大問2題で、2問すべてが必答です(試験時間は60分)。第1問は正規行列とユニタリ対角化という前提を与えたうえで、2次の回転行列を題材に直交性・行列指数関数・複素対角化をたどり、後半でファンデルモンド行列式に移ります。第2問はコーシー–リーマン関係式だけを出発点に、調和性、ストークスの定理による線積分の消滅、コーシーの積分定理、そして ∫e−x2cos(2px)dx の評価まで一本道で誘導する構成です。計算量は軽く、微分の交換可能性の根拠、ストークスの定理を適用できる条件、長方形経路の側辺の寄与が消えることの評価といった論理の詰めが配点の中心になります。
| 問題 | 分野 | 主題 |
|---|
| 第1問 | 線形代数 | 回転行列の直交性・行列指数関数・ファンデルモンド行列式 |
| 第2問 | 複素解析・フーリエ解析 | コーシー–リーマン関係式、コーシーの積分定理、ガウス型積分 |
前提として次の事実が与えられます。正方行列 A に対し U−1AU が対角行列となるユニタリ行列 U が存在するための必要十分条件は、A が正規行列であること、すなわち
A∗A=AA∗
が成り立つことです。ここで A∗ は A を転置して複素共役をとった行列(随伴行列)です。実成分のユニタリ行列を直交行列と呼びます。
前半では 2 次の行列
B=(cosθsinθ−sinθcosθ)(θ∈R)
を扱い、後半では変数の組 {x1,…,xn} に対する n 次の行列
C=1x1⋮x1n−11x2⋮x2n−1⋯⋯⋯1xn⋮xnn−1,Cij=xji−1
を扱います。∣C∣ は C の行列式を表します。
B の成分は θ が実数なのですべて実数です。したがって複素共役をとる操作は何もせず、B∗=BT が成り立ちます。転置は
BT=(cosθ−sinθsinθcosθ)
です。積を計算すると
BTB=(cosθ−sinθsinθcosθ)(cosθsinθ−sinθcosθ)=(cos2θ+sin2θ−sinθcosθ+cosθsinθ−cosθsinθ+sinθcosθsin2θ+cos2θ)=(1001)=E
となり、同じ計算で
BBT=(cos2θ+sin2θsinθcosθ−cosθsinθcosθsinθ−sinθcosθsin2θ+cos2θ)=E
も得られます。使ったのは cos2θ+sin2θ=1 だけです。
よって B∗B=BB∗=E、つまり B はユニタリ行列であり、しかも成分が実数なので定義により直交行列です。答えは、BTB=BBT=E が実数成分のまま成立するので B は直交行列である、ということになります。
なお B∗B=BB∗=E は B が正規行列であることも意味しており、設定で述べられた定理から B がユニタリ行列で対角化できることが保証されます。これを実行するのが設問3です。また ∣B∣=cos2θ+sin2θ=1 なので B は回転(SO(2) の元)であり、鏡映は含みません。
A を回転の生成子で書き直してから偶数次と奇数次に分けます。
A=(0θ−θ0)=θJ,J≡(01−10)
とおくと
J2=(01−10)(01−10)=(−100−1)=−E
です。これを繰り返せば、k=0,1,2,… に対して
J2k=(−1)kE,J2k+1=(−1)kJ
が成り立ちます(k についての帰納法。J2(k+1)=J2kJ2=(−1)kE⋅(−E)=(−1)k+1E)。
Am=θmJm なので、定義式は
expA=m=0∑∞m!θmJm
となります。この級数は絶対収束します。実際、行列ノルムを劣乗法的なもの(たとえば作用素ノルム)にとれば ∥Am/m!∥≤∥A∥m/m! であり、∑m∥A∥m/m!=e∥A∥<∞ です。2×2 行列の空間は有限次元なので完備であり、絶対収束する級数は収束します。絶対収束していれば項の並べ替えが自由にできるので、m を偶数 m=2k と奇数 m=2k+1 に分けて
expA=k=0∑∞(2k)!θ2kJ2k+k=0∑∞(2k+1)!θ2k+1J2k+1=(k=0∑∞(2k)!(−1)kθ2k)E+(k=0∑∞(2k+1)!(−1)kθ2k+1)J=(cosθ)E+(sinθ)J
と書けます。最後の等号は cos と sin のテイラー級数(実数 θ 全体で収束)です。成分に戻すと
