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アデールとイデール:類数の有限性と単数定理の再定式化

対象読者: 本テーマの付値と完備化・局所体、イデアル類群の有限性とMinkowski限界、局所コンパクト位相群の基礎を学んだ人。類体論は仮定しません。

前提となる記事:付値と完備化:Ostrowski の定理・p 進数・Hensel の補題、局所体:完備体の拡大・不分岐拡大と完全分岐拡大、イデアル類群の有限性と Minkowski 限界:格子点の幾何で類数と単数を押さえる、局所コンパクト空間:一点コンパクト化・Urysohn・Tietze・1 の分割・位相群

生 Markdown

整数全体は数直線の上にとびとびに並んでいて、数直線を整数で割ると円周になります。有理数全体についても同じことが言えるでしょうか。実数の距離だけを見ると言えませんが、素数ごとに用意された別の距離(pp 進の距離)もすべて同時に使うと、「とびとびに並んでいて、割ると輪のように閉じる」という見方ができます。この記事はその舞台(アデールとイデール)を作り、整数の割り算の理論で別々に証明されていた 2 つの定理(類数の有限性と単数定理)が、「ある群が閉じた形をしている」という 1 つの主張にまとまることを示します。

  • 代数体 KK のアデール環 AK\mathbb{A}_K は、すべての素点 vv での完備化 KvK_v を「ほとんどすべての成分が整数」という条件で束ねた制限直積です。局所コンパクトな位相環になり(定理 4.2)、KK は対角に埋め込まれて離散で、商 AK/K\mathbb{A}_K/K はコンパクトです(定理 4.3)。Z⊂R\mathbb{Z} \subset \mathbb{R} の関係を、すべての素点を対等に扱って再現したものです。
  • イデール群 IK\mathbb{I}_K は AK\mathbb{A}_K の単元群に制限直積の位相を入れたもので、その位相はアデールからの相対位相より真に細かくなります(例 5.3)。
  • 積公式により K×K^{\times} はノルム 11 のイデール群 IK1\mathbb{I}_K^1 に入り、ノルム 1 のイデール類群 CK1=IK1/K×C_K^1 = \mathbb{I}_K^1/K^{\times} はコンパクトです(定理 5.6)。証明に使うのは Minkowski の格子点定理だけです。
  • CK1C_K^1 のコンパクト性は「類数の有限性」と「Dirichlet の単数定理」を合わせたものと同値です(定理 6.3)。両方向を証明するので、2 つの定理の別証明が得られます。
  • イデアル類群も射線類群も CKC_K の商です:CK/U‾m≅ClmC_K/\overline{U}_{\mathfrak{m}} \cong \mathrm{Cl}_{\mathfrak{m}}(定理 7.2)。CKC_K の開部分群はすべて指数有限で、ちょうど合同部分群に対応します(定理 7.3)。K=QK = \mathbb{Q} では CQ≅R>0×Z^×C_{\mathbb{Q}} \cong \mathbb{R}_{\gt 0} \times \widehat{\mathbb{Z}}^{\times} です(命題 7.4)。

整数 Z\mathbb{Z} は実数 R\mathbb{R} の中で離散であり、商 R/Z\mathbb{R}/\mathbb{Z} は円周でコンパクトです。この事実が、格子点の数え上げや Fourier 級数の出発点になります。では有理数体 Q\mathbb{Q} はどうでしょうか。Q\mathbb{Q} は R\mathbb{R} の中で稠密で、離散ではありません。pp 進数体 Qp\mathbb{Q}_p の中でも稠密です。ところが、R\mathbb{R} とすべての Qp\mathbb{Q}_p を同時に見ると事情が変わります。有理数 xx がすべての pp で pp 進整数ならば xx は整数であり、さらに ∣x∣<1|x| \lt 1 ならば x=0x = 0 です。つまり Q\mathbb{Q} は「全部の完備化の積」の中では離散になります。

この「全部の完備化の積」を正しく定式化したものがアデール環です。単純な直積 ∏vKv\prod_v K_v は局所コンパクトにならないので、ほとんどすべての成分が整数であるという条件を付けます(制限直積)。乗法群の側で同じことをしたものがイデール群で、Chevalley が類体論を無限次拡大まで一度に述べるために導入しました。

イデールの利点は 3 つあります。第 1 に、類数の有限性と単数定理という、証明の型が似ているのに別々に述べられていた 2 つの定理が、1 つのコンパクト性にまとまります。第 2 に、イデアル類群、射線類群、(Z/mZ)×(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times} といった「合同条件つきの類群」が、すべて 1 つの群 CKC_K の商として並びます。第 3 に、局所体の理論(第 4 章)と大域の理論が成分ごとに対応します。類体論の主定理は「KK の有限次 Abel 拡大は CKC_K の指数有限の開部分群と 1 対 1 に対応する」という形で述べられます。本章はそのための舞台を作ります。

既出の章から使うもの。 素点・正規化した絶対値・積公式・弱近似定理・Zp\mathbb{Z}_p のコンパクト性は付値と完備化、局所体のコンパクト性・大域と局所の対応 L⊗KKv≅∏w∣vLwL \otimes_K K_v \cong \prod_{w \mid v} L_w・単数群の構造は局所体、Minkowski の格子点定理と Minkowski 埋め込みはイデアル類群の有限性と Minkowski 限界、位相群の一般論は局所コンパクト空間のものを使います。

KK を代数体(Q\mathbb{Q} の有限次拡大)、n=[K:Q]n = [K:\mathbb{Q}] とします。KK の素点は、有限素点(OK\mathcal{O}_K の 00 でない素イデアル p\mathfrak{p})、実素点(実の埋め込み、r1r_1 個)、複素素点(虚の埋め込みの共役対、r2r_2 個)で尽くされます(定理 8.3[付値と完備化])。素点 vv での完備化を KvK_v と書き、vv が有限素点 p\mathfrak{p} のとき、付値環を Ov\mathcal{O}_v、素元を πv\pi_v、剰余体の位数を qv=Npq_v = N\mathfrak{p}、離散付値を v(⋅)=vp(⋅)v(\cdot) = v_{\mathfrak{p}}(\cdot) と書きます。無限素点の全体を S∞S_\infty と書き、v∣∞v \mid \infty は v∈S∞v \in S_\infty、v∤∞v \nmid \infty は vv が有限素点であることを表します。

正規化した絶対値 ∣⋅∣v|\cdot|_v は、有限素点では ∣x∣v=qv−v(x)|x|_v = q_v^{-v(x)}、実素点では通常の絶対値、複素素点では通常の絶対値の 2 乗です。この正規化のもとで積公式

∏v∣x∣v=1(x∈K×)\prod_v |x|_v = 1 \qquad (x \in K^{\times})

が成り立ちます(定理 8.4[付値と完備化])。複素素点の ∣⋅∣v|\cdot|_v は三角不等式を満たしませんが、Kv=CK_v = \mathbb{C} の位相は通常のものです。

有限素点 vv について KvK_v は局所コンパクトで、Ov\mathcal{O}_v はコンパクトな開部分環、Ov×={x:∣x∣v=1}\mathcal{O}_v^{\times} = \{x : |x|_v = 1\} はコンパクトな開部分群です(命題 6.3[局所体])。Uv(m)=1+πvmOvU_v^{(m)} = 1 + \pi_v^m\mathcal{O}_v(m≥1m \ge 1)は Kv×K_v^{\times} における 11 の基本近傍系をなす開部分群です(定理 7.2[局所体])。

位相については次の 2 つを繰り返し使います。コンパクト空間の連続像はコンパクトである(定理 6.1[コンパクト性])。コンパクト空間の族の積はコンパクトである(定理 6.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理])。

この節では、成分を無限個並べた直積に「ほとんどすべての成分は整数環の中」という条件を付けて、局所コンパクトな群を作ります。たとえば有理数 xx は、有限個の素数を除いてすべての pp で pp 進整数なので、この条件を満たします。直積では各成分が自由に動けますが、制限直積では整数環からはみ出してよい成分は有限個だけです。開集合の形も同じ考え方で、有限個の成分だけを制限し、残りは整数環全体を取ります。

定義 3.1(制限直積)↗

VV を添字集合、V0⊆VV_0 \subseteq V を有限部分集合とする。各 v∈Vv \in V に局所コンパクト Hausdorff 位相群 GvG_v が、各 v∈V∖V0v \in V \setminus V_0 に GvG_v のコンパクトな開部分群 HvH_v が与えられているとする。

G=∏v′(Gv,Hv):={(xv)v∈∏v∈VGv ∣ 有限個を除くすべての v で xv∈Hv}G = {\prod_{v}}' (G_v, H_v) := \Bigl\{ (x_v)_v \in \prod_{v \in V} G_v \ \Bigm|\ \text{有限個を除くすべての } v \text{ で } x_v \in H_v \Bigr\}

を GvG_v の HvH_v に関する制限直積という。GG には、

∏vUv(Uv⊆Gv は開集合、有限個を除くすべての v で Uv=Hv)\prod_v U_v \qquad (U_v \subseteq G_v \text{ は開集合、有限個を除くすべての } v \text{ で } U_v = H_v)

の形の集合の全体を開基とする位相を入れる。V0V_0 を含む有限集合 S⊆VS \subseteq V に対し

GS:=∏v∈SGv×∏v∉SHv⊆GG_S := \prod_{v \in S} G_v \times \prod_{v \notin S} H_v \subseteq G

とおく。

∞235711……直積制限直積K_vK_vK_vK_vK_vK_vK_vO_vK_vO_vO_vO_v
直積と制限直積の違い。太枠は整数環に限らない成分で、制限直積ではそのような成分は有限個だけ(ここでは ∞ と 3)。

上の集合族が開基になることを確かめます。2 つの元 ∏Uv\prod U_v、∏Uv′\prod U'_v の交わりは ∏(Uv∩Uv′)\prod (U_v \cap U'_v) で、Uv∩Uv′U_v \cap U'_v は開集合であり、有限個を除いて HvH_v に等しいので、また同じ形です。全体 GG は GSG_S(これ自身が上の形の集合です)の和集合です。

命題 3.2(制限直積は局所コンパクト群)✓

定義 3.1 の GG について次が成り立つ。

  1. GG は成分ごとの演算で位相群である。
  2. 各 GSG_S は GG の開部分群で、GG からの相対位相は積位相に一致する。
  3. GG は局所コンパクト Hausdorff である。
  4. GG のコンパクト部分集合は、ある GSG_S に含まれる。

証明では、「有限集合 SS を取り、SS の外では HvH_v に入るとしてよい」という操作を繰り返します。本質は、どの条件も有限個の成分にしか効かないので、有限個の局所コンパクト群の積(と、コンパクトな HvH_v の積)に帰着できる、という点です。

証明(命題 3.2)

2. GSG_S は開基の元なので開集合であり、成分ごとの演算で閉じているので部分群です。GSG_S の積位相の開基は、有限集合 TT と開集合 UvU_v(v∈Tv \in T。v∉Sv \notin S のときは Uv⊆HvU_v \subseteq H_v)により ∏v∈TUv×∏v∉TXv\prod_{v \in T} U_v \times \prod_{v \notin T} X_v(XvX_v は v∈Sv \in S なら GvG_v、v∉Sv \notin S なら HvH_v)と書ける集合です。これは GG の開基の元です。逆に GG の開基の元 ∏Uv\prod U_v と GSG_S の交わりは ∏v∈SUv×∏v∉S(Uv∩Hv)\prod_{v \in S} U_v \times \prod_{v \notin S}(U_v \cap H_v) で、Uv∩HvU_v \cap H_v は HvH_v の開集合であり有限個を除いて HvH_v 全体なので、積位相の開集合です。したがって 2 つの位相は一致します。

1. 乗法の連続性を示します。x,y∈Gx, y \in G と、xyxy を含む開基の元 W=∏WvW = \prod W_v を取ります。V0V_0、xv∉Hvx_v \notin H_v または yv∉Hvy_v \notin H_v となる vv、Wv≠HvW_v \ne H_v となる vv をすべて含む有限集合 SS を取ります。v∈Sv \in S では GvG_v の乗法の連続性により xv∈Uvx_v \in U_v、yv∈Uv′y_v \in U'_v、UvUv′⊆WvU_vU'_v \subseteq W_v となる開集合 Uv,Uv′U_v, U'_v があります。v∉Sv \notin S では Uv=Uv′=HvU_v = U'_v = H_v とおくと、HvH_v は部分群なので UvUv′=Hv=WvU_vU'_v = H_v = W_v です。∏Uv\prod U_v と ∏Uv′\prod U'_v は xx、yy の開近傍で、その積は WW に含まれます。逆元の連続性も同じです。x−1∈W=∏Wvx^{-1} \in W = \prod W_v のとき、SS を V0V_0、xv∉Hvx_v \notin H_v となる vv、Wv≠HvW_v \neq H_v となる vv を含む有限集合とし、v∈Sv \in S では xv∈Uvx_v \in U_v、Uv−1⊆WvU_v^{-1} \subseteq W_v となる開集合 UvU_v を、v∉Sv \notin S では Uv=HvU_v = H_v を取ります。

3. Hausdorff 性:x≠yx \ne y ならある v0v_0 で xv0≠yv0x_{v_0} \ne y_{v_0} です。Gv0G_{v_0} は Hausdorff なので、xv0∈Ux_{v_0} \in U、yv0∈U′y_{v_0} \in U'、U∩U′=∅U \cap U' = \emptyset となる開集合があります。x,y∈GSx, y \in G_S かつ v0∈Sv_0 \in S となる SS を取り、GSG_S の中で v0v_0 成分が UU、U′U' に入る元の集合を考えると、これらは 2 により GG の交わらない開集合で、それぞれ xx、yy を含みます。局所コンパクト性:x∈Gx \in G は、ある GSG_S に入ります。各 v∈Sv \in S で xvx_v のコンパクトな近傍 Cv⊇Ov∋xvC_v \supseteq O_v \ni x_v(OvO_v は開集合)を取ると、∏v∈SCv×∏v∉SHv\prod_{v \in S} C_v \times \prod_{v \notin S} H_v は Tychonoff の定理(定理 6.2[積位相・商位相と Tychonoff の定理])によりコンパクトで、開集合 ∏v∈SOv×∏v∉SHv\prod_{v \in S} O_v \times \prod_{v \notin S} H_v を含みます。2 により、これは GG における xx のコンパクトな近傍です。

4. C⊆GC \subseteq G をコンパクトとします。G=⋃SGSG = \bigcup_S G_S は開被覆なので、有限個の GS1,…,GSkG_{S_1}, \ldots, G_{S_k} で CC を覆えます。S=S1∪⋯∪SkS = S_1 \cup \cdots \cup S_k とおくと GSi⊆GSG_{S_i} \subseteq G_S なので C⊆GSC \subseteq G_S です。

位相群の同型を成分ごとに作るための補題を用意しておきます。

補題 3.3(成分ごとの同型)✓

G=∏′(Gv,Hv)G = \prod'(G_v, H_v)、G′=∏′(Gv′,Hv′)G' = \prod'(G'_v, H'_v) を同じ添字集合 VV の上の制限直積とする。各 vv に位相群の同型 φv:Gv→Gv′\varphi_v : G_v \to G'_v が与えられ、有限個を除くすべての vv で φv(Hv)=Hv′\varphi_v(H_v) = H'_v ならば、φ=(φv)v:G→G′\varphi = (\varphi_v)_v : G \to G' は位相群の同型である。

証明(補題 3.3)

