Riemann–Hurwitz の公式・楕円曲線・標準埋め込み
対象読者: 本テーマ第 1〜5 章(Serre 双対、曲線と Riemann–Roch の定理)と Kähler 微分の基礎を学んだ人。Riemann–Hurwitz の公式や楕円曲線は未習でよい。
前提となる記事:曲線と Riemann–Roch の定理:関数体・因子の次数・種数、Kähler 微分と滑らかさの入口:導分・基本完全列・エタール代数・Jacobi 判定法
0. この記事の要点
Section titled “0. この記事の要点”曲線を別の曲線の上に何重かに重ねて覆うとき、重なり方が乱れる点(分岐点)の数と、曲線の「穴の数」(種数)はどう関係するのか。この記事の前半はこの問いに答えます。後半では、穴が 1 つの曲線(楕円曲線)に足し算が入ること、穴が 2 つ以上の曲線を平面や空間の中にどう置けるか、そして対称性(自己同型)の個数に上限があることを順に調べます。
- 曲線の分離的な有限射 では、微分の引き戻し が単射で、余核(引き戻しで埋まらない残り) の長さ(残りの大きさを数えた整数)が分岐因子 を定めます。標準因子の関係 の次数を取ると Riemann–Hurwitz の公式 です。
- 射があれば種数は下がりません()。ここから Lüroth の定理( の中間体は純超越的)と、 の不分岐被覆が自明であることが出ます。
- 楕円曲線 では が点と次数 の因子類の全単射で、点の集合が群になります。 は平面 3 次曲線への埋め込みを与え、「3 点の和が 」は「同一直線上」と同値です。標数が でなければ の形に書け、同型類は 不変量で分類されます。
- 種数 では は基点( のすべての因子が共通に通る点)をもたず、標準写像が埋め込みであることは が超楕円( への 2 重の覆いをもつ曲線)でないことと同値です。有効な特殊因子は Clifford の定理 を満たします。
- 標数 、 の曲線の自己同型群は有限で、位数は 以下です(Hurwitz)。
前章の Riemann–Roch の定理は 1 本の曲線の上の話でした。この章の前半は、2 本の曲線を結ぶ射 があるとき種数がどう関係するかを調べます。位相的には、 重の分岐被覆の Euler 数は「 倍から分岐点の分だけ減る」ので となるはずです。代数的には、これは標準層 の比較、つまり「 の微分を に引き戻すと、分岐点で余分に零点をもつ」という事実から出ます(標準層は微分形式の層のことです)。標数 では、この比較が意味をもつのは射が分離的な場合だけで、分岐指数が で割り切れると零点の位数が より大きくなります。
後半は種数ごとの曲線の姿です。種数 は だけでした(定理 7.2[曲線と Riemann–Roch の定理])。種数 では、Riemann–Roch が「次数 の因子類にはちょうど 1 つの点が対応する」ことを教え、これが曲線そのものに群構造を与えます。数論の章(定義 2.1[楕円曲線・モジュラー形式と現代数論])で定義として使った短 Weierstrass 形と弦と接線の加法は、ここで証明される定理になります。種数 以上では標準因子が曲線に固有の射影埋め込みを与え、それが失敗するのがちょうど超楕円曲線です。
2. 準備:素元と微分
Section titled “2. 準備:素元と微分”記号は前章のとおりです。 は代数閉体、曲線は 上の非特異な射影的整 次元スキーム、点は閉点、 は点 の離散付値、、 は標準因子です。 の標数を と書きます。
を曲線、 を点、 を での素元とする。
- は を基底とする階数 の自由 加群で、 は を基底とする 次元の ベクトル空間である。そこで に対し で を定める。 なら である。
- 、 とする。 が の中で でない( なら 、 なら )とき で、 が の中で である(、または で )とき である。
証明(補題 2.1)
(1) は の 上の Kähler 微分加群で(定理 5.2[次元・正規性・非特異性と微分の層])、 は非特異なので階数 の自由加群です(定理 7.3[次元・正規性・非特異性と微分の層])。剰余体は なので、 は同型 です(命題 8.1[Kähler 微分と滑らかさの入口])。 の類は を張るので の類は を張り、中山の補題(定理 3.5[加群・完全列・中山の補題])により は を生成します。 の生成元は単元倍なので基底です。局所化との両立(命題 4.2[Kähler 微分と滑らかさの入口] の (2))から です。 なら です。
(2) ( は の単元)と書くと、Leibniz 則から
です。 が の中で でなければ は単元で第 1 項の付値は 、第 2 項は 以上なので和の付値は です。 が の中で なら第 1 項は で、付値は 以上です。
3. 分岐因子と Riemann–Hurwitz の公式
Section titled “3. 分岐因子と Riemann–Hurwitz の公式”を曲線の有限射とする。
- が分離拡大のとき は分離的、 のすべての元のある 冪乗が に入るとき純非分離であるという。
