この年度は大問2題で、どちらも一題の中で道具立てが段階的に積み上がる構成です。第1問は3行3列のトレースレスエルミート行列の空間に基底を固定し、指数写像が特殊ユニタリ行列を与えることと、そこから構造定数・随伴表現・共役表現を具体的に取り出します。第2問は境界値問題の固有値の無限積を、スペクトルゼータ関数と複素積分で閉じた形に落とす問題で、留数の位置と分岐切断の両側での位相差の扱いが山場です。試験時間は90分、2問すべてが必答です。
| 問題 | 分野 | 主題 |
|---|
| 第1問 | 線形代数・群論 | トレースレスエルミート行列の指数写像と SU(3) の構造定数 |
| 第2問 | 微分方程式・複素解析 | ゼータ関数正則化による固有値の無限積 |
正方行列 X に対し XT は転置、X† はエルミート共役、trX はトレース、detX は行列式、[X,Y]=XY−YX、eX=∑k=0∞Xk/k! とします。I は単位行列、i は虚数単位です。
前半(設問1)は、有限次元でエルミートかつトレースレスな行列 A,B について、交換子と指数関数の性質を確かめます。エルミート行列 A がユニタリ行列 V(V†V=I)と対角行列 D を用いて A=V†DV と対角化できること、および det(XY)=detXdetY は既知として使えます。
後半(設問2以降)は3行3列に限定します。トレースレスな3行3列エルミート行列は8個の実パラメータで書けて、
T=α7α1+iα2α3+iα4α1−iα2α8α5+iα6α3−iα4α5−iα6−α7−α8=a=1∑8αaTa
という展開が基底 T1,…,T8(いずれもトレースレスエルミート)を定めます。この T から作った U=eiθT が、双線形式 x†Tay とベクトル積 x×y をどう混ぜるかを調べるのが設問4です。
(i) エルミート性は共役の定義から直に出ます。(XY)†=Y†X† と A†=A、B†=B を使うと
(i[A,B])†=−i(AB−BA)†=−i(B†A†−A†B†)=−i(BA−AB)=i[A,B]
となり、i[A,B] はエルミートです。トレースについては、A,B が有限次元の同じ型の正方行列なので tr(AB)=tr(BA) が成り立ち、
tr(i[A,B])=i(tr(AB)−tr(BA))=0
です。トレースレス性のほうは trA=trB=0 を使わずに、有限次元であることだけから従います。答えは、i[A,B] はエルミートかつトレースレスである、ということです。
(ii) 有限次元では行列ノルム ∥⋅∥(劣乗法的なもの)に対して ∑k∥iA∥k/k!=e∥A∥<∞ ですから、eiA の級数は絶対収束し、エルミート共役を項別に取れます。(Xk)†=(X†)k と (iA)†=−iA†=−iA より
U†=k=0∑∞k![(iA)k]†=k=0∑∞k!(−iA)k=e−iA
です。−iA と iA は可換なので、絶対収束級数のコーシー積と二項定理から eXeY=eX+Y([X,Y]=0 のとき)が使えて
U†U=e−iAeiA=e0=I
を得ます。よって U=eiA はユニタリです。ここで使った仮定は A†=A と有限次元性だけです。
(iii) 対角化 A=V†DV、D=diag(d1,…,dN) を使います。有限次元では V†V=I から V は正則で V−1=V†、したがって VV†=I も成り立ちます。これを使うと Ak=V†DkV が帰納法で従い、級数の絶対収束から項別に
U=eiA=V†eiDV,eiD=diag(eid1,…,eidN)
となります。det(XY)=detXdetY と、対角行列の行列式が対角成分の積であることから
detU=det(V†)det(V)det(eiD)=det(V†V)j=1∏Neidj=ei∑jdj=eitrD
です。最後に D=VAV† とトレースの巡回性から
trD=tr(VAV†)=tr(AV†V)=trA=0
なので、detU=e0=1 です。ここで初めて trA=0 が効いています。
T=∑aαaTa の右辺は αa について線形なので、Ta=∂T/∂αa で取り出せます。設定の行列表示で α1,α2,α7 が現れる成分だけを拾うと
T1=010100000,T2=0i0−i00000,T7=10000000−1
