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ネットとフィルターによる収束:部分ネット・集積点・始位相での収束

対象読者: 本テーマ第 1〜6 章を学び、ネットと超フィルターの定義とコンパクト性の特徴づけを一度読んだ学部 3〜4 年の人。部分ネットは未習とします。

前提となる記事:積位相・商位相と Tychonoff の定理:ネットと超フィルターで見るコンパクト性、コンパクト性:有限部分被覆で捉える「有界閉集合」の一般化、分離公理と距離づけ可能性:T1 から T4 へ、そしてウリゾーンの距離化定理

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解析学では「収束する部分列を取り出す」という操作をよく使います。点列だけでは扱えない空間でも同じ操作ができるように、点列を一般化した道具が ネット と フィルター です。この記事では、その 2 つが同じ内容の別の書き方であることを確かめ、読み終えると、位相空間で「収束する部分列がある」「極限が 1 つに決まる」といった主張を、どちらの言葉でも述べて証明できるようになります。

  • ネットの部分ネットを、「添字を十分先へ送る写像」で定義します。部分列の一般化で、点列では取れない「部分」も含みます。ネットの集積点とは、まさにその点に収束する部分ネットが存在する点のことです。
  • フィルター基から生成されるフィルター、フィルターの細分、フィルターの集積点を定義します。フィルターの集積点とは、あるより細かいフィルターの極限になる点のことです。
  • ネットには尾のフィルターが、フィルターには付随するネットが対応し、収束・集積点・細分と部分ネットがきれいに翻訳されます。ネットとフィルターは同じ内容を二通りに書いたものです。
  • 閉包・連続性・ハウスドルフ性は、フィルターの言葉でも述べられます。とくに ハウスドルフ   ⟺  \iff すべてのネット(フィルター)の極限が高々 1 つ が成り立ちます。
  • 始位相では、ネット(フィルター)の収束は「各写像による像の収束」と同値です。積位相での座標ごとの収束はその特別な場合で、関数空間の点ごと収束の位相がこれに当たります。
  • 補可算位相の R\mathbb{R} では、点列の極限は一意なのに、相異なる 2 点に同時に収束するネットが存在します。点列の言葉ではハウスドルフ性は捉えきれません。

1. 動機:点列を一般化する理由と、2 つの方法

Section titled “1. 動機:点列を一般化する理由と、2 つの方法”

積位相・商位相と Tychonoff の定理では、点列で閉包・連続性・コンパクト性を調べられない空間が現れました。その対処として、添字集合 N\mathbb{N} を有向集合に取り替えたネットと、収束に必要な情報だけを集合族として取り出したフィルターを導入し、閉包・連続性・コンパクト性の特徴づけと Tychonoff の定理の証明までを行いました。ただし、そこでは部分ネットという言葉を定義せず、ネットとフィルターの対応も注意で触れるだけにしていました。

この記事は、その先を扱います。解析学で「収束する部分列を取る」という操作は、位相空間論では次のどちらかで表されます。

  1. ネットの言葉:集積点が存在する、収束する部分ネットが存在する。
  2. フィルターの言葉:与えられたフィルターより細かく、収束するフィルターが存在する。

2 つの言葉の対応を厳密に与えれば、証明の道具を状況に応じて選べます。たとえば、点ごと収束の位相のような始位相で収束を判定するときはネットが直観的で、超フィルターの議論(次の記事)ではフィルターが扱いやすい、という具合です。

また、この記事は点列では駄目だった場面の補強でもあります。補可算位相の R\mathbb{R} はハウスドルフでありませんが、点列に限れば極限は一意です(分離公理の例)。ここでは、ネットを使えば非ハウスドルフ性が極限の非一意性として見えることを、命題として証明します。

以後、有向集合は空でないものとします。有向集合の定義は既出(定義 5.1[積位相・商位相と Tychonoff の定理])ですが、空の添字集合を許すと、そのネットはどの点にも収束しないのに、空間のすべての点が(条件が空虚に満たされて)集積点になり、定理 4.2 が成り立たなくなるためです。

定義 2.1(部分ネット)↗

(xλ)λ∈Λ(x_\lambda)_{\lambda \in \Lambda} を位相空間 XX のネットとする。有向集合 MM と写像 φ:M→Λ\varphi : M \to \Lambda で、

∀λ0∈Λ, ∃μ0∈M,μ≥μ0  ⟹  φ(μ)≥λ0\forall \lambda_0 \in \Lambda,\ \exists \mu_0 \in M,\quad \mu \ge \mu_0 \implies \varphi(\mu) \ge \lambda_0

を満たすものに対し、ネット (xφ(μ))μ∈M(x_{\varphi(\mu)})_{\mu \in M} を (xλ)(x_\lambda) の部分ネットという。

条件は「μ\mu を十分先へ送れば φ(μ)\varphi(\mu) も任意に指定した位置より先に行く」と読めます。Λ=M=N\Lambda = M = \mathbb{N} で φ\varphi が狭義単調増加なら、部分ネットはふつうの部分列です。

注意 2.2(部分ネットの定義の流儀)

教科書によっては、φ\varphi に単調性(μ≤μ′\mu \le \mu' ならば φ(μ)≤φ(μ′)\varphi(\mu) \le \varphi(\mu'))と、像 φ(M)\varphi(M) が Λ\Lambda の中で共終(任意の λ0\lambda_0 に対し φ(μ)≥λ0\varphi(\mu) \ge \lambda_0 なる μ\mu がある)であることを課して部分ネットを定義します。この狭い定義の部分ネットは、上の定義でも部分ネットです。実際、λ0\lambda_0 に対し φ(μ0)≥λ0\varphi(\mu_0) \ge \lambda_0 なる μ0\mu_0 をとれば、μ≥μ0\mu \ge \mu_0 のとき φ(μ)≥φ(μ0)≥λ0\varphi(\mu) \ge \varphi(\mu_0) \ge \lambda_0 となるからです。逆は成り立ちません。たとえば φ:N→N\varphi : \mathbb{N} \to \mathbb{N} を φ(2k−1)=2k\varphi(2k - 1) = 2k、φ(2k)=2k−1\varphi(2k) = 2k - 1(k≥1k \ge 1)としたものは上の条件を満たしますが単調ではありません。この記事では、条件を確かめやすい上の広い定義を使います。この記事で部分ネットを構成する箇所(定理 4.2 と 定理 4.3 の 3)で作る φ\varphi はどれも単調で像が共終なので、これらの定理は狭い定義のもとでもそのまま成り立ちます。

3. フィルター基・細分・集積点

Section titled “3. フィルター基・細分・集積点”

フィルターの定義(定義 5.5[積位相・商位相と Tychonoff の定理])は集合族全体を指定するので、記述に冗長さがあります。小さな族で済ませる言い方がフィルター基です。

