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平成26年度 東大院 物理学専攻 修士 数学 解答

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この年度の数学は2問で、どちらにも解答します。第1問は微分方程式を5題並べたもので、個々の計算は軽い代わりに、解の符号、存在区間、境界条件の扱いといった解いた後の吟味に配点が寄っています。第2問は巡回シフト行列 PP を主役に据え、PP と可換な行列が離散フーリエ基底で対角化されることを組み立てさせ、最後に2層系の固有値へつなぐ構成です。最後の設問だけは、縮退があるかどうかで答えの λ\lambda の次数が変わります。

問題分野主題
第1問微分方程式線形1階方程式、連立系の固有値解法、熱方程式の境界値問題、ロジスティック型方程式
第2問線形代数・フーリエ解析巡回シフト行列、巡回対称行列の対角化、2層系の固有値と λ\lambda 依存性

変数 xx, tt は実数、yy, y1y_1, y2y_2 は実関数です。独立な5題で、1階線形方程式、2成分の連立線形方程式(減衰の連鎖型と対称行列型)、1次元熱方程式の境界値問題、ロジスティック型の非線形方程式が並びます。

方程式 dydx=αy\dfrac{dy}{dx}=-\alpha y の両辺に eαxe^{\alpha x} を掛けると、左辺が完全微分になります。

ddx(eαxy)=eαx(dydx+αy)=0.\frac{d}{dx}\left(e^{\alpha x}y\right)=e^{\alpha x}\left(\frac{dy}{dx}+\alpha y\right)=0 .

R\mathbb{R} は連結なので、導関数が恒等的に 0 の関数は定数です。よって eαxy=Ce^{\alpha x}y=C(定数)であり、逆にこの形の関数はすべて方程式を満たします。この議論は yy の零点の有無を問わないので、C1C^1 級の解をすべて捉えています。

x=bx=by=Ay=A を課すと C=AeαbC=Ae^{\alpha b} です。答えは

y(x)=Aeα(xb)y(x)=A\,e^{-\alpha(x-b)}

で、これが唯一の解です。α>0\alpha>0 なら x+x\to+\infty で 0 へ減衰、α<0\alpha<0 なら発散、α=0\alpha=0 なら yAy\equiv A と、α\alpha の符号で挙動が分かれます。

第1式 dy1dx=αy1\dfrac{dy_1}{dx}=-\alpha y_1 は設問1で b=0b=0 とした場合そのもので、y1(x)=Aeαxy_1(x)=Ae^{-\alpha x} です。これを第2式 dy2dx=βy1γy2\dfrac{dy_2}{dx}=\beta y_1-\gamma y_2 に入れ、eγxe^{\gamma x} を掛けます。

ddx(eγxy2)=eγx(dy2dx+γy2)=βAe(γα)x.\frac{d}{dx}\left(e^{\gamma x}y_2\right)=e^{\gamma x}\left(\frac{dy_2}{dx}+\gamma y_2\right)=\beta A\,e^{(\gamma-\alpha)x}.

γα\gamma\neq\alpha なので右辺の原始関数は βAe(γα)x/(γα)\beta A e^{(\gamma-\alpha)x}/(\gamma-\alpha) です。00 から xx まで積分して y2(0)=0y_2(0)=0 を使うと eγxy2(x)=βAγα(e(γα)x1)e^{\gamma x}y_2(x)=\dfrac{\beta A}{\gamma-\alpha}\left(e^{(\gamma-\alpha)x}-1\right) となり、答えは

y1(x)=Aeαx,y2(x)=βAγα(eαxeγx)\begin{aligned} y_1(x)&=A\,e^{-\alpha x},\\ y_2(x)&=\frac{\beta A}{\gamma-\alpha}\left(e^{-\alpha x}-e^{-\gamma x}\right) \end{aligned}

です。y2y_2 を元の式に代入すると y2=βAγα(αeαx+γeγx)y_2'=\frac{\beta A}{\gamma-\alpha}(-\alpha e^{-\alpha x}+\gamma e^{-\gamma x}) で、βy1γy2\beta y_1-\gamma y_2 を整理したものと一致します。

符号を調べます。A>0A>0 なので y1(x)=Aeαx>0y_1(x)=Ae^{-\alpha x}>0 が全域で成り立ちます。y2y_2 については、ss についての積分

αγxesxds=[esx]s=αs=γ=eαxeγx\int_{\alpha}^{\gamma}x\,e^{-sx}\,ds=\Big[-e^{-sx}\Big]_{s=\alpha}^{s=\gamma}=e^{-\alpha x}-e^{-\gamma x}

x=0x=0 でも両辺 0 で成立)を使うと

y2(x)=βAx1γααγesxdsy_2(x)=\beta A\,x\cdot\frac{1}{\gamma-\alpha}\int_{\alpha}^{\gamma}e^{-sx}\,ds

