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積位相・商位相と Tychonoff の定理:ネットと超フィルターで見るコンパクト性

対象読者: 本テーマ第 1〜5 章(コンパクト性・分離公理まで)と、選択公理と Zorn の補題の主張を学んだ学部 3 年程度の人。ネットやフィルターは未習とします。

前提となる記事:コンパクト性:有限部分被覆で捉える「有界閉集合」の一般化、分離公理と距離づけ可能性:T1 から T4 へ、そしてウリゾーンの距離化定理、選択公理と Zorn の補題:「無限個の選択」を極大元に置き換える

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無限個の数直線を並べた空間や、線分の両端を貼り合わせてできる円のような「既にある空間から新しい空間を作る操作」に、どんな位相を入れるのが自然かを考えます。さらに、無限個のコンパクトな空間を掛け合わせてもコンパクト性が保たれる、という Tychonoff の定理を、ネットや超フィルターという収束の道具を使って証明します。読み終えると、積や商の空間での連続性の判定と、この定理の証明の流れを自分で説明できるようになります。

  • 位相空間の族 {Xi}\{X_i\} の積位相は、「各射影 πi\pi_i が連続になる最も粗い位相」です。その開基は「有限個の座標でだけ制限をつけた箱」で、すべての座標に制限をつける箱位相とは無限積で異なります。この違いが Tychonoff の定理の成否を分けます。
  • 商位相は、全射 qq が連続になる最も細かい位相です。商空間への写像が連続かどうかは、合成 g∘qg \circ q が連続かどうかで判定できます。区間の両端を貼り合わせて円ができる、という直観はこの性質で厳密になります。
  • 点列では閉包や連続性を捉えきれない空間があります。ネット(点列の添字を有向集合に一般化したもの)は、閉包・連続性・コンパクト性をすべて収束の言葉で表せます。
  • フィルターと超フィルター(これ以上大きくできないフィルター)は、同じ内容を集合族の言葉で述べる道具です。コンパクトであることは、すべての超フィルターが収束することと同値です。
  • Tychonoff の定理(コンパクト空間の任意個の直積はコンパクト)を、超フィルターの像が超フィルターになることだけを使って短く証明します。証明には選択公理(Zorn の補題)が本質的に入ります。
  • 最後に、第一可算・第二可算・可分・Lindelöf の関係を整理し、非可算個の積では点列が役に立たないことを示します。

1. 動機:「座標ごとの収束」を位相にする

Section titled “1. 動機:「座標ごとの収束」を位相にする”

関数 fn:[0,1]→Rf_n : [0, 1] \to \mathbb{R} が各点 xx で f(x)f(x) に収束する(点ごと収束)という状況を考えます。これは、関数 ff を「[0,1][0, 1] の各点 xx を座標とする、非常に多くの成分を持つ数の組」と見て、成分ごとに収束すると読めます。つまり関数全体の空間は R[0,1]=∏x∈[0,1]R\mathbb{R}^{[0,1]} = \prod_{x \in [0,1]} \mathbb{R} であり、点ごと収束とは「各成分への射影が収束すること」です。この収束を生む位相が積位相です。

積空間のコンパクト性がなぜ大事かというと、解析学で「有界な関数の族から収束する部分列(部分ネット)を取り出す」議論の多くが、実は「閉区間の直積はコンパクト」に帰着するからです。位置づけとしては、後続の Banach–Alaoglu の定理(単位球の弱 * コンパクト性)や、作用素環での状態空間のコンパクト性が、この記事の Tychonoff の定理から出ます。

もう一つの動機は、貼り合わせです。区間 [0,1][0, 1] の両端 00 と 11 を同一視すると円になる、帯の端をねじって貼ると Möbius の帯になる、といった操作を位相空間の言葉で書くには、「同一視した集合に、元の空間と整合する位相を入れる」手続きが要ります。これが商位相です。

位相空間論では、「その位相をどの写像が連続になる位相として定義するか」という見方が決定的に有用です。この記事では、積位相は射影から、商位相と直和位相は包含や商写像から、同じ型の普遍性として統一的に導入します。

2. 準備:生成される位相と準基

Section titled “2. 準備:生成される位相と準基”

位相の公理(位相空間の定義と基本概念)を満たす集合族を、与えた集合族から作る方法を用意します。

定義 2.1(準基と生成される位相)↗

XX を集合、S\mathcal{S} を XX の部分集合の族とする。S\mathcal{S} の元の有限個の共通部分全体(空族の共通部分は XX とする)を B(S)\mathcal{B}(\mathcal{S}) とし、B(S)\mathcal{B}(\mathcal{S}) の元の(任意個の)合併として書ける集合全体を τ(S)\tau(\mathcal{S}) と書く。τ(S)\tau(\mathcal{S}) を S\mathcal{S} が生成する位相、S\mathcal{S} をその準基という。

補題 2.2(生成される位相の性質)✓

  1. τ(S)\tau(\mathcal{S}) は XX の位相であり、S\mathcal{S} を含む最小の位相である。B(S)\mathcal{B}(\mathcal{S}) はその開基である。
  2. 位相空間 ZZ から (X,τ(S))(X, \tau(\mathcal{S})) への写像 ff が連続であるための必要十分条件は、すべての S∈SS \in \mathcal{S} について f−1(S)f^{-1}(S) が ZZ の開集合であることである。
証明(補題 2.2)
  1. 合併について閉じていることは定義から明らか。XX は空族の共通部分なので X∈τ(S)X \in \tau(\mathcal{S})、空集合は空族の合併として属する。共通部分について:B(S)\mathcal{B}(\mathcal{S}) の 2 元 B=S1∩⋯∩SmB = S_1 \cap \cdots \cap S_m と B′=S1′∩⋯∩Sn′B' = S_1' \cap \cdots \cap S_n' の共通部分は再び有限個の共通部分で B(S)\mathcal{B}(\mathcal{S}) の元。したがって ⋃aBa\bigcup_a B_a と ⋃bBb′\bigcup_b B_b' の共通部分は ⋃a,b(Ba∩Bb′)\bigcup_{a, b} (B_a \cap B_b') と書け、τ(S)\tau(\mathcal{S}) の元である。よって位相の公理を満たす。S⊆τ(S)\mathcal{S} \subseteq \tau(\mathcal{S}) は明らか。S\mathcal{S} を含む位相 τ′\tau' は、有限共通部分と任意合併で閉じているので τ(S)⊆τ′\tau(\mathcal{S}) \subseteq \tau'。
  2. 必要性は S⊆τ(S)\mathcal{S} \subseteq \tau(\mathcal{S}) から。十分性:U∈τ(S)U \in \tau(\mathcal{S}) は ⋃a(Sa,1∩⋯∩Sa,ma)\bigcup_a (S_{a,1} \cap \cdots \cap S_{a,m_a}) と書け、f−1(U)=⋃a(f−1(Sa,1)∩⋯∩f−1(Sa,ma))f^{-1}(U) = \bigcup_a \bigl( f^{-1}(S_{a,1}) \cap \cdots \cap f^{-1}(S_{a,m_a}) \bigr) である(逆像は合併と共通部分を保つ)。仮定により各 f−1(Sa,k)f^{-1}(S_{a,k}) は開で、有限共通部分と任意合併は開である。

次の節で扱う積位相・商位相・直和位相は、「写像の族に対して連続性を保証する位相」という同じ型の構成の特別な場合です。ここでその一般形を用意しておきます。部分空間の位相も同じ型です。後の積・商・直和の定義は、すべてこの一般形に当てはめたものなので、先に一度見ておくと 3 つの構成が同じ発想だと分かります。具体例を先に読みたい場合は、第 3 節から読み、必要になったときにここへ戻っても構いません。

定義 2.3(始位相と終位相)↗

  1. XX を集合、{(Yj,τj)}j∈J\{(Y_j, \tau_j)\}_{j \in J} を位相空間の族、fj:X→Yjf_j : X \to Y_j を写像とする。準基
S:={fj−1(V):j∈J, V∈τj}\mathcal{S} := \{ f_j^{-1}(V) : j \in J,\ V \in \tau_j \}

が生成する位相(定義 2.1)を、写像族 {fj}\{f_j\} に関する XX の始位相(initial topology)という。 2. YY を集合、{(Zj,σj)}j∈J\{(Z_j, \sigma_j)\}_{j \in J} を位相空間の族、gj:Zj→Yg_j : Z_j \to Y を写像とする。

τfin:={V⊆Y:すべての j について gj−1(V)∈σj}\tau_{\mathrm{fin}} := \{ V \subseteq Y : \text{すべての } j \text{ について } g_j^{-1}(V) \in \sigma_j \}