定義 3.1(フィルター基・生成されるフィルター・細分)↗

XX を集合とする。B⊆P(X)\mathcal{B} \subseteq \mathcal{P}(X) が XX 上のフィルター基であるとは、B≠∅\mathcal{B} \ne \emptyset、∅∉B\emptyset \notin \mathcal{B} で、任意の B1,B2∈BB_1, B_2 \in \mathcal{B} に対し B3⊆B1∩B2B_3 \subseteq B_1 \cap B_2 なる B3∈BB_3 \in \mathcal{B} が存在することをいう。このとき

F(B):={A⊆X:B⊆A (∃B∈B)}\mathcal{F}(\mathcal{B}) := \{ A \subseteq X : B \subseteq A\ (\exists B \in \mathcal{B}) \}

を B\mathcal{B} が生成するフィルターという。XX 上のフィルター F,G\mathcal{F}, \mathcal{G} が F⊆G\mathcal{F} \subseteq \mathcal{G} を満たすとき、G\mathcal{G} は F\mathcal{F} の細分である(G\mathcal{G} は F\mathcal{F} より細かい)という。

F(B)\mathcal{F}(\mathcal{B}) がフィルターであることは、定義から確かめられます。X∈F(B)X \in \mathcal{F}(\mathcal{B}) は B≠∅\mathcal{B} \ne \emptyset から、∅∉F(B)\emptyset \notin \mathcal{F}(\mathcal{B}) は ∅∉B\emptyset \notin \mathcal{B} と ∅⊇B\emptyset \supseteq B なら B=∅B = \emptyset であることから従います。A1⊇B1A_1 \supseteq B_1、A2⊇B2A_2 \supseteq B_2 なら A1∩A2⊇B3A_1 \cap A_2 \supseteq B_3(B3⊆B1∩B2B_3 \subseteq B_1 \cap B_2)となり、上位集合で閉じていることは明らかです。F(B)\mathcal{F}(\mathcal{B}) は B\mathcal{B} を含む最小のフィルターです。

位相空間 XX の点 xx の近傍全体 N(x)\mathcal{N}(x)(定義 6.1[位相空間の定義と基本概念])はフィルターです。X∈N(x)X \in \mathcal{N}(x) で、近傍は xx を含むので空集合は含まれません。V,V′∈N(x)V, V' \in \mathcal{N}(x) に対し、x∈U⊆Vx \in U \subseteq V、x∈U′⊆V′x \in U' \subseteq V' なる開集合 U,U′U, U' をとれば x∈U∩U′⊆V∩V′x \in U \cap U' \subseteq V \cap V' で U∩U′U \cap U' は開なので V∩V′∈N(x)V \cap V' \in \mathcal{N}(x)、上位集合で閉じていることは定義から明らかです。N(x)\mathcal{N}(x) は xx に収束する最小のフィルターで、近傍フィルターともいいます。

位相空間のフィルターについて、収束と並ぶもう 1 つの概念を定義します。

定義 3.2(フィルターの集積点)↗

XX を位相空間、F\mathcal{F} を XX 上のフィルターとする。点 x∈Xx \in X が F\mathcal{F} の集積点であるとは、すべての F∈FF \in \mathcal{F} について x∈F‾x \in \overline{F} となること、すなわち xx の任意の近傍 UU と任意の F∈FF \in \mathcal{F} に対し U∩F≠∅U \cap F \ne \emptyset となることをいう(同値性は 定理 6.5[位相空間の定義と基本概念] の 4)。

収束は「xx の近傍がすべて F\mathcal{F} に入る」で、集積点は「xx の近傍がすべての F∈FF \in \mathcal{F} と交わる」です。前者の方がずっと強い条件です。次の補題は、集積点の意味を細分で言い換えます。

補題 3.3(フィルターの収束・集積点・細分)✓

XX を位相空間、F\mathcal{F} を XX 上のフィルター、x∈Xx \in X とする。

  1. F→x\mathcal{F} \to x ならば、F\mathcal{F} の任意の細分も xx に収束し、xx は F\mathcal{F} の集積点である。
  2. xx が F\mathcal{F} の集積点であるための必要十分条件は、F\mathcal{F} の細分で xx に収束するものが存在することである。
証明(補題 3.3)
  1. N(x)⊆F⊆G\mathcal{N}(x) \subseteq \mathcal{F} \subseteq \mathcal{G} なので G→x\mathcal{G} \to x。U∈N(x)U \in \mathcal{N}(x) と F∈FF \in \mathcal{F} に対し、U,F∈FU, F \in \mathcal{F} だから U∩F∈FU \cap F \in \mathcal{F} で、フィルターは空集合を含まないので U∩F≠∅U \cap F \ne \emptyset。よって xx は集積点である。
  2. 十分性は 1 の後半と細分を使えばよい:G⊇F\mathcal{G} \supseteq \mathcal{F} が xx に収束するなら、1 により xx は G\mathcal{G} の集積点で、F⊆G\mathcal{F} \subseteq \mathcal{G} なので xx は F\mathcal{F} の集積点でもある(F∈FF \in \mathcal{F} なら F∈GF \in \mathcal{G} で x∈F‾x \in \overline{F})。必要性:xx が F\mathcal{F} の集積点とする。B:={U∩F:U∈N(x), F∈F}\mathcal{B} := \{ U \cap F : U \in \mathcal{N}(x),\ F \in \mathcal{F} \} は、各元が空でない(集積点の定義)。有限共通部分について、(U∩F)∩(U′∩F′)=(U∩U′)∩(F∩F′)∈B(U \cap F) \cap (U' \cap F') = (U \cap U') \cap (F \cap F') \in \mathcal{B}(N(x)\mathcal{N}(x) と F\mathcal{F} はどちらも有限共通部分で閉じている。N(x)\mathcal{N}(x) について閉じていることは近傍の定義から従う)。したがって B\mathcal{B} はフィルター基で、G:=F(B)\mathcal{G} := \mathcal{F}(\mathcal{B}) は F\mathcal{F} と N(x)\mathcal{N}(x) をともに含む(F=U∩FF = U \cap F は U=XU = X として、U=U∩XU = U \cap X は F=XF = X として B\mathcal{B} の元)。G\mathcal{G} は F\mathcal{F} の細分で xx に収束する。

最後に、順序集合上のフィルターの定義を述べておきます。集合上のフィルターは、その特別な場合として位置づけられます。

定義 3.4(順序集合上のフィルターとイデアル)↗

(P,≤)(P, \le) を半順序集合(定義 2.1[選択公理と Zorn の補題])とする。空でない部分集合 F⊆PF \subseteq P が PP のフィルターであるとは、(i) 上に閉じている(p∈Fp \in F、p≤qp \le q ならば q∈Fq \in F)、(ii) 下に有向である(p,q∈Fp, q \in F ならば r≤pr \le p かつ r≤qr \le q なる r∈Fr \in F がある)ことをいう。双対的に、空でない I⊆PI \subseteq P がイデアルであるとは、下に閉じていて上に有向であることをいう。

