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平成28年度 東大院 物理学専攻 修士 数学 解答

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試験時間は 9 時 30 分から 11 時 00 分までの 90 分、第1問と第2問の 2 問すべてに解答する形式です。第1問は線形代数で、2 次の回転行列から作った積の列についてトレースの漸化式と 3 項から作る保存量を導き、後半では実対称三重対角行列の固有値が縮退しないことを示します。第2問は偏微分方程式で、質量項をもつ線形波動方程式の初期値問題から始めて、非線形方程式のキンク解とその周りで線形化した方程式のゼロモードまで進みます。誘導は細かく刻まれていますが、第1問2(iii) と第2問2(ii)(iii) は「どこまで言えば証明が閉じるか」を自分で判断する必要があり、そこが差のつく場所です。

問題分野主題
第1問 1線形代数回転行列の積の列とトレースの保存量
第1問 2線形代数実対称三重対角行列の固有値の単純性
第2問 1微分方程式・波動質量項つき波動方程式の初期値問題と進行波への分解
第2問 2微分方程式キンク解、線形化した方程式、ゼロモード

第1問 行列の漸化列とトレース、三重対角行列の固有値

Section titled “第1問 行列の漸化列とトレース、三重対角行列の固有値”

2 次の実行列

A=12(1111),B=12(3113)A=\frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix} 1 & -1 \\ 1 & 1\end{pmatrix},\qquad B=\frac{1}{2}\begin{pmatrix} \sqrt{3} & -1 \\ 1 & \sqrt{3}\end{pmatrix}

から、M0=BM_0=BM1=AM_1=A、および n2n\ge 2Mn=Mn1Mn2M_n=M_{n-1}M_{n-2} によって行列列 MnM_n を作ります。EE は 2 次の単位行列、xn=TrMnx_n=\operatorname{Tr}M_n とします。AA は回転角 π/4\pi/4BB は回転角 π/6\pi/6 の回転行列であることに注意しておきます。

(a) detA=12(11(1)1)=1\det A=\frac{1}{2}\left(1\cdot 1-(-1)\cdot 1\right)=1detB=14(33(1)1)=1\det B=\frac{1}{4}\left(\sqrt{3}\cdot\sqrt{3}-(-1)\cdot 1\right)=1 なので detM0=detM1=1\det M_0=\det M_1=1 です。n2n\ge 2detMn1=detMn2=1\det M_{n-1}=\det M_{n-2}=1 を仮定すると、行列式の乗法性から

detMn=det(Mn1Mn2)=detMn1detMn2=1\det M_n=\det(M_{n-1}M_{n-2})=\det M_{n-1}\cdot\det M_{n-2}=1

です。よって帰納法により、すべての n0n\ge 0detMn=1\det M_n=1 が成り立ちます。

(b) と (c) は、行列式が 1 である 2 次行列一般の性質です。M=(abcd)M=\begin{pmatrix} a & b \\ c & d\end{pmatrix}detM=adbc=1\det M=ad-bc=1 とすると MM は可逆で

M1=1detM(dbca)=(dbca)M^{-1}=\frac{1}{\det M}\begin{pmatrix} d & -b \\ -c & a\end{pmatrix}=\begin{pmatrix} d & -b \\ -c & a\end{pmatrix}

となります。したがって

TrM1=d+a=TrM,M+M1=(a+d00a+d)=(TrM)E\operatorname{Tr}M^{-1}=d+a=\operatorname{Tr}M,\qquad M+M^{-1}=\begin{pmatrix} a+d & 0 \\ 0 & a+d\end{pmatrix}=(\operatorname{Tr}M)E

です。(a) より detMn=10\det M_n=1\neq 0 なので MnM_n は可逆で、M=MnM=M_n として

TrMn=Tr(Mn)1,Mn+(Mn)1=(TrMn)E\operatorname{Tr}M_n=\operatorname{Tr}(M_n)^{-1},\qquad M_n+(M_n)^{-1}=(\operatorname{Tr}M_n)E

を得ます。これが (b) と (c) です。(c) は Cayley–Hamilton の定理 M2(TrM)M+(detM)E=OM^2-(\operatorname{Tr}M)M+(\det M)E=O の両辺に M1M^{-1} をかけ、detM=1\det M=1 を使っても同じ形になります。

n2n\ge 2 とします。定義から Mn+1=MnMn1M_{n+1}=M_nM_{n-1} です。また Mn=Mn1Mn2M_n=M_{n-1}M_{n-2}Mn1M_{n-1} は可逆なので Mn2=(Mn1)1MnM_{n-2}=(M_{n-1})^{-1}M_n、すなわち

