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楕円曲線とモジュラー形式:谷山・志村予想への道

Prerequisite:リーマン予想とは何か:ゼータ関数の零点が素数を支配する

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  • 楕円曲線とは、判別式が 00 でない三次曲線 y2=x3+ax+by^2 = x^3 + ax + b に無限遠点 OO を付け加えたものです。ここには「三点が一直線上に並べば和は OO」という規則でアーベル群の構造が入ります。群であることは、幾何の作図が代数の公式に翻訳できることによって具体的に確かめられます。
  • 有理点の全体 E(Q)E(\mathbb{Q}) は有限生成アーベル群です(モーデル・ヴェイユの定理)。したがって E(Q)ZrE(Q)torsE(\mathbb{Q}) \cong \mathbb{Z}^r \oplus E(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}} と書け、階数 rr が「有理点がどれだけ豊かか」を測る量になります。
  • 各素数 pp で法 pp に還元して点を数えると ap=p+1#E(Fp)a_p = p + 1 - \#E(\mathbb{F}_p) が定まり、ap2p|a_p| \le 2\sqrt{p} が成り立ちます(ハッセの定理)。数列 (ap)p(a_p)_p が楕円曲線の「指紋」です。
  • モジュラー形式は、上半平面上の正則関数で SL2(Z)\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})(あるいはその合同部分群)の作用に対して重さ kk の変換則を満たすものです。位数公式から、低い重さの空間の次元は完全に決定できます。
  • 谷山・志村予想(現在はモジュラー性定理)は「Q\mathbb{Q} 上のすべての楕円曲線はモジュラーである」、すなわち導手 NN の楕円曲線 EE に対して ap(E)=ap(f)a_p(E) = a_p(f) を満たす重さ 22・レベル NN の新形式 ff が存在する、と主張します。
  • この定理とリベットのレベル下げ定理を合わせると、フェルマーの最終定理が従います。まったく異質に見える二つの世界を結ぶ橋が、350350 年来の難問を落としました。

1. 動機:ディオファントス方程式から曲線へ

Section titled “1. 動機:ディオファントス方程式から曲線へ”

整数係数の方程式の有理数解・整数解を求める問題をディオファントス方程式と呼びます。次数が低いうちは話は簡単です。ax+by=cax + by = c の整数解はユークリッドの互除法で完全に書き下せますし、x2+y2=z2x^2 + y^2 = z^2(ピタゴラス数)も、一つの解 (3,4,5)(3,4,5) を起点に直線を回転させる古典的な方法ですべて求まります。二次曲線には有理点が一つ見つかればすべての有理点が有理パラメータで書けるという強力な性質があるからです。

三次に上がった瞬間、この方法が効かなくなります。y2=x32y^2 = x^3 - 2 の有理点をパラメータ表示しようとしても、うまくいきません。実際この曲線は種数 11 で、有理関数によるパラメータ表示(有理曲線)ではないことが知られています。ではお手上げかというとそうではなく、三次曲線には二次曲線にはない別の構造があります。曲線上の二点を通る直線は、曲線ともう一点で交わる。三次方程式の根は三つあるからです。この「二点から第三の点を作る」操作を洗練させると、曲線上の点の集合そのものが群になります。

この発見はディオファントスやフェルマーの計算のうちに萌芽があり、19 世紀にヤコビ・ヴァイエルシュトラスの楕円関数論と結びつき、20 世紀にポアンカレ、モーデル、ヴェイユの手で現在の形になりました。「楕円曲線」という名前は楕円の弧長を求める楕円積分に由来します。曲線自体は楕円ではありません。

一方まったく別の場所で、上半平面上の高度な対称性をもつ関数——モジュラー形式——が研究されていました。こちらは複素解析と保型形式論の産物で、素数を数える問題とは無縁に見えます。ところが 1950 年代、谷山豊と志村五郎は、この二つが同じ対象の二つの顔ではないかと予想しました。その予想が正しいことをワイルズらが示し、フェルマーの最終定理が落ちたのです。この章では、その橋の両岸を可能な限り具体的に描きます。

曲線上の二点を結ぶ直線が「もう一点で交わる」と言うためには、平行線が交わる場所を用意しておく必要があります。そのための舞台が射影平面です。

KK 上の射影平面 P2(K)\mathbb{P}^2(K) とは、(X,Y,Z)K3{(0,0,0)}(X, Y, Z) \in K^3 \setminus \{(0,0,0)\} を、00 でないスカラー倍で同一視した集合です。同値類を [X:Y:Z][X : Y : Z] と書きます。Z0Z \ne 0 の点は [x:y:1][x : y : 1](ただし x=X/Zx = X/Zy=Y/Zy = Y/Z)と正規化でき、通常の平面 K2K^2 と対応します。Z=0Z = 0 の点が「無限遠直線」上の点です。

曲線 y2=x3+ax+by^2 = x^3 + ax + b を斉次化すると

Y2Z=X3+aXZ2+bZ3Y^2 Z = X^3 + a X Z^2 + b Z^3

です。ここで Z=0Z = 0 とおくと X3=0X^3 = 0、すなわち X=0X = 0(X,Y,Z)(0,0,0)(X,Y,Z) \ne (0,0,0) なので Y0Y \ne 0 となり、無限遠点はただ一つ O=[0:1:0]O = [0 : 1 : 0] に定まります。しかもこの点における接線は無限遠直線 Z=0Z = 0 であり、交点数は 33X3=0X^3 = 0 の三重根)です。つまり OO は変曲点です。この事実は後で群の単位元を OO に取る根拠になります。

Definition 2.1楕円曲線(短ヴァイエルシュトラス形)

KK を標数 2,32, 3 でない体とし、a,bKa, b \in K

Δ:=16(4a3+27b2)0\Delta := -16\,(4a^3 + 27b^2) \ne 0

を満たすとする。このとき射影平面 P2\mathbb{P}^2 内の曲線

E:Y2Z=X3+aXZ2+bZ3E : Y^2 Z = X^3 + a X Z^2 + b Z^3

KK 上の楕円曲線という。LKL \supseteq K を体の拡大とするとき、EELL 有理点の集合を

E(L)={(x,y)L2y2=x3+ax+b}{O},O=[0:1:0]E(L) = \{(x, y) \in L^2 \mid y^2 = x^3 + ax + b\} \cup \{O\}, \qquad O = [0:1:0]

と書く。Δ\DeltaEE判別式と呼ぶ。

判別式の条件は、曲線が特異点(尖点や結節点)をもたないことと同値です。これを確かめておきます。

Proposition 2.2非特異性の判定

KK を標数 2,32, 3 でない体、Kˉ\bar{K} をその代数閉包とし、F(x,y)=y2x3axbF(x,y) = y^2 - x^3 - ax - b とおく。曲線 F=0F = 0Kˉ\bar{K} 上で特異点(F=F/x=F/y=0F = \partial F/\partial x = \partial F/\partial y = 0 を同時に満たす点)をもたないことと、4a3+27b204a^3 + 27b^2 \ne 0 とは同値である。

Proof(Proposition 2.2)

偏微分は F/x=(3x2+a)\partial F/\partial x = -(3x^2 + a)F/y=2y\partial F/\partial y = 2y です。標数が 22 でないので F/y=0\partial F/\partial y = 0y=0y = 0 と同値です。したがって特異点 (x0,y0)(x_0, y_0) が存在することは、

y0=0,x03+ax0+b=0,3x02+a=0y_0 = 0, \qquad x_0^3 + a x_0 + b = 0, \qquad 3x_0^2 + a = 0

を満たす x0Kˉx_0 \in \bar{K} が存在することと同値です。後の二式は、g(x)=x3+ax+bg(x) = x^3 + ax + bg(x0)=g(x0)=0g(x_0) = g'(x_0) = 0 を満たすこと、すなわち x0x_0gg の重根であることを意味します。

そこで gg が重根をもつ条件を計算します。gg の根を e1,e2,e3Kˉe_1, e_2, e_3 \in \bar{K} とすると、根と係数の関係から e1+e2+e3=0e_1 + e_2 + e_3 = 0e1e2+e2e3+e3e1=ae_1e_2 + e_2e_3 + e_3e_1 = ae1e2e3=be_1e_2e_3 = -b です。三次多項式の判別式は