を、写像族 {gj}\{g_j\} に関する YY の終位相(final topology)という。

始位相は fjf_j が連続になる最も粗い位相、終位相は gjg_j が連続になる最も細かい位相です。次の定理はこれと、連続性の判定法(普遍性)を述べます。

定理 2.4(始位相・終位相の普遍性)✓

  1. (始位相)XX に始位相を入れる。各 fjf_j は連続であり、すべての fjf_j を連続にする XX の位相は始位相を含む。位相空間 WW から XX への写像 h:W→Xh : W \to X が連続であるための必要十分条件は、すべての jj について fj∘hf_j \circ h が連続であることである。
  2. (終位相)YY に終位相 τfin\tau_{\mathrm{fin}} を入れる。τfin\tau_{\mathrm{fin}} は YY の位相であり、各 gjg_j は連続で、すべての gjg_j を連続にする YY の位相は τfin\tau_{\mathrm{fin}} に含まれる。位相空間 WW への写像 k:Y→Wk : Y \to W が連続であるための必要十分条件は、すべての jj について k∘gjk \circ g_j が連続であることである。
  3. 積位相は射影の族に関する始位相、部分集合 A⊆XA \subseteq X の部分空間の位相({A∩U:U は X の開集合}\{A \cap U : U\text{ は }X\text{ の開集合}\})は包含写像 A→XA \to X に関する始位相である。商位相は全射 qq に関する、直和位相は包含 ιi\iota_i の族に関する終位相である。
証明(定理 2.4)
  1. 準基の元 fj−1(V)f_j^{-1}(V) は始位相の開集合だから、各 fjf_j は連続である。すべての fjf_j を連続にする位相 τ′\tau' は S\mathcal{S} を含むので、補題 2.2 の 1(τ(S)\tau(\mathcal{S}) は S\mathcal{S} を含む最小の位相)により τ′⊇τ(S)\tau' \supseteq \tau(\mathcal{S}) である。写像 hh について、hh が連続なら fj∘hf_j \circ h は連続の合成として連続。逆に各 fj∘hf_j \circ h が連続とすると、準基の元について h−1(fj−1(V))=(fj∘h)−1(V)h^{-1}(f_j^{-1}(V)) = (f_j \circ h)^{-1}(V) が開だから、補題 2.2 の 2 により hh は連続である。
  2. τfin\tau_{\mathrm{fin}} が位相であること:gj−1(∅)=∅g_j^{-1}(\emptyset) = \emptyset、gj−1(Y)=Zjg_j^{-1}(Y) = Z_j はそれぞれ開である。逆像は合併と共通部分を保つので、τfin\tau_{\mathrm{fin}} の元の任意合併と有限共通部分も、各 gjg_j による逆像が開であり、τfin\tau_{\mathrm{fin}} に属する。定義から各 gjg_j は連続である。YY の位相 τ′\tau' がすべての gjg_j を連続にするなら、V∈τ′V \in \tau' について gj−1(V)g_j^{-1}(V) は開だから V∈τfinV \in \tau_{\mathrm{fin}}、すなわち τ′⊆τfin\tau' \subseteq \tau_{\mathrm{fin}}。写像 kk について、kk が連続なら合成 k∘gjk \circ g_j は連続。逆に各 k∘gjk \circ g_j が連続とし、WW の開集合 OO をとると、gj−1(k−1(O))=(k∘gj)−1(O)g_j^{-1}(k^{-1}(O)) = (k \circ g_j)^{-1}(O) がすべての jj で開だから、k−1(O)∈τfink^{-1}(O) \in \tau_{\mathrm{fin}} で kk は連続である。
  3. 積位相は 定義 3.1 がまさに射影の族に関する始位相である。包含 ι:A→X\iota : A \to X について ι−1(U)=A∩U\iota^{-1}(U) = A \cap U なので、準基は {A∩U}\{A \cap U\} であり、これは有限共通部分 (A∩U)∩(A∩U′)=A∩(U∩U′)(A \cap U) \cap (A \cap U') = A \cap (U \cap U') と合併 ⋃(A∩Ua)=A∩⋃Ua\bigcup (A \cap U_a) = A \cap \bigcup U_a で閉じているから、生成される位相と一致する。商位相は 定義 4.1 の τq\tau_q が単独の qq に関する終位相の定義そのものであり、直和位相も 定義 4.6 が {ιi}\{\iota_i\} に関する終位相の定義そのものである。

したがって 定理 3.4・定理 4.2・命題 4.7 は、この定理の 3 つの特別な場合です。ネットの収束も、始位相では「各 fjf_j による像が収束すること」と言い換えられます(定理 7.1[ネットとフィルターによる収束] で証明します。積位相の場合は 定理 5.3 です)。

例 2.5(点ごと収束の位相)

集合 XX から R\mathbb{R} への写像全体 RX\mathbb{R}^X に、評価写像 evx:f↦f(x)\mathrm{ev}_x : f \mapsto f(x)(x∈Xx \in X)の族に関する始位相を入れたものは、積位相 ∏x∈XR\prod_{x \in X} \mathbb{R} と同じです(RX\mathbb{R}^X は積の集合として同一であり、evx\mathrm{ev}_x は射影だからです)。この位相で fn→ff_n \to f とは、すべての xx で fn(x)→f(x)f_n(x) \to f(x) となること、すなわち点ごと収束です。

定義 3.1(積空間と積位相)↗

{Xi}i∈I\{X_i\}_{i \in I} を位相空間の族とする。直積 X=∏i∈IXiX = \prod_{i \in I} X_i の元は、各 ii に xi∈Xix_i \in X_i を対応させる x=(xi)i∈Ix = (x_i)_{i \in I} である。射影 πi:X→Xi\pi_i : X \to X_i を πi(x)=xi\pi_i(x) = x_i で定める。

S:={πi−1(U):i∈I, U⊆Xi は開}\mathcal{S} := \bigl\{ \pi_i^{-1}(U) : i \in I,\ U \subseteq X_i\text{ は開} \bigr\}

が生成する位相(定義 2.1)を XX の積位相という。

準基の元 πi−1(U)={x:xi∈U}\pi_i^{-1}(U) = \{x : x_i \in U\} は、第 ii 座標にだけ「UU に入れ」という制限をつけた集合です。この有限個の共通部分が開基になります。

命題 3.2(積位相の開基)✓

積位相の開基として、

∏i∈IUi(Ui⊆Xi は開で、有限個の i を除いて Ui=Xi)\prod_{i \in I} U_i \qquad (U_i \subseteq X_i\text{ は開で、有限個の }i\text{ を除いて }U_i = X_i)

の形の集合全体が取れる。

証明(命題 3.2)

補題 2.2 の開基 B(S)\mathcal{B}(\mathcal{S}) の元は πi1−1(U1)∩⋯∩πim−1(Um)\pi_{i_1}^{-1}(U_1) \cap \cdots \cap \pi_{i_m}^{-1}(U_m) の形で、これは i1,…,imi_1, \ldots, i_m 以外の座標を XiX_i としたものと一致する(同じ ii が重なる場合は UU の共通部分で置き換える)。逆に上の形の集合は、制限のある有限個の座標について πi−1(Ui)\pi_i^{-1}(U_i) の共通部分である。

U × VUV第 1 座標 X₁X₂π₁⁻¹(U)π₂⁻¹(V)
積位相の基本開集合。第 1 座標に U、第 2 座標に V の制限をつける(影の部分)。無限個の座標をもつ積でも、制限をつけてよいのは有限個の座標だけである。

無限個の座標すべてに制限をつけることを許した位相を箱位相といいます。有限積では積位相と箱位相は一致しますが、無限積では一般に異なり、箱位相の方が細かくなります。

例 3.3(箱位相では連続でなくなる写像)

RN\mathbb{R}^{\mathbb{N}} に、積位相と箱位相を入れて考えます。γ:R→RN\gamma : \mathbb{R} \to \mathbb{R}^{\mathbb{N}} を γ(t)=(t,t,t,…)\gamma(t) = (t, t, t, \ldots) で定めます。各成分 πn∘γ=id\pi_n \circ \gamma = \mathrm{id} は連続なので、積位相では γ\gamma は連続です(次の 定理 3.4)。

箱位相では連続になりません。箱 W=∏n≥1(−1/n,1/n)W = \prod_{n \ge 1} (-1/n, 1/n) は箱位相で開集合で、0=γ(0)∈W0 = \gamma(0) \in W です。ところが γ−1(W)={t:∣t∣<1/n (∀n)}={0}\gamma^{-1}(W) = \{t : |t| < 1/n\ (\forall n)\} = \{0\} は R\mathbb{R} の開集合ではありません。このように箱位相は座標ごとの連続性が全体の連続性を導かない、という普遍性を壊すので、通常は積位相を採用します。

定理 3.4(積位相の普遍性)✓

ZZ を位相空間とする。写像 f:Z→∏i∈IXif : Z \to \prod_{i \in I} X_i が連続であるための必要十分条件は、すべての ii について合成 πi∘f:Z→Xi\pi_i \circ f : Z \to X_i が連続であることである。また各射影 πi\pi_i は連続な開写像である。

