大問2題で、2問すべてが必答です(試験時間は60分)。第1問は前半が θ に依存する2次実対称行列で、固有値が cosθ と sinθ という簡単な形になることを見抜けば、以降は Cayley–Hamilton の定理と対角化を使い回すだけで最後まで到達します。後半は固有値が非負な実対称行列に対するトレース不等式で、λi≤TrX という一行の観察が証明と等号条件の両方を同時に片付けます。第2問は2準位系のシュレーディンガー方程式と同じ形の連立1階常微分方程式で、係数行列がエルミートであることによるノルム保存、対角成分を位相に繰り込む変換、そして最後にローレンツ型の積分を留数で評価する構成です。
第1問(iii) で行列多項式が A−I に潰れることに気づくか、第2問設問4で係数行列が時間に依らない行列に比例するため時間順序積が単純な指数関数に落ちることに気づくか、この2点が分かれ目になります。
| 問題 | 分野 | 主題 |
|---|
| 第1問 | 線形代数 | 2次実対称行列の固有値と行列多項式、半正定値行列のトレース不等式 |
| 第2問 | 微分方程式・複素解析 | 2成分連立1階常微分方程式と遷移確率 |
設問1では、実変数 θ(範囲は 0≤θ≤π/2)に依存する2次実対称行列
A=41(cosθ+3sinθ−3cosθ+3sinθ−3cosθ+3sinθ3cosθ+sinθ)
を扱います。固有値を求め、f(θ)=(TrA)3−Tr(A3) の最大最小を出し、行列多項式
B=A4−A2+A+(cos2θsin2θ−1)I
が特異になる θ を決め、最後に B−1 を A の1次式として書きます。I は2次単位行列です。
設問2では、N 次実対称行列 X の固有値 λi (i=1,…,N) がすべて非負であるとして、(TrX)n≥Tr(Xn) とその等号条件を調べます。
以下、第1問を通して c=cosθ、s=sinθ と略記します。範囲 0≤θ≤π/2 では c≥0、s≥0 です。
(i) 2次行列の固有値はトレースと行列式で決まるので、その2つを計算します。
TrA=41{(c+3s)+(3c+s)}=44c+4s=c+s.
行列式は、非対角成分が 43(s−c) であることに注意して
16detA=(c+3s)(3c+s)−3(s−c)2=(3c2+10cs+3s2)−3(1−2cs)=(3+10cs)−(3−6cs)=16cs
となり、detA=cs です。ここで c2+s2=1 を使いました。したがって固有多項式は
λ2−(c+s)λ+cs=(λ−c)(λ−s)
と因数分解でき、答えは λ=cosθ と λ=sinθ の2つです。
固有ベクトルが θ に依存しないことも確認しておきます。
P=41(1−3−33),Q=41(3331)
と置くと A=cP+sQ で、直接計算すると P2=P、Q2=Q、PQ=QP=O、P+Q=I が成り立ちます。すなわち P,Q は互いに直交する1次元射影で、P は単位ベクトル u=21(1,−3)T、Q は w=21(3,1)T への直交射影です(u⋅w=0、∣u∣=∣w∣=1)。よって
Au=cosθu,Aw=sinθw
であり、固有ベクトルは θ によらず u,w に固定されています。これは以降の設問でそのまま使えます。
(ii) A の固有値が c,s なので A3 の固有値は c3,s3 で、Tr(A3)=c3+s3 です。したがって
f(θ)=(c+s)3−(c3+s3)=3c2s+3cs2=3cs(c+s).
v=c+s を独立変数にとります。c2+s2=1 より 2cs=v2−1 なので
f=23v(v2−1)=23(v3−v)≡g(v).
v=c+s=2sin(θ+4π) で、0≤θ≤π/2 のとき θ+4π∈[4π,43π] ですから sin(θ+4π)∈[21,1]、すなわち v は [1,2] を動きます。v は θ の連続関数なので [1,2] の値をすべてとります。
この区間で g′(v)=23(3v2−1)≥23⋅2>0 なので g は狭義単調増加です。よって最大値と最小値は端点で実現され、
maxf=g(2)=23(22−2)=232,minf=g(1)=0.
