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立体の体積・球面・多面体:Cavalieri の原理から Girard の定理・Euler の多面体定理・Bolyai–Gerwien の定理まで

対象読者: 本テーマの空間ベクトルの章と三角比の章を学び、重積分(累次積分)の基本を知っている人。球面幾何と多面体は仮定せず、定義から始めます。

前提となる記事:空間座標と空間ベクトル:平面・球面・四面体の体積と Cayley–Menger の公式、三角比と三角形の計量:正弦定理・余弦定理から Heron・Bretschneider の公式まで

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ボールの体積はなぜ 43πr3\tfrac43\pi r^3 になるのか。サッカーボールのような多面体で、頂点の数から辺の数を引いて面の数を足すと、なぜいつも 2 になるのか。この章はこうした素朴な疑問に、立体を水平に薄く切って断面を足し合わせる考え方と、多面体の表面を球の表面に写して三角形で覆う考え方の 2 つで答えます。読み終えると、錐やボールの体積、球面上の三角形の面積、多面体の頂点・辺・面の数の関係が、同じ道具から順に出てくることが分かります。最後に、面積が等しい多角形どうしは切り貼りで形を変えられることも示します。

  • Cavalieri の原理(断面積が各高さで等しい立体は体積が等しい)は、Tonelli の定理(累次積分の順序交換)そのものです(定理 3.1)。そこから錐体の体積 13×\tfrac13\times底面積×\times高さ(定理 3.2)、断面積が 3 次以下の多項式のときの Simpson の公式(擬柱体の公式、定理 3.3)、球の体積 43πr3\tfrac43\pi r^3 が出ます。
  • 球帯(球面を 2 枚の平行な平面で切った部分)の面積は、高さだけで決まります(Archimedes、定理 4.2)。球面測度の座標表示から 1 行で出ます。
  • 球面の上の三角形では、辺の長さを角で測ります。球面の余弦定理は内積の展開(定理 5.2)、Girard の定理(面積 == 内角の和 −π-\pi)は、月形の面積 2×2\times角と 8 つの三角形への分割から出ます(定理 5.4)。
  • Euler の多面体定理 V−E+F=2V-E+F=2 は、凸多面体を内部の点から球面に射影し、球面が三角形で敷き詰められることと Girard の定理を使って証明します(Legendre の方法、定理 6.7)。系として Descartes の角欠損の総和が 4π4\pi であること、正多面体は 5 種類であること、正多角形による平面の敷き詰めは 3 種類であることが従います(系 6.8、定理 7.2、定理 7.4)。
  • Bolyai–Gerwien の定理(面積が等しい多角形は、有限個に切って組み替えられる)を、三角形から長方形、長方形から正方形への切り貼りで証明します(定理 8.5)。立体では同じ主張が成り立たない(Hilbert の第 3 問題)ことは、注意に文献を示します。

1. 動機 — 「底面積 × 高さ ÷ 3」の「÷ 3」はどこから来るのか

Section titled “1. 動機 — 「底面積 × 高さ ÷ 3」の「÷ 3」はどこから来るのか”

高校の数学では、錐体の体積が 13Sh\tfrac13Sh であることは、積分で(断面積を積分して)示されます。球の体積と表面積の公式も、積分や「錐体の集まり」で説明されます。ところが、積分の背後にある原理——断面積が等しければ体積は等しい——が、なぜ成り立つのかは、通常は問われません。

Rikai では、立体の体積を空間のルベーグ測度で定義しているので(前の章の空間座標と空間ベクトル)、この原理は Tonelli の定理(既存の解析学の章)の特別な場合として証明されることになります。同じ道具が、球の体積・球帯の面積・球面三角形の面積に使われ、最後に多面体の頂点・辺・面の個数の関係 V−E+F=2V-E+F=2 までつながります。

