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対称性と保存則:ネーターの定理を「変換の生成子から保存量を作る機械」として読む

Prerequisite:Lagrangian Mechanics: From the Principle of Least Action to the Euler-Lagrange Equations

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  • 保存則は個別の偶然ではありません。ラグランジアンが持つ連続的な対称性があれば、そこから機械的に保存量が作れます。これがネーターの定理です。
  • 対称性の生成子を (ζi,τ)(\zeta^i, \tau)、一般化運動量を pi=L/q˙ip_i = \partial L/\partial \dot q^i、エネルギー関数を h=ipiq˙iLh = \sum_i p_i \dot q^i - L と書くと、保存量はつねに I=ipiζihτFI = \sum_i p_i \zeta^i - h\,\tau - F という同じ形をしています。FF はラグランジアンが完全微分だけずれることを許すための境界項です。
  • 時間の並進はエネルギー hh を、空間の並進は全運動量を、空間の回転は全角運動量を、ガリレイ変換は「重心が等速直線運動する」という保存則を与えます。すべて同じ公式の特殊化です。
  • 保存するのは hh であって T+UT + U ではありません。両者が一致するのは、座標変換が時間に陽に依存しないなどの追加の仮定の下だけです。仮定を外すと hh は保存するのに T+UT+U は増え続ける、という例を作れます。
  • 対称性は連続でなければなりません。空間反転のような離散対称性は、この定理からは保存量を生みません。

1. 動機:保存則はどこから来るのか

Section titled “1. 動機:保存則はどこから来るのか”

ニュートン力学を学ぶと、三つの保存則が別々の場所から現れます。運動量保存則(運動量保存則(Theorem 6.1)[Foundations of Newtonian Mechanics])は作用・反作用の法則から、エネルギー保存則(力学的エネルギー保存則(Theorem 7.5)[Foundations of Newtonian Mechanics])は力が保存力であること(ポテンシャルを持つこと)から、角運動量保存則(中心力の下での角運動量保存(Theorem 3.1)[Planetary Motion and Central Forces])は力が中心力であることから導かれます。導出はどれも正しいのですが、三つの出所がばらばらで、なぜこの三つがそろって基本的なのかが見えません。詳しくは ニュートン力学の基礎惑星の運動と中心力 を参照してください。

素朴な疑問として、次のように問うことができます。保存量は、法則のどんな性質から生まれるのか。 力の具体形を知らなくても、法則の形だけから保存量を予言できないのか。

この問いに完全な答えを与えたのが、エミー・ネーターが 1918 年にゲッティンゲンで発表した論文「変分問題の不変量」です。当時、ヒルベルトとクラインは一般相対性理論におけるエネルギー保存の奇妙な振る舞い(重力場のエネルギーが局所的にうまく定義できない)に悩んでいました。ネーターはこの問題を、変分原理の不変性という一般的な枠組みで整理し、二つの定理を証明しました。第一定理は、有限個のパラメータを持つ連続対称性が保存則を与えることを述べます。第二定理は、任意関数を含む対称性(ゲージ対称性)が保存則ではなく方程式の間の恒等式を与えることを述べ、一般相対論のエネルギー問題の正体を明らかにしました。

この記事で扱うのは第一定理です。主張を一言で書くと次のようになります。

作用を不変にする連続変換が一つあれば、運動方程式の解に沿って一定に保たれる量が一つ作れる。

重要なのは「作れる」の部分です。ネーターの定理は保存量の存在を主張するだけでなく、対称性の生成子から保存量を書き下す公式を与えます。以下ではこの公式を導き、三つの古典的保存則がすべてその特殊化であることを確認します。

2. 準備:ラグランジュ形式の復習

Section titled “2. 準備:ラグランジュ形式の復習”

以下、系の配位は nn 個の一般化座標 q=(q1,,qn)q = (q^1, \ldots, q^n) で指定され、ラグランジアン L(q,q˙,t)L(q, \dot q, t)C2C^2 級とします。時刻 t1t_1 から t2t_2 までの経路 q()q(\cdot) に対する作用は

S[q]=t1t2L(q(t),q˙(t),t)dtS[q] = \int_{t_1}^{t_2} L\big(q(t), \dot q(t), t\big)\, dt

で、端点を固定した変分が消える条件からオイラー–ラグランジュ方程式

ddtLq˙iLqi=0(i=1,,n)\frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot q^i} - \frac{\partial L}{\partial q^i} = 0 \qquad (i = 1, \ldots, n)

が出ます(オイラー・ラグランジュ方程式(Theorem 3.4)[Lagrangian Mechanics])。導出は ラグランジュ形式の力学 を参照してください。以下、この方程式の解を単にと呼び、「解に沿って」という言い方をします。

一般化運動量を

pi(q,q˙,t)=Lq˙i(q,q˙,t)p_i(q, \dot q, t) = \frac{\partial L}{\partial \dot q^i}(q, \dot q, t)

で定義します。この記号を使うとオイラー–ラグランジュ方程式は p˙i=L/qi\dot p_i = \partial L / \partial q^i と書けます。証明の中で何度もこの形を使います。

Definition 2.1保存量

関数 I(q,q˙,t)I(q, \dot q, t)保存量(第一積分)であるとは、オイラー–ラグランジュ方程式の任意の解 q(t)q(t) に対して

ddtI(q(t),q˙(t),t)=0\frac{d}{dt}\, I\big(q(t), \dot q(t), t\big) = 0

が成り立つことをいいます。すなわち II の値は解ごとに決まる定数です。

もっとも簡単な保存量は、座標が一つラグランジアンに現れない場合に得られます。

Definition 2.2循環座標

L/qk=0\partial L / \partial q^k = 0 がすべての (q,q˙,t)(q, \dot q, t) で成り立つとき、qkq^k循環座標(無視できる座標)といいます。

Proposition 2.3循環座標に共役な運動量の保存

qkq^k が循環座標(Definition 2.2)ならば、pk=L/q˙kp_k = \partial L / \partial \dot q^k は保存量である。

Proof(Proposition 2.3)

解に沿ってオイラー–ラグランジュ方程式の i=ki = k 成分を書くと

dpkdt=Lqk=0\frac{d p_k}{dt} = \frac{\partial L}{\partial q^k} = 0

です。最後の等号は Definition 2.2 の仮定によります。したがって pkp_k は時間によらず一定です。

この命題は強力ですが、使うには「うまい座標」を見つけなければなりません。たとえば平面上の 2 粒子系で全運動量が保存することを示すには、重心座標を導入して初めて循環座標が現れます。座標の取り方に依存せず、変換そのものを主役にして述べ直したものがネーターの定理です。

「対称性がある」という言葉を、計算できる形に翻訳します。鍵は、変換を一つずつ考えるのではなく、恒等変換から連続的につながったとして考えることです。

Definition 3.1一径数変換族と生成子

配位空間の開集合上で定義された写像の族 Qi(s;q,t)Q^i(s; q, t)i=1,,ni = 1, \ldots, nss00 の近くの実数)が、次を満たすとき一径数変換族といいます。

  1. QiQ^i(s,q,t)(s, q, t) について C2C^2 級である。
  2. Qi(0;q,t)=qiQ^i(0; q, t) = q^is=0s = 0 で恒等変換)。

このとき

ζi(q,t)=Qis(0;q,t)\zeta^i(q, t) = \frac{\partial Q^i}{\partial s}(0; q, t)

を、この族の生成子(無限小変換)と呼びます。

生成子は「ss を少しだけ動かしたときに点がどの向きにどれだけ動くか」を表すベクトル場です。ss が小さいとき Qi(s;q,t)qi+sζi(q,t)Q^i(s; q, t) \approx q^i + s\,\zeta^i(q,t) が成り立ちます。

次が対称性の定義です。ここであえて弱い条件を採用します。ラグランジアンがぴったり不変である必要はなく、時間に関する完全微分だけずれることを許します。理由は後で見ます(Example 4.6Exercise 7.2)。完全微分の差はオイラー–ラグランジュ方程式を変えないので、これは物理的に自然な緩め方です。

