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Arzelà–Ascoli と Stone–Weierstrass:連続関数の空間のコンパクト性と稠密性

対象読者: 本テーマの距離空間の章(完備性、全有界、コンパクト性)と一様収束を学んだ人。位相空間の一般論は仮定せず、必要な事項はその場で導入します。

前提となる記事:距離空間:完備化・Baire のカテゴリー定理・縮小写像の原理・コンパクト性、関数列と一様収束:極限と積分・微分はいつ交換できるか

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この記事は、関数をたくさん並べたとき、その中から「うまく収束していく列」を取り出せるのはどんなときか、という問いと、どんな連続関数でも多項式のような素直な関数でいくらでも近づけられるのはなぜか、という問いを扱います。前者は、関数の値のふれ幅を全体でそろえて抑えられれば取り出せる、という形で答えが出ます。後者は、足し算・掛け算で閉じていて点を見分けられる関数の集まりなら近づけられる、という形で答えが出ます。読み終えると、この二つの定理の主張と、使いどころの見当がつきます。

  • 無限次元の空間では、有界な点列が収束する部分列をもつとは限りません。連続関数の空間 C(K)C(K)(一様ノルム)でもそうです。Arzelà–Ascoli の定理は、KK がコンパクト距離空間のとき、C(K)C(K) の部分集合が相対コンパクト(閉包がコンパクト)であることは「一様有界かつ同程度連続」と同値であると主張します。
  • 同程度連続性は、一様連続性の δ\delta を族全体で共通にとれるという条件です。これが「関数全体が有限個の情報で制御できる」ことの正体で、証明は全有界性に帰着します。
  • Stone–Weierstrass の定理は、コンパクト Hausdorff 空間 KK 上で、定数を含み点を分離する C(K)C(K) の部分環(和・積・定数倍で閉じた関数の集まり)は一様ノルムで稠密(どれだけ小さな誤差でも近づける)だと主張します。必要な道具は、絶対値関数 ∣t∣|t| を多項式で一様近似できること(これは平方根の逐次近似とディニの定理で示します)だけです。
  • 複素数値の場合は、複素共役で閉じていることが追加で必要です。単位円周上の zz の多項式が稠密でない例で、この条件が外せないことを確かめます。
  • 帰結として Weierstrass の多項式近似定理(閉区間上の連続関数は多項式で一様近似できる)、三角多項式の稠密性、モーメントによる関数の決定が得られます。Arzelà–Ascoli は積分作用素のコンパクト性に、Stone–Weierstrass はコンパクト作用素や群の表現論の基本定理に使われます。

1. 動機 — 連続関数の空間で「収束部分列」を探す

Section titled “1. 動機 — 連続関数の空間で「収束部分列」を探す”

距離空間 の 定理 4.3[距離空間] により、距離空間では「完備かつ全有界」がコンパクトの条件でした。有限次元のベクトル空間では有界閉集合がこれを満たしましたが、関数の空間はちがいます。たとえば [0,1][0,1] 上の連続関数の列 fn(x)=xnf_n(x) = x^n は、∣fn∣≤1|f_n| \le 1 と一様に有界ですが、一様ノルムで収束する部分列をもちません。どの部分列も x<1x < 1 で 00 に、x=1x = 1 で 11 に各点収束するので、収束するとしても極限は不連続関数であり、定理 4.1[関数列と一様収束] により一様収束できないからです。

では、どんな条件を追加すれば、一様有界な関数列から一様収束する部分列を取り出せるでしょうか。fn(x)=xnf_n(x) = x^n が失敗する理由は、x=1x = 1 の近くで fnf_n の傾きがいくらでも大きくなることです。「∣x−y∣<δ|x - y| < \delta ならば ∣f(x)−f(y)∣<ε|f(x) - f(y)| < \varepsilon」の δ\delta を、fnf_n によらずに選べないのです。この観察が同程度連続性の動機です。Arzelà–Ascoli の定理はこの直観の定式化で、微分方程式の解の存在証明(解の近似列から収束部分列を取る)や、積分作用素がコンパクトであることの証明に使われます。

第二の問いは逆向きの近似です。関数列と一様収束 で、ワイエルシュトラスの M 判定法から、連続だがどこでも微分できない関数 例 6.5[関数列と一様収束] が現れました。それほど乱れた連続関数でさえ、多項式(無限回微分可能な、最も素直な関数)で一様に近似できる、というのが Weierstrass の近似定理です。Stone–Weierstrass の定理は、多項式の代わりに「環の構造をもつ関数族」であれば同様の結論が成り立つことを示します。以下、この二つを、距離空間の道具だけで証明します。

2. 準備 — 連続関数の空間 C(K)C(K)

Section titled “2. 準備 — 連続関数の空間 C(K)C(K)C(K)”

KK をコンパクト Hausdorff 空間(コンパクト性 の 定義 3.2[コンパクト性] と 定義 2.1[コンパクト性] を参照)とします。この記事で扱う KK は、コンパクト距離空間(距離空間は Hausdorff)か、有界閉区間・コンパクトな Rn\mathbb{R}^n の部分集合です。C(K)C(K) で実数値連続関数全体を表し、複素数値のときは C(K;C)C(K; \mathbb{C}) と書きます。

連続関数のコンパクト集合上の像はコンパクトだから有界であり(系 6.2[コンパクト性])、

∥f∥=max⁡x∈K∣f(x)∣\|f\| = \max_{x \in K} |f(x)|

が定義できます。これを一様ノルムと呼び、d(f,g)=∥f−g∥d(f, g) = \|f - g\| を距離とします。∥f+g∥≤∥f∥+∥g∥\|f + g\| \le \|f\| + \|g\| と ∥fg∥≤∥f∥ ∥g∥\|fg\| \le \|f\|\,\|g\| は明らかです。

