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完全正則空間と埋め込み定理:Tychonoff 立方体・Alexandroff 立方体・Stone–Čech コンパクト化

対象読者: 本テーマ第 1〜7 章(分離公理・Urysohn の補題・局所コンパクト空間・積位相)を学んだ学部 4 年程度の人。コンパクト化や埋め込み定理は未習とします。

前提となる記事:分離公理と距離づけ可能性:T1 から T4 へ、そしてウリゾーンの距離化定理、局所コンパクト空間:一点コンパクト化・Urysohn・Tietze・1 の分割・位相群、積位相・商位相と Tychonoff の定理:ネットと超フィルターで見るコンパクト性

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身近な言い方をすると、この記事は「空間の上の連続な関数(0 から 1 までの値をなめらかにとる目盛り)を使って、空間の点や閉じた部分を見分けられるか」を問います。見分けられる空間は、座標をたくさん並べた箱(立方体)の中に、形を変えずに入れられることが分かります。さらにその箱の中で閉じた部分を取ると、元の空間を含むコンパクトな空間が作れます。読み終えると、この三つの話が一つの発想から出ていることを説明できるようになります。

  • 空間が「連続な実数値関数でどれだけ点や閉集合を見分けられるか」を測る条件が完全正則性です。点と閉集合を [0,1][0,1] 値の連続関数で分離できる空間を完全正則、さらに T1 を課したものを Tychonoff 空間(T3123\frac12)と呼びます。正規空間(T4)と LCH 空間は Tychonoff です(命題 2.4)。
  • Tychonoff の埋め込み定理(定理 3.4):Tychonoff 空間は、重さ w(X)w(X)(開基の最小の個数。有限のときは ℵ0\aleph_0 とみなす。第 3 節)個の座標をもつ立方体 [0,1]w(X)[0,1]^{w(X)} の部分空間と同相です。逆に立方体の部分空間は Tychonoff なので、Tychonoff 空間とは立方体の部分空間のことにほかなりません。
  • 区間 [0,1][0,1] を Sierpiński 空間(2 点だけでできた最小の非自明な空間。第 4 節)に取り替えると、T0 空間を特徴づける Alexandroff 立方体への埋め込み定理(定理 4.3)が得られます。開集合は Sierpiński 空間への連続写像と 1 対 1 に対応します(命題 4.2)。
  • Stone–Čech コンパクト化 βX\beta X(定理 5.2):Tychonoff 空間に、「コンパクトハウスドルフ空間への連続写像がすべて延長できる」最大のコンパクト化(元の空間を稠密な部分空間として含むコンパクト空間)が存在します。有界連続関数の空間 Cb(X)C_b(X) は C(βX)C(\beta X) と同一視できます(系 5.3)。
  • 完全正規空間は、閉集合がすべて零集合(連続関数のゼロ点集合)になる空間です(命題 6.2)。距離空間は完全正規です。そのほか、正則開集合の基本性質(命題 7.2)、GδG_\delta 位相と実コンパクト空間の定義も扱います。

分離公理の記事では、正規性という集合の言葉だけの条件からウリゾーンの補題で連続関数が作れることを見ました。正規空間は強い条件で、距離空間・コンパクトハウスドルフ空間が該当します。しかし位相空間論の主役の一つである「関数環」の立場からは、正規性は少し強すぎます。連続関数で空間の点を見分けられる、という要求だけで十分な場面が多いからです。

たとえば、空間 XX 上の実数値連続関数全体 C(X)C(X) や Cb(X)C_b(X)(有界なもの)を調べるとき、関数が空間について何を教えてくれるかが問題になります。もし XX 上のどんな連続関数も、ある点 xx と、xx を含まない閉集合 FF を区別できないなら、C(X)C(X) から XX の位相を復元することは望めません。逆に区別できるなら、その関数たちが XX を立方体 [0,1]J[0,1]^J の中に埋め込む座標になります。この発想が Tychonoff の埋め込み定理であり、さらに閉包を取れば Stone–Čech コンパクト化になります。

もう一つの動機は、ウリゾーンの距離化定理(定理 7.3[分離公理と距離づけ可能性])の証明の見直しです。そこでは第二可算な T3 空間を可算個の関数でヒルベルト立方体([0,1]N[0,1]^{\mathbb{N}} のこと)に埋め込みました。可算性を外して一般の空間でも同じ構成をしたとき、何が必要十分条件になるのかを考えると、完全正則性という条件にたどり着きます。この記事の構成は次のとおりです。

  1. 完全正則性の定義と、遺伝・十分条件(第 2 節)。
  2. 基数関数(重さなど)と、Tychonoff 立方体への埋め込み定理(第 3 節)。
  3. Sierpiński 空間と Alexandroff 立方体(第 4 節)。
  4. Stone–Čech コンパクト化(第 5 節)。
  5. 完全正規空間(第 6 節)、正則開集合(第 7 節)、GδG_\delta 位相と実コンパクト空間(第 8 節)。
距離づけ可能完全正規T4(正規)TychonoffT3(正則)T2
分離性の階層。実線の含意はいずれも一般に成り立ち、この記事の命題(第 2 節・第 6 節)で示す。T1 を課した空間を考えている。

まず零集合と、それに関連する語を導入します。

定義 2.1(零集合・余零集合・GδG_\delta 集合・FσF_\sigma 集合)↗

XX を位相空間とする。

  1. 部分集合 A⊆XA \subseteq X が零集合(zero set)であるとは、連続関数 f:X→Rf : X \to \mathbb{R} で A=f−1(0)A = f^{-1}(0) となるものがあることをいう。零集合の補集合を余零集合(cozero set)という。
  2. 可算個の開集合の共通部分として書ける集合を GδG_\delta 集合、可算個の閉集合の合併として書ける集合を FσF_\sigma 集合という。

零集合は閉集合かつ GδG_\delta 集合です。実際 A=f−1(0)A = f^{-1}(0) なら、{0}\{0\} は R\mathbb{R} の閉集合なので AA は閉であり、A=⋂n∈Nf−1((−1n,1n))A = \bigcap_{n \in \mathbb{N}} f^{-1}\bigl((-\tfrac1n, \tfrac1n)\bigr) だから GδG_\delta です。余零集合は開集合かつ FσF_\sigma 集合です。また ff を min⁡(∣f∣,1)\min(|f|, 1) に取り替えれば、零集合は [0,1][0,1] 値の連続関数のゼロ点集合としても書けます。

例 2.2(零集合の例)

  1. R\mathbb{R} の閉区間 [0,1][0,1] は、f(x)=max⁡(0,−x,x−1)f(x) = \max(0, -x, x-1) のゼロ点集合なので零集合である。
  2. 離散空間では、すべての部分集合が閉かつ開であり、特性関数 χX∖A\chi_{X \setminus A} のゼロ点集合として AA が書けるので、すべての部分集合が零集合である。
  3. 距離空間では、すべての閉集合が零集合である(命題 6.2 で示す)。

次が主役の定義です。

定義 2.3(完全正則空間・Tychonoff 空間)↗

位相空間 XX が完全正則(completely regular)であるとは、任意の閉集合 F⊆XF \subseteq X と任意の点 x∈X∖Fx \in X \setminus F に対し、連続関数 f:X→[0,1]f : X \to [0,1] で f(x)=0f(x) = 0 かつ FF 上 f=1f = 1 となるものが存在することをいう。T1 かつ完全正則な空間を Tychonoff 空間(T3123\frac12 空間)という。

「正則」「正規」と同様、完全正則性には T1 を含めません(用語の流儀(注意 4.3)[分離公理と距離づけ可能性] に合わせます)。Tychonoff 空間は T1 かつ完全正則、という呼び分けです。