φv(Hv)=Hv′\varphi_v(H_v) = H'_v が成り立たない vv は有限個なので、(xv)(x_v) が有限個を除いて HvH_v に入ることと、(φv(xv))(\varphi_v(x_v)) が有限個を除いて Hv′H'_v に入ることは同値です。したがって φ\varphi は GG から G′G' への全単射な準同型です。開基の元 ∏Uv\prod U_v の像は ∏φv(Uv)\prod \varphi_v(U_v) で、φv(Uv)\varphi_v(U_v) は開集合であり、有限個を除いて φv(Hv)=Hv′\varphi_v(H_v) = H'_v です。よって φ\varphi は開基を開基に写します。φ−1\varphi^{-1} についても同じなので、φ\varphi は同相です。

定義 4.1(アデール環)↗

代数体 KK のアデール環を、加法群 KvK_v の Ov\mathcal{O}_v に関する制限直積(V0=S∞V_0 = S_\infty)

AK:=∏v′(Kv,Ov)\mathbb{A}_K := {\prod_v}' (K_v, \mathcal{O}_v)

と定める。元 x=(xv)vx = (x_v)_v をアデールという。演算は成分ごとの和と積とする。x∈Kx \in K を (x,x,…)(x, x, \ldots) に写す対角埋め込み K→AKK \to \mathbb{A}_K の像の元を主アデールという。S⊇S∞S \supseteq S_\infty が有限集合のとき AK,S:=∏v∈SKv×∏v∉SOv\mathbb{A}_{K,S} := \prod_{v \in S} K_v \times \prod_{v \notin S} \mathcal{O}_v と書く。

対角埋め込みが意味をもつのは、x∈K×x \in K^{\times} が有限個を除くすべての素イデアルで付値 00 をもつ(分数イデアル xOKx\mathcal{O}_K の素イデアル分解に現れる素イデアルは有限個である。系 4.8[代数体の整数環と Dedekind 整域])からです。

定理 4.2(アデール環の基本性質)✓

  1. AK\mathbb{A}_K は局所コンパクト Hausdorff な位相環である(加法について位相群で、乗法が連続)。
  2. L/KL/K を代数体の dd 次拡大、ω1,…,ωd\omega_1, \ldots, \omega_d を LL の KK 上の基底とする。Kv→∏w∣vLwK_v \to \prod_{w \mid v} L_w を対角埋め込みとし、これらを束ねた環準同型 AK→AL\mathbb{A}_K \to \mathbb{A}_L によって AL\mathbb{A}_L を AK\mathbb{A}_K 加群とみる。このとき
Φ:AK d→AL,(a1,…,ad)↦∑i=1daiωi\Phi : \mathbb{A}_K^{\,d} \to \mathbb{A}_L, \qquad (a_1, \ldots, a_d) \mapsto \sum_{i=1}^d a_i\omega_i

は位相群の同型であり、KdK^d を LL の上へ写す。すなわち AL≅AK⊗KL\mathbb{A}_L \cong \mathbb{A}_K \otimes_K L である。

証明(定理 4.2)

1. 加法について局所コンパクト Hausdorff 位相群であることは 命題 3.2 です。乗法の連続性は、同命題の 1 の証明で HvH_v が積で閉じていることだけを使ったのと同じ議論で示せます。xy∈∏Wvxy \in \prod W_v のとき、S∞S_\infty、xv∉Ovx_v \notin \mathcal{O}_v または yv∉Ovy_v \notin \mathcal{O}_v となる vv、Wv≠OvW_v \ne \mathcal{O}_v となる vv を含む有限集合 SS を取り、v∈Sv \in S では KvK_v の乗法の連続性から UvUv′⊆WvU_vU'_v \subseteq W_v となる開近傍を、v∉Sv \notin S では Uv=Uv′=OvU_v = U'_v = \mathcal{O}_v(OvOv⊆Ov=Wv\mathcal{O}_v\mathcal{O}_v \subseteq \mathcal{O}_v = W_v)を取ります。

2. KK の各素点 vv について、φv:Kv d→∏w∣vLw\varphi_v : K_v^{\,d} \to \prod_{w \mid v} L_w、(ai)↦(∑iaiωi)w(a_i) \mapsto (\sum_i a_i\omega_i)_w を考えます。これは L⊗KKv≅∏w∣vLwL \otimes_K K_v \cong \prod_{w \mid v} L_w(定理 3.1[局所体])を基底 ωi⊗1\omega_i \otimes 1 で書いたものなので、KvK_v 線形な全単射です。両辺は完備な体 KvK_v 上の有限次元ベクトル空間で、その上のノルムはすべて同値です(vv が有限なら 補題 2.3[局所体]、vv が無限なら R\mathbb{R} 上の有限次元空間の線形写像の連続性)。よって φv\varphi_v は同相です。

次に、有限個を除くすべての有限素点 vv で φv(Ov d)=∏w∣vOw\varphi_v(\mathcal{O}_v^{\,d}) = \prod_{w \mid v}\mathcal{O}_w であることを示します。M:=∑iOKωi⊆LM := \sum_i \mathcal{O}_K\omega_i \subseteq L とおきます。ωi\omega_i は代数的数なので、ある正の整数 c1c_1 について c1ωi∈OLc_1\omega_i \in \mathcal{O}_L です。また OL\mathcal{O}_L は有限生成 Z\mathbb{Z} 加群で(定理 3.4[代数体の整数環と Dedekind 整域])、その生成元はそれぞれ ωi\omega_i の KK 係数の一次結合なので、係数の分母を払う正の整数 c2c_2 について c2OL⊆Mc_2\mathcal{O}_L \subseteq M です。c=c1c2c = c_1c_2 とおくと cM⊆OLcM \subseteq \mathcal{O}_L かつ cOL⊆Mc\mathcal{O}_L \subseteq M です。v∤cv \nmid c となる有限素点 vv では c∈Ov×c \in \mathcal{O}_v^{\times} なので、∏w∣vLw\prod_{w \mid v} L_w の中で MM が生成する Ov\mathcal{O}_v 加群と OL\mathcal{O}_L が生成する Ov\mathcal{O}_v 加群は一致します。前者は φv(Ov d)\varphi_v(\mathcal{O}_v^{\,d}) です。後者を YY と書くと、OL⊆Ow\mathcal{O}_L \subseteq \mathcal{O}_w なので Y⊆∏w∣vOwY \subseteq \prod_{w \mid v}\mathcal{O}_w です。Y=φv(Ov d)Y = \varphi_v(\mathcal{O}_v^{\,d}) はコンパクト集合の連続像なのでコンパクトで、Hausdorff 空間の中で閉集合です(定理 4.2[コンパクト性])。一方 OL\mathcal{O}_L は ∏w∣vOw\prod_{w \mid v}\mathcal{O}_w の中で稠密です。実際 (xw)w(x_w)_w と m≥1m \ge 1 が与えられたとき、OL/Pwm≅Ow/PwmOw\mathcal{O}_L/\mathfrak{P}_w^m \cong \mathcal{O}_w/\mathfrak{P}_w^m\mathcal{O}_w(命題 4.3[付値と完備化])により yw≡xw mod PwmOwy_w \equiv x_w \bmod \mathfrak{P}_w^m\mathcal{O}_w となる yw∈OLy_w \in \mathcal{O}_L があり、中国剰余定理(補題 5.2[代数体の整数環と Dedekind 整域])により、すべての w∣vw \mid v で y≡yw mod Pwmy \equiv y_w \bmod \mathfrak{P}_w^m となる y∈OLy \in \mathcal{O}_L があります。閉集合 YY が稠密な部分集合 OL\mathcal{O}_L を含むので Y=∏w∣vOwY = \prod_{w \mid v}\mathcal{O}_w です。

LL の素点を、その下にある KK の素点ごとにまとめると AL=∏v′(∏w∣vLw,∏w∣vOw)\mathbb{A}_L = \prod'_v\bigl(\prod_{w \mid v} L_w, \prod_{w \mid v}\mathcal{O}_w\bigr) です(有限個を除くすべての ww で整数であることと、有限個を除くすべての vv で w∣vw \mid v の成分がすべて整数であることは同値で、開基も一致します)。同様に AK d=∏v′(Kv d,Ov d)\mathbb{A}_K^{\,d} = \prod'_v(K_v^{\,d}, \mathcal{O}_v^{\,d}) です。補題 3.3 により Φ=(φv)v\Phi = (\varphi_v)_v は位相群の同型です。ai∈Ka_i \in K のとき Φ(a1,…,ad)\Phi(a_1, \ldots, a_d) は ∑aiωi∈L\sum a_i\omega_i \in L の対角埋め込みなので、Φ(Kd)=L\Phi(K^d) = L です。

定理 4.3(K は離散で余コンパクト)✓

KK は AK\mathbb{A}_K の離散な閉部分群であり、あるコンパクト集合 W⊆AKW \subseteq \mathbb{A}_K について AK=K+W\mathbb{A}_K = K + W である。特に商群 AK/K\mathbb{A}_K/K はコンパクト Hausdorff である。

証明の方針は次のとおりです。K=QK = \mathbb{Q} の場合に、離散性は「すべての pp で pp 進整数、かつ絶対値が 11 未満の有理数は 00 だけ」から、余コンパクト性は、各アデールから有理数を引いて分母を素数ごとに消していく(部分分数分解に似た)構成から出ます。一般の KK は Q\mathbb{Q} の場合に帰着させます。

証明の前に、離散部分群が閉であることを補題にしておきます。

補題 4.4(離散部分群は閉)✓

Hausdorff 位相群 GG の部分群 Γ\Gamma が相対位相で離散ならば、Γ\Gamma は GG の閉集合である。

証明(補題 4.4)

離散性により、単位元 ee の開近傍 UU で U∩Γ={e}U \cap \Gamma = \{e\} となるものがあります。補題 7.4[局所コンパクト空間] により、ee の開近傍 VV で V=V−1V = V^{-1}、VV⊆UVV \subseteq U となるものを取ります。xx を Γ\Gamma の閉包の点とします。xVxV は xx の近傍なので Γ\Gamma と交わります。γ,γ′∈xV∩Γ\gamma, \gamma' \in xV \cap \Gamma ならば γ−1γ′∈V−1V⊆U\gamma^{-1}\gamma' \in V^{-1}V \subseteq U かつ γ−1γ′∈Γ\gamma^{-1}\gamma' \in \Gamma なので γ=γ′\gamma = \gamma' です。よって xV∩ΓxV \cap \Gamma はただ 1 点 γ\gamma からなります。x≠γx \ne \gamma と仮定すると、Hausdorff 性により xx の開近傍 O⊆xVO \subseteq xV で γ∉O\gamma \notin O となるものがあり、O∩Γ⊆(xV∩Γ)∖{γ}=∅O \cap \Gamma \subseteq (xV \cap \Gamma) \setminus \{\gamma\} = \emptyset となって、xx が閉包の点であることに反します。ゆえに x=γ∈Γx = \gamma \in \Gamma です。

証明(定理 4.3)

K=QK = \mathbb{Q} の場合。 U={x∈AQ∣∣x∞∣<1, すべての素数 p で xp∈Zp}U = \{x \in \mathbb{A}_{\mathbb{Q}} \mid |x_\infty| \lt 1,\ \text{すべての素数 } p \text{ で } x_p \in \mathbb{Z}_p\} は 00 の開近傍です。x∈Q∩Ux \in \mathbb{Q} \cap U ならば、すべての pp で vp(x)≥0v_p(x) \ge 0 なので x∈Zx \in \mathbb{Z}、さらに ∣x∣<1|x| \lt 1 なので x=0x = 0 です。よって {0}=Q∩U\{0\} = \mathbb{Q} \cap U は Q\mathbb{Q} の開集合で、平行移動により Q\mathbb{Q} の各点が開集合、すなわち Q\mathbb{Q} は離散です。

次に D:=[0,1]×∏pZpD := [0, 1] \times \prod_p \mathbb{Z}_p とおきます。Zp\mathbb{Z}_p はコンパクト(定理 5.2[付値と完備化])なので、DD は Tychonoff の定理によりコンパクトです。AQ=Q+D\mathbb{A}_{\mathbb{Q}} = \mathbb{Q} + D を示します。x∈AQx \in \mathbb{A}_{\mathbb{Q}} を取ります。xp∉Zpx_p \notin \mathbb{Z}_p となる素数 pp は有限個です。そのような pp について xp=p−mux_p = p^{-m}u(m≥1m \ge 1、u∈Zpu \in \mathbb{Z}_p)と書き、Z\mathbb{Z} が Zp\mathbb{Z}_p で稠密であること(同定理)から a≡u mod pmZpa \equiv u \bmod p^m\mathbb{Z}_p となる a∈Za \in \mathbb{Z} を取って rp:=a/pmr_p := a/p^m とおくと、xp−rp∈Zpx_p - r_p \in \mathbb{Z}_p です。xp∈Zpx_p \in \mathbb{Z}_p となる pp では rp=0r_p = 0 とし、r:=∑prp∈Qr := \sum_p r_p \in \mathbb{Q} とおきます。素数 ℓ\ell を固定すると、p≠ℓp \ne \ell のとき rpr_p の分母は pp の冪なので rp∈Zℓr_p \in \mathbb{Z}_\ell です。したがって

xℓ−r=(xℓ−rℓ)−∑p≠ℓrp∈Zℓ.x_\ell - r = (x_\ell - r_\ell) - \sum_{p \ne \ell} r_p \in \mathbb{Z}_\ell .

最後に k:=⌊x∞−r⌋∈Zk := \lfloor x_\infty - r \rfloor \in \mathbb{Z} とおくと、x−(r+k)x - (r + k) の無限成分は [0,1)[0, 1) に、各 ℓ\ell 成分は Zℓ\mathbb{Z}_\ell に入ります。よって x∈Q+Dx \in \mathbb{Q} + D です。

一般の KK。 ω1,…,ωn\omega_1, \ldots, \omega_n を KK の Q\mathbb{Q} 上の基底とし、定理 4.2 の同型 Φ:AQ n→AK\Phi : \mathbb{A}_{\mathbb{Q}}^{\,n} \to \mathbb{A}_K(Φ(Qn)=K\Phi(\mathbb{Q}^n) = K)を使います。Qn\mathbb{Q}^n は AQ n\mathbb{A}_{\mathbb{Q}}^{\,n} の中で離散(Un∩Qn={0}U^n \cap \mathbb{Q}^n = \{0\})なので、KK は AK\mathbb{A}_K の中で離散です。W:=Φ(Dn)W := \Phi(D^n) はコンパクト集合の連続像なのでコンパクトで、AQ n=Qn+Dn\mathbb{A}_{\mathbb{Q}}^{\,n} = \mathbb{Q}^n + D^n から AK=K+W\mathbb{A}_K = K + W です。

KK は離散なので 補題 4.4 により閉集合で、商 AK/K\mathbb{A}_K/K は Hausdorff です(命題 7.8[局所コンパクト空間])。射影 AK→AK/K\mathbb{A}_K \to \mathbb{A}_K/K は連続で、WW の像が全体なので、AK/K\mathbb{A}_K/K はコンパクトです。

例 4.5(AQA_Q / Q の基本領域)

上の証明は、F:=[0,1)×∏pZpF := [0, 1) \times \prod_p \mathbb{Z}_p が AQ/Q\mathbb{A}_{\mathbb{Q}}/\mathbb{Q} の完全代表系であること、つまり各アデールが r+yr + y(r∈Qr \in \mathbb{Q}、y∈Fy \in F)とただ 1 通りに書けることまで示しています。存在は証明で見ました。一意性は、r+y=r′+y′r + y = r' + y' ならば r−r′=y′−yr - r' = y' - y のすべての pp 成分が Zp\mathbb{Z}_p に入るので r−r′∈Zr - r' \in \mathbb{Z}、無限成分が (−1,1)(-1, 1) に入るので r−r′=0r - r' = 0 となることから分かります。

