コンテンツにスキップ

符号付き測度と Radon–Nikodym の定理:Hahn・Jordan・Lebesgue 分解から微積分学の基本定理まで

対象読者: 本テーマの抽象測度の章と L^p 空間の章(特にヒルベルト空間としての L^2)を学んだ人。条件付き期待値などの確率論の知識は仮定しません。

前提となる記事:測度空間と Carathéodory の拡張定理:前測度から測度を作り、一意性を示す、L^p 空間と関数解析への導入:ヘルダーの不等式から完備性・ヒルベルト空間まで

生 Markdown

針金に沿って質量が分布しているとき、各点の「濃さ」(密度)が分かれば、区間ごとの質量は密度を足し合わせて求められます。では逆に、区間ごとの質量だけが分かっているとき、そこから密度を取り出せるでしょうか。この記事は、取り出せるための条件と、取り出した密度の性質を調べます。読み終えると、密度が存在する条件(Radon–Nikodym の定理)と、積分してから微分すると元に戻る関数の条件(微積分学の基本定理のルベーグ版)が分かります。

  • 非負関数 ff を使って ν(E)=∫Ef dμ\nu(E)=\int_E f\,d\mu と測度 ν\nu を作るとき、μ(E)=0\mu(E)=0 なら ν(E)=0\nu(E)=0 になります(絶対連続)。Radon–Nikodym の定理はその逆で、σ\sigma-有限測度(全体を、測度が有限な可算個の部分に分けられる測度)ν\nu が μ\mu に絶対連続ならば、ν\nu は必ずこの形に書けると主張します。密度 f=dν/dμf=d\nu/d\mu の存在を保証する定理で、条件付き期待値の定義の土台です。
  • 一般の ν\nu は、μ\mu に絶対連続な部分と、μ\mu と互いに特異な部分に一意に分かれます(Lebesgue 分解)。符号付き測度は、正の部分と負の部分に分かれます(Hahn 分解・Jordan 分解)。
  • Radon–Nikodym の定理の証明は、von Neumann によるもので、L2L^2 がヒルベルト空間であること(リースの表現定理。ヒルベルト空間上の連続な線形汎関数は内積で書ける、という定理)だけを使います。
  • 実数直線上では、Lebesgue の微分定理 12r∫x−rx+rf→f(x)\frac{1}{2r}\int_{x-r}^{x+r}f\to f(x)(ほとんどすべての xx)が成り立ちます。証明の鍵は Vitali の被覆補題による極大不等式(点のまわりの ∣f∣|f| の平均の最大値を抑える不等式)です。発展として、球を膨らませずに重なりの回数を次元だけで抑える Rn\mathbb{R}^n の Besicovitch の被覆定理も証明します。
  • これらから、有界変動関数と絶対連続関数の理論が得られます。FF が絶対連続であることは F(x)=F(a)+∫axF′F(x)=F(a)+\int_a^x F' と書けることと同値で、連続な単調関数でもカントール関数のように F′=0F'=0 a.e. なのに増加するものがあることとの対比が、「絶対連続」の意味です。

1. 動機 — 積分の「密度」を取り出す

Section titled “1. 動機 — 積分の「密度」を取り出す”

ルベーグ積分の定義と収束定理 では、可測関数 f≥0f\ge0 から出発して E↦∫Ef dμE\mapsto\int_Ef\,d\mu を考えました。これは EE 上の「ff に比例する質量」を測る新しい測度です。確率論では密度関数 ff をもつ分布が代表例で、物理では質量分布や電荷分布の密度が対応します。逆に、与えられた測度 ν\nu が密度をもつとは限らず、また密度をもつならそれを取り出す方法が欲しい。典型例が条件付き期待値で、E[X∣G]E[X\mid\mathcal{G}] は「A↦E[X;A]A\mapsto E[X;A] という G\mathcal{G} 上の測度の、P∣GP|_{\mathcal{G}} に関する密度」として定義されます(条件付き期待値 の 定理 2.1[条件付き期待値])。この記事の 定理 4.3 がその主張の証明を与えます。

もう一つの動機は、微分と積分の関係です。R\mathbb{R} 上の F(x)=∫axf dmF(x)=\int_a^xf\,dm について、F′=fF'=f はほとんどすべての xx で成り立つか。逆に、どんな関数 FF が F(x)=F(a)+∫axF′F(x)=F(a)+\int_a^xF' を満たすか。リーマン積分の微積分学の基本定理(積分の基本定理と定積分)は C1C^1 級の関数の話でした。ルベーグ積分では、答えが「絶対連続関数」とぴったり一致します。その証明は、FF から作る測度に Radon–Nikodym の定理を適用することで得られます。

2. 絶対連続・特異・符号付き測度

Section titled “2. 絶対連続・特異・符号付き測度”

定義 2.1(絶対連続・特異)↗

(X,M)(X,\mathcal{M}) を可測空間とし、μ,ν\mu,\nu をその上の測度とする。

  • ν\nu が μ\mu に関して絶対連続であるとは、μ(E)=0\mu(E)=0 となるすべての E∈ME\in\mathcal{M} で ν(E)=0\nu(E)=0 が成り立つことをいい、ν≪μ\nu\ll\mu と書く。
  • ν\nu と μ\mu が互いに特異であるとは、M\mathcal{M} の元 ZZ で μ(Z)=0\mu(Z)=0 かつ ν(Zc)=0\nu(Z^{c})=0 となるものが存在することをいい、ν⊥μ\nu\perp\mu と書く(ν\nu が零集合 ZZ に集中しているともいう)。

ν(E)=∫Ef dμ\nu(E)=\int_Ef\,d\mu ならば、μ(E)=0\mu(E)=0 のとき被積分関数 f1E=0f\mathbf{1}_E=0 a.e. だから ν(E)=0\nu(E)=0(命題 6.4[ルベーグ積分の定義と収束定理])、すなわち ν≪μ\nu\ll\mu。他方、ディラック測度 δ0\delta_0 はルベーグ測度 mm と互いに特異です(Z={0}Z=\{0\})。

命題 2.2(絶対連続性の ε-δ 表現)✓

ν\nu が有限測度のとき、ν≪μ\nu\ll\mu であることは、「任意の ε>0\varepsilon>0 に対し δ>0\delta>0 が存在し、μ(E)<δ\mu(E)<\delta ならば ν(E)<ε\nu(E)<\varepsilon」と同値である。

証明(命題 2.2)

(⇐\Leftarrow) μ(E)=0\mu(E)=0 なら、任意の ε\varepsilon に対し μ(E)<δ\mu(E)<\delta だから ν(E)<ε\nu(E)<\varepsilon。よって ν(E)=0\nu(E)=0。(⇒\Rightarrow) 否定すると、ある ε>0\varepsilon>0 と EnE_n で μ(En)<2−n\mu(E_n)<2^{-n}、ν(En)≥ε\nu(E_n)\ge\varepsilon となるものがある。Fk=⋃n≥kEnF_k=\bigcup_{n\ge k}E_n は減少列で μ(Fk)≤∑n≥k2−n=21−k\mu(F_k)\le\sum_{n\ge k}2^{-n}=2^{1-k}、ν(Fk)≥ε\nu(F_k)\ge\varepsilon。F=⋂kFkF=\bigcap_kF_k は μ(F)≤μ(Fk)→0\mu(F)\le\mu(F_k)\to0 だから μ(F)=0\mu(F)=0。一方 ν\nu は有限だから上からの連続性(命題 2.3[測度空間と Carathéodory の拡張定理] (4))により ν(F)=lim⁡ν(Fk)≥ε\nu(F)=\lim\nu(F_k)\ge\varepsilon。ν≪μ\nu\ll\mu に反する。

定義 2.3(有限符号付き測度)↗

可測空間 (X,M)(X,\mathcal{M}) 上の有限符号付き測度とは、写像 ν:M→R\nu:\mathcal{M}\to\mathbb{R} で ν(∅)=0\nu(\emptyset)=0 かつ、互いに素な En∈ME_n\in\mathcal{M} について ν(⨆En)=∑nν(En)\nu(\bigsqcup E_n)=\sum_n\nu(E_n) を満たすものをいう。右辺の級数は和の順序によらずに収束するので絶対収束する。集合 PP が ν\nu-正であるとは、PP の可測な部分集合 EE すべてで ν(E)≥0\nu(E)\ge0 となることをいい、ν\nu-負も同様に定める。

有限測度の差 ν1−ν2\nu_1-\nu_2 は有限符号付き測度の例です。下からの連続性(命題 2.3[測度空間と Carathéodory の拡張定理] (3))の証明は、そのまま符号付き測度に通ります。

この節の目標は、符号付き測度の全体を「ν≥0\nu\ge0 となる部分」と「ν≤0\nu\le0 となる部分」に切り分けること(Hahn 分解)です。次の補題はその準備で、ν(E)>0\nu(E)>0 の集合 EE から、どの部分集合を取っても負にならない部分を取り出せる、という主張です。証明の方針は、EE から負の値をもつ部分集合を、より大きく負になるものから順に削っていくことです。削った分の合計は有限なので、削る集合の負の度合いは次第に小さくなり、最後に残る部分には負の部分集合が残りません。

補題 3.1(正の部分集合の存在)✓

ν\nu を有限符号付き測度とし、E∈ME\in\mathcal{M} が ν(E)>0\nu(E)>0 を満たすとする。このとき ν\nu-正な P⊂EP\subset E で ν(P)≥ν(E)\nu(P)\ge\nu(E) となるものが存在する。

証明(補題 3.1)

E0=EE_0=E とし、k=1,2,…k=1,2,\ldots について次を行う。Ek−1E_{k-1} の可測部分集合 FF で ν(F)<0\nu(F)<0 となるものがなければ止める。あれば、そのような FF のうち、ν(F)<−1/n\nu(F)<-1/n となる最小の正整数 n=nkn=n_k が存在するから、その条件を満たす Fk⊂Ek−1F_k\subset E_{k-1} を一つ選び、Ek=Ek−1∖FkE_k=E_{k-1}\setminus F_k とする。

P=E∖⋃kFkP=E\setminus\bigcup_kF_k とおく。FkF_k は互いに素で ν(⨆Fk)=∑ν(Fk)\nu(\bigsqcup F_k)=\sum\nu(F_k) は実数(ν\nu は実数値)だから、この級数は収束し、特に 1/nk<−ν(Fk)→01/n_k<-\nu(F_k)\to0、すなわち nk→∞n_k\to\infty。また ν(P)=ν(E)−∑kν(Fk)≥ν(E)>0\nu(P)=\nu(E)-\sum_k\nu(F_k)\ge\nu(E)>0。