補題 2.1(C(K) の完備性)✓

KK をコンパクト Hausdorff 空間とすると、(C(K),∥⋅∥)(C(K), \|\cdot\|) は完備距離空間である。複素数値の場合も同様である。

証明(補題 2.1)

(fn)(f_n) をコーシー列とする。各 x∈Kx \in K で ∣fn(x)−fm(x)∣≤∥fn−fm∥|f_n(x) - f_m(x)| \le \|f_n - f_m\| だから (fn(x))(f_n(x)) は R\mathbb{R} のコーシー列であり、f(x)=lim⁡fn(x)f(x) = \lim f_n(x) が存在する(定理 7.3[実数の完備性とコーシー列])。ε>0\varepsilon > 0 に対し NN を、m,n≥Nm, n \ge N で ∥fn−fm∥<ε\|f_n - f_m\| < \varepsilon となるようにとり、m→∞m \to \infty とすると、すべての xx と n≥Nn \ge N で ∣fn(x)−f(x)∣≤ε|f_n(x) - f(x)| \le \varepsilon。つまり fn→ff_n \to f は一様収束である。ff の連続性:x0∈Kx_0 \in K と ε>0\varepsilon > 0 に対し、上のように NN をとり、fNf_N が x0x_0 で連続だから x0x_0 の開近傍 WW が存在して x∈Wx \in W ならば ∣fN(x)−fN(x0)∣<ε|f_N(x) - f_N(x_0)| < \varepsilon。すると x∈Wx \in W で ∣f(x)−f(x0)∣≤∣f(x)−fN(x)∣+∣fN(x)−fN(x0)∣+∣fN(x0)−f(x0)∣<3ε|f(x) - f(x_0)| \le |f(x) - f_N(x)| + |f_N(x) - f_N(x_0)| + |f_N(x_0) - f(x_0)| < 3\varepsilon。ゆえに f∈C(K)f \in C(K) で ∥fn−f∥→0\|f_n - f\| \to 0 である。

コンパクト距離空間では、連続関数は自動的に一様連続です。区間 [a,b][a,b] の場合は 定理 7.1[連続関数と一様連続性] でした。一般の場合を、ルベーグ数の補題から示します。

補題 2.2(コンパクト距離空間上の連続関数は一様連続)✓

KK をコンパクト距離空間、f∈C(K)f \in C(K) とする。任意の ε>0\varepsilon > 0 に対して、δ>0\delta > 0 が存在して、d(x,y)<δd(x, y) < \delta ならば ∣f(x)−f(y)∣<ε|f(x) - f(y)| < \varepsilon となる。

証明(補題 2.2)

各 x∈Kx \in K に対し Ux=f−1((f(x)−ε/2, f(x)+ε/2))U_x = f^{-1}\bigl((f(x) - \varepsilon/2,\ f(x) + \varepsilon/2)\bigr) とおく。ff の連続性により UxU_x は開集合で、x∈Uxx \in U_x だから {Ux}x∈K\{U_x\}_{x \in K} は KK の開被覆である。KK は点列コンパクト(定理 4.3[距離空間])だから、補題 4.2[距離空間] のルベーグ数 δ\delta がとれる。d(y,z)<δd(y, z) < \delta ならば {y,z}\{y, z\} の直径は δ\delta 未満なので、ある UxU_x に含まれ、∣f(y)−f(z)∣≤∣f(y)−f(x)∣+∣f(x)−f(z)∣<ε|f(y) - f(z)| \le |f(y) - f(x)| + |f(x) - f(z)| < \varepsilon。

3. 同程度連続性と Arzelà–Ascoli の定理

Section titled “3. 同程度連続性と Arzelà–Ascoli の定理”

定義 3.1(同程度連続・一様有界)↗

KK をコンパクト距離空間とし、F⊂C(K)\mathcal{F} \subset C(K) とする。

  • F\mathcal{F} が一様有界であるとは、ある MM があって、すべての f∈Ff \in \mathcal{F} で ∥f∥≤M\|f\| \le M となることをいう。
  • F\mathcal{F} が同程度連続(equicontinuous)であるとは、任意の ε>0\varepsilon > 0 に対して、δ>0\delta > 0 が存在して、すべての f∈Ff \in \mathcal{F} と、d(x,y)<δd(x, y) < \delta なるすべての x,y∈Kx, y \in K に対して ∣f(x)−f(y)∣<ε|f(x) - f(y)| < \varepsilon となることをいう。

補題 3.2(同程度連続なら各点有界性から一様有界性が従う)✓

KK をコンパクト距離空間、F⊂C(K)\mathcal{F} \subset C(K) を同程度連続とする。各 x∈Kx \in K に対して sup⁡f∈F∣f(x)∣<∞\sup_{f \in \mathcal{F}} |f(x)| < \infty ならば、F\mathcal{F} は一様有界である。

証明(補題 3.2)

同程度連続性で ε=1\varepsilon = 1 に対応する δ\delta をとる。KK は全有界(定理 4.3[距離空間])だから、有限個の点 x1,…,xmx_1, \ldots, x_m で K=⋃iB(xi,δ)K = \bigcup_i B(x_i, \delta) となる。Mi=sup⁡f∈F∣f(xi)∣M_i = \sup_{f \in \mathcal{F}} |f(x_i)| とし M=1+max⁡iMiM = 1 + \max_i M_i とおく。任意の x∈Kx \in K に対し d(x,xi)<δd(x, x_i) < \delta となる ii をとれば、f∈Ff \in \mathcal{F} について ∣f(x)∣≤∣f(xi)∣+1≤M|f(x)| \le |f(x_i)| + 1 \le M。

