_2)=\chi(M_1)+\chi(M_2)-2。Ci=fi({∣x∣=12})C_i=f_i(\{|x|=\tfrac12\})、Ei=fi({∣x∣≤12})E_i=f_i(\{|x|\le\tfrac12\}) とします。XiX_i は MiM_i の閉集合で、CiC_i の点のまわりでは fif_i と極座標がチャートを与えるので、XiX_i は円周 CiC_i を境界とするコンパクトな曲面です。同境 X1 ⁣:∅⇝C1X_1\colon\varnothing\rightsquigarrow C_1、X2 ⁣:C2⇝∅X_2\colon C_2\rightsquigarrow\varnothing の上の Morse 関数 g1g_1、g2g_2 を取り(命題 2.3)、gig_i の臨界点の指数の符号 (−1)λ(-1)^\lambda の和を σi\sigma_i とします。補題 2.5[同境と Pontryagin–Thom 構成](その証明はこの節の結果を使いません)により χ(X1)=σ1\chi(X_1)=\sigma_1、χ(X2)=χ(C2)+σ2=σ2\chi(X_2)=\chi(C_2)+\sigma_2=\sigma_2 です(閉 1 次元多様体 C2C_2 の Euler 標数は 00。命題 6.2 の 2)。以下、∣z∣=12|z|=\tfrac12、0≤t<10\le t\lt1 とし、CiC_i の XiX_i でのカラー ci(fi(z),t)=fi((1+t)z)c_i(f_i(z),t)=f_i((1+t)z) と、EiE_i でのカラー ci′(fi(z),t)=fi((1−t)z)c_i'(f_i(z),t)=f_i((1-t)z) を使います。

M1M_1。 E1E_1 の上の関数 −∣f1−1(⋅)∣2-|f_1^{-1}(\cdot)|^2 は、値域を [−14,1][-\tfrac14,1] と見ると、同境 E1 ⁣:C1⇝∅E_1\colon C_1\rightsquigarrow\varnothing の上の Morse 関数で、臨界点は指数 22 の f1(0)f_1(0) だけです。X1X_1 と E1E_1 を C1C_1 の恒等写像で貼り合わせると、カラー (c1,c1′)(c_1,c_1') による継ぎ目のチャート(定義 7.1[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] の式)は、t≤0t\le0 で c1(f1(z),−t)c_1(f_1(z),-t)、t≥0t\ge0 で c1′(f1(z),t)c_1'(f_1(z),t)、すなわち κ(f1(z),t)=f1((1−t)z)\kappa(f_1(z),t)=f_1((1-t)z)(−1<t<1-1\lt t\lt1)で、M1M_1 の開集合 f1({0<∣x∣<1})f_1(\{0\lt|x|\lt1\}) への微分同相です。残りのチャートは M1M_1 の開集合 X1∖C1X_1\setminus C_1、E1∖C1E_1\setminus C_1 のチャートなので、このカラーによる貼り合わせの構造は M1M_1 の構造と同じです。補題 7.7 により、M1M_1 の上に、臨界点が g1g_1 のものと指数 22 の 1 点からなる Morse 関数があり、補題 2.5[同境と Pontryagin–Thom 構成] により χ(M1)=σ1+1=χ(X1)+1\chi(M_1)=\sigma_1+1=\chi(X_1)+1 です。

M2M_2。 E2E_2 の上の関数 ∣f2−1(⋅)∣2|f_2^{-1}(\cdot)|^2 は、値域を [−1,14][-1,\tfrac14] と見ると、同境 E2 ⁣:∅⇝C2E_2\colon\varnothing\rightsquigarrow C_2 の上の Morse 関数で、臨界点は指数 00 の 1 点だけです。E2E_2 と X2X_2 をカラー (c2′,c2)(c_2',c_2) で貼り合わせると、継ぎ目のチャートは κ(f2(z),t)=f2((1+t)z)\kappa(f_2(z),t)=f_2((1+t)z) で、同じ理由で構造は M2M_2 の構造と同じです。よって χ(M2)=1+σ2=χ(X2)+1\chi(M_2)=1+\sigma_2=\chi(X_2)+1 です。

M1#M2M_1\#M_2。 M1#M2M_1\#M_2 は X1X_1 と X2X_2 の像の和で、f1(tu)f_1(tu)(12<t<1\tfrac12\lt t\lt1)は f2((1−t)u)∉X2f_2((1-t)u)\notin X_2 と同一視されるので、2 つの像は C1C_1 と C2C_2 の像でだけ交わり、そこでは f1(z)∼f2(z)f_1(z)\sim f_2(z)(∣z∣=12|z|=\tfrac12)です。よって M1#M2M_1\#M_2 は、点集合として、X1X_1 と X2X_2 を h ⁣:C1→C2h\colon C_1\to C_2、h(f1(z))=f2(z)h(f_1(z))=f_2(z) で貼り合わせたものです。カラー (c1,c2)(c_1,c_2) による継ぎ目のチャートは、t≤0t\le0 で c1(f1(z),−t)=f1((1−t)z)c_1(f_1(z),-t)=f_1((1-t)z)、t≥0t\ge0 で c2(f2(z),t)=f2((1+t)z)c_2(f_2(z),t)=f_2((1+t)z) です。z=12uz=\tfrac12u(∣u∣=1|u|=1)と書くと、連結和の同一視 f2((1−s)u)∼f1(su)f_2((1-s)u)\sim f_1(su) を s=12(1−t)s=\tfrac12(1-t) で使って f2((1+t)z)∼f1((1−t)z)f_2((1+t)z)\sim f_1((1-t)z) なので、κ(f1(z),t)\kappa(f_1(z),t) は −1<t<1-1\lt t\lt1 の全体で f1((1−t)z)f_1((1-t)z) の類で、M1#M2M_1\#M_2 の開集合(f1({0<∣x∣<1})f_1(\{0\lt|x|\lt1\}) の像)への微分同相です。残りのチャートは Mi∖{fi(0)}M_i\setminus\{f_i(0)\} の開集合 Xi∖CiX_i\setminus C_i のチャートなので、貼り合わせの構造は M1#M2M_1\#M_2 の構造と同じです。補題 7.7 により、M1#M2M_1\#M_2 の上に、臨界点が g1g_1 と g2g_2 のものからなる Morse 関数があり、χ(M1#M2)=σ1+σ2=χ(X1)+χ(X2)=χ(M1)+χ(M2)−2\chi(M_1\#M_2)=\sigma_1+\sigma_2=\chi(X_1)+\chi(X_2)=\chi(M_1)+\chi(M_2)-2 です。

(ii) M1#M2M_1\#M_2 が向き付け可能であることと、M1M_1、M2M_2 がともに向き付け可能であることは同値です。M1M_1、M2M_2 が向き付け可能なら、連結なので、f1f_1 が向きを保ち f2f_2 が向きを逆にするようにそれぞれの向きを選べて、系 6.4[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] により M1#M2M_1\#M_2 は向き付けられます。逆に M1#M2M_1\#M_2 が向き付け可能なら、その開部分多様体 M1∖{f1(0)}M_1\setminus\{f_1(0)\} も向き付け可能です。その向きは、連結な f1(BR∖{0})f_1(B_R\setminus\{0\}) の上で、f1f_1 が R2\mathbb{R}^2 の向きから定める向きかその逆に一致するので、f1(BR)f_1(B_R) の上のその向きと貼り合わせて M1M_1 全体の向きに延びます。M2M_2 も同様です。

