この年度は一般教育科目として数学と物理が 1 冊の問題冊子にまとめられ、数学 3 問・物理 3 問の合計 6 問すべてが必答でした(平成10年8月25日、9時00分〜12時00分)。本記事は数学の 3 問を扱います。3 問とも計算量は小さく、代わりに「示せ」「証明せよ」が全体の半分以上を占めるため、論理を閉じる書き方ができるかどうかで点差がつく構成です。
| 問題 | 分野 | 主題 |
|---|
| 第1問 | 複素解析・フーリエ解析 | ディリクレ積分と絶対値関数のフーリエ級数 |
| 第2問 | 線形代数 | 特性多項式の係数と複素固有値をもつ条件 |
| 第3問 | 特殊関数 | 重み e−x2 に関する直交多項式 |
第1問では α の符号による場合分けと、留数定理をそのまま使えない(極が積分路上にある)ことへの対処が要点です。第2問は 3 次方程式の判別式を自力で作る問題に帰着します。第3問は「n 次多項式は Hℓ で展開できる」という問題文中の注意が 3 つの設問すべての鍵になっており、これを補題として最初に立てておくと証明が短くなります。
設問(1)は実数 α に対する
I(α)=∫0∞dxxsinαx
を複素積分で求める問題です。設問(2)は区間 [−π,π] 上の f(x)=∣x∣ を
f(x)=2a0+n=1∑∞(ancosnx+bnsinnx)
と展開したときの係数を求め、その結果から奇数の平方の逆数和が π2/8 になることを示す問題です。
まず積分が存在することを確認します。被積分関数は x→0 で sinαx/x→α と有界なので原点は特異点ではありません。無限遠側は、α=0 として部分積分すれば
∫1Rxsinαxdx=[−αxcosαx]1R−α1∫1Rx2cosαxdx
となり、右辺第 2 項は ∣cosαx/x2∣≤x−2 より R→∞ で絶対収束します。よって I(α) は広義リーマン積分として収束します(∣sinαx∣/x 自体は可積分でないので、絶対収束ではありません)。
α↦−α で被積分関数は符号を変えるので I(−α)=−I(α) であり、I(0)=0 です。したがって α>0 の場合を計算すれば十分です。
以下 α>0 とし、C∖{0} で正則な
g(z)=zeiαz
を、次の閉曲線に沿って積分します。正の実軸上の線分 [ε,R]、上半平面の大半円 ΓR:z=Reiθ (θ:0→π)、負の実軸上の線分 [−R,−ε]、そして原点の上側を回る小半円 γε:z=εeiθ (θ:π→0) をこの順につないだ経路です(0<ε<R)。原点はこの閉曲線の内部から小半円によって除かれているので、囲まれた領域で g は正則です。コーシーの積分定理より
∫εRxeiαxdx+∫ΓRg(z)dz+∫−R−εxeiαxdx+∫γεg(z)dz=0
が成り立ちます。
大半円の寄与を評価します。z=Reiθ では dz/z=idθ かつ ∣eiαz∣=e−αRsinθ なので、[0,π/2] で成り立つジョルダンの不等式 sinθ≥2θ/π(sin の凹性から従います)を用いて
∫ΓRg(z)dz=∫0πeiαReiθidθ≤∫0πe−αRsinθdθ=2∫0π/2e−αRsinθdθ≤2∫0π/2e−2αRθ/πdθ=αRπ(1−e−αR)≤αRπ
と押さえられます。α>0 なので R→∞ でこれは 0 に収束します。ここで α の符号が本質的に効いていて、α<0 なら上半平面では被積分関数が発散し、この評価は使えません。
小半円の寄与は、z=εeiθ で dz/z=idθ、向きは θ:π→0 なので
∫γεg(z)dz=i∫π0eiαεeiθdθ=−iπ+i∫π0(eiαεeiθ−1)dθ
であり、∣w∣≤αε に対する ∣eiw−1∣≤∣w∣e∣w∣ から残差は παεeαε 以下です。よって ε→0 で ∫γεgdz→−iπ となります。1/z の原点まわりの半周が全周の半分の 2πi/2 に符号を付けたものになっている、という標準的な結果です。
実軸上の 2 つの線分は 1 つにまとめられます。負側で x=−u と置換すると
∫−R−εxeiαxdx=−∫εRue−iαudu
