平成27年2月2日実施、全3問を3枚の答案用紙にそれぞれ解答する形式です(選択なし、全問必答)。第1問は角運動量演算子の代数から始めて球対称井戸型ポテンシャルの束縛状態の数を図解させる量子力学、第2問はスピン1/2の回転操作と2スピンハイゼンベルグ模型の熱統計、第3問はローレンツ力による運動で、ドリフト運動からサイクロトロン加速までを扱います。いずれも大学院の基礎科目レベルで、計算量よりも束縛状態の勘定・対称性の議論・軌道の図示といった定性的理解の正確さが差になります。
| 問題 | 分野 | 主題 |
|---|
| 第1問 | 量子力学 | 角運動量代数と球対称井戸型ポテンシャルの束縛状態 |
| 第2問 | 量子力学・統計力学 | スピン1/2の回転操作と2スピン系の磁化 |
| 第3問 | 電磁気学・力学 | 電磁場中の荷電粒子の運動とサイクロトロン加速 |
角運動量演算子を直交座標で
Lx=−iℏ(y∂z∂−z∂y∂),Ly=−iℏ(z∂x∂−x∂z∂),Lz=−iℏ(x∂y∂−y∂x∂)
と定義し、その代数的性質を確かめたあと、中心力場のハミルトニアン
H=−2Mℏ2Δ+V(r),Δ=∂r2∂2+r2∂r∂−r21Ω,Ω=ℏ2L2
に進みます。後半では井戸型ポテンシャル V(r)=−2Mℏ2v(r<a)、V(r)=0(r>a)をとり(v,a>0)、l=0 の束縛状態の数を調べます。
微分演算子として直接計算します。任意の関数に作用させると 1 階微分の項だけが残り、
[Lx,Ly]=(−iℏ)2[y∂z∂−z∂y∂,z∂x∂−x∂z∂]=−ℏ2(y∂x∂−x∂y∂)=iℏ⋅(−iℏ)(x∂y∂−y∂x∂)=iℏLz
となります(2 階微分の項は両順序で共通なので相殺します)。添字の巡回置換により
[Lx,Ly]=iℏLz,[Ly,Lz]=iℏLx,[Lz,Lx]=iℏLy
が交換関係です。次に [L2,Lz] を計算します。恒等式 [A2,B]=A[A,B]+[A,B]A を使うと
[Lx2,Lz][Ly2,Lz][Lz2,Lz]=Lx[Lx,Lz]+[Lx,Lz]Lx=−iℏ(LxLy+LyLx),=Ly[Ly,Lz]+[Ly,Lz]Ly=+iℏ(LyLx+LxLy),=0
であり、3 つの和は打ち消し合って [L2,Lz]=0 となります。よって L2 と Lz は可換です。
L±=Lx±iLy の満たす交換関係を先に用意します。設問1 の交換関係から
[Lz,L±]=[Lz,Lx]±i[Lz,Ly]=iℏLy±i(−iℏLx)=±ℏL±,[L2,L±]=0
です(後者は L2 が Lx,Ly と可換なことから従います)。これを Yl,m に適用すると
L2(L±Yl,m)=L±L2Yl,m=l(l+1)ℏ2(L±Yl,m),
Lz(L±Yl,m)=(L±Lz+[Lz,L±])Yl,m=(mℏ±ℏ)(L±Yl,m)=ℏ(m±1)(L±Yl,m)
となり、示すべき 2 式が得られます。つまり L±Yl,m は(零でなければ)m±1 に対応する同時固有関数です。
次に L+Yl,l=0 を示します。Lx,Ly はエルミートなので L±†=L∓ であり、交換関係から
L−L+=Lx2+Ly2+i[Lx,Ly]=L2−Lz2−ℏLz
が成り立ちます。したがって L+Yl,l のノルムは
⟨L+Yl,l∣L+Yl,l⟩=⟨Yl,l∣L−L+∣Yl,l⟩=[l(l+1)−l2−l]ℏ2=0
となり、ノルムが零の関数は恒等的に零なので L+Yl,l=0 です。同様に L+L−=L2−Lz2+ℏLz から
⟨L−Yl,−l∣L−Yl,−l⟩=[l(l+1)−l2−l]ℏ2=0
となり L−Yl,−l=0 が示せました。m は −l≤m≤l の範囲で閉じており、昇降がその外に出ないことを表しています。
ψ=R(r)Yl,m(θ,φ) を Hψ=Eψ に代入します。ΩYl,m=(L2/ℏ2)Yl,m=l(l+1)Yl,m なので、Yl,m で割って動径部分だけが残り、
−2Mℏ2(dr2d2R+r2drdR)+[V(r)+2Mr2ℏ2l(l+1)]R(r)=ER(r)