集合 XX 上のフィルター(定義 5.5[積位相・商位相と Tychonoff の定理])とは、冪集合の半順序集合 (P(X),⊆)(\mathcal{P}(X), \subseteq) のフィルターで ∅\emptyset を含まないもののことです。実際、F\mathcal{F} が上の (i), (ii) を満たし ∅∉F\emptyset \notin \mathcal{F} なら、F≠∅\mathcal{F} \ne \emptyset と (i) から X∈FX \in \mathcal{F}、(ii) から A,B∈FA, B \in \mathcal{F} に対し C⊆A∩BC \subseteq A \cap B なる C∈FC \in \mathcal{F} がとれて (i) より A∩B∈FA \cap B \in \mathcal{F} です。逆も明らかです。補集合をとる写像 A↦X∖AA \mapsto X \setminus A は (P(X),⊆)(\mathcal{P}(X), \subseteq) の順序を逆にするので、フィルターとイデアルを入れ替えます。有限部分集合全体は P(X)\mathcal{P}(X) のイデアルで、XX が無限集合のときその補集合族が補有限フィルターです。

ネットから、その「十分先で成り立つ集合」を集めたフィルターが作れます。たとえば点列 xn=1/nx_n = 1/n なら、「nn を十分大きくすれば xnx_n がずっと入っている集合」を全部集めたものが尾のフィルターです。逆にフィルターからは、「集合 FF とその中の点 aa の組」を添字にすると、ネットが作れます。

定義 4.1(尾のフィルターと付随するネット)↗

  1. x=(xλ)λ∈Λ\boldsymbol{x} = (x_\lambda)_{\lambda \in \Lambda} を集合 XX のネットとする。λ0∈Λ\lambda_0 \in \Lambda に対し Tλ0:={xλ:λ≥λ0}T_{\lambda_0} := \{ x_\lambda : \lambda \ge \lambda_0 \} とおき、
T(x):={A⊆X:∃λ0∈Λ, ∀λ≥λ0, xλ∈A}\mathcal{T}(\boldsymbol{x}) := \{ A \subseteq X : \exists \lambda_0 \in \Lambda,\ \forall \lambda \ge \lambda_0,\ x_\lambda \in A \}

を x\boldsymbol{x} の尾のフィルターという。{Tλ0}λ0\{T_{\lambda_0}\}_{\lambda_0} はこのフィルターのフィルター基である。 2. F\mathcal{F} を XX 上のフィルターとする。ΛF:={(a,F):F∈F, a∈F}\Lambda_{\mathcal{F}} := \{ (a, F) : F \in \mathcal{F},\ a \in F \} に、(a,F)≤(a′,F′)  ⟺  F⊇F′(a, F) \le (a', F') \iff F \supseteq F' で順序を入れる。この有向集合上のネット n(F):=(a)(a,F)∈ΛF\boldsymbol{n}(\mathcal{F}) := (a)_{(a, F) \in \Lambda_{\mathcal{F}}}((a,F)(a, F) に aa を対応させる)を F\mathcal{F} に付随するネットという。

2 のものが有向集合であること:X∈FX \in \mathcal{F} で ∅∉F\emptyset \notin \mathcal{F} なので X≠∅X \ne \emptyset で、ΛF\Lambda_{\mathcal{F}} は空でありません。反射律・推移律は包含の性質です。(a,F)(a, F)、(a′,F′)(a', F') に対し F∩F′∈FF \cap F' \in \mathcal{F} は空でないので a′′∈F∩F′a'' \in F \cap F' をとれば、(a′′,F∩F′)(a'', F \cap F') が両者の上界です。1 の T(x)\mathcal{T}(\boldsymbol{x}) がフィルターであることも同様です:Λ≠∅\Lambda \ne \emptyset なので空集合は含まれず、A,B∈T(x)A, B \in \mathcal{T}(\boldsymbol{x}) に対する λA,λB\lambda_A, \lambda_B の上界 λ0\lambda_0 をとれば λ≥λ0\lambda \ge \lambda_0 で xλ∈A∩Bx_\lambda \in A \cap B です。

まず、集積点と部分ネットの関係を示します。これはネットの側の主定理です。証明の方針は、集積点であることから「xx の近傍 UU と、UU に入る項の添字 λ\lambda」の組を新しい添字集合に取り、近傍が小さく、添字が先になるほど先の組とみなして、部分ネットを作るというものです。点列で xx にいくらでも近い項を順に拾って部分列を作る操作の一般化にあたります。

定理 4.2(集積点は収束する部分ネットの極限)✓

(xλ)λ∈Λ(x_\lambda)_{\lambda \in \Lambda} を位相空間 XX のネット、x∈Xx \in X とする。xx がこのネットの集積点であるための必要十分条件は、xx に収束する部分ネットが存在することである。

証明(定理 4.2)

(⇐\Leftarrow)(xφ(μ))μ∈M(x_{\varphi(\mu)})_{\mu \in M} を xx に収束する部分ネットとする。xx の近傍 UU と λ0∈Λ\lambda_0 \in \Lambda を任意にとる。定義 2.1 の条件から μ0\mu_0 で、μ≥μ0⇒φ(μ)≥λ0\mu \ge \mu_0 \Rightarrow \varphi(\mu) \ge \lambda_0 を満たすものがある。収束から μ1\mu_1 で、μ≥μ1⇒xφ(μ)∈U\mu \ge \mu_1 \Rightarrow x_{\varphi(\mu)} \in U を満たすものがある。MM は有向集合だから μ≥μ0,μ1\mu \ge \mu_0, \mu_1 なる μ\mu がとれ、λ:=φ(μ)\lambda := \varphi(\mu) は λ≥λ0\lambda \ge \lambda_0 かつ xλ∈Ux_\lambda \in U を満たす。よって xx は集積点である。

(⇒\Rightarrow)xx を集積点とし、

M:={(λ,U)∈Λ×N(x):xλ∈U}M := \{ (\lambda, U) \in \Lambda \times \mathcal{N}(x) : x_\lambda \in U \}

に、(λ,U)≤(λ′,U′)  ⟺  λ≤λ′(\lambda, U) \le (\lambda', U') \iff \lambda \le \lambda' かつ U⊇U′U \supseteq U' で順序を入れる。これは前順序で、次の 3 点が成り立つ。

