Skip to content

K-理論入門:射影とユニタリで測る非可換空間の位相

Prerequisite:C*-Algebras: Spectral Theory and the Gelfand Representation

Raw

This content is not available in your language yet.

  • コンパクトハウスドルフ空間 XX 上の複素ベクトル束は直和について可換半群をなします。これをグロタンディーク群化したものが位相的 K-理論 K0(X)K^0(X) です。
  • セール–スワン定理により、XX 上のベクトル束は C(X)C(X) 上の有限生成射影加群と同じものであり、後者は行列環 Mn(C(X))M_n(C(X)) の射影と同じものです。射影という概念は非可換代数でもそのまま意味を持ちます。ここが非可換化の通り道です。
  • 一般の CC^*-代数 AA に対し、K0(A)K_0(A) は行列環の射影をマレー–フォン・ノイマン同値で割ってグロタンディーク群化したもの、K1(A)K_1(A) はユニタリ群 U(A)U_\infty(A) の連結成分の集合として定義されます。どちらも *-準同型に関して関手的で、ホモトピー不変かつ安定です。
  • ボット周期性 K0(A)K1(SA)K_0(A) \cong K_1(SA) が成り立つため、KnK_n は 2 周期になり、短完全列に対して六項完全系列という強力な計算道具が得られます。境界写像の一方(指数写像)はフレドホルム指数そのものです。
  • KK-群は代数の同型不変量です。単位元の類 [1]0[1]_0 や順序、トレースとの組み合わせで、行列環・キュンツ代数・非可換トーラスといった代数を区別できます。

1. 動機:非可換空間に位相不変量を与える

Section titled “1. 動機:非可換空間に位相不変量を与える”

非可換幾何学への動機C*-代数の基礎で見たとおり、ゲルファント–ナイマルクの定理(Theorem 4.6)[Motivating Noncommutative Geometry]は、可換な CC^*-代数の圏と局所コンパクトハウスドルフ空間の圏が(射の向きを逆にして)同値であることを主張します。この辞書に従えば「非可換空間」とは非可換な CC^*-代数のことだ、と宣言できます。しかし宣言しただけでは幾何学になりません。空間について私たちが知りたいのは、点の個数ではなく、穴の個数や向き付け可能性といった位相不変量だからです。

ところが、ホモロジーやコホモロジーを非可換代数へ移そうとすると、たちまち行き詰まります。特異ホモロジーは「XX への単体の連続写像」を数えますが、非可換代数には点がなく、したがって単体もありません。開被覆やチェックの神経も同様です。空間の内部構造に依存する構成は、ことごとく翻訳できないのです。

生き残るのは、はじめから代数の言葉だけで書かれた不変量です。K-理論はまさにそれにあたります。出発点はグロタンディークが 1957 年にリーマン–ロッホの定理を代数幾何学的に一般化したときの構成で、彼は連接層の同型類のなす半群を群に完備化し、その群 KK の上で指数の等式を定式化しました。アティヤとヒルツェブルフはこれを位相空間上のベクトル束に対して行い、位相的 K-理論 K0(X)K^0(X) を作りました。そして 1963 年、アティヤ–シンガーの指数定理は、楕円型作用素の解析的指数と位相的指数が K-理論の中で一致することを主張します。K-理論は、指数が住むべき場所として発見されたのです。

K-理論が非可換化を生き延びるのは、次の連鎖のおかげです。

ベクトル束    有限生成射影加群    行列環の射影 p=p=p2.\text{ベクトル束} \;\longleftrightarrow\; \text{有限生成射影加群} \;\longleftrightarrow\; \text{行列環の射影 } p = p^{*} = p^{2}.

最後の項には可換性がどこにも要りません。AA が非可換でも Mn(A)M_n(A) の射影は定義でき、それらを適切な同値関係で割れば群が得られます。同じことがユニタリ元 uu=uu=1u^{*}u = uu^{*} = 1 についても言え、そちらからは K1K_1 が生まれます。

素朴な問いの形で言い換えると、こうです。代数 AA は本質的に異なる射影をいくつ持っているか。異なるユニタリ元をいくつ持っているか。 この 2 つの問いへの答えが K0(A)K_0(A)K1(A)K_1(A) です。以下ではまず可換な場合(ベクトル束)で答えの形を確かめ、それを非可換な場合へ持ち上げます。

2. 準備:記号と半群のグロタンディーク群化

Section titled “2. 準備:記号と半群のグロタンディーク群化”

以下、XX はコンパクトハウスドルフ空間、AACC^*-代数を表します。C(X)C(X)XX 上の複素数値連続関数のなす CC^*-代数、Mn(A)M_n(A)AA 成分の nn 次正方行列のなす CC^*-代数、Mm,n(A)M_{m,n}(A)m×nm \times n 行列の全体です。AA の射影の全体を P(A)={pA:p=p=p2}\mathcal{P}(A) = \{p \in A : p = p^{*} = p^{2}\}AA が単位的なときそのユニタリ群を U(A)U(A) と書き、Un(A)=U(Mn(A))U_n(A) = U(M_n(A)) とします。K=K(2)\mathcal{K} = \mathcal{K}(\ell^2) はコンパクト作用素の CC^*-代数、εn=X×Cn\varepsilon^n = X \times \mathbb{C}^n は階数 nn の自明束です。N={1,2,}\mathbb{N} = \{1, 2, \ldots\}N0=N{0}\mathbb{N}_0 = \mathbb{N} \cup \{0\} とします。

K-理論の出発点は、半群を群に変える普遍的な手続きです。整数を自然数から作るときの構成をそのまま一般化したものにあたります。

Definition 2.1グロタンディーク群

(M,+)(M, +) を単位元 00 を持つ可換半群(可換モノイド)とする。M×MM \times M 上の関係を

(a,b)(c,d)    eM,a+d+e=b+c+e(a, b) \sim (c, d) \iff \exists e \in M,\quad a + d + e = b + c + e

で定め、商集合を G(M)=(M×M)/G(M) = (M \times M)/{\sim} と書く。G(M)G(M)MMグロタンディーク群と呼び、γM:MG(M), a[(a,0)]\gamma_M : M \to G(M),\ a \mapsto [(a, 0)] を標準写像と呼ぶ。

余分な元 ee を許すのが要点です。ee を落として a+d=b+ca + d = b + c とすると、MM が消約律を持たない場合に推移律が壊れます。実際、後で見るように K-理論に現れる半群は消約律を持ちません(Example 5.6)。

Proposition 2.2グロタンディーク群の基本性質

(M,+)(M, +) を可換モノイドとする。

  1. Definition 2.1 の関係 \sim は同値関係であり、[(a,b)]+[(c,d)]=[(a+c,b+d)][(a,b)] + [(c,d)] = [(a+c, b+d)] は代表元の取り方によらず定まる。この演算により G(M)G(M) は可換群であり、単位元は [(0,0)][(0,0)][(a,b)][(a,b)] の逆元は [(b,a)][(b,a)] である。
  2. γM\gamma_M は半群準同型であり、G(M)G(M) の任意の元は γM(a)γM(b)\gamma_M(a) - \gamma_M(b)a,bMa, b \in M)の形に書ける。
  3. γM(a)=γM(b)\gamma_M(a) = \gamma_M(b) であるための必要十分条件は、ある eMe \in M が存在して a+e=b+ea + e = b + e となることである。
  4. (普遍性)HH を可換群、φ:MH\varphi : M \to H を半群準同型とすると、群準同型 φ~:G(M)H\tilde{\varphi} : G(M) \to Hφ~γM=φ\tilde{\varphi} \circ \gamma_M = \varphi を満たすものがただ一つ存在する。
Proof(Proposition 2.2)

(1) 反射律は e=0e = 0 とすればよく、対称律は定義の式が (a,b)(a,b)(c,d)(c,d) について対称であることからしたがいます。推移律を示します。(a,b)(c,d)(a,b) \sim (c,d) を与える元を ee(c,d)(f,g)(c,d) \sim (f,g) を与える元を ee' とすると

a+d+e=b+c+e,c+g+e=d+f+ea + d + e = b + c + e, \qquad c + g + e' = d + f + e'

です。この 2 式を辺々加えて整理すると、e:=c+d+e+ee'' := c + d + e + e' とおいたとき

a+g+e=a+d+e+c+g+e=b+c+e+d+f+e=b+f+ea + g + e'' = a + d + e + c + g + e' = b + c + e + d + f + e' = b + f + e''

となり、(a,b)(f,g)(a,b) \sim (f,g) が言えます。

加法の well-defined 性は次のように確かめます。(a,b)(a,b)(a,b) \sim (a',b') を与える元を ee とすると、a+b+e=b+a+ea + b' + e = b + a' + e です。両辺に c+dc + d を加えると

(a+c)+(b+d)+e=(b+d)+(a+c)+e(a + c) + (b' + d) + e = (b + d) + (a' + c) + e

となるので、同じ ee によって (a+c,b+d)(a+c,b+d)(a+c, b+d) \sim (a'+c, b'+d) が成り立ちます。第 2 変数についても同様です。結合律・可換律は MM のそれから直ちにしたがいます。逆元については、e=0e = 0 をとると (a+b)+0+0=(a+b)+0+0(a+b) + 0 + 0 = (a+b) + 0 + 0 なので [(a+b,a+b)]=[(0,0)][(a+b, a+b)] = [(0,0)] であり、[(a,b)]+[(b,a)]=[(a+b,a+b)]=0[(a,b)] + [(b,a)] = [(a+b, a+b)] = 0 です。

(2) γM(a)+γM(b)=[(a+b,0)]=γM(a+b)\gamma_M(a) + \gamma_M(b) = [(a+b, 0)] = \gamma_M(a+b) です。また (1) より [(a,b)]=[(a,0)]+[(0,b)]=γM(a)γM(b)[(a,b)] = [(a,0)] + [(0,b)] = \gamma_M(a) - \gamma_M(b) です。

(3) 定義から γM(a)=γM(b)\gamma_M(a) = \gamma_M(b)(a,0)(b,0)(a,0) \sim (b,0)、すなわちある ee について a+0+e=0+b+ea + 0 + e = 0 + b + e と同値です。

(4) φ~([(a,b)]):=φ(a)φ(b)\tilde{\varphi}([(a,b)]) := \varphi(a) - \varphi(b) と定めます。well-defined 性は、a+d+e=b+c+ea + d + e = b + c + eφ\varphi を施して φ(a)+φ(d)+φ(e)=φ(b)+φ(c)+φ(e)\varphi(a) + \varphi(d) + \varphi(e) = \varphi(b) + \varphi(c) + \varphi(e) を得、HH が群なので φ(e)\varphi(e) を消去して φ(a)φ(b)=φ(c)φ(d)\varphi(a) - \varphi(b) = \varphi(c) - \varphi(d) が出ることからしたがいます。これが群準同型であり φ~γM=φ\tilde{\varphi} \circ \gamma_M = \varphi を満たすことは定義から明らかな計算です。一意性は、(2) より G(M)G(M)γM(M)\gamma_M(M) とその逆元で生成されることからしたがいます。

