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付値と完備化:Ostrowski の定理・p 進数・Hensel の補題

対象読者: 学部の位相(距離空間の完備性)と、離散付値環・Dedekind環、代数体の整数環、完備化・逆極限を学んだ人。p進数は仮定しません。

前提となる記事:離散付値環と Dedekind 環:付値・可逆イデアル・Krull–秋月の定理、完備化と Artin–Rees の補題:逆極限・Krull の交叉定理・Hensel の補題・係数体、代数体の整数環と Dedekind 整域:イデアルで素因数分解を取り戻す

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有理数の「大きさ」は、ふつうは数直線上の距離で測ります。けれども「77 で何回割り切れるか」を基準に、77 の高い冪で割り切れる数ほど小さいと見なす測り方もあり、整数論ではこちらがよく使われます。この記事では、有理数や代数体に入れられる「大きさの測り方」をすべて分類し、それぞれの測り方で数を無限小数のように延ばした世界(完備化)で、方程式の解を一桁ずつ求める方法を学びます。読み終えると、2\sqrt 2 が 77 進数の世界に存在することを、自分の手で確かめられるようになります。

  • 体の絶対値は、整数の像が有界かどうかで非 Archimedes 的・Archimedes 的に分かれます(命題 2.3)。同じ位相を定める絶対値は互いに正の冪です(命題 2.5)。
  • Ostrowski の定理:Q\mathbb{Q} の自明でない絶対値は、通常の絶対値か pp 進絶対値に同値です(定理 3.1)。代数体の素点(絶対値の同値類のこと)は素イデアルと埋め込みで尽くされ(定理 8.3)、正規化した絶対値は積公式 ∏v∣x∣v=1\prod_v|x|_v = 1 を満たします(定理 8.4)。同値でない絶対値は互いに独立です(弱近似定理、定理 3.2)。
  • 絶対値つきの体は完備化をただ 1 つもちます(定理 4.2)。離散付値の場合、付値環の完備化は lim←⁡O/mn\varprojlim\mathcal{O}/\mathfrak{m}^n です(命題 4.3)。Zp\mathbb{Z}_p はコンパクトで、Qp\mathbb{Q}_p は局所コンパクトです(定理 5.2)。
  • Hensel の補題(定理 6.1)は、∣f(a)∣<∣f′(a)∣2|f(a)| < |f'(a)|^2 を満たす近似根を真の根に持ち上げます。これから Qp\mathbb{Q}_p の 1 の冪根(系 6.4)、単数群の構造(命題 6.5)、平方元(命題 6.6)が決まります。
  • Newton 多角形の辺の傾きと長さが、根の付値とその個数を与えます(定理 7.2)。
  • 完備な Archimedes 的付値体は R\mathbb{R} か C\mathbb{C} だけです(定理 8.1)。

合同式 x2≡2(mod7n)x^2 \equiv 2 \pmod{7^n} は、すべての nn で解をもちます。n=1n = 1 の解 x≡3x \equiv 3 から出発して、72,73,…7^2, 7^3, \ldots を法とする解へ順に持ち上げられるからです。持ち上げた解の列 3,10,108,2166,…3, 10, 108, 2166, \ldots は、隣り合う項の差が 77 の高い冪で割り切れます。「77 の高い冪で割り切れる数は小さい」と見なす距離を Q\mathbb{Q} に入れれば、この列は Cauchy 列で、その極限が「77 進数としての 2\sqrt 2」です。

実数は、Q\mathbb{Q} を通常の絶対値で完備化して得られました。同じ操作を素数 pp ごとの別の絶対値で行ったものが pp 進数体 Qp\mathbb{Q}_p です。Ostrowski の定理は、Q\mathbb{Q} の絶対値がこれらで尽くされることを述べます。したがって Q\mathbb{Q} の「完備化」は R\mathbb{R} と Qp\mathbb{Q}_p(pp は素数全体)がすべてで、整数論の問題はこれらの完備体での問題(局所問題)に分解して調べられます。完備体では解析(極限・級数・Newton 法)が使え、合同式の無限列が 1 つの方程式に置き換わります。

本記事は 2 つの言葉を行き来します。解析の言葉(絶対値・距離・完備化)と可換環論の言葉(付値環・極大イデアル・逆極限)です。対応を 2.3 節の表にまとめ、以後は便利な方を使います。離散付値環と完備化の一般論は 離散付値環と Dedekind 環、完備化と Artin–Rees の補題 にあるものを使います。

定義 2.1(絶対値)↗

体 KK の絶対値(乗法付値)とは、写像 ∣⋅∣ ⁣:K→R≥0|\cdot| \colon K \to \mathbb{R}_{\ge 0} で、すべての x,y∈Kx, y \in K について次の 3 条件を満たすものをいう。

  1. ∣x∣=0  ⟺  x=0|x| = 0 \iff x = 0。
  2. ∣xy∣=∣x∣ ∣y∣|xy| = |x|\,|y|。
  3. ∣x+y∣≤∣x∣+∣y∣|x + y| \le |x| + |y|。

x≠0x \ne 0 で常に ∣x∣=1|x| = 1 となる絶対値を自明な絶対値という。条件 3 より強い条件

∣x+y∣≤max⁡(∣x∣,∣y∣)(強三角不等式)|x + y| \le \max(|x|, |y|) \qquad \text{(強三角不等式)}

を満たす絶対値を非 Archimedes 的、そうでないものを Archimedes 的という。絶対値つきの体を付値体と呼ぶ。

2 から ∣1∣=1|1| = 1、∣−1∣=1|-1| = 1(∣−1∣2=1|-1|^2 = 1)、∣x−1∣=∣x∣−1|x^{-1}| = |x|^{-1} です。d(x,y)=∣x−y∣d(x, y) = |x - y| は KK の距離で(定義 2.1[距離空間])、加減乗除はこの距離で連続です。非 Archimedes 的な絶対値では、∣x∣≠∣y∣|x| \ne |y| なら ∣x+y∣=max⁡(∣x∣,∣y∣)|x + y| = \max(|x|, |y|) が成り立ちます。実際 ∣x∣<∣y∣|x| < |y| とすると ∣y∣=∣(x+y)−x∣≤max⁡(∣x+y∣,∣x∣)|y| = |(x + y) - x| \le \max(|x + y|, |x|) で、∣x∣<∣y∣|x| < |y| から右辺は ∣x+y∣|x + y| でなければならず、逆向きの不等式は強三角不等式です。

例 2.2(p 進絶対値と 𝔭 進絶対値)

素数 pp と x∈Q×x \in \mathbb{Q}^{\times} に対し、x=pka/bx = p^k a/b(a,ba, b は pp で割れない整数)と書いて vp(x):=kv_p(x) := k、∣x∣p:=p−vp(x)|x|_p := p^{-v_p(x)}、∣0∣p:=0|0|_p := 0 とおきます。vp(xy)=vp(x)+vp(y)v_p(xy) = v_p(x) + v_p(y)、vp(x+y)≥min⁡(vp(x),vp(y))v_p(x + y) \ge \min(v_p(x), v_p(y)) なので、∣⋅∣p|\cdot|_p は非 Archimedes 的な絶対値で、pp 進絶対値といいます。通常の絶対値を ∣⋅∣∞|\cdot|_\infty と書きます。

より一般に、KK の離散付値 vv(定義 3.1[離散付値環と Dedekind 環])と実数 c>1c > 1 について ∣x∣:=c−v(x)|x| := c^{-v(x)} は非 Archimedes 的な絶対値です。代数体 KK の素イデアル p\mathfrak{p} には付値 vpv_{\mathfrak{p}} があり(系 4.8[代数体の整数環と Dedekind 整域])、∣x∣p:=(Np)−vp(x)|x|_{\mathfrak{p}} := (N\mathfrak{p})^{-v_{\mathfrak{p}}(x)} を p\mathfrak{p} 進絶対値といいます。

命題 2.3(非 Archimedes 性の判定)✓

体 KK の絶対値 ∣⋅∣|\cdot| について、次は同値である。ここで整数 nn は KK での像 n⋅1n \cdot 1 と同一視する。

  1. ∣⋅∣|\cdot| は非 Archimedes 的である。
  2. すべての整数 nn で ∣n∣≤1|n| \le 1。
  3. 集合 {∣n∣:n∈Z}\{|n| : n \in \mathbb{Z}\} は有界である。
証明(命題 2.3)

1 ⇒ 2:∣1∣=1|1| = 1 と強三角不等式から、帰納法で ∣n∣=∣1+⋯+1∣≤1|n| = |1 + \cdots + 1| \le 1(n≥1n \ge 1)、∣−n∣=∣n∣|-n| = |n| です。2 ⇒ 3 は自明です。

3 ⇒ 1:∣n∣≤M|n| \le M(すべての nn)とします。x,y∈Kx, y \in K、m≥1m \ge 1 について二項定理から

∣x+y∣m=∣∑k=0m(mk)xkym−k∣≤∑k=0m∣(mk)∣∣x∣k∣y∣m−k≤(m+1)Mmax⁡(∣x∣,∣y∣)m|x + y|^m = \Bigl|\sum_{k=0}^m\binom mk x^ky^{m-k}\Bigr| \le \sum_{k=0}^m\Bigl|\binom mk\Bigr||x|^k|y|^{m-k} \le (m + 1)M\max(|x|, |y|)^m

です。mm 乗根を取ると ∣x+y∣≤((m+1)M)1/mmax⁡(∣x∣,∣y∣)|x + y| \le ((m + 1)M)^{1/m}\max(|x|, |y|) で、m→∞m \to \infty とすると ((m+1)M)1/m→1((m + 1)M)^{1/m} \to 1 なので強三角不等式が得られます。

特に、正標数の体の絶対値はすべて非 Archimedes 的です(整数の像が有限集合だから)。また、部分体に制限しても、拡大体に延ばしても、Archimedes 的かどうかは変わりません。

定義 2.4(絶対値の同値)↗

体 KK の 2 つの絶対値が KK に同じ位相を定めるとき、同値であるという。

命題 2.5(同値の判定)✓

∣⋅∣1|\cdot|_1、∣⋅∣2|\cdot|_2 を体 KK の自明でない絶対値とする。次は同値である。

  1. ∣⋅∣1|\cdot|_1 と ∣⋅∣2|\cdot|_2 は同値である。
  2. ∣x∣1<1|x|_1 < 1 ならば ∣x∣2<1|x|_2 < 1。
  3. ある実数 s>0s > 0 があって、すべての x∈Kx \in K で ∣x∣2=∣x∣1s|x|_2 = |x|_1^s。

次の証明の 2 ⇒ 3 では、∣x∣1=∣y∣1t|x|_1 = |y|_1^t となる実数 tt を有理数 m/nm/n で上下から挟み、xnx^n と ymy^m の大きさを比べることで、∣x∣2|x|_2 も同じ指数 tt の冪になることを示します。

証明(命題 2.5)

1 ⇒ 2:∣x∣<1|x| < 1 は、点列 xnx^n が 00 に収束することと同値です(∣xn∣=∣x∣n|x^n| = |x|^n)。収束は位相だけで決まるので、∣x∣1<1  ⟺  ∣x∣2<1|x|_1 < 1 \iff |x|_2 < 1 です。

2 ⇒ 3:∣⋅∣1|\cdot|_1 は自明でないので ∣y∣1≠1|y|_1 \ne 1 となる y≠0y \ne 0 があり、必要なら y−1y^{-1} に取り替えて ∣y∣1>1|y|_1 > 1 とします。∣y−1∣1<1|y^{-1}|_1 < 1 と 2 から ∣y∣2>1|y|_2 > 1 です。s:=log⁡∣y∣2/log⁡∣y∣1>0s := \log|y|_2/\log|y|_1 > 0 とおきます。x∈K×x \in K^{\times} に対し ∣x∣1=∣y∣1t|x|_1 = |y|_1^{t} となる実数 tt を取ります。有理数 m/nm/n(n>0n > 0)が m/n>tm/n > t を満たせば ∣xn/ym∣1=∣y∣1nt−m<1|x^n/y^m|_1 = |y|_1^{nt - m} < 1 で、2 から ∣xn/ym∣2<1|x^n/y^m|_2 < 1、すなわち ∣x∣2<∣y∣2m/n|x|_2 < |y|_2^{m/n} です。m/n<tm/n < t なら ∣ym/xn∣1<1|y^m/x^n|_1 < 1 から同様に ∣x∣2>∣y∣2m/n|x|_2 > |y|_2^{m/n} です。m/nm/n を上下から tt に近づけて ∣x∣2=∣y∣2t=∣y∣1st=∣x∣1s|x|_2 = |y|_2^{t} = |y|_1^{st} = |x|_1^s です。

3 ⇒ 1:∣x−a∣2<ε  ⟺  ∣x−a∣1<ε1/s|x - a|_2 < \varepsilon \iff |x - a|_1 < \varepsilon^{1/s} なので、開球の全体が一致し、位相も一致します。

自明な絶対値は離散位相を定め、自明でない絶対値は離散位相を定めないので(∣x∣<1|x| < 1 となる x≠0x \ne 0 について xn→0x^n \to 0)、自明な絶対値に同値なのは自明な絶対値だけです。

非 Archimedes 的な絶対値 ∣⋅∣|\cdot| に対し

O:={x∈K:∣x∣≤1},m:={x∈K:∣x∣<1},κ:=O/m\mathcal{O} := \{x \in K : |x| \le 1\}, \qquad \mathfrak{m} := \{x \in K : |x| < 1\}, \qquad \kappa := \mathcal{O}/\mathfrak{m}

とおきます。強三角不等式から O\mathcal{O} は部分環で、x∉Ox \notin \mathcal{O} なら ∣x−1∣<1|x^{-1}| < 1 ですから O\mathcal{O} は KK の付値環(定義 2.1[離散付値環と Dedekind 環])、m\mathfrak{m} はその極大イデアル(O∖m\mathcal{O} \setminus \mathfrak{m} は単元の全体)です。κ\kappa を剰余体といいます。実数 c>1c > 1 を固定して v(x):=−log⁡c∣x∣v(x) := -\log_c|x| とおくと、v ⁣:K×→Rv \colon K^{\times} \to \mathbb{R} は準同型で v(x+y)≥min⁡(v(x),v(y))v(x + y) \ge \min(v(x), v(y)) を満たします。vv の像(値群)が R\mathbb{R} の離散部分群 Z⋅v(π)\mathbb{Z}\cdot v(\pi) のとき、v/v(π)v/v(\pi) は離散付値で、O\mathcal{O} は離散付値環です。このとき絶対値は離散的であるといいます。

解析の言葉可換環論の言葉
非 Archimedes 的な絶対値 ∣x∣\lvert x\rvert付値 v(x)=−log⁡c∣x∣v(x) = -\log_c\lvert x\rvert
閉単位球 {∣x∣≤1}\{\lvert x\rvert \le 1\}付値環 O\mathcal{O}
開単位球 {∣x∣<1}\{\lvert x\rvert < 1\}極大イデアル m\mathfrak{m}
球面 {∣x∣=1}\{\lvert x\rvert = 1\}単元群 O×\mathcal{O}^{\times}
半径 c−nc^{-n} の閉球 {∣x−a∣≤c−n}\{\lvert x - a\rvert \le c^{-n}\}(離散的な場合)剰余類 a+mna + \mathfrak{m}^n
xk→xx_k \to x各 nn について、十分大きい kk で xk≡x(modmn)x_k \equiv x \pmod{\mathfrak{m}^n}
同値な絶対値同じ付値環
完備化 K^\widehat K の閉単位球m\mathfrak{m} 進完備化 lim←⁡O/mn\varprojlim\mathcal{O}/\mathfrak{m}^n(命題 4.3)

