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次元論の入口:被覆次元と帰納的次元、Cantor 集合、dim I^n = n

対象読者: 本テーマ第 1〜5 章と積位相を学び、胞体ホモロジーと Brouwer の不動点定理の主張を知る学部 4 年から修士程度の人。次元論は未習とします。

前提となる記事:コンパクト性:有限部分被覆で捉える「有界閉集合」の一般化、連結性:「ひとつながり」を開集合で測り、中間値の定理を位相の言葉で証明する、積位相・商位相と Tychonoff の定理:ネットと超フィルターで見るコンパクト性、胞体ホモロジーと写像度:CW 複体で計算し、Brouwer の不動点定理と Lefschetz の不動点定理を証明する

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直線は 1 次元、平面は 2 次元と言いますが、これは座標の個数で数えた値です。伸び縮みさせても(連続に変形しても)変わらない性質だけを使って、「次元」をきちんと測れるでしょうか。この記事では、図形を小さな開集合で覆ったときに、1 点に何枚が重なってしまうかを数えるという方法で、これに答えます。読み終えると、立方体の次元がちょうど nn であること、したがって Rm\mathbb{R}^m と Rn\mathbb{R}^n が m≠nm\ne n なら同相でないことを、位相の言葉で説明できるようになります。

  • 位相空間の「次元」は、座標の個数ではなく位相だけで測ります。この記事で扱うのは 2 種類です。被覆次元 dim⁡\dim は、有限開被覆をどれだけ「薄く」(各点が高々 n+1n+1 個の集合にしか入らないように)細分できるかで測り、帰納的次元 ind⁡\operatorname{ind}, Ind⁡\operatorname{Ind} は、「境界の次元は 1 つ小さい」という再帰で測ります。
  • 次元 00 の空間は、開かつ閉な集合からなる開基をもつ空間です。超距離空間、Cantor 集合、Q\mathbb{Q} と無理数全体がその例で、Q\mathbb{Q} のように 0 次元でも離散でない空間があります。
  • RN\mathbb{R}^N のコンパクト部分集合は dim⁡≤N\dim \le N です。証明は、RN\mathbb{R}^N の細かい開被覆で「各点が高々 N+1N+1 個にしか入らない」ものを、格子の面ごとに N+1N+1 種類の互いに素な開集合の族として明示的に作ります。
  • 下からの評価 dim⁡In≥n\dim I^n \ge n は、Brouwer の不動点定理から出る「立方体の nn 組の対辺をそれぞれ分ける閉集合は共通点をもつ」という定理に帰着します。したがって dim⁡In=n\dim I^n = n(Lebesgue の被覆定理)で、Rm\mathbb{R}^m と Rn\mathbb{R}^n は m≠nm\ne n なら同相でないことの別証になります。
  • Menger–Nöbeling の埋め込み定理(dim⁡X≤m\dim X\le m のコンパクト距離空間は R2m+1\mathbb{R}^{2m+1} に埋め込める)は、C(X,R2m+1)C(X,\mathbb{R}^{2m+1}) の Baire 性と、「一般の位置」にある点を使った近似で証明します。
  • この記事は代数的位相幾何学の Brouwer の不動点定理を使います。学習順としては逆向きですが、その定理の証明は位相空間論の新しい結果を使っていないので、論理に循環はありません。

1. 動機:「次元」を位相だけで測れるか

Section titled “1. 動機:「次元」を位相だけで測れるか”

直線は 1 次元、平面は 2 次元と言いますが、これは座標の個数で測った値です。ところが R\mathbb{R} と R2\mathbb{R}^2 の間には、集合としては全単射が(Cantor により)、連続な全射が(Peano 曲線、すなわち正方形全体を通り尽くす連続曲線により)存在します。そのため、次元が位相的な性質であること、すなわち同相写像で不変であることは、自明ではありません。R\mathbb{R} と R2\mathbb{R}^2 が同相でないことは 連結性 の「除点」の議論で示せましたが、R2\mathbb{R}^2 と R3\mathbb{R}^3 に同じ手は効きません。

次元論はこれに答えるために作られました。Lebesgue は、正方形をレンガ(細かい閉集合)で敷き詰めるとき、レンガが小さければ必ず 3 枚が 1 点で出会うこと、一方 3 枚で出会わないように敷き詰めることは線分では可能なことに注目しました。この「何枚のレンガが 1 点で出会うか」を精密にしたものが被覆次元です。もう 1 つの流れは Menger と Urysohn による帰納的な定義で、「点を囲む小さな近傍の境界は、元の空間より 1 つ次元が低い」という考えに基づきます。

この記事では、まず 2 つの次元を定義し、次元 00 の空間(超距離空間・Cantor 集合・Q\mathbb{Q})を調べます。続いて RN\mathbb{R}^N のコンパクト集合の dim⁡≤N\dim\le N を示し、立方体の次元が nn であることを Brouwer の不動点定理から導き、最後にコンパクト距離空間を低い次元のユークリッド空間に埋め込む Menger–Nöbeling の定理を証明します。

位相空間 XX の部分集合の族 V={Vj}j∈J\mathcal{V}=\{V_j\}_{j\in J}(添字つきの族)が位数 nn 以下であるとは、XX のどの点も、相異なる添字をもつ高々 n+1n+1 個の VjV_j にしか属さないことをいいます。同じことですが、添字が相異なる n+2n+2 個の VjV_j の共通部分は空です。開被覆 V\mathcal{V} が U\mathcal{U} の細分であるとは、各 V∈VV\in\mathcal{V} がある U∈UU\in\mathcal{U} に含まれることです。

定義 2.1(被覆次元)↗

位相空間 XX の被覆次元が nn 以下であるとは、XX の任意の有限開被覆が、位数 nn 以下の有限開被覆による細分をもつことをいい、dim⁡X≤n\dim X\le n と書きます。dim⁡X≤n\dim X\le n となる最小の整数 n≥−1n\ge -1 を dim⁡X\dim X とします(そのような nn がなければ dim⁡X=∞\dim X=\infty)。dim⁡X=−1\dim X=-1 であることと X=∅X=\emptyset であることは同値です。

dim⁡X≤0\dim X\le 0 は「任意の有限開被覆が、互いに交わらない開集合からなる有限細分をもつ」ことです。連結な空間では、XX 自身を元に含まない有限開被覆に対してこれは不可能です(空でない元を 2 個以上もつ互いに交わらない開被覆は、1 個の元と残りの合併とで XX を分けてしまいます)。離散空間では、有限開被覆 {U1,…,Uk}\{U_1,\dots,U_k\} を Gj=Uj∖(U1∪⋯∪Uj−1)G_j=U_j\setminus(U_1\cup\cdots\cup U_{j-1})(すべての部分集合が開)で細分できるので dim⁡X≤0\dim X\le0 です。

コンパクト距離空間では、被覆次元は「十分小さい開被覆」で判定できます。集合 AA の直径を diam⁡A=sup⁡{d(x,y):x,y∈A}\operatorname{diam}A=\sup\{d(x,y):x,y\in A\} とします。

補題 2.2(コンパクト距離空間の被覆次元の判定)✓

(X,d)(X,d) をコンパクト距離空間、n≥−1n\ge -1 とします。このとき dim⁡X≤n\dim X\le n であることと、次の条件は同値です。

  • 任意の ε>0\varepsilon>0 に対し、位数 nn 以下で、すべての元の直径が ε\varepsilon 未満である有限開被覆が存在する。
証明(補題 2.2)

(⇒\Rightarrow) ε>0\varepsilon>0 とする。開球の族 {B(x,ε/3)}x∈X\{B(x,\varepsilon/3)\}_{x\in X} は XX の開被覆で、XX はコンパクトなので(定義 3.2[コンパクト性])有限部分被覆 U\mathcal{U} がある。dim⁡X≤n\dim X\le n より、U\mathcal{U} の位数 nn 以下の有限開細分 V\mathcal{V} がとれる。V\mathcal{V} の各元はある球 B(x,ε/3)B(x,\varepsilon/3) に含まれるので、直径は 2ε/3<ε2\varepsilon/3<\varepsilon 以下である。