連結和は標準形。 T2=S1×S1T^2=S^1\times S^1 は連結な閉曲面で、向き付け可能、χ(T2)=0\chi(T^2)=0 です(補題 7.9)。(i)(ii) を繰り返し使うと、T2T^2 の gg 個の連結和は、埋め込みの選び方によらず、向き付け可能で Euler 標数が 0⋅g−2(g−1)=2−2g0\cdot g-2(g-1)=2-2g の連結な閉曲面です。よって前々段により PgP_g に微分同相で、Σg≅Pg\Sigma_g\cong P_g は選び方によらずに定まります(g=0g=0 では Σ0=S2=P0\Sigma_0=S^2=P_0)。RP2\mathbb{R}P^2 は連結な閉曲面で χ(RP2)=1\chi(\mathbb{R}P^2)=1(補題 7.9)は奇数なので、向き付け不可能で、RP2≅Q1\mathbb{R}P^2\cong Q_1 です。(i)(ii) により、RP2\mathbb{R}P^2 の kk 個の連結和は向き付け不可能で Euler 標数が k−2(k−1)=2−kk-2(k-1)=2-k の連結な閉曲面なので、Nk≅QkN_k\cong Q_k がやはり選び方によらずに定まります。

以上から、連結な閉曲面は Σg≅Pg\Sigma_g\cong P_g(g≥0g\ge0)、Nk≅QkN_k\cong Q_k(k≥1k\ge1)のどれかちょうど 1 つに微分同相で、χ(Σg)=2−2g\chi(\Sigma_g)=2-2g、χ(Nk)=2−k\chi(N_k)=2-k です。

最後の主張。 T2#RP2T^2\#\mathbb{R}P^2 は (ii) により向き付け不可能で、(i) により Euler 標数は 0+1−2=−10+1-2=-1 なので、Q3≅N3Q_3\cong N_3 に微分同相です。語で見ると、これは 命題 7.4 の証明の第 3 段(RR を空とする)の書き換え cc aba−1b−1→cc aa bbcc\,aba^{-1}b^{-1}\to cc\,aa\,bb にあたります。

例 7.6(Klein の壺と、消えないハンドル)

Klein の壺 KK は正方形の辺を aba−1baba^{-1}b の向きに貼ったものです。4 つの頂点は 1 点に貼り合わされ、その点を中心とする小さい円板を D0D_0、2 種類の辺の像の細い近傍から D0D_0 を除いたものを帯 aa、bb、残りを D2D_2 とすると、KK は 0-ハンドル 1 個、1-ハンドル 2 個、2-ハンドル 1 個に分かれ、足の並びから語は a b a−1 ba\,b\,a^{-1}\,b になります(トーラス T2=R2/Z2T^2=\mathbb{R}^2/\mathbb{Z}^2 で同じことをすると aba−1b−1aba^{-1}b^{-1} です。ここでは分解を絵で読み取っていて、Morse 関数は作っていません)。bb はねじれているので、b (a−1) b (a)b\,(a^{-1})\,b\,(a) と読んで 補題 7.3 の規則 2 を使うと b b a ab\,b\,a\,a になり、K≅N2=RP2#RP2K\cong N_2=\mathbb{R}P^2\#\mathbb{R}P^2、χ(K)=0\chi(K)=0 です。定理 7.5 からも、向き付け不可能で χ=0\chi=0 の連結な閉曲面は N2N_2 だけです。

語 aba−1baba^{-1}b の KK では、2-ハンドル D2D_2 の接着円周 ∂W1\partial W^1 は帯 aa を 2 回、逆向きに通ります。つまり D2D_2 の接着球面と aa のベルト球面(2 点)は 2 点で交わり、符号つきの交点数は 00 です(帯 bb とは同じ向きに 2 回で、交点数 ±2\pm2)。命題 6.1 の鎖複体は 0→Z→(0,2)Z2→0Z→00\to\mathbb{Z}\xrightarrow{(0,2)}\mathbb{Z}^2\xrightarrow{0}\mathbb{Z}\to0 で、H1(K)≅Z⊕Z/2H_1(K)\cong\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z}/2 です。aa と D2D_2 は交点数が ±1\pm1 でないので消去できません。高次元では、交点数が ±1\pm1 なのに幾何的な交点が 3 個以上ある、という状況が起こり、そのときは余分な交点を除く操作(Whitney の技巧)が必要になります。

7.4. 分類定理の証明で使った補題

Section titled “7.4. 分類定理の証明で使った補題”

定理 7.5 の証明で使った 3 つの補題と、§7.2 で境界の成分を数えるのに使った補題 補題 7.10 を証明します。どれも分類定理を使わず、補題 7.10 は §7.2 の結果も使いません。

補題 7.7(貼り合わせた同境の上の Morse 関数)✓

X1 ⁣:M0⇝MX_1\colon M_0\rightsquigarrow M、X2 ⁣:M′⇝M1X_2\colon M'\rightsquigarrow M_1 を nn 次元の同境、fif_i を XiX_i の上の Morse 関数、h ⁣:M→M′h\colon M\to M' を微分同相とする。このとき、X1X_1 と X2X_2 を hh で貼り合わせた同境 X1∪hX2 ⁣:M0⇝M1X_1\cup_hX_2\colon M_0\rightsquigarrow M_1(系 7.4[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張]。どのカラーによる構造でもよい)の上に、指数 λ\lambda の臨界点の個数が各 λ\lambda について f1f_1 と f2f_2 の個数の和である Morse 関数が存在する。

証明(補題 7.7)

値域の区間の向きを保つ 1 次式を合成して、f1 ⁣:X1→[0,1]f_1\colon X_1\to[0,1]、f2 ⁣:X2→[1,2]f_2\colon X_2\to[1,2] としてよいです(臨界点と指数は変わりません)。ε∈(0,1)\varepsilon\in(0,1) を、[1−ε,1][1-\varepsilon,1] が f1f_1 の、[1,1+ε][1,1+\varepsilon] が f2f_2 の臨界値を含まないように取ります(臨界値は有限個で、11 は臨界値ではありません)。f2−1([1,1+ε])f_2^{-1}([1,1+\varepsilon]) は臨界点の無い同境なので、定理 2.7 の微分同相 Φ2 ⁣:M′×[1,1+ε]→f2−1([1,1+ε])\Phi_2\colon M'\times[1,1+\varepsilon]\to f_2^{-1}([1,1+\varepsilon])(Φ2(z,1)=z\Phi_2(z,1)=z、f2∘Φ2=pr2f_2\circ\Phi_2=\mathrm{pr}_2)があり、c2(z,t)=Φ2(z,1+εt)c_2(z,t)=\Phi_2(z,1+\varepsilon t)(0≤t<10\le t\lt1)は M′M' の X2X_2 でのカラーで f2(c2(z,t))=1+εtf_2(c_2(z,t))=1+\varepsilon t です。同じ定理を同境 f1−1([1−ε,1]) ⁣:M⇝f1−1(1−ε)f_1^{-1}([1-\varepsilon,1])\colon M\rightsquigarrow f_1^{-1}(1-\varepsilon) と関数 −f1-f_1 に使うと、MM の X1X_1 でのカラー c1c_1 で f1(c1(z,t))=1−εtf_1(c_1(z,t))=1-\varepsilon t となるものが得られます(残りの境界成分のカラーは任意に取ります)。このカラーによる貼り合わせの構造で、f=f1∪f2f=f_1\cup f_2 は、継ぎ目のチャート κ\kappa(定義 7.1[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] の式)について f(κ(z,t))=1+εtf(\kappa(z,t))=1+\varepsilon t(−1<t<1-1\lt t\lt1)なので滑らかで、継ぎ目の近くに臨界点をもちません。それ以外では f=fif=f_i です。よって f ⁣:X1∪hX2→[0,2]f\colon X_1\cup_hX_2\to[0,2] は Morse 関数で、f−1(0)=M0f^{-1}(0)=M_0、f−1(2)=M1f^{-1}(2)=M_1、臨界点は f1f_1 と f2f_2 の臨界点の全体で指数も同じです。ほかのカラーによる構造 W′W' については、同系の 2 の微分同相 Θ\Theta(∂\partial の近傍で恒等写像)で f∘Θ−1f\circ\Theta^{-1} を取ります。

