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平成18年度 東大院 物理学専攻 修士 数学 解答

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この年度の問題冊子は英語と数学の合冊で、英語2問・数学2問の計4問すべてが必答、試験時間は両科目合わせて120分です。ここでは数学の第1問・第2問を扱います。第1問はエルミート行列の固有射影 P(a)=uauaP(a)=\boldsymbol{u}_a\boldsymbol{u}_a^{\dagger} を組み立ててスペクトル分解 A=aaP(a)A=\sum_a aP(a) と関数 f(A)f(A) を作り、最後に eAte^{-At} が最小固有値の固有ベクトルを取り出すことを示す一本道です。第2問は変分原理の導出からベルトラミの恒等式を経て、回転面の面積を最小にする曲線が懸垂線であることまでを追います。計算量はどちらも軽く、極限操作の順序、部分積分の境界条件、第一積分と元の方程式が同値になる範囲といった論理の詰めがそのまま配点になります。

問題分野主題
第1問線形代数固有射影とスペクトル分解、虚時間発展による最小固有値の抽出
第2問変分法・微分方程式オイラー–ラグランジュ方程式、ベルトラミの恒等式、最小回転面

第1問 固有射影とスペクトル分解

Section titled “第1問 固有射影とスペクトル分解”

Cn\mathbb{C}^n の内積を (x,y)xy(\boldsymbol{x},\boldsymbol{y})\equiv\boldsymbol{x}^{\dagger}\boldsymbol{y}、ノルムを x(x,x)\lVert\boldsymbol{x}\rVert\equiv\sqrt{(\boldsymbol{x},\boldsymbol{x})} と定めます。AAnn 次のエルミート行列で、固有値はどれも縮退していないとします。固有値 aa に属する規格化された固有ベクトルを ua\boldsymbol{u}_a と書くと

Aua=aua,(ua,ua)=δa,aA\boldsymbol{u}_a=a\boldsymbol{u}_a,\qquad (\boldsymbol{u}_a,\boldsymbol{u}_{a'})=\delta_{a,a'}

です。固有値 aa がすべて実数であること、および {ua}\{\boldsymbol{u}_a\}Cn\mathbb{C}^n の正規直交完全系(縮退がないので、ちょうど nn 個の相異なる固有値に対応する nn 本のベクトル)を成すことは問題文で与えられているので、以下では証明せずに使います。

道具を二つ先に固定します。第一に、uay\boldsymbol{u}_a^{\dagger}\boldsymbol{y}1×11\times1 行列すなわちスカラー (ua,y)(\boldsymbol{u}_a,\boldsymbol{y}) であり、行列の積は結合的なので、uauay=(ua,y)ua\boldsymbol{u}_a\boldsymbol{u}_a^{\dagger}\boldsymbol{y}=(\boldsymbol{u}_a,\boldsymbol{y})\,\boldsymbol{u}_a と括り直せます。第二に、完全性から任意の xCn\boldsymbol{x}\in\mathbb{C}^n

x=acaua,ca=(ua,x)\boldsymbol{x}=\sum_a c_a\boldsymbol{u}_a,\qquad c_a=(\boldsymbol{u}_a,\boldsymbol{x})

と展開できます。係数が ca=(ua,x)c_a=(\boldsymbol{u}_a,\boldsymbol{x}) に決まるのは、展開式に左から ua\boldsymbol{u}_{a'}^{\dagger} を掛けて直交規格性を使うからです。

定義 P(a)uauaP(a)\equiv\boldsymbol{u}_a\boldsymbol{u}_a^{\dagger} をそのまま二つ並べ、結合律で真ん中をまとめます。

P(a)P(a)=ua(uaua)ua=(ua,ua)uaua=δa,auaua.P(a)P(a')=\boldsymbol{u}_a\left(\boldsymbol{u}_a^{\dagger}\boldsymbol{u}_{a'}\right)\boldsymbol{u}_{a'}^{\dagger} =(\boldsymbol{u}_a,\boldsymbol{u}_{a'})\,\boldsymbol{u}_a\boldsymbol{u}_{a'}^{\dagger} =\delta_{a,a'}\,\boldsymbol{u}_a\boldsymbol{u}_{a'}^{\dagger}.