Example 2.3自然数から整数へ

M=(N0,+)M = (\mathbb{N}_0, +) とすると、MM は消約律を持つので Proposition 2.2(3) より γM\gamma_M は単射です。[(a,b)]ab[(a,b)] \mapsto a - b は同型 G(N0)ZG(\mathbb{N}_0) \cong \mathbb{Z} を与えます。これが整数の標準的な構成です。

XX 上の複素ベクトル束の同型類の全体を Vect(X)\mathrm{Vect}(X) と書きます。ホイットニー和 EFE \oplus F は同型類のレベルで定まり、Vect(X)\mathrm{Vect}(X) は零束を単位元とする可換モノイドになります。

Definition 3.1位相的 K-理論

コンパクトハウスドルフ空間 XX に対し、

K0(X):=G(Vect(X))K^0(X) := G(\mathrm{Vect}(X))

と定め、XX の(複素)位相的 K-群と呼ぶ。EE の定める K0(X)K^0(X) の元を [E][E] と書く。

K0(X)K^0(X) には束のテンソル積から誘導される積が入り、可換環になります。単位元は [ε1][\varepsilon^1] です。

コンパクト性はここで本質的に効きます。任意のベクトル束が自明束の直和因子になる、という次の補題が、以後のすべての議論の土台です。

Lemma 3.2補束の存在

XX をコンパクトハウスドルフ空間、EXE \to X を複素ベクトル束とする。このとき、ある NNN \in \mathbb{N}XX 上のベクトル束 FF が存在して EFεNE \oplus F \cong \varepsilon^N となる。

Proof(Lemma 3.2)

局所自明性により、各点 xXx \in X に対して開近傍 UU と束同型 ϕU:EUU×CnU\phi_U : E|_U \to U \times \mathbb{C}^{n_U} が存在します。XX はコンパクトなので、有限個 U1,,UkU_1, \ldots, U_kXX を覆えます(コンパクト性コンパクト空間の定義(Definition 3.2)[コンパクト性])。XX はコンパクトハウスドルフなので正規空間であり(コンパクトハウスドルフ空間は T4(Theorem 4.4)[分離公理と距離づけ可能性])、この被覆に従属する 1 の分割 χ1,,χk\chi_1, \ldots, \chi_kχi0\chi_i \ge 0suppχiUi\mathrm{supp}\,\chi_i \subset U_iiχi=1\sum_i \chi_i = 1)がとれます。

N=n1++nkN = n_1 + \cdots + n_k とおき、写像 Φ:EX×CN\Phi : E \to X \times \mathbb{C}^{N}

Φ(v)=(π(v), χ1(π(v))pr1ϕU1(v), , χk(π(v))prkϕUk(v))\Phi(v) = \bigl(\pi(v),\ \chi_1(\pi(v))\, \mathrm{pr}_1\phi_{U_1}(v),\ \ldots,\ \chi_k(\pi(v))\, \mathrm{pr}_k\phi_{U_k}(v)\bigr)

で定めます。ここで π:EX\pi : E \to X は射影、pri\mathrm{pr}_iUi×CniU_i \times \mathbb{C}^{n_i} の第 2 成分への射影です。χi\chi_i の台が UiU_i に含まれるので、χipriϕUi\chi_i \cdot \mathrm{pr}_i\phi_{U_i}00 で延長して EE 全体で連続になります。

Φ\Phi が各ファイバー上単射であることを見ます。xXx \in X を固定すると iχi(x)=1\sum_i \chi_i(x) = 1 なので、ある iiχi(x)>0\chi_i(x) > 0 です。vExv \in E_xΦ(v)=0\Phi(v) = 0 を満たせば、第 ii 成分から χi(x)priϕUi(v)=0\chi_i(x)\,\mathrm{pr}_i\phi_{U_i}(v) = 0、すなわち priϕUi(v)=0\mathrm{pr}_i\phi_{U_i}(v) = 0 となり、ϕUi\phi_{U_i} がファイバー上同型なので v=0v = 0 です。

したがって Φ\PhiEEεN\varepsilon^N の部分束として実現します(階数が局所定数な単射束射の像は部分束です)。εN=X×CN\varepsilon^N = X \times \mathbb{C}^N に標準エルミート内積を入れ、F:=Φ(E)F := \Phi(E)^{\perp}、すなわち Fx=(Φ(Ex))CNF_x = (\Phi(E_x))^{\perp} \subset \mathbb{C}^N とおけば、FF も部分束であり Φ(E)F=εN\Phi(E) \oplus F = \varepsilon^N です。EΦ(E)E \cong \Phi(E) なので主張が得られます。

Corollary 3.3位相的 K-群の標準形

XX をコンパクトハウスドルフ空間とする。

  1. K0(X)K^0(X) の任意の元は [E][εN][E] - [\varepsilon^N]EE はベクトル束、NN0N \in \mathbb{N}_0)の形に書ける。
  2. ベクトル束 E,FE, F について [E]=[F][E] = [F] となるのは、ある NN について EεNFεNE \oplus \varepsilon^N \cong F \oplus \varepsilon^N となるとき、かつそのときに限る(安定同型)。
Proof(Corollary 3.3)

(1) Proposition 2.2(2) より、元は [E][F][E] - [F] と書けます。Lemma 3.2 により FFεNF \oplus F' \cong \varepsilon^N となる FF' をとると

[E][F]=[E]+[F][F][F]=[EF][εN][E] - [F] = [E] + [F'] - [F] - [F'] = [E \oplus F'] - [\varepsilon^N]

となります。

(2) Proposition 2.2(3) より [E]=[F][E] = [F] は、あるベクトル束 GG について EGFGE \oplus G \cong F \oplus G となることと同値です。再び Lemma 3.2GGεNG \oplus G' \cong \varepsilon^N となる GG' をとって両辺に GG' を加えれば EεNFεNE \oplus \varepsilon^N \cong F \oplus \varepsilon^N が得られます。逆は明らかです。

同型ではなく安定同型しか読み取れないことは K-理論の弱点であり、同時に強みでもあります。安定同型は同型より扱いやすく、群構造という強い代数的構造を許すからです。

Example 3.4球面の K-群とボット射影

S1S^1 上の階数 nn の複素ベクトル束は、S1S^1 を 2 つの弧に分けて貼り合わせ関数 S0U(n)S^0 \to U(n) を考えることで分類されます。U(n)U(n) は弧状連結なので貼り合わせ関数は定値写像にホモトピックであり、束はすべて自明です。よって Vect(S1)N0\mathrm{Vect}(S^1) \cong \mathbb{N}_0(階数)で、消約律が成り立つので K0(S1)ZK^0(S^1) \cong \mathbb{Z} です。

S2S^2 の場合、貼り合わせ関数は S1U(n)S^1 \to U(n) であり、そのホモトピー類は π1(U(n))Z\pi_1(U(n)) \cong \mathbb{Z}n1n \ge 1)で与えられます。この整数は第 1 チャーン類 c1c_1 にほかなりません。階数 nn の束は c1Zc_1 \in \mathbb{Z} で完全に分類されるので、Vect(S2)N0×Z\mathrm{Vect}(S^2) \cong \mathbb{N}_0 \times \mathbb{Z}(階数と c1c_1)となり、

K0(S2)ZZK^0(S^2) \cong \mathbb{Z} \oplus \mathbb{Z}

です。生成元としてホップ束(c1=1c_1 = 1 の直線束)HH をとると、HHε1H \otimes H \oplus \varepsilon^1HHH \oplus H はともに階数 22c1=2c_1 = 2 なので同型であり、K0(S2)K^0(S^2) の中で

[H]2+1=2[H],すなわち([H]1)2=0[H]^2 + 1 = 2[H], \qquad \text{すなわち} \quad ([H] - 1)^2 = 0

が成り立ちます。K0(S2)Z[t]/(t2)K^0(S^2) \cong \mathbb{Z}[t]/(t^2)t=[H]1t = [H] - 1)です。

HH に対応する射影を書き下しておきます。S2={(x,y,z)R3:x2+y2+z2=1}S^2 = \{(x,y,z) \in \mathbb{R}^3 : x^2+y^2+z^2 = 1\} 上で

pB(x,y,z)=12(1+xσ1+yσ2+zσ3)=12(1+zxiyx+iy1z)M2(C(S2))p_{\mathrm{B}}(x,y,z) = \frac{1}{2}\bigl(1 + x\sigma_1 + y\sigma_2 + z\sigma_3\bigr) = \frac{1}{2}\begin{pmatrix} 1+z & x-iy \\ x+iy & 1-z \end{pmatrix} \in M_2(C(S^2))

とおきます(σj\sigma_j はパウリ行列)。σj\sigma_j が自己共役なので pB=pBp_{\mathrm{B}}^{*} = p_{\mathrm{B}} であり、(xσ1+yσ2+zσ3)2=(x2+y2+z2)1=1(x\sigma_1+y\sigma_2+z\sigma_3)^2 = (x^2+y^2+z^2)\cdot 1 = 1 を使うと

pB2=14(1+2(xσ1+yσ2+zσ3)+1)=pBp_{\mathrm{B}}^2 = \tfrac{1}{4}\bigl(1 + 2(x\sigma_1+y\sigma_2+z\sigma_3) + 1\bigr) = p_{\mathrm{B}}

となり、pBp_{\mathrm{B}} は射影です。各点で TrpB=1\mathrm{Tr}\,p_{\mathrm{B}} = 1 なので階数 11 の直線束を定め、これがホップ束です。この pBp_{\mathrm{B}}ボット射影と呼びます。

4. セール–スワン定理:束から射影加群へ

Section titled “4. セール–スワン定理:束から射影加群へ”

Lemma 3.2 は、代数的には「Γ(E)\Gamma(E) は自由加群の直和因子である」と読めます。これを正確に述べたのがセール–スワンの定理です。

Theorem 4.1セール–スワンの定理

XX をコンパクトハウスドルフ空間とする。XX 上の複素ベクトル束 EE に連続切断のなす C(X)C(X)-加群

Γ(E)={s:XE 連続πs=idX}\Gamma(E) = \{s : X \to E \ \text{連続} \mid \pi \circ s = \mathrm{id}_X\}

を対応させる関手 Γ\Gamma は、XX 上の複素ベクトル束と束射のなす圏から、有限生成射影 C(X)C(X)-加群と加群準同型のなす圏への圏同値を与える。とくに、束の直和が加群の直和に対応するので、可換モノイドの同型 Vect(X){有限生成射影 C(X)-加群の同型類}\mathrm{Vect}(X) \cong \{\text{有限生成射影 } C(X)\text{-加群の同型類}\} が成り立ち、したがって

K0(X)K0(C(X))K^0(X) \cong K_0(C(X))

が成り立つ(右辺は Definition 5.3 による)。

Proof(Theorem 4.1)

中心となる対応だけを構成します。EE を階数が局所定数な複素ベクトル束とすると、Lemma 3.2 により EEεN\varepsilon^N の部分束と見なせます。εN\varepsilon^N の標準エルミート内積に関して ExCNE_x \subset \mathbb{C}^N への直交射影を p(x)MN(C)p(x) \in M_N(\mathbb{C}) とすると、p(x)p(x)xx について連続なので pMN(C(X))p \in M_N(C(X)) であり、p=p=p2p = p^{*} = p^2 です。切断について

Γ(E)={sΓ(εN):ps=s}=pC(X)N\Gamma(E) = \{s \in \Gamma(\varepsilon^N) : p s = s\} = p\,C(X)^N