(Mn2)1=(Mn)1Mn1(M_{n-2})^{-1}=(M_n)^{-1}M_{n-1}

です。この 2 つを足すと、右から Mn1M_{n-1} がくくり出せます。

Mn+1+(Mn2)1=MnMn1+(Mn)1Mn1=(Mn+(Mn)1)Mn1=(TrMn)Mn1=xnMn1\begin{aligned} M_{n+1}+(M_{n-2})^{-1} &=M_nM_{n-1}+(M_n)^{-1}M_{n-1}\\ &=\left(M_n+(M_n)^{-1}\right)M_{n-1}\\ &=(\operatorname{Tr}M_n)\,M_{n-1}=x_n M_{n-1} \end{aligned}

3 行目で設問1(i)(c) を使いました。答えは Mn+1+(Mn2)1=(Mn+(Mn)1)Mn1=xnMn1M_{n+1}+(M_{n-2})^{-1}=\left(M_n+(M_n)^{-1}\right)M_{n-1}=x_nM_{n-1} です。

この両辺のトレースをとります。トレースは線形なので左辺は TrMn+1+Tr(Mn2)1\operatorname{Tr}M_{n+1}+\operatorname{Tr}(M_{n-2})^{-1} となり、設問1(i)(b) を Mn2M_{n-2} に適用すると Tr(Mn2)1=TrMn2=xn2\operatorname{Tr}(M_{n-2})^{-1}=\operatorname{Tr}M_{n-2}=x_{n-2} です。右辺は xnTrMn1=xnxn1x_n\operatorname{Tr}M_{n-1}=x_nx_{n-1} です。したがって

xn+1+xn2=xnxn1,x_{n+1}+x_{n-2}=x_nx_{n-1},

つまり n2n\ge 2xn+1=xnxn1xn2x_{n+1}=x_nx_{n-1}-x_{n-2} が成り立ちます。これで (3) が示せました。n2n\ge 2 という条件は、Mn2M_{n-2} が定義され Mn=Mn1Mn2M_n=M_{n-1}M_{n-2} が使えるために必要です。

In=xn+22+xn+12+xn2xn+2xn+1xnI_n=x_{n+2}^2+x_{n+1}^2+x_n^2-x_{n+2}x_{n+1}x_n について In+1=InI_{n+1}=I_n を示します。設問1(ii) の漸化式を添字 n+2n+2 で使うと

xn+3=xn+2xn+1xn(n0)x_{n+3}=x_{n+2}x_{n+1}-x_n\qquad (n\ge 0)

です(漸化式は添字が 2 以上のところで成立し、n+22n+2\ge 2n0n\ge 0 と同値です)。s=xn+2xn+1s=x_{n+2}x_{n+1} と書くと xn+3=sxnx_{n+3}=s-x_n で、

In+1=xn+32+xn+22+xn+12xn+3xn+2xn+1=(sxn)2+xn+22+xn+12(sxn)s=s22sxn+xn2+xn+22+xn+12s2+sxn=xn+22+xn+12+xn2xn+2xn+1xn=In\begin{aligned} I_{n+1}&=x_{n+3}^2+x_{n+2}^2+x_{n+1}^2-x_{n+3}x_{n+2}x_{n+1}\\ &=(s-x_n)^2+x_{n+2}^2+x_{n+1}^2-(s-x_n)s\\ &=s^2-2sx_n+x_n^2+x_{n+2}^2+x_{n+1}^2-s^2+sx_n\\ &=x_{n+2}^2+x_{n+1}^2+x_n^2-x_{n+2}x_{n+1}x_n=I_n \end{aligned}

となります。よって InI_n はすべての n0n\ge 0 で等しく、nn に依存しません。

値は n=0n=0 で計算します。x0=TrB=3x_0=\operatorname{Tr}B=\sqrt{3}x1=TrA=22=2x_1=\operatorname{Tr}A=\frac{2}{\sqrt{2}}=\sqrt{2} で、

M2=M1M0=AB=122(31133+131)M_2=M_1M_0=AB=\frac{1}{2\sqrt{2}}\begin{pmatrix} \sqrt{3}-1 & -1-\sqrt{3} \\ \sqrt{3}+1 & \sqrt{3}-1\end{pmatrix}