- 点 の分岐指数 (定義 5.1[曲線と Riemann–Roch の定理])が のとき は で分岐するという。( なら常に)のとき分岐は従順、 のとき野性的であるという。
次の命題のねらいは、「 の微分を に引き戻すと、分岐点で余分に零点ができる」ことを、完全列と余核の長さという形で正確にすることです。証明は点ごとに素元を取り、引き戻しが「 倍」という掛け算で書けることを見るだけで、あとは長さを数えます。
を曲線の分離的な有限射とする。
- は完全である。
- 点 、、素元 ()、()について、 で、長さは である( は の略記)。
- この長さは、 での分岐が従順なら 、野性的なら 以上である。とくに の台は分岐点の全体で、有限集合である。
証明(命題 3.2)
第一完全列 は完全です(定理 5.3[次元・正規性・非特異性と微分の層])。点 での茎を見ます。補題 2.1 により は を基底とする自由加群、 は を基底とする自由加群で、写像は です。つまり茎の上で 、 倍です。
を示します。生成点での茎を取ると、体の拡大 の第一基本完全列(定理 5.1[Kähler 微分と滑らかさの入口])
になります。 は分離的なので で(定理 7.1[Kähler 微分と滑らかさの入口])、左の写像は全射です。左辺は 、中央は で張られる 次元空間なので、 の像 は ではありません。
よって各茎で は整域の でない元の乗法で単射、余核は です。これで (1) と (2) の同型が示せました。 とすると で、鎖 の各商は と同型なので長さは です(命題 5.5[Noether 環と Artin 環])。
(3) なので、補題 2.1 の (2) により、 なら 、 なら です。 なら長さは で、 なら長さは正です。 は連接層で生成点での茎が なので、台は真の閉集合、すなわち有限集合です。
定理の流れは次のとおりです。前の命題の完全列から、 が の中で「分岐因子 の分だけ小さい部分層」であることを読み取ります。これは標準因子の言葉で と書け、両辺の次数を比べると公式になります。
証明(定理 3.4)
となる因子 を取ると、 です(補題 5.2[曲線と Riemann–Roch の定理] の (2))。命題 3.2 の完全列に可逆層 をテンソルすると、完全列
が得られます。左の層の像はイデアル層 で、点 での茎は同じ命題の (2) により ( は の での係数)です。これは の茎なので で、、すなわち です。次数を取り、(系 6.5[曲線と Riemann–Roch の定理])と (命題 5.3[曲線と Riemann–Roch の定理])を使うと公式を得ます。最後の主張は 命題 3.2 の (3) です。
例 3.5(Fermat 曲線の種数を分岐から数える)
とし、( の非特異曲線)から への射 を考えます。 の次数は です( で は 次の既約方程式を満たします)。 である の上には の 個の解があり、無限遠 の上にも の 個の点があるので、そこでは不分岐です( で点が 個)。 である 個の点の上には の 1 点しかなく、 です。分岐は従順なので
で、平面曲線の種数の公式と一致します。
証明(系 3.6)
すべての点で なので分岐は従順で です。定理 3.4 により 、 です。 なので で、次数 の射は同型です(定理 4.2[曲線と Riemann–Roch の定理])。
複素数体の上では、これは Riemann 球面が単連結であることの代数的な表現です。標数 の Frobenius 射 、 は同型でない次数 の射ですが、すべての点で なので(例 4.3)、「どの点でも分岐しない」という仮定を満たさず、反例にはなりません。一般に、分離的でない有限射は次節の Frobenius 射 ()を経由し(補題 4.1 の (3))、分岐指数は合成で掛け算になるので、すべての点で が で割り切れます。つまり、どの点でも分岐しない有限射は自動的に分離的です。一方 を に替えると、標数 では が の不分岐な 重被覆を与え(無限遠で野性的に分岐します)、主張は成り立ちません。
4. 非分離な射と Lüroth の定理
Section titled “4. 非分離な射と Lüroth の定理”この節の前半では とします。体 について は部分体で、 は体の同型 です。
次の補題は、標数 で分離的でない射を「 乗する射」(Frobenius 射)と分離的な射に分けるための準備です。関数体 とその 乗の部分体 の間の次数が であることを示し、そこから中間体がすべて の形になることを導きます。
を標数 の代数閉体 上有限生成で超越次数 の体とする。
- すべての について である。
- を満たす体 は、ある について である。
- で が有限次拡大なら、ある について かつ は分離拡大である。
証明(補題 4.1)
(1) 上超越的な を取ると は有限次です。 なので で、 乗写像は体の同型 で を に写すので です。次数の連鎖律から
で、 です。 は 上 の根なので、最小多項式は ()の形で、定数項から です。( は多項式)なら で、両辺の についての次数を を法として比べると 、よって 、 です。 は と同型な体で を含むので、同じ議論で 、連鎖律から です。
