この年度は数学と英語が 1 冊の問題冊子にまとめられ、数学 3 問・英語 2 問の合計 5 問すべてが必答でした(平成12年8月29日、9時00分〜11時30分)。この記事では数学の 3 問を扱います。第1問は 4 次元空間の 2 つの 2 次元部分空間の共通部分を求める線形代数で、計算量は小さく、次元の根拠づけが問われます。第2問は円形膜の振動で、前半がベッセル関数の直交性の証明、後半が変数分離による初期値境界値問題の完全な解答です。第3問は減衰振動子のインパルス応答をフーリエ変換と留数定理で求めるもので、減衰の強弱による 3 通りの場合分けがそのまま設問になっています。
| 問題 | 分野 | 主題 |
|---|
| 第1問 | 線形代数 | 4次元空間の部分空間の次元と共通部分 |
| 第2問 | 微分方程式・特殊関数 | 円形膜の振動とベッセル関数の直交性 |
| 第3問 | フーリエ解析・複素解析 | 減衰振動子のグリーン関数と留数定理 |
第2問(1)の証明では境界項が消えることの確認が要で、n=0 と n≥1 で Jn の原点付近の振る舞いが変わるため、そこを分けて論じます。第3問は極がすべて下半平面にあること(すなわち因果性)を使って積分路を閉じます。
4 次元ユークリッド空間のベクトルを x=(x1,x2,x3,x4) と書き、2 つの部分集合
V1V2={x∣x1−x2+2x3−x4=0 かつ x1+2x2−x3=0},={x∣2x1+x2+2x3−2x4=0 かつ 3x1+2x3−x4=0}
を考えます。どちらも斉次連立 1 次方程式の解集合ですから、係数行列を A1,A2 とすれば V1=kerA1、V2=kerA2 であり、和とスカラー倍について閉じています。したがって V1,V2 はともに R4 の部分空間です。以下、
A1=(11−122−1−10),A2=(231022−2−1)
とします。
次元定理(階数・退化次数の関係)dimkerA=4−rankA を使います。
A1 の 2 つの行 (1,−1,2,−1) と (1,2,−1,0) は互いに定数倍ではないので線形独立で、rankA1=2、よって dimV1=2 です。実際に解いて基底を出しておきます。第 2 式から x1=x3−2x2 であり、これを第 1 式に代入すると
(x3−2x2)−x2+2x3−x4=3x3−3x2−x4=0,x4=3(x3−x2)
となります。x2,x3 が自由変数で、(x2,x3)=(1,0),(0,1) に対応して
u1=(−2,1,0,−3),u2=(1,0,1,3)
が得られます。この 2 本は独立で、V1=span{u1,u2}、dimV1=2 です。
A2 についても 2 行は独立なので rankA2=2、dimV2=2 です。第 2 式から x4=3x1+2x3 で、第 1 式に代入すると
2x1+x2+2x3−2(3x1+2x3)=−4x1+x2−2x3=0,x2=4x1+2x3
です。x1,x3 を自由変数として
v1=(1,4,0,3),v2=(0,2,1,2)
が基底になります。
答えは dimV1=dimV2=2、すなわちどちらも 2 次元空間です。
x∈V1∩V2 は 4 本の条件をすべて満たすベクトルですから、係数行列
A=1123−12102−122−10−2−1
の核を求めます。第 1 行を使って第 2〜4 行の第 1 列を掃き出すと
1000−13332−3−2−4−1102
となります。さらに第 2 行を第 3 行と第 4 行から引くと
1000−13002−31−1−11−11
で、第 4 行は第 3 行の −1 倍に一致します。独立な行は 3 本なので rankA=3 です。残った 3 本を下から解きます。第 3 行より x3=x4。x4=t と置くと x3=t で、第 2 行より
3x2=3x3−x4=2t,x2=32t
第 1 行より
x1=x2−2x3+x4=32t−2t+t=−31t
です。t=3c と取り直すと
x=c(−1,2,3,3),c∈R
