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Radon 測度と Riesz–Markov–角谷の表現定理:正の線形汎関数を測度で表す

対象読者: 本テーマの抽象測度と Radon–Nikodym の章、および局所コンパクト空間(Urysohn の補題、1 の分割)を学んだ人。関数解析の双対空間は必要に応じ説明します。

前提となる記事:測度空間と Carathéodory の拡張定理:前測度から測度を作り、一意性を示す、局所コンパクト空間:一点コンパクト化・Urysohn・Tietze・1 の分割・位相群、符号付き測度と Radon–Nikodym の定理:Hahn・Jordan・Lebesgue 分解から微積分学の基本定理まで

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連続関数を一つ渡すと数が一つ返ってくる「規則」で、足し算とスカラー倍を保ち、非負の関数には非負の値を返すものがあったとします。たとえば積分がそうです。この記事は、そのような規則は例外なく何かの「重みの付け方」(測度)による積分の形で書ける、ということを示します。読み終えると、積分の規則さえ作れば測度が手に入る、という測度の作り方が使えるようになります。

  • 測度 μ\mu があれば、積分 f↦∫f dμf\mapsto\int f\,d\mu は連続関数の空間の上の正の線形汎関数(線形で、非負の関数には非負の値を返す写像)になります。Riesz–Markov–角谷の表現定理はその逆で、局所コンパクト Hausdorff(LCH)空間 XX 上の Cc(X)C_c(X) への正の線形汎関数は、必ずある Radon 測度の積分として、しかもただ一通りに書けると主張します。
  • Radon 測度とは、コンパクト集合で有限、ボレル集合で外正則(外側から開集合で測度を近似できる)、開集合で内正則(内側からコンパクト集合で測度を近似できる)なボレル測度のことです。正則性の条件は、一意性を成り立たせるために入れる条件です。
  • 証明は、開集合の測度を μ(U)=sup⁡{Λf:f≺U}\mu(U)=\sup\{\Lambda f: f\prec U\} で定め、外測度を作り、Carathéodory の定理(外測度から測度を取り出す定理)で測度にするという道筋です。使う位相の道具は Urysohn の補題と 1 の分割だけです。
  • 第二可算な LCH 空間(たとえば Rn\mathbb{R}^n やコンパクト距離空間)では、コンパクト集合で有限なボレル測度は自動的に Radon です。
  • 有界な線形汎関数まで広げると、C0(X)C_0(X) の双対空間は、有限符号付き Radon 測度の空間に全変動ノルム(符号付き測度の大きさを測るノルム)を入れたものと等長同型になります。
  • この同一視のもとで、汎関数の弱 * 収束は「連続関数を当てたときの積分の収束」です。質量が一様に有界な測度の列は弱 * 収束する部分列をもちます(Helly の選出定理)。

1. 動機 — 積分を「関数に数を割り当てる規則」として見る

Section titled “1. 動機 — 積分を「関数に数を割り当てる規則」として見る”

リーマン積分 f↦∫abf(x) dxf\mapsto\int_a^b f(x)\,dx を、連続関数 ff に実数を割り当てる写像として眺めると、二つの性質が目に付きます。線形であることと、f≥0f\ge0 なら値が 00 以上であることです。点 00 での値 f↦f(0)f\mapsto f(0) も同じ二つの性質をもち、こちらはディラック測度 δ0\delta_0 の積分です。では、この二つの性質をもつ写像は、すべて何かの測度の積分なのでしょうか。

F. Riesz は 1909 年に、閉区間 [0,1][0,1] 上の連続関数の空間について、有界な線形汎関数がスティルチェス積分 ∫f dg\int f\,dg(gg は有界変動関数)で書けることを示しました。その後、Markov や角谷静夫によって、一般の空間(LCH 空間)での形に整えられました。

この定理は、測度を作る道具として使われます。測度を直接作るには、σ-加法族の上で可算加法性を確かめなければなりません。しかし、連続関数への正の線形汎関数を作るだけなら、たいていずっと簡単です。たとえば次のような場面で使われます。

  • Haar 測度:位相群の上で平行移動不変な積分を、正の線形汎関数として作り、表現定理で測度に直す。
  • スペクトル定理:自己共役作用素 AA とベクトル vv から f↦⟨v,f(A)v⟩f\mapsto\langle v,f(A)v\rangle という正の汎関数を作ると、表現定理によりスペクトル測度が得られる。
  • 可換 C* 環の状態:C(K)C(K) 上の状態は KK 上の確率測度と同じものになる(C* 環の状態と GNS 構成 の 例 3.10[C* 環の状態と GNS 構成])。
  • 極限で測度を作る:測度の列の極限を、まず汎関数の極限として作り、表現定理で測度に戻す。円板上の Herglotz の表現(調和関数と Poisson 積分)はこの型の議論です。

以下、XX は LCH 空間(局所コンパクト空間 の 定義 2.1[局所コンパクト空間])とし、関数は実数値とします(複素数値の場合は 注意 6.3 で扱います)。XX の開集合から生成される σ-加法族をボレル σ-加法族 B(X)\mathcal{B}(X) と書き、B(X)\mathcal{B}(X) 上の測度をボレル測度といいます。連続関数 ff について {f>a}\{f>a\} は開集合なので、連続関数はボレル可測です(定義 3.1[ルベーグ積分の定義と収束定理])。

定義 2.1(Cc(X)C_c(X)・C0(X)C_0(X) と記号 ≺)↗

  • Cc(X)C_c(X) は、台 supp⁡f={f≠0}‾\operatorname{supp}f=\overline{\{f\ne0\}} がコンパクトな連続関数 f:X→Rf:X\to\mathbb{R} 全体とする。
  • C0(X)C_0(X) は、連続関数 f:X→Rf:X\to\mathbb{R} で、すべての ε>0\varepsilon>0 について {x:∣f(x)∣≥ε}\{x:|f(x)|\ge\varepsilon\} がコンパクトなもの(無限遠で消える関数)全体とし、一様ノルム ∥f∥=sup⁡X∣f∣\|f\|=\sup_X|f| を入れる。
  • KK がコンパクト、UU が開集合、f∈Cc(X)f\in C_c(X) のとき、K≺fK\prec f は「0≤f≤10\le f\le1 かつ KK 上 f=1f=1」を、f≺Uf\prec U は「0≤f≤10\le f\le1 かつ supp⁡f⊆U\operatorname{supp}f\subseteq U」を表す。

XX がコンパクトなら Cc(X)=C0(X)=C(X)C_c(X)=C_0(X)=C(X) です。記号 ≺\prec を使うと、Urysohn の補題(定理 4.1[局所コンパクト空間])は「K⊆UK\subseteq U ならば K≺f≺UK\prec f\prec U となる ff が存在する」と短く書けます。この記事で最もよく使う事実です。

補題 2.2(CcC_c は C0C_0 で稠密)✓

Cc(X)⊆C0(X)C_c(X)\subseteq C_0(X) であり、Cc(X)C_c(X) は C0(X)C_0(X) で一様ノルムについて稠密である。

証明(補題 2.2)

f∈Cc(X)f\in C_c(X) なら {∣f∣≥ε}\{|f|\ge\varepsilon\} はコンパクト集合 supp⁡f\operatorname{supp}f の閉部分集合なのでコンパクトです(定理 4.1[コンパクト性])。逆に f∈C0(X)f\in C_0(X) と ε>0\varepsilon>0 を取り、K={∣f∣≥ε}K=\{|f|\ge\varepsilon\} とします。KK はコンパクトなので、Urysohn の補題で K≺φK\prec\varphi となる φ∈Cc(X)\varphi\in C_c(X) を取ります。φf∈Cc(X)\varphi f\in C_c(X) で、KK 上では f−φf=0f-\varphi f=0、KK の外では ∣f−φf∣=(1−φ)∣f∣≤∣f∣<ε|f-\varphi f|=(1-\varphi)|f|\le|f|<\varepsilon です。よって ∥f−φf∥≤ε\|f-\varphi f\|\le\varepsilon です。

定義 3.1(Radon 測度)↗

XX 上のボレル測度 μ\mu が Radon 測度であるとは、次の 3 条件を満たすことをいう。

  1. (局所有限性)すべてのコンパクト集合 KK で μ(K)<∞\mu(K)<\infty。
  2. (外正則性)すべての E∈B(X)E\in\mathcal{B}(X) で μ(E)=inf⁡{μ(U):U⊇E, U は開}\mu(E)=\inf\{\mu(U): U\supseteq E,\ U\text{ は開}\}。
  3. (開集合の内正則性)すべての開集合 UU で μ(U)=sup⁡{μ(K):K⊆U, K はコンパクト}\mu(U)=\sup\{\mu(K): K\subseteq U,\ K\text{ はコンパクト}\}。

ボレル集合 EE について 3 の等式が成り立つとき、μ\mu は EE で内正則であるといいます。定義ではすべてのボレル集合での内正則性を要求していないことに注意してください。この弱い形にしておくと、一意性と存在の両方が過不足なく成り立ちます(注意 4.7)。