と書けます。最後の因子は、γ>α\gamma>\alpha なら積分区間の向きと γα\gamma-\alpha がともに正、γ<α\gamma<\alpha ならともに負なので、どちらの場合も正です(被積分関数 esxe^{-sx} は正)。したがって y2(x)y_2(x) の符号は xx の符号そのもので、

y1(x)>0 (x),y2(x){>0(x>0)=0(x=0)<0(x<0)y_1(x)>0\ (\forall x),\qquad y_2(x)\begin{cases}>0 & (x>0)\\ =0 & (x=0)\\ <0 & (x<0)\end{cases}

となります。α\alphaγ\gamma の大小関係には依存しません。x>0x>0 を放射性崩壊の連鎖(親核 y1y_1 が娘核 y2y_2 を生む)と読めば、y2>0y_2>0 は当然の結論です。

検算として γα\gamma\to\alpha の極限を見ると eαxeγxγαxeαx\dfrac{e^{-\alpha x}-e^{-\gamma x}}{\gamma-\alpha}\to x\,e^{-\alpha x} で、y2βAxeαxy_2\to\beta A\,x\,e^{-\alpha x} となります。これは γ=α\gamma=\alpha の場合に直接解いた解(このとき右辺は βAeαx\beta A e^{-\alpha x}、原始関数は βAx\beta A x)と一致します。

連立系を行列で書きます。

ddx(y1y2)=M(y1y2),M=c(1333).\frac{d}{dx}\begin{pmatrix}y_1\\y_2\end{pmatrix}=M\begin{pmatrix}y_1\\y_2\end{pmatrix}, \qquad M=c\begin{pmatrix}-1&\sqrt{3}\\ \sqrt{3}&-3\end{pmatrix}.

MM は実対称なので直交固有基底を持ちます。trM=4c\operatorname{tr}M=-4cdetM=c2{(1)(3)3}=0\det M=c^2\{(-1)(-3)-3\}=0 より固有値は 004c-4c です。固有値 00 の固有ベクトルは y1+3y2=0-y_1+\sqrt{3}y_2=0 から (3,1)(\sqrt{3},1) 方向、固有値 4c-4c の固有ベクトルは y1+3y2=4y1-y_1+\sqrt{3}y_2=-4y_1 すなわち 3y1+3y2=03y_1+\sqrt{3}y_2=0 から (1,3)(1,-\sqrt{3}) 方向です。規格化して

e1=12(31),e2=12(13)\boldsymbol{e}_1=\frac{1}{2}\begin{pmatrix}\sqrt{3}\\1\end{pmatrix},\qquad \boldsymbol{e}_2=\frac{1}{2}\begin{pmatrix}1\\-\sqrt{3}\end{pmatrix}

とすれば、これは正規直交系で Me1=0M\boldsymbol{e}_1=0Me2=4ce2M\boldsymbol{e}_2=-4c\,\boldsymbol{e}_2 です。

初期ベクトルを展開します。y(0)=12(313+1)\boldsymbol{y}(0)=\frac{1}{2}\begin{pmatrix}\sqrt{3}-1\\ \sqrt{3}+1\end{pmatrix} に対して

e1y(0)=14{3(31)+(3+1)}=1,e2y(0)=14{(31)3(3+1)}=1\boldsymbol{e}_1\cdot\boldsymbol{y}(0)=\frac{1}{4}\left\{\sqrt{3}(\sqrt{3}-1)+(\sqrt{3}+1)\right\}=1, \qquad \boldsymbol{e}_2\cdot\boldsymbol{y}(0)=\frac{1}{4}\left\{(\sqrt{3}-1)-\sqrt{3}(\sqrt{3}+1)\right\}=-1

なので y(0)=e1e2\boldsymbol{y}(0)=\boldsymbol{e}_1-\boldsymbol{e}_2 です。固有基底では方程式が各成分で分離し、係数は e0x=1e^{0\cdot x}=1e4cxe^{-4cx} で時間発展します。定数係数線形系の初期値問題の解は一意なので

y(x)=e1e4cxe2\boldsymbol{y}(x)=\boldsymbol{e}_1-e^{-4cx}\,\boldsymbol{e}_2

が答えで、成分に書き下すと

y1(x)=3e4cx2,y2(x)=1+3e4cx2y_1(x)=\frac{\sqrt{3}-e^{-4cx}}{2},\qquad y_2(x)=\frac{1+\sqrt{3}\,e^{-4cx}}{2}

です。x=0x=0 で初期条件を再現し、代入すると y1=2ce4cxy_1'=2ce^{-4cx}cy1+3cy2=2ce4cx-cy_1+\sqrt{3}cy_2=2ce^{-4cx}y2=23ce4cxy_2'=-2\sqrt{3}ce^{-4cx}3cy13cy2=23ce4cx\sqrt{3}cy_1-3cy_2=-2\sqrt{3}ce^{-4cx} が一致します。固有値 00 の方向は保存量を与え、実際 3y1+y2=2\sqrt{3}y_1+y_2=2xx に依らず成り立ちます。c>0c>0 なら x+x\to+\infty(y1,y2)(3/2,1/2)(y_1,y_2)\to(\sqrt{3}/2,\,1/2) とゼロモードに落ち着き、c=0c=0 なら公式はそのまま初期値の定数解を与えます。