D=(e1e2)2(e2e3)2(e3e1)2D = (e_1 - e_2)^2 (e_2 - e_3)^2 (e_3 - e_1)^2

で、これを基本対称式で表すと D=4a327b2D = -4a^3 - 27b^2 となります(e1+e2+e3=0e_1+e_2+e_3 = 0 の場合の標準的な計算です)。gg が重根をもつことと D=0D = 0、すなわち 4a3+27b2=04a^3 + 27b^2 = 0 とは同値です。標数が 22 でないので Δ=16(4a3+27b2)\Delta = -16(4a^3+27b^2)4a3+27b24a^3+27b^2 は同時にしか消えません。

なお無限遠点 OO は常に非特異です。Z=0Z = 0 近くでは u=X/Yu = X/Yw=Z/Yw = Z/Y を座標に取ると曲線は w=u3+auw2+bw3w = u^3 + a u w^2 + b w^3 となり、原点 (u,w)=(0,0)(u,w) = (0,0) での ww に関する偏微分は 10-1 \ne 0 だからです。

三次曲線と直線の交わりを使って、点の「足し算」を定義します。

Definition 3.1弦と接線による加法

Definition 2.1EE と体の拡大 LKL \supseteq K を取る。P,QE(L)P, Q \in E(L) に対し、PQP \ne Q のときは PPQQ を通る直線を、P=QP = Q のときは PP における接線を PQ\ell_{PQ} とする。PQ\ell_{PQ}EE の交点は重複度を込めてちょうど 33 個あり、そのうち P,QP, Q を除いた第三の交点を PQP * Q と書く。そのうえで

P+Q:=O(PQ)P + Q := O * (P * Q)

と定義する。

言葉で言えば、「PPQQ を結ぶ直線が曲線と再び交わる点を取り、それを xx 軸に関して折り返す」操作です。折り返しに当たるのが OO との * 演算であることは、次のように確かめられます。点 (x0,y0)(x_0, y_0)O=[0:1:0]O = [0:1:0] を通る直線は、射影座標で X=x0ZX = x_0 Z、つまりアフィン座標では垂直線 x=x0x = x_0 です。これを曲線の式に代入すると y2=x03+ax0+by^2 = x_0^3 + a x_0 + b、すなわち y=±y0y = \pm y_0 の二解を得ます。第三の交点は OO 自身(垂直線は無限遠点を通ります)なので、O(x0,y0)=(x0,y0)O * (x_0, y_0) = (x_0, -y_0) です。

QPRP + Q
$E : y^2 = x^3 + 1$ 上で $P = (0,1)$ と $Q = (-1,0)$ を足す。弦は曲線と $R = (2,3)$ で交わり、これを $x$ 軸に関して折り返した $(2,-3)$ が $P + Q$ である。

図の計算を実際に追ってみます。P=(0,1)P = (0,1)Q=(1,0)Q = (-1,0) を通る直線は y=x+1y = x + 1 です。これを y2=x3+1y^2 = x^3 + 1 に代入すると (x+1)2=x3+1(x+1)^2 = x^3 + 1、整理して x3x22x=0x^3 - x^2 - 2x = 0、すなわち x(x2)(x+1)=0x(x-2)(x+1) = 0。根は x=0,2,1x = 0, 2, -1 で、x=0x = 0PPx=1x = -1QQ に対応しますから第三の交点は x=2x = 2y=3y = 3、つまり R=(2,3)R = (2,3) です。これを折り返して P+Q=(2,3)P + Q = (2,-3) を得ます。検算すると (3)2=9=23+1(-3)^2 = 9 = 2^3 + 1 で、確かに曲線上にあります。

この計算を一般化すると加法公式が出ます。

Proposition 3.2加法公式

Definition 2.1EEP1=(x1,y1)P_1 = (x_1, y_1)P2=(x2,y2)E(L){O}P_2 = (x_2, y_2) \in E(L) \setminus \{O\} を取る。Definition 3.1 の加法について次が成り立つ。

  1. x1=x2x_1 = x_2 かつ y2=y1y_2 = -y_1 ならば P1+P2=OP_1 + P_2 = O。とくに (x,y)=(x,y)-(x,y) = (x,-y) である。
  2. そうでないとき、
λ={y2y1x2x1(x1x2)3x12+a2y1(P1=P2, y10)\lambda = \begin{cases} \dfrac{y_2 - y_1}{x_2 - x_1} & (x_1 \ne x_2) \\[2mm] \dfrac{3x_1^2 + a}{2y_1} & (P_1 = P_2,\ y_1 \ne 0) \end{cases}

とおくと P1+P2=(x3,y3)P_1 + P_2 = (x_3, y_3)、ただし

x3=λ2x1x2,y3=λ(x1x3)y1x_3 = \lambda^2 - x_1 - x_2, \qquad y_3 = \lambda (x_1 - x_3) - y_1

である。

Proof(Proposition 3.2)

まず場合分けが尽くされていることを確認します。x1=x2x_1 = x_2 なら y12=y22y_1^2 = y_2^2 なので y2=±y1y_2 = \pm y_1 です。y2=y1y_2 = -y_1 なら (1) の場合、y2=y1y_2 = y_1 なら P1=P2P_1 = P_2 で、さらに y1=0y_1 = 0 なら y2=y1y_2 = -y_1 でもあるので (1) に含まれます(標数 22 でないので y10y_1 \ne 0 のとき y1y1y_1 \ne -y_1)。よって (2) の P1=P2P_1 = P_2 の場合は y10y_1 \ne 0 が保証されます。

(1): 上で見たとおり垂直線 x=x1x = x_1EE(x1,y1)(x_1, y_1)(x1,y1)(x_1, -y_1)OO で交わります。よって P1P2=OP_1 * P_2 = O であり、P1+P2=OOP_1 + P_2 = O * O です。OO は変曲点で、そこでの接線は無限遠直線 Z=0Z = 0、その交点は OO の三重点でした(§2\S 2)。よって OO=OO * O = O、したがって P1+P2=OP_1 + P_2 = O です。

(2): 直線を y=λx+νy = \lambda x + \nu と書きます。x1x2x_1 \ne x_2 のときは二点を通る直線の傾きが λ=(y2y1)/(x2x1)\lambda = (y_2-y_1)/(x_2-x_1) であることから、P1=P2P_1 = P_2 のときは曲線の式 y2=x3+ax+by^2 = x^3 + ax + bxx で陰微分して 2yy=3x2+a2y\,y' = 3x^2 + ay10y_1 \ne 0 より λ=y(x1)=(3x12+a)/(2y1)\lambda = y'(x_1) = (3x_1^2+a)/(2y_1) であることから、上の式が得られます。いずれの場合も ν=y1λx1\nu = y_1 - \lambda x_1 です。

これを曲線の式に代入すると

(λx+ν)2=x3+ax+bx3λ2x2+(a2λν)x+(bν2)=0.(\lambda x + \nu)^2 = x^3 + ax + b \quad\Longleftrightarrow\quad x^3 - \lambda^2 x^2 + (a - 2\lambda\nu)x + (b - \nu^2) = 0 .

これは xx について三次のモニック多項式で、その三根が直線と曲線の交点の xx 座標(重複度込み)です。x1x_1x2x_2 が根であることは構成から分かっているので、第三の根を x3x_3 とすれば、根と係数の関係(x2x^2 の係数)から

x1+x2+x3=λ2,すなわちx3=λ2x1x2x_1 + x_2 + x_3 = \lambda^2, \qquad \text{すなわち} \quad x_3 = \lambda^2 - x_1 - x_2

です。第三の交点は P1P2=(x3,λx3+ν)P_1 * P_2 = (x_3, \lambda x_3 + \nu) で、

λx3+ν=λx3+y1λx1=y1λ(x1x3).\lambda x_3 + \nu = \lambda x_3 + y_1 - \lambda x_1 = y_1 - \lambda(x_1 - x_3) .