主定理に進みます。F\mathcal{F} が相対コンパクトとは、閉包 F‾\overline{\mathcal{F}}(C(K)C(K) の中での)がコンパクトであることをいいます。

定理 3.3(Arzelà–Ascoli の定理)✓

KK をコンパクト距離空間、F⊂C(K)\mathcal{F} \subset C(K) とする。次の二つは同値である。

  1. F\mathcal{F} は C(K)C(K) で相対コンパクトである。
  2. F\mathcal{F} は一様有界かつ同程度連続である。

証明の方針を先に述べます。(2) ⇒ (1) では、関数全体が「有限個の点での値」だけでほぼ決まってしまうことを使います。同程度連続性により、有限個の点 xix_i での値がそろえば、点と点のあいだでも関数の値は ε/3\varepsilon/3 ほどしかずれません。そこで、有限個の点での値の組を有限次元の立方体の点とみなして細かく分ければ、関数全体を有限個の代表でおおえて、全有界性が言えます。(1) ⇒ (2) は、全有界なら有限個の代表の連続性が全体に及ぶ、という逆向きの議論です。

証明(定理 3.3)

(2) ⇒ (1)。 ∥f∥≤M\|f\| \le M(f∈Ff \in \mathcal{F})とし、F\mathcal{F} が全有界であることを示す。ε>0\varepsilon > 0 を任意にとる。同程度連続性により、δ>0\delta > 0 が存在して、d(x,y)<δd(x,y) < \delta ならばすべての f∈Ff \in \mathcal{F} で ∣f(x)−f(y)∣<ε/3|f(x) - f(y)| < \varepsilon/3。KK は全有界だから、K=⋃i=1mB(xi,δ)K = \bigcup_{i=1}^{m} B(x_i, \delta) となる x1,…,xmx_1, \ldots, x_m がある。

写像 Φ:F→[−M,M]m\Phi : \mathcal{F} \to [-M, M]^m、Φ(f)=(f(x1),…,f(xm))\Phi(f) = (f(x_1), \ldots, f(x_m)) を考える。立方体 [−M,M]m[-M, M]^m を一辺 ε/3\varepsilon/3 未満の有限個の小立方体に分割する。Φ(F)\Phi(\mathcal{F}) と交わる小立方体のそれぞれから、そこへ Φ\Phi で写る F\mathcal{F} の元を一つずつ選んで f1,…,frf_1, \ldots, f_r とする。すると任意の f∈Ff \in \mathcal{F} について、Φ(f)\Phi(f) が入っている小立方体から選ばれた fjf_j が、すべての ii で ∣f(xi)−fj(xi)∣<ε/3|f(x_i) - f_j(x_i)| < \varepsilon/3 を満たす。任意の x∈Kx \in K に対し d(x,xi)<δd(x, x_i) < \delta となる ii をとると、

∣f(x)−fj(x)∣≤∣f(x)−f(xi)∣+∣f(xi)−fj(xi)∣+∣fj(xi)−fj(x)∣<ε3+ε3+ε3=ε.|f(x) - f_j(x)| \le |f(x) - f(x_i)| + |f(x_i) - f_j(x_i)| + |f_j(x_i) - f_j(x)| < \tfrac{\varepsilon}{3} + \tfrac{\varepsilon}{3} + \tfrac{\varepsilon}{3} = \varepsilon .

よって ∥f−fj∥≤ε\|f - f_j\| \le \varepsilon。ε\varepsilon は任意だから、F\mathcal{F} は全有界である(半径を 2ε2\varepsilon にとれば開球で覆える)。

全有界集合の閉包は全有界である:F\mathcal{F} が有限個の半径 ε\varepsilon の球で覆われるならば、F‾\overline{\mathcal{F}} の点は F\mathcal{F} の点から距離 ε\varepsilon 未満にあるので、半径 2ε2\varepsilon の同じ中心の球で覆われる。一方 F‾\overline{\mathcal{F}} は完備な C(K)C(K)(補題 2.1)の閉集合だから、命題 2.3[距離空間] (2) により完備である。定理 4.3[距離空間] より F‾\overline{\mathcal{F}} はコンパクトである。

(1) ⇒ (2)。 F‾\overline{\mathcal{F}} はコンパクトだから全有界である。ε>0\varepsilon > 0 とすると、F‾\overline{\mathcal{F}} は有限個の球 B(gj,ε/3)B(g_j, \varepsilon/3)(j=1,…,rj = 1, \ldots, r)で覆われる。各 gj∈C(K)g_j \in C(K) は有界、かつ 補題 2.2 により一様連続で、δj>0\delta_j > 0 を d(x,y)<δj⇒∣gj(x)−gj(y)∣<ε/3d(x,y) < \delta_j \Rightarrow |g_j(x) - g_j(y)| < \varepsilon/3 ととれる。δ=min⁡jδj\delta = \min_j \delta_j とおく。任意の f∈Ff \in \mathcal{F} に対し ∥f−gj∥<ε/3\|f - g_j\| < \varepsilon/3 となる jj があり、d(x,y)<δd(x, y) < \delta ならば

∣f(x)−f(y)∣≤∣f(x)−gj(x)∣+∣gj(x)−gj(y)∣+∣gj(y)−f(y)∣<ε.|f(x) - f(y)| \le |f(x) - g_j(x)| + |g_j(x) - g_j(y)| + |g_j(y) - f(y)| < \varepsilon .