命題 2.4(完全正則性の遺伝と十分条件)✓

  1. 完全正則空間は正則である。したがって Tychonoff 空間は T3 空間であり、ハウスドルフである。
  2. Tychonoff 空間の部分空間は Tychonoff 空間である。
  3. Tychonoff 空間の族の積空間は Tychonoff 空間である。
  4. T4 空間は Tychonoff 空間である。
  5. LCH 空間は Tychonoff 空間である。
証明(命題 2.4)
  1. XX を完全正則とし、FF を閉集合、x∉Fx \notin F とする。連続関数 f:X→[0,1]f : X \to [0,1] を f(x)=0f(x) = 0、FF 上 f=1f = 1 で取る。U:=f−1([0,12))U := f^{-1}([0, \tfrac12))、V:=f−1((12,1])V := f^{-1}((\tfrac12, 1]) は連続性より開集合で、互いに素であり、x∈Ux \in U、F⊆VF \subseteq V。よって XX は正則である。T1 を加えれば T3 である(定義 4.1[分離公理と距離づけ可能性])。さらにハウスドルフであること:x≠yx \ne y とすると、T1 より {y}\{y\} は閉(命題 3.2[分離公理と距離づけ可能性])で x∉{y}x \notin \{y\}。正則性により交わらない開集合 U∋xU \ni x、V⊇{y}V \supseteq \{y\} が取れる。

  2. XX を Tychonoff 空間、A⊆XA \subseteq X とする。T1 性:AA の相異なる 2 点 x,yx, y に対し、XX の開集合 U∋xU \ni x、y∉Uy \notin U があるので、A∩UA \cap U が AA の開集合として xx を含み yy を含まない。xx と yy を入れ替えても同様。完全正則性:F′F' を AA の閉集合、x∈A∖F′x \in A \setminus F' とする。F′=A∩FF' = A \cap F(FF は XX の閉集合)と書ける。x∉Fx \notin F(もし x∈Fx \in F なら x∈A∩F=F′x \in A \cap F = F' となってしまう)。連続関数 f:X→[0,1]f : X \to [0,1] を f(x)=0f(x) = 0、FF 上 f=1f = 1 で取り、AA へ制限すれば、f∣Af|_A は連続で f∣A(x)=0f|_A(x) = 0、F′F' 上 f∣A=1f|_A = 1。

  3. X=∏i∈IXiX = \prod_{i \in I} X_i とし、各 XiX_i を Tychonoff 空間とする。T1 性:各 ii で {xi}\{x_i\} が閉(命題 3.2[分離公理と距離づけ可能性])だから、{x}=⋂iπi−1({xi})\{x\} = \bigcap_i \pi_i^{-1}(\{x_i\}) は閉集合の共通部分として閉であり、再び 命題 3.2[分離公理と距離づけ可能性] より XX は T1 である。完全正則性:FF を閉集合、x∉Fx \notin F とする。命題 3.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理] により、有限集合 I0⊆II_0 \subseteq I と開集合 Ui⊆XiU_i \subseteq X_i(i∈I0i \in I_0)で x∈⋂i∈I0πi−1(Ui)⊆X∖Fx \in \bigcap_{i \in I_0} \pi_i^{-1}(U_i) \subseteq X \setminus F となるものがある。各 i∈I0i \in I_0 について、Xi∖UiX_i \setminus U_i は閉で xi∉Xi∖Uix_i \notin X_i \setminus U_i だから、連続関数 fi:Xi→[0,1]f_i : X_i \to [0,1] を fi(xi)=0f_i(x_i) = 0、Xi∖UiX_i \setminus U_i 上 fi=1f_i = 1 で取れる。g(y):=max⁡i∈I0fi(yi)g(y) := \max_{i \in I_0} f_i(y_i)(I0=∅I_0 = \emptyset なら g≡0g \equiv 0)とおくと、gg は有限個の連続関数 fi∘πif_i \circ \pi_i の最大値として連続で、g(x)=0g(x) = 0。y∈Fy \in F なら y∉⋂i∈I0πi−1(Ui)y \notin \bigcap_{i \in I_0}\pi_i^{-1}(U_i) だから、ある i∈I0i \in I_0 で yi∉Uiy_i \notin U_i であり、g(y)≥fi(yi)=1g(y) \ge f_i(y_i) = 1、すなわち g(y)=1g(y) = 1。

  4. XX を T4 空間、FF を閉集合、x∉Fx \notin F とする。XX は T1 だから {x}\{x\} は閉(命題 3.2[分離公理と距離づけ可能性])で、{x}∩F=∅\{x\} \cap F = \emptyset。ウリゾーンの補題(補題 6.1)[分離公理と距離づけ可能性] により、連続関数 f:X→[0,1]f : X \to [0,1] で f(x)=0f(x) = 0、FF 上 f=1f = 1 なるものが取れる。

  5. XX を LCH 空間とする。ハウスドルフだから T1。FF を閉集合、x∉Fx \notin F とする。K:={x}K := \{x\} はコンパクトで、開集合 U:=X∖FU := X \setminus F に含まれる。Urysohn の補題(LCH 版)(定理 4.1)[局所コンパクト空間] により連続関数 h:X→[0,1]h : X \to [0,1] で h(x)=1h(x) = 1、台がコンパクトで UU に含まれるものがある。台が UU に含まれるので、FF 上で h=0h = 0。f:=1−hf := 1 - h とおけば f(x)=0f(x) = 0、FF 上 f=1f = 1。

T3 であって完全正則でない空間も存在することが知られています(Hewitt の例。Engelking『General Topology』にあります)。つまり T312\frac12 は T3 より真に強い条件です。しかし、その例は実用上の場面にはまず現れません。解析学・多様体論・関数解析で扱う空間は、ほとんどすべて Tychonoff です。

3. 基数関数と Tychonoff の埋め込み定理

Section titled “3. 基数関数と Tychonoff の埋め込み定理”

埋め込みに必要な座標の個数を測るため、位相空間の「大きさ」を表す量をいくつか定義しておきます。

定義 3.1(基数関数 w,χ,d,Lw, \chi, d, L)↗

XX を位相空間とする。以下、最小値は基数の最小値であり、すべて ℵ0\aleph_0 以上になるよう max⁡(ℵ0,⋅)\max(\aleph_0, \cdot) を取る。

  • 重さ w(X):=max⁡(ℵ0,min⁡{∣B∣:B は X の開基})w(X) := \max\bigl(\aleph_0, \min\{|\mathcal{B}| : \mathcal{B} \text{ は } X \text{ の開基}\}\bigr)。
  • 点 xx での指標 χ(x,X):=max⁡(ℵ0,min⁡{∣N∣:N は x の近傍基})\chi(x, X) := \max\bigl(\aleph_0, \min\{|\mathcal{N}| : \mathcal{N} \text{ は } x \text{ の近傍基}\}\bigr)、指標 χ(X):=sup⁡x∈Xχ(x,X)\chi(X) := \sup_{x \in X} \chi(x, X)。
  • 稠密度 d(X):=max⁡(ℵ0,min⁡{∣D∣:D は X の稠密部分集合})d(X) := \max\bigl(\aleph_0, \min\{|D| : D \text{ は } X \text{ の稠密部分集合}\}\bigr)。
  • Lindelöf 数 L(X):=max⁡(ℵ0,min⁡{κ:任意の開被覆が濃度 ≤κ の部分被覆をもつ})L(X) := \max\bigl(\aleph_0, \min\{\kappa : \text{任意の開被覆が濃度 } \le \kappa \text{ の部分被覆をもつ}\}\bigr)。

定義から、w(X)=ℵ0w(X) = \aleph_0 は第二可算、χ(X)=ℵ0\chi(X) = \aleph_0 は第一可算、d(X)=ℵ0d(X) = \aleph_0 は可分、L(X)=ℵ0L(X) = \aleph_0 は Lindelöf と同値です(可算性の定義(定義 7.1)[積位相・商位相と Tychonoff の定理] と比較してください)。

例 3.2(基数関数の計算)