固有値は次のようにも読めます。M=2cI+c(1331)M=-2cI+c\begin{pmatrix}1&\sqrt{3}\\ \sqrt{3}&-1\end{pmatrix} で、第2項の行列の2乗は 4I4I なのでその固有値は ±2\pm2、よって MM の固有値は 2c±2c=0,4c-2c\pm2c=0,\,-4c です。この行列はパウリ行列で書けば σzcos60+σxsin60\sigma_z\cos60^\circ+\sigma_x\sin60^\circ の2倍なので、固有ベクトルは xx 軸から 3030^\circ120120^\circ の方向、すなわち上の e1\boldsymbol{e}_1, e2-\boldsymbol{e}_2 です。

熱方程式 yt=2yx2\dfrac{\partial y}{\partial t}=\dfrac{\partial^2y}{\partial x^2} を変数分離で扱います。y=X(x)T(t)y=X(x)T(t) と置いて代入すると XT=XTXT'=X''T、すなわち T/T=X/XT'/T=X''/X です。左辺は tt のみ、右辺は xx のみの関数なので、両辺は共通の定数 μ\mu に等しく

X=μX,T=μT.X''=\mu X,\qquad T'=\mu T .

境界条件は xax\le -axax\ge ay=0y=0 ですから、x=±ax=\pm a を含めて yy が一つの関数として定まるには X(a)=X(a)=0X(a)=X(-a)=0 が必要です。μ\mu の符号で場合分けします。

μ=ν2>0\mu=\nu^2>0 のとき X=c+eνx+ceνxX=c_+e^{\nu x}+c_-e^{-\nu x} で、X(±a)=0X(\pm a)=0c±c_\pm についての連立1次方程式になり、その係数行列の行列式は e2νae2νa=2sinh(2νa)0e^{2\nu a}-e^{-2\nu a}=2\sinh(2\nu a)\neq0ν>0\nu>0, a>0a>0)です。よって c±=0c_\pm=0 で自明解のみです。μ=0\mu=0 のとき X=c1+c2xX=c_1+c_2x で、X(±a)=0X(\pm a)=0 から c1=c2=0c_1=c_2=0 です。したがって μ=k2\mu=-k^2k>0k>0)でなければなりません。このとき X=c1coskx+c2sinkxX=c_1\cos kx+c_2\sin kx で、境界条件の和と差を取ると

X(a)+X(a)=2c1coska=0,X(a)X(a)=2c2sinka=0.X(a)+X(-a)=2c_1\cos ka=0,\qquad X(a)-X(-a)=2c_2\sin ka=0 .

coska\cos kasinka\sin ka が同時に 0 になることはないので、coska=0\cos ka=0(このとき c2=0c_2=0)または sinka=0\sin ka=0(このとき c1=0c_1=0)です。前者は k=(2m1)π/(2a)k=(2m-1)\pi/(2a)XcoskxX\propto\cos kx、後者は k=mπ/ak=m\pi/aXsinkxX\propto\sin kxm=1,2,m=1,2,\dots)で、両方をまとめると

k=knnπ2a (n=1,2,),Xn(x)=sinnπ(x+a)2ak=k_n\equiv\frac{n\pi}{2a}\ (n=1,2,\dots),\qquad X_n(x)=\sin\frac{n\pi(x+a)}{2a}

となります。T=ekn2tT=e^{-k_n^2t} とあわせて、求める解の一つは

yn(x,t)=exp ⁣(n2π24a2t)sinnπ(x+a)2a(a<x<a),yn=0(xa)y_n(x,t)=\exp\!\left(-\frac{n^2\pi^2}{4a^2}t\right)\sin\frac{n\pi(x+a)}{2a}\quad(-a<x<a), \qquad y_n=0\quad(|x|\ge a)

です。とくに n=1n=1sin(πx2a+π2)=cosπx2a\sin\left(\frac{\pi x}{2a}+\frac{\pi}{2}\right)=\cos\frac{\pi x}{2a} なので

y(x,t)=exp ⁣(π24a2t)cosπx2a(a<x<a)y(x,t)=\exp\!\left(-\frac{\pi^2}{4a^2}t\right)\cos\frac{\pi x}{2a}\quad(-a<x<a)