(⇐\Leftarrow) U\mathcal{U} を XX の有限開被覆とする。コンパクト距離空間は点列コンパクトなので(定理 4.3[距離空間])、補題 4.2[距離空間] のルベーグ数 δ>0\delta>0 がとれる。仮定を ε=δ\varepsilon=\delta に使うと、位数 nn 以下で直径が δ\delta 未満の有限開被覆 V\mathcal{V} がある。直径が δ\delta 未満の集合はある U∈UU\in\mathcal{U} に含まれるので、V\mathcal{V} は U\mathcal{U} の細分である。

次の補題は、閉部分空間に移ると次元が上がらないことを述べます。後で円周の次元を決めるために使います。

補題 2.3(閉部分空間の被覆次元)✓

XX を位相空間、F⊆XF\subseteq X を閉集合とすると、dim⁡F≤dim⁡X\dim F\le\dim X です。

証明(補題 2.3)

dim⁡X≤n\dim X\le n とする(dim⁡X=∞\dim X=\infty なら示すことはない)。{W1,…,Wk}\{W_1,\dots,W_k\} を FF の有限開被覆とし、XX の開集合 GjG_j で Wj=Gj∩FW_j=G_j\cap F となるものをとる。{G1,…,Gk, X∖F}\{G_1,\dots,G_k,\,X\setminus F\} は XX の有限開被覆なので、位数 nn 以下の有限開細分 V\mathcal{V} がある。V\mathcal{V} の元のうち FF と交わるものは、X∖FX\setminus F には含まれないので、ある GjG_j に含まれる。そこで {V∩F:V∈V, V∩F≠∅}\{V\cap F: V\in\mathcal{V},\ V\cap F\ne\emptyset\} は FF の有限開被覆で、各元は Gj∩F=WjG_j\cap F=W_j に含まれ、位数は nn 以下である。よって dim⁡F≤n\dim F\le n。

定義 3.1(小さい帰納的次元・大きい帰納的次元)↗

位相空間 XX に対し、ind⁡X\operatorname{ind}X と Ind⁡X\operatorname{Ind}X を次のように帰納的に定めます。ただし ∂V\partial V は VV の XX における境界を部分空間として見たものです。

  • ind⁡X=−1\operatorname{ind}X=-1、Ind⁡X=−1\operatorname{Ind}X=-1 であることは、それぞれ X=∅X=\emptyset と同値と定める。
  • n≥0n\ge0 について、ind⁡X≤n\operatorname{ind}X\le n であるとは、任意の点 x∈Xx\in X と xx の任意の開近傍 UU に対し、開集合 VV で x∈V⊆Ux\in V\subseteq U かつ ind⁡∂V≤n−1\operatorname{ind}\partial V\le n-1 となるものが存在することをいう。
  • n≥0n\ge0 について、Ind⁡X≤n\operatorname{Ind}X\le n であるとは、任意の閉集合 FF とそれを含む任意の開集合 UU に対し、開集合 VV で F⊆V⊆UF\subseteq V\subseteq U かつ Ind⁡∂V≤n−1\operatorname{Ind}\partial V\le n-1 となるものが存在することをいう。

ind⁡X≤n\operatorname{ind}X\le n となる最小の nn を ind⁡X\operatorname{ind}X とします(Ind⁡X\operatorname{Ind}X も同様)。

ind⁡\operatorname{ind} は点と近傍、Ind⁡\operatorname{Ind} は閉集合とその近傍に対する条件で、Ind⁡\operatorname{Ind} のほうが強い条件に見えます。実際、次の命題の (4) のとおりです。

定義のイメージをつかむために線分を考えます。線分の内部の点のまわりの小さな開区間の境界は 2 点だけで、有限個の点は「次元の低い」空間です。この「境界の次元が 1 つ低い」ことが、線分は 1 次元という感覚に対応します。

次の命題の (2) は、有限開被覆から互いに交わらない開集合の細分を作る部分が少し込み入っています。方針は、開かつ閉な近傍で空間を可算個に覆い、それを 1 番目から順に取りながら、前に取った分を引いていくというものです。開かつ閉な集合を引いても開集合のままで、引いた後の破片は互いに交わりません。各破片は、含まれる UjU_j のうち番号が最小のものに割り当てます。

命題 3.2(0 次元空間の特徴づけ)✓

XX を位相空間とします。

  1. X≠∅X\ne\emptyset のとき、ind⁡X=0\operatorname{ind}X=0 であることは、XX が開かつ閉な集合からなる開基をもつことと同値である。
  2. XX が Lindelöf(定義 7.1[積位相・商位相と Tychonoff の定理])で、ind⁡X≤0\operatorname{ind}X\le0 ならば、dim⁡X≤0\dim X\le0 である。
  3. XX が T1T_1 で ind⁡X≤0\operatorname{ind}X\le0 ならば、XX は正則(定義 4.1[分離公理と距離づけ可能性])かつ全不連結(定義 9.9[連結性])である。
  4. XX が T1T_1 空間ならば、ind⁡X≤Ind⁡X\operatorname{ind}X\le\operatorname{Ind}X である。
証明(命題 3.2)

(1) ind⁡X≤0\operatorname{ind}X\le0 の定義は、「任意の xx と開近傍 UU に対し、開集合 VV で x∈V⊆Ux\in V\subseteq U かつ ind⁡∂V≤−1\operatorname{ind}\partial V\le-1 すなわち ∂V=∅\partial V=\emptyset となるものがある」です。開集合 VV について ∂V=V‾∖V=∅\partial V=\overline{V}\setminus V=\emptyset は VV が閉でもあることと同値です(定理 6.5[位相空間の定義と基本概念] の (1)(2))。したがって条件は「開かつ閉な集合が開基をなす」ことと同値で、X≠∅X\ne\emptyset なら ind⁡X=−1\operatorname{ind}X=-1 にはならないので ind⁡X=0\operatorname{ind}X=0 です。

(2) U={U1,…,Uk}\mathcal{U}=\{U_1,\dots,U_k\} を XX の有限開被覆とする。(1) により、各 x∈Xx\in X に対し、ある UjU_j に含まれる開かつ閉な近傍 VxV_x がとれる。{Vx}\{V_x\} は開被覆なので、XX が Lindelöf であることから、可算部分被覆 V1′,V2′,…V_1',V_2',\dots がとれる。各 nn に対し、Vn′⊆UjV_n'\subseteq U_j となる最小の jj を j(n)j(n) とし、

Gj=⋃{Vn′∖⋃i<nVi′:j(n)=j}(1≤j≤k)G_j=\bigcup\Bigl\{V_n'\setminus\bigcup_{i<n}V_i' : j(n)=j\Bigr\}\qquad(1\le j\le k)

とおく。各 Vn′V_n' は開かつ閉なので、Vn′∖⋃i<nVi′V_n'\setminus\bigcup_{i<n}V_i' は開集合で、これらは nn が異なれば交わらず、合併は XX である。したがって G1,…,GkG_1,\dots,G_k は互いに交わらない開集合で X=⋃GjX=\bigcup G_j、また Gj⊆UjG_j\subseteq U_j(j(n)=jj(n)=j なら Vn′⊆UjV_n'\subseteq U_j)である。よって {Gj}\{G_j\} は位数 00 の有限開細分で、dim⁡X≤0\dim X\le0。

(3) x∈Xx\in X と開集合 U∋xU\ni x を任意にとり、(1) のように開かつ閉な VV で x∈V⊆Ux\in V\subseteq U となるものをとる。正則性:FF を閉集合、x∉Fx\notin F とする。U=X∖FU=X\setminus F にこれを適用すると、開集合 VV と X∖VX\setminus V は互いに交わらず、x∈Vx\in V、F⊆X∖VF\subseteq X\setminus V なので、xx と FF は開集合で分離される。全不連結性:A⊆XA\subseteq X が相異なる 2 点 x,yx,y を含むとする。XX は T1T_1 なので U=X∖{y}U=X\setminus\{y\} は xx の開近傍で、開かつ閉な VV で x∈V⊆Ux\in V\subseteq U がとれる。V∩AV\cap A と A∖VA\setminus V は AA の開集合(VV も X∖VX\setminus V も開)で、x∈V∩Ax\in V\cap A、y∈A∖Vy\in A\setminus V、互いに交わらず合併は AA である。したがって AA は非連結で(定義 2.1[連結性])、連結部分集合は空集合と 1 点集合に限られる。