PP が正であることを示す。途中で止まった場合は P=EkP=E_k に負の部分集合がないので正である。無限に続く場合、F⊂PF\subset P で ν(F)<0\nu(F)<0 があるとする。F⊂Ek−1F\subset E_{k-1} がすべての kk で成り立つから、nkn_k の最小性により ν(F)≥−1/(nk−1)\nu(F)\ge-1/(n_k-1)(nk≥2n_k\ge2 のとき)。k→∞k\to\infty で ν(F)≥0\nu(F)\ge0 となり矛盾する。

定理 3.2(Hahn 分解)✓

ν\nu を有限符号付き測度とする。このとき X=P⊔NX=P\sqcup N となる可測集合 P,NP,N で、PP が ν\nu-正、NN が ν\nu-負であるものが存在する。もう一つの分解 (P′,N′)(P',N') があれば、P△P′P\triangle P' のすべての可測部分集合の ν\nu は 00 である。

証明(定理 3.2)

正集合の全体を P\mathcal{P} とし、s=sup⁡P∈Pν(P)s=\sup_{P\in\mathcal{P}}\nu(P) とする(∅∈P\emptyset\in\mathcal{P})。正集合の列 PnP_n を ν(Pn)→s\nu(P_n)\to s ととる。Gn=Pn∖(P1∪⋯∪Pn−1)⊂PnG_n=P_n\setminus(P_1\cup\cdots\cup P_{n-1})\subset P_n は互いに素な正集合で、Q=⋃nPn=⨆nGnQ=\bigcup_nP_n=\bigsqcup_nG_n も正集合(部分集合 E⊂QE\subset Q は ν(E)=∑nν(E∩Gn)≥0\nu(E)=\sum_n\nu(E\cap G_n)\ge0)。Q∖PnQ\setminus P_n は正集合 QQ の部分集合だから ν(Q∖Pn)≥0\nu(Q\setminus P_n)\ge0、よって ν(Q)≥ν(Pn)→s\nu(Q)\ge\nu(P_n)\to s。一方 ν(Q)≤s\nu(Q)\le s。ゆえに ν(Q)=s\nu(Q)=s(有限)。

N=X∖QN=X\setminus Q が負であることを示す。F⊂NF\subset N で ν(F)>0\nu(F)>0 があれば、補題 3.1 により正集合 P′⊂FP'\subset F、ν(P′)>0\nu(P')>0 がある。Q⊔P′Q\sqcup P' は正集合で ν(Q⊔P′)=s+ν(P′)>s\nu(Q\sqcup P')=s+\nu(P')>s となり、ss の定義に反する。以上で (P,N)=(Q,N)(P,N)=(Q,N) が分解を与える。

一意性:E⊂P∖P′E\subset P\setminus P' とすると、E⊂PE\subset P より ν(E)≥0\nu(E)\ge0、E⊂N′E\subset N' より ν(E)≤0\nu(E)\le0。よって ν(E)=0\nu(E)=0。P′∖PP'\setminus P も同様。

系 3.3(Jordan 分解)✓

有限符号付き測度 ν\nu は、互いに特異な二つの有限測度 ν+,ν−\nu^{+},\nu^{-} の差 ν=ν+−ν−\nu=\nu^{+}-\nu^{-} としてただ一通りに書ける。(P,N)(P,N) を Hahn 分解とすると、ν+(E)=ν(E∩P)\nu^{+}(E)=\nu(E\cap P)、ν−(E)=−ν(E∩N)\nu^{-}(E)=-\nu(E\cap N) である。さらに、ν=ν1−ν2\nu=\nu_1-\nu_2(ν1,ν2\nu_1,\nu_2 は有限測度)と書けるなら ν1≥ν+\nu_1\ge\nu^{+}、ν2≥ν−\nu_2\ge\nu^{-} である。

証明(系 3.3)

ν±\nu^{\pm} は P, N の正負性から測度(非負、可算加法的)であり、ν+(N)=0\nu^{+}(N)=0、ν−(P)=0\nu^{-}(P)=0 だから互いに特異で、ν=ν+−ν−\nu=\nu^{+}-\nu^{-}。一意性:ν=ν1−ν2\nu=\nu_1-\nu_2、ν1⊥ν2\nu_1\perp\nu_2 とし、ν2(A)=0\nu_2(A)=0、ν1(Ac)=0\nu_1(A^{c})=0 となる可測集合 AA をとる。E⊂AE\subset A で ν(E)=ν1(E)≥0\nu(E)=\nu_1(E)\ge0、E⊂AcE\subset A^{c} で ν(E)=−ν2(E)≤0\nu(E)=-\nu_2(E)\le0 だから、(A,Ac)(A,A^{c}) も Hahn 分解で、定理 3.2 の一意性から ν1(E)=ν1(E∩A)=ν(E∩A)=ν(E∩P)=ν+(E)\nu_1(E)=\nu_1(E\cap A)=\nu(E\cap A)=\nu(E\cap P)=\nu^{+}(E)。ν2\nu_2 も同様。最後の不等式:ν+(E)=ν(E∩P)=ν1(E∩P)−ν2(E∩P)≤ν1(E)\nu^{+}(E)=\nu(E\cap P)=\nu_1(E\cap P)-\nu_2(E\cap P)\le\nu_1(E)。ν−≤ν2\nu^{-}\le\nu_2 も同様。

P(f ≥ 0)P(f ≥ 0)N(f < 0)N(f < 0)xν⁺ は山(色つき)の面積、ν⁻ は谷の面積
密度 f をもつ符号付き測度(ν(E) = E 上の f の積分)の Hahn 分解の例。f ≥ 0 の部分が P、f < 0 の部分が N で、Jordan 分解の ν⁺ は P 側の山、ν⁻ は N 側の谷の絶対値で与えられます。

∣ν∣=ν++ν−|\nu|=\nu^{+}+\nu^{-} を ν\nu の全変動測度と呼びます。

4. Lebesgue 分解と Radon–Nikodym の定理

Section titled “4. Lebesgue 分解と Radon–Nikodym の定理”

まず有限測度の場合に、L2L^2 の議論で一気に示します。

次の補題では、μ\mu と ν\nu を足した測度 λ=μ+ν\lambda=\mu+\nu の L2L^2 空間で、リースの表現定理を使います。これで ν(E)=∫Eh dλ\nu(E)=\int_Eh\,d\lambda となる関数 hh が得られ、hh は 00 以上 11 以下だと分かります。h=1h=1 となる集合 BB が μ\mu-零集合で、h<1h<1 の部分では h/(1−h)h/(1-h) が密度になります。この h/(1−h)h/(1-h) は、1+h+h2+⋯1+h+h^2+\cdots という等比級数の和 1/(1−h)1/(1-h) を使って作ります。

補題 4.1(有限測度の Lebesgue 分解と密度(von Neumann の議論))✓

μ,ν\mu,\nu を (X,M)(X,\mathcal{M}) 上の有限測度とする。このとき可測集合 BB で μ(B)=0\mu(B)=0 となるものと、可測関数 f:X→[0,∞)f:X\to[0,\infty) で、すべての E∈ME\in\mathcal{M} に対し

ν(E)=ν(E∩B)+∫Ef dμ\nu(E)=\nu(E\cap B)+\int_Ef\,d\mu

を満たすものが存在する。

証明(補題 4.1)

λ=μ+ν\lambda=\mu+\nu(有限測度)とする。g∈L2(λ)g\in L^2(\lambda)(複素数値可測関数)に対し、∫∣g∣ dν≤∫∣g∣ dλ≤λ(X)1/2∥g∥L2(λ)\int|g|\,d\nu\le\int|g|\,d\lambda\le\lambda(X)^{1/2}\|g\|_{L^2(\lambda)}(コーシー・シュワルツ、定理 4.2[L^p 空間と関数解析への導入])だから、Λ(g)=∫g dν\Lambda(g)=\int g\,d\nu は L2(λ)L^2(\lambda) 上の有界線形汎関数である。L2(λ)L^2(\lambda) はヒルベルト空間(定理 6.2[L^p 空間と関数解析への導入])だから、リースの表現定理(定理 4.2[Hilbert 空間の基礎])により y∈L2(λ)y\in L^2(\lambda) で Λ(g)=∫yˉ g dλ\Lambda(g)=\int\bar{y}\,g\,d\lambda がすべての gg で成り立つ。h=yˉh=\bar{y} とおく。g=1Eg=\mathbf{1}_E を代入すると

ν(E)=∫Eh dλ(E∈M).\nu(E)=\int_Eh\,d\lambda\qquad(E\in\mathcal{M}).

左辺は実数だから Im⁡h\operatorname{Im}h の任意の可測集合上の積分は 00 で、E={Im⁡h>0}E=\{\operatorname{Im}h>0\}、{Im⁡h<0}\{\operatorname{Im}h<0\} とすれば Im⁡h=0\operatorname{Im}h=0 λ\lambda-a.e.。0≤ν(E)≤λ(E)0\le\nu(E)\le\lambda(E) から 0≤h≤10\le h\le1 λ\lambda-a.e. を得る:E={h<0}E=\{h<0\} で λ(E)>0\lambda(E)>0 なら ∫Eh dλ<0≤ν(E)\int_Eh\,d\lambda<0\le\nu(E) となり矛盾、E={h>1}E=\{h>1\} で λ(E)>0\lambda(E)>0 なら ν(E)=∫Eh dλ>λ(E)≥ν(E)\nu(E)=\int_Eh\,d\lambda>\lambda(E)\ge\nu(E) となり矛盾。零集合上で hh を取り替えて、すべての xx で 0≤h(x)≤10\le h(x)\le1 としてよい。

有界可測関数 gg に対し、∫g dν=∫gh dλ=∫gh dμ+∫gh dν\int g\,d\nu=\int gh\,d\lambda=\int gh\,d\mu+\int gh\,d\nu だから(すべて有限)

∫g(1−h) dν=∫gh dμ.(⋆)\int g(1-h)\,d\nu=\int gh\,d\mu .\tag{$\star$}

B={h=1}B=\{h=1\}、A={h<1}A=\{h<1\} とする。g=1Bg=\mathbf{1}_B を (⋆)(\star) に代入すると左辺は 00、右辺は μ(B)\mu(B) だから μ(B)=0\mu(B)=0。E∈ME\in\mathcal{M} とし、g=(1+h+⋯+hn)1Eg=(1+h+\cdots+h^{n})\mathbf{1}_E(有界)を (⋆)(\star) に代入すると

∫E(1−hn+1) dν=∫E(h+h2+⋯+hn+1) dμ.\int_E(1-h^{n+1})\,d\nu=\int_E(h+h^{2}+\cdots+h^{n+1})\,d\mu .