最後に (1) で示した (x,y)=(x,y)-(x,y) = (x,-y) により P1+P2=O(P1P2)P_1 + P_2 = O * (P_1 * P_2)yy 座標は符号を変えたもの、すなわち y3=λ(x1x3)y1y_3 = \lambda(x_1 - x_3) - y_1 です。

Theorem 3.3楕円曲線の群構造

Definition 2.1EE と体の拡大 LKL \supseteq K について、Definition 3.1 の加法 ++ に関して (E(L),+)(E(L), +)OO を単位元とするアーベル群(Definition 3.1)[Introduction to Group Theory]である。すなわち任意の P,Q,RE(L)P, Q, R \in E(L) に対して

  1. P+Q=Q+PP + Q = Q + P(可換律)
  2. P+O=PP + O = P(単位元)
  3. P+(P)=OP + (-P) = O、ただし (x,y)=(x,y)-(x,y) = (x,-y)O=O-O = O(逆元)
  4. (P+Q)+R=P+(Q+R)(P + Q) + R = P + (Q + R)(結合律)

が成り立つ。さらに E(K)E(K)E(L)E(L) の部分群である。

Proof(Theorem 3.3)

(1): PQ\ell_{PQ}PPQQ の順序によらない直線なので PQ=QPP * Q = Q * P、したがって P+Q=Q+PP + Q = Q + P です。

(2): 定義から P+O=O(PO)P + O = O * (P * O) です。P=(x0,y0)P = (x_0,y_0) とすると PO=(x0,y0)P * O = (x_0, -y_0)§3\S 3 冒頭の計算)で、もう一度 OO* を取ると O(x0,y0)=(x0,y0)=PO * (x_0,-y_0) = (x_0, y_0) = P です。P=OP = O のときは OO=OO * O = OProposition 3.2 の証明 (1) 参照)より O+O=OO=OO + O = O * O = O です。

(3): P=(x0,y0)P = (x_0,y_0) に対し P=(x0,y0)-P = (x_0,-y_0) と定めると、Proposition 3.2 の (1) がまさに P+(P)=OP + (-P) = O を主張しています。P=OP = O については (2) から O+O=OO + O = O です。

(4): 結合律は、この定義で唯一自明でない部分です。Proposition 3.2 の公式に代入して有理式の恒等式を確認する直接計算でも証明できますが、式が大きくなります。概念的な証明は「P[P][O]P \mapsto [P] - [O]E(L)E(L) から次数 00 のピカール群 Pic0(E)\mathrm{Pic}^0(E) への全単射を与え、しかもこの写像で加法が Pic0\mathrm{Pic}^0 の(アーベル群の商なので当然に結合的な)加法に移る」という形で得られます。Appendix にこの筋道をまとめました。

部分群であること: P,QE(K)P, Q \in E(K) ならば直線 PQ\ell_{PQ} の係数 λ,ν\lambda, \nuKK の元で、Proposition 3.2x3,y3x_3, y_3KK の四則演算だけで書けるので P+QE(K)P + Q \in E(K)、また P=(x,y)E(K)-P = (x,-y) \in E(K) です。OE(K)O \in E(K) なので E(K)E(K) は部分群です。

Example 3.4y2=x32y^2 = x^3 - 2 上での 2 倍算

E:y2=x32E : y^2 = x^3 - 2a=0a = 0b=2b = -2)は Δ=16(40+274)=17280\Delta = -16(4\cdot 0 + 27 \cdot 4) = -1728 \ne 0 なので楕円曲線です。P=(3,5)P = (3,5)52=25=2725^2 = 25 = 27 - 2 より E(Q)E(\mathbb{Q}) の点です。2P2P を計算します。

Proposition 3.2 の接線の傾きは

λ=332+025=2710\lambda = \frac{3 \cdot 3^2 + 0}{2 \cdot 5} = \frac{27}{10}

です。よって

x3=(2710)233=729100600100=129100,x_3 = \left(\frac{27}{10}\right)^2 - 3 - 3 = \frac{729}{100} - \frac{600}{100} = \frac{129}{100},y3=2710(3129100)5=27101711005=4617100050001000=3831000.y_3 = \frac{27}{10}\left(3 - \frac{129}{100}\right) - 5 = \frac{27}{10} \cdot \frac{171}{100} - 5 = \frac{4617}{1000} - \frac{5000}{1000} = -\frac{383}{1000}.

検算します。

y32=1466891000000,x332=2146689100000020000001000000=1466891000000.y_3^2 = \frac{146689}{1000000}, \qquad x_3^3 - 2 = \frac{2146689}{1000000} - \frac{2000000}{1000000} = \frac{146689}{1000000}.

一致しました。2P=(129/100, 383/1000)2P = (129/100,\ -383/1000) です。

分母が急速に大きくなることに注目してください。これは PP が無限位数であることの兆候で、実際 E(Q)ZE(\mathbb{Q}) \cong \mathbb{Z}PP が生成元です。一方フェルマーは、整数点は (3,±5)(3, \pm 5) だけであることを示しました。有理点は無限にあるのに整数点は有限個という現象は、後にジーゲルの定理として一般化されます。

群構造が入ると、「E(Q)E(\mathbb{Q}) はどんな群か」という問いが立ちます。答えの骨格を与えるのが次の定理です。

Theorem 4.1モーデル・ヴェイユの定理

EEQ\mathbb{Q} 上の楕円曲線とする。アーベル群 E(Q)E(\mathbb{Q}) は有限生成である。したがってある整数 r0r \ge 0 と有限アーベル群 E(Q)torsE(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}}(有限位数の点全体)により

E(Q)ZrE(Q)torsE(\mathbb{Q}) \cong \mathbb{Z}^{r} \oplus E(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}}

と書ける。rrEE の**階数(ランク)**という。同じことが任意の代数体 KK 上の楕円曲線 E/KE/KE(K)E(K) について成り立つ。

Remark 4.2

証明は二段構えです。まず弱モーデル・ヴェイユの定理「E(Q)/2E(Q)E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q}) は有限」をガロアコホモロジー(クンマー理論)で示し、次に点の「大きさ」を測る標準高さ h^\hat{h} を導入して降下法を回します。詳しくは Silverman『The Arithmetic of Elliptic Curves』第 VIII 章を参照してください。捩れ部分 E(Q)torsE(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}} については、マズールの定理(1977)により起こりうる群は Z/nZ\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}1n101 \le n \le 10 または n=12n = 12)と Z/2ZZ/2mZ\mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \oplus \mathbb{Z}/2m\mathbb{Z}1m41 \le m \le 4)の 1515 種類に限ることが分かっています。一方、階数 rr を計算する一般的なアルゴリズムは知られていません。

Example 4.3y2=x3xy^2 = x^3 - x と合同数問題

E:y2=x3xE : y^2 = x^3 - xa=1a = -1b=0b = 0Δ=164(1)3=640\Delta = -16 \cdot 4 \cdot (-1)^3 = 64 \ne 0 です。x3x=x(x1)(x+1)x^3 - x = x(x-1)(x+1)Q\mathbb{Q} 上で完全に分解するので、y=0y = 0 となる有理点が (0,0)(0,0)(1,0)(1,0)(1,0)(-1,0) の三つあります。Proposition 3.2 の (1) よりこれらはすべて位数 22 の点で、OO と合わせて

{O, (0,0), (1,0), (1,0)}Z/2ZZ/2Z\{O,\ (0,0),\ (1,0),\ (-1,0)\} \cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \oplus \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}

という部分群をなします(クラインの四元群(Example 6.7)[Introduction to Group Theory])。実際 (0,0)+(1,0)(0,0) + (1,0) を計算すると、λ=(00)/(10)=0\lambda = (0-0)/(1-0) = 0x3=001=1x_3 = 0 - 0 - 1 = -1y3=0(0(1))0=0y_3 = 0 \cdot (0-(-1)) - 0 = 0(1,0)(-1,0) となり、確かに閉じています。