Definition 3.2ラグランジアンの準対称性

一径数変換族 Q(s;q,t)Q(s; q, t)Definition 3.1)が LL準対称性であるとは、ある C1C^1 級関数 F(q,t)F(q, t) が存在して、任意の C2C^2 級曲線 q()q(\cdot) と任意の時刻 tt について

ss=0L ⁣(Q(s;q(t),t), ddtQ(s;q(t),t), t)=ddtF(q(t),t)\frac{\partial}{\partial s}\bigg|_{s=0} L\!\left( Q\big(s; q(t), t\big),\ \frac{d}{dt}Q\big(s; q(t), t\big),\ t \right) = \frac{d}{dt} F\big(q(t), t\big)

が成り立つことをいいます。F0F \equiv 0 と取れるとき、単に対称性(厳密な不変性)といいます。

Remark 3.3

対称性は法則の性質であって、個々の運動の性質ではありません。一様重力中の放物運動は水平方向に平行移動しても別の放物運動になりますが、一つの放物線それ自体は平行移動対称ではありません。対称なのは軌道ではなく、軌道を決める法則です。

4. ネーターの定理(空間的な変換)

Section titled “4. ネーターの定理(空間的な変換)”

まず時間を変えない変換について定理を述べます。時間も動かす一般形は次節で扱います。

Theorem 4.1ネーターの定理(点変換版)

L(q,q˙,t)L(q, \dot q, t)C2C^2 級のラグランジアンとし、一径数変換族 Q(s;q,t)Q(s; q, t) が生成子 ζi(q,t)\zeta^i(q,t) を持ち、関数 F(q,t)F(q,t) とともに LL の準対称性である(Definition 3.2)とする。このとき

I(q,q˙,t)=i=1nLq˙i(q,q˙,t)ζi(q,t)    F(q,t)I(q, \dot q, t) = \sum_{i=1}^{n} \frac{\partial L}{\partial \dot q^i}(q, \dot q, t)\, \zeta^i(q, t) \;-\; F(q, t)

はオイラー–ラグランジュ方程式の保存量である(Definition 2.1)。

Proof(Theorem 4.1)

C2C^2 級曲線 q()q(\cdot) を一つ固定し、q~i(s,t)=Qi(s;q(t),t)\tilde q^i(s,t) = Q^i(s; q(t), t) と置きます。Definition 3.2 の左辺を連鎖律で展開します。LL の第 1 引数は q~\tilde q、第 2 引数は tq~\partial_t \tilde q なので

ss=0L(q~,tq~,t)=iLqiq~iss=0+iLq˙iss=0q~it\frac{\partial}{\partial s}\bigg|_{s=0} L\big(\tilde q, \partial_t \tilde q, t\big) = \sum_i \frac{\partial L}{\partial q^i}\,\frac{\partial \tilde q^i}{\partial s}\bigg|_{s=0} + \sum_i \frac{\partial L}{\partial \dot q^i}\,\frac{\partial}{\partial s}\bigg|_{s=0}\frac{\partial \tilde q^i}{\partial t}

となります。ここで L/qi\partial L/\partial q^i などはすべて (q(t),q˙(t),t)(q(t), \dot q(t), t) で評価されています(s=0s = 0 では q~=q(t)\tilde q = q(t)tq~=q˙(t)\partial_t \tilde q = \dot q(t) だからです)。

第 1 項の q~i/ss=0\partial \tilde q^i/\partial s|_{s=0} は、Definition 3.1 の生成子の定義そのもので ζi(q(t),t)\zeta^i(q(t), t) です。第 2 項では ss 微分と tt 微分の順序を交換します。QQC2C^2 級で q()q(\cdot)C2C^2 級なので q~\tilde q(s,t)(s,t) について C2C^2 級であり、シュワルツの定理(偏微分の順序交換(Theorem 7.1)[多変数関数の微分と偏微分])により

sq~it=tq~is\frac{\partial}{\partial s}\frac{\partial \tilde q^i}{\partial t} = \frac{\partial}{\partial t}\frac{\partial \tilde q^i}{\partial s}

が使えます。s=0s = 0 と置けば右辺は ddtζi(q(t),t)\dfrac{d}{dt}\zeta^i(q(t), t) です。すなわち具体的には

ddtζi(q(t),t)=jζiqjq˙j+ζit\frac{d}{dt}\zeta^i\big(q(t), t\big) = \sum_j \frac{\partial \zeta^i}{\partial q^j}\,\dot q^j + \frac{\partial \zeta^i}{\partial t}

です。以上をまとめ、Definition 3.2 の等式に代入すると、任意の C2C^2 級曲線について

iLqiζi+iLq˙idζidt=dFdt\sum_i \frac{\partial L}{\partial q^i}\,\zeta^i + \sum_i \frac{\partial L}{\partial \dot q^i}\,\frac{d \zeta^i}{dt} = \frac{dF}{dt}

が成り立ちます。

ここまでは任意の曲線についての恒等式です。ここで初めて曲線が解であると仮定します。解に沿ってはオイラー–ラグランジュ方程式より L/qi=ddtLq˙i\partial L/\partial q^i = \dfrac{d}{dt}\dfrac{\partial L}{\partial \dot q^i} なので、左辺は

i(ddtLq˙i)ζi+iLq˙idζidt=ddt(iLq˙iζi)\sum_i \left( \frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot q^i}\right)\zeta^i + \sum_i \frac{\partial L}{\partial \dot q^i}\,\frac{d\zeta^i}{dt} = \frac{d}{dt}\left( \sum_i \frac{\partial L}{\partial \dot q^i}\,\zeta^i \right)

と積の微分公式でまとめられます。したがって解に沿って

ddt(iLq˙iζiF)=0\frac{d}{dt}\left( \sum_i \frac{\partial L}{\partial \dot q^i}\,\zeta^i - F \right) = 0

が成り立ちます。これが主張です。

Remark 4.2

Proposition 2.3Theorem 4.1 の特別な場合です。qkq^k が循環座標なら、kk 番目の座標だけをずらす変換 Qi(s;q,t)=qi+sδ kiQ^i(s;q,t) = q^i + s\,\delta^i_{\ k} は生成子 ζi=δ ki\zeta^i = \delta^i_{\ k} を持ち、LLqkq^k に依存しないので sLs=0=L/qk=0\partial_s L|_{s=0} = \partial L/\partial q^k = 0、つまり F=0F = 0 の厳密な対称性です。定理の公式は I=pkI = p_k を与え、命題と一致します。

flowchart LR
A["時間の並進"] --> A2["エネルギー関数 h"]
B["空間の並進"] --> B2["全運動量 P"]
C["空間の回転"] --> C2["全角運動量 J"]
D["ガリレイ変換"] --> D2["重心の等速直線運動"]
対称性と保存量の対応。左の変換に対して、右の量が解に沿って一定に保たれる。

NN 個の質点からなる系を考えます。質点 aa の位置を ra\boldsymbol{r}_a、質量を mam_a とし、ラグランジアンを

L=a=1Nma2r˙a2U(r1,,rN)L = \sum_{a=1}^{N} \frac{m_a}{2}\,|\dot{\boldsymbol{r}}_a|^2 - U(\boldsymbol{r}_1, \ldots, \boldsymbol{r}_N)

とします。

Example 4.3全運動量の保存

ポテンシャル UU が、すべての質点を同じだけ平行移動しても変わらないとします。すなわち任意のベクトル c\boldsymbol{c} について

U(r1+c,,rN+c)=U(r1,,rN)U(\boldsymbol{r}_1 + \boldsymbol{c}, \ldots, \boldsymbol{r}_N + \boldsymbol{c}) = U(\boldsymbol{r}_1, \ldots, \boldsymbol{r}_N)

が成り立つとします。相互作用が距離 rarb|\boldsymbol{r}_a - \boldsymbol{r}_b| だけで書ける系はこの条件を満たします。

単位ベクトル n\boldsymbol{n} を固定し、変換族 Ra(s)=ra+sn\boldsymbol{R}_a(s) = \boldsymbol{r}_a + s\,\boldsymbol{n} を取ります。生成子は ζa=n\boldsymbol{\zeta}_a = \boldsymbol{n}aa によらない定ベクトル)です。速度は R˙a=r˙a\dot{\boldsymbol{R}}_a = \dot{\boldsymbol{r}}_a で変わらないので運動エネルギーは不変、ポテンシャルも仮定より不変です。よって

ss=0L=0\frac{\partial}{\partial s}\bigg|_{s=0} L = 0

となり、F=0F = 0 の厳密な対称性です(Definition 3.2)。

一般化運動量は L/r˙a=mar˙a\partial L / \partial \dot{\boldsymbol{r}}_a = m_a \dot{\boldsymbol{r}}_a です。Theorem 4.1 の公式に代入すると