より x2=2(31)22=622x_2=\dfrac{2(\sqrt{3}-1)}{2\sqrt{2}}=\dfrac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{2} です。これらから

x22=8434=23,x2x1x0=62223=6232=33x_2^2=\frac{8-4\sqrt{3}}{4}=2-\sqrt{3},\qquad x_2x_1x_0=\frac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{2}\cdot\sqrt{2}\cdot\sqrt{3}=\frac{6-2\sqrt{3}}{2}=3-\sqrt{3}

なので

I0=(23)+2+3(33)=4I_0=(2-\sqrt{3})+2+3-(3-\sqrt{3})=4

です。答えは In=4I_n=4(すべての n0n\ge 0)です。

検算を 2 通りしておきます。第一に n=1n=1 での直接計算です。x3=x2x1x0=12223=(31)3=1x_3=x_2x_1-x_0=\frac{\sqrt{12}-2}{2}-\sqrt{3}=(\sqrt{3}-1)-\sqrt{3}=-1 で、

I1=(1)2+(23)+2(1)6222=53+(31)=4I_1=(-1)^2+(2-\sqrt{3})+2-(-1)\cdot\frac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{2}\cdot\sqrt{2}=5-\sqrt{3}+(\sqrt{3}-1)=4

となり一致します。第二に回転角による見方です。AABB はともに回転行列で、回転行列の積は回転行列なので MnM_n は角 θn\theta_n の回転行列であり、θ0=π/6\theta_0=\pi/6θ1=π/4\theta_1=\pi/4θn=θn1+θn2\theta_{n}=\theta_{n-1}+\theta_{n-2}xn=2cosθnx_n=2\cos\theta_n です。このとき α=θn\alpha=\theta_nβ=θn+1\beta=\theta_{n+1}θn+2=α+β\theta_{n+2}=\alpha+\beta とおけば

cos2α+cos2β+cos2(α+β)2cosαcosβcos(α+β)=1\cos^2\alpha+\cos^2\beta+\cos^2(\alpha+\beta)-2\cos\alpha\cos\beta\cos(\alpha+\beta)=1

が恒等式です(cos(α+β)=cosαcosβsinαsinβ\cos(\alpha+\beta)=\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta を代入して展開し、sin2=1cos2\sin^2=1-\cos^2 を使えば左辺は 1 になります)。InI_n はこの左辺の 4 倍なので In=4I_n=4 です。角度は Fibonacci 数列のように増えて xnx_n は複雑に振動しますが、この組み合わせだけが 4 のまま動きません。

NN 次の実行列 CC を、Ci,i+1=Ci+1,i=biC_{i,i+1}=C_{i+1,i}=b_ii=1,2,,N1i=1,2,\dots,N-1)で、それ以外の成分はすべて 0 として定めます。すべての iibi>0b_i>0 です。対角成分は 0 で、CC は実対称行列です。以下 N2N\ge 2 とします(N=1N=1 なら C=(0)C=(0) で、設問2(ii)(iii) の主張は自明です)。固有値方程式 Cv=μvC\boldsymbol{v}=\mu\boldsymbol{v} を成分で書くと

{b1v2=μv1(i=1)bi1vi1+bivi+1=μvi(2iN1)bN1vN1=μvN(i=N)\begin{cases} b_1v_2=\mu v_1 & (i=1)\\ b_{i-1}v_{i-1}+b_iv_{i+1}=\mu v_i & (2\le i\le N-1)\\ b_{N-1}v_{N-1}=\mu v_N & (i=N) \end{cases}

となります。この成分表示を以下で繰り返し使います。

N=3N=3 では

C=(0b10b10b20b20)C=\begin{pmatrix} 0 & b_1 & 0 \\ b_1 & 0 & b_2 \\ 0 & b_2 & 0\end{pmatrix}

です。固有多項式は第 1 行に沿った余因子展開で

det(CμE)=μ(μ2b22)b1(b1μ)=μ(μ2b12b22)\det(C-\mu E)=-\mu(\mu^2-b_2^2)-b_1(-b_1\mu)=-\mu\left(\mu^2-b_1^2-b_2^2\right)

となります。よって固有値は

μ=0,μ=±b12+b22\mu=0,\qquad \mu=\pm\sqrt{b_1^2+b_2^2}

の 3 つです。b1,b2>0b_1,b_2>0 なので b12+b22>0\sqrt{b_1^2+b_2^2}>0 であり、3 つは互いに異なります(設問2(iii) の主張と整合します)。