expA=cosθ(1001)+sinθ(01−10)=(cosθsinθ−sinθcosθ)=B
となり、示すべき式が得られました。
検算として θ=0 を入れると A=O、expO=E で B=E と一致します。また θ で微分すると dθdexp(θJ)=−sinθE+cosθJ=Jexp(θJ) で、行列指数関数が満たすべき微分方程式と整合します。設問3の対角化を使った別の導出は下で述べます。
固有値は特性方程式から求めます。
∣B−λE∣=(cosθ−λ)2+sin2θ=λ2−2λcosθ+1=0
です。判別式は 4cos2θ−4=−4sin2θ≤0 なので、θ が実数の範囲では根は
λ±=cosθ±isinθ=e±iθ
の2つです(sinθ の符号がどちらでも、複号がこの2根を尽くします)。sinθ=0 のとき固有値は実数ではないので、対角化行列は実行列ではとれません。
固有ベクトルを求めます。λ+=eiθ に対する条件の第1行は (cosθ−eiθ)w1−sinθw2=−isinθw1−sinθw2=0、すなわち w2=−iw1 です。同様に λ−=e−iθ では w2=+iw1 となります。そこで規格化して
w±=21(1∓i)
とおきます。この w± が固有ベクトルであることは、sinθ=0 の場合も含めて直接確認できます。
B(1−i)=(cosθ+isinθsinθ−icosθ)=eiθ(1−i),B(1i)=(cosθ−isinθsinθ+icosθ)=e−iθ(1i)
(第2成分は −i(cosθ+isinθ)=sinθ−icosθ、i(cosθ−isinθ)=sinθ+icosθ から従います。)これらを列に並べて
U=21(1−i1i)
とおくと、U はユニタリです。
U∗U=21(11i−i)(1−i1i)=21(2002)=E
したがって U−1=U∗ であり、固有値関係 BU=Udiag(eiθ,e−iθ) から
U−1BU=U∗BU=(eiθ00e−iθ)
が答えです。θ が π の整数倍のときは B=±E ですでに対角ですが、そのときも eiθ=e−iθ=±1 なので上の式はそのまま成り立ちます。つまり θ の値による場合分けは不要です。
固有値の絶対値が ∣e±iθ∣=1 であることは B がユニタリ行列であることと整合し、積 eiθe−iθ=1 は ∣B∣=1 と、和 eiθ+e−iθ=2cosθ はトレースと一致します。
同じ U は設問2の A=θJ も対角化します。Jw±=∓iw± なので U−1AU=diag(iθ,−iθ) であり、対角行列に対しては指数関数が成分ごとの指数関数になるので
U−1(expA)U=exp(U−1AU)=(eiθ00e−iθ)=U−1BU
となり、expA=B が再現されます。設問2の別解であり、検算にもなっています(U−1(expA)U=exp(U−1AU) は級数の各項に U−1⋅U を挟めば従います)。
Dn(x1,…,xn)≡∣C∣ とおき、n についての帰納法で
Dn=1≤i<j≤n∏(xj−xi)
を示します。比例係数がちょうど 1 になることまで出ます。
n=1 のとき C=(1) で D1=1、右辺は空積なので 1 で一致します。
n≥2 とし、Dn−1 について主張が成り立つと仮定します。行番号 k を k=n,n−1,…,2 の順に(大きい方から)とり、第 k 行から第 k−1 行の x1 倍を引きます。降順に処理するので、引く側の第 k−1 行はまだ変更されていない元の行です。行に他の行の定数倍を加える操作は行列式を変えないので Dn は不変です。第 k 行 (k≥2) の第 j 成分は
xjk−1−x1xjk−2=xjk−2(xj−x1)
になります。とくに j=1 では x1k−2(x1−x1)=0 です。第1行は (1,1,…,1) のまま変わりません。したがって第1列は (1,0,…,0)T となり、第1列に沿う余因子展開で第1項だけが残ります(符号は (−1)1+1=+1)。
Dn=detM,Mk−1,j−1=xjk−2(xj−x1)(k,j=2,…,n)
M は (n−1)×(n−1) 行列で、その第 j−1 列は共通因子 (xj−x1) を持ちます。行列式は各列について1次なので、列ごとに因子をくくり出せて