さらにフェルマーの無限降下法により E(Q)E(\mathbb{Q}) にはこれ以外の点がない、すなわち階数 00 であることが示せます。これは「11 は合同数でない」(辺の長さが有理数で面積が 11 の直角三角形は存在しない)という主張と同値です。一般に正整数 nn が合同数であることと、y2=x3n2xy^2 = x^3 - n^2 x が無限位数の有理点をもつこととは同値で、合同数問題は楕円曲線の階数の問題に翻訳されます。

有理点は捉えにくいので、各素数 pp で法 pp に還元して点の個数を数える、という戦略が有効です。Fp\mathbb{F}_p は有限集合なので個数は必ず有限で、しかも計算できます。

Definition 4.4トレース apa_p

EEQ\mathbb{Q} 上の楕円曲線とし、素数 ppEE良い還元の素数である(適当に座標変換した整数係数の方程式の判別式が pp で割り切れない)とする。このとき EE を法 pp で還元して得られる Fp\mathbb{F}_p 上の楕円曲線 E~\tilde{E} に対し

ap:=p+1#E~(Fp)a_p := p + 1 - \#\tilde{E}(\mathbb{F}_p)

とおく。

p+1p + 1 という基準値は、射影直線 P1(Fp)\mathbb{P}^1(\mathbb{F}_p) の点の個数です。xxFp\mathbb{F}_p 全体で動かすと y2=f(x)y^2 = f(x) の解の個数は平均して 11 個ずつなので、素朴には pp 個の xx に対して pp 個ほどの点があり、無限遠点を足して p+1p+1apa_p はその平均からのずれです。ずれの大きさを支配するのがハッセの定理です。

Theorem 4.5ハッセの定理

qq を素数冪、EE を有限体 Fq\mathbb{F}_q 上の楕円曲線とする。このとき

#E(Fq)(q+1)2q\left| \#E(\mathbb{F}_q) - (q+1) \right| \le 2\sqrt{q}

が成り立つ。とくに q=pq = p が素数のとき ap2p|a_p| \le 2\sqrt{p} である。

Remark 4.6

ハッセ(1933)による証明の核心は、フロベニウス自己準同型 ϕ:(x,y)(xq,yq)\phi : (x,y) \mapsto (x^q, y^q)End(E)\mathrm{End}(E) の中で ϕ2aqϕ+q=0\phi^2 - a_q \phi + q = 0 を満たすこと、そして自己準同型の次数が正定値二次形式を与えることです。ϕ\phi の固有値 α,αˉ\alpha, \bar{\alpha}α=q|\alpha| = \sqrt{q} を満たす複素共役の対で、aq=α+αˉa_q = \alpha + \bar{\alpha} より aq2q|a_q| \le 2\sqrt{q} が従います。これは曲線に対するリーマン予想の類似であり、後にヴェイユが一般の代数多様体へ、ドリーニュがヴェイユ予想全体へと拡張しました。臨界線 Re(s)=1/2\mathrm{Re}(s) = 1/2 という条件との関係については リーマン予想とは何か非自明零点と臨界帯(Definition 5.2)[リーマン予想とは何か] を参照してください。

Example 4.7y2=x3+1y^2 = x^3 + 1F5\mathbb{F}_5 上で数える

E:y2=x3+1E : y^2 = x^3 + 1 の判別式は Δ=16(0+27)=432\Delta = -16(0 + 27) = -432 で、4323(mod5)-432 \equiv 3 \pmod 5 より 55 は良い還元の素数です。F5\mathbb{F}_5 の平方元は 02=00^2=012=11^2=122=42^2=432=43^2=442=14^2=1 より {0,1,4}\{0,1,4\} です。各 xx について x3+1x^3+1 を計算します。

xxx3+1mod5x^3 + 1 \bmod 5平方かyy の個数
0011はい22y=1,4y = 1, 4
1122いいえ00
22949 \equiv 4はい22y=2,3y = 2, 3
3328328 \equiv 3いいえ00
4465065 \equiv 0はい11y=0y = 0

アフィン点は 2+0+2+0+1=52 + 0 + 2 + 0 + 1 = 5 個、無限遠点を加えて #E(F5)=6\#E(\mathbb{F}_5) = 6 です。したがって

a5=5+16=0.a_5 = 5 + 1 - 6 = 0 .

ハッセの評価 a5254.47|a_5| \le 2\sqrt{5} \approx 4.47 を確かに満たしています。ap=0a_p = 0 となる素数を超特異素数と呼びます。この曲線は虚数乗法をもち、p2(mod3)p \equiv 2 \pmod 3 のとき常に ap=0a_p = 0 になります(52(mod3)5 \equiv 2 \pmod 3)。

数列 (ap)(a_p) をまとめたものが EEハッセ・ヴェイユ LL 関数です。良い還元の素数 pp に対して局所因子 (1apps+p12s)1(1 - a_p p^{-s} + p^{1-2s})^{-1} を、悪い還元の素数に対しては (1apps)1(1 - a_p p^{-s})^{-1}ap{0,±1}a_p \in \{0, \pm 1\})を掛け合わせ、

L(E,s)=pN(1apps)1pN(1apps+p12s)1L(E, s) = \prod_{p \mid N} \left(1 - a_p p^{-s}\right)^{-1} \prod_{p \nmid N} \left(1 - a_p p^{-s} + p^{1-2s}\right)^{-1}

と定めます(NN は導手)。Theorem 4.5 から、この無限積は Re(s)>3/2\mathrm{Re}(s) > 3/2 で絶対収束します。問題は、これが s=1s = 1 の近くまで解析接続されるかどうかでした。オイラー積だけからは分かりません。ここでモジュラー形式が登場します。

Definition 5.1レベル 1 のモジュラー形式

上半平面を H={τCImτ>0}\mathbb{H} = \{\tau \in \mathbb{C} \mid \mathrm{Im}\,\tau > 0\} とする。行列 g=(αβγδ)SL2(Z)g = \begin{pmatrix} \alpha & \beta \\ \gamma & \delta \end{pmatrix} \in \mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})(すなわち α,β,γ,δZ\alpha,\beta,\gamma,\delta \in \mathbb{Z}αδβγ=1\alpha\delta - \beta\gamma = 1)は

gτ=ατ+βγτ+δg \cdot \tau = \frac{\alpha \tau + \beta}{\gamma\tau + \delta}

により H\mathbb{H} に作用する(Im(gτ)=Im(τ)/γτ+δ2>0\mathrm{Im}(g\cdot\tau) = \mathrm{Im}(\tau)/|\gamma\tau+\delta|^2 > 0 なので確かに H\mathbb{H} に写る)。整数 kk に対し、関数 f:HCf : \mathbb{H} \to \mathbb{C}重さ kk のモジュラー形式であるとは、次の三条件を満たすことをいう。

  1. ffH\mathbb{H} 上正則である。
  2. 任意の g=(αβγδ)SL2(Z)g = \begin{pmatrix} \alpha & \beta \\ \gamma & \delta \end{pmatrix} \in \mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})τH\tau \in \mathbb{H} に対し
f ⁣(ατ+βγτ+δ)=(γτ+δ)kf(τ).f\!\left(\frac{\alpha\tau+\beta}{\gamma\tau+\delta}\right) = (\gamma\tau + \delta)^k f(\tau).
  1. ff は無限遠(尖点)で正則である。すなわち条件 2 で (1101)\begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} を取ると f(τ+1)=f(τ)f(\tau + 1) = f(\tau) が従うので q=e2πiτq = e^{2\pi i \tau} のべき級数に展開できるが、その展開が f(τ)=n0anqnf(\tau) = \sum_{n \ge 0} a_n q^n と負べきを含まない形になる。

重さ kk のモジュラー形式全体を Mk(SL2(Z))M_k(\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})) と書く。さらに a0=0a_0 = 0 のとき ff尖点形式といい、その全体を Sk(SL2(Z))S_k(\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})) と書く。