たとえばアデール x=(x∞;x2,x3,x5,…)=(0.3; 1/2, 1/3, 0, 0,…)x = (x_\infty; x_2, x_3, x_5, \ldots) = (0.3;\ 1/2,\ 1/3,\ 0,\ 0, \ldots) では r2=1/2r_2 = 1/2、r3=1/3r_3 = 1/3、r=5/6r = 5/6 で、x∞−r=0.3−0.8333…=−0.5333…x_\infty - r = 0.3 - 0.8333\ldots = -0.5333\ldots なので k=−1k = -1 です。x=(5/6−1)+y=−1/6+yx = (5/6 - 1) + y = -1/6 + y で、yy の無限成分は 0.4666…∈[0,1)0.4666\ldots \in [0, 1)、22 成分は 1/2+1/6=2/3∈Z21/2 + 1/6 = 2/3 \in \mathbb{Z}_2、33 成分は 1/3+1/6=1/2∈Z31/3 + 1/6 = 1/2 \in \mathbb{Z}_3、p≥5p \ge 5 の成分は 1/6∈Zp1/6 \in \mathbb{Z}_p です。R/Z\mathbb{R}/\mathbb{Z} の基本領域 [0,1)[0, 1) に、有限素点の側の ∏pZp\prod_p\mathbb{Z}_p が付け加わった形をしています。

アデール xx に対し ∥x∥:=inf⁡S∏v∈S∣xv∣v\|x\| := \inf_S \prod_{v \in S}|x_v|_v とおきます。SS は、S∞S_\infty と ∣xv∣v>1|x_v|_v \gt 1 となる vv をすべて含む有限集合を動きます。そのような SS を大きくすると、付け加わる因子は 11 以下なので積は増えません。したがって ∥x∥∈[0,∞)\|x\| \in [0, \infty) が定まります。有限個を除いて ∣xv∣v=1|x_v|_v = 1 となる xx では、∥x∥\|x\| は通常の有限積 ∏v∣xv∣v\prod_v|x_v|_v です。

次の補題は、各素点で大きさの上限 ∣av∣v|a_v|_v が与えられたとき、上限の積が十分大きければ、すべての上限を満たす KK の元が見つかる、という主張です。以降の強近似定理と CK1C_K^1 のコンパクト性はどちらもこれを使います。証明は、分数イデアルを格子と見て、その余体積(基本領域の体積)と上限が定める箱の体積を比べるだけです。たとえば K=QK = \mathbb{Q} では CK=1C_K = 1 で、a∞=3a_\infty = 3、a2=1/2a_2 = 1/2、ほかの ap=1a_p = 1 とすると ∏v∣av∣v=3/2≥1\prod_v|a_v|_v = 3/2 \ge 1 です。実際 β=2\beta = 2 は ∣2∣∞=2≤3|2|_\infty = 2 \le 3、∣2∣2=1/2≤1/2|2|_2 = 1/2 \le 1/2、ほかの pp で ∣2∣p=1|2|_p = 1 を満たします。

補題 4.6(アデール版 Minkowski の補題)✓

CK:=(2/π)r2∣dK∣C_K := (2/\pi)^{r_2}\sqrt{|d_K|} とおく(dKd_K は KK の判別式)。a=(av)va = (a_v)_v を、すべての成分が 00 でなく、有限個を除く有限素点で ∣av∣v=1|a_v|_v = 1 となるアデールとする。∥a∥=∏v∣av∣v≥CK\|a\| = \prod_v|a_v|_v \ge C_K ならば、

∣β∣v≤∣av∣v(すべての素点 v)|\beta|_v \le |a_v|_v \qquad (\text{すべての素点 } v)

を満たす β∈K×\beta \in K^{\times} が存在する。

証明(補題 4.6)

分数イデアル a:=∏ppvp(ap)\mathfrak{a} := \prod_{\mathfrak{p}} \mathfrak{p}^{v_{\mathfrak{p}}(a_{\mathfrak{p}})} を考えます。β∈a\beta \in \mathfrak{a}、β≠0\beta \ne 0 ならば、すべての p\mathfrak{p} で vp(β)≥vp(ap)v_{\mathfrak{p}}(\beta) \ge v_{\mathfrak{p}}(a_{\mathfrak{p}})、すなわち ∣β∣p≤∣ap∣p|\beta|_{\mathfrak{p}} \le |a_{\mathfrak{p}}|_{\mathfrak{p}} です(定理 4.7[代数体の整数環と Dedekind 整域])。したがって、無限素点での条件を満たす 0≠β∈a0 \ne \beta \in \mathfrak{a} を見つければ十分です。

Minkowski 埋め込み j:K→Rr1×Cr2≅Rnj : K \to \mathbb{R}^{r_1} \times \mathbb{C}^{r_2} \cong \mathbb{R}^n(定義 3.1[イデアル類群の有限性と Minkowski 限界])による像 j(a)j(\mathfrak{a}) は格子で、余体積は 2−r2∣dK∣ Na2^{-r_2}\sqrt{|d_K|}\,N\mathfrak{a} です。整イデアルの場合は 命題 3.2[イデアル類群の有限性と Minkowski 限界] です。一般の分数イデアルは、正の整数 mm と整イデアル b\mathfrak{b} により a=m−1b\mathfrak{a} = m^{-1}\mathfrak{b} と書け、j(a)=m−1j(b)j(\mathfrak{a}) = m^{-1}j(\mathfrak{b}) の余体積は m−nm^{-n} 倍、Na=m−nNbN\mathfrak{a} = m^{-n}N\mathfrak{b} なので、同じ式が成り立ちます。ここで Na=∏pNpvp(ap)=∏v∤∞∣av∣v−1N\mathfrak{a} = \prod_{\mathfrak{p}} N\mathfrak{p}^{v_{\mathfrak{p}}(a_{\mathfrak{p}})} = \prod_{v \nmid \infty}|a_v|_v^{-1} です。

X:={(xv)v∣∞∈Rr1×Cr2∣∣xv∣v≤∣av∣v}X := \{(x_v)_{v \mid \infty} \in \mathbb{R}^{r_1} \times \mathbb{C}^{r_2} \mid |x_v|_v \le |a_v|_v\} とおきます。これは区間と閉円板の直積なので、コンパクトな凸集合で X=−XX = -X です。実素点の因子は長さ 2∣av∣v2|a_v|_v の区間、複素素点の因子は半径 ρ\rho(ρ2=∣av∣v\rho^2 = |a_v|_v)の円板で面積 πρ2=π∣av∣v\pi\rho^2 = \pi|a_v|_v なので、

vol(X)=2r1πr2∏v∣∞∣av∣v.\mathrm{vol}(X) = 2^{r_1}\pi^{r_2}\prod_{v \mid \infty}|a_v|_v .

仮定 ∏v∣av∣v≥(2/π)r2∣dK∣\prod_v|a_v|_v \ge (2/\pi)^{r_2}\sqrt{|d_K|} の両辺に 2r1πr2∏v∤∞∣av∣v−12^{r_1}\pi^{r_2}\prod_{v \nmid \infty}|a_v|_v^{-1} を掛けると

vol(X)≥2r1+r2∣dK∣ Na=2r1+2r2⋅2−r2∣dK∣ Na=2n covol(j(a))\mathrm{vol}(X) \ge 2^{r_1 + r_2}\sqrt{|d_K|}\,N\mathfrak{a} = 2^{r_1 + 2r_2}\cdot 2^{-r_2}\sqrt{|d_K|}\,N\mathfrak{a} = 2^n\,\mathrm{covol}\bigl(j(\mathfrak{a})\bigr)

です。Minkowski の格子点定理(定理 2.3[イデアル類群の有限性と Minkowski 限界] のコンパクトな場合)により、XX は j(a)j(\mathfrak{a}) の 00 でない点 j(β)j(\beta) を含みます。この β\beta が求めるものです。

注意 4.7(Haar 測度による読み方)

AK\mathbb{A}_K は局所コンパクト Abel 群なので Haar 測度 μ\mu をもちます(定理 3.2[Haar 測度])。イデール aa を掛ける写像 x↦axx \mapsto ax は AK\mathbb{A}_K の位相群としての自己同型で、μ\mu を ∥a∥\|a\| 倍にします。∥a∥\|a\| を「イデールのノルム」ではなく「体積の倍率」と読むと、積公式は「K×K^{\times} の元を掛けても、有限体積の商 AK/K\mathbb{A}_K/K の体積は変わらない」という主張になり、上の補題は「箱 {x:∣xv∣v≤∣av∣v}\{x : |x_v|_v \le |a_v|_v\} の体積が AK/K\mathbb{A}_K/K の体積の定数倍を超えれば、箱は KK の 00 でない点を含む」という Minkowski の定理そのものになります。本章では、Rn\mathbb{R}^n の格子点定理(既出)に帰着する上の証明を採り、Haar 測度は使いません。

定理 4.8(強近似定理)✓

v0v_0 を KK の素点とする。任意のアデール xx、v0v_0 を含まない素点の有限集合 SS、ε>0\varepsilon \gt 0 に対し、

∣β−xv∣v<ε (v∈S),∣β−xv∣v≤1 (v∉S∪{v0}, v∤∞)|\beta - x_v|_v \lt \varepsilon \ (v \in S), \qquad |\beta - x_v|_v \le 1 \ (v \notin S \cup \{v_0\},\ v \nmid \infty)

を満たす β∈K\beta \in K が存在する。すなわち KK は、v0v_0 成分を除いた制限直積 ∏v≠v0′(Kv,Ov)\prod'_{v \ne v_0}(K_v, \mathcal{O}_v) の中で稠密である。

証明(定理 4.8)

S⊇S∞∖{v0}S \supseteq S_\infty \setminus \{v_0\} としてよく、ε≤1\varepsilon \le 1 としてよいです。定理 4.3 のコンパクト集合 WW(AK=K+W\mathbb{A}_K = K + W)を取ります。命題 3.2 の 4 により WW はある AK,T\mathbb{A}_{K,T} に含まれ、各 v∈Tv \in T への射影はコンパクト集合の連続像なので有界です。したがって、有限個を除いて δv=1\delta_v = 1 となる正の実数 δv\delta_v があって、W⊆{y∣すべての v で ∣yv∣v≤δv}W \subseteq \{y \mid \text{すべての } v \text{ で } |y_v|_v \le \delta_v\} です。

各成分が 00 でないアデール cc を次のように選びます。v∈Sv \in S では ∣cv∣v≤ε/(2δv)|c_v|_v \le \varepsilon/(2\delta_v)、v∉S∪{v0}v \notin S \cup \{v_0\} で δv≠1\delta_v \ne 1 の(有限個の)vv では ∣cv∣v≤1/δv|c_v|_v \le 1/\delta_v、それ以外の v≠v0v \ne v_0 では cv=1c_v = 1 とします(有限素点では πv\pi_v の冪を取ればよい)。最後に cv0c_{v_0} を、∣cv0∣v0|c_{v_0}|_{v_0} が十分大きく ∏v∣cv∣v≥CK\prod_v|c_v|_v \ge C_K となるように取ります。補題 4.6 により、すべての vv で ∣λ∣v≤∣cv∣v|\lambda|_v \le |c_v|_v となる λ∈K×\lambda \in K^{\times} があります。

アデール λ−1x\lambda^{-1}x を λ−1x=γ+y\lambda^{-1}x = \gamma + y(γ∈K\gamma \in K、y∈Wy \in W)と書くと、x−λγ=λyx - \lambda\gamma = \lambda y で、v≠v0v \ne v_0 では ∣λyv∣v≤∣cv∣vδv|\lambda y_v|_v \le |c_v|_v\delta_v です。右辺は v∈Sv \in S で ε/2<ε\varepsilon/2 \lt \varepsilon 以下、v∉S∪{v0}v \notin S \cup \{v_0\} で 11 以下です。β=λγ\beta = \lambda\gamma が求める元です。

弱近似定理(定理 3.2[付値と完備化])は有限個の素点での同時近似を与えますが、残りの素点では何も言いません。強近似定理は、1 つの素点 v0v_0 だけを自由にする代わりに、残りのすべての有限素点で整数性を保ったまま近似できると主張します。K=QK = \mathbb{Q}、v0=∞v_0 = \infty の場合が中国剰余定理です(演習 9.1)。

定義 5.1(イデール群・イデール類群)↗

代数体 KK のイデール群を、乗法群 Kv×K_v^{\times} の Ov×\mathcal{O}_v^{\times} に関する制限直積(V0=S∞V_0 = S_\infty)

IK:=∏v′(Kv×,Ov×)\mathbb{I}_K := {\prod_v}' (K_v^{\times}, \mathcal{O}_v^{\times})

と定め、制限直積の位相を入れる。元をイデールという。集合としては IK\mathbb{I}_K はアデール環の単元群 AK×\mathbb{A}_K^{\times} である。対角埋め込み K×→IKK^{\times} \to \mathbb{I}_K の像の元を主イデールといい、商群

CK:=IK/K×C_K := \mathbb{I}_K/K^{\times}

をイデール類群という。S⊇S∞S \supseteq S_\infty が有限集合のとき IK,S:=∏v∈SKv××∏v∉SOv×\mathbb{I}_{K,S} := \prod_{v \in S}K_v^{\times} \times \prod_{v \notin S}\mathcal{O}_v^{\times} を SS イデールの群という。

AK×=IK\mathbb{A}_K^{\times} = \mathbb{I}_K であることを確かめます。アデール xx が逆元 yy をもてば、各成分で xvyv=1x_vy_v = 1、有限個を除いて xv,yv∈Ovx_v, y_v \in \mathcal{O}_v なので、有限個を除いて xv∈Ov×x_v \in \mathcal{O}_v^{\times} です。逆は明らかに成り立ちます(成分ごとの逆元がアデールになる)。Kv×K_v^{\times} は KvK_v の開集合で、相対位相で位相群です(逆元の連続性は ∣x−1−y−1∣v=∣x−y∣v/(∣x∣v∣y∣v)|x^{-1} - y^{-1}|_v = |x - y|_v/(|x|_v|y|_v) から従います)。よって 命題 3.2 により IK\mathbb{I}_K は局所コンパクト Hausdorff 位相群です。

補題 5.2(包含写像の連続性)✓

包含写像 IK→AK\mathbb{I}_K \to \mathbb{A}_K は連続である。したがって K×K^{\times} は IK\mathbb{I}_K の離散な閉部分群であり、CKC_K は Hausdorff 位相群である。

証明(補題 5.2)

AK\mathbb{A}_K の開基の元 ∏Uv\prod U_v(有限個を除いて Uv=OvU_v = \mathcal{O}_v)とイデール x∈∏Uvx \in \prod U_v を取ります。S∞S_\infty、xv∉Ov×x_v \notin \mathcal{O}_v^{\times} となる vv、Uv≠OvU_v \ne \mathcal{O}_v となる vv を含む有限集合 SS について、∏v∈S(Uv∩Kv×)×∏v∉SOv×\prod_{v \in S}(U_v \cap K_v^{\times}) \times \prod_{v \notin S}\mathcal{O}_v^{\times} は xx を含む IK\mathbb{I}_K の開集合で、∏Uv\prod U_v に含まれます。よって ∏Uv∩IK\prod U_v \cap \mathbb{I}_K は IK\mathbb{I}_K の開集合です。

KK は AK\mathbb{A}_K で離散(定理 4.3)なので、AK\mathbb{A}_K の開集合 OO で O∩K={1}O \cap K = \{1\} となるものがあり、O∩IKO \cap \mathbb{I}_K は IK\mathbb{I}_K の開集合で K×K^{\times} との交わりが {1}\{1\} です。よって K×K^{\times} は IK\mathbb{I}_K で離散で、補題 4.4 により閉です。命題 7.8[局所コンパクト空間] により CKC_K は Hausdorff 位相群です。

例 5.3(イデールの位相はアデールの相対位相より真に細かい)