補題 7.8(閉曲面と語)✓

  1. 連結な閉曲面 MM は、∂W(w)\partial W(w) が連結なある語 ww について M(w)M(w) に微分同相である。
  2. ww を mm 文字の語で ∂W(w)\partial W(w) が連結なものとすると、M(w)M(w) は連結な閉曲面で、χ(M(w))=2−m\chi(M(w))=2-m である。
  3. 2 の ww について、M(w)M(w) が向き付け可能であることと、ww にねじれた文字が無いことは同値である。
証明(補題 7.8)

W(w)=D2∪S1ω(S1;φ1,…,φm)W(w)=D^2\cup_{S^1}\omega(S^1;\varphi_1,\dots,\varphi_m)(φj ⁣:S0×D1→S1\varphi_j\colon S^0\times D^1\to S^1 は語 ww の足の並びをもつ接着写像)、M(w)=W(w)∪hD2M(w)=W(w)\cup_hD^2(h ⁣:S1→∂W(w)h\colon S^1\to\partial W(w) は微分同相)で、微分同相類が φj\varphi_j と hh の選び方によらないことは 補題 7.2 のとおりです。ω=ω(S1;φ1,…,φm)\omega=\omega(S^1;\varphi_1,\dots,\varphi_m) と書きます。

1。 系 5.9 の自己指数的な Morse 関数 f ⁣:M→[−12,52]f\colon M\to[-\tfrac12,\tfrac52] と勾配状ベクトル場を取り、D0=f−1([−12,12])D_0=f^{-1}([-\tfrac12,\tfrac12])、N=f−1(12)N=f^{-1}(\tfrac12)、W1=f−1([12,32])W_1=f^{-1}([\tfrac12,\tfrac32])、W1=D0∪W1W^1=D_0\cup W_1、D2=f−1([32,52])D_2=f^{-1}([\tfrac32,\tfrac52]) とします。定理 3.6 を D0D_0(臨界点は指数 00 の 1 つ、下の境界は空)に使うと微分同相 κ0 ⁣:D2→D0\kappa_0\colon D^2\to D_0 が、W1W_1 に使うと接着写像 ψj ⁣:S0×D1→N\psi_j\colon S^0\times D^1\to N と NN の上で恒等写像の微分同相 κ1 ⁣:ω(N;ψ1,…,ψm)→W1\kappa_1\colon\omega(N;\psi_1,\dots,\psi_m)\to W_1 が得られます。φj=(κ0∣S1)−1∘ψj\varphi_j=(\kappa_0|_{S^1})^{-1}\circ\psi_j とおくと、補題 3.5 の 3・1・2 により

D2∪S1ω(S1;φ1,…,φm) ≅ D0∪Nω(N;ψ1,…,ψm) ≅ D0∪NW1 ≅ W1D^2\cup_{S^1}\omega(S^1;\varphi_1,\dots,\varphi_m)\ \cong\ D_0\cup_N\omega(N;\psi_1,\dots,\psi_m)\ \cong\ D_0\cup_NW_1\ \cong\ W^1

です。(φj)(\varphi_j) の語を ww とすると W1≅W(w)W^1\cong W(w) です。D2D_2 は、−f-f について指数 00 の臨界点を 1 つだけもつので(命題 6.2 の 1)、同じく D2D^2 に微分同相です。とくに ∂W(w)≅∂W1=∂D2\partial W(w)\cong\partial W^1=\partial D_2 は円周で連結です。補題 3.5 の 2 により M≅W1∪D2M\cong W^1\cup D_2 で、同補題の 1 によりこれは W(w)W(w) と D2D^2 を境界の間のある微分同相で貼り合わせたもの、すなわち M(w)M(w) に微分同相です。

2。 M(w)M(w) はコンパクトな境界付き多様体を境界の全体で貼り合わせた閉曲面です。ω\omega の積の部分の各成分(弧と [−1,1][-1,1] の積。m=0m=0 なら S1×[−1,1]S^1\times[-1,1])は継ぎ目 S1S^1 と交わり、各 L1L_1 のコピーは積の部分と交わるので、W(w)W(w) は連結で、M(w)M(w) も連結です。D2D^2 の上の関数 ∣y∣2|y|^2 は、値域を [−1,1][-1,1] と見ると、同境 D2 ⁣:∅⇝S1D^2\colon\varnothing\rightsquigarrow S^1 の上の Morse 関数で(値 −1-1 の逆像は空、値 11 の逆像は S1S^1)、臨界点は指数 00 の原点だけです。ω\omega の上の FF は同境 ω ⁣:S1⇝∂W(w)\omega\colon S^1\rightsquigarrow\partial W(w) の上の Morse 関数で、指数 11 の臨界点を mm 個もち(補題 3.3)、−∣y∣2-|y|^2 は、同じく値域を [−1,1][-1,1] と見ると、同境 D2 ⁣:S1⇝∅D^2\colon S^1\rightsquigarrow\varnothing の上の Morse 関数で、臨界点は指数 22 の原点だけです。補題 7.7 を 2 回使うと、M(w)M(w) の上に、指数 0,1,20,1,2 の臨界点が 1,m,11,m,1 個の Morse 関数があります。補題 2.5[同境と Pontryagin–Thom 構成](その証明はこの節の結果を使いません)により χ(M(w))=1−m+1=2−m\chi(M(w))=1-m+1=2-m です。

3。 まず ω\omega の内部 Int⁡ω\operatorname{Int}\omega が向き付け可能であることと、ww にねじれた文字が無いことが同値であることを示します。Z=S1∖⋃jφj(S0×0)Z=S^1\setminus\bigcup_j\varphi_j(S^0\times0) とすると、ω\omega は開集合 Z×[−1,1]Z\times[-1,1](積の部分)と L1L_1 のコピー L(j)L^{(j)} の和です。積の部分には、S1S^1 の反時計回りの接ベクトルと ∂/∂c\partial/\partial c をこの順に並べたものを正とする向き oo を、L(j)⊂R2L^{(j)}\subset\mathbb{R}^2 には dx∧dydx\wedge dy の向きを入れます。足 φj({u}×D1)\varphi_j(\{u\}\times D^1)(u=±1u=\pm1)の指数を ιj,u=±1\iota_{j,u}=\pm1 とします。ω\omega の同一視は、s∈(−1,1)∖{0}s\in(-1,1)\setminus\{0\}、c∈[−1,1]c\in[-1,1] について (φj(u,s),c)(\varphi_j(u,s),c) を、a−(u,s)=(ucosh⁡s,sinh⁡s)a_-(u,s)=(u\cosh s,\sinh s) を通る η1\eta_1 の流線の上で q1=cq_1=c となる点 T(s,c)T(s,c) と結びます。c=−1c=-1 で ∂T/∂s=(usinh⁡s,cosh⁡s)\partial T/\partial s=(u\sinh s,\cosh s)、∂T/∂c\partial T/\partial c は η1=(−x,y)=(−ucosh⁡s,sinh⁡s)\eta_1=(-x,y)=(-u\cosh s,\sinh s) の正の定数倍なので、Jacobi 行列式の符号は

sign⁡det⁡(usinh⁡s−ucosh⁡scosh⁡ssinh⁡s)=sign⁡(ucosh⁡2s)=u\operatorname{sign}\det\begin{pmatrix}u\sinh s&-u\cosh s\\ \cosh s&\sinh s\end{pmatrix}=\operatorname{sign}\bigl(u\cosh2s\bigr)=u