条件 2 の意味を噛みくだきます。SL2(Z)\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})T:ττ+1T : \tau \mapsto \tau+1S:τ1/τS : \tau \mapsto -1/\tau で生成されるので、条件 2 は本質的に

f(τ+1)=f(τ),f(1/τ)=τkf(τ)f(\tau + 1) = f(\tau), \qquad f(-1/\tau) = \tau^k f(\tau)

の二つと同値です。前者は周期性、後者は τ\tau1/τ-1/\tau という一見無関係な二点での値を結びつける、きわめて強い条件です。この二つを同時に満たす正則関数はほとんど存在しません。実際、次に見るように空間の次元は有限で、しかも小さいのです。「モジュラー形式は稀少である」——だからこそ、二つの対象が同じモジュラー形式を与えれば、それは深い一致を意味します。

具体例を作りましょう。格子上の和として定義するのがもっとも自然です。

Example 5.2アイゼンシュタイン級数と判別式形式

偶数 k4k \ge 4 に対し

Gk(τ)=(m,n)Z2{(0,0)}1(mτ+n)kG_k(\tau) = \sum_{(m,n) \in \mathbb{Z}^2 \setminus \{(0,0)\}} \frac{1}{(m\tau + n)^k}

とおきます。k3k \ge 3 で絶対収束するので H\mathbb{H} 上正則で、和の取り方から SL2(Z)\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z}) の作用は格子 Zτ+Z\mathbb{Z}\tau + \mathbb{Z} の基底の取り替えに対応し、Definition 5.1 の条件 2 が従います。Ek=Gk/(2ζ(k))E_k = G_k / (2\zeta(k)) と正規化すると

Ek(τ)=12kBkn1σk1(n)qnE_k(\tau) = 1 - \frac{2k}{B_k}\sum_{n\ge1}\sigma_{k-1}(n)q^n

BkB_k はベルヌーイ数、σk1(n)=dndk1\sigma_{k-1}(n) = \sum_{d \mid n} d^{k-1})となり、とくに

E4=1+240n1σ3(n)qn=1+240q+2160q2+,E_4 = 1 + 240\sum_{n\ge1}\sigma_3(n)q^n = 1 + 240q + 2160q^2 + \cdots,E6=1504n1σ5(n)qn=1504q16632q2.E_6 = 1 - 504\sum_{n\ge1}\sigma_5(n)q^n = 1 - 504q - 16632q^2 - \cdots .

どちらも定数項が 11 なので尖点形式ではありません。ところが E43E_4^3E62E_6^2 はともに重さ 1212 で定数項 11 なので、差を取ると定数項が消えます。

Δ:=E43E621728\Delta := \frac{E_4^3 - E_6^2}{1728}

とおくと ΔS12(SL2(Z))\Delta \in S_{12}(\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})) です。qq の係数を確かめます。E43E_4^3qq 係数は 3240=7203 \cdot 240 = 720E62E_6^2qq 係数は 2(504)=10082 \cdot (-504) = -1008 なので差は 17281728、割って 11q2q^2 については E43E_4^332160+32402=6480+172800=1792803\cdot 2160 + 3 \cdot 240^2 = 6480 + 172800 = 179280E62E_6^22(16632)+5042=33264+254016=2207522\cdot(-16632) + 504^2 = -33264 + 254016 = 220752、差は 41472-41472、割って 24-24 です。すなわち

Δ=q24q2+252q31472q4+=qn1(1qn)24.\Delta = q - 24q^2 + 252q^3 - 1472q^4 + \cdots = q\prod_{n \ge 1}(1-q^n)^{24}.

最後の等式はヤコビの積表示で、Δ\Delta の係数 τ(n)\tau(n) がラマヌジャンのタウ関数です。

モジュラー形式の空間の次元は、次の位数公式によって完全に決まります。これがモジュラー形式論の出発点です。

Theorem 5.3位数公式

kk を整数、fMk(SL2(Z))f \in M_k(\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z}))f0f \ne 0 とする。ρ=e2πi/3\rho = e^{2\pi i/3}i=1i = \sqrt{-1} とおき、点 PHP \in \mathbb{H} における ff の零点の位数を ordP(f)\mathrm{ord}_P(f)qq 展開 f=nn0anqnf = \sum_{n \ge n_0} a_n q^nan00a_{n_0} \ne 0)における n0n_0ord(f)\mathrm{ord}_\infty(f) と書く。このとき

ord(f)+12ordi(f)+13ordρ(f)+PordP(f)=k12\mathrm{ord}_\infty(f) + \frac{1}{2}\mathrm{ord}_i(f) + \frac{1}{3}\mathrm{ord}_\rho(f) + \sum_{P} \mathrm{ord}_P(f) = \frac{k}{12}

が成り立つ。ここで最後の和は基本領域の中の iiρ\rhoSL2(Z)\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z}) 同値でない点すべてを走る(有限和である)。

Remark 5.4

証明は、基本領域の境界に沿った 12πiffdτ\frac{1}{2\pi i}\oint \frac{f'}{f}\,d\tau の計算です。左右の縦線は TT で、円弧の左右は SS で対応づけられ、SS による対応から k/12k/12 が出ます。iiρ\rho が特別扱いされるのは、この二点だけが ±I\pm I より大きな固定部分群(それぞれ位数 4466)をもつからです。Serre『A Course in Arithmetic』第 VII 章に完全な証明があります。

Corollary 5.5低い重さの空間

kk を整数とする。

  1. kk が奇数、または k<0k < 0、または k=2k = 2 ならば Mk(SL2(Z))=0M_k(\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})) = 0
  2. M0(SL2(Z))=CM_0(\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})) = \mathbb{C}(定数関数のみ)。
  3. k<12k < 12 ならば Sk(SL2(Z))=0S_k(\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})) = 0。したがって偶数 kk4k104 \le k \le 10 を満たすとき dimMk(SL2(Z))=1\dim M_k(\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})) = 1 で、EkE_k が基底である。
Proof(Corollary 5.5)

以下 fMkf \in M_kf0f \ne 0 とし、Theorem 5.3 の左辺の項を a=ord(f)a = \mathrm{ord}_\infty(f)b=ordi(f)b = \mathrm{ord}_i(f)c=ordρ(f)c = \mathrm{ord}_\rho(f)d=PordP(f)d = \sum_P \mathrm{ord}_P(f) と書きます。a,b,c,da, b, c, d はすべて 00 以上の整数です。

(1): kk が奇数の場合は上の Aside で示しました。k<0k < 0 のときは左辺 0\ge 0、右辺 =k/12<0= k/12 < 0 で矛盾するので f0f \ne 0 は存在せず Mk=0M_k = 0k=2k = 2 のときは a+b/2+c/3+d=1/6a + b/2 + c/3 + d = 1/6 です。a,d0a, d \ge 0 かつ a,da, d は整数で左辺の他の項も非負ですから a=d=0a = d = 0 でなければなりません(a1a \ge 1 なら左辺 1>1/6\ge 1 > 1/6)。残るのは b/2+c/3=1/6b/2 + c/3 = 1/6、両辺を 66 倍して 3b+2c=13b + 2c = 1 ですが、b,c0b, c \ge 0 が整数なら左辺は 0022 以上で、11 にはなりません。よって M2=0M_2 = 0

(2): k=0k = 0 なら a+b/2+c/3+d=0a + b/2 + c/3 + d = 0 で、各項が非負ですから a=b=c=d=0a = b = c = d = 0、つまり ffH\mathbb{H} 上に零点をもたず a00a_0 \ne 0 です。ここで g=fa0g = f - a_0 を考えると gM0g \in M_0 で、ggqq 展開の定数項は 00、すなわち g=0g = 0ord(g)1\mathrm{ord}_\infty(g) \ge 1 です。後者なら位数公式の左辺が 11 以上となり右辺 00 と矛盾します。よって g=0g = 0f=a0f = a_0 は定数です。逆に定数関数 ccM0M_0 の元です。実際、条件 2 は k=0k = 0 のとき c=cc = c となって自動的に成り立ち、正則性と尖点での正則性も定数なので問題ありません。

(3): fSkf \in S_kf0f \ne 0 とすると定義から a=ord(f)1a = \mathrm{ord}_\infty(f) \ge 1 なので k/121k/12 \ge 1、すなわち k12k \ge 12 です。対偶を取れば k<12k < 12Sk=0S_k = 0