  1. Q\mathbb{Q}(R\mathbb{R} の部分空間):有理数端点の開区間 Q∩(a,b)\mathbb{Q} \cap (a,b)(a<ba < b は有理数)の全体は基底で、可算(定理 5.6[濃度と無限])。よって w(Q)=ℵ0w(\mathbb{Q}) = \aleph_0。基底は各点の近傍基を与えるので χ(Q)=ℵ0\chi(\mathbb{Q}) = \aleph_0。Q\mathbb{Q} 自身が可算稠密なので d=ℵ0d = \aleph_0。
  2. 濃度 κ≥ℵ0\kappa \ge \aleph_0 の離散空間 DD:1 点集合 {x}\{x\} が開だから、任意の基底は各 {x}\{x\} を含まねばならず(x∈B⊆{x}x \in B \subseteq \{x\} なる基底元は {x}\{x\} 自身)、∣B∣≥κ|\mathcal{B}| \ge \kappa。{{x}:x∈D}\{\{x\} : x \in D\} は基底だから w(D)=κw(D) = \kappa。同様に、稠密集合は DD 全体、開被覆 {{x}}\{\{x\}\} の部分被覆は全体なので d(D)=L(D)=κd(D) = L(D) = \kappa。一方 χ(D)=ℵ0\chi(D) = \aleph_0({x}\{x\} が近傍基)。

次の補題は埋め込み定理と Stone–Čech コンパクト化の両方で使います。点と閉集合を分離する関数の族が、そのまま埋め込みの座標になるという主張です。

補題 3.3(関数族による埋め込み)✓

XX を T1 空間、Φ\Phi を連続関数 X→[0,1]X \to [0,1] の族とし、次を仮定する:任意の開集合 W⊆XW \subseteq X と任意の x∈Wx \in W に対し、φ∈Φ\varphi \in \Phi で φ(x)=0\varphi(x) = 0 かつ X∖WX \setminus W 上 φ=1\varphi = 1 となるものが存在する。このとき

eΦ:X→[0,1]Φ,eΦ(x)=(φ(x))φ∈Φe_\Phi : X \to [0,1]^{\Phi}, \qquad e_\Phi(x) = \bigl(\varphi(x)\bigr)_{\varphi \in \Phi}

は埋め込み、すなわち XX から像 eΦ(X)e_\Phi(X) への同相写像を与える。

証明のうち開性の部分は、像 eΦ(X)e_\Phi(X) の中だけで見て eΦ(W)e_\Phi(W) が開であることを示すものです。WW の外で 1 になる座標 φ\varphi を一つ使い、立方体の「第 φ\varphi 座標が 1 未満」という開集合で像を切り取ると、その切り口が eΦ(W)e_\Phi(W) の中に収まる、という流れです。

証明(補題 3.3)

連続性。 各座標 πφ∘eΦ=φ\pi_\varphi \circ e_\Phi = \varphi が連続だから、積位相の普遍性(定理 3.4)[積位相・商位相と Tychonoff の定理] により eΦe_\Phi は連続である。

単射性。 x≠yx \ne y とする。XX は T1 だから W:=X∖{y}W := X \setminus \{y\} は開集合で x∈Wx \in W(命題 3.2[分離公理と距離づけ可能性])。仮定より φ∈Φ\varphi \in \Phi で φ(x)=0\varphi(x) = 0、φ(y)=1\varphi(y) = 1(y∈X∖Wy \in X \setminus W)となるものがある。よって eΦ(x)≠eΦ(y)e_\Phi(x) \ne e_\Phi(y)。

開性。 W⊆XW \subseteq X を開集合とし、eΦ(W)e_\Phi(W) が像 eΦ(X)e_\Phi(X) で開であることを示す。x∈Wx \in W を取る。仮定の φ\varphi について O:={z∈[0,1]Φ:zφ<1}=πφ−1([0,1))O := \{z \in [0,1]^{\Phi} : z_\varphi < 1\} = \pi_\varphi^{-1}([0,1)) は開集合で eΦ(x)∈Oe_\Phi(x) \in O である。eΦ(y)∈Oe_\Phi(y) \in O なら φ(y)<1\varphi(y) < 1 だから、X∖WX \setminus W 上 φ=1\varphi = 1 より y∈Wy \in W。つまり O∩eΦ(X)⊆eΦ(W)O \cap e_\Phi(X) \subseteq e_\Phi(W) であり、eΦ(x)e_\Phi(x) は eΦ(W)e_\Phi(W) の像 eΦ(X)e_\Phi(X) での内点になる。x∈Wx \in W は任意だから eΦ(W)e_\Phi(W) は開。

以上、eΦe_\Phi は連続な全単射 X→eΦ(X)X \to e_\Phi(X) で開写像だから、同相写像である。

定理 3.4(Tychonoff の埋め込み定理)✓

XX を位相空間とする。次は同値である。

  1. XX は Tychonoff 空間である。
  2. ある集合 JJ に対し、XX は立方体 [0,1]J[0,1]^J(積位相)の部分空間と同相である。

さらに XX が Tychonoff 空間で κ=w(X)\kappa = w(X) のとき、JJ は濃度 κ\kappa の集合に取れる。すなわち XX は [0,1]κ[0,1]^{\kappa} の部分空間と同相である。

証明の方針は次のとおりです。座標に使う関数を、開基の元の組 (U,V)(U,V) ごとに一つ選びます。点 xx を含む開集合 WW の中に開基の元 VV を取り、さらに xx を含む小さな開基の元 UU を取って、UU 上で 0、VV の外で 1 となる関数を作れば、補題の仮定が満たされます。完全正則性が与える関数 gg は xx の一点でしか 0 にならないかもしれないので、gg が小さい範囲を開基の元 UU でおさえ、その上で 0 に潰れるように 4g−14g-1 で作り直します。必要な関数の個数は開基の元の組の数で抑えられ、これが w(X)w(X) に対応します。

証明(定理 3.4)

(2 ⇒\Rightarrow 1)[0,1][0,1] は距離空間だから T4(定理 5.2[分離公理と距離づけ可能性])、したがって Tychonoff(命題 2.4 の 4)。その積 [0,1]J[0,1]^J は Tychonoff(同 3)、部分空間も Tychonoff(同 2)。Tychonoff 性は同相で保たれる(定義が連続関数・開集合・閉集合だけで書かれているため)ので 1 が従う。

(1 ⇒\Rightarrow 2)XX を Tychonoff 空間とし、B\mathcal{B} を XX の開基で ∣B∣≤w(X)|\mathcal{B}| \le w(X) となるものとする(w(X)w(X) の定義による)。

J:={(U,V)∈B×B:連続関数 f:X→[0,1] で U 上 f=0, X∖V 上 f=1 となるものがある}J := \bigl\{ (U, V) \in \mathcal{B} \times \mathcal{B} : \text{連続関数 } f : X \to [0,1] \text{ で } U \text{ 上 } f = 0,\ X \setminus V \text{ 上 } f = 1 \text{ となるものがある} \bigr\}

とおき、各 (U,V)∈J(U,V) \in J に対してそのような関数 f(U,V)f_{(U,V)} を 1 つ選ぶ(選択公理)。Φ:={fj:j∈J}\Phi := \{f_j : j \in J\}(関数としての集合。∣Φ∣≤∣J∣|\Phi| \le |J|)とする。

主張:任意の開集合 WW と x∈Wx \in W に対し、j∈Jj \in J で fj(x)=0f_j(x) = 0 かつ X∖WX \setminus W 上 fj=1f_j = 1 となるものがある。実際、B\mathcal{B} は基底だから x∈V⊆Wx \in V \subseteq W なる V∈BV \in \mathcal{B} を取る。X∖VX \setminus V は閉で x∉X∖Vx \notin X \setminus V だから、完全正則性により連続関数 g:X→[0,1]g : X \to [0,1] で g(x)=0g(x) = 0、X∖VX \setminus V 上 g=1g = 1 なるものがある。U0:=g−1([0,14))U_0 := g^{-1}([0, \tfrac14)) は xx を含む開集合だから、x∈U⊆U0x \in U \subseteq U_0 なる U∈BU \in \mathcal{B} がある。h:=min⁡(1,max⁡(0,4g−1))h := \min\bigl(1, \max(0, 4g - 1)\bigr) は連続で、g<14g < \tfrac14 なる点(特に UU 上)で h=0h = 0、g=1g = 1 なる点(特に X∖VX \setminus V 上)で h=1h = 1。よって (U,V)∈J(U,V) \in J であり、選んだ f(U,V)f_{(U,V)} は UU 上 00、X∖VX \setminus V 上 11 だから f(U,V)(x)=0f_{(U,V)}(x) = 0 かつ X∖W⊆X∖VX \setminus W \subseteq X \setminus V 上 f(U,V)=1f_{(U,V)} = 1。