が最も簡単な例になります。実際 y/t=π24a2y\partial y/\partial t=-\frac{\pi^2}{4a^2}y2y/x2=π24a2y\partial^2y/\partial x^2=-\frac{\pi^2}{4a^2}y で方程式を満たし、x=±ax=\pm ay=0y=0a<x<a-a<x<aCC^\infty 級、かつ定数ではありません。線形性から有限和 ncnyn\sum_n c_ny_ncnc_n は任意の実定数)もすべて解で、係数の減衰が十分速ければ無限級数も解になります。

x=±ax=\pm a での接続について一言補うと、n=1n=1 の解は xa0x\to a-0y/xπ2aeπ2t/(4a2)0\partial y/\partial x\to-\frac{\pi}{2a}e^{-\pi^2t/(4a^2)}\neq0 なので、外側の y0y\equiv0 と滑らかにはつながらず、R\mathbb{R} 全体で見ると x=±ax=\pm a では微分可能ではありません。設問が微分可能性を a<x<a-a<x<a に限って要求しているのはこのためです。熱方程式の解は領域の内部で xx について解析的になるので、x=±ax=\pm a をまたいで方程式を満たしたまま外側で恒等的に 0 とすることは、y0y\equiv0 以外には不可能です。

dydx=α(1βy)y\dfrac{dy}{dx}=-\alpha(1-\beta y)y の右辺を展開すると αy+αβy2-\alpha y+\alpha\beta y^2 で、yy について非線形なロジスティック型の方程式です。右辺は yy の多項式なので yy について局所リプシッツであり、初期値問題の解は一意です。y=0y=0y=1/βy=1/\beta は定常解なので、一意性より他の解がこれらの値を有限の xx で取ることはありません。A>0A>0 より、解は 0<y<1/β0<y<1/\betay1/βy\equiv1/\betay>1/βy>1/\beta のいずれかの領域に留まります。どの場合も y(1βy)0y(1-\beta y)\neq0 なので変数分離ができます。

1y(1βy)=1y+β1βy\frac{1}{y(1-\beta y)}=\frac{1}{y}+\frac{\beta}{1-\beta y}

を使うと ddxlny1βy=α\dfrac{d}{dx}\ln\left\lvert\dfrac{y}{1-\beta y}\right\rvert=-\alpha となり、y1βy=Keαx\dfrac{y}{1-\beta y}=K e^{-\alpha x}KK は定数)を得ます。符号も含めてこの形で書けるのは、y/(1βy)y/(1-\beta y) が連続で符号を変えないためです。x=0x=0K=A1βAK=\dfrac{A}{1-\beta A} です。yy について解くと y(1+βKeαx)=Keαxy\left(1+\beta Ke^{-\alpha x}\right)=Ke^{-\alpha x}、すなわち y=Keαx+βKy=\dfrac{K}{e^{\alpha x}+\beta K} で、KK を戻して

y(x)=AβA+(1βA)eαxy(x)=\frac{A}{\beta A+(1-\beta A)e^{\alpha x}}

が答えです。x=0x=0 で分母は βA+1βA=1\beta A+1-\beta A=1 となり y(0)=Ay(0)=A を再現します。代入して確かめると、分母を DD と書けば y=Aα(1βA)eαx/D2y'=-A\alpha(1-\beta A)e^{\alpha x}/D^2、一方 αy(1βy)=αA(DβA)/D2=αA(1βA)eαx/D2-\alpha y(1-\beta y)=-\alpha A(D-\beta A)/D^2=-\alpha A(1-\beta A)e^{\alpha x}/D^2 で一致します。β0\beta\to0 とすると yAeαxy\to Ae^{-\alpha x} で設問1の答えに帰着します。

存在区間は AA1/β1/\beta の大小で変わります。0<A<1/β0<A<1/\beta のときは分母が正の2項の和なので xx によらず正で、解は R\mathbb{R} 全体で定義され、xx\to-\infty1/β1/\betax+x\to+\infty で 0 へ単調減少します。A=1/βA=1/\beta のときは上式が y1/βy\equiv1/\beta を与えます。A>1/βA>1/\beta のときは 1βA<01-\beta A<0 で分母が

x=1αlnβAβA1>0x_*=\frac{1}{\alpha}\ln\frac{\beta A}{\beta A-1}>0

で 0 になるので、解は (,x)(-\infty,x_*) でのみ定義され、xx0x\to x_*-0++\infty に発散します(xx\to-\infty では 1/β1/\beta に近づき、単調増加)。y=1/βy=1/\beta が不安定、y=0y=0 が(xx を増やす向きに)安定な定常解であることと整合しています。

第2問 巡回シフト行列と巡回対称行列の対角化

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n (3)n\ (\ge3) 次の実正方行列 A(ϵ,t)A(\epsilon,t) は、対角成分が ϵ\epsilon、隣接する非対角成分 Ai,i+1=Ai+1,iA_{i,i+1}=A_{i+1,i}tt、さらに角の A1,n=An,1A_{1,n}=A_{n,1}tt、他はすべて 0 という行列です。ϵ\epsilon, tt は実数で t>0t>0 とします。以下、添字は 11 から nn までとし、n+1n+11100nn と読む巡回的な約束(modn\bmod n)を使います。この約束のもとで成分は

Aij=ϵδij+t(δj,i+1+δj,i1)A_{ij}=\epsilon\,\delta_{ij}+t\left(\delta_{j,i+1}+\delta_{j,i-1}\right)

