この年度の数学は2問で、どちらにも解答します。第1問は微分方程式を5題並べたもので、個々の計算は軽い代わりに、解の符号、存在区間、境界条件の扱いといった解いた後の吟味に配点が寄っています。第2問は巡回シフト行列 P を主役に据え、P と可換な行列が離散フーリエ基底で対角化されることを組み立てさせ、最後に2層系の固有値へつなぐ構成です。最後の設問だけは、縮退があるかどうかで答えの λ の次数が変わります。
| 問題 | 分野 | 主題 |
|---|
| 第1問 | 微分方程式 | 線形1階方程式、連立系の固有値解法、熱方程式の境界値問題、ロジスティック型方程式 |
| 第2問 | 線形代数・フーリエ解析 | 巡回シフト行列、巡回対称行列の対角化、2層系の固有値と λ 依存性 |
変数 x, t は実数、y, y1, y2 は実関数です。独立な5題で、1階線形方程式、2成分の連立線形方程式(減衰の連鎖型と対称行列型)、1次元熱方程式の境界値問題、ロジスティック型の非線形方程式が並びます。
方程式 dxdy=−αy の両辺に eαx を掛けると、左辺が完全微分になります。
dxd(eαxy)=eαx(dxdy+αy)=0.
R は連結なので、導関数が恒等的に 0 の関数は定数です。よって eαxy=C(定数)であり、逆にこの形の関数はすべて方程式を満たします。この議論は y の零点の有無を問わないので、C1 級の解をすべて捉えています。
x=b で y=A を課すと C=Aeαb です。答えは
y(x)=Ae−α(x−b)
で、これが唯一の解です。α>0 なら x→+∞ で 0 へ減衰、α<0 なら発散、α=0 なら y≡A と、α の符号で挙動が分かれます。
第1式 dxdy1=−αy1 は設問1で b=0 とした場合そのもので、y1(x)=Ae−αx です。これを第2式 dxdy2=βy1−γy2 に入れ、eγx を掛けます。
dxd(eγxy2)=eγx(dxdy2+γy2)=βAe(γ−α)x.
γ=α なので右辺の原始関数は βAe(γ−α)x/(γ−α) です。0 から x まで積分して y2(0)=0 を使うと eγxy2(x)=γ−αβA(e(γ−α)x−1) となり、答えは
y1(x)y2(x)=Ae−αx,=γ−αβA(e−αx−e−γx)
です。y2 を元の式に代入すると y2′=γ−αβA(−αe−αx+γe−γx) で、βy1−γy2 を整理したものと一致します。
符号を調べます。A>0 なので y1(x)=Ae−αx>0 が全域で成り立ちます。y2 については、s についての積分
∫αγxe−sxds=[−e−sx]s=αs=γ=e−αx−e−γx
(x=0 でも両辺 0 で成立)を使うと
y2(x)=βAx⋅γ−α1∫αγe−sxds
と書けます。最後の因子は、γ>α なら積分区間の向きと γ−α がともに正、γ<α ならともに負なので、どちらの場合も正です(被積分関数 e−sx は正)。したがって y2(x) の符号は x の符号そのもので、
y1(x)>0 (∀x),y2(x)⎩⎨⎧>0=0<0(x>0)(x=0)(x<0)
となります。α と γ の大小関係には依存しません。x>0 を放射性崩壊の連鎖(親核 y1 が娘核 y2 を生む)と読めば、y2>0 は当然の結論です。
検算として γ→α の極限を見ると γ−αe−αx−e−γx→xe−αx で、y2→βAxe−αx となります。これは γ=α の場合に直接解いた解(このとき右辺は βAe−αx、原始関数は βAx)と一致します。
連立系を行列で書きます。
dxd(y1y2)=M(y1y2),M=c(−133−3).