が答えです。すなわち V1 と V2 に共通に含まれるベクトルは (−1,2,3,3) のスカラー倍に限ります。
4 本の条件式に代入して確かめます。
(−1)−2+2⋅3−3=0,2(−1)+2+2⋅3−2⋅3=0,(−1)+2⋅2−3=0,3(−1)+2⋅3−3=0
すべて 0 になります。設問(1)の基底による表示でも同じ結果になります。au1+bu2=cv1+dv2 を成分ごとに書くと −2a+b=c、a=4c+2d、b=d、−3a+3b=3c+2d で、前 3 式から b=23a、c=b−2a、d=b が出て、これが第 4 式も満たします。a=2,b=3 とすれば 2u1+3u2=(−1,2,3,3) です。
rankA=3 ですから、次元定理より
dim(V1∩V2)=4−rankA=4−3=1
です。答えは 1 次元です。設問(2)で解空間が 1 本のベクトルで張られたことと整合しています。
別の見方で検算します。次元公式 dim(V1+V2)=dimV1+dimV2−dim(V1∩V2) に dimV1=dimV2=2、dim(V1∩V2)=1 を入れると dim(V1+V2)=3 となり、V1+V2 は R4 の超平面です。実際 n=(5,1,4,−3) は u1,u2,v1,v2 のすべてと直交します。
n⋅u1n⋅v1=−10+1+0+9=0,=5+4+0−9=0,n⋅u2n⋅v2=5+0+4−9=0,=0+2+4−6=0
したがって V1+V2⊂{x∣5x1+x2+4x3−3x4=0} で、右辺は 3 次元です。u1,u2,v1 が独立(v1∈/V1 は、v1 が x1+2x2−x3=1+8−0=9=0 から従います)なので dim(V1+V2)≥3 であり、結局等号が成り立って dim(V1+V2)=3 です。次元公式から dim(V1∩V2)=2+2−3=1 が再現され、上の結果を裏づけます。
原点を中心とし周辺を固定した半径 a の薄い円形膜の振動を考えます。平衡位置からの変位を極座標で u=u(r,θ,t) と書くと、係数を 1 に規格化した波動方程式
∂t2∂2u=∂r2∂2u+r1∂r∂u+r21∂θ2∂2u
に従います。右辺は極座標での 2 次元ラプラシアン ∇2u で、波の伝播速度が 1 の場合に相当します。n 次のベッセル関数 Jn(x) は
dx2d2Jn+x1dxdJn+(1−x2n2)Jn=0
を満たし、その j 番目の零点を ξnj と書きます。以下 n は 0 以上の整数とし、ξnj は Jn の正の零点を小さい順に並べたもの 0<ξn1<ξn2<⋯ とします(n≥1 では Jn(0)=0 ですが、x=0 を採ると考える関数が恒等的に 0 になるため、正の零点だけを数えます)。
ξj:=ξnj、ξℓ:=ξnℓ と略記し、yj(x):=Jn(ξjx)、yℓ(x):=Jn(ξℓx) とおきます。
まず yj の満たす方程式を作ります。s=ξjx と置くと yj′(x)=ξjJn′(s)、yj′′(x)=ξj2Jn′′(s) ですから
yj′′+x1yj′+(ξj2−x2n2)yj=ξj2[Jn′′(s)+s1Jn′(s)+(1−s2n2)Jn(s)]=0
となり、ベッセル方程式から右辺は 0 です。両辺に x を掛けると自己共役形(スツルム–リウヴィル形)
(xyj′)′+(ξj2x−xn2)yj=0
が得られます。重み関数が x、固有値が ξj2 という構造がここで見えます。yℓ についても ξj を ξℓ に替えた同じ式が成り立ちます。
次にラグランジュの恒等式を使います。yj の式に yℓ を掛け、yℓ の式に yj を掛けて差を取ると、n2/x の項が相殺して
yℓ(xyj′)′−yj(xyℓ′)′+(ξj2−ξℓ2)xyjyℓ=0
となります。左辺の最初の 2 項は完全微分です。実際
dxd[x(yj′yℓ−yjyℓ′)]=(xyj′)′yℓ+xyj′yℓ′−(xyℓ′)′yj−xyℓ′yj′=yℓ(xyj′)′−yj(xyℓ′)′
です。そこで W(x):=x(yj′(x)yℓ(x)−yj(x)yℓ′(x)) と置けば