n→∞n\to\infty とする。AA 上では h<1h<1 で 1−hn+1↑11-h^{n+1}\uparrow1、BB 上では 1−hn+1=01-h^{n+1}=0 だから、左辺は単調収束定理(定理 5.2[ルベーグ積分の定義と収束定理])により ν(E∩A)\nu(E\cap A) に収束する。右辺の被積分関数は AA 上で ∑k≥1hk=h/(1−h)\sum_{k\ge1}h^k=h/(1-h) に増加し、BB 上は μ(B)=0\mu(B)=0 で無視できるから、右辺は ∫E∩Ah1−h dμ\int_{E\cap A}\frac{h}{1-h}\,d\mu に収束する。f=h1−h1Af=\frac{h}{1-h}\mathbf{1}_A(有限値の非負可測関数)とおけば、ν(E∩A)=∫Ef dμ\nu(E\cap A)=\int_Ef\,d\mu。ν(E)=ν(E∩A)+ν(E∩B)\nu(E)=\nu(E\cap A)+\nu(E\cap B) より主張を得る。

定理 4.2(Lebesgue 分解)✓

μ,ν\mu,\nu を (X,M)(X,\mathcal{M}) 上の σ\sigma-有限測度とする。このとき、測度 νa,νs\nu_a,\nu_s で

ν=νa+νs,νa≪μ,νs⊥μ\nu=\nu_a+\nu_s,\qquad\nu_a\ll\mu,\quad\nu_s\perp\mu

となるものがただ一組存在する。さらに可測関数 f:X→[0,∞)f:X\to[0,\infty) で νa(E)=∫Ef dμ\nu_a(E)=\int_Ef\,d\mu となるものが存在し、ff は μ\mu-a.e. で一意である。

証明(定理 4.2)

(存在) μ,ν\mu,\nu が σ\sigma-有限だから、X=⨆nXnX=\bigsqcup_nX_n(互いに素な可測集合)で μ(Xn),ν(Xn)<∞\mu(X_n),\nu(X_n)<\infty となるものがとれる(μ\mu の分割と ν\nu の分割の共通部分を取る)。各 nn に 補題 4.1 を XnX_n 上の有限測度 μ∣Xn\mu|_{X_n}、ν∣Xn\nu|_{X_n} に適用し、Bn⊂XnB_n\subset X_n、fnf_n を得る。B=⨆BnB=\bigsqcup B_n、f=∑fn1Xnf=\sum f_n\mathbf{1}_{X_n} とおき、νs(E)=ν(E∩B)\nu_s(E)=\nu(E\cap B)、νa(E)=∫Ef dμ\nu_a(E)=\int_Ef\,d\mu と定める。μ(B)=∑μ(Bn)=0\mu(B)=\sum\mu(B_n)=0、νs(Bc)=0\nu_s(B^{c})=0 だから νs⊥μ\nu_s\perp\mu。μ(E)=0\mu(E)=0 なら νa(E)=0\nu_a(E)=0 だから νa≪μ\nu_a\ll\mu。各 XnX_n 上で補題により ν(E∩Xn)=ν(E∩Bn)+∫E∩Xnf dμ\nu(E\cap X_n)=\nu(E\cap B_n)+\int_{E\cap X_n}f\,d\mu だから、nn について和をとると(系 5.3[ルベーグ積分の定義と収束定理] (2))ν(E)=νs(E)+νa(E)\nu(E)=\nu_s(E)+\nu_a(E)。

(分解の一意性) ν=νa′+νs′\nu=\nu_a'+\nu_s' をもう一つの分解とし、νs\nu_s が μ\mu-零集合 ZZ に、νs′\nu_s' が μ\mu-零集合 Z′Z' に集中するとする。W=Z∪Z′W=Z\cup Z' は μ(W)=0\mu(W)=0 で、νs(Wc)=νs′(Wc)=0\nu_s(W^{c})=\nu_s'(W^{c})=0。νa≪μ\nu_a\ll\mu だから νa(E∩W)=0\nu_a(E\cap W)=0、νa′(E∩W)=0\nu_a'(E\cap W)=0。したがって ν(E∩W)=νa(E∩W)+νs(E∩W)=νs(E∩W)=νs(E)\nu(E\cap W)=\nu_a(E\cap W)+\nu_s(E\cap W)=\nu_s(E\cap W)=\nu_s(E)(最後は νs\nu_s が WW に集中するため)、同様に ν(E∩W)=νs′(E)\nu(E\cap W)=\nu_s'(E)。ゆえに νs=νs′\nu_s=\nu_s'。また νs(E∖W)=0\nu_s(E\setminus W)=0 から νa(E)=νa(E∖W)=ν(E∖W)\nu_a(E)=\nu_a(E\setminus W)=\nu(E\setminus W)、同様に νa′(E)=ν(E∖W)\nu_a'(E)=\nu(E\setminus W) だから νa=νa′\nu_a=\nu_a'。

(ff の一意性) νa(E)=∫Ef dμ=∫Ef′ dμ\nu_a(E)=\int_Ef\,d\mu=\int_Ef'\,d\mu とする。νa\nu_a は σ\sigma-有限(ν\nu より小さい)だから、νa(Xn)<∞\nu_a(X_n)<\infty となる分割 XnX_n が取れる。XnX_n 上で f,f′∈L1f,f'\in L^1 で、E={f>f′}∩XnE=\{f>f'\}\cap X_n をとると ∫E(f−f′) dμ=0\int_E(f-f')\,d\mu=0、被積分関数は EE 上で正だから μ(E)=0\mu(E)=0(命題 6.4[ルベーグ積分の定義と収束定理] (1))。{f<f′}\{f<f'\} も同様。

定理 4.3(Radon–Nikodym の定理)✓

μ,ν\mu,\nu を (X,M)(X,\mathcal{M}) 上の σ\sigma-有限測度とし、ν≪μ\nu\ll\mu とする。このとき可測関数 f:X→[0,∞)f:X\to[0,\infty) で

ν(E)=∫Ef dμ(E∈M)\nu(E)=\int_Ef\,d\mu\qquad(E\in\mathcal{M})

を満たすものが存在し、μ\mu-a.e. で一意である。f=dνdμf=\dfrac{d\nu}{d\mu} と書き、Radon–Nikodym 微分(密度)という。

証明(定理 4.3)

定理 4.2 の分解 ν=νa+νs\nu=\nu_a+\nu_s をとる。νs\nu_s は μ\mu-零集合 ZZ に集中し、ν≪μ\nu\ll\mu だから ν(E∩Z)=0\nu(E\cap Z)=0、よって νs(E)=νs(E∩Z)≤ν(E∩Z)=0\nu_s(E)=\nu_s(E\cap Z)\le\nu(E\cap Z)=0。ゆえに ν=νa\nu=\nu_a で、密度の存在と一意性は 定理 4.2 そのもの。

これで、条件付き期待値 の 定理 2.1[条件付き期待値](主張のみを引用していたもの)の証明が済みました。符号付き測度版は Jordan 分解から次のように従います。

系 4.4(符号付き測度の Radon–Nikodym)✓

μ\mu を σ\sigma-有限測度、ν\nu を有限符号付き測度で、μ(E)=0⇒ν(E)=0\mu(E)=0\Rightarrow\nu(E)=0 とする。このとき f∈L1(μ)f\in L^1(\mu) が存在し、ν(E)=∫Ef dμ\nu(E)=\int_Ef\,d\mu(E∈ME\in\mathcal{M})となる。ff は μ\mu-a.e. で一意である。

証明(系 4.4)

Hahn 分解 (P,N)(P,N) をとる。μ(E)=0\mu(E)=0 なら μ(E∩P)=0\mu(E\cap P)=0 だから ν+(E)=ν(E∩P)=0\nu^{+}(E)=\nu(E\cap P)=0。よって ν+≪μ\nu^{+}\ll\mu、同様に ν−≪μ\nu^{-}\ll\mu。定理 4.3 により有限測度 ν±\nu^{\pm} の密度 f±≥0f^{\pm}\ge0 が存在し、∫f±dμ=ν±(X)<∞\int f^{\pm}d\mu=\nu^{\pm}(X)<\infty だから f=f+−f−∈L1(μ)f=f^{+}-f^{-}\in L^1(\mu)、ν(E)=∫Ef dμ\nu(E)=\int_Ef\,d\mu。一意性:∫Ef dμ=∫Ef′ dμ\int_Ef\,d\mu=\int_Ef'\,d\mu が全 EE で成り立てば、E={f>f′}E=\{f>f'\} で ∫E(f−f′)=0\int_E(f-f')=0 から μ(E)=0\mu(E)=0。

例 4.5(Radon–Nikodym 微分の例)

(a) 確率密度。 R\mathbb{R} 上の確率測度 ν\nu がルベーグ測度に絶対連続なら、f=dν/dmf=d\nu/dm が確率密度関数。連続型確率変数の分布はこの形である(確率変数と期待値)。

(b) 離散と数え上げ測度。 X=NX=\mathbb{N} に数え上げ測度 μ\mu を入れると、μ(E)=0\mu(E)=0 なら E=∅E=\emptyset だから、任意の測度 ν\nu が μ\mu に絶対連続で、密度は f(n)=ν({n})f(n)=\nu(\{n\})。離散確率分布の確率質量関数である。

(c) 特異な例。 ディラック測度 δ0\delta_0 はルベーグ測度に絶対連続でない(m({0})=0m(\{0\})=0 だが δ0({0})=1\delta_0(\{0\})=1)。例 5.3[測度空間と Carathéodory の拡張定理] (d) のカントール測度は、連続(1 点の質量が 00)なのにルベーグ測度に特異である。「連続」と「絶対連続」は全く別の概念である。

(d) σ\sigma-有限性は必要。 X=[0,1]X=[0,1]、μ\mu を数え上げ測度(σ\sigma-有限でない)、ν=m\nu=m(ルベーグ測度)とすると ν≪μ\nu\ll\mu(μ(E)=0\mu(E)=0 なら E=∅E=\emptyset)。しかし m(E)=∫Ef dμ=∑x∈Ef(x)m(E)=\int_Ef\,d\mu=\sum_{x\in E}f(x) となる ff は存在しない:E={x}E=\{x\} で f(x)=m({x})=0f(x)=m(\{x\})=0 となり、すべての f(x)=0f(x)=0 では m([0,1])=0m([0,1])=0 になってしまう。

以下 R\mathbb{R} 上のルベーグ測度 mm を考え、m∗m^{*} をルベーグ外測度とします。開区間 B=(c−ρ,c+ρ)B=(c-\rho,c+\rho) に対し、kB=(c−kρ,c+kρ)kB=(c-k\rho,c+k\rho)(中心は同じで長さが kk 倍)と書きます。