したがって 補題 3.3 の仮定が成り立ち(T1 は Tychonoff 空間の定義に含まれる)、eΦ:X→[0,1]Φe_\Phi : X \to [0,1]^{\Phi} は埋め込みである。これで 2 の前半([0,1]Φ[0,1]^{\Phi} の部分空間と同相であること。JJ の代わりに Φ\Phi を添字集合に取る)が示された。

濃度の評価。 ∣Φ∣≤∣J∣≤∣B×B∣|\Phi| \le |J| \le |\mathcal{B} \times \mathcal{B}| である。B\mathcal{B} が無限なら ∣B×B∣=∣B∣|\mathcal{B} \times \mathcal{B}| = |\mathcal{B}|(無限基数の積(系 6.4)[公理的集合論 ZFC])、有限なら ∣B×B∣|\mathcal{B} \times \mathcal{B}| は有限。いずれの場合も ∣Φ∣≤max⁡(ℵ0,∣B∣)≤w(X)=κ|\Phi| \le \max(\aleph_0, |\mathcal{B}|) \le w(X) = \kappa。κ\kappa は無限基数だから、単射 σ:Φ→κ\sigma : \Phi \to \kappa が取れ、

ι:[0,1]Φ→[0,1]κ,ι(z)σ(φ)=zφ,ι(z)α=0 (α∉σ(Φ))\iota : [0,1]^{\Phi} \to [0,1]^{\kappa}, \qquad \iota(z)_{\sigma(\varphi)} = z_\varphi,\quad \iota(z)_\alpha = 0 \ (\alpha \notin \sigma(\Phi))

は各成分が射影または定数だから連続(積位相の普遍性(定理 3.4)[積位相・商位相と Tychonoff の定理])であり、ι(z)σ(φ)=zφ\iota(z)_{\sigma(\varphi)} = z_\varphi から単射である。像 ι([0,1]Φ)\iota([0,1]^{\Phi}) から [0,1]Φ[0,1]^{\Phi} への逆写像は、成分 ι(z)↦ι(z)σ(φ)\iota(z) \mapsto \iota(z)_{\sigma(\varphi)}(射影)の組だから連続。よって ι\iota は埋め込みで、ι∘eΦ\iota \circ e_\Phi により XX は [0,1]κ[0,1]^{\kappa} の部分空間と同相になる。

この定理は、Tychonoff 空間に「[0,1][0,1] の積の部分空間」という外在的な特徴づけを与えます。ウリゾーンの距離化定理の証明で第二可算な T3 空間をヒルベルト立方体 [0,1]N[0,1]^{\mathbb{N}} に埋め込んだ構成(ヒルベルト立方体への埋め込み(注意 7.4)[分離公理と距離づけ可能性])は、w(X)=ℵ0w(X) = \aleph_0 の場合の特殊化です。

注意 3.5(基数関数の不等式と、この記事で扱わないこと)

基数関数の間には様々な不等式があります。有名なのは Arhangel’skii の不等式で、ハウスドルフ空間 XX について ∣X∣≤2χ(X)L(X)|X| \le 2^{\chi(X) L(X)} が成り立ちます(A. V. Arhangel’skii、1969)。たとえば、第一可算で Lindelöf なハウスドルフ空間の濃度は連続体濃度以下です。証明は、閉包を取る操作を ω1\omega_1 回くり返す超限構成を使い、基数論の準備が要るので、この記事では主張の紹介にとどめ、以後の議論の根拠には使いません。詳しくは Engelking『General Topology』第 3 章や R. Hodel による概説(Topology and its Applications 2006)を見てください。

4. Sierpiński 空間と Alexandroff 立方体

Section titled “4. Sierpiński 空間と Alexandroff 立方体”

区間 [0,1][0,1] の代わりに最も小さい非自明な空間を使うと、T0 空間に対する同様の埋め込み定理が得られます。

定義 4.1(Sierpiński 空間)↗

2 点集合 S={0,1}\mathbb{S} = \{0, 1\} に、開集合の族 {∅,{1},S}\{\emptyset, \{1\}, \mathbb{S}\} を入れた空間を Sierpiński 空間という。

命題 4.2(Sierpiński 空間の普遍性)✓

  1. S\mathbb{S} は T0 空間だが T1 空間ではない。
  2. 位相空間 XX の開集合 UU に対し、χU:X→S\chi_U : X \to \mathbb{S} を x∈Ux \in U のとき 11、そうでないとき 00 と定める。すると χU\chi_U は連続であり、対応 U↦χUU \mapsto \chi_U は、XX の開集合全体から連続写像全体 C(X,S)C(X, \mathbb{S}) への全単射である。逆写像は f↦f−1({1})f \mapsto f^{-1}(\{1\}) で与えられる。
証明(命題 4.2)
  1. 2 点 0≠10 \ne 1 に対し、開集合 {1}\{1\} は 11 を含み 00 を含まないので T0 である。00 を含む開集合は S\mathbb{S} だけで、これは 11 も含むから、「00 を含み 11 を含まない開集合」が存在せず、T1 ではない(定義 3.1[分離公理と距離づけ可能性])。

  2. χU−1(∅)=∅\chi_U^{-1}(\emptyset) = \emptyset、χU−1({1})=U\chi_U^{-1}(\{1\}) = U、χU−1(S)=X\chi_U^{-1}(\mathbb{S}) = X はすべて開だから χU\chi_U は連続。連続写像 f:X→Sf : X \to \mathbb{S} に対しては、f−1({1})f^{-1}(\{1\}) は {1}\{1\} が開だから XX の開集合で、f=χf−1({1})f = \chi_{f^{-1}(\{1\})}(値が 11 でなければ 00)。また χU−1({1})=U\chi_U^{-1}(\{1\}) = U。したがって U↦χUU \mapsto \chi_U と f↦f−1({1})f \mapsto f^{-1}(\{1\}) は互いに逆の写像である。

つまり、空間 XX から S\mathbb{S} への連続写像とは「開集合を 1 つ選ぶこと」にほかなりません。S\mathbb{S} は開集合を表現する対象(古典的な言い方で、開集合の分類空間)です。開集合の一つ一つが S\mathbb{S} への連続写像の一つ一つに過不足なく対応する、というのがその意味です。

定理 4.3(Alexandroff 立方体への埋め込み)✓

位相空間 XX について、次は同値である。

  1. XX は T0 空間である。
  2. ある集合 JJ に対し、XX は積空間 SJ\mathbb{S}^J の部分空間と同相である。

さらに、1 のとき JJ は XX の開集合全体の集合に取れる。SJ\mathbb{S}^J を Alexandroff 立方体という。

証明(定理 4.3)

(2 ⇒\Rightarrow 1)S\mathbb{S} は T0(命題 4.2 の 1)。積空間 SJ\mathbb{S}^J も T0:z≠wz \ne w なら zj≠wjz_j \ne w_j なる jj があり、S\mathbb{S} の開集合 OO で zj,wjz_j, w_j の一方だけを含むものがあるから、πj−1(O)\pi_j^{-1}(O) が z,wz, w の一方だけを含む開集合。T0 性は部分空間にも遺伝し(A∩(開集合)A \cap (\text{開集合}) を取る)、同相でも保たれる。

(1 ⇒\Rightarrow 2)J:={U:U は X の開集合}J := \{U : U \text{ は } X \text{ の開集合}\} とし、e:X→SJe : X \to \mathbb{S}^J を e(x)=(χU(x))U∈Je(x) = (\chi_U(x))_{U \in J} で定める。各座標 χU\chi_U が連続(命題 4.2 の 2)だから、積位相の普遍性(定理 3.4)[積位相・商位相と Tychonoff の定理] により ee は連続。単射:x≠yx \ne y と T0 から、x,yx, y の一方だけを含む開集合 UU があり、χU(x)≠χU(y)\chi_U(x) \ne \chi_U(y)。開性:UU を開集合とすると、πU−1({1})\pi_U^{-1}(\{1\}) は SJ\mathbb{S}^J の開集合で、e(x)∈πU−1({1})  ⟺  χU(x)=1  ⟺  x∈Ue(x) \in \pi_U^{-1}(\{1\}) \iff \chi_U(x) = 1 \iff x \in U。ee は単射だから e(U)=e(X)∩πU−1({1})e(U) = e(X) \cap \pi_U^{-1}(\{1\}) であり、これは e(X)e(X) の開集合。連続な全単射 X→e(X)X \to e(X) が開写像なので同相写像である。