検算します。固有値の和は 00TrC=0\operatorname{Tr}C=0 に一致し、固有値の 2 乗和は 2(b12+b22)2(b_1^2+b_2^2)TrC2=i,jCijCji=2(b12+b22)\operatorname{Tr}C^2=\sum_{i,j}C_{ij}C_{ji}=2(b_1^2+b_2^2) に一致し、積は 0 で detC=0\det C=0 に一致します。さらに D=diag(1,1,1)D=\operatorname{diag}(-1,1,-1) とすると (DCD)ij=(1)i+jCij(DCD)_{ij}=(-1)^{i+j}C_{ij} で、CC の非零成分は ij=1|i-j|=1 にしかないので DCD=CDCD=-C、つまり CCC-C は相似です。したがってスペクトルは μμ\mu\to-\mu について対称でなければならず、上の結果はその形になっています。

v=(v1,v2,,vN)T\boldsymbol{v}=(v_1,v_2,\dots,v_N)^{\mathrm{T}} を固有値 μ\mu に属する固有ベクトルとします。固有ベクトルの定義から v0\boldsymbol{v}\neq\boldsymbol{0} です。v1=0v_1=0 を仮定して矛盾を導きます。

v1=v2==vk=0v_1=v_2=\cdots=v_k=0 が成り立つことを kk についての帰納法で示します。k=1k=1 は仮定そのものです。1kN11\le k\le N-1v1==vk=0v_1=\cdots=v_k=0 が成り立つとします。k=1k=1 のとき、成分表示の i=1i=1 の式は b1v2=μv1=0b_1v_2=\mu v_1=0 であり、b1>0b_1>0 から v2=0v_2=0 です。2kN12\le k\le N-1 のとき、成分表示の i=ki=k の式は bk1vk1+bkvk+1=μvkb_{k-1}v_{k-1}+b_kv_{k+1}=\mu v_k で、vk1=vk=0v_{k-1}=v_k=0 を代入すると bkvk+1=0b_kv_{k+1}=0bk>0b_k>0 から vk+1=0v_{k+1}=0 です。いずれの場合も v1==vk+1=0v_1=\cdots=v_{k+1}=0 が言えました。

k=Nk=N まで進めると v=0\boldsymbol{v}=\boldsymbol{0} となり、v0\boldsymbol{v}\neq\boldsymbol{0} に矛盾します。よって v10v_1\neq 0 です。証明で使ったのは、bib_i がすべて 0 でないこと(bi>0b_i>0 から従う)と CC が三重対角であることだけです。

2 段に分けます。第 1 段では各固有値の固有空間が 1 次元であること、第 2 段でそこから固有値がすべて異なることを出します。

第 1 段。μ\muCC の固有値とし、v,w\boldsymbol{v},\boldsymbol{w} をともに μ\mu に属する固有ベクトルとします。設問2(ii) より v10v_1\neq 0 かつ w10w_1\neq 0 です。ここで

u=w1vv1w\boldsymbol{u}=w_1\boldsymbol{v}-v_1\boldsymbol{w}

とおくと、Cu=μuC\boldsymbol{u}=\mu\boldsymbol{u} であり、第 1 成分は u1=w1v1v1w1=0u_1=w_1v_1-v_1w_1=0 です。もし u0\boldsymbol{u}\neq\boldsymbol{0} なら u\boldsymbol{u} は第 1 成分が 0 の固有ベクトルとなり、設問2(ii) に反します。よって u=0\boldsymbol{u}=\boldsymbol{0}、すなわち w=(w1/v1)v\boldsymbol{w}=(w_1/v_1)\boldsymbol{v} で、v\boldsymbol{v}w\boldsymbol{w} は平行です。したがって固有空間 ker(CμE)\ker(C-\mu E) は 1 次元です。

第 2 段。CC は実対称行列なので、スペクトル定理により固有値はすべて実数で、直交行列 PP によって

PTCP=diag(μ1,μ2,,μN)P^{\mathrm{T}}CP=\operatorname{diag}(\mu_1,\mu_2,\dots,\mu_N)

と対角化できます。対角化可能なので、各固有値 μ\mu の代数的重複度(対角成分に μ\mu が現れる個数)は幾何的重複度 dimker(CμE)\dim\ker(C-\mu E) と一致します。第 1 段よりこれは 1 なので、μ1,,μN\mu_1,\dots,\mu_N の中に同じ値は 2 度現れません。対角成分は NN 個あるので、CCNN 個の互いに異なる固有値をもちます。