が成り立ちます。ここで Γ(εN)=C(X)N\Gamma(\varepsilon^N) = C(X)^N は自由加群です。C(X)N=pC(X)N(1p)C(X)NC(X)^N = pC(X)^N \oplus (1-p)C(X)^N なので Γ(E)\Gamma(E) は有限生成射影加群です。

逆に PP を有限生成射影 C(X)C(X)-加群とすると、PQC(X)NP \oplus Q \cong C(X)^N となる QQNN があり、C(X)NC(X)NC(X)^N \to C(X)^NPP への射影は pMN(C(X))p \in M_N(C(X)) で表されます(自己共役に取り直せます)。このとき

Ep:={(x,v)X×CN:p(x)v=v}E_p := \{(x, v) \in X \times \mathbb{C}^N : p(x)v = v\}

XX 上のベクトル束であり、Γ(Ep)P\Gamma(E_p) \cong P となります。この 2 つの構成が互いに逆であること、および Γ\Gamma が忠実充満であることの確認は、局所自明化を用いた素直な検証です。

Remark 4.2

Theorem 4.1 の完全な証明は Swan の原論文(参考文献 4)にあります。可換環の場合の一般論はセールによるもので、XX がコンパクトハウスドルフのときの位相的な版がスワンによるものです。コンパクト性を落とすと Lemma 3.2 が破綻し、有限生成でない射影加群が現れるので、定理はそのままでは成り立ちません。

この定理により、K-理論の定義は完全に代数的な形に書き換えられます。C(X)C(X) を任意の CC^*-代数 AA に置き換えても、この形の定義はそのまま意味を持ちます。

flowchart TB
X["コンパクトハウスドルフ空間 X"] -->|"ゲルファント–ナイマルク"| CX["可換 C*-代数 C(X)"]
X -.-> E["X 上の複素ベクトル束 E"]
CX -.-> M["C(X) 上の有限生成射影加群"]
E -->|"セール–スワン"| M
M --> P["射影 p ∈ M_n(C(X))"]
P -->|"C(X) を非可換な A に置き換える"| Q["射影 p ∈ M_n(A)"]
Q --> K["K0(A):非可換空間の位相不変量"]
ベクトル束から非可換代数の射影へ。K-理論はこの経路をたどって非可換化されます。

5.1. マレー–フォン・ノイマン同値

Section titled “5.1. マレー–フォン・ノイマン同値”

ベクトル束の同型に対応する、射影の間の同値関係を導入します。

Definition 5.1マレー–フォン・ノイマン同値

AACC^*-代数とする。p,qP(A)p, q \in \mathcal{P}(A)マレー–フォン・ノイマン同値であるとは、ある vAv \in A が存在して

vv=p,vv=qv^{*}v = p, \qquad vv^{*} = q

となることをいい、pqp \sim q と書く。さらに

P(A):=n1P(Mn(A))\mathcal{P}_\infty(A) := \coprod_{n \ge 1} \mathcal{P}(M_n(A))

とおき、pP(Mn(A))p \in \mathcal{P}(M_n(A))qP(Mm(A))q \in \mathcal{P}(M_m(A)) に対して、ある vMm,n(A)v \in M_{m,n}(A)vv=pv^{*}v = pvv=qvv^{*} = q を満たすとき p0qp \sim_0 q と書く。また pq:=(p00q)P(Mn+m(A))p \oplus q := \begin{pmatrix} p & 0 \\ 0 & q \end{pmatrix} \in \mathcal{P}(M_{n+m}(A)) と定める。

vv=pv^{*}v = p が射影なら vvvv^{*} も自動的に射影です。実際 vvp2=(1p)vv(1p)=(1p)p(1p)=0\|v - vp\|^2 = \|(1-p)v^{*}v(1-p)\| = \|(1-p)p(1-p)\| = 0 なので v=vpv = vp となり(ここでは AA に単位元を付け加えて計算しています)、

(vv)2=v(vv)v=vpv=vv,(vv)=vv(vv^{*})^2 = v(v^{*}v)v^{*} = vpv^{*} = vv^{*}, \qquad (vv^{*})^{*} = vv^{*}

がしたがいます。0\sim_0 が同値関係であることも直接確かめられます。vv=p, vv=q, ww=q, ww=rv^{*}v = p,\ vv^{*} = q,\ w^{*}w = q,\ ww^{*} = r のとき

(wv)(wv)=vqv=vvvv=p2=p,(wv)(wv)=wqw=wwww=r(wv)^{*}(wv) = v^{*}qv = v^{*}vv^{*}v = p^2 = p, \qquad (wv)(wv)^{*} = wqw^{*} = ww^{*}ww^{*} = r

なので推移律が成り立ちます。

P(A)/0\mathcal{P}_\infty(A)/{\sim_0}D(A)\mathcal{D}(A) と書きます。\oplus0\sim_0 と両立し(vwv \oplus w をとればよい)、pq0qpp \oplus q \sim_0 q \oplus p(成分を入れ替える部分等距離をとればよい)なので、D(A)\mathcal{D}(A)[0][0] を単位元とする可換モノイドです。

より強い同値関係として、AA が単位的なとき puqp \sim_u q(あるユニタリ uU(A)u \in U(A)upu=qupu^{*} = q)と phqp \sim_h qP(A)\mathcal{P}(A) 内の連続な道で結ばれる)があります。次の補題は、これらの関係が「近さ」から自動的に生じることを示すもので、K-理論の連続性・ホモトピー不変性の源です。

Lemma 5.2近い射影は同値

AA を単位的 CC^*-代数、p,qP(A)p, q \in \mathcal{P}(A) とし、pq<1\|p - q\| < 1 が成り立つとする。このとき uU(A)u \in U(A)uu が単位元と連続な道で結ばれ(すなわち uU(A)0u \in U(A)_0)、かつ upu=qupu^{*} = q となるものが存在する。とくに phqp \sim_h q、したがって pqp \sim q である。

Proof(Lemma 5.2)

z:=qp+(1q)(1p)Az := qp + (1-q)(1-p) \in A とおきます。2q12q - 1 は自己共役ユニタリ((2q1)2=4q24q+1=1(2q-1)^2 = 4q^2 - 4q + 1 = 1)であり、

(2q1)(pq)=2qp2qp+q=(p+q2qp)=(1z)(2q-1)(p - q) = 2qp - 2q - p + q = -\bigl(p + q - 2qp\bigr) = -(1 - z)

が成り立ちます(最後の等号は 1z=1qp(1qp+qp)=p+q2qp1 - z = 1 - qp - (1 - q - p + qp) = p + q - 2qp から)。ユニタリを掛けてもノルムは変わらないので

1z=(2q1)(pq)=pq<1\|1 - z\| = \|(2q-1)(p-q)\| = \|p - q\| < 1

です。よって zz は可逆で、さらに t[0,1]t \in [0,1] に対し zt:=(1t)1+tzz_t := (1-t)\cdot 1 + tz1zt=t1z<1\|1 - z_t\| = t\|1-z\| < 1 より可逆なので、zz は可逆元の群の単位成分 GL(A)0GL(A)_0 に属します。

次に zp=(qp+(1q)(1p))p=qpzp = (qp + (1-q)(1-p))p = qp(1p)p=0(1-p)p = 0 より)と qz=q(qp+(1q)(1p))=qpqz = q(qp + (1-q)(1-p)) = qpq(1q)=0q(1-q) = 0 より)から zp=qzzp = qz を得ます。両辺の共役をとると pz=zqpz^{*} = z^{*}q なので

(zz)p=z(zp)=zqz=(pz)z=p(zz)(z^{*}z)p = z^{*}(zp) = z^{*}qz = (pz^{*})z = p(z^{*}z)

となり、ppzzz^{*}z と可換です。したがって ppzzz^{*}z の多項式すべてと可換で、連続関数カルキュラス(Corollary 6.2)[C*-Algebras]により z=(zz)1/2|z| = (z^{*}z)^{1/2} および z1|z|^{-1} とも可換です(zz が可逆なので zzz^{*}z は可逆な正元であり z1|z|^{-1} が存在します)。

極分解 u:=zz1u := z|z|^{-1} とおくと uu はユニタリで、

upu=zz1pz1z=zpz2z=qz(zz)1z=qupu^{*} = z|z|^{-1}p|z|^{-1}z^{*} = zp|z|^{-2}z^{*} = qz(z^{*}z)^{-1}z^{*} = q

です(最後は z(zz)1z=zz1(z)1z=1z(z^{*}z)^{-1}z^{*} = zz^{-1}(z^{*})^{-1}z^{*} = 1)。zGL(A)0z \in GL(A)_0 から zz を単位元に結ぶ道 ztz_t をとり ut:=ztzt1u_t := z_t|z_t|^{-1} とすれば、utU(A)u_t \in U(A)11 から uu への連続な道です。よって uU(A)0u \in U(A)_0 であり、tutputt \mapsto u_t p u_t^{*}pp から qq への P(A)\mathcal{P}(A) 内の道を与えます。

最後に pqp \sim q を確認します。upu=qupu^{*} = q のとき v:=upv := up とおけば、uu=1u^{*}u = 1p2=pp^2 = p から

vv=puup=p2=p,vv=uppu=upu=qv^{*}v = p\,u^{*}u\,p = p^2 = p, \qquad vv^{*} = up\,p\,u^{*} = upu^{*} = q

となり、Definition 5.1 の意味で pqp \sim q です。

Definition 5.3C*-代数の K₀ 群

AA単位的 CC^*-代数とするとき、

K0(A):=G(D(A))K_0(A) := G(\mathcal{D}(A))

と定める。pP(A)p \in \mathcal{P}_\infty(A) の定める K0(A)K_0(A) の元を [p]0[p]_0 と書く。

一般の(単位的とは限らない)CC^*-代数 AA に対しては、単位化(単位元の添加(Remark 2.4)[C*-Algebras]A~=AC\tilde{A} = A \oplus \mathbb{C} と分裂完全列 0AA~ π C00 \to A \to \tilde{A} \xrightarrow{\ \pi\ } \mathbb{C} \to 0 を用いて

K0(A):=ker(K0(π):K0(A~)K0(C))K_0(A) := \ker\bigl(K_0(\pi) : K_0(\tilde{A}) \to K_0(\mathbb{C})\bigr)

と定める。

Remark 5.4

AA が単位的なとき、2 つの定義は一致します。実際 A~AC\tilde{A} \cong A \oplus \mathbb{C}(a,λ)(a+λ1A,λ)(a, \lambda) \mapsto (a + \lambda 1_A, \lambda))であり、Theorem 5.7(4) の加法性から K0(A~)K0(A)K0(C)K_0(\tilde{A}) \cong K_0(A) \oplus K_0(\mathbb{C}) となって、K0(π)K_0(\pi) の核はちょうど第 1 成分になるからです。以後、単位的な場合は最初の定義で計算します。