(4) n≥−1n\ge-1 についての帰納法で、Ind⁡X≤n\operatorname{Ind}X\le n ならば ind⁡X≤n\operatorname{ind}X\le n を、すべての T1T_1 空間 XX に対して示す。n=−1n=-1 は両者が X=∅X=\emptyset と同値であることから従う。n≥0n\ge0 とし、n−1n-1 まで正しいとする。Ind⁡X≤n\operatorname{Ind}X\le n、x∈Ux\in U(UU は開)とする。XX は T1T_1 なので F={x}F=\{x\} は閉集合であり、Ind⁡\operatorname{Ind} の定義から、開集合 VV で x∈V⊆Ux\in V\subseteq U かつ Ind⁡∂V≤n−1\operatorname{Ind}\partial V\le n-1 となるものがある。∂V\partial V は T1T_1 空間(T1T_1 空間の部分空間)なので、帰納法の仮定から ind⁡∂V≤n−1\operatorname{ind}\partial V\le n-1。よって ind⁡X≤n\operatorname{ind}X\le n。

ここまで、0 次元の例は離散空間だけです。次に距離に由来する例を見ます。

定義 3.3(超距離空間)↗

距離空間 (X,d)(X,d) が超距離空間(非アルキメデス的距離空間)であるとは、距離が強い三角不等式

d(x,z)≤max⁡{d(x,y), d(y,z)}(x,y,z∈X)d(x,z)\le\max\{d(x,y),\,d(y,z)\}\qquad(x,y,z\in X)

を満たすことをいいます。

pp 進整数環 Zp\mathbb{Z}_p の距離 d(x,y)=p−vp(x−y)d(x,y)=p^{-v_p(x-y)} はその例です(vpv_p は pp 進付値。整数 zz については、zz が素数 pp で何回割り切れるかを表します。この記事では例として挙げるだけで、以後は使いません)。

命題 3.4(超距離空間は 0 次元)✓

(X,d)(X,d) を空でない超距離空間とします。

  1. 任意の開球 B(x,r)B(x,r) は開かつ閉であり、B(x,r)B(x,r) の任意の点 yy について B(y,r)=B(x,r)B(y,r)=B(x,r) である。
  2. ind⁡X=0\operatorname{ind}X=0 である。
  3. XX が可分ならば dim⁡X=0\dim X=0 である。
証明(命題 3.4)

(1) y∈B(x,r)y\in B(x,r) とする。z∈B(y,r)z\in B(y,r) なら d(z,x)≤max⁡{d(z,y),d(y,x)}<rd(z,x)\le\max\{d(z,y),d(y,x)\}<r なので B(y,r)⊆B(x,r)B(y,r)\subseteq B(x,r)。xx と yy の役割を入れ替えて(d(x,y)<rd(x,y)<r は対称)逆の包含も得る。閉であること:z∉B(x,r)z\notin B(x,r) とし、B(z,r)B(z,r) を考える。B(z,r)∩B(x,r)≠∅B(z,r)\cap B(x,r)\ne\emptyset なら共通点 ww に対し、上の結果から B(z,r)=B(w,r)=B(x,r)B(z,r)=B(w,r)=B(x,r) となって z∈B(x,r)z\in B(x,r) に反する。よって B(z,r)B(z,r) は B(x,r)B(x,r) の補集合に含まれ、補集合は開である。

(2) 開球は距離空間の開基であり、(1) により開かつ閉なので、命題 3.2 の (1) より ind⁡X=0\operatorname{ind}X=0。

(3) 可分な距離空間は第二可算(命題 7.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理] の (2))、第二可算なら Lindelöf(同命題の (1))なので、(2) と 命題 3.2 の (2) から dim⁡X≤0\dim X\le0。X≠∅X\ne\emptyset なので dim⁡X=0\dim X=0。

もう 1 つの例は、通常の位相の R\mathbb{R} の部分空間です。

命題 3.5(有理数と無理数は 0 次元だが離散でない)✓

Q\mathbb{Q} と P=R∖QP=\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}(相対位相)は、どちらも ind⁡=0\operatorname{ind}=0 かつ dim⁡=0\dim=0 であり、どちらも離散空間ではない。

証明(命題 3.5)

Q\mathbb{Q}: x∈Qx\in\mathbb{Q} と Q\mathbb{Q} の開集合 U∋xU\ni x を任意にとる。R\mathbb{R} の開区間 (a,b)(a,b) で x∈(a,b)x\in(a,b)、Q∩(a,b)⊆U\mathbb{Q}\cap(a,b)\subseteq U となるものがある。有理数 r>0r>0 を x−r2>ax-r\sqrt2>a かつ x+r2<bx+r\sqrt2<b となるほど小さくとり、α=x−r2\alpha=x-r\sqrt2、β=x+r2\beta=x+r\sqrt2 とおく。α\alpha が有理数なら 2=(x−α)/r\sqrt2=(x-\alpha)/r も有理数となり、2\sqrt2 の無理性(定理 7.5[証明の技術])に反するので、α,β\alpha,\beta は無理数である。V=Q∩(α,β)V=\mathbb{Q}\cap(\alpha,\beta) とおくと、VV は Q\mathbb{Q} の開集合で、α,β∉Q\alpha,\beta\notin\mathbb{Q} なので V=Q∩[α,β]V=\mathbb{Q}\cap[\alpha,\beta] でもあり閉集合である。x∈V⊆Ux\in V\subseteq U。したがって 命題 3.2 の (1) より ind⁡Q=0\operatorname{ind}\mathbb{Q}=0。

PP: x∈Px\in P と開集合 U∋xU\ni x に対し、同様に開区間 (a,b)(a,b) をとり、有理数の稠密性(定理 5.2[実数の完備性とコーシー列])から有理数 q,q′q,q' で a<q<x<q′<ba<q<x<q'<b となるものを選ぶ。V=P∩(q,q′)=P∩[q,q′]V=P\cap(q,q')=P\cap[q,q'] は PP の開かつ閉な集合で x∈V⊆Ux\in V\subseteq U。よって ind⁡P=0\operatorname{ind}P=0。

dim⁡=0\dim=0: Q\mathbb{Q} は可算なので Lindelöf(可算個の点それぞれを含む被覆の元を 1 つずつ選べばよい)。PP は第二可算空間 R\mathbb{R} の部分空間なので第二可算(開基の各元を PP に制限する)、よって Lindelöf(命題 7.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理] の (1))。命題 3.2 の (2) から dim⁡=0\dim=0。

離散でないこと: x∈Qx\in\mathbb{Q} の任意の近傍は x+rx+r(r>0r>0 は有理数で十分小さい)を含むので {x}\{x\} は開でない。x∈Px\in P でも、x+rx+r(rr は小さい正の有理数)は無理数なので同様。

{0,1}\{0,1\} に離散位相を入れ、可算個の積 Δ={0,1}N\Delta=\{0,1\}^{\mathbb{N}}(積位相、命題 3.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理])を考えます。Δ\Delta の元は 0 と 1 の無限列 a=(a1,a2,… )a=(a_1,a_2,\dots) です。

定義 4.1(Cantor 集合)↗

空間 Δ={0,1}N\Delta=\{0,1\}^{\mathbb{N}} と同相な空間を Cantor 集合といいます。写像

c:Δ→[0,1],c(a)=∑n≥12an3nc:\Delta\to[0,1],\qquad c(a)=\sum_{n\ge1}\frac{2a_n}{3^n}

の像 C=c(Δ)C=c(\Delta) を(標準的な)3 進 Cantor 集合といいます。CC は、3 進展開の各桁が 00 か 22 だけの実数の全体です。区間 [0,1][0,1] から中央の開 3 分の 1 を除く操作をくり返した集合として導入されることも多いのですが、この記事では上の像を定義とします。

命題 4.2(Cantor 集合の性質)✓

  1. Δ\Delta はコンパクトで、cc は Δ\Delta から CC への同相写像である。特に CC は R\mathbb{R} のコンパクト部分集合で、Δ\Delta は距離化可能である。
  2. Δ\Delta は完全である(孤立点をもたない)。
  3. Δ\Delta は ind⁡Δ=0\operatorname{ind}\Delta=0 であり、全不連結で、dim⁡Δ=0\dim\Delta=0 である。
証明(命題 4.2)