(2) は の約数なので と書けます。 とします。 で、 の 上の最小多項式は の約数なので の形です。()と書くと で、 の係数 は に入るので です。すると は の根なので 、 です。 は の約数なので 、 です。よって で、(1) により なので です。
(3) ( と で生成される体)とおくと、 は有限次拡大 の中間体の減少列なので、ある で です。 なので、定理 7.1[Kähler 微分と滑らかさの入口] の (2) により は分離拡大です。 なので (2) により です。
を標数 の曲線、 とし、 を となる曲線、 を包含 に対応する射とする(定理 4.2[曲線と Riemann–Roch の定理])。 は次数 の純非分離な射で、 である。
証明(補題 4.2)
次数は 補題 4.1 の (1) で、純非分離性は定義から分かります。、 は体の自己同型です。スキーム に、構造射 と の合成を新しい構造射として与えたものを とします。 は の による底変換と同型で、スキームとしては そのものなので、整・ 次元・局所環が正則という性質はそのままです。 の閉はめ込み の底変換は閉はめ込み です(命題 6.1[スキームの性質と射])。よって は曲線です。 の関数体は、体 に というスカラー倍を入れたもので、 は を満たすので 上の同型 です。よって です。 は、アーベル群としては と同じで(層コホモロジーはアーベル群の層として計算できます。系 4.5[層コホモロジー])、スカラー倍が でねじれているだけです。 は全単射なので、一方の構造での基底は他方の構造でも基底で、次元は等しくなります。
例 4.3(Frobenius 射は至るところ分岐する)
では、点 の像 の局所環は で、素元は ( は での素元)です。よってすべての点で です。 なので は零写像で、命題 3.2 の完全列は成り立ちません。種数は等しいので、仮に公式を当てはめると となり、 では が必要になってしまいます。分離性の仮定は外せません。
証明(系 4.4)
証明(系 4.5)
を取り、( は互いに素な多項式)と書くと、 は 係数の でない多項式 の根です。よって は有限次拡大で、 は 上超越的、 も有限次です。 は 上有限生成で超越次数 なので、定理 4.2[曲線と Riemann–Roch の定理] により となる曲線 と、包含 に対応する有限射 があります。系 4.4 により なので、定理 7.2[曲線と Riemann–Roch の定理] により 、 です。
2 変数以上では事情が変わります。 の中間体は代数閉体上で標数 なら再び純超越的です(Castelnuovo)が、3 変数では反例があります。曲線の場合は、種数というただ 1 つの不変量が有理性を決めるので、上のように短く済みます。
5. 楕円曲線の群構造
Section titled “5. 楕円曲線の群構造”射が群演算になることを確かめるために、点の上での一致から射の一致を引き出す補題を用意します。
を代数閉体 上有限型の被約スキーム、 を 上分離的な有限型スキームとする。
- の閉部分スキーム がすべての閉点を含むなら である。
- 射 と の閉部分スキーム について、 の閉点がすべて に写るなら、 は を経由する。
- 射 が のすべての閉点の上で一致するなら である。
証明(補題 5.2)
(1) アフィン開集合 の上で とします(定理 5.2[準連接層・連接層と直線束])。仮定から は のすべての極大イデアルに含まれます。 は有限生成 代数なので、すべての極大イデアルの共通部分は冪零根基で(定理 5.4[Noether の正規化と Hilbert の零点定理])、 は被約なので です。
(2) は の閉部分スキームで、すべての閉点を含むので (1) により に等しく、 は を経由します。
(3) は分離的なので対角射 は閉はめ込みで(命題 3.2[分離射・固有射と付値判定法])、 による引き戻し は の閉部分スキームです。閉点 の剰余体は で、 なら と は同じ 値点(命題 7.2[アフィンスキームとスキーム])なので、 は に入ります。(1) により で、 は対角を経由する、すなわち です。
を楕円曲線とする。
- ()で、 は非常に豊富である。 は閉はめ込みで、像は既約な 3 次斉次式 の零点 である。以下 とみなす。
- でない 1 次式 に対し、 の への制限は の でない切断で、その零点の因子 は次数 の有効因子である。 は、 の直線の全体から への全単射である。直線 を と媒介変数表示すると、点 の での係数は、2 元 3 次式 の根 の重複度に等しい。
- となる直線 がある。点 について、 であることと、ある直線 で となることは同値である。
証明(補題 5.3)
(1) なので で、系 6.6[曲線と Riemann–Roch の定理] により です。 なので は非常に豊富で、 は閉はめ込みです(定理 7.1[曲線と Riemann–Roch の定理])。像は の素因子で、ある について直線の 倍と線形同値です(系 3.6[因子と直線束])。よってイデアル層は と同型で、包含 は 次斉次式 の乗法です(定理 8.3[準連接層・連接層と直線束])。したがって像は で、整なので は既約です。次数 の平面曲線の算術種数は で(系 7.8[Čech コホモロジーと射影空間のコホモロジー])、これが に等しいので です。