これは同程度連続性である。一様有界性は、全有界集合が有界であること(∥f∥≤max⁡j∥gj∥+ε/3\|f\| \le \max_j \|g_j\| + \varepsilon/3)から従う。

実際に使うのは、次の点列版です。

系 3.4(Arzelà–Ascoli の定理(点列版))✓

KK をコンパクト距離空間とし、(fn)(f_n) を C(K)C(K) の一様有界かつ同程度連続な関数列とする。このとき、(fn)(f_n) は一様収束する部分列をもつ。その極限も連続である。

証明(系 3.4)

F={fn}\mathcal{F} = \{f_n\} に 定理 3.3 を適用すると F‾\overline{\mathcal{F}} はコンパクトである。コンパクト距離空間は点列コンパクトだから(定理 4.3[距離空間])、(fn)(f_n) は F‾\overline{\mathcal{F}} の点に収束する部分列をもつ。収束は ∥⋅∥\|\cdot\| に関する収束、つまり一様収束で、極限は F‾⊂C(K)\overline{\mathcal{F}} \subset C(K) の元として連続である。

例 3.5(条件の実例と反例)

(a) 同程度連続になる典型。 KK 上の関数で、ある定数 LL と 0<α≤10 < \alpha \le 1 について ∣f(x)−f(y)∣≤L d(x,y)α|f(x) - f(y)| \le L\, d(x,y)^{\alpha} をすべての f∈Ff \in \mathcal{F} が満たすならば、δ=(ε/L)1/α\delta = (\varepsilon/L)^{1/\alpha} とおけば同程度連続である(リプシッツ族、ヘルダー族)。K=[a,b]K = [a,b] で f∈C1f \in C^1、∥f∥∞+∥f′∥∞≤1\|f\|_\infty + \|f'\|_\infty \le 1 を満たす関数の族は、平均値の定理により ∣f(x)−f(y)∣≤∣x−y∣|f(x) - f(y)| \le |x - y| だから、一様有界かつ同程度連続であり、C[a,b]C[a,b] で相対コンパクトである。導関数を制御すれば関数がコンパクトになる、というのは偏微分方程式の理論(Sobolev 空間のコンパクト埋め込み)の原型である。

(b) 同程度連続性が必要である。 fn(x)=xnf_n(x) = x^n は C[0,1]C[0,1] で一様有界だが同程度連続でない。実際、ε=1/2\varepsilon = 1/2 に対し、どんな δ\delta をとっても x=1−δ/2x = 1 - \delta/2、y=1y = 1 に対し nn を大きくすると ∣fn(x)−fn(y)∣=1−(1−δ/2)n→1|f_n(x) - f_n(y)| = 1 - (1 - \delta/2)^n \to 1 となる。定理 3.3 によれば、{fn}\{f_n\} は相対コンパクトでない。冒頭の考察と一致する。

(c) 一様有界性が必要である。 fn(x)=nf_n(x) = n(定数関数)は同程度連続(∣fn(x)−fn(y)∣=0|f_n(x) - f_n(y)| = 0)だが、一様有界でなく、一様収束する部分列をもたない。

(d) 各点有界だけでは足りないが、同程度連続なら足りる。 補題 3.2 のとおり、同程度連続な族に対しては、一点ごとの有界性だけを確かめれば一様有界性がわかる。たとえば関数列で、すべての xx で fn(x)f_n(x) が有界、かつ同程度連続ならばよい。

例 3.6(積分作用素の像は相対コンパクト)

k:[0,1]×[0,1]→Rk : [0,1] \times [0,1] \to \mathbb{R} を連続関数とし、f∈C[0,1]f \in C[0,1] に対して

(Kf)(x)=∫01k(x,y)f(y) dy(Kf)(x) = \int_0^1 k(x, y) f(y)\,dy

と定める。F={ Kf∣∥f∥≤1 }\mathcal{F} = \{\, Kf \mid \|f\| \le 1 \,\} は C[0,1]C[0,1] で相対コンパクトである。

[0,1]2[0,1]^2 はコンパクトだから kk は有界で ∣k∣≤A|k| \le A、かつ一様連続である(補題 2.2;[0,1]2[0,1]^2 にはユークリッド距離を入れる)。∥f∥≤1\|f\| \le 1 ならば ∣(Kf)(x)∣≤A|(Kf)(x)| \le A で、一様有界である。ε>0\varepsilon > 0 に対し、kk の一様連続性から δ>0\delta > 0 が存在して ∣x−x′∣<δ|x - x'| < \delta ならば全 yy で ∣k(x,y)−k(x′,y)∣<ε|k(x,y) - k(x',y)| < \varepsilon となる。このとき

∣(Kf)(x)−(Kf)(x′)∣≤∫01∣k(x,y)−k(x′,y)∣ ∣f(y)∣ dy≤ε|(Kf)(x) - (Kf)(x')| \le \int_0^1 |k(x, y) - k(x', y)|\,|f(y)|\,dy \le \varepsilon

が ∥f∥≤1\|f\| \le 1 のすべての ff について成り立つから、F\mathcal{F} は同程度連続である。定理 3.3 より相対コンパクトである。つまり、有界な関数列 (fn)(f_n) に対して (Kfn)(Kf_n) は一様収束する部分列をもつ。作用素 KK が有界集合をコンパクトな集合へ写す、という性質をコンパクト作用素といいます。この例が、コンパクト作用素 の最初の例になります。

主定理の鍵は、一見無関係な次の事実です。

この補題は、次の定理の証明で「最大・最小をとる操作が近似の中で許される」ことを保証するために使います。最大・最小は絶対値で書けるので、折れ目のある ∣t∣|t| を滑らかな多項式で近似できればよい、という筋道です。証明では、まず s\sqrt{s} を近似します。qq が s\sqrt{s} の近似なら、誤差は s−q2s - q^2 に比例して現れるので、その半分を qq に足して直す、という修正を繰り返します。これを s=t2s = t^2 に使えば ∣t∣=t2|t| = \sqrt{t^2} の近似になります。