Proposition 5.5K₀ の標準形と同値判定

AA を単位的 CC^*-代数とする。

  1. K0(A)K_0(A) の任意の元は、ある mn1m \ge n \ge 1pP(Mm(A))p \in \mathcal{P}(M_m(A)) を用いて [p]0[1n]0[p]_0 - [1_n]_0 の形に書ける。ここで 1n1_nMn(A)M_n(A) の単位元である。
  2. p,qP(A)p, q \in \mathcal{P}_\infty(A) について、[p]0=[q]0[p]_0 = [q]_0 となるための必要十分条件は、ある nNn \in \mathbb{N} が存在して p1n0q1np \oplus 1_n \sim_0 q \oplus 1_n となることである。
  3. p,qP(Mn(A))p, q \in \mathcal{P}(M_n(A)) について、phqpuqp0q[p]0=[q]0p \sim_h q \Rightarrow p \sim_u q \Rightarrow p \sim_0 q \Rightarrow [p]_0 = [q]_0 が成り立つ。
Proof(Proposition 5.5)

(1) Proposition 2.2(2) より元は [p]0[q]0[p]_0 - [q]_0pP(Mk(A))p \in \mathcal{P}(M_k(A))qP(Mn(A))q \in \mathcal{P}(M_n(A)))と書けます。q(1nq)=diag(q,1nq)q \oplus (1_n - q) = \mathrm{diag}(q, 1_n - q) に対して Definition 5.1 の意味で

v=(q1nq)M2n,n(A),vv=q2+(1nq)2=1n,vv=(q001nq)v = \begin{pmatrix} q \\ 1_n - q \end{pmatrix} \in M_{2n, n}(A), \qquad v^{*}v = q^2 + (1_n-q)^2 = 1_n, \qquad vv^{*} = \begin{pmatrix} q & 0 \\ 0 & 1_n - q\end{pmatrix}

となるので q(1nq)01nq \oplus (1_n - q) \sim_0 1_n、すなわち [q]0+[1nq]0=[1n]0[q]_0 + [1_n - q]_0 = [1_n]_0 です。したがって [q]0=[1nq]0[1n]0-[q]_0 = [1_n - q]_0 - [1_n]_0 となり

[p]0[q]0=[p(1nq)]0[1n]0[p]_0 - [q]_0 = [p \oplus (1_n - q)]_0 - [1_n]_0

を得ます。p(1nq)P(Mk+n(A))p \oplus (1_n - q) \in \mathcal{P}(M_{k+n}(A)) であり m=k+nnm = k + n \ge n です。

(2) 十分性は明らかです。必要性を示します。Proposition 2.2(3) より、ある rP(Mn(A))r \in \mathcal{P}(M_n(A)) について pr0qrp \oplus r \sim_0 q \oplus r です。両辺に 1nr1_n - r を直和すると、0\sim_0\oplus と両立するので

pr(1nr)0qr(1nr)p \oplus r \oplus (1_n - r) \sim_0 q \oplus r \oplus (1_n - r)

です。(1) の計算より r(1nr)01nr \oplus (1_n - r) \sim_0 1_n なので、両辺はそれぞれ p1np \oplus 1_nq1nq \oplus 1_n0\sim_0 で結ばれます。0\sim_0 の推移律から p1n0q1np \oplus 1_n \sim_0 q \oplus 1_n です。

(3) phqp \sim_h q とすると、[0,1][0,1] 上の連続な道 tptt \mapsto p_t は一様連続なので、0=t0<t1<<tk=10 = t_0 < t_1 < \cdots < t_k = 1 を細かくとって各区間で ptjptj+1<1\|p_{t_{j}} - p_{t_{j+1}}\| < 1 とできます。Lemma 5.2 を各区間に適用して得られるユニタリを掛け合わせれば puqp \sim_u q です。upu=qupu^{*} = q なら v=upv = upvv=pv^{*}v = pvv=qvv^{*} = q を満たすので puqp0qp \sim_u q \Rightarrow p \sim_0 q。最後の含意は K0K_0 の定義そのものです。

D(A)K0(A)\mathcal{D}(A) \to K_0(A) が単射とは限らないことに注意してください。次の例はその典型で、非可換性が本質的に効いています。

Example 5.6キュンツ代数 O₂ における消約律の破れ

O2\mathcal{O}_2 を、2 つの等距離作用素 s1,s2s_1, s_2sisi=1s_i^{*}s_i = 1)で生成され、関係式 s1s1+s2s2=1s_1s_1^{*} + s_2s_2^{*} = 1 を満たす単位的 CC^*-代数とする(キュンツ代数)。この関係から s1s2=0s_1^{*}s_2 = 0 がしたがいます。実際

s1s2=s1(s1s1+s2s2)s2=(s1s1)s1s2+s1s2(s2s2)=s1s2+s1s2s_1^{*}s_2 = s_1^{*}(s_1s_1^{*} + s_2s_2^{*})s_2 = (s_1^{*}s_1)s_1^{*}s_2 + s_1^{*}s_2(s_2^{*}s_2) = s_1^{*}s_2 + s_1^{*}s_2

なので s1s2=0s_1^{*}s_2 = 0 です。そこで v:=(s1  s2)M1,2(O2)v := (s_1\ \ s_2) \in M_{1,2}(\mathcal{O}_2) とおくと

vv=s1s1+s2s2=1,vv=(s1s1s1s2s2s1s2s2)=(1001)=12vv^{*} = s_1s_1^{*} + s_2s_2^{*} = 1, \qquad v^{*}v = \begin{pmatrix} s_1^{*}s_1 & s_1^{*}s_2 \\ s_2^{*}s_1 & s_2^{*}s_2 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} = 1_2

となり、12011_2 \sim_0 1、すなわち D(O2)\mathcal{D}(\mathcal{O}_2) の中で [1]+[1]=[1][1] + [1] = [1] です。したがって K0(O2)K_0(\mathcal{O}_2) では 2[1]0=[1]02[1]_0 = [1]_0 より [1]0=0[1]_0 = 0 となります。

一方 D(O2)\mathcal{D}(\mathcal{O}_2) では [1][0][1] \ne [0] です(p00p \sim_0 0 なら p=vvp = v^{*}v かつ vv=0vv^{*} = 0 より v2=vv=0\|v\|^2 = \|vv^{*}\| = 0 なので p=0p = 0)。つまり [1]+[1]=[1]+[0][1] + [1] = [1] + [0] でありながら [1][0][1] \ne [0] であり、D(O2)\mathcal{D}(\mathcal{O}_2) は消約律を満たしません。Definition 2.1 で余分な元 ee を許した理由がこれです。なお、キュンツの計算により K0(On)Z/(n1)ZK_0(\mathcal{O}_n) \cong \mathbb{Z}/(n-1)\mathbb{Z}(生成元 [1]0[1]_0)、K1(On)=0K_1(\mathcal{O}_n) = 0 が知られています。

Theorem 5.7K₀ の関手的性質

A,BA, BCC^*-代数とする。

  1. (関手性)*-準同型 φ:AB\varphi : A \to B は群準同型 K0(φ):K0(A)K0(B)K_0(\varphi) : K_0(A) \to K_0(B)[p]0[φ(p)]0[p]_0 \mapsto [\varphi(p)]_0 を誘導し、K0(idA)=idK_0(\mathrm{id}_A) = \mathrm{id}K0(ψφ)=K0(ψ)K0(φ)K_0(\psi \circ \varphi) = K_0(\psi) \circ K_0(\varphi) が成り立つ。
  2. (ホモトピー不変性)*-準同型の族 φt:AB\varphi_t : A \to Bt[0,1]t \in [0,1])が各 aAa \in A について tφt(a)t \mapsto \varphi_t(a) をノルム連続にするならば、K0(φ0)=K0(φ1)K_0(\varphi_0) = K_0(\varphi_1) である。とくに、ホモトピー同値な CC^*-代数どうしは同じ K0K_0 を持ち、可縮な CC^*-代数の K0K_000 である。
  3. (安定性)nNn \in \mathbb{N} に対し K0(Mn(A))K0(A)K_0(M_n(A)) \cong K_0(A)、また K0(AK)K0(A)K_0(A \otimes \mathcal{K}) \cong K_0(A) である。
  4. (加法性)K0(AB)K0(A)K0(B)K_0(A \oplus B) \cong K_0(A) \oplus K_0(B) である。
  5. (連続性)A=limAiA = \varinjlim A_iCC^*-代数の帰納極限ならば K0(A)limK0(Ai)K_0(A) \cong \varinjlim K_0(A_i) である。
  6. (半分完全性)0IιAπA/I00 \to I \xrightarrow{\iota} A \xrightarrow{\pi} A/I \to 0CC^*-代数の短完全列とすると、K0(I)K0(ι)K0(A)K0(π)K0(A/I)K_0(I) \xrightarrow{K_0(\iota)} K_0(A) \xrightarrow{K_0(\pi)} K_0(A/I) は中央で完全である。

同じ主張が Definition 6.1 で定める K1K_1 についても成り立つ。

Proof(Theorem 5.7)

(1) φ\varphiMn(φ):Mn(A)Mn(B)M_n(\varphi) : M_n(A) \to M_n(B) に拡張され、射影を射影に、0\sim_0 を与える vvφ(v)\varphi(v) に写すので D(A)D(B)\mathcal{D}(A) \to \mathcal{D}(B) の半群準同型を誘導します。Proposition 2.2(4) の普遍性から群準同型が一意に定まり、合成に関する規則もそこからしたがいます。

(2) pP(Mn(A))p \in \mathcal{P}(M_n(A)) を固定します。tφt(p)t \mapsto \varphi_t(p)P(Mn(B))\mathcal{P}(M_n(B)) 内の連続な道なので、Proposition 5.5(3) より [φ0(p)]0=[φ1(p)]0[\varphi_0(p)]_0 = [\varphi_1(p)]_0 です。K0(A)K_0(A) はこれらの類で生成されるので結論を得ます。可縮な場合は idA\mathrm{id}_A が零準同型にホモトピックなので K0(A)=0K_0(A) = 0 です。

(3) Mk(Mn(A))Mkn(A)M_k(M_n(A)) \cong M_{kn}(A) の下で P(Mn(A))\mathcal{P}_\infty(M_n(A))P(A)\mathcal{P}_\infty(A) の部分系になり、pp0p \mapsto p \oplus 0 の埋め込みで D(Mn(A))D(A)\mathcal{D}(M_n(A)) \to \mathcal{D}(A) が定まります。これが同型を誘導することは、P(Mk(A))\mathcal{P}(M_k(A)) の任意の元が P(Mk/n(Mn(A)))\mathcal{P}(M_{\lceil k/n \rceil}(M_n(A))) の元に 0\sim_0 で結ばれることからしたがいます。AK=limMn(A)A \otimes \mathcal{K} = \varinjlim M_n(A) なので、後半は (5) から出ます。

(4) 射影 pP(Mn(AB))p \in \mathcal{P}(M_n(A \oplus B))Mn(AB)Mn(A)Mn(B)M_n(A \oplus B) \cong M_n(A) \oplus M_n(B) の下で (pA,pB)(p_A, p_B) と分解し、0\sim_0 も成分ごとに読めます。よって D(AB)D(A)×D(B)\mathcal{D}(A \oplus B) \cong \mathcal{D}(A) \times \mathcal{D}(B) であり、グロタンディーク群化は直積と可換です。