(2) 1 次式 が の上で消えるなら は で割り切れることになり、次数から不可能です。よって制限 は単射で、両辺は 次元なので同型です。 でない切断の定数倍を除く類と の対応(定理 4.4[因子と直線束])から全単射を得ます。点 で、 で消えない座標 を取ると、係数は
で、最後の量は直線 の上で の制限が でもつ零点の位数、すなわち根の重複度です。
(3) なので (2) により があります。同値は (2) の全単射の言い換えです。
次の定理の (1) と (2) は短い議論です。長いのは (3) の証明で、「足し算が から への射として座標で書ける」ことを示します。直線 の 3 つ目の交点は のときだけ式で与えられるので、 の近くでは平行移動で点をずらした別の式を使い、2 つの式が一致することを見て貼り合わせます。
を楕円曲線とする。
- の類は、 の点の集合から への全単射である。これにより の点の集合は を単位元とするアーベル群になり、 は と同値である。
- であることは、補題 5.3 の埋め込みで がある直線の切り口 であることと同値である。
- 加法 と逆元 は 上の射(の閉点への制限)である。とくに平行移動 は の自己同型である。
証明(定理 5.4)
(1) を次数 の因子とします。 なので です(系 6.6[曲線と Riemann–Roch の定理])。 は の定数倍を除く類と対応するので、ちょうど 1 つの有効因子からなり、次数が なのでそれは 1 点 です。よって となる点 がただ一つあり、写像は全単射です。 の群構造を移すと、 は と同値です。
(2) は 、すなわち と同値で、補題 5.3 の (3) により主張を得ます。
(3) とみなし、 とおきます。相異なる点 について、 なので
です( の係数と の係数を Taylor 展開で読みます)。 なら は直線 の上で消え、 がその 1 次式で割り切れることになって既約性に反するので、 です。3 つ目の根は なので、補題 5.3 の (2) により直線 の切り口は 、ただし
です。右辺の 3 つの成分は の座標と の座標のそれぞれについて 次の斉次多項式 です。 の、 が同時には消えない開集合 の上で、 から への射を で定めると、これらは貼り合わさって射 になります。 なら と はベクトルとして 1 次独立なので で、( は対角)は に入ります。 は被約で(補題 6.1[アフィン代数多様体と座標環])、 の閉点の像は に入るので、補題 5.2 の (2) により射 が得られます。(2) により、 の閉点の上で です。
逆元。 について とおくと、 なので は の逆元です。 は射で、非特異曲線から射影多様体への有理写像なので射 に延びます(命題 10.1[次元・正規性・非特異性と微分の層])。 は定値でないので全射です(定理 3.1[曲線と Riemann–Roch の定理])。逆元を取る写像は群の全単射で を固定するので で、全射性から です。よって は閉点の上で逆元の写像に一致します。
平行移動。 点 を固定します。 について なので、 は の上で射です。同じ延長定理で射 に延び、 は全射です。 は群の全単射なので で、全射性から です。よって は射で、逆射 をもつので自己同型です。
加法。 の上で は射です。 を 1 つ固定し、 とおくと、 は開集合で、 の上で
は射です。群の等式 から、 は閉点の上で に一致します。 なら なので です。 の上で 2 つの射 と は閉点の上で一致するので、補題 5.2 の (3) により等しく、貼り合わせて射 を得ます。これは閉点の上で です。
群構造の出どころは (1) の一行、「種数 では次数 の因子類が点とちょうど対応する」です。種数 ではすべての点が線形同値で 、種数 以上では が になり得て点との対応が崩れます。
6. Weierstrass 形と 不変量
Section titled “6. Weierstrass 形と jjj 不変量”の標数は でも でもないとし、 を楕円曲線とする。
- 、 と で、 を満たし、 が閉はめ込み を与えるものがある。像は で、 は に写る。
- は重根をもたない。すなわち である。逆に を満たす任意の について、 は種数 の曲線である。
- この埋め込みで、 は が重複度を込めて同一直線上にあることと同値である。とくに の逆元は である。
証明(定理 6.1)
(1) (補題 5.3)なので、 と が取れます。 なので 、 です。 個の元 は 次元の に入るので、自明でない 1 次関係があります。 での極の位数は順に で、位数が相異なる元は 1 次独立なので、関係式で と の係数はどちらも ではありません。関係式を と書き、 を掛けて を 、 を に取り替えると、両方の係数が になり