ここで uaua\boldsymbol{u}_a^{\dagger}\boldsymbol{u}_{a'} がスカラーであることを使って行列の外に出しました。あとは二つの場合を突き合わせるだけです。aaa\neq a' のときは δa,a=0\delta_{a,a'}=0 なので左辺は零行列で、右辺 δa,aP(a)\delta_{a,a'}P(a) も零行列です。a=aa=a' のときは uaua=P(a)\boldsymbol{u}_a\boldsymbol{u}_a^{\dagger}=P(a) なので左辺は P(a)P(a)、右辺も P(a)P(a) です。両方の場合で一致するので

P(a)P(a)=δa,aP(a)P(a)P(a')=\delta_{a,a'}P(a)

が示されました。

副産物として P(a)=(uaua)=uaua=P(a)P(a)^{\dagger}=(\boldsymbol{u}_a\boldsymbol{u}_a^{\dagger})^{\dagger}=\boldsymbol{u}_a\boldsymbol{u}_a^{\dagger}=P(a)P(a)2=P(a)P(a)^2=P(a) が同時に出るので、P(a)P(a)ua\boldsymbol{u}_a が張る1次元部分空間への直交射影です。TrP(a)=Tr(uaua)=1\operatorname{Tr}P(a)=\operatorname{Tr}(\boldsymbol{u}_a^{\dagger}\boldsymbol{u}_a)=1 となることも、射影先の次元が1であることと整合します。

設定で用意した括り直しにより

P(a)x=ua(uax)=caua,ca=(ua,x)P(a)\boldsymbol{x}=\boldsymbol{u}_a\left(\boldsymbol{u}_a^{\dagger}\boldsymbol{x}\right)=c_a\boldsymbol{u}_a,\qquad c_a=(\boldsymbol{u}_a,\boldsymbol{x})

です。仮定「P(a)xP(a)\boldsymbol{x} がゼロベクトルでない」は ua0\boldsymbol{u}_a\neq\boldsymbol{0} より ca0c_a\neq0 と同値です。AA を掛けると、cac_a はスカラーなので前に出せて

AP(a)x=caAua=caaua=aP(a)xA\,P(a)\boldsymbol{x}=c_aA\boldsymbol{u}_a=c_a\,a\,\boldsymbol{u}_a=a\,P(a)\boldsymbol{x}

となります。P(a)x0P(a)\boldsymbol{x}\neq\boldsymbol{0} という仮定が固有ベクトルの定義(零ベクトルでないこと)を保証しているので、P(a)xP(a)\boldsymbol{x} は固有値 aa に属する AA の固有ベクトルです。実質は「P(a)xP(a)\boldsymbol{x}ua\boldsymbol{u}_a の定数倍であり、その定数が 0 でない」ことを言っています。

先に完全性関係 aP(a)=I\sum_aP(a)=I を出します。任意の x\boldsymbol{x} を設定の展開式で書くと

aP(a)x=acaua=x\sum_aP(a)\boldsymbol{x}=\sum_a c_a\boldsymbol{u}_a=\boldsymbol{x}

なので、aP(a)\sum_aP(a) は恒等変換です。同じ展開に AA を作用させ、Aua=auaA\boldsymbol{u}_a=a\boldsymbol{u}_a を使うと

Ax=acaAua=aacaua=aaP(a)xA\boldsymbol{x}=\sum_a c_a A\boldsymbol{u}_a=\sum_a a\,c_a\boldsymbol{u}_a=\sum_a a\,P(a)\boldsymbol{x}

を得ます。和は有限個(nn 項)なので項別の作用と交換は自由です。これが任意の xCn\boldsymbol{x}\in\mathbb{C}^n で成り立つので、標準基底 ej\boldsymbol{e}_j を代入すれば両辺の第 jj 列がすべて一致し、行列としても

A=aaP(a)A=\sum_a a\,P(a)