が答えです。いずれもエルミートかつトレースレスであることが見て取れます。
設問1(i) より i[Ta,Tb] はトレースレスエルミートで、そのような3行3列行列は {Tc} の実係数線形結合で一意に書けます。これが [Ta,Tb]=i∑cAab,cTc(Aab,c 実)の根拠です。あとは交換子を直接計算して、設定の表示で係数を読み取ればよいです。
まず A71,2。T7=diag(1,0,−1) が左からかかると各行が (1,0,−1) 倍され、右からかかると各列が (1,0,−1) 倍されるので
T7T1=000100000,T1T7=010000000,[T7,T1]=0−10100000
です。一方 iT2 はこの行列に一致するので [T7,T1]=iT2、すなわち A71,2=1(他の A71,c はすべて 0)です。
次に A56,8。設定の表示から
T5=000001010,T6=00000i0−i0,T8=00001000−1
で、T5,T6 は第2・第3成分の張る2次元部分空間に作用するパウリ行列 σx,σy そのものです。実際に掛けると
T5T6=0000i000−i,T6T5=0000−i000i
なので [T5,T6]=2idiag(0,1,−1)=2iT8、すなわち A56,8=2(他の A56,c はすべて 0)です。
答えは A71,2=1、A56,8=2 です。T7=diag(1,0,−1) は第2成分に触らないので T1,T2 の張る部分に対しては「片側だけ」効き、係数が 1 にとどまります。これに対し T5,T6 は同じ2次元部分空間内のパウリ代数なので、[σx,σy]=2iσz の 2 がそのまま出ます。
(i) x′=Ux、y′=Uy より Ga′=x†U†TaUy です。T はエルミートなので設問1(ii) と同じ計算で U†=e−iθT であり、θ の1次まで展開すると
U†TaU=(I−iθT)Ta(I+iθT)+O(θ2)=Ta+iθ[Ta,T]+O(θ2)
です。ここで設問3の展開を使うと、T=∑bαbTb に対して
[Ta,T]=b=1∑8αb[Ta,Tb]=ib,c=1∑8αbAab,cTc
となり、[Ta,T] が再び {Tc} の線形結合になることが要点です。したがって
U†TaU=Ta−θb,c=1∑8αbAab,cTc+O(θ2)
で、両側から x†,y をはさめば
Ga′=Ga−θb=1∑8(c=1∑8αcAac,b)Gb+O(θ2)
となって、確かに Ga′=Ga+iθ∑bHabGb+O(θ2) の形に書けます(Gb 以外の新しい双線形式は現れません)。係数を比べると iHab=−∑cαcAac,b なので、答えは
Hab=ic=1∑8αcAac,b=−ic=1∑8αcAca,b
です(2つ目の表式は Aab,c=−Aba,c を使いました。これは [Ta,Tb]=−[Tb,Ta] と Tc の線形独立性から出ます)。iHab=−∑cαcAac,b が実行列であること、すなわち Hab が純虚数になることが特徴で、Ga の組が8次元の随伴表現をなしていることに対応します。
検算として α7=1、他をゼロに取ると U=diag(eiθ,1,e−iθ) で、G1=xˉ1y2+xˉ2y1 から
G1′=e−iθxˉ1y2+eiθxˉ2y1=G1+iθ(−xˉ1y2+xˉ2y1)+O(θ2)=G1+iθ(−iG2)+O(θ2)
すなわち H12=−i です。一方公式のほうは、[T1,T7]=−iT2 より A17,2=−1 なので H12=iα7A17,2=−i。一致します。
(ii) U=I+iθT+O(θ2) を成分で書くと xj′=xj+iθ∑ℓTjℓxℓ+O(θ2)、同様に yk′ です。これを zi′ に入れて θ の1次を集めると
zi′=zi+iθWi+O(θ2),Wi=j,k,ℓ∑εijkTjℓxℓyk+j,k,m∑εijkxjTkmym
です。Wi を xpyq の係数の形にそろえると Wi=∑p,qCipqxpyq、
Cipq=j∑εijqTjp+k∑εipkTkq
となります。εijqTjp=−εiqjTjp、εipkTkq=−εikpTkq と書き換えれば Cipq=−Ciqp、つまり C は p,q について反対称です。ここが z だけで閉じるための鍵です。