です。TT の定義域の各成分(s>0s\gt0 と s<0s\lt0)は連結なので、符号はその上で一定です。∂/∂s\partial/\partial s は反時計回りの接ベクトルの ιj,u\iota_{j,u} 倍なので、この重なりの上で、oo は dx∧dydx\wedge dy の u ιj,uu\,\iota_{j,u} 倍に対応します。

Int⁡ω\operatorname{Int}\omega に向きがあるとします。積の部分の各成分 A×(−1,1)A\times(-1,1)(AA は ZZ の成分)と各 L(j)L^{(j)} の内部 {−1<q1<1, ∣x∣∣y∣<sinh⁡1cosh⁡1}\{-1\lt q_1\lt1,\ |x||y|\lt\sinh1\cosh1\}(原点について星状)は連結なので、その上で向きは σA o\sigma_A\,o、ϵj dx∧dy\epsilon_j\,dx\wedge dy(σA,ϵj=±1\sigma_A,\epsilon_j=\pm1)です。足 (j,u)(j,u) の s>0s\gt0 の側の弧を AA、s<0s\lt0 の側の弧を A′A' とすると、上の計算から σA u ιj,u=ϵj=σA′ u ιj,u\sigma_A\,u\,\iota_{j,u}=\epsilon_j=\sigma_{A'}\,u\,\iota_{j,u} で、σA=σA′\sigma_A=\sigma_{A'} です。ZZ の隣り合う成分はこのような点で隔てられているので、σA\sigma_A はすべて等しく、それを σ\sigma とすると ιj,1=σϵj=−ιj,−1\iota_{j,1}=\sigma\epsilon_j=-\iota_{j,-1} で、どの文字もねじれていません。逆に、どの文字もねじれていなければ u ιj,u=ιj,1u\,\iota_{j,u}=\iota_{j,1}(u=±1u=\pm1)なので、積の部分の oo と L(j)L^{(j)} の上の ιj,1 dx∧dy\iota_{j,1}\,dx\wedge dy は重なりで一致し、ω\omega の向きを定めます。

次に M(w)M(w) を調べます。Int⁡ω\operatorname{Int}\omega は W(w)W(w) の開集合、W(w)∖∂W(w)W(w)\setminus\partial W(w) は M(w)M(w) の開集合で、構造は一致します(系 7.4[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] の 1)。よって M(w)M(w) が向き付け可能なら Int⁡ω\operatorname{Int}\omega も向き付け可能で、ww にねじれた文字はありません。逆に、ねじれた文字が無ければ ω\omega は向き付けられます。継ぎ目 S1S^1 は連結なので、D2D^2 の向きを、恒等写像 ∂D2→S1⊂∂ω\partial D^2\to S^1\subset\partial\omega が境界の向きを逆にするように選べて、同系の 3 により W(w)W(w) は向き付けられます。∂W(w)\partial W(w) も連結なので、同じ議論で M(w)=W(w)∪hD2M(w)=W(w)\cup_hD^2 も向き付けられます。

補題 7.9(トーラスと射影平面の Euler 標数)✓

T2=S1×S1T^2=S^1\times S^1 は向き付け可能で χ(T2)=0\chi(T^2)=0、χ(RP2)=1\chi(\mathbb{R}P^2)=1 である。

証明(補題 7.9)

T2=R2/Z2T^2=\mathbb{R}^2/\mathbb{Z}^2 の座標 (θ1,θ2)(\theta_1,\theta_2) の取り替えは平行移動なので、これらのチャートは向きの両立するアトラスをなし、T2T^2 は向き付け可能です。ベクトル場 ∂/∂θ1\partial/\partial\theta_1 は零点をもたないので、Poincaré–Hopf の定理(定理 7.6[交点数と写像度])の左辺は空の和で、χ(T2)=0\chi(T^2)=0 です。χ(RP2)=12(1+(−1)2)=1\chi(\mathbb{R}P^2)=\tfrac12(1+(-1)^2)=1 は 補題 2.7[同境と Pontryagin–Thom 構成] の m=2m=2 の場合です(その証明は 補題 2.5[同境と Pontryagin–Thom 構成] だけに依り、この節の結果を使いません)。

最後に、∂W(w)\partial W(w) の連結成分を語だけから数える補題です。ww を m≥1m\ge1 文字の語、φ1,…,φm ⁣:S0×D1→S1\varphi_1,\dots,\varphi_m\colon S^0\times D^1\to S^1 をその足の並びをもつ接着写像とします。S1S^1 から 2m2m 個の足の中心 φj(±1,0)\varphi_j(\pm1,0) を除いた残りの連結成分(2m2m 個の開いた弧)を、語 ww の隙間と呼びます。足の中心の反時計回り側に隣り合う隙間をその足の後ろの隙間、時計回り側に隣り合う隙間を前の隙間といいます。どの隙間も、ちょうど 1 つの足の後ろの隙間で、ちょうど 1 つの足の前の隙間です。頂点を隙間の全体とし、各文字について、その 2 つの足を ee、e′e' として、次の 2 本の辺を引いたグラフを Γ(w)\Gamma(w) と書きます(両端が同じ頂点の辺や、同じ 2 頂点を結ぶ複数の辺も許します)。

  • 文字がねじれていないとき:{e の後ろ, e′ の前}\{e\text{ の後ろ},\ e'\text{ の前}\} と {e の前, e′ の後ろ}\{e\text{ の前},\ e'\text{ の後ろ}\}。
  • 文字がねじれているとき:{e の後ろ, e′ の後ろ}\{e\text{ の後ろ},\ e'\text{ の後ろ}\} と {e の前, e′ の前}\{e\text{ の前},\ e'\text{ の前}\}。

Γ(w)\Gamma(w) は巡回語 ww だけで決まり、文字の名前の付け替えと 1 つの文字の 2 か所の指数の同時反転で変わりません。

補題 7.10(境界の成分はグラフで数えられる)✓

  1. ww を m≥1m\ge1 文字の語とする。各隙間は ∂W(w)\partial W(w) の連結な開集合で、2 つの隙間が ∂W(w)\partial W(w) の同じ連結成分に含まれることと、Γ(w)\Gamma(w) の同じ連結成分に属することは同値であり、∂W(w)\partial W(w) のどの連結成分も隙間を含む。とくに ∂W(w)\partial W(w) の連結成分の個数は Γ(w)\Gamma(w) の連結成分の個数に等しい。
  2. w=B Tw=B\,T で、BB の各文字が BB の中に 2 回現れる(したがって TT の各文字も TT の中に 2 回現れる)とき、∂W(B)\partial W(B)、∂W(T)\partial W(T)、∂W(BT)\partial W(BT) の連結成分の個数 β(B)\beta(B)、β(T)\beta(T)、β(BT)\beta(BT) について β(BT)=β(B)+β(T)−1\beta(BT)=\beta(B)+\beta(T)-1 である(空の語については β=1\beta=1)。
  3. ∂W(c c)\partial W(c\,c) と ∂W(a b a−1 b−1)\partial W(a\,b\,a^{-1}\,b^{-1}) は連結である。
  4. w=a U a−1 Vw=a\,U\,a^{-1}\,V で、aa 以外のどの文字も、2 つの足がともに UU にあるか、ともに VV にあるならば、∂W(w)\partial W(w) は連結でない。
  5. (1 の点集合としての形)ww を m≥1m\ge1 文字の語、足 φj({u}×D1)\varphi_j(\{u\}\times D^1) の指数を ιj,u\iota_{j,u} とする。∂W(w)=χ(S1;φ1,…,φm)\partial W(w)=\chi(S^1;\varphi_1,\dots,\varphi_m) は、点集合として、隙間の全体の和と、2m2m 個の点 nj,vn_{j,v}(jj 番目の D˚1×S0\mathring D^1\times S^0 のコピーの点 (0,v)(0,v)、v=±1v=\pm1)の非交和である。nj,vn_{j,v} の近傍の基は、nj,vn_{j,v} と、u=±1u=\pm1 のそれぞれについて足 (j,u)(j,u) の中心から「v ιj,u=1v\,\iota_{j,u}=1 なら後ろの隙間、v ιj,u=−1v\,\iota_{j,u}=-1 なら前の隙間」の中へ延びる短い弧(中心は含まない)とを合わせた集合で与えられる。
証明(補題 7.10)