この節の流れは次のとおりです。まず Vitali の被覆補題で、重なる区間の集まりから互いに素な区間を選び直し、選んだ区間を 5 倍にすれば元の区間すべてを覆えるようにします。これにより極大不等式が得られ、最後に、連続関数ならば微分定理が成り立つことと、可積分関数が連続関数で近似できることを合わせて微分定理を示します。補題の証明では、長い区間から順に選びます。選ばれなかった区間 BB は、最初に交わった BkB_k の長さの 2 倍未満なので、BkB_k の中心から BkB_k の長さの 5/25/2 倍以内に収まり、これが 5 倍の理由です。

補題 5.1(Vitali の被覆補題)✓

B\mathcal{B} を、ある有界区間 JJ に含まれる開区間の族とする。このとき、互いに素な可算個(有限個でもよい)の B1,B2,…∈BB_1,B_2,\ldots\in\mathcal{B} で

⋃B∈BB⊂⋃j5Bj\bigcup_{B\in\mathcal{B}}B\subset\bigcup_j5B_j

となるものが存在する。

証明(補題 5.1)

B1=B\mathcal{B}_1=\mathcal{B} とし、B1∈B1B_1\in\mathcal{B}_1 を、長さが sup⁡{∣B∣:B∈B1}\sup\{|B|:B\in\mathcal{B}_1\} の半分より大きいものとして選ぶ。Bk+1\mathcal{B}_{k+1} を、B1,…,BkB_1,\ldots,B_k のどれとも交わらない B\mathcal{B} の元の全体とし、空でなければ Bk+1∈Bk+1B_{k+1}\in\mathcal{B}_{k+1} を同様に(長さが Bk+1\mathcal{B}_{k+1} の長さの上限の半分より大きいものとして)選ぶ。BjB_j は互いに素で JJ に含まれるから ∑∣Bj∣≤∣J∣<∞\sum|B_j|\le|J|<\infty、特に無限に続くとき ∣Bj∣→0|B_j|\to0。

B∈BB\in\mathcal{B} をとる。すべての BjB_j と交わらないとすると、B∈BkB\in\mathcal{B}_k(全 kk)で ∣B∣<2∣Bk∣→0|B|<2|B_k|\to0 となり不可能(∣B∣>0|B|>0)。そこで BB が交わる最初の BkB_k をとる。B∈BkB\in\mathcal{B}_k だから ∣B∣<2∣Bk∣|B|<2|B_k|。y∈B∩Bky\in B\cap B_k をとると、BB の任意の点 zz は ∣z−y∣<∣B∣<2∣Bk∣|z-y|<|B|<2|B_k| で、BkB_k の中心 ckc_k について ∣y−ck∣<∣Bk∣/2|y-c_k|<|B_k|/2 だから ∣z−ck∣<2∣Bk∣+∣Bk∣/2<5∣Bk∣/2|z-c_k|<2|B_k|+|B_k|/2<5|B_k|/2。これは 5Bk5B_k の半幅 5∣Bk∣/25|B_k|/2 に等しい。ゆえに B⊂5BkB\subset5B_k。

極大関数は、点 xx を中心とする区間で ∣f∣|f| の平均を取り、区間の幅を変えて得られる値の上限を、各点 xx ごとに返す関数です。可積分関数 f∈L1(R)f\in L^1(\mathbb{R}) に対して、極大関数を

(Mf)(x)=sup⁡r>012r∫x−rx+r∣f(y)∣ dy(Mf)(x)=\sup_{r>0}\frac{1}{2r}\int_{x-r}^{x+r}|f(y)|\,dy

で定義します。

定理 5.2(極大不等式)✓

f∈L1(R)f\in L^1(\mathbb{R})、t>0t>0 とする。任意の R>0R>0 について

m∗({x∈(−R,R)∣(Mf)(x)>t})≤5t∥f∥1.m^{*}\bigl(\{x\in(-R,R)\mid(Mf)(x)>t\}\bigr)\le\frac{5}{t}\|f\|_1 .
証明(定理 5.2)

E={x∈(−R,R)∣Mf(x)>t}E=\{x\in(-R,R)\mid Mf(x)>t\} とおく。x∈Ex\in E には、12r∫x−rx+r∣f∣>t\frac{1}{2r}\int_{x-r}^{x+r}|f|>t となる rr がある。このとき 2r<∥f∥1/t=:L2r<\|f\|_1/t=:L。そのような開区間 (x−r,x+r)(x-r,x+r) の全体 B\mathcal{B} は (−R−L,R+L)(-R-L,R+L) に含まれ、E⊂⋃BE\subset\bigcup\mathcal{B}。補題 5.1 の互いに素な BjB_j をとると、m∗(E)≤∑j∣5Bj∣=5∑j∣Bj∣≤5t∑j∫Bj∣f∣≤5t∥f∥1m^{*}(E)\le\sum_j|5B_j|=5\sum_j|B_j|\le\frac{5}{t}\sum_j\int_{B_j}|f|\le\frac{5}{t}\|f\|_1(最後は BjB_j が互いに素)。

定理 5.3(Lebesgue の微分定理)✓

f∈L1(R)f\in L^1(\mathbb{R}) ならば、ほとんどすべての xx で

lim⁡r→012r∫x−rx+r∣f(y)−f(x)∣ dy=0.\lim_{r\to0}\frac{1}{2r}\int_{x-r}^{x+r}|f(y)-f(x)|\,dy=0 .

特にほとんどすべての xx で lim⁡r→012r∫x−rx+rf(y) dy=f(x)\displaystyle\lim_{r\to0}\frac{1}{2r}\int_{x-r}^{x+r}f(y)\,dy=f(x)。

証明の方針は、まず連続関数なら主張が成り立つことを確かめ、一般の ff を連続関数 gg で近似して、差 f−gf-g の部分を極大不等式で押さえる、というものです。

証明(定理 5.3)

ω(x)=lim sup⁡r→012r∫x−rx+r∣f(y)−f(x)∣ dy\omega(x)=\limsup_{r\to0}\frac{1}{2r}\int_{x-r}^{x+r}|f(y)-f(x)|\,dy とおく。t>0t>0、R>0R>0 を固定し、m∗({x∈(−R,R)∣ω(x)>2t})=0m^{*}(\{x\in(-R,R)\mid\omega(x)>2t\})=0 を示す。

η>0\eta>0 をとる。補題 5.4[直積測度と Fubini–Tonelli の定理] (1) により、g∈Cc(R)g\in C_c(\mathbb{R}) で ∥f−g∥1<η\|f-g\|_1<\eta となるものがある。連続関数 gg について 12r∫x−rx+r∣g(y)−g(x)∣ dy≤sup⁡∣y−x∣≤r∣g(y)−g(x)∣→0\frac{1}{2r}\int_{x-r}^{x+r}|g(y)-g(x)|\,dy\le\sup_{|y-x|\le r}|g(y)-g(x)|\to0 だから ωg≡0\omega_g\equiv0。∣f(y)−f(x)∣≤∣(f−g)(y)∣+∣g(y)−g(x)∣+∣(g−f)(x)∣|f(y)-f(x)|\le|(f-g)(y)|+|g(y)-g(x)|+|(g-f)(x)| を平均すると

ω(x)≤M(f−g)(x)+0+∣f−g∣(x).\omega(x)\le M(f-g)(x)+0+|f-g|(x).

したがって {ω>2t}⊂{M(f−g)>t}∪{∣f−g∣>t}\{\omega>2t\}\subset\{M(f-g)>t\}\cup\{|f-g|>t\}。定理 5.2 により前者の (−R,R)(-R,R) との交わりの外測度は ≤5η/t\le5\eta/t、後者は t1{∣f−g∣>t}≤∣f−g∣t\mathbf{1}_{\{|f-g|>t\}}\le|f-g| の積分から測度 ≤η/t\le\eta/t。ゆえに m∗({x∈(−R,R)∣ω(x)>2t})≤6η/tm^{*}(\{x\in(-R,R)\mid\omega(x)>2t\})\le6\eta/t。η\eta は任意だから外測度は 00。t=1/nt=1/n、R=nR=n について和集合をとって m∗({ω>0})=0m^{*}(\{\omega>0\})=0(可算劣加法性)。外測度零の集合は可測(命題 4.4[可測集合とルベーグ測度])だから、ω=0\omega=0 a.e. である。最後の主張は ∣12r∫f−f(x)∣≤12r∫∣f−f(x)∣|\frac{1}{2r}\int f-f(x)|\le\frac{1}{2r}\int|f-f(x)| から。

系 5.4(不定積分の微分)✓

f∈L1[a,b]f\in L^1[a,b]、F(x)=∫axf dmF(x)=\int_a^xf\,dm とすると、ほとんどすべての x∈(a,b)x\in(a,b) で FF は微分可能で F′(x)=f(x)F'(x)=f(x)。

証明(系 5.4)

ff を [a,b][a,b] の外で 00 として L1(R)L^1(\mathbb{R}) の元とみる。定理 5.3 の例外集合の外の x∈(a,b)x\in(a,b) と 0<∣h∣<min⁡(x−a,b−x)0<|h|<\min(x-a,b-x) について、F(x+h)−F(x)h−f(x)=1h∫xx+h(f(y)−f(x))dy\frac{F(x+h)-F(x)}{h}-f(x)=\frac{1}{h}\int_x^{x+h}\bigl(f(y)-f(x)\bigr)dy で、絶対値は 1∣h∣∫x−∣h∣x+∣h∣∣f(y)−f(x)∣ dy=2⋅12∣h∣∫x−∣h∣x+∣h∣∣f−f(x)∣→0\frac{1}{|h|}\int_{x-|h|}^{x+|h|}|f(y)-f(x)|\,dy=2\cdot\frac{1}{2|h|}\int_{x-|h|}^{x+|h|}|f-f(x)|\to0。

5.1. 発展:Rn\mathbb{R}^n の Besicovitch の被覆定理

Section titled “5.1. 発展:Rn\mathbb{R}^nRn の Besicovitch の被覆定理”

補題 5.1 は、選んだ区間を 55 倍に膨らませてはじめて全体を覆います。ルベーグ測度では ∣5B∣=5∣B∣|5B|=5|B| なので困りませんが、一般の測度 μ\mu では μ(5B)\mu(5B) と μ(B)\mu(B) が比較できず、極大不等式が作れません。次の定理は、球を膨らませずに、重なりの回数を次元だけで決まる定数で抑えて覆います。代償は、各点がその点を中心とする球をもつという仮定です。以下 Rn\mathbb{R}^n のルベーグ測度を mm と書き、Bˉ(a,r)={x:∣x−a∣≤r}\bar B(a,r)=\{x:|x-a|\le r\} とします。並進不変性と相似(補題 3.1[ℝ^d の変数変換公式と極座標]、系 3.5[ℝ^d の変数変換公式と極座標])から m(Bˉ(a,r))=ωnrnm(\bar B(a,r))=\omega_nr^n(ωn=m(Bˉ(0,1))>0\omega_n=m(\bar B(0,1))>0)です。