反対称性より、xpyq の対称部分は落ちます。与えられた恒等式を ∑rεpqrεrab=δpaδqb−δpbδqa の形で使うと ∑rεpqrzr=xpyq−xqyp なので
Wi=21p,q∑Cipq(xpyq−xqyp)=r∑Nirzr,Nir=21p,q∑εpqrCipq
と書けます。あとは Nir を計算します。第1項は ∑qεijqεqrp=δirδjp−δipδjr を使って
21p,q,j∑εpqrεijqTjp=21p,j∑(δirδjp−δipδjr)Tjp=21(δirtrT−Tri)=−21Tri
第2項は ∑pεkipεpqr=δkqδir−δkrδiq を使って
21p,q,k∑εpqrεipkTkq=21q,k∑(δkqδir−δkrδiq)Tkq=21(δirtrT−Tri)=−21Tri
です。どちらも trT=0 を使いました。合わせて Nir=−Tri、すなわち Wi=−∑r(TT)irzr です。よって
z′=(I+iθM)z+O(θ2),M=−TT=−T∗
が答えです。ここで X∗ は成分ごとの複素共役を表し、T がエルミートなので TT=T∗ です。成分で書けば
M=−α7α1−iα2α3−iα4α1+iα2α8α5−iα6α3+iα4α5+iα6−α7−α8
です。トレースレス性 trT=0 が本質的で、これがないと δirtrT の項が残り、z だけでは閉じません。
検算します。設問1(ii)(iii) より U−1=U† かつ detU=1 ですから、ベクトル積の一般公式 (Ux)×(Uy)=detU(U−1)T(x×y) が z′=(U†)Tz=U∗z を与えます。そして
U∗=(eiθT)∗=e−iθT∗=I+iθ(−T∗)+O(θ2)
で M=−T∗ と一致します。z が共役表現に属することが、θ の1次に限らず厳密に成り立っているわけです。
区間 [0,π] 上の関数に作用する演算子
Hα=−dx2d2−mα2(mα>0, α=1,2)
の固有値問題を、境界条件 f′(0)=0、f(π)=0 のもとで考えます。n 番目に小さい固有値を λα(n)、固有関数を fα(n) とし、自明解は除きます。目標は固有値の比の無限積
D=n=1∏∞λ1(n)λ2(n)
を閉じた形で書くことです。道具はスペクトルゼータ関数 Z(s)=∑n[(λ2(n))−s−(λ1(n))−s] と、Hαg=λg を x=0 での初期値問題として解いた gα(x;λ) の端点値 g~α(λ)=gα(π;λ) です。g~α は固有値をちょうどゼロ点にもつ関数(特性関数)としてはたらき、その対数微分の留数から固有値の和が拾えます。設問2では mα<1/2 を仮定します。用いてよい公式として ∮C0dz/z=2πi(C0 は原点を反時計回りに1周する閉曲線)が与えられています。
固有値方程式は −f′′−mα2f=λf、つまり f′′+μf=0(μ≡λ+mα2)です。μ の符号で場合分けし、境界条件 f′(0)=0、f(π)=0 を課します。
μ<0 のとき、κ=−μ>0 として f=Acoshκx+Bsinhκx。f′(0)=Bκ=0 より B=0、f(π)=Acoshκπ=0 で coshκπ≥1>0 だから A=0、自明解のみです。
μ=0 のとき、f=A+Bx。f′(0)=B=0 より f=A 定数で、f(π)=A=0、やはり自明解のみです。
μ>0 のとき、k=μ>0 として f=Acoskx+Bsinkx。f′(0)=Bk=0 かつ k=0 より B=0。f(π)=Acoskπ=0 で A=0(自明解を除く)だから coskπ=0、すなわち k=ℓ+21(ℓ は整数)です。k>0 より ℓ=0,1,2,… に限られるので、n=ℓ+1 と番号を振り直して k=n−21(n=1,2,3,…)となります。
したがって μ=(n−21)2 であり、答えは
λα(n)=(n−21)2−mα2,fα(n)(x)=cos[(n−21)x]
です(固有関数はゼロでない定数倍の任意性があります)。λα(n) は n について単調増加なので、この n がそのまま「n 番目に小さい」の番号づけになっています。Hαfα(n)=[(n−21)2−mα2]fα(n) を直接代入でも確認できます。なお mα<1/2 のときは最小固有値 λα(1)=41−mα2 が正なので、すべての固有値が正の実軸上に並びます。これが設問2で λ−s や lnλ を一意に扱える理由です。