1。 W(w)=D2∪S1ω(S1;φ1,…,φm)W(w)=D^2\cup_{S^1}\omega(S^1;\varphi_1,\dots,\varphi_m) の境界は、跡の上の境界 χ=χ(S1;φ1,…,φm)\chi=\chi(S^1;\varphi_1,\dots,\varphi_m) です(補題 3.3 と 系 7.4[管状近傍・カラー・イソトピーの拡張] の 1)。定義 3.2 の 1 により、χ\chi は S1S^1 から足の中心を除いたもの ZZ と、D˚1×S0\mathring D^1\times S^0 のコピー mm 個の非交和で、φj(u,θv)\varphi_j(u,\theta v) と jj 番目のコピーの点 (θu,v)(\theta u,v)(u,v∈{±1}u,v\in\{\pm1\}、0<θ<10\lt\theta\lt1)を同一視したものです。これは開集合 φj(S0×(D˚1∖0))\varphi_j(S^0\times(\mathring D^1\setminus0)) と (D˚1∖0)×S0(\mathring D^1\setminus0)\times S^0 の間の微分同相による貼り合わせなので、開集合の飽和は開集合で、ZZ の像と各コピーの像は χ\chi の開集合になり、その上で χ\chi の位相と構造はもとのものと同じです。jj 番目のコピーの成分 D˚1×{v}\mathring D^1\times\{v\} の像を Ej,vE_{j,v} と書きます。点集合としては

χ=Z⊔{nj,v},Ej,v=Hj,−1,v⊔{nj,v}⊔Hj,1,v,Hj,u,v=φj({u}×{θv:0<θ<1})\chi=Z\sqcup\{n_{j,v}\},\qquad E_{j,v}=H_{j,-1,v}\sqcup\{n_{j,v}\}\sqcup H_{j,1,v},\qquad H_{j,u,v}=\varphi_j\bigl(\{u\}\times\{\theta v:0\lt\theta\lt1\}\bigr)

(nj,vn_{j,v} は点 (0,v)(0,v))で、Ej,vE_{j,v} は開区間 D˚1×{v}\mathring D^1\times\{v\} と同相な開集合なので、nj,vn_{j,v} の近傍の基は、nj,vn_{j,v} と、Hj,±1,vH_{j,\pm1,v} のうち θ<ϵ\theta\lt\epsilon の部分とを合わせた集合(0<ϵ<10\lt\epsilon\lt1)で与えられます。Hj,u,vH_{j,u,v} は足の中心 φj(u,0)\varphi_j(u,0) から片側に延びる弧で、ほかの足の中心を含まないので、その中心に隣り合う 1 つの隙間に含まれます。t↦φj(u,t)t\mapsto\varphi_j(u,t) は、足の指数 ιj,u\iota_{j,u} が +1+1 なら反時計回り、−1-1 なら時計回りなので、その隙間は、v ιj,u=1v\,\iota_{j,u}=1 なら足 (j,u)(j,u) の後ろ、v ιj,u=−1v\,\iota_{j,u}=-1 なら前の隙間です。したがって Ej,vE_{j,v} が交わる隙間は「足 (j,−1)(j,-1) の、符号 v ιj,−1v\,\iota_{j,-1} の側の隙間」と「足 (j,1)(j,1) の、符号 v ιj,1v\,\iota_{j,1} の側の隙間」(後ろを ++、前を −- とする)の 2 つ(一致することもある)です。v=±1v=\pm1 を動かすと、ιj,1=−ιj,−1\iota_{j,1}=-\iota_{j,-1}(ねじれていない)のときは {\{後ろ, 前}\} と {\{前, 後ろ}\}、ιj,1=ιj,−1\iota_{j,1}=\iota_{j,-1}(ねじれている)のときは {\{後ろ, 後ろ}\} と {\{前, 前}\} で、これは Γ(w)\Gamma(w) の文字 aja_j の 2 本の辺の両端です。すなわち、Γ(w)\Gamma(w) の辺は 2m2m 個の集合 Ej,vE_{j,v} に 1 対 1 に対応し、辺の両端は Ej,vE_{j,v} が交わる隙間です。

隙間と Ej,vE_{j,v} はどれも χ\chi の連結な開集合(開区間と同相)で、全体で χ\chi を覆い、隙間どうし、Ej,vE_{j,v} どうしは交わりません。Γ(w)\Gamma(w) の連結成分 KK に対し、KK の頂点である隙間と、KK の辺に対応する Ej,vE_{j,v} の全体の和を OKO_K とします。OKO_K は開集合で、KK の 1 つの頂点から始めて、すでに取った集合と交わる集合を 1 つずつ足していけば全部が尽くされるので、命題 5.3[連結性] を繰り返し使って連結です。K≠K′K\ne K' のとき、KK の隙間と K′K' に対応する Ej,vE_{j,v} が交われば、その隙間は対応する辺の端点で K′K' に属することになるので、OK∩OK′=∅O_K\cap O_{K'}=\varnothing です。OKO_K たちは χ\chi を覆う互いに交わらない開集合なので、それぞれ閉集合でもあり、連結なので、χ\chi の連結成分はちょうど OKO_K たちです。どの OKO_K も隙間を含みます。

2。 BB または TT が空なら自明なので、どちらも空でないとします。Γ(w)\Gamma(w) の辺の両端は「ある足の後ろ」「ある足の前」という形で指定されていて、各足の後ろと前は、その足の文字の 2 本の辺の端にちょうど 1 回ずつ現れます。これらを辺の端と呼びます。各頂点(隙間)には、ちょうど 2 つの辺の端(その隙間を後ろにもつ足の「後ろ」と、前にもつ足の「前」)があります。辺はどれも端を 2 つもち、その 2 つは同じ連結成分にあるので、辺の端を頂点にどのように配ったグラフでも、1 つの連結成分に含まれる辺の端の総数は偶数です。

BB の足を反時計回りに e1,…,epe_1,\dots,e_p、TT の足を ep+1,…,ep+qe_{p+1},\dots,e_{p+q} とします。ある文字がねじれているかどうかと、どの足の「後ろ」「前」が辺で結ばれるかは、語 BB(または TT)で見ても BTBT で見ても同じなので、Γ(BT)\Gamma(BT) の辺と辺の端は、Γ(B)\Gamma(B) と Γ(T)\Gamma(T) の辺と辺の端を合わせたものです。違うのは、どの辺の端が同じ頂点にあるかだけです。Γ(B)\Gamma(B) でも Γ(BT)\Gamma(BT) でも、1≤i<p1\le i\lt p について「eie_i の後ろ」と「ei+1e_{i+1} の前」は同じ頂点にあり、TT についても同様です。残りの 4 つの端は、