K=QK = \mathbb{Q} とし、nn 番目の素数を pnp_n と書きます。pnp_n 成分が pnp_n、ほかの成分がすべて 11 のイデールを x(n)x^{(n)} とします。

アデールの位相では x(n)→1x^{(n)} \to 1 です。11 の開基近傍 ∏Uv\prod U_v を取ると、有限集合 SS の外では Up=ZpU_p = \mathbb{Z}_p です。pn∉Sp_n \notin S となる nn(有限個を除くすべての nn)について、x(n)x^{(n)} の pnp_n 成分 pnp_n は Zpn\mathbb{Z}_{p_n} に入り、ほかの成分は 1∈Uv1 \in U_v なので、x(n)∈∏Uvx^{(n)} \in \prod U_v です。

イデールの位相では x(n)x^{(n)} は 11 に収束しません。R××∏pZp×\mathbb{R}^{\times} \times \prod_p\mathbb{Z}_p^{\times} は 11 の開近傍ですが、pn∉Zpn×p_n \notin \mathbb{Z}_{p_n}^{\times} なので、どの x(n)x^{(n)} もこれに入りません。

したがって R××∏pZp×\mathbb{R}^{\times} \times \prod_p\mathbb{Z}_p^{\times} はイデールの位相では開集合ですが、アデールからの相対位相では 11 の近傍になりません。イデールの位相は、x↦(x,x−1)x \mapsto (x, x^{-1}) で IK\mathbb{I}_K を AK×AK\mathbb{A}_K \times \mathbb{A}_K に埋め込んだときの相対位相に一致します。逆元を取る操作を連続にするために、位相を細かくする必要があるということです。

定義 5.4(イデールのノルム)↗

イデール aa のノルム(絶対値)を ∥a∥:=∏v∣av∣v∈R>0\|a\| := \prod_v|a_v|_v \in \mathbb{R}_{\gt 0}(有限積)と定める。IK1:={a∈IK∣∥a∥=1}\mathbb{I}_K^1 := \{a \in \mathbb{I}_K \mid \|a\| = 1\}、CK1:=IK1/K×C_K^1 := \mathbb{I}_K^1/K^{\times} とおく。

∥⋅∥:IK→R>0\|\cdot\| : \mathbb{I}_K \to \mathbb{R}_{\gt 0} は準同型です。連続性は、開部分群 IK,S\mathbb{I}_{K,S} の上で ∥a∥=∏v∈S∣av∣v\|a\| = \prod_{v \in S}|a_v|_v が有限個の連続関数の積であることから従います。よって IK1\mathbb{I}_K^1 は閉部分群です。積公式により K×⊆IK1K^{\times} \subseteq \mathbb{I}_K^1 なので、∥⋅∥\|\cdot\| は CKC_K の上の連続準同型を誘導し、CK1C_K^1 はその核です。全射性は、1 つの無限素点の成分だけを動かせば分かります。

補題 5.5(ノルム 1 のイデールの上では 2 つの位相が一致する)✓

IK1\mathbb{I}_K^1 は AK\mathbb{A}_K の閉集合であり、IK1\mathbb{I}_K^1 の上で、アデールからの相対位相とイデールからの相対位相は一致する。

この補題のねらいは、アデールの側で作ったコンパクト集合を使って、CK1C_K^1 のコンパクト性を示せるようにすることです。閉集合であることの証明は、アデール xx のノルムが 11 より小さい場合と大きい場合に分けて、xx の近くにノルム 11 のイデールが無いことを確かめます。位相の一致は、xx の近くでは、素点を有限個に絞れば残りの成分が単数に固定されることから出ます。

証明(補題 5.5)

閉集合であること。 x∈AK∖IK1x \in \mathbb{A}_K \setminus \mathbb{I}_K^1 を取り、xx の AK\mathbb{A}_K での近傍で IK1\mathbb{I}_K^1 と交わらないものを作ります。4.1 節の ∥x∥∈[0,∞)\|x\| \in [0, \infty) を使います。

(a) ∥x∥<1\|x\| \lt 1 の場合。S∞S_\infty と ∣xv∣v>1|x_v|_v \gt 1 となる vv を含む有限集合 SS で ∏v∈S∣xv∣v<1\prod_{v \in S}|x_v|_v \lt 1 となるものがあります。∣⋅∣v|\cdot|_v は連続なので、ε>0\varepsilon \gt 0 を小さく取れば、∣yv−xv∣v<ε|y_v - x_v|_v \lt \varepsilon(v∈Sv \in S)のとき ∏v∈S∣yv∣v<1\prod_{v \in S}|y_v|_v \lt 1 です。近傍 O:={y∣∣yv−xv∣v<ε (v∈S), yv∈Ov (v∉S)}O := \{y \mid |y_v - x_v|_v \lt \varepsilon\ (v \in S),\ y_v \in \mathcal{O}_v\ (v \notin S)\} の元 yy がイデールならば ∥y∥≤∏v∈S∣yv∣v<1\|y\| \le \prod_{v \in S}|y_v|_v \lt 1 なので、O∩IK1=∅O \cap \mathbb{I}_K^1 = \emptyset です。

(b) ∥x∥=c>1\|x\| = c \gt 1 の場合。有限素点で ∣xv∣v<1|x_v|_v \lt 1 ならば ∣xv∣v≤1/qv≤1/2|x_v|_v \le 1/q_v \le 1/2 なので、そのような vv が無限個あれば ∥x∥=0\|x\| = 0 となります。よって ∣xv∣v≠1|x_v|_v \ne 1 となる vv は有限個で、xx はイデールです。SS を、S∞S_\infty、∣xv∣v≠1|x_v|_v \ne 1 となる vv、qv≤2cq_v \le 2c となる有限素点 vv(ノルムが 2c2c 以下の素イデアルは有限個)をすべて含む有限集合とします。∏v∈S∣xv∣v=c\prod_{v \in S}|x_v|_v = c なので、ε>0\varepsilon \gt 0 を小さく取れば、∣yv−xv∣v<ε|y_v - x_v|_v \lt \varepsilon(v∈Sv \in S)のとき 1<∏v∈S∣yv∣v<2c1 \lt \prod_{v \in S}|y_v|_v \lt 2c です。OO を (a) と同じ形で定めます。イデール y∈Oy \in O について、SS の外のすべての vv で ∣yv∣v=1|y_v|_v = 1 ならば ∥y∥=∏v∈S∣yv∣v>1\|y\| = \prod_{v \in S}|y_v|_v \gt 1 です。ある v∉Sv \notin S で ∣yv∣v<1|y_v|_v \lt 1 ならば ∣yv∣v≤1/qv<1/(2c)|y_v|_v \le 1/q_v \lt 1/(2c) なので ∥y∥<2c⋅1/(2c)=1\|y\| \lt 2c \cdot 1/(2c) = 1 です。どちらの場合も ∥y∥≠1\|y\| \ne 1 で、O∩IK1=∅O \cap \mathbb{I}_K^1 = \emptyset です。

∥x∥=1\|x\| = 1 ならば (b) の最初の議論により xx はイデールで x∈IK1x \in \mathbb{I}_K^1 となるので、(a) と (b) で尽くされています。

位相の一致。 補題 5.2 により、アデールの相対位相の開集合はイデールの相対位相でも開です。逆を示します。x∈IK1x \in \mathbb{I}_K^1 と、イデールの位相での xx の開基近傍

N={y∣∣yv−xv∣v<ε (v∈S), yv∈Ov× (v∉S)}N = \{y \mid |y_v - x_v|_v \lt \varepsilon\ (v \in S),\ y_v \in \mathcal{O}_v^{\times}\ (v \notin S)\}

を取ります。ここで S⊇S∞S \supseteq S_\infty は ∣xv∣v≠1|x_v|_v \ne 1 となる vv を含む有限集合です。∏v∈S∣xv∣v=1\prod_{v \in S}|x_v|_v = 1 なので、0<ε′≤ε0 \lt \varepsilon' \le \varepsilon を小さく取れば、∣yv−xv∣v<ε′|y_v - x_v|_v \lt \varepsilon'(v∈Sv \in S)のとき ∏v∈S∣yv∣v<2\prod_{v \in S}|y_v|_v \lt 2 です。O:={y∈AK∣∣yv−xv∣v<ε′ (v∈S), yv∈Ov (v∉S)}O := \{y \in \mathbb{A}_K \mid |y_v - x_v|_v \lt \varepsilon'\ (v \in S),\ y_v \in \mathcal{O}_v\ (v \notin S)\} は AK\mathbb{A}_K での xx の開近傍です。y∈O∩IK1y \in O \cap \mathbb{I}_K^1 とします。ある v∉Sv \notin S で ∣yv∣v<1|y_v|_v \lt 1 ならば ∣yv∣v≤1/2|y_v|_v \le 1/2 なので ∥y∥<2⋅1/2=1\|y\| \lt 2 \cdot 1/2 = 1 となり矛盾します。よって SS の外のすべての vv で yv∈Ov×y_v \in \mathcal{O}_v^{\times} で、y∈Ny \in N です。すなわち O∩IK1⊆NO \cap \mathbb{I}_K^1 \subseteq N です。

定理 5.6(ノルム 1 のイデール類群のコンパクト性)✓

CK1=IK1/K×C_K^1 = \mathbb{I}_K^1/K^{\times} はコンパクト Hausdorff 位相群である。

証明(定理 5.6)

∥c∥≥CK\|c\| \ge C_K(補題 4.6 の定数)となるイデール cc を 1 つ固定し(1 つの無限素点の成分を大きくすればよい)、

W:={x∈AK∣すべての v で ∣xv∣v≤∣cv∣v}W := \{x \in \mathbb{A}_K \mid \text{すべての } v \text{ で } |x_v|_v \le |c_v|_v\}

とおきます。WW は、各 KvK_v のコンパクト集合(無限素点では閉区間または閉円板、有限素点では πvkOv\pi_v^{k}\mathcal{O}_v の形の集合で、有限個を除いて Ov\mathcal{O}_v)の直積なので、Tychonoff の定理と 命題 3.2 の 2 により AK\mathbb{A}_K のコンパクト集合です。

IK1=K×⋅(W∩IK1)\mathbb{I}_K^1 = K^{\times}\cdot(W \cap \mathbb{I}_K^1) を示します。b∈IK1b \in \mathbb{I}_K^1 を取ると、∥b−1c∥=∥c∥≥CK\|b^{-1}c\| = \|c\| \ge C_K です。補題 4.6 により、すべての vv で ∣β∣v≤∣bv−1cv∣v|\beta|_v \le |b_v^{-1}c_v|_v となる β∈K×\beta \in K^{\times} があります。このとき ∣βbv∣v≤∣cv∣v|\beta b_v|_v \le |c_v|_v なので βb∈W\beta b \in W、また積公式により ∥βb∥=1\|\beta b\| = 1 です。よって b=β−1(βb)∈K×⋅(W∩IK1)b = \beta^{-1}(\beta b) \in K^{\times}\cdot(W \cap \mathbb{I}_K^1) です。

補題 5.5 により IK1\mathbb{I}_K^1 は AK\mathbb{A}_K の閉集合なので、W∩IK1W \cap \mathbb{I}_K^1 はコンパクト集合 WW の閉部分集合で、アデールの位相でコンパクトです(定理 4.1[コンパクト性])。同じ補題により、IK1\mathbb{I}_K^1 の上ではアデールの位相とイデールの位相が一致するので、W∩IK1W \cap \mathbb{I}_K^1 はイデールの位相でもコンパクトです。射影 IK1→CK1\mathbb{I}_K^1 \to C_K^1 は連続で、W∩IK1W \cap \mathbb{I}_K^1 の像が CK1C_K^1 全体なので、CK1C_K^1 はコンパクトです。Hausdorff 性は、K×K^{\times} が閉であること(補題 5.2)から従います。

この証明が使ったのは、積公式、Minkowski の格子点定理、格子 j(a)j(\mathfrak{a}) の余体積の公式だけで、類数の有限性も単数定理も使っていません。次節で、この 2 つの定理がコンパクト性から出てくることを見ます。

CKC_K 自身はコンパクトではありません。∥⋅∥:CK→R>0\|\cdot\| : C_K \to \mathbb{R}_{\gt 0} が連続な全射で、R>0\mathbb{R}_{\gt 0} がコンパクトでないからです。ただし、コンパクトでない部分は R>0\mathbb{R}_{\gt 0} の 1 つ分だけです。

補題 5.7(CKC_K は CK1C_K^1 と正の実数の直積)✓

t∈R>0t \in \mathbb{R}_{\gt 0} に対し、すべての無限素点の成分が正の実数 t1/nt^{1/n}(n=[K:Q]n = [K:\mathbb{Q}])、有限素点の成分が 11 のイデールを sK(t)s_K(t) とする。sK:R>0→IKs_K : \mathbb{R}_{\gt 0} \to \mathbb{I}_K は連続準同型で ∥sK(t)∥=t\|s_K(t)\| = t を満たし、

CK1×R>0→CK,(c,t)↦c⋅sK(t)C_K^1 \times \mathbb{R}_{\gt 0} \to C_K, \qquad (c, t) \mapsto c\cdot s_K(t)

は位相群の同型である。

証明(補題 5.7)

sKs_K は開部分群 IK,S∞\mathbb{I}_{K,S_\infty} への写像で、各成分が連続なので連続であり、準同型です。実素点では ∣t1/n∣v=t1/n|t^{1/n}|_v = t^{1/n}、複素素点では ∣t1/n∣v=t2/n|t^{1/n}|_v = t^{2/n} なので、∥sK(t)∥=t(r1+2r2)/n=t\|s_K(t)\| = t^{(r_1 + 2r_2)/n} = t です。写像 (c,t)↦c⋅sK(t)(c, t) \mapsto c\cdot s_K(t) は連続準同型で、逆写像 c↦(c⋅sK(∥c∥)−1,∥c∥)c \mapsto (c\cdot s_K(\|c\|)^{-1}, \|c\|) をもち(∥c⋅sK(∥c∥)−1∥=1\|c\cdot s_K(\|c\|)^{-1}\| = 1 に注意)、これも連続です。

6. コンパクト性と、類数の有限性・単数定理

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イデールからイデアルへの写像を定めます。KK の分数イデアルの群を Div(K)\mathrm{Div}(K)、単項分数イデアルの群を P(K)P(K) と書くと、イデアル類群は Cl(K)=Div(K)/P(K)\mathrm{Cl}(K) = \mathrm{Div}(K)/P(K) です。ここで分数イデアルは、分母を許したイデアルのことです。

定理 6.1(イデールとイデアル類群)✓

写像

ι:IK→Div(K),a↦(a):=∏ppvp(ap)\iota : \mathbb{I}_K \to \mathrm{Div}(K), \qquad a \mapsto (a) := \prod_{\mathfrak{p}}\mathfrak{p}^{v_{\mathfrak{p}}(a_{\mathfrak{p}})}

は全射準同型で、核は IK,S∞=∏v∣∞Kv××∏v∤∞Ov×\mathbb{I}_{K,S_\infty} = \prod_{v \mid \infty}K_v^{\times} \times \prod_{v \nmid \infty}\mathcal{O}_v^{\times} であり、主イデール x∈K×x \in K^{\times} を単項イデアル xOKx\mathcal{O}_K に写す。したがって

IK/(K×⋅IK,S∞)≅Cl(K)\mathbb{I}_K/\bigl(K^{\times}\cdot\mathbb{I}_{K,S_\infty}\bigr) \cong \mathrm{Cl}(K)

である。ι\iota を IK1\mathbb{I}_K^1 に制限しても全射で、IK1/(K×⋅(IK,S∞∩IK1))≅Cl(K)\mathbb{I}_K^1/\bigl(K^{\times}\cdot(\mathbb{I}_{K,S_\infty} \cap \mathbb{I}_K^1)\bigr) \cong \mathrm{Cl}(K) である。