定義 3.2(正の線形汎関数)↗

線形写像 Λ:Cc(X)→R\Lambda:C_c(X)\to\mathbb{R} が正であるとは、f≥0f\ge0 ならば Λf≥0\Lambda f\ge0 となることをいう。

正の線形汎関数は単調です。f≤gf\le g なら g−f≥0g-f\ge0 なので Λg−Λf=Λ(g−f)≥0\Lambda g-\Lambda f=\Lambda(g-f)\ge0 です。証明で繰り返し使います。

μ\mu がコンパクト集合で有限なボレル測度なら、f∈Cc(X)f\in C_c(X) について ∣f∣≤∥f∥χsupp⁡f|f|\le\|f\|\chi_{\operatorname{supp}f} なので ff は可積分で、Λμf=∫f dμ\Lambda_\mu f=\int f\,d\mu は Cc(X)C_c(X) 上の正の線形汎関数です。表現定理はこの逆を述べます。

例 3.3(Radon 測度の例)

  1. ルベーグ測度 mm は Rn\mathbb{R}^n 上の Radon 測度です(可測集合とルベーグ測度)。コンパクト集合は有界なので測度は有限で、正則性は下の 定理 5.3 から従います(Rn\mathbb{R}^n は第二可算です)。証明は 命題 5.4 に書きます。
  2. ディラック測度 δa(E)=χE(a)\delta_a(E)=\chi_E(a) は任意の LCH 空間で Radon で、∫f dδa=f(a)\int f\,d\delta_a=f(a) です。
  3. 離散空間 Z\mathbb{Z} 上の数え上げ測度は Radon です。コンパクト集合は有限集合で、すべての集合が開かつ閉だからです。

定理 4.1(Riesz–Markov–角谷の表現定理)✓

XX を LCH 空間、Λ:Cc(X)→R\Lambda:C_c(X)\to\mathbb{R} を正の線形汎関数とする。このとき XX 上の Radon 測度 μ\mu で、すべての f∈Cc(X)f\in C_c(X) について

Λf=∫Xf dμ\Lambda f=\int_X f\,d\mu

となるものがただ一つ存在する。さらに μ\mu は次を満たす。

  1. 開集合 UU について μ(U)=sup⁡{Λf:f≺U}\mu(U)=\sup\{\Lambda f: f\prec U\}。
  2. コンパクト集合 KK について μ(K)=inf⁡{Λf:K≺f}\mu(K)=\inf\{\Lambda f: K\prec f\}。

証明の方針は、まず開集合に対して μ0\mu_0 で「大きさ」を決め、それを外側から近似して外測度 μ∗\mu^{*} にし、Carathéodory の定理で測度に直し、最後にその測度の積分が Λ\Lambda に戻ることを確かめる、というものです。

証明は四つの補題に分けます。以下、Λ\Lambda を固定し、開集合 UU について

μ0(U):=sup⁡{Λf:f≺U},μ∗(E):=inf⁡{μ0(U):U⊇E, U は開}(E⊆X)\mu_0(U):=\sup\{\Lambda f: f\prec U\},\qquad \mu^{*}(E):=\inf\{\mu_0(U): U\supseteq E,\ U\text{ は開}\}\quad(E\subseteq X)

とおきます。f≺Uf\prec U なら f≥0f\ge0 なので μ0(U)≥0\mu_0(U)\ge0 です。U⊆VU\subseteq V なら f≺Uf\prec U は f≺Vf\prec V でもあるので μ0(U)≤μ0(V)\mu_0(U)\le\mu_0(V)、したがって開集合 UU では μ∗(U)=μ0(U)\mu^{*}(U)=\mu_0(U) です。

補題 4.2(μ* は外測度)✓

μ∗\mu^{*} は XX 上の外測度である。

証明(補題 4.2)

f≺∅f\prec\emptyset なら f=0f=0 なので μ∗(∅)=μ0(∅)=0\mu^{*}(\emptyset)=\mu_0(\emptyset)=0 です。単調性は定義(下限を取る範囲が狭くなる)から従います。残るのは可算劣加法性です。

開集合の場合。 開集合 U1,U2,…U_1,U_2,\dots と U=⋃jUjU=\bigcup_jU_j について μ0(U)≤∑jμ0(Uj)\mu_0(U)\le\sum_j\mu_0(U_j) を示します。f≺Uf\prec U を取ります。supp⁡f\operatorname{supp}f はコンパクトで {Uj}\{U_j\} に覆われるので、有限個 U1,…,UnU_1,\dots,U_n で覆われます(番号を付け替えました)。1 の分割(定理 6.1[局所コンパクト空間])により hi≺Uih_i\prec U_i で supp⁡f\operatorname{supp}f 上 ∑i=1nhi=1\sum_{i=1}^nh_i=1 となるものを取ると、f=∑ifhif=\sum_ifh_i で fhi≺Uifh_i\prec U_i です。よって

Λf=∑i=1nΛ(fhi)≤∑i=1nμ0(Ui)≤∑j=1∞μ0(Uj).\Lambda f=\sum_{i=1}^n\Lambda(fh_i)\le\sum_{i=1}^n\mu_0(U_i)\le\sum_{j=1}^\infty\mu_0(U_j).

f≺Uf\prec U について上限を取れば主張が出ます。

一般の場合。 E1,E2,⋯⊆XE_1,E_2,\dots\subseteq X とし、∑jμ∗(Ej)<∞\sum_j\mu^{*}(E_j)<\infty としてよいです。ε>0\varepsilon>0 について、開集合 Uj⊇EjU_j\supseteq E_j で μ0(Uj)<μ∗(Ej)+ε2−j\mu_0(U_j)<\mu^{*}(E_j)+\varepsilon2^{-j} となるものを取ります。⋃Ej⊆⋃Uj\bigcup E_j\subseteq\bigcup U_j なので、開集合の場合から

μ∗(⋃jEj)≤μ0(⋃jUj)≤∑jμ0(Uj)≤∑jμ∗(Ej)+ε.\mu^{*}\Bigl(\bigcup_jE_j\Bigr)\le\mu_0\Bigl(\bigcup_jU_j\Bigr)\le\sum_j\mu_0(U_j)\le\sum_j\mu^{*}(E_j)+\varepsilon.

次の補題は、μ∗\mu^{*} を測度にするために、開集合 UU が「集合をきれいに二つに切り分ける」ことを確かめるものです。開集合 VV を UU の内側の部分と外側の部分に分け、前者に台をもつ関数 ff と、後者に台をもつ関数 gg を取って足し合わせると、VV の中の一つの関数 f+gf+g になる、というのが証明の考え方です。

補題 4.3(開集合は μ*-可測)✓

すべての開集合 UU は Carathéodory の意味で μ∗\mu^{*}-可測である。したがって B(X)⊆M(μ∗)\mathcal{B}(X)\subseteq\mathcal{M}(\mu^{*}) であり、μ:=μ∗∣B(X)\mu:=\mu^{*}|_{\mathcal{B}(X)} はボレル測度で、外正則である。

証明(補題 4.3)

任意の E⊆XE\subseteq X について μ∗(E)≥μ∗(E∩U)+μ∗(E∖U)\mu^{*}(E)\ge\mu^{*}(E\cap U)+\mu^{*}(E\setminus U) を示せば十分です(逆向きは劣加法性)。μ∗(E)=∞\mu^{*}(E)=\infty なら明らかなので、有限とします。

E=VE=V が開集合の場合。 ε>0\varepsilon>0 とします。V∩UV\cap U は開集合なので、f≺V∩Uf\prec V\cap U で Λf>μ0(V∩U)−ε\Lambda f>\mu_0(V\cap U)-\varepsilon となるものが取れます。V∖supp⁡fV\setminus\operatorname{supp}f も開集合(supp⁡f\operatorname{supp}f はハウスドルフ空間のコンパクト集合なので閉)なので、g≺V∖supp⁡fg\prec V\setminus\operatorname{supp}f で Λg>μ0(V∖supp⁡f)−ε\Lambda g>\mu_0(V\setminus\operatorname{supp}f)-\varepsilon となるものが取れます。ff と gg の台は交わらないので 0≤f+g≤10\le f+g\le1、台は VV に含まれるコンパクト集合で、f+g≺Vf+g\prec V です。V∖U⊆V∖supp⁡fV\setminus U\subseteq V\setminus\operatorname{supp}f にも注意すると

μ∗(V)≥Λf+Λg>μ∗(V∩U)+μ∗(V∖U)−2ε.\mu^{*}(V)\ge\Lambda f+\Lambda g>\mu^{*}(V\cap U)+\mu^{*}(V\setminus U)-2\varepsilon.