Dn={j=2∏n(xj−x1)}det[xjk−2]k,j=2,…,n={j=2∏n(xj−x1)}Dn−1(x2,…,xn)
となります。最後の行列式は、行の指数が 0,1,…,n−2、列の変数が x2,…,xn という、まさに n−1 変数の同じ形の行列式です。帰納法の仮定を使えば
Dn=j=2∏n(xj−x1)⋅2≤i<j≤n∏(xj−xi)=1≤i<j≤n∏(xj−xi)
が得られ、主張が示されました。i=1 の因子と i≥2 の因子を合わせるとちょうどすべての組 (i,j)、i<j を一度ずつ拾うことに注意します。
別の見方でも同じ結論が出ます。Dn は x1,…,xn の多項式で、xi=xj(i=j)とおくと第 i 列と第 j 列が一致して Dn=0 になるので、因数定理から各 (xj−xi) で割り切れます。これらは互いに素な既約多項式なので積 ∏i<j(xj−xi) で割り切れます。一方 Dn の全次数は各項が行ごとに 0,1,…,n−1 次の因子を1つずつ拾うので ∑k=0n−1k=n(n−1)/2 で、積の次数も組の個数 (2n)=n(n−1)/2 に等しい。よって商は定数です。定数は対角成分の積に対応する単項式 x2x32⋯xnn−1 の係数を両辺で比べれば 1 と決まります。
小さい n で確かめると、n=2 では ∣C∣=x2−x1、n=3 では ∣C∣=(x2−x1)(x3−x1)(x3−x2) で、いずれも公式と一致します。乱数を入れた数値計算でも n=2 から 6 まで両辺が一致します。
設問4の結果 ∣C∣=∏1≤i<j≤n(xj−xi) から、∣C∣=0 であることは、積のどの因子も 0 でないこと、すなわちすべての組 i<j について xi=xj であることと同値です。したがって C が正則である(逆行列をもつ)のは、x1,…,xn が互いにすべて異なる場合であり、そのときに限ります。
逆向きも直接見えます。もし xi=xj となる i=j があれば C の第 i 列と第 j 列が完全に一致するので、列が線形従属になり ∣C∣=0 で C は正則ではありません。なお n=1 のときは条件が空で、∣C∣=1 なので常に正則です。
この条件の意味づけを付けておきます。C の転置 CT は、係数 (a0,a1,…,an−1) の多項式 P(x)=∑k=0n−1akxk を値の組 (P(x1),…,P(xn)) に写す行列です。C が正則であることは、与えられた n 個の値を n 点 x1,…,xn で取る n−1 次以下の多項式がただ一つ存在すること(ラグランジュ補間の一意可解性)と同じ内容です。点が重複していれば、その点で異なる値を要求すると解がなく、同じ値を要求すると解が一意でなくなります。互いに異なる、という条件はこの事情をそのまま表しています。
2つの実変数 x,y の実関数 u(x,y)、v(x,y) は、平面上のいたるところで有限な値をとり、何回でも微分可能で、さらに
∂x∂u=∂y∂v,∂y∂u=−∂x∂v
を満たすとします。これがコーシー–リーマン関係式で、以下ではこの2式を式(1)と呼びます。無限回微分可能という仮定は平面全体で成り立つとします。
この仮定だけを出発点に、u,v が調和関数であること、xy 平面上の任意の閉経路まわりの2つの線積分が消えること(式(4))、f(z)=u+iv に対する ∮Cf(z)dz=0(式(5))を順に導き、最後に f(z)=e−z2 に適用して定積分を求めます。
式(1)の第1式を x で偏微分し、第2式を y で偏微分します。
∂x2∂2u=∂x∂∂y∂v=∂x∂y∂2v,∂y2∂2u=∂y∂(−∂x∂v)=−∂y∂x∂2v
v は任意回微分可能で、とくに2階偏導関数が連続なので、シュワルツ(クレロー)の定理により偏微分の順序を交換できます。
∂x∂y∂2v=∂y∂x∂2v
したがって
∂x2∂2u+∂y2∂2u=∂x∂y∂2v−∂y∂x∂2v=0
です。v についても同様で、式(1)の第2式を x で、第1式を y で偏微分すると
∂x2∂2v=∂x∂(−∂y∂u)=−∂x∂y∂2u,∂y2∂2v=∂y∂∂x∂u=∂y∂x∂2u
となり、今度は u の2階偏導関数の連続性から交換できて
∂x2∂2v+∂y2∂2v=−∂x∂y∂2u+∂y∂x∂2u=0