証明(定理 6.1)

イデールでは有限個を除いて vp(ap)=0v_{\mathfrak{p}}(a_{\mathfrak{p}}) = 0 なので ι\iota は定義でき、vpv_{\mathfrak{p}} が準同型なので ι\iota も準同型です。分数イデアル ∏pkp\prod\mathfrak{p}^{k_{\mathfrak{p}}} は、p\mathfrak{p} 成分が πpkp\pi_{\mathfrak{p}}^{k_{\mathfrak{p}}}、無限成分が 11 のイデールの像なので、ι\iota は全射です。核は、すべての有限素点で vp(ap)=0v_{\mathfrak{p}}(a_{\mathfrak{p}}) = 0、すなわち ap∈Op×a_{\mathfrak{p}} \in \mathcal{O}_{\mathfrak{p}}^{\times} となるイデールの全体 IK,S∞\mathbb{I}_{K,S_\infty} です。x∈K×x \in K^{\times} については、KpK_{\mathfrak{p}} の付値が KK の p\mathfrak{p} 進付値の延長なので、ι(x)=∏pvp(x)=xOK\iota(x) = \prod\mathfrak{p}^{v_{\mathfrak{p}}(x)} = x\mathcal{O}_K です(系 4.8[代数体の整数環と Dedekind 整域])。

合成 IK→Div(K)→Cl(K)\mathbb{I}_K \to \mathrm{Div}(K) \to \mathrm{Cl}(K) は全射で、aa が核に入るのは ι(a)=ι(x)\iota(a) = \iota(x) となる x∈K×x \in K^{\times} があるとき、すなわち ax−1∈IK,S∞ax^{-1} \in \mathbb{I}_{K,S_\infty} のときです。よって核は K×⋅IK,S∞K^{\times}\cdot\mathbb{I}_{K,S_\infty} です。

IK1\mathbb{I}_K^1 への制限について。イデール aa の 1 つの無限成分を正の実数倍して ∥a∥=1\|a\| = 1 にしても ι(a)\iota(a) は変わらないので、ι∣IK1\iota|_{\mathbb{I}_K^1} は全射です。a∈IK1a \in \mathbb{I}_K^1 が Cl(K)\mathrm{Cl}(K) への写像の核に入るのは a=xua = xu(x∈K×x \in K^{\times}、u∈IK,S∞u \in \mathbb{I}_{K,S_\infty})と書けるときで、このとき ∥u∥=∥a∥/∥x∥=1\|u\| = \|a\|/\|x\| = 1 です。

次に対数写像を導入します。無限素点を v1,…,vr1+r2v_1, \ldots, v_{r_1 + r_2} と並べ、

λ:IK,S∞→Rr1+r2,a↦(log⁡∣avi∣vi)i\lambda : \mathbb{I}_{K,S_\infty} \to \mathbb{R}^{r_1 + r_2}, \qquad a \mapsto \bigl(\log|a_{v_i}|_{v_i}\bigr)_i

とおきます。λ\lambda は連続準同型で、IK,S∞1:=IK,S∞∩IK1\mathbb{I}_{K,S_\infty}^1 := \mathbb{I}_{K,S_\infty} \cap \mathbb{I}_K^1 を超平面 H:={t∈Rr1+r2∣∑iti=0}H := \{t \in \mathbb{R}^{r_1 + r_2} \mid \sum_i t_i = 0\} の上へ写します(a∈IK,S∞a \in \mathbb{I}_{K,S_\infty} では有限成分の絶対値が 11 なので log⁡∥a∥=∑ilog⁡∣avi∣vi\log\|a\| = \sum_i\log|a_{v_i}|_{v_i})。また K×∩IK,S∞=OK×K^{\times} \cap \mathbb{I}_{K,S_\infty} = \mathcal{O}_K^{\times} です(すべての p\mathfrak{p} で付値が 00 の元が単数)。Λ:=λ(OK×)⊆H\Lambda := \lambda(\mathcal{O}_K^{\times}) \subseteq H とおきます。

補題 6.2(単数の対数は離散)✓

Rr1+r2\mathbb{R}^{r_1 + r_2} の任意の有界集合は Λ\Lambda の点を有限個しか含まず、各点の λ∣OK×\lambda|_{\mathcal{O}_K^{\times}} による逆像は有限集合である。特に ker⁡(λ∣OK×)\ker(\lambda|_{\mathcal{O}_K^{\times}}) は有限群で、KK に含まれる 1 の冪根の群 μK\mu_K に一致する。

証明(補題 6.2)

B>0B \gt 0 とします。λ(u)\lambda(u) のすべての成分が BB 以下の単数 uu は、すべての埋め込み ρ\rho で ∣ρ(u)∣≤eB|\rho(u)| \le e^{B} を満たすので、j(u)j(u) は Rn\mathbb{R}^n の有界集合に入ります。j(OK)j(\mathcal{O}_K) は格子(命題 3.2[イデアル類群の有限性と Minkowski 限界])で、有界集合は格子の点を有限個しか含まず(補題 2.2[イデアル類群の有限性と Minkowski 限界] の 2)、jj は単射なので、そのような uu は有限個です。前半の 2 つの主張はこれから従います。ker⁡(λ∣OK×)\ker(\lambda|_{\mathcal{O}_K^{\times}}) は有限群なので、その元は有限位数、すなわち 1 の冪根です。逆に 1 の冪根 ζ∈K\zeta \in K は単数で、すべての埋め込みで絶対値が 11 なので λ(ζ)=0\lambda(\zeta) = 0 です。

定理 6.3(コンパクト性 ⇔ 類数の有限性 + 単数定理)✓

代数体 KK について、次の 2 つは同値である。

  1. CK1C_K^1 はコンパクトである。
  2. Cl(K)\mathrm{Cl}(K) は有限群であり、かつ Λ=λ(OK×)\Lambda = \lambda(\mathcal{O}_K^{\times}) は HH を張る(すなわち OK×≅μK×Zr1+r2−1\mathcal{O}_K^{\times} \cong \mu_K \times \mathbb{Z}^{r_1 + r_2 - 1})。

1 は 定理 5.6 で証明したので、2 が成り立つ。これは類数の有限性(定理 4.3[イデアル類群の有限性と Minkowski 限界])と Dirichlet の単数定理(定理 6.1[イデアル類群の有限性と Minkowski 限界])の別証明である。

証明の方針は次のとおりです。1 ⇒ 2 では、イデアル類群に対応する開部分群 NN の剰余類を数えて類数の有限性を、NN を対数写像で超平面 HH の商 H/ΛH/\Lambda に写して単数定理(Λ\Lambda が HH を張ること)を取り出します。2 ⇒ 1 では逆に、Λ\Lambda の基本領域とコンパクト群 EE で NN を覆い、剰余類が有限個であることと合わせて CK1C_K^1 を覆います。

証明(定理 6.3)

まず 2 の括弧の中の言い換えを示します。補題 6.2 と 補題 6.2[イデアル類群の有限性と Minkowski 限界] により、Λ≅Zk\Lambda \cong \mathbb{Z}^k で、kk は Λ\Lambda が張る部分空間の次元です。Λ\Lambda は自由なので完全列 1→μK→OK×→Λ→01 \to \mu_K \to \mathcal{O}_K^{\times} \to \Lambda \to 0 は分裂し、OK×≅μK×Zk\mathcal{O}_K^{\times} \cong \mu_K \times \mathbb{Z}^k です。dim⁡H=r1+r2−1\dim H = r_1 + r_2 - 1 なので、Λ\Lambda が HH を張ることと k=r1+r2−1k = r_1 + r_2 - 1 は同値です。

1 ⇒ 2. IK,S∞1\mathbb{I}_{K,S_\infty}^1 は IK1\mathbb{I}_K^1 の開部分群なので、N:=K×IK,S∞1/K×N := K^{\times}\mathbb{I}_{K,S_\infty}^1/K^{\times} は CK1C_K^1 の開部分群です(射影は開写像。命題 7.8[局所コンパクト空間])。CK1C_K^1 は NN の剰余類(開集合)で交わりなく覆われ、CK1C_K^1 はコンパクトなので、剰余類は有限個です。定理 6.1 により CK1/N≅Cl(K)C_K^1/N \cong \mathrm{Cl}(K) なので、Cl(K)\mathrm{Cl}(K) は有限です。

NN の補集合は、ほかの剰余類の和集合なので開集合で、NN は閉集合です。よって NN はコンパクトです(定理 4.1[コンパクト性])。λ\lambda と射影 H→H/ΛH \to H/\Lambda の合成 IK,S∞1→H/Λ\mathbb{I}_{K,S_\infty}^1 \to H/\Lambda は、K×∩IK,S∞1=OK×K^{\times} \cap \mathbb{I}_{K,S_\infty}^1 = \mathcal{O}_K^{\times} の上で自明なので、連続な全射 N≅IK,S∞1/OK×→H/ΛN \cong \mathbb{I}_{K,S_\infty}^1/\mathcal{O}_K^{\times} \to H/\Lambda を誘導します(商位相の普遍性による。NN の位相は IK,S∞1\mathbb{I}_{K,S_\infty}^1 の商位相です。射影が開写像だからです)。したがって H/ΛH/\Lambda はコンパクトです。Λ\Lambda が張る部分空間 H′H' が HH より真に小さいと仮定すると、H′H' の上で 00 になる 00 でない線形形式 ℓ:H→R\ell : H \to \mathbb{R} があり、ℓ\ell は H/ΛH/\Lambda の上の連続関数を誘導して、その像は R\mathbb{R} 全体です。コンパクト空間の連続像が非有界になるので矛盾です。よって Λ\Lambda は HH を張ります。

2 ⇒ 1. Λ≅Zr1+r2−1\Lambda \cong \mathbb{Z}^{r_1 + r_2 - 1} は HH の基底 w1,…,wrw_1, \ldots, w_r(r=r1+r2−1r = r_1 + r_2 - 1)で生成されます。F‾:={∑ktkwk∣0≤tk≤1}\overline{F} := \{\sum_k t_kw_k \mid 0 \le t_k \le 1\} は HH のコンパクト集合で、H=Λ+F‾H = \Lambda + \overline{F} です。λ\lambda の IK,S∞1\mathbb{I}_{K,S_\infty}^1 での核は

E:={a∣すべての v で ∣av∣v=1}=∏v 実{±1}×∏v 複素{z∈C∣∣z∣=1}×∏v∤∞Ov×E := \{a \mid \text{すべての } v \text{ で } |a_v|_v = 1\} = \prod_{v\ \text{実}}\{\pm 1\} \times \prod_{v\ \text{複素}}\{z \in \mathbb{C} \mid |z| = 1\} \times \prod_{v \nmid \infty}\mathcal{O}_v^{\times}

で、Tychonoff の定理によりコンパクトです。連続な切断 σ:H→IK,S∞1\sigma : H \to \mathbb{I}_{K,S_\infty}^1 を、実素点 viv_i の成分が etie^{t_i}、複素素点 viv_i の成分が eti/2e^{t_i/2}、有限成分が 11 のイデールとして定めると、λ∘σ=id\lambda\circ\sigma = \mathrm{id} です。a∈IK,S∞1a \in \mathbb{I}_{K,S_\infty}^1 を取り、λ(a)=λ(u)+t\lambda(a) = \lambda(u) + t(u∈OK×u \in \mathcal{O}_K^{\times}、t∈F‾t \in \overline{F})と書くと、au−1σ(t)−1∈Eau^{-1}\sigma(t)^{-1} \in E です。よって IK,S∞1=OK×⋅E⋅σ(F‾)\mathbb{I}_{K,S_\infty}^1 = \mathcal{O}_K^{\times}\cdot E\cdot\sigma(\overline{F}) で、E⋅σ(F‾)E\cdot\sigma(\overline{F}) はコンパクト集合 E×F‾E \times \overline{F} の連続像なのでコンパクトです。したがって N=K×IK,S∞1/K×N = K^{\times}\mathbb{I}_{K,S_\infty}^1/K^{\times} は E⋅σ(F‾)E\cdot\sigma(\overline{F}) の像で、コンパクトです。Cl(K)≅CK1/N\mathrm{Cl}(K) \cong C_K^1/N が有限なので、CK1C_K^1 は NN の有限個の剰余類(それぞれ NN と同相)の和集合で、コンパクトです。

例 6.4(Q(i) と Q(√−5) の類数をイデール類群から読む)

定理 6.1 により、類数は IK\mathbb{I}_K における K×⋅IK,S∞K^{\times}\cdot\mathbb{I}_{K,S_\infty} の指数です。

K=Q(i)K = \mathbb{Q}(i)。Z[i]\mathbb{Z}[i] は単項イデアル整域なので、各素イデアル p=(ϖ)\mathfrak{p} = (\varpi) について、p\mathfrak{p} 成分が ϖ\varpi でほかが 11 のイデールは、主イデール ϖ\varpi と、p\mathfrak{p} 以外の成分が ϖ−1\varpi^{-1}(p\mathfrak{p} 以外の有限素点で単数)の IK,S∞\mathbb{I}_{K,S_\infty} の元の積です。したがって IK=K×⋅IK,S∞\mathbb{I}_K = K^{\times}\cdot\mathbb{I}_{K,S_\infty} で、類数は 11 です。

K=Q(−5)K = \mathbb{Q}(\sqrt{-5})。p2=(2,1+−5)\mathfrak{p}_2 = (2, 1 + \sqrt{-5}) は 22 の上のただ 1 つの素イデアルで、p22=(2)\mathfrak{p}_2^2 = (2) です。p2\mathfrak{p}_2 成分が素元 π\pi、ほかが 11 のイデール aa を考えます。a∈K×IK,S∞a \in K^{\times}\mathbb{I}_{K,S_\infty} ならば、vp2(x)=1v_{\mathfrak{p}_2}(x) = 1 で、ほかのすべての素イデアルで付値が 00 の x∈K×x \in K^{\times} があることになり、p2=(x)\mathfrak{p}_2 = (x)、N(x)=2N(x) = 2 です。しかし x=s+t−5x = s + t\sqrt{-5} のノルム s2+5t2s^2 + 5t^2 は 22 になりません。よって a∉K×IK,S∞a \notin K^{\times}\mathbb{I}_{K,S_\infty} です。一方 a2a^2 は主イデール 22 と IK,S∞\mathbb{I}_{K,S_\infty} の元の積です。類数が 22 であること(例 5.2[イデアル類群の有限性と Minkowski 限界])は、IK/(K×IK,S∞)\mathbb{I}_K/(K^{\times}\mathbb{I}_{K,S_\infty}) が aa の類で生成される位数 22 の群であることに対応します。

例 6.5(Q(√2) の単数 1 + √2 とコンパクト性)

K=Q(2)K = \mathbb{Q}(\sqrt2) では r1=2r_1 = 2、r2=0r_2 = 0、類数は 11 で、H={(t,−t)}⊂R2H = \{(t, -t)\} \subset \mathbb{R}^2 は直線です。単数 ε=1+2\varepsilon = 1 + \sqrt2 の対数は λ(ε)=(log⁡(1+2),log⁡(2−1))=(ℓ,−ℓ)\lambda(\varepsilon) = (\log(1 + \sqrt2), \log(\sqrt2 - 1)) = (\ell, -\ell)、ℓ=log⁡(1+2)≈0.8814\ell = \log(1 + \sqrt2) \approx 0.8814 です。