一般の EE の場合。 開集合 V⊇EV\supseteq E で μ∗(V)<μ∗(E)+ε\mu^{*}(V)<\mu^{*}(E)+\varepsilon となるものを取ると、前段と単調性から

μ∗(E)+ε>μ∗(V)≥μ∗(V∩U)+μ∗(V∖U)≥μ∗(E∩U)+μ∗(E∖U).\mu^{*}(E)+\varepsilon>\mu^{*}(V)\ge\mu^{*}(V\cap U)+\mu^{*}(V\setminus U)\ge\mu^{*}(E\cap U)+\mu^{*}(E\setminus U).

Carathéodory の定理(定理 3.2[測度空間と Carathéodory の拡張定理])により M(μ∗)\mathcal{M}(\mu^{*}) は σ-加法族で、μ∗\mu^{*} はその上で測度です。M(μ∗)\mathcal{M}(\mu^{*}) は開集合をすべて含むので B(X)\mathcal{B}(X) を含みます。外正則性は μ∗\mu^{*} の定義そのものです。

補題 4.4(コンパクト集合の測度)✓

コンパクト集合 KK について μ(K)=inf⁡{Λf:f∈Cc(X), f≥χK}=inf⁡{Λf:K≺f}\mu(K)=\inf\{\Lambda f: f\in C_c(X),\ f\ge\chi_K\}=\inf\{\Lambda f: K\prec f\} であり、とくに μ(K)<∞\mu(K)<\infty である。

証明(補題 4.4)

f∈Cc(X)f\in C_c(X), f≥χKf\ge\chi_K とし、0<ε<10<\varepsilon<1 とします。Uε={f>1−ε}U_\varepsilon=\{f>1-\varepsilon\} は KK を含む開集合です。g≺Uεg\prec U_\varepsilon なら、UεU_\varepsilon 上 g≤1<f/(1−ε)g\le1<f/(1-\varepsilon)、UεU_\varepsilon の外で g=0≤f/(1−ε)g=0\le f/(1-\varepsilon) なので、単調性から Λg≤Λf/(1−ε)\Lambda g\le\Lambda f/(1-\varepsilon) です。よって μ(K)≤μ0(Uε)≤Λf/(1−ε)\mu(K)\le\mu_0(U_\varepsilon)\le\Lambda f/(1-\varepsilon) で、ε→0\varepsilon\to0 として μ(K)≤Λf\mu(K)\le\Lambda f です。

逆に、外正則性から開集合 U⊇KU\supseteq K で μ(U)<μ(K)+ε\mu(U)<\mu(K)+\varepsilon となるもの(μ(K)=∞\mu(K)=\infty なら任意の UU)を取り、Urysohn の補題で K≺f≺UK\prec f\prec U を取ると、f≥χKf\ge\chi_K かつ Λf≤μ0(U)=μ(U)\Lambda f\le\mu_0(U)=\mu(U) です。これで二つの下限がともに μ(K)\mu(K) に等しいことがわかります。最後に、K≺fK\prec f となる f∈Cc(X)f\in C_c(X) は存在する(U=XU=X として Urysohn の補題)ので、μ(K)≤Λf<∞\mu(K)\le\Lambda f<\infty です。

次の補題が積分との一致です。ff を値の高さで NN 枚の薄い層に切り、各層の汎関数の値を、上下のコンパクト集合の測度ではさみます。積分の値も同じ上下の測度ではさまれるので、Λf\Lambda f と ∫f dμ\int f\,d\mu は同じ区間に入り、層を細かくすれば区間の幅が 00 に縮んで二つが一致します。

1/N2/N1K_0 = supp fK_1 : f ≥ 1/NK_2 : f ≥ 2/N
を高さ ごとの層 に切る。 は 上で 、 の外で 0

補題 4.5(積分との一致)✓

すべての f∈Cc(X)f\in C_c(X) について Λf=∫Xf dμ\Lambda f=\int_Xf\,d\mu である。

証明(補題 4.5)

f=f+−f−f=f^{+}-f^{-}(f±=max⁡(±f,0)∈Cc(X)f^{\pm}=\max(\pm f,0)\in C_c(X))と両辺の線形性から f≥0f\ge0 の場合に帰着し、さらに正の定数倍して 0≤f≤10\le f\le1 としてよいです。

N∈NN\in\mathbb{N} を固定し、K0=supp⁡fK_0=\operatorname{supp}f、Kj={f≥j/N}K_j=\{f\ge j/N\}(j=1,…,Nj=1,\dots,N)とおきます。どれもコンパクト集合 K0K_0 の閉部分集合なのでコンパクトです。さらに

fj:=min⁡(max⁡(f−j−1N, 0), 1N)(j=1,…,N)f_j:=\min\Bigl(\max\bigl(f-\tfrac{j-1}{N},\,0\bigr),\,\tfrac1N\Bigr)\qquad(j=1,\dots,N)

とおきます(図の 1 枚の層)。f(x)∈[k−1N,kN]f(x)\in[\frac{k-1}{N},\frac kN] なら、j<kj\lt k で fj(x)=1Nf_j(x)=\frac1N、j=kj=k で fk(x)=f(x)−k−1Nf_k(x)=f(x)-\frac{k-1}{N}、j>kj\gt k で fj(x)=0f_j(x)=0 なので、f=∑j=1Nfjf=\sum_{j=1}^Nf_j です。また KjK_j 上では fj=1Nf_j=\frac1N、fj(x)>0f_j(x)>0 なら f(x)>j−1Nf(x)>\frac{j-1}{N} なので x∈Kj−1x\in K_{j-1} です。よって

1NχKj≤fj≤1NχKj−1,supp⁡fj⊆Kj−1.\tfrac1N\chi_{K_j}\le f_j\le\tfrac1N\chi_{K_{j-1}},\qquad \operatorname{supp}f_j\subseteq K_{j-1}.

積分の側。 積分の単調性から 1Nμ(Kj)≤∫fj dμ≤1Nμ(Kj−1)\frac1N\mu(K_j)\le\int f_j\,d\mu\le\frac1N\mu(K_{j-1}) です。

汎関数の側。 Nfj≥χKjNf_j\ge\chi_{K_j} なので 補題 4.4 から μ(Kj)≤Λ(Nfj)\mu(K_j)\le\Lambda(Nf_j) です。また Kj−1K_{j-1} を含む任意の開集合 UU について Nfj≺UNf_j\prec U なので Λ(Nfj)≤μ(U)\Lambda(Nf_j)\le\mu(U) で、外正則性から Λ(Nfj)≤μ(Kj−1)\Lambda(Nf_j)\le\mu(K_{j-1}) です。

j=1,…,Nj=1,\dots,N について足すと、Λf\Lambda f と ∫f dμ\int f\,d\mu はどちらも区間

[1N∑j=1Nμ(Kj), 1N∑j=0N−1μ(Kj)]\Bigl[\tfrac1N\sum_{j=1}^{N}\mu(K_j),\ \tfrac1N\sum_{j=0}^{N-1}\mu(K_j)\Bigr]

に入ります。区間の幅は 1N(μ(K0)−μ(KN))≤1Nμ(supp⁡f)\frac1N(\mu(K_0)-\mu(K_N))\le\frac1N\mu(\operatorname{supp}f) で、μ(supp⁡f)<∞\mu(\operatorname{supp}f)<\infty(補題 4.4)なので N→∞N\to\infty で 00 に行きます。よって Λf=∫f dμ\Lambda f=\int f\,d\mu です。

証明(定理 4.1)

存在。 補題 4.3 の μ\mu はボレル測度で外正則、補題 4.4 によりコンパクト集合で有限です。開集合 UU での内正則性を示します。α<μ(U)=μ0(U)\alpha<\mu(U)=\mu_0(U) とすると、f≺Uf\prec U で Λf>α\Lambda f>\alpha となるものがあります。K=supp⁡f⊆UK=\operatorname{supp}f\subseteq U とおくと、g≥χKg\ge\chi_K となる g∈Cc(X)g\in C_c(X) は g≥fg\ge f を満たすので Λg≥Λf\Lambda g\ge\Lambda f で、補題 4.4 から μ(K)≥Λf>α\mu(K)\ge\Lambda f>\alpha です。よって μ\mu は Radon です。表現 Λf=∫f dμ\Lambda f=\int f\,d\mu は 補題 4.5、1 は μ=μ∗\mu=\mu^{*} が開集合で μ0\mu_0 に一致すること、2 は 補題 4.4 です。

一意性。 ν\nu も Λ\Lambda を表す Radon 測度とします。開集合 UU とコンパクト集合 K⊆UK\subseteq U について、Urysohn の補題で K≺f≺UK\prec f\prec U を取ると

ν(K)≤∫f dν=Λf=∫f dμ≤μ(U).\nu(K)\le\int f\,d\nu=\Lambda f=\int f\,d\mu\le\mu(U).