(5) 帰納極限 A=iφi(Ai)A = \overline{\bigcup_i \varphi_i(A_i)} において、Mn(A)M_n(A) の射影 pp に対し pa<1/4\|p - a\| < 1/4 となる自己共役元 aMn(φi(Ai))a \in M_n(\varphi_i(A_i)) をとると、aa のスペクトルは {0,1}\{0,1\} の近傍に含まれるので連続関数カルキュラスで aa の近くに射影 qMn(φi(Ai))q \in M_n(\varphi_i(A_i)) が作れ、pq<1\|p - q\| < 1 から Lemma 5.2 により [p]0=[q]0[p]_0 = [q]_0 です。これが全射性を、同様の摂動議論が単射性を与えます。

(6) K0(π)K0(ι)=K0(πι)=0K_0(\pi) \circ K_0(\iota) = K_0(\pi \circ \iota) = 0 なので像は核に含まれます。逆の包含は、K0(π)([p]0[1n]0)=0K_0(\pi)([p]_0 - [1_n]_0) = 0 から Proposition 5.5(2) を用いて π(p)\pi(p)Mm(A/I)M_m(A/I) の中で 1n1_n に安定同値に取り直し、Lemma 5.2ppMm(I)M_m(I^{\sim}) の射影に持ち上げることで示されます。詳細は参考文献 1 の第 4 章にあります。

Example 5.8行列環とコンパクト作用素

A=CA = \mathbb{C} のとき、Mn(C)M_n(\mathbb{C}) の射影は階数で完全に分類され、p0qp \sim_0 qrankp=rankq\mathrm{rank}\,p = \mathrm{rank}\,q と同値です(同じ階数なら適当な部分等距離が作れます)。よって D(C)N0\mathcal{D}(\mathbb{C}) \cong \mathbb{N}_0 であり、これは消約律を持つので

K0(C)Z,[p]0=rankp,[1C]0=1K_0(\mathbb{C}) \cong \mathbb{Z}, \qquad [p]_0 = \mathrm{rank}\,p, \qquad [1_{\mathbb{C}}]_0 = 1

です。

A=Mk(C)A = M_k(\mathbb{C}) のときは Mn(Mk(C))Mnk(C)M_n(M_k(\mathbb{C})) \cong M_{nk}(\mathbb{C}) なので、同じ議論から K0(Mk(C))ZK_0(M_k(\mathbb{C})) \cong \mathbb{Z} で、生成元は最小射影 e11e_{11} の類です。ただし単位元の類は

[1Mk(C)]0=k[e11]0[1_{M_k(\mathbb{C})}]_0 = k\,[e_{11}]_0

となります。群 K0K_0 だけでは C\mathbb{C}Mk(C)M_k(\mathbb{C}) を区別できませんが、単位元の類を込めた組 (K0(A),[1A]0)(K_0(A), [1_A]_0) は区別します。この「目盛り付き」の情報が分類理論では不可欠です。

K=limMn(C)\mathcal{K} = \varinjlim M_n(\mathbb{C})(埋め込みは adiag(a,0)a \mapsto \mathrm{diag}(a, 0))なので、Theorem 5.7(5) より

K0(K)lim(Z id Z id )ZK_0(\mathcal{K}) \cong \varinjlim\bigl(\mathbb{Z} \xrightarrow{\ \mathrm{id}\ } \mathbb{Z} \xrightarrow{\ \mathrm{id}\ } \cdots\bigr) \cong \mathbb{Z}

です(各連結写像は [e11]0[e11]0[e_{11}]_0 \mapsto [e_{11}]_0 なので恒等写像)。K\mathcal{K} は単位的でないので、この Z\mathbb{Z} には単位元の類がありません。同型は「階数」あるいは「トレース」によって与えられます。

K0K_0 が射影を数えるのに対し、K1K_1 はユニタリ元を数えます。位相的には K1(X)=[X,U()]K^1(X) = [X, U(\infty)] に対応する量です。

Definition 6.1C*-代数の K₁ 群

AA を単位的 CC^*-代数とする。埋め込み Un(A)Un+1(A)U_n(A) \hookrightarrow U_{n+1}(A)udiag(u,1)u \mapsto \mathrm{diag}(u, 1) による帰納極限を U(A)=limUn(A)U_\infty(A) = \varinjlim U_n(A) とし、U(A)0U_\infty(A)_0 でその中の単位元の連結成分(各 Un(A)0U_n(A)_0 の合併)を表す。このとき

K1(A):=U(A)/U(A)0K_1(A) := U_\infty(A)/U_\infty(A)_0

と定め、uUn(A)u \in U_n(A) の定める類を [u]1[u]_1 と書く。単位的とは限らない CC^*-代数 AA に対しては K1(A):=K1(A~)K_1(A) := K_1(\tilde{A}) と定める。

AA が単位的なとき A~AC\tilde{A} \cong A \oplus \mathbb{C}K1(C)=0K_1(\mathbb{C}) = 0U(n)U(n) は連結)なので、2 つの定義は矛盾しません。

Proposition 6.2K₁ はアーベル群

AA を単位的 CC^*-代数、u,vUn(A)u, v \in U_n(A) とする。

  1. diag(u,v)\mathrm{diag}(u, v)diag(v,u)\mathrm{diag}(v, u)U2n(A)U_{2n}(A) の中で連続な道で結ばれる。
  2. diag(uv,1n)\mathrm{diag}(uv, 1_n)diag(u,v)\mathrm{diag}(u, v)U2n(A)U_{2n}(A) の中で連続な道で結ばれる。
  3. したがって [u]1[v]1:=[diag(u,v)]1=[uv]1[u]_1 \cdot [v]_1 := [\mathrm{diag}(u,v)]_1 = [uv]_1 は well-defined であり、K1(A)K_1(A) はこの演算に関してアーベル群になる。単位元は [1]1[1]_1、逆元は [u]11=[u]1[u]_1^{-1} = [u^{*}]_1 である。
Proof(Proposition 6.2)

t[0,1]t \in [0,1] に対し

Rt:=(cos(πt/2)1nsin(πt/2)1nsin(πt/2)1ncos(πt/2)1n)U2n(A)R_t := \begin{pmatrix} \cos(\pi t/2)\,1_n & -\sin(\pi t/2)\,1_n \\ \sin(\pi t/2)\,1_n & \cos(\pi t/2)\,1_n \end{pmatrix} \in U_{2n}(A)

とおきます。RtRt=12nR_t^{*}R_t = 1_{2n} は三角関数の加法定理から直ちに確かめられ、R0=12nR_0 = 1_{2n}R1=(01n1n0)R_1 = \begin{pmatrix} 0 & -1_n \\ 1_n & 0\end{pmatrix} です。

(1) tRtdiag(u,v)Rtt \mapsto R_t\,\mathrm{diag}(u,v)\,R_t^{*}U2n(A)U_{2n}(A) 内の連続な道であり、t=0t = 0 では diag(u,v)\mathrm{diag}(u,v)t=1t = 1 では

(0110)(u00v)(0110)=(0vu0)(0110)=(v00u)\begin{pmatrix} 0 & -1 \\ 1 & 0\end{pmatrix}\begin{pmatrix} u & 0 \\ 0 & v\end{pmatrix}\begin{pmatrix} 0 & 1 \\ -1 & 0\end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & -v \\ u & 0 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 0 & 1 \\ -1 & 0\end{pmatrix} = \begin{pmatrix} v & 0 \\ 0 & u \end{pmatrix}

となります。

(2) まず

wt:=diag(v,1n)Rtdiag(v,1n)Rtw_t := \mathrm{diag}(v^{*}, 1_n)\, R_t\, \mathrm{diag}(v, 1_n)\, R_t^{*}

とおくと、wtU2n(A)w_t \in U_{2n}(A) の連続な道で、w0=diag(v,1n)diag(v,1n)=12nw_0 = \mathrm{diag}(v^{*},1_n)\mathrm{diag}(v,1_n) = 1_{2n} です。また (1) と同じ計算で R1diag(v,1n)R1=diag(1n,v)R_1\,\mathrm{diag}(v,1_n)\,R_1^{*} = \mathrm{diag}(1_n, v) なので

w1=diag(v,1n)diag(1n,v)=diag(v,v)w_1 = \mathrm{diag}(v^{*}, 1_n)\,\mathrm{diag}(1_n, v) = \mathrm{diag}(v^{*}, v)

です。よって diag(v,v)U2n(A)0\mathrm{diag}(v^{*}, v) \in U_{2n}(A)_0 です。一方

diag(uv,1n)diag(v,v)=diag(uvv,v)=diag(u,v)\mathrm{diag}(uv, 1_n)\,\mathrm{diag}(v^{*}, v) = \mathrm{diag}(uvv^{*}, v) = \mathrm{diag}(u, v)

なので、tdiag(uv,1n)wtt \mapsto \mathrm{diag}(uv,1_n)\,w_tdiag(uv,1n)\mathrm{diag}(uv,1_n) から diag(u,v)\mathrm{diag}(u,v) への道を与えます。

(3) (2) より [diag(u,v)]1=[diag(uv,1n)]1=[uv]1[\mathrm{diag}(u,v)]_1 = [\mathrm{diag}(uv, 1_n)]_1 = [uv]_1(最後は UU_\infty における同一視)なので演算は [u]1[v]1=[uv]1[u]_1[v]_1 = [uv]_1 と一致し、群の演算から誘導されるものとして well-defined です。U(A)0U_\infty(A)_0 は正規部分群なので商は群になります。可換性は (1) と (2) から

[u]1[v]1=[diag(u,v)]1=[diag(v,u)]1=[v]1[u]1[u]_1[v]_1 = [\mathrm{diag}(u,v)]_1 = [\mathrm{diag}(v,u)]_1 = [v]_1[u]_1

としてしたがいます。逆元は [u]1[u]1=[uu]1=[1]1[u]_1[u^{*}]_1 = [uu^{*}]_1 = [1]_1 からわかります。

Example 6.3円周上の関数環と巻き数

A=C(S1)A = C(S^1) とします。K0(S1)ZK^0(S^1) \cong \mathbb{Z}Example 3.4 で見ました。Theorem 4.1 より K0(C(S1))ZK_0(C(S^1)) \cong \mathbb{Z} で、生成元は [1]0[1]_0 です。

K1K_1 を計算します。uUn(C(S1))u \in U_n(C(S^1)) は連続写像 u:S1U(n)u : S^1 \to U(n) であり、Un(C(S1))0U_n(C(S^1))_0 はその連結成分にほかならないので

K1(C(S1))=limnπ0(C(S1,U(n)))=limnπ1(U(n))ZK_1(C(S^1)) = \varinjlim_n \pi_0\bigl(C(S^1, U(n))\bigr) = \varinjlim_n \pi_1(U(n)) \cong \mathbb{Z}

です(π1(U(n))Z\pi_1(U(n)) \cong \mathbb{Z}n1n \ge 1 で成り立ち、包含 U(n)U(n+1)U(n) \hookrightarrow U(n+1) はこれを保ちます)。同型は detu:S1T\det u : S^1 \to \mathbb{T} の巻き数

[u]1wind(detu)=12πid(detu)detu[u]_1 \longmapsto \mathrm{wind}(\det u) = \frac{1}{2\pi i}\oint \frac{d(\det u)}{\det u}