M は実対称なので直交固有基底を持ちます。trM=−4c、detM=c2{(−1)(−3)−3}=0 より固有値は 0 と −4c です。固有値 0 の固有ベクトルは −y1+3y2=0 から (3,1) 方向、固有値 −4c の固有ベクトルは −y1+3y2=−4y1 すなわち 3y1+3y2=0 から (1,−3) 方向です。規格化して
e1=21(31),e2=21(1−3)
とすれば、これは正規直交系で Me1=0、Me2=−4ce2 です。
初期ベクトルを展開します。y(0)=21(3−13+1) に対して
e1⋅y(0)=41{3(3−1)+(3+1)}=1,e2⋅y(0)=41{(3−1)−3(3+1)}=−1
なので y(0)=e1−e2 です。固有基底では方程式が各成分で分離し、係数は e0⋅x=1 と e−4cx で時間発展します。定数係数線形系の初期値問題の解は一意なので
y(x)=e1−e−4cxe2
が答えで、成分に書き下すと
y1(x)=23−e−4cx,y2(x)=21+3e−4cx
です。x=0 で初期条件を再現し、代入すると y1′=2ce−4cx と −cy1+3cy2=2ce−4cx、y2′=−23ce−4cx と 3cy1−3cy2=−23ce−4cx が一致します。固有値 0 の方向は保存量を与え、実際 3y1+y2=2 が x に依らず成り立ちます。c>0 なら x→+∞ で (y1,y2)→(3/2,1/2) とゼロモードに落ち着き、c=0 なら公式はそのまま初期値の定数解を与えます。
固有値は次のようにも読めます。M=−2cI+c(133−1) で、第2項の行列の2乗は 4I なのでその固有値は ±2、よって M の固有値は −2c±2c=0,−4c です。この行列はパウリ行列で書けば σzcos60∘+σxsin60∘ の2倍なので、固有ベクトルは x 軸から 30∘ と 120∘ の方向、すなわち上の e1, −e2 です。
熱方程式 ∂t∂y=∂x2∂2y を変数分離で扱います。y=X(x)T(t) と置いて代入すると XT′=X′′T、すなわち T′/T=X′′/X です。左辺は t のみ、右辺は x のみの関数なので、両辺は共通の定数 μ に等しく
X′′=μX,T′=μT.
境界条件は x≤−a と x≥a で y=0 ですから、x=±a を含めて y が一つの関数として定まるには X(a)=X(−a)=0 が必要です。μ の符号で場合分けします。
μ=ν2>0 のとき X=c+eνx+c−e−νx で、X(±a)=0 は c± についての連立1次方程式になり、その係数行列の行列式は e2νa−e−2νa=2sinh(2νa)=0(ν>0, a>0)です。よって c±=0 で自明解のみです。μ=0 のとき X=c1+c2x で、X(±a)=0 から c1=c2=0 です。したがって μ=−k2(k>0)でなければなりません。このとき X=c1coskx+c2sinkx で、境界条件の和と差を取ると
X(a)+X(−a)=2c1coska=0,X(a)−X(−a)=2c2sinka=0.
coska と sinka が同時に 0 になることはないので、coska=0(このとき c2=0)または sinka=0(このとき c1=0)です。前者は k=(2m−1)π/(2a) で X∝coskx、後者は k=mπ/a で X∝sinkx(m=1,2,…)で、両方をまとめると
k=kn≡2anπ (n=1,2,…),Xn(x)=sin2anπ(x+a)
となります。T=e−kn2t とあわせて、求める解の一つは
yn(x,t)=exp(−4a2n2π2t)sin2anπ(x+a)(−a<x<a),yn=0(∣x∣≥a)
です。とくに n=1 は sin(2aπx+2π)=cos2aπx なので
y(x,t)=exp(−4a2π2t)cos2aπx(−a<x<a)
が最も簡単な例になります。実際 ∂y/∂t=−4a2π2y、∂2y/∂x2=−4a2π2y で方程式を満たし、x=±a で y=0、−a<x<a で C∞ 級、かつ定数ではありません。線形性から有限和 ∑ncnyn(cn は任意の実定数)もすべて解で、係数の減衰が十分速ければ無限級数も解になります。
x=±a での接続について一言補うと、n=1 の解は x→a−0 で ∂y/∂x→−2aπe−π2t/(4a2)=0 なので、外側の y≡0 と滑らかにはつながらず、R 全体で見ると x=±a では微分可能ではありません。設問が微分可能性を −a<x<a に限って要求しているのはこのためです。熱方程式の解は領域の内部で x について解析的になるので、x=±a をまたいで方程式を満たしたまま外側で恒等的に 0 とすることは、y≡0 以外には不可能です。