「同値な絶対値 ⇔ 同じ付値環」は 命題 2.5 の 2 の言い換えです(m\mathfrak{m} が一致すれば O={x:x−1∉m}∪{0}\mathcal{O} = \{x : x^{-1} \notin \mathfrak{m}\} \cup \{0\} も一致します)。

定理 3.1(Ostrowski の定理)✓

Q\mathbb{Q} の自明でない絶対値 ∣⋅∣|\cdot| は、通常の絶対値 ∣⋅∣∞|\cdot|_\infty か、ただ 1 つの素数 pp についての pp 進絶対値 ∣⋅∣p|\cdot|_p に同値である。より詳しく、Archimedes 的なら 0<s≤10 < s \le 1 により ∣x∣=∣x∣∞s|x| = |x|_\infty^s、非 Archimedes 的なら s>0s > 0 により ∣x∣=∣x∣ps|x| = |x|_p^s と書ける。

証明(定理 3.1)

非 Archimedes 的な場合。 命題 2.3 からすべての整数 nn で ∣n∣≤1|n| \le 1 です。a:={n∈Z:∣n∣<1}\mathfrak{a} := \{n \in \mathbb{Z} : |n| < 1\} は、強三角不等式と乗法性から Z\mathbb{Z} のイデアルで、1∉a1 \notin \mathfrak{a}、かつ ∣mn∣<1|mn| < 1 なら ∣m∣<1|m| < 1 または ∣n∣<1|n| < 1 なので素イデアルです。a=0\mathfrak{a} = 0 なら 00 でない整数、したがって 00 でない有理数の絶対値がすべて 11 となり、自明になってしまいます。よって a=pZ\mathfrak{a} = p\mathbb{Z}(pp は素数)です。pp で割れない整数 mm は ∣m∣=1|m| = 1 を満たすので、x=pka/bx = p^ka/b(p∤abp \nmid ab)について ∣x∣=∣p∣k|x| = |p|^k です。s:=−log⁡∣p∣/log⁡p>0s := -\log|p|/\log p > 0 とおけば ∣x∣=p−ks=∣x∣ps|x| = p^{-ks} = |x|_p^s です。∣p∣p<1|p|_p < 1 かつ q≠pq \ne p で ∣p∣q=1|p|_q = 1 なので、pp は絶対値から決まります。

Archimedes 的な場合。 m,n≥2m, n \ge 2 を整数とします。k≥1k \ge 1 に対し mkm^k を nn 進法で mk=∑i=0rcinim^k = \sum_{i=0}^rc_in^i(0≤ci<n0 \le c_i < n、cr≠0c_r \ne 0)と書くと、nr≤mkn^r \le m^k から r≤klog⁡m/log⁡nr \le k\log m/\log n です。三角不等式から ∣ci∣≤ci<n|c_i| \le c_i < n なので

∣m∣k≤∑i=0r∣ci∣∣n∣i≤(r+1) nmax⁡(1,∣n∣)r≤(1+klog⁡mlog⁡n)nmax⁡(1,∣n∣)klog⁡m/log⁡n|m|^k \le \sum_{i=0}^r|c_i||n|^i \le (r + 1)\,n\max(1, |n|)^r \le \Bigl(1 + \frac{k\log m}{\log n}\Bigr)n\max(1, |n|)^{k\log m/\log n}

です。kk 乗根を取って k→∞k \to \infty とすると

∣m∣≤max⁡(1,∣n∣)log⁡m/log⁡n.|m| \le \max(1, |n|)^{\log m/\log n}.

ある n≥2n \ge 2 で ∣n∣≤1|n| \le 1 なら、すべての m≥2m \ge 2 で ∣m∣≤1|m| \le 1 となり、命題 2.3 から非 Archimedes 的になってしまいます。よってすべての n≥2n \ge 2 で ∣n∣>1|n| > 1 で、上の不等式は ∣m∣1/log⁡m≤∣n∣1/log⁡n|m|^{1/\log m} \le |n|^{1/\log n} となります。mm と nn を入れ替えても成り立つので等号で、s:=log⁡∣n∣/log⁡n>0s := \log|n|/\log n > 0 は nn によらない定数です。∣n∣=ns|n| = n^s(n≥1n \ge 1)と乗法性から ∣x∣=∣x∣∞s|x| = |x|_\infty^s です。∣2∣≤∣1∣+∣1∣=2|2| \le |1| + |1| = 2 から s≤1s \le 1 です。

異なる素数の pp 進絶対値どうし、および pp 進絶対値と ∣⋅∣∞|\cdot|_\infty は同値でありません。同値でない絶対値は、次の意味で互いに独立です。

定理 3.2(弱近似定理(Artin–Whaples))✓

∣⋅∣1,…,∣⋅∣n|\cdot|_1, \ldots, |\cdot|_n を体 KK の自明でない絶対値で、どの 2 つも同値でないものとする。任意の a1,…,an∈Ka_1, \ldots, a_n \in K と ε>0\varepsilon > 0 に対し、

∣x−ai∣i<ε(1≤i≤n)|x - a_i|_i < \varepsilon \qquad (1 \le i \le n)

を満たす x∈Kx \in K が存在する。

証明の方針は次のとおりです。まず、ii 番目の絶対値でだけ大きく、ほかの絶対値ではすべて小さい元 ziz_i を作ります(第 1 段)。次に zim/(1+zim)z_i^m/(1 + z_i^m) という形の元で mm を大きくすると、ii 番目の絶対値では 11 に近く、ほかでは 00 に近くなります。これに aia_i を掛けて足し合わせたものが求める xx です(第 2 段)。

証明(定理 3.2)

第 1 段:∣z∣1>1|z|_1 > 1 かつ j≥2j \ge 2 で ∣z∣j<1|z|_j < 1 となる z∈Kz \in K があることを、nn に関する帰納法で示します。

n=2n = 2 のとき、∣⋅∣1|\cdot|_1 と ∣⋅∣2|\cdot|_2 は同値でないので、命題 2.5 の 2 が両方向で成り立たず、∣α∣1<1≤∣α∣2|\alpha|_1 < 1 \le |\alpha|_2 となる α\alpha と ∣β∣2<1≤∣β∣1|\beta|_2 < 1 \le |\beta|_1 となる β\beta があります。z=β/αz = \beta/\alpha は ∣z∣1>1|z|_1 > 1、∣z∣2<1|z|_2 < 1 を満たします。

n≥3n \ge 3 とします。帰納法の仮定から、∣z∣1>1|z|_1 > 1、∣z∣j<1|z|_j < 1(2≤j≤n−12 \le j \le n - 1)となる zz と、∣y∣1>1|y|_1 > 1、∣y∣n<1|y|_n < 1 となる yy があります。∣z∣n≤1|z|_n \le 1 なら、mm を大きく取ると zmyz^my は ∣zmy∣1>1|z^my|_1 > 1、∣zmy∣j=∣z∣jm∣y∣j<1|z^my|_j = |z|_j^m|y|_j < 1(2≤j≤n−12 \le j \le n - 1)、∣zmy∣n≤∣y∣n<1|z^my|_n \le |y|_n < 1 を満たします。∣z∣n>1|z|_n > 1 なら wm:=zmy/(1+zm)w_m := z^my/(1 + z^m) を考えます。∣z∣i>1|z|_i > 1 となる ii(i=1,ni = 1, n)では

∣zm1+zm−1∣i=1∣1+zm∣i≤1∣z∣im−1⟶0\Bigl|\frac{z^m}{1 + z^m} - 1\Bigr|_i = \frac{1}{|1 + z^m|_i} \le \frac{1}{|z|_i^m - 1} \longrightarrow 0

なので ∣wm∣i→∣y∣i|w_m|_i \to |y|_i で、∣z∣j<1|z|_j < 1 となる jj(2≤j≤n−12 \le j \le n - 1)では ∣wm∣j≤∣z∣jm∣y∣j/(1−∣z∣jm)→0|w_m|_j \le |z|_j^m|y|_j/(1 - |z|_j^m) \to 0 です。よって mm が大きければ ∣wm∣1>1|w_m|_1 > 1、∣wm∣j<1|w_m|_j < 1(2≤j≤n2 \le j \le n)です。

第 2 段:第 1 段を番号を付け替えて使うと、各 ii について ∣zi∣i>1|z_i|_i > 1、∣zi∣j<1|z_i|_j < 1(j≠ij \ne i)となる ziz_i があります。ui,m:=zim/(1+zim)u_{i,m} := z_i^m/(1 + z_i^m) は、上の計算から m→∞m \to \infty で ∣ui,m−1∣i→0|u_{i,m} - 1|_i \to 0、∣ui,m∣j→0|u_{i,m}|_j \to 0(j≠ij \ne i)を満たします。xm:=∑iaiui,mx_m := \sum_ia_iu_{i,m} とすると

∣xm−aj∣j≤∣aj∣j ∣uj,m−1∣j+∑i≠j∣ai∣j ∣ui,m∣j⟶0|x_m - a_j|_j \le |a_j|_j\,|u_{j,m} - 1|_j + \sum_{i \ne j}|a_i|_j\,|u_{i,m}|_j \longrightarrow 0

なので、mm が大きければ x=xmx = x_m が求めるものです。

K=QK = \mathbb{Q} で絶対値が相異なる素数の pp 進絶対値のとき、これは中国剰余定理(連立合同式の可解性)の言い換えです。弱近似定理は、そこに ∣⋅∣∞|\cdot|_\infty も加えられることを主張しています。

定義 4.1(完備付値体と完備化)↗

付値体 (K,∣⋅∣)(K, |\cdot|) が距離 ∣x−y∣|x - y| に関して完備(定義 2.2[距離空間])であるとき、完備付値体という。付値体 (K,∣⋅∣)(K, |\cdot|) の完備化とは、完備付値体 (K^,∣⋅∣)(\widehat K, |\cdot|) と体の準同型 ι ⁣:K→K^\iota \colon K \to \widehat K の組で、∣ι(x)∣=∣x∣|\iota(x)| = |x| を満たし、ι(K)\iota(K) が K^\widehat K で稠密なものをいう。

定理 4.2(完備化の存在と一意性)✓

  1. 任意の付値体 (K,∣⋅∣)(K, |\cdot|) は完備化 (K^,ι)(\widehat K, \iota) をもつ。
  2. (K′,ι′)(K', \iota') を別の完備化とすると、絶対値を保つ体の同型 φ ⁣:K^→K′\varphi \colon \widehat K \to K' で φ∘ι=ι′\varphi \circ \iota = \iota' となるものがただ 1 つある。
  3. ∣⋅∣|\cdot| が非 Archimedes 的なら K^\widehat K の絶対値もそうであり、{∣x∣:x∈K^×}={∣x∣:x∈K×}\{|x| : x \in \widehat K^{\times}\} = \{|x| : x \in K^{\times}\} である。

証明は、Q\mathbb{Q} から R\mathbb{R} を作るときと同じ構成です。KK の Cauchy 列全体のなす環を、00 に収束する列のなすイデアルで割ったものが K^\widehat K で、それが体になること(イデアルが極大であること)の確認が最初の山場です。

証明(定理 4.2)

1. KK の Cauchy 列の全体を CC、00 に収束する列の全体を NN とします。Cauchy 列は有界なので、項ごとの和と積について CC は可換環で(∣xnyn−xmym∣≤∣xn∣∣yn−ym∣+∣ym∣∣xn−xm∣|x_ny_n - x_my_m| \le |x_n||y_n - y_m| + |y_m||x_n - x_m|)、NN はそのイデアルです。

NN が極大イデアルであることを示します。(xn)∈C∖N(x_n) \in C \setminus N とします。00 に収束しないので、ある δ>0\delta > 0 について ∣xn∣≥2δ|x_n| \ge 2\delta となる nn が無限個あり、Cauchy 列ですから、ある n0n_0 以降のすべての nn で ∣xn∣≥δ|x_n| \ge \delta です。yn:=xn−1y_n := x_n^{-1}(n≥n0n \ge n_0)、yn:=0y_n := 0(n<n0n < n_0)とおくと、n,m≥n0n, m \ge n_0 で ∣yn−ym∣=∣xm−xn∣/(∣xn∣∣xm∣)≤δ−2∣xn−xm∣|y_n - y_m| = |x_m - x_n|/(|x_n||x_m|) \le \delta^{-2}|x_n - x_m| なので (yn)∈C(y_n) \in C で、(xnyn−1)(x_ny_n - 1) は有限個の項を除いて 00 ですから NN に属します。よって C/NC/N の 00 でない元は可逆で、K^:=C/N\widehat K := C/N は体です。

ξ=[(xn)]∈K^\xi = [(x_n)] \in \widehat K に対し ∣ξ∣:=lim⁡n∣xn∣|\xi| := \lim_n|x_n| と定めます。∣∣xn∣−∣xm∣∣≤∣xn−xm∣\bigl||x_n| - |x_m|\bigr| \le |x_n - x_m| なので (∣xn∣)(|x_n|) は実数の Cauchy 列で収束し(定理 7.3[実数の完備性とコーシー列])、NN の元を足しても極限は変わりません。絶対値の条件 2 と 3 は極限に移り、∣ξ∣=0|\xi| = 0 は (xn)∈N(x_n) \in N と同値なので条件 1 も成り立ちます。ι(a)\iota(a) を定数列 (a,a,…)(a, a, \ldots) の類とすると、ι\iota は体の準同型で ∣ι(a)∣=∣a∣|\iota(a)| = |a| です。

稠密性:ξ=[(xn)]\xi = [(x_n)] と ε>0\varepsilon > 0 に対し、mm を大きく取れば ∣ξ−ι(xm)∣=lim⁡n∣xn−xm∣≤ε|\xi - \iota(x_m)| = \lim_n|x_n - x_m| \le \varepsilon です。

完備性:(ξk)(\xi_k) を K^\widehat K の Cauchy 列とします。稠密性から ∣ξk−ι(ak)∣<1/k|\xi_k - \iota(a_k)| < 1/k となる ak∈Ka_k \in K があり、∣ak−al∣≤∣ξk−ξl∣+1/k+1/l|a_k - a_l| \le |\xi_k - \xi_l| + 1/k + 1/l なので (ak)(a_k) は KK の Cauchy 列です。ξ:=[(ak)]\xi := [(a_k)] とすると ∣ξ−ξk∣≤∣ξ−ι(ak)∣+1/k=lim⁡l∣al−ak∣+1/k→0|\xi - \xi_k| \le |\xi - \iota(a_k)| + 1/k = \lim_l|a_l - a_k| + 1/k \to 0 で、ξk→ξ\xi_k \to \xi です。