で与えられます。生成元は恒等写像 zU1(C(S1))z \in U_1(C(S^1)) の類 [z]1[z]_1 です。

Theorem 5.7(6) の半分完全性だけでは計算に足りません。左右の端をつなぐ境界写像が必要です。それを可能にするのがボット周期性です。

CC^*-代数 AA に対し、懸垂

SA:=C0((0,1))A{fC([0,1],A):f(0)=f(1)=0}SA := C_0((0,1)) \otimes A \cong \{f \in C([0,1], A) : f(0) = f(1) = 0\}

で定めます。K1(A)K0(SA)K_1(A) \cong K_0(SA) が成り立ち(この同型を K1K_1 の定義に採用する流儀もあります)、逆向きの同型が次の定理です。

Theorem 7.1ボット周期性

AACC^*-代数とする。SASA を上の懸垂とし、SA{fC(S1,A):f(1)=0}SA \cong \{f \in C(S^1, A) : f(1) = 0\} と同一視する。射影 pP(Mn(A~))p \in \mathcal{P}(M_n(\tilde{A})) に対して

βA([p]0):=[zzp+(1np)]1\beta_A([p]_0) := \bigl[\,z \mapsto z\,p + (1_n - p)\,\bigr]_1

と定めると、βA:K0(A)K1(SA)\beta_A : K_0(A) \to K_1(SA) は well-defined な群同型である。したがって K1(A)K0(SA)K_1(A) \cong K_0(SA) と合わせて、すべての n0n \ge 0 について

Kn(A)Kn+2(A)K_n(A) \cong K_{n+2}(A)

が成り立つ。

Remark 7.2

Theorem 7.1 の証明はこの記事の範囲を超えます。位相的な場合(A=C(X)A = C(X))のアティヤ–ボットによる証明は参考文献 3、CC^*-代数に対する初等的な証明(クイレンの補題を使わず、ユニタリの明示的なホモトピーだけで進むもの)は参考文献 1 の第 11 章にあります。写像 zzp+(1p)z \mapsto zp + (1-p)SA~\widetilde{SA} のユニタリを定めることだけ確認しておくと、pp1p1-p が直交する射影なので

(zp+1p)(zp+1p)=zˉzp+(1p)=p+(1p)=1(zp + 1 - p)^{*}(zp + 1 - p) = \bar{z}zp + (1-p) = p + (1 - p) = 1

であり、z=1z = 1 で値が 11 になるので確かに SA~\widetilde{SA} の元です。

Corollary 7.3六項完全系列

0I ι A π A/I00 \to I \xrightarrow{\ \iota\ } A \xrightarrow{\ \pi\ } A/I \to 0CC^*-代数の短完全列とする。このとき境界写像 0:K0(A/I)K1(I)\partial_0 : K_0(A/I) \to K_1(I)(指数関数写像)と 1:K1(A/I)K0(I)\partial_1 : K_1(A/I) \to K_0(I)(指数写像)が存在して、次の 6 項の系列は完全である。

K0(I) ι K0(A) π K0(A/I) 0 K1(I) ι K1(A) π K1(A/I) 1 K0(I)\begin{aligned} K_0(I) \xrightarrow{\ \iota_{*}\ } K_0(A) &\xrightarrow{\ \pi_{*}\ } K_0(A/I) \xrightarrow{\ \partial_0\ } K_1(I) \\ &\xrightarrow{\ \iota_{*}\ } K_1(A) \xrightarrow{\ \pi_{*}\ } K_1(A/I) \xrightarrow{\ \partial_1\ } K_0(I) \end{aligned}

ここで系列は環状につながっており、6 か所すべてで完全である。境界写像の具体形は Appendix に与える。

K₀(I)K₀(A)K₀(A/I)K₁(A/I)K₁(A)K₁(I)ι∗π∗∂₀ι∗π∗∂₁
六項完全系列。横向きの射は包含 ι と商写像 π が誘導するもの、縦向きの射が境界写像です。

Remark 7.4

Corollary 7.3 の導出は次の 3 段階で行われます。第 1 に、任意の短完全列を写像錐による完全列に置き換えて、K1(I)K1(A)K1(A/I)K_1(I) \to K_1(A) \to K_1(A/I) が中央で完全であること(Theorem 5.7(6) の K1K_1 版)を懸垂に繰り返し適用し、左に無限に伸びる長完全列を作ります。第 2 に、Theorem 7.1 によって K2K0K_2 \cong K_0K3K1K_3 \cong K_1 と同一視して長完全列を折り畳みます。第 3 に、折り畳んだときに現れる 2 つの接続準同型が Appendix の明示的な公式で書けることを確かめます。全体の詳細は参考文献 1 の第 12 章にあります。

なお K0K_0 は完全関手ではありません。Example 7.5 のトープリッツ拡大では K0(K)ZK_0(\mathcal{K}) \cong \mathbb{Z} から K0(T)ZK_0(\mathcal{T}) \cong \mathbb{Z} への写像が零写像になり、ι\iota_{*} は単射になりません。六項完全系列の環状の部分(1\partial_1 から K0(I)K_0(I) に入る矢)が、その「ずれ」をちょうど埋めています。

Example 7.5トープリッツ拡大と指数写像

H2L2(S1)H^2 \subset L^2(S^1) をハーディ空間({en:n0}\{e_n : n \ge 0\}en(z)=zne_n(z) = z^n が生成する閉部分空間)、SB(H2)S \in B(H^2) を片側シフト Sen=en+1Se_n = e_{n+1} とします。SS=1S^{*}S = 1 ですが SS=1eSS^{*} = 1 - eeee0e_0 の張る 1 次元部分空間への射影)なので、SS は等距離であって可逆ではありません。SS が生成する CC^*-代数を T\mathcal{T}(トープリッツ代数)と書きます。コバーンの定理により KT\mathcal{K} \subset \mathcal{T} であり、短完全列

0KT σ C(S1)0,σ(S)=z0 \longrightarrow \mathcal{K} \longrightarrow \mathcal{T} \xrightarrow{\ \sigma\ } C(S^1) \longrightarrow 0, \qquad \sigma(S) = z

が成り立ちます。

1:K1(C(S1))K0(K)\partial_1 : K_1(C(S^1)) \to K_0(\mathcal{K}) を生成元 [z]1[z]_1 上で計算します。Appendix の公式に従い、diag(z,zˉ)U2(C(S1))\mathrm{diag}(z, \bar{z}) \in U_2(C(S^1)) のユニタリな持ち上げ wU2(T)w \in U_2(\mathcal{T}) を作ります。

w:=(S1SS1SSS)=(Se0S)w := \begin{pmatrix} S & 1 - SS^{*} \\ 1 - S^{*}S & S^{*} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} S & e \\ 0 & S^{*}\end{pmatrix}

とおきます(1SS=01 - S^{*}S = 0 を使いました)。Se=0S^{*}e = 0eS=0eS = 0eSek=eek+1=0eSe_k = e\,e_{k+1} = 0)に注意すると

ww=(SSSeeSe2+SS)=(100e+(1e))=12w^{*}w = \begin{pmatrix} S^{*}S & S^{*}e \\ eS & e^2 + SS^{*} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & e + (1-e) \end{pmatrix} = 1_2

であり、同様に ww=12ww^{*} = 1_2 なので ww はユニタリです。σ(w)=diag(z,zˉ)\sigma(w) = \mathrm{diag}(z, \bar{z}) も明らかです。そこで q1=diag(1,0)P(M2(T))q_1 = \mathrm{diag}(1, 0) \in \mathcal{P}(M_2(\mathcal{T})) とおくと

wq1w=(S000)(S0eS)=(SS000)=(1e000)w\,q_1\,w^{*} = \begin{pmatrix} S & 0 \\ 0 & 0\end{pmatrix}\begin{pmatrix} S^{*} & 0 \\ e & S \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} SS^{*} & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 - e & 0 \\ 0 & 0\end{pmatrix}

となります。よって

1([z]1)=[wq1w]0[q1]0=[1e]0[1]0=[e]0=1K0(K)Z\partial_1([z]_1) = [w q_1 w^{*}]_0 - [q_1]_0 = [1 - e]_0 - [1]_0 = -[e]_0 = -1 \in K_0(\mathcal{K}) \cong \mathbb{Z}

です。すなわち 1\partial_1 は巻き数 nnn-n に写す同型です。

この符号には意味があります。fC(S1)f \in C(S^1) が可逆なら、トープリッツ作用素 Tf=PMfH2T_f = P M_f|_{H^2}PP はリース射影)はフレドホルム(フレドホルム作用素と指数(Definition 2.1)[指数定理への応用])であり、

ind(Tf)=dimkerTfdimcokerTf=wind(f)\mathrm{ind}(T_f) = \dim\ker T_f - \dim\mathrm{coker}\,T_f = -\,\mathrm{wind}(f)

が成り立ちます(ゴーバーグ–クレインの定理)。実際 f=zf = z のとき Tz=ST_z = S で、kerS=0\ker S = 0cokerS\mathrm{coker}\,S は 1 次元なので ind(S)=1\mathrm{ind}(S) = -1 です。つまり境界写像 1\partial_1 はフレドホルム指数そのものです。「指数写像」という名前の由来であり、指数定理の最も簡単な場合にあたります。この方向の一般化は指数定理への応用で扱います。

K-理論が代数の同型不変量として実際にどれくらい働くかを見ます。まず代表的な計算をまとめます。

代数K0K_0K1K_1補足
C\mathbb{C}Z\mathbb{Z}00[1]0=1[1]_0 = 1
Mk(C)M_k(\mathbb{C})Z\mathbb{Z}00[1]0=k[1]_0 = k
K\mathcal{K}Z\mathbb{Z}00単位元なし
C(S1)C(S^1)Z\mathbb{Z}Z\mathbb{Z}K1K_1 は巻き数
C0(R)=SCC_0(\mathbb{R}) = S\mathbb{C}00Z\mathbb{Z}ボット周期性から
C(S2)C(S^2)Z2\mathbb{Z}^200ボット射影が生成
T\mathcal{T}Z\mathbb{Z}00六項完全系列から
On\mathcal{O}_nZ/(n1)Z\mathbb{Z}/(n-1)\mathbb{Z}00[1]0[1]_0 が生成
C(T2)C(\mathbb{T}^2)Z2\mathbb{Z}^2Z2\mathbb{Z}^2τ(K0)=Z\tau_{*}(K_0) = \mathbb{Z}
AθA_\thetaθ\theta は無理数)Z2\mathbb{Z}^2Z2\mathbb{Z}^2τ(K0)=Z+θZ\tau_{*}(K_0) = \mathbb{Z} + \theta\mathbb{Z}

Remark 8.1

表からわかるとおり、群としての K0K_0 だけでは情報が足りません。C\mathbb{C}Mk(C)M_k(\mathbb{C}) はどちらも K0ZK_0 \cong \mathbb{Z} です。実際の分類では、K0(A)K_0(A) に射影の類がなす正錐 K0(A)+={[p]0:pP(A)}K_0(A)^{+} = \{[p]_0 : p \in \mathcal{P}_\infty(A)\} による順序を入れ、単位元の類 [1A]0[1_A]_0 を目印として付けた目盛り付き順序群 (K0(A),K0(A)+,[1A]0)(K_0(A), K_0(A)^{+}, [1_A]_0) を用います。この不変量で C\mathbb{C}([1]0=1)([1]_0 = 1)Mk(C)M_k(\mathbb{C})([1]0=k)([1]_0 = k) は区別されます。エリオットの定理は、AF 代数(有限次元 CC^*-代数の帰納極限)がこの目盛り付き順序群(次元群)によって完全に分類されることを主張します。この路線は現在、単純・可分・核型・Z\mathcal{Z}-安定で普遍係数定理を満たす CC^*-代数の分類定理へと結実しています。