証明(定理 3.4)

ff が連続なら、射影 πi\pi_i は連続(準基の元 πi−1(U)\pi_i^{-1}(U) が開集合だから)なので合成も連続。逆に各 πi∘f\pi_i \circ f が連続とする。準基の元 πi−1(U)\pi_i^{-1}(U) に対し f−1(πi−1(U))=(πi∘f)−1(U)f^{-1}(\pi_i^{-1}(U)) = (\pi_i \circ f)^{-1}(U) は開集合。補題 2.2 の 2 により ff は連続。

開写像であること:開基の元 B=∏jUjB = \prod_j U_j に対し、B=∅B = \emptyset なら πi(B)=∅\pi_i(B) = \emptyset。B≠∅B \ne \emptyset なら πi(B)=Ui\pi_i(B) = U_i(各 j≠ij \ne i の UjU_j から点を 1 つ取っておき、第 ii 座標だけ UiU_i の任意の点を取れる)。どちらも開。開集合は開基の元の合併で、像は合併と交換するので πi\pi_i は開写像。

命題 3.5(積空間の基本性質)✓

  1. 各 XiX_i がハウスドルフなら ∏Xi\prod X_i もハウスドルフである。
  2. Ai⊆XiA_i \subseteq X_i に対し、∏iAi‾=∏iAi‾\overline{\prod_i A_i} = \prod_i \overline{A_i} である。とくに閉集合の直積は閉集合である。
証明(命題 3.5)
  1. x≠yx \ne y なら、ある ii で xi≠yix_i \ne y_i。XiX_i のハウスドルフ性(定義 2.1[コンパクト性])により、交わらない開集合 U∋xiU \ni x_i、V∋yiV \ni y_i が取れる。πi−1(U)∋x\pi_i^{-1}(U) \ni x と πi−1(V)∋y\pi_i^{-1}(V) \ni y は開集合で、πi−1(U)∩πi−1(V)=πi−1(U∩V)=∅\pi_i^{-1}(U) \cap \pi_i^{-1}(V) = \pi_i^{-1}(U \cap V) = \emptyset。
  2. ⊆\subseteq:∏Ai‾=⋂iπi−1(Ai‾)\prod \overline{A_i} = \bigcap_i \pi_i^{-1}(\overline{A_i}) は閉集合の共通部分で閉であり(πi\pi_i は連続)、∏Ai\prod A_i を含むので、閉包はこれに含まれる。⊇\supseteq:x∈∏Ai‾x \in \prod \overline{A_i} とし、xx の基本開近傍 W=∏UiW = \prod U_i を取る。xi∈Ui∩Ai‾x_i \in U_i \cap \overline{A_i} より、各 ii について Ui∩AiU_i \cap A_i から点 aia_i を選べる(Ui=XiU_i = X_i の座標は AiA_i が空でない限り任意の点でよい)。a=(ai)∈W∩∏Aia = (a_i) \in W \cap \prod A_i であり、x∈∏Ai‾x \in \overline{\prod A_i}(定理 6.5[位相空間の定義と基本概念] の 4)。なお、この点の選び方には選択公理が使われている。

定義 4.1(商位相・商写像)↗

XX を位相空間、YY を集合、q:X→Yq : X \to Y を全射とする。

τq:={V⊆Y:q−1(V) は X の開集合}\tau_q := \{ V \subseteq Y : q^{-1}(V)\text{ は }X\text{ の開集合}\}

は YY の位相である(逆像は合併と共通部分を保つ)。τq\tau_q を qq による商位相といい、qq を商写像という。一般に、位相空間の間の全射 q:X→Yq : X \to Y が商写像であるとは、YY の位相が τq\tau_q に等しいことをいう。

商位相は、qq を連続にする位相のうち最も細かいものです。同値関係 ∼\sim に対する商集合 X/∼X/{\sim} には、自然な射影 π\pi(定義 4.1[関係と同値関係])による商位相を入れて商空間とします。

定理 4.2(商位相の普遍性)✓

q:X→Yq : X \to Y を商写像、ZZ を位相空間とする。写像 g:Y→Zg : Y \to Z が連続であるための必要十分条件は、g∘q:X→Zg \circ q : X \to Z が連続であることである。

証明(定理 4.2)

必要性は連続写像の合成。十分性:W⊆ZW \subseteq Z が開とすると、(g∘q)−1(W)=q−1(g−1(W))(g \circ q)^{-1}(W) = q^{-1}(g^{-1}(W)) が開である。qq が商写像であることから g−1(W)g^{-1}(W) は YY の開集合。

同値関係 ∼\sim による商空間 X/∼X/{\sim} では、これと商集合の普遍性(定理 5.1[関係と同値関係])を合わせて、「a∼b⇒f(a)=f(b)a \sim b \Rightarrow f(a) = f(b) を満たす連続写像 f:X→Zf : X \to Z は、連続写像 fˉ:X/∼→Z\bar{f} : X/{\sim} \to Z を一意に定める」と言えます。

命題 4.3(開写像・閉写像は商写像)✓

連続な全射 q:X→Yq : X \to Y が開写像または閉写像ならば、qq は商写像である。

証明(命題 4.3)

V⊆YV \subseteq Y について q−1(V)q^{-1}(V) が開であるとする。qq は全射なので V=q(q−1(V))V = q(q^{-1}(V))。qq が開写像なら VV は開である。qq が閉写像の場合は、Y∖V=q(X∖q−1(V))Y \setminus V = q(X \setminus q^{-1}(V)) が閉となり、VV は開である。逆(VV が開なら q−1(V)q^{-1}(V) が開)は qq の連続性。

例 4.4(区間の両端を貼り合わせると円になる)

X=[0,1]X = [0, 1] に、0∼10 \sim 1 だけを同一視する同値関係を入れ、商空間 X/∼X/{\sim} を考えます。f:[0,1]→S1={(u,v)∈R2:u2+v2=1}f : [0, 1] \to S^1 = \{(u, v) \in \mathbb{R}^2 : u^2 + v^2 = 1\} を f(t)=(cos⁡2πt,sin⁡2πt)f(t) = (\cos 2\pi t, \sin 2\pi t) とすると、ff は連続な全射で、f(s)=f(t)f(s) = f(t) と (s=ts = t または {s,t}={0,1}\{s, t\} = \{0, 1\}) は同値です。したがって 定理 5.1[関係と同値関係] により全単射 fˉ:X/∼→S1\bar{f} : X/{\sim} \to S^1 が誘導され、定理 4.2 により fˉ\bar{f} は連続です。

X/∼X/{\sim} は [0,1][0, 1] の連続像としてコンパクト(定理 6.1[コンパクト性])、S1S^1 は R2\mathbb{R}^2 の部分空間なのでハウスドルフです。コンパクト空間からハウスドルフ空間への連続全単射は同相写像なので(系 6.5[コンパクト性])、X/∼≅S1X/{\sim} \cong S^1 です。

010 ~ 10 = 1
区間 [0, 1] の両端 0 と 1 を同一視して円を得る。商空間から円への写像は連続な全単射で、コンパクト → ハウスドルフなので同相。

商空間は元の空間より悪い性質を持つことがあります。ハウスドルフ空間の商がハウスドルフとは限りません。次の例では、商空間はほとんど点を区別できません。具体的には、開集合が空集合と全体の 2 つしかない位相(密着位相)になります。

例 4.5(ℝ を ℚ の平行移動で割ると密着位相になる)

R\mathbb{R} 上の同値関係を x∼y  ⟺  x−y∈Qx \sim y \iff x - y \in \mathbb{Q} で定め、商写像 q:R→R/∼q : \mathbb{R} \to \mathbb{R}/{\sim} を考えます。V⊆R/∼V \subseteq \mathbb{R}/{\sim} が空でない開集合なら、q−1(V)q^{-1}(V) は空でない開集合です。したがって開区間 II を含み、さらに q−1(V)q^{-1}(V) は同値類の合併です。任意の y∈Ry \in \mathbb{R} について、類 y+Qy + \mathbb{Q} は R\mathbb{R} で稠密なので II と交わる、すなわち q−1(V)q^{-1}(V) は yy と同値な点を含み、したがって y∈q−1(V)y \in q^{-1}(V) です。よって q−1(V)=Rq^{-1}(V) = \mathbb{R} で V=R/∼V = \mathbb{R}/{\sim}。開集合は ∅\emptyset と全体だけで、商空間は密着位相をもち、どの 2 点も区別できません。

最後に、空間の直和(非交和)を導入します。

定義 4.6(直和位相)↗

{Xi}i∈I\{X_i\}_{i \in I} を位相空間の族とし、⨆iXi:={(i,x):i∈I, x∈Xi}\bigsqcup_i X_i := \{(i, x) : i \in I,\ x \in X_i\} とおく。包含 ιi:Xi→⨆Xj\iota_i : X_i \to \bigsqcup X_j、ιi(x)=(i,x)\iota_i(x) = (i, x) とする。U⊆⨆XjU \subseteq \bigsqcup X_j が開であるとは、すべての ii について ιi−1(U)\iota_i^{-1}(U) が XiX_i の開集合であることと定める。これを直和位相という。