が R(r) の満たす固有値方程式です。遠心力項 ℏ2l(l+1)/(2Mr2) が有効ポテンシャルとして加わった 1 次元型の方程式になっています。
R=χ/r とおくと
dr2d2R+r2drdR=r1dr2d2χ
となるので、l=0 の動径方程式は
−2Mℏ2dr2d2χ+V(r)χ(r)=Eχ(r)
という 1 次元シュレディンガー方程式の形になります。E=−2Mℏ2ε(束縛状態なので E<0、すなわち ε>0)とおき、V の値を各領域で代入すると
dr2d2χ=−(v−ε)χ(r<a),dr2d2χ=εχ(r>a)
が χ(r) の満たす方程式です。v,ε はいずれも(長さ)−2 の次元をもち、両辺の次元は合っています。
r→0 で R=χ/r が有限であるためには χ(0)=0 が必要です。まず 0<ε<v の場合を考え、k=v−ε、κ=ε とおきます。r<a では解は sinkr と coskr の線形結合ですが、χ(0)=0 から cos 成分は落ち、r>a では e±κr のうち r→∞ で発散する e+κr が落ちます。よって
χ(r)=Asin(kr)(r<a),χ(r)=Be−κr(r>a)
です(A,B は定数。規格化は不要とされています)。なお ε≥v とすると内側の解は χ=Asinh(ε−vr) となりますが、これは次の設問で見る接続条件を満たせないため、束縛状態はすべて 0<ε<v の範囲にあります。
ポテンシャルの跳びは有限なので、r=a で χ と χ′ がともに連続です。
Asin(ka)=Be−κa,Akcos(ka)=−κBe−κa
辺々割って、接続条件は
kcot(ka)=−κ,k2+κ2=v
となります(第 2 式は k,κ の定義そのものです)。ε≥v の場合は左辺が ε−vcoth(ε−va)>0 となり、右辺 −κ<0 と一致し得ないので、束縛状態は先の範囲に尽きます。
束縛状態の数はこの連立方程式の解の個数です。無次元変数 ξ=ka、η=κa をとると、条件は
η=−ξcotξ,ξ2+η2=va2(ξ>0, η>0)
となります。第 1 式の曲線は cotξ<0 となる区間、すなわち ξ∈(π/2,π)、(3π/2,2π)、… にだけ第 1 象限の枝をもち、各枝は η=0(ξ=(2n−1)π/2)から出発して単調に増加し、ξ→nπ で発散します。第 2 式は原点中心・半径 va の円です。両者の交点の数が束縛状態の数を与えます。
図の実線が曲線 η=−ξcotξ の第 1 象限の枝、破線が半径 va の円(v の値 3 通り)、丸印が交点です。半径 va が π/2 より小さい間は円が最初の枝(ξ>π/2 から始まる)に届かず、交点は存在しません。つまり v が小さいとき束縛状態は 0 個です。1 次元の井戸と違って必ず束縛状態があるわけではない点がこの問題の要点です。半径が π/2 を超えると最初の枝と 1 点で交わって束縛状態が 1 個現れ、さらに 3π/2 を超えると 2 個目、(2n−1)π/2 を超えるごとに 1 個ずつ増えます。式でまとめると、束縛状態の数 N は
2(2N−1)π<va≤2(2N+1)π
で決まり、特に va≤π/2(すなわち v≤π2/(4a2))では N=0 です。円の半径は v とともに単調に大きくなるので、束縛状態の数は v の増加とともに階段状に 1 個ずつ増えていきます。
S=1/2 の電子スピンを考えます。Sz の固有状態を ∣↑⟩(固有値 1/2)、∣↓⟩(固有値 −1/2)とし、問題文の規約に従って
Sx∣↑⟩=21∣↓⟩,Sx∣↓⟩=21∣↑⟩,Sy∣↑⟩=−2i∣↓⟩,Sy∣↓⟩=2i∣↑⟩
とします。ℏ=kB=1 です。後半では z 方向磁場中で相互作用する 2 つのスピンのハミルトニアン
H=JS1⋅S2−H(S1z+S2z)
の固有状態と熱平衡での磁化を扱います。
(Sα)2=I/4 を繰り返し使うと、べきは
(Sα)2n=4nI,(Sα)2n+1=4nSα
とまとまります。指数関数を級数展開して偶数次と奇数次に分けると