次に偶数 kk4k104 \le k \le 10 を満たすとします。Example 5.2 より EkMkE_k \in M_k で定数項は 11 です。任意の fMkf \in M_k に対し fa0(f)Ekf - a_0(f)E_kMkM_k の元で定数項が 00、つまり SkS_k の元ですから、いま示したことにより 00 です。よって f=a0(f)Ekf = a_0(f)E_k となり Mk=CEkM_k = \mathbb{C}E_k、次元は 11 です(Ek0E_k \ne 0 は定数項 11 から分かります)。

この 11 次元性は、思いがけない恒等式を生みます。演習 Exercise 7.3 でその一例を確かめてください。

楕円曲線と結びつくのは、レベル 11 ではなく合同部分群に対するモジュラー形式です。

Definition 5.6Γ0(N)\Gamma_0(N) と重さ 2 の新形式

正整数 NN に対し

Γ0(N)={(αβγδ)SL2(Z) | γ0(modN)}\Gamma_0(N) = \left\{ \begin{pmatrix} \alpha & \beta \\ \gamma & \delta \end{pmatrix} \in \mathrm{SL}_2(\mathbb{Z}) \ \middle|\ \gamma \equiv 0 \pmod N \right\}

とおく。これは SL2(Z)\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z}) の指数有限の部分群である。Definition 5.1 の条件 2 を Γ0(N)\Gamma_0(N) のすべての元について要求し、条件 3 を Γ0(N)\Gamma_0(N) のすべての尖点で要求したものを、重さ kk・レベル NN のモジュラー形式といい、その空間を Mk(Γ0(N))M_k(\Gamma_0(N))、すべての尖点で 00 になるものの空間を Sk(Γ0(N))S_k(\Gamma_0(N)) と書く。

S2(Γ0(N))S_2(\Gamma_0(N)) にはヘッケ作用素 TnT_n が作用する。MNM \mid NMNM \ne N なるレベル MM の形式から自明に作られる部分(旧部分)の直交補空間に属し、すべての TnT_n の同時固有ベクトルで、qq 展開が f=q+n2anqnf = q + \sum_{n \ge 2} a_n q^n と正規化されているものを、レベル NN の**新形式(newform)**という。

新形式に対しても LL 関数 L(f,s)=n1annsL(f,s) = \sum_{n\ge1} a_n n^{-s} が定義でき、こちらはヘッケの理論により全複素平面に解析接続され、関数等式を満たすことが証明済みです。Γ0(N)\Gamma_0(N) の作用による H\mathbb{H} の商をコンパクト化した曲線 X0(N)X_0(N)(モジュラー曲線)を考えると、S2(Γ0(N))S_2(\Gamma_0(N))X0(N)X_0(N) 上の正則微分形式の空間と同一視され、その次元は X0(N)X_0(N) の種数に等しくなります。f(τ)dτf(\tau)\,d\tauΓ0(N)\Gamma_0(N) 不変になるのが、ちょうど重さ 22 のときだからです。

ここまでで、Q\mathbb{Q} 上の楕円曲線からは数列 (ap)(a_p) が、重さ 22 の新形式からも数列 (ap)(a_p) が得られました。前者は点を数えて得た整数列、後者は正則関数のフーリエ係数です。谷山・志村予想は、この二つが一致すると主張します。

Theorem 6.1モジュラー性定理(谷山・志村予想)

EEQ\mathbb{Q} 上の楕円曲線とし、NN をその導手とする。このとき次を満たす新形式 f=n1an(f)qnS2(Γ0(N))f = \sum_{n \ge 1} a_n(f) q^n \in S_2(\Gamma_0(N)) が(ただ一つ)存在する。

  • すべてのフーリエ係数 an(f)a_n(f) は有理整数である。
  • NN を割らないすべての素数 pp に対し
ap(f)=ap(E)=p+1#E~(Fp).a_p(f) = a_p(E) = p + 1 - \#\tilde{E}(\mathbb{F}_p).

これは次の条件と同値である。

  1. L(E,s)=L(f,s)L(E,s) = L(f,s)。とくに L(E,s)L(E,s) は全複素平面に解析接続され、関数等式を満たす。
  2. Q\mathbb{Q} 上定義された全射な射 X0(N)EX_0(N) \to E が存在する(EE はモジュラー曲線の商である)。
  3. EE に付随する \ell 進ガロア表現 ρE,:Gal(Qˉ/Q)GL2(Z)\rho_{E,\ell} : \mathrm{Gal}(\bar{\mathbb{Q}}/\mathbb{Q}) \to \mathrm{GL}_2(\mathbb{Z}_\ell) が、あるモジュラー形式から来る表現と同型である。

Remark 6.2

1955 年の日光の国際シンポジウムで谷山豊が提出した問題を志村五郎が精密化し、ヴェイユが導手の一致を含む形に整理しました。1986 年にフライとセールとリベットの仕事によりこの予想からフェルマーの最終定理が従うことが判明し、1994 年から 1995 年にかけてワイルズとテイラーが半安定な楕円曲線について証明しました(Wiles, Annals of Mathematics 141 (1995); Taylor–Wiles, 同巻)。一般の場合はブルイユ、コンラッド、ダイアモンド、テイラーによって 2001 年に完成しました。証明の手法は、変形理論によってガロア表現の族を制御し、「普遍変形環とヘッケ環が同型である(R=TR = T)」を示すというものです。

Example 6.3導手 11 の楕円曲線とその新形式

E:y2+y=x3x2E : y^2 + y = x^3 - x^2 を考えます。これは一般ヴァイエルシュトラス形で、判別式は 11-11、導手は N=11N = 11 です。X0(11)X_0(11) の種数は 11 なので dimS2(Γ0(11))=1\dim S_2(\Gamma_0(11)) = 1 であり、新形式はただ一つ、

f(τ)=η(τ)2η(11τ)2=qn1(1qn)2(1q11n)2=q2q2q3+2q4+q5+2q62q7+f(\tau) = \eta(\tau)^2\eta(11\tau)^2 = q\prod_{n\ge1}(1-q^n)^2(1-q^{11n})^2 = q - 2q^2 - q^3 + 2q^4 + q^5 + 2q^6 - 2q^7 + \cdots

です(η\eta はデデキントのイータ関数)。

一方 EE の点を素朴に数えます。F2\mathbb{F}_2 では x=0x = 0 のとき右辺は 00y2+y=y(y+1)=0y^2+y = y(y+1) = 0 の解は y=0,1y = 0, 122 個。x=1x = 1 のとき右辺は 11=01 - 1 = 0 で同じく 22 個。アフィン点 44 個に OO を加えて #E(F2)=5\#E(\mathbb{F}_2) = 5、よって a2(E)=2+15=2a_2(E) = 2+1-5 = -2。同様に数えると次の表を得ます。

pp#E~(Fp)\#\tilde{E}(\mathbb{F}_p)ap(E)=p+1#E~(Fp)a_p(E) = p+1-\#\tilde{E}(\mathbb{F}_p)ffqpq^p の係数
22552-22-2
33551-11-1
55551111
7710102-22-2

四つとも一致します。左の列は有限体上で解を数えた整数、右の列は無限積を展開して得た係数で、計算の出自はまったく異なります。それが一致するというのがモジュラー性定理の内容です。合成数の係数もヘッケの関係式で決まり、たとえば a4=a222=2a_4 = a_2^2 - 2 = 2a6=a2a3=2a_6 = a_2 a_3 = 2 となり、実際 ff の展開と合っています。

6.1. フェルマーの最終定理への道

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Corollary 6.4フェルマーの最終定理

n3n \ge 3 を整数とする。xn+yn=znx^n + y^n = z^n を満たす整数 x,y,zx, y, zxyz0xyz \ne 0 となるものは存在しない。