ν\nu は開集合で内正則なので、KK について上限を取って ν(U)≤μ(U)\nu(U)\le\mu(U) です。μ,ν\mu,\nu を入れ替えれば ν(U)=μ(U)\nu(U)=\mu(U) で、両者は開集合で一致します。外正則性から、すべてのボレル集合で一致します。

一意性の証明で、外正則性と開集合の内正則性を両方使ったことに注意してください。どちらかを外すと、同じ汎関数を表す別の測度が現れ得ます。

例 4.6(リーマン積分からルベーグ測度を作り直す)

X=RX=\mathbb{R}、Λf=∫−∞∞f(x) dx\Lambda f=\int_{-\infty}^\infty f(x)\,dx(台がコンパクトな連続関数のリーマン積分)とします。Λ\Lambda は正の線形汎関数なので、Radon 測度 μ\mu が一つ決まります。区間 [a,b][a,b] について、[a,b]≺f[a,b]\prec f かつ supp⁡f⊆[a−δ,b+δ]\operatorname{supp}f\subseteq[a-\delta,b+\delta] となる区分線形の ff を取ると Λf≤b−a+2δ\Lambda f\le b-a+2\delta なので μ([a,b])≤b−a\mu([a,b])\le b-a、逆に f≺(a,b)f\prec(a,b) で Λf≥b−a−2δ\Lambda f\ge b-a-2\delta となるものが取れるので μ((a,b))≥b−a\mu((a,b))\ge b-a です。したがって μ\mu は区間に長さを与えるボレル測度で、測度の一意性(定理 5.2[測度空間と Carathéodory の拡張定理])からボレル集合上のルベーグ測度に一致します。外測度を使わずに、リーマン積分だけからルベーグ測度が得られたことになります。

注意 4.7(なぜ内正則性を開集合だけに要求するのか)

すべてのボレル集合での内正則性まで要求すると、表現定理の存在の部分が一般の LCH 空間で成り立たなくなります。表現定理が作る測度が、ある(測度が無限大の)ボレル集合で内正則にならない LCH 空間の例が知られています(Folland, 第 7 章の演習を参照)。一方、測度が有限の集合(さらに σ-有限な集合)では内正則性が自動的に従います(次節)。

この節のねらいは、Radon 測度の定義が開集合でしか内正則性を要求していなくても、測度が有限な集合(さらに σ-有限な集合)では内側からコンパクト集合で近似できる、と示すことです。証明の方針は、集合 EE を外側から開集合 UU で近似し、はみ出した部分 U∖EU\setminus E も小さな開集合 VV で覆い、UU の内側のコンパクト集合から VV を除く、というものです。

命題 5.1(σ-有限な集合での内正則性)✓

μ\mu を XX 上の Radon 測度とする。E∈B(X)E\in\mathcal{B}(X) が μ\mu について σ-有限(測度有限なボレル集合の可算和)ならば、μ\mu は EE で内正則である。

証明(命題 5.1)

μ(E)<∞\mu(E)<\infty の場合。 ε>0\varepsilon>0 とします。外正則性から開集合 U⊇EU\supseteq E で μ(U)<μ(E)+ε\mu(U)<\mu(E)+\varepsilon となるものを取ります。μ(U∖E)=μ(U)−μ(E)<ε\mu(U\setminus E)=\mu(U)-\mu(E)<\varepsilon なので、ふたたび外正則性から開集合 V⊇U∖EV\supseteq U\setminus E で μ(V)<ε\mu(V)<\varepsilon となるものが取れます。UU での内正則性から、コンパクト集合 F⊆UF\subseteq U で μ(F)>μ(U)−ε\mu(F)>\mu(U)-\varepsilon となるものを取り、K=F∖VK=F\setminus V とおきます。KK はコンパクト集合の閉部分集合なのでコンパクトで、K⊆U∖V⊆U∖(U∖E)=EK\subseteq U\setminus V\subseteq U\setminus(U\setminus E)=E です。そして

μ(K)≥μ(F)−μ(V)>μ(U)−2ε≥μ(E)−2ε.\mu(K)\ge\mu(F)-\mu(V)>\mu(U)-2\varepsilon\ge\mu(E)-2\varepsilon.

σ-有限の場合。 E=⋃jEjE=\bigcup_jE_j(μ(Ej)<∞\mu(E_j)<\infty)とし、EjE_j を E1∪⋯∪EjE_1\cup\cdots\cup E_j に取り替えて単調増加としてよいです。測度の下からの連続性で μ(Ej)→μ(E)\mu(E_j)\to\mu(E) で、各 EjE_j は前段で内側からコンパクト集合で近似できるので、EE でも内正則です。

次の定理は、実用上の多くの空間で「Radon であるか」を気にしなくてよいことを保証します。

補題 5.2(第二可算な LCH 空間の開集合は σ-コンパクト)✓

XX が第二可算な LCH 空間なら、XX のすべての開集合は可算個のコンパクト集合の和集合である。

証明(補題 5.2)

V\mathcal{V} を可算な開基とし、開集合 UU を固定します。VU={B∈V:B‾ はコンパクトで B‾⊆U}\mathcal{V}_U=\{B\in\mathcal{V}: \overline{B}\text{ はコンパクトで }\overline{B}\subseteq U\} とおきます。x∈Ux\in U について、命題 2.2[局所コンパクト空間] により開近傍 WW で W‾\overline{W} がコンパクト、W‾⊆U\overline{W}\subseteq U となるものがあり、開基の元 BB で x∈B⊆Wx\in B\subseteq W となるものがあります。B‾\overline{B} はコンパクト集合 W‾\overline{W} の閉部分集合なのでコンパクトで、B∈VUB\in\mathcal{V}_U です。よって U=⋃B∈VUB‾U=\bigcup_{B\in\mathcal{V}_U}\overline{B} で、これは可算和です。

次の定理の証明は三段階です。まず表現定理が作る Radon 測度 ν\nu と与えられた μ\mu が開集合で一致することを示し、次に ν\nu についてボレル集合を開集合と閉集合ではさみ、最後にそのはさみ方を使って μ\mu と ν\nu がすべてのボレル集合で一致することを結論します。

定理 5.3(正則性の自動成立)✓

XX を LCH 空間で、すべての開集合が σ-コンパクトであるもの(たとえば第二可算なもの)とする。このとき、コンパクト集合で有限な XX 上のボレル測度は Radon 測度である。

証明(定理 5.3)

μ\mu をコンパクト集合で有限なボレル測度とします。Λf=∫f dμ\Lambda f=\int f\,d\mu は Cc(X)C_c(X) 上の正の線形汎関数なので、定理 4.1 の Radon 測度 ν\nu が取れます。μ=ν\mu=\nu を示せば終わりです。

第 1 段:開集合で一致する。 開集合 UU を U=⋃jKjU=\bigcup_jK_j(KjK_j はコンパクト)と書き、KjK_j を K1∪⋯∪KjK_1\cup\cdots\cup K_j に取り替えて単調増加とします。Urysohn の補題で K1≺f1≺UK_1\prec f_1\prec U を取り、帰納的に Kn∪supp⁡f1∪⋯∪supp⁡fn−1≺fn≺UK_n\cup\operatorname{supp}f_1\cup\cdots\cup\operatorname{supp}f_{n-1}\prec f_n\prec U を取ります。fnf_n は supp⁡fn−1\operatorname{supp}f_{n-1} 上で 1≥fn−11\ge f_{n-1} なので fn≥fn−1f_n\ge f_{n-1} です。x∈Ux\in U なら十分大きな nn で x∈Knx\in K_n なので fn(x)=1f_n(x)=1、x∉Ux\notin U なら fn(x)=0f_n(x)=0 です。すなわち fn↑χUf_n\uparrow\chi_U で、単調収束定理(定理 5.2[ルベーグ積分の定義と収束定理])を μ,ν\mu,\nu の両方に使うと

μ(U)=lim⁡n∫fn dμ=lim⁡nΛfn=lim⁡n∫fn dν=ν(U).\mu(U)=\lim_n\int f_n\,d\mu=\lim_n\Lambda f_n=\lim_n\int f_n\,d\nu=\nu(U).

第 2 段:ν\nu について、ボレル集合を開集合と閉集合ではさむ。 XX 自身も開集合なので X=⋃jLjX=\bigcup_jL_j(LjL_j はコンパクト)と書けます。ボレル集合 EE と ε>0\varepsilon>0 について、ν(E∩Lj)<∞\nu(E\cap L_j)<\infty と外正則性から開集合 Uj⊇E∩LjU_j\supseteq E\cap L_j で ν(Uj∖(E∩Lj))<ε2−j\nu(U_j\setminus(E\cap L_j))<\varepsilon2^{-j} となるものを取り、U=⋃jUjU=\bigcup_jU_j とおくと、U⊇EU\supseteq E かつ ν(U∖E)≤∑jν(Uj∖(E∩Lj))<ε\nu(U\setminus E)\le\sum_j\nu(U_j\setminus(E\cap L_j))<\varepsilon です。同じことを EcE^{c} に行うと開集合 W⊇EcW\supseteq E^{c} で ν(W∖Ec)<ε\nu(W\setminus E^{c})<\varepsilon となるものが取れ、閉集合 F=Wc⊆EF=W^{c}\subseteq E について ν(E∖F)=ν(W∩E)<ε\nu(E\setminus F)=\nu(W\cap E)<\varepsilon です。よって F⊆E⊆UF\subseteq E\subseteq U、ν(U∖F)<2ε\nu(U\setminus F)<2\varepsilon です。

第 3 段:ボレル集合で一致する。 U∖FU\setminus F は開集合なので、第 1 段から μ(U∖F)=ν(U∖F)<2ε\mu(U\setminus F)=\nu(U\setminus F)<2\varepsilon です。すると

ν(E)≤ν(U)=μ(U)≤μ(E)+μ(U∖F)<μ(E)+2ε,μ(E)≤μ(U)=ν(U)≤ν(E)+ν(U∖F)<ν(E)+2ε.\nu(E)\le\nu(U)=\mu(U)\le\mu(E)+\mu(U\setminus F)<\mu(E)+2\varepsilon,\qquad \mu(E)\le\mu(U)=\nu(U)\le\nu(E)+\nu(U\setminus F)<\nu(E)+2\varepsilon.