2. ξ=[(xn)]∈K^\xi = [(x_n)] \in \widehat K に対し、(ι′(xn))(\iota'(x_n)) は K′K' の Cauchy 列なので極限をもち、φ(ξ):=lim⁡nι′(xn)\varphi(\xi) := \lim_n\iota'(x_n) と定めます。NN の元を足しても極限は変わらず、和と積の極限は極限の和と積なので φ\varphi は体の準同型で、∣φ(ξ)∣=lim⁡∣xn∣=∣ξ∣|\varphi(\xi)| = \lim|x_n| = |\xi|、φ∘ι=ι′\varphi \circ \iota = \iota' です。体の準同型なので単射です。像は完備な部分集合なので K′K' の閉集合で(命題 2.3[距離空間] の 3)、稠密な ι′(K)\iota'(K) を含むので K′K' 全体です。一意性は、絶対値を保つ写像が連続で、稠密な ι(K)\iota(K) の上で ι′∘ι−1\iota' \circ \iota^{-1} に決まることから従います。

3. 整数の像の絶対値は KK と K^\widehat K で同じなので、命題 2.3 から非 Archimedes 性が保たれます。ξ∈K^×\xi \in \widehat K^{\times} に対し ∣ξ−ι(a)∣<∣ξ∣|\xi - \iota(a)| < |\xi| となる a∈Ka \in K を取ると、強三角不等式から ∣a∣=∣ξ∣|a| = |\xi| です(2.1 節の注意)。

以後 ι\iota で K⊆K^K \subseteq \widehat K と見なします。距離空間としての完備化(定理 3.2[距離空間])に体の演算を連続性で延ばしたものが K^\widehat K です。同値な絶対値は同じ Cauchy 列を定めるので、完備化は(体として、また位相空間として)絶対値の同値類だけで決まります。KK の素点 vv(絶対値の同値類)に対する完備化を KvK_v と書きます。

離散付値の場合、この解析的な完備化は可換環論の m\mathfrak{m} 進完備化(定義 3.2[完備化と Artin–Rees の補題])と一致します。

命題 4.3(離散付値体の完備化と逆極限)✓

vv を体 KK の離散付値、O\mathcal{O} をその付値環、m\mathfrak{m} を極大イデアル、π\pi を素元とし、c>1c > 1 について ∣x∣=c−v(x)|x| = c^{-v(x)} とする。K^\widehat K を完備化、O^:={x∈K^:∣x∣≤1}\widehat{\mathcal{O}} := \{x \in \widehat K : |x| \le 1\}、m^:={x∈K^:∣x∣<1}\widehat{\mathfrak{m}} := \{x \in \widehat K : |x| < 1\} とする。

  1. v^(x):=−log⁡c∣x∣\hat v(x) := -\log_c|x| は K^\widehat K の離散付値で vv の延長であり、O^\widehat{\mathcal{O}} はその付値環、π\pi は素元、m^n=πnO^={x:∣x∣≤c−n}\widehat{\mathfrak{m}}^n = \pi^n\widehat{\mathcal{O}} = \{x : |x| \le c^{-n}\} である。
  2. O^\widehat{\mathcal{O}} は O\mathcal{O} の K^\widehat K での閉包で、O^∩K=O\widehat{\mathcal{O}} \cap K = \mathcal{O}。包含が誘導する O/mn→O^/m^n\mathcal{O}/\mathfrak{m}^n \to \widehat{\mathcal{O}}/\widehat{\mathfrak{m}}^n は、すべての n≥1n \ge 1 で環の同型である。特に剰余体は変わらない。
  3. x↦(x mod m^n)nx \mapsto (x \bmod \widehat{\mathfrak{m}}^n)_n は環の同型 O^≅lim←⁡nO/mn\widehat{\mathcal{O}} \cong \varprojlim_n\mathcal{O}/\mathfrak{m}^n である。すなわち O^\widehat{\mathcal{O}} は O\mathcal{O} の m\mathfrak{m} 進完備化で、O^\widehat{\mathcal{O}} 自身は m^\widehat{\mathfrak{m}} 進完備な離散付値環(完備局所環)である。
証明(命題 4.3)
  1. 定理 4.2 の 3 から K^×\widehat K^{\times} の絶対値の全体は cZc^{\mathbb{Z}} で、v^\hat v は Z\mathbb{Z} への全射準同型、強三角不等式から付値です。∣x∣≤c−n  ⟺  v^(x)≥n  ⟺  x∈πnO^|x| \le c^{-n} \iff \hat v(x) \ge n \iff x \in \pi^n\widehat{\mathcal{O}} です(命題 3.2[離散付値環と Dedekind 環])。

  2. O^∩K=O\widehat{\mathcal{O}} \cap K = \mathcal{O} と O∩m^n=mn\mathcal{O} \cap \widehat{\mathfrak{m}}^n = \mathfrak{m}^n は定義から従い、後者は写像の単射性を与えます。x∈O^x \in \widehat{\mathcal{O}} と n≥1n \ge 1 に対し、稠密性から ∣x−a∣≤c−n|x - a| \le c^{-n} となる a∈Ka \in K があり、∣a∣≤max⁡(∣x∣,∣a−x∣)≤1|a| \le \max(|x|, |a - x|) \le 1 なので a∈Oa \in \mathcal{O} です。これは全射性と、O^\widehat{\mathcal{O}} が O\mathcal{O} の閉包に含まれることを示します。O^\widehat{\mathcal{O}} は閉集合なので閉包に一致します。

  3. 2 から lim←⁡O^/m^n≅lim←⁡O/mn\varprojlim\widehat{\mathcal{O}}/\widehat{\mathfrak{m}}^n \cong \varprojlim\mathcal{O}/\mathfrak{m}^n です。写像の核は ⋂nm^n={x:すべての n で ∣x∣≤c−n}=0\bigcap_n\widehat{\mathfrak{m}}^n = \{x : \text{すべての } n \text{ で } |x| \le c^{-n}\} = 0 です。全射性:(an mod mn)n(a_n \bmod \mathfrak{m}^n)_n(an∈Oa_n \in \mathcal{O}、an+1≡an(modmn)a_{n+1} \equiv a_n \pmod{\mathfrak{m}^n})を逆極限の元とすると、m≥nm \ge n で ∣am−an∣≤c−n|a_m - a_n| \le c^{-n}(強三角不等式)なので (an)(a_n) は Cauchy 列で、極限 x∈O^x \in \widehat{\mathcal{O}} は ∣x−an∣≤c−n|x - a_n| \le c^{-n}、すなわち x≡an(modm^n)x \equiv a_n \pmod{\widehat{\mathfrak{m}}^n} を満たします。最後の主張は、同じ議論を K^\widehat K(その完備化は K^\widehat K 自身)に使ったものです。

非 Archimedes 的な完備体では、級数の収束が実数の場合よりずっと簡単になります。

補題 4.4(非 Archimedes 的な完備体での級数)✓

KK を非 Archimedes 的な完備付値体とする。KK の級数 ∑n=0∞xn\sum_{n=0}^\infty x_n が収束することと xn→0x_n \to 0 は同値である。このとき ∣∑nxn∣≤max⁡n∣xn∣\bigl|\sum_nx_n\bigr| \le \max_n|x_n|。

証明(補題 4.4)

収束すれば xn=Sn−Sn−1→0x_n = S_n - S_{n-1} \to 0 です(SnS_n は部分和)。逆に xn→0x_n \to 0 なら、m>nm > n で ∣Sm−Sn∣=∣xn+1+⋯+xm∣≤max⁡k>n∣xk∣→0|S_m - S_n| = |x_{n+1} + \cdots + x_m| \le \max_{k > n}|x_k| \to 0 なので (Sn)(S_n) は Cauchy 列で収束します。∣Sn∣≤max⁡k≤n∣xk∣|S_n| \le \max_{k \le n}|x_k| の極限を取れば評価が出ます。

定義 5.1(p 進数体と p 進整数環)↗

素数 pp について、(Q,∣⋅∣p)(\mathbb{Q}, |\cdot|_p) の完備化を Qp\mathbb{Q}_p と書き、pp 進数体という。Zp:={x∈Qp:∣x∣p≤1}\mathbb{Z}_p := \{x \in \mathbb{Q}_p : |x|_p \le 1\} を pp 進整数環という。Qp\mathbb{Q}_p の付値を同じ記号 vpv_p で書く。

定理 5.2(Zpℤ_p と Qpℚ_p の基本性質)✓

  1. Zp\mathbb{Z}_p は pp を素元とする完備な離散付値環で、Zp/pnZp≅Z/pnZ\mathbb{Z}_p/p^n\mathbb{Z}_p \cong \mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z}、Zp≅lim←⁡nZ/pnZ\mathbb{Z}_p \cong \varprojlim_n\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z} である。剰余体は Fp\mathbb{F}_p である。
  2. Z\mathbb{Z} は Zp\mathbb{Z}_p で稠密である。より詳しく、各 x∈Zpx \in \mathbb{Z}_p と n≥1n \ge 1 に対し x≡a(modpnZp)x \equiv a \pmod{p^n\mathbb{Z}_p} となる整数 0≤a<pn0 \le a < p^n がただ 1 つある。
  3. Zp\mathbb{Z}_p はコンパクトである。pnZpp^n\mathbb{Z}_p(n∈Zn \in \mathbb{Z})は Qp\mathbb{Q}_p のコンパクトな開部分群で、00 の基本近傍系をなす。Qp\mathbb{Q}_p は局所コンパクトな Hausdorff 位相体(加法について局所コンパクト群。定義 7.1[局所コンパクト空間])で、Zp×\mathbb{Z}_p^{\times} はコンパクトである。
証明(定理 5.2)
  1. Q\mathbb{Q} の付値 vpv_p の付値環は Z(p)\mathbb{Z}_{(p)}(分母が pp で割れない有理数の全体)です。命題 4.3 から Zp\mathbb{Z}_p は完備な離散付値環で pp が素元、Zp/pnZp≅Z(p)/pnZ(p)\mathbb{Z}_p/p^n\mathbb{Z}_p \cong \mathbb{Z}_{(p)}/p^n\mathbb{Z}_{(p)} です。右辺は Z/pnZ\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z} の局所化で(命題 3.7[局所化と素イデアルのスペクトル])、pp で割れない整数は Z/pnZ\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z} ですでに単元なので Z/pnZ\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z} に等しくなります。逆極限の表示も同命題の 3 です。

  2. 1 の同型 Z/pnZ≅Zp/pnZp\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z} \cong \mathbb{Z}_p/p^n\mathbb{Z}_p の言い換えです。∣x−a∣p≤p−n|x - a|_p \le p^{-n} なので稠密です。

  3. Zp\mathbb{Z}_p は完備な Qp\mathbb{Q}_p の閉集合なので完備です(命題 2.3[距離空間])。ε>0\varepsilon > 0 に対し p−n<εp^{-n} < \varepsilon となる nn を取ると、2 から Zp=⋃a=0pn−1(a+pnZp)\mathbb{Z}_p = \bigcup_{a=0}^{p^n-1}(a + p^n\mathbb{Z}_p) で、各 a+pnZpa + p^n\mathbb{Z}_p は半径 ε\varepsilon の開球に含まれるので、Zp\mathbb{Z}_p は全有界です。完備かつ全有界な距離空間はコンパクトです(定理 4.3[距離空間])。pnZp={∣x∣p≤p−n}={∣x∣p<p−n+1}p^n\mathbb{Z}_p = \{|x|_p \le p^{-n}\} = \{|x|_p < p^{-n+1}\} は開球でもあるので開集合で、Zp\mathbb{Z}_p と同相(pnp^n 倍)なのでコンパクト、強三角不等式から部分群です。半径が 00 に近づくので基本近傍系です。各点 xx はコンパクトな近傍 x+Zpx + \mathbb{Z}_p をもち、距離空間は Hausdorff なので Qp\mathbb{Q}_p は局所コンパクト Hausdorff 空間で、加法と符号の反転は連続です。Zp×=Zp∖pZp\mathbb{Z}_p^{\times} = \mathbb{Z}_p \setminus p\mathbb{Z}_p はコンパクト空間 Zp\mathbb{Z}_p の閉集合なのでコンパクトです(定理 4.1[コンパクト性])。

Zp\mathbb{Z}_p は有限集合 Z/pnZ\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z} の直積 ∏nZ/pnZ\prod_n\mathbb{Z}/p^n\mathbb{Z} の閉集合でもあり、コンパクト性は Tychonoff の定理(定理 6.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理])からも従います。R\mathbb{R} では閉区間がコンパクトでしたが、Qp\mathbb{Q}_p では「整数環」そのものがコンパクトです。この違いが、第 5 章 でアデール環を作るときに有限素点と無限素点の扱いを分ける理由になります。

命題 5.3(p 進展開)✓

  1. 任意の x∈Zpx \in \mathbb{Z}_p は x=∑n=0∞anpnx = \sum_{n=0}^\infty a_np^n(an∈{0,1,…,p−1}a_n \in \{0, 1, \ldots, p - 1\})とただ 1 通りに書ける。逆にこの形の級数はすべて Zp\mathbb{Z}_p で収束する。任意の x∈Qp×x \in \mathbb{Q}_p^{\times} は x=∑n=m∞anpnx = \sum_{n=m}^\infty a_np^n(m=vp(x)m = v_p(x)、am≠0a_m \ne 0)とただ 1 通りに書ける。
  2. x∈Qpx \in \mathbb{Q}_p が有理数であることと、その pp 進展開の係数列 (an)(a_n) がある番号から先で周期的であることは同値である。
証明(命題 5.3)
  1. ∣anpn∣p≤p−n→0|a_np^n|_p \le p^{-n} \to 0 なので級数は収束し(補題 4.4)、和は Zp\mathbb{Z}_p に入ります。x∈Zpx \in \mathbb{Z}_p に対し、定理 5.2 の 2 の整数 0≤sn<pn0 \le s_n < p^n(x≡sn(modpn)x \equiv s_n \pmod{p^n})を取ると sn+1≡sn(modpn)s_{n+1} \equiv s_n \pmod{p^n} なので sn+1=sn+anpns_{n+1} = s_n + a_np^n(0≤an<p0 \le a_n < p)と書け、sn=∑k<nakpk→xs_n = \sum_{k<n}a_kp^k \to x です。別の展開 ∑an′pn=x\sum a'_np^n = x があれば、その部分和も 00 以上 pnp^n 未満の整数で xx と pnp^n を法として合同ですから、一意性から sns_n に一致し、an′=ana'_n = a_n です。x∈Qp×x \in \mathbb{Q}_p^{\times} については p−mx∈Zp×p^{-m}x \in \mathbb{Z}_p^{\times} を展開します。

  2. 係数列が番号 mm から周期 rr で周期的なら、B=∑k=0r−1am+kpkB = \sum_{k=0}^{r-1}a_{m+k}p^k とおくと

x=∑n<manpn+pmB(1+pr+p2r+⋯ )=∑n<manpn+pmB1−pr∈Qx = \sum_{n<m}a_np^n + p^mB(1 + p^r + p^{2r} + \cdots) = \sum_{n<m}a_np^n + \frac{p^mB}{1 - p^r} \in \mathbb{Q}