v=2 は θ=π/4、v=1 は θ=0 または θ=π/2 に対応します。答えは、最大値が 232=23≃2.121(θ=π/4 のとき)、最小値が 0(θ=0, π/2 のとき)です。
検算として f=3cs(c+s) の形を直接見ると、0≤θ≤π/2 では c,s≥0 なので f≥0 で、f=0 となるのは cs=0 すなわち θ=0,π/2 に限られます。θ=π/4 では c=s=1/2 から f=3⋅21⋅2=232 で、上の結果と一致します。
(iii) B は A の多項式 B=p(A) で、
p(x)=x4−x2+x+(c2s2−1)
です。A は実対称なので直交行列 R で A=Rdiag(c,s)RT と対角化でき、多項式は対角成分ごとに作用して
B=p(A)=Rdiag(p(c),p(s))RT
となります。ここで s2=1−c2 より c2s2=c2−c4 なので
p(c)=c4−c2+c+(c2−c4)−1=c−1,
同様に c2s2=s2−s4 を使って p(s)=s−1 です。したがって
B=Rdiag(c−1,s−1)RT=A−I
であり、B は cos2θsin2θ という項のおかげで4次式が1次式に潰れています。固有値は cosθ−1 と sinθ−1 で、
detB=(cosθ−1)(sinθ−1).
B が逆行列を持たないのは detB=0、すなわち cosθ=1 または sinθ=1 のときです。0≤θ≤π/2 の範囲では前者は θ=0、後者は θ=π/2 のみです。答えは θ=0 と θ=2π です。
念のため θ=0 を直接見ると A=P で、P2=P と c2s2=0 から B=P−P+P−I=P−I です。P の固有値は 1,0 なので P−I の固有値は 0,−1 となり、確かに特異です。
(iv) 前問より θ=0,π/2 のとき B=A−I は可逆です。Cayley–Hamilton の定理から
A2−(c+s)A+csI=O,すなわちA2=(c+s)A−csI
が使えます。X=a1A+a0I と置いて (A−I)X=I を要求すると
(A−I)(a1A+a0I)=a1A2+(a0−a1)A−a0I=a1{(c+s)A−csI}+(a0−a1)A−a0I={a1(c+s−1)+a0}A−(a1cs+a0)I.
これが I に等しくなるためには
{a1(c+s−1)+a0=0,a1cs+a0=−1
が成り立てば十分です(A と I が1次独立かどうかを問わず、この2式から行列としての等式が従います)。上式から下式を引くと
a1(c+s−1−cs)=1.
ここで
c+s−1−cs=−(1−c−s+cs)=−(1−c)(1−s)
であり、θ=0,π/2 では c=1 かつ s=1 なのでこれは 0 になりません。よって
a1(θ)=−(1−cosθ)(1−sinθ)1,a0(θ)=−a1(c+s−1)=(1−cosθ)(1−sinθ)cosθ+sinθ−1.
まとめると答えは
B−1=(1−cosθ)(1−sinθ)−A+(cosθ+sinθ−1)I.
固有値で検算します。A の固有ベクトル u,w 上で
a1c+a0=(1−c)(1−s)−c+(c+s−1)=(1−c)(1−s)−(1−s)=c−11,
同様に a1s+a0=s−11 となり、これは B=A−I の固有値 c−1, s−1 の逆数です。B と a1A+a0I は同じ直交基底で対角化されるので、両者は互いに逆行列です。
なお θ=π/4 では A=21I となって I と A が1次従属になるため、(a1,a0) の組は一意ではありません。上の式はそのうちの1つを与えており、実際に代入すると
a1⋅21+a0=(1−21)2−21+2−1=(1−21)2−(1−21)=21−11
で、B−1=(21−1)−1I に一致します。
(i) X は実対称なので直交行列で対角化でき、固有値 λi は実数です。X=Rdiag(λ1,…,λN)RT とすると Xn=Rdiag(λ1n,…,λNn)RT なので
TrX=i=1∑Nλi≡S,Tr(Xn)=i=1∑Nλin
です。仮定 λi≥0 より、各 i について
0≤λi≤j=1∑Nλj=S
が成り立ちます(他の固有値をすべて足しても減らない)。とくに S≥0 です。
n=1 のときは両辺とも S で等号が成立し、主張は成り立ちます。n≥2 のときは、x↦xn−1 が [0,∞) 上で単調増加なので 0≤λi≤S から
λin−1≤Sn−1.