ε\varepsilon は任意なので μ(E)=ν(E)\mu(E)=\nu(E) です。

コンパクト距離空間は第二可算です(有限個の 1/k1/k 球で覆い、その中心全体が可算な稠密集合になり、中心と有理半径の球が開基になります)。Rn\mathbb{R}^n とその開集合も第二可算です。したがってこれらの空間上の有限ボレル測度、たとえば確率分布は、すべて Radon です。

この定理をルベーグ測度に当てはめた結果を、命題として書いておきます。なお GδG_\delta 集合とは、可算個の開集合の共通部分として書ける集合のことです。Rd\mathbb{R}^d のルベーグ測度は、R\mathbb{R} のルベーグ測度 mm をボレル集合に制限したものの dd 個の直積測度として定めます。命題 2.3[直積測度と Fubini–Tonelli の定理] により B(Rd)=B(R)⊗d\mathcal{B}(\mathbb{R}^d)=\mathcal{B}(\mathbb{R})^{\otimes d} なので、これは B(Rd)\mathcal{B}(\mathbb{R}^d) 上の測度です。

命題 5.4(Rdℝ^d のルベーグ測度は Radon でボレル正則)✓

md=m×⋯×mm_d=m\times\cdots\times m を B(Rd)\mathcal{B}(\mathbb{R}^d) 上のルベーグ測度とする。

  1. mdm_d は Radon 測度であり、さらにすべてのボレル集合で内正則である。
  2. (ボレル正則性)任意の E⊆RdE\subseteq\mathbb{R}^d について md∗(E):=inf⁡{md(B):B⊇E, B∈B(Rd)}m_d^{*}(E):=\inf\{m_d(B): B\supseteq E,\ B\in\mathcal{B}(\mathbb{R}^d)\} とおくと、md∗(E)=inf⁡{md(U):U⊇E, U は開}m_d^{*}(E)=\inf\{m_d(U): U\supseteq E,\ U\text{ は開}\} であり、GδG_\delta 集合 G⊇EG\supseteq E で md(G)=md∗(E)m_d(G)=m_d^{*}(E) となるものが存在する。
証明(命題 5.4)

1. Rd\mathbb{R}^d は LCH 空間です。コンパクト集合 K⊆RdK\subseteq\mathbb{R}^d は有界なので(定理 5.2[コンパクト性])、ある kk で K⊆[−k,k]dK\subseteq[-k,k]^d です。直積測度の長方形での値(定理 3.2[直積測度と Fubini–Tonelli の定理] を d−1d-1 回使う)と区間の測度(命題 3.5[可測集合とルベーグ測度])から md(K)≤md([−k,k]d)=(2k)d<∞m_d(K)\le m_d([-k,k]^d)=(2k)^d<\infty です。

次に、Rd\mathbb{R}^d の開集合 UU は σ-コンパクトです。各点 x∈Ux\in U について xx を含む有理数端点の閉立方体 ∏i[ai,bi]⊆U\prod_i[a_i,b_i]\subseteq U が取れ、そのような立方体は可算個で、それぞれ有界閉集合なのでコンパクトです(定理 5.2[コンパクト性])。よって UU はそれらの可算和です(補題 5.2 の特別な場合です)。以上で 定理 5.3 の仮定が満たされ、mdm_d は Radon 測度です。Rd=⋃k[−k,k]d\mathbb{R}^d=\bigcup_k[-k,k]^d はどのボレル集合 EE に対しても E=⋃k(E∩[−k,k]d)E=\bigcup_k(E\cap[-k,k]^d) を測度有限な集合の可算和として与えるので、命題 5.1 により mdm_d はすべてのボレル集合で内正則です。

2. 開集合はボレル集合なので md∗(E)≤inf⁡{md(U):U⊇E 開}m_d^{*}(E)\le\inf\{m_d(U): U\supseteq E\text{ 開}\} です。逆に、ボレル集合 B⊇EB\supseteq E について外正則性(1 で示した Radon 性)から md(B)=inf⁡{md(U):U⊇B 開}m_d(B)=\inf\{m_d(U): U\supseteq B\text{ 開}\} で、U⊇BU\supseteq B なら U⊇EU\supseteq E なので、右辺の下限は md(B)m_d(B) 以下です。BB について下限を取れば等号が出ます。

md∗(E)=∞m_d^{*}(E)=\infty なら G=RdG=\mathbb{R}^d とすればよいです。md∗(E)<∞m_d^{*}(E)<\infty なら、各 nn について開集合 Un⊇EU_n\supseteq E で md(Un)<md∗(E)+1/nm_d(U_n)<m_d^{*}(E)+1/n となるものを取り、G=⋂nUnG=\bigcap_nU_n とおきます。GG は GδG_\delta 集合で E⊆GE\subseteq G なので、md∗(E)≤md(G)≤md(Un)<md∗(E)+1/nm_d^{*}(E)\le m_d(G)\le m_d(U_n)<m_d^{*}(E)+1/n がすべての nn で成り立ち、md(G)=md∗(E)m_d(G)=m_d^{*}(E) です。

d=1d=1 のとき、m1∗m_1^{*} は 可測集合とルベーグ測度 の外測度 m∗m^{*} に一致します。EE を覆う開区間の列 {In}\{I_n\} からは開集合 U=⋃nIn⊇EU=\bigcup_nI_n\supseteq E が得られて m(U)≤∑nℓ(In)m(U)\le\sum_n\ell(I_n)、逆に開集合 U⊇EU\supseteq E については m∗(E)≤m(U)m^{*}(E)\le m(U) なので、2 の第 1 式の下限と外測度の定義の下限が一致するからです。2 の GG は 命題 6.6[可測集合とルベーグ測度] の (3) の GG の dd 次元版にあたります。

この節のねらいは、正の汎関数に限らず、符号をもつ有界な汎関数も、符号付きの測度による積分として書けると示すことです。そのために、符号付き測度の大きさを測る全変動ノルムを使います。Hahn 分解とは、符号付き測度 μ\mu に対して、空間を μ\mu が正の側の部分 PP と負の側の部分 NN に分ける分解のことです。

ここまでは正の汎関数でした。次に、符号を許した有界な汎関数を扱います。XX 上の有限符号付き Radon 測度とは、有限 Radon 測度 μ1,μ2\mu_1,\mu_2 の差 μ=μ1−μ2\mu=\mu_1-\mu_2 と書ける B(X)\mathcal{B}(X) 上の有限符号付き測度(定義 2.3[符号付き測度と Radon–Nikodym の定理])のことで、その全体を M(X)M(X) と書きます。Hahn 分解(定理 3.2[符号付き測度と Radon–Nikodym の定理])X=P⊔NX=P\sqcup N を使って、全変動ノルムを ∥μ∥:=μ(P)−μ(N)\|\mu\|:=\mu(P)-\mu(N) と定めます(分解の取り方によらないことは Hahn 分解の一意性の部分から従います)。∫f dμ:=∫f dμ1−∫f dμ2\int f\,d\mu:=\int f\,d\mu_1-\int f\,d\mu_2 は表し方 μ=μ1−μ2\mu=\mu_1-\mu_2 によりません(μ1+μ2′=μ1′+μ2\mu_1+\mu_2'=\mu_1'+\mu_2 の両辺を積分すればよい)。

有限 Radon 測度の和は Radon です。外正則性は二つの下限をそれぞれ ε/2\varepsilon/2 の精度で近似する開集合の共通部分を取れば、開集合の内正則性は二つのコンパクト集合の合併を取れば確かめられます。

補題 6.1(正の汎関数の有界性と分解)✓

  1. C0(X)C_0(X) 上の正の線形汎関数 Λ\Lambda は有界である。
  2. C0(X)C_0(X) 上の有界線形汎関数 Λ\Lambda は、二つの正の線形汎関数の差 Λ=Λ+−Λ−\Lambda=\Lambda^{+}-\Lambda^{-} に書ける。
証明(補題 6.1)