仮に単数が ±1\pm 1 しかなかったとすると、Λ=0\Lambda = 0 で、IK,S∞1/OK×\mathbb{I}_{K,S_\infty}^1/\mathcal{O}_K^{\times} から H/Λ=H≅RH/\Lambda = H \cong \mathbb{R} への連続な全射があることになり、CK1C_K^1 はコンパクトになりません。実際には Λ=Z(ℓ,−ℓ)\Lambda = \mathbb{Z}(\ell, -\ell) なので H/ΛH/\Lambda は長さ 2 ℓ\sqrt2\,\ell の円周で、コンパクトです。無限成分が (et,e−t)(e^{t}, e^{-t}) のイデールは、tt を ℓ\ell ずらすごとに主イデール ε\varepsilon の分だけ動いて同じイデール類に戻ります。「CK1C_K^1 がコンパクト」という主張は、「HH の方向に逃げていくイデールを引き戻すだけの単数がある」という主張です。

7. 射線類群と CKC_K の開部分群

Section titled “7. 射線類群と CKC_KCK​ の開部分群”

この節では、イデアル類群に合同条件(「ある整数を法として 11 に等しい」など)を付けた類群である射線類群を定義し、それが CKC_K の商として得られることを示します。K=QK = \mathbb{Q} では、法 (m)∞(m)\infty の射線類群が (Z/mZ)×(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times} に当たります(命題 7.4)。

定義 7.1(モジュラス・射線類群・合同部分群)↗

KK のモジュラスとは、00 でない整イデアル m0\mathfrak{m}_0 と実素点の集合 m∞\mathfrak{m}_\infty の組 m=m0m∞\mathfrak{m} = \mathfrak{m}_0\mathfrak{m}_\infty である。m0=∏ppmp\mathfrak{m}_0 = \prod_{\mathfrak{p}}\mathfrak{p}^{m_{\mathfrak{p}}} と書く。素点 vv が m\mathfrak{m} を割る(v∣mv \mid \mathfrak{m})とは、v=pv = \mathfrak{p} で mp≥1m_{\mathfrak{p}} \ge 1、または v∈m∞v \in \mathfrak{m}_\infty であることをいう。

  • ImI^{\mathfrak{m}}:m0\mathfrak{m}_0 と互いに素な分数イデアル(p∣m0\mathfrak{p} \mid \mathfrak{m}_0 で vp=0v_{\mathfrak{p}} = 0 のもの)の群。
  • Km,1K_{\mathfrak{m},1}:p∣m0\mathfrak{p} \mid \mathfrak{m}_0 で vp(x−1)≥mpv_{\mathfrak{p}}(x - 1) \ge m_{\mathfrak{p}}、v∈m∞v \in \mathfrak{m}_\infty で ρv(x)>0\rho_v(x) \gt 0 を満たす x∈K×x \in K^{\times} の群。この条件を x≡1 mod ×mx \equiv 1 \bmod^{\times}\mathfrak{m} と書く。
  • Pm:={xOK∣x∈Km,1}⊆ImP_{\mathfrak{m}} := \{x\mathcal{O}_K \mid x \in K_{\mathfrak{m},1}\} \subseteq I^{\mathfrak{m}}(射線)。
  • Clm(K):=Im/Pm\mathrm{Cl}_{\mathfrak{m}}(K) := I^{\mathfrak{m}}/P_{\mathfrak{m}}(m\mathfrak{m} を法とする射線類群)。
  • Pm⊆H⊆ImP_{\mathfrak{m}} \subseteq H \subseteq I^{\mathfrak{m}} を満たす部分群 HH を、m\mathfrak{m} を法とする合同部分群という。

イデールの側では、Um,vU_{\mathfrak{m},v} を、v=p∣m0v = \mathfrak{p} \mid \mathfrak{m}_0 で Uv(mp)=1+πvmpOvU_v^{(m_{\mathfrak{p}})} = 1 + \pi_v^{m_{\mathfrak{p}}}\mathcal{O}_v、m0\mathfrak{m}_0 を割らない有限素点で Ov×\mathcal{O}_v^{\times}、v∈m∞v \in \mathfrak{m}_\infty で R>0\mathbb{R}_{\gt 0}、それ以外の無限素点で Kv×K_v^{\times} と定め、

Um:=∏vUm,v⊆IK,U‾m:=K×Um/K×⊆CKU_{\mathfrak{m}} := \prod_v U_{\mathfrak{m},v} \subseteq \mathbb{I}_K, \qquad \overline{U}_{\mathfrak{m}} := K^{\times}U_{\mathfrak{m}}/K^{\times} \subseteq C_K

とおく。

UmU_{\mathfrak{m}} は IK\mathbb{I}_K の開部分群で、m=1\mathfrak{m} = 1(m0=OK\mathfrak{m}_0 = \mathcal{O}_K、m∞=∅\mathfrak{m}_\infty = \emptyset)のとき U1=IK,S∞U_1 = \mathbb{I}_{K,S_\infty}、Cl1=Cl(K)\mathrm{Cl}_1 = \mathrm{Cl}(K) です。K=QK = \mathbb{Q}、m=(m)∞\mathfrak{m} = (m)\infty のとき、Km,1K_{\mathfrak{m},1} は「分子と分母が mm と互いに素で mm を法として等しい正の有理数」の群で、合同式 a≡1 mod ma \equiv 1 \bmod m の一般化になっています。

定理 7.2(射線類群のイデールによる表示と有限性)✓

m\mathfrak{m} を KK のモジュラスとする。

  1. IK(m):={a∈IK∣v∣m で av∈Um,v}\mathbb{I}_K^{(\mathfrak{m})} := \{a \in \mathbb{I}_K \mid v \mid \mathfrak{m} \text{ で } a_v \in U_{\mathfrak{m},v}\} とおくと、IK=K×⋅IK(m)\mathbb{I}_K = K^{\times}\cdot\mathbb{I}_K^{(\mathfrak{m})} かつ K×∩IK(m)=Km,1K^{\times} \cap \mathbb{I}_K^{(\mathfrak{m})} = K_{\mathfrak{m},1} である。
  2. ψ:IK(m)→Im\psi : \mathbb{I}_K^{(\mathfrak{m})} \to I^{\mathfrak{m}}、a↦∏p∤m0pvp(ap)a \mapsto \prod_{\mathfrak{p} \nmid \mathfrak{m}_0}\mathfrak{p}^{v_{\mathfrak{p}}(a_{\mathfrak{p}})} は全射準同型で核は UmU_{\mathfrak{m}} であり、同型
CK/U‾m=IK/(K×Um)≅Clm(K)C_K/\overline{U}_{\mathfrak{m}} = \mathbb{I}_K/(K^{\times}U_{\mathfrak{m}}) \cong \mathrm{Cl}_{\mathfrak{m}}(K)

を誘導する。 3. Km:={x∈K×∣p∣m0 で vp(x)=0}K_{\mathfrak{m}} := \{x \in K^{\times} \mid \mathfrak{p} \mid \mathfrak{m}_0 \text{ で } v_{\mathfrak{p}}(x) = 0\}、Om,1×:=OK×∩Km,1\mathcal{O}_{\mathfrak{m},1}^{\times} := \mathcal{O}_K^{\times} \cap K_{\mathfrak{m},1} とおくと、列

1→OK×/Om,1×→Km/Km,1→Clm(K)→Cl(K)→11 \to \mathcal{O}_K^{\times}/\mathcal{O}_{\mathfrak{m},1}^{\times} \to K_{\mathfrak{m}}/K_{\mathfrak{m},1} \to \mathrm{Cl}_{\mathfrak{m}}(K) \to \mathrm{Cl}(K) \to 1

は完全で、Km/Km,1≅(OK/m0)××{±1}∣m∞∣K_{\mathfrak{m}}/K_{\mathfrak{m},1} \cong (\mathcal{O}_K/\mathfrak{m}_0)^{\times} \times \{\pm 1\}^{|\mathfrak{m}_\infty|} である。したがって Clm(K)\mathrm{Cl}_{\mathfrak{m}}(K) は有限群で、位数は

hm=hK⋅∣(OK/m0)×∣⋅2∣m∞∣[OK×:Om,1×].h_{\mathfrak{m}} = h_K\cdot\frac{|(\mathcal{O}_K/\mathfrak{m}_0)^{\times}|\cdot 2^{|\mathfrak{m}_\infty|}}{[\mathcal{O}_K^{\times} : \mathcal{O}_{\mathfrak{m},1}^{\times}]} .
証明(定理 7.2)

1. a∈IKa \in \mathbb{I}_K を取ります。v∣mv \mid \mathfrak{m} となる有限個の素点 vv について、Um,vU_{\mathfrak{m},v} は Kv×K_v^{\times} の開部分群なので、av−1Um,va_v^{-1}U_{\mathfrak{m},v} は av−1a_v^{-1} の KvK_v での開近傍です。弱近似定理(定理 3.2[付値と完備化])により、v∣mv \mid \mathfrak{m} のすべてで x∈av−1Um,vx \in a_v^{-1}U_{\mathfrak{m},v} となる x∈Kx \in K があります(0∉av−1Um,v0 \notin a_v^{-1}U_{\mathfrak{m},v} なので x≠0x \ne 0)。このとき xa∈IK(m)xa \in \mathbb{I}_K^{(\mathfrak{m})} です。後半は、x∈Uv(mp)x \in U_v^{(m_{\mathfrak{p}})} が vp(x−1)≥mpv_{\mathfrak{p}}(x - 1) \ge m_{\mathfrak{p}} を、x∈R>0x \in \mathbb{R}_{\gt 0} が ρv(x)>0\rho_v(x) \gt 0 を意味することから、定義の言い換えです。

2. ψ\psi が全射準同型であることは 定理 6.1 と同じです(m0\mathfrak{m}_0 を割らない p\mathfrak{p} の成分に πp\pi_{\mathfrak{p}} の冪、ほかの成分に 11 を置く)。a∈IK(m)a \in \mathbb{I}_K^{(\mathfrak{m})} が核に入るのは、m0\mathfrak{m}_0 を割らないすべての p\mathfrak{p} で ap∈Op×a_{\mathfrak{p}} \in \mathcal{O}_{\mathfrak{p}}^{\times} となるとき、すなわち a∈Uma \in U_{\mathfrak{m}} のときです。x∈Km,1x \in K_{\mathfrak{m},1} については p∣m0\mathfrak{p} \mid \mathfrak{m}_0 で vp(x)=0v_{\mathfrak{p}}(x) = 0 なので ψ(x)=xOK\psi(x) = x\mathcal{O}_K で、ψ(Km,1)=Pm\psi(K_{\mathfrak{m},1}) = P_{\mathfrak{m}} です。

1 により、包含 IK(m)→IK\mathbb{I}_K^{(\mathfrak{m})} \to \mathbb{I}_K は全射 IK(m)→IK/(K×Um)\mathbb{I}_K^{(\mathfrak{m})} \to \mathbb{I}_K/(K^{\times}U_{\mathfrak{m}}) を誘導します。その核は IK(m)∩K×Um\mathbb{I}_K^{(\mathfrak{m})} \cap K^{\times}U_{\mathfrak{m}} です。xuxu(x∈K×x \in K^{\times}、u∈Umu \in U_{\mathfrak{m}})が IK(m)\mathbb{I}_K^{(\mathfrak{m})} に入れば、Um⊆IK(m)U_{\mathfrak{m}} \subseteq \mathbb{I}_K^{(\mathfrak{m})} なので x∈K×∩IK(m)=Km,1x \in K^{\times} \cap \mathbb{I}_K^{(\mathfrak{m})} = K_{\mathfrak{m},1} です。よって核は Km,1UmK_{\mathfrak{m},1}U_{\mathfrak{m}} で、

IK/(K×Um)≅IK(m)/(Km,1Um)≅Im/ψ(Km,1)=Im/Pm\mathbb{I}_K/(K^{\times}U_{\mathfrak{m}}) \cong \mathbb{I}_K^{(\mathfrak{m})}/(K_{\mathfrak{m},1}U_{\mathfrak{m}}) \cong I^{\mathfrak{m}}/\psi(K_{\mathfrak{m},1}) = I^{\mathfrak{m}}/P_{\mathfrak{m}}

です(2 つ目の同型は、全射 ψ\psi の核が UmU_{\mathfrak{m}} であることによる)。

3. 写像は順に、包含が誘導するもの、x↦xOKx \mapsto x\mathcal{O}_K の類、Im⊆Div(K)I^{\mathfrak{m}} \subseteq \mathrm{Div}(K) が誘導するものです。完全性を左から確かめます。OK×→Km/Km,1\mathcal{O}_K^{\times} \to K_{\mathfrak{m}}/K_{\mathfrak{m},1} の核は OK×∩Km,1=Om,1×\mathcal{O}_K^{\times} \cap K_{\mathfrak{m},1} = \mathcal{O}_{\mathfrak{m},1}^{\times} です。x∈Kmx \in K_{\mathfrak{m}} の像が Clm\mathrm{Cl}_{\mathfrak{m}} で自明ならば xOK=yOKx\mathcal{O}_K = y\mathcal{O}_K(y∈Km,1y \in K_{\mathfrak{m},1})で、x=uyx = uy(u∈OK×u \in \mathcal{O}_K^{\times})なので、xx の類は OK×\mathcal{O}_K^{\times} の像に入ります。逆に単数 uu について uOK=OK∈Pmu\mathcal{O}_K = \mathcal{O}_K \in P_{\mathfrak{m}} です。a∈Im\mathfrak{a} \in I^{\mathfrak{m}} の類が Cl(K)\mathrm{Cl}(K) で自明ならば a=xOK\mathfrak{a} = x\mathcal{O}_K で、a\mathfrak{a} が m0\mathfrak{m}_0 と素なので x∈Kmx \in K_{\mathfrak{m}} です。最後に Clm→Cl\mathrm{Cl}_{\mathfrak{m}} \to \mathrm{Cl} の全射性は、1 と 2 から従います。任意の分数イデアル a=ι(a)\mathfrak{a} = \iota(a) について、xa∈IK(m)xa \in \mathbb{I}_K^{(\mathfrak{m})} となる x∈K×x \in K^{\times} を取ると、xa=ι(xa)=ψ(xa)∈Imx\mathfrak{a} = \iota(xa) = \psi(xa) \in I^{\mathfrak{m}} です。

Km/Km,1K_{\mathfrak{m}}/K_{\mathfrak{m},1} を求めます。準同型

Km→∏p∣m0Op×/Up(mp)×∏v∈m∞R×/R>0K_{\mathfrak{m}} \to \prod_{\mathfrak{p} \mid \mathfrak{m}_0}\mathcal{O}_{\mathfrak{p}}^{\times}/U_{\mathfrak{p}}^{(m_{\mathfrak{p}})} \times \prod_{v \in \mathfrak{m}_\infty}\mathbb{R}^{\times}/\mathbb{R}_{\gt 0}

の核は定義により Km,1K_{\mathfrak{m},1} で、弱近似定理により全射です(各因子の各剰余類は開集合)。Op×/Up(m)≅(Op/πmOp)×≅(OK/pm)×\mathcal{O}_{\mathfrak{p}}^{\times}/U_{\mathfrak{p}}^{(m)} \cong (\mathcal{O}_{\mathfrak{p}}/\pi^m\mathcal{O}_{\mathfrak{p}})^{\times} \cong (\mathcal{O}_K/\mathfrak{p}^m)^{\times}(命題 4.3[付値と完備化])で、中国剰余定理(補題 5.2[代数体の整数環と Dedekind 整域])により積は (OK/m0)×(\mathcal{O}_K/\mathfrak{m}_0)^{\times} に同型です。R×/R>0≅{±1}\mathbb{R}^{\times}/\mathbb{R}_{\gt 0} \cong \{\pm 1\} です。完全列の各項は有限(Cl(K)\mathrm{Cl}(K) は 定理 6.3)なので、位数の式は完全列の交代積から得られます。