対称性を使わずに済ませたい場合は、第 1 段を成分表示から直接出すこともできます。固有値 μ\mu を固定すると、成分表示の i=1,,N1i=1,\dots,N-1 の式は

v2=μv1b1,vi+1=μvibi1vi1bi(2iN1)v_2=\frac{\mu v_1}{b_1},\qquad v_{i+1}=\frac{\mu v_i-b_{i-1}v_{i-1}}{b_i}\quad(2\le i\le N-1)

と解けて(bi>0b_i>0 なので割れます)、v1v_1 を決めれば v2,,vNv_2,\dots,v_N が一意に定まります。この形からも固有空間が 1 次元であることが分かります。ただし固有値が異なることを結論するには、代数的重複度と幾何的重複度が一致することが必要で、そこで実対称性(対角化可能性)を使う点は変わりません。

第2問 質量項つき波動方程式とキンク解

Section titled “第2問 質量項つき波動方程式とキンク解”

λ>0\lambda>0 を定数として、y(x,t)y(x,t) に対する方程式

2yt22yx2+λ2y=0\frac{\partial^2y}{\partial t^2}-\frac{\partial^2y}{\partial x^2}+\lambda^2y=0

を考えます。波の速さが 1 に規格化された 1 次元の Klein–Gordon 型方程式で、λ\lambda が質量項に当たります。初期条件は y(x,0)=coskxy(x,0)=\cos kxy/tt=0=0\partial y/\partial t|_{t=0}=0k>0k>0)です。

y(x,t)=f(t)g(x)y(x,t)=f(t)g(x) とおいて代入すると fgfg+λ2fg=0f''g-fg''+\lambda^2fg=0fg0fg\neq 0 の範囲で割って

f(t)f(t)+λ2=g(x)g(x)\frac{f''(t)}{f(t)}+\lambda^2=\frac{g''(x)}{g(x)}

を得ます。左辺は tt だけ、右辺は xx だけの関数なので、両辺は定数です。これを K-K と書くと g=Kgg''=-Kgf=(λ2+K)ff''=-(\lambda^2+K)f です。

初期条件 f(0)g(x)=coskxf(0)g(x)=\cos kx から g(x)g(x)coskx\cos kx の定数倍で、規格化を ff に押し付けて g(x)=coskxg(x)=\cos kxf(0)=1f(0)=1 とできます。g=k2gg''=-k^2g なので K=k2K=k^2 です。もう一つの初期条件は f(0)g(x)=0f'(0)g(x)=0 より f(0)=0f'(0)=0 です。したがって f=(k2+λ2)ff''=-(k^2+\lambda^2)ff(0)=1f(0)=1f(0)=0f'(0)=0 の下で解いて f(t)=cosΩtf(t)=\cos\Omega t、ただし

Ω=k2+λ2\Omega=\sqrt{k^2+\lambda^2}

です(Ω>0\Omega>0 をとりました。ΩΩ\Omega\to-\Omegacos\cos の偶性から同じ解を与えます)。答えは

y(x,t)=cos(kx)cos ⁣(k2+λ2t)y(x,t)=\cos(kx)\,\cos\!\left(\sqrt{k^2+\lambda^2}\,t\right)

です。実際に代入すると t2y=Ω2y\partial_t^2y=-\Omega^2yx2y=k2y\partial_x^2y=-k^2y なので

2yt22yx2+λ2y=(Ω2+k2+λ2)y=0\frac{\partial^2y}{\partial t^2}-\frac{\partial^2y}{\partial x^2}+\lambda^2y=\left(-\Omega^2+k^2+\lambda^2\right)y=0

となり、方程式と 2 つの初期条件をすべて満たします。λ0\lambda\to 0 では y=coskxcoskty=\cos kx\cos kt となり、通常の波動方程式の定在波に戻ります。

積を和に直します。Ω=k2+λ2\Omega=\sqrt{k^2+\lambda^2}v=Ω/kv=\Omega/k とおくと

y(x,t)=12cos(kxΩt)+12cos(kx+Ωt)=12cos ⁣(k(xvt))+12cos ⁣(k(x+vt))y(x,t)=\frac{1}{2}\cos(kx-\Omega t)+\frac{1}{2}\cos(kx+\Omega t) =\frac{1}{2}\cos\!\big(k(x-vt)\big)+\frac{1}{2}\cos\!\big(k(x+vt)\big)