補題 4.1(絶対値関数の多項式による一様近似)✓

多項式 pnp_n で pn(0)=0p_n(0) = 0 を満たすものの列があって、[−1,1][-1, 1] 上 pn(t)p_n(t) が ∣t∣|t| に一様収束する。

証明(補題 4.1)

まず [0,1][0,1] 上で s\sqrt{s} を多項式で近似する。q0(s)=0q_0(s) = 0、qn+1(s)=qn(s)+s−qn(s)22q_{n+1}(s) = q_n(s) + \dfrac{s - q_n(s)^2}{2} と帰納的に定める。各 qnq_n は ss の多項式で qn(0)=0q_n(0) = 0 である。

主張:s∈[0,1]s \in [0,1] で 0≤qn(s)≤s0 \le q_n(s) \le \sqrt{s}。 n=0n = 0 は明らか。0≤qn≤s0 \le q_n \le \sqrt{s} とする。s−qn+1=s−qn−(s−qn)(s+qn)2=(s−qn)(1−s+qn2)\sqrt{s} - q_{n+1} = \sqrt{s} - q_n - \dfrac{(\sqrt{s} - q_n)(\sqrt{s} + q_n)}{2} = (\sqrt{s} - q_n)\Bigl(1 - \dfrac{\sqrt{s} + q_n}{2}\Bigr)。0≤s+qn≤2s≤20 \le \sqrt{s} + q_n \le 2\sqrt{s} \le 2 だから後ろの因子は [0,1][0, 1] に入り、0≤s−qn+1≤s−qn0 \le \sqrt{s} - q_{n+1} \le \sqrt{s} - q_n。よって qn+1≤sq_{n+1} \le \sqrt{s} であり、qn+1≥qn≥0q_{n+1} \ge q_n \ge 0(qn+1−qn=(s−qn2)/2≥0q_{n+1} - q_n = (s - q_n^2)/2 \ge 0)。

したがって qn(s)q_n(s) は nn について単調増加で s\sqrt{s} 以下だから収束する。極限を q(s)q(s) とすると、漸化式で n→∞n \to \infty として q=q+(s−q2)/2q = q + (s - q^2)/2、すなわち q2=sq^2 = s、q≥0q \ge 0 だから q(s)=sq(s) = \sqrt{s}。連続関数 gn(s)=s−qn(s)g_n(s) = \sqrt{s} - q_n(s) は [0,1][0,1] 上で単調減少しながら連続関数 00 に各点収束するので、定理 4.3[関数列と一様収束] により一様収束する。

pn(t)=qn(t2)p_n(t) = q_n(t^2) とおく。t∈[−1,1]t \in [-1,1] のとき t2∈[0,1]t^2 \in [0,1] で t2=∣t∣\sqrt{t^2} = |t| だから、sup⁡∣t∣≤1∣pn(t)−∣t∣∣=sup⁡s∈[0,1]∣qn(s)−s∣→0\sup_{|t| \le 1} |p_n(t) - |t|| = \sup_{s \in [0,1]} |q_n(s) - \sqrt{s}| \to 0。また pn(0)=qn(0)=0p_n(0) = q_n(0) = 0 である。

|t|q2(t²)0
絶対値関数 |t|(折れ線)を、q_2(t²)(なだらかな曲線)と q_6(t²) で近似した様子。滑らかな多項式でも、折れ目に向けてどんどん近づいていきます。

定義 4.2(部分環と点の分離)↗

KK をコンパクト Hausdorff 空間とする。A⊂C(K)A \subset C(K) が部分環(実数値の場合は部分代数)であるとは、f,g∈Af, g \in A、c∈Rc \in \mathbb{R} に対して f+g, cf, fg∈Af + g,\ cf,\ fg \in A が成り立つことをいう。AA が点を分離するとは、x≠yx \ne y なる任意の x,y∈Kx, y \in K に対して、f(x)≠f(y)f(x) \ne f(y) となる f∈Af \in A が存在することをいう。

定理 4.3(Stone–Weierstrass の定理(実数値))✓

KK をコンパクト Hausdorff 空間、AA を C(K)C(K) の部分環で、定数関数 11 を含み、点を分離するものとする。このとき AA は C(K)C(K) で一様ノルムに関して稠密である。すなわち任意の f∈C(K)f \in C(K) と ε>0\varepsilon > 0 に対し、∥f−a∥<ε\|f - a\| < \varepsilon となる a∈Aa \in A が存在する。

証明の流れは次のとおりです。(i)〜(iii) で、AA の閉包 BB が和・積に加えて最大・最小でも閉じることを示します。(iv) で、二点での値を自由に指定できる関数が AA にあることを示します。(v) では、近似したい ff に対して、まず一点 xx を固定し、xx で ff と一致して全体では f+εf + \varepsilon を超えない関数を、最小をとって作ります。次に xx を動かし、それらの最大をとって、f−εf - \varepsilon より下に落ちない関数にします。上から押さえ、下から持ち上げて、ff の前後 ε\varepsilon の帯に収める、という二段構えです。

証明(定理 4.3)

K=∅K = \emptyset なら自明だから K≠∅K \ne \emptyset とする。BB を AA の C(K)C(K) における閉包とする。

(i) BB は部分環で 11 を含む。 f,g∈Bf, g \in B に対し AA の列 an→fa_n \to f、bn→gb_n \to g をとれば、∥anbn−fg∥≤∥an∥ ∥bn−g∥+∥an−f∥ ∥g∥→0\|a_n b_n - fg\| \le \|a_n\|\,\|b_n - g\| + \|a_n - f\|\,\|g\| \to 0(∥an∥\|a_n\| は有界)であり、和・スカラー倍も同様である。