T0 空間とは、Sierpiński 空間たちの積の中に住める空間のことだ、というわけです。位相の情報がすべて開集合の特性関数で表現できることを、この定理は言い直しています。

Tychonoff 空間 XX は立方体の部分空間として実現されました。その閉包を取ればコンパクトハウスドルフ空間が得られます。これが XX の最大のコンパクト化です。準備として、稠密集合上の一致に関する補題を示します。

補題 5.1(稠密集合上で一致する連続写像)✓

YY を位相空間、ZZ をハウスドルフ空間、g,h:Y→Zg, h : Y \to Z を連続写像とする。YY の稠密部分集合 DD 上で g=hg = h ならば、YY 全体で g=hg = h である。

証明(補題 5.1)

g(p)≠h(p)g(p) \ne h(p) なる p∈Yp \in Y があったとする。ZZ はハウスドルフだから、交わらない開集合 O∋g(p)O \ni g(p)、O′∋h(p)O' \ni h(p) が取れる。G:=g−1(O)∩h−1(O′)G := g^{-1}(O) \cap h^{-1}(O') は pp を含む開集合である。DD は稠密だから G∩D≠∅G \cap D \ne \emptyset で、y∈G∩Dy \in G \cap D を取ると g(y)=h(y)g(y) = h(y) が O∩O′=∅O \cap O' = \emptyset の点になり矛盾。

定理 5.2(Stone–Čech コンパクト化の存在と普遍性)✓

XX を Tychonoff 空間とする。コンパクトハウスドルフ空間 βX\beta X と連続写像 ι:X→βX\iota : X \to \beta X で、次をみたすものが存在する。

  1. ι\iota は XX から像 ι(X)\iota(X) への同相写像であり、ι(X)\iota(X) は βX\beta X で稠密である。
  2. (普遍性)コンパクトハウスドルフ空間 KK と連続写像 f:X→Kf : X \to K に対し、連続写像 F:βX→KF : \beta X \to K で F∘ι=fF \circ \iota = f となるものがただ 1 つ存在する。

証明の構成では、XX 上の [0,1][0,1] 値連続関数すべてを座標にして XX を立方体に埋め込み、その像の閉包を取ります。座標の数は巨大ですが、個々の座標を具体的に見る必要はなく、おもに使うのは「立方体はコンパクトで、閉部分集合もコンパクト」という事実です。

証明(定理 5.2)

構成。 J:=C(X,[0,1])J := C(X, [0,1])(連続関数 X→[0,1]X \to [0,1] 全体)とし、e:X→[0,1]Je : X \to [0,1]^J を e(x)=(g(x))g∈Je(x) = (g(x))_{g \in J} とする。XX は完全正則だから、開集合 WW と x∈Wx \in W に対し g∈Jg \in J で g(x)=0g(x) = 0、X∖WX \setminus W 上 g=1g = 1 となるものがある(X∖WX \setminus W は閉で x∉X∖Wx \notin X \setminus W)。したがって 補題 3.3 が Φ=J\Phi = J に適用でき、ee は埋め込みである。βX:=e(X)‾\beta X := \overline{e(X)}([0,1]J[0,1]^J での閉包)、ι:=e\iota := e(終域を βX\beta X に取ったもの)とする。[0,1]J[0,1]^J は Tychonoff の定理(定理 6.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理])によりコンパクトで、βX\beta X はその閉部分集合だからコンパクト(定理 4.1[コンパクト性])。[0,1][0,1] はハウスドルフだから [0,1]J[0,1]^J もハウスドルフ(命題 3.5[積位相・商位相と Tychonoff の定理])で、その部分空間 βX\beta X もハウスドルフ。1 は構成から従う。

普遍性(存在)。 KK をコンパクトハウスドルフ空間、f:X→Kf : X \to K を連続とする。KK は T4(定理 4.5[分離公理と距離づけ可能性])だから Tychonoff(命題 2.4 の 4)で、定理 3.4 により、集合 LL と埋め込み k:K→[0,1]Lk : K \to [0,1]^L がある。k(K)k(K) はコンパクトで、ハウスドルフ空間 [0,1]L[0,1]^L の中で閉(定理 4.2[コンパクト性])。

各 l∈Ll \in L に対し gl:=πl∘k∘f∈Jg_l := \pi_l \circ k \circ f \in J であり、Fl:=πgl∣βX:βX→[0,1]F_l := \pi_{g_l}|_{\beta X} : \beta X \to [0,1] は連続で、Fl(ι(x))=gl(x)F_l(\iota(x)) = g_l(x)。F′:βX→[0,1]LF' : \beta X \to [0,1]^L を F′(p)=(Fl(p))l∈LF'(p) = (F_l(p))_{l \in L} とすると、各成分が連続だから F′F' は連続(積位相の普遍性(定理 3.4)[積位相・商位相と Tychonoff の定理])で、F′∘ι=k∘fF' \circ \iota = k \circ f。連続写像は閉包を閉包に写すので(定理 3.3[連続写像と同相写像] の (iv))、F′(βX)=F′(ι(X)‾)⊆F′(ι(X))‾=k(f(X))‾⊆k(K)F'(\beta X) = F'(\overline{\iota(X)}) \subseteq \overline{F'(\iota(X))} = \overline{k(f(X))} \subseteq k(K)。k:K→k(K)k : K \to k(K) は同相写像なので、F:=k−1∘F′:βX→KF := k^{-1} \circ F' : \beta X \to K は連続で F∘ι=fF \circ \iota = f。

一意性。 F,F′′:βX→KF, F'' : \beta X \to K がともに F∘ι=F′′∘ι=fF \circ \iota = F'' \circ \iota = f をみたすとする。F,F′′F, F'' は稠密集合 ι(X)\iota(X) 上で一致し、KK はハウスドルフだから 補題 5.1 により F=F′′F = F''。

普遍性から、βX\beta X は同相を除いて一意に決まります(演習 9.3)。コンパクトハウスドルフ空間 KK への写像だけが延長できるという意味で、「最大のコンパクト化」です。特に値域を [−M,M][-M, M] に取ると、有界な実数値連続関数がすべて延長できます。

系 5.3(有界連続関数の延長)✓

XX を Tychonoff 空間とする。有界連続関数全体を Cb(X)C_b(X) とすると、F↦F∘ιF \mapsto F \circ \iota は C(βX,R)C(\beta X, \mathbb{R}) から Cb(X)C_b(X) への全単射であり、上限ノルムを保つ:sup⁡p∈βX∣F(p)∣=sup⁡x∈X∣F(ι(x))∣\sup_{p \in \beta X} |F(p)| = \sup_{x \in X} |F(\iota(x))|。

証明(系 5.3)

F∈C(βX,R)F \in C(\beta X, \mathbb{R}) とする。βX\beta X はコンパクトで FF は連続だから、像 F(βX)F(\beta X) はコンパクト(定理 6.1[コンパクト性])であり有界。よって F∘ιF \circ \iota は有界連続で、写像は Cb(X)C_b(X) に値を持つ。

単射性。 F∘ι=F′′∘ιF \circ \iota = F'' \circ \iota なら、補題 5.1 により(ι(X)\iota(X) は稠密、R\mathbb{R} はハウスドルフ)F=F′′F = F''。

全射性。 f∈Cb(X)f \in C_b(X)、∣f∣≤M|f| \le M とする。K:=[−M,M]K := [-M, M] はコンパクトハウスドルフで、f:X→Kf : X \to K は連続だから、定理 5.2 により連続な F:βX→K⊆RF : \beta X \to K \subseteq \mathbb{R} で F∘ι=fF \circ \iota = f。