です。第 1 項は xvtx-vt のみの関数なので xx 軸の正の方向に速さ vv で進む波、第 2 項は x+vtx+vt のみの関数なので負の方向に同じ速さで進む波です。振幅はどちらも 1/21/2 で、位相速度は

v=k2+λ2k=1+λ2k2v=\frac{\sqrt{k^2+\lambda^2}}{k}=\sqrt{1+\frac{\lambda^2}{k^2}}

です。λ>0\lambda>0 のため v>1v>1 となり、質量項が入ると位相速度が 1 を超えます。これは分散関係 Ω2=k2+λ2\Omega^2=k^2+\lambda^2 の帰結で、群速度 dΩ/dk=k/Ω<1d\Omega/dk=k/\Omega<1 は 1 を超えません。λ0\lambda\to 0v1v\to 1 となり、設問1(i) の確認と整合します。

次に λ>0\lambda>0 として非線形方程式

2yt22yx2+2λ2(y3y)=0\frac{\partial^2y}{\partial t^2}-\frac{\partial^2y}{\partial x^2}+2\lambda^2\left(y^3-y\right)=0

を考えます。y=±1y=\pm 1 が空間的に一様な解で、以下ではこの 2 つの値を x±x\to\pm\infty でつなぐ静的解(キンク)と、その周りの微小振動を調べます。

tt に依存しない解 y=u(x)y=u(x) に対する方程式は

d2udx2+2λ2(u3u)=0-\frac{d^2u}{dx^2}+2\lambda^2\left(u^3-u\right)=0

です。両辺に du/dxdu/dx をかけると、各項が完全微分になります。

dudxd2udx2=12ddx(dudx)2,(u3u)dudx=ddx(u44u22)\frac{du}{dx}\frac{d^2u}{dx^2}=\frac{1}{2}\frac{d}{dx}\left(\frac{du}{dx}\right)^{2},\qquad \left(u^3-u\right)\frac{du}{dx}=\frac{d}{dx}\left(\frac{u^4}{4}-\frac{u^2}{2}\right)

を使うと

ddx[12(dudx)2+λ22u4λ2u2]=0\frac{d}{dx}\left[-\frac{1}{2}\left(\frac{du}{dx}\right)^{2}+\frac{\lambda^2}{2}u^4-\lambda^2u^2\right]=0

となるので、角括弧の中身は xx によらない定数です。その定数を λ2A/2-\lambda^2A/2 と書くと(λ>0\lambda>0 なのでどんな定数もこの形に書けます)、2/λ2-2/\lambda^2 を掛けて整理すると

1λ2(dudx)2=u42u2+A,\frac{1}{\lambda^2}\left(\frac{du}{dx}\right)^{2}=u^4-2u^2+A,

すなわち

(dudx)2=λ2(u42u2+A)\left(\frac{du}{dx}\right)^{2}=\lambda^2\left(u^4-2u^2+A\right)

です。左辺は実数の 2 乗なので右辺は自動的に非負であり、平方根がとれます。du/dxdu/dx の符号は場所によって決まるので、両符号を許して

dudx=±λu42u2+A\frac{du}{dx}=\pm\lambda\sqrt{u^4-2u^2+A}

と書けます。これが示すべき式で、AA が積分定数です。この AA は力学の類推でいえばエネルギー保存則の積分定数に当たります(xx を時刻、λ2(u21)2/2-\lambda^2(u^2-1)^2/2 型のポテンシャルと見る見方です)。

境界条件は u1u\to 1xx\to\infty)、u1u\to-1xx\to-\infty)です。設問2(i) の式の右辺は uu の連続関数なので、xx\to\infty

(dudx)2λ2(12+A)=λ2(A1)\left(\frac{du}{dx}\right)^{2}\longrightarrow \lambda^2\left(1-2+A\right)=\lambda^2(A-1)

です。左辺は非負なので A1A\ge 1 です。ここで A>1A>1 を仮定して矛盾を出します。c=λA1>0c=\lambda\sqrt{A-1}>0 とおくと、十分大きい xx(たとえば xx0x\ge x_0)で du/dxc/2|du/dx|\ge c/2 が成り立ちます。uu は 2 階の微分方程式の解なので du/dxdu/dx は連続で、xx0x\ge x_0 で 0 になりません。よって du/dxdu/dx の符号は xx0x\ge x_0 で一定であり、x>x0x>x_0

u(x)u(x0)=x0xdudxdx=x0xdudxdxc2(xx0)|u(x)-u(x_0)|=\left|\int_{x_0}^{x}\frac{du}{dx'}\,dx'\right|=\int_{x_0}^{x}\left|\frac{du}{dx'}\right|dx'\ge\frac{c}{2}(x-x_0)