(1) {0,1}\{0,1\} はコンパクトなので、Δ\Delta は Tychonoff の定理(定理 6.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理])によりコンパクトである。a,a′∈Δa,a'\in\Delta が最初の kk 個の座標で一致するなら ∣c(a)−c(a′)∣≤∑n>k2/3n=3−k|c(a)-c(a')|\le\sum_{n>k}2/3^n=3^{-k} であり、各 kk について最初の kk 座標を指定する集合は積位相の開集合(命題 3.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理])なので、cc は連続である。単射性:a≠a′a\ne a' とし、最初に異なる座標を kk 番目とする(ak=1,ak′=0a_k=1,a'_k=0 としてよい)。c(a)−c(a′)≥2/3k−∑n>k2/3n=3−k>0c(a)-c(a')\ge 2/3^k-\sum_{n>k}2/3^n=3^{-k}>0。コンパクト空間から Hausdorff 空間 R\mathbb{R} への連続単射なので、cc は像への同相写像である(系 6.5[コンパクト性])。CC は Δ\Delta のコンパクト連続像なので R\mathbb{R} のコンパクト部分集合で、距離(R\mathbb{R} の距離の制限)が位相を定める。

(2) a∈Δa\in\Delta と aa の任意の開近傍をとる。積位相の定義から、最初の kk 座標を aa と同じにする集合がその近傍に含まれる。aa の第 k+1k+1 座標だけを反転した列 a′a' はその集合に属し、a′≠aa'\ne a。よって aa は孤立点でない。

(3) 最初の kk 座標を指定する集合(柱集合)は、各座標の射影による {0,1}\{0,1\} の 1 点の逆像の有限個の共通部分なので、開かつ閉である(離散空間の 1 点集合は開かつ閉)。柱集合は Δ\Delta の開基をなす(命題 3.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理])。よって 命題 3.2 の (1) から ind⁡Δ=0\operatorname{ind}\Delta=0。Δ\Delta は Hausdorff((1) より距離化可能)なので T1T_1 で、命題 3.2 の (3) から全不連結。コンパクト空間は Lindelöf なので、命題 3.2 の (2) から dim⁡Δ=0\dim\Delta=0。

Cantor 集合は、「完全(孤立点がない)」であることと「0 次元(至る所で切れている)」ことが両立する空間で、Q\mathbb{Q} の「穴だらけ」とは違い、コンパクトでもあります。

5. RN\mathbb{R}^N のコンパクト集合は dim⁡≤N\dim\le N

Section titled “5. RN\mathbb{R}^NRN のコンパクト集合は dim⁡≤N\dim\le Ndim≤N”

0 次元以外の次元を決めるために、まず上からの評価を示します。RN\mathbb{R}^N を、各点が高々 N+1N+1 個にしか属さない小さな開集合で覆えばよいのですが、立方体の格子をそのまま使うと、頂点では 2N2^N 個の立方体が出会ってしまいます。そこで、格子の面(頂点・辺・正方形・…)ごとに、その面のまわりの開集合を作り、同じ次元の面に対応する開集合は互いに交わらないようにします。次元は 0,1,…,N0,1,\dots,N の N+1N+1 通りしかないので、各点は高々 N+1N+1 個にしか属しません。

次の定理の証明に出る W(F,m)W(F,m) は、N=2N=2 なら次の 3 種類です。k=0k=0 は格子点のまわりの小さな正方形、k=1k=1 は辺のまわりの細長い領域(辺に沿う方向は端から β1\beta_1 より内側、直交する方向は α1\alpha_1 未満)、k=2k=2 は正方形の内部です。不等式 αN<βN<⋯<α0<β0\alpha_N<\beta_N<\dots<\alpha_0<\beta_0 は、頂点まわりを最も大きく取り、次元の高い面ほど、低い次元の面のまわりに取った領域を避けるようにするための並びです。(i) は同じ種類同士が交わらないこと、(ii) は全体で RN\mathbb{R}^N を覆うことを示します。

定理 5.1(RNR^N のコンパクト部分集合の被覆次元)✓

N≥1N\ge1、K⊆RNK\subseteq\mathbb{R}^N をコンパクト集合とすると、dim⁡K≤N\dim K\le N です。

証明(定理 5.1)

準備。 x∈RNx\in\mathbb{R}^N に対し ei(x)=min⁡m∈Z∣xi−m∣∈[0,1/2]e_i(x)=\min_{m\in\mathbb{Z}}|x_i-m|\in[0,1/2](第 ii 座標から最も近い整数までの距離)とおく。実数 αk,βk\alpha_k,\beta_k(0≤k≤N0\le k\le N)を

0<αN<βN<αN−1<βN−1<⋯<α0<β0<120<\alpha_N<\beta_N<\alpha_{N-1}<\beta_{N-1}<\cdots<\alpha_0<\beta_0<\tfrac12

となるようにとる。F⊆{1,…,N}F\subseteq\{1,\dots,N\}(∣F∣=k|F|=k)と m∈ZNm\in\mathbb{Z}^N に対し、

W(F,m)={x∈RN: i∈F⇒mi<xi<mi+1 かつ ei(x)>βk;i∉F⇒∣xi−mi∣<αk}W(F,m)=\bigl\{x\in\mathbb{R}^N:\ i\in F\Rightarrow m_i<x_i<m_i+1\text{ かつ }e_i(x)>\beta_k;\quad i\notin F\Rightarrow |x_i-m_i|<\alpha_k\bigr\}

とおく。FF の元の座標が「面の自由な方向」、それ以外が「整数に固定された方向」で、W(F,m)W(F,m) は kk 次元の面のまわりの開集合に対応する。W(F,m)W(F,m) は有限個の連続関数についての狭義の不等式で定まるので、RN\mathbb{R}^N の開集合である。

(i) 同じ kk の WW は互いに交わらない。 ∣F∣=∣F′∣=k|F|=|F'|=k で (F,m)≠(F′,m′)(F,m)\ne(F',m') のとき W(F,m)∩W(F′,m′)=∅W(F,m)\cap W(F',m')=\emptyset を示す。xx が共通点にあるとする。F≠F′F\ne F' なら ∣F∣=∣F′∣|F|=|F'| から i∈F∖F′i\in F\setminus F' がとれ、ei(x)>βke_i(x)>\beta_k だが、i∉F′i\notin F' より ei(x)≤∣xi−mi′∣<αk<βke_i(x)\le|x_i-m'_i|<\alpha_k<\beta_k となり矛盾。F=F′F=F' なら、i∉Fi\notin F について ∣mi−mi′∣≤∣xi−mi∣+∣xi−mi′∣<2αk<1|m_i-m'_i|\le|x_i-m_i|+|x_i-m'_i|<2\alpha_k<1 なので mi=mi′m_i=m'_i。i∈Fi\in F については xi∈(mi,mi+1)∩(mi′,mi′+1)x_i\in(m_i,m_i+1)\cap(m'_i,m'_i+1) から mi=mi′m_i=m'_i。よって m=m′m=m' となり (F,m)=(F′,m′)(F,m)=(F',m')、矛盾。

(ii) W(F,m)W(F,m) たちは RN\mathbb{R}^N を覆う。 x∈RNx\in\mathbb{R}^N とする。f(k)=#{i:ei(x)>βk}f(k)=\#\{i:e_i(x)>\beta_k\}、h(k)=#{i:ei(x)≥αk}h(k)=\#\{i:e_i(x)\ge\alpha_k\} とおくと、αk,βk\alpha_k,\beta_k は kk について減少するので f,hf,h は kk について単調非減少で、f≤hf\le h であり、βk<αk−1\beta_k<\alpha_{k-1} より h(k−1)≤f(k)h(k-1)\le f(k)。h(N)≤Nh(N)\le N なので k=min⁡{j:h(j)≤j}k=\min\{j:h(j)\le j\} が存在する。k=0k=0 なら h(0)≤0h(0)\le0 と f(0)≤h(0)f(0)\le h(0) から f(0)=h(0)=0f(0)=h(0)=0。k≥1k\ge1 なら h(k−1)≥kh(k-1)\ge k であり、k≤h(k−1)≤f(k)≤h(k)≤kk\le h(k-1)\le f(k)\le h(k)\le k から f(k)=h(k)=kf(k)=h(k)=k。どちらの場合も f(k)=h(k)=kf(k)=h(k)=k で、これは「αk≤ei(x)≤βk\alpha_k\le e_i(x)\le\beta_k となる ii が存在しない」ことと「ei(x)>βke_i(x)>\beta_k となる ii がちょうど kk 個」であることを意味する。そこで F={i:ei(x)>βk}F=\{i:e_i(x)>\beta_k\} とおくと ∣F∣=k|F|=k。i∈Fi\in F では ei(x)>βk>0e_i(x)>\beta_k>0 より xix_i は整数でなく、mi=⌊xi⌋m_i=\lfloor x_i\rfloor とすれば mi<xi<mi+1m_i<x_i<m_i+1。i∉Fi\notin F では ei(x)≤βke_i(x)\le\beta_k かつ ei(x)∉[αk,βk]e_i(x)\notin[\alpha_k,\beta_k] なので ei(x)<αke_i(x)<\alpha_k で、mim_i を xix_i に最も近い整数とすれば ∣xi−mi∣<αk|x_i-m_i|<\alpha_k。よって x∈W(F,m)x\in W(F,m)。