です(∣pr∣p<1|p^r|_p < 1 なので等比級数は 1/(1−pr)1/(1 - p^r) に収束します)。

逆に x∈Qx \in \mathbb{Q} とします。pp の冪を掛けて x∈Zpx \in \mathbb{Z}_p としてよく、x=c0/bx = c_0/b(b≥1b \ge 1、p∤bp \nmid b、c0∈Zc_0 \in \mathbb{Z})と書けます。xk:=p−k(x−∑n<kanpn)=∑n≥kanpn−k∈Zpx_k := p^{-k}\bigl(x - \sum_{n<k}a_np^n\bigr) = \sum_{n \ge k}a_np^{n-k} \in \mathbb{Z}_p とおくと xk=ak+pxk+1x_k = a_k + px_{k+1} で、帰納的に xk=ck/bx_k = c_k/b(ck∈Zc_k \in \mathbb{Z})、ck+1=(ck−akb)/pc_{k+1} = (c_k - a_kb)/p です。M:=max⁡(∣c0∣,b)M := \max(|c_0|, b) とすると、∣ck∣≤M|c_k| \le M なら ∣ck+1∣≤(M+(p−1)b)/p≤M|c_{k+1}| \le (M + (p - 1)b)/p \le M なので、すべての kk で ∣ck∣≤M|c_k| \le M です。ckc_k の取りうる値は有限個なので ck=clc_k = c_l となる k<lk < l があります。xkx_k の展開の係数列は (ak,ak+1,…)(a_k, a_{k+1}, \ldots) で、展開の一意性から xk=xlx_k = x_l なら ak+j=al+ja_{k+j} = a_{l+j}(j≥0j \ge 0)です。よって係数列は番号 kk から周期 l−kl - k で周期的です。

例 5.4(p 進展開の例)

  • −1=∑n=0∞(p−1)pn-1 = \sum_{n=0}^\infty(p - 1)p^n。右辺は (p−1)/(1−p)=−1(p - 1)/(1 - p) = -1 です。負の整数は「どこまでも p−1p - 1 が続く」展開をもちます。
  • Z5\mathbb{Z}_5 での 1/31/3:3⋅2≡1(mod5)3 \cdot 2 \equiv 1 \pmod 5 なので a0=2a_0 = 2、x1=(1/3−2)/5=−1/3x_1 = (1/3 - 2)/5 = -1/3。−1/3≡3-1/3 \equiv 3 なので a1=3a_1 = 3、x2=(−1/3−3)/5=−2/3x_2 = (-1/3 - 3)/5 = -2/3。−2/3≡1-2/3 \equiv 1 なので a2=1a_2 = 1、x3=(−2/3−1)/5=−1/3=x1x_3 = (-2/3 - 1)/5 = -1/3 = x_1。よって係数列は 2,3,1,3,1,…2, 3, 1, 3, 1, \ldots で、1/3=2+3⋅5+1⋅52+3⋅53+⋯1/3 = 2 + 3\cdot 5 + 1\cdot 5^2 + 3\cdot 5^3 + \cdots です。検算:2+5(3+5)/(1−25)=2−5/3=1/32 + 5(3 + 5)/(1 - 25) = 2 - 5/3 = 1/3。

定理 6.1(Hensel の補題)✓

KK を非 Archimedes 的な完備付値体、O\mathcal{O} をその付値環とする。

  1. (Newton 法の形)f∈O[X]f \in \mathcal{O}[X]、a0∈Oa_0 \in \mathcal{O} が ∣f(a0)∣<∣f′(a0)∣2|f(a_0)| < |f'(a_0)|^2 を満たすとする。このとき f(a)=0f(a) = 0 かつ ∣a−a0∣<∣f′(a0)∣|a - a_0| < |f'(a_0)| を満たす a∈Oa \in \mathcal{O} がただ 1 つ存在する。さらに ∣a−a0∣=∣f(a0)∣/∣f′(a0)∣|a - a_0| = |f(a_0)|/|f'(a_0)|、∣f′(a)∣=∣f′(a0)∣|f'(a)| = |f'(a_0)| である。
  2. (因数分解の形)絶対値が離散的であるとし、m\mathfrak{m} を極大イデアル、κ=O/m\kappa = \mathcal{O}/\mathfrak{m} とする。モニック多項式 f∈O[X]f \in \mathcal{O}[X] の還元 fˉ∈κ[X]\bar f \in \kappa[X] が、互いに素なモニック多項式の積 fˉ=g0h0\bar f = g_0h_0 に分解すれば、f=ghf = gh、gˉ=g0\bar g = g_0、hˉ=h0\bar h = h_0 となるモニック多項式 g,h∈O[X]g, h \in \mathcal{O}[X] がある。特に fˉ\bar f の単根 α∈κ\alpha \in \kappa は ff の根 a∈Oa \in \mathcal{O}、aˉ=α\bar a = \alpha にただ 1 通りに持ち上がる。

1 の証明は Newton 法 an+1=an−f(an)/f′(an)a_{n+1} = a_n - f(a_n)/f'(a_n) を繰り返すものです。修正量 f(a0)/f′(a0)f(a_0)/f'(a_0) の大きさは条件 ∣f(a0)∣<∣f′(a0)∣2|f(a_0)| < |f'(a_0)|^2 のもとで ∣f′(a0)∣|f'(a_0)| より小さくなり、そのおかげで修正を重ねるごとに誤差が急速に小さくなって、近似根の列が Cauchy 列になります。条件が平方の形をしているのは、この比較のためです。

証明(定理 6.1)

1. 多項式の恒等式 f(X+Y)=f(X)+f′(X)Y+Y2g(X,Y)f(X + Y) = f(X) + f'(X)Y + Y^2g(X, Y)(g∈O[X,Y]g \in \mathcal{O}[X, Y])を使います((X+Y)k=Xk+kXk−1Y+Y2(⋯ )(X + Y)^k = X^k + kX^{k-1}Y + Y^2(\cdots) を係数倍して足したもの)。同様に f′(X+Y)=f′(X)+Yg1(X,Y)f'(X + Y) = f'(X) + Yg_1(X, Y)(g1∈O[X,Y]g_1 \in \mathcal{O}[X, Y])です。O\mathcal{O} の元を代入すると g,g1g, g_1 の値は O\mathcal{O} に入ります。

c:=∣f(a0)∣/∣f′(a0)∣2<1c := |f(a_0)|/|f'(a_0)|^2 < 1、D:=∣f′(a0)∣≤1D := |f'(a_0)| \le 1 とおきます(D>0D > 0)。an+1:=an−f(an)/f′(an)a_{n+1} := a_n - f(a_n)/f'(a_n) と定め、帰納法で

an∈O,∣f′(an)∣=D,∣f(an)∣≤D2c2na_n \in \mathcal{O}, \qquad |f'(a_n)| = D, \qquad |f(a_n)| \le D^2c^{2^n}

を示します。n=0n = 0 は定義です。nn で成り立つとし、hn:=−f(an)/f′(an)h_n := -f(a_n)/f'(a_n) とおくと ∣hn∣≤Dc2n<D≤1|h_n| \le Dc^{2^n} < D \le 1 なので an+1=an+hn∈Oa_{n+1} = a_n + h_n \in \mathcal{O} です。恒等式から

f(an+1)=f(an)+f′(an)hn+hn2g(an,hn)=hn2g(an,hn)f(a_{n+1}) = f(a_n) + f'(a_n)h_n + h_n^2g(a_n, h_n) = h_n^2g(a_n, h_n)

で、∣f(an+1)∣≤∣hn∣2≤D2c2n+1|f(a_{n+1})| \le |h_n|^2 \le D^2c^{2^{n+1}} です。また ∣f′(an+1)−f′(an)∣≤∣hn∣<D|f'(a_{n+1}) - f'(a_n)| \le |h_n| < D なので ∣f′(an+1)∣=D|f'(a_{n+1})| = D です。

∣an+1−an∣=∣hn∣≤Dc2n→0|a_{n+1} - a_n| = |h_n| \le Dc^{2^n} \to 0 なので、補題 4.4 から a:=a0+∑nhna := a_0 + \sum_nh_n は収束し、O\mathcal{O} は閉集合ですから a∈Oa \in \mathcal{O} です。多項式は連続なので f(a)=lim⁡f(an)=0f(a) = \lim f(a_n) = 0、∣f′(a)∣=D|f'(a)| = D です。n≥1n \ge 1 で ∣hn∣≤Dc2n≤Dc2|h_n| \le Dc^{2^n} \le Dc^2、一方 ∣h0∣=Dc|h_0| = Dc なので、f(a0)≠0f(a_0) \ne 0 のとき ∣hn∣<∣h0∣|h_n| < |h_0| で、∣a−a0∣=∣h0+∑n≥1hn∣=∣h0∣=∣f(a0)∣/∣f′(a0)∣|a - a_0| = |h_0 + \sum_{n \ge 1}h_n| = |h_0| = |f(a_0)|/|f'(a_0)| です(f(a0)=0f(a_0) = 0 なら a=a0a = a_0)。

一意性:b∈Ob \in \mathcal{O} も f(b)=0f(b) = 0、∣b−a0∣<D|b - a_0| < D を満たすとします。∣b−a∣≤max⁡(∣b−a0∣,∣a0−a∣)<D|b - a| \le \max(|b - a_0|, |a_0 - a|) < D です。恒等式から 0=f(b)=f(a)+f′(a)(b−a)+(b−a)2g(a,b−a)0 = f(b) = f(a) + f'(a)(b - a) + (b - a)^2g(a, b - a) で、b≠ab \ne a なら f′(a)=−(b−a)g(a,b−a)f'(a) = -(b - a)g(a, b - a) となり D=∣f′(a)∣≤∣b−a∣<DD = |f'(a)| \le |b - a| < D で矛盾します。

2. 命題 4.3 の 3 を完備な KK に使うと、O\mathcal{O} は m\mathfrak{m} 進完備な局所環(定義 3.2[完備化と Artin–Rees の補題])で、定理 7.3[完備化と Artin–Rees の補題] がそのまま使えます。α\alpha が単根なら fˉ=(X−α)h0\bar f = (X - \alpha)h_0、h0(α)≠0h_0(\alpha) \ne 0 で 2 つの因子は互いに素なので、f=(X−a)hf = (X - a)h、aˉ=α\bar a = \alpha と持ち上がります。一意性は 1 から従います(∣f(a0)∣<1=∣f′(a0)∣2|f(a_0)| < 1 = |f'(a_0)|^2)。

条件 ∣f(a0)∣<∣f′(a0)∣2|f(a_0)| < |f'(a_0)|^2 は、f′(a0)f'(a_0) が単元でない(還元すると重根になる)場合にも使えます。p=2p = 2 での平方根がその典型です(命題 6.6)。

例 6.2(ℚ₅ の √−1 と ℚ₇ の √2)

f=X2+1f = X^2 + 1、p=5p = 5、a0=2a_0 = 2 とすると ∣f(2)∣5=∣5∣5=1/5<1=∣f′(2)∣52|f(2)|_5 = |5|_5 = 1/5 < 1 = |f'(2)|_5^2 なので、Z5\mathbb{Z}_5 に −1-1 の平方根 a≡2(mod5)a \equiv 2 \pmod 5 があります。5n5^n を法とする解を順に持ち上げると

22+1=5,72+1=2⋅52,572+1=26⋅53,1822+1=53⋅54,20572+1=1354⋅552^2 + 1 = 5, \quad 7^2 + 1 = 2\cdot 5^2, \quad 57^2 + 1 = 26\cdot 5^3, \quad 182^2 + 1 = 53\cdot 5^4, \quad 2057^2 + 1 = 1354\cdot 5^5

で、2057=2+1⋅5+2⋅52+1⋅53+3⋅542057 = 2 + 1\cdot 5 + 2\cdot 5^2 + 1\cdot 5^3 + 3\cdot 5^4 ですから

−1=2+1⋅5+2⋅52+1⋅53+3⋅54+⋯∈Z5\sqrt{-1} = 2 + 1\cdot 5 + 2\cdot 5^2 + 1\cdot 5^3 + 3\cdot 5^4 + \cdots \in \mathbb{Z}_5

です(もう 1 つの平方根は −a-a)。同様に f=X2−2f = X^2 - 2、p=7p = 7、a0=3a_0 = 3 から

32−2=7,102−2=2⋅72,1082−2=34⋅73,21662−2=1954⋅74,45672−2=1241⋅753^2 - 2 = 7, \quad 10^2 - 2 = 2\cdot 7^2, \quad 108^2 - 2 = 34\cdot 7^3, \quad 2166^2 - 2 = 1954\cdot 7^4, \quad 4567^2 - 2 = 1241\cdot 7^5

で、4567=3+1⋅7+2⋅72+6⋅73+1⋅744567 = 3 + 1\cdot 7 + 2\cdot 7^2 + 6\cdot 7^3 + 1\cdot 7^4、

2=3+1⋅7+2⋅72+6⋅73+1⋅74+⋯∈Z7\sqrt 2 = 3 + 1\cdot 7 + 2\cdot 7^2 + 6\cdot 7^3 + 1\cdot 7^4 + \cdots \in \mathbb{Z}_7

です。一方 x2=2x^2 = 2 は Q2\mathbb{Q}_2 に解をもちません。v2(x2)=2v2(x)v_2(x^2) = 2v_2(x) は偶数で、v2(2)=1v_2(2) = 1 は奇数だからです。

Z7\mathbb{Z}_7 の 2\sqrt 2 を Newton 法で求めたとき、更新のたびに確定する 7 進の桁が増えていく様子を見てください。緑が 2\sqrt 2 の展開と一致した桁で、その数は 1, 2, 4, 8, 16 と倍々に増えます。

ℤ₇ で X²−2 の根に向かう Newton 法の反復 a₀ から a₄ の 7 進展開を行ごとに並べ、根と一致する下位の桁を緑にしていく動画。確定した桁数は 1、2、4、8、16 と増える。
f = X² − 2、p = 7、a₀ = 3 からの Newton 法。1 回の更新で確定する桁数がおよそ 2 倍になる。

補題 6.3(1+pZp1 + pℤ_p に捩れはない)✓

pp を素数とし、pp が奇数なら j≥1j \ge 1、p=2p = 2 なら j≥2j \ge 2 とする。x=1+pjtx = 1 + p^jt(t∈Zp×t \in \mathbb{Z}_p^{\times})と正の整数 m=pam′m = p^am'(p∤m′p \nmid m')について、xm=1+pj+at′x^m = 1 + p^{j+a}t'、t′∈Zp×t' \in \mathbb{Z}_p^{\times} である。特に xm≠1x^m \ne 1 で、乗法群 1+pZp1 + p\mathbb{Z}_p(pp が奇数)、1+4Z21 + 4\mathbb{Z}_2(p=2p = 2)は単位元以外に位数有限の元をもたない。

証明(補題 6.3)

p∤m′p \nmid m' のとき xm′=1+m′pjt+∑i≥2(m′i)pijtix^{m'} = 1 + m'p^jt + \sum_{i \ge 2}\binom{m'}{i}p^{ij}t^i で、i≥2i \ge 2 の項は p2jp^{2j} で割り切れるので xm′=1+pj(m′t+pj(⋯ ))x^{m'} = 1 + p^j(m't + p^j(\cdots))、括弧内は単元です。次に pp 乗を考えます。

xp=1+pj+1t+∑i=2p−1(pi)pijti+ppjtp.x^p = 1 + p^{j+1}t + \sum_{i=2}^{p-1}\binom pip^{ij}t^i + p^{pj}t^p.