eiθSα=n=0∑∞(2n)!(iθ)2n(Sα)2n+n=0∑∞(2n+1)!(iθ)2n+1(Sα)2n+1=In=0∑∞(2n)!(−1)n(2θ)2n+2iSαn=0∑∞(2n+1)!(−1)n(2θ)2n+1=Icos2θ+2iSαsin2θ
となり、示すべき恒等式が得られました。途中では (iθ)2n4−n=(−1)n(θ/2)2n、(iθ)2n+14−n=2i(−1)n(θ/2)2n+1 を使っています。
設問1 の恒等式で α=x とし、Sx∣↑⟩=21∣↓⟩ を使うと
∣ψ(θ)⟩=U(θ)∣↑⟩=cos2θ∣↑⟩+isin2θ∣↓⟩
です。Sz の期待値は
⟨Sz⟩=21cos22θ−21sin22θ=21cosθ
となります(2 倍角の公式を使いました)。Sy については、問題文の規約から
Sy∣ψ⟩=cos2θ(−2i)∣↓⟩+isin2θ⋅2i∣↑⟩=−21sin2θ∣↑⟩−2icos2θ∣↓⟩
なので、⟨ψ∣=cos2θ⟨↑∣−isin2θ⟨↓∣ との内積をとって
⟨Sy⟩=−sin2θcos2θ=−21sinθ
です。同様の計算で ⟨Sx⟩=0 も確かめられます。したがってスピンの期待値ベクトルは
⟨S⟩=(0, −21sinθ, 21cosθ)
であり、長さ 1/2 を保ったまま、z 軸から y–z 面内で角度 θ だけ傾いています。これはベクトル (0,0,1/2) を x 軸のまわりに角度 θ だけ(右ねじの向きに)回転したものにほかなりません。すなわち U(θ)=eiθSx の物理的意味は、x 軸を回転軸とするスピンの角度 θ の回転操作です。Sx が x 軸まわりの回転の生成子になっていることを表しており、θ=π でスピンは反転し(∣↑⟩→i∣↓⟩)、θ=2π では期待値は元に戻る一方で状態は −∣↑⟩ と符号を変える、というスピノルの性質も式から読み取れます。
合成スピン S=S1+S2 を使うと
S1⋅S2=21(S2−S12−S22)=21S2−43
であり、H は S2 と Sz=S1z+S2z で対角化されます。合成スピン 1(三重項)では S1⋅S2=1/4、合成スピン 0(一重項)では −3/4 です。したがって固有状態と固有値は次の 4 つです。
∣↑⟩1∣↑⟩221(∣↑⟩1∣↓⟩2+∣↓⟩1∣↑⟩2)∣↓⟩1∣↓⟩221(∣↑⟩1∣↓⟩2−∣↓⟩1∣↑⟩2):E=4J−H,:E=4J,:E=4J+H,:E=−43J.
はじめの 3 つが三重項(Sz 固有値 +1,0,−1 に対応して磁場でゼーマン分裂)、最後が一重項です。直接の検算として、たとえば S1⋅S2∣↑⟩1∣↓⟩2=21∣↓⟩1∣↑⟩2−41∣↑⟩1∣↓⟩2 を問題文の Sx,Sy の作用から計算すると、上の対称・反対称の組み合わせが固有値 1/4、−3/4 をもつことが確かめられます。
J>0、∣H∣≪J のとき、固有値を比べると一重項のエネルギー −3J/4 が最低です(最も近い競合は J/4−∣H∣ で、∣H∣<J の間は一重項が下)。よって基底状態は一重項
∣s⟩=21(∣↑⟩1∣↓⟩2−∣↓⟩1∣↑⟩2)
です。一重項は合成スピンが 0 の状態なので、合成スピンのどの成分を作用させても零になります。実際、
(S1x+S2x)∣s⟩=21(21∣↓⟩1∣↓⟩2+21∣↑⟩1∣↑⟩2−21∣↑⟩1∣↑⟩2−21∣↓⟩1∣↓⟩2)=0
です。したがって U12(θ)=eiθ(S1x+S2x) を級数展開すると、(S1x+S2x) を 1 回以上含む項はすべて ∣s⟩ を消し、
U12(θ)∣s⟩=∣s⟩
となります。理由をまとめると、基底状態が合成スピン 0 の一重項であり、設問2 で見たとおり eiθ(S1x+S2x) は 2 スピンを一斉に x 軸まわりに回転させる操作ですが、スピン 0 の状態は回転で不変(等方的)だから、ということです。
分配関数は設問3 の 4 準位から
Z=e3J/(4T)+e−J/(4T)(eH/T+1+e−H/T)=e3J/(4T)+e−J/(4T)(2coshTH+1)
です。自由エネルギーは
F=−TlnZ=−Tln[e3J/(4T)+e−J/(4T)(2coshTH+1)]