  • M≠∅M \ne \emptyset:任意の λ\lambda に対し xλ∈X∈N(x)x_\lambda \in X \in \mathcal{N}(x) なので (λ,X)∈M(\lambda, X) \in M。
  • MM は有向:(λ1,U1),(λ2,U2)∈M(\lambda_1, U_1), (\lambda_2, U_2) \in M に対し、ν≥λ1,λ2\nu \ge \lambda_1, \lambda_2 をとり、U:=U1∩U2∈N(x)U := U_1 \cap U_2 \in \mathcal{N}(x) とする。集積点の定義から λ≥ν\lambda \ge \nu で xλ∈Ux_\lambda \in U なるものがあり、(λ,U)∈M(\lambda, U) \in M は両者の上界である。
  • φ(λ,U):=λ\varphi(\lambda, U) := \lambda は 定義 2.1 の条件を満たす:λ0\lambda_0 が与えられたとき、集積点の定義(近傍 XX に適用)から λ1≥λ0\lambda_1 \ge \lambda_0 をとり、μ0:=(λ1,X)\mu_0 := (\lambda_1, X) とおく。(λ,U)≥μ0(\lambda, U) \ge \mu_0 なら λ≥λ1≥λ0\lambda \ge \lambda_1 \ge \lambda_0。

部分ネット y(λ,U):=xλy_{(\lambda, U)} := x_\lambda が xx に収束することを示す。VV を xx の近傍とする。集積点の性質から λ1∈Λ\lambda_1 \in \Lambda で xλ1∈Vx_{\lambda_1} \in V なるものがあり、μ0:=(λ1,V)∈M\mu_0 := (\lambda_1, V) \in M。(λ,U)≥μ0(\lambda, U) \ge \mu_0 ならば xλ∈U⊆Vx_\lambda \in U \subseteq V。

次に、ネットとフィルターを行き来する定理を述べます。

定理 4.3(ネットとフィルターの対応)✓

XX を位相空間とする。

  1. ネット x=(xλ)\boldsymbol{x} = (x_\lambda) と点 x∈Xx \in X について、xλ→xx_\lambda \to x であることと T(x)→x\mathcal{T}(\boldsymbol{x}) \to x であることは同値である。また、xx が x\boldsymbol{x} の集積点であることと、xx が T(x)\mathcal{T}(\boldsymbol{x}) の集積点であることは同値である。
  2. フィルター F\mathcal{F} に付随するネットの尾のフィルターは F\mathcal{F} である:T(n(F))=F\mathcal{T}(\boldsymbol{n}(\mathcal{F})) = \mathcal{F}。したがって、F→x\mathcal{F} \to x であることと n(F)→x\boldsymbol{n}(\mathcal{F}) \to x であることは同値で、xx が F\mathcal{F} の集積点であることと n(F)\boldsymbol{n}(\mathcal{F}) の集積点であることは同値である。
  3. (yμ)(y_\mu) が x\boldsymbol{x} の部分ネットならば、T(y)\mathcal{T}(\boldsymbol{y}) は T(x)\mathcal{T}(\boldsymbol{x}) の細分である。逆に、T(x)\mathcal{T}(\boldsymbol{x}) の任意の細分 G\mathcal{G} に対し、x\boldsymbol{x} の部分ネット y\boldsymbol{y} で T(y)=G\mathcal{T}(\boldsymbol{y}) = \mathcal{G} となるものが存在する。
証明(定理 4.3)
  1. 収束:xλ→xx_\lambda \to x の定義は「xx の各近傍 UU に対しある λ0\lambda_0 で λ≥λ0⇒xλ∈U\lambda \ge \lambda_0 \Rightarrow x_\lambda \in U」で、これは U∈T(x)U \in \mathcal{T}(\boldsymbol{x})、すなわち N(x)⊆T(x)\mathcal{N}(x) \subseteq \mathcal{T}(\boldsymbol{x}) にほかならない。集積点:xx がネットの集積点とし、近傍 UU と A∈T(x)A \in \mathcal{T}(\boldsymbol{x}) をとる。λ0\lambda_0 を λ≥λ0⇒xλ∈A\lambda \ge \lambda_0 \Rightarrow x_\lambda \in A となるものとすると、集積点の定義から λ≥λ0\lambda \ge \lambda_0 で xλ∈Ux_\lambda \in U なるものがあり、xλ∈U∩Ax_\lambda \in U \cap A。よって xx は T(x)\mathcal{T}(\boldsymbol{x}) の集積点。逆に xx が T(x)\mathcal{T}(\boldsymbol{x}) の集積点とし、近傍 UU と λ0\lambda_0 をとる。Tλ0∈T(x)T_{\lambda_0} \in \mathcal{T}(\boldsymbol{x})(λ0\lambda_0 自身を取ればよい)なので U∩Tλ0≠∅U \cap T_{\lambda_0} \ne \emptyset、すなわち λ≥λ0\lambda \ge \lambda_0 で xλ∈Ux_\lambda \in U なるものがある。
  2. B∈FB \in \mathcal{F} とする。B≠∅B \ne \emptyset なので a0∈Ba_0 \in B をとり、(a0,B)∈ΛF(a_0, B) \in \Lambda_{\mathcal{F}}。(a,F)≥(a0,B)(a, F) \ge (a_0, B) なら F⊆BF \subseteq B で a∈F⊆Ba \in F \subseteq B だから、B∈T(n(F))B \in \mathcal{T}(\boldsymbol{n}(\mathcal{F}))。逆に B∈T(n(F))B \in \mathcal{T}(\boldsymbol{n}(\mathcal{F})) とし、(a0,F0)(a_0, F_0) を「(a,F)≥(a0,F0)⇒a∈B(a, F) \ge (a_0, F_0) \Rightarrow a \in B」を満たす添字とする。任意の a∈F0a \in F_0 に対し (a,F0)≥(a0,F0)(a, F_0) \ge (a_0, F_0) なので a∈Ba \in B。したがって F0⊆BF_0 \subseteq B で B∈FB \in \mathcal{F}。残りは 1 を n(F)\boldsymbol{n}(\mathcal{F}) に適用すればよい。
  3. (yμ)=(xφ(μ))(y_\mu) = (x_{\varphi(\mu)}) を部分ネットとし、A∈T(x)A \in \mathcal{T}(\boldsymbol{x}) をとる。λ0\lambda_0 を λ≥λ0⇒xλ∈A\lambda \ge \lambda_0 \Rightarrow x_\lambda \in A となるものとし、定義 2.1 の条件から μ0\mu_0 を μ≥μ0⇒φ(μ)≥λ0\mu \ge \mu_0 \Rightarrow \varphi(\mu) \ge \lambda_0 となるようにとる。μ≥μ0\mu \ge \mu_0 なら yμ=xφ(μ)∈Ay_\mu = x_{\varphi(\mu)} \in A なので、A∈T(y)A \in \mathcal{T}(\boldsymbol{y})。