1. 有界でないとすると、∥gn∥≤1\|g_n\|\le1 で ∣Λgn∣≥8n|\Lambda g_n|\ge 8^n となる gng_n があり、∣Λgn∣≤Λgn++Λgn−|\Lambda g_n|\le\Lambda g_n^{+}+\Lambda g_n^{-} なので、fn∈{gn+,gn−}f_n\in\{g_n^{+},g_n^{-}\} を選んで fn≥0f_n\ge0、∥fn∥≤1\|f_n\|\le1、Λfn≥8n/2≥4n\Lambda f_n\ge 8^n/2\ge4^n とできます。f=∑n2−nfnf=\sum_n2^{-n}f_n は一様収束し、C0(X)C_0(X) は一様収束で閉じているので f∈C0(X)f\in C_0(X) です。正値性から各 nn で Λf≥2−nΛfn≥2n\Lambda f\ge2^{-n}\Lambda f_n\ge2^n となり、矛盾です。

2. f≥0f\ge0 について Λ+f:=sup⁡{Λg:g∈C0(X), 0≤g≤f}\Lambda^{+}f:=\sup\{\Lambda g: g\in C_0(X),\ 0\le g\le f\} とおきます。0≤Λ+f≤∥Λ∥∥f∥0\le\Lambda^{+}f\le\|\Lambda\|\|f\|(g=0g=0 を取れば下界)で、c≥0c\ge0 について Λ+(cf)=cΛ+f\Lambda^{+}(cf)=c\Lambda^{+}f です。f1,f2≥0f_1,f_2\ge0 について加法性を示します。0≤gi≤fi0\le g_i\le f_i なら 0≤g1+g2≤f1+f20\le g_1+g_2\le f_1+f_2 なので Λ+(f1+f2)≥Λ+f1+Λ+f2\Lambda^{+}(f_1+f_2)\ge\Lambda^{+}f_1+\Lambda^{+}f_2。逆に 0≤g≤f1+f20\le g\le f_1+f_2 なら g1=min⁡(g,f1)g_1=\min(g,f_1)、g2=g−g1g_2=g-g_1 とおくと 0≤g1≤f10\le g_1\le f_1、0≤g2≤f20\le g_2\le f_2(g≤f1g\le f_1 の点では g2=0g_2=0、そうでない点では g2=g−f1≤f2g_2=g-f_1\le f_2)なので Λg=Λg1+Λg2≤Λ+f1+Λ+f2\Lambda g=\Lambda g_1+\Lambda g_2\le\Lambda^{+}f_1+\Lambda^{+}f_2 です。

一般の ff には Λ+f:=Λ+f+−Λ+f−\Lambda^{+}f:=\Lambda^{+}f^{+}-\Lambda^{+}f^{-} と定めます。f=a−bf=a-b(a,b≥0a,b\ge0)と書けば a+f−=b+f+a+f^{-}=b+f^{+} なので加法性から Λ+a−Λ+b=Λ+f\Lambda^{+}a-\Lambda^{+}b=\Lambda^{+}f となり、これを使うと Λ+\Lambda^{+} は線形です。f≥0f\ge0 なら g=fg=f を取って Λ+f≥Λf\Lambda^{+}f\ge\Lambda f なので、Λ−:=Λ+−Λ\Lambda^{-}:=\Lambda^{+}-\Lambda も正です。

定理 6.2(C₀(X) の双対(Riesz–Markov–角谷))✓

XX を LCH 空間とする。μ∈M(X)\mu\in M(X) に Λμf=∫f dμ\Lambda_\mu f=\int f\,d\mu を対応させる写像は、M(X)M(X) から C0(X)C_0(X) の双対空間 C0(X)∗C_0(X)^{*} への全単射な線形写像で、∥Λμ∥=∥μ∥\|\Lambda_\mu\|=\|\mu\| を満たす。

証明(定理 6.2)

正の汎関数の表現。 Λ\Lambda を C0(X)C_0(X) 上の正の線形汎関数とし、Cc(X)C_c(X) に制限して 定理 4.1 の Radon 測度 μ\mu を取ります。定理 4.1 の 1 により μ(X)=sup⁡{Λf:f≺X}≤∥Λ∥\mu(X)=\sup\{\Lambda f: f\prec X\}\le\|\Lambda\|(補題 6.1 の 1)で、μ\mu は有限です。f↦∫f dμf\mapsto\int f\,d\mu と Λ\Lambda はともに C0(X)C_0(X) 上で有界(前者は ∣∫f dμ∣≤μ(X)∥f∥|\int f\,d\mu|\le\mu(X)\|f\|)で、稠密な Cc(X)C_c(X)(補題 2.2)上で一致するので、C0(X)C_0(X) 全体で一致します。

全射。 Λ∈C0(X)∗\Lambda\in C_0(X)^{*} を 補題 6.1 の 2 で Λ+−Λ−\Lambda^{+}-\Lambda^{-} と分け、それぞれを有限 Radon 測度 μ1,μ2\mu_1,\mu_2 で表せば Λ=Λμ1−μ2\Lambda=\Lambda_{\mu_1-\mu_2} です。

単射。 Λμ1−μ2=Λν1−ν2\Lambda_{\mu_1-\mu_2}=\Lambda_{\nu_1-\nu_2} なら、有限 Radon 測度 μ1+ν2\mu_1+\nu_2 と ν1+μ2\nu_1+\mu_2 は Cc(X)C_c(X) 上で同じ正の汎関数を表すので、定理 4.1 の一意性から等しく、μ1−μ2=ν1−ν2\mu_1-\mu_2=\nu_1-\nu_2 です。

ノルム。 μ=μ1−μ2\mu=\mu_1-\mu_2、λ=μ1+μ2\lambda=\mu_1+\mu_2 とし、Hahn 分解を X=P⊔NX=P\sqcup N とします。ρP(E):=μ(E∩P)\rho_P(E):=\mu(E\cap P)、ρN(E):=−μ(E∩N)\rho_N(E):=-\mu(E\cap N) は(正の)有限測度で、μ=ρP−ρN\mu=\rho_P-\rho_N です。単関数では ∫s dμ=∫s dρP−∫s dρN\int s\,d\mu=\int s\,d\rho_P-\int s\,d\rho_N が定義から成り立ち、有界な可測関数は単関数の一様極限なので(定理 3.7[ルベーグ積分の定義と収束定理])、極限を取って f∈C0(X)f\in C_0(X) でも成り立ちます。よって ∥f∥≤1\|f\|\le1 なら ∣∫f dμ∣≤ρP(X)+ρN(X)=μ(P)−μ(N)|\int f\,d\mu|\le\rho_P(X)+\rho_N(X)=\mu(P)-\mu(N) で、∥Λμ∥≤∥μ∥\|\Lambda_\mu\|\le\|\mu\| です。

逆向きを示します。ε>0\varepsilon>0 とします。有限 Radon 測度 λ\lambda は 命題 5.1 によりすべてのボレル集合で内正則なので、コンパクト集合 K⊆PK\subseteq P、L⊆NL\subseteq N で λ(P∖K)<ε\lambda(P\setminus K)<\varepsilon、λ(N∖L)<ε\lambda(N\setminus L)<\varepsilon となるものが取れます。K,LK,L は交わらないコンパクト集合なので、交わらない開集合 U0⊇KU_0\supseteq K、V0⊇LV_0\supseteq L で分離できます。実際、各 p∈Lp\in L について 定理 4.2[コンパクト性] により交わらない開集合 Up⊇KU_p\supseteq K、Vp∋pV_p\ni p が取れ、LL はコンパクトなので有限個の Vp1,…,VprV_{p_1},\dots,V_{p_r} で覆われます。U0=⋂iUpiU_0=\bigcap_iU_{p_i}、V0=⋃iVpiV_0=\bigcup_iV_{p_i} とおけばよいです。外正則性から開集合 U⊇KU\supseteq K、V⊇LV\supseteq L で λ(U∖K)<ε\lambda(U\setminus K)<\varepsilon、λ(V∖L)<ε\lambda(V\setminus L)<\varepsilon となるものを取り、U∩U0U\cap U_0、V∩V0V\cap V_0 に取り替えて U∩V=∅U\cap V=\emptyset とします。Urysohn の補題で K≺g≺UK\prec g\prec U、L≺h≺VL\prec h\prec V を取り、f=g−hf=g-h とおくと ∥f∥≤1\|f\|\le1 で、

∣∫g dμ−μ(K)∣≤λ(U∖K)<ε,∣μ(K)−μ(P)∣≤λ(P∖K)<ε\Bigl|\int g\,d\mu-\mu(K)\Bigr|\le\lambda(U\setminus K)<\varepsilon,\qquad |\mu(K)-\mu(P)|\le\lambda(P\setminus K)<\varepsilon

です(hh と L,NL,N についても同様)。したがって Λμf≥μ(P)−μ(N)−4ε=∥μ∥−4ε\Lambda_\mu f\ge\mu(P)-\mu(N)-4\varepsilon=\|\mu\|-4\varepsilon で、∥Λμ∥≥∥μ∥\|\Lambda_\mu\|\ge\|\mu\| です。