I=a=1Nmar˙an=(a=1Nmar˙a)n=PnI = \sum_{a=1}^{N} m_a \dot{\boldsymbol{r}}_a \cdot \boldsymbol{n} = \left( \sum_{a=1}^{N} m_a \dot{\boldsymbol{r}}_a \right)\cdot \boldsymbol{n} = \boldsymbol{P}\cdot\boldsymbol{n}

が保存します。n\boldsymbol{n} は任意に取れるので、Pex\boldsymbol{P}\cdot\boldsymbol{e}_xPey\boldsymbol{P}\cdot\boldsymbol{e}_yPez\boldsymbol{P}\cdot\boldsymbol{e}_z がそれぞれ保存し、結局ベクトル P=amar˙a\boldsymbol{P} = \sum_a m_a\dot{\boldsymbol{r}}_a の 3 成分すべてが保存します。

Example 4.4全角運動量の保存

同じ系で、今度は UU が原点まわりの回転で不変、すなわち任意の回転行列 RSO(3)R \in SO(3) について U(Rr1,,RrN)=U(r1,,rN)U(R\boldsymbol{r}_1, \ldots, R\boldsymbol{r}_N) = U(\boldsymbol{r}_1,\ldots,\boldsymbol{r}_N) とします。相互作用が rarb|\boldsymbol{r}_a - \boldsymbol{r}_b|ra|\boldsymbol{r}_a| だけで書ける系はこれを満たします。

単位ベクトル n\boldsymbol{n} を軸とし、角 ss の回転行列を R(sn)R(s\boldsymbol{n}) として、変換族 Ra(s)=R(sn)ra\boldsymbol{R}_a(s) = R(s\boldsymbol{n})\,\boldsymbol{r}_a を取ります。回転の生成子はよく知られた外積の形

ζa=ddss=0R(sn)ra=n×ra\boldsymbol{\zeta}_a = \frac{d}{ds}\bigg|_{s=0} R(s\boldsymbol{n})\,\boldsymbol{r}_a = \boldsymbol{n}\times\boldsymbol{r}_a

です。速度は R˙a(s)=R(sn)r˙a\dot{\boldsymbol{R}}_a(s) = R(s\boldsymbol{n})\dot{\boldsymbol{r}}_a であり、回転行列は長さを保つので R˙a(s)=r˙a|\dot{\boldsymbol{R}}_a(s)| = |\dot{\boldsymbol{r}}_a|、したがって運動エネルギーは ss によらず一定です。ポテンシャルも仮定より一定です。よってこれも F=0F = 0 の厳密な対称性です。

Theorem 4.1 より

I=amar˙a(n×ra)I = \sum_a m_a \dot{\boldsymbol{r}}_a \cdot (\boldsymbol{n}\times\boldsymbol{r}_a)

が保存します。スカラー三重積の巡回置換 a(b×c)=b(c×a)\boldsymbol{a}\cdot(\boldsymbol{b}\times\boldsymbol{c}) = \boldsymbol{b}\cdot(\boldsymbol{c}\times\boldsymbol{a})a=r˙a\boldsymbol{a} = \dot{\boldsymbol{r}}_ab=n\boldsymbol{b} = \boldsymbol{n}c=ra\boldsymbol{c} = \boldsymbol{r}_a に適用すると

r˙a(n×ra)=n(ra×r˙a)\dot{\boldsymbol{r}}_a\cdot(\boldsymbol{n}\times\boldsymbol{r}_a) = \boldsymbol{n}\cdot(\boldsymbol{r}_a\times\dot{\boldsymbol{r}}_a)

なので

I=nara×mar˙a=nJI = \boldsymbol{n}\cdot \sum_a \boldsymbol{r}_a \times m_a\dot{\boldsymbol{r}}_a = \boldsymbol{n}\cdot\boldsymbol{J}

です。n\boldsymbol{n} は任意なので、全角運動量 J=ara×mar˙a\boldsymbol{J} = \sum_a \boldsymbol{r}_a\times m_a\dot{\boldsymbol{r}}_a の 3 成分すべてが保存します。

Remark 4.5

対称性が部分的にしかなくても、その分だけの保存量が得られます。UUzz 軸まわりの回転でだけ不変(たとえば軸対称な外場の中の粒子)なら、保存するのは JzJ_z だけで、JxJ_xJyJ_y は一般に保存しません。対称性と保存量は一対一に対応します。

F=0F = 0 に限定すると取り逃す保存量があります。

Example 4.6一様重力中の鉛直並進

一様重力中の質点 L=m2(x˙2+y˙2+z˙2)mgzL = \dfrac{m}{2}(\dot x^2 + \dot y^2 + \dot z^2) - mgz を考えます。鉛直方向の並進 Z(s)=z+sZ(s) = z + sx,yx, y は動かさない)を取ると、生成子は ζ=(0,0,1)\zeta = (0,0,1) で、

ss=0L=mg\frac{\partial}{\partial s}\bigg|_{s=0} L = -mg

です。00 ではないので厳密な対称性ではありません。しかし mg-mg は定数なので、F(q,t)=mgtF(q,t) = -mgt と置けば dF/dt=mgdF/dt = -mg となり、Definition 3.2 の準対称性の条件を満たします。

pz=mz˙p_z = m\dot z なので Theorem 4.1 より

I=mz˙(mgt)=mz˙+mgtI = m\dot z - (-mgt) = m\dot z + mgt

が保存量です。実際に解 z(t)=z0+v0t12gt2z(t) = z_0 + v_0 t - \tfrac12 g t^2 で確かめると mz˙+mgt=m(v0gt)+mgt=mv0m\dot z + mgt = m(v_0 - gt) + mgt = mv_0 で、確かに定数です。これはエネルギーとも運動量とも異なる、独立な保存量です(内容としては「鉛直方向の加速度が g-g で一定」という情報を一つの式にまとめたものです)。F=0F = 0 に固執していたら、この保存量は見えませんでした。

5. 時間の並進とエネルギー保存

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ここまでの定理は時間を動かしませんでした。エネルギー保存則は時間の一様性から来るはずなので、時間も変換する形に拡張する必要があります。準備として、まずエネルギー関数を導入します。

Definition 5.1エネルギー関数(ヤコビ積分)

ラグランジアン L(q,q˙,t)L(q,\dot q,t) に対し

h(q,q˙,t)=i=1nq˙iLq˙i(q,q˙,t)    L(q,q˙,t)h(q, \dot q, t) = \sum_{i=1}^{n} \dot q^i\, \frac{\partial L}{\partial \dot q^i}(q,\dot q,t) \;-\; L(q, \dot q, t)

エネルギー関数(ヤコビ積分)といいます。

Proposition 5.2エネルギー関数の時間変化

オイラー–ラグランジュ方程式の任意の解 q(t)q(t) に沿って

ddth(q(t),q˙(t),t)=Lt(q(t),q˙(t),t)\frac{d}{dt}\,h\big(q(t),\dot q(t),t\big) = -\frac{\partial L}{\partial t}\big(q(t),\dot q(t),t\big)

が成り立つ。特に LLtt に陽に依存しない(L/t0\partial L/\partial t \equiv 0)ならば hh は保存量である。

Proof(Proposition 5.2)

pi=L/q˙ip_i = \partial L/\partial \dot q^i と書きます。解に沿って積の微分公式を使うと

dhdt=i(q¨ipi+q˙ip˙i)dLdt\frac{dh}{dt} = \sum_i \big( \ddot q^i p_i + \dot q^i \dot p_i \big) - \frac{dL}{dt}