dxdy=−α(1−βy)y の右辺を展開すると −αy+αβy2 で、y について非線形なロジスティック型の方程式です。右辺は y の多項式なので y について局所リプシッツであり、初期値問題の解は一意です。y=0 と y=1/β は定常解なので、一意性より他の解がこれらの値を有限の x で取ることはありません。A>0 より、解は 0<y<1/β、y≡1/β、y>1/β のいずれかの領域に留まります。どの場合も y(1−βy)=0 なので変数分離ができます。
y(1−βy)1=y1+1−βyβ
を使うと dxdln1−βyy=−α となり、1−βyy=Ke−αx(K は定数)を得ます。符号も含めてこの形で書けるのは、y/(1−βy) が連続で符号を変えないためです。x=0 で K=1−βAA です。y について解くと y(1+βKe−αx)=Ke−αx、すなわち y=eαx+βKK で、K を戻して
y(x)=βA+(1−βA)eαxA
が答えです。x=0 で分母は βA+1−βA=1 となり y(0)=A を再現します。代入して確かめると、分母を D と書けば y′=−Aα(1−βA)eαx/D2、一方 −αy(1−βy)=−αA(D−βA)/D2=−αA(1−βA)eαx/D2 で一致します。β→0 とすると y→Ae−αx で設問1の答えに帰着します。
存在区間は A と 1/β の大小で変わります。0<A<1/β のときは分母が正の2項の和なので x によらず正で、解は R 全体で定義され、x→−∞ で 1/β、x→+∞ で 0 へ単調減少します。A=1/β のときは上式が y≡1/β を与えます。A>1/β のときは 1−βA<0 で分母が
x∗=α1lnβA−1βA>0
で 0 になるので、解は (−∞,x∗) でのみ定義され、x→x∗−0 で +∞ に発散します(x→−∞ では 1/β に近づき、単調増加)。y=1/β が不安定、y=0 が(x を増やす向きに)安定な定常解であることと整合しています。
n (≥3) 次の実正方行列 A(ϵ,t) は、対角成分が ϵ、隣接する非対角成分 Ai,i+1=Ai+1,i が t、さらに角の A1,n=An,1 も t、他はすべて 0 という行列です。ϵ, t は実数で t>0 とします。以下、添字は 1 から n までとし、n+1 を 1、0 を n と読む巡回的な約束(modn)を使います。この約束のもとで成分は
Aij=ϵδij+t(δj,i+1+δj,i−1)
とまとめられます。n≥3 なので右辺の3種類の項が同じ成分に重なることはありません。Aij が i−j(modn)だけで決まること、すなわち巡回行列であることが以下すべての鍵です。物理的には n サイトの環状強束縛模型で、ϵ がサイトエネルギー、t が飛び移り積分に対応します。
条件は「第 i 成分が入力の第 i+1 成分になる」という要求ですから、Pij=δj,i+1(添字は modn)です。成分で書けば Pi,i+1=1(i=1,2,…,n−1)、Pn,1=1、それ以外は 0 で、
P=00⋮0110⋮0001⋮00⋯⋯⋱⋯⋯00⋮10
です。実際 (Px)i=∑jPijxj=xi+1(i≤n−1)、(Px)n=x1 となり要求を満たします。任意のベクトルに対する作用が指定されているので、P はこれ以外にありません。P は各行各列にちょうど一つ 1 を持つ置換行列なので実直交行列で、PTP=I、P−1=PT、そして n 回巡回させると元に戻るので Pn=I です。
答えは零行列 PA−AP=O です。成分で確かめます。Pik=δk,i+1 より
(PA)ij=k∑PikAkj=Ai+1,j,(AP)ij=k∑AikPkj=k∑Aikδj,k+1=Ai,j−1
です(添字はすべて modn)。A は巡回行列で Akl が k−l (modn) のみに依存し、(i+1)−j=i−(j−1) ですから Ai+1,j=Ai,j−1、つまり (PA)ij=(AP)ij が任意の i,j で成り立ちます。
同じことを行列の言葉で見ておきます。P−1=PT の成分は (P−1)ij=Pji=δi,j+1 なので、P は (i,i+1) 成分と (n,1) 成分に、P−1 は (i+1,i) 成分と (1,n) 成分に 1 を持ちます。これは A の非対角成分の配置とちょうど一致するので
A(ϵ,t)=ϵI+t(P+P−1)