dxdW=(ξℓ2−ξj2)xyjyℓ
です。Jn は整関数なので yj,yℓ とその導関数は [0,1] 上で連続、したがって被積分関数 xyjyℓ は [0,1] で連続で積分は絶対収束し、W は [0,1] 上で C1 です。0 から 1 まで積分して
(ξℓ2−ξj2)∫01xJn(ξjx)Jn(ξℓx)dx=W(1)−x→+0limW(x)
を得ます。
境界項を評価します。x=1 では yj(1)=Jn(ξj)=0、yℓ(1)=Jn(ξℓ)=0 なので
W(1)=1⋅(yj′(1)⋅0−0⋅yℓ′(1))=0
です。ここで ξj,ξℓ がともに Jn の零点であることを使いました。x→+0 では n の値で Jn の振る舞いが変わるので分けます。ベッセル関数の級数表示
Jn(s)=k=0∑∞k!(n+k)!(−1)k(2s)n+2k
より、n≥1 のときは Jn(s)=O(sn)、Jn′(s)=O(sn−1) ですから
xyj′(x)yℓ(x)=x⋅O(xn−1)⋅O(xn)=O(x2n)x→+00
で、2n≥2>0 なので 0 に収束します。xyjyℓ′ も同様です。n=0 のときは J0(0)=1=0 ですが J0′(s)=−J1(s)=O(s) なので
xyj′(x)yℓ(x)=x⋅O(x)⋅O(1)=O(x2)x→+00
となります。いずれの場合も limx→+0W(x)=0 です(重み x が前に付いていることが n=0 で効いています)。
以上より
(ξℓ2−ξj2)∫01xJn(ξnjx)Jn(ξnℓx)dx=0
です。j=ℓ なら ξnj=ξnℓ であり、両者は正なので ξnℓ2−ξnj2=0 です。したがって
∫01xJn(ξnjx)Jn(ξnℓx)dx=0(j=ℓ)
が成り立ちます。証明終わりです。
設問(2)で使うので、j=ℓ の場合の値も出しておきます。自己共役形の式に 2xyj′ を掛けると
2xyj′(xyj′)′+2(ξj2x2−n2)yjyj′=0,dxd[(xyj′)2]+(ξj2x2−n2)dxd[yj2]=0
です。0 から 1 まで積分し、第 2 項を部分積分すると
[(xyj′)2+(ξj2x2−n2)yj2]01−2ξj2∫01xyj2dx=0
となります。x→+0 での寄与は、n≥1 なら (xyj′)2=O(x2n)、n2yj2=O(x2n) でともに 0、n=0 なら (xyj′)2=O(x4) で n2yj2 は恒等的に 0 なので、どちらも 0 です。x=1 では yj(1)=Jn(ξj)=0、yj′(1)=ξjJn′(ξj) なので
∫01xJn(ξnjx)2dx=21Jn′(ξnj)2
です。漸化式 Jn′(s)=snJn(s)−Jn+1(s) を s=ξnj で使うと Jn′(ξnj)=−Jn+1(ξnj) なので、
∫01xJn(ξnjx)2dx=21Jn+1(ξnj)2
と書けます。数値的にも確認しました。たとえば n=0、ξ01=2.404826 で左辺は 0.1347571、21J1(ξ01)2=0.1347571 で一致し、n=1,2 の最初の 3 個の零点についても 8 桁一致します。異なる零点の組に対する積分は数値誤差の範囲(10−12 以下)で 0 になります。
u=R(r)Θ(θ)T(t)(恒等的に 0 でない)と置いて波動方程式に代入し、RΘT で割ると
TT′′=R1(R′′+r1R′)+r21ΘΘ′′
です。左辺は t だけの関数、右辺は r,θ だけの関数なので、両辺は定数 μ に等しくなります。この符号は固有値問題から決まります。Φ(r,θ):=RΘ は ∇2Φ=μΦ、Φ∣r=a=0 を満たすので、円板 D 上でグリーンの公式を使うと
μ∫DΦ2dS=∫DΦ∇2ΦdS=∮r=aΦ∂r∂Φdℓ−∫D∣∇Φ∣2dS=−∫D∣∇Φ∣2dS≤0
となり、Φ≡0 かつ境界で 0 なので ∇Φ≡0、よって μ<0 です。μ=−k2(k>0)と書くと
T′′+k2T=0,T(t)=αcoskt+βsinkt