(i) λ−s=e−slnλ と書けば lnλ は s に依らない定数なので、
dsdλ−s=−lnλe−slnλ=−λ−slnλ
が答えです(lnλ の分枝は λ−s に用いたものと同じに取ります)。
(ii) Z(s) を項別に微分します。設問1より λα(n)>0 で、大きい n では
(λ2(n))−s−(λ1(n))−s=(n−21)2s+2s(m22−m12)+O(n−2s−4)
なので、この和は Res>−21 で広義一様絶対収束します。よって s=0 の近傍で Z は正則で、項別微分が許されます。(i) を使って
Z′(s)=n=1∑∞[−(λ2(n))−slnλ2(n)+(λ1(n))−slnλ1(n)]
s=0 とおくと
Z′(0)=n=1∑∞lnλ2(n)λ1(n)=−lnn=1∏∞λ1(n)λ2(n)=−lnD
です(各項は O(n−2) なのでこの和も絶対収束し、D は収束する無限積です)。答えは
D=e−Z′(0)
です。Z(0)=∑n(1−1)=0 も同時に読み取れます。
(iii) 方程式は設問1と同じ g′′+(λ+mα2)g=0 です。λ>−mα2 より kα≡λ+mα2>0 が実数で、一般解は g=Acoskαx+Bsinkαx。条件 ∂xg∣x=0=Bkα=0 と kα=0 より B=0、条件 g(0;λ)=A=1 より A=1 です。よって
gα(x;λ)=cos(λ+mα2x)
が答えで、これは初期値問題の解として一意です。したがって
g~α(λ)=cos(πλ+mα2)
です。cos(πw)=∑j≥0(−1)jπ2jwj/(2j)! は w の整関数なので、g~α(λ) は λ 全平面で正則に解析接続され、平方根の分枝の任意性もありません。ゼロ点は πλ+mα2=(n−21)π すなわち λ=λα(n) のみで、設問1の固有値と一致します。
(iv) g~α のゼロ点は単純です。実際
dλdg~α=−2λ+mα2πsin(πλ+mα2)
を λ=λα(n) で評価すると kα(n)=(−1)nπ/[2(n−21)]=0 です。問題文の局所展開 g~α(λ)=kα(n)(λ−λα(n))+O[(λ−λα(n))2] を対数微分に入れると
g~α(λ)1dλdg~α(λ)=kα(n)(λ−λα(n))+O[(λ−λα(n))2]kα(n)+O(λ−λα(n))=λ−λα(n)1+O(1)
となり、λ=λα(n) は留数 1 の1位の極です。g~α にはこれ以外のゼロ点がないので、これ以外の極もありません。
経路 C はすべての λα(n) を反時計回りに1周し(図1左:実軸の上側を左向きに来て原点の右で折り返し、実軸の下側を右向きに戻る向きなので、極は常に進行方向の左側にあります)、λ−s の切断 argλ=θ=0 を横切りません。Res を十分大きく取れば無限遠での寄与は落ちるので、C を各極を囲む微小円の和に縮められます。λ−s は各極の近傍で正則なので λ−s=(λα(n))−s+O(λ−λα(n)) と展開でき、O(1) 部分および O(λ−λα(n)) 部分は正則なのでコーシーの定理で消え、∮C0dz/z=2πi から
∫Cλ−sg~α(λ)1dλdg~α(λ)dλ=2πin=1∑∞(λα(n))−s
を得ます。α=2 と α=1 の差を取れば
∫Cλ−s[g~21dλdg~2−g~11dλdg~1]dλ=2πin=1∑∞[(λ2(n))−s−(λ1(n))−s]=2πiZ(s)
なので、与えられた関係式が成り立ち、定数は
A=2πi1
です。
(v) 対数微分をまとめて Φ(λ)≡lng~2(λ)−lng~1(λ) と書くと、(iv) は
Z(s)=2πi1∫Cλ−sΦ′(λ)dλ
です。g~α のゼロ点は正の実軸上だけなので、Φ は切断の方向 argλ=θ=0 の半直線上(原点を含めて)正則です。ここで問題文の許すとおり、経路を C から Cin+Cout に変形します。図1右より Cin は切断の argλ=θ− 側を無限遠から原点へ、Cout は切断の反対側を原点から無限遠へ向かう経路です。λ−s の分枝を argλ∈(θ−2π,θ) に取ると、Cin 上では argλ=θ、Cout 上では argλ=θ−2π です。この 2π のずれが両者を打ち消さずに残します。λ=reiθ とおいて