直和位相は、すべての ιi\iota_i を連続にする最も細かい位相です。各 XiX_i は ⨆Xj\bigsqcup X_j の中で開かつ閉な部分集合として埋め込まれます。

命題 4.7(直和位相の普遍性)✓

g:⨆iXi→Zg : \bigsqcup_i X_i \to Z が連続であるための必要十分条件は、すべての ii で g∘ιig \circ \iota_i が連続であることである。

証明(命題 4.7)

必要性は合成。十分性:W⊆ZW \subseteq Z が開のとき、ιi−1(g−1(W))=(g∘ιi)−1(W)\iota_i^{-1}(g^{-1}(W)) = (g \circ \iota_i)^{-1}(W) はすべての ii で開。直和位相の定義により g−1(W)g^{-1}(W) は開。

三つの構成(積・商・直和)の普遍性を並べると、積は「空間へ写すときの」、商と直和は「空間から写すときの」連続性の判定法を与えている、という対称性が見えます。

商空間は、元の空間より悪い分離性をもつことがあります(例 4.5 は密着位相になります)。どの条件のもとで分離性が遺伝するかを整理します。以下、正規性は T1 を含みません(定義 4.1[分離公理と距離づけ可能性] の流儀)。

命題 4.8(商空間の分離公理)✓

q:X→Yq : X \to Y を商写像(定義 4.1)とする。

  1. YY が T1 であるための必要十分条件は、すべての y∈Yy \in Y について q−1(y)q^{-1}(y) が XX の閉集合であることである。
  2. qq が開写像であるとする。YY がハウスドルフであるための必要十分条件は、R:={(x,x′)∈X×X:q(x)=q(x′)}R := \{(x, x') \in X \times X : q(x) = q(x')\} が積空間 X×XX \times X の閉集合であることである。
  3. qq が閉写像で XX が正規ならば、YY は正規である。
証明(命題 4.8)
  1. qq は全射なので q−1(Y∖{y})=X∖q−1(y)q^{-1}(Y \setminus \{y\}) = X \setminus q^{-1}(y) である。qq は商写像だから、{y}\{y\} が閉   ⟺  \iff Y∖{y}Y \setminus \{y\} が開   ⟺  \iff X∖q−1(y)X \setminus q^{-1}(y) が開   ⟺  \iff q−1(y)q^{-1}(y) が閉。これがすべての yy で成り立つことは、命題 3.2[分離公理と距離づけ可能性] により YY が T1 であることと同値である。
  2. (⇒\Rightarrow)YY がハウスドルフとする。対角線 ΔY={(y,y)}\Delta_Y = \{(y, y)\} は Y×YY \times Y で閉である。実際 y≠y′y \ne y' なら、交わらない開集合 U∋yU \ni y、U′∋y′U' \ni y' がとれ、U×U′U \times U' は (y,y′)(y, y') を含む開集合(命題 3.2)で ΔY\Delta_Y と交わらない。写像 q×q:X×X→Y×Yq \times q : X \times X \to Y \times Y は、各座標との合成 πi∘(q×q)=q∘πi\pi_i \circ (q \times q) = q \circ \pi_i が連続なので連続(定理 3.4)で、R=(q×q)−1(ΔY)R = (q \times q)^{-1}(\Delta_Y) だから RR は閉である。(⇐\Leftarrow)RR が閉で qq が開写像とする。y≠y′y \ne y' に対し、q(x)=yq(x) = y、q(x′)=y′q(x') = y' なる x,x′x, x' をとる(qq は全射)。(x,x′)∉R(x, x') \notin R なので、命題 3.2 により開集合 U∋xU \ni x、U′∋x′U' \ni x' で (U×U′)∩R=∅(U \times U') \cap R = \emptyset となるものがある。qq は開写像なので q(U)q(U)、q(U′)q(U') は開で、y∈q(U)y \in q(U)、y′∈q(U′)y' \in q(U')。z∈q(U)∩q(U′)z \in q(U) \cap q(U') なら z=q(u)=q(u′)z = q(u) = q(u')(u∈Uu \in U、u′∈U′u' \in U')で (u,u′)∈R∩(U×U′)(u, u') \in R \cap (U \times U') となり矛盾。よって q(U)∩q(U′)=∅q(U) \cap q(U') = \emptyset で、YY はハウスドルフ。
  3. E,F⊆YE, F \subseteq Y を互いに素な閉集合とする。q−1(E)q^{-1}(E)、q−1(F)q^{-1}(F) は互いに素な閉集合なので、XX の正規性により互いに素な開集合 U⊇q−1(E)U \supseteq q^{-1}(E)、V⊇q−1(F)V \supseteq q^{-1}(F) がある。qq は閉写像だから q(X∖U)q(X \setminus U)、q(X∖V)q(X \setminus V) は閉であり、U′:=Y∖q(X∖U)U' := Y \setminus q(X \setminus U)、V′:=Y∖q(X∖V)V' := Y \setminus q(X \setminus V) は開である。E⊆U′E \subseteq U':y∈Ey \in E が q(X∖U)q(X \setminus U) に入るなら y=q(x)y = q(x)、x∉Ux \notin U だが、x∈q−1(E)⊆Ux \in q^{-1}(E) \subseteq U で矛盾。同様に F⊆V′F \subseteq V'。U′∩V′=∅U' \cap V' = \emptyset:yy がその共通部分に入るなら、y∉q(X∖U)y \notin q(X \setminus U) より q−1(y)⊆Uq^{-1}(y) \subseteq U、同様に q−1(y)⊆Vq^{-1}(y) \subseteq V なので q−1(y)⊆U∩V=∅q^{-1}(y) \subseteq U \cap V = \emptyset。しかし qq は全射で q−1(y)≠∅q^{-1}(y) \ne \emptyset だから矛盾。

第一可算公理を満たさない空間(たとえば非可算個の積。第 7 節で示します)では、点列で閉包も連続性もコンパクト性も捉えられません。点列の添字集合 N\mathbb{N} を、より一般の有向集合に取り替えたものがネットです。

定義 5.1(有向集合・ネット・収束・集積点)↗

空でない集合 Λ\Lambda 上の二項関係 ≤\le が反射律と推移律を満たし、さらに任意の λ,μ∈Λ\lambda, \mu \in \Lambda に対し λ≤ν\lambda \le \nu かつ μ≤ν\mu \le \nu なる ν∈Λ\nu \in \Lambda が存在するとき、(Λ,≤)(\Lambda, \le) を有向集合という。有向集合 Λ\Lambda から位相空間 XX への写像 λ↦xλ\lambda \mapsto x_\lambda をネットといい、(xλ)λ∈Λ(x_\lambda)_{\lambda \in \Lambda} と書く。

  1. ネットが x∈Xx \in X に収束する(xλ→xx_\lambda \to x)とは、xx の任意の近傍 UU に対し、ある λ0∈Λ\lambda_0 \in \Lambda が存在して、λ≥λ0\lambda \ge \lambda_0 なるすべての λ\lambda で xλ∈Ux_\lambda \in U となることをいう。
  2. xx がネットの集積点であるとは、xx の任意の近傍 UU と任意の λ0∈Λ\lambda_0 \in \Lambda に対し、λ≥λ0\lambda \ge \lambda_0 かつ xλ∈Ux_\lambda \in U となる λ\lambda が存在することをいう。

点列は Λ=N\Lambda = \mathbb{N} のネットです。ほかに次の 2 つの有向集合を使います。

  • xx の近傍全体 N(x)\mathcal{N}(x)(定義 6.1[位相空間の定義と基本概念])を、逆包含 U≤U′  ⟺  U⊇U′U \le U' \iff U \supseteq U' で順序づけたもの。U∩U′U \cap U' が上界になるので有向集合である。
  • 集合 AA の有限部分集合全体を包含で順序づけたもの。F∪F′F \cup F' が上界になるので有向集合である。