ノルム。 M:=sup⁡x∣F(ι(x))∣M := \sup_x |F(\iota(x))| とおく。ι(X)⊆βX\iota(X) \subseteq \beta X だから M≤sup⁡p∈βX∣F(p)∣M \le \sup_{p \in \beta X}|F(p)| は明らか。逆に、連続写像は閉包を閉包に写すので(定理 3.3[連続写像と同相写像] の (iv))F(βX)=F(ι(X)‾)⊆F(ι(X))‾⊆[−M,M]F(\beta X) = F(\overline{\iota(X)}) \subseteq \overline{F(\iota(X))} \subseteq [-M, M] だから ∣F∣≤M|F| \le M が βX\beta X 全体で成り立つ。

次の例は、R\mathbb{R} の両端に「無限遠」を 1 点ずつ足すだけでは、sin⁡\sin のように振動する関数の行き先が決まらないことを確かめるものです。

例 5.4(βR\beta\mathbb{R} は 2 点コンパクト化ではない)

R\mathbb{R} は Tychonoff 空間(距離空間)である。sin⁡:R→[−1,1]\sin : \mathbb{R} \to [-1,1] は有界連続関数だから、系 5.3 により βR\beta\mathbb{R} 全体に連続に延長される。一方、R\mathbb{R} を [−∞,+∞][-\infty, +\infty] に埋め込んだ 2 点コンパクト化への延長は存在しない:sin⁡(2πn)=0\sin(2\pi n) = 0、sin⁡(2πn+π/2)=1\sin(2\pi n + \pi/2) = 1 だから sin⁡x\sin x は x→+∞x \to +\infty で極限を持たないからである。したがって、包含 j:R→[−∞,+∞]j : \mathbb{R} \to [-\infty, +\infty] は 定理 5.2 の 2 の普遍性を満たさず、Θ∘ι=j\Theta \circ \iota = j となる同相写像 Θ:βR→[−∞,+∞]\Theta : \beta\mathbb{R} \to [-\infty, +\infty] は存在しない(あれば jj も普遍性を満たしてしまう。演習 9.3 と比べよ)。sin⁡\sin のように振動する関数が延長できるだけの「無限遠の点」が、βR\beta\mathbb{R} には 2 点よりはるかに多くある。

注意 5.5(自然数の Stone–Čech コンパクト化など)

離散空間 N\mathbb{N} の Stone–Čech コンパクト化 βN\beta\mathbb{N} の点は、N\mathbb{N} 上の超フィルターと 1 対 1 に対応することが知られています(積位相・商位相と Tychonoff の定理の超フィルターの記述と関連します)。その濃度が 22ℵ02^{2^{\aleph_0}} であることを示すには独立な集合族の構成が必要で、この記事の範囲を超えます(Engelking『General Topology』を参照)。また、Tychonoff 空間のコンパクト化には Stone–Čech のほかに、閉集合の超フィルターを点とする Wallman 型の構成があり、正規空間では βX\beta X と一致します。これらは以後の議論の根拠には使いません。

ウリゾーンの補題は、互いに素な閉集合 E,FE, F に対して EE 上で 00、FF 上で 11 となる関数を与えましたが、f−1(0)=Ef^{-1}(0) = E までは保証しませんでした(注意(注意 6.2)[分離公理と距離づけ可能性])。これが保証される空間を考えます。

定義 6.1(完全正規空間)↗

位相空間 XX が完全正規(perfectly normal)であるとは、XX が正規であり、かつ XX のすべての閉集合が GδG_\delta 集合であることをいう。

(正則・正規と同様、T1 は含めません。完全正規かつ T1 の空間では、特に T4 です。)

次の命題の証明の要点は、閉集合 FF が可算個の開集合の共通部分なら、各開集合の外で 1 になる関数を重みをつけて足し合わせることで、FF の上でだけ 0 になる一つの関数が作れる、という点です。

命題 6.2(完全正規空間の特徴づけ(Vedenissoff))✓

位相空間 XX について、次は同値である。

  1. XX は完全正規である。
  2. XX のすべての閉集合は零集合である。

また、距離空間はこれらを満たす。

証明(命題 6.2)

(2 ⇒\Rightarrow 1)XX のすべての閉集合が零集合とする。閉集合 F=f−1(0)F = f^{-1}(0)(ff は連続関数)は ⋂n∈Nf−1((−1n,1n))\bigcap_{n \in \mathbb{N}} f^{-1}\bigl((-\tfrac1n, \tfrac1n)\bigr) と書けて、各 f−1((−1n,1n))f^{-1}((-\tfrac1n, \tfrac1n)) は開集合だから GδG_\delta 集合である。残りは正規性である。E,FE, F を互いに素な閉集合とし、連続関数 f,g:X→Rf, g : X \to \mathbb{R} で E=f−1(0)E = f^{-1}(0)、F=g−1(0)F = g^{-1}(0) となるものを取る。∣f∣+∣g∣|f| + |g| はどの点でも 00 にならない(00 なら x∈E∩F=∅x \in E \cap F = \emptyset となる)から、h:=∣f∣/(∣f∣+∣g∣)h := |f| / (|f| + |g|) は XX 上の連続関数で、EE 上で 00、FF 上で 11(g=0g = 0 のとき h=∣f∣/∣f∣=1h = |f|/|f| = 1)。開集合 U:=h−1([0,12))U := h^{-1}([0, \tfrac12))、V:=h−1((12,1])V := h^{-1}((\tfrac12, 1]) は交わらず、E⊆UE \subseteq U、F⊆VF \subseteq V。

(1 ⇒\Rightarrow 2)FF を閉集合とし、F=⋂n∈NUnF = \bigcap_{n \in \mathbb{N}} U_n(UnU_n は開)と書く。F⊆UnF \subseteq U_n だから、FF と X∖UnX \setminus U_n は互いに素な閉集合である。XX は正規なので、ウリゾーンの補題(補題 6.1)[分離公理と距離づけ可能性] により連続関数 fn:X→[0,1]f_n : X \to [0,1] で FF 上 fn=0f_n = 0、X∖UnX \setminus U_n 上 fn=1f_n = 1 なるものがある。f:=∑n=1∞2−nfnf := \sum_{n=1}^{\infty} 2^{-n} f_n とおく。各項は 0≤2−nfn≤2−n0 \le 2^{-n} f_n \le 2^{-n} だから級数は各点で収束する。

ff は連続である。x0∈Xx_0 \in X と ε>0\varepsilon > 0 を取り、∑n>N2−n=2−N<ε/3\sum_{n > N} 2^{-n} = 2^{-N} < \varepsilon/3 なる NN を取る。有限和 SN:=∑n≤N2−nfnS_N := \sum_{n \le N} 2^{-n} f_n は連続だから、x0x_0 の開近傍 OO で、x∈Ox \in O ならば ∣SN(x)−SN(x0)∣<ε/3|S_N(x) - S_N(x_0)| < \varepsilon/3 となるものがある。0≤f−SN≤2−N0 \le f - S_N \le 2^{-N} だから、x∈Ox \in O で

∣f(x)−f(x0)∣≤∣f(x)−SN(x)∣+∣SN(x)−SN(x0)∣+∣SN(x0)−f(x0)∣<ε3+ε3+ε3=ε.|f(x) - f(x_0)| \le |f(x) - S_N(x)| + |S_N(x) - S_N(x_0)| + |S_N(x_0) - f(x_0)| < \tfrac{\varepsilon}{3} + \tfrac{\varepsilon}{3} + \tfrac{\varepsilon}{3} = \varepsilon .