  • Γ(B)\Gamma(B) では「epe_p の後ろ」と「e1e_1 の前」が同じ頂点 β0\beta_0 にあり、Γ(T)\Gamma(T) では「ep+qe_{p+q} の後ろ」と「ep+1e_{p+1} の前」が同じ頂点 τ0\tau_0 にあり、
  • Γ(BT)\Gamma(BT) では「epe_p の後ろ」と「ep+1e_{p+1} の前」が同じ頂点に、「ep+qe_{p+q} の後ろ」と「e1e_1 の前」が同じ頂点にあります。

よって Γ(BT)\Gamma(BT) は、Γ(B)\Gamma(B) の頂点 β0\beta_0 を、端「epe_p の後ろ」だけをもつ頂点 β+\beta_+ と端「e1e_1 の前」だけをもつ頂点 β−\beta_- に分け、Γ(T)\Gamma(T) の頂点 τ0\tau_0 を同じように τ+\tau_+(「ep+qe_{p+q} の後ろ」)と τ−\tau_-(「ep+1e_{p+1} の前」)に分けたうえで、β+\beta_+ と τ−\tau_-、τ+\tau_+ と β−\beta_- をそれぞれ 1 つの頂点にまとめたものです。

Γ(B)\Gamma(B) の β0\beta_0 を含む連結成分を KBK_B、β0\beta_0 を分けた後のグラフを KB′K_B' とします。KB′K_B' は連結です。実際、KB′K_B' の各頂点は β+\beta_+ か β−\beta_- に道でつながります(KBK_B の中の β0\beta_0 への道を、はじめて β0\beta_0 に着いたところで止めます)。もし β+\beta_+ と β−\beta_- が KB′K_B' の異なる連結成分にあれば、β+\beta_+ を含む連結成分は、辺の端を 1 つだけもつ頂点 β+\beta_+ と、2 つずつもつほかの頂点からなり、辺の端の総数が奇数になって、上で見たことに反します。同様に、Γ(T)\Gamma(T) の τ0\tau_0 を含む連結成分 KTK_T から作った KT′K_T' も連結です。Γ(BT)\Gamma(BT) の中で KB′K_B' と KT′K_T' は頂点を共有するので、合わせて 1 つの連結成分になります。Γ(B)\Gamma(B)、Γ(T)\Gamma(T) のほかの連結成分はそのまま Γ(BT)\Gamma(BT) の連結成分です。よって Γ(BT)\Gamma(BT) の連結成分の個数は (β(B)−1)+(β(T)−1)+1(\beta(B)-1)+(\beta(T)-1)+1 で、1 により主張を得ます。

3。 語 c cc\,c の足を e1,e2e_1,e_2、隙間を g1g_1(e1e_1 の後ろ =e2=e_2 の前)、g2g_2(e2e_2 の後ろ =e1=e_1 の前)とします。cc はねじれているので、辺は {e1 の後ろ,e2 の後ろ}={g1,g2}\{e_1\text{ の後ろ},e_2\text{ の後ろ}\}=\{g_1,g_2\} と {e1 の前,e2 の前}={g2,g1}\{e_1\text{ の前},e_2\text{ の前}\}=\{g_2,g_1\} で、Γ(c c)\Gamma(c\,c) は連結です。語 a b a−1 b−1a\,b\,a^{-1}\,b^{-1} の足を順に e1,…,e4e_1,\dots,e_4、eie_i の後ろの隙間を gig_i とすると、eie_i の前の隙間は gi−1g_{i-1}(g0=g4g_0=g_4)です。aa(足は e1,e3e_1,e_3)と bb(足は e2,e4e_2,e_4)はねじれていないので、辺は

{g1,g2},{g4,g3}(a),{g2,g3},{g1,g4}(b)\{g_1,g_2\},\quad\{g_4,g_3\}\quad(a),\qquad\{g_2,g_3\},\quad\{g_1,g_4\}\quad(b)

の 4 本で、g1,g2,g3,g4g_1,g_2,g_3,g_4 はすべてつながります。どちらも 1 により ∂W\partial W は連結です。

4。 aa の足を ee(aa)、e′e'(a−1a^{-1})とします。隙間の全体を、ee の後ろの隙間から反時計回りに e′e' の前の隙間までの GUG_U(UU の足の前後の隙間の全体。UU が空なら ee の後ろ =e′=e' の前の 1 つ)と、e′e' の後ろの隙間から ee の前の隙間までの GVG_V に分けます。どちらも空でなく、共通の隙間はありません。aa はねじれていないので、その辺 {e の後ろ,e′ の前}\{e\text{ の後ろ},e'\text{ の前}\} は GUG_U の中、{e の前,e′ の後ろ}\{e\text{ の前},e'\text{ の後ろ}\} は GVG_V の中にあります。ほかの文字の辺は、2 つの足がともに UU にあれば両端とも GUG_U に、ともに VV にあれば両端とも GVG_V にあります。GUG_U と GVG_V を結ぶ辺が無いので Γ(w)\Gamma(w) は連結でなく、1 により ∂W(w)\partial W(w) は連結でありません。

5。 1 の証明の第 1 段落で示したことです。χ=Z⊔{nj,v}\chi=Z\sqcup\{n_{j,v}\} で ZZ は隙間の和、nj,vn_{j,v} の近傍の基は nj,vn_{j,v} と Hj,±1,vH_{j,\pm1,v} の θ<ϵ\theta\lt\epsilon の部分からなり、Hj,u,vH_{j,u,v} は足 (j,u)(j,u) の中心から、v ιj,u=1v\,\iota_{j,u}=1 なら後ろ、−1-1 なら前の隙間の中へ延びる弧でした。

定理 8.1(Heegaard 分解の存在)✓

MM を連結で向き付け可能な閉 3 次元多様体とする。ある g≥0g\ge0 について、MM は種数 gg の向き付け可能なハンドル体 2 つ H1H_1、H2H_2 を境界の微分同相で貼り合わせたものである:M=H1∪H2M=H_1\cup H_2、H1∩H2=∂H1=∂H2≅ΣgH_1\cap H_2=\partial H_1=\partial H_2\cong\Sigma_g。この分解を種数 gg の Heegaard 分解という。

証明(定理 8.1)

系 5.9 の自己指数的な Morse 関数 ff を取り、指数 11、22 の臨界点の個数を gg、g′g' とします。H1=f−1([−12,32])H_1=f^{-1}([-\tfrac12,\tfrac32]) は 0-ハンドル 1 個と 1-ハンドル gg 個からなるので種数 gg のハンドル体です。H2=f−1([32,72])H_2=f^{-1}([\tfrac32,\tfrac72]) は、命題 6.2 の 1 により −f-f で見ると 0-ハンドル 1 個と 1-ハンドル g′g' 個からなり、種数 g′g' のハンドル体です。どちらも MM の余次元 00 の部分多様体なので向き付け可能で、共通の境界は F=f−1(32)F=f^{-1}(\tfrac32) です。命題 6.2 の 2 により χ(M)=0\chi(M)=0 なので、定理 7.3[Morse 理論] の 2 から 1−g+g′−1=01-g+g'-1=0、すなわち g=g′g=g' です。