逆を示す。G⊇T(x)\mathcal{G} \supseteq \mathcal{T}(\boldsymbol{x}) をフィルターとし、

M:={(λ,A)∈Λ×G:xλ∈A},(λ,A)≤(λ′,A′)  ⟺  λ≤λ′ かつ A⊇A′M := \{ (\lambda, A) \in \Lambda \times \mathcal{G} : x_\lambda \in A \},\qquad (\lambda, A) \le (\lambda', A') \iff \lambda \le \lambda'\text{ かつ }A \supseteq A'

とおき、φ(λ,A):=λ\varphi(\lambda, A) := \lambda、y(λ,A):=xλy_{(\lambda, A)} := x_\lambda とする。各 Tν∈T(x)⊆GT_\nu \in \mathcal{T}(\boldsymbol{x}) \subseteq \mathcal{G} であることに注意する。

  • MM は空でなく有向:A∈GA \in \mathcal{G} と ν∈Λ\nu \in \Lambda に対し A∩Tν∈GA \cap T_\nu \in \mathcal{G} は空でないから、λ≥ν\lambda \ge \nu で xλ∈Ax_\lambda \in A なるものがある(TνT_\nu の定義)。とくに A=XA = X で M≠∅M \ne \emptyset。(λ1,A1),(λ2,A2)∈M(\lambda_1, A_1), (\lambda_2, A_2) \in M に対し、ν≥λ1,λ2\nu \ge \lambda_1, \lambda_2 をとり、A:=A1∩A2∈GA := A_1 \cap A_2 \in \mathcal{G} について上の事実から λ≥ν\lambda \ge \nu で xλ∈Ax_\lambda \in A なるものがとれ、(λ,A)(\lambda, A) が上界。
  • φ\varphi は部分ネットの条件を満たす:λ0\lambda_0 に対し μ0:=(λ1,X)\mu_0 := (\lambda_1, X)(λ1≥λ0\lambda_1 \ge \lambda_0 は上の事実で A=XA = X として得る)をとれば、(λ,A)≥μ0(\lambda, A) \ge \mu_0 ならば λ≥λ1≥λ0\lambda \ge \lambda_1 \ge \lambda_0。

T(y)=G\mathcal{T}(\boldsymbol{y}) = \mathcal{G} を示す。B∈GB \in \mathcal{G} とする。上の事実から λ1\lambda_1 で xλ1∈Bx_{\lambda_1} \in B なるものがとれ、μ0:=(λ1,B)∈M\mu_0 := (\lambda_1, B) \in M。(λ,A)≥μ0(\lambda, A) \ge \mu_0 なら y(λ,A)=xλ∈A⊆By_{(\lambda, A)} = x_\lambda \in A \subseteq B。よって B∈T(y)B \in \mathcal{T}(\boldsymbol{y})。逆に B∈T(y)B \in \mathcal{T}(\boldsymbol{y}) とし、(λ0,A0)∈M(\lambda_0, A_0) \in M を「μ≥(λ0,A0)⇒yμ∈B\mu \ge (\lambda_0, A_0) \Rightarrow y_\mu \in B」となるものとする。λ≥λ0\lambda \ge \lambda_0 かつ xλ∈A0x_\lambda \in A_0 なる任意の λ\lambda について、(λ,A0)∈M(\lambda, A_0) \in M かつ (λ,A0)≥(λ0,A0)(\lambda, A_0) \ge (\lambda_0, A_0) なので xλ=y(λ,A0)∈Bx_\lambda = y_{(\lambda, A_0)} \in B。つまり A0∩Tλ0⊆BA_0 \cap T_{\lambda_0} \subseteq B である。A0,Tλ0∈GA_0, T_{\lambda_0} \in \mathcal{G} なので B∈GB \in \mathcal{G}。

この定理により、ネットの側の定義・主張はフィルターの側に、逆も同様に移せます。たとえば 定理 4.2 は 補題 3.3 の 2 に、T(x)\mathcal{T}(\boldsymbol{x}) の細分と部分ネットの対応を通して翻訳されます。次の図は対応の全体像です。

ネット収束・集積点・部分ネットフィルター収束・集積点・細分尾のフィルター T(x)付随するネット n(F)y が x の部分ネット ⇒ T(y) は T(x) の細分(逆も成り立つ)
ネットとフィルターの対応。上向きの矢印は尾のフィルター、下向きは付随するネット。フィルターの細分は部分ネットに、収束と集積点はそのまま対応する。

5. 閉包と連続性のフィルターによる特徴づけ

Section titled “5. 閉包と連続性のフィルターによる特徴づけ”

写像 f:X→Yf : X \to Y とフィルター F\mathcal{F} に対し、f∗F={B⊆Y:f−1(B)∈F}f_*\mathcal{F} = \{ B \subseteq Y : f^{-1}(B) \in \mathcal{F} \} は YY 上のフィルターでした(補題 6.1[積位相・商位相と Tychonoff の定理] の証明の前半)。

命題 5.1(閉包と連続性のフィルターによる特徴づけ)✓

X,YX, Y を位相空間とする。

  1. A⊆XA \subseteq X、x∈Xx \in X とする。x∈A‾x \in \overline{A} であるための必要十分条件は、A∈FA \in \mathcal{F} かつ F→x\mathcal{F} \to x なる XX 上のフィルター F\mathcal{F} が存在することである。
  2. 写像 f:X→Yf : X \to Y が x∈Xx \in X で連続であるための必要十分条件は、xx に収束する XX 上のすべてのフィルター F\mathcal{F} について f∗F→f(x)f_*\mathcal{F} \to f(x) となることである。
証明(命題 5.1)
  1. (⇒\Rightarrow)x∈A‾x \in \overline{A} なら、xx の任意の近傍 UU について U∩A≠∅U \cap A \ne \emptyset(定理 6.5[位相空間の定義と基本概念] の 4)。B:={U∩A:U∈N(x)}\mathcal{B} := \{ U \cap A : U \in \mathcal{N}(x) \} は、N(x)\mathcal{N}(x) が有限共通部分で閉じていることからフィルター基である。F:=F(B)\mathcal{F} := \mathcal{F}(\mathcal{B}) は A=X∩AA = X \cap A を含み、各近傍 U⊇U∩AU \supseteq U \cap A も含むので N(x)⊆F\mathcal{N}(x) \subseteq \mathcal{F}、すなわち F→x\mathcal{F} \to x。(⇐\Leftarrow)A∈F→xA \in \mathcal{F} \to x とする。任意の近傍 UU は F\mathcal{F} に属し、U∩A∈FU \cap A \in \mathcal{F} は空でない。よって x∈A‾x \in \overline{A}。
  2. 連続性は 定義 3.2[連続写像と同相写像] による。(⇒\Rightarrow)ff が xx で連続、F→x\mathcal{F} \to x、VV を f(x)f(x) の近傍とする。f(x)f(x) を含む開集合 V′⊆VV' \subseteq V に対し、xx を含む開集合 UU で f(U)⊆V′f(U) \subseteq V' なるものがある。U⊆f−1(V)U \subseteq f^{-1}(V) で U∈N(x)⊆FU \in \mathcal{N}(x) \subseteq \mathcal{F} だから f−1(V)∈Ff^{-1}(V) \in \mathcal{F}、すなわち V∈f∗FV \in f_*\mathcal{F}。(⇐\Leftarrow)F:=N(x)\mathcal{F} := \mathcal{N}(x) は xx に収束するフィルターである(フィルターであることは 定義 3.1 の直後で確かめた)。仮定から f∗N(x)→f(x)f_*\mathcal{N}(x) \to f(x)。f(x)f(x) を含む開集合 VV をとると、V∈f∗N(x)V \in f_*\mathcal{N}(x) なので U:=f−1(V)∈N(x)U := f^{-1}(V) \in \mathcal{N}(x)、つまり x∈U′⊆Ux \in U' \subseteq U なる開集合 U′U' があり、f(U′)⊆Vf(U') \subseteq V。よって ff は xx で連続。