です。標数が でないので を に取り替えて左辺を にでき、標数が でないので を に取り替えて の項を消せます。こうして を得ます。取り替えの後も は の基底なので、 は で、補題 5.3 により閉はめ込み、像は既約 3 次式 の零点です。 は の上で消えるので の上で消え、 の倍元で、次数が等しいので定数倍です。切断として は でそれぞれ 位の零点をもつので、 は の点 に写ります。
(2) とします。アフィン部分 の特異点は 、、 の共通零点、すなわち かつ が の重根である点です。無限遠点 は、 とした方程式 の についての偏導関数が なので非特異です。 は非特異なので は重根をもちません。 と が共通根 をもつ条件を求めます。 を に入れると です。 なら 、 で、 なら 、 から です。逆に なら、 のとき で が、 のとき が共通根です。よって重根をもつことは と同値です。
逆に とします。 は、 が の平方でない(次数が奇数)ので既約で、 も既約です。上の計算から は非特異なので、非特異な平面 3 次曲線で、種数は です(系 7.8[Čech コホモロジーと射影空間のコホモロジー])。
(3) 前半は 定理 5.4 の (2) です。 を通る縦の直線 は、曲線と と で交わる( なら で重複度 )ので、 です。
数論の章の定義(定義 2.1[楕円曲線・モジュラー形式と現代数論])は、この定理の (1)(2) の結論を出発点にしたものです。弦と接線で定めた加法が結合法則を満たすことは、座標で直接確かめると長い計算になりますが、ここでは という群から移した演算なので自動的に成り立ちます。
の標数は でも でもないとする。 を満たす に対し、曲線 と
を考える。
- と が曲線として同型であることは、ある で 、 となることと同値で、さらに と同値である。したがって種数 の曲線 に対し、 が点 と Weierstrass 形の取り方によらずに定まる。
- 任意の に対し、 となる種数 の曲線がある。
証明(定理 6.2)
(1) を同型とします。無限遠点を , とし、平行移動(定理 5.4 の (3))を合成して としてよいです。 の座標関数 について、、 で極の位数はちょうど と なので
と書けます。 に代入すると の 1 次関係が得られます。 は 1 次独立(極の位数が相異なる)なので、 個の元の 1 次関係の空間は 次元で、得られた関係は の定数倍です。 の係数 から 、 の係数 から 、 の係数 から です。残りは で、、、 です。 とおくと 、 で、、 です。
、 なら なので です。
とします。 は と同値、 は と同値です。 なら で、 となる を取ります。 なら となる を取ります。それ以外では はすべて でなく、 が等しいことから です。 となる を取ると 、 で、負号のときは を に取り替えると( は変わらず の符号が変わるので) にできます。どの場合も 、 で、 の線形変換 は を に写す同型です()。
種数 の曲線 は、点 を選ぶと 定理 6.1 によりある と同型で、今示したことから は選び方によりません。
(2) なら 、 なら を取ります(判別式の条件 、 は標数の仮定から成り立ちます)。それ以外では 、 とします。、 なので で、 です。
例 6.3( と の曲線の自己同型)
証明から、 を固定する の自己同型は 、 を満たす に対応する です。 なら で、自己同型は恒等写像と逆元 だけです。()では の 個で、 は という位数 の自己同型です。()では の 個で、 の原始 乗根 による が位数 の自己同型です。複素数体では、それぞれ正方格子 と正三角格子 による複素トーラスに対応します。
7. 標準写像・超楕円曲線・Clifford の定理
Section titled “7. 標準写像・超楕円曲線・Clifford の定理”を種数 の曲線とする。
- すべての点 について である。
- なら である。
- とする。 が超楕円であることは が存在することと同値である。 が有効な で が の基底なら、 は の極の因子 に等しく、 である。
証明(補題 7.2)
(1) なら、定数でない の極の因子は で、 は次数 (命題 5.3[曲線と Riemann–Roch の定理])、すなわち同型となり に反します。
(2) とします。 なら示すことはありません。 なら を線形同値な有効因子 に取り替えてよく、命題 6.1[曲線と Riemann–Roch の定理] の (4) を 回使って です。
(3) が次数 なら、 は次数 で、 は と を含むので 、(2) により です。逆に を とし、有効因子に取り替え、 の基底 を取ります。 なので です。 の次数は で、(1) の議論から ではないので 、したがって で、 は次数 です。
証明(定理 7.3)
(1) 点 について Riemann–Roch(定理 6.4[曲線と Riemann–Roch の定理])を に使うと で、補題 7.2 により なので です。定理 7.1[曲線と Riemann–Roch の定理] の (1) により基点はありません。