を得ます。以上で式(2)が示されました。使った仮定は、式(1)と、u,v が C2 級であること(無限回微分可能性から従う)の2つだけです。u,v はともにラプラス方程式を満たす調和関数です。
xy 平面内の経路なので、面 S も xy 平面内にとれます。このとき法線ベクトルは n=ez(経路 C を反時計回りに一周する向きに合わせた右ねじの向き)です。z 成分をもたず x,y にしか依存しないベクトル場 A=(Ax(x,y),Ay(x,y),0) については
A⋅dx=Axdx+Aydy,[∇×A]⋅n=∂x∂Ay−∂y∂Ax
となります。あとは求める線積分の被積分形になるように A を選ぶだけです。u,v は平面全体で無限回微分可能なので、以下のどちらの A も微分可能で、除外すべき特異点はなく、C が囲む領域 S の全体でストークスの定理を使えます。
(ア) 第1式。A=(u,−v,0) とおくと A⋅dx=udx−vdy です。回転の z 成分は
∂x∂(−v)−∂y∂u=−(∂x∂v+∂y∂u)=0
で、最後の等号は式(1)の第2式 ∂u/∂y=−∂v/∂x そのものです。よってストークスの定理から
∮C[u(x,y)dx−v(x,y)dy]=∬S0dS=0
となります。
(イ) 第2式。A=(v,u,0) とおくと A⋅dx=vdx+udy です。回転の z 成分は
∂x∂u−∂y∂v=0
で、これは式(1)の第1式です。よって
∮C[u(x,y)dy+v(x,y)dx]=∬S0dS=0
となり、式(4)の2式がともに示されました。
面積分の被積分関数が恒等的に 0 なので、S の取り方や n の向き(±ez のどちらにとるか、それに応じて C の向きを合わせる)には結果が依存しません。また、経路が自己交差する一般の閉じた経路の場合は、有限個の単純閉曲線に分解して各々に上の議論を適用すればよく、和も 0 です。別の言い方をすると、∇×A が単連結な平面全体で恒等的に 0 なので A は保存場(あるスカラー関数の勾配)であり、その周回積分はどんな閉経路でも 0 になります。式(4)が「任意の」閉経路について成り立つ、という主張はこの意味で正しいことになります。
z=x+iy なので dz=dx+idy、また f(z)=u(x,y)+iv(x,y) です。被積分形を実部と虚部に分けます。
f(z)dz=(u+iv)(dx+idy)=(udx−vdy)+i(vdx+udy)
実部では udx と i2vdy=−vdy が、虚部では vdx と udy が集まります。経路 C 上で積分すると
∮Cf(z)dz=∮C[udx−vdy]+i∮C[vdx+udy]
となり、右辺の2つの周回積分は設問2で示した式(4)によりどちらも 0 です。よって
∮Cf(z)dz=0+i⋅0=0
が任意の閉経路 C について成り立ちます。これがコーシーの積分定理で、成立の根拠は式(1)(コーシー–リーマン関係式)と、u,v が平面全体で滑らかで特異点をもたないことです。f が正則でない領域を経路が囲む場合には、この論法は使えません。
z=x+iy に対し z2=x2−y2+2ixy なので
e−z2=e−(x2−y2)e−2ixy=ey2−x2[cos(2xy)−isin(2xy)]
です。実部と虚部を読み取ると
u(x,y)=ey2−x2cos(2xy),v(x,y)=−ey2−x2sin(2xy)
となります。どちらも各点で有限な値をとり、初等関数の合成なので無限回微分可能です。以下 E(x,y)≡ey2−x2 と略記します。∂E/∂x=−2xE、∂E/∂y=2yE です。
∂x∂u∂y∂v=−2xEcos(2xy)+E⋅(−2ysin(2xy))=−2E[xcos(2xy)+ysin(2xy)]=−2yEsin(2xy)−E⋅2xcos(2xy)=−2E[ysin(2xy)+xcos(2xy)]
2つは一致するので ∂u/∂x=∂v/∂y です。次に
∂y∂u∂x∂v=2yEcos(2xy)+E⋅(−2xsin(2xy))=2E[ycos(2xy)−xsin(2xy)]=2xEsin(2xy)−E⋅2ycos(2xy)=−2E[ycos(2xy)−xsin(2xy)]