Proof(Corollary 6.4)

n3n \ge 3 なら nn44 または奇素数 p3p \ge 3 で割り切れるので、n=4n = 4 の場合(フェルマー自身が無限降下法で証明)と n=pn = p が素数の場合に帰着します。p=3p = 3 はオイラーが処理したので p5p \ge 5 とします。

ap+bp=cpa^p + b^p = c^pabc0abc \ne 0gcd(a,b,c)=1\gcd(a,b,c)=1 とし、bb を偶数、a3(mod4)a \equiv 3 \pmod 4 となるよう符号と順序を調整します。ここでフライ曲線(Definition 4.1)[フェルマーの最終定理]

Ea,b:y2=x(xap)(x+bp)E_{a,b} : y^2 = x(x - a^p)(x + b^p)

を考えます。右辺の三根 00apa^pbp-b^p は互いに異なるので Ea,bE_{a,b} は楕円曲線で、判別式は根の差の積から

Δ=16(ap)2(bp)2(ap+bp)2=16(abc)2p\Delta = 16\,(a^p)^2 (b^p)^2 (a^p + b^p)^2 = 16\,(abc)^{2p}

となります。pp 乗の完全べきが判別式に現れるという異常な形をしており、この曲線は半安定で、導手は N=abcN = \prod_{\ell \mid abc} \ellabcabc の根基)です。

Theorem 6.1 により Ea,bE_{a,b} はモジュラーで、レベル NN の新形式 fS2(Γ0(N))f \in S_2(\Gamma_0(N)) に対応します。ところがリベットのレベル下げ定理(Theorem 6.2)[フェルマーの最終定理](1990、いわゆるセールの ε\varepsilon 予想)は、判別式が pp 乗になっている素数をレベルから落とせることを保証します。NN の奇素因子はすべて落ち、レベル 22 の新形式 gS2(Γ0(2))g \in S_2(\Gamma_0(2)) が存在することになります。

しかしモジュラー曲線 X0(2)X_0(2) の種数は 00 であり、§5\S 5 で述べたとおり dimS2(Γ0(2))\dim S_2(\Gamma_0(2))X0(2)X_0(2) の種数に等しいので S2(Γ0(2))=0S_2(\Gamma_0(2)) = 0 です(レベル 2 の尖点形式が存在しないことの計算(Example 6.6)[フェルマーの最終定理])。新形式 gg は定義から g0g \ne 0 ですから矛盾します。よって ap+bp=cpa^p + b^p = c^p の非自明解は存在しません。

flowchart TD
A["a^p + b^p = c^p の非自明解 (p ≥ 5)"] --> B["フライ曲線 E: y^2 = x(x - a^p)(x + b^p)"]
B --> C["E は半安定、判別式は 16(abc)^(2p)"]
C --> D["モジュラー性定理: E はレベル N = rad(abc) の新形式に対応"]
D --> E["リベットのレベル下げ定理: レベル 2 の新形式が存在"]
E --> F["ところが S_2(Γ_0(2)) = 0 (X_0(2) の種数は 0)"]
F --> G["矛盾。非自明解は存在しない"]
モジュラー性定理からフェルマーの最終定理へ至る論理の流れ

この筋道の詳細と歴史的背景は フェルマーの最終定理 で扱います。また、フライ曲線の判別式が pp 乗になるという「べきの異常な集中」を一般化した形の予想が ABC予想 で、こちらは ABC予想から従う漸近的フェルマー(Theorem 4.1)[ABC予想] という形で、フェルマーの最終定理の(十分大きい nn に対する)別証明を与えます。

Exercise 7.1

E:y2=x32E : y^2 = x^3 - 2 上の点 P=(3,5)P = (3,5)Q=(129/100,383/1000)Q = (129/100, -383/1000)Example 3.4 で求めた 2P2P)に対し、P+Q=3PP + Q = 3Pxx 座標を求めなさい。

Solution

x1=3x_1 = 3y1=5y_1 = 5x2=129/100x_2 = 129/100y2=383/1000y_2 = -383/1000x1x2x_1 \ne x_2 なので Proposition 3.2 の (2) の第一の式を使います。

x2x1=1291003=171100,y2y1=38310005=53831000.x_2 - x_1 = \frac{129}{100} - 3 = -\frac{171}{100}, \qquad y_2 - y_1 = -\frac{383}{1000} - 5 = -\frac{5383}{1000}.

よって

λ=5383/1000171/100=53831000100171=53831710.\lambda = \frac{-5383/1000}{-171/100} = \frac{5383}{1000}\cdot\frac{100}{171} = \frac{5383}{1710}.

5383=77695383 = 7 \cdot 7691710=2325191710 = 2\cdot 3^2 \cdot 5 \cdot 19 で共通因子はないので既約です。したがって

x3=λ2x1x2=53832171023129100=289766892924100429100.x_3 = \lambda^2 - x_1 - x_2 = \frac{5383^2}{1710^2} - 3 - \frac{129}{100} = \frac{28976689}{2924100} - \frac{429}{100}.

2924100/100=292412924100 / 100 = 29241 なので

x3=28976689429292412924100=28976689125443892924100=164323002924100.x_3 = \frac{28976689 - 429 \cdot 29241}{2924100} = \frac{28976689 - 12544389}{2924100} = \frac{16432300}{2924100}.

分子分母を 100100 で割ると 164323/29241164323/2924129241=1712=(919)2=3419229241 = 171^2 = (9\cdot19)^2 = 3^4 \cdot 19^2 で、16432316432333 でも 1919 でも割り切れません(1+6+4+3+2+3=191+6+4+3+2+3 = 1933 の倍数でない。164323=198648+11164323 = 19\cdot 8648 + 11)。よって

x(3P)=16432329241.x(3P) = \frac{164323}{29241}.

分母が 10029241100 \to 29241 と急増しており、点の高さが 22 倍算・加法のたびにおよそ二乗の速さで伸びる様子が見えます。

Exercise 7.2標準

E:y2=x3+1E : y^2 = x^3 + 1 について #E(F7)\#E(\mathbb{F}_7) を求め、a7a_7 を計算して Theorem 4.5 の評価を確かめなさい。また E(F7)E(\mathbb{F}_7) に位数 22 の元がいくつあるかを述べなさい。

Solution

まず F7\mathbb{F}_7 の平方元を列挙します。02=00^2=012=11^2=122=42^2=432=23^2=242=24^2=252=45^2=462=16^2=1 なので平方元の集合は {0,1,2,4}\{0,1,2,4\} で、00 以外の平方元は 1,2,41, 2, 4(それぞれ 22 個の平方根をもつ)です。

xx について x3+1mod7x^3+1 \bmod 7 を計算します。

xx00112233445566
x3+1x^3+111222200220000

33+1=2803^3+1 = 28 \equiv 053+1=12605^3+1 = 126 \equiv 063+1=217=73106^3+1 = 217 = 7\cdot31 \equiv 043+1=6524^3+1 = 65 \equiv 2。)

値が 11 または 2200 でない平方元)の xxx=0,1,2,4x = 0,1,2,444 個で、それぞれ yy22 個ずつ、計 88 点。値が 00xxx=3,5,6x = 3,5,633 個で、それぞれ y=0y = 011 点ずつ、計 33 点。アフィン点は 1111 個、無限遠点を加えて

#E(F7)=12,a7=7+112=4.\#E(\mathbb{F}_7) = 12, \qquad a_7 = 7 + 1 - 12 = -4 .

a7=4275.29|a_7| = 4 \le 2\sqrt{7} \approx 5.29 でハッセの評価を満たします。

位数 22 の元は Proposition 3.2 の (1) より y=0y = 0 の点、すなわち (3,0)(3,0)(5,0)(5,0)(6,0)(6,0)33 個です。これらと OOZ/2ZZ/2Z\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z}/2\mathbb{Z} をなし、ラグランジュの定理(Theorem 6.1)[Subgroups and Cosets]から 4#E(F7)=124 \mid \#E(\mathbb{F}_7) = 12 が確かに成り立っています。x3+1=(x+1)(x2x+1)x^3+1 = (x+1)(x^2-x+1)F7\mathbb{F}_7 上で完全に分解する(根は 6,3,56, 3, 5)ことが理由です。群の位数と部分群の位数の関係については 部分群と剰余類(ラグランジュの定理) を参照してください。