Example 8.2非可換トーラス:K-群が同じでも代数は違う

θR\theta \in \mathbb{R} に対し、非可換トーラス AθA_\theta を 2 つのユニタリ u,vu, v で生成され関係式

vu=e2πiθuvvu = e^{2\pi i \theta}\,uv

を満たす普遍 CC^*-代数とします。θ=0\theta = 0 なら A0C(T2)A_0 \cong C(\mathbb{T}^2) です。ピムスナー–ヴォイクレスクの完全系列を用いた計算により、すべての θ\theta について

K0(Aθ)Z2,K1(Aθ)Z2K_0(A_\theta) \cong \mathbb{Z}^2, \qquad K_1(A_\theta) \cong \mathbb{Z}^2

が成り立ちます(非可換トーラスの K 群とトレースの像(Theorem 6.1)[非可換トーラス A_θ])。したがって K-群だけでは AθA_\theta たちを互いに区別できません。

区別するにはトレースを使います。θ\theta が無理数のとき AθA_\theta は単純で、忠実なトレース状態 τ\tauτ(umvn)=δm0δn0\tau(u^m v^n) = \delta_{m0}\delta_{n0})をただ一つ持ちます。τ\tauMn(Aθ)M_n(A_\theta) 上の非正規化トレースに拡張され、[p]0τ(p)[p]_0 \mapsto \tau(p) は群準同型 τ:K0(Aθ)R\tau_{*} : K_0(A_\theta) \to \mathbb{R} を誘導します。その像は

τ(K0(Aθ))=Z+θZR\tau_{*}(K_0(A_\theta)) = \mathbb{Z} + \theta\mathbb{Z} \subset \mathbb{R}

です。とくにリーフェルは、0<θ<10 < \theta < 1 のとき τ(p)=θ\tau(p) = \theta を満たす射影 pAθp \in A_\theta(リーフェル射影、Powers–Rieffel 射影(Theorem 6.2)[非可換トーラス A_θ])を具体的に構成しました。θ\theta が無理数なら θZ\theta \notin \mathbb{Z} なので、この pp00 でも 11 でもありません。一方 C(T2)C(\mathbb{T}^2) では T2\mathbb{T}^2 が連結なので射影の階数は定数であり、τ(K0(C(T2)))=Z\tau_{*}(K_0(C(\mathbb{T}^2))) = \mathbb{Z} です。

τ(K0())\tau_{*}(K_0(-)) は同型不変量なので、AθAθA_\theta \cong A_{\theta'} ならば Z+θZ=Z+θZ\mathbb{Z} + \theta\mathbb{Z} = \mathbb{Z} + \theta'\mathbb{Z} であり、これは θ±θ(modZ)\theta' \equiv \pm\theta \pmod{\mathbb{Z}} と同値です。逆も成り立つので、無理数 θ\theta に対する非可換トーラスの同型類はこの条件で完全に決まります。連続変形できない非可算個の「非可換空間」の族が、K-理論とトレースの組で分離されるのです。詳細は非可換トーラスの例で扱います。

K-理論はここで終わりません。Example 7.5 で見たように境界写像は指数を計算します。楕円型作用素の指数を一般の非可換な状況で扱うには、代数・ヒルベルト空間・ディラック型作用素の組を用意する必要があり、それがスペクトル三つ組スペクトル三つ組の定義(Definition 3.1)[スペクトル三つ組 (A, H, D)])です。スペクトル三つ組は KK-ホモロジー類を定め、KK-理論との対(指数対)を通じて指数定理へつながります。

Exercise 9.1

M=N0{}M = \mathbb{N}_0 \cup \{\infty\} に、通常の和と +m=m+=\infty + m = m + \infty = \inftymMm \in M)で定まる可換モノイド構造を入れます。G(M)G(M) を決定してください。

Solution

G(M)=0G(M) = 0(自明群)であることを示します。

まず [(1,0)]=[(0,0)][(1, 0)] = [(0,0)] を確かめます。Definition 2.1 の関係により、これはある eMe \in M1+0+e=0+0+e1 + 0 + e = 0 + 0 + e、すなわち 1+e=e1 + e = e となることと同値です。e=e = \infty とすれば 1+=1 + \infty = \infty なので成立します。よって γM(1)=0\gamma_M(1) = 0 です。

γM\gamma_M は半群準同型なので、任意の mN0m \in \mathbb{N}_0 について γM(m)=mγM(1)=0\gamma_M(m) = m\,\gamma_M(1) = 0 です。また [(,0)]=[(0,0)][(\infty, 0)] = [(0,0)]e=e = \infty をとれば +=\infty + \infty = \infty から成り立ちます。したがって γM(M)={0}\gamma_M(M) = \{0\} です。

Proposition 2.2(2) より G(M)G(M) の任意の元は γM(a)γM(b)\gamma_M(a) - \gamma_M(b) の形なので、G(M)=0G(M) = 0 です。

無限に「吸収的」な元が 1 つあるだけで群化がすべてを潰してしまう、という現象です。Example 5.6O2\mathcal{O}_2[1]0=0[1]_0 = 0 となったのは、まさにこれと同じ仕組みによります。

Exercise 9.2標準

AA を単位的 CC^*-代数、uU(A)u \in U(A) とし、u1<2\|u - 1\| < 2 を仮定します。このとき自己共役元 hAh \in Au=eihu = e^{ih} となるものが存在し、とくに uU(A)0u \in U(A)_0 であることを示してください。

Solution

uu はユニタリなので正規元であり、スペクトル σ(u)\sigma(u) は単位円 T\mathbb{T} に含まれます。正規元に対する連続関数カルキュラスにより、任意の連続関数 ff について f(u)=supλσ(u)f(λ)\|f(u)\| = \sup_{\lambda \in \sigma(u)} |f(\lambda)| が成り立ちます。f(λ)=λ1f(\lambda) = \lambda - 1 をとると

u1=supλσ(u)λ1\|u - 1\| = \sup_{\lambda \in \sigma(u)} |\lambda - 1|

です。もし 1σ(u)-1 \in \sigma(u) なら右辺は 11=2|-1-1| = 2 以上になり、仮定 u1<2\|u-1\| < 2 に反します。よって 1σ(u)-1 \notin \sigma(u)、すなわち σ(u)T{1}\sigma(u) \subset \mathbb{T} \setminus \{-1\} です。

T{1}\mathbb{T} \setminus \{-1\} 上で g(eiφ):=φg(e^{i\varphi}) := \varphiφ(π,π)\varphi \in (-\pi, \pi))と定めると、gg は実数値の連続関数です(φeiφ\varphi \mapsto e^{i\varphi}(π,π)(-\pi,\pi) から T{1}\mathbb{T}\setminus\{-1\} への同相なので)。h:=g(u)h := g(u) とおくと、gg が実数値なので連続関数カルキュラスの性質から h=hh = h^{*} です。また T{1}\mathbb{T}\setminus\{-1\} 上で eig(λ)=λe^{i g(\lambda)} = \lambda が恒等的に成り立つので、関数カルキュラスの乗法性から eih=ue^{ih} = u です。

最後に ut:=eithu_t := e^{ith}t[0,1]t \in [0,1])とおくと、hh が自己共役なので各 utu_t はユニタリであり、teitht \mapsto e^{ith} はノルム連続(eitheishtshetsh\|e^{ith} - e^{ish}\| \le |t - s|\,\|h\|\,e^{|t-s|\|h\|} など)です。u0=1u_0 = 1u1=uu_1 = u なので uU(A)0u \in U(A)_0 です。

この結果は K1K_1 の計算で繰り返し使われます。U(A)0U(A)_0 は指数関数の有限個の積の全体に一致し、K1(A)K_1(A) は「指数関数の積では書けないユニタリ」を測っている、という描像が得られます。

Exercise 9.3標準

X={x1,,xN}X = \{x_1, \ldots, x_N\}NN 点からなる離散空間とします。K0(C(X))ZNK_0(C(X)) \cong \mathbb{Z}^NK1(C(X))=0K_1(C(X)) = 0 を、K0K_0 の定義に戻って直接示してください。

Solution

C(X)CNC(X) \cong \mathbb{C}^N(点ごとの値による同型)であり、したがって

Mn(C(X))Mn(C)Mn(C)(N 個)M_n(C(X)) \cong M_n(\mathbb{C}) \oplus \cdots \oplus M_n(\mathbb{C}) \quad (N \text{ 個})

です。この同型の下で pP(Mn(C(X)))p \in \mathcal{P}(M_n(C(X)))NN 個の射影の組 (p(x1),,p(xN))(p(x_1), \ldots, p(x_N))p(xj)P(Mn(C))p(x_j) \in \mathcal{P}(M_n(\mathbb{C})) に対応します。

pP(Mn(C(X)))p \in \mathcal{P}(M_n(C(X)))qP(Mm(C(X)))q \in \mathcal{P}(M_m(C(X))) について p0qp \sim_0 q となるのは、vMm,n(C(X))v \in M_{m,n}(C(X))vv=pv^{*}v = pvv=qvv^{*} = q を満たすものが存在するとき、すなわち各 jjv(xj)v(xj)=p(xj)v(x_j)^{*}v(x_j) = p(x_j)v(xj)v(xj)=q(xj)v(x_j)v(x_j)^{*} = q(x_j) となるときです。XX は離散なので任意の関数が連続であり、各点で独立に v(xj)v(x_j) を選べます。したがって

p0q    rankp(xj)=rankq(xj)(j=1,,N)p \sim_0 q \iff \mathrm{rank}\,p(x_j) = \mathrm{rank}\,q(x_j) \quad (j = 1, \ldots, N)

です(Example 5.8C\mathbb{C} の場合の判定を各点に適用しました)。

よって階数ベクトルによる写像 D(C(X))N0N\mathcal{D}(C(X)) \to \mathbb{N}_0^N[p](rankp(x1),,rankp(xN))[p] \mapsto (\mathrm{rank}\,p(x_1), \ldots, \mathrm{rank}\,p(x_N)) は well-defined な単射です。全射性は、与えられた (r1,,rN)(r_1, \ldots, r_N) に対し n=maxjrjn = \max_j r_j とおき、p(xj)p(x_j)Mn(C)M_n(\mathbb{C}) の階数 rjr_j の対角射影として定めればよいことからしたがいます。半群としても同型なので

D(C(X))N0N.\mathcal{D}(C(X)) \cong \mathbb{N}_0^N .