が成り立ちます。

検算として両辺のトレースを取ると、TrP(a)=1\operatorname{Tr}P(a)=1 より TrA=aa\operatorname{Tr}A=\sum_a a となり、「トレースは固有値の総和」という既知の事実と合います。

f(A)af(a)P(a)f(A)\equiv\sum_af(a)P(a) を基底ベクトルに作用させます。P(a)ua=(ua,ua)ua=δa,auaP(a)\boldsymbol{u}_{a'}=(\boldsymbol{u}_a,\boldsymbol{u}_{a'})\boldsymbol{u}_a=\delta_{a,a'}\boldsymbol{u}_a なので

f(A)ua=af(a)δa,aua=f(a)ua.f(A)\boldsymbol{u}_{a'}=\sum_a f(a)\,\delta_{a,a'}\boldsymbol{u}_a=f(a')\,\boldsymbol{u}_{a'}.

ua\boldsymbol{u}_{a'} は規格化されているので零ベクトルではなく、したがって各 ua\boldsymbol{u}_af(A)f(A) の固有ベクトルで、対応する固有値は f(a)f(a) です。

固有値がこれで尽きることも確かめます。f(A)v=λvf(A)\boldsymbol{v}=\lambda\boldsymbol{v}v0\boldsymbol{v}\neq\boldsymbol{0} とし、v=acaua\boldsymbol{v}=\sum_ac_a\boldsymbol{u}_a と展開すると、上の計算から

a(f(a)λ)caua=0\sum_a\left(f(a)-\lambda\right)c_a\boldsymbol{u}_a=\boldsymbol{0}

です。{ua}\{\boldsymbol{u}_a\} は1次独立なので、すべての aa について (f(a)λ)ca=0(f(a)-\lambda)c_a=0 です。v0\boldsymbol{v}\neq\boldsymbol{0} よりある aaca0c_a\neq0 となり、その aa について λ=f(a)\lambda=f(a) です。よって f(A)f(A) の固有値の集合は {f(a)}\{f(a)\} に一致し、nn 本の1次独立な固有ベクトル {ua}\{\boldsymbol{u}_a\} が得られているので f(A)f(A) はこの基底で対角化されています。f(A)=af(a)P(a)f(A)=\sum_af(a)P(a) 自体が f(A)f(A) のスペクトル分解です。ただし ff が単射でない場合には異なる固有値 aaa\neq a'f(a)=f(a)f(a)=f(a') が対応し得るので、AA と違って f(A)f(A) の固有値は縮退することがあります。そのとき固有空間は対応する ua\boldsymbol{u}_a たちが張る空間です。

整合性の確認をしておきます。f(a)=af(a)=a とすれば設問(iii)に戻ります。f(a)=a2f(a)=a^2 の場合は、設問(i)を使って

(aaP(a))(aaP(a))=a,aaaδa,aP(a)=aa2P(a)\left(\sum_a a P(a)\right)\left(\sum_{a'}a'P(a')\right)=\sum_{a,a'}aa'\,\delta_{a,a'}P(a)=\sum_a a^2P(a)

なので f(A)=A2f(A)=A^2 であり、同様に任意の多項式について f(A)f(A) が行列の代入と一致します。この定義が「関数を行列に代入する」ものとして自然であることが確認できます。

x\boldsymbol{x}x=acaua\boldsymbol{x}=\sum_ac_a\boldsymbol{u}_aca=(ua,x)c_a=(\boldsymbol{u}_a,\boldsymbol{x}) と展開します。設問(ii)で見たとおり仮定「P(a0)xP(a_0)\boldsymbol{x} がゼロベクトルでない」は ca00c_{a_0}\neq0 を意味します。f(a)=eatf(a)=e^{-at} に対する定義 eAt=aeatP(a)e^{-At}=\sum_ae^{-at}P(a) から

eAtx=aeatcaua=ea0t(ca0ua0+aa0caeαatua),αaaa0e^{-At}\boldsymbol{x}=\sum_a e^{-at}c_a\boldsymbol{u}_a =e^{-a_0t}\left(c_{a_0}\boldsymbol{u}_{a_0}+\sum_{a\neq a_0}c_a\,e^{-\alpha_at}\,\boldsymbol{u}_a\right), \qquad \alpha_a\equiv a-a_0