より ∂u/∂y=−∂v/∂x です。以上で f(z)=e−z2 の実部と虚部が式(1)を満たすことが示されました。数値微分でも (x,y)=(0.3,0.7)、(−1.2,0.4)、(2.0,−1.1) の3点で両式が成り立つことを確認しています。
したがって設問1から設問3の結論がこの f にすべて適用できます。とくに u,v は調和で、任意の閉経路について ∮Ce−z2dz=0 が成り立ちます。
まず p>0 とします。f(z)=e−z2 に対し、複素平面上の長方形の閉経路
CR:−R→R→R+ip→−R+ip→−R
(R>0、反時計回り)をとります。設問4より f の実部・虚部は式(1)を満たすので、設問3から
∮CRe−z2dz=0
です。この周回積分を4辺に分けます。
下辺(z=x、x は −R から R)は
I1=∫−RRe−x2dx
上辺(z=x+ip、x は R から −R)は、−(x+ip)2=−x2−2ipx+p2 より
I3=∫R−Rep2e−x2e−2ipxdx=−ep2∫−RRe−x2e−2ipxdx
右辺(z=R+iy、y は 0 から p、dz=idy)と左辺(z=−R+iy、y は p から 0)については、−(±R+iy)2=−(R2−y2)∓2iRy なので被積分関数の絶対値は
e−(±R+iy)2=ey2−R2≤ep2−R2(0≤y≤p)
と評価できます。積分区間の長さは p なので
∣I2∣≤pep2e−R2,∣I4∣≤pep2e−R2
であり、p を固定して R→∞ とすると e−R2→0 なのでどちらも 0 に収束します。ここで p は R に依らない定数であることが効いています。
R→∞ の極限をとります。I1 は式(7)により π に収束し、I3 の積分も ∣e−x2e−2ipx∣=e−x2 が可積分なので絶対収束します。I1+I2+I3+I4=0 で I2,I4→0 だから
π−ep2∫−∞∞e−x2e−2ipxdx=0,すなわち∫−∞∞e−x2e−2ipxdx=πe−p2
を得ます。e−2ipx=cos(2px)−isin(2px) と分けると、虚部の積分は e−x2sin(2px) が x の奇関数で(絶対収束もしているので)0 です。実部を比べて
∫−∞∞e−x2cos(2px)dx=πe−p2
となります。
残りの場合を埋めます。p=0 のときは式(7)そのもので、上式も π を与えるので一致します。p<0 のときは cos(2px) が p について偶関数なので左辺は ∣p∣ での値に等しく、右辺 πe−p2 も p の偶関数です。したがって
∫−∞∞e−x2cos(2px)dx=πe−p2
がすべての実数 p について成り立ちます。これが答えです。p<0 を長方形経路で直接扱うなら、−∣p∣ 側、つまり下半平面に長方形をとれば同じ計算になります。
検算を2つ付けます。ひとつは微分方程式による別解です。I(p)≡∫−∞∞e−x2cos(2px)dx とおくと、p による偏導関数の絶対値が ∣2xe−x2sin(2px)∣≤2∣x∣e−x2 で p に依らない可積分関数に押さえられるので、積分と微分を交換できます。2xe−x2=−dxde−x2 を使って部分積分すると
I′(p)=−∫−∞∞2xe−x2sin(2px)dx=[e−x2sin(2px)]−∞∞−2p∫−∞∞e−x2cos(2px)dx=−2pI(p)
です(境界項は e−x2→0 で消えます)。I(0)=π の初期条件で解くと I(p)=πe−p2 で、上の結果と一致します。もうひとつは数値積分です。p=0.5,1.0,2.0,−1.5 で数値積分すると 1.38039、0.65205、0.032464、0.186815 となり、πe−p2 の値と有効数字5桁以上で一致します。
得られた式は、ガウス関数のフーリエ変換がまたガウス関数になるという事実にほかなりません。p が大きくなるほど振動が細かくなって打ち消し合いが効き、積分値は e−p2 で急速に減衰します。
出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 平成19年度 修士課程 入学試験問題 数学。問題文は要約して引用しています。
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