なので、2 つの和は
∫εRxeiαx−e−iαxdx=2i∫εRxsinαxdx
です。以上を積分定理の式に戻し、R→∞、ε→0 とすると
2i∫0∞xsinαxdx=iπ
を得ます。したがって α>0 で I(α)=π/2 です。奇関数性と I(0)=0 を合わせて、答えは
∫0∞dxxsinαx=2πsgnα=⎩⎨⎧ π/2 0−π/2(α>0)(α=0)(α<0)
です。値が ∣α∣ に依存しないことは、α>0 で y=αx と置換すると α が完全に消えることから独立に確認できます。なお実部を取れば P∫−∞∞cos(αx)/xdx=0 で、これは被積分関数が奇関数であることと整合します。
f(x)=∣x∣ は偶関数です。f(x)sinnx は奇関数で、対称区間での積分は 0 になるので
bn=π1∫−ππ∣x∣sinnxdx=0(n=1,2,⋯)
です。余弦係数は偶関数性から
an=π1∫−ππ∣x∣cosnxdx=π2∫0πxcosnxdx
となります。n=0 では
a0=π2∫0πxdx=π2⋅2π2=π
です。n≥1 では部分積分して
∫0πxcosnxdx=[nxsinnx]0π−n1∫0πsinnxdx=0+[n2cosnx]0π=n2(−1)n−1
となるので
an=π2⋅n2(−1)n−1=⎩⎨⎧0−πn24(n even)(n odd)
です。答えは a0=π、偶数 n≥2 で an=0、奇数 n で an=−4/(πn2)、そしてすべての n で bn=0 です。フーリエ級数は
∣x∣=2π−π4k=0∑∞(2k+1)2cos(2k+1)x(x∈[−π,π])
の形になります。偶数次の余弦が落ちる理由は、∣x∣−π/2 が x→π−x の下で符号を変える(半区間ごとの反対称性をもつ)ことに対応しています。
まず級数が x=0 で f(0)=0 に収束することを確かめます。係数は ∑k4/{π(2k+1)2}<∞ と絶対総和可能なので、ワイエルシュトラスの M 判定法により右辺の級数は R 上一様収束し、その和 g(x) は連続関数です。他方 f を 2π 周期に拡張したものは f(−π)=f(π)=π より連続で、フェイェールの定理からそのフーリエ級数のチェザロ平均は各点で f に収束します。収束する級数のチェザロ平均は同じ和に収束するので g=f です。区分的に滑らかな連続関数に対するディリクレの定理を使って直接 g=f と結論しても同じです(f′(x)=sgnx は x=0,±π を除いて連続)。
そこで上で得た展開に x=0 を代入します。f(0)=0、cos0=1 なので
0=2π−π4k=0∑∞(2k+1)21,すなわちk=0∑∞(2k+1)21=4π⋅2π=8π2
が従います。これが示すべき式です。
検算を 3 つ挙げます。第 1 に、既知の ζ(2)=π2/6 を使うと、奇数項の和は ∑n oddn−2=ζ(2)−∑m≥1(2m)−2=ζ(2)(1−1/4)=π2/8 で一致します。第 2 に、同じ展開に x=π を入れると右辺は π/2+(4/π)(π2/8)=π となり f(π)=π に一致します。第 3 に、パーセバルの等式
π1∫−ππf(x)2dx=2a02+n=1∑∞(an2+bn2)
の左辺は 2π2/3、右辺は π2/2+(16/π2)∑k(2k+1)−4 なので ∑k(2k+1)−4=π4/96 となり、ζ(4)=π4/90 から得られる ζ(4)(1−1/16)=π4/96 と一致します。
3 次の実行列 A={aij} の特性多項式を
F(λ)≡det[A−λI]=−λ3+Pλ2+Qλ+R
と置きます(I は単位行列)。設問(1)は P=TrA、Q=21(TrA2−(TrA)2)、R=detA を示す問題、設問(2)は P=0 のときに A が複素共役な(実でない)固有値の対をもつための条件を Q,R で表す問題です。
R は最も簡単で、λ=0 を代入すれば
R=F(0)=det[A−0⋅I]=detA
です。
P と Q は行列式の置換展開
det[A−λI]=σ∈S3∑sgn(σ)i=1∏3(A−λI)iσ(i)