と書けます。a0a_0 は最小固有値で、しかも固有値に縮退がないので、aa0a\neq a_0 なるすべての固有値について αa>0\alpha_a>0 です(等号が起きないことがここで効きます)。したがって t+t\to+\inftyeαat0e^{-\alpha_at}\to0 です。

ノルムは直交規格性から交差項が落ちて

eAtx2=aca2e2at=e2a0t(ca02+aa0ca2e2αat)\lVert e^{-At}\boldsymbol{x}\rVert^2=\sum_a|c_a|^2e^{-2at} =e^{-2a_0t}\left(|c_{a_0}|^2+\sum_{a\neq a_0}|c_a|^2e^{-2\alpha_at}\right)

です。括弧の中は ca02>0|c_{a_0}|^2>0 以上なので、どの有限の tt でもノルムは 0 になりません。v\boldsymbol{v} の定義式は意味を持ちます。ea0t>0e^{-a_0t}>0 を分子分母で約すと

eAtxeAtx=ca0ua0+aa0caeαatuaca02+aa0ca2e2αat\frac{e^{-At}\boldsymbol{x}}{\lVert e^{-At}\boldsymbol{x}\rVert} =\frac{c_{a_0}\boldsymbol{u}_{a_0}+\sum_{a\neq a_0}c_a e^{-\alpha_at}\boldsymbol{u}_a} {\sqrt{|c_{a_0}|^2+\sum_{a\neq a_0}|c_a|^2e^{-2\alpha_at}}}

となります。分子・分母はいずれも有限個の項の和で、aa0a\neq a_0 の項はすべて t+t\to+\infty で 0 に収束します。分母の極限は ca00|c_{a_0}|\neq0 なので、商の極限を取ることができて

v=ca0ca0ua0.\boldsymbol{v}=\frac{c_{a_0}}{|c_{a_0}|}\,\boldsymbol{u}_{a_0}.

ca0/ca0c_{a_0}/|c_{a_0}| は絶対値 1 の複素数(x\boldsymbol{x} に依存する位相因子)です。したがって v0\boldsymbol{v}\neq\boldsymbol{0} かつ v=1\lVert\boldsymbol{v}\rVert=1 で、

Av=ca0ca0Aua0=a0vA\boldsymbol{v}=\frac{c_{a_0}}{|c_{a_0}|}A\boldsymbol{u}_{a_0}=a_0\boldsymbol{v}

が成り立ちます。v\boldsymbol{v} は最小固有値 a0a_0 に対応する規格化された固有ベクトルです。

中身は、tt を大きくすると重み eate^{-at} が最小の aa の成分を相対的に最も生き残らせる、というだけのことです。量子力学で虚時間発展 eHte^{-Ht} が試行状態から基底状態を取り出す仕組みと同じで、収束は最小固有値とその次の固有値の間隔 αmin=minaa0(aa0)\alpha_{\min}=\min_{a\neq a_0}(a-a_0) で決まる指数的な速さです。tt\to-\infty とすれば同じ議論で最大固有値の固有ベクトルが得られます。

具体例で検算します。n=2n=2A=(0001)A=\begin{pmatrix}0&0\\0&1\end{pmatrix}x=12(11)\boldsymbol{x}=\frac{1}{\sqrt2}\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix} とすると a0=0a_0=0ca0=1/20c_{a_0}=1/\sqrt2\neq0 です。

eAtxeAtx=11+e2t(1et)t(10)=ua0\frac{e^{-At}\boldsymbol{x}}{\lVert e^{-At}\boldsymbol{x}\rVert} =\frac{1}{\sqrt{1+e^{-2t}}}\begin{pmatrix}1\\e^{-t}\end{pmatrix} \xrightarrow[t\to\infty]{}\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}=\boldsymbol{u}_{a_0}