です。一方 LL の全微分は連鎖律より

dLdt=iLqiq˙i+iLq˙iq¨i+Lt=iLqiq˙i+ipiq¨i+Lt\frac{dL}{dt} = \sum_i \frac{\partial L}{\partial q^i}\dot q^i + \sum_i \frac{\partial L}{\partial \dot q^i}\ddot q^i + \frac{\partial L}{\partial t} = \sum_i \frac{\partial L}{\partial q^i}\dot q^i + \sum_i p_i \ddot q^i + \frac{\partial L}{\partial t}

です。差を取ると ipiq¨i\sum_i p_i\ddot q^i の項が相殺して

dhdt=iq˙i(p˙iLqi)Lt\frac{dh}{dt} = \sum_i \dot q^i \left( \dot p_i - \frac{\partial L}{\partial q^i} \right) - \frac{\partial L}{\partial t}

となります。ここで解に沿ってはオイラー–ラグランジュ方程式より丸括弧の中が 00 なので、dh/dt=L/tdh/dt = -\partial L/\partial t を得ます。

この命題は単独でも使えますが、対称性の言葉で言い直しておくと全体の構造が見えます。そのために定理を拡張します。

Theorem 5.3ネーターの定理(時間変換を含む形)

L(q,q˙,t)L(q,\dot q,t)C2C^2 級とする。C2C^2 級の族 T(s;q,t)T(s;q,t)Qi(s;q,t)Q^i(s;q,t)T(0;q,t)=tT(0;q,t) = tQi(0;q,t)=qiQ^i(0;q,t) = q^i を満たすとし、生成子を

τ(q,t)=Ts(0;q,t),ζi(q,t)=Qis(0;q,t)\tau(q,t) = \frac{\partial T}{\partial s}(0;q,t), \qquad \zeta^i(q,t) = \frac{\partial Q^i}{\partial s}(0;q,t)

とする。さらに、ある C1C^1 級関数 F(q,t)F(q,t) が存在して、任意の C2C^2 級曲線 q()q(\cdot) について

ss=0[L ⁣(Q, dQ/dtdT/dt, T)dTdt]=ddtF(q(t),t)\frac{\partial}{\partial s}\bigg|_{s=0} \left[ L\!\left( Q,\ \frac{dQ/dt}{dT/dt},\ T \right) \frac{dT}{dt} \right] = \frac{d}{dt}F\big(q(t),t\big)

が成り立つとする(Q,TQ, T の引数は (s;q(t),t)(s; q(t), t)d/dtd/dt は曲線に沿う全微分)。このとき

I=i=1npiζi    hτ    F,pi=Lq˙i,h=iq˙ipiLI = \sum_{i=1}^{n} p_i\,\zeta^i \;-\; h\,\tau \;-\; F, \qquad p_i = \frac{\partial L}{\partial \dot q^i},\quad h = \sum_i \dot q^i p_i - L

は保存量である。

不変性の条件が奇妙に見えるかもしれませんが、これは「変換後の時刻で測った作用が変わらない」という条件を書き下したものです。変換後の作用を t~=T(s;q(t),t)\tilde t = T(s;q(t),t) で積分変数変換すると dt~=(dT/dt)dtd\tilde t = (dT/dt)\,dt となり、被積分関数が上の角括弧の中身になります。速度は dq~/dt~=(dQ/dt)/(dT/dt)d\tilde q/d\tilde t = (dQ/dt)/(dT/dt) です。

tqs τs ζもとの経路変換後の経路
変換の生成子。もとの経路(実線)上の点が、時間方向に s τ、座標方向に s ζ だけ動いて変換後の経路(破線)に乗る。
Proof(Theorem 5.3)

曲線 q()q(\cdot) を固定し、s=0s = 0 での値を使って各因子の ss 微分を計算します。s=0s=0 では Q=q(t)Q = q(t)T=tT = tdT/dt=1dT/dt = 1(dQ/dt)/(dT/dt)=q˙(t)(dQ/dt)/(dT/dt) = \dot q(t) です。δ\deltass=0\partial_s|_{s=0} を表すと、生成子の定義から

δQi=ζi,δT=τ,δ ⁣(dQidt)=dζidt,δ ⁣(dTdt)=dτdt\delta Q^i = \zeta^i, \qquad \delta T = \tau, \qquad \delta\!\left(\frac{dQ^i}{dt}\right) = \frac{d\zeta^i}{dt}, \qquad \delta\!\left(\frac{dT}{dt}\right) = \frac{d\tau}{dt}

です(Theorem 4.1 の証明と同じくシュワルツの定理で ss 微分と tt 微分を交換しました)。商の微分法より

δ ⁣(dQi/dtdT/dt)=(dζi/dt)1q˙i(dτ/dt)12=dζidtq˙idτdt\delta\!\left(\frac{dQ^i/dt}{dT/dt}\right) = \frac{(d\zeta^i/dt)\cdot 1 - \dot q^i (d\tau/dt)}{1^2} = \frac{d\zeta^i}{dt} - \dot q^i \frac{d\tau}{dt}

です。これらを使って角括弧全体を微分すると、積の微分法と連鎖律から

δ ⁣[LdTdt]=iLqiζi+iLq˙i(dζidtq˙idτdt)+Ltτ+Ldτdt\delta\!\left[ L \frac{dT}{dt} \right] = \sum_i \frac{\partial L}{\partial q^i}\zeta^i + \sum_i \frac{\partial L}{\partial \dot q^i}\left( \frac{d\zeta^i}{dt} - \dot q^i \frac{d\tau}{dt} \right) + \frac{\partial L}{\partial t}\tau + L\,\frac{d\tau}{dt}

となります。仮定よりこれは dF/dtdF/dt に等しく、これは任意の曲線についての恒等式です。

ここで曲線が解であると仮定します。オイラー–ラグランジュ方程式 L/qi=p˙i\partial L/\partial q^i = \dot p_i を使うと第 1 項と第 2 項の前半がまとまり、

ddt(ipiζi)(ipiq˙iL)dτdt+Ltτ=dFdt\frac{d}{dt}\left( \sum_i p_i \zeta^i \right) - \left( \sum_i p_i \dot q^i - L \right)\frac{d\tau}{dt} + \frac{\partial L}{\partial t}\,\tau = \frac{dF}{dt}

を得ます。丸括弧は Definition 5.1 のエネルギー関数 hh そのものです。さらに Proposition 5.2 より解に沿って dh/dt=L/tdh/dt = -\partial L/\partial t なので

ddt(hτ)=dhdtτ+hdτdt=Ltτ+hdτdt\frac{d}{dt}\big( h\,\tau \big) = \frac{dh}{dt}\tau + h \frac{d\tau}{dt} = -\frac{\partial L}{\partial t}\tau + h\frac{d\tau}{dt}

が成り立ちます。すなわち上の式の第 2 項と第 3 項の和は ddt(hτ)-\dfrac{d}{dt}(h\tau) に等しくなります。したがって

ddt(ipiζihτF)=0\frac{d}{dt}\left( \sum_i p_i \zeta^i - h\,\tau - F \right) = 0

となり、主張が示されました。

Corollary 5.4時間の一様性とエネルギー保存

L/t0\partial L/\partial t \equiv 0 ならば、時間並進 T(s;q,t)=t+sT(s;q,t) = t + sQi(s;q,t)=qiQ^i(s;q,t) = q^iTheorem 5.3 の意味で F=0F = 0 の対称性であり、対応する保存量はエネルギー関数 hh(の符号を変えたもの)である。

Proof(Corollary 5.4)

この変換では dT/dt=1dT/dt = 1dQi/dt=q˙idQ^i/dt = \dot q^i なので、角括弧の中身は L(q(t),q˙(t),t+s)L(q(t), \dot q(t), t+s) です。ss で微分して s=0s = 0 と置くと L/t\partial L/\partial t となり、仮定よりこれは 00 です。0=dF/dt0 = dF/dtF=0F = 0 で満たされるので、準対称性の条件(Theorem 5.3)が成り立ちます。生成子は τ=1\tau = 1ζi=0\zeta^i = 0 なので保存量は

I=0h10=hI = 0 - h\cdot 1 - 0 = -h

です。h-h が保存することと hh が保存することは同値なので、hh が保存量です。これは Proposition 5.2 の後半と一致します。

学部の講義では「時間並進対称性からエネルギー T+UT + U が保存する」と言われますが、正確には保存するのは hh であって T+UT + U ではありません。両者が一致するには条件が要ります。