6. ハウスドルフ性と極限の一意性

Section titled “6. ハウスドルフ性と極限の一意性”

収束先が一意であることは、解析学で lim⁡\lim という記号を使う前提でした。以下の定理は、その一意性が空間のどんな性質に対応するかを、ネットとフィルターで答えるものです。点列に限ると、これはハウスドルフ性と同値になりません(分離公理の補可算位相の例。この記事でも 命題 8.1 で証明し直します)。ネットまたはフィルターで言えば、同値になります。

定理 6.1(ハウスドルフ性と極限の一意性)✓

XX を位相空間とする。

  1. 相異なる x,y∈Xx, y \in X について、次の 3 条件は同値である。(i) xx の任意の近傍 UU と yy の任意の近傍 VV について U∩V≠∅U \cap V \ne \emptyset。(ii) xx と yy の両方に収束するネットが存在する。(iii) xx と yy の両方に収束するフィルターが存在する。
  2. 次の 3 条件は同値である。(a) XX はハウスドルフである。(b) XX の任意のネットは高々 1 つの点に収束する。(c) XX 上の任意のフィルターは高々 1 つの点に収束する。
証明(定理 6.1)
  1. (i ⇒\Rightarrow iii)B:={U∩V:U∈N(x), V∈N(y)}\mathcal{B} := \{ U \cap V : U \in \mathcal{N}(x),\ V \in \mathcal{N}(y) \} とおく。(i) より各元は空でなく、(U∩V)∩(U′∩V′)=(U∩U′)∩(V∩V′)∈B(U \cap V) \cap (U' \cap V') = (U \cap U') \cap (V \cap V') \in \mathcal{B}(N(x)\mathcal{N}(x)、N(y)\mathcal{N}(y) は有限共通部分で閉じている)なので、B\mathcal{B} はフィルター基である。F:=F(B)\mathcal{F} := \mathcal{F}(\mathcal{B}) は、U=U∩XU = U \cap X より N(x)\mathcal{N}(x) を、V=X∩VV = X \cap V より N(y)\mathcal{N}(y) を含む。すなわち F\mathcal{F} は xx と yy の両方に収束する。(iii ⇒\Rightarrow ii)フィルター F\mathcal{F} が両方に収束するなら、付随するネット n(F)\boldsymbol{n}(\mathcal{F}) も両方に収束する(定理 4.3 の 2)。(ii ⇒\Rightarrow i)ネット (xλ)(x_\lambda) が xx と yy に収束するとし、近傍 U∋xU \ni x、V∋yV \ni y をとる。λ1\lambda_1 を λ≥λ1⇒xλ∈U\lambda \ge \lambda_1 \Rightarrow x_\lambda \in U となるもの、λ2\lambda_2 を λ≥λ2⇒xλ∈V\lambda \ge \lambda_2 \Rightarrow x_\lambda \in V となるものとし、λ≥λ1,λ2\lambda \ge \lambda_1, \lambda_2 をとれば xλ∈U∩Vx_\lambda \in U \cap V。
  2. XX がハウスドルフであることは、相異なるどの x,yx, y についても交わらない近傍 U∋xU \ni x、V∋yV \ni y が存在すること、すなわち 1 の (i) が成り立たないことと同値である(交わらない近傍 U,VU, V はそれぞれ開集合 U′⊆UU' \subseteq U、V′⊆VV' \subseteq V を含み、これらも交わらず、逆に交わらない開集合は近傍である)。よって (a) は「相異なるどの x,yx, y についても (i) が成り立たない」と同値で、1 により「相異なるどの x,yx, y についても (ii) が成り立たない」すなわち (b) と同値であり、「どの x,yx, y についても (iii) が成り立たない」すなわち (c) と同値でもある。

この定理は、ハウスドルフ空間の議論で lim⁡\lim を使ってよい根拠(既出の点列版 定理 3.5[分離公理と距離づけ可能性])を、ネットとフィルターに拡張したものです。

始位相(定義 2.3[積位相・商位相と Tychonoff の定理])は、写像の族に対して連続性を保証する最も粗い位相です。そこでの収束は、各写像の像の収束と同値です。

定理 7.1(始位相での収束)✓

XX を集合、{(Yj,τj)}j∈J\{(Y_j, \tau_j)\}_{j \in J} を位相空間の族、fj:X→Yjf_j : X \to Y_j を写像とし、XX に始位相を入れる。x∈Xx \in X とする。

  1. XX のネット (xλ)(x_\lambda) が xx に収束するための必要十分条件は、すべての jj について fj(xλ)→fj(x)f_j(x_\lambda) \to f_j(x) となることである。
  2. XX 上のフィルター F\mathcal{F} が xx に収束するための必要十分条件は、すべての jj について (fj)∗F→fj(x)(f_j)_*\mathcal{F} \to f_j(x) となることである。
証明(定理 7.1)

S={fj−1(V):j∈J, V∈τj}\mathcal{S} = \{ f_j^{-1}(V) : j \in J,\ V \in \tau_j \} を準基とする。xx の近傍 NN は、xx を含む開集合 OO を含み、OO は S\mathcal{S} の元の有限共通部分(開基 B(S)\mathcal{B}(\mathcal{S}) の元、補題 2.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理] の 1)の合併だから、xx を含む有限共通部分 W=fj1−1(V1)∩⋯∩fjm−1(Vm)⊆NW = f_{j_1}^{-1}(V_1) \cap \cdots \cap f_{j_m}^{-1}(V_m) \subseteq N(Vk∈τjkV_k \in \tau_{j_k}、fjk(x)∈Vkf_{j_k}(x) \in V_k)が存在する。