(2) 点 について に Riemann–Roch を使うと です。定理 7.1[曲線と Riemann–Roch の定理] の (2) により、 が非常に豊富であることは、すべての で 、すなわち であることと同値です。(補題 7.2 の (2))なので、これは有効な が無いことと同値です。 は線形同値な有効因子に取り替えられるので、補題 7.2 の (3) により、超楕円でないことと同値です。
(3) なら 、 です(系 6.5[曲線と Riemann–Roch の定理])。
例 7.4(種数 3 と 4 の標準曲線)
種数 の超楕円でない曲線の標準写像は への閉はめ込みで、像は非特異平面曲線です。種数の公式 から次数は です。逆に非特異な平面 4 次曲線 では (定理 9.1[次元・正規性・非特異性と微分の層])なので、埋め込みそのものが標準写像で、 は超楕円ではありません。
種数 の超楕円でない曲線の標準写像は への埋め込みで、 の次数は です。2 次式の空間は 次元で、制限写像の行き先 は 次元なので、 を含む 2 次曲面 が少なくとも 1 つあります。3 次式は 次元、 は 次元なので、 を含む 3 次式は 次元以上あり、 の方程式に 1 次式を掛けたもの( 次元)に入らない 3 次曲面 があります。 は に含まれ、次数の比較()から一致します。
Clifford の定理の鍵は、次の 2 つの初等的な補題です。
証明(補題 7.5)
は部分空間の減少列です。 の基底の付値の最小値以下の では です。有限次元空間の減少列は止まり、 なので、十分大きい で です。素元 を取ると、 は線形写像 で核は なので、 です。 は となる の個数で、それはちょうど付値 の元が にあるような の個数です。
証明(補題 7.6)
点 を 1 つ取り、、、 を同様に定めます。、 なら で なので、 は和集合 を含みます。整数の有限集合 、 について、 は の相異なる 個の元です。補題 7.5 により です。
定理の不等式は、上の補題から数行で出ます。等号の場合の証明が長いのは、等号を満たす因子 から、次数のより小さい別の等号の因子 を作って帰納法を回すためです。 は と の因子の「共通部分」にあたるもので、そこから次数の小さい等号の例を取り出すことが狙いです。
証明(定理 7.7)
不等式。 、 なので、補題 7.6 により です。Riemann–Roch の を加えると です。
等号の場合。 まず、等号 は と同値で、線形同値類だけで決まる条件です。 と では等号が成り立ちます(、)。 が超楕円で が有効な 、 の基底を とすると、 は の 1 次独立な元なので で、 が特殊なら不等式から等号です。
逆に、等号が成り立ち、 かつ とします。 は偶数で、 です。 が超楕円であることを についての帰納法で示します。 なら で、 は です。なお は起こりません( なら特殊因子は無く、 なら )。 とすると です。 の有効因子 を取ります。 なので です。点 と点 を取ります。 なので、 を線形同値な有効因子に取り替えて としてよいです。、 に対し とおきます。 は を含み を含まないので です。層の列
は完全です。実際、点 での茎は で()、、 です。大域切断は左完全なので
です。 なので右辺は で、補題 7.6 により 以下です。左辺は です。よって で、 は等号を満たす有効な特殊因子です。 なので 、 で、帰納法の仮定から は超楕円です。
最後に、 が超楕円で が等号を満たすとき (、)を示します。 なので です。 は次数 で、補題 7.6 と から です。Riemann–Roch により で、 なので です(命題 6.1[曲線と Riemann–Roch の定理] の (3))。同じ議論を 、 に使うと です。よって です。
仮定「特殊」を落とすと、 では で、これは より大きくなり得ます。Clifford の定理は、Riemann–Roch が を決めてくれない範囲 での上界です。
8. 自己同型群と Hurwitz の上界
Section titled “8. 自己同型群と Hurwitz の上界”この節では の標数は とし、 を種数 の曲線とします。 は の 上の自己同型の群です。 は関数体の自己同型 と、微分の引き戻しによる の線形同型 を引き起こし、、 です( は と書いたときの )。
を種数 の超楕円曲線、 を有効な 、 を の基底とする。
- で、 の基底は である。
- は、 の でない 2 元の比の全体で生成される の部分体に等しい。したがって は の取り方によらず、 は線形同値を除いて一意で、すべての について である。
証明(補題 8.1)
(1) 定理 7.7 の証明の最後の段で を示しました。 は 上超越的なので は 1 次独立で、 なので基底です。
(2) 可逆層の でない 2 つの大域切断の比は の元として定まり、同型 で移しても変わりません。(1) により、比の全体は の 1 次結合の比で、 なので を含み、 を生成します。右辺の部分体は だけで決まるので、別の についても です。このとき は を生成するので、 となる の自己同型 があり(定理 4.2[曲線と Riemann–Roch の定理])、補題 7.2 の (3) により です( の 2 点は線形同値で、引き戻しは線形同値を保ちます)。 は を自分自身に写し、 なので、比で生成される体は で保たれます。