注意 6.3

複素数値の C0(X)C_0(X) では、有界線形汎関数 Λ\Lambda の実数値関数への制限を実部と虚部 Λ=Λ1+iΛ2\Lambda=\Lambda_1+i\Lambda_2 に分け、それぞれに 定理 6.2 を適用すると、Λf=∫f dμ\Lambda f=\int f\,d\mu となる複素 Radon 測度 μ=μ1+iμ2\mu=\mu_1+i\mu_2 がただ一つ得られます(複素数値の f=u+ivf=u+iv には線形性で延ばします)。ノルムの等式 ∥Λ∥=∣μ∣(X)\|\Lambda\|=|\mu|(X) も成り立ちますが、全変動測度 ∣μ∣|\mu| の定義が必要になるので、ここでは扱いません。

7. 測度の弱 * 収束と Helly の選出定理

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定理 6.2 により、M(X)M(X) は Banach 空間 C0(X)C_0(X) の双対空間とみなせます。双対空間の弱 * 位相(定義 7.1[Banach 空間の基本定理])を測度の言葉に直したものが、次の収束です。

定義 7.1(測度の弱 * 収束)↗

μn,μ∈M(X)\mu_n,\mu\in M(X) について、すべての f∈C0(X)f\in C_0(X) で ∫f dμn→∫f dμ\int f\,d\mu_n\to\int f\,d\mu となるとき、μn\mu_n は μ\mu に弱 * 収束する(または漠収束する)という。

例 7.2(質量が無限遠へ逃げる)

X=RX=\mathbb{R}、μn=δn\mu_n=\delta_n とします。f∈C0(R)f\in C_0(\mathbb{R}) なら ∫f dδn=f(n)→0\int f\,d\delta_n=f(n)\to0 なので、δn\delta_n は零測度に弱 * 収束します。全質量は 11 のまま、極限では 00 です。弱 * 収束は全質量を保存しません。全質量を保つには、質量が無限遠へ逃げないこと(緊密性)を別に仮定する必要があります。また μn=δ1/n\mu_n=\delta_{1/n} は δ0\delta_0 に弱 * 収束しますが、開集合 U=(0,1)U=(0,1) について μn(U)=1↛0=δ0(U)\mu_n(U)=1\not\to0=\delta_0(U) です。弱 * 収束は集合ごとの値の収束を意味しません(演習 8.3)。

補題 7.3(C(X) の可分性)✓

XX がコンパクト距離空間なら、C(X)C(X) は一様ノルムについて可分である。

証明(補題 7.3)

X≠∅X\ne\emptyset とし、可算な稠密集合 {xk}\{x_k\} を取ります(コンパクト距離空間は第二可算)。φ0=1\varphi_0=1、φk(x)=d(x,xk)\varphi_k(x)=d(x,x_k) とおきます。x≠yx\ne y なら d(xk,x)<d(x,y)/2d(x_k,x)<d(x,y)/2 となる kk があり、三角不等式から d(xk,y)>d(x,y)/2d(x_k,y)>d(x,y)/2 なので φk(x)≠φk(y)\varphi_k(x)\ne\varphi_k(y) です。φ0,φ1,…\varphi_0,\varphi_1,\dots の実係数多項式全体 AA は、11 を含み点を分離する部分環なので、Stone–Weierstrass の定理(定理 4.3[Arzelà–Ascoli と Stone–Weierstrass])により C(X)C(X) で稠密です。各 φk\varphi_k は有界なので、AA の元の係数を近い有理数に替えると一様に近い元が得られます。有理係数の多項式は可算個なので、C(X)C(X) は可分です。

定理 7.4(Helly の選出定理)✓

XX をコンパクト距離空間、μn\mu_n を XX 上の有限ボレル測度の列で sup⁡nμn(X)<∞\sup_n\mu_n(X)<\infty とする。このとき部分列 μnk\mu_{n_k} と有限ボレル測度 μ\mu で、すべての f∈C(X)f\in C(X) について ∫f dμnk→∫f dμ\int f\,d\mu_{n_k}\to\int f\,d\mu となるものが存在し、μ(X)=lim⁡kμnk(X)\mu(X)=\lim_k\mu_{n_k}(X) である。

証明(定理 7.4)

M=sup⁡nμn(X)M=\sup_n\mu_n(X) とし、補題 7.3 の可算稠密集合 {g1,g2,… }⊆C(X)\{g_1,g_2,\dots\}\subseteq C(X) を取ります。∣∫gk dμn∣≤M∥gk∥|\int g_k\,d\mu_n|\le M\|g_k\| なので、各 kk について数列 (∫gk dμn)n(\int g_k\,d\mu_n)_n は有界です。k=1k=1 について収束部分列を取り、その中から k=2k=2 について収束部分列を取り……と続け、jj 番目の部分列の jj 番目の項を並べた対角線の列を μnj\mu_{n_j} とします。これはすべての kk で ∫gk dμnj\int g_k\,d\mu_{n_j} が収束する列です。

任意の f∈C(X)f\in C(X) と ε>0\varepsilon>0 について ∥f−gk∥<ε\|f-g_k\|<\varepsilon となる kk を取ると

∣∫f dμni−∫f dμnj∣≤2Mε+∣∫gk dμni−∫gk dμnj∣\Bigl|\int f\,d\mu_{n_i}-\int f\,d\mu_{n_j}\Bigr|\le2M\varepsilon+\Bigl|\int g_k\,d\mu_{n_i}-\int g_k\,d\mu_{n_j}\Bigr|

なので、(∫f dμnj)j(\int f\,d\mu_{n_j})_j はコーシー列で収束します。極限を Λf\Lambda f とすると、Λ\Lambda は C(X)C(X) 上の線形汎関数で、f≥0f\ge0 なら Λf≥0\Lambda f\ge0 です。XX はコンパクトなので C(X)=Cc(X)C(X)=C_c(X) で、定理 4.1 により Radon 測度 μ\mu で Λf=∫f dμ\Lambda f=\int f\,d\mu となるものがあります。f=1f=1 を代入すれば μ(X)=Λ1=lim⁡jμnj(X)≤M\mu(X)=\Lambda 1=\lim_j\mu_{n_j}(X)\le M です。

定理 7.4 の μn\mu_n はどれも Radon です(定理 5.3)。証明は、この記事の冒頭で述べた「汎関数の極限を作ってから測度に戻す」という使い方そのものです。

系 7.5(ℝⁿ 上の Helly の選出定理)✓

μn\mu_n を Rn\mathbb{R}^n 上の有限ボレル測度の列で sup⁡nμn(Rn)<∞\sup_n\mu_n(\mathbb{R}^n)<\infty とする。このとき部分列 μnk\mu_{n_k} と有限ボレル測度 μ\mu で、すべての f∈C0(Rn)f\in C_0(\mathbb{R}^n) について ∫f dμnk→∫f dμ\int f\,d\mu_{n_k}\to\int f\,d\mu となるものが存在し、μ(Rn)≤lim inf⁡kμnk(Rn)\mu(\mathbb{R}^n)\le\liminf_k\mu_{n_k}(\mathbb{R}^n) である。

証明の方針は、Rn\mathbb{R}^n に無限遠点を一つ足した一点コンパクト化が球面と同じ形(同相)であることを示し、コンパクト距離空間になったところで 定理 7.4 を使う、というものです。

証明(系 7.5)

一点コンパクト化 Y=(Rn)∗Y=(\mathbb{R}^n)^{*} が球面 Sn={(x,t)∈Rn×R:∣x∣2+t2=1}S^n=\{(x,t)\in\mathbb{R}^n\times\mathbb{R}:|x|^2+t^2=1\} と同相であることを、立体射影で確かめます。τ(y)=(2y/(1+∣y∣2), (∣y∣2−1)/(∣y∣2+1))\tau(y)=\bigl(2y/(1+|y|^2),\,(|y|^2-1)/(|y|^2+1)\bigr) とおくと、∣2y∣2+(∣y∣2−1)2=(∣y∣2+1)2|2y|^2+(|y|^2-1)^2=(|y|^2+1)^2 より τ(y)∈Sn\tau(y)\in S^n で、tt 成分は 11 にならないので τ ⁣:Rn→Sn∖{N}\tau\colon\mathbb{R}^n\to S^n\setminus\{N\}(N=(0,1)N=(0,1))です。逆に σ(x,t)=x/(1−t)\sigma(x,t)=x/(1-t) とおくと、τ(y)\tau(y) について 1−t=2/(1+∣y∣2)1-t=2/(1+|y|^2) なので σ∘τ=id\sigma\circ\tau=\mathrm{id}、また (x,t)∈Sn∖{N}(x,t)\in S^n\setminus\{N\} と y=σ(x,t)y=\sigma(x,t) について ∣y∣2=(1+t)/(1−t)|y|^2=(1+t)/(1-t)(∣x∣2=1−t2|x|^2=1-t^2 による)から 1+∣y∣2=2/(1−t)1+|y|^2=2/(1-t) となり τ(y)=(x,t)\tau(y)=(x,t) です。σ,τ\sigma,\tau は座標の有理式で連続なので τ\tau は同相写像です。SnS^n は Rn+1\mathbb{R}^{n+1} の有界閉集合なのでコンパクトハウスドルフ(定理 5.2[コンパクト性])で、定理 3.2[局所コンパクト空間] の 4 により Y≅SnY\cong S^n、無限遠点は NN に対応します。したがって YY はコンパクト距離空間です。Rn\mathbb{R}^n は YY の開集合なので、YY のボレル集合 EE について E∩RnE\cap\mathbb{R}^n は Rn\mathbb{R}^n のボレル集合です。νn(E)=μn(E∩Rn)\nu_n(E)=\mu_n(E\cap\mathbb{R}^n) は YY 上の有限ボレル測度なので、定理 7.4 により部分列と YY 上の有限ボレル測度 ν\nu で、すべての g∈C(Y)g\in C(Y) について ∫g dνnk→∫g dν\int g\,d\nu_{n_k}\to\int g\,d\nu となるものが取れます。μ\mu を ν\nu の Rn\mathbb{R}^n への制限とします。