定理 5.2(ネットによる閉包・連続性の特徴づけ)✓

X,YX, Y を位相空間とする。

  1. A⊆XA \subseteq X、x∈Xx \in X とする。x∈A‾x \in \overline{A} であるための必要十分条件は、AA の点からなるネットで xx に収束するものが存在することである。
  2. 写像 f:X→Yf : X \to Y が x∈Xx \in X で連続であるための必要十分条件は、xx に収束するすべてのネット (xλ)(x_\lambda) について f(xλ)→f(x)f(x_\lambda) \to f(x) となることである。
証明(定理 5.2)
  1. (⇒\Rightarrow)Λ=N(x)\Lambda = \mathcal{N}(x) とする。x∈A‾x \in \overline{A} なので、各 U∈ΛU \in \Lambda に対し U∩A≠∅U \cap A \ne \emptyset(定理 6.5[位相空間の定義と基本概念] の 4)。そこから点 xU∈U∩Ax_U \in U \cap A を選ぶ。任意の近傍 U0U_0 について、順序は逆包含なので U≥U0U \ge U_0 は U⊆U0U \subseteq U_0 を意味し、このとき xU∈U⊆U0x_U \in U \subseteq U_0。よって xU→xx_U \to x。(⇐\Leftarrow)AA の点のネットが xx に収束するなら、xx の任意の近傍はネットの点、すなわち AA の点を含むので、x∈A‾x \in \overline{A}。
  2. (⇒\Rightarrow)ff が xx で連続、xλ→xx_\lambda \to x、VV を f(x)f(x) の近傍とする。連続性から xx の近傍 UU で f(U)⊆Vf(U) \subseteq V が取れ、λ0\lambda_0 を λ≥λ0⇒xλ∈U\lambda \ge \lambda_0 \Rightarrow x_\lambda \in U とすれば f(xλ)∈Vf(x_\lambda) \in V。(⇐\Leftarrow)ff が xx で連続でないと仮定する。連続でないとは、f(x)f(x) の近傍 VV で、どの U∈N(x)U \in \mathcal{N}(x) についても f(U)⊈Vf(U) \not\subseteq V となるものが存在することである。各 U∈N(x)U \in \mathcal{N}(x) に対し xU∈Ux_U \in U で f(xU)∉Vf(x_U) \notin V となるものを選ぶ。1 と同様に xU→xx_U \to x だが、f(xU)∉Vf(x_U) \notin V なので f(xU)→f(x)f(x_U) \to f(x) は成り立たない。

定理 5.3(積空間での収束は座標ごとの収束)✓

X=∏i∈IXiX = \prod_{i \in I} X_i とする。XX のネット (xλ)(x_\lambda) が x∈Xx \in X に収束するための必要十分条件は、すべての ii について πi(xλ)→πi(x)\pi_i(x_\lambda) \to \pi_i(x) となることである。

証明(定理 5.3)

(⇒\Rightarrow)πi\pi_i が連続であることと 定理 5.2 の 2。(⇐\Leftarrow)xx の任意の近傍は、基本開近傍 W=πi1−1(U1)∩⋯∩πim−1(Um)W = \pi_{i_1}^{-1}(U_1) \cap \cdots \cap \pi_{i_m}^{-1}(U_m)(xik∈Ukx_{i_k} \in U_k は開)を含む(命題 3.2)。仮定により各 kk に対し、λ≥λk⇒πik(xλ)∈Uk\lambda \ge \lambda_k \Rightarrow \pi_{i_k}(x_\lambda) \in U_k となる λk\lambda_k がある。有向集合なので、すべての λk\lambda_k 以上の λ0\lambda_0 が取れる。λ≥λ0\lambda \ge \lambda_0 なら xλ∈Wx_\lambda \in W。

したがって積位相は各座標ごとの収束、RX\mathbb{R}^X の積位相は関数の点ごと収束の位相です。第 1 節の観察はこの定理で厳密になります。

次の定理の(⇐\Leftarrow)の証明では、有限個ずつ共通部分が空でない閉集合の族から、ネットを一つ作ります。添字には「族の有限部分集合全体」を使います。有限部分集合が大きくなるほど対応する共通部分は小さくなるので、そのネットの集積点が、すべての閉集合に同時に入る点の候補になる、という方針です。

定理 5.4(コンパクト性のネットによる特徴づけ)✓

位相空間 XX がコンパクトであるための必要十分条件は、XX のすべてのネットが集積点を持つことである。

証明(定理 5.4)

(⇒\Rightarrow)(xλ)λ∈Λ(x_\lambda)_{\lambda \in \Lambda} をネットとする。Fλ:={xμ:μ≥λ}‾F_\lambda := \overline{\{x_\mu : \mu \ge \lambda\}} とおく。有限個の Fλ1,…,FλnF_{\lambda_1}, \ldots, F_{\lambda_n} について、ν≥λ1,…,λn\nu \ge \lambda_1, \ldots, \lambda_n なる ν\nu を取ると xν∈Fλ1∩⋯∩Fλnx_\nu \in F_{\lambda_1} \cap \cdots \cap F_{\lambda_n} なので、閉集合の族 {Fλ}\{F_\lambda\} は有限交叉性を持つ。コンパクト性(命題 4.5[コンパクト性])より x∈⋂λFλx \in \bigcap_\lambda F_\lambda が存在する。xx の近傍 UU と λ0\lambda_0 に対し、x∈Fλ0x \in F_{\lambda_0} なので UU は {xμ:μ≥λ0}\{x_\mu : \mu \ge \lambda_0\} と交わる。すなわち xx は集積点である。

(⇐\Leftarrow){Fα}α∈A\{F_\alpha\}_{\alpha \in A} を有限交叉性をもつ閉集合の族とする。A=∅A = \varnothing のときは共通部分は XX そのものなので、X≠∅X \neq \varnothing なら空でない(X=∅X = \varnothing のときは XX は自明にコンパクトで、示すことはない)。以下 A≠∅A \neq \varnothing とする。Λ\Lambda を AA の空でない有限部分集合全体(包含で順序づけた有向集合)とし、λ∈Λ\lambda \in \Lambda に対し ⋂α∈λFα≠∅\bigcap_{\alpha \in \lambda} F_\alpha \ne \emptyset から点 xλx_\lambda を選ぶ。ネット (xλ)(x_\lambda) の集積点 xx が ⋂αFα\bigcap_\alpha F_\alpha に属することを示す。ある α\alpha で x∉Fαx \notin F_\alpha とすると、X∖FαX \setminus F_\alpha は xx の開近傍である。λ0={α}\lambda_0 = \{\alpha\} とすると、集積点の定義から λ≥λ0\lambda \ge \lambda_0 で xλ∈X∖Fαx_\lambda \in X \setminus F_\alpha となるものがある。しかし α∈λ\alpha \in \lambda なので xλ∈Fαx_\lambda \in F_\alpha で矛盾する。よって ⋂αFα≠∅\bigcap_\alpha F_\alpha \ne \emptyset で、命題 4.5[コンパクト性] より XX はコンパクトである。

ネットは直観に近いですが、添字集合が毎回変わるのが扱いにくい点です。フィルターは、収束に必要な情報(どの集合が「最終的に入る集合」か)だけを集合族として取り出したものです。

定義 5.5(フィルター・超フィルター・収束)↗

XX を集合とする。F⊆P(X)\mathcal{F} \subseteq \mathcal{P}(X) が XX 上のフィルターであるとは、次を満たすことをいう。

  1. X∈FX \in \mathcal{F} かつ ∅∉F\emptyset \notin \mathcal{F}。
  2. A,B∈FA, B \in \mathcal{F} ならば A∩B∈FA \cap B \in \mathcal{F}。
  3. A∈FA \in \mathcal{F} かつ A⊆B⊆XA \subseteq B \subseteq X ならば B∈FB \in \mathcal{F}。

包含に関して極大なフィルターを超フィルターという。XX が位相空間のとき、フィルター F\mathcal{F} が x∈Xx \in X に収束する(F→x\mathcal{F} \to x)とは、N(x)⊆F\mathcal{N}(x) \subseteq \mathcal{F}、すなわち xx の近傍がすべて F\mathcal{F} に属することをいう。

例 5.6(フィルターの例)

N(x)\mathcal{N}(x) は XX 上のフィルターで、xx に収束する最小のフィルターです。x0∈Xx_0 \in X に対し {A:x0∈A}\{A : x_0 \in A\}(主フィルター)は超フィルターです。X=NX = \mathbb{N} のとき、補集合が有限な集合全体(Fréchet フィルター)は超フィルターではありません。偶数全体 EE も、その補集合(奇数全体)も補有限ではなく、どちらも属さないからです(補題 5.7 に反します)。点列の「十分先の部分」が属するフィルターとして点列の収束を表しますが、一般のネットに対しても「尾」の集合から同様のフィルターが作れます。

写像 f:X→Yf : X \to Y とフィルター F\mathcal{F} に対し、f∗F:={B⊆Y:f−1(B)∈F}f_*\mathcal{F} := \{B \subseteq Y : f^{-1}(B) \in \mathcal{F}\} を F\mathcal{F} の像といいます(フィルターの公理を満たすことは、逆像が ∩\cap, ⊆\subseteq, ∅\emptyset と整合することから直接確かめられる)。

補題 5.7(超フィルターの特徴づけ)✓

U\mathcal{U} を XX 上のフィルターとする。U\mathcal{U} が超フィルターであるための必要十分条件は、すべての A⊆XA \subseteq X について A∈UA \in \mathcal{U} または X∖A∈UX \setminus A \in \mathcal{U} が成り立つことである。このとき、とくに A∉UA \notin \mathcal{U} ならば X∖A∈UX \setminus A \in \mathcal{U} である。

証明(補題 5.7)

(⇐\Leftarrow)U⊆G\mathcal{U} \subseteq \mathcal{G} をフィルターとし、G∈G∖UG \in \mathcal{G} \setminus \mathcal{U} があると仮定する。条件により X∖G∈U⊆GX \setminus G \in \mathcal{U} \subseteq \mathcal{G} となり、∅=G∩(X∖G)∈G\emptyset = G \cap (X \setminus G) \in \mathcal{G} で矛盾。よって G=U\mathcal{G} = \mathcal{U}。