となり、一般式と合います。なお設問(iv)の整合性確認により、この eAt=aeatP(a)e^{-At}=\sum_ae^{-at}P(a) は行列のべき級数 k=0(t)kk!Ak\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-t)^k}{k!}A^k と一致します(各 P(a)P(a) の係数が eate^{-at} のテイラー級数になるため)。通常の行列指数関数と読み替えて構いません。

考える汎関数は

S=x0x1F ⁣(y(x),y(x))dxS=\int_{x_0}^{x_1}F\!\left(y(x),y'(x)\right)dx

で、y(x)dy(x)/dxy'(x)\equiv dy(x)/dx です。F(y,y)F(y,y')y(x)y(x) はどの変数についても何回でも微分可能な連続かつ一価な関数、曲線の端点は y(x0)=y0y(x_0)=y_0y(x1)=y1y(x_1)=y_1 に固定されています。FFxx を陽に含まないことが設問(ii)以降の要点です。

以下では「極値をとる」を「第1変分が消える(停留する)」の意味で使います。第1変分が消えても極大か極小かは決まらず、その判定には第2変分が必要ですが、問題が求めているのは停留条件としての微分方程式なので、この解釈で解きます。

比較曲線を1パラメータ族で用意します。何回でも微分可能な関数 η(x)\eta(x)

η(x0)=η(x1)=0\eta(x_0)=\eta(x_1)=0

を満たすように取り、実パラメータ ε\varepsilonyε(x)=y(x)+εη(x)y_{\varepsilon}(x)=y(x)+\varepsilon\eta(x) とします。δy=εη\delta y=\varepsilon\eta が微小変分で、端点が固定されているという条件が η\eta の端点条件に翻訳されています。このとき

S(ε)=x0x1F ⁣(y+εη,  y+εη)dxS(\varepsilon)=\int_{x_0}^{x_1}F\!\left(y+\varepsilon\eta,\;y'+\varepsilon\eta'\right)dx

です。被積分関数は (x,ε)(x,\varepsilon) の連続関数で、ε\varepsilon についての偏導関数も連続(FF が何回でも微分可能、積分区間はコンパクト)なので、微分と積分の順序を交換できます。連鎖律により

dSdεε=0=x0x1(Fyη+Fyη)dx.\left.\frac{dS}{d\varepsilon}\right|_{\varepsilon=0} =\int_{x_0}^{x_1}\left(\frac{\partial F}{\partial y}\eta+\frac{\partial F}{\partial y'}\eta'\right)dx.

これに ε\varepsilon を掛けたものが第1変分 δS\delta S で、δy=εη\delta y=\varepsilon\etaδy=(δy)\delta y'=(\delta y)' と書けば

δS=x0x1(Fyδy+Fydδydx)dx\delta S=\int_{x_0}^{x_1}\left(\frac{\partial F}{\partial y}\delta y+\frac{\partial F}{\partial y'}\frac{d\,\delta y}{dx}\right)dx

です。第2項を部分積分します。

x0x1Fydδydxdx=[Fyδy]x0x1x0x1ddx ⁣(Fy)δydx\int_{x_0}^{x_1}\frac{\partial F}{\partial y'}\frac{d\,\delta y}{dx}\,dx =\left[\frac{\partial F}{\partial y'}\,\delta y\right]_{x_0}^{x_1} -\int_{x_0}^{x_1}\frac{d}{dx}\!\left(\frac{\partial F}{\partial y'}\right)\delta y\,dx

で、境界項は δy(x0)=δy(x1)=0\delta y(x_0)=\delta y(x_1)=0 により消えます。よって

δS=x0x1[Fyddx ⁣(Fy)]δydx\delta S=\int_{x_0}^{x_1}\left[\frac{\partial F}{\partial y}-\frac{d}{dx}\!\left(\frac{\partial F}{\partial y'}\right)\right]\delta y\,dx

となります。したがって [x0,x1][x_0,x_1] 上で

Fyddx ⁣(Fy)=0\frac{\partial F}{\partial y}-\frac{d}{dx}\!\left(\frac{\partial F}{\partial y'}\right)=0