定理 5.5(Besicovitch の被覆定理)✓

n≥1n\ge1 とし、Nn=2(20n+6n+1)N_n=2(20^n+6^n+1) と置く。F\mathcal{F} を Rn\mathbb{R}^n の閉球 Bˉ(a,r)\bar B(a,r)(r>0r>0)の族で、半径の上限が有限なものとし、A⊂RnA\subset\mathbb{R}^n の各点 aa について、aa を中心とする球が F\mathcal{F} に属するとする。このとき F\mathcal{F} の部分族 G1,…,GNn\mathcal{G}_1,\ldots,\mathcal{G}_{N_n} で、各 Gi\mathcal{G}_i は互いに交わらない可算個(有限個でもよい)の球からなり、

A⊂⋃i=1Nn ⋃B∈GiBA\subset\bigcup_{i=1}^{N_n}\ \bigcup_{B\in\mathcal{G}_i}B

となるものが存在する。

この節は発展で、次の §6 では使いません。証明の見通しは次のとおりです。ステップ 1 で、大きい球から順に、まだ覆えていない点を中心とする球を選びます。ステップ 2 では、後から選ぶ球に交わる、先に選んだ球の個数が次元だけで決まる定数以下であることを示します。半径が近い球とそうでない球に分け、前者は体積の比較で、後者は中心の方向が互いに離れることから数えます。ステップ 3 でこの個数の評価を使って、選んだ球を交わらない族に振り分け、ステップ 4 で有界でない場合に広げます。

証明(定理 5.5)

F\mathcal{F} のうち中心が AA に属する球だけを考えれば十分なので、そうしておきます。

ステップ 1(AA が有界な場合の選び方). A⊂Bˉ(0,R)A\subset\bar B(0,R) とします。A1=AA_1=A とし、j≥1j\ge1 について Aj≠∅A_j\ne\emptyset なら Dj=sup⁡{r:Bˉ(a,r)∈F, a∈Aj}D_j=\sup\{r:\bar B(a,r)\in\mathcal{F},\ a\in A_j\}(0<Dj<∞0<D_j<\infty)と置いて、中心 aj∈Aja_j\in A_j、半径 rj>34Djr_j>\frac34D_j の球 Bj=Bˉ(aj,rj)∈FB_j=\bar B(a_j,r_j)\in\mathcal{F} を選び、Aj+1=A∖(B1∪⋯∪Bj)A_{j+1}=A\setminus(B_1\cup\cdots\cup B_j) とします。Aj=∅A_j=\emptyset となったら止め、それまでに選んだ球の個数を JJ とします(止まらなければ J=∞J=\infty)。次の 4 つが成り立ちます。

(a) i<ji<j なら rj<43rir_j<\frac43r_i。実際 Aj⊂AiA_j\subset A_i なので rj≤Dj≤Di<43rir_j\le D_j\le D_i<\frac43r_i です。

(b) 球 Bˉ(aj,rj/3)\bar B(a_j,r_j/3) たちは互いに交わらない。i<ji<j なら aj∈Aja_j\in A_j は BiB_i に属さないので ∣aj−ai∣>ri|a_j-a_i|>r_i で、(a) から ri3+rj3<ri3+4ri9<ri\frac{r_i}3+\frac{r_j}3<\frac{r_i}{3}+\frac{4r_i}{9}<r_i だからです。

(c) J=∞J=\infty なら rj→0r_j\to0。(b) の球は互いに交わらず、すべて Bˉ(0,R+D1)\bar B(0,R+D_1) に含まれるので、m(Bˉ(a,r))=ωnrnm(\bar B(a,r))=\omega_nr^n(補題 3.1[ℝ^d の変数変換公式と極座標]、系 3.5[ℝ^d の変数変換公式と極座標])と測度の可算加法性から ∑jωn(rj/3)n≤ωn(R+D1)n<∞\sum_j\omega_n(r_j/3)^n\le\omega_n(R+D_1)^n<\infty です。以下の体積の比較も同じ式によります。

(d) A⊂⋃jBjA\subset\bigcup_jB_j。JJ が有限なら AJ+1=∅A_{J+1}=\emptyset がその意味です。J=∞J=\infty のとき、a∈Aa\in A と Bˉ(a,r)∈F\bar B(a,r)\in\mathcal{F} を取り、(c) から rj<34rr_j<\frac34r となる jj を取ります。aa が B1,…,Bj−1B_1,\ldots,B_{j-1} のどれにも属さないとすると a∈Aja\in A_j なので Dj≥rD_j\ge r、よって rj>34rr_j>\frac34r となり矛盾します。

ステップ 2(先に選んだ球との交わりは 20n+6n20^n+6^n 個以下). k≤Jk\le J を固定し、I={j<k:Bj∩Bk≠∅}I=\{j<k:B_j\cap B_k\ne\emptyset\} を I1={j∈I:rj≤3rk}I^1=\{j\in I:r_j\le3r_k\} と I2={j∈I:rj>3rk}I^2=\{j\in I:r_j>3r_k\} に分けます。

I1I^1: j∈I1j\in I^1 なら ∣aj−ak∣≤rj+rk≤4rk|a_j-a_k|\le r_j+r_k\le4r_k なので Bˉ(aj,rj/3)⊂Bˉ(ak,5rk)\bar B(a_j,r_j/3)\subset\bar B(a_k,5r_k) です。(a) から rk<43rjr_k<\frac43r_j、すなわち rj/3>rk/4r_j/3>r_k/4 です。これらの球は (b) により互いに交わらないので、体積を比べて #I1⋅ωn(rk/4)n≤ωn(5rk)n\#I^1\cdot\omega_n(r_k/4)^n\le\omega_n(5r_k)^n、#I1≤20n\#I^1\le20^n です。

I2I^2: i<ji<j を I2I^2 の 2 元とし、x=ai−akx=a_i-a_k, y=aj−aky=a_j-a_k と置きます。ak∉Bi∪Bja_k\notin B_i\cup B_j と Bi∩Bk≠∅B_i\cap B_k\ne\emptyset, Bj∩Bk≠∅B_j\cap B_k\ne\emptyset、rk<ri/3r_k<r_i/3, rk<rj/3r_k<r_j/3 から

ri<∣x∣≤ri+rk<43ri,rj<∣y∣≤rj+rk<43rj,r_i<|x|\le r_i+r_k<\tfrac43r_i,\qquad r_j<|y|\le r_j+r_k<\tfrac43r_j,

また aj∉Bia_j\notin B_i から ∣x−y∣>ri|x-y|>r_i、(a) から rj<43rir_j<\frac43r_i です。c=⟨x,y⟩/(∣x∣∣y∣)c=\langle x,y\rangle/(|x||y|) と置くと ∣x−y∣2=(∣x∣−∣y∣)2+2∣x∣∣y∣(1−c)|x-y|^2=(|x|-|y|)^2+2|x||y|(1-c) です。

  • ∣x∣≥∣y∣|x|\ge|y| のとき: 0≤∣x∣−∣y∣<ri+rk−rj<ri−23rj0\le|x|-|y|<r_i+r_k-r_j<r_i-\frac23r_j で、右辺は ri−89ri>0r_i-\frac89r_i>0 以上です。よって 2∣x∣∣y∣(1−c)>ri2−(ri−23rj)2=43rirj−49rj2>43rirj−1627rirj=2027rirj2|x||y|(1-c)>r_i^2-(r_i-\frac23r_j)^2=\frac43r_ir_j-\frac49r_j^2>\frac43r_ir_j-\frac{16}{27}r_ir_j=\frac{20}{27}r_ir_j。
  • ∣y∣>∣x∣|y|>|x| のとき: 0<∣y∣−∣x∣<rj+rk−ri<43rj−ri0<|y|-|x|<r_j+r_k-r_i<\frac43r_j-r_i です。よって 2∣x∣∣y∣(1−c)>ri2−(43rj−ri)2=83rj(ri−23rj)>83rj⋅ri9=827rirj2|x||y|(1-c)>r_i^2-(\frac43r_j-r_i)^2=\frac83r_j\bigl(r_i-\frac23r_j\bigr)>\frac83r_j\cdot\frac{r_i}{9}=\frac{8}{27}r_ir_j。

どちらの場合も左辺は正なので 1−c>01-c>0 で、2∣x∣∣y∣<329rirj2|x||y|<\frac{32}9r_ir_j と合わせて 1−c>827⋅932=1121-c>\frac{8}{27}\cdot\frac{9}{32}=\frac1{12} です。したがって単位ベクトル uj=(aj−ak)/∣aj−ak∣u_j=(a_j-a_k)/|a_j-a_k|(j∈I2j\in I^2)は互いに ∣ui−uj∣2=2(1−c)>16>(25)2|u_i-u_j|^2=2(1-c)>\frac16>\bigl(\frac25\bigr)^2 をみたし、球 Bˉ(uj,1/5)\bar B(u_j,1/5) は互いに交わらず Bˉ(0,6/5)\bar B(0,6/5) に含まれます。体積を比べて #I2≤6n\#I^2\le6^n です。

ステップ 3(色分け). M=20n+6nM=20^n+6^n と置きます。B1,B2,…B_1,B_2,\ldots を順に M+1M+1 個の族 G1,…,GM+1\mathcal{G}_1,\ldots,\mathcal{G}_{M+1} に振り分けます。BkB_k の番が来たとき、ステップ 2 から BkB_k と交わる先の球は MM 個以下なので、BkB_k と交わる元をもたない族が少なくとも 1 つあり、その最初のものに BkB_k を入れます。各 Gl\mathcal{G}_l は互いに交わらない球からなり、(d) から全体で AA を覆います。有界な場合は M+1M+1 個の族で済みました。