とまとめられます。n3n\ge3 なので右辺の3種類の項が同じ成分に重なることはありません。AijA_{ij}iji-jmodn\bmod n)だけで決まること、すなわち巡回行列であることが以下すべての鍵です。物理的には nn サイトの環状強束縛模型で、ϵ\epsilon がサイトエネルギー、tt が飛び移り積分に対応します。

条件は「第 ii 成分が入力の第 i+1i+1 成分になる」という要求ですから、Pij=δj,i+1P_{ij}=\delta_{j,i+1}(添字は modn\bmod n)です。成分で書けば Pi,i+1=1P_{i,i+1}=1i=1,2,,n1i=1,2,\dots,n-1)、Pn,1=1P_{n,1}=1、それ以外は 0 で、

P=(0100001000011000)P=\begin{pmatrix} 0&1&0&\cdots&0\\ 0&0&1&\cdots&0\\ \vdots&\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\ 0&0&0&\cdots&1\\ 1&0&0&\cdots&0 \end{pmatrix}

です。実際 (Px)i=jPijxj=xi+1(P\boldsymbol{x})_i=\sum_j P_{ij}x_j=x_{i+1}in1i\le n-1)、(Px)n=x1(P\boldsymbol{x})_n=x_1 となり要求を満たします。任意のベクトルに対する作用が指定されているので、PP はこれ以外にありません。PP は各行各列にちょうど一つ 1 を持つ置換行列なので実直交行列で、PTP=IP^{\mathsf{T}}P=IP1=PTP^{-1}=P^{\mathsf{T}}、そして nn 回巡回させると元に戻るので Pn=IP^n=I です。

答えは零行列 PAAP=OPA-AP=O です。成分で確かめます。Pik=δk,i+1P_{ik}=\delta_{k,i+1} より

(PA)ij=kPikAkj=Ai+1,j,(AP)ij=kAikPkj=kAikδj,k+1=Ai,j1(PA)_{ij}=\sum_k P_{ik}A_{kj}=A_{i+1,j},\qquad (AP)_{ij}=\sum_k A_{ik}P_{kj}=\sum_k A_{ik}\delta_{j,k+1}=A_{i,j-1}

です(添字はすべて modn\bmod n)。AA は巡回行列で AklA_{kl}kl (modn)k-l\ (\bmod n) のみに依存し、(i+1)j=i(j1)(i+1)-j=i-(j-1) ですから Ai+1,j=Ai,j1A_{i+1,j}=A_{i,j-1}、つまり (PA)ij=(AP)ij(PA)_{ij}=(AP)_{ij} が任意の i,ji,j で成り立ちます。

同じことを行列の言葉で見ておきます。P1=PTP^{-1}=P^{\mathsf{T}} の成分は (P1)ij=Pji=δi,j+1(P^{-1})_{ij}=P_{ji}=\delta_{i,j+1} なので、PP(i,i+1)(i,i+1) 成分と (n,1)(n,1) 成分に、P1P^{-1}(i+1,i)(i+1,i) 成分と (1,n)(1,n) 成分に 1 を持ちます。これは AA の非対角成分の配置とちょうど一致するので

A(ϵ,t)=ϵI+t(P+P1)A(\epsilon,t)=\epsilon I+t\left(P+P^{-1}\right)

と書けます(n3n\ge3 が必要で、n=2n=2 では角の成分と隣接成分が重なって成立しません)。PPII, PP, P1P^{-1} のいずれとも可換ですから AA と可換で、PAAP=OPA-AP=O です。この表示は設問(v)でそのまま使います。

Pu=λuP\boldsymbol{u}=\lambda\boldsymbol{u} を成分で書くと ui+1=λuiu_{i+1}=\lambda u_ii=1,,n1i=1,\dots,n-1)と u1=λunu_1=\lambda u_n です。前者から ui=λi1u1u_i=\lambda^{i-1}u_1、これを後者に入れて u1=λnu1u_1=\lambda^n u_1 を得ます。u1=0u_1=0 なら順に全成分が 0 になって固有ベクトルになりませんから u10u_1\neq0 で、λn=1\lambda^n=1 が必要です。逆に λn=1\lambda^n=1 ならこの u\boldsymbol{u} は固有ベクトルです。よって ωe2πi/n\omega\equiv e^{2\pi i/n} として

λk=ωk1=e2πi(k1)/n,uk=(1ωk1ω2(k1)ω(n1)(k1))(k=1,2,,n)\lambda_k=\omega^{\,k-1}=e^{2\pi i(k-1)/n},\qquad \boldsymbol{u}_k=\begin{pmatrix}1\\ \omega^{\,k-1}\\ \omega^{\,2(k-1)}\\ \vdots\\ \omega^{\,(n-1)(k-1)}\end{pmatrix} \qquad(k=1,2,\dots,n)