から読み取ります。λ は対角成分 (A−λI)ii=aii−λ にしか現れません。恒等置換でない σ∈S3 は少なくとも 2 つの添字を動かすので、固定点は高々 1 つ、すなわちその項は λ について高々 1 次です。したがって λ3 と λ2 の係数は恒等置換の項
(a11−λ)(a22−λ)(a33−λ)=−λ3+(a11+a22+a33)λ2−(a11a22+a22a33+a33a11)λ+a11a22a33
だけから来ます。λ2 の係数を比較して
P=a11+a22+a33=TrA
です。
λ1 の係数には、恒等置換の項に加えて、固定点をちょうど 1 つもつ置換、すなわち 3 つの互換の項が寄与します(3-サイクルは固定点をもたず λ を含みません)。たとえば互換 σ=(23) の項は符号 −1 で −(a11−λ)a23a32 となり、λ の係数として +a23a32 を与えます。他の 2 つの互換も同様なので
Q=(a12a21+a23a32+a31a13)−(a11a22+a22a33+a33a11)
です。一方、(A2)ii=∑jaijaji より
TrA2=i,j∑aijaji=i∑aii2+2(a12a21+a23a32+a31a13)
であり、また
(TrA)2=i∑aii2+2(a11a22+a22a33+a33a11)
なので、差の半分をとると
21(TrA2−(TrA)2)=(a12a21+a23a32+a31a13)−(a11a22+a22a33+a33a11)=Q
となり、3 式すべてが示されました。
検算として固有値表示と突き合わせます。固有値を λ1,λ2,λ3(重複を込めて、複素数の範囲で)とすると F(λ)=−(λ−λ1)(λ−λ2)(λ−λ3) なので P=∑iλi、Q=−∑i<jλiλj、R=λ1λ2λ3 です。TrA=∑iλi、TrA2=∑iλi2=(∑iλi)2−2∑i<jλiλj を使うと上の 3 式が再現され、これはニュートンの恒等式 p2=e12−2e2 にほかなりません。
P=0 のとき、固有値は
g(λ)≡−F(λ)=λ3−Qλ−R=0
の根です。g は実係数なので、実でない根は必ず複素共役の対で現れます。3 次ですから、根の配置は「3 個とも実」か「実根 1 個+複素共役対」の二択であり、複素共役の固有値をもつことは「g の根がすべて実、ではない」ことと同値です。これを g の増減から判定します。g′(λ)=3λ2−Q です。
Q>0 の場合。g は λ=±m(m≡Q/3)に極値をもち、λ=−m が極大、λ=+m が極小です。3 次関数のグラフを考えると、根が 3 個とも実であることは、極大値が 0 以上かつ極小値が 0 以下であること、すなわち g(−m)≥0≥g(m) と同値です(等号のときは極値点が重根になります)。極値は m3=3Qm を使って
g(±m)=±m3∓Qm−R=∓32Qm−R
と書け、つねに g(−m)−g(m)=34Qm>0 なので、「3 実根でない」ことは 2 つの極値が同符号であること、つまり
g(m)g(−m)=R2−94Q2m2=R2−274Q3>0
と同値です。
Q<0 の場合。g′(λ)=3λ2−Q>0 なので g は狭義単調増加で、実根はちょうど 1 個、しかも単根です(重根なら g′=0 も必要ですが g′>0)。よって残り 2 根は必ず複素共役対です。このとき 27R2≥0>4Q3 なので、上の不等式 R2>4Q3/27 も自動的に成り立っています。
Q=0 の場合。g(λ)=λ3−R です。R=0 なら λ=0 の三重根ですべて実、R=0 なら実根は λ=R1/3 の 1 個だけで(狭義単調増加)、複素共役対をもちます。これも 27R2>0=4Q3 という判定と一致します。
以上を合わせると、どの場合も同じ 1 本の不等式にまとまります。答えは
27R2>4Q3(同値に 4Q3−27R2<0)
のとき、かつそのときに限り A は複素共役の固有値をもちます。左辺 4Q3−27R2 は λ3−Qλ−R の判別式 ∏i<j(λi−λj)2 にほかならず、根が a, u±iv(v=0)なら (λ1−λ2)(λ1−λ3)=(a−u)2+v2>0、(λ2−λ3)2=−4v2<0 で判別式は負、全根実なら非負、という一般論とも整合します。