が成り立てば、端点を固定した任意の微小変分に対して δS=0\delta S=0 となり、SS は停留します。これが求める十分条件で、オイラー–ラグランジュ方程式です。連鎖律で展開すれば

Fy2Fyyy2Fy2y=0\frac{\partial F}{\partial y}-\frac{\partial^2F}{\partial y\,\partial y'}y'-\frac{\partial^2F}{\partial y'^2}y''=0

という yy についての2階の微分方程式です。

逆向きも成り立ちます。角括弧の中身は仮定より xx の連続関数なので、変分法の基本補題が使えます。連続関数 g(x)g(x) が、端点で消える任意の滑らかな δy\delta y について x0x1gδydx=0\int_{x_0}^{x_1}g\,\delta y\,dx=0 を満たすなら g0g\equiv0 です(もし g(x)0g(x^{*})\neq0 なら連続性から xx^{*} の近傍で gg の符号は一定で、その近傍だけに台を持つ同符号の δy\delta y を取れば積分が 0 でなくなり矛盾します)。つまりこの微分方程式は停留のための必要条件でもあります。

FFxx を陽に含まないことを使います。y(x)y(x) を解として FyF/yF-y'\partial F/\partial y'xx で微分します。連鎖律から

dFdx=Fyy+Fyy\frac{dF}{dx}=\frac{\partial F}{\partial y}y'+\frac{\partial F}{\partial y'}y''

であり(F/x=0\partial F/\partial x=0 なのでこの2項だけです)、積の微分から

ddx ⁣(yFy)=yFy+yddx ⁣(Fy)\frac{d}{dx}\!\left(y'\frac{\partial F}{\partial y'}\right)=y''\frac{\partial F}{\partial y'}+y'\frac{d}{dx}\!\left(\frac{\partial F}{\partial y'}\right)

です。差を取ると yF/yy''\,\partial F/\partial y' の項が打ち消し合って

ddx ⁣(FyFy)=y[Fyddx ⁣(Fy)]\frac{d}{dx}\!\left(F-y'\frac{\partial F}{\partial y'}\right) =y'\left[\frac{\partial F}{\partial y}-\frac{d}{dx}\!\left(\frac{\partial F}{\partial y'}\right)\right]

が残ります。設問(i)の方程式により角括弧は [x0,x1][x_0,x_1] 上で恒等的に 0 なので、この導関数は 0 です。区間は連結なので

FyFy=C(定数)F-y'\frac{\partial F}{\partial y'}=C\quad(\text{定数})

が従います。これがベルトラミの恒等式です。

論理の向きを確認しておきます。いま示したのは「オイラー–ラグランジュ方程式ならばこの第一積分」です。逆に、この第一積分を xx で微分すると上の等式から y×(角括弧)=0y'\times(\text{角括弧})=0 が出るので、y0y'\neq0 である区間では角括弧が 0、すなわち元の方程式が復元されて両者は同値です。y=0y'=0 となる点では逆が保証されず、この差は設問(v)で実際に効きます。

端点の条件 x1>x0>0x_1>x_0>0y0>0y_0>0y1>0y_1>0 が与えられています。以下では [x0,x1][x_0,x_1] 全体で y(x)>0y(x)>0 とします(曲線が xx 軸をまたぐと回転面が軸上で自分自身と接してしまい、面積の意味づけが変わるため、素直な解釈を採ります。符号が変わる場合は以下の yyy\lvert y\rvert に読み替えれば式は同じです)。

弧長要素は ds=dx2+dy2=1+y2dxds=\sqrt{dx^2+dy^2}=\sqrt{1+y'^2}\,dx です。xx から x+dxx+dx までの微小な弧を xx 軸まわりに1回転させると、上底の半径 yy、下底の半径 y+dyy+dy、母線の長さ dsds の円錐台の側面ができます。円錐台の側面積は上底と下底の半径の平均を使って 2πy+(y+dy)2ds=2πyds+O(dx2)2\pi\cdot\frac{y+(y+dy)}{2}\cdot ds=2\pi y\,ds+O(dx^2) なので、dx0dx\to0 の和として