となります。z 方向の磁化は M=⟨S1z+S2z⟩=−∂F/∂H で、
M=Z2e−J/(4T)sinh(H/T)=2cosh(H/T)+1+eJ/T2sinh(H/T)
です。H→∞ で M→1(2 スピンの飽和値)、H→0 で M→0、M は H の奇関数、といった当然の性質を満たしていることが確認できます。また J→0 とすると M=tanh(H/(2T)) となり、独立な 2 個のスピン 1/2 の結果に一致します。
J>0(反強磁性的)とし、H>0 の側で考えます(奇関数なので H<0 は対称)。
i) T≪J の場合。分母の eJ/T と 2cosh(H/T)≃eH/T の競争になります。0<H<J では eJ/T が圧倒的に大きく、M≃2e−(J−H)/T は指数関数的に小さい。つまり一重項基底状態は磁場に応答せず、磁化はほぼ 0 に留まります。H>J では eH/T が支配して M≃1 に飽和します。境目 H=J は一重項と三重項最下準位 ∣↑↑⟩ の準位交差点で、そこで磁化は幅 ΔH∼T の急峻な階段を描いて 0 から 1 へ跳びます(H=J ちょうどでは 2 状態が等重率なので M≃1/2)。概形は、原点から H=J 近くまでほぼ 0 の平坦部、H=J でほぼ垂直な立ち上がり、その先は M=1 の平坦部、というスピンギャップ系特有の階段型です。
ii) T≫J の場合。eJ/T≃1 とおけて
M≃2cosh(H/T)+22sinh(H/T)=tanh2TH
となり、相互作用のない常磁性の応答になります。原点で傾き 1/(2T)(キュリー則に対応)の直線から立ち上がり、上に凸のまま単調に増えて H≫T で M→1 に漸近する、なめらかな飽和曲線です。特徴点として変曲はなく、半分の値 M=1/2 に達するのは H=2Tarctanh(1/2)≃1.1T 付近です。
実線が i)(H=J で 0 から 1 へ跳ぶ階段)、破線が ii)(原点から傾き 1/(2T) で立ち上がり 1 に漸近する曲線)です。
質量 m、電荷 q>0 の粒子がローレンツ力
F=q(E+v×B)
を受けて運動します。速さは光速より十分小さく、相対論的効果と電磁波の放射は無視します。前半は B=0 で電場だけの運動(t=0 で原点に静止)、後半は B=(0,0,B)(B>0)を加えた運動を扱います。
静電場 E=(E0,0,0) は保存力で、粒子が原点から点 (d,0,0) に達するまでに電場のする仕事は qE0d です。初速が零なので、エネルギーの定理から到達時の運動エネルギーは
K=qE0d
です。力(qE0)掛ける距離(d)でエネルギーの次元をもち、対応する速さは 2qE0d/m です。
運動方程式は x 成分だけが非自明で、mv˙x=qE0cos(ωt) です。初期条件 vx(0)=0、x(0)=0 で積分すると
vx(t)=mωqE0sin(ωt),x(t)=mω2qE0(1−cos(ωt)),y=z=0
となります。粒子は x 軸上で角振動数 ω の単振動をします。振動の中心は x=qE0/(mω2)、振幅も qE0/(mω2) で、位置は x=0 と x=2qE0/(mω2) の間を往復し、原点より x<0 側には行きません。初期条件がちょうど振動解だけを与えるため、時間平均した移動(ドリフト)は生じません。
E=0、B=(0,0,B) のとき、運動方程式 mv˙=qv×B の成分は
v˙x=ωcvy,v˙y=−ωcvx,v˙z=0,ωc≡mqB
です。初期条件 v(0)=(v0,0,0) のもとで解くと
vc(t)=(v0cos(ωct), −v0sin(ωct), 0)
です(第 1 式に第 2 式を代入すると v¨x=−ωc2vx となることから直ちに従います)。回転周期は
P=ωc2π=qB2πm
で、速さによらない定数です。q>0、B>0 なので、z 軸の正の側から見ると回転は時計回りで、軌道は半径 ρ=v0/ωc=mv0/(qB) の円(原点から出発した場合、中心は (0,−ρ,0))になります。