(ii) f∈Bf \in B ならば ∣f∣∈B|f| \in B。 f=0f = 0 なら明らか。そうでなければ g=f/∥f∥∈Bg = f/\|f\| \in B は ∣g∣≤1|g| \le 1 を満たす。補題 4.1 の多項式 pnp_n をとると、pn(0)=0p_n(0) = 0 なので pn(g)=c1g+c2g2+⋯p_n(g) = c_1 g + c_2 g^2 + \cdots は BB の元であり、∥pn(g)−∣g∣∥≤sup⁡∣t∣≤1∣pn(t)−∣t∣∣→0\|p_n(g) - |g|\| \le \sup_{|t| \le 1} |p_n(t) - |t|| \to 0。BB は閉だから ∣g∣∈B|g| \in B、したがって ∣f∣=∥f∥ ∣g∣∈B|f| = \|f\|\,|g| \in B。

(iii) f,g∈Bf, g \in B ならば max⁡(f,g), min⁡(f,g)∈B\max(f, g),\ \min(f, g) \in B。 max⁡(f,g)=f+g+∣f−g∣2\max(f,g) = \dfrac{f + g + |f - g|}{2}、min⁡(f,g)=f+g−∣f−g∣2\min(f,g) = \dfrac{f + g - |f - g|}{2} と (i)(ii) による。帰納法で有限個の関数の最大・最小も BB に属する。

(iv) 値の指定。 x≠yx \ne y と実数 α,β\alpha, \beta に対し、h∈Ah \in A で h(x)=αh(x) = \alpha、h(y)=βh(y) = \beta となるものがある。実際 AA は点を分離するから u∈Au \in A で u(x)≠u(y)u(x) \ne u(y) となるものがあり、

h=α+(β−α) u−u(x)u(y)−u(x)h = \alpha + (\beta - \alpha)\,\frac{u - u(x)}{u(y) - u(x)}

は AA の元(AA は定数を含む)で所要の値をとる。

(v) 近似。 f∈C(K)f \in C(K)、ε>0\varepsilon > 0 をとる。

各 x,y∈Kx, y \in K に対し、x≠yx \ne y なら (iv) で hxy∈Ah_{xy} \in A を hxy(x)=f(x)h_{xy}(x) = f(x)、hxy(y)=f(y)h_{xy}(y) = f(y) となるようにとり、x=yx = y なら hxx=f(x)⋅1h_{xx} = f(x) \cdot 1 とする。xx を固定する。Uy={ z∈K∣hxy(z)<f(z)+ε }U_y = \{\, z \in K \mid h_{xy}(z) < f(z) + \varepsilon \,\} は yy を含む開集合である(hxy−fh_{xy} - f の連続性)。KK はコンパクトだから有限個の y1,…,ymy_1, \ldots, y_m で K=⋃jUyjK = \bigcup_j U_{y_j}。gx=min⁡jhxyj∈Bg_x = \min_j h_{xy_j} \in B とおくと、(iii) により gx∈Bg_x \in B であり、すべての z∈Kz \in K で gx(z)<f(z)+εg_x(z) < f(z) + \varepsilon。また gx(x)=f(x)g_x(x) = f(x)(各 hxyj(x)=f(x)h_{xy_j}(x) = f(x) のため)。

次に Vx={ z∈K∣gx(z)>f(z)−ε }V_x = \{\, z \in K \mid g_x(z) > f(z) - \varepsilon \,\} は xx を含む開集合である。KK のコンパクト性から有限個の x1,…,xkx_1, \ldots, x_k で K=⋃iVxiK = \bigcup_i V_{x_i}。g=max⁡igxi∈Bg = \max_i g_{x_i} \in B とおく。すべての z∈Kz \in K で g(z)>f(z)−εg(z) > f(z) - \varepsilon(z∈Vxiz \in V_{x_i} なる ii をとれば g(z)≥gxi(z)>f(z)−εg(z) \ge g_{x_i}(z) > f(z) - \varepsilon)かつ g(z)<f(z)+εg(z) < f(z) + \varepsilon。よって ∥f−g∥≤ε\|f - g\| \le \varepsilon。g∈B=A‾g \in B = \overline{A} だから ∥g−a∥<ε\|g - a\| < \varepsilon となる a∈Aa \in A があり、∥f−a∥<2ε\|f - a\| < 2\varepsilon となる。

この証明で、コンパクト性は (v) の二回の有限被覆の選択に使われています。Hausdorff 性は証明の中では直接使っていません。点が連続関数で分離されるなら、その空間は自動的に Hausdorff になるからです(f(x)≠f(y)f(x) \ne f(y) なら f−1f^{-1} で値の近傍の逆像をとれば x,yx, y が開集合で分離されます)。

系 4.4(Weierstrass の多項式近似定理)✓

K⊂RnK \subset \mathbb{R}^n をコンパクト集合とする。任意の f∈C(K)f \in C(K) と ε>0\varepsilon > 0 に対し、nn 変数の多項式 PP で、すべての x∈Kx \in K で ∣f(x)−P(x)∣<ε|f(x) - P(x)| < \varepsilon となるものが存在する。特に K=[a,b]K = [a,b] では、閉区間上の連続関数は多項式で一様近似できる。

証明(系 4.4)

AA を KK 上に制限した nn 変数多項式関数の全体とする。AA は和・スカラー倍・積で閉じ、定数 11 を含む。点を分離する:x≠yx \ne y なら、ある座標 ii で xi≠yix_i \ne y_i だから、多項式 P(z)=ziP(z) = z_i が P(x)≠P(y)P(x) \ne P(y) を与える。KK は Hausdorff(距離空間)だから、定理 4.3 により AA は C(K)C(K) で稠密である。