となります。右辺は xx\to\infty で発散するので uu は有限の極限をもてず、u1u\to 1 に矛盾します。したがって A=1A=1 です。

xx\to-\infty 側でも u1u\to-1 から (du/dx)2λ2(12+A)(du/dx)^2\to\lambda^2(1-2+A) となり、同じ結論 A=1A=1 が出るので、2 つの境界条件は矛盾しません。答えは A=1A=1 です。このとき

u42u2+A=(u21)2u^4-2u^2+A=\left(u^2-1\right)^2

と完全平方になり、du/dxdu/dxuu の有理式で書けるようになります。

A=1A=1 を代入すると (u21)2=1u2\sqrt{(u^2-1)^2}=|1-u^2| で、u1|u|\le 1 の下では 1u2=1u2|1-u^2|=1-u^2 なので

dudx=±λ(1u2)\frac{du}{dx}=\pm\lambda\left(1-u^2\right)

です。

まず u(x)<1|u(x)|<1 がすべての xx で成り立つことを確認します。もしある x0x_0u(x0)=1u(x_0)=1 なら、上の式から du/dxx0=0du/dx|_{x_0}=0 です。ところが定数関数 u1u\equiv 1 は設問2(i) の 2 階方程式の解で、x0x_0 で同じ値と同じ微分をもちます。方程式 d2u/dx2=2λ2(u3u)d^2u/dx^2=2\lambda^2(u^3-u) の右辺は uu の多項式で局所 Lipschitz なので初期値問題の解は一意であり、u1u\equiv 1 となって u(0)=0u(0)=0 に反します。u(x0)=1u(x_0)=-1 の場合も同様です。よって u(x)<1|u(x)|<1、つまり 1u2>01-u^2>0 です。

すると du/dx=±λ(1u2)0du/dx=\pm\lambda(1-u^2)\neq 0 なので du/dxdu/dx は決して 0 にならず、連続性からその符号は全域で一定です。境界条件は xx\to-\infty1-1xx\to\infty+1+1 なので uu は増加関数でなければならず、符号は正です。したがって

dudx=λ(1u2)\frac{du}{dx}=\lambda\left(1-u^2\right)

を解けばよく、1u2>01-u^2>0 なので変数分離して 00 から xx まで積分できます。u(0)=0u(0)=0 を使うと

0u(x)du1u2=λxtanh1u(x)=12ln1+u(x)1u(x)=λx\int_0^{u(x)}\frac{du'}{1-u'^2}=\lambda x \quad\Longrightarrow\quad \tanh^{-1}u(x)=\frac{1}{2}\ln\frac{1+u(x)}{1-u(x)}=\lambda x

となり、答えは

u(x)=tanh(λx)u(x)=\tanh(\lambda x)

です。これがキンク解です。確認すると、u=tanhλxu=\tanh\lambda xu<1|u|<1u(0)=0u(0)=0 を満たし、λ>0\lambda>0 より x±x\to\pm\inftyu±1u\to\pm 1 です。さらに du/dx=λ(1u2)du/dx=\lambda(1-u^2) から

d2udx2=2λududx=2λ2u(1u2)=2λ2(u3u)\frac{d^2u}{dx^2}=-2\lambda u\frac{du}{dx}=-2\lambda^2u\left(1-u^2\right)=2\lambda^2\left(u^3-u\right)

なので設問2(i) の方程式も満たします。キンクの幅は 1/λ1/\lambda の程度で、λ\lambda が大きいほど急な壁になります。なお tanhλx-\tanh\lambda x は符号を逆にとった場合の解で、境界条件が入れ替わるため今の条件では不適です。

u(x)u(x) を設問2(i) の方程式の解とし、y(x,t)=u(x)+z(x,t)y(x,t)=u(x)+z(x,t) を非線形方程式に代入します。y3=(u+z)3=u3+3u2z+3uz2+z3y^3=(u+z)^3=u^3+3u^2z+3uz^2+z^3 で、z2z^2z3z^3 に比例する項を落とすと

2zt2d2udx22zx2+2λ2(u3+3u2zuz)=0\frac{\partial^2z}{\partial t^2}-\frac{d^2u}{dx^2}-\frac{\partial^2z}{\partial x^2}+2\lambda^2\left(u^3+3u^2z-u-z\right)=0

です。uu だけの項をまとめると d2udx2+2λ2(u3u)-\dfrac{d^2u}{dx^2}+2\lambda^2\left(u^3-u\right) となり、これは設問2(i) の方程式そのものなので 0 です。残りが zz の満たす方程式で、