PP の固有値と固有縦ベクトルです。nn 個の λk\lambda_k は互いに異なる(11nn 乗根がすべて現れる)ので、異なる固有値に属する固有ベクトルは線形独立という一般論から u1,,un\boldsymbol{u}_1,\dots,\boldsymbol{u}_n は線形独立です。直接見ても、これらを並べた行列は節点 ωk1\omega^{k-1} のファンデルモンド行列で、行列式が k<l(ωl1ωk1)0\prod_{k<l}(\omega^{\,l-1}-\omega^{\,k-1})\neq0 となり同じ結論になります。n3n\ge3 では λk\lambda_k は一般に複素数なので、固有ベクトルも複素ベクトルです。

Px=λxP\boldsymbol{x}=\lambda\boldsymbol{x}Py=μyP\boldsymbol{y}=\mu\boldsymbol{y}λμ\lambda\neq\mu とします。設問(iii)より λn=μn=1\lambda^n=\mu^n=1 なので λ=μ=1|\lambda|=|\mu|=1、とくに λ=λ1\lambda^*=\lambda^{-1} です。PP は実直交行列なので PP=PTP=IP^{\dagger}P=P^{\mathsf{T}}P=I であり、設問(ii)の AP=PAAP=PA も使うと

xAy=xPPAy=(Px)(APy)=(λx)(μAy)=λμxAy=μλxAy\boldsymbol{x}^{\dagger}A\boldsymbol{y} =\boldsymbol{x}^{\dagger}P^{\dagger}PA\boldsymbol{y} =(P\boldsymbol{x})^{\dagger}(AP\boldsymbol{y}) =(\lambda\boldsymbol{x})^{\dagger}(\mu A\boldsymbol{y}) =\lambda^{*}\mu\,\boldsymbol{x}^{\dagger}A\boldsymbol{y} =\frac{\mu}{\lambda}\,\boldsymbol{x}^{\dagger}A\boldsymbol{y}

となります。λμ\lambda\neq\mu かつ λ,μ0\lambda,\mu\neq0 より μ/λ1\mu/\lambda\neq1 ですから、xAy=0\boldsymbol{x}^{\dagger}A\boldsymbol{y}=0 でなければなりません。証明終わりです。同じ計算で AAII に置き換えれば xy=0\boldsymbol{x}^{\dagger}\boldsymbol{y}=0 も従い、PP の固有ベクトルはエルミート内積について互いに直交します。使ったのは PP のユニタリ性、固有値が絶対値 1 であること、AAPP の可換性の3点だけです。

設問(iv)より uk\boldsymbol{u}_k は互いに直交し、ukuk=j=1nω(j1)(k1)2=n\boldsymbol{u}_k^{\dagger}\boldsymbol{u}_k=\sum_{j=1}^{n}|\omega^{(j-1)(k-1)}|^2=n なので、規格化して並べた

U=1n(u1 u2  un),Ujk=1nω(j1)(k1)U=\frac{1}{\sqrt{n}}\left(\boldsymbol{u}_1\ \boldsymbol{u}_2\ \cdots\ \boldsymbol{u}_n\right), \qquad U_{jk}=\frac{1}{\sqrt{n}}\,\omega^{\,(j-1)(k-1)}

はユニタリ行列です。直接確認すると、lkl\neq k のとき等比数列の和が

(UU)kl=1nj=1nω(k1)(j1)ω(l1)(j1)=1nm=0n1ω(lk)m=1n1ω(lk)n1ωlk=0(U^{\dagger}U)_{kl}=\frac{1}{n}\sum_{j=1}^{n}\omega^{-(k-1)(j-1)}\omega^{(l-1)(j-1)} =\frac{1}{n}\sum_{m=0}^{n-1}\omega^{(l-k)m} =\frac{1}{n}\cdot\frac{1-\omega^{(l-k)n}}{1-\omega^{\,l-k}}=0

となり(ω(lk)n=1\omega^{(l-k)n}=1、分母は lk (modn)l\neq k\ (\bmod n) で 0 でない)、k=lk=l では 1 です。これは離散フーリエ変換の行列です。

設問(ii)の表示 A=ϵI+t(P+P1)A=\epsilon I+t(P+P^{-1})Puk=ωk1ukP\boldsymbol{u}_k=\omega^{k-1}\boldsymbol{u}_kP1uk=ω(k1)ukP^{-1}\boldsymbol{u}_k=\omega^{-(k-1)}\boldsymbol{u}_k から

Auk={ϵ+t(ωk1+ω(k1))}uk={ϵ+2tcos2π(k1)n}ukA\boldsymbol{u}_k=\left\{\epsilon+t\left(\omega^{\,k-1}+\omega^{-(k-1)}\right)\right\}\boldsymbol{u}_k =\left\{\epsilon+2t\cos\frac{2\pi(k-1)}{n}\right\}\boldsymbol{u}_k

なので、UU の列がすべて AA の固有ベクトルになり、D=UAUD=U^{\dagger}AU は対角行列です。答えは上の UU

D=diag(d1,d2,,dn),dk=ϵ+2tcos2π(k1)nD=\mathrm{diag}\left(d_1,d_2,\dots,d_n\right), \qquad d_k=\epsilon+2t\cos\frac{2\pi(k-1)}{n}