(iii) 直径。 W(F,m)W(F,m) の各点で、i∈Fi\in F なら xix_i は長さ 11 の区間に、i∉Fi\notin F なら長さ 2αk<12\alpha_k<1 の区間にあるので、ユークリッド距離で diam⁡W(F,m)≤N\operatorname{diam}W(F,m)\le\sqrt N。

結論。 ε>0\varepsilon>0 を任意にとり、δ=ε/(2N)\delta=\varepsilon/(2\sqrt N) とする。族 {δW(F,m)}\{\delta W(F,m)\}(δW={δx:x∈W}\delta W=\{\delta x:x\in W\})は (ii) により RN\mathbb{R}^N の開被覆で、(i) より、各 kk ごとに同じ kk の集合は互いに素なので、各点は高々 N+1N+1 個の集合にしか属さず、直径は δN=ε/2<ε\delta\sqrt N=\varepsilon/2<\varepsilon 以下である。KK はコンパクトなので有限個の δW(F,m)\delta W(F,m) で覆われ、それらと KK との共通部分は、KK の位数 NN 以下の有限開被覆で、直径は ε\varepsilon 未満である。KK はコンパクト距離空間なので 補題 2.2 より dim⁡K≤N\dim K\le N。

6. 立方体の対辺の分離と dim⁡In=n\dim I^n=n

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下からの評価には Brouwer の不動点定理を使います。ここは位相空間論の外の定理(代数的位相幾何学)の力を借りる、この記事で唯一の箇所です。

I=[0,1]I=[0,1]、In=[0,1]nI^n=[0,1]^n とし、1≤i≤n1\le i\le n について Fi0={x∈In:xi=0}F_i^0=\{x\in I^n:x_i=0\}、Fi1={x∈In:xi=1}F_i^1=\{x\in I^n:x_i=1\} を ii 番目の対辺(n=2n=2 なら対辺、一般には対面)とします。

定理 6.1(立方体の対辺の分離)✓

n≥1n\ge1 とし、各 i=1,…,ni=1,\dots,n について、InI^n の開集合 Ai,BiA_i,B_i が互いに交わらず、Fi0⊆AiF_i^0\subseteq A_i、Fi1⊆BiF_i^1\subseteq B_i を満たすとする。Ci=In∖(Ai∪Bi)C_i=I^n\setminus(A_i\cup B_i) とおくと、C1∩⋯∩Cn≠∅C_1\cap\cdots\cap C_n\ne\emptyset である。

CiC_i は Fi0F_i^0 と Fi1F_i^1 を「分離する閉集合」です。n=1n=1 では、「[0,1][0,1] の両端を分ける閉集合は空でない」という、中間値の定理(定理 6.1[連結性])と同じ内容になります。n=2n=2 では、正方形の左右の辺を分ける閉集合と上下の辺を分ける閉集合が交わる、という主張です。

証明の発想は次のとおりです。gig_i は AiA_i 上で正、BiB_i 上で負、CiC_i 上で 00 になる関数です。そこで各点の ii 番目の座標を gig_i の分だけ動かす写像 TT を作ると、AiA_i にある点は BiB_i の側へ、BiB_i にある点は AiA_i の側へ押されます。ただし立方体の外へは出ないように切り詰めます。Brouwer の不動点定理で TT の不動点を取ると、押されても動かない点、すなわちすべての gig_i が 00 の点が得られます。

証明(定理 6.1)

In∖Ai⊇Fi1≠∅I^n\setminus A_i\supseteq F_i^1\ne\emptyset と In∖Bi⊇Fi0≠∅I^n\setminus B_i\supseteq F_i^0\ne\emptyset はどちらも空でない閉集合なので、点から集合への距離(補題 5.1[分離公理と距離づけ可能性])

gi(x)=d(x, In∖Ai)−d(x, In∖Bi)g_i(x)=d(x,\,I^n\setminus A_i)-d(x,\,I^n\setminus B_i)

が定義でき、連続である。x∈Aix\in A_i なら x∉In∖Aix\notin I^n\setminus A_i で(閉集合の外の点の距離は正)d(x,In∖Ai)>0d(x,I^n\setminus A_i)>0、Ai∩Bi=∅A_i\cap B_i=\emptyset より x∈In∖Bix\in I^n\setminus B_i なので第 2 項は 00 で、gi(x)>0g_i(x)>0。同様に x∈Bix\in B_i なら gi(x)<0g_i(x)<0。x∈Cix\in C_i なら両方の距離が 00 で gi(x)=0g_i(x)=0。

写像 T:In→InT:I^n\to I^n を T(x)i=min⁡{1,max⁡{0, xi+gi(x)}}T(x)_i=\min\{1,\max\{0,\,x_i+g_i(x)\}\} で定める。連続である。立方体 InI^n と閉単位球 DnD^n は同相である(z∈[−1,1]n↦∥z∥∞∥z∥2zz\in[-1,1]^n\mapsto \dfrac{\|z\|_\infty}{\|z\|_2}z が [−1,1]n[-1,1]^n から DnD^n への同相写像で、z↦2x−1z\mapsto 2x-\mathbf 1 で InI^n と同一視する。逆写像は y↦∥y∥2∥y∥∞yy\mapsto\dfrac{\|y\|_2}{\|y\|_\infty}y、どちらも原点で 00 とおく)。よって Brouwer の不動点定理(定理 6.1[胞体ホモロジーと写像度])を同相で移せば、TT は不動点 xx をもつ。

各 ii で gi(x)=0g_i(x)=0 を示す。gi(x)>0g_i(x)>0 とすると xi+gi(x)>xix_i+g_i(x)>x_i なので、T(x)i=min⁡{1,xi+gi(x)}=xiT(x)_i=\min\{1,x_i+g_i(x)\}=x_i となるには xi=1x_i=1 が必要で、x∈Fi1⊆Bix\in F_i^1\subseteq B_i、すなわち gi(x)<0g_i(x)<0 となり矛盾する。gi(x)<0g_i(x)<0 とすると、同様に T(x)i=max⁡{0,xi+gi(x)}=xiT(x)_i=\max\{0,x_i+g_i(x)\}=x_i の形になるには xi=0x_i=0 が必要で、x∈Fi0⊆Aix\in F_i^0\subseteq A_i、gi(x)>0g_i(x)>0 となり矛盾する。よって gi(x)=0g_i(x)=0 で、x∉Ai∪Bix\notin A_i\cup B_i(上の符号の議論の対偶)、すなわち x∈Cix\in C_i。これがすべての ii で成り立つので x∈⋂iCix\in\bigcap_iC_i。

次の補題は、RN\mathbb{R}^N の開集合が有限個の超平面では覆えないことを述べます。「一般の位置」にある点を選ぶときの基本です。証明では、モーメント曲線(座標が (t,t2,…,tN)(t,t^2,\dots,t^N) の形で動く曲線)が、どの超平面とも高々 NN 点でしか交わらないことを使います。

補題 6.2(有限個の超平面では覆えない)✓

N≥1N\ge1、O⊆RNO\subseteq\mathbb{R}^N を空でない開集合、H1,…,HsH_1,\dots,H_s を RN\mathbb{R}^N のアフィン超平面とします。このとき O⊈H1∪⋯∪HsO\not\subseteq H_1\cup\cdots\cup H_s です。