Lemma 5.5オイラーの同次関数定理

関数 f(q˙1,,q˙n)f(\dot q^1, \ldots, \dot q^n)q˙\dot q について kk 次同次、すなわち任意の λ>0\lambda > 0 について f(λq˙)=λkf(q˙)f(\lambda \dot q) = \lambda^k f(\dot q) を満たし、かつ C1C^1 級ならば

i=1nq˙ifq˙i(q˙)=kf(q˙)\sum_{i=1}^{n} \dot q^i \frac{\partial f}{\partial \dot q^i}(\dot q) = k\, f(\dot q)

が成り立つ。

Proof(Lemma 5.5)

f(λq˙)=λkf(q˙)f(\lambda\dot q) = \lambda^k f(\dot q) の両辺を λ\lambda で微分します。左辺は連鎖律より iq˙ifq˙i(λq˙)\sum_i \dot q^i \dfrac{\partial f}{\partial \dot q^i}(\lambda\dot q)、右辺は kλk1f(q˙)k\lambda^{k-1}f(\dot q) です。λ=1\lambda = 1 と置くと主張の式を得ます。

Proposition 5.6エネルギー関数が力学的エネルギーになる条件

ラグランジアンが L=TUL = T - U の形に分解され、次の 2 条件を満たすとする。

  1. U=U(q,t)U = U(q, t) は速度 q˙\dot q に依存しない。
  2. T=T(q,q˙,t)T = T(q, \dot q, t)q˙\dot q について 2 次同次である。すなわち T(q,λq˙,t)=λ2T(q,q˙,t)T(q, \lambda\dot q, t) = \lambda^2 T(q,\dot q,t)

このとき h=T+Uh = T + U である。

Proof(Proposition 5.6)

条件 1 より L/q˙i=T/q˙i\partial L/\partial \dot q^i = \partial T/\partial \dot q^i です。条件 2 と Lemma 5.5k=2k = 2qqtt は固定して q˙\dot q の関数とみる)より

iq˙iTq˙i=2T\sum_i \dot q^i \frac{\partial T}{\partial \dot q^i} = 2T

です。したがって Definition 5.1 より

h=iq˙iLq˙iL=2T(TU)=T+Uh = \sum_i \dot q^i \frac{\partial L}{\partial \dot q^i} - L = 2T - (T - U) = T + U

となります。

条件 2 は無条件に成り立つものではありません。一般化座標からデカルト座標への変換 ra=ra(q)\boldsymbol{r}_a = \boldsymbol{r}_a(q) が時間に陽に依存しない(スクレロノミックな)場合には、r˙a=iraqiq˙i\dot{\boldsymbol{r}}_a = \sum_i \dfrac{\partial \boldsymbol{r}_a}{\partial q^i}\dot q^i なので

T=ama2r˙a2=12i,jaij(q)q˙iq˙jT = \sum_a \frac{m_a}{2}|\dot{\boldsymbol{r}}_a|^2 = \frac{1}{2}\sum_{i,j} a_{ij}(q)\,\dot q^i \dot q^j

となり、確かに 2 次同次です。しかし変換が時間に陽に依存する(レオノミックな)場合には q˙\dot q の 1 次項や 0 次項が現れ、条件 2 が壊れます。次がその典型例です。

Example 5.7回転する棒の上を滑るビーズ:h は保存するが T+U は保存しない

水平面内で原点まわりに一定角速度 ω\omega で回転している真っ直ぐな棒を考えます。棒の上を質量 mm のビーズが摩擦なく滑ります。棒は外部のモーターで駆動されており、ω\omega は何が起きても一定に保たれるものとします。

ビーズの原点からの距離を rr とすると、ラボ系での位置は r=(rcosωt, rsinωt, 0)\boldsymbol{r} = (r\cos\omega t,\ r\sin\omega t,\ 0) です。これは tt に陽に依存する(レオノミックな)変換です。速度を計算すると

r˙=(r˙cosωtrωsinωt, r˙sinωt+rωcosωt, 0)\dot{\boldsymbol{r}} = (\dot r\cos\omega t - r\omega\sin\omega t,\ \dot r \sin\omega t + r\omega\cos\omega t,\ 0)

なので、三角関数の基本関係を使って

r˙2=r˙2+r2ω2|\dot{\boldsymbol{r}}|^2 = \dot r^2 + r^2\omega^2

です。重力は水平面に垂直で仕事をしないので、ポテンシャルは 00 と取れます。よって

L=m2(r˙2+r2ω2).L = \frac{m}{2}\big( \dot r^2 + r^2\omega^2 \big).

LLtt に陽に依存しないので、Corollary 5.4 より hh は保存します。実際に計算すると pr=mr˙p_r = m\dot r なので

h=r˙(mr˙)m2(r˙2+r2ω2)=m2r˙2m2ω2r2h = \dot r\,(m\dot r) - \frac{m}{2}(\dot r^2 + r^2\omega^2) = \frac{m}{2}\dot r^2 - \frac{m}{2}\omega^2 r^2

です。一方、運動エネルギーは T=m2(r˙2+r2ω2)T = \dfrac{m}{2}(\dot r^2 + r^2\omega^2)、ポテンシャルは U=0U = 0 ですから

h=Tmω2r2T+U.h = T - m\omega^2 r^2 \ne T + U .

ずれの原因は、TTr˙\dot r について 2 次同次でないこと(r2ω2r^2\omega^2 という 0 次の項がある)です。Proposition 5.6 の条件 2 が破れています。

差が本当に効いていることを確かめます。オイラー–ラグランジュ方程式は

ddt(mr˙)=Lr=mω2rr¨=ω2r\frac{d}{dt}(m\dot r) = \frac{\partial L}{\partial r} = m\omega^2 r \quad\Longrightarrow\quad \ddot r = \omega^2 r

で、一般解は r(t)=Acoshωt+Bsinhωtr(t) = A\cosh\omega t + B\sinh\omega t です。簡単のため A>0A > 0B=0B = 0 の解を取ると r˙=Aωsinhωt\dot r = A\omega\sinh\omega t なので

h=m2A2ω2sinh2ωtm2ω2A2cosh2ωt=m2A2ω2h = \frac{m}{2}A^2\omega^2\sinh^2\omega t - \frac{m}{2}\omega^2 A^2\cosh^2\omega t = -\frac{m}{2}A^2\omega^2

(双曲線関数の関係 cosh2xsinh2x=1\cosh^2 x - \sinh^2 x = 1 を使いました)で、確かに定数です。ところが

T=m2A2ω2(sinh2ωt+cosh2ωt)=m2A2ω2cosh2ωtT = \frac{m}{2}A^2\omega^2\big(\sinh^2\omega t + \cosh^2\omega t\big) = \frac{m}{2}A^2\omega^2\cosh 2\omega t

は時間とともに指数関数的に増大します。ビーズは外へ飛ばされながら加速していきます。増えたエネルギーはモーターが供給しています。棒の回転を一定に保つために外部が仕事をしているので、系だけを見れば力学的エネルギーは保存しないのが当然です。それでも hh という組み合わせは保存する、というのがこの例の教訓です。

ネーターの定理は古典力学の技法にとどまりません。この節では、この原理がどこまで届くかを短く見ておきます。

Remark 6.1

定理の証明では ss=0\partial_s|_{s=0} という微分を取りました。したがって変換は連続パラメータを持たなければなりません。空間反転 rr\boldsymbol{r}\mapsto -\boldsymbol{r} や時間反転 ttt\mapsto -t のような離散対称性は、恒等変換から連続的につながっていないので、この定理からは保存量を生みません。離散対称性は古典力学では解の対称性(ある解を写すと別の解になる)という形でしか効きませんが、量子力学では状態にパリティという保存する量子数を与えます。古典と量子で離散対称性の役割が異なるのはこのためです。