FF が Σg\Sigma_g であることを示します。F=∂H1F=\partial H_1 は、S2=∂h0S^2=\partial h^0 から指数 11 の手術を gg 回して得られます(定理 3.6)。指数 11 の手術は 2 つの円板を除いて円筒 D1×S1D^1\times S^1 をはめる操作で、連結な曲面から 2 つの円板を除いて円筒をはめたものは連結なので、FF は連結です。1 回の手術の跡は、FF の側から見て指数 11 と指数 22 の臨界点を 1 つもつ 3 次元の同境で、下の境界 NN と上の境界 N′N' について、NN に 1 胞体を貼った空間と N′N' に 2 胞体を貼った空間がホモトピー同値です(定理 6.1[Morse 理論] を ff と −f-f に使う)。Euler 標数を比べると χ(N)−1=χ(N′)+1\chi(N)-1=\chi(N')+1 なので、手術 1 回で χ\chi は 22 減り、χ(F)=2−2g\chi(F)=2-2g です。FF は向き付け可能な H1H_1 の境界なので向き付け可能で(定義 4.5[ストークスの定理])、定理 7.5 により F≅ΣgF\cong\Sigma_g です。

注意 8.2

Heegaard 分解は 1 つではありません。系 5.5 で指数 11 と 22 の臨界点の対を生めば種数が 1 増えます(安定化)。同じ多様体の 2 つの Heegaard 分解は、安定化を何回かずつ行えばイソトピックになる、というのが Reidemeister と Singer の定理(1933 年)で、Morse 関数の 1 径数族を調べる Cerf 理論(J. Cerf, “La stratification naturelle des espaces de fonctions différentiables réelles et le théorème de la pseudo-isotopie”, Publ. Math. IHÉS 39 (1970))から証明できます。また、向き付け可能な閉 3 次元多様体はすべて S3S^3 の中の絡み目に沿った指数 22 の手術で得られます(Lickorish–Wallace の定理。W. B. R. Lickorish, “A representation of orientable combinatorial 3-manifolds”, Ann. of Math. 76 (1962)、A. H. Wallace, “Modifications and cobounding manifolds”, Canad. J. Math. 12 (1960))。定理 3.9 と合わせると、これは向き付けられた 3 次元の同境群が消えることを意味します。これらはこの記事では証明しません。

種数 11 の場合を具体的に調べます。V=S1×D2V=S^1\times D^2 をソリッドトーラスといいます。S1×D2S^1\times D^2 は S1S^1 を 2 つの弧に分ければ h0∪h1h^0\cup h^1 の形で、向き付け可能な種数 11 のハンドル体です。∂V=T2=R2/Z2\partial V=T^2=\mathbb{R}^2/\mathbb{Z}^2 の座標を (θ,ϕ)(\theta,\phi)(θ\theta が S1S^1 方向、ϕ\phi が ∂D2\partial D^2 方向)とし、A∈GL2(Z)A\in GL_2(\mathbb{Z}) の定める T2T^2 の線形な微分同相を hAh_A と書きます。

命題 8.3(種数 1 の Heegaard 分解とレンズ空間)✓

A=(rpsq)∈GL2(Z)A=\begin{pmatrix}r&p\\s&q\end{pmatrix}\in GL_2(\mathbb{Z}) に対し、2 つのソリッドトーラス V1V_1、V2V_2 を hA ⁣:∂V2→∂V1h_A\colon\partial V_2\to\partial V_1 で貼った閉 3 次元多様体を MAM_A とする。

  1. MAM_A は微分同相を除いて AA の第 2 列 (p,q)(p,q) だけで決まる。これを L(p,q)L(p,q) と書く(p≥2p\ge2 のときレンズ空間という)。
  2. π1(MA)≅Z/∣p∣\pi_1(M_A)\cong\mathbb{Z}/|p|(p=0p=0 のときは Z\mathbb{Z})。したがって ∣p∣|p| が異なれば MAM_A は微分同相でない。
  3. L(0,1)≅S1×S2L(0,1)\cong S^1\times S^2、L(1,0)≅S3L(1,0)\cong S^3。
証明(命題 8.3)

1。 AA、A′A' の第 2 列が等しいとします。A−1A′A^{-1}A' は e2=(0,1)Te_2=(0,1)^{\mathsf T} を固定する GL2(Z)GL_2(\mathbb{Z}) の元なので (ϵ0k1)\begin{pmatrix}\epsilon&0\\k&1\end{pmatrix}(ϵ=±1\epsilon=\pm1、k∈Zk\in\mathbb{Z})の形で、対応する ∂V2\partial V_2 の微分同相 (θ,ϕ)↦(ϵθ,kθ+ϕ)(\theta,\phi)\mapsto(\epsilon\theta,k\theta+\phi) は V2=S1×D2V_2=S^1\times D^2 の微分同相 (θ,z)↦(ϵθ,e2πikθz)(\theta,z)\mapsto(\epsilon\theta,e^{2\pi ik\theta}z) に延びます。これを GG とすると、V1V_1 上の恒等写像と V2V_2 上の GG は、hA′=hA∘G∣∂V2h_{A'}=h_A\circ G|_{\partial V_2} なので貼り合わせと両立し、微分同相 MA′→MAM_{A'}\to M_A を定めます。

2。 ViV_i を少し太らせた開集合に van Kampen の定理(定理 6.1[基本群と被覆空間])を使います。共通部分は T2T^2 にホモトピー同値で、π1(T2)≅Z2\pi_1(T^2)\cong\mathbb{Z}^2(生成元は θ\theta 方向の ℓ\ell と ϕ\phi 方向の μ\mu。命題 2.11[基本群と被覆空間] と 定理 4.1[基本群と被覆空間])、π1(Vi)≅Z\pi_1(V_i)\cong\mathbb{Z}(生成元 ℓi\ell_i。D2D^2 は可縮)です。包含 ∂Vi→Vi\partial V_i\to V_i は ℓ↦ℓi\ell\mapsto\ell_i、μ↦1\mu\mapsto1 を誘導します。∂V2\partial V_2 の μ\mu は V2V_2 では自明で、V1V_1 では hA(μ)=pℓ+qμ↦ℓ1 ph_A(\mu)=p\ell+q\mu\mapsto\ell_1^{\,p}、∂V2\partial V_2 の ℓ\ell は V2V_2 では ℓ2\ell_2、V1V_1 では rℓ+sμ↦ℓ1 rr\ell+s\mu\mapsto\ell_1^{\,r} です。押し出しは

π1(MA)≅⟨ℓ1,ℓ2∣ℓ1 p=1, ℓ1 r=ℓ2⟩≅Z/∣p∣\pi_1(M_A)\cong\langle\ell_1,\ell_2\mid\ell_1^{\,p}=1,\ \ell_1^{\,r}=\ell_2\rangle\cong\mathbb{Z}/|p|

です。

3。 A=IA=I のとき (p,q)=(0,1)(p,q)=(0,1) で、MI=S1×(D2∪idD2)=S1×S2M_I=S^1\times(D^2\cup_{\mathrm{id}}D^2)=S^1\times S^2 です。S3={(z1,z2)∈C2:∣z1∣2+∣z2∣2=2}S^3=\{(z_1,z_2)\in\mathbb{C}^2:|z_1|^2+|z_2|^2=2\} を V1={∣z1∣≤1}V_1=\{|z_1|\le1\} と V2={∣z2∣≤1}V_2=\{|z_2|\le1\} に分けると、V1={(z1,z2):∣z1∣≤1, z2=2−∣z1∣2 e2πiθ}≅S1×D2V_1=\{(z_1,z_2):|z_1|\le1,\ z_2=\sqrt{2-|z_1|^2}\,e^{2\pi i\theta}\}\cong S^1\times D^2(θ\theta が S1S^1 方向、z1z_1 が D2D^2 方向)で、V2V_2 は添字を入れ替えたものです。共通の境界 {∣z1∣=∣z2∣=1}\{|z_1|=|z_2|=1\} の上で、V2V_2 の D2D^2 方向(z2z_2 の偏角)は V1V_1 の S1S^1 方向、V2V_2 の S1S^1 方向は V1V_1 の D2D^2 方向なので、貼り合わせは A=(0110)A=\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}、(p,q)=(1,0)(p,q)=(1,0) です。