例 4.5(モーメントが全部 0 ならば関数は 0)

f∈C[a,b]f \in C[a, b] が、すべての n=0,1,2,…n = 0, 1, 2, \ldots について ∫abf(x) xn dx=0\int_a^b f(x)\,x^n\,dx = 0 を満たすならば、f=0f = 0 である。

積分の線型性から、任意の多項式 PP について ∫abfP dx=0\int_a^b f P\,dx = 0。系 4.4 により多項式 PkP_k で ∥f−Pk∥→0\|f - P_k\| \to 0 となるものがとれる。すると

∫abf2 dx=∫abf(f−Pk) dx+∫abfPk dx=∫abf(f−Pk) dx≤(b−a) ∥f∥ ∥f−Pk∥→0.\int_a^b f^2\,dx = \int_a^b f (f - P_k)\,dx + \int_a^b f P_k\,dx = \int_a^b f(f - P_k)\,dx \le (b-a)\,\|f\|\,\|f - P_k\| \to 0 .

よって ∫f2=0\int f^2 = 0 で、f2f^2 は連続かつ非負だから f≡0f \equiv 0。連続関数は、その「モーメント列」で一意に決まる、というこの事実は、確率論で分布の決定に使われます。

注意 4.6(コンパクト性を外すと)

Weierstrass の近似定理は、有界閉区間でなければ成り立ちません。R\mathbb{R} 全体で sup⁡x∈R∣sin⁡x−P(x)∣<1\sup_{x \in \mathbb{R}} |\sin x - P(x)| < 1 となる多項式 PP があるとすると、PP は有界でなければならず、したがって定数 cc である。ところが sup⁡∣sin⁡x−c∣≥1\sup |\sin x - c| \ge 1(sin⁡x=±1\sin x = \pm 1 のどちらかが cc から距離 11 以上)となって矛盾します。コンパクトでないと、多項式は無限遠で発散してしまうからです。

定理 4.7(Stone–Weierstrass の定理(複素数値))✓

KK をコンパクト Hausdorff 空間、AA を C(K;C)C(K; \mathbb{C}) の複素部分環(和・複素数倍・積で閉じる)で、定数 11 を含み、点を分離し、複素共役で閉じている(f∈A⇒fˉ∈Af \in A \Rightarrow \bar{f} \in A)とする。このとき AA は C(K;C)C(K; \mathbb{C}) で一様ノルムに関して稠密である。

証明(定理 4.7)

AR={ f∈A∣f は実数値 }A_{\mathbb{R}} = \{\, f \in A \mid f \text{ は実数値} \,\} とおく。ARA_\mathbb{R} は実数値連続関数の部分環で、11 を含む。f∈Af \in A ならば Re⁡f=(f+fˉ)/2\operatorname{Re} f = (f + \bar{f})/2 と Im⁡f=(f−fˉ)/(2i)\operatorname{Im} f = (f - \bar{f})/(2i) はともに AA に属する実数値関数だから ARA_\mathbb{R} の元である。点の分離:x≠yx \ne y に対し f∈Af \in A が f(x)≠f(y)f(x) \ne f(y) なら、Re⁡f\operatorname{Re} f か Im⁡f\operatorname{Im} f の少なくとも一方が x,yx, y で異なる値をとり、それは ARA_\mathbb{R} の元である。したがって 定理 4.3 により、ARA_\mathbb{R} は C(K)C(K)(実数値)で稠密。

g=u+iv∈C(K;C)g = u + iv \in C(K; \mathbb{C})(u,vu, v は実数値連続)と ε>0\varepsilon > 0 をとる。a,b∈ARa, b \in A_\mathbb{R} を ∥u−a∥<ε\|u - a\| < \varepsilon、∥v−b∥<ε\|v - b\| < \varepsilon ととる。a+ib∈Aa + ib \in A で、∥g−(a+ib)∥≤∥u−a∥+∥v−b∥<2ε\|g - (a + ib)\| \le \|u - a\| + \|v - b\| < 2\varepsilon。

例 4.8(三角多項式の稠密性)

K=S1={z∈C∣∣z∣=1}K = S^1 = \{z \in \mathbb{C} \mid |z| = 1\}(コンパクト Hausdorff)とし、AA を znz^n(n∈Zn \in \mathbb{Z})の有限一次結合全体とする。znzm=zn+mz^n z^m = z^{n+m} だから積で閉じ、z0=1z^0 = 1 を含み、zn‾=z−n\overline{z^n} = z^{-n}(∣z∣=1|z| = 1 のとき zˉ=z−1\bar{z} = z^{-1})だから共役で閉じ、zz 自身が点を分離する。定理 4.7 により AA は C(S1;C)C(S^1; \mathbb{C}) で稠密である。

f:R→Cf : \mathbb{R} \to \mathbb{C} を周期 2π2\pi の連続関数とすると、g(eiθ)=f(θ)g(e^{i\theta}) = f(\theta) は S1S^1 上の連続関数を定める(θ↦eiθ\theta \mapsto e^{i\theta} は局所的に連続な逆写像(偏角)をもつ)。よって、周期 2π2\pi の連続関数は、三角多項式 ∑∣n∣≤Ncneinθ\sum_{|n| \le N} c_n e^{in\theta} で一様近似できる。これは LpL^p 空間 で三角関数系の完全性を論じる際の入口になる事実です。

次の例のねらいは、zz の多項式だけでは zˉ\bar{z} に近づけないことを、積分という「ものさし」で示すことです。zz の多項式はどれも eiθe^{i\theta} との積を 00 から 2π2\pi まで積分すると 00 になりますが、zˉ\bar{z} では 2π2\pi になります。この差が、一様収束で近づこうとしても埋まらない、という議論です。