N0N\mathbb{N}_0^N は消約律を満たすので、Proposition 2.2(3) と Example 2.3 の議論から

K0(C(X))=G(N0N)ZNK_0(C(X)) = G(\mathbb{N}_0^N) \cong \mathbb{Z}^N

です。生成元は各点に台を持つ最小射影の類で、[1]0=(1,1,,1)[1]_0 = (1,1,\ldots,1) です。

K1K_1 については、Un(C(X))U(n)NU_n(C(X)) \cong U(n)^N であり U(n)U(n) は連結なので Un(C(X))U_n(C(X)) も連結です。よって U(C(X))=U(C(X))0U_\infty(C(X)) = U_\infty(C(X))_0 となり K1(C(X))=0K_1(C(X)) = 0 です。

なお、この結果は Theorem 4.1 とも整合します。離散有限空間上のベクトル束は各点上のベクトル空間の組にほかならず、Vect(X)N0N\mathrm{Vect}(X) \cong \mathbb{N}_0^N だからです。

Exercise 9.4

Example 7.5 のトープリッツ拡大 0KTσC(S1)00 \to \mathcal{K} \to \mathcal{T} \xrightarrow{\sigma} C(S^1) \to 0 に六項完全系列を適用して、K0(T)ZK_0(\mathcal{T}) \cong \mathbb{Z}(生成元は [1T]0[1_{\mathcal{T}}]_0)と K1(T)=0K_1(\mathcal{T}) = 0 を示してください。既知としてよいのは K0(K)ZK_0(\mathcal{K}) \cong \mathbb{Z}K1(K)=0K_1(\mathcal{K}) = 0K0(C(S1))ZK_0(C(S^1)) \cong \mathbb{Z}K1(C(S1))ZK_1(C(S^1)) \cong \mathbb{Z}、および Example 7.5 で計算した 1([z]1)=1\partial_1([z]_1) = -1 です。

Solution

Corollary 7.3 により、既知の値を代入すると次の完全系列が得られます。

Z ι K0(T) σ Z 0 0 ι K1(T) σ Z 1 Z\begin{aligned} \mathbb{Z} \xrightarrow{\ \iota_{*}\ } K_0(\mathcal{T}) &\xrightarrow{\ \sigma_{*}\ } \mathbb{Z} \xrightarrow{\ \partial_0\ } 0 \\ &\xrightarrow{\ \iota_{*}\ } K_1(\mathcal{T}) \xrightarrow{\ \sigma_{*}\ } \mathbb{Z} \xrightarrow{\ \partial_1\ } \mathbb{Z} \end{aligned}

(左端の Z\mathbb{Z}K0(K)K_0(\mathcal{K})0\partial_0 の行き先の 00K1(K)K_1(\mathcal{K})、右端の Z\mathbb{Z} は再び K0(K)K_0(\mathcal{K}) です。)

K1(T)=0K_1(\mathcal{T}) = 0 K1(C(S1))ZK_1(C(S^1)) \cong \mathbb{Z}[z]1[z]_1 で生成され、1([z]1)=1\partial_1([z]_1) = -1K0(K)ZK_0(\mathcal{K}) \cong \mathbb{Z} の生成元です。よって 1\partial_1 は同型、とくに単射です。K1(T)σK1(C(S1))K_1(\mathcal{T}) \xrightarrow{\sigma_{*}} K_1(C(S^1)) の像は ker1=0\ker \partial_1 = 0 に等しい(K1(C(S1))K_1(C(S^1)) における完全性)ので、σ=0\sigma_{*} = 0 です。さらに K1(T)K_1(\mathcal{T}) における完全性から

K1(T)=ker(σ)=im(ι:K1(K)K1(T))=im(0K1(T))=0K_1(\mathcal{T}) = \ker(\sigma_{*}) = \mathrm{im}\bigl(\iota_{*} : K_1(\mathcal{K}) \to K_1(\mathcal{T})\bigr) = \mathrm{im}(0 \to K_1(\mathcal{T})) = 0

です。

K0(T)ZK_0(\mathcal{T}) \cong \mathbb{Z} 1\partial_1 は全射なので、K0(K)K_0(\mathcal{K}) における完全性から

ker(ι:K0(K)K0(T))=im1=K0(K)\ker\bigl(\iota_{*} : K_0(\mathcal{K}) \to K_0(\mathcal{T})\bigr) = \mathrm{im}\,\partial_1 = K_0(\mathcal{K})

であり、ι=0\iota_{*} = 0 です。これは Remark 7.4 で述べた「K0K_0 は完全でない」ことの具体例です。すると K0(T)K_0(\mathcal{T}) における完全性から

ker(σ)=im(ι)=0\ker(\sigma_{*}) = \mathrm{im}(\iota_{*}) = 0

となり σ\sigma_{*} は単射です。また K1(K)=0K_1(\mathcal{K}) = 0 なので 0=0\partial_0 = 0 であり、K0(C(S1))K_0(C(S^1)) における完全性から

im(σ)=ker(0)=K0(C(S1))\mathrm{im}(\sigma_{*}) = \ker(\partial_0) = K_0(C(S^1))

となって σ\sigma_{*} は全射です。したがって

σ:K0(T)  K0(C(S1))Z\sigma_{*} : K_0(\mathcal{T}) \xrightarrow{\ \cong\ } K_0(C(S^1)) \cong \mathbb{Z}

です。K0(C(S1))K_0(C(S^1)) の生成元は [1]0[1]_0 であり σ(1T)=1\sigma(1_{\mathcal{T}}) = 1 なので、K0(T)K_0(\mathcal{T}) の生成元は [1T]0[1_{\mathcal{T}}]_0 です。

解釈。 T\mathcal{T} は K-理論の目から見ると 1 点と区別がつきません(K0ZK_0 \cong \mathbb{Z}K1=0K_1 = 0)。それでも T\mathcal{T}K\mathcal{K} による C(S1)C(S^1) の非自明な拡大であり、その非自明さは K-群ではなく境界写像 1\partial_1 に現れます。拡大の分類(Ext 理論、KK-ホモロジー)が独立した理論として必要になる理由がここにあります。

  1. M. Rørdam, F. Larsen, N. J. Laustsen, An Introduction to K-Theory for C*-Algebras, London Mathematical Society Student Texts 49, Cambridge University Press, 2000 — 第 3・4 章(K0K_0 の構成と関手性)、第 8 章(K1K_1)、第 9 章(指数写像)、第 11 章(ボット周期性)、第 12 章(六項完全系列)。この記事の構成はおおむねこの本に沿っています。
  2. B. Blackadar, K-Theory for Operator Algebras, 2nd edition, MSRI Publications 5, Cambridge University Press, 1998 — 作用素環の K-理論の百科事典的な標準文献。安定性・順序構造・分類理論まで含みます。
  3. M. F. Atiyah, K-Theory, W. A. Benjamin, 1967(Addison-Wesley より復刊)— 位相的 K-理論とボット周期性の古典的な教科書。
  4. R. G. Swan, “Vector bundles and projective modules”, Transactions of the American Mathematical Society 105 (1962), 264–277 — Theorem 4.1 の原論文。
  5. A. Connes, Noncommutative Geometry, Academic Press, 1994 — 第 II 章に CC^*-代数の K-理論、第 III・IV 章に巡回コホモロジーと指数定理。
  6. M. A. Rieffel, “C*-algebras associated with irrational rotations”, Pacific Journal of Mathematics 93 (1981), 415–429 — 非可換トーラスのリーフェル射影の構成。

Corollary 7.3 で存在を主張した 2 つの境界写像を、明示的な公式の形で与えます。以下 0IιAπA/I00 \to I \xrightarrow{\iota} A \xrightarrow{\pi} A/I \to 0 を短完全列とし、記号を簡単にするため AA は単位的、π\pi は単位元を保つとします(一般の場合は単位化を経由します)。

指数写像 1:K1(A/I)K0(I)\partial_1 : K_1(A/I) \to K_0(I) uUn(A/I)u \in U_n(A/I) をとります。Proposition 6.2(2) の証明で見たように diag(u,u)U2n(A/I)0\mathrm{diag}(u, u^{*}) \in U_{2n}(A/I)_0 であり、U2n(A)U2n(A/I)0U_{2n}(A) \to U_{2n}(A/I)_0 は全射です(Exercise 9.2 により U2n(A/I)0U_{2n}(A/I)_0 の元は指数関数の積で書け、各指数関数は自己共役元の持ち上げを使って持ち上がります)。そこで wU2n(A)w \in U_{2n}(A)π(w)=diag(u,u)\pi(w) = \mathrm{diag}(u, u^{*}) となるようにとり、qn:=diag(1n,0n)P(M2n(A))q_n := \mathrm{diag}(1_n, 0_n) \in \mathcal{P}(M_{2n}(A)) とおいて(n=1n = 1 なら q1=diag(1,0)q_1 = \mathrm{diag}(1,0) です)

1([u]1):=[wqnw]0[qn]0\partial_1([u]_1) := [\,w q_n w^{*}\,]_0 - [\,q_n\,]_0

と定めます。この差が K0(I)K_0(I) に属することは次のようにわかります。

π(wqnw)=(u00u)(1n000)(u00u)=(uu000)=π(qn)\pi(w q_n w^{*}) = \begin{pmatrix} u & 0 \\ 0 & u^{*}\end{pmatrix}\begin{pmatrix} 1_n & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} u^{*} & 0 \\ 0 & u \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} uu^{*} & 0 \\ 0 & 0\end{pmatrix} = \pi(q_n)

なので wqnwqnM2n(I)w q_n w^{*} - q_n \in M_{2n}(I) であり、2 つの射影はともに M2n(I~)M_{2n}(\tilde{I}) の元と見なせて、その類の差は K0(πI~)K_0(\pi_{\tilde{I}}) の核、すなわち K0(I)K_0(I) に入ります。ww の取り方によらないことは、2 つの持ち上げの比が π\pi11 に写ることと Lemma 5.2 を使って示されます。Example 7.5 はこの公式をそのまま計算したものです。

指数関数写像 0:K0(A/I)K1(I)\partial_0 : K_0(A/I) \to K_1(I) pP(Mn(A/I))p \in \mathcal{P}(M_n(A/I)) をとります。π:Mn(A)Mn(A/I)\pi : M_n(A) \to M_n(A/I) は全射なので π(b)=p\pi(b) = p となる bb があり、a:=(b+b)/2a := (b + b^{*})/2 とおけば aa は自己共役で π(a)=(p+p)/2=p\pi(a) = (p + p^{*})/2 = p です。このとき

0([p]0):=[e2πia]1\partial_0([p]_0) := [\,e^{2\pi i a}\,]_1

と定めます。これが K1(I)K_1(I) の元であることは、p2=pp^2 = p から

e2πip=1+k1(2πi)kk!pk=1+pk1(2πi)kk!=1+p(e2πi1)=1e^{2\pi i p} = 1 + \sum_{k \ge 1} \frac{(2\pi i)^k}{k!}p^k = 1 + p\sum_{k\ge1}\frac{(2\pi i)^k}{k!} = 1 + p\,(e^{2\pi i} - 1) = 1

となるので π(e2πia)=e2πip=1n\pi(e^{2\pi i a}) = e^{2\pi i p} = 1_n、すなわち e2πia1nMn(I)e^{2\pi i a} - 1_n \in M_n(I) となることからしたがいます。自己共役な持ち上げ aa の選び方によらないこと、および群準同型であることは、2 つの持ち上げを結ぶ線分に沿ったホモトピーを使って確かめられます。

Report an error in this article ・Operated by: Mugen Giken LLCPricingTermsLegal notice

© 2026 夢現技研合同会社 ・Feeding the text to an LLM is welcome. Code samples are MIT licensed.