2≤i≤p−12 \le i \le p - 1 では p∣(pi)p \mid \binom pi なので項の付値は 1+ij≥j+21 + ij \ge j + 2 以上です。最後の項の付値は pjpj で、pj≥j+2pj \ge j + 2 は (p−1)j≥2(p - 1)j \ge 2 と同値ですから、p≥3p \ge 3 か、p=2p = 2 かつ j≥2j \ge 2 なら成り立ちます。よって xp=1+pj+1(t+p(⋯ ))x^p = 1 + p^{j+1}(t + p(\cdots)) で、括弧内は単元です。j+1j + 1 は再び仮定を満たすので、pp 乗を aa 回繰り返し、最後に m′m' 乗すれば主張が得られます。

系 6.4(Qpℚ_p の 1 の冪根と Teichmüller 代表)✓

  1. Zp\mathbb{Z}_p は 1 の (p−1)(p - 1) 乗根をちょうど p−1p - 1 個含み、還元 Zp→Fp\mathbb{Z}_p \to \mathbb{F}_p はその全体 μp−1\mu_{p-1} から Fp×\mathbb{F}_p^{\times} への群の同型を与える。α∈Fp×\alpha \in \mathbb{F}_p^{\times} に対応する元 ω(α)∈μp−1\omega(\alpha) \in \mu_{p-1} を α\alpha の Teichmüller 代表という。α\alpha の任意の持ち上げ a∈Zpa \in \mathbb{Z}_p について ω(α)=lim⁡n→∞apn\omega(\alpha) = \lim_{n \to \infty}a^{p^n} である。
  2. Qp\mathbb{Q}_p に含まれる 1 の冪根の全体は、pp が奇数なら μp−1\mu_{p-1}、p=2p = 2 なら {±1}\{\pm 1\} である。
証明(系 6.4)
  1. f=Xp−1−1f = X^{p-1} - 1 の還元は Fp[X]\mathbb{F}_p[X] で ∏α∈Fp×(X−α)\prod_{\alpha \in \mathbb{F}_p^{\times}}(X - \alpha) と相異なる 1 次式の積に分解します(Fp×\mathbb{F}_p^{\times} の元はすべて αp−1=1\alpha^{p-1} = 1 を満たす)。定理 6.1 の 2 から、各 α\alpha は ff の根 ω(α)∈Zp\omega(\alpha) \in \mathbb{Z}_p にただ 1 通りに持ち上がります。これで p−1p - 1 個の根が得られ、ff の根は高々 p−1p - 1 個なのでこれがすべてです。還元は群の準同型で全単射です。a∈Zpa \in \mathbb{Z}_p が α\alpha の持ち上げなら a=ω(α)ua = \omega(\alpha)u、u∈1+pZpu \in 1 + p\mathbb{Z}_p で、apn=ω(α)pnupn=ω(α)upna^{p^n} = \omega(\alpha)^{p^n}u^{p^n} = \omega(\alpha)u^{p^n}(ω(α)p=ω(α)\omega(\alpha)^p = \omega(\alpha))です。upn∈1+pn+1Zpu^{p^n} \in 1 + p^{n+1}\mathbb{Z}_p((1+pks)p∈1+pk+1Zp(1 + p^ks)^p \in 1 + p^{k+1}\mathbb{Z}_p を繰り返す)なので apn→ω(α)a^{p^n} \to \omega(\alpha) です。

  2. ζ∈Qp\zeta \in \mathbb{Q}_p が 1 の冪根なら ∣ζ∣p=1|\zeta|_p = 1 で ζ∈Zp×\zeta \in \mathbb{Z}_p^{\times} です。pp が奇数のとき、還元 Zp×→Fp×\mathbb{Z}_p^{\times} \to \mathbb{F}_p^{\times} の核 1+pZp1 + p\mathbb{Z}_p は 補題 6.3 から位数有限の元を単位元しかもたないので、1 の冪根の群は Fp×\mathbb{F}_p^{\times} に単射で入り、位数は p−1p - 1 以下です。1 から μp−1\mu_{p-1} に一致します。p=2p = 2 のときは準同型 Z2×→(Z/4Z)×\mathbb{Z}_2^{\times} \to (\mathbb{Z}/4\mathbb{Z})^{\times}(定理 5.2 の 1)の核 1+4Z21 + 4\mathbb{Z}_2 が同じ性質をもつので、1 の冪根の群の位数は 22 以下で、{±1}\{\pm 1\} です。

命題 6.5(Zpℤ_p の単数群)✓

pp を素数とする。

  1. Qp×=pZ×Zp×\mathbb{Q}_p^{\times} = p^{\mathbb{Z}} \times \mathbb{Z}_p^{\times}(x=pvp(x)ux = p^{v_p(x)}u とただ 1 通りに書ける)。
  2. pp が奇数なら Zp×=μp−1×(1+pZp)\mathbb{Z}_p^{\times} = \mu_{p-1} \times (1 + p\mathbb{Z}_p)。
  3. Z2×={±1}×(1+4Z2)\mathbb{Z}_2^{\times} = \{\pm 1\} \times (1 + 4\mathbb{Z}_2)。
証明(命題 6.5)

1 は離散付値環の一般的な性質です(命題 3.2[離散付値環と Dedekind 環] の 1)。2:還元 Zp×→Fp×\mathbb{Z}_p^{\times} \to \mathbb{F}_p^{\times} は全射準同型で核は 1+pZp1 + p\mathbb{Z}_p です。系 6.4 の ω\omega はその切断(ω(α)\omega(\alpha) の還元は α\alpha)で、u∈Zp×u \in \mathbb{Z}_p^{\times} は u=ω(uˉ)⋅(u/ω(uˉ))u = \omega(\bar u)\cdot(u/\omega(\bar u)) と分解し、μp−1∩(1+pZp)=1\mu_{p-1} \cap (1 + p\mathbb{Z}_p) = 1 なので直積です。3:Z2×=1+2Z2\mathbb{Z}_2^{\times} = 1 + 2\mathbb{Z}_2 の元は 44 を法として 11 か −1-1 に合同で、後者なら −1-1 倍すれば 1+4Z21 + 4\mathbb{Z}_2 に入ります。−1∉1+4Z2-1 \notin 1 + 4\mathbb{Z}_2 なので直積です。

命題 6.6(Qpℚ_p の平方元)✓

  1. pp を奇素数とする。u∈Zp×u \in \mathbb{Z}_p^{\times} が Qp\mathbb{Q}_p で平方であることと、u mod pu \bmod p が Fp\mathbb{F}_p で平方であることは同値である。Qp×/(Qp×)2\mathbb{Q}_p^{\times}/(\mathbb{Q}_p^{\times})^2 は位数 44 の群 (Z/2Z)2(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2 で、pp を法として平方非剰余な単数 uu を取ると {1,u,p,up}\{1, u, p, up\} が代表系である。
  2. u∈Z2×u \in \mathbb{Z}_2^{\times} が Q2\mathbb{Q}_2 で平方であることと、u≡1(mod8)u \equiv 1 \pmod 8 は同値である。Q2×/(Q2×)2\mathbb{Q}_2^{\times}/(\mathbb{Q}_2^{\times})^2 は位数 88 の群 (Z/2Z)3(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^3 で、{±1,±5,±2,±10}\{\pm 1, \pm 5, \pm 2, \pm 10\} が代表系である。
証明(命題 6.6)

x=pkux = p^ku(uu は単数)が平方 y2y^2、y=plwy = p^lw なら k=2lk = 2l、u=w2u = w^2 です。よって 命題 6.5 の 1 から (Qp×)2=p2Z×(Zp×)2(\mathbb{Q}_p^{\times})^2 = p^{2\mathbb{Z}} \times (\mathbb{Z}_p^{\times})^2、

Qp×/(Qp×)2≅Z/2Z×Zp×/(Zp×)2\mathbb{Q}_p^{\times}/(\mathbb{Q}_p^{\times})^2 \cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}_p^{\times}/(\mathbb{Z}_p^{\times})^2

です。単数の平方を調べます。

  1. u=w2u = w^2 なら還元して uˉ=wˉ2\bar u = \bar w^2 です。逆に uˉ=β2\bar u = \beta^2(β≠0\beta \ne 0)なら、f=X2−uf = X^2 - u の還元は β≠−β\beta \ne -\beta を単根にもつので、定理 6.1 の 2 から uu は Zp\mathbb{Z}_p で平方です。したがって準同型 Zp×→Fp×/(Fp×)2\mathbb{Z}_p^{\times} \to \mathbb{F}_p^{\times}/(\mathbb{F}_p^{\times})^2 は全射で核は (Zp×)2(\mathbb{Z}_p^{\times})^2 です。Fp×\mathbb{F}_p^{\times} は位数 p−1p - 1(偶数)の巡回群なので右辺は位数 22 です。よって商群は位数 44 で、すべての元の位数が 22 以下ですから (Z/2Z)2(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2、代表系は述べたとおりです。

  2. w∈Z2×w \in \mathbb{Z}_2^{\times} は w=1+2sw = 1 + 2s と書け、w2=1+4s(s+1)≡1(mod8)w^2 = 1 + 4s(s + 1) \equiv 1 \pmod 8 です(s(s+1)s(s + 1) は 2Z22\mathbb{Z}_2 に入る。s mod 2s \bmod 2 で場合分けすればよい)。逆に u≡1(mod8)u \equiv 1 \pmod 8 なら、f=X2−uf = X^2 - u、a0=1a_0 = 1 について ∣f(1)∣2=∣1−u∣2≤1/8<1/4=∣f′(1)∣22|f(1)|_2 = |1 - u|_2 \le 1/8 < 1/4 = |f'(1)|_2^2 なので、定理 6.1 の 1 から uu は平方です。したがって準同型 Z2×→(Z/8Z)×\mathbb{Z}_2^{\times} \to (\mathbb{Z}/8\mathbb{Z})^{\times}(全射)の核 1+8Z21 + 8\mathbb{Z}_2 が (Z2×)2(\mathbb{Z}_2^{\times})^2 に等しく、Z2×/(Z2×)2≅(Z/8Z)×={±1,±5}≅(Z/2Z)2\mathbb{Z}_2^{\times}/(\mathbb{Z}_2^{\times})^2 \cong (\mathbb{Z}/8\mathbb{Z})^{\times} = \{\pm 1, \pm 5\} \cong (\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2 です。商群は位数 88、代表系は述べたとおりです。

例 6.7(Qpℚ_p どうし・Qpℚ_p と ℝ は同型でない)

体の同型は 11 を 11 に移すので Q\mathbb{Q} の元を動かさず、平方元を平方元に移します。

  • p≠ℓp \ne \ell を素数とします。中国剰余定理で、整数 nn を「Qp\mathbb{Q}_p で平方、Qℓ\mathbb{Q}_\ell で平方でない」ように選べます。例えば p,ℓp, \ell がともに奇数なら n≡1(modp)n \equiv 1 \pmod p、n≡u(modℓ)n \equiv u \pmod\ell(uu は ℓ\ell を法とする平方非剰余)、p=2p = 2 なら n≡1(mod8)n \equiv 1 \pmod 8 と n≡u(modℓ)n \equiv u \pmod\ell、ℓ=2\ell = 2 なら n≡1(modp)n \equiv 1 \pmod p と n≡3(mod8)n \equiv 3 \pmod 8 とします。命題 6.6 から Qp≇Qℓ\mathbb{Q}_p \not\cong \mathbb{Q}_\ell です。
  • 1−p31 - p^3(p=2p = 2 なら −7≡1(mod8)-7 \equiv 1 \pmod 8、pp が奇数なら ≡1(modp)\equiv 1 \pmod p)は Qp\mathbb{Q}_p で平方です。順序体では 1>01 > 0 から正の整数は正、1−p31 - p^3 は負で、負の元は平方になりません。よって Qp\mathbb{Q}_p は順序体にならず、R\mathbb{R} とも同型でありません。
  • X3−2X^3 - 2 は F5\mathbb{F}_5 で (X−3)(X2+3X+4)(X - 3)(X^2 + 3X + 4) と互いに素な因子に分解し、2 次の因子は既約です。定理 6.1 の 2 から Z5[X]\mathbb{Z}_5[X] で X3−2=(X−a)hX^3 - 2 = (X - a)h(a≡3a \equiv 3、hˉ=X2+3X+4\bar h = X^2 + 3X + 4)と分解します。hh が Q5\mathbb{Q}_5 に根をもてば、その根は Z5\mathbb{Z}_5 上整なので Z5\mathbb{Z}_5 に属し(離散付値環は整閉)、還元が hˉ\bar h の根になって矛盾します。よって Q5\mathbb{Q}_5 上で X3−2X^3 - 2 は 1 次式と既約な 2 次式の積です。

多項式の係数の付値から、根の付値を読み取る方法です。この節では v ⁣:K→R∪{∞}v \colon K \to \mathbb{R} \cup \{\infty\} を体 KK の(階数 1 の)付値、すなわち v(x)=∞  ⟺  x=0v(x) = \infty \iff x = 0、v(xy)=v(x)+v(y)v(xy) = v(x) + v(y)、v(x+y)≥min⁡(v(x),v(y))v(x + y) \ge \min(v(x), v(y)) を満たす写像とします。非 Archimedes 的な絶対値から v=−log⁡c∣⋅∣v = -\log_c|\cdot| で得られるものです。完備性は仮定しません。

定義 7.1(Newton 多角形)↗

f=∑i=0naiXi∈K[X]f = \sum_{i=0}^na_iX^i \in K[X]、a0an≠0a_0a_n \ne 0 とする。実数 ss に対し

Nf(s):=min⁡0≤i≤n(v(ai)+is)N_f(s) := \min_{0 \le i \le n}\bigl(v(a_i) + is\bigr)

とおき、この最小値を与える添字 ii の最小のものを i−(s)i_{-}(s)、最大のものを i+(s)i_{+}(s) と書く。平面上の点 Pi=(i,v(ai))P_i = (i, v(a_i))(ai≠0a_i \ne 0)の下側の凸包の境界を ff の Newton 多角形という。i−(s)<i+(s)i_{-}(s) < i_{+}(s) のとき、Pi−(s)P_{i_{-}(s)} と Pi+(s)P_{i_{+}(s)} を結ぶ線分は Newton 多角形の傾き −s-s の辺で、ℓf(s):=i+(s)−i−(s)\ell_f(s) := i_{+}(s) - i_{-}(s) をその(水平方向の)長さという。傾き −s-s の辺がないときは ℓf(s)=0\ell_f(s) = 0 である。

v(ai)+isv(a_i) + is は、点 PiP_i を通る傾き −s-s の直線の yy 切片です。切片が最小になる点が、傾き −s-s の支持直線が凸包に接する点で、接点が 2 つ以上あるときその両端が辺の端点になります。直観的には、点 (i,v(ai))(i, v(a_i)) を平面に打ち、下側から糸を張ったときにできる折れ線が Newton 多角形です。次の定理は、辺の傾き −s-s の ss が根の付値で、辺の長さがその付値をもつ根の個数だと述べています。

1015iv(aᵢ)(1, 1)傾き −1/5
p = 5 での X⁵ + 5X + 5 の Newton 多角形。点 (1, 1) は辺の上側にあり、辺は傾き −1/5、長さ 5 の 1 本だけ。