C_K = I_K / K×C_K / U_m′ ≅ Cl_m′C_K / U_m ≅ Cl_mCl(K)m | m′m = 1核はそれぞれ U_m′ ⊂ U_m ⊂ U_1 = I_(K,S∞) の像(C_K の開部分群)
イデール類群 C_K の商として並ぶ類群。開部分群が小さいほど、商(射線類群)は大きくなる。

定理 7.3(CKC_K の開部分群と合同部分群)✓

CKC_K の部分群 NN について、次は同値である。

  1. NN は開部分群である。
  2. あるモジュラス m\mathfrak{m} について N⊇U‾mN \supseteq \overline{U}_{\mathfrak{m}} である。

このとき NN は指数有限で、閉でもある。U‾m\overline{U}_{\mathfrak{m}} を含む部分群 NN は、定理 7.2 の同型 CK/U‾m≅ClmC_K/\overline{U}_{\mathfrak{m}} \cong \mathrm{Cl}_{\mathfrak{m}} によって、m\mathfrak{m} を法とする合同部分群 HH(Pm⊆H⊆ImP_{\mathfrak{m}} \subseteq H \subseteq I^{\mathfrak{m}})と 1 対 1 に対応し、CK/N≅Im/HC_K/N \cong I^{\mathfrak{m}}/H である。

証明(定理 7.3)

2 ⇒ 1. UmU_{\mathfrak{m}} は IK\mathbb{I}_K の開集合で、射影 IK→CK\mathbb{I}_K \to C_K は開写像なので、U‾m\overline{U}_{\mathfrak{m}} は開集合です。NN は U‾m\overline{U}_{\mathfrak{m}} の剰余類の和集合なので開集合です。

1 ⇒ 2. NN の IK\mathbb{I}_K での逆像 N~\widetilde{N} は K×K^{\times} を含む開部分群なので、11 の開基近傍 ∏v∈SOv×∏v∉SOv×\prod_{v \in S}O_v \times \prod_{v \notin S}\mathcal{O}_v^{\times}(S⊇S∞S \supseteq S_\infty は有限、OvO_v は Kv×K_v^{\times} での 11 の開近傍)を含みます。N~\widetilde{N} は部分群なので、各 v∈Sv \in S について、vv 成分が OvO_v の元でほかの成分が 11 のイデールが生成する部分群も含みます。

  • v∈Sv \in S が有限素点のとき。Uv(m)U_v^{(m)} は 11 の基本近傍系なので、ある mv≥1m_v \ge 1 で Uv(mv)⊆OvU_v^{(m_v)} \subseteq O_v です。
  • vv が実素点のとき。Ov⊇(1−δ,1+δ)O_v \supseteq (1 - \delta, 1 + \delta) となる δ>0\delta \gt 0 があります。t>0t \gt 0 に対し kk を十分大きく取れば t1/k∈(1−δ,1+δ)t^{1/k} \in (1 - \delta, 1 + \delta) で、t=(t1/k)kt = (t^{1/k})^k です。よって OvO_v は R>0\mathbb{R}_{\gt 0} を生成します。
  • vv が複素素点のとき。z=ρeiθ∈C×z = \rho e^{i\theta} \in \mathbb{C}^{\times} に対し ρ1/keiθ/k→1\rho^{1/k}e^{i\theta/k} \to 1(k→∞k \to \infty)なので、OvO_v は C×\mathbb{C}^{\times} を生成します。

したがって m0:=∏v∈S, v∤∞pvmv\mathfrak{m}_0 := \prod_{v \in S,\ v \nmid \infty}\mathfrak{p}_v^{m_v}、m∞:=\mathfrak{m}_\infty := 実素点の全体とおくと、UmU_{\mathfrak{m}} の元は「有限個の成分が上の生成される部分群に入り、残りの成分が Ov×\mathcal{O}_v^{\times} に入る」ので、Um⊆N~U_{\mathfrak{m}} \subseteq \widetilde{N}、すなわち U‾m⊆N\overline{U}_{\mathfrak{m}} \subseteq N です。

残りの主張。 CK/U‾m≅ClmC_K/\overline{U}_{\mathfrak{m}} \cong \mathrm{Cl}_{\mathfrak{m}} は有限群(定理 7.2)なので NN の指数は有限で、NN の補集合は有限個の剰余類(開集合)の和なので NN は閉です。U‾m\overline{U}_{\mathfrak{m}} を含む部分群は商群 CK/U‾m≅Im/PmC_K/\overline{U}_{\mathfrak{m}} \cong I^{\mathfrak{m}}/P_{\mathfrak{m}} の部分群と 1 対 1 に対応し、後者は PmP_{\mathfrak{m}} を含む ImI^{\mathfrak{m}} の部分群と 1 対 1 に対応します。商の同型は第 3 同型定理です。

命題 7.4(Q のイデール類群)✓

Z^×:=∏pZp×\widehat{\mathbb{Z}}^{\times} := \prod_p\mathbb{Z}_p^{\times}(積位相。コンパクト群)とおく。

  1. 掛け算は位相群の同型 Q××R>0×Z^×→IQ\mathbb{Q}^{\times} \times \mathbb{R}_{\gt 0} \times \widehat{\mathbb{Z}}^{\times} \to \mathbb{I}_{\mathbb{Q}} を与える(Q×\mathbb{Q}^{\times} は離散位相)。したがって CQ≅R>0×Z^×C_{\mathbb{Q}} \cong \mathbb{R}_{\gt 0} \times \widehat{\mathbb{Z}}^{\times}、CQ1≅Z^×C_{\mathbb{Q}}^1 \cong \widehat{\mathbb{Z}}^{\times} である。
  2. m≥1m \ge 1 とし、m=(m)∞\mathfrak{m} = (m)\infty とする。mm と素な正の整数 aa に対し、aZa\mathbb{Z} の類を a mod ma \bmod m に写す写像は同型 Cl(m)∞(Q)≅(Z/mZ)×\mathrm{Cl}_{(m)\infty}(\mathbb{Q}) \cong (\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times} を与える。m=(m)\mathfrak{m} = (m) のときは Cl(m)(Q)≅(Z/mZ)×/{±1}\mathrm{Cl}_{(m)}(\mathbb{Q}) \cong (\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times}/\{\pm 1\} である。
証明(命題 7.4)

1. a∈IQa \in \mathbb{I}_{\mathbb{Q}} に対し r:=sgn(a∞)∏ppvp(ap)∈Q×r := \mathrm{sgn}(a_\infty)\prod_pp^{v_p(a_p)} \in \mathbb{Q}^{\times} とおくと、a/ra/r の無限成分は正で、各 pp 成分は vp(ap)−vp(r)=0v_p(a_p) - v_p(r) = 0 により Zp×\mathbb{Z}_p^{\times} に入ります。よって掛け算は全射です。r∈Q×∩(R>0×Z^×)r \in \mathbb{Q}^{\times} \cap (\mathbb{R}_{\gt 0} \times \widehat{\mathbb{Z}}^{\times}) ならば、rr はすべての素数で付値 00 の正の有理数なので r=1r = 1 です。よって単射です。R>0×Z^×\mathbb{R}_{\gt 0} \times \widehat{\mathbb{Z}}^{\times} は IQ\mathbb{I}_{\mathbb{Q}} の開部分群で、相対位相は積位相です(命題 3.2 の 2)。写像は各 {r}×R>0×Z^×\{r\} \times \mathbb{R}_{\gt 0} \times \widehat{\mathbb{Z}}^{\times} の上で、開部分群の平行移動への同相なので、全体として同相です。Q×\mathbb{Q}^{\times} で割ると CQ≅R>0×Z^×C_{\mathbb{Q}} \cong \mathbb{R}_{\gt 0} \times \widehat{\mathbb{Z}}^{\times} で、この同型のもとで ∥⋅∥\|\cdot\| は第 1 成分への射影なので CQ1≅Z^×C_{\mathbb{Q}}^1 \cong \widehat{\mathbb{Z}}^{\times} です。

2. Q\mathbb{Q} の分数イデアルは正の生成元をただ 1 つもつので、I(m)I^{(m)} は「分子と分母が mm と素な正の有理数」の群 Q>0(m)\mathbb{Q}^{(m)}_{\gt 0} と同一視できます。準同型 Q>0(m)→(Z/mZ)×\mathbb{Q}^{(m)}_{\gt 0} \to (\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times}、a/b↦ab−1 mod ma/b \mapsto ab^{-1} \bmod m は全射で、核は a≡b mod ma \equiv b \bmod m となる a/ba/b の全体です。p=p∣m\mathfrak{p} = p \mid m で vp(a/b−1)=vp(a−b)≥vp(m)v_p(a/b - 1) = v_p(a - b) \ge v_p(m) となることと a≡b mod ma \equiv b \bmod m は同値なので、核は Q(m)∞,1\mathbb{Q}_{(m)\infty,1}、すなわち P(m)∞P_{(m)\infty} に対応します。m=(m)\mathfrak{m} = (m) のときは符号の条件が無く、P(m)P_{(m)} は a/b≡±1a/b \equiv \pm 1 となる正の有理数(生成元を −a/b-a/b に取り替えられる)に対応するので、商は (Z/mZ)×/{±1}(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times}/\{\pm 1\} です。

例 7.5(𝔪 = (5)∞ の射線類群)

K=QK = \mathbb{Q}、m=(5)∞\mathfrak{m} = (5)\infty では Clm≅(Z/5Z)×\mathrm{Cl}_{\mathfrak{m}} \cong (\mathbb{Z}/5\mathbb{Z})^{\times} は位数 44 の巡回群で、素数 p≠5p \ne 5 のイデアル (p)(p) の類は p mod 5p \bmod 5 です。定理 7.2 の公式でも、h=1h = 1、∣(Z/5)×∣=4|(\mathbb{Z}/5)^{\times}| = 4、2∣m∞∣=22^{|\mathfrak{m}_\infty|} = 2、[{±1}:{1}]=2[\{\pm 1\} : \{1\}] = 2 から hm=1⋅4⋅2/2=4h_{\mathfrak{m}} = 1\cdot 4\cdot 2/2 = 4 です。m=(5)\mathfrak{m} = (5) とすると、−1≡4 mod 5-1 \equiv 4 \bmod 5 も 11 と同じ類になり、hm=4/2=2h_{\mathfrak{m}} = 4/2 = 2 です。無限素点をモジュラスに入れるかどうかで、生成元の符号を区別するかどうかが変わります。類体論では Cl(5)∞\mathrm{Cl}_{(5)\infty} が円分体 Q(ζ5)\mathbb{Q}(\zeta_5) に、Cl(5)\mathrm{Cl}_{(5)} がその最大実部分体 Q(5)\mathbb{Q}(\sqrt5) に対応します。

定義 8.1(イデールのノルム写像)↗

L/KL/K を代数体の有限次拡大とする。b=(bw)w∈ILb = (b_w)_w \in \mathbb{I}_L に対し

NL/K(b):=(∏w∣vNLw/Kv(bw))v∈IKN_{L/K}(b) := \Bigl(\prod_{w \mid v}N_{L_w/K_v}(b_w)\Bigr)_v \in \mathbb{I}_K

と定める。

命題 8.2(ノルム写像の性質)✓

  1. NL/K:IL→IKN_{L/K} : \mathbb{I}_L \to \mathbb{I}_K は連続準同型で、L×L^{\times} の上では体のノルムに一致し、∥NL/K(b)∥K=∥b∥L\|N_{L/K}(b)\|_K = \|b\|_L である。したがって連続準同型 NL/K:CL→CKN_{L/K} : C_L \to C_K を誘導する。
  2. NL/K(IL)N_{L/K}(\mathbb{I}_L) はあるモジュラス m\mathfrak{m} について UmU_{\mathfrak{m}} を含む。したがって NL/K(CL)N_{L/K}(C_L) は CKC_K の指数有限の開部分群で、閉集合である。
  3. b∈ILb \in \mathbb{I}_L について ιK(NL/K(b))=NL/K(ιL(b))\iota_K(N_{L/K}(b)) = N_{L/K}(\iota_L(b)) である(右辺はイデアルの相対ノルム)。
証明(命題 8.2)

1. ww が有限素点で bw∈Ow×b_w \in \mathcal{O}_w^{\times} ならば、NLw/Kv(bw)N_{L_w/K_v}(b_w) とその逆元 NLw/Kv(bw−1)N_{L_w/K_v}(b_w^{-1}) はともに Ov\mathcal{O}_v 上整で KvK_v の元なので Ov\mathcal{O}_v に入り、NLw/Kv(bw)∈Ov×N_{L_w/K_v}(b_w) \in \mathcal{O}_v^{\times} です。よって NL/K(b)N_{L/K}(b) はイデールです。局所ノルムは乗法的で連続(基底に関する行列式)なので、NL/KN_{L/K} は準同型で、開基の形から連続です。x∈L×x \in L^{\times} については NL/K(x)=∏w∣vNLw/Kv(x)N_{L/K}(x) = \prod_{w \mid v}N_{L_w/K_v}(x)(定理 3.1[局所体])なので、主イデールのノルムは主イデールです。

∣NLw/Kv(y)∣v=∣y∣w|N_{L_w/K_v}(y)|_v = |y|_w(y∈Lw×y \in L_w^{\times})を示せば ∥NL/K(b)∥K=∥b∥L\|N_{L/K}(b)\|_K = \|b\|_L が従います。ww が有限のとき、e,fe, f を Lw/KvL_w/K_v の分岐指数と剰余次数、dw=[Lw:Kv]=efd_w = [L_w : K_v] = ef(定理 2.6[局所体])とします。∣⋅∣v|\cdot|_v の LwL_w への延長は ∣y∣=∣NLw/Kv(y)∣v1/dw|y| = |N_{L_w/K_v}(y)|_v^{1/d_w} で与えられ(定理 2.4[局所体])、一方 w(πv)=ew(\pi_v) = e なのでこの延長は qv−w(y)/eq_v^{-w(y)/e} です。よって ∣NLw/Kv(y)∣v=qv−dww(y)/e=qv−fw(y)=qw−w(y)=∣y∣w|N_{L_w/K_v}(y)|_v = q_v^{-d_ww(y)/e} = q_v^{-fw(y)} = q_w^{-w(y)} = |y|_w です。ww が無限のとき、Lw=KvL_w = K_v なら自明で、Lw=CL_w = \mathbb{C}、Kv=RK_v = \mathbb{R} なら ∣N(z)∣v=∣zzˉ∣=∣z∣2=∣z∣w|N(z)|_v = |z\bar z| = |z|^2 = |z|_w です。

2. KK の有限素点 vv で、LL で分岐しないものを考えます。分岐する素点は有限個です(p\mathfrak{p} が分岐すれば、その下の素数 pp は L/QL/\mathbb{Q} で分岐して dLd_L を割る。定理 6.1[代数体の整数環と Dedekind 整域])。w∣vw \mid v を 1 つ取ると Lw/KvL_w/K_v は不分岐拡大なので、Ov×=NLw/Kv(Ow×)\mathcal{O}_v^{\times} = N_{L_w/K_v}(\mathcal{O}_w^{\times}) です(定理 4.4[局所体])。分岐する有限素点 vv については、w∣vw \mid v を 1 つ選び dw=[Lw:Kv]d_w = [L_w : K_v] とおくと、x∈Kv×x \in K_v^{\times} に対し xdw=NLw/Kv(x)x^{d_w} = N_{L_w/K_v}(x) です(ww 成分が xx、ほかの w′∣vw' \mid v の成分が 11 のイデールのノルムの vv 成分が xdwx^{d_w})。dwd_w 乗の全体は Uv(m)U_v^{(m)}(mm は十分大)を含みます。実際 u∈Uv(m)u \in U_v^{(m)}、∣u−1∣v<∣dw∣v2|u - 1|_v \lt |d_w|_v^2 のとき、g(X)=Xdw−ug(X) = X^{d_w} - u は ∣g(1)∣v<∣g′(1)∣v2|g(1)|_v \lt |g'(1)|_v^2 を満たすので、Hensel の補題(定理 6.1[付値と完備化])により KvK_v に根をもちます。実素点 vv では、正の実数 tt は w∣vw \mid v が実なら N(t)=tN(t) = t、複素なら N(t)=tN(\sqrt t) = t として局所ノルムです。複素素点では Lw=KvL_w = K_v です。以上から、m0:=∏v 分岐pvmv\mathfrak{m}_0 := \prod_{v\ \text{分岐}}\mathfrak{p}_v^{m_v}、m∞:=\mathfrak{m}_\infty := 実素点の全体とおくと、UmU_{\mathfrak{m}} の各元は成分ごとに局所ノルムで、有限個を除く成分では単数のノルムなので、イデールのノルムです。