S=2πx0x1y1+y2dxS=2\pi\int_{x_0}^{x_1}y\sqrt{1+y'^2}\,dx

を得ます。すなわち、設定に掲げた積分(問題文の(1)式)の形で

F(y,y)=2πy1+y2F(y,y')=2\pi y\sqrt{1+y'^2}

と取ればよく、これが答えです。x=x0,x1x=x_0,x_1 における平らな円板は回転面には含めていません。

確認として、長さの2乗の次元をもつことは ydxy\cdot dx の形から明らかです。また yRy\equiv R(定数)とすれば S=2πR(x1x0)S=2\pi R(x_1-x_0) となり、半径 RR、高さ x1x0x_1-x_0 の円柱の側面積に一致します。

F=2πy1+y2F=2\pi y\sqrt{1+y'^2}xx を陽に含まないので、設問(ii)のベルトラミの恒等式が使えます。

Fy=2πyy1+y2\frac{\partial F}{\partial y'}=2\pi y\,\frac{y'}{\sqrt{1+y'^2}}

より

FyFy=2π(y1+y2yy21+y2)=2πy(1+y2)yy21+y2=2πy1+y2F-y'\frac{\partial F}{\partial y'} =2\pi\left(y\sqrt{1+y'^2}-\frac{y\,y'^2}{\sqrt{1+y'^2}}\right) =2\pi\,\frac{y\left(1+y'^2\right)-y\,y'^2}{\sqrt{1+y'^2}} =\frac{2\pi y}{\sqrt{1+y'^2}}

です。これが定数 CC に等しいので、aC/(2π)a\equiv C/(2\pi) とおいて

y1+y2=a,すなわちy=a1+y2\frac{y}{\sqrt{1+y'^2}}=a,\qquad\text{すなわち}\qquad y=a\sqrt{1+y'^2}

が求める微分方程式です。y>0y>0 かつ平方根は正なので a>0a>0 です。オイラー–ラグランジュ方程式の形で書けば、F/y=2π1+y2\partial F/\partial y=2\pi\sqrt{1+y'^2}F/y\partial F/\partial y'xx 微分を整理して

Fyddx ⁣(Fy)=2π1+y2yy(1+y2)3/2\frac{\partial F}{\partial y}-\frac{d}{dx}\!\left(\frac{\partial F}{\partial y'}\right) =2\pi\,\frac{1+y'^2-y\,y''}{\left(1+y'^2\right)^{3/2}}

となるので、これが 0 であることは

yy=1+y2y\,y''=1+y'^2

と同値です。1階の式 y=a1+y2y=a\sqrt{1+y'^2} はこの2階の方程式の第一積分にあたります。

第一積分の幾何的な意味を見ておくと、y=a1+y2ay=a\sqrt{1+y'^2}\ge a なので aa は回転面のくびれ(最小半径)で、等号は y=0y'=0 となる点、つまり yy が最小になる点で成り立ちます。なお得られた方程式は停留条件であって、これを満たす曲線が実際に面積を最小にするかどうかは別に確かめる必要があります(設問(v)の最後で触れます)。

a>0a>0 として y=a1+y2y=a\sqrt{1+y'^2} を解きます。両辺を2乗して整理すると yay\ge a

adydx=±y2a2a\,\frac{dy}{dx}=\pm\sqrt{y^2-a^2}

が得られます。右辺が y=ay=ayy について微分可能でないため、解の一意性が保証されない点があります。場合を分けて漏れなく調べます。

(ア) ある区間で y0y'\equiv0 となる場合。このとき yy はその区間で定数で、1階の式から値は aa です。ところが設問(iv)の2階の方程式 yy=1+y2y\,y''=1+y'^2 に代入すると左辺は 0、右辺は 1 で成り立ちません。これは設問(ii)の逆向きが y=0y'=0 で崩れることの現れで、第一積分だけを満たす特異解です。停留曲線ではないので捨てます。回転面としては半径 aa の円柱で、円柱が面積の停留点でないことは、円柱の平均曲率が 0 でないことに対応しています。