(⇒\Rightarrow)U\mathcal{U} が極大とし、A⊆XA \subseteq X とする。すべての U∈UU \in \mathcal{U} について A∩U≠∅A \cap U \ne \emptyset なら、G:={B:B⊇A∩U (∃U∈U)}\mathcal{G} := \{B : B \supseteq A \cap U\ (\exists U \in \mathcal{U})\} はフィルターである(∅∉G\emptyset \notin \mathcal{G} は A∩U≠∅A \cap U \ne \emptyset から、共通部分については (A∩U)∩(A∩U′)=A∩(U∩U′)(A \cap U) \cap (A \cap U') = A \cap (U \cap U') から)。G\mathcal{G} は U\mathcal{U} と AA を含むので、極大性から G=U\mathcal{G} = \mathcal{U} となり A∈UA \in \mathcal{U}。そうでなければ、ある U∈UU \in \mathcal{U} について A∩U=∅A \cap U = \emptyset、すなわち U⊆X∖AU \subseteq X \setminus A なので X∖A∈UX \setminus A \in \mathcal{U}。

定理 5.8(超フィルターの補題)✓

XX 上の任意のフィルター F\mathcal{F} に対し、F⊆U\mathcal{F} \subseteq \mathcal{U} なる超フィルター U\mathcal{U} が存在する。

証明(定理 5.8)

P\mathcal{P} を、F\mathcal{F} を含む XX 上のフィルター全体とし、包含で順序づける。F∈P\mathcal{F} \in \mathcal{P} なので空でない。空でない鎖 C\mathcal{C} の合併 G∗\mathcal{G}^{*} は、フィルターの 3 条件を満たす:∅∉G∗\emptyset \notin \mathcal{G}^{*} は各メンバーで成り立つ。A,B∈G∗A, B \in \mathcal{G}^{*} なら、それぞれを含むメンバーのうち大きい方に両方入り、そこで A∩BA \cap B が入る。上位集合についても同様。したがって G∗∈P\mathcal{G}^{*} \in \mathcal{P} は鎖の上界である。Zorn の補題(定理 5.1[選択公理と Zorn の補題])により P\mathcal{P} の極大元 U\mathcal{U} が存在する。U\mathcal{U} より真に大きいフィルターは F\mathcal{F} を含むので P\mathcal{P} に属するが、極大性に反するから、U\mathcal{U} は超フィルターである。

次の定理は、Tychonoff の定理の証明で使う形のコンパクト性の言い換えです。直観的には、超フィルターは「どの集合についても、その集合かその補集合のどちらか一方を必ず選ぶ」ので、点の付近に集まる以外の逃げ道がありません。(⇒\Rightarrow)は、どこにも収束しないと仮定して有限個の開集合で全体を覆い、超フィルターに空集合が入る矛盾を導きます。(⇐\Leftarrow)は、有限部分被覆を持たない開被覆から超フィルターを作り、その極限が矛盾を生むことを示します。

定理 5.9(コンパクト性の超フィルターによる特徴づけ)✓

位相空間 XX がコンパクトであるための必要十分条件は、XX 上のすべての超フィルターがある点に収束することである。

証明(定理 5.9)

(⇒\Rightarrow)U\mathcal{U} を超フィルターとし、どの点にも収束しないと仮定する。各 x∈Xx \in X について N(x)⊈U\mathcal{N}(x) \not\subseteq \mathcal{U} なので、V∈N(x)V \in \mathcal{N}(x) で V∉UV \notin \mathcal{U} となるものがある。x∈Ux⊆Vx \in U_x \subseteq V なる開集合 UxU_x を取ると、Ux∉UU_x \notin \mathcal{U}(U\mathcal{U} は上位集合で閉じているから、Ux∈UU_x \in \mathcal{U} なら V∈UV \in \mathcal{U})。{Ux}\{U_x\} は XX の開被覆なので、有限個 Ux1,…,UxnU_{x_1}, \ldots, U_{x_n} で XX が覆われる。補題 5.7 により各 X∖Uxk∈UX \setminus U_{x_k} \in \mathcal{U} だから、共通部分 ⋂k(X∖Uxk)=X∖⋃kUxk=∅\bigcap_k (X \setminus U_{x_k}) = X \setminus \bigcup_k U_{x_k} = \emptyset も U\mathcal{U} に入るはずで、矛盾。

(⇐\Leftarrow)XX がコンパクトでないと仮定し、有限部分被覆を持たない開被覆 V\mathcal{V} を取る。B:={X∖(V1∪⋯∪Vn):n≥1, Vk∈V}\mathcal{B} := \{X \setminus (V_1 \cup \cdots \cup V_n) : n \ge 1,\ V_k \in \mathcal{V}\} の元は、有限部分被覆を持たない仮定により空でない。B\mathcal{B} は有限共通部分で閉じている。F:={A:A⊇B (∃B∈B)}\mathcal{F} := \{A : A \supseteq B\ (\exists B \in \mathcal{B})\} はフィルターであり、定理 5.8 により超フィルター U⊇F\mathcal{U} \supseteq \mathcal{F} が取れる。仮定により U→x\mathcal{U} \to x なる xx がある。x∈Vx \in V なる V∈VV \in \mathcal{V} があり、V∈N(x)⊆UV \in \mathcal{N}(x) \subseteq \mathcal{U}。一方 X∖V∈B⊆UX \setminus V \in \mathcal{B} \subseteq \mathcal{U} なので ∅=V∩(X∖V)∈U\emptyset = V \cap (X \setminus V) \in \mathcal{U} で矛盾。

注意 5.10(ネットとフィルターの対応)

ネット (xλ)(x_\lambda) に対し、{A:∃λ0, ∀λ≥λ0, xλ∈A}\{A : \exists \lambda_0,\ \forall \lambda \ge \lambda_0,\ x_\lambda \in A\} はフィルター(尾のフィルター)で、ネットの収束は尾のフィルターの収束と同じです。ネットの集積点は、ある部分ネットの極限として表されます。また、尾のフィルターが超フィルターであるようなネットを普遍ネットといいます。以上の対応(部分ネットとフィルターの細分の対応を含む)は、定理 4.3[ネットとフィルターによる収束] と 定理 4.2[ネットとフィルターによる収束] で証明し、普遍ネットについては 定理 3.1[普遍ネット・超フィルターとコンパクト性] で扱います。この記事では使いません。以下の Tychonoff の定理の証明は、超フィルターだけで完結します。

補題 6.1(超フィルターの像は超フィルター)✓

f:X→Yf : X \to Y を写像、U\mathcal{U} を XX 上の超フィルターとする。このとき f∗U={B⊆Y:f−1(B)∈U}f_*\mathcal{U} = \{B \subseteq Y : f^{-1}(B) \in \mathcal{U}\} は YY 上の超フィルターである。

証明(補題 6.1)

フィルターであること:f−1(Y)=X∈Uf^{-1}(Y) = X \in \mathcal{U}、f−1(∅)=∅∉Uf^{-1}(\emptyset) = \emptyset \notin \mathcal{U}。B,B′∈f∗UB, B' \in f_*\mathcal{U} なら f−1(B∩B′)=f−1(B)∩f−1(B′)∈Uf^{-1}(B \cap B') = f^{-1}(B) \cap f^{-1}(B') \in \mathcal{U}。B⊆B′B \subseteq B' なら f−1(B)⊆f−1(B′)f^{-1}(B) \subseteq f^{-1}(B') なので上位集合で閉じている。超フィルターであること:B⊆YB \subseteq Y とする。f−1(Y∖B)=X∖f−1(B)f^{-1}(Y \setminus B) = X \setminus f^{-1}(B) であり、補題 5.7 により f−1(B)∈Uf^{-1}(B) \in \mathcal{U} または X∖f−1(B)∈UX \setminus f^{-1}(B) \in \mathcal{U}、すなわち B∈f∗UB \in f_*\mathcal{U} または Y∖B∈f∗UY \setminus B \in f_*\mathcal{U}。再び 補題 5.7 の十分性により f∗Uf_*\mathcal{U} は超フィルター。

定理 6.2(Tychonoff の定理)✓

{Xi}i∈I\{X_i\}_{i \in I} をコンパクト空間の族とする。積空間 ∏i∈IXi\prod_{i \in I} X_i(積位相)はコンパクトである。

証明(定理 6.2)

X=∏iXiX = \prod_i X_i とし、定理 5.9 により、XX 上の任意の超フィルター U\mathcal{U} が収束することを示す。

各 ii について、射影の像 (πi)∗U(\pi_i)_*\mathcal{U} は XiX_i 上の超フィルター(補題 6.1)である。XiX_i はコンパクトなので、定理 5.9 の必要性により、ある点 xi∈Xix_i \in X_i に収束する。各 ii にそのような xix_i を 1 つずつ選ぶ(ここで選択公理を使う。公理 3.1[選択公理と Zorn の補題]。各 XiX_i がハウスドルフなら極限は一意に決まるので、この選択は不要である)。x=(xi)i∈Ix = (x_i)_{i \in I} とおく。