です。dkd_k が実数であることは AA が実対称であることと整合し、k=1ncos2π(k1)n=0\sum_{k=1}^{n}\cos\frac{2\pi(k-1)}{n}=0 より trD=nϵ=trA\operatorname{tr}D=n\epsilon=\operatorname{tr}A も合っています。t>0t>0 なので最大固有値は k=1k=1ϵ+2t\epsilon+2t(固有ベクトルは全成分が等しいベクトル)です。k1k-1n(k1)n-(k-1)cos\cos が同じ値になるため、固有値は k=1k=1 と(nn が偶数のときの)k=n/2+1k=n/2+1 を除いて2重に縮退します。

対象は nn 次のブロックを2行2列に並べた 2n2n 次の実対称行列

B=(A(0,t)λIλIA(0,2t))B=\begin{pmatrix}A(0,t)&\lambda I\\ \lambda I&A(0,2t)\end{pmatrix}

IInn 次単位行列、λ\lambda は正の実数)です。SP+P1S\equiv P+P^{-1} と置くと A(0,t)=tSA(0,t)=tSA(0,2t)=2tSA(0,2t)=2tS で、BB の4つのブロックはすべて SSII だけで書けます。設問1(v) より Suk=2cosθkukS\boldsymbol{u}_k=2\cos\theta_k\,\boldsymbol{u}_k、ここで

θk2π(k1)n,ckcosθk(k=1,2,,n)\theta_k\equiv\frac{2\pi(k-1)}{n},\qquad c_k\equiv\cos\theta_k\qquad(k=1,2,\dots,n)

です。2n2n 次元ベクトルを上半分 p\boldsymbol{p} と下半分 q\boldsymbol{q}(ともに nn 次元)に分けて書くと

B(pq)=(tSp+λqλp+2tSq)B\begin{pmatrix}\boldsymbol{p}\\ \boldsymbol{q}\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}tS\boldsymbol{p}+\lambda\boldsymbol{q}\\ \lambda\boldsymbol{p}+2tS\boldsymbol{q}\end{pmatrix}

なので、p=auk\boldsymbol{p}=a\,\boldsymbol{u}_k, q=buk\boldsymbol{q}=b\,\boldsymbol{u}_k という形(同じ kk を上下で使う)を代入すると

B(aukbuk)=((2tcka+λb)uk(λa+4tckb)uk)B\begin{pmatrix}a\,\boldsymbol{u}_k\\ b\,\boldsymbol{u}_k\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}\left(2tc_ka+\lambda b\right)\boldsymbol{u}_k\\ \left(\lambda a+4tc_kb\right)\boldsymbol{u}_k\end{pmatrix}

となり、uk\boldsymbol{u}_k の係数だけの問題に落ちます。つまり 2×22\times2 行列

Bk=(2tckλλ4tck)B_k=\begin{pmatrix}2tc_k & \lambda\\ \lambda & 4tc_k\end{pmatrix}

の固有値が BB の固有値です。det(BkμI)=μ26tckμ+8t2ck2λ2=0\det(B_k-\mu I)=\mu^2-6tc_k\mu+8t^2c_k^2-\lambda^2=0 を解くと

μ=3tck±9t2ck28t2ck2+λ2=3tck±t2ck2+λ2\mu=3tc_k\pm\sqrt{9t^2c_k^2-8t^2c_k^2+\lambda^2}=3tc_k\pm\sqrt{t^2c_k^2+\lambda^2}

です。よって BB2n2n 個の固有値は

μk±=3tcosθk±t2cos2θk+λ2,θk=2π(k1)n,k=1,2,,n\mu_k^{\pm}=3t\cos\theta_k\pm\sqrt{t^2\cos^2\theta_k+\lambda^2}, \qquad \theta_k=\frac{2\pi(k-1)}{n},\quad k=1,2,\dots,n

です。これで全部であることを確認します。W=(U00U)W=\begin{pmatrix}U&0\\0&U\end{pmatrix}2n2n 次のユニタリ行列で、設問1(v) の USU=2CU^{\dagger}SU=2CC=diag(c1,,cn)C=\mathrm{diag}(c_1,\dots,c_n))を使うと

WBW=(2tCλIλI4tC)W^{\dagger}BW=\begin{pmatrix}2tC&\lambda I\\ \lambda I&4tC\end{pmatrix}

となり、4つのブロックがすべて対角行列になります。基底を並べ替えて上半分と下半分の第 kk 成分を隣同士に置く置換(これもユニタリ変換)を施すと、これは B1,B2,,BnB_1,B_2,\dots,B_n を対角に並べたブロック対角行列そのものです。ユニタリ相似は固有値を重複度も込めて変えないので、BB の固有値は各 BkB_k の固有値を全部集めたものに等しく、λ>0\lambda>0 より判別式 t2ck2+λ2t^2c_k^2+\lambda^2 は正で各 BkB_k が相異なる2つの固有値を持つことから、上の 2n2n 個が求める固有値です。固有ベクトルは BkB_k の固有ベクトル (a,b)(a,b) を使った (auk,buk)(a\,\boldsymbol{u}_k,\,b\,\boldsymbol{u}_k) で与えられます。