例 4.9(共役で閉じる条件は外せない)

K=S1K = S^1 で、AA を zz の多項式 ∑k=0Nckzk\sum_{k=0}^{N} c_k z^k 全体とする。AA は定数を含む複素部分環で、点を分離するが共役で閉じていない(zˉ=z−1∉A\bar{z} = z^{-1} \notin A)。実際 AA は C(S1;C)C(S^1; \mathbb{C}) で稠密でない。

p(z)=∑k≥0ckzk∈Ap(z) = \sum_{k \ge 0} c_k z^k \in A に対して、∫02πp(eiθ) eiθ dθ=∑kck∫02πei(k+1)θ dθ=0\int_0^{2\pi} p(e^{i\theta})\, e^{i\theta}\, d\theta = \sum_k c_k \int_0^{2\pi} e^{i(k+1)\theta}\, d\theta = 0(k+1≥1k + 1 \ge 1 だから各積分は 00)。一方、g(z)=zˉg(z) = \bar{z} については ∫02πeiθ‾ eiθ dθ=2π\int_0^{2\pi} \overline{e^{i\theta}}\, e^{i\theta}\, d\theta = 2\pi。もし pn→gp_n \to g が一様収束すれば、∣∫(pn−g)eiθdθ∣≤2π∥pn−g∥→0\bigl|\int (p_n - g) e^{i\theta} d\theta\bigr| \le 2\pi \|p_n - g\| \to 0 だが、左辺は常に 2π2\pi なので矛盾する。

演習 5.1標準

KK をコンパクト距離空間、(fn)(f_n) を C(K)C(K) の同程度連続な列とし、各点 x∈Kx \in K で fn(x)→f(x)f_n(x) \to f(x)(f:K→Rf : K \to \mathbb{R})とする。このとき f∈C(K)f \in C(K) であり、fn→ff_n \to f は一様収束であることを示せ。

解答

まず一様有界性:各 xx で (fn(x))(f_n(x)) は収束列だから有界、同程度連続だから 補題 3.2 により一様有界。系 3.4 により、(fn)(f_n) の任意の部分列は、さらに一様収束する部分列 fnk→g∈C(K)f_{n_k} \to g \in C(K) をもつ。各点収束の極限は一意だから g=fg = f であり、特に f∈C(K)f \in C(K)。一様収束しないとすると、ある ε>0\varepsilon > 0 と部分列 (fnj)(f_{n_j}) で ∥fnj−f∥≥ε\|f_{n_j} - f\| \ge \varepsilon となるものがあるが、その部分列のさらなる部分列は ff に一様収束するはずで、矛盾する。

演習 5.2標準

偶数次の項だけからなる多項式(x2x^2 の多項式)の全体は、C[0,1]C[0,1] で稠密だが、C[−1,1]C[-1,1] では稠密でないことを示せ。

解答

[0,1][0,1] では、A={P(x2)}A = \{ P(x^2) \} は部分環で 11 を含み、x↦x2x \mapsto x^2 が単射だから点を分離する(x≠y∈[0,1]x \ne y \in [0,1] なら x2≠y2x^2 \ne y^2)。定理 4.3 により稠密。[−1,1][-1, 1] では、AA の元はすべて偶関数で、f(x)=xf(x) = x との距離は ∥P(x2)−x∥≥∣P(1)−1∣\|P(x^2) - x\| \ge |P(1) - 1| と ∣P(1)+1∣|P(1) + 1| のうち大きい方、すなわち ≥1\ge 1 である(x=±1x = \pm 1 での値の差 2=∣(P(1)−1)−(P(1)+1)∣2 = |(P(1) - 1) - (P(1) + 1)|)。よって ff は AA の閉包に入らず、稠密でない。点を分離する条件が xx と −x-x で破れているのが原因である。

演習 5.3標準

(Vf)(x)=∫0xf(y) dy(Vf)(x) = \int_0^x f(y)\,dy で定まる V:C[0,1]→C[0,1]V : C[0,1] \to C[0,1] について、{Vf∣∥f∥≤1}\{Vf \mid \|f\| \le 1\} が相対コンパクトであることを示せ。

解答

∣(Vf)(x)∣≤∥f∥≤1|(Vf)(x)| \le \|f\| \le 1 で一様有界。∣(Vf)(x)−(Vf)(x′)∣=∣∫x′xf∣≤∣x−x′∣|(Vf)(x) - (Vf)(x')| = \bigl|\int_{x'}^{x} f\bigr| \le |x - x'| だから、δ=ε\delta = \varepsilon として同程度連続。定理 3.3 より相対コンパクト。

  • W. Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed., McGraw–Hill, 1976 — Chapter 7(関数列と関数級数)。同程度連続、Arzelà–Ascoli、Stone–Weierstrass を扱う。
  • W. Rudin, Real and Complex Analysis, 3rd ed., McGraw–Hill, 1987 — Chapter 5(Banach 空間)、Chapter 7 付近。
  • G. B. Folland, Real Analysis: Modern Techniques and Their Applications, 2nd ed., Wiley, 1999 — §4.6(Arzelà–Ascoli の定理)と §4.7(Stone–Weierstrass の定理)。
  • J. R. Munkres, Topology, 2nd ed., Prentice Hall, 2000 — §45(距離空間のコンパクト性)、§47(関数空間のコンパクト性)。
  • 杉浦光夫『解析入門 I』東京大学出版会、1980 — 関数列の一様収束と近似に関する章。
  • M. H. Stone, “The generalized Weierstrass approximation theorem”, Mathematics Magazine 21 (1948), 167–184, 237–254.

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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