具体例で確かめます。固有値 ±i, 0 をもつ実行列(回転生成子に第 3 行・列として零を足したもの)では TrA=0、TrA2=−2 より Q=−1、R=0 で、27R2=0>−4=4Q3 となり複素固有値ありと正しく判定されます。A=diag(1,−1,0) では Q=1、R=0 で 0>4 は偽、実際すべて実固有値です。境界の例として固有値 1,1,−2 では Q=3、R=−2 で 27R2=108=4Q3 と等号になり、重根(すべて実)の場合が等号に対応することが確認できます。
Hn(x)(n=0,1,2,…)は最高次係数 1 の n 次多項式で、
Hn(x)=xn+(n より低次の多項式),∫−∞∞dxe−x2Hn(x)Hm(x)=0(n=m)
を満たすものとします。以下、内積を ⟨f,g⟩=∫−∞∞e−x2f(x)g(x)dx、ノルムの 2 乗を hn=⟨Hn,Hn⟩ と書きます。重み e−x2 は正で Hn≡0 なので hn>0 です。与えられた積分公式はモーメント μk=∫−∞∞xke−x2dx の言葉で
μ2m=π4mm!(2m)!,μ2m+1=0
(奇数次は被積分関数が奇関数なので 0)となり、具体的には μ0=π、μ2=21π、μ4=43π です。
問題文の注意「n 次多項式 P(x) は P=∑ℓ=0ncℓHℓ と展開できる」を、次の形の補題として全設問で使います。H0,…,Hn は次数が互いに異なるので一次独立で、n 次以下の多項式の空間(次元 n+1)の基底をなし、展開係数は直交性から cℓ=⟨P,Hℓ⟩/hℓ と一意に定まります。ここから 2 つの系が出ます。第 1 に、Hn は次数 n−1 以下の任意の多項式と直交します(相手を H0,…,Hn−1 で展開すればよい)。第 2 に、最高次係数 1 の n 次多項式で H0,…,Hn−1 のすべてと直交するものは Hn に限ります。実際そのような K に対し K−Hn は次数 n−1 以下で全 Hℓ(ℓ<n)と直交するので、展開係数がすべて 0、つまり K=Hn です。この一意性を以下「補題(B)」と呼びます。
H0=1 です(最高次係数 1 の 0 次式)。Hn=xn+(低次) と置き、1,x,…,xn−1 との直交(上の系より H0,…,Hn−1 との直交と同値)を課します。
n=1: H1=x+c に対し ⟨H1,1⟩=μ1+cμ0=cπ=0 より c=0 で、
H1(x)=x
です。
n=2: H2=x2+bx+c に対し ⟨H2,1⟩=μ2+cμ0=π(21+c)=0 より c=−21、⟨H2,x⟩=μ3+bμ2+cμ1=bμ2=0 より b=0 で、
H2(x)=x2−21
です。
n=3: H3=x3+ax2+bx+c に対し、⟨H3,x⟩=μ4+bμ2=π(43+2b)=0 より b=−23 です。残る 2 条件は
⟨H3,1⟩=aμ2+cμ0=0,⟨H3,x2⟩=aμ4+cμ2=0
で(奇数次モーメントはすべて落としました)、この (a,c) の連立 1 次方程式の係数行列式は μ22−μ0μ4=4π−43π=−2π=0 なので a=c=0 です。よって
H3(x)=x3−23x
です。検算として、物理で標準のエルミート多項式 H2phys=4x2−2、H3phys=8x3−12x を最高次係数で割ると x2−21、x3−23x となり一致します。また ⟨H1,H3⟩=μ4−23μ2=(43−43)π=0 が直接確認できます。
Kn(x)≡(−1)nHn(−x) と置き、すべての n で Kn=Hn となることを n についての帰納法で示します。これが示されれば Hn(−x)−(−1)nHn(x)=(−1)n{Kn(x)−Hn(x)}=0 です。
まず Kn の最高次項は (−1)n(−x)n=xn なので、Kn はつねに最高次係数 1 の n 次多項式です。n=0 では K0=H0=1 で成立します(設問(1)より K1=−H1(−x)=x=H1 も直接確かめられます)。