f∈C0(Rn)f\in C_0(\mathbb{R}^n) を f(∞)=0f(\infty)=0 で YY に延ばしたものを f~\tilde f とします。ε>0\varepsilon>0 について {∣f~∣<ε}=Y∖{∣f∣≥ε}\{|\tilde f|<\varepsilon\}=Y\setminus\{|f|\ge\varepsilon\} はコンパクト集合の補集合なので YY で開(定義 3.1[局所コンパクト空間])、すなわち f~\tilde f は ∞\infty で連続で、f~∈C(Y)\tilde f\in C(Y) です。∫f~ dνn=∫f dμn\int\tilde f\,d\nu_n=\int f\,d\mu_n、∫f~ dν=∫f dμ+f~(∞)ν({∞})=∫f dμ\int\tilde f\,d\nu=\int f\,d\mu+\tilde f(\infty)\nu(\{\infty\})=\int f\,d\mu なので主張の収束が得られます。最後に μ(Rn)=ν(Y)−ν({∞})≤ν(Y)=lim⁡kμnk(Rn)\mu(\mathbb{R}^n)=\nu(Y)-\nu(\{\infty\})\le\nu(Y)=\lim_k\mu_{n_k}(\mathbb{R}^n) です。

不等号が真になり得ることは 例 7.2 が示しています。{∞}\{\infty\} に溜まった質量 ν({∞})\nu(\{\infty\}) が、無限遠へ逃げた質量です。

演習 8.1易

X=[0,1]X=[0,1] 上の汎関数 Λf=f(0)+∫01xf(x) dx\Lambda f=f(0)+\int_0^1xf(x)\,dx を考える。定理 4.1 の測度 μ\mu を具体的に求め、μ({0})\mu(\{0\}) と μ([0,1])\mu([0,1]) を計算せよ。

解答

Λ\Lambda は線形で、f≥0f\ge0 なら Λf≥0\Lambda f\ge0 です。候補は ν=δ0+ρ\nu=\delta_0+\rho、ρ(E)=∫Ex dm\rho(E)=\int_Ex\,dm で、∫f dν=Λf\int f\,d\nu=\Lambda f が成り立ちます。ν\nu は有限ボレル測度で、[0,1][0,1] はコンパクト距離空間なので 定理 5.3 により Radon です。定理 4.1 の一意性から μ=ν\mu=\nu です。よって μ({0})=1+0=1\mu(\{0\})=1+0=1、μ([0,1])=1+∫01x dx=3/2\mu([0,1])=1+\int_0^1x\,dx=3/2 です。後者は Λ1\Lambda 1 に一致します。

演習 8.2標準

X=[0,1]X=[0,1] 上の汎関数 Λf=f(0)−f(1)+∫01f(x) dx\Lambda f=f(0)-f(1)+\int_0^1f(x)\,dx のノルムを、定理 6.2 を使って求めよ。さらに、ノルムに近い値を実現する ff を具体的に作れ。

解答

Λ\Lambda は μ=δ0−δ1+m\mu=\delta_0-\delta_1+m を表します(μ1=δ0+m\mu_1=\delta_0+m、μ2=δ1\mu_2=\delta_1 はどちらも有限 Radon)。P=[0,1)P=[0,1)、N={1}N=\{1\} は Hahn 分解で(PP の部分集合では μ=δ0+m≥0\mu=\delta_0+m\ge0、μ({1})=−1+0\mu(\{1\})=-1+0)、∥μ∥=μ(P)−μ(N)=(1+1)−(−1)=3\|\mu\|=\mu(P)-\mu(N)=(1+1)-(-1)=3 です。よって ∥Λ∥=3\|\Lambda\|=3 です。

具体的には、0<δ<10<\delta<1 について [0,1−δ][0,1-\delta] 上で 11、[1−δ,1][1-\delta,1] 上で 11 から −1-1 へ一次関数で下がる fδf_\delta を取ると、∥fδ∥=1\|f_\delta\|=1 で Λfδ=1+1+(1−δ)+0=3−δ\Lambda f_\delta=1+1+(1-\delta)+0=3-\delta です(傾斜部分の積分は対称性から 00)。

演習 8.3標準

XX をコンパクト距離空間、μn,μ\mu_n,\mu を XX 上の有限ボレル測度とし、μn\mu_n が μ\mu に弱 * 収束するとする。開集合 UU について μ(U)≤lim inf⁡nμn(U)\mu(U)\le\liminf_n\mu_n(U)、閉集合 FF について lim sup⁡nμn(F)≤μ(F)\limsup_n\mu_n(F)\le\mu(F) を示せ。

解答

μ\mu は Radon です(定理 5.3)。コンパクト集合 K⊆UK\subseteq U について Urysohn の補題で K≺f≺UK\prec f\prec U を取ると、μ(K)≤∫f dμ=lim⁡n∫f dμn≤lim inf⁡nμn(U)\mu(K)\le\int f\,d\mu=\lim_n\int f\,d\mu_n\le\liminf_n\mu_n(U) です。開集合の内正則性から KK について上限を取れば第一の不等式です。f=1f=1 を当てると μn(X)→μ(X)\mu_n(X)\to\mu(X) なので、U=X∖FU=X\setminus F に第一の不等式を使って lim sup⁡nμn(F)=lim⁡nμn(X)−lim inf⁡nμn(U)≤μ(X)−μ(U)=μ(F)\limsup_n\mu_n(F)=\lim_n\mu_n(X)-\liminf_n\mu_n(U)\le\mu(X)-\mu(U)=\mu(F) です。例 7.2 の δ1/n\delta_{1/n} と U=(0,1)U=(0,1)([0,1][0,1] の中の開集合)では、第一の不等式は 0≤10\le1 で、等号は成り立ちません。

演習 8.4易

Λf=∫−∞∞f(x) dx\Lambda f=\int_{-\infty}^\infty f(x)\,dx は Cc(R)C_c(\mathbb{R}) 上の正の線形汎関数だが、一様ノルムについて有界でないことを示せ。これは 補題 6.1 の 1 と矛盾しないか。

解答

fnf_n を [−n,n][-n,n] で 11、[−n−1,−n][-n-1,-n] と [n,n+1][n,n+1] で一次関数で 00 に下がる関数とすると、∥fn∥=1\|f_n\|=1 で Λfn=2n+1→∞\Lambda f_n=2n+1\to\infty です。矛盾はしません。補題 6.1 の証明は、級数 ∑2−nfn\sum2^{-n}f_n の極限が空間に属すること(C0C_0 の完備性)を使いましたが、Cc(R)C_c(\mathbb{R}) は一様収束で閉じていません。実際 Λ\Lambda はルベーグ測度を表し、m(R)=∞m(\mathbb{R})=\infty なので C0(R)C_0(\mathbb{R}) 上の有界汎関数には延びません。

  • W. Rudin, Real and Complex Analysis, 3rd ed., McGraw-Hill, 1987 — 第 2 章(正の汎関数の表現定理と正則性)、第 6 章(C0(X)C_0(X) の双対)。
  • G. B. Folland, Real Analysis: Modern Techniques and Their Applications, 2nd ed., Wiley, 1999 — 第 7 章(Radon 測度、C0(X)C_0(X) の双対、漠収束)。この記事の構成は主にこちらに従った。
  • F. Riesz, “Sur les opérations fonctionnelles linéaires”, C. R. Acad. Sci. Paris 149 (1909), 974–977.
  • S. Kakutani, “Concrete representation of abstract (M)-spaces (A characterization of the space of continuous functions)”, Ann. of Math. 42 (1941), 994–1024.
  • P. Billingsley, Convergence of Probability Measures, 2nd ed., Wiley, 1999 — 第 1 章(測度の弱収束)。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 3 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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