両辺に λi≥0 をかけて(不等号の向きは保たれます)
λin≤λiSn−1(i=1,…,N)
を得ます。i について総和をとると
Tr(Xn)=i=1∑Nλin≤Sn−1i=1∑Nλi=Sn=(TrX)n
となり、任意の自然数 n について (TrX)n≥Tr(Xn) が示されました。証明に使った仮定は、X が実対称で対角化可能であること(Tr(Xn)=∑λin が言えること)と、全固有値が非負であることの2つだけです。
別の見方として、多項定理で
Sn=(j∑λj)n=k1+⋯+kN=n∑k1!⋯kN!n!λ1k1⋯λNkN
と展開すると、λi≥0 より全項が非負で、そのうち ki=n(他は 0)の N 項がちょうど ∑iλin を与えます。残りの項が非負であることが不等式の中身です。
(ii) n≥2 とします。(i) の証明では各 i ごとの不等式 λin≤λiSn−1 を足し合わせただけなので、和について等号が成立することは、すべての i で個別に等号が成立すること
λi(λin−1−Sn−1)=0(i=1,…,N)
と同値です。λi≥0、S≥0 で、n≥2 のとき x↦xn−1 は [0,∞) 上で単射なので、この条件は「各 i について λi=0 または λi=S」と書けます。
ここで λk>0 となる添字が2つ以上あったとします。それらを k=l とすると λk=λl=S>0 であり、
S=i∑λi≥λk+λl=2S
から S≤0、すなわち S=0 となって λk>0 に矛盾します。よって正の固有値は高々1個です。
逆に、固有値のうち高々1個だけが正で残りが 0 のとき、その値を λ (≥0) とすれば (TrX)n=λn=Tr(Xn) で等号が成立します(すべてが 0、つまり X=O の場合は両辺 0 で成立)。
したがって答えは、n≥2 での等号成立は「λi のうち非零のものが高々1個、すなわち少なくとも N−1 個の固有値が 0 である場合」に限られます。行列の言葉では rankX≤1、つまり単位ベクトル v と λ≥0 を用いて X=λvvT と書ける場合(X=O を含む)です。n=1 を除外する理由もこれで明らかで、n=1 なら固有値によらず常に等号が成立してしまいます。
多項定理による見方でも同じ結論が出ます。等号は混合項がすべて消えること、とくに ki=1, kj=n−1 の項 nλiλjn−1=0 が任意の i=j で成り立つことを要求し、これは λiλj=0 (i=j)、すなわち非零固有値が高々1個であることと同じです。
実変数 t の複素関数 f1(t),f2(t) が
idtd(f1(t)f2(t))=(a(t)b(t)b(t)c(t))(f1(t)f2(t))
を満たします。a(t),b(t),c(t) は t の実関数(以下では解が微分可能であるように連続とします)、i=−1 です。係数行列は実対称、したがってエルミートなので、これは2準位系のシュレーディンガー方程式と同じ構造をしています。
以下では
f(t)=(f1(t)f2(t)),H(t)=(a(t)b(t)b(t)c(t))
と書き、上の方程式を idf/dt=H(t)f と表します。設問3以降は a=c=0、すなわち H(t)=b(t)σx(σx は非対角成分が 1 の実対称行列)の場合です。
成分で書くと
dtdf1=−i(af1+bf2),dtdf2=−i(bf1+cf2)
です。N(t)=∣f1∣2+∣f2∣2=f1∗f1+f2∗f2 を微分すると
dtdN=(f˙1∗f1+f1∗f˙1)+(f˙2∗f2+f2∗f˙2)=2Re(f1∗f˙1+f2∗f˙2)
となります。上の方程式を代入すると
f1∗f˙1+f2∗f˙2=−i(a∣f1∣2+bf1∗f2+bf2∗f1+c∣f2∣2)=−i(a∣f1∣2+c∣f2∣2+2bRe(f1∗f2))
です。2行目では f1∗f2+f2∗f1=f1∗f2+(f1∗f2)∗=2Re(f1∗f2) を使いました。丸括弧の中身は、a,b,c が実関数であることから実数です。よって f1∗f˙1+f2∗f˙2 は純虚数で、その実部は 0、すなわち