Remark 6.2

対称性でなくても、作用を定数倍するだけの変換は運動方程式を保ちます。ケプラー問題 L=m2r˙2+krL = \dfrac{m}{2}|\dot{\boldsymbol{r}}|^2 + \dfrac{k}{|\boldsymbol{r}|}rλr\boldsymbol{r}\mapsto \lambda\boldsymbol{r}tλ3/2tt\mapsto\lambda^{3/2}t と取ると、r˙λ/λ3/2=λ1/2|\dot{\boldsymbol{r}}|\mapsto \lambda/\lambda^{3/2} = \lambda^{-1/2} 倍なので運動エネルギーは λ1\lambda^{-1} 倍、ポテンシャル項も λ1\lambda^{-1} 倍で、Lλ1LL\mapsto \lambda^{-1}Ldtλ3/2dtdt\mapsto\lambda^{3/2}dt より作用は λ1/2\lambda^{1/2} 倍になります。作用が定数倍されるだけなので変分の零点は変わらず、解は解に写ります。ただし作用は不変ではないので保存量は出ません。代わりに得られるのは軌道どうしの関係、すなわち「軌道の大きさを λ\lambda 倍すると周期が λ3/2\lambda^{3/2} 倍になる」というケプラーの第三法則 T2a3T^2 \propto a^3ケプラーの第三法則(Theorem 6.1)[Planetary Motion and Central Forces])です。対称性が保存量を生むとは限らず、スケーリング則を生むこともあります。

Remark 6.3

逆向きの問い、「保存量があれば対称性があるか」も自然です。ハミルトン形式では答えははっきりしています。保存量 GG は、ポアソン括弧 {,G}\{\cdot, G\} を通じて相空間上の一径数変換群を生成し、それがハミルトニアンの対称性になります。「GG が保存量であること」と「GG がハミルトニアンとポアソン可換であること」が同値になるのがその出発点です(保存量の判定条件(Corollary 6.2)[正準変換とポアソン括弧])。詳しくは ハミルトン形式の力学正準変換とポアソン括弧 を参照してください。

その際に現れる対称性が、この記事で扱った点変換(座標だけを写す変換)とは限らないことに注意してください。ケプラー問題のラプラス–ルンゲ–レンツベクトルは保存量ですが、それが生成する変換は位置と運動量を混ぜる変換であり、配位空間の変換としては書けません。こうしたものを隠れた対称性と呼びます。ラプラス–ルンゲ–レンツベクトルの保存の証明と意味については ラプラス–ルンゲ–レンツベクトルの保存(Proposition 7.1)[Planetary Motion and Central Forces] および 惑星の運動と中心力 を参照してください。

場の理論へ。 有限自由度の力学から連続体・場へ移ると、ネーターの定理は保存量ではなく保存流を与えます。「保存する量が空間の各点に分布していて、局所的な連続の方程式 tρ+j=0\partial_t \rho + \nabla\cdot \boldsymbol{j} = 0 に従う」という形になり、保存の内容が「総量が変わらない」から「どこかで減ったなら必ず隣へ流れた」へと強くなります。電荷保存則はこの形で現れます。導出は Appendix にまとめました。

素粒子物理の標準模型は、まさにこの原理の上に構築されています。どの粒子がどの力を感じるかは、ラグランジアンにどんな対称性を課すかでほぼ決まります。対称性を先に決め、ラグランジアンを後から作る。これは 20 世紀後半の理論物理の標準的な手順になりました。ネーターの定理は、その手順が意味を持つ理由を与えています。

Exercise 7.1

平面上を運動する質量 mm の質点が、原点からの距離だけで決まるポテンシャル U(r)U(r) の中にあるとします。極座標でのラグランジアンは

L=m2(r˙2+r2θ˙2)U(r)L = \frac{m}{2}\big(\dot r^2 + r^2\dot\theta^2\big) - U(r)

です。

  1. 循環座標を見つけ、対応する保存量を書き、それが角運動量に一致することを確かめてください。
  2. hh を計算し、この場合は h=T+Uh = T + U となることを Proposition 5.6 で確認してください。
Solution

1. LLθ\theta は現れず θ˙\dot\theta だけが現れるので L/θ=0\partial L/\partial\theta = 0、すなわち θ\theta は循環座標です(Definition 2.2)。Proposition 2.3 より

pθ=Lθ˙=mr2θ˙p_\theta = \frac{\partial L}{\partial \dot\theta} = m r^2\dot\theta

が保存します。デカルト座標で x=rcosθx = r\cos\thetay=rsinθy = r\sin\theta と書くと

xy˙yx˙=rcosθ(r˙sinθ+rθ˙cosθ)rsinθ(r˙cosθrθ˙sinθ)=r2θ˙x\dot y - y\dot x = r\cos\theta\,(\dot r\sin\theta + r\dot\theta\cos\theta) - r\sin\theta\,(\dot r\cos\theta - r\dot\theta\sin\theta) = r^2\dot\theta

なので、pθ=m(xy˙yx˙)=Jzp_\theta = m(x\dot y - y\dot x) = J_z です。これは Example 4.4zz 軸まわりの回転から得た角運動量に他なりません。

2. pr=mr˙p_r = m\dot rpθ=mr2θ˙p_\theta = mr^2\dot\theta なので

h=r˙(mr˙)+θ˙(mr2θ˙)[m2(r˙2+r2θ˙2)U(r)]=m2(r˙2+r2θ˙2)+U(r)h = \dot r (m\dot r) + \dot\theta (mr^2\dot\theta) - \left[ \frac{m}{2}(\dot r^2 + r^2\dot\theta^2) - U(r) \right] = \frac{m}{2}\big(\dot r^2 + r^2\dot\theta^2\big) + U(r)

となり、h=T+Uh = T + U です。Proposition 5.6 で確認すると、UU は速度を含まないので条件 1 が成立し、TT(r˙,θ˙)(\dot r, \dot\theta)λ\lambda 倍すると λ2\lambda^2 倍になるので条件 2 も成立します。極座標への変換 x=rcosθx = r\cos\thetatt を含まない(スクレロノミック)ことが効いています。Example 5.7 との違いはここです。

Exercise 7.2標準

相互作用が相対位置だけで決まる NN 質点系

L=a=1Nma2r˙a2U({rarb})L = \sum_{a=1}^{N}\frac{m_a}{2}|\dot{\boldsymbol{r}}_a|^2 - U\big(\{\boldsymbol{r}_a - \boldsymbol{r}_b\}\big)

に、ガリレイ変換の族 Ra(s)=ra+stn\boldsymbol{R}_a(s) = \boldsymbol{r}_a + s\,t\,\boldsymbol{n}n\boldsymbol{n} は固定した単位ベクトル)を作用させます。

  1. これが厳密な対称性ではなく準対称性であることを示し、FF を求めてください。
  2. 保存量を求め、その物理的意味を述べてください。
Solution

1. ポテンシャルは相対位置 rarb\boldsymbol{r}_a - \boldsymbol{r}_b だけの関数で、すべての質点が同じ stns\,t\,\boldsymbol{n} だけずれるので相対位置は変わらず、UUss によりません。速度は R˙a=r˙a+sn\dot{\boldsymbol{R}}_a = \dot{\boldsymbol{r}}_a + s\,\boldsymbol{n} なので

ama2r˙a+sn2=ama2(r˙a2+2sr˙an+s2)\sum_a \frac{m_a}{2}|\dot{\boldsymbol{r}}_a + s\boldsymbol{n}|^2 = \sum_a \frac{m_a}{2}\Big( |\dot{\boldsymbol{r}}_a|^2 + 2s\,\dot{\boldsymbol{r}}_a\cdot\boldsymbol{n} + s^2 \Big)

です(n=1|\boldsymbol{n}| = 1 を使いました)。ss で微分して s=0s = 0 と置くと

ss=0L=amar˙an0\frac{\partial}{\partial s}\bigg|_{s=0} L = \sum_a m_a \dot{\boldsymbol{r}}_a\cdot\boldsymbol{n} \ne 0

なので厳密な対称性ではありません。しかしこれは全微分の形に書けます。全質量を M=amaM = \sum_a m_a、重心を Rcm=1Mamara\boldsymbol{R}_{\mathrm{cm}} = \dfrac{1}{M}\sum_a m_a\boldsymbol{r}_a とすると

amar˙an=ddt(amaran)=ddt(MRcmn)\sum_a m_a\dot{\boldsymbol{r}}_a\cdot\boldsymbol{n} = \frac{d}{dt}\left( \sum_a m_a\boldsymbol{r}_a\cdot\boldsymbol{n} \right) = \frac{d}{dt}\big( M\boldsymbol{R}_{\mathrm{cm}}\cdot\boldsymbol{n} \big)