磁場によるローレンツ力 qv×B は外積の性質から常に速度 v に垂直であり、仕事率は F⋅v=q(v×B)⋅v=0 です。つまり磁場は粒子の運動の向きを変えるだけで仕事をしません。電場もないので、運動エネルギー 21m∣v∣2 は時間によらず一定に保たれます。
v=vc+vd(vd は定ベクトル)を運動方程式 mv˙=q(E+v×B) に代入します。vc が mv˙c=qvc×B を満たすので、残る条件は
E+vd×B=0
です。vd=(ux,uy,0) とおくと vd×B=(uyB,−uxB,0) なので、E0+uyB=0、ux=0、すなわち
vd=(0, −BE0, 0)
が答えです。これはいわゆる E×B ドリフト vd=E×B/B2 で、電場の向き(+x)ではなく、それと磁場の両方に垂直な −y 方向を向くのが特徴です。E0/B は電場割る磁束密度で速度の次元をもちます。
軌道は、t=0 に原点にいるとして速度を積分すると
x(t)=ωcv0sin(ωct),y(t)=ωcv0(cos(ωct)−1)−BE0t
となります。すなわち、半径 v0/ωc の円運動(周期 P)を続けながら、円の中心が −y 方向へ速さ E0/B で等速移動する運動です。1 周期あたり中心は −y 方向に PE0/B だけ進みます。概形はトロコイド曲線で、v0>E0/B なら下図のように小さなループを描きながら −y 方向へ進み、v0=E0/B ならループが潰れて尖点(カスプ)をもつサイクロイド、v0<E0/B ならループのない波打つ曲線になります。
図は v0>E0/B の場合の概形です。原点を出た粒子は右へ曲がりながらループを描き、全体としては電場と垂直な −y 方向へ一定の速さ E0/B で流れていきます。
y-z 平面(x=0)をはさむ幅 ε の薄い領域にだけ、周期がちょうど回転周期 P に等しい振動電場 E=(E0cos(2πt/P),0,0) がある場合です。これはサイクロトロン加速器の原理そのものです。
粒子は t=0 に原点を速度 (v0,0,0) で出発します。このとき電場は +x 向きに最大値 E0 をとり、速度と平行なので粒子は加速されます。領域の幅 ε は小さく、通過時間 ∼ε/v は P に比べて無視できるので、1 回の通過で得る運動エネルギーはほぼ
ΔK≃qE0ε
です。領域を出ると電場はなく、粒子は磁場だけを受けて半周期 P/2 の半円軌道(x>0 側、時計回り)を描き、t≃P/2 に再び x=0 の領域に −x 向きの速度で戻ってきます。このとき電場は E0cosπ=−E0、つまり −x 向きで、やはり速度と平行です。粒子はまた加速されます。以下同様に、t≃P には +x 向きで戻り、電場も +x 向き、という具合に、半周ごとの通過のたびに電場の向きが反転して常に加速が起きます。これが可能なのは、設問3 で見たとおり回転周期 P=2πm/(qB) が速さによらないため、速くなっても通過のタイミングが電場の振動とずれない(共鳴条件が保たれる)からです。
通過のたびに速さ vn は 21mvn+12=21mvn2+qE0ε に従って増え、半円の半径 ρn=mvn/(qB) も増えていきます(n 回通過後の運動エネルギーは 21mv02+nqE0ε、半径は n に比例して成長します)。軌道の概形は、x>0 側と x<0 側で半径がひとまわりずつ大きくなる半円を x=0 上でつなぎ合わせた、外へ広がる渦巻きです。
図の破線が加速領域(x=0 近傍)、実線が軌道です。粒子は破線を横切るたびに加速され、半円の半径を増しながら渦巻き状に外へ広がっていきます。運動エネルギーは通過回数に比例して増え、これが磁場中の等時性(P が速さによらないこと)を利用した粒子加速、すなわちサイクロトロンの動作原理です。
出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 平成27年度 博士課程 入学試験問題 物理学。問題文は要約して引用しています。
© 2026 夢現技研合同会社 ・Feeding the text to an LLM is welcome. Code samples are MIT licensed.