この補題の目的は、自己同型で互いに入れ替わる特別な点の集まり(Weierstrass 点)が有限個であることを示し、その個数を種数で数えることです。証明の (1) では Wronski 行列式という微分の行列式で重みの総和を数え、(2) では「関数の極の位数としてあらわれない正整数(空隙)」の組合せを調べて、1 点の重みの上限を出します。
を標数 の代数閉体上の種数 の曲線とする。点 に対し、 とし(補題 7.5 により 個)、 を の重みという。 である点を Weierstrass 点という。
- である。とくに Weierstrass 点は有限個で、少なくとも 1 つある。
- で、等号は のときに限る。
- について である。
証明(補題 8.2)
(3) は と が全単射であることから分かります。
(1) の基底 を固定します。 の元 で のものについて、 と書き、(補題 2.1)による Wronski 行列式
を考えます。
( が での素元のとき)。 基底を取り替えると は でない定数倍になるだけなので、 としてよいです。(、 は での値が の単元)と書きます。 と単元 について、 として
が についての帰納法で分かります( を施すと で、 は を保ちます)。行列の第 行から 、第 列から をくくり出すと
で、右の行列式の での値は です( は の最高次係数 の 次多項式なので、列の基本変形で Vandermonde 行列式になります)。標数 なのでこれは でなく、 です。とくに です。
変数の取り替え。 別の ()について とおくと、、 です。 で、 なので、列の基本変形で 、 です。したがって は によらない の でない有理切断です。点 では、素元 について が の茎の基底なので、この切断の での位数は です。よってこれは大域切断で、零点の因子は です。 の切断の零点の因子は と線形同値なので、次数は です。
(2) が での空隙である()ことと、 は同値です。実際、Riemann–Roch を と に使って引くと
で、 は で 位以上の零点をもつ の元の空間と同型なので、第 2 項が であることは位数ちょうど の があることと同値です。よって空隙は の 個で、 です。 なら なので空隙は 以下です。空隙でない正の整数(非空隙)を小さい順に とすると、 の中の非空隙は 個で です。 だけに極をもつ関数の積を考えると、非空隙の和は非空隙です。
について を示します。そうでないとすると、 は より大きく より小さい 個の非空隙ですが、そのような非空隙は の 個しかなく矛盾です。 について和を取ると で、空隙の和は 、したがって です。等号が成り立つなら、すべての で で、()は と の間の 個の非空隙なので です。 として ()、よって 、 で、 です。逆に なら偶数はすべて非空隙で、空隙は 、 です。
証明(補題 8.3)
補題 5.2 の (3) により、 となる点 があります。(Riemann–Roch)なので、 だけに極をもち極の位数 が である があります。 は だけに 位の極をもつので、 は で 位の極をもち ではなく、極の因子の次数は です。零点の個数は極の因子の次数以下です(命題 5.3[曲線と Riemann–Roch の定理] の (2))。 の固定点 は とも とも異なり、 なので零点です。
証明(補題 8.4)
Weierstrass 点の集合 は空でない有限集合で、 はこれを置換します(補題 8.2)。準同型 の核 が有限であることを示せば十分です。
が超楕円でない場合。 すべての点で (補題 7.2)なので、補題 8.2 の (2) により です。種数 の曲線は超楕円(定理 7.3 の (3))なので で、右辺は正です。(1) から
です。 の元は 個より多い点を固定するので、補題 8.3 により恒等写像で、 は自明です。
が超楕円の場合。 を有効な 、 を の基底、(次数 )とします。標数 なので分岐は従順で、定理 3.4 から分岐点は 個(各 )です。分岐点 では なので で、 は Weierstrass 点です。 とします。補題 8.1 により は を保つので、 の自己同型 で となるものがあります。 は分岐点の像である 個の相異なる点を固定します。 の自己同型は 次の可逆行列で与えられ(系 5.2[因子と直線束])、 点を固定する行列はどの 2 つも 1 次独立な つの固有ベクトルをもつのでスカラー行列です。よって は恒等写像で、 は の上で恒等的です。 なので、そのような の自己同型は 個以下(生成元 の行き先は の最小多項式の根)で、 です。
を曲線、 を の位数 の有限部分群、 を ( の固定体)となる曲線、 を対応する射とする。このとき で、 は の各ファイバーに推移的に作用し、 は固定部分群 の位数に等しい。
証明(補題 8.5)
により は の自己同型の位数 の群とみなせ( が恒等なら は恒等です)、Artin の定理(補題 7.7[ガロア理論への招待])により です。 は 上有限生成で超越次数 なので と が定まります。 について と は同じ関数体の埋め込みを与えるので で、 はファイバーを保ちます。