U→x\mathcal{U} \to x を示す。xx の近傍は基本開近傍 W=πi1−1(U1)∩⋯∩πim−1(Um)W = \pi_{i_1}^{-1}(U_1) \cap \cdots \cap \pi_{i_m}^{-1}(U_m)(UkU_k は xikx_{i_k} を含む開集合)を含む。(πik)∗U→xik(\pi_{i_k})_*\mathcal{U} \to x_{i_k} より Uk∈(πik)∗UU_k \in (\pi_{i_k})_*\mathcal{U}、すなわち像の定義により πik−1(Uk)∈U\pi_{i_k}^{-1}(U_k) \in \mathcal{U}。フィルターは有限共通部分で閉じているので W∈UW \in \mathcal{U}。WW を含む集合も U\mathcal{U} に属するから、xx のすべての近傍が U\mathcal{U} に属する。以上で U→x\mathcal{U} \to x。

証明の骨格は二段です。(1) コンパクト性を「すべての超フィルターが収束する」に言い換える(超フィルターの存在に Zorn の補題が入る)。(2) 超フィルターは座標への射影で超フィルターのまま移り、各座標で収束した極限をそろえて並べると、もとの超フィルターの極限になる。(2) の「そろえる」操作が選択公理の使用箇所です。有限個の積なら選択は要りません。

注意 6.3(選択公理は避けられない)

Tychonoff の定理は、一般の(ハウスドルフとは限らない)コンパクト空間の族に対する形で、選択公理と同値です。選択公理から Tychonoff の定理が従うことは上の証明で、逆(Kelley 1950)は 定理 5.1[普遍ネット・超フィルターとコンパクト性] で証明します。つまり、この定理を認めることは選択公理を認めることと同じです。ハウスドルフ空間の族に対する Tychonoff の定理は、選択公理よりやや弱い「超フィルターの補題」と同値になることが知られていますが(文献は Jech の本)、その同値性の証明は、この記事でも後続の記事でも使いません。

例 6.4(Tychonoff の定理の標準的な使い方)

II を任意の集合とします。

  1. [0,1]I[0, 1]^I、{0,1}I\{0, 1\}^I(各成分は離散位相)、∏i[−ci,ci]\prod_i [-c_i, c_i](ci≥0c_i \ge 0)はコンパクトです。各成分がコンパクト(補題 5.1[コンパクト性] の n=1n = 1 の場合)だからです。∏i[−ci,ci]\prod_i [-c_i, c_i] は、{f∈RI:∣f(i)∣≤ci}\{f \in \mathbb{R}^I : |f(i)| \le c_i\} という「各点で上から押さえられた関数」の集合を、点ごと収束の位相でみたものです。
  2. 単調関数のなす集合。 M:={f∈[0,1]R:s≤t⇒f(s)≤f(t)}M := \{f \in [0, 1]^{\mathbb{R}} : s \le t \Rightarrow f(s) \le f(t)\} は、[0,1]R[0, 1]^{\mathbb{R}} の閉部分集合です。実際、s≤ts \le t に対し Es,t:={f:f(s)≤f(t)}E_{s,t} := \{f : f(s) \le f(t)\} は、連続写像 f↦(f(s),f(t))f \mapsto (f(s), f(t))(定理 3.4)による閉集合 {(a,b)∈[0,1]2:a≤b}\{(a, b) \in [0, 1]^2 : a \le b\} の逆像として閉であり、M=⋂s≤tEs,tM = \bigcap_{s \le t} E_{s,t} は閉集合の共通部分で閉です。Tychonoff の定理により [0,1]R[0, 1]^{\mathbb{R}} はコンパクトで、コンパクト空間の閉部分集合はコンパクトなので(定理 4.1[コンパクト性])、MM はコンパクトです。この事実は、単調関数の列から各点収束する部分ネットを取れるという Helly の選出定理の源です。

ここまで「第一可算でない空間では点列が不十分」と述べてきました。可算性の条件を整理し、その境界を確かめます。

定義 7.1(第一可算・第二可算・可分・Lindelöf)↗

XX を位相空間とする。

  1. XX が第一可算であるとは、各点 xx に対し、可算個の近傍 V1,V2,…V_1, V_2, \ldots で、xx の任意の近傍が(ある)VnV_n を含むようなもの(可算な近傍基)が存在することをいう。
  2. XX が第二可算であるとは、可算な開基を持つことをいう(定義 2.1[分離公理と距離づけ可能性])。
  3. XX が可分であるとは、可算な稠密部分集合を持つことをいう。
  4. XX が Lindelöf であるとは、任意の開被覆が可算部分被覆を持つことをいう。

命題 7.2(可算性の含意関係)✓

  1. 第二可算ならば、第一可算かつ可分かつ Lindelöf である。
  2. 距離づけ可能な空間では、可分と第二可算は同値である。
証明(命題 7.2)
  1. {Bn}\{B_n\} を可算開基とする。第一可算:xx を含む BnB_n たちが xx の可算な近傍基を与える。可分:空でない BnB_n から点 dnd_n を選ぶ。任意の空でない開集合は ある BnB_n を含むので {dn}\{d_n\} と交わり、{dn}\{d_n\} は稠密。Lindelöf:V\mathcal{V} を開被覆とする。ある V∈VV \in \mathcal{V} に含まれる BnB_n について、そのような Vn∈VV_n \in \mathcal{V} を 1 つ選ぶ。x∈Xx \in X に対し x∈V∈Vx \in V \in \mathcal{V} なる VV と x∈Bn⊆Vx \in B_n \subseteq V なる nn があるので、VnV_n が定義され x∈Bn⊆Vnx \in B_n \subseteq V_n。よって {Vn}\{V_n\} は可算部分被覆。
  2. 第二可算ならば可分は 1。逆に距離空間 (X,d)(X, d) が可算稠密集合 DD を持つとき、{B(y,1/m):y∈D, m∈N}\{B(y, 1/m) : y \in D,\ m \in \mathbb{N}\} は可算で、開基をなす。実際、UU が開で x∈Ux \in U のとき、B(x,ε)⊆UB(x, \varepsilon) \subseteq U なる ε\varepsilon と 1/m<ε/21/m < \varepsilon/2 なる mm を取り、DD の稠密性から d(x,y)<1/md(x, y) < 1/m なる y∈Dy \in D を取ると、x∈B(y,1/m)⊆B(x,ε)⊆Ux \in B(y, 1/m) \subseteq B(x, \varepsilon) \subseteq U(三角不等式)。

第一可算の空間では、点列が閉包と連続性を完全に捉えます。

命題 7.3(第一可算空間では点列で十分)✓

XX を第一可算な位相空間とする。

  1. A⊆XA \subseteq X に対し、x∈A‾x \in \overline{A} であることと、AA の点からなる点列で xx に収束するものが存在することは同値である。
  2. 写像 f:X→Yf : X \to Y が xx で連続であることと、xx に収束するすべての点列 (xn)(x_n) について f(xn)→f(x)f(x_n) \to f(x) となることは同値である。
証明(命題 7.3)

xx の可算な近傍基 V1,V2,…V_1, V_2, \ldots に対し Wn:=V1∩⋯∩VnW_n := V_1 \cap \cdots \cap V_n とおくと、これも近傍基で W1⊇W2⊇⋯W_1 \supseteq W_2 \supseteq \cdots。1:x∈A‾x \in \overline{A} なら Wn∩A≠∅W_n \cap A \ne \emptyset だから点 xn∈Wn∩Ax_n \in W_n \cap A を選ぶと、任意の近傍 UU はある WN⊆UW_N \subseteq U を含み、n≥Nn \ge N で xn∈Wn⊆WN⊆Ux_n \in W_n \subseteq W_N \subseteq U となるので xn→xx_n \to x。逆は 定理 5.2 の 1 の(⇐\Leftarrow)と同じ(点列はネット)。2:必要性は 定理 5.2 の 2(点列はネット)。十分性:ff が xx で連続でないと仮定すると、f(x)f(x) の近傍 VV で、すべての nn について f(Wn)⊈Vf(W_n) \not\subseteq V となるものがある。そこで xn∈Wnx_n \in W_n を f(xn)∉Vf(x_n) \notin V となるように選ぶと、1 と同様に xn→xx_n \to x だが f(xn)↛f(x)f(x_n) \not\to f(x) となり、仮定に反する。

積空間では、可算性は可算個までの積に遺伝します。

命題 7.4(可算積の可算性)✓

X1,X2,…X_1, X_2, \ldots を第二可算な空間の列とすると、∏n≥1Xn\prod_{n \ge 1} X_n は第二可算である。

証明(命題 7.4)