最後に f−1(0)=Ff^{-1}(0) = F を示す。x∈Fx \in F なら全ての nn で fn(x)=0f_n(x) = 0 だから f(x)=0f(x) = 0。逆に f(x)=0f(x) = 0 なら、各項が非負だから全ての nn で fn(x)=0f_n(x) = 0 であり、X∖UnX \setminus U_n 上で fn=1f_n = 1 だったから x∈Unx \in U_n。よって x∈⋂nUn=Fx \in \bigcap_n U_n = F。

(距離空間)(X,d)(X, d) を距離空間、FF を閉集合とする。F=∅F = \emptyset なら定数関数 11 のゼロ点集合。F≠∅F \ne \emptyset なら、φ(x):=d(x,F)\varphi(x) := d(x, F) は連続で(補題 5.1[分離公理と距離づけ可能性] の 1)、φ(x)=0  ⟺  x∈F‾=F\varphi(x) = 0 \iff x \in \overline{F} = F(同 2)だから F=φ−1(0)F = \varphi^{-1}(0) は零集合。したがって 2 が成り立ち、上の(2 ⇒\Rightarrow 1)より距離空間は完全正規である。

例 6.3(コンパクトハウスドルフ空間でも完全正規とは限らない)

JJ を非可算集合とし、X:=[0,1]JX := [0,1]^J とする。XX はコンパクトハウスドルフ(定理 6.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理] と 命題 3.5[積位相・商位相と Tychonoff の定理])だから T4(定理 4.5[分離公理と距離づけ可能性])で、とくに正規である。しかし完全正規ではない。1 点集合 {p}\{p\}(p=(0)j∈Jp = (0)_{j \in J})は閉集合だが GδG_\delta ではない。実際、{p}=⋂nUn\{p\} = \bigcap_{n} U_n と開集合 Un∋pU_n \ni p で書けたとする。命題 3.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理] により、各 nn について、有限集合 In⊆JI_n \subseteq J と開集合 Oi⊆[0,1]O_i \subseteq [0,1](i∈Ini \in I_n)で p∈⋂i∈Inπi−1(Oi)⊆Unp \in \bigcap_{i \in I_n}\pi_i^{-1}(O_i) \subseteq U_n となるものがある。⋃nIn\bigcup_n I_n は可算だから、j0∉⋃nInj_0 \notin \bigcup_n I_n なる j0∈Jj_0 \in J が取れる。q:=pq := p の第 j0j_0 成分だけを 11 に取り替えた点とすると、qq は各 nn で ⋂i∈Inπi−1(Oi)\bigcap_{i \in I_n}\pi_i^{-1}(O_i) に属するから q∈⋂Un={p}q \in \bigcap U_n = \{p\}、これは q≠pq \ne p に反する。

したがって [0,1]J[0,1]^J(JJ 非可算)は正規だが完全正規でなく、とくに距離づけ可能でもない(距離空間は完全正規)。

次の概念は、後の章でパラコンパクト性や一様空間を扱うとき、また分離公理の変種(準正則性など)を調べるときの基本語彙になります。

定義 7.1(正則開集合・正則閉集合)↗

位相空間 XX の部分集合 UU が正則開集合(regular open)であるとは U=int⁡(U‾)U = \operatorname{int}(\overline{U}) が成り立つことをいう。部分集合 FF が正則閉集合(regular closed)であるとは F=int⁡F‾F = \overline{\operatorname{int} F} が成り立つことをいう。

命題 7.2(正則開集合の基本性質)✓

XX を位相空間とする。

  1. 任意の部分集合 A⊆XA \subseteq X に対し、int⁡(A‾)\operatorname{int}(\overline{A}) は正則開集合である。
  2. 正則開集合は開集合である。2 つの正則開集合の共通部分は正則開集合である。
  3. UU が正則開であることと、補集合 X∖UX \setminus U が正則閉であることは同値である。
証明(命題 7.2)

以下、内部・閉包の基本性質(定理 6.5[位相空間の定義と基本概念])を使う。内部の定義から、A⊆BA \subseteq B なら int⁡A⊆int⁡B\operatorname{int} A \subseteq \operatorname{int} B、閉包についても同様で、int⁡A⊆A⊆A‾\operatorname{int}A \subseteq A \subseteq \overline{A}。

  1. V:=int⁡(A‾)V := \operatorname{int}(\overline{A}) とおく。VV は開集合で V⊆A‾V \subseteq \overline{A} だから、V‾⊆A‾\overline{V} \subseteq \overline{A}(A‾\overline{A} は VV を含む閉集合であり、閉包は最小)。よって int⁡(V‾)⊆int⁡(A‾)=V\operatorname{int}(\overline{V}) \subseteq \operatorname{int}(\overline{A}) = V。逆に V⊆V‾V \subseteq \overline{V} で VV は開だから、V⊆int⁡(V‾)V \subseteq \operatorname{int}(\overline{V}) (内部は最大の開集合)。したがって V=int⁡(V‾)V = \operatorname{int}(\overline{V})。

  2. 正則開集合は U=int⁡(U‾)U = \operatorname{int}(\overline{U}) と書けて、内部は開だから開集合。U1,U2U_1, U_2 を正則開とする。U1∩U2⊆U1∩U2‾U_1 \cap U_2 \subseteq \overline{U_1 \cap U_2} であり、左辺は開だから U1∩U2⊆int⁡U1∩U2‾U_1 \cap U_2 \subseteq \operatorname{int}\overline{U_1 \cap U_2}。逆に U1∩U2‾⊆U1‾∩U2‾\overline{U_1 \cap U_2} \subseteq \overline{U_1} \cap \overline{U_2} より

int⁡U1∩U2‾⊆int⁡U1‾∩int⁡U2‾=U1∩U2.\operatorname{int}\overline{U_1 \cap U_2} \subseteq \operatorname{int}\overline{U_1} \cap \operatorname{int}\overline{U_2} = U_1 \cap U_2 .

よって U1∩U2U_1 \cap U_2 は正則開である。

  1. 定理 6.5[位相空間の定義と基本概念] の 5 により、X∖int⁡(U‾)=X∖U‾‾=int⁡(X∖U)‾X \setminus \operatorname{int}(\overline{U}) = \overline{X \setminus \overline{U}} = \overline{\operatorname{int}(X \setminus U)}(2 つ目の等号は X∖U‾=int⁡(X∖U)X \setminus \overline{U} = \operatorname{int}(X \setminus U))。UU が正則開であること、すなわち U=int⁡(U‾)U = \operatorname{int}(\overline{U}) は、両辺の補集合を取って X∖U=int⁡(X∖U)‾X \setminus U = \overline{\operatorname{int}(X \setminus U)}、すなわち X∖UX \setminus U が正則閉であることと同値。

例 7.3(正則開集合でない開集合)

R\mathbb{R} で U:=(0,1)∪(1,2)U := (0,1) \cup (1,2) は開集合だが、U‾=[0,2]\overline{U} = [0,2] なので int⁡U‾=(0,2)≠U\operatorname{int}\overline{U} = (0,2) \ne U。よって正則開でない。ところが (0,1)(0,1) と (1,2)(1,2) は正則開(int⁡(0,1)‾=int⁡[0,1]=(0,1)\operatorname{int}\overline{(0,1)} = \operatorname{int}[0,1] = (0,1))である。したがって、正則開集合の合併は一般に正則開ではなく、共通部分と違って合併では閉じていない。int⁡U‾\operatorname{int}\overline{U} を取るという操作が、合併を「穴埋め」して正則開にする役割を果たす。

01202Uint cl U
開集合 U = (0,1) ∪ (1,2)(上)と、閉包の内部 (0,2)(下)。白丸はその点を含まないことを表し、点 1 の穴が埋まる。

8. GδG_\delta 位相と実コンパクト空間

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最後に、この記事の主題から少し外れますが、Stone–Čech コンパクト化と関数環の理論でよく現れる 2 つの概念を、定義と例だけ述べます。

定義 8.1(GδG_\delta 位相・実コンパクト空間)↗

  1. XX を位相空間とする。GδG_\delta 集合の全体は有限個の共通部分で閉じる(⋂nUn\bigcap_n U_n と ⋂mVm\bigcap_m V_m の共通部分は ⋂n,m(Un∩Vm)\bigcap_{n,m} (U_n \cap V_m) で、これも可算個の開集合の共通部分)。したがって GδG_\delta 集合の全体は XX の開基をなし、XX に位相が定まる。これを XX の GδG_\delta 位相といい、この位相を入れた空間を XδX_\delta と書く。
  2. Tychonoff 空間 XX が実コンパクト(realcompact)であるとは、ある集合 JJ に対し、XX が RJ\mathbb{R}^J の閉部分空間と同相であることをいう。