です。残りに r2 を掛けて整理すると
Rr2(R′′+r1R′)+k2r2=−ΘΘ′′
で、両辺は定数です。これを m2 と書きます。Θ は θ について 2π 周期の一価関数でなければならないので Θ′′=−m2Θ の解は m が整数のときに限り、m=0,1,2,… として
Θ(θ)=cosmθ, sinmθ
を取れます(m を負にしても新しい解は出ません。m=0 では sinmθ≡0 なので Θ= 定数のみ)。動径方程式は
r2R′′+rR′+(k2r2−m2)R=0
で、s=kr と置けば m 次のベッセル方程式そのものです。よって R=c1Jm(kr)+c2Ym(kr) です。第 2 種ベッセル関数は r→0 で Y0∼(2/π)lnr、Ym∼−π(m−1)!(2/kr)m と発散し、膜の中心での変位は有限でなければならないので c2=0、すなわち
R(r)=Jm(kr)
です。境界条件 u(a,θ,t)=0 から R(a)=0、つまり Jm(ka)=0 なので ka は Jm の正の零点でなければならず
k=kmj=aξmj(j=1,2,3,…)
に量子化されます。伝播速度を 1 に取っているので、固有振動数は ωmj=kmj=ξmj/a です。k=0 は除外されます(m=0,k=0 なら R=A+Blnr で、中心で有限かつ R(a)=0 とすると R≡0)。
これらを重ね合わせた一般解は
u(r,θ,t)=m=0∑∞j=1∑∞Jm(aξmjr)[(Amjcosmθ+Bmjsinmθ)cosaξmjt+(Cmjcosmθ+Dmjsinmθ)sinaξmjt]
です(m=0 では B0j=D0j=0 と約束します)。
初期速度の条件を課します。t で微分して t=0 と置くと
[∂t∂u]t=0=m,j∑aξmjJm(aξmjr)(Cmjcosmθ+Dmjsinmθ)=0
がすべての (r,θ) で成り立つ必要があります。ξmj/a=0 であり、{Jm(ξmjr/a)cosmθ, Jm(ξmjr/a)sinmθ} は互いに直交する(角度方向は三角関数の直交性、動径方向は設問(1)の直交性)ので、Cmj=Dmj=0 です。よって解は t の偶関数
u(r,θ,t)=m=0∑∞j=1∑∞Jm(aξmjr)(Amjcosmθ+Bmjsinmθ)cosaξmjt
の形になります。
残る条件 u(r,θ,0)=F(r,θ) は
F(r,θ)=m=0∑∞j=1∑∞Jm(aξmjr)(Amjcosmθ+Bmjsinmθ)
というフーリエ–ベッセル展開です。係数は直交性で取り出します。角度方向は
∫02πcosmθcosm′θdθ={2ππδmm′(m=m′=0)(m,m′≥1),∫02πcosmθsinm′θdθ=0
で、sin 同士も m,m′≥1 で πδmm′ です。動径方向は設問(1)の関係を r=ax で [0,a] に移して
∫0arJm(aξmjr)Jm(aξmℓr)dr=a2∫01xJm(ξmjx)Jm(ξmℓx)dx=2a2Jm+1(ξmj)2δjℓ
を使います。両辺に rJm(ξmjr/a)cosmθ(あるいは sinmθ)を掛けて円板上で積分すると
A0jAmjBmj=πa2J1(ξ0j)21∫02πdθ∫0adrrF(r,θ)J0(aξ0jr),=πa2Jm+1(ξmj)22∫02πdθ∫0adrrF(r,θ)Jm(aξmjr)cosmθ(m≥1),=πa2Jm+1(ξmj)22∫02πdθ∫0adrrF(r,θ)Jm(aξmjr)sinmθ(m≥1)
が答えです(m=0 だけ 2π 由来の係数が半分になります)。以上の u と係数の組が求める解です。
整合性を確かめます。Jm(ξmj)=0 より各項が r=a で消えるので u(a,θ,t)=0 が満たされます。cos(ξmjt/a) の t 微分は t=0 で 0 なので初期速度も 0 です。t=0 では cos=1 で上の展開に戻り u=F になります。解が t→−t で不変なのは、初期速度が 0 という条件が時間反転で不変であることに対応しています。ここで F については、フーリエ–ベッセル級数が収束して項別微分できる程度の滑らかさと、境界条件との両立 F(a,θ)=0 を仮定しています。最低振動数は m=0,j=1 の ω01=ξ01/a≃2.405/a で、速度を c に戻せば ω01=2.405c/a となり、a が小さいほど高い音になるという円形膜の性質と合います。