と書けます(n≥3 が必要で、n=2 では角の成分と隣接成分が重なって成立しません)。P は I, P, P−1 のいずれとも可換ですから A と可換で、PA−AP=O です。この表示は設問(v)でそのまま使います。
Pu=λu を成分で書くと ui+1=λui(i=1,…,n−1)と u1=λun です。前者から ui=λi−1u1、これを後者に入れて u1=λnu1 を得ます。u1=0 なら順に全成分が 0 になって固有ベクトルになりませんから u1=0 で、λn=1 が必要です。逆に λn=1 ならこの u は固有ベクトルです。よって ω≡e2πi/n として
λk=ωk−1=e2πi(k−1)/n,uk=1ωk−1ω2(k−1)⋮ω(n−1)(k−1)(k=1,2,…,n)
が P の固有値と固有縦ベクトルです。n 個の λk は互いに異なる(1 の n 乗根がすべて現れる)ので、異なる固有値に属する固有ベクトルは線形独立という一般論から u1,…,un は線形独立です。直接見ても、これらを並べた行列は節点 ωk−1 のファンデルモンド行列で、行列式が ∏k<l(ωl−1−ωk−1)=0 となり同じ結論になります。n≥3 では λk は一般に複素数なので、固有ベクトルも複素ベクトルです。
Px=λx、Py=μy、λ=μ とします。設問(iii)より λn=μn=1 なので ∣λ∣=∣μ∣=1、とくに λ∗=λ−1 です。P は実直交行列なので P†P=PTP=I であり、設問(ii)の AP=PA も使うと
x†Ay=x†P†PAy=(Px)†(APy)=(λx)†(μAy)=λ∗μx†Ay=λμx†Ay
となります。λ=μ かつ λ,μ=0 より μ/λ=1 ですから、x†Ay=0 でなければなりません。証明終わりです。同じ計算で A を I に置き換えれば x†y=0 も従い、P の固有ベクトルはエルミート内積について互いに直交します。使ったのは P のユニタリ性、固有値が絶対値 1 であること、A と P の可換性の3点だけです。
設問(iv)より uk は互いに直交し、uk†uk=∑j=1n∣ω(j−1)(k−1)∣2=n なので、規格化して並べた
U=n1(u1 u2 ⋯ un),Ujk=n1ω(j−1)(k−1)
はユニタリ行列です。直接確認すると、l=k のとき等比数列の和が
(U†U)kl=n1j=1∑nω−(k−1)(j−1)ω(l−1)(j−1)=n1m=0∑n−1ω(l−k)m=n1⋅1−ωl−k1−ω(l−k)n=0
となり(ω(l−k)n=1、分母は l=k (modn) で 0 でない)、k=l では 1 です。これは離散フーリエ変換の行列です。
設問(ii)の表示 A=ϵI+t(P+P−1) と Puk=ωk−1uk、P−1uk=ω−(k−1)uk から
Auk={ϵ+t(ωk−1+ω−(k−1))}uk={ϵ+2tcosn2π(k−1)}uk
なので、U の列がすべて A の固有ベクトルになり、D=U†AU は対角行列です。答えは上の U と
D=diag(d1,d2,…,dn),dk=ϵ+2tcosn2π(k−1)
です。dk が実数であることは A が実対称であることと整合し、∑k=1ncosn2π(k−1)=0 より trD=nϵ=trA も合っています。t>0 なので最大固有値は k=1 の ϵ+2t(固有ベクトルは全成分が等しいベクトル)です。k−1 と n−(k−1) で cos が同じ値になるため、固有値は k=1 と(n が偶数のときの)k=n/2+1 を除いて2重に縮退します。
対象は n 次のブロックを2行2列に並べた 2n 次の実対称行列
B=(A(0,t)λIλIA(0,2t))
(I は n 次単位行列、λ は正の実数)です。S≡P+P−1 と置くと A(0,t)=tS、A(0,2t)=2tS で、B の4つのブロックはすべて S と I だけで書けます。設問1(v) より Suk=2cosθkuk、ここで
θk≡n2π(k−1),ck≡cosθk(k=1,2,…,n)
です。2n 次元ベクトルを上半分 p と下半分 q(ともに n 次元)に分けて書くと
B(pq)=(tSp+λqλp+2tSq)
なので、p=auk, q=buk という形(同じ k を上下で使う)を代入すると
B(aukbuk)=((2tcka+λb)uk(λa+4tckb)uk)
となり、uk の係数だけの問題に落ちます。つまり 2×2 行列
Bk=(2tckλλ4tck)
の固有値が B の固有値です。det(Bk−μI)=μ2−6tckμ+8t2ck2−λ2=0 を解くと