∫Cinλ−sΦ′dλ∫Coutλ−sΦ′dλ=∫∞0r−se−isθΦ′(reiθ)eiθdr=−J(s),=e2πis∫0∞r−se−isθΦ′(reiθ)eiθdr=e2πisJ(s)
ただし J(s)=∫0∞eiθλ−sΦ′(λ)dλ です。したがって
Z(s)=2πie2πis−1J(s)
となります。この表式が使える s の範囲を確認します。原点側では Φ′ が正則で有界なので、原点を回る半径 ε の小円の寄与は O(ε1−Res) であり、Res<1 なら ε→0 で落ちて J(s) の積分も収束します。無限遠側は下で見るように Φ′=O(∣λ∣−3/2) なので Res>−21 で収束します。よって −21<Res<1 で上の表式が Z(s) の解析接続を与え、s=0 を含みます。
無限遠での振る舞いを評価します。wα=λ+mα2 とすると argλ=θ=0 では Imwα>0 で ∣e2πiwα∣=e−2πImwα→0 です。cos(πw)=21e−iπw(1+e2πiw) を使うと
Φ(λ)=−iπ(w2−w1)+ln1+e2πiw11+e2πiw2,w2−w1=w2+w1m22−m12
なので ∣λ∣→∞ で Φ(λ)→0(実際 Φ=O(∣λ∣−1/2)、Φ′=O(∣λ∣−3/2))です。この表式は半直線上で連続な分枝を与えており、λ=0 では wα=mα、1+e2πimα=2cos(πmα)eiπmα から
Φ(0)=−iπ(m2−m1)+lncosπm1cosπm2+iπ(m2−m1)=lng~1(0)g~2(0)
と実数値の主枝になります(mα<1/2 より cosπmα>0)。よって
J(0)=∫0∞eiθΦ′(λ)dλ=Φ(∞eiθ)−Φ(0)=−Φ(0)
です。最後に s→0 の展開 2πie2πis−1=s+O(s2) を使うと Z(s)=sJ(0)+O(s2)、すなわち Z(0)=0 と
Z′(0)=J(0)=−Φ(0)=lng~2(0)g~1(0)
が答えです。Z(0)=0 は設問2(ii) の直接計算とも合っています。
(vi) 設問2(iii) の g~α(λ)=cos(πλ+mα2) に λ=0 を入れると、mα>0 より
g~α(0)=cos(πmα)
です。これを設問2(v) と (ii) に順に入れると Z′(0)=ln[cos(πm1)/cos(πm2)] なので
D=e−Z′(0)=g~1(0)g~2(0)=cos(πm1)cos(πm2)
が答えです。mα<1/2 より分母・分子はともに正で、D>0 になっています。
検算を2通りします。第1に、m1=m2 なら D=1 で、定義 D=∏nλ2(n)/λ1(n) から自明に正しい値です。第2に、余弦の無限積表示
cos(πz)=n=1∏∞[1−(n−21)2z2]
を使うと、設問1の λα(n)=(n−21)2−mα2 から
D=n=1∏∞(n−21)2−m12(n−21)2−m22=∏n[1−m12/(n−21)2]∏n[1−m22/(n−21)2]=cos(πm1)cos(πm2)
となって一致します。数値でも確かめられます。m1=0.1、m2=0.4 とすると cos(0.4π)/cos(0.1π)=0.3090/0.9511=0.32492 で、無限積を直接 n について打ち切って評価した値 0.32492 に一致します。
D が端点値の比だけで書けたことの見通しも付けておきます。g~α はゼロ点が λα(n) のみの整関数なので
g~α(λ)=g~α(0)n=1∏∞(1−λα(n)λ)
という因数分解をもち、上で使った余弦の無限積表示はまさにその具体形です。つまり g~α(0) が「固有値の総積」の役割を、α に依らない共通の発散因子を除いて担っています。比を取るとその因子が消えて D=g~2(0)/g~1(0) が残るわけで、設問2(ii) から (v) までの筋道は、この形式的な議論を発散なしに実行したものになっています。
出典: 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 平成31年度 修士課程 入学試験問題 数学。問題文は要約して引用しています。
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