検算します。BB は実対称なので固有値は実数で、上式も実数です。k(μk++μk)=6tkck=0\sum_{k}(\mu_k^++\mu_k^-)=6t\sum_kc_k=0 で、BB の対角成分がすべて 0 であること(trB=0\operatorname{tr}B=0)と一致します。また μk+μk=8t2ck2λ2=detBk\mu_k^+\mu_k^-=8t^2c_k^2-\lambda^2=\det B_k も合っています。λ=0\lambda=0 とすると μ=3tck±tck\mu=3tc_k\pm t|c_k|、すなわち {2tck,4tck}\{2tc_k,\,4tc_k\} となり、A(0,t)A(0,t)A(0,2t)A(0,2t) の固有値(設問1(v) で ϵ=0\epsilon=0 とおいたもの)を並べたものに戻ります。

λ=0\lambda=0 のときの固有値は、上の検算のとおり A(0,t)A(0,t) の固有値 2tck2tc_kA(0,2t)A(0,2t) の固有値 4tck4tc_k を合わせた 2n2n 個です。λ0\lambda\neq0 にすると、同じ kk に属するこの2個だけが混ざり合い(λI\lambda I はフーリエ添字 kk について対角なので、異なる kk の間には結合を作りません)、

μk++μk=6tck,μk+μk=2t2ck2+λ2  2tck\mu_k^++\mu_k^-=6tc_k,\qquad \mu_k^+-\mu_k^-=2\sqrt{t^2c_k^2+\lambda^2}\ \ge\ 2t|c_k|

となります。2個の和は λ\lambda に依らず保たれ、間隔は必ず広がります。上の準位は上へ、下の準位は下へ動く反発です。

0<λt0<\lambda\ll t での変化の大きさを見ます。ck0c_k\neq0 のとき、λtck\lambda\ll t|c_k| を仮定して平方根を展開すると

t2ck2+λ2=tck(1+λ22t2ck2+O ⁣(λ4t4ck4))\sqrt{t^2c_k^2+\lambda^2}=t|c_k|\left(1+\frac{\lambda^2}{2t^2c_k^2}+O\!\left(\frac{\lambda^4}{t^4c_k^4}\right)\right)

なので、ckc_k の符号によらず

μ2tckλ22tck,μ4tck+λ22tck\mu\simeq2tc_k-\frac{\lambda^2}{2tc_k}, \qquad \mu\simeq4tc_k+\frac{\lambda^2}{2tc_k}

の2本になります。つまり固有値の微小な変化は λ\lambda の2乗に比例し、大きさは λ2/(2tck)\lambda^2/(2t|c_k|) です。これは非対角要素 λ\lambda による2次摂動 λ2/(EE)\lambda^2/(E-E') そのもので、EE=2tck4tck=2tckE-E'=2tc_k-4tc_k=-2tc_k を入れた式と一致します。

例外は ck=0c_k=0、すなわち cos2π(k1)n=0\cos\dfrac{2\pi(k-1)}{n}=0 の場合です。これは nn が 4 の倍数のときに限り起こり、k1=n/4k-1=n/4k1=3n/4k-1=3n/4 の2つの kk が該当します。このとき λ=0\lambda=0 で2本の固有値が 0 に縮退しており、厳密な固有値は

μ±=±λ\mu^{\pm}=\pm\lambda

となって、変化は λ\lambda の1乗に比例します。縮退した2準位が結合すると分裂が結合の強さそのものの大きさになる、という縮退摂動論の標準的な結果です。

答えを整理します。λ\lambda による固有値の微小変化は、対応する λ=0\lambda=0 の2準位 2tck2tc_k4tck4tc_k が縮退していなければ λ\lambda の2乗に比例し、縮退している(ck=0c_k=0nn が 4 の倍数のときのみ存在)場合は λ\lambda の1乗に比例します。より正確には λ\lambdatckt|c_k| の比が効いていて、λtck\lambda\ll t|c_k| なら2乗、λtck\lambda\gg t|c_k| なら μ±3tck±λ\mu^\pm\simeq3tc_k\pm\lambda で1乗に移ります。なお λ=0\lambda=0 の固有値には ck=ckc_k=c_{k'} による縮退や、2tck=4tck2tc_k=4tc_{k'}kkk\neq k')という偶然の一致も起こり得ますが、これらは異なる kk の間の縮退なので λI\lambda I が結合せず、変化は2乗のままです。物理的には、飛び移り積分が tt2t2t の2本の環(2つのバンド)を層間結合 λ\lambda でつないだ模型で、バンドが交差する点(ck=0c_k=0、両バンドのエネルギーが 0 で一致する点)だけ λ\lambda に比例したギャップが開き、それ以外では λ2\lambda^2 の準位反発が起きる、という描像になります。

出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 平成26年度 修士課程 入学試験問題 数学。問題文は要約して引用しています。

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