各 XnX_n の可算開基を Bn\mathcal{B}_n とする。m∈Nm \in \mathbb{N} と B1∈B1,…,Bm∈BmB_1 \in \mathcal{B}_1, \ldots, B_m \in \mathcal{B}_m に対し B1×⋯×Bm×Xm+1×Xm+2×⋯B_1 \times \cdots \times B_m \times X_{m+1} \times X_{m+2} \times \cdots の形の集合全体は可算で、積位相で開である。これが開基であること:x∈Wx \in W(WW は開)とすると、WW は xx を含む基本開近傍 ∏Un\prod U_n(Un=XnU_n = X_n (n>mn > m))を含む。各 n≤mn \le m について xn∈Bn⊆Unx_n \in B_n \subseteq U_n なる Bn∈BnB_n \in \mathcal{B}_n を取れば、x∈B1×⋯×Bm×Xm+1×⋯⊆Wx \in B_1 \times \cdots \times B_m \times X_{m+1} \times \cdots \subseteq W。

非可算個の積では、可算性は一般に失われます。それは単なる技術的な不便ではなく、本質的な現象です。

命題 7.5(非可算積は第一可算でない)✓

II を非可算集合とし、X={0,1}IX = \{0, 1\}^I(各成分は離散位相)とする。このとき XX は、定値関数 0\mathbf{0} において第一可算でない。

証明(命題 7.5)

0\mathbf{0} の可算な近傍基 V1,V2,…V_1, V_2, \ldots があったとする。各 VnV_n は 0\mathbf{0} を含む基本開集合 On={x:xj∈Uj (j∈Jn)}O_n = \{x : x_j \in U_j\ (j \in J_n)\}(JnJ_n は有限、0∈Uj0 \in U_j)を含む。J:=⋃nJnJ := \bigcup_n J_n は可算なので、非可算な II に i∉Ji \notin J なる ii がある。0\mathbf{0} の開近傍 {x:xi=0}\{x : x_i = 0\} を考える。OnO_n は、JnJ_n の各座標で 00 を取り第 ii 座標で 11 を取る点 xx を含む(i∉Jni \notin J_n なので第 ii 座標に制限がない)から、どの VnV_n も {xi=0}\{x_i = 0\} に含まれない。これは VnV_n が近傍基であることに反する。

例 7.6(点列では閉包を捉えられない空間)

II を非可算集合、X={0,1}IX = \{0, 1\}^I とし、A:={x∈X:xi=1 となる i は有限個}A := \{x \in X : x_i = 1\text{ となる }i\text{ は有限個}\} とします。定値関数 1\mathbf{1}(すべて 11)は A‾\overline{A} に属します。実際 1\mathbf{1} の基本開近傍は有限個の座標 JJ だけを制限するので、JJ 上で 11、他で 00 の関数が AA の元として含まれるからです。

一方、AA の点列 x(n)x^{(n)} が 1\mathbf{1} に収束することはありません。もし収束するなら、定理 5.3 により各 ii で xi(n)→1x^{(n)}_i \to 1、すなわち十分大きい nn で xi(n)=1x^{(n)}_i = 1 となります。すると ii は Sn:={i:xi(n)=1}S_n := \{i : x^{(n)}_i = 1\} のどれかに入ります。したがって I⊆⋃nSnI \subseteq \bigcup_n S_n となりますが、各 SnS_n は有限なので右辺は可算で、II が非可算なことに反します。ネット(第 5 節)は、この閉包 1\mathbf{1} に収束する AA のネットを作ります(定理 5.2)。

{0,1}I\{0, 1\}^I は Tychonoff の定理によりコンパクトハウスドルフですから、これは「コンパクトでも点列で閉包が捉えられない」例にもなっています。

注意 7.7(積の可分性)

可算個の可分空間の積が可分であることは容易に示せます(演習 8.4)。もっと強く、連続体濃度以下個の可分空間の積は可分です(Hewitt–Marczewski–Pondiczery の定理)。たとえば {0,1}R\{0,1\}^{\mathbb{R}} は可分ですが、第一可算でもありません。証明は 定理 5.1[可算性・点列・可算コンパクト性] にあり、この記事では使いません。

演習 8.1易

射影 π1:R2→R\pi_1 : \mathbb{R}^2 \to \mathbb{R} は開写像ですが閉写像ではないことを示せ。

解答

開写像であることは 定理 3.4。閉写像でないこと:C:={(x,y):xy=1}C := \{(x, y) : xy = 1\} は (x,y)↦xy(x, y) \mapsto xy が連続なので閉集合 {1}\{1\} の逆像として閉。しかし π1(C)=R∖{0}\pi_1(C) = \mathbb{R} \setminus \{0\} は閉でない。

演習 8.2標準

p:R→S1p : \mathbb{R} \to S^1、p(t)=(cos⁡2πt,sin⁡2πt)p(t) = (\cos 2\pi t, \sin 2\pi t) は商写像であることを示せ。

解答

pp は連続な全射である。V⊆S1V \subseteq S^1 について p−1(V)p^{-1}(V) が R\mathbb{R} の開集合であると仮定して、VV が開であることを示す。f:=p∣[0,1]:[0,1]→S1f := p|_{[0, 1]} : [0, 1] \to S^1 とおくと、f−1(V)=p−1(V)∩[0,1]f^{-1}(V) = p^{-1}(V) \cap [0, 1] は [0,1][0, 1] の開集合である。ff は連続な全射であり、閉写像でもある:[0,1][0, 1] の閉集合 FF はコンパクトで(定理 4.1[コンパクト性])、その連続像 f(F)f(F) もコンパクト(定理 6.1[コンパクト性])、ハウスドルフ空間 S1S^1 のコンパクト集合は閉である(定理 4.2[コンパクト性] により、外の点と分離できる)。したがって 命題 4.3 により ff は商写像で、f−1(V)f^{-1}(V) が開であることから VV は開である。

演習 8.3標準

U\mathcal{U} を N\mathbb{N} 上の超フィルターとする。有界数列 (an)(a_n) に対し、U\mathcal{U} に関する極限 lim⁡Uan∈R\lim_{\mathcal{U}} a_n \in \mathbb{R} が一意に存在することを示せ(すなわち、a∗U→La_*\mathcal{U} \to L となる実数 LL がただ 1 つ存在する)。

解答

∣an∣≤M|a_n| \le M とし、a:N→[−M,M]a : \mathbb{N} \to [-M, M] とみなす。補題 6.1 より a∗Ua_*\mathcal{U} は [−M,M][-M, M] 上の超フィルターで、[−M,M][-M, M] はコンパクトなので(定理 5.2[コンパクト性])、定理 5.9 によりある LL に収束する。一意性:L≠L′L \ne L' がともに極限とすると、交わらない開近傍 V∋LV \ni L、V′∋L′V' \ni L' が取れ、V,V′∈a∗UV, V' \in a_*\mathcal{U}(ともに収束先の近傍)なので ∅=V∩V′∈a∗U\emptyset = V \cap V' \in a_*\mathcal{U} となり矛盾。

演習 8.4標準

X1,X2,…X_1, X_2, \ldots を空でない可分な位相空間の列とする。積空間 ∏n≥1Xn\prod_{n \ge 1} X_n が可分であることを示せ。

解答

各 XnX_n の可算稠密集合 DnD_n と、点 an∈Xna_n \in X_n を選ぶ。D:={x∈∏Xn:xn∈Dn (∀n), xn=an (n>m となる m がある)}D := \{x \in \prod X_n : x_n \in D_n\ (\forall n),\ x_n = a_n\ (n > m\text{ となる }m\text{ がある})\} とおく。DD は、各 mm について有限積 D1×⋯×DmD_1 \times \cdots \times D_m に対応する集合の可算和なので可算である。稠密性:基本開集合 W=∏UnW = \prod U_n(Un=XnU_n = X_n (n>mn > m))が空でないとする。各 n≤mn \le m で UnU_n は空でない開集合なので Dn∩Un∋dnD_n \cap U_n \ni d_n が取れ、n>mn > m では an∈Xn=Una_n \in X_n = U_n と取れば、(d1,…,dm,am+1,…)∈W∩D(d_1, \ldots, d_m, a_{m+1}, \ldots) \in W \cap D。

  • J. R. Munkres, Topology, 2nd ed., Prentice Hall, 2000 — Chapter 2 §15–§19(積位相・商位相)、Chapter 5 §37(Tychonoff の定理)。
  • J. L. Kelley, General Topology, Van Nostrand, 1955 — Chapter 2(収束とネット)、Chapter 5(コンパクト空間)。ネットとフィルターの対応と、Tychonoff の定理と選択公理の同値性。
  • S. Willard, General Topology, Addison-Wesley, 1970 — ネットとフィルターの節、積空間の節。
  • R. Engelking, General Topology, Heldermann, 1989 — Chapter 2(積と商)、Chapter 3(コンパクト空間と積の可分性)。
  • 松坂和夫『集合・位相入門』岩波書店、1968 — 位相空間の積・商の節。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)、Claude Code(Opus 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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