(イ) yy' が恒等的に 0 ではない場合。ya>0y\ge a>0 なので y=acoshwy=a\cosh www は実数)と置けます。dy=asinhwdwdy=a\sinh w\,dwy2a2=asinhw\sqrt{y^2-a^2}=a\lvert\sinh w\rvert なので、sinhw0\sinh w\neq0 の範囲で1階の式は

dwdx=±1a\frac{dw}{dx}=\pm\frac{1}{a}

に帰着します。積分定数を bb として w=±(xb)/aw=\pm(x-b)/a であり、cosh\cosh が偶関数なので符号は吸収されて

y(x)=acoshxbay(x)=a\cosh\frac{x-b}{a}

を得ます。これが答えで、懸垂線(catenary)です。回転面は懸垂面(カテノイド)になります。

得られた関数が本当に解であることを確かめます。y=sinhxbay'=\sinh\frac{x-b}{a}y=1acoshxba=ya2y''=\frac{1}{a}\cosh\frac{x-b}{a}=\frac{y}{a^2} なので

yy=y2a2=cosh2xba=1+sinh2xba=1+y2y\,y''=\frac{y^2}{a^2}=\cosh^2\frac{x-b}{a}=1+\sinh^2\frac{x-b}{a}=1+y'^2

で、x=bx=by=0y'=0 となる点)を含めて区間全体で2階の方程式を満たします。また y/1+y2=acosh/cosh=ay/\sqrt{1+y'^2}=a\cosh/\cosh=a で第一積分も満たします。

これで解が尽きることも確認できます。y>0y>0 の範囲で2階の方程式は y=(1+y2)/yy''=(1+y'^2)/y と書け、右辺は (y,y)(y,y') の滑らかな関数なので局所リプシッツ、したがって初期値問題の解は一意です。初期条件 y(x)=η>0y(x^{*})=\eta>0y(x)=ηy'(x^{*})=\eta' を与えると

a=η1+η2>0,b=xaarcsinhηa=\frac{\eta}{\sqrt{1+\eta'^2}}>0,\qquad b=x^{*}-a\,\operatorname{arcsinh}\eta'

と2つの定数が一意に決まるので、上の2パラメータ族が y>0y>0 における解の全体です。

定数 a,ba,b は端点条件

acoshx0ba=y0,acoshx1ba=y1a\cosh\frac{x_0-b}{a}=y_0,\qquad a\cosh\frac{x_1-b}{a}=y_1

から決まります。この連立方程式は端点の配置によって解が2組・1組・0組のいずれにもなり得ます。解が存在しない配置(両端の半径 y0,y1y_0,y_1 に比べて x1x0x_1-x_0 が大きい場合)では懸垂面の族の中に停留曲線がなく、面積の下限は2枚の円板と軸上の線分に退化した不連続解(Goldschmidt 解)で与えられます。連続な曲線に限る限り最小値は達成されません。設問(iv)の方程式が停留条件でしかない、という注意が実際に効く場面です。

最後に検算です。得られた解に対する面積は、u(xb)/au\equiv(x-b)/a と置いて cosh2u=(1+cosh2u)/2\cosh^2u=(1+\cosh2u)/2 を使うと

S=2πx0x1y2adx=πa(x1x0)+πa(y1sinhx1bay0sinhx0ba)S=2\pi\int_{x_0}^{x_1}\frac{y^2}{a}\,dx=\pi a(x_1-x_0)+\pi a\left(y_1\sinh\frac{x_1-b}{a}-y_0\sinh\frac{x_0-b}{a}\right)

と閉じた形になります(第1式では y1+y2=yy/ay\sqrt{1+y'^2}=y\cdot y/a を使いました)。数値積分と一致することを確認できます。さらに、aa を端点間隔 x1x0x_1-x_0 に比べて大きく取ると yay\simeq a でほぼ円柱になり、上式は 2πa(x1x0)2\pi a(x_1-x_0) に近づきます。設問(iii)の円柱の側面積と整合します。

出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 平成18年度 修士課程 入学試験問題 数学。問題文は要約して引用しています。

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