証明(補題 6.2)

c0∈Oc_0\in O をとり、モーメント曲線 c(t)=c0+(t,t2,…,tN)c(t)=c_0+(t,t^2,\dots,t^N) を考える。cc は連続で c(0)=c0∈Oc(0)=c_0\in O、OO は開なので、ある η>0\eta>0 があって 0<t<η0<t<\eta なら c(t)∈Oc(t)\in O。超平面 Hj={y:a⋅y=b}H_j=\{y:a\cdot y=b\}(a≠0a\ne0)について、a⋅c(t)−b=(a⋅c0−b)+∑i=1Naitia\cdot c(t)-b=(a\cdot c_0-b)+\sum_{i=1}^Na_it^i は、a≠0a\ne0 より少なくとも 1 つの ai≠0a_i\ne0(i≥1i\ge1)をもつ、tt の次数 11 以上 NN 以下の多項式なので、零点は高々 NN 個である。よって c(t)∈H1∪⋯∪Hsc(t)\in H_1\cup\cdots\cup H_s となる t∈(0,η)t\in(0,\eta) は高々 sNsN 個で、(0,η)(0,\eta) は無限集合だから、c(t)∉⋃Hjc(t)\notin\bigcup H_j となる t∈(0,η)t\in(0,\eta) がとれる。この c(t)∈Oc(t)\in O が求める点である。

定理 6.3(立方体の被覆次元(Lebesgue の被覆定理))✓

n≥1n\ge1 のとき、dim⁡In=n\dim I^n=n です。

下からの評価の方針は背理法です。dim⁡In≤n−1\dim I^n\le n-1 なら、各点が高々 nn 個にしか入らない細かい被覆があります。その被覆に 1 の分割(足すと常に 11 になる連続関数の組で、jj 番目が正になる範囲がちょうど VjV_j になるもの)を付けて、被覆の各元に立方体の頂点を 1 つ割り当て、各点で関数の値を重みにして頂点を混ぜ合わせる写像 hh を作ります。各点で混ざる頂点は高々 nn 個なので、像は n−1n-1 次元以下の平らな図形に収まり、立方体の内部の一般の点 pp には届きません。一方、hh は対辺を対辺に送るように作ってあるので、前の定理から h(x)=ph(x)=p となる点が存在してしまい、矛盾します。

証明(定理 6.3)

上からの評価 dim⁡In≤n\dim I^n\le n は、InI^n が Rn\mathbb{R}^n のコンパクト集合であることから 定理 5.1 による。下からの評価として、dim⁡In≤n−1\dim I^n\le n-1 と仮定して矛盾を導く。

InI^n の開球(半径 1/31/3)による開被覆から有限部分被覆をとり、仮定により位数 n−1n-1 以下の有限開細分 V={V1,…,Vr}\mathcal{V}=\{V_1,\dots,V_r\} をとる。各 VjV_j の直径は 2/3<12/3<1 で、各点は高々 nn 個の VjV_j にしか属さない。直径 11 未満の集合は Fi0F_i^0 と Fi1F_i^1 の両方とは交われない(x∈Fi0x\in F_i^0、y∈Fi1y\in F_i^1 なら ∣x−y∣≥∣xi−yi∣=1|x-y|\ge|x_i-y_i|=1)。また diam⁡In=n≥1\operatorname{diam}I^n=\sqrt n\ge1 なので Vj≠InV_j\ne I^n である。

1 の分割。 φj(x)=d(x,In∖Vj)/∑kd(x,In∖Vk)\varphi_j(x)=d(x,I^n\setminus V_j)\Big/\sum_{k}d(x,I^n\setminus V_k) とおく(分母は、xx がある VkV_k の点で VkV_k が開なので正)。φj\varphi_j は連続、∑jφj=1\sum_j\varphi_j=1、φj(x)>0⇔x∈Vj\varphi_j(x)>0\Leftrightarrow x\in V_j。

写像 hh。 各 j,ij,i について、Vj∩Fi0≠∅V_j\cap F_i^0\ne\emptyset なら w(j)i=0w(j)_i=0、そうでなければ w(j)i=1w(j)_i=1 とおき、w(j)=(w(j)1,…,w(j)n)∈{0,1}nw(j)=(w(j)_1,\dots,w(j)_n)\in\{0,1\}^n とする。h(x)=∑jφj(x)w(j)h(x)=\sum_j\varphi_j(x)w(j) は連続な In→InI^n\to I^n である。x∈Fi0x\in F_i^0 なら、φj(x)>0\varphi_j(x)>0 の jj は x∈Vj∩Fi0x\in V_j\cap F_i^0 をみたし w(j)i=0w(j)_i=0 なので h(x)i=0h(x)_i=0。x∈Fi1x\in F_i^1 なら、φj(x)>0\varphi_j(x)>0 の jj について Vj∩Fi1≠∅V_j\cap F_i^1\ne\emptyset なので Vj∩Fi0=∅V_j\cap F_i^0=\emptyset で w(j)i=1w(j)_i=1、したがって h(x)i=1h(x)_i=1。

hh の像。 各点 xx で φj(x)>0\varphi_j(x)>0 となる jj は高々 nn 個なので、h(x)h(x) は高々 nn 個の点 w(j)w(j) の凸包に入る。Rn\mathbb{R}^n の高々 nn 個の点を含むアフィン部分空間の次元は n−1n-1 以下なので、その凸包はある超平面に含まれる。{1,…,r}\{1,\dots,r\} の高々 nn 個の部分集合は有限個なので、h(In)h(I^n) は有限個の超平面の合併 H\mathcal{H} に含まれる。補題 6.2 を O=(0,1)nO=(0,1)^n に適用して、p∈(0,1)n∖Hp\in(0,1)^n\setminus\mathcal{H} をとる。

分離。 Ai={x:h(x)i<pi}A_i=\{x:h(x)_i<p_i\}、Bi={x:h(x)i>pi}B_i=\{x:h(x)_i>p_i\} とおく。hh の連続性から開集合で、互いに交わらず、h(x)i=0<pih(x)_i=0<p_i (x∈Fi0x\in F_i^0)、h(x)i=1>pih(x)_i=1>p_i(x∈Fi1x\in F_i^1)なので Fi0⊆AiF_i^0\subseteq A_i、Fi1⊆BiF_i^1\subseteq B_i。定理 6.1 から、すべての ii で h(x)i=pih(x)_i=p_i となる xx がある。すると h(x)=ph(x)=p だが、p∉H⊇h(In)p\notin\mathcal{H}\supseteq h(I^n) なので矛盾する。

系 6.4(次元の位相不変性)✓

m,n≥1m,n\ge1 で Rm\mathbb{R}^m と Rn\mathbb{R}^n が同相ならば m=nm=n です。

証明(系 6.4)

同相写像 Φ:Rm→Rn\Phi:\mathbb{R}^m\to\mathbb{R}^n をとる。Φ(Im)\Phi(I^m) は Rn\mathbb{R}^n のコンパクト集合(定理 6.1[コンパクト性])なので、定理 5.1 から dim⁡Φ(Im)≤n\dim\Phi(I^m)\le n。一方 Φ∣Im:Im→Φ(Im)\Phi|_{I^m}:I^m\to\Phi(I^m) は同相で、被覆次元は同相写像で変わらない(有限開被覆とその細分、位数がすべて対応する)ので、定理 6.3 から dim⁡Φ(Im)=dim⁡Im=m\dim\Phi(I^m)=\dim I^m=m。よって m≤nm\le n。Φ−1\Phi^{-1} に同じ議論を使えば n≤mn\le m。

例 6.5(円周の被覆次元は 1)

S1⊆R2S^1\subseteq\mathbb{R}^2 はコンパクトで、dim⁡S1≥1\dim S^1\ge1 と dim⁡S1≤1\dim S^1\le1 は次のとおりです。下から:γ(t)=(cos⁡t,sin⁡t)\gamma(t)=(\cos t,\sin t)(0≤t≤10\le t\le1)は [0,1][0,1] から S1S^1 への連続単射で、[0,1][0,1] はコンパクトなので像 γ([0,1])\gamma([0,1])(コンパクト、したがって閉)への同相写像です。よって 補題 2.3 と 定理 6.3(n=1n=1)から dim⁡S1≥dim⁡γ([0,1])=1\dim S^1\ge\dim\gamma([0,1])=1。上から:k≥4k\ge4 に対し、角度が 2πj/k2\pi j/k の点を中心とする半幅 3π/(2k)3\pi/(2k) の開円弧 AjA_j(j=1,…,kj=1,\dots,k)は S1S^1 を覆い、隣り合う 2 つしか交わらないので、位数 11 以下です。kk を大きくすれば直径はいくらでも小さくなるので、補題 2.2 より dim⁡S1≤1\dim S^1\le1。R2\mathbb{R}^2 のコンパクト集合として得られる一般の評価 dim⁡S1≤2\dim S^1\le2 より、ずっとよい値です。