2zt22zx2+2λ2(3u21)z=0\frac{\partial^2z}{\partial t^2}-\frac{\partial^2z}{\partial x^2}+2\lambda^2\left(3u^2-1\right)z=0

が答えです。設問2(iii) の u=tanhλxu=\tanh\lambda x を入れると 3u21=23/cosh2(λx)3u^2-1=2-3/\cosh^2(\lambda x) なので

2zt22zx2+(4λ26λ2cosh2(λx))z=0\frac{\partial^2z}{\partial t^2}-\frac{\partial^2z}{\partial x^2}+\left(4\lambda^2-\frac{6\lambda^2}{\cosh^2(\lambda x)}\right)z=0

と具体化されます。x|x|\to\infty では第 3 項が 4λ2z4\lambda^2z になり、質量が 2λ2\lambda の線形波動方程式(設問1 の形で λ\lambda2λ2\lambda に置き換えたもの)に一致します。真空 y=±1y=\pm 1 の周りの揺らぎの質量が 2λ2\lambda であることに対応し、キンクの位置にだけ引力的な井戸 6λ2/cosh2(λx)-6\lambda^2/\cosh^2(\lambda x) が付きます。

z(x,t)=eiωtw(x)z(x,t)=e^{i\omega t}w(x) の形を設問2(iv) の方程式に入れると、t2z=ω2z\partial_t^2z=-\omega^2z なので eiωte^{i\omega t} が共通因子として落ち、

d2wdx2+2λ2(3u21)w=ω2w-\frac{d^2w}{dx^2}+2\lambda^2\left(3u^2-1\right)w=\omega^2w

という 1 次元の固有値問題になります。ω2\omega^2 が固有値です。

いま w=du/dxw=du/dxω2=0\omega^2=0 の解であることを示します。設問2(i) の方程式 d2udx2+2λ2(u3u)=0-\dfrac{d^2u}{dx^2}+2\lambda^2(u^3-u)=0 の両辺を xx で微分します(この式から d2u/dx2d^2u/dx^2uu の多項式なので、uu は何回でも微分できます)。

d3udx3+2λ2(3u2dudxdudx)=0-\frac{d^3u}{dx^3}+2\lambda^2\left(3u^2\frac{du}{dx}-\frac{du}{dx}\right)=0

すなわち w=du/dxw=du/dx と書けば

d2wdx2+2λ2(3u21)w=0-\frac{d^2w}{dx^2}+2\lambda^2\left(3u^2-1\right)w=0

です。これは上の固有値問題の ω2=0\omega^2=0 の場合そのものなので、z0(x,t)=eiωtdu/dxz_0(x,t)=e^{i\omega t}\,du/dxω2=0\omega^2=0 のときに限り設問2(iv) の方程式を満たします。よって

ω=0\omega=0

が答えで、そのとき z0(x,t)=du/dx=λ/cosh2(λx)z_0(x,t)=du/dx=\lambda/\cosh^2(\lambda x) は時間に依存しない解になります。

この ω=0\omega=0 は偶然ではありません。もとの非線形方程式は xx の平行移動で不変なので、u(xa)u(x-a) も任意の aa について静的解です。aa が微小なら

u(xa)=u(x)adudx+O(a2)u(x-a)=u(x)-a\frac{du}{dx}+O(a^2)

なので、du/dxdu/dx は線形化方程式の静的解、つまり振動数 0 のモードでなければなりません。キンクの重心をずらす自由度に対応するゼロモードです。

念のため u=tanhλxu=\tanh\lambda x で直接検算します。w=λ/cosh2(λx)w=\lambda/\cosh^2(\lambda x) とすると

d2wdx2=2λ33tanh2(λx)1cosh2(λx),2λ2(3u21)w=2λ33tanh2(λx)1cosh2(λx)\frac{d^2w}{dx^2}=2\lambda^3\frac{3\tanh^2(\lambda x)-1}{\cosh^2(\lambda x)},\qquad 2\lambda^2\left(3u^2-1\right)w=2\lambda^3\frac{3\tanh^2(\lambda x)-1}{\cosh^2(\lambda x)}

で、両者は等しいので w+2λ2(3u21)w=0-w''+2\lambda^2(3u^2-1)w=0 が成り立ちます。ω=0\omega=0 で正しいことが確かめられました。また w=λ/cosh2(λx)w=\lambda/\cosh^2(\lambda x)x|x|\to\infty で指数的に 0 になり、設問2(iv) で見た引力的な井戸に束縛された状態になっています。

出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 平成28年度 修士課程 入学試験問題 数学。問題文は要約して引用しています。

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