ステップ 4(一般の場合). D=sup⁡{r:Bˉ(a,r)∈F}<∞D=\sup\{r:\bar B(a,r)\in\mathcal{F}\}<\infty と置き、l≥1l\ge1 について Al=A∩{3D(l−1)≤∣x∣<3Dl}A^l=A\cap\{3D(l-1)\le|x|<3Dl\} とします。各 AlA^l は有界なので、中心が AlA^l に属する球の族にステップ 1–3 を使い、G1l,…,GM+1l\mathcal{G}^l_1,\ldots,\mathcal{G}^l_{M+1} を得ます。l+2≤l′l+2\le l' なら、中心 a∈Ala\in A^l, b∈Al′b\in A^{l'} の球は ∣b−a∣≥∣b∣−∣a∣>3D(l′−1)−3Dl≥3D|b-a|\ge|b|-|a|>3D(l'-1)-3Dl\ge3D で、半径の和は 2D2D 以下なので交わりません。そこで Gi=⋃l 奇数Gil\mathcal{G}_i=\bigcup_{l\text{ 奇数}}\mathcal{G}^l_i, GM+1+i=⋃l 偶数Gil\mathcal{G}_{M+1+i}=\bigcup_{l\text{ 偶数}}\mathcal{G}^l_i(1≤i≤M+11\le i\le M+1)と置けば、各族は互いに交わらない可算個の球からなり、合わせて AA を覆います。族の数は 2(M+1)=Nn2(M+1)=N_n です。

注意 5.6

定数 NnN_n は次元だけで決まり、球の大きさの比にも測度にもよりません。このため、Rn\mathbb{R}^n 上の任意の局所有限なボレル測度 μ\mu について、μ\mu が正の点で比 μ(E∩Bˉ(x,r))/μ(Bˉ(x,r))\mu(E\cap\bar B(x,r))/\mu(\bar B(x,r)) が r→0r\to0 で 1E(x)\mathbf{1}_E(x) に μ\mu-a.e. 収束する、という形の微分定理が、極大不等式 μ({Mμf>t})≤Nn∥f∥L1(μ)/t\mu(\{M_\mu f>t\})\le N_n\|f\|_{L^1(\mu)}/t を経由して得られます(球を膨らませないので μ(5B)\mu(5B) を μ(B)\mu(B) で抑える必要がない)。一方、中心の条件は外せません。中心を問わない球の族では、重なりの回数を一様に抑えることはできません。文献: L. C. Evans–R. F. Gariepy, Measure Theory and Fine Properties of Functions, 第 1.5 節; P. Mattila, Geometry of Sets and Measures in Euclidean Spaces, 第 2 章。

6. 有界変動・絶対連続関数と微積分学の基本定理

Section titled “6. 有界変動・絶対連続関数と微積分学の基本定理”

閉区間 [a,b][a,b] 上の関数 F:[a,b]→RF:[a,b]\to\mathbb{R} と、分割 a=x0<x1<⋯<xn=ba=x_0<x_1<\cdots<x_n=b を考えます。

定義 6.1(有界変動・絶対連続)↗

FF の [a,x][a,x] 上の全変動を VaxF=sup⁡∑i=1n∣F(xi)−F(xi−1)∣V_a^xF=\sup\sum_{i=1}^n|F(x_i)-F(x_{i-1})| (a=x0<⋯<xn=xa=x_0<\cdots<x_n=x のすべての分割についての上限)とする。VabF<∞V_a^bF<\infty のとき FF は有界変動(BV)であるという。FF が絶対連続であるとは、任意の ε>0\varepsilon>0 に対して δ>0\delta>0 が存在し、互いに素な有限個の開区間 (ai,bi)⊂[a,b](a_i,b_i)\subset[a,b] で ∑(bi−ai)<δ\sum(b_i-a_i)<\delta を満たすものについて ∑∣F(bi)−F(ai)∣<ε\sum|F(b_i)-F(a_i)|<\varepsilon となることをいう。

命題 6.2(全変動の性質)✓

  1. a≤b≤ca\le b\le c のとき VacF=VabF+VbcFV_a^cF=V_a^bF+V_b^cF。
  2. FF が BV ならば V(x)=VaxFV(x)=V_a^xF と V−FV-F はともに単調増加で、F=V−(V−F)F=V-(V-F)。
  3. FF が絶対連続ならば BV であり、VV も絶対連続(特に連続)である。
証明(命題 6.2)

(1) [a,b][a,b] と [b,c][b,c] の分割を連結すると [a,c][a,c] の分割だから「≥\ge」。逆に [a,c][a,c] の分割に点 bb を加えても和は(三角不等式により)減らず、bb で分けると [a,b][a,b] と [b,c][b,c] の分割の和の和になるから「≤\le」。

(2) V(y)−V(x)=VxyF≥0V(y)-V(x)=V_x^yF\ge0 より VV は増加。また ∣F(y)−F(x)∣≤VxyF|F(y)-F(x)|\le V_x^yF から (V−F)(y)−(V−F)(x)=VxyF−(F(y)−F(x))≥0(V-F)(y)-(V-F)(x)=V_x^yF-(F(y)-F(x))\ge0。

(3) ε=1\varepsilon=1 に対する δ\delta をとると、長さ <δ<\delta の任意の区間 II の任意の分割で ∑∣ΔF∣<1\sum|\Delta F|<1、すなわち VIF≤1V_I F\le1。[a,b][a,b] を長さ <δ<\delta の NN 個の区間に分ければ (1) から VabF≤NV_a^bF\le N。次に VV の絶対連続性:ε>0\varepsilon>0 に FF の δ\delta をとり、互いに素な (ai,bi)(a_i,b_i) が ∑(bi−ai)<δ\sum(b_i-a_i)<\delta とする。各 ii で [ai,bi][a_i,b_i] の分割を ∑j∣ΔF∣>VaibiF−ε/n\sum_j|\Delta F|>V_{a_i}^{b_i}F-\varepsilon/n ととる(nn は区間の個数)。これらの小区間全体は互いに素で長さの総和は <δ<\delta だから、∑i∑j∣ΔF∣<ε\sum_i\sum_j|\Delta F|<\varepsilon。ゆえに ∑iVaibiF<2ε\sum_iV_{a_i}^{b_i}F<2\varepsilon、すなわち ∑i∣V(bi)−V(ai)∣<2ε\sum_i|V(b_i)-V(a_i)|<2\varepsilon。

定義 6.3(関数に対応する測度)↗

G:R→RG:\mathbb{R}\to\mathbb{R} が増加かつ右連続なとき、定理 5.2[測度空間と Carathéodory の拡張定理] の測度を μG\mu_G と書く(μG((c,d])=G(d)−G(c)\mu_G((c,d])=G(d)-G(c))。

Lebesgue–Stieltjes 測度は、増加関数 GG から区間 (c,d](c,d] に長さ G(d)−G(c)G(d)-G(c) を割り当てて作る測度のことです。次の補題は、集合の測度がその集合を含むわずかに大きな開集合の測度で近似できる、という主張で、次の補題の証明で使います。

補題 6.4(Lebesgue–Stieltjes 測度の外正則性)✓

ボレル集合 BB と ε>0\varepsilon>0 に対し、開集合 U⊃BU\supset B で μG(U)<μG(B)+ε\mu_G(U)<\mu_G(B)+\varepsilon となるものが存在する。有限なボレル測度はすべてこの性質をもつ。

証明(補題 6.4)

μG(B)<∞\mu_G(B)<\infty としてよい。構成(定理 4.2[測度空間と Carathéodory の拡張定理])により μG(B)=μ∗(B)=inf⁡∑μ0(Ij)\mu_G(B)=\mu^{*}(B)=\inf\sum\mu_0(I_j)(B⊂⋃IjB\subset\bigcup I_j、Ij=(aj,bj]I_j=(a_j,b_j] は h-区間)。∑μ0(Ij)<μG(B)+ε/2\sum\mu_0(I_j)<\mu_G(B)+\varepsilon/2 となる被覆をとり、GG の右連続性で bj′>bjb_j'>b_j を G(bj′)−G(bj)<ε2−j−1G(b_j')-G(b_j)<\varepsilon2^{-j-1} ととる(bj=∞b_j=\infty のときは (aj,∞)(a_j,\infty) がすでに開集合なので何もしない)。U=⋃(aj,bj′)U=\bigcup(a_j,b_j') は開集合で B⊂UB\subset U、μG(U)≤∑(G(bj′)−G(aj))<μG(B)+ε\mu_G(U)\le\sum(G(b_j')-G(a_j))<\mu_G(B)+\varepsilon。有限ボレル測度 ν\nu は H(x)=ν((−∞,x])H(x)=\nu((-\infty,x]) の定める μH\mu_H と、π-系 {(−∞,x]}\{(-\infty,x]\} 上の値の一致と 定理 4.5[測度空間と Carathéodory の拡張定理] により一致するので、同じ性質をもつ。

補題 6.5(特異測度の微分)✓

ν\nu を R\mathbb{R} 上の有限ボレル測度とし、ν⊥m\nu\perp m とする。このとき、ほとんどすべての xx で lim⁡r→0ν((x−r,x+r))2r=0\displaystyle\lim_{r\to0}\frac{\nu((x-r,x+r))}{2r}=0 である。

証明の方針は次のとおりです。ν⊥m\nu\perp m より、m(Z)=0m(Z)=0 となる集合 ZZ で ν\nu が ZZ の外に質量をもたないものがあります。ZZ の外の点で比が大きいものを調べます。ν\nu は ZcZ^{c} に質量をもたないので、外正則性により ZcZ^{c} を ν\nu の測度が小さい開集合 UU で包めます。比 ν(区間)/(区間の長さ)\nu(\text{区間})/(\text{区間の長さ}) が大きい小さな区間を UU の中に取り、Vitali の被覆補題で互いに素なものを選ぶと、長さの総和は ν(U)\nu(U) の定数倍以下になります。したがって、そのような点の集合の外測度はいくらでも小さくできます。

証明(補題 6.5)

ZZ を m(Z)=0m(Z)=0、ν(Zc)=0\nu(Z^{c})=0 となるボレル集合とする。t>0t>0、R>0R>0 に対し E={x∈(−R,R)∖Z∣lim sup⁡r→0ν((x−r,x+r))/2r>t}E=\{x\in(-R,R)\setminus Z\mid\limsup_{r\to0}\nu((x-r,x+r))/2r>t\} の外測度が 00 であることを示す。ε>0\varepsilon>0 に対し、補題 6.4 により開集合 U⊃ZcU\supset Z^{c} で ν(U)<ε\nu(U)<\varepsilon をとる。各 x∈Ex\in E には、いくらでも小さい r<1r<1 で ν((x−r,x+r))>2tr\nu((x-r,x+r))>2tr となるものがあり、rr を小さくとって (x−r,x+r)⊂U(x-r,x+r)\subset U とできる。これらの区間の族は (−R−1,R+1)(-R-1,R+1) に含まれ EE を覆うから、補題 5.1 により互いに素な BjB_j で m∗(E)≤5∑∣Bj∣≤5t∑ν(Bj)≤5tν(U)<5εtm^{*}(E)\le5\sum|B_j|\le\frac{5}{t}\sum\nu(B_j)\le\frac{5}{t}\nu(U)<\frac{5\varepsilon}{t}。ε→0\varepsilon\to0 で m∗(E)=0m^{*}(E)=0。t=1/nt=1/n、R=nR=n について和集合をとれば、ZcZ^{c} のほとんどすべての点で極限が 00。m(Z)=0m(Z)=0 だから、ほとんどすべての xx で成り立つ。