未知関数 x(t) に関する常微分方程式
dt2d2x+2αdtdx+β2x=f(t)
を考えます。α,β は正の定数で、減衰係数 2α をもつ 1 自由度の強制振動そのものです。フーリエ変換の規約は
x(ω)=∫−∞∞x(t)eiωtdt,x(t)=2π1∫−∞∞x(ω)e−iωtdω
に取ります(f についても同じ)。逆変換の形から、t 微分はフーリエ空間で −iω を掛けることに対応します。
逆変換の式を t で微分すると
dtdx=2π1∫−∞∞(−iω)x(ω)e−iωtdω,dt2d2x=2π1∫−∞∞(−iω)2x(ω)e−iωtdω
です。これらを微分方程式に代入すると
2π1∫−∞∞[(−iω)2+2α(−iω)+β2]x(ω)e−iωtdω=2π1∫−∞∞f(ω)e−iωtdω
となり、フーリエ変換の一意性から被積分関数の ω ごとの等式
(β2−ω2−2iαω)x(ω)=f(ω)
が従います。したがって
x(ω)=C(ω)f(ω),C(ω)=β2−ω2−2iαω1=−ω2+2iαω−β21
が答えです。C(ω) は応答関数で、∣C(ω)∣2=[(β2−ω2)2+4α2ω2]−1 が共鳴曲線を与えます。
割り算が正当であること、すなわち分母が実軸上で消えないことを確認します。β2−ω2−2iαω=0 を実部と虚部に分けると、実 ω に対して虚部は −2αω=0、α>0 より ω=0、これを実部に入れると β2=0 となり β>0 に矛盾します。よって分母は実軸上で 0 になりません。C(ω) は実軸上で連続、かつ ∣ω∣→∞ で C(ω)=O(∣ω∣−2) です。
なお、順変換の指数を e−iωt と取る逆の規約では i→−i となり C(ω)=(β2−ω2+2iαω)−1 になります。極が上半平面に移るので設問(2)で閉じる向きも逆になり、最終的な x(t) は同じものが得られます。
f(t)=δ(t) のとき f(ω)=∫δ(t)eiωtdt=1 なので x(ω)=C(ω) で、
x(t)=2π1∫−∞∞β2−ω2−2iαωe−iωtdω=−2π1∫−∞∞g(ω)dω,g(ω):=ω2+2iαω−β2e−iωt
を計算します。C(ω)=O(∣ω∣−2) なのでこの積分は絶対収束します。
まず積分路の閉じ方を決めます。ω=u+iv と書くと e−iωt=evt です。t>0 なら下半平面 v≤0 でこれは 1 以下、t<0 なら上半平面 v≥0 で 1 以下に抑えられます。半径 R の半円 CR 上では、R が十分大きければ ∣ω2+2iαω−β2∣≥R2/2 と評価できるので
∫CRg(ω)dω≤πR⋅R2/21=R2πR→∞0
です。したがって t>0 では実軸の積分を下半平面の半円で閉じ、t<0 では上半平面の半円で閉じてよいことになります。
極は ω2+2iαω−β2=0 すなわち
ω=−iα±β2−α2
です。以下の各場合で確認するように、極はすべて Imω<0 にあります。よって t<0 では上半平面に極がなく、閉曲線上の積分が 0、半円の寄与も 0 なので
x(t)=0(t<0)
です。これは因果性、すなわち t=0 の撃力より前に応答が現れないことに対応します。t>0 では実軸を左から右に進んだ後に下半平面を回るので閉曲線は時計回りで、留数定理は
∫−∞∞g(ω)dω=−2πi∑Resg
を与えます。ゆえに
x(t)=−2π1⋅(−2πi)∑Resg=i∑Resg(t>0)
です。以下 t>0 とし、階段関数 θ(t)(t>0 で 1、t<0 で 0)を使って結果をまとめます。
(i) α<β の場合。Ω:=β2−α2>0 と置くと極は
ω±=±Ω−iα