この章の後半は、平面の面積の話に戻ります。「面積が等しい 2 つの多角形は、有限個の多角形に切って組み替えられる」という Bolyai–Gerwien の定理は、立体では成り立ちません(立方体と等体積の正四面体は、有限個の多面体に切って組み替えられません)。次元が上がると何が変わるのかが、この章の最後の話題です。

2. 準備 — 体積・面積・球面測度

Section titled “2. 準備 — 体積・面積・球面測度”

この節は、以降で使う「大きさ」の約束の確認です。体積・面積はルベーグ測度(長さ・面積・体積を一般の集合に広げた測り方)で測ります。空間の体積は、水平方向の面積と高さ方向の長さの「積」として測れる(直積測度)、というのが要点で、これが Tonelli の定理につながります。球座標は、zz 軸からの角 ϑ\vartheta と回転角 φ\varphi で球面上の点を表す座標で、大円は球の中心を通る平面で球面を切った切り口の円です。細部が分からなくても、体積・面積をふつうの体積・面積と読めば、次の節以降の計算は追えます。

空間 R3\mathbb{R}^3 の集合の体積を、ルベーグ測度 m=m3m=m_3 とします(m([0,1]3)=1m([0,1]^3)=1)。平面 R2\mathbb{R}^2 の図形の面積を m2m_2 とします(面積確定な集合では、重積分による面積 定義 5.1[重積分と累次積分] と一致します)。m3m_3 は m2×m1m_2\times m_1 に等しい(直積測度、定理 3.2[直積測度と Fubini–Tonelli の定理]。同一視は Rd\mathbb{R}^d の変数変換公式と極座標 の準備の節にある)ことを使います。平行移動で測度は変わらず、正の実数 λ\lambda について md(λE)=λdmd(E)m_d(\lambda E)=\lambda^dm_d(E) です(系 3.5[ℝ^d の変数変換公式と極座標] の 2)。

単位球面 S2S^2 の面積は球面測度 σ\sigma(定義 6.1[ℝ^d の変数変換公式と極座標])で、直交行列で不変(命題 6.4[ℝ^d の変数変換公式と極座標])、球座標 ω(ϑ,φ)=(sin⁡ϑcos⁡φ,sin⁡ϑsin⁡φ,cos⁡ϑ)\omega(\vartheta,\varphi)=(\sin\vartheta\cos\varphi,\sin\vartheta\sin\varphi,\cos\vartheta) で

∫S2g dσ=∫02π ⁣ ⁣∫0πg(ω(ϑ,φ))sin⁡ϑ dϑ dφ,σ(S2)=4π\int_{S^2}g\,d\sigma=\int_0^{2\pi}\!\!\int_0^\pi g(\omega(\vartheta,\varphi))\sin\vartheta\,d\vartheta\,d\varphi,\qquad\sigma(S^2)=4\pi

と書けます(命題 6.10[ℝ^d の変数変換公式と極座標])。半径 rr の球面の部分集合 rArA(A⊂S2A\subset S^2)の面積は r2σ(A)r^2\sigma(A) と定めます。1 点や大円は σ\sigma 測度 00 です(大円は直交行列で赤道 {ϑ=π/2}\{\vartheta=\pi/2\} に移り、上の積分の被積分集合が ϑ\vartheta について測度 00)。

3. Cavalieri の原理・錐体・擬柱体

Section titled “3. Cavalieri の原理・錐体・擬柱体”

立体を水平に薄く切り、各高さの断面積を足し合わせれば体積になります。トランプの山を横にずらしても、各枚の面積が同じなら体積が変わらない、という直感を式にしたのが次の原理です。

定理 3.1(Cavalieri の原理)✓

K⊂R3K\subset\mathbb{R}^3 をボレル集合とし、Kt={(x,y)∈R2∣(x,y,t)∈K}K_t=\{(x,y)\in\mathbb{R}^2\mid(x,y,t)\in K\}(高さ tt での水平断面)とする。このとき t↦m2(Kt)t\mapsto m_2(K_t) は可測で

m(K)=∫−∞∞m2(Kt) dtm(K)=\int_{-\infty}^{\infty}m_2(K_t)\,dt

である。したがって、2 つのボレル集合 K,K′K,K' の断面積がすべての高さで等しければ、m(K)=m(K′)m(K)=m(K') である。

証明(定理 3.1)