定理 6.6(単調関数の微分)✓

G:R→RG:\mathbb{R}\to\mathbb{R} を増加かつ右連続とし、μG=νa+νs\mu_G=\nu_a+\nu_s を mm に関する Lebesgue 分解(定理 4.2)、g=dνa/dmg=d\nu_a/dm とする。このとき GG はほとんどすべての xx で微分可能で G′(x)=g(x)G'(x)=g(x)。また a<ba<b に対し

G(b)−G(a)=∫abG′ dm+νs((a,b]) ≥ ∫abG′ dm.G(b)-G(a)=\int_a^bG'\,dm+\nu_s((a,b])\ \ge\ \int_a^bG'\,dm .
証明(定理 6.6)

μG\mu_G は有界区間で有限だから、R>0R>0 について (−R,R)(-R,R) に制限した測度で議論でき、σ\sigma-有限性も成り立つ。h>0h>0 について G(x+h)−G(x)=μG((x,x+h])G(x+h)-G(x)=\mu_G((x,x+h])、G(x)−G(x−h)=μG((x−h,x])G(x)-G(x-h)=\mu_G((x-h,x])。II をこのような長さ hh の区間とすると、νa(I)/h=1h∫Ig dm→g(x)\nu_a(I)/h=\frac1h\int_Ig\,dm\to g(x) a.e.(g1(−R,R)∈L1(R)g\mathbf{1}_{(-R,R)}\in L^1(\mathbb{R}) に 定理 5.3 を適用し、系 5.4 と同じ評価を行う)。νs(I)/h≤νs((x−2h,x+2h))/h→0\nu_s(I)/h\le\nu_s((x-2h,x+2h))/h\to0 a.e.(補題 6.5 を νs∣(−R,R)\nu_s|_{(-R,R)} に適用)。したがって両側の差分商が a.e. で g(x)g(x) に収束する。後半は μG((a,b])=νa((a,b])+νs((a,b])\mu_G((a,b])=\nu_a((a,b])+\nu_s((a,b]) と νa((a,b])=∫abg dm\nu_a((a,b])=\int_a^bg\,dm から。

定理 6.6 は右連続な増加関数についての定理でした。一般の増加関数は、不連続点(高々可算個)で値を取り替えれば右連続になるので、この仮定は外せます。

定理 6.7(Lebesgue の定理(単調関数はほとんど至るところ微分可能))✓

f:R→Rf:\mathbb{R}\to\mathbb{R} が単調ならば、ff はほとんどすべての xx で微分可能である。さらに ff が増加関数なら f′≥0f'\ge0 a.e. で、a<ba<b に対し

∫abf′ dm ≤ f(b)−f(a)\int_a^bf'\,dm\ \le\ f(b)-f(a)

が成り立つ。閉区間 [a,b][a,b] 上の単調関数は、[a,b][a,b] の外で端点の値を延長して同様に扱える。

証明(定理 6.7)

減少関数は −f-f に帰着するので、ff を増加関数とします(弱い意味の増加で、定数でもよい)。

第 1 段:右連続な修正 GG。 ff は実数値の増加関数なので、各 xx で f(x−)=sup⁡y<xf(y)f(x-)=\sup_{y<x}f(y) と f(x+)=inf⁡y>xf(y)f(x+)=\inf_{y>x}f(y) が有限で、f(x−)≤f(x)≤f(x+)f(x-)\le f(x)\le f(x+) です。G(x)=f(x+)G(x)=f(x+) と定めます。GG は増加で、右連続です。実際 ε>0\varepsilon>0 に対し G(x)=inf⁡y>xf(y)G(x)=\inf_{y>x}f(y) より f(y)<G(x)+εf(y)<G(x)+\varepsilon となる y>xy>x が取れ、x<z<yx<z<y なら G(x)≤G(z)≤f(y)<G(x)+εG(x)\le G(z)\le f(y)<G(x)+\varepsilon です(G(z)=inf⁡w>zf(w)≤f(y)G(z)=\inf_{w>z}f(w)\le f(y))。また G(y−)=lim⁡z↑yG(z)=f(y−)G(y-)=\lim_{z\uparrow y}G(z)=f(y-) です(f(z)≤G(z)≤f(z′)f(z)\le G(z)\le f(z') が z<z′z<z' で成り立つため)。したがって各 yy で

G(y−)=f(y−)≤f(y)≤f(y+)=G(y)G(y-)=f(y-)\le f(y)\le f(y+)=G(y)

です。

第 2 段:不連続点は高々可算個。 ff が xx で不連続であることは f(x−)<f(x+)f(x-)<f(x+) と同値です。正整数 N,nN,n に対し、(−N,N)(-N,N) 内の xx で f(x+)−f(x−)>1/nf(x+)-f(x-)>1/n となるものが kk 個 x1<⋯<xkx_1<\cdots<x_k あれば、これらの飛びの区間 (f(xi−),f(xi+))(f(x_i-),f(x_i+)) は互いに交わらず [f(−N),f(N)][f(-N),f(N)] に含まれる(xi<xi+1x_i<x_{i+1} なら f(xi+)≤f(xi+1−)f(x_i+)\le f(x_{i+1}-))ので k/n<f(N)−f(−N)k/n<f(N)-f(-N) です。よって各 N,nN,n について有限個で、不連続点の全体 DD は可算です。

第 3 段:ff の微分可能性。 定理 6.6 により、零集合 Z1Z_1 があって x∉Z1x\notin Z_1 では GG が微分可能です。DD は可算なので零集合(命題 3.3[可測集合とルベーグ測度])です。x∉Z1∪Dx\notin Z_1\cup D を取ります。ff は xx で連続だから f(x)=G(x)f(x)=G(x) です(第 1 段で f(x−)=f(x)=f(x+)f(x-)=f(x)=f(x+))。L=G′(x)L=G'(x) とし、0<s<10<s<1 を固定します。

h>0h>0 のとき、f(x+h)≤G(x+h)f(x+h)\le G(x+h) と、f(x+h)≥f((x+h)−)=G((x+h)−)≥G(x+sh)f(x+h)\ge f((x+h)-)=G((x+h)-)\ge G(x+sh) から

s⋅G(x+sh)−G(x)sh ≤ f(x+h)−f(x)h ≤ G(x+h)−G(x)h.s\cdot\frac{G(x+sh)-G(x)}{sh}\ \le\ \frac{f(x+h)-f(x)}{h}\ \le\ \frac{G(x+h)-G(x)}{h}.

h↓0h\downarrow0 で右辺は LL に、左辺は sLsL に収束するので、sL≤lim inf⁡≤lim sup⁡≤LsL\le\liminf\le\limsup\le L です。s↑1s\uparrow1 で右側微分係数が LL です。h=−k<0h=-k<0 のときは、s>1s>1 を固定します。f(x−k)≤G(x−k)f(x-k)\le G(x-k) と、x−sk<x−kx-sk<x-k から G(x−sk)≤G((x−k)−)=f((x−k)−)≤f(x−k)G(x-sk)\le G((x-k)-)=f((x-k)-)\le f(x-k) が成り立つので

G(x)−G(x−k)k ≤ f(x)−f(x−k)k ≤ s⋅G(x)−G(x−sk)sk\frac{G(x)-G(x-k)}{k}\ \le\ \frac{f(x)-f(x-k)}{k}\ \le\ s\cdot\frac{G(x)-G(x-sk)}{sk}

です。k↓0k\downarrow0 で左辺は LL、右辺は sLsL に収束するので、L≤lim inf⁡≤lim sup⁡≤sLL\le\liminf\le\limsup\le sL で、s↓1s\downarrow1 により左側微分係数も LL です。以上より f′(x)=G′(x)f'(x)=G'(x) であり、ff は R∖(Z1∪D)\mathbb{R}\setminus(Z_1\cup D) で微分可能です。

第 4 段:積分の不等式。 第 3 段より f′=G′f'=G' a.e. で、GG は増加なので G′≥0G'\ge0 です。a<b′<ba<b'<b に対し 定理 6.6 から ∫ab′f′ dm=∫ab′G′ dm≤G(b′)−G(a)≤G(b−)−G(a)\int_a^{b'}f'\,dm=\int_a^{b'}G'\,dm\le G(b')-G(a)\le G(b-)-G(a) で、G(b−)=f(b−)≤f(b)G(b-)=f(b-)\le f(b)、G(a)≥f(a)G(a)\ge f(a) なので右辺は ≤f(b)−f(a)\le f(b)-f(a) です。b′↑bb'\uparrow b として、単調収束定理(定理 5.2[ルベーグ積分の定義と収束定理])で ∫abf′ dm≤f(b)−f(a)\int_a^bf'\,dm\le f(b)-f(a) を得ます。

系 6.8(有界変動関数の微分可能性)✓

F:[a,b]→RF:[a,b]\to\mathbb{R} が有界変動ならば、FF はほとんどすべての x∈[a,b]x\in[a,b] で微分可能で、F′∈L1[a,b]F'\in L^1[a,b] である。

証明(系 6.8)

命題 6.2 (2) により F=V−(V−F)F=V-(V-F) で、VV と V−FV-F は増加関数です。[a,b][a,b] の外で端点の値を延長した増加関数に 定理 6.7 を適用すれば、どちらもほとんど至るところ微分可能で、差の FF も同様です。可積分性は、∣F′∣≤V′+(V−F)′|F'|\le V'+(V-F)' a.e. と 定理 6.7 の積分の不等式により ∫ab∣F′∣ dm≤V(b)−V(a)+(V−F)(b)−(V−F)(a)<∞\int_a^b|F'|\,dm\le V(b)-V(a)+(V-F)(b)-(V-F)(a)<\infty です。可測性は、F′F' が差分商 n(F(x+1/n)−F(x))n\bigl(F(x+1/n)-F(x)\bigr) の a.e. 極限であることから従います。単調関数は {f>c}\{f>c\} が区間なので可測で、その差・平行移動・定数倍も可測、可測関数列の各点極限は可測です(命題 3.4[ルベーグ積分の定義と収束定理])。