  1. (⇒\Rightarrow)各 fjf_j は連続(定理 2.4[積位相・商位相と Tychonoff の定理] の 1)なので、定理 5.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理] の 2。(⇐\Leftarrow)NN と上の WW をとる。仮定から各 kk について λk\lambda_k で、λ≥λk⇒fjk(xλ)∈Vk\lambda \ge \lambda_k \Rightarrow f_{j_k}(x_\lambda) \in V_k を満たすものがある。有向集合なので全部の λk\lambda_k 以上の λ0\lambda_0 をとれる(m=0m = 0 のときは任意の λ0\lambda_0)。λ≥λ0\lambda \ge \lambda_0 なら xλ∈W⊆Nx_\lambda \in W \subseteq N。
  2. (⇒\Rightarrow)命題 5.1 の 2 を連続な fjf_j に適用する。(⇐\Leftarrow)NN と WW をとる。仮定から各 Vk∈(fjk)∗FV_k \in (f_{j_k})_*\mathcal{F}(VkV_k は fjk(x)f_{j_k}(x) の近傍)、すなわち fjk−1(Vk)∈Ff_{j_k}^{-1}(V_k) \in \mathcal{F}。フィルターは有限共通部分で閉じるので W∈FW \in \mathcal{F}(m=0m = 0 なら W=X∈FW = X \in \mathcal{F})、上位集合で閉じるので N∈FN \in \mathcal{F}。よって N(x)⊆F\mathcal{N}(x) \subseteq \mathcal{F}。

積位相は射影の族に関する始位相なので、定理 5.3[積位相・商位相と Tychonoff の定理] は 1 の特別な場合です。部分空間の位相は包含写像に関する始位相なので、1 を包含写像に適用すると、AA の点からなるネットが AA の点に収束することは、XX のネットとして収束することと同値です。

例 7.2(連続関数の空間は点ごと収束の位相で閉でない)

C:=C([0,1])C := C([0, 1]) を [0,1][0, 1] 上の実数値連続関数全体とし、R[0,1]\mathbb{R}^{[0,1]} に点ごと収束の位相(評価写像 f↦f(t)f \mapsto f(t) の族に関する始位相)を入れた空間の部分集合とみなします。fn(t)=tnf_n(t) = t^n は CC の列で、t∈[0,1)t \in [0, 1) では fn(t)→0f_n(t) \to 0、t=1t = 1 では fn(1)=1f_n(1) = 1 なので、極限は 1{1}\mathbf{1}_{\{1\}}(11 だけで 11、他で 00)です。定理 7.1 の 1 により fn→1{1}f_n \to \mathbf{1}_{\{1\}} ですから、1{1}\mathbf{1}_{\{1\}} は CC の閉包に入ります。しかし 1{1}\mathbf{1}_{\{1\}} は連続でないので CC に属さず、CC は閉集合ではありません。点ごと収束で連続関数の極限が連続とは限らない、という解析学の事実の位相的な言い換えです。

8. 補可算位相:点列では捉えられない非ハウスドルフ性

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最後に、点列とネットの違いを示す反例を、命題として証明します。R\mathbb{R} に補可算位相

τcc:={∅}∪{U⊆R:R∖U は高々可算}\tau_{\mathrm{cc}} := \{\emptyset\} \cup \{ U \subseteq \mathbb{R} : \mathbb{R} \setminus U\text{ は高々可算} \}

を入れます。これが位相であることは、開集合の任意合併の補集合は、空でない合併項の補集合に含まれるので高々可算で、有限共通部分の補集合は高々可算集合の有限合併なので高々可算であること、および ∅,R\emptyset, \mathbb{R} を含むことから従います。

命題 8.1(補可算位相では点列の極限は一意だがネットの極限は一意でない)✓

(R,τcc)(\mathbb{R}, \tau_{\mathrm{cc}}) について、次が成り立つ。

  1. 空でない開集合 U,VU, V はつねに交わる。
  2. 点列 (xn)(x_n) が xx に収束するならば、ある NN があって n≥Nn \ge N で xn=xx_n = x となる。とくに点列の極限は(あれば)一意である。
  3. 相異なる任意の 2 点 x,yx, y に対し、xx と yy の両方に収束するネットが存在する。とくに (R,τcc)(\mathbb{R}, \tau_{\mathrm{cc}}) はハウスドルフでない。
証明(命題 8.1)
  1. R∖(U∩V)=(R∖U)∪(R∖V)\mathbb{R} \setminus (U \cap V) = (\mathbb{R} \setminus U) \cup (\mathbb{R} \setminus V) は高々可算である。R\mathbb{R} は非可算(定理 6.3[濃度と無限])なので、U∩V≠∅U \cap V \ne \emptyset。
  2. C:={xn:xn≠x}C := \{ x_n : x_n \ne x \} は高々可算なので、U:=R∖CU := \mathbb{R} \setminus C は開集合で x∈Ux \in U。収束により NN で n≥N⇒xn∈Un \ge N \Rightarrow x_n \in U となるものがある。xn∉Cx_n \notin C すなわち xn=xx_n = x である。2 つの極限 x,yx, y があれば、十分大きい nn で xn=xx_n = x かつ xn=yx_n = y なので x=yx = y。
  3. x≠yx \ne y とし、xx の近傍 UU と yy の近傍 VV をとる。U,VU, V は空でない開集合 U′∋xU' \ni x、V′∋yV' \ni y を含み、1 より U′∩V′≠∅U' \cap V' \ne \emptyset なので U∩V≠∅U \cap V \ne \emptyset。したがって 定理 6.1 の 1 の (i) が成り立ち、(ii) により両方に収束するネットがある。ハウスドルフでないことは、同定理の 2 の (a) と (b) の同値による。

3 で作るネットは、具体的には 定理 6.1 の 1 の証明にあるとおり、N(x)\mathcal{N}(x) の元と N(y)\mathcal{N}(y) の元の共通部分から生成したフィルターに付随するネットです。

2 は、補可算位相では点列が「最終的に定数」になるものしか収束しないことを示しています。点列は、位相の大きさ(非可算性)を見るには短すぎるのです。ネットは、N(x)×N(y)\mathcal{N}(x) \times \mathcal{N}(y) のような非可算な有向集合で添字づけられるので、その差が見えます。

例 9.1(点列の尾のフィルターと Fréchet フィルター)

点列 (xn)n∈N(x_n)_{n \in \mathbb{N}} の尾のフィルター T(x)\mathcal{T}(\boldsymbol{x}) は、N\mathbb{N} の補有限集合全体(Fréchet フィルター)を写像 n↦xnn \mapsto x_n で送った像です。実際 A∈T(x)A \in \mathcal{T}(\boldsymbol{x}) は「ある NN で n≥N⇒xn∈An \ge N \Rightarrow x_n \in A」、すなわち {n:xn∉A}\{n : x_n \notin A\} が有限であることだからです。恒等写像 xn=nx_n = n の場合は Fréchet フィルターそのものに一致します。このフィルターは超フィルターではありません。偶数全体 EE も、その補集合(奇数全体)も補有限ではないので、どちらもフィルターに属さず、補題 5.7[積位相・商位相と Tychonoff の定理] の条件が成り立たないからです。