dtdN=0(すべての t)
です。N は微分が恒等的に 0 の実関数なので定数であり、∣f1(t)∣2+∣f2(t)∣2 は t に依存しません。
証明で本質的に使ったのは、a,b,c が実で係数行列の非対角成分が等しいこと、つまり H(t)†=H(t) であることです。行列形式で書けば f˙=−iHf、f˙†=if†H†=if†H から
dtd(f†f)=if†Hf−if†Hf=0
となり、同じ結論が1行で出ます。H がエルミートでなければ成り立ちません。
α(t)=∫0ta(τ)dτ,γ(t)=∫0tc(τ)dτ
と置きます。a,c は実で連続なので α,γ は実の C1 関数で、α˙=a、γ˙=c、α(0)=γ(0)=0 です。定義式は f1=e−iαf~1、f2=e−iγf~2 ですが、∣e−iα∣=1 なので f~1=eiαf1、f~2=eiγf2 と逆に解けます。すなわちこれは可逆な変数変換で、位相を付け替えているだけです。
第1成分の式に代入します。積の微分から
if˙1=i(−iα˙e−iαf~1+e−iαf~˙1)=ae−iαf~1+ie−iαf~˙1=af1+ie−iαf~˙1
であり、これがもとの方程式の右辺 af1+bf2=af1+be−iγf~2 に等しいので、af1 が両辺で消えて
ie−iαf~˙1=be−iγf~2,すなわちif~˙1=bei(α−γ)f~2.
第2成分も同様で、if˙2=cf2+ie−iγf~˙2=bf1+cf2 から
if~˙2=bei(γ−α)f~1.
そこで
b~(t)=b(t)ei{α(t)−γ(t)}=b(t)exp[i∫0t{a(τ)−c(τ)}dτ]
と定義すると、b と α−γ が実であることから bei(γ−α)=b~∗ となり、2式はまとめて
idtd(f~1f~2)=(0b~(t)∗b~(t)0)(f~1f~2)
という主張の形になります。求める表式は上の b~(t) です。
対角成分が消えたのは、e−iα、e−iγ が対角成分 a、c の作る位相をちょうど打ち消すように選ばれているからです。新しい係数行列もエルミートで、∣b~∣=∣b∣、b~(0)=b(0)、また ∣f~j∣=∣fj∣ なので設問1のノルム保存もそのまま引き継がれます。a=c の場合は b~=b で、位相以外は何も変わりません。
a=c=0、b(t)=b0(実定数)のとき方程式は
if˙1=b0f2,if˙2=b0f1
です。和と差 g±=f1±f2 をとると2式は分離して
ig˙±=±b0g±,よってg±(t)=g±(0)e∓ib0t
となります。g±(0)=f1(0)±f2(0) を使って戻すと
f1(t)=2g+(t)+g−(t)=2f1(0)+f2(0)e−ib0t+2f1(0)−f2(0)eib0t=f1(0)cos(b0t)−if2(0)sin(b0t).
答えは f1(t)=f1(0)cos(b0t)−if2(0)sin(b0t) です。同じ計算で
f2(t)=−if1(0)sin(b0t)+f2(0)cos(b0t)
も得られ、行列でまとめると
f(t)=U(t)f(0),U(t)=cos(b0t)I−isin(b0t)σx=(cosb0t−isinb0t−isinb0tcosb0t)
です。検算として t=0 で f1=f1(0) となること、また σx2=I と b0, t が実であることから
U†U=(cosb0tI+isinb0tσx)(cosb0tI−isinb0tσx)=cos2b0tI+sin2b0tσx2=I
すなわち U がユニタリであることを確認できます。これは設問1のノルム保存と整合します。b0=0 なら f1(t)=f1(0) で定数、これも正しい極限です。
a=c=0 で b(t) が時間に依存する場合ですが、係数行列は H(t)=b(t)σx と、時間に依らない行列 σx のスカラー倍です。異なる時刻の H が互いに可換なので、設問3と同じ分離がそのまま通ります。g±=f1±f2 に対して
ig˙±=±b(t)g±⟹g±(t)=g±(t1)exp[∓i∫t1tb(τ)dτ].