推移性を示します。 で が軌道 に入らないとします。軌道 と の外に点 を取ります。 が大きいとき、 の中で、各 についての は余次元 の部分空間です(系 6.6[曲線と Riemann–Roch の定理])。 は無限体なので、有限個の真の部分空間の和集合は全体にならず、 で消え、どの でも消えず、 以外に極をもたない があります。ノルム は で不変なので の元です。 の極は だけなので、 は と で正則で、、 です。一方 の での値は とも とも等しく、矛盾です。
は の局所環を の局所環に写し を固定するので、同じファイバーの点の分岐指数は等しくなります。ファイバーの点の個数は で、(命題 5.3[曲線と Riemann–Roch の定理])から です。
証明(系 8.6)
例 8.7(Klein の 4 次曲線)
の曲線 は標数 で非特異な 4 次曲線で、種数は です。上界は で、この曲線の自己同型群は位数 の単純群 であることが知られています(Klein, 1879)。位数 の元 ()と位数 の座標の巡回置換は、方程式から直接確かめられます。等号は、証明の最後の場合 に対応します。
標数が でないとき、種数 の曲線 から への次数 の射の分岐点はちょうど 個であることを示せ。また ( は重根をもたない 次式)の分岐点を求めよ。
解答
次数 の拡大は標数が でなければ分離的で、 なので分岐は従順です。定理 3.4 から 、分岐点は 個です。 では、 の の上に の 2 点、無限遠の上にも 2 点あるので不分岐で、分岐点は の根 の上の点 の 個です。
演習 9.2標準
標数が でないとき、楕円曲線 (単位元は無限遠点 )について、(a) となる は の 3 点で、 と合わせて と同型な部分群をなすこと、(b) は での接線が曲線と で重複度 で交わる( が変曲点である)ことと同値であることを示せ。
演習 9.3標準
の上の点 、()について、 は として 、 で与えられることを示せ。
解答
直線 は です。曲線の式に代入すると で、3 根の和は です。2 根は なので、3 つ目の交点 の 座標は 、 座標は です。 なので は の逆元で、 座標の符号を変えて です。
標数 の超楕円曲線 (種数 )について、 への次数 の射 に対し を満たす恒等でない自己同型 がただ一つあること、 は の取り方によらないこと、 は のすべての元と可換であることを示せ。
解答
は 次拡大で、標数が でないので 、 と書けます。 上の自己同型は の 2 つで、 に対応する の自己同型が です(定理 4.2[曲線と Riemann–Roch の定理])。 は が の上で恒等的であることと同値なので、一意です。補題 8.1 により部分体 は によらないので もよりません。 について、 は を保つので、 に対応する体の自己同型は の上で恒等的で、恒等でない位数 の元です。一意性から です。
- R. Hartshorne, Algebraic Geometry, Graduate Texts in Mathematics 52, Springer, 1977 — 第 IV 章 §2(Hurwitz の定理)、§4(楕円曲線)、§5(標準埋め込みと Clifford の定理)。
- J. H. Silverman, The Arithmetic of Elliptic Curves, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics 106, Springer, 2009 — 第 II 章(代数曲線)、第 III 章(楕円曲線の幾何)。
- E. Arbarello, M. Cornalba, P. A. Griffiths, J. Harris, Geometry of Algebraic Curves, Volume I, Grundlehren der mathematischen Wissenschaften 267, Springer, 1985 — 第 I 章(Weierstrass 点、標準曲線)、第 III 章(Clifford の定理)。
- H. M. Farkas, I. Kra, Riemann Surfaces, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics 71, Springer, 1992 — 第 III 章(Weierstrass 点)、第 V 章(自己同型群と Hurwitz の定理)。
- A. Hurwitz, “Über algebraische Gebilde mit eindeutigen Transformationen in sich”, Mathematische Annalen 41 (1893), 403–442.
執筆: Claude Code(Opus 5.5)、Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12
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