注意 6.6

Brouwer の不動点定理は、位相空間論の側から見れば道具としてかなり重いものです。Sperner の補題(立方体や単体の三角形分割での頂点の色分けの組合せ論)を使えば、dim⁡In≥n\dim I^n\ge n を代数的位相幾何学なしで、自己完結に証明することもできます。この記事では分量のため、既存の Brouwer の定理を使う道を選びました。

7. Menger–Nöbeling の埋め込み定理

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最後に、dim⁡X≤m\dim X\le m のコンパクト距離空間は R2m+1\mathbb{R}^{2m+1} に埋め込めることを示します。たとえば dim⁡=0\dim=0 のコンパクト距離空間(Cantor 集合など)は R\mathbb{R} の部分空間として実現でき、dim⁡≤1\dim\le1 のコンパクト距離空間は R3\mathbb{R}^3 に埋め込めます。

証明は、XX から RN\mathbb{R}^N(N=2m+1N=2m+1)への連続写像の空間 C(X,RN)C(X,\mathbb{R}^N) に一様ノルムの距離を入れ、「ほとんどすべての写像が単射」を Baire のカテゴリー定理で示すというものです。写像が ε\varepsilon-単射であるとは、f(x)=f(x′)f(x)=f(x') ならば d(x,x′)<εd(x,x')<\varepsilon となることです。

証明の (ii) には、アフィン独立という言葉が出てきます。点 a1,…,ara_1,\dots,a_r のアフィン包とは、係数の和が 11 の一次結合 ∑λsas\sum\lambda_sa_s の全体(2 点なら通る直線、3 点なら通る平面)です。また、∑λsas=0\sum\lambda_sa_s=0 かつ ∑λs=0\sum\lambda_s=0 をみたす λ\lambda が自明なもの(すべて 00)しかないとき、点はアフィン独立であるといいます(平面なら 3 点が同一直線上にない、空間なら 4 点が同一平面上にない、ということです)。(ii) では、近づけたい写像 ff の近くに、このように「悪い偶然」を避けた点 aja_j を選んで、2 点が同じ像をもつことを背理法で排除します。

定理 7.1(Menger–Nöbeling の埋め込み定理)✓

XX を空でないコンパクト距離空間、m≥0m\ge0 を整数とし、dim⁡X≤m\dim X\le m とします。このとき XX から R2m+1\mathbb{R}^{2m+1} への埋め込み(同相写像として像への)が存在します。

証明(定理 7.1)

N=2m+1N=2m+1、M=C(X,RN)M=C(X,\mathbb{R}^N) とし、∥f−g∥=max⁡x∈X∣f(x)−g(x)∣\|f-g\|=\max_{x\in X}|f(x)-g(x)|(∣⋅∣|\cdot| はユークリッドノルム)で距離を入れる。最大値の存在は XX がコンパクトだから。各座標関数は C(X)C(X) の元で、C(X)C(X) は完備(補題 2.1[Arzelà–Ascoli と Stone–Weierstrass])なので、その NN 個の積 MM も、コーシー列が各座標で収束することから完備距離空間である。ε>0\varepsilon>0 に対し Eε={f∈M:f は ε-単射}E_\varepsilon=\{f\in M:f\text{ は }\varepsilon\text{-単射}\} とおく。

(i) EεE_\varepsilon は開集合である。 f∈Eεf\in E_\varepsilon とし、Z={(x,x′)∈X×X:d(x,x′)≥ε}Z=\{(x,x')\in X\times X:d(x,x')\ge\varepsilon\} を考える。ZZ はコンパクト空間 X×XX\times X(Tychonoff の定理、定理 6.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理])の閉部分集合なので(定理 4.1[コンパクト性])コンパクトである。Z=∅Z=\emptyset なら Eε=ME_\varepsilon=M で示すことはない。そうでなければ、ZZ 上の連続関数 (x,x′)↦∣f(x)−f(x′)∣(x,x')\mapsto|f(x)-f(x')| は、ff が ε\varepsilon-単射なので ZZ 上で正であり、コンパクト集合上で最小値 2η>02\eta>0 をもつ(定理 6.1[コンパクト性] と 定理 5.2[コンパクト性])。∥g−f∥<η\|g-f\|<\eta なら、(x,x′)∈Z(x,x')\in Z で ∣g(x)−g(x′)∣≥∣f(x)−f(x′)∣−2∥g−f∥>2η−2η=0|g(x)-g(x')|\ge|f(x)-f(x')|-2\|g-f\|>2\eta-2\eta=0。よって g(x)=g(x′)g(x)=g(x') なら (x,x′)∉Z(x,x')\notin Z、すなわち d(x,x′)<εd(x,x')<\varepsilon で、g∈Eεg\in E_\varepsilon。

(ii) EεE_\varepsilon は稠密である。 f∈Mf\in M と δ>0\delta>0 を任意にとり、∥g−f∥<δ\|g-f\|<\delta をみたす g∈Eεg\in E_\varepsilon を作る。ff は一様連続(コンパクト距離空間上の連続写像、補題 2.2[Arzelà–Ascoli と Stone–Weierstrass])なので、ε′≤ε\varepsilon'\le\varepsilon を、d(x,x′)<ε′d(x,x')<\varepsilon' ならば ∣f(x)−f(x′)∣<δ/2|f(x)-f(x')|<\delta/2 となるようにとる。補題 2.2 により、位数 mm 以下で、直径が ε′\varepsilon' 未満の有限開被覆 {U1,…,Uk}\{U_1,\dots,U_k\}(空でないとしてよい)がある。各 jj に点 xj∈Ujx_j\in U_j をとる。

次に点 a1,…,ak∈RNa_1,\dots,a_k\in\mathbb{R}^N を、∣aj−f(xj)∣<δ/2|a_j-f(x_j)|<\delta/2 で、かつ次の条件 (G) を満たすように、j=1,2,…j=1,2,\dots の順に選ぶ。(G) は、s<js<j の高々 NN 個の添字の集合 S⊆{1,…,j−1}S\subseteq\{1,\dots,j-1\} (∣S∣≤N|S|\le N) について aja_j が {as:s∈S}\{a_s:s\in S\} のアフィン包に属さないことである。高々 NN 個の点のアフィン包は次元 N−1N-1 以下なので、ある超平面に含まれる。そのような SS は有限個なので、補題 6.2 を開球 O=B(f(xj),δ/2)O=B(f(x_j),\delta/2) に適用して、(G) を満たす aj∈Oa_j\in O がとれる。

こうして選んだ点は、どの高々 N+1N+1 個の添字についてもアフィン独立である。実際、添字の集合 TT(∣T∣≤N+1|T|\le N+1)で、∑s∈Tλsas=0\sum_{s\in T}\lambda_sa_s=0、∑sλs=0\sum_s\lambda_s=0 かつ λ\lambda が 00 でない関係があったとし、TT を最小にとる。すると全ての λs≠0\lambda_s\ne0 であり、j=max⁡Tj=\max T に対し aj=−∑s∈T∖{j}(λs/λj)asa_j=-\sum_{s\in T\setminus\{j\}}(\lambda_s/\lambda_j)a_s(係数の和は 11)なので aja_j は T∖{j}T\setminus\{j\}(高々 NN 個の添字)のアフィン包に入り、(G) に反する。

1 の分割 φj(x)=d(x,X∖Uj)/∑kd(x,X∖Uk)\varphi_j(x)=d(x,X\setminus U_j)\big/\sum_kd(x,X\setminus U_k)(ある Uj=XU_j=X のときは、その jj について φj=1\varphi_j=1、他は 00 とする)をとる。分母は、各 xx がある開集合 UkU_k に属するので正であり、φj\varphi_j は連続、∑jφj=1\sum_j\varphi_j=1、φj(x)>0⇒x∈Uj\varphi_j(x)>0\Rightarrow x\in U_j である。そこでg(x)=∑jφj(x)ajg(x)=\sum_j\varphi_j(x)a_j とおく。g∈Mg\in M は連続である。