例 8.2(GδG_\delta 位相と実コンパクト空間の例)

  1. 距離空間 XX では、{x}=⋂nB(x,1/n)\{x\} = \bigcap_{n} B(x, 1/n) は GδG_\delta 集合だから XδX_\delta では 1 点集合が開になり、XδX_\delta は離散空間である。
  2. RJ\mathbb{R}^J 自身は実コンパクトである。
  3. コンパクトな Tychonoff 空間 KK は実コンパクトである。定理 3.4 により KK は [0,1]J[0,1]^J の部分空間と同相で、像はコンパクトだからハウスドルフ空間 [0,1]J[0,1]^J の閉集合(定理 4.2[コンパクト性])。さらに [0,1]J=∏j[0,1][0,1]^J = \prod_{j} [0,1] は、[0,1][0,1] が R\mathbb{R} の閉集合だから RJ\mathbb{R}^J の閉集合(命題 3.5[積位相・商位相と Tychonoff の定理] の 2)。閉集合の閉集合は閉である。

実コンパクト空間は、C(X)C(X) の実極大イデアル(剰余環が R\mathbb{R} と同型になる極大イデアル)がすべて点に対応する(ある点で消える関数全体になる)空間として特徴づけられます(Gillman–Jerison)。極大イデアル全体がそうなるのは XX がコンパクトのときに限ります。この性質は βX\beta X の中での XX の位置づけに関わりますが、詳しくは立ち入りません。

演習 9.1易

位相空間 XX の 2 つの零集合の合併と共通部分は、どちらも零集合であることを示せ。

解答

A=f−1(0)A = f^{-1}(0)、B=g−1(0)B = g^{-1}(0)(f,g:X→Rf, g : X \to \mathbb{R} は連続)とする。積 fgfg は連続で、(fg)(x)=0  ⟺  f(x)=0(fg)(x) = 0 \iff f(x) = 0 または g(x)=0g(x) = 0 だから A∪B=(fg)−1(0)A \cup B = (fg)^{-1}(0)。また f2+g2f^2 + g^2 は連続で、f(x)2+g(x)2=0  ⟺  f(x)=g(x)=0f(x)^2 + g(x)^2 = 0 \iff f(x) = g(x) = 0 だから A∩B=(f2+g2)−1(0)A \cap B = (f^2 + g^2)^{-1}(0)。

演習 9.2標準

3 点集合 X={a,b,c}X = \{a, b, c\} に開集合の族 {∅,{a},{a,b},X}\{\emptyset, \{a\}, \{a, b\}, X\} を入れる(位相の公理を満たす)。XX が T0 であることを確かめ、定理 4.3 の埋め込み e:X→SJe : X \to \mathbb{S}^J を具体的に書き、像の位相を調べよ。

解答

aa と bb は {a}\{a\} で、bb と cc は {a,b}\{a, b\} で、aa と cc は {a}\{a\} で分離されるので T0。JJ の元のうち ∅,X\emptyset, X に対応する座標は定数 0,10, 1 で、実質的な座標は U1={a}U_1 = \{a\}、U2={a,b}U_2 = \{a, b\} の 2 つ。e(a)=(1,1)e(a) = (1, 1)、e(b)=(0,1)e(b) = (0, 1)、e(c)=(0,0)e(c) = (0, 0) である(座標は (χU1,χU2)(\chi_{U_1}, \chi_{U_2}))。像は S2\mathbb{S}^2 の 3 点で、開集合は π1−1({1})∩e(X)={e(a)}\pi_1^{-1}(\{1\}) \cap e(X) = \{e(a)\}、π2−1({1})∩e(X)={e(a),e(b)}\pi_2^{-1}(\{1\}) \cap e(X) = \{e(a), e(b)\} とその共通部分・合併から成り、XX の位相と一致する。

演習 9.3標準

(1) XX がコンパクトハウスドルフ空間なら、定理 5.2 の ι:X→βX\iota : X \to \beta X は同相写像であることを示せ。(2) YY をコンパクトハウスドルフ空間、j:X→Yj : X \to Y を連続写像で、j(X)j(X) が YY で稠密であり、定理 5.2 の 2 と同じ普遍性をみたすとする。このとき βX\beta X から YY への同相写像 Θ\Theta で Θ∘ι=j\Theta \circ \iota = j となるものが存在することを示せ。

解答

(1) XX はコンパクトハウスドルフだから普遍性を K=XK = X、f=idXf = \mathrm{id}_X に適用して、連続写像 F:βX→XF : \beta X \to X で F∘ι=idXF \circ \iota = \mathrm{id}_X を得る。ι\iota は単射なので、ι(X)\iota(X) は βX\beta X のコンパクト部分集合としてハウスドルフ空間 βX\beta X の閉集合であり(定理 4.2[コンパクト性])、稠密でもあるから ι(X)=βX\iota(X) = \beta X。よって ι\iota は全単射であり、連続でコンパクトからハウスドルフへの全単射だから同相(系 6.5[コンパクト性])。

(2) 普遍性から連続写像 F:βX→YF : \beta X \to Y(F∘ι=jF \circ \iota = j)と G:Y→βXG : Y \to \beta X(G∘j=ιG \circ j = \iota)がある。G∘FG \circ F と idβX\mathrm{id}_{\beta X} は稠密集合 ι(X)\iota(X) 上で G(F(ι(x)))=G(j(x))=ι(x)G(F(\iota(x))) = G(j(x)) = \iota(x) と一致し、βX\beta X はハウスドルフだから 補題 5.1 より G∘F=idG \circ F = \mathrm{id}。同様に F∘GF \circ G と idY\mathrm{id}_Y は稠密集合 j(X)j(X) 上で一致し、YY はハウスドルフだから F∘G=idYF \circ G = \mathrm{id}_Y。Θ:=F\Theta := F が求める同相写像である。

演習 9.4標準

R\mathbb{R} の開集合 U=(0,1)∪(1,2)∪(3,4)U = (0, 1) \cup (1, 2) \cup (3, 4) について int⁡U‾\operatorname{int}\overline{U} を求めよ。また R∖{0}\mathbb{R} \setminus \{0\} は正則開集合でないこと、および (0,1)∪(3,4)(0, 1) \cup (3, 4) は正則開集合であることを示せ。

解答

U‾=[0,2]∪[3,4]\overline{U} = [0, 2] \cup [3, 4] なので int⁡U‾=(0,2)∪(3,4)\operatorname{int}\overline{U} = (0, 2) \cup (3, 4)。UU と比べて点 11 の穴が埋められている。

R∖{0}\mathbb{R} \setminus \{0\} は開集合で、閉包は R\mathbb{R}(00 の任意の近傍が 00 以外の点を含むため)で、int⁡R=R≠R∖{0}\operatorname{int}\mathbb{R} = \mathbb{R} \ne \mathbb{R} \setminus \{0\} だから正則開でない。

W:=(0,1)∪(3,4)W := (0,1) \cup (3,4) の閉包は [0,1]∪[3,4][0,1] \cup [3,4] で、その内部は (0,1)∪(3,4)=W(0,1) \cup (3,4) = W である(0,1,3,40, 1, 3, 4 のどの近傍も [0,1]∪[3,4][0,1] \cup [3,4] に含まれない)。よって WW は正則開。

  • Ryszard Engelking, General Topology, Heldermann Verlag, 1989 — 第 2 章(立方体への埋め込み)・第 3 章(Čech–Stone コンパクト化)・第 1 章(完全正規空間)。
  • Stephen Willard, General Topology, Addison-Wesley, 1970(Dover 版 2004)— 完全正則空間・埋め込み・Stone–Čech コンパクト化の各章。
  • James R. Munkres, Topology, 2nd ed., Prentice Hall, 2000 — §33(完全正則性)、§34(埋め込み定理)、§38(Stone–Čech コンパクト化)。
  • Leonard Gillman and Meyer Jerison, Rings of Continuous Functions, Springer GTM 43, 1976 — 完全正則空間と C(X)C(X)、実コンパクト空間。
  • Edwin Hewitt, “On two problems of Urysohn”, Annals of Mathematics 47 (1946), 503–509 — T3 であって完全正則でない空間の例。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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