b(t) は t→−∞ で十分はやく減衰するので ∫−∞t∣b(τ)∣dτ<∞ であり、
Φ(t)=∫−∞tb(τ)dτ
が収束します。そこで t1→−∞ の極限をとると(この極限で g±(t1)→g±(−∞)=f1(−∞)±f2(−∞) が存在します)
g±(t)={f1(−∞)±f2(−∞)}e∓iΦ(t)
となり、f1=(g++g−)/2 から
f1(t)=f1(−∞)cosΦ(t)−if2(−∞)sinΦ(t),Φ(t)=∫−∞tb(τ)dτ
が答えです。同様に f2=(g+−g−)/2 から
f2(t)=−if1(−∞)sinΦ(t)+f2(−∞)cosΦ(t)
です。b(t)=b0 を形式的に代入すると Φ は発散してしまいますが、b が有限の区間の外で 0 になる場合には、その区間より前で f が定数、区間を通過した後は Φ が全積分値で止まる、という正しい振る舞いになります。t→−∞ で Φ→0 なので f1(t)→f1(−∞) となり、定義とも整合します。Φ が実であることから ∣f1∣2+∣f2∣2 が保存することも直接確かめられます。
b(t)=t2+t02βcosωt,β,ω,t0>0
の場合です。∣b(t)∣≤β/(t2+t02) で右辺は R 上可積分なので、設問4の仮定(t→−∞ での十分はやい減衰)が満たされ、さらに t→+∞ でも積分が収束します。したがって
Θ≡Φ(+∞)=∫−∞∞b(t)dt=β∫−∞∞t2+t02cosωtdt
が有限に定まります。
この積分を留数で評価します。sinωt/(t2+t02) は奇関数で積分が 0 なので
∫−∞∞t2+t02cosωtdt=∫−∞∞t2+t02eiωtdt
と書けます。積分路として実軸の [−R,R] と上半平面の半円 CR(半径 R>t0)を合わせた閉曲線をとります。ω>0 かつ上半平面では Imz≥0 なので ∣eiωz∣=e−ωImz≤1 で、また ∣z2+t02∣≥R2−t02 ですから
∫CRz2+t02eiωzdz≤R2−t02πRR→∞0
と半円の寄与は消えます。閉曲線の内部にある極は z=it0(1位)だけで、留数は
z→it0limz+it0eiωz=2it0e−ωt0
です。留数定理から
∫−∞∞t2+t02cosωtdt=2πi⋅2it0e−ωt0=t0πe−ωt0,よってΘ=t0πβe−ωt0.
f1(−∞)=1、f2(−∞)=0 を設問4の結果に入れると f1(t)=cosΦ(t)、f2(t)=−isinΦ(t) なので、t→+∞ で Φ→Θ より
∣f1(+∞)∣2=cos2Θ=cos2(t0πβe−ωt0),∣f2(+∞)∣2=sin2Θ=sin2(t0πβe−ωt0)
が答えです。
確認をいくつかしておきます。方程式 if˙=bf の形から b は時間の逆数の次元をもち、b=βcosωt/(t2+t02) より β は時間の次元です。よって β/t0 と ωt0 はどちらも無次元で、三角関数と指数関数の引数として整合しています。また2つの答えの和は cos2Θ+sin2Θ=1 で、f1(−∞)=1, f2(−∞)=0 での ∣f1∣2+∣f2∣2=1 と一致し、設問1のノルム保存を満たします。
極限も素直です。ωt0≫1、すなわち振動 cosωt の周期がローレンツ型の包絡線の幅 t0 よりずっと短いときは Θ≃0 で、∣f2(+∞)∣2≃Θ2 が指数関数的に小さくなります。速い振動が打ち消し合って遷移が起きない、という描像です。逆に ω→0 では Θ→πβ/t0 となり、パルス面積 ∫bdt そのものが遷移を決めます。Θ が π の整数倍のときは ∣f2(+∞)∣2=0 で、系は始状態に完全に戻ります(ラビ振動と同じ構造です)。
出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 平成21年度 修士課程 入学試験問題 数学。問題文は要約して引用しています。
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