で、Imω±=−α<0、かつ ω+=ω− なのでどちらも 1 位の極です。分母は (ω−ω+)(ω−ω−) と因数分解され ω+−ω−=2Ω なので
Resω+g=2Ωe−iω+t,Resω−g=−2Ωe−iω−t
です。e−iω±t=e∓iΩte−αt を使うと
∑Resg=2Ωe−αt(e−iΩt−eiΩt)=2Ωe−αt(−2isinΩt)=−Ωie−αtsinΩt
となり、
x(t)=θ(t)β2−α2e−αtsin(β2−α2t)
が答えです。減衰振動(弱減衰)で、角振動数 Ω=β2−α2 が減衰によって β から下がっています。
(ii) α=β の場合。ω2+2iαω−α2=(ω+iα)2 なので ω0=−iα が 2 位の極です(Imω0=−α<0)。2 位の極の留数は
Resω0g=ω→−iαlimdωd[(ω+iα)2g(ω)]=ω→−iαlimdωde−iωt=−ite−i(−iα)t=−ite−αt
です。よって
x(t)=i⋅(−ite−αt)=θ(t)te−αt
が答えです。臨界減衰で、Ω→0 の極限 sinΩt/Ω→t と一致します。
(iii) α>β の場合。γ:=α2−β2>0 と置くと β2−α2=iγ なので極は
ω1=−i(α−γ),ω2=−i(α+γ)
です。β>0 より γ<α なので α−γ>0、したがって両方とも負の虚軸上、すなわち下半平面にあり、ω1=ω2 なのでともに 1 位です。ω1−ω2=2iγ と e−iω1,2t=e−(α∓γ)t を使うと
∑Resg=2iγe−(α−γ)t−2iγe−(α+γ)t=2iγe−αt(eγt−e−γt)=−γie−αtsinhγt
となり、
x(t)=θ(t)α2−β2e−αtsinh(α2−β2t)
が答えです。過減衰で、振動せずに e−(α−γ)t で緩やかに減衰します。3 つの場合をまとめると
x(t)=θ(t)e−αt×⎩⎨⎧β2−α2sin(β2−α2t)tα2−β2sinh(α2−β2t)(α<β)(α=β)(α>β)
です。フーリエ変換で解が一意に決まったのは、α>0 のため同次解 e(−α±iΩ)t が t→−∞ で発散し、R 全体で緩増加超関数になれないからです。求めた x はこの方程式の(因果的な)グリーン関数で、一般の f に対する解は x(t)=∫−∞∞xδ(t−t′)f(t′)dt′ という畳み込みで与えられます。
検算します。第 1 に、3 つの表式は α→β でどちら側からも θ(t)te−αt に連続的につながります(sinΩt/Ω→t、sinhγt/γ→t)。(iii) は (i) で Ω=iγ と解析接続したものにほかなりません。第 2 に、どの場合も x(0)=0、x˙(0+)=1 を満たします。これは方程式を t=0 の前後で積分して得られる撃力の接続条件そのものです。第 3 に、(i) を直接代入して確かめます。x=θ(t)e−αtsinΩt/Ω は t=0 で連続なので
x˙=θ(t)e−αt[cosΩt−ΩαsinΩt],x¨=δ(t)+θ(t)e−αt[(Ωα2−Ω)sinΩt−2αcosΩt]
であり、
x¨+2αx˙+β2x=δ(t)+θ(t)e−αtΩβ2−α2−Ω2sinΩt=δ(t)
となります(cos の係数は −2α+2α=0、sin の係数は Ω2=β2−α2 で消えます)。第 4 に、逆変換の積分を数値的に実行して比較しました。α=0.3,β=1 で t=1.5 のとき数値積分は 0.66188663、上式は 0.66188663、α=β=1、t=1.5 でともに 0.3346952、α=2,β=1、t=1.5 でともに 0.1920633 となり、t<0 では 10−8 の精度で 0 になります。
出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 平成13年度 修士課程 入学試験問題 数学。問題文は要約して引用しています。
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