定理 6.9(微積分学の基本定理(ルベーグ版))✓

F:[a,b]→RF:[a,b]\to\mathbb{R} について、次の三つは同値である。

  1. FF は絶対連続である。
  2. ある f∈L1[a,b]f\in L^1[a,b] が存在して、すべての x∈[a,b]x\in[a,b] で F(x)=F(a)+∫axf dmF(x)=F(a)+\int_a^xf\,dm。
  3. FF はほとんどすべての xx で微分可能で、F′∈L1[a,b]F'\in L^1[a,b]、かつ F(x)=F(a)+∫axF′ dmF(x)=F(a)+\int_a^xF'\,dm。

このとき (2) の ff は F′F' と a.e. で等しい。

証明(定理 6.9)

(2) ⇒ (1)。 ν(E)=∫E∣f∣ dm\nu(E)=\int_E|f|\,dm は有限測度で ν≪m\nu\ll m だから、命題 2.2 の ε\varepsilon-δ\delta が成り立つ。互いに素な (ai,bi)(a_i,b_i) で ∑(bi−ai)<δ\sum(b_i-a_i)<\delta なら、E=⨆(ai,bi)E=\bigsqcup(a_i,b_i) が m(E)<δm(E)<\delta で、∑∣F(bi)−F(ai)∣≤∑∫aibi∣f∣=ν(E)<ε\sum|F(b_i)-F(a_i)|\le\sum\int_{a_i}^{b_i}|f|=\nu(E)<\varepsilon。

(2) ⇒ (3)。 系 5.4 により F′=fF'=f a.e.。

(3) ⇒ (2)。 f=F′f=F'。

(1) ⇒ (2)。 まず増加かつ絶対連続な GG について示す。GG を [a,b][a,b] の外で定数(x<ax<a で G(a)G(a)、x>bx>b で G(b)G(b))として R\mathbb{R} に延長する。GG は連続だから右連続で、μG\mu_G は有限測度、μG(R∖(a,b])=0\mu_G(\mathbb{R}\setminus(a,b])=0(μG({b})=0\mu_G(\{b\})=0 も連続性から)。μG≪m\mu_G\ll m を示す。μG(R∖(a,b))=0\mu_G(\mathbb{R}\setminus(a,b))=0 だから、m(E)=0m(E)=0 のボレル集合 E⊂(a,b)E\subset(a,b) について μG(E)=0\mu_G(E)=0 を示せば十分である。ε>0\varepsilon>0 に GG の絶対連続性の δ\delta をとる。m(E)=0m(E)=0 だから、EE は総長 <δ<\delta の開区間で覆われ、その和集合 U⊂(a,b)U\subset(a,b) は互いに素な可算個の開区間 (ci,di)(c_i,d_i) の和で ∑(di−ci)<δ\sum(d_i-c_i)<\delta。連続性より μG((ci,di))=G(di)−G(ci)\mu_G((c_i,d_i))=G(d_i)-G(c_i) で、有限個の和は絶対連続性により <ε<\varepsilon。ゆえに μG(U)≤ε\mu_G(U)\le\varepsilon、μG(E)≤ε\mu_G(E)\le\varepsilon。ε\varepsilon は任意なので μG(E)=0\mu_G(E)=0。定理 4.3 により g≥0g\ge0 で μG(E)=∫Eg dm\mu_G(E)=\int_Eg\,dm、特に G(x)−G(a)=μG((a,x])=∫axg dmG(x)-G(a)=\mu_G((a,x])=\int_a^xg\,dm(∫abg=G(b)−G(a)<∞\int_a^bg=G(b)-G(a)<\infty だから g∈L1g\in L^1)。

一般の絶対連続な FF は、命題 6.2 により F=V−(V−F)F=V-(V-F)。VV は絶対連続(かつ増加)、V−FV-F も絶対連続(絶対連続関数の差)で増加。上の結果を二つに適用すれば F(x)−F(a)=∫ax(g1−g2) dmF(x)-F(a)=\int_a^x(g_1-g_2)\,dm。

例 6.10(連続で単調だが絶対連続でない関数)

カントール関数 F:[0,1]→[0,1]F:[0,1]\to[0,1](連続、単調増加、F(0)=0F(0)=0、F(1)=1F(1)=1、カントール集合 CC の補集合の各区間で定数)は、[0,1]∖C[0,1]\setminus C の各区間で F′=0F'=0 で、m(C)=0m(C)=0 だから F′=0F'=0 a.e.。したがって ∫01F′ dm=0≠1=F(1)−F(0)\int_0^1F'\,dm=0\ne1=F(1)-F(0)。定理 6.6 の式でいえば、特異部分 νs=μF\nu_s=\mu_F が全質量 11 をもつ。定理 6.9 により FF は絶対連続でない。実際、CC は nn 段目で長さ 3−n3^{-n} の 2n2^n 個の閉区間で覆え、各区間で FF は 2−n2^{-n} ずつ増加するので、増加量の和は 11 のままで、区間の総長は (2/3)n→0(2/3)^n\to0 になる。連続性だけでは微積分学の基本定理は成り立たず、絶対連続性が必要十分である。

101F = 1/2
カントール関数の 2 段目の近似。水平な部分(F' = 0)が [0,1] のほとんどすべてを占めるのに、F は 0 から 1 まで増加します。増加はすべてカントール集合の上で起こります。

例 6.11(微分が非有界でも絶対連続)

F(x)=xF(x)=\sqrt{x}([0,1][0,1])は x=0x=0 で微分可能でない(F′(x)=12xF'(x)=\frac{1}{2\sqrt{x}}、x→0x\to0 で発散)が、F′∈L1[0,1]F'\in L^1[0,1](∫01dx2x=1\int_0^1\frac{dx}{2\sqrt x}=1)で F(x)=∫0xF′F(x)=\int_0^xF' が成り立つ(広義積分がルベーグ積分に一致する、例 5.5[ルベーグ積分の定義と収束定理])。定理 6.9 により絶対連続である。リプシッツ連続ではない絶対連続関数の例である。

演習 7.1易

ν(E)=∫Ef dm\nu(E)=\int_Ef\,dm(f∈L1(R)f\in L^1(\mathbb{R}) の符号付き測度)の Hahn 分解と Jordan 分解を求めよ。

解答

P={f≥0}P=\{f\ge0\}、N={f<0}N=\{f<0\} が Hahn 分解を与える(E⊂PE\subset P なら ν(E)=∫Ef≥0\nu(E)=\int_Ef\ge0、E⊂NE\subset N なら ≤0\le0)。ν+(E)=∫Ef+ dm\nu^{+}(E)=\int_Ef^{+}\,dm、ν−(E)=∫Ef− dm\nu^{-}(E)=\int_Ef^{-}\,dm。PP を {f>0}\{f>0\} に取ることもでき、分解は零集合 {f=0}\{f=0\} の分だけ不定であり、定理 3.2 の一意性と整合する。

演習 7.2標準

ν=m∣[0,1]+δ1/2+μF\nu=m|_{[0,1]}+\delta_{1/2}+\mu_F(μF\mu_F はカントール測度)の mm に関する Lebesgue 分解 νa,νs\nu_a,\nu_s と、dνa/dmd\nu_a/dm を求めよ。

解答

δ1/2\delta_{1/2} は零集合 {1/2}\{1/2\} に、μF\mu_F は零集合 CC に集中するから、νs=δ1/2+μF\nu_s=\delta_{1/2}+\mu_F は Z=C∪{1/2}Z=C\cup\{1/2\}(m(Z)=0m(Z)=0)に集中して mm に特異。m∣[0,1]m|_{[0,1]} は mm に絶対連続で密度 1[0,1]\mathbf{1}_{[0,1]}。よって νa=m∣[0,1]\nu_a=m|_{[0,1]}、dνa/dm=1[0,1]d\nu_a/dm=\mathbf{1}_{[0,1]}。一意性(定理 4.2)により、これが分解のすべてである。

演習 7.3標準

ν≪μ≪λ\nu\ll\mu\ll\lambda がすべて σ\sigma-有限測度とする。dνdλ=dνdμ⋅dμdλ\dfrac{d\nu}{d\lambda}=\dfrac{d\nu}{d\mu}\cdot\dfrac{d\mu}{d\lambda} λ\lambda-a.e. を示せ。

解答

ν≪λ\nu\ll\lambda は明らか。f=dν/dμf=d\nu/d\mu、g=dμ/dλg=d\mu/d\lambda とする。非負可測関数 φ\varphi について ∫φ dμ=∫φg dλ\int\varphi\,d\mu=\int\varphi g\,d\lambda(φ=1E\varphi=\mathbf{1}_E で定義、単関数、単調収束定理で拡張)。φ=f1E\varphi=f\mathbf{1}_E を代入して ν(E)=∫Ef dμ=∫Efg dλ\nu(E)=\int_Ef\,d\mu=\int_Efg\,d\lambda。定理 4.3 の一意性から dν/dλ=fgd\nu/d\lambda=fg a.e.。

演習 7.4標準

f=1[0,∞)f=\mathbf{1}_{[0,\infty)} について、定理 5.3 の極限が成り立たない点はどこか。その点で 12r∫−rrf\frac{1}{2r}\int_{-r}^{r}f は何に収束するか。

解答

x≠0x\ne0 では十分小さい rr で ff は区間 (x−r,x+r)(x-r,x+r) 上で定数だから極限は成り立つ。x=0x=0 では f(0)=1f(0)=1 だが 12r∫−rrf=12\frac1{2r}\int_{-r}^rf=\frac12。よって定理の 12r∫∣f−f(0)∣=12↛0\frac{1}{2r}\int|f-f(0)|=\frac12\not\to0。この例外点は零集合 {0}\{0\} で、定理と矛盾しない。

  • W. Rudin, Real and Complex Analysis, 3rd ed., McGraw–Hill, 1987 — Chapter 6(複素測度、Radon–Nikodym の定理の von Neumann の証明)、Chapter 7(微分)。
  • G. B. Folland, Real Analysis: Modern Techniques and Their Applications, 2nd ed., Wiley, 1999 — Chapter 3(符号付き測度と微分)。
  • E. M. Stein and R. Shakarchi, Real Analysis: Measure Theory, Integration, and Hilbert Spaces, Princeton University Press, 2005 — Chapter 3(微分と積分)。
  • P. Billingsley, Probability and Measure, 3rd ed., Wiley, 1995 — Radon–Nikodym の定理と条件付き期待値の節。
  • 伊藤清三『ルベーグ積分入門』裳華房、1963 — 測度の分解と微分を扱う章。
  • 志賀浩二『ルベーグ積分30講』朝倉書店、1990。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)、Claude Code(Opus 5.5)・監査 4 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

この記事の誤りを報告する ・運営: 夢現技研合同会社 ・料金 ・利用条件 ・特定商取引法に基づく表記

© 2026 夢現技研合同会社 ・コード例は MIT ライセンスです。