例 9.2(集積点だが極限でない点)

X=RX = \mathbb{R}、xn=(−1)nx_n = (-1)^n のとき、11 はこの点列の集積点です(偶数番の項がすべて 11)が、11 に収束はしません(奇数番の項は −1-1 で、(1/2,3/2)(1/2, 3/2) に入らない)。定理 4.2 により 11 に収束する部分ネットがあり、実際に部分列 x2m=1x_{2m} = 1 がそうです。尾のフィルターは 11 に収束しませんが、補題 3.3 の 2 により、それを細分した 11 に収束するフィルターが存在します(部分列 (x2m)(x_{2m}) の尾のフィルターが、定理 4.3 の 3 により細分になっています)。−1-1 についても同様で、この点列の集積点はちょうど ±1\pm 1 です。

演習 10.1易

(xλ)λ∈Λ(x_\lambda)_{\lambda \in \Lambda} をネット、Λ′⊆Λ\Lambda' \subseteq \Lambda を共終な部分集合(任意の λ∈Λ\lambda \in \Lambda に対し λ≤λ′\lambda \le \lambda' なる λ′∈Λ′\lambda' \in \Lambda' がある)とする。Λ′\Lambda' に Λ\Lambda の順序を制限したものが有向集合であり、制限 (xλ)λ∈Λ′(x_\lambda)_{\lambda \in \Lambda'} が部分ネットであることを示せ。

解答

Λ′≠∅\Lambda' \ne \emptyset は共終性から従う。λ1,λ2∈Λ′\lambda_1, \lambda_2 \in \Lambda' に対し、Λ\Lambda で上界 ν\nu をとり、共終性から λ′∈Λ′\lambda' \in \Lambda' で λ′≥ν\lambda' \ge \nu なるものをとれば、λ′\lambda' は λ1,λ2\lambda_1, \lambda_2 の Λ′\Lambda' での上界である。包含写像 φ:Λ′→Λ\varphi : \Lambda' \to \Lambda について、λ0∈Λ\lambda_0 \in \Lambda に対し共終性から μ0∈Λ′\mu_0 \in \Lambda' で μ0≥λ0\mu_0 \ge \lambda_0 をとれば、μ≥μ0\mu \ge \mu_0 なら φ(μ)=μ≥μ0≥λ0\varphi(\mu) = \mu \ge \mu_0 \ge \lambda_0。よって 定義 2.1 の条件が満たされる。

演習 10.2標準

ネット (xλ)(x_\lambda) が xx に収束するならば、その任意の部分ネットも xx に収束する。逆に、(xλ)(x_\lambda) の任意の部分ネットが xx に収束する部分ネットをさらにもつならば、(xλ)(x_\lambda) は xx に収束する。これらを示せ。

解答

前半:定理 4.3 の 3 により T(y)⊇T(x)⊇N(x)\mathcal{T}(\boldsymbol{y}) \supseteq \mathcal{T}(\boldsymbol{x}) \supseteq \mathcal{N}(x) なので、部分ネット y\boldsymbol{y} も xx に収束する(定理 4.3 の 1)。後半:xλ↛xx_\lambda \not\to x と仮定する。xx の近傍 UU で、どの λ0\lambda_0 に対しても λ≥λ0\lambda \ge \lambda_0 かつ xλ∉Ux_\lambda \notin U なる λ\lambda があるものが存在する。Λ′:={λ:xλ∉U}\Lambda' := \{ \lambda : x_\lambda \notin U \} は共終なので、演習 10.1 により制限 (xλ)λ∈Λ′(x_\lambda)_{\lambda \in \Lambda'} は部分ネットである。この部分ネットのどの部分ネットも、すべての項が UU の外にあるので、xx には収束できない。これは仮定に反する。

演習 10.3標準

a∈Ra \in \mathbb{R} とし、B:={(a,a+ε):ε>0}\mathcal{B} := \{ (a, a + \varepsilon) : \varepsilon > 0 \} はフィルター基であることを示せ。生成されるフィルター F\mathcal{F} が aa に収束することを示し、関数 f:R→Rf : \mathbb{R} \to \mathbb{R} の右極限 lim⁡x→a+f(x)=L\lim_{x \to a+} f(x) = L が f∗F→Lf_*\mathcal{F} \to L と同値であることを示せ。

解答

(a,a+ε)∩(a,a+ε′)=(a,a+min⁡(ε,ε′))(a, a + \varepsilon) \cap (a, a + \varepsilon') = (a, a + \min(\varepsilon, \varepsilon')) で、各元は空でないので B\mathcal{B} はフィルター基。aa の近傍 NN は、ある δ>0\delta > 0 で (a−δ,a+δ)⊇(a,a+δ)(a - \delta, a + \delta) \supseteq (a, a + \delta) を含む。F\mathcal{F} は B\mathcal{B} の元を含む集合全体なので N∈FN \in \mathcal{F}。よって N(a)⊆F\mathcal{N}(a) \subseteq \mathcal{F}、すなわち F→a\mathcal{F} \to a。右極限:lim⁡x→a+f(x)=L\lim_{x \to a+} f(x) = L とは、任意の η>0\eta > 0 に対して ε>0\varepsilon > 0 があり x∈(a,a+ε)⇒∣f(x)−L∣<ηx \in (a, a + \varepsilon) \Rightarrow |f(x) - L| < \eta、すなわち f−1((L−η,L+η))⊇(a,a+ε)f^{-1}((L - \eta, L + \eta)) \supseteq (a, a + \varepsilon) ということで、f−1((L−η,L+η))∈Ff^{-1}((L-\eta, L+\eta)) \in \mathcal{F}、すなわち (L−η,L+η)∈f∗F(L - \eta, L + \eta) \in f_*\mathcal{F} と同値である。LL の近傍はどれも (L−η,L+η)(L - \eta, L + \eta) を含むので、これは f∗F→Lf_*\mathcal{F} \to L と同値。

  • J. L. Kelley, General Topology, Van Nostrand, 1955 — Chapter 2(Moore–Smith 収束)。ネットと部分ネット、ネットとフィルターの対応の古典的な扱い。
  • S. Willard, General Topology, Addison-Wesley, 1970 — ネットとフィルターを扱う章。部分ネットの定義(本稿の広い定義)と、集積点・フィルターの対応。
  • R. Engelking, General Topology, Heldermann, 1989 — Chapter 1。収束・ネット・フィルターの扱い。
  • N. Bourbaki, Topologie générale, Chap. I — フィルターによる収束の体系的な扱い。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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