定理 7.2(Newton 多角形と根の付値)✓

f=an∏j=1n(X−αj)f = a_n\prod_{j=1}^n(X - \alpha_j)(an≠0a_n \ne 0、αj∈K×\alpha_j \in K^{\times})と KK で 1 次式の積に分解しているとする。任意の実数 ss について

i−(s)=#{j:v(αj)>s},i+(s)=#{j:v(αj)≥s}i_{-}(s) = \#\{j : v(\alpha_j) > s\}, \qquad i_{+}(s) = \#\{j : v(\alpha_j) \ge s\}

である。したがって付値がちょうど ss の根の個数(重複込み)は、Newton 多角形の傾き −s-s の辺の長さ ℓf(s)\ell_f(s) に等しい。

証明(定理 7.2)

根を v(α1)≥v(α2)≥⋯≥v(αn)v(\alpha_1) \ge v(\alpha_2) \ge \cdots \ge v(\alpha_n) と並べます。ai=±anen−ia_i = \pm a_ne_{n-i}、en−ie_{n-i} は α1,…,αn\alpha_1, \ldots, \alpha_n の n−in - i 次基本対称式です。en−ie_{n-i} の各項は n−in - i 個の根の積で、その付値は、付値の小さい方から n−in - i 個を選んだ αi+1⋯αn\alpha_{i+1}\cdots\alpha_n のとき最小です。よって

v(ai)≥ci:=v(an)+∑j>iv(αj)(0≤i≤n)v(a_i) \ge c_i := v(a_n) + \sum_{j > i}v(\alpha_j) \qquad (0 \le i \le n)

で、i=0i = 0、i=ni = n、または v(αi)>v(αi+1)v(\alpha_i) > v(\alpha_{i+1}) のときは、最小の付値をもつ項が αi+1⋯αn\alpha_{i+1}\cdots\alpha_n ただ 1 つなので等号が成り立ちます。

ss を固定し、m>=#{j:v(αj)>s}m_{>} = \#\{j : v(\alpha_j) > s\}、m≥=#{j:v(αj)≥s}m_{\ge} = \#\{j : v(\alpha_j) \ge s\} とおきます。(ci+is)−(ci−1+(i−1)s)=s−v(αi)(c_i + is) - (c_{i-1} + (i - 1)s) = s - v(\alpha_i) は、i≤m>i \le m_{>} で負、m><i≤m≥m_{>} < i \le m_{\ge} で 00、i>m≥i > m_{\ge} で正です。したがって ci+isc_i + is は i=m>,…,m≥i = m_{>}, \ldots, m_{\ge} でちょうど最小値 μ\mu を取ります。i=m>i = m_{>} と i=m≥i = m_{\ge} は等号の条件(i=0i = 0、i=ni = n、または v(αi)>v(αi+1)v(\alpha_i) > v(\alpha_{i+1}))を満たすので v(ai)+is=ci+is=μv(a_i) + is = c_i + is = \mu です。すべての ii で v(ai)+is≥ci+is≥μv(a_i) + is \ge c_i + is \ge \mu ですから Nf(s)=μN_f(s) = \mu で、最小値を与える ii は ci+is=μc_i + is = \mu を満たすので m>≤i≤m≥m_{>} \le i \le m_{\ge} の範囲にあります。よって i−(s)=m>i_{-}(s) = m_{>}、i+(s)=m≥i_{+}(s) = m_{\ge} です。

実際に使うときは、f∈K[X]f \in K[X] の根が KK の拡大体 LL にあり、LL に vv を延長した付値がある状況を考えます。KK が完備で離散付値をもつとき、有限次拡大への延長がただ 1 つあることを 第 4 章 で示します。

既約性の判定には、根に触れない次の乗法性が便利です。

補題 7.3(Gauss の補題(付値の形))✓

実数 ss と g=∑ibiXi∈K[X]g = \sum_ib_iX^i \in K[X] に対し vs(g):=min⁡i(v(bi)+is)v_s(g) := \min_i(v(b_i) + is)(g=0g = 0 なら ∞\infty)とおく。g,h∈K[X]g, h \in K[X] について vs(gh)=vs(g)+vs(h)v_s(gh) = v_s(g) + v_s(h)。

証明(補題 7.3)

g,h≠0g, h \ne 0 とし、h=∑jcjXjh = \sum_jc_jX^j、gh=∑kdkXkgh = \sum_kd_kX^k、dk=∑i+j=kbicjd_k = \sum_{i+j=k}b_ic_j とします。v(bicj)+(i+j)s≥vs(g)+vs(h)v(b_ic_j) + (i + j)s \ge v_s(g) + v_s(h) なので v(dk)+ks≥vs(g)+vs(h)v(d_k) + ks \ge v_s(g) + v_s(h) です。v(bi)+is=vs(g)v(b_i) + is = v_s(g) となる最小の ii を i0i_0、v(cj)+js=vs(h)v(c_j) + js = v_s(h) となる最小の jj を j0j_0 とします。k=i0+j0k = i_0 + j_0 のとき、dkd_k の項 bicjb_ic_j(i+j=ki + j = k)のうち (i,j)≠(i0,j0)(i, j) \ne (i_0, j_0) のものは i<i0i < i_0 または j<j0j < j_0 で、最小性から v(bicj)+ks>vs(g)+vs(h)v(b_ic_j) + ks > v_s(g) + v_s(h) です。よって v(dk)+ks=v(bi0cj0)+ks=vs(g)+vs(h)v(d_k) + ks = v(b_{i_0}c_{j_0}) + ks = v_s(g) + v_s(h) で、vs(gh)=vs(g)+vs(h)v_s(gh) = v_s(g) + v_s(h) です。

系 7.4(Eisenstein 多項式の既約性)✓

vv を体 KK の離散付値(値群 Z\mathbb{Z})とし、f=Xn+an−1Xn−1+⋯+a0∈K[X]f = X^n + a_{n-1}X^{n-1} + \cdots + a_0 \in K[X] が v(ai)≥1v(a_i) \ge 1(0≤i≤n−10 \le i \le n - 1)、v(a0)=1v(a_0) = 1 を満たすとする(Eisenstein 多項式)。このとき ff は K[X]K[X] で既約である。

証明(系 7.4)

s=1/ns = 1/n とします。vs(f)=min⁡(1,min⁡i<n(v(ai)+i/n))=1v_s(f) = \min\bigl(1, \min_{i<n}(v(a_i) + i/n)\bigr) = 1 です(XnX^n の項と a0a_0 の項が 11 を与え、他は 11 以上)。f=ghf = gh、g,hg, h はモニックで次数 dd、n−dn - d(0<d<n0 < d < n)とします。最高次の項から vs(g)≤d/nv_s(g) \le d/n、vs(h)≤(n−d)/nv_s(h) \le (n - d)/n で、補題 7.3 から vs(g)+vs(h)=1v_s(g) + v_s(h) = 1 なので、どちらも等号です。定数項 b0=g(0)b_0 = g(0)、c0=h(0)c_0 = h(0) について v(b0)≥vs(g)=d/nv(b_0) \ge v_s(g) = d/n、v(c0)≥(n−d)/nv(c_0) \ge (n - d)/n で、v(b0)+v(c0)=v(a0)=1v(b_0) + v(c_0) = v(a_0) = 1 から v(b0)=d/nv(b_0) = d/n です。これは 0<d/n<10 < d/n < 1 が整数でないことに反します。

これは UFD 上の Eisenstein の判定法(定理 4.1[多項式環と体の拡大])の離散付値体での形で、証明は「根の付値がすべて 1/n1/n なので、次数 dd の因子の定数項の付値は d/nd/n でなければならない」という Newton 多角形の読み方を、根を使わずに書いたものです。

例 7.5(Newton 多角形を読む)

  • f=X5+5X+5f = X^5 + 5X + 5、v=v5v = v_5:点は (0,1)(0, 1)、(1,1)(1, 1)、(5,0)(5, 0) で、(0,1)(0, 1) と (5,0)(5, 0) を結ぶ直線の i=1i = 1 での高さは 4/5<14/5 < 1 ですから、多角形は傾き −1/5-1/5、長さ 55 の辺 1 本です(上の図)。定理 7.2 から、ff が分解する付値体では 5 つの根の付値はすべて 1/51/5 です。ff は Eisenstein 多項式で、Q5\mathbb{Q}_5 上(したがって Q\mathbb{Q} 上)既約です。
  • f=X3+X2+2X+8f = X^3 + X^2 + 2X + 8、v=v2v = v_2:点は (0,3)(0, 3)、(1,1)(1, 1)、(2,0)(2, 0)、(3,0)(3, 0) で、辺の傾きは順に −2-2、−1-1、00、長さはどれも 11 です。根の付値は 2,1,02, 1, 0 が 1 つずつです。付値が相異なるので 3 つの根は互いに共役になれず、ff は Q2\mathbb{Q}_2 上 3 つの 1 次式に分解することが、第 4 章の延長の一意性から分かります。

8. Archimedes 的な完備体と代数体の素点

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定理 8.1(完備な Archimedes 的付値体は ℝ か ℂ)✓

(K,∣⋅∣)(K, |\cdot|) を Archimedes 的な完備付値体とする。このとき体の同型 τ ⁣:K→R\tau \colon K \to \mathbb{R} または τ ⁣:K→C\tau \colon K \to \mathbb{C} と実数 0<s≤10 < s \le 1 があって、すべての x∈Kx \in K で ∣x∣=∣τ(x)∣∞s|x| = |\tau(x)|_\infty^s となる。

証明は 3 段階です。まず KK が R\mathbb{R} を含むことを示し、次にどの元も実係数の 2 次方程式の根であることを示します。最後に、これから KK が R\mathbb{R} か C\mathbb{C} に限られることを導きます。2 段階目の多項式 QQ は、関数 ϕ\phi の最小値 mm が正だと仮定して矛盾を作るための道具で、ϕ(z1)>m\phi(z_1) > m となる根 z1z_1 をもつものを選び、nn を大きくする極限で ϕ(z1)≤m\phi(z_1) \le m を導きます。

証明(定理 8.1)

KK は R\mathbb{R} を含む。 正標数の体の絶対値は非 Archimedes 的なので KK の標数は 00 で、Q⊆K\mathbb{Q} \subseteq K です。∣⋅∣|\cdot| の Q\mathbb{Q} への制限は Archimedes 的で(命題 2.3)、定理 3.1 から ∣x∣=∣x∣∞s|x| = |x|_\infty^s(x∈Qx \in \mathbb{Q}、0<s≤10 < s \le 1)です。Q\mathbb{Q} の KK での閉包 FF は、演算の連続性から部分体で、完備な KK の閉集合なので完備、Q\mathbb{Q} が稠密ですから (Q,∣⋅∣∞s)(\mathbb{Q}, |\cdot|_\infty^s) の完備化です。(R,∣⋅∣∞s)(\mathbb{R}, |\cdot|_\infty^s) も同じ付値体の完備化なので(∣⋅∣∞s|\cdot|_\infty^s と ∣⋅∣∞|\cdot|_\infty の Cauchy 列と収束は同じです)、定理 4.2 の 2 から F≅RF \cong \mathbb{R} です。以後 R⊆K\mathbb{R} \subseteq K、∣r∣=∣r∣∞s|r| = |r|_\infty^s(r∈Rr \in \mathbb{R})とします。

各元は実係数の 2 次方程式の根である。 ξ∈K\xi \in K を固定し、z∈Cz \in \mathbb{C} に対し

ϕ(z):=∣ξ2−(z+zˉ)ξ+zzˉ∣∈R≥0\phi(z) := \bigl|\xi^2 - (z + \bar z)\xi + z\bar z\bigr| \in \mathbb{R}_{\ge 0}

とおきます(z+zˉz + \bar z、zzˉz\bar z は実数なので KK の元です)。三角不等式から

∣ϕ(z)−ϕ(w)∣≤∣z+zˉ−w−wˉ∣∞s ∣ξ∣+∣∣z∣∞2−∣w∣∞2∣s|\phi(z) - \phi(w)| \le |z + \bar z - w - \bar w|_\infty^s\,|\xi| + \bigl||z|_\infty^2 - |w|_\infty^2\bigr|^s

なので ϕ\phi は連続で、ϕ(z)≥∣z∣∞2s−2s∣z∣∞s∣ξ∣−∣ξ∣2→∞\phi(z) \ge |z|_\infty^{2s} - 2^s|z|_\infty^s|\xi| - |\xi|^2 \to \infty(∣z∣∞→∞|z|_\infty \to \infty)です。よって ϕ\phi は最小値 m≥0m \ge 0 をもち、S:={z:ϕ(z)=m}S := \{z : \phi(z) = m\} は空でない有界閉集合です(系 6.2[コンパクト性] を十分大きい閉円板に使う)。SS の点で ∣z∣∞|z|_\infty が最大のもの z0z_0 を取ります。

m>0m > 0 と仮定して矛盾を導きます。0<ε0 < \varepsilon を εs<m\varepsilon^s < m となるように取り、実係数多項式

q(X):=X2−(z0+zˉ0)X+z0zˉ0+εq(X) := X^2 - (z_0 + \bar z_0)X + z_0\bar z_0 + \varepsilon

の C\mathbb{C} での根を z1,zˉ1z_1, \bar z_1 または実根 z1,z1′z_1, z_1' とします。どちらの場合も根の積は z0zˉ0+ε>∣z0∣∞2z_0\bar z_0 + \varepsilon > |z_0|_\infty^2 なので、絶対値が ∣z0∣∞|z_0|_\infty より大きい根があり、それを z1z_1 とします。z0z_0 の取り方から z1∉Sz_1 \notin S、ϕ(z1)>m\phi(z_1) > m です。

奇数 nn に対し、2n2n 次の実係数モニック多項式

Q(X):=(q(X)−ε)n−(−ε)nQ(X) := \bigl(q(X) - \varepsilon\bigr)^n - (-\varepsilon)^n

を考えます。Q(z1)=(−ε)n−(−ε)n=0Q(z_1) = (-\varepsilon)^n - (-\varepsilon)^n = 0 です。代数学の基本定理(定理 4.3[正則関数の強力な性質])から Q(X)=∏i=12n(X−βi)Q(X) = \prod_{i=1}^{2n}(X - \beta_i)(βi∈C\beta_i \in \mathbb{C}、β1=z1\beta_1 = z_1)で、QQ は実係数なので Q(X)=∏i(X−βˉi)Q(X) = \prod_i(X - \bar\beta_i) でもあり、

Q(X)2=∏i=12n(X2−(βi+βˉi)X+βiβˉi)Q(X)^2 = \prod_{i=1}^{2n}\bigl(X^2 - (\beta_i + \bar\beta_i)X + \beta_i\bar\beta_i\bigr)

は R[X]\mathbb{R}[X] での等式です。X=ξX = \xi を代入して絶対値を取ると ∣Q(ξ)∣2=∏iϕ(βi)≥ϕ(z1)m2n−1|Q(\xi)|^2 = \prod_i\phi(\beta_i) \ge \phi(z_1)m^{2n-1} です。一方 ∣Q(ξ)∣≤∣q(ξ)−ε∣n+∣ε∣n=ϕ(z0)n+εsn=mn+εsn|Q(\xi)| \le |q(\xi) - \varepsilon|^n + |\varepsilon|^n = \phi(z_0)^n + \varepsilon^{sn} = m^n + \varepsilon^{sn} です。よって

ϕ(z1)m≤(1+(εs/m)n)2\frac{\phi(z_1)}{m} \le \Bigl(1 + \bigl(\varepsilon^s/m\bigr)^n\Bigr)^2