なので、F=MRcmnF = M\boldsymbol{R}_{\mathrm{cm}}\cdot\boldsymbol{n} と取れば Definition 3.2 の準対称性の条件が満たされます。

2. 生成子は ζa=tn\boldsymbol{\zeta}_a = t\,\boldsymbol{n}、一般化運動量は mar˙am_a\dot{\boldsymbol{r}}_a なので Theorem 4.1 より

I=amar˙a(tn)MRcmn=(tPMRcm)nI = \sum_a m_a\dot{\boldsymbol{r}}_a\cdot(t\boldsymbol{n}) - M\boldsymbol{R}_{\mathrm{cm}}\cdot\boldsymbol{n} = \big( t\,\boldsymbol{P} - M\boldsymbol{R}_{\mathrm{cm}} \big)\cdot\boldsymbol{n}

が保存します。n\boldsymbol{n} は任意なのでベクトル tPMRcmt\boldsymbol{P} - M\boldsymbol{R}_{\mathrm{cm}} の 3 成分すべてが保存します。Example 4.3 より P\boldsymbol{P} も保存するので、Rcm(t)=Rcm(0)+(P/M)t\boldsymbol{R}_{\mathrm{cm}}(t) = \boldsymbol{R}_{\mathrm{cm}}(0) + (\boldsymbol{P}/M)\,t となり、これは「重心が等速直線運動する」という主張です。

なお F=0F = 0 に限定していたらこの保存量は得られませんでした。Example 4.6 と同じく、準対称性まで許す Definition 3.2 の定式化が必要になる例です。

Exercise 7.3標準

一様磁場 B=Bez\boldsymbol{B} = B\boldsymbol{e}_zBB は定数)の中を運動する電荷 ee、質量 mm の荷電粒子のラグランジアンは、ベクトルポテンシャルを A(r)=12B×r\boldsymbol{A}(\boldsymbol{r}) = \tfrac12\boldsymbol{B}\times\boldsymbol{r}、スカラーポテンシャルを 00 に取ると

L=m2r˙2+er˙A(r)L = \frac{m}{2}|\dot{\boldsymbol{r}}|^2 + e\,\dot{\boldsymbol{r}}\cdot\boldsymbol{A}(\boldsymbol{r})

と書けます。zz 軸まわりの回転がこの LL の対称性であることを確かめ、対応する保存量を x,y,x˙,y˙x, y, \dot x, \dot y で書き下してください。

Solution

zz 軸まわりの角 ss の回転を R(s)R(s) とします。B\boldsymbol{B}zz 軸方向なので R(s)B=BR(s)\boldsymbol{B} = \boldsymbol{B} です。回転行列 RR は行列式が 11 の直交行列なので外積と可換、すなわち R(u×v)=(Ru)×(Rv)R(\boldsymbol{u}\times\boldsymbol{v}) = (R\boldsymbol{u})\times(R\boldsymbol{v}) が成り立ちます。よって

A(Rr)=12B×(Rr)=12(RB)×(Rr)=R(12B×r)=RA(r)\boldsymbol{A}(R\boldsymbol{r}) = \tfrac12\,\boldsymbol{B}\times (R\boldsymbol{r}) = \tfrac12\,(R\boldsymbol{B})\times(R\boldsymbol{r}) = R\big( \tfrac12 \boldsymbol{B}\times\boldsymbol{r} \big) = R\,\boldsymbol{A}(\boldsymbol{r})

です。したがって変換後の相互作用項は、RR が内積を保つことから

e(Rr˙)A(Rr)=e(Rr˙)(RA(r))=er˙A(r)e\,(R\dot{\boldsymbol{r}})\cdot\boldsymbol{A}(R\boldsymbol{r}) = e\,(R\dot{\boldsymbol{r}})\cdot(R\boldsymbol{A}(\boldsymbol{r})) = e\,\dot{\boldsymbol{r}}\cdot\boldsymbol{A}(\boldsymbol{r})

で不変です。運動エネルギーも Rr˙=r˙|R\dot{\boldsymbol{r}}| = |\dot{\boldsymbol{r}}| より不変なので、F=0F = 0 の厳密な対称性です。

生成子は Example 4.4 と同じく ζ=ez×r\boldsymbol{\zeta} = \boldsymbol{e}_z\times\boldsymbol{r} です。一般化運動量は

p=Lr˙=mr˙+eA\boldsymbol{p} = \frac{\partial L}{\partial \dot{\boldsymbol{r}}} = m\dot{\boldsymbol{r}} + e\boldsymbol{A}

(これは mr˙m\dot{\boldsymbol{r}} ではないことに注意してください)なので、Theorem 4.1 より

I=p(ez×r)=ez(r×p)I = \boldsymbol{p}\cdot(\boldsymbol{e}_z\times\boldsymbol{r}) = \boldsymbol{e}_z\cdot(\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{p})

が保存します(スカラー三重積の巡回置換を使いました)。r×mr˙\boldsymbol{r}\times m\dot{\boldsymbol{r}}zz 成分は m(xy˙yx˙)m(x\dot y - y\dot x) です。もう一方は、ベクトル三重積の公式 u×(v×w)=v(uw)w(uv)\boldsymbol{u}\times(\boldsymbol{v}\times\boldsymbol{w}) = \boldsymbol{v}(\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{w}) - \boldsymbol{w}(\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{v}) を使って

r×eA=eB2r×(ez×r)=eB2(ezr2r(rez))\boldsymbol{r}\times e\boldsymbol{A} = \frac{eB}{2}\,\boldsymbol{r}\times(\boldsymbol{e}_z\times\boldsymbol{r}) = \frac{eB}{2}\Big( \boldsymbol{e}_z |\boldsymbol{r}|^2 - \boldsymbol{r}\,(\boldsymbol{r}\cdot\boldsymbol{e}_z) \Big)

なので、その zz 成分は eB2((x2+y2+z2)z2)=eB2(x2+y2)\dfrac{eB}{2}\big( (x^2+y^2+z^2) - z^2 \big) = \dfrac{eB}{2}(x^2+y^2) です。まとめると

I=m(xy˙yx˙)+eB2(x2+y2)I = m(x\dot y - y\dot x) + \frac{eB}{2}\big( x^2 + y^2 \big)

が保存します。力学的角運動量 m(xy˙yx˙)m(x\dot y - y\dot x) だけでは保存しない点が重要です。実際、磁場中の粒子は xyxy 平面内で円運動しますが、円の中心が原点になければ原点まわりの力学的角運動量は振動します。それを補正する項が第 2 項です。

Exercise 7.4

G(q,t)G(q,t)C2C^2 級の任意の関数とし、L=L+dGdtL' = L + \dfrac{dG}{dt} と置きます(ここで dGdt=iGqiq˙i+Gt\dfrac{dG}{dt} = \sum_i \dfrac{\partial G}{\partial q^i}\dot q^i + \dfrac{\partial G}{\partial t} です)。LLLL' は同じオイラー–ラグランジュ方程式を与えることが知られています(全微分項による不定性(Proposition 4.4)[Lagrangian Mechanics])。いま、時間を変えない一径数変換族 Q(s;q,t)Q(s;q,t) が生成子 ζ\zeta と関数 FF とともに LL の準対称性であるとします。

  1. 同じ変換族が LL' の準対称性であることを示し、対応する FF' を求めてください。
  2. LL から作ったネーター保存量と LL' から作ったネーター保存量が一致することを示してください。
Solution

1. Definition 3.2 の左辺は LL について線形なので、LL' に対する ss=0\partial_s|_{s=0}LL の分と dG/dtdG/dt の分の和になります。dG/dtdG/dt の分を計算します。変換後の GG の値は G(Q(s;q(t),t),t)G(Q(s;q(t),t), t) であり、変換された曲線に沿ったその全微分の ss 微分は、Theorem 4.1 の証明と同じくシュワルツの定理で ss 微分と tt 微分を交換して

ss=0ddtG(Q(s;q(t),t),t)=ddt(ss=0G(Q(s;q(t),t),t))=ddt(iGqiζi)\frac{\partial}{\partial s}\bigg|_{s=0}\frac{d}{dt}G\big(Q(s;q(t),t),t\big) = \frac{d}{dt}\left( \frac{\partial}{\partial s}\bigg|_{s=0} G\big(Q(s;q(t),t),t\big) \right) = \frac{d}{dt}\left( \sum_i \frac{\partial G}{\partial q^i}\zeta^i \right)