μ=3tck±9t2ck2−8t2ck2+λ2=3tck±t2ck2+λ2
です。よって B の 2n 個の固有値は
μk±=3tcosθk±t2cos2θk+λ2,θk=n2π(k−1),k=1,2,…,n
です。これで全部であることを確認します。W=(U00U) は 2n 次のユニタリ行列で、設問1(v) の U†SU=2C(C=diag(c1,…,cn))を使うと
W†BW=(2tCλIλI4tC)
となり、4つのブロックがすべて対角行列になります。基底を並べ替えて上半分と下半分の第 k 成分を隣同士に置く置換(これもユニタリ変換)を施すと、これは B1,B2,…,Bn を対角に並べたブロック対角行列そのものです。ユニタリ相似は固有値を重複度も込めて変えないので、B の固有値は各 Bk の固有値を全部集めたものに等しく、λ>0 より判別式 t2ck2+λ2 は正で各 Bk が相異なる2つの固有値を持つことから、上の 2n 個が求める固有値です。固有ベクトルは Bk の固有ベクトル (a,b) を使った (auk,buk) で与えられます。
検算します。B は実対称なので固有値は実数で、上式も実数です。∑k(μk++μk−)=6t∑kck=0 で、B の対角成分がすべて 0 であること(trB=0)と一致します。また μk+μk−=8t2ck2−λ2=detBk も合っています。λ=0 とすると μ=3tck±t∣ck∣、すなわち {2tck,4tck} となり、A(0,t) と A(0,2t) の固有値(設問1(v) で ϵ=0 とおいたもの)を並べたものに戻ります。
λ=0 のときの固有値は、上の検算のとおり A(0,t) の固有値 2tck と A(0,2t) の固有値 4tck を合わせた 2n 個です。λ=0 にすると、同じ k に属するこの2個だけが混ざり合い(λI はフーリエ添字 k について対角なので、異なる k の間には結合を作りません)、
μk++μk−=6tck,μk+−μk−=2t2ck2+λ2 ≥ 2t∣ck∣
となります。2個の和は λ に依らず保たれ、間隔は必ず広がります。上の準位は上へ、下の準位は下へ動く反発です。
0<λ≪t での変化の大きさを見ます。ck=0 のとき、λ≪t∣ck∣ を仮定して平方根を展開すると
t2ck2+λ2=t∣ck∣(1+2t2ck2λ2+O(t4ck4λ4))
なので、ck の符号によらず
μ≃2tck−2tckλ2,μ≃4tck+2tckλ2
の2本になります。つまり固有値の微小な変化は λ の2乗に比例し、大きさは λ2/(2t∣ck∣) です。これは非対角要素 λ による2次摂動 λ2/(E−E′) そのもので、E−E′=2tck−4tck=−2tck を入れた式と一致します。
例外は ck=0、すなわち cosn2π(k−1)=0 の場合です。これは n が 4 の倍数のときに限り起こり、k−1=n/4 と k−1=3n/4 の2つの k が該当します。このとき λ=0 で2本の固有値が 0 に縮退しており、厳密な固有値は
μ±=±λ
となって、変化は λ の1乗に比例します。縮退した2準位が結合すると分裂が結合の強さそのものの大きさになる、という縮退摂動論の標準的な結果です。
答えを整理します。λ による固有値の微小変化は、対応する λ=0 の2準位 2tck と 4tck が縮退していなければ λ の2乗に比例し、縮退している(ck=0、n が 4 の倍数のときのみ存在)場合は λ の1乗に比例します。より正確には λ と t∣ck∣ の比が効いていて、λ≪t∣ck∣ なら2乗、λ≫t∣ck∣ なら μ±≃3tck±λ で1乗に移ります。なお λ=0 の固有値には ck=ck′ による縮退や、2tck=4tck′(k=k′)という偶然の一致も起こり得ますが、これらは異なる k の間の縮退なので λI が結合せず、変化は2乗のままです。物理的には、飛び移り積分が t と 2t の2本の環(2つのバンド)を層間結合 λ でつないだ模型で、バンドが交差する点(ck=0、両バンドのエネルギーが 0 で一致する点)だけ λ に比例したギャップが開き、それ以外では λ2 の準位反発が起きる、という描像になります。
出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 平成26年度 修士課程 入学試験問題 数学。問題文は要約して引用しています。
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