で、n→∞n \to \infty とすると右辺は 11 に収束し、ϕ(z1)≤m\phi(z_1) \le m となって矛盾します。したがって m=0m = 0 で、ξ2−(z0+zˉ0)ξ+z0zˉ0=0\xi^2 - (z_0 + \bar z_0)\xi + z_0\bar z_0 = 0 です。

結論。 K=RK = \mathbb{R} なら τ=id\tau = \mathrm{id} でよいので、ξ∈K∖R\xi \in K \setminus \mathbb{R} があるとします。ξ\xi は実係数 2 次式 X2−2aX+bX^2 - 2aX + b の根で、この式は実根をもたないので b−a2>0b - a^2 > 0、j:=(ξ−a)/b−a2j := (\xi - a)/\sqrt{b - a^2} は j2=−1j^2 = -1 を満たします。R(j)=R+Rj\mathbb{R}(j) = \mathbb{R} + \mathbb{R}j は x+yj↦x+yix + yj \mapsto x + yi で C\mathbb{C} と同型です。KK の任意の元 η\eta は実係数 2 次式の根で、その 2 次式は代数閉体 R(j)≅C\mathbb{R}(j) \cong \mathbb{C} で 1 次式の積に分解するので η∈R(j)\eta \in \mathbb{R}(j) です。よって K=R(j)K = \mathbb{R}(j) で、同型 τ ⁣:K→C\tau \colon K \to \mathbb{C} が得られます。

絶対値について、τ(u)\tau(u) が単位円周上にある u=x+yju = x + yj(x2+y2=1x^2 + y^2 = 1)は ∣u∣≤∣x∣+∣y∣∣j∣≤1+∣j∣|u| \le |x| + |y||j| \le 1 + |j| を満たします。そのような uu の全体は乗法群で、∣u∣≠1|u| \ne 1 なら ∣un∣|u^n| か ∣u−n∣|u^{-n}| が非有界になるので、∣u∣=1|u| = 1 です。K×K^{\times} の元は ruru(r=∣τ(ru)∣∞>0r = |\tau(ru)|_\infty > 0 は実数)と書けるので ∣ru∣=∣r∣=rs=∣τ(ru)∣∞s|ru| = |r| = r^s = |\tau(ru)|_\infty^s です。

したがって Archimedes 的な絶対値についての「局所体」は R\mathbb{R} と C\mathbb{C} だけで、新しい体は非 Archimedes 的な側からしか出てきません。

定義 8.2(素点と正規化した絶対値)↗

体 KK の自明でない絶対値の同値類を KK の素点という。KK を代数体とする。

  • OK\mathcal{O}_K の 00 でない素イデアル p\mathfrak{p} に対し ∣x∣p:=(Np)−vp(x)|x|_{\mathfrak{p}} := (N\mathfrak{p})^{-v_{\mathfrak{p}}(x)}。この同値類を有限素点という。
  • 実の埋め込み σ ⁣:K→R\sigma \colon K \to \mathbb{R} に対し ∣x∣σ:=∣σ(x)∣∞|x|_\sigma := |\sigma(x)|_\infty。この同値類を実素点という。
  • 実でない埋め込み σ ⁣:K→C\sigma \colon K \to \mathbb{C} に対し ∣x∣σ:=∣σ(x)∣∞2|x|_\sigma := |\sigma(x)|_\infty^2。∣σ(x)∣∞|\sigma(x)|_\infty の同値類を複素素点という(σ\sigma と σˉ\bar\sigma は同じ素点を定める)。 実素点と複素素点を合わせて無限素点という。上の ∣⋅∣v|\cdot|_v を素点 vv の正規化した絶対値という。複素素点の ∣⋅∣v|\cdot|_v は絶対値の平方で、三角不等式を満たさないが、定める位相は同じである。有限素点 vv が素数 pp の上にあることを v∣pv \mid p、無限素点であることを v∣∞v \mid \infty と書く。

これは S 単数と Kummer 理論 の 定義 2.1[S 単数と Kummer 理論] と同じものを、絶対値の同値類として定義し直したものです。次の定理がその一致を保証します。

定理 8.3(代数体の素点の分類)✓

KK を代数体とし、r1r_1 を実の埋め込みの個数、r2r_2 を実でない埋め込みの共役対の個数とする。

  1. KK の自明でない非 Archimedes 的な絶対値は、ただ 1 つの素イデアル p\mathfrak{p} について ∣⋅∣p|\cdot|_{\mathfrak{p}} に同値である。
  2. KK の Archimedes 的な絶対値は、ある埋め込み σ ⁣:K→C\sigma \colon K \to \mathbb{C} について ∣σ(⋅)∣∞|\sigma(\cdot)|_\infty に同値である。埋め込み σ,σ′\sigma, \sigma' が同値な絶対値を定めるのは σ′=σ\sigma' = \sigma または σ′=σˉ\sigma' = \bar\sigma のときに限る。 したがって KK の素点は、有限素点(素イデアルと 1 対 1)と r1+r2r_1 + r_2 個の無限素点で尽くされる。素点 vv での完備化 KvK_v は、実素点で R\mathbb{R}、複素素点で C\mathbb{C} に同型である。
証明(定理 8.3)

1. ∣⋅∣|\cdot| を自明でない非 Archimedes 的な絶対値、R={x∈K:∣x∣≤1}R = \{x \in K : |x| \le 1\} とします。命題 2.3 から Z⊆R\mathbb{Z} \subseteq R です。α∈OK\alpha \in \mathcal{O}_K が αm+c1αm−1+⋯+cm=0\alpha^m + c_1\alpha^{m-1} + \cdots + c_m = 0(ci∈Zc_i \in \mathbb{Z})を満たすとし、∣α∣>1|\alpha| > 1 と仮定すると、∣ciαm−i∣≤∣α∣m−i<∣α∣m|c_i\alpha^{m-i}| \le |\alpha|^{m-i} < |\alpha|^m なので左辺の絶対値は ∣α∣m≠0|\alpha|^m \ne 0 となり矛盾します。よって OK⊆R\mathcal{O}_K \subseteq R です。p:={x∈OK:∣x∣<1}\mathfrak{p} := \{x \in \mathcal{O}_K : |x| < 1\} は OK\mathcal{O}_K の素イデアルです。p=0\mathfrak{p} = 0 なら OK∖{0}\mathcal{O}_K \setminus \{0\} の上で ∣x∣=1|x| = 1 で、KK は OK\mathcal{O}_K の商体ですから絶対値が自明になります。よって p≠0\mathfrak{p} \ne 0 です。

局所化 OK,p\mathcal{O}_{K,\mathfrak{p}} は離散付値環で、その付値は vpv_{\mathfrak{p}} です(定理 5.1[離散付値環と Dedekind 環])。素元 tt を取ります。OK,p\mathcal{O}_{K,\mathfrak{p}} の単元は a/ba/b(a,b∈OK∖pa, b \in \mathcal{O}_K \setminus \mathfrak{p})の形で ∣a/b∣=1|a/b| = 1、また t=a/bt = a/b(a∈pa \in \mathfrak{p}、b∉pb \notin \mathfrak{p})なので ∣t∣<1|t| < 1 です。x∈K×x \in K^{\times} は x=utvp(x)x = ut^{v_{\mathfrak{p}}(x)}(uu は単元)と書けるので ∣x∣=∣t∣vp(x)=∣x∣ps|x| = |t|^{v_{\mathfrak{p}}(x)} = |x|_{\mathfrak{p}}^s、s=−log⁡∣t∣/log⁡Np>0s = -\log|t|/\log N\mathfrak{p} > 0 です。p≠q\mathfrak{p} \ne \mathfrak{q} なら x∈p∖qx \in \mathfrak{p} \setminus \mathfrak{q} について ∣x∣p<1=∣x∣q|x|_{\mathfrak{p}} < 1 = |x|_{\mathfrak{q}} なので、∣⋅∣p|\cdot|_{\mathfrak{p}} と ∣⋅∣q|\cdot|_{\mathfrak{q}} は同値でありません(命題 2.5)。

2. ∣⋅∣|\cdot| を Archimedes 的な絶対値とし、完備化 K^\widehat K を取ります。K^\widehat K は Archimedes 的な完備付値体なので、定理 8.1 の同型 τ ⁣:K^→R\tau \colon \widehat K \to \mathbb{R} または C\mathbb{C} があります。σ:=τ∣K\sigma := \tau|_K は埋め込みで ∣x∣=∣σ(x)∣∞s|x| = |\sigma(x)|_\infty^s です。

σ,σ′\sigma, \sigma' が同値な絶対値を定めるとします。命題 2.5 から ∣σ′(x)∣∞=∣σ(x)∣∞t|\sigma'(x)|_\infty = |\sigma(x)|_\infty^t で、x=2x = 2 として t=1t = 1 です。σ(K)\sigma(K) の C\mathbb{C} での閉包 FF は R\mathbb{R} を含む閉部分体で、σ(K)⊆R\sigma(K) \subseteq \mathbb{R} なら R\mathbb{R}、そうでなければ C\mathbb{C} です(実でない元 ww を含めば R+Rw=C\mathbb{R} + \mathbb{R}w = \mathbb{C})。σ′\sigma' についての閉包を F′F' とします。(F,σ)(F, \sigma) と (F′,σ′)(F', \sigma') はともに (K,∣σ(⋅)∣∞)(K, |\sigma(\cdot)|_\infty) の完備化なので、定理 4.2 の 2 から絶対値を保つ体の同型 φ ⁣:F→F′\varphi \colon F \to F' で φ∘σ=σ′\varphi \circ \sigma = \sigma' となるものがあります。φ\varphi は Q\mathbb{Q} の上で恒等写像で連続ですから R\mathbb{R} の上で恒等写像です。F=RF = \mathbb{R} なら σ′=σ\sigma' = \sigma です。F=CF = \mathbb{C} なら φ(i)2=−1\varphi(i)^2 = -1 から φ(i)=±i\varphi(i) = \pm i で、φ\varphi は恒等写像か複素共役、すなわち σ′=σ\sigma' = \sigma または σˉ\bar\sigma です。逆に ∣σˉ(x)∣∞=∣σ(x)∣∞|\bar\sigma(x)|_\infty = |\sigma(x)|_\infty です。

非 Archimedes 的な絶対値と Archimedes 的な絶対値は同値になりません(同値なら一方が他方の正の冪で、整数の像が有界かどうかは冪を取っても変わらない。命題 2.5、命題 2.3)。以上で素点の一覧が得られます。完備化については、上の (F,σ)(F, \sigma) が ∣σ(⋅)∣∞|\sigma(\cdot)|_\infty に関する完備化です。

定理 8.4(積公式)✓

KK を代数体、x∈K×x \in K^{\times} とする。有限個を除くすべての素点 vv で ∣x∣v=1|x|_v = 1 であり、

∏v∣x∣v=1\prod_v|x|_v = 1

が成り立つ。積は KK のすべての素点にわたり、∣⋅∣v|\cdot|_v は正規化した絶対値である。より詳しく、素数 pp について ∏v∣p∣x∣v=∣NK/Q(x)∣p\prod_{v \mid p}|x|_v = |N_{K/\mathbb{Q}}(x)|_p、∏v∣∞∣x∣v=∣NK/Q(x)∣∞\prod_{v \mid \infty}|x|_v = |N_{K/\mathbb{Q}}(x)|_\infty である。

証明(定理 8.4)

K=QK = \mathbb{Q} の場合。 x=±∏ppkpx = \pm\prod_pp^{k_p}(有限個を除き kp=0k_p = 0)と素因数分解すると ∣x∣p=p−kp|x|_p = p^{-k_p}、∣x∣∞=∏ppkp|x|_\infty = \prod_pp^{k_p} で、積は 11 です。

一般の場合。 xOKx\mathcal{O}_K の素イデアル分解に現れる素イデアルは有限個なので、有限個を除く p\mathfrak{p} で vp(x)=0v_{\mathfrak{p}}(x) = 0 です。素数 pp について、pp の上の素イデアル p\mathfrak{p} の剰余次数を fpf_{\mathfrak{p}} とすると Np=pfpN\mathfrak{p} = p^{f_{\mathfrak{p}}} で

∏p∣p∣x∣p=p−∑p∣pfpvp(x)\prod_{\mathfrak{p} \mid p}|x|_{\mathfrak{p}} = p^{-\sum_{\mathfrak{p} \mid p}f_{\mathfrak{p}}v_{\mathfrak{p}}(x)}

です。イデアルの相対ノルムの定義と 命題 7.3[分解群・惰性群・Frobenius 元] の 3 から NK/Q(x)Z=NK/Q(xOK)=∏pp∑p∣pfpvp(x)ZN_{K/\mathbb{Q}}(x)\mathbb{Z} = N_{K/\mathbb{Q}}(x\mathcal{O}_K) = \prod_p p^{\sum_{\mathfrak{p} \mid p}f_{\mathfrak{p}}v_{\mathfrak{p}}(x)}\mathbb{Z} なので、指数は vp(NK/Q(x))v_p(N_{K/\mathbb{Q}}(x)) で、∏p∣p∣x∣p=∣NK/Q(x)∣p\prod_{\mathfrak{p} \mid p}|x|_{\mathfrak{p}} = |N_{K/\mathbb{Q}}(x)|_p です。

無限素点について、実の埋め込み σ\sigma は因子 ∣σ(x)∣∞|\sigma(x)|_\infty を、共役対 {σ,σˉ}\{\sigma, \bar\sigma\} は因子 ∣σ(x)∣∞2=∣σ(x)∣∞∣σˉ(x)∣∞|\sigma(x)|_\infty^2 = |\sigma(x)|_\infty|\bar\sigma(x)|_\infty を与えるので、∏v∣∞∣x∣v=∏σ∣σ(x)∣∞=∣NK/Q(x)∣∞\prod_{v \mid \infty}|x|_v = \prod_\sigma|\sigma(x)|_\infty = |N_{K/\mathbb{Q}}(x)|_\infty です(積はすべての埋め込みにわたる。定義 3.2[代数体の整数環と Dedekind 整域])。

以上から ∏v∣x∣v=∏p∣NK/Q(x)∣p⋅∣NK/Q(x)∣∞\prod_v|x|_v = \prod_p|N_{K/\mathbb{Q}}(x)|_p\cdot|N_{K/\mathbb{Q}}(x)|_\infty で、Q\mathbb{Q} の積公式を NK/Q(x)∈Q×N_{K/\mathbb{Q}}(x) \in \mathbb{Q}^{\times} に使えば 11 です。

積公式が成り立つように絶対値を選んだのが「正規化」です。複素素点で平方を取るのは、C\mathbb{C} が R\mathbb{R} 上 2 次で、ノルムへの寄与が ∣σ(x)∣2|\sigma(x)|^2 だからです。第 4 章 で、有限素点でも ∣x∣w=∣NLw/Kv(x)∣v|x|_w = |N_{L_w/K_v}(x)|_v という同じ形の関係が成り立つことを見ます。積公式は「K×K^{\times} がイデール群の中で離散的である」ことの根拠になり、第 5 章 で使われます。