Exercise 7.3標準

Corollary 5.5 を使って E42=E8E_4^2 = E_8 を示し、そこから任意の n1n \ge 1 について

σ7(n)=σ3(n)+120m=1n1σ3(m)σ3(nm)\sigma_7(n) = \sigma_3(n) + 120\sum_{m=1}^{n-1}\sigma_3(m)\,\sigma_3(n-m)

が成り立つことを導きなさい。さらに n=2n = 2 で数値的に確かめなさい。

Solution

E4M4E_4 \in M_4 なので、Definition 5.1 の条件 2 を二回使えば E42E_4^2 は重さ 4+4=84+4 = 8 の変換則を満たします。正則性と尖点での正則性も積で保たれるので E42M8E_4^2 \in M_8 です。Corollary 5.5 の (3) より dimM8=1\dim M_8 = 1 で、基底は E8E_8 です。したがって E42=cE8E_4^2 = c\,E_8 なる定数 cc があります。両辺の qq 展開の定数項を比べると、E4E_4 の定数項が 11 なので左辺は 11E8E_8 の定数項も 11 なので右辺は cc。よって c=1c = 1E42=E8E_4^2 = E_8 です。

Example 5.2 の展開に代入します。E4=1+240n1σ3(n)qnE_4 = 1 + 240\sum_{n\ge1}\sigma_3(n)q^nE8=1+480n1σ7(n)qnE_8 = 1 + 480\sum_{n\ge1}\sigma_7(n)q^n28/B8=480-2\cdot 8/B_8 = 480)です。左辺 E42E_4^2qnq^nn1n \ge 1)の係数は、交差項と二乗項に分けて

2240σ3(n)+2402m=1n1σ3(m)σ3(nm)=480σ3(n)+57600m=1n1σ3(m)σ3(nm).2\cdot 240\,\sigma_3(n) + 240^2 \sum_{m=1}^{n-1}\sigma_3(m)\sigma_3(n-m) = 480\,\sigma_3(n) + 57600\sum_{m=1}^{n-1}\sigma_3(m)\sigma_3(n-m).

右辺 E8E_8qnq^n の係数は 480σ7(n)480\,\sigma_7(n) です。両者を等しいとおいて 480480 で割ると

σ7(n)=σ3(n)+120m=1n1σ3(m)σ3(nm).\sigma_7(n) = \sigma_3(n) + 120\sum_{m=1}^{n-1}\sigma_3(m)\sigma_3(n-m).

n=2n = 2 で確かめます。σ7(2)=1+27=129\sigma_7(2) = 1 + 2^7 = 129σ3(2)=1+8=9\sigma_3(2) = 1 + 8 = 9、和は m=1m=1 の項だけで σ3(1)σ3(1)=1\sigma_3(1)\sigma_3(1) = 1。右辺は 9+1201=1299 + 120\cdot 1 = 129 で一致します。

約数の冪和という初等的な量のあいだの非自明な畳み込み恒等式が、「重さ 88 の空間が 11 次元」という一行から出てくるところが、モジュラー形式の威力です。

  • J. H. Silverman, The Arithmetic of Elliptic Curves, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics 106, Springer, 2009 — 第 III 章(群構造とヴァイエルシュトラス方程式)、第 V 章(有限体上の楕円曲線とハッセの定理)、第 VIII 章(モーデル・ヴェイユの定理)。
  • J.-P. Serre, A Course in Arithmetic, Graduate Texts in Mathematics 7, Springer, 1973 — 第 VII 章にモジュラー形式の定義、位数公式、空間の次元計算。
  • F. Diamond and J. Shurman, A First Course in Modular Forms, Graduate Texts in Mathematics 228, Springer, 2005 — 合同部分群、ヘッケ作用素、新形式、モジュラー性定理の各定式化。
  • J. H. Silverman and J. Tate, Rational Points on Elliptic Curves, 2nd ed., Undergraduate Texts in Mathematics, Springer, 2015 — 学部生向け。群法則と降下法を計算中心に扱う。
  • A. Wiles, “Modular elliptic curves and Fermat’s Last Theorem”, Annals of Mathematics 141 (1995), 443–551. DOI:10.2307/2118559
  • K. A. Ribet, “On modular representations of Gal(Qˉ/Q)\mathrm{Gal}(\bar{\mathbf{Q}}/\mathbf{Q}) arising from modular forms”, Inventiones Mathematicae 100 (1990), 431–476. DOI:10.1007/BF01231195
  • LMFDB(L-functions and modular forms database): https://www.lmfdb.org/ — 楕円曲線の導手・階数・apa_p 表と、対応する新形式を検索できる。

因子(divisor)による定式化。 Theorem 3.3 の (4) だけが幾何的な定義から直接には出ませんでした。標準的な解決は、曲線上の点の形式的な整数結合(因子)を考えることです。KK を代数閉体とし、EE 上の因子とは有限個の点の形式和 D=PnP[P]D = \sum_P n_P [P]nPZn_P \in \mathbb{Z})のことです。次数を degD=PnP\deg D = \sum_P n_P と定め、EE 上の有理関数 gg に対して div(g)=PordP(g)[P]\mathrm{div}(g) = \sum_P \mathrm{ord}_P(g)[P] を主因子と呼びます。射影曲線上では有理関数の零点と極の個数は重複度込みで等しいので、主因子の次数は 00 です。次数 00 の因子群を主因子で割った商が Pic0(E)\mathrm{Pic}^0(E) です。これはアーベル群の商なのでアーベル群であり、結合律は自動的に成り立ちます。

曲線と群の同一視。 写像 κ:E(K)Pic0(E)\kappa : E(K) \to \mathrm{Pic}^0(E)κ(P)=[[P][O]]\kappa(P) = [\,[P] - [O]\,] を考えます。リーマン・ロッホの定理を種数 11 の曲線に適用すると、degD=0\deg D = 0 の任意の因子 DD に対し D[P][O]D \sim [P] - [O] を満たす点 PP がただ一つ存在することが分かります(dimL(D+[O])=1\dim L(D + [O]) = 1 から従います)。これは κ\kappa が全単射であることを意味します。

加法が対応すること。 P,QE(K)P, Q \in E(K) を取り、PQ\ell_{PQ} の定義方程式を(斉次一次式として)hhPQP*QOO を通る垂直線の方程式を vv とします。斉次座標で見ると h/vh/vEE 上の有理関数で、その因子は

div(h/v)=([P]+[Q]+[PQ])([PQ]+[P+Q]+[O])=[P]+[Q][P+Q][O]\mathrm{div}(h/v) = \big([P] + [Q] + [P*Q]\big) - \big([P*Q] + [P+Q] + [O]\big) = [P] + [Q] - [P+Q] - [O]

です。左辺は主因子ですから Pic0(E)\mathrm{Pic}^0(E) では 00 に等しく、移項して

([P][O])+([Q][O])[P+Q][O],\big([P] - [O]\big) + \big([Q] - [O]\big) \sim [P+Q] - [O],

すなわち κ(P)+κ(Q)=κ(P+Q)\kappa(P) + \kappa(Q) = \kappa(P+Q) です。κ\kappa は全単射で加法を保つので、Pic0(E)\mathrm{Pic}^0(E) の結合律が E(K)E(K) に移り、Theorem 3.3 の (4) が従います。

代数的な確認。 幾何を経由せず、Proposition 3.2 の公式を三重に代入して (P+Q)+R(P+Q)+RP+(Q+R)P+(Q+R) の座標が有理式として一致することを確かめる証明もあります。yi2=xi3+axi+by_i^2 = x_i^3 + ax_i + bi=1,2,3i=1,2,3)を関係式として、分母を払った多項式の等式に帰着させる計算で、計算機代数システムなら数秒で終わります。ただし退化する場合(xx 座標が一致する、y=0y = 0 になる、OO が現れるなど)を個別に処理する必要があり、場合分けは十数通りに及びます。概念的な見通しの良さでは因子による証明が優ります。

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