∥g−f∥<δ\|g-f\|<\delta:φj(x)>0\varphi_j(x)>0 なら x,xj∈Ujx,x_j\in U_j で d(x,xj)<ε′d(x,x_j)<\varepsilon' なので ∣f(xj)−f(x)∣<δ/2|f(x_j)-f(x)|<\delta/2、よって ∣g(x)−f(x)∣≤∑jφj(x)(∣aj−f(xj)∣+∣f(xj)−f(x)∣)<δ|g(x)-f(x)|\le\sum_j\varphi_j(x)\bigl(|a_j-f(x_j)|+|f(x_j)-f(x)|\bigr)<\delta。最大値の存在から ∥g−f∥<δ\|g-f\|<\delta。

g∈Eεg\in E_\varepsilon:g(x)=g(x′)g(x)=g(x') かつ d(x,x′)≥εd(x,x')\ge\varepsilon と仮定する。J={j:φj(x)>0}J=\{j:\varphi_j(x)>0\}、J′={j:φj(x′)>0}J'=\{j:\varphi_j(x')>0\} とおくと、∣J∣,∣J′∣≤m+1|J|,|J'|\le m+1。j∈J∩J′j\in J\cap J' なら x,x′∈Ujx,x'\in U_j で d(x,x′)<ε′≤εd(x,x')<\varepsilon'\le\varepsilon となり矛盾するので J∩J′=∅J\cap J'=\emptyset。このとき ∑j∈Jφj(x)aj−∑j∈J′φj(x′)aj=0\sum_{j\in J}\varphi_j(x)a_j-\sum_{j\in J'}\varphi_j(x')a_j=0 で、係数の和は 1−1=01-1=0、係数は J∪J′J\cup J' の上で 00 でない(φj(x)>0\varphi_j(x)>0、φj(x′)>0\varphi_j(x')>0)。∣J∪J′∣≤2m+2=N+1|J\cup J'|\le2m+2=N+1 なので、アフィン独立性に反する。

(iii) Baire。 E1/nE_{1/n}(n=1,2,…n=1,2,\dots)は MM の稠密な開集合なので、定理 5.1[距離空間] により ⋂nE1/n\bigcap_nE_{1/n} は空でない。ff をその元とすると、すべての nn で f(x)=f(x′)⇒d(x,x′)<1/nf(x)=f(x')\Rightarrow d(x,x')<1/n なので ff は単射である。XX はコンパクト、RN\mathbb{R}^N は Hausdorff なので、系 6.5[コンパクト性] により ff は像への同相写像、すなわち埋め込みである。

注意 7.2

被覆次元と帰納的次元は、可分な距離空間では一致します(ind⁡X=Ind⁡X=dim⁡X\operatorname{ind}X=\operatorname{Ind}X=\dim X。Hurewicz–Wallman『Dimension Theory』)。証明には和定理・分解定理が要り、それだけで本 1 冊分の内容になるので、この記事では扱いません。また、Menger–Nöbeling の定理はコンパクトでない可分距離空間にも拡張され(nn 次元の可分距離空間はすべて、Nöbeling 空間とよばれる R2n+1\mathbb{R}^{2n+1} の部分空間に埋め込める)、2n+12n+1 はこの形の定理では改善できませんが、証明はこの記事のものより長くなります(Engelking『Theory of Dimensions, Finite and Infinite』)。これらの主張は、この記事の他の定理の証明のどこにも使っていません。

演習 8.1易

超距離空間 (X,d)(X,d) で、相異なる 2 つの開球 B(x,r)B(x,r)、B(y,s)B(y,s) は、互いに交わらないか、一方が他方に含まれることを示してください。

解答

B(x,r)∩B(y,s)B(x,r)\cap B(y,s) に点 ww があるとする。命題 3.4 の (1) の証明のとおり、B(x,r)=B(w,r)B(x,r)=B(w,r)、B(y,s)=B(w,s)B(y,s)=B(w,s) である。r≤sr\le s なら B(w,r)⊆B(w,s)B(w,r)\subseteq B(w,s)、s≤rs\le r なら逆の包含なので、一方が他方に含まれる。交わりがなければ互いに交わらない。

演習 8.2標準

K={0}∪{1/n:n≥1}⊆RK=\{0\}\cup\{1/n:n\ge1\}\subseteq\mathbb{R} について、ind⁡K=0\operatorname{ind}K=0 かつ dim⁡K=0\dim K=0 を示してください。KK は離散空間ですか。

解答

1/n1/n は KK の孤立点(1/n1/n の近くに KK の他の点はない)なので、{1/n}\{1/n\} は開かつ閉。00 のまわりには、p≥1p\ge1 に対し tp=1/(p+1/2)t_p=1/(p+1/2) とおいて Vp=K∩(−∞,tp)V_p=K\cap(-\infty,t_p) をとる。Vp={0}∪{1/n:n≥p+1}V_p=\{0\}\cup\{1/n:n\ge p+1\} で、tp∉Kt_p\notin K なので Vp=K∩(−∞,tp]V_p=K\cap(-\infty,t_p] でもあり、開かつ閉である。00 の任意の近傍は、pp を大きくとれば VpV_p を含む。{1/n}\{1/n\} と VpV_p は開かつ閉な開基をなすので、命題 3.2 の (1) より ind⁡K=0\operatorname{ind}K=0。KK はコンパクト(定理 5.2[コンパクト性])で Lindelöf なので dim⁡K=0\dim K=0。00 は孤立点でない(どの近傍も 1/n1/n を含む)ので、離散空間ではない。

演習 8.3標準

Menger–Nöbeling の定理(定理 7.1)で m=0m=0 とすると何が言えますか。コンパクトで dim⁡=0\dim=0 な距離空間の例を 1 つ挙げ、その結論を確かめてください。

解答

dim⁡X=0\dim X=0 のコンパクト距離空間は R1\mathbb{R}^{1} に埋め込める。Cantor 集合 Δ\Delta は 命題 4.2 で dim⁡Δ=0\dim\Delta=0 とコンパクト距離化可能性を示し、実際 c:Δ→C⊆[0,1]c:\Delta\to C\subseteq[0,1] が R\mathbb{R} への埋め込みを与える。確かめるべきことは、cc が連続な単射であることと、コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続単射が埋め込みになることで、命題 4.2 の (1) の証明のとおりである。

演習 8.4標準

n=1n=1 の場合の dim⁡[0,1]≥1\dim[0,1]\ge1 を、Brouwer の不動点定理を使わずに、連結性から直接示してください。

解答

dim⁡[0,1]≤0\dim[0,1]\le0 とすると、開球(半径 1/31/3)による有限開被覆には、位数 00 の有限開細分 V\mathcal{V}、すなわち互いに交わらない開集合の有限族で [0,1][0,1] を覆うものがある。空でない元だけを残してよい。各元の直径は 2/3<12/3<1 なので、V\mathcal{V} は 2 個以上の元をもつ(1 個なら [0,1][0,1] 自身が元で、直径 11)。すると 1 つの元 VV と、残りの元の合併 V′V' は、互いに交わらない空でない開集合で [0,1]=V∪V′[0,1]=V\cup V' となり、[0,1][0,1] は連結でない。これは [0,1][0,1] が区間として連結であること(定理 4.1[連結性])に反する。よって dim⁡[0,1]≥1\dim[0,1]\ge1。

  • R. Engelking, Theory of Dimensions, Finite and Infinite, Heldermann, 1995 — 第 1 章(被覆次元と帰納的次元の関係)。
  • W. Hurewicz, H. Wallman, Dimension Theory, Princeton University Press, 1941 — 第 IV 章(Euclid 空間の次元)・第 V 章(被覆定理と埋め込み定理)。
  • J. R. Munkres, Topology (2nd ed.), Prentice Hall, 2000 — §50(次元論の入門と、RN\mathbb{R}^N への埋め込み)。
  • R. Engelking, General Topology, Heldermann, 1989 — 第 7 章(次元論)。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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