となります。したがって

ss=0L=dFdt+ddt(iGqiζi)=ddt(F+iGqiζi)\frac{\partial}{\partial s}\bigg|_{s=0} L' = \frac{dF}{dt} + \frac{d}{dt}\left( \sum_i \frac{\partial G}{\partial q^i}\zeta^i \right) = \frac{d}{dt}\left( F + \sum_i \frac{\partial G}{\partial q^i}\zeta^i \right)

なので、LL' もこの変換族について準対称性であり

F=F+iGqiζiF' = F + \sum_i \frac{\partial G}{\partial q^i}\zeta^i

と取れます。

2. LL' の一般化運動量は

pi=Lq˙i=Lq˙i+q˙i(jGqjq˙j+Gt)=pi+Gqip'_i = \frac{\partial L'}{\partial \dot q^i} = \frac{\partial L}{\partial \dot q^i} + \frac{\partial}{\partial \dot q^i}\left( \sum_j \frac{\partial G}{\partial q^j}\dot q^j + \frac{\partial G}{\partial t} \right) = p_i + \frac{\partial G}{\partial q^i}

です(GGq˙\dot q を含まないので G/qj\partial G/\partial q^jG/t\partial G/\partial tq˙\dot q に依存しません)。よって Theorem 4.1 の公式より

I=ipiζiF=i(pi+Gqi)ζiFiGqiζi=ipiζiF=II' = \sum_i p'_i \zeta^i - F' = \sum_i \left( p_i + \frac{\partial G}{\partial q^i} \right)\zeta^i - F - \sum_i \frac{\partial G}{\partial q^i}\zeta^i = \sum_i p_i \zeta^i - F = I

となり、両者は一致します。

つまりネーター保存量は、ラグランジアンの完全微分だけの不定性に依存しません。物理的に意味のある量であるためにはこの性質が必要であり、それが成り立っているわけです。なお時間変換 τ\tau を含む一般の場合(Theorem 5.3)にも同じ結論が成り立ちます。その場合は h=hG/th' = h - \partial G/\partial t となり、F=F+i(G/qi)ζi+(G/t)τF' = F + \sum_i (\partial G/\partial q^i)\zeta^i + (\partial G/\partial t)\tau となって、やはり I=II' = I が示せます。

  • E. Noether, “Invariante Variationsprobleme”, Nachrichten von der Gesellschaft der Wissenschaften zu Göttingen, Mathematisch-Physikalische Klasse (1918), 235–257. 英訳は M. A. Tavel によるものが arXiv:physics/0503066 で読めます。原論文。第一定理と第二定理が区別して述べられています。
  • L. D. ランダウ・E. M. リフシッツ『力学(増訂第 3 版)』東京図書 — 第 1 章・第 2 章。対称性から保存則を導く筋道を、最短の記述で通しています。エネルギー・運動量・角運動量の扱いはこの記事の §4・§5 に対応します。
  • H. Goldstein, C. Poole, J. Safko, Classical Mechanics, 3rd ed., Addison-Wesley, 2002 — 第 2 章(保存則と対称性)、第 13 章(連続体・場に対するネーターの定理)。準対称性やヤコビ積分の扱いが丁寧です。
  • V. I. Arnold, Mathematical Methods of Classical Mechanics, 2nd ed., Springer, 1989 — 第 4 章。ネーターの定理を多様体上の変分問題として、仮定を明示した形で定式化しています。
  • Y. Kosmann-Schwarzbach, The Noether Theorems: Invariance and Conservation Laws in the Twentieth Century, Springer, 2011. 原論文の英訳と、成立の歴史的背景・その後の受容の詳細な検討。

Appendix: 場の理論におけるネーターの定理

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設定。 有限個の座標 qi(t)q^i(t) の代わりに、時空の各点で値を取る場 ϕ(x)\phi(x)x=(t,x)x = (t, \boldsymbol{x}))を考えます。ラグランジアン密度 L(ϕ,μϕ)\mathcal{L}(\phi, \partial_\mu\phi) に対して作用は S=Ld4xS = \displaystyle\int \mathcal{L}\, d^4x で、端点固定の変分から場のオイラー–ラグランジュ方程式

μ ⁣(L(μϕ))=Lϕ\partial_\mu\!\left( \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\phi)} \right) = \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}

が得られます(μ\mu について和を取ります)。有限自由度の場合との対応は、添字 ii が連続変数 x\boldsymbol{x} に、d/dtd/dtμ\partial_\mu に置き換わったものです。

内部対称性と保存流。 複素スカラー場 ϕ\phi について L=μϕˉμϕm2ϕˉϕ\mathcal{L} = \partial_\mu\bar\phi\,\partial^\mu\phi - m^2\bar\phi\phi を取ります。位相変換の族 ϕeisϕ\phi \mapsto e^{is}\phiϕˉeisϕˉ\bar\phi\mapsto e^{-is}\bar\phi を考えると、L\mathcal{L} の各項は ϕˉ\bar\phiϕ\phi を 1 つずつ含むので位相因子が打ち消し合い、L\mathcal{L}ss によらず不変です。生成子は δϕ=iϕ\delta\phi = i\phiδϕˉ=iϕˉ\delta\bar\phi = -i\bar\phi です。

不変性を ss で微分すると

0=Lϕδϕ+L(μϕ)μ(δϕ)+Lϕˉδϕˉ+L(μϕˉ)μ(δϕˉ)0 = \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\phi}\delta\phi + \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\phi)}\partial_\mu(\delta\phi) + \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial\bar\phi}\delta\bar\phi + \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\bar\phi)}\partial_\mu(\delta\bar\phi)

です。ここで場の方程式を使って L/ϕ\partial\mathcal{L}/\partial\phiμ(L/(μϕ))\partial_\mu(\partial\mathcal{L}/\partial(\partial_\mu\phi)) で置き換えると、有限自由度の場合とまったく同じ積の微分公式により

0=μjμ,jμ=L(μϕ)δϕ+L(μϕˉ)δϕˉ0 = \partial_\mu j^\mu, \qquad j^\mu = \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\phi)}\,\delta\phi + \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\bar\phi)}\,\delta\bar\phi

を得ます。この L\mathcal{L} では L/(μϕ)=μϕˉ\partial\mathcal{L}/\partial(\partial_\mu\phi) = \partial^\mu\bar\phi なので

jμ=i(ϕμϕˉϕˉμϕ)j^\mu = i\big( \phi\,\partial^\mu\bar\phi - \bar\phi\,\partial^\mu\phi \big)

です。μjμ=0\partial_\mu j^\mu = 0 を成分で書くと tj0+j=0\partial_t j^0 + \nabla\cdot\boldsymbol{j} = 0、すなわち連続の方程式です。

保存量への還元。 空間全体で積分し、場が無限遠で十分速く減衰するとすると、ガウスの発散定理より

ddtj0d3x=jd3x=0\frac{d}{dt}\int j^0\, d^3x = -\int \nabla\cdot\boldsymbol{j}\, d^3x = 0

となり、Q=j0d3xQ = \displaystyle\int j^0\,d^3x が保存します。これが電荷です。有限自由度の場合の「保存量が一つ」に対応するのは、場の理論では「保存流が一本」であり、そこから積分して保存電荷が出ます。局所的な連続の方程式のほうが情報が多く、「総量は変わらないが、離れた 2 点で同時に消えたり現れたりする」ことを禁じています。

時空並進 xμxμ+saμx^\mu \mapsto x^\mu + s\,a^\mu に対して同じ手順を踏むと、保存流はエネルギー・運動量テンソル TμνT^{\mu\nu} になり、μTμν=0\partial_\mu T^{\mu\nu} = 0 が得られます。その ν=0\nu = 0 成分の空間積分が全エネルギー、ν=i\nu = i 成分の空間積分が全運動量です。Corollary 5.4Example 4.3 の場への一般化がこれにあたります。

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