注意 8.4

T2T^2 の任意の微分同相は線形な微分同相にイソトピックなので、種数 11 の Heegaard 分解をもつ多様体は L(p,q)L(p,q) で尽くされます。L(p,q)L(p,q) と L(p,q′)L(p,q') が同相になるのは q′≡±q±1(modp)q'\equiv\pm q^{\pm1}\pmod p のときに限ります(Reidemeister のねじれによる分類)。たとえば L(5,1)L(5,1) と L(5,2)L(5,2) は基本群もホモロジーも同じですが同相ではありません。これらはこの記事では証明しません。

演習 9.1標準

MM を閉 (n−1)(n-1) 次元多様体、φ ⁣:Sλ−1×Dn−λ→M\varphi\colon S^{\lambda-1}\times D^{n-\lambda}\to M を接着写像とする。χ(χ(M,φ))=χ(M)+(−1)λ−(−1)n−λ\chi(\chi(M,\varphi))=\chi(M)+(-1)^\lambda-(-1)^{n-\lambda} を示せ。とくに n−1n-1 が偶数なら、手術は Euler 標数の偶奇を変えない。

解答

跡 ω=ω(M,φ)\omega=\omega(M,\varphi) と関数 FF(補題 3.3)を考えます。FF の臨界点は指数 λ\lambda の 1 つだけなので、定理 6.1[Morse 理論] と 定理 2.7 により ω\omega は MM に λ\lambda 胞体を 1 つ貼った空間にホモトピー同値で、Hk(ω,M)H_k(\omega,M) は k=λk=\lambda で Z\mathbb{Z}、ほかで 00 です(補題 6.2[Morse 理論])。対の長完全列の階数の交代和から χ(ω)=χ(M)+(−1)λ\chi(\omega)=\chi(M)+(-1)^\lambda です。−F-F は χ(M,φ)\chi(M,\varphi) を下の境界とする Morse 関数で臨界点の指数は n−λn-\lambda なので(命題 6.2)、同じ議論で χ(ω)=χ(χ(M,φ))+(−1)n−λ\chi(\omega)=\chi(\chi(M,\varphi))+(-1)^{n-\lambda} です。2 式を引けば主張を得ます。nn が奇数なら (−1)n−λ=−(−1)λ(-1)^{n-\lambda}=-(-1)^\lambda なので差は 2(−1)λ2(-1)^\lambda で、偶奇は変わりません。定理 3.9 と合わせると、偶数次元の閉多様体の Euler 標数の偶奇は同境で不変です。

演習 9.2標準

トーラス T2T^2 の語 aba−1b−1aba^{-1}b^{-1} の分解と、射影平面 RP2\mathbb{R}P^2 の語 cccc の分解について、命題 6.1 の境界作用素を求め、ホモロジー群を計算せよ。

解答

どちらも 0-ハンドルは 1 つで、各 1-ハンドルの接着球面は 2 点、0-ハンドルの上昇球面は ∂D0\partial D_0 全体です。2 点での pr1\mathrm{pr}_1(0 次元への射影)の符号は、S0=∂D1S^0=\partial D^1 の境界としての向きが +1+1 と −1-1 なので打ち消し合い、d1=0d_1=0 です。

T2T^2:2-ハンドルの接着円周 ∂W1\partial W^1 は、帯 aa を横切る線分(余芯)の両端、すなわちベルト球面の 2 点を 1 回ずつ通ります。aa はねじれていないので、∂W1\partial W^1 は帯 aa の 2 つの辺を逆向きに走り、符号は +1+1 と −1-1 で n(D2,a)=0n(D_2,a)=0、同様に n(D2,b)=0n(D_2,b)=0 です。鎖複体は 0→Z→0Z2→0Z→00\to\mathbb{Z}\xrightarrow{0}\mathbb{Z}^2\xrightarrow{0}\mathbb{Z}\to0 で、H0=ZH_0=\mathbb{Z}、H1=Z2H_1=\mathbb{Z}^2、H2=ZH_2=\mathbb{Z} です。

RP2\mathbb{R}P^2:帯 cc はねじれているので、∂W1\partial W^1 は帯の 2 つの辺を同じ向きに走り、n(D2,c)=±2n(D_2,c)=\pm2 です。鎖複体は 0→Z→2Z→0Z→00\to\mathbb{Z}\xrightarrow{2}\mathbb{Z}\xrightarrow{0}\mathbb{Z}\to0 で、H0=ZH_0=\mathbb{Z}、H1=Z/2H_1=\mathbb{Z}/2、H2=0H_2=0 です。これは胞体ホモロジーによる計算(例 3.6[胞体ホモロジーと写像度])と一致します。

演習 9.3標準

語 a b c a−1 b−1 c−1a\,b\,c\,a^{-1}\,b^{-1}\,c^{-1} について、∂W(w)\partial W(w) が連結であることを確かめ、M(w)M(w) がどの曲面かを決めよ。

解答

ねじれた文字は無いので M(w)M(w) は向き付け可能で、帯は 3 本なので、もし ∂W(w)\partial W(w) が連結なら χ=2−3=−1\chi=2-3=-1 となり、向き付け可能な閉曲面の Euler 標数 2−2g2-2g が偶数であること(定理 7.5)に反します。実際に境界を数えます。命題 7.4 の第 1 段を aa と bb に使います。U=bcU=bc、V=b−1c−1V=b^{-1}c^{-1} で、bb は UU と VV に足をもつので U1=∅U_1=\varnothing、U2=cU_2=c、V1=∅V_1=\varnothing、V2=c−1V_2=c^{-1} とすると、ww は a b a−1b−1 V2V1U2U1=aba−1b−1 c−1ca\,b\,a^{-1}b^{-1}\,V_2V_1U_2U_1=aba^{-1}b^{-1}\,c^{-1}c に書き換わります。残りの語 c−1cc^{-1}c は、ねじれていない帯 1 本を円板に貼った円環で、境界は 2 成分です。W(w)W(w) はトーラスから円板を除いたものと円環を境界の弧で貼ったものなので、∂W(w)\partial W(w) は 2 成分で、連結ではありません。したがって ww は閉曲面のこの型の分解(2-ハンドル 1 個)の語にはなりません。2 つの境界成分に円板を 1 つずつ貼ると、0-ハンドル 1 個、1-ハンドル 3 個、2-ハンドル 2 個で χ=0\chi=0 の向き付け可能な閉曲面、すなわちトーラスになります。

  • J. Milnor, Lectures on the h-Cobordism Theorem, Princeton University Press, 1965 — §2–§5(同境の上の Morse 関数、勾配状ベクトル場、手術の跡の模型、並べ替えと消去)。
  • J. Milnor, Morse Theory, Princeton University Press, 1963 — Part I。
  • A. A. Kosinski, Differential Manifolds, Academic Press, 1993 — 第 VI 章・第 VII 章(ハンドルの接着、消去、ハンドル体による表示)。
  • M. W. Hirsch, Differential Topology, Graduate Texts in Mathematics 33, Springer, 1976 — 第 6 章(Morse 理論)、第 9 章(曲面の分類)。
  • R. E. Gompf, A. I. Stipsicz, 4-Manifolds and Kirby Calculus, Graduate Studies in Mathematics 20, American Mathematical Society, 1999 — 第 4 章(ハンドル分解、滑らせ、消去)。
  • 松本幸夫『Morse 理論の基礎』岩波書店、2005 — 第 3 章(ハンドル体)、第 5 章(低次元多様体)。

このテーマの 100 本ノック(50 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 5 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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