よって NL/K(CL)⊇U‾mN_{L/K}(C_L) \supseteq \overline{U}_{\mathfrak{m}} で、定理 7.3 により開、指数有限、閉です。

3. 両辺とも準同型で、IL,S∞\mathbb{I}_{L,S_\infty} の上ではともに自明(1 の最初の議論)です。IL\mathbb{I}_L は IL,S∞\mathbb{I}_{L,S_\infty} と「1 つの有限素点 ww の成分が πw\pi_w でほかが 11」のイデールで生成されるので、後者で確かめます。w∣vw \mid v、w=Pw = \mathfrak{P}、v=pv = \mathfrak{p} とすると、左辺は pv(NLw/Kv(πw))\mathfrak{p}^{v(N_{L_w/K_v}(\pi_w))} です。1 の計算 ∣N(y)∣v=qv−fw(y)|N(y)|_v = q_v^{-fw(y)} から v(NLw/Kv(πw))=fv(N_{L_w/K_v}(\pi_w)) = f です。右辺は NL/K(P)=pfN_{L/K}(\mathfrak{P}) = \mathfrak{p}^{f}(定義 7.1[分解群・惰性群・Frobenius 元])で、一致します。

命題 8.3(CKC_K の連結成分)✓

DKD_K を CKC_K の単位元の連結成分とし、I∞+:=∏v 実R>0×∏v 複素C××∏v∤∞{1}⊆IK\mathbb{I}_\infty^{+} := \prod_{v\ \text{実}}\mathbb{R}_{\gt 0} \times \prod_{v\ \text{複素}}\mathbb{C}^{\times} \times \prod_{v \nmid \infty}\{1\} \subseteq \mathbb{I}_K とおく。

  1. DKD_K は CKC_K のすべての開部分群の共通部分に等しく、I∞+\mathbb{I}_\infty^{+} の CKC_K での像の閉包に等しい。
  2. CK/DKC_K/D_K はコンパクト Hausdorff で、単位元の連結成分が自明な位相群である。
証明(命題 8.3)

E:=⋂mU‾mE := \bigcap_{\mathfrak{m}}\overline{U}_{\mathfrak{m}} とおきます。定理 7.3 により EE はすべての開部分群の共通部分です。FF を I∞+\mathbb{I}_\infty^{+} の像の閉包とします。F⊆DK⊆E⊆FF \subseteq D_K \subseteq E \subseteq F を示します。

F⊆DKF \subseteq D_K:I∞+\mathbb{I}_\infty^{+} は連結空間 R>0\mathbb{R}_{\gt 0}、C×\mathbb{C}^{\times} の有限直積と同相なので連結で、その連続像も、その閉包も連結です(連結集合の閉包は連結)。FF は単位元を含む連結集合なので DKD_K に含まれます。

DK⊆ED_K \subseteq E:開部分群 NN は閉でもあります(定理 7.3)。DK∩ND_K \cap N は DKD_K の空でない開かつ閉な部分集合なので、連結性により DK∩N=DKD_K \cap N = D_K です。

E⊆FE \subseteq F:x∈Ex \in E と、xx の近傍を取ります。近傍は、11 の開基近傍 O=O∞×∏v∈S, v∤∞Uv(mv)×∏v∉SOv×O = O_\infty \times \prod_{v \in S,\ v \nmid \infty}U_v^{(m_v)} \times \prod_{v \notin S}\mathcal{O}_v^{\times}(O∞O_\infty は無限成分の 11 の開近傍)の像 O‾\overline{O} による xO‾x\overline{O} を含みます。m0=∏v∈Spvmv\mathfrak{m}_0 = \prod_{v \in S}\mathfrak{p}_v^{m_v}、m∞=\mathfrak{m}_\infty = 実素点の全体とすると、Um=I∞+⋅UmfinU_{\mathfrak{m}} = \mathbb{I}_\infty^{+}\cdot U_{\mathfrak{m}}^{\mathrm{fin}}(UmfinU_{\mathfrak{m}}^{\mathrm{fin}} は無限成分が 11 の元の全体)で、Umfin⊆OU_{\mathfrak{m}}^{\mathrm{fin}} \subseteq O です。x∈U‾mx \in \overline{U}_{\mathfrak{m}} なので xx は tutu(t∈I∞+t \in \mathbb{I}_\infty^{+}、u∈Umfinu \in U_{\mathfrak{m}}^{\mathrm{fin}})の類で、tt の類は x⋅u−1‾∈xO‾x\cdot\overline{u^{-1}} \in x\overline{O} に入ります。よって xx の任意の近傍が I∞+\mathbb{I}_\infty^{+} の像と交わり、x∈Fx \in F です。

2. DK=FD_K = F は閉部分群なので CK/DKC_K/D_K は Hausdorff です。補題 5.7 の sK(t)s_K(t) は I∞+\mathbb{I}_\infty^{+} に入るので、CK=CK1⋅sK(R>0)C_K = C_K^1\cdot s_K(\mathbb{R}_{\gt 0}) から CK/DKC_K/D_K はコンパクト集合 CK1C_K^1(定理 5.6)の連続像で、コンパクトです。CK/DKC_K/D_K の開部分群は、DKD_K を含む CKC_K の開部分群の像で、その共通部分は E/DK={1}E/D_K = \{1\} です。CK/DKC_K/D_K の単位元の連結成分は、上と同じ理由ですべての開部分群に含まれるので、自明です。

注意 8.4(CKC_K / DKD_K の正体)

K=QK = \mathbb{Q} では 命題 7.4 により DQ=R>0D_{\mathbb{Q}} = \mathbb{R}_{\gt 0}、CQ/DQ≅Z^×=lim←⁡m(Z/mZ)×C_{\mathbb{Q}}/D_{\mathbb{Q}} \cong \widehat{\mathbb{Z}}^{\times} = \varprojlim_m(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^{\times} です。一般にも CK/DK≅lim←⁡mClm(K)C_K/D_K \cong \varprojlim_{\mathfrak{m}}\mathrm{Cl}_{\mathfrak{m}}(K) で、類体論はこれが KK の最大 Abel 拡大の Galois 群に同型であると主張します(第 7 章)。DKD_K 自身の構造(R\mathbb{R}、円周、ソレノイドの直積になる)は、Artin–Tate『Class Field Theory』第 IX 章にあります。本テーマでは使いません。

演習 9.1標準

K=QK = \mathbb{Q}、v0=∞v_0 = \infty の強近似定理(定理 4.8)から、中国剰余定理「互いに異なる素数 p1,…,pkp_1, \ldots, p_k、正の整数 e1,…,eke_1, \ldots, e_k、整数 a1,…,aka_1, \ldots, a_k に対し、x≡ai mod pieix \equiv a_i \bmod p_i^{e_i}(i=1,…,ki = 1, \ldots, k)を満たす整数 xx が存在する」を導け。

解答

アデール yy を、pip_i 成分が aia_i、ほかの成分が 00 として定めます。S={p1,…,pk}S = \{p_1, \ldots, p_k\}、ε:=min⁡ipi−ei+1\varepsilon := \min_ip_i^{-e_i + 1} とおきます。∣⋅∣pi|\cdot|_{p_i} の値は 00 か pip_i の整数冪なので、∣β−ai∣pi<ε≤pi−ei+1|\beta - a_i|_{p_i} \lt \varepsilon \le p_i^{-e_i + 1} ならば ∣β−ai∣pi≤pi−ei|\beta - a_i|_{p_i} \le p_i^{-e_i} です。強近似定理により、∣β−ai∣pi<ε|\beta - a_i|_{p_i} \lt \varepsilon(i=1,…,ki = 1, \ldots, k)かつ SS の外のすべての素数 pp で ∣β∣p≤1|\beta|_p \le 1 となる β∈Q\beta \in \mathbb{Q} があります。pip_i でも ∣β∣pi≤max⁡(∣β−ai∣pi,∣ai∣pi)≤1|\beta|_{p_i} \le \max(|\beta - a_i|_{p_i}, |a_i|_{p_i}) \le 1 なので、β\beta はすべての素数で pp 進整数、すなわち β∈Z\beta \in \mathbb{Z} です。vpi(β−ai)≥eiv_{p_i}(\beta - a_i) \ge e_i は β≡ai mod piei\beta \equiv a_i \bmod p_i^{e_i} を意味します。無限素点 v0=∞v_0 = \infty では何も要求していないので、β\beta の大きさは制御できません。これは中国剰余定理の解が ∏piei\prod p_i^{e_i} を法としてしか決まらないことに対応します。

演習 9.2標準

K=Q(i)K = \mathbb{Q}(i) とする。定理 7.2 の公式を使って、m=(3)\mathfrak{m} = (3) と m=(1+i)3\mathfrak{m} = (1 + i)^3 の射線類群の位数を求めよ。

解答

hK=1h_K = 1、OK×={±1,±i}\mathcal{O}_K^{\times} = \{\pm 1, \pm i\}、複素素点しかないので m∞=∅\mathfrak{m}_\infty = \emptyset です。

m=(3)\mathfrak{m} = (3):33 は Z[i]\mathbb{Z}[i] で素元のまま(3≡3 mod 43 \equiv 3 \bmod 4)で、OK/(3)≅F9\mathcal{O}_K/(3) \cong \mathbb{F}_9、∣(OK/(3))×∣=8|(\mathcal{O}_K/(3))^{\times}| = 8 です。単数 u∈{±1,±i}u \in \{\pm 1, \pm i\} で u≡1 mod 3u \equiv 1 \bmod 3 となるのは u=1u = 1 だけです(−1−1=−2-1 - 1 = -2、±i−1\pm i - 1 のノルムは 22 で、いずれも 33 で割れない)。よって [OK×:Om,1×]=4[\mathcal{O}_K^{\times} : \mathcal{O}_{\mathfrak{m},1}^{\times}] = 4、hm=8/4=2h_{\mathfrak{m}} = 8/4 = 2 です。

m=p3\mathfrak{m} = \mathfrak{p}^3、p=(1+i)\mathfrak{p} = (1 + i):Np=2N\mathfrak{p} = 2 で ∣OK/p3∣=8|\mathcal{O}_K/\mathfrak{p}^3| = 8、単元は p\mathfrak{p} に入らない元なので ∣(OK/p3)×∣=8−4=4|(\mathcal{O}_K/\mathfrak{p}^3)^{\times}| = 8 - 4 = 4 です。−1−1=−2=i(1+i)2-1 - 1 = -2 = i(1 + i)^2 は vp=2<3v_{\mathfrak{p}} = 2 \lt 3、i−1=i(1+i)i - 1 = i(1 + i) は vp=1v_{\mathfrak{p}} = 1、−i−1=−(1+i)-i - 1 = -(1 + i) は vp=1v_{\mathfrak{p}} = 1 なので、u≡1 mod p3u \equiv 1 \bmod \mathfrak{p}^3 となる単数は 11 だけです。[OK×:Om,1×]=4[\mathcal{O}_K^{\times} : \mathcal{O}_{\mathfrak{m},1}^{\times}] = 4、hm=4/4=1h_{\mathfrak{m}} = 4/4 = 1 です。4 つの単数が (OK/p3)×(\mathcal{O}_K/\mathfrak{p}^3)^{\times} の完全代表系になっており、22 と素な Gauss 整数はちょうど 1 つの同伴元が ≡1 mod (1+i)3\equiv 1 \bmod (1 + i)^3 を満たします。これは Gauss 整数の「準素(primary)」な元の正規化です。

演習 9.3難

IK\mathbb{I}_K の位相は、θ:IK→AK×AK\theta : \mathbb{I}_K \to \mathbb{A}_K \times \mathbb{A}_K、x↦(x,x−1)x \mapsto (x, x^{-1}) による相対位相(θ\theta が像への同相になる位相)に一致することを示せ。

解答

θ\theta は単射です。包含 IK→AK\mathbb{I}_K \to \mathbb{A}_K と逆元 IK→IK\mathbb{I}_K \to \mathbb{I}_K は連続(補題 5.2、命題 3.2)なので、θ\theta はイデールの位相から連続です。逆に、イデールの位相での xx の開基近傍 N=∏v∈SOv×∏v∉SOv×N = \prod_{v \in S}O_v \times \prod_{v \notin S}\mathcal{O}_v^{\times}(S⊇S∞S \supseteq S_\infty、Ov⊆Kv×O_v \subseteq K_v^{\times} は開)を取ります。SS を大きくして、SS の外で xv∈Ov×x_v \in \mathcal{O}_v^{\times} としてよいです。AK×AK\mathbb{A}_K \times \mathbb{A}_K の開集合

O:=(∏v∈SOv×∏v∉SOv)×(∏v∈SKv×∏v∉SOv)O := \Bigl(\prod_{v \in S}O_v \times \prod_{v \notin S}\mathcal{O}_v\Bigr) \times \Bigl(\prod_{v \in S}K_v \times \prod_{v \notin S}\mathcal{O}_v\Bigr)

は θ(x)\theta(x) を含みます。θ(y)∈O\theta(y) \in O ならば、v∈Sv \in S で yv∈Ovy_v \in O_v、v∉Sv \notin S で yv∈Ovy_v \in \mathcal{O}_v かつ yv−1∈Ovy_v^{-1} \in \mathcal{O}_v、すなわち yv∈Ov×y_v \in \mathcal{O}_v^{\times} です。よって θ−1(O)=N\theta^{-1}(O) = N で、NN は相対位相でも開です。2 つの位相は一致します。例 5.3 の列 x(n)x^{(n)} では、(x(n))−1(x^{(n)})^{-1} の pnp_n 成分 pn−1p_n^{-1} が Zpn\mathbb{Z}_{p_n} に入らないので、θ(x(n))\theta(x^{(n)}) は θ(1)\theta(1) に収束しません。

  1. J. W. S. Cassels, “Global fields”, in: J. W. S. Cassels, A. Fröhlich (eds.), Algebraic Number Theory, Academic Press, 1967 — 第 II 章 §13–§18(制限直積、アデール、強近似、イデール、CK1C_K^1 のコンパクト性と単数定理・類数の有限性)。本章の 補題 5.5 と 定理 5.6 の証明の筋はこの文献によります。
  2. J. Neukirch, Algebraic Number Theory, Grundlehren der mathematischen Wissenschaften 322, Springer, 1999 — 第 VI 章 §1(イデールとイデール類群、射線類群との関係)。
  3. S. Lang, Algebraic Number Theory, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics 110, Springer, 1994 — 第 VII 章(イデールとアデール)。
  4. E. Artin, J. Tate, Class Field Theory, AMS Chelsea Publishing, 2009 — 第 IX 章(イデール類群の連結成分)。
  5. A. Weil, Basic Number Theory, 3rd ed., Springer, 1974 — 第 IV 章(アデールとイデールの基本定理。Haar 測度を使う証明)。
  6. 加藤和也・黒川信重・斎藤毅『数論 I — Fermat の夢と類体論』岩波書店、2005 — 第 6 章(局所と大域)。

このテーマの 100 本ノック(50 問)

執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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