方程式が Q\mathbb{Q} で解をもてば、すべての完備化 Qp\mathbb{Q}_p と R\mathbb{R} で解をもちます。逆に、各完備化での可解性は Hensel の補題によって合同式の有限回の計算で判定できます。2 次形式についてこれを記号にまとめたのが Hilbert 記号です。

定義 9.1(Hilbert 記号)↗

FF を Qp\mathbb{Q}_p(pp は素数)または R\mathbb{R} とし、a,b∈F×a, b \in F^{\times} とする。方程式 z2=ax2+by2z^2 = ax^2 + by^2 が (x,y,z)≠(0,0,0)(x, y, z) \ne (0, 0, 0) となる解を FF にもつとき (a,b)F:=1(a, b)_F := 1、もたないとき (a,b)F:=−1(a, b)_F := -1 と定める。F=QpF = \mathbb{Q}_p のとき (a,b)p(a, b)_p、F=RF = \mathbb{R} のとき (a,b)∞(a, b)_\infty と書く。

定義から (a,b)F=(b,a)F(a, b)_F = (b, a)_F、(a,c2)F=1(a, c^2)_F = 1((x,y,z)=(0,1,c)(x, y, z) = (0, 1, c))、(ac2,b)F=(a,b)F(ac^2, b)_F = (a, b)_F です。(a,b)∞=−1(a, b)_\infty = -1 は a<0a < 0 かつ b<0b < 0 と同値です。

命題 9.2(Hilbert 記号の計算と x² + y² + z² = 0 の局所可解性)✓

pp を素数とする。

  1. pp が奇数で u,w∈Zp×u, w \in \mathbb{Z}_p^{\times} なら (u,w)p=1(u, w)_p = 1。
  2. pp が奇数で u∈Zp×u \in \mathbb{Z}_p^{\times} なら (u,p)p=(uˉp)(u, p)_p = \left(\dfrac{\bar u}{p}\right)(uˉ\bar u は u mod pu \bmod p。右辺は Legendre 記号)。
  3. 方程式 x2+y2+z2=0x^2 + y^2 + z^2 = 0 は、pp が奇数なら Qp\mathbb{Q}_p に (0,0,0)(0, 0, 0) でない解をもち、Q2\mathbb{Q}_2 と R\mathbb{R} にはもたない。すなわち (−1,−1)p=1(-1, -1)_p = 1(pp は奇数)、(−1,−1)2=(−1,−1)∞=−1(-1, -1)_2 = (-1, -1)_\infty = -1。
証明(命題 9.2)
  1. uˉ,wˉ∈Fp×\bar u, \bar w \in \mathbb{F}_p^{\times} とします。xx が Fp\mathbb{F}_p を動くとき uˉx2+wˉ\bar ux^2 + \bar w は (p+1)/2(p + 1)/2 個の値を取り(x2x^2 の値は 00 と (p−1)/2(p - 1)/2 個の平方剰余)、z2z^2 も (p+1)/2(p + 1)/2 個の値を取ります。合わせて p+1>pp + 1 > p 個なので共通の値があり、uˉx02+wˉ=z02\bar ux_0^2 + \bar w = z_0^2 となる x0,z0∈Fpx_0, z_0 \in \mathbb{F}_p があります。z0≠0z_0 \ne 0 のとき、x0x_0 の持ち上げ x1∈Zpx_1 \in \mathbb{Z}_p を取ると、f(Z)=Z2−(ux12+w)f(Z) = Z^2 - (ux_1^2 + w) の還元は z0z_0 を単根にもつので(2z0≠02z_0 \ne 0)、定理 6.1 の 2 から z2=ux12+w⋅12z^2 = ux_1^2 + w\cdot 1^2 となる z∈Zpz \in \mathbb{Z}_p があります。z0=0z_0 = 0 のときは uˉx02=−wˉ≠0\bar ux_0^2 = -\bar w \ne 0 から x0≠0x_0 \ne 0 です。f(X)=uX2+wf(X) = uX^2 + w(モニックでないので Newton 法の形を使います)と x0x_0 の持ち上げ x1∈Zpx_1 \in \mathbb{Z}_p について ∣f(x1)∣p<1=∣2ux1∣p2=∣f′(x1)∣p2|f(x_1)|_p < 1 = |2ux_1|_p^2 = |f'(x_1)|_p^2 なので、定理 6.1 の 1 から ux2+w=0ux^2 + w = 0 となる x∈Zpx \in \mathbb{Z}_p があり、(x,1,0)(x, 1, 0) が解です。

  2. uˉ=β2\bar u = \beta^2 なら 命題 6.6 から u=c2u = c^2(c∈Zpc \in \mathbb{Z}_p)で、(1,0,c)(1, 0, c) が z2=ux2+py2z^2 = ux^2 + py^2 の解です。逆に (x,y,z)≠0(x, y, z) \ne 0 を解とします。pp の冪を掛けて x,y,z∈Zpx, y, z \in \mathbb{Z}_p で、どれかは単数としてよい。p∣xp \mid x なら z2=ux2+py2z^2 = ux^2 + py^2 から p∣zp \mid z で、p2∣py2p^2 \mid py^2 から p∣yp \mid y となり矛盾します。よって xx は単数で、還元して uˉ=(zˉ/xˉ)2\bar u = (\bar z/\bar x)^2 です。

  3. pp が奇数のとき、1 を u=w=−1u = w = -1 に使うと z2=−x2−y2z^2 = -x^2 - y^2 が (0,0,0)(0, 0, 0) でない解をもちます。Q2\mathbb{Q}_2 で解があるとすると、22 の冪を掛けて x,y,z∈Z2x, y, z \in \mathbb{Z}_2 で、どれかは単数としてよい。単数の平方は 44 を法として 11、2Z22\mathbb{Z}_2 の元の平方は 00 なので、x2+y2+z2 mod 4x^2 + y^2 + z^2 \bmod 4 は単数の個数(11、22、33 のどれか)に等しく、00 になりません。R\mathbb{R} では平方の和が 00 になるのは x=y=z=0x = y = z = 0 のときだけです。

注意 9.3(Hasse–Minkowski の定理と Hilbert の相互法則(主張のみ))

有理数係数の 2 次形式 q(x1,…,xn)q(x_1, \ldots, x_n) について、q=0q = 0 が Q\mathbb{Q} に自明でない解をもつことは、R\mathbb{R} とすべての Qp\mathbb{Q}_p に自明でない解をもつことと同値です(Hasse–Minkowski の定理)。また a,b∈Q×a, b \in \mathbb{Q}^{\times} について、有限個を除く vv で (a,b)v=1(a, b)_v = 1 であり、∏v(a,b)v=1\prod_v(a, b)_v = 1 が成り立ちます(Hilbert の相互法則。平方剰余の相互法則と同値)。命題 9.2 の 3 では (−1,−1)v=−1(-1, -1)_v = -1 となる vv が 22 と ∞\infty のちょうど 2 つで、この積公式と合っています。これらは本記事では証明せず、定理環境にもしていません。証明は J.-P. Serre, A Course in Arithmetic の第 III 章・第 IV 章にあります。3 次以上の方程式では、すべての完備化で解があっても Q\mathbb{Q} に解がない例(Selmer の 3x3+4y3+5z3=03x^3 + 4y^3 + 5z^3 = 0)があり、局所から大域への移行は一般には成り立ちません。

演習 10.1易

非 Archimedes 的な付値体では「すべての三角形は二等辺三角形」であること、すなわち x,y,z∈Kx, y, z \in K について ∣x−y∣|x - y|、∣y−z∣|y - z|、∣x−z∣|x - z| のうち大きい方の 2 つが等しいことを示せ。また、閉球 {x:∣x−a∣≤r}\{x : |x - a| \le r\} の任意の点がその球の中心になることを示せ。

解答

α=x−y\alpha = x - y、β=y−z\beta = y - z とすると x−z=α+βx - z = \alpha + \beta です。∣α∣≠∣β∣|\alpha| \ne |\beta| なら 2.1 節の注意から ∣α+β∣=max⁡(∣α∣,∣β∣)|\alpha + \beta| = \max(|\alpha|, |\beta|) で、大きい方の 2 つが等しくなります。∣α∣=∣β∣|\alpha| = |\beta| なら ∣α+β∣≤∣α∣|\alpha + \beta| \le |\alpha| で、やはり大きい方の 2 つ(∣α∣|\alpha| と ∣β∣|\beta|)が等しくなります。

∣b−a∣≤r|b - a| \le r とします。∣x−a∣≤r|x - a| \le r なら ∣x−b∣≤max⁡(∣x−a∣,∣a−b∣)≤r|x - b| \le \max(|x - a|, |a - b|) \le r で、逆も同様ですから {x:∣x−a∣≤r}={x:∣x−b∣≤r}\{x : |x - a| \le r\} = \{x : |x - b| \le r\} です。

演習 10.2標準

Z7\mathbb{Z}_7 での −2/3-2/3 の 77 進展開を求めよ。また、係数列が 1,2,1,2,…1, 2, 1, 2, \ldots(周期 2)である 77 進整数はどの有理数か。

解答

命題 5.3 の証明の手順を使います。x0=−2/3x_0 = -2/3。3⋅5≡1(mod7)3 \cdot 5 \equiv 1 \pmod 7 なので 1/3≡51/3 \equiv 5、a0≡−2⋅5=−10≡4a_0 \equiv -2 \cdot 5 = -10 \equiv 4。x1=(−2/3−4)/7=(−14/3)/7=−2/3=x0x_1 = (-2/3 - 4)/7 = (-14/3)/7 = -2/3 = x_0。よって係数はすべて 44 で、−2/3=4+4⋅7+4⋅72+⋯-2/3 = 4 + 4\cdot 7 + 4\cdot 7^2 + \cdots です。検算:4/(1−7)=−2/34/(1 - 7) = -2/3。

係数列 1,2,1,2,…1, 2, 1, 2, \ldots の和は (1+2⋅7)(1+72+74+⋯ )=15/(1−49)=−15/48=−5/16(1 + 2\cdot 7)(1 + 7^2 + 7^4 + \cdots) = 15/(1 - 49) = -15/48 = -5/16 です。

演習 10.3標準

Q3\mathbb{Q}_3 において、単数 u∈Z3×u \in \mathbb{Z}_3^{\times} が立方であることと u≡±1(mod9)u \equiv \pm 1 \pmod 9 は同値であることを示せ。

解答

w∈Z3×w \in \mathbb{Z}_3^{\times} は w=±1+3sw = \pm 1 + 3s と書け、w3=±1+9s+27(⋯ )≡±1(mod9)w^3 = \pm 1 + 9s + 27(\cdots) \equiv \pm 1 \pmod 9 です((±1+3s)3=±1+3⋅3s+3(±1)9s2+27s3(\pm 1 + 3s)^3 = \pm 1 + 3\cdot 3s + 3(\pm 1)9s^2 + 27s^3)。逆に u≡±1(mod9)u \equiv \pm 1 \pmod 9 とします。uu を −u-u に取り替えて(−1=(−1)3-1 = (-1)^3)u≡1(mod9)u \equiv 1 \pmod 9 としてよい。f=X3−uf = X^3 - u、a0=1a_0 = 1 とすると ∣f(1)∣3=∣1−u∣3≤1/9|f(1)|_3 = |1 - u|_3 \le 1/9、∣f′(1)∣32=∣3∣32=1/9|f'(1)|_3^2 = |3|_3^2 = 1/9 で、条件 ∣f(a0)∣<∣f′(a0)∣2|f(a_0)| < |f'(a_0)|^2 にはあと一歩足りません。そこで u≡1,10,19(mod27)u \equiv 1, 10, 19 \pmod{27} に場合分けし、それぞれ a0=1,4,7a_0 = 1, 4, 7 を取ります(43=64≡104^3 = 64 \equiv 10、73=343≡19(mod27)7^3 = 343 \equiv 19 \pmod{27})。すると ∣f(a0)∣3≤1/27<1/9=∣3a02∣32|f(a_0)|_3 \le 1/27 < 1/9 = |3a_0^2|_3^2 となり、定理 6.1 の 1 から uu は立方です。

演習 10.4難

弱近似定理を使って、次を満たす有理数 xx が存在することを示し、実際に 1 つ求めよ:∣x−1∣2≤1/8|x - 1|_2 \le 1/8、∣x−1/2∣3≤1/3|x - 1/2|_3 \le 1/3、∣x∣∞<1/10|x|_\infty < 1/10。

解答

∣⋅∣2|\cdot|_2、∣⋅∣3|\cdot|_3、∣⋅∣∞|\cdot|_\infty は互いに同値でない自明でない絶対値なので、定理 3.2 を a=(1,1/2,0)a = (1, 1/2, 0)、ε=1/10\varepsilon = 1/10 に使えば存在します(∣x−1∣2<1/10|x - 1|_2 < 1/10 は ∣x−1∣2≤1/16|x - 1|_2 \le 1/16 を意味し、∣x−1/2∣3<1/10|x - 1/2|_3 < 1/10 は ≤1/27\le 1/27 を意味します)。

具体的には、分母に 22 とも 33 とも素な大きい数を置きます。x=c/dx = c/d で、まず整数 cc を c≡1(mod8)c \equiv 1 \pmod 8、c≡2(mod3)c \equiv 2 \pmod 3(1/2≡2(mod3)1/2 \equiv 2 \pmod 3)となるように選ぶと c=17c = 17 です。dd を d≡1(mod24)d \equiv 1 \pmod{24} かつ d>170d > 170 に取れば、c/d≡c(mod8)c/d \equiv c \pmod 8(Z2\mathbb{Z}_2 で)、c/d≡c(mod3)c/d \equiv c \pmod 3(Z3\mathbb{Z}_3 で)で、∣c/d∣∞<1/10|c/d|_\infty < 1/10 です。例えば d=193d = 193 として x=17/193x = 17/193 です。確かめると、x−1=−176/193x - 1 = -176/193 で 176=16⋅11176 = 16\cdot 11 から ∣x−1∣2=1/16|x - 1|_2 = 1/16、x−1/2=(34−193)/386=−159/386x - 1/2 = (34 - 193)/386 = -159/386 で 159=3⋅53159 = 3\cdot 53 から ∣x−1/2∣3=1/3|x - 1/2|_3 = 1/3、∣x∣∞<1/10|x|_\infty < 1/10 です。

  • J. Neukirch, Algebraic Number Theory, Grundlehren der mathematischen Wissenschaften 322, Springer, 1999 — Chapter II §1–§6(pp 進数、付値、完備化、Hensel の補題、Newton 多角形)。
  • J. W. S. Cassels, Local Fields, London Mathematical Society Student Texts 3, Cambridge University Press, 1986 — Chapter 2–4(Ostrowski の定理、pp 進数、Hensel の補題)、Chapter 6(Newton 多角形)。
  • J.-P. Serre, A Course in Arithmetic, Graduate Texts in Mathematics 7, Springer, 1973 — Chapter II(pp 進数体)、Chapter III(Hilbert 記号)、Chapter IV(Hasse–Minkowski の定理)。
  • F. Q. Gouvêa, p-adic Numbers: An Introduction, 2nd ed., Universitext, Springer, 1997 — pp 進数の入門。
  • N. Koblitz, p-adic Numbers, p-adic Analysis, and Zeta-Functions, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics 58, Springer, 1984 — Chapter I(pp 進数)、Chapter IV(Newton 多角形)。

このテーマの 100 本ノック(50 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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