m<n なるすべての m で Km=Hm、すなわち Hm(−x)=(−1)mHm(x) が成り立つと仮定します。m<n に対し、置換 x=−t(dx=−dt、積分範囲は ∞→−∞ が反転して元に戻り、e−x2 は偶関数)を使うと
⟨Kn,Hm⟩=(−1)n∫−∞∞e−x2Hn(−x)Hm(x)dx=(−1)n∫−∞∞e−t2Hn(t)Hm(−t)dt=(−1)n+m∫−∞∞e−t2Hn(t)Hm(t)dt=(−1)n+m⟨Hn,Hm⟩=0
となります(2 行目で帰納法の仮定を使いました)。つまり Kn は最高次係数 1 の n 次多項式で H0,…,Hn−1 のすべてと直交するので、補題(B)により Kn=Hn です。帰納法が閉じて、すべての n で
Hn(−x)=(−1)nHn(x)
が示されました。設問(1)の H2=x2−21(偶)、H3=x3−23x(奇)と整合します。
以下 n≥1 とします(Hn−1 が現れるため)。また境界項について、多項式 p に対し e−x2p(x)→0(x→±∞)となることを部分積分で繰り返し使います。
第 1 式。D(x)≡xHn(x)−Hn+1(x) は、最高次 xn+1 が打ち消し合うので次数 n 以下の多項式です。補題により D=∑ℓ=0ncℓHℓ、cℓhℓ=⟨D,Hℓ⟩ と展開できます。ℓ≤n では ⟨Hn+1,Hℓ⟩=0 なので cℓhℓ=⟨xHn,Hℓ⟩=⟨Hn,xHℓ⟩ です(重み付き内積の中で x を移しただけ)。ℓ≤n−2 なら xHℓ は次数 ℓ+1≤n−1 の多項式なので Hn と直交し、cℓ=0 です。ℓ=n では
⟨xHn,Hn⟩=∫−∞∞e−x2xHn(x)2dx=0
です。設問(2)より Hn(x)2 は偶関数で、x 倍した被積分関数が奇関数になるからです。残るのは ℓ=n−1 だけで、
xHn(x)=Hn+1(x)+anHn−1(x),an=hn−1⟨xHn,Hn−1⟩
が示されました。係数 an は具体的に求まります。xe−x2=−21(e−x2)′ を使って部分積分すると
⟨xHn,Hn−1⟩=−21∫−∞∞(e−x2)′HnHn−1dx=21∫−∞∞e−x2(Hn′Hn−1+HnHn−1′)dx
です。Hn−1′ は次数 n−2 なので第 2 項は 0、第 1 項は Hn′=nxn−1+(低次) より Hn′−nHn−1 が次数 n−2 以下で Hn−1 と直交するため ⟨Hn′,Hn−1⟩=nhn−1 となります。よって ⟨xHn,Hn−1⟩=2nhn−1、すなわち
an=2n
です。設問(1)で確かめると、xH1=x2=H2+21H0 で a1=21、xH2=x3−2x=H3+H1 で a2=1 となり、an=n/2 と一致します。なお途中の式は hn=⟨Hn,xHn−1⟩=2nhn−1(第 1 式の形から ⟨xHn−1,Hn⟩=⟨Hn,Hn⟩)も与え、hn=2nn!π が従います。h1=μ2=21π、h2=μ4−μ2+41μ0=21π と直接計算しても合います。
第 2 式。Hn′(x) は次数 n−1、最高次項 nxn−1 の多項式なので、E(x)≡Hn′(x)−nHn−1(x) は次数 n−2 以下です。ℓ≤n−2 に対する展開係数は ⟨E,Hℓ⟩=⟨Hn′,Hℓ⟩−n⟨Hn−1,Hℓ⟩=⟨Hn′,Hℓ⟩ で決まります。部分積分すると
⟨Hn′,Hℓ⟩=[e−x2HnHℓ]−∞∞−∫−∞∞Hn(e−x2Hℓ)′dx=∫−∞∞e−x2Hn(2xHℓ−Hℓ′)dx
となり、2xHℓ−Hℓ′ は次数 ℓ+1≤n−1 の多項式なので Hn と直交して 0 です。よって E の展開係数はすべて 0、E≡0 で
dxdHn(x)=nHn−1(x)
が示されました。設問(1)では H1′=1=1⋅H0、H2′=2x=2H1、H3′=3x2−23=3(x2−21)=3H2 となり、すべて一致します。
出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 平成11年度 修士課程 入学試験問題 数学(一般教育科目、数学・物理合冊のうち数学)。問題文は要約して引用しています。
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