KK の指示関数に Tonelli の定理(定理 3.3[直積測度と Fubini–Tonelli の定理]、X=R2X=\mathbb{R}^2、Y=RY=\mathbb{R}、どちらもルベーグ測度で σ\sigma-有限)を使う。m(K)=(m2×m1)(K)=∫R(∫R21K(x,y,t) dm2)dt=∫m2(Kt) dtm(K)=(m_2\times m_1)(K)=\int_{\mathbb{R}}\bigl(\int_{\mathbb{R}^2}\mathbf 1_K(x,y,t)\,dm_2\bigr)dt=\int m_2(K_t)\,dt。可測性も同定理による。後半は両辺を等しい被積分関数で比べればよい。

錐体は、底面の各点と頂点を結ぶ線分を集めた立体です。高さ tt で切ると断面は底面を縮めた相似形になり、頂点に近いほど小さくなります。縮み方は (1−th)\bigl(1-\tfrac th\bigr) 倍なので面積はその 2 乗倍で、これを足し合わせると 13\tfrac13 が出ます。次の定理の (1−s)B+sv′(1-s)B+s\boldsymbol v' は、BB の各点を (1−s)(1-s) 倍した集合を、sv′s\boldsymbol v' だけ平行移動したものです。

定理 3.2(錐体の体積)✓

平面 z=0z=0 内の有界閉集合 BB(面積 β=m2(B)\beta=m_2(B))と、高さ h>0h>0 にある点 VV に対し、錐体 K={(1−s)b+sv∣b∈B, 0≤s≤1}K=\{(1-s)\boldsymbol b+s\boldsymbol v\mid\boldsymbol b\in B,\ 0\le s\le1\} の体積は 13βh\dfrac13\beta h である。

証明(定理 3.2)

KK は連続写像によるコンパクト集合 B×[0,1]B\times[0,1] の像なのでコンパクトで、ボレル集合である。高さ tt(0≤t<h0\le t<h)の断面は、s=t/hs=t/h として (1−s)B+sv′(1-s)B+s\boldsymbol v'(v′\boldsymbol v' は VV の水平成分)、すなわち BB を (1−s)(1-s) 倍に拡大して平行移動した集合で、面積は (1−s)2β=(1−th)2β(1-s)^2\beta=\bigl(1-\tfrac th\bigr)^2\beta(前節)。t<0t<0、t>ht>h では空、t=ht=h では 1 点で面積 00。定理 3.1 から

m(K)=∫0h(1−th)2β dt=β[−h3(1−th)3]0h=βh3.m(K)=\int_0^h\Bigl(1-\frac th\Bigr)^2\beta\,dt=\beta\Bigl[-\frac h3\Bigl(1-\frac th\Bigr)^3\Bigr]_0^h=\frac{\beta h}3.

底面が多角形なら角錐、円板なら円錐です。底面が BB の柱体 B×[0,h]B\times[0,h] の体積は、断面積が一定なので βh\beta h です。

定理 3.3(擬柱体の公式(Simpson の公式))✓

ボレル集合 K⊂R2×[0,h]K\subset\mathbb{R}^2\times[0,h] の高さ tt での断面積 A(t)=m2(Kt)A(t)=m_2(K_t) が、[0,h][0,h] で tt の 3 次以下の多項式であるとき、

m(K)=h6(A(0)+4A(h2)+A(h))m(K)=\frac h6\Bigl(A(0)+4A\bigl(\tfrac h2\bigr)+A(h)\Bigr)

である(擬柱体の公式)。

証明(定理 3.3)

定理 3.1 から m(K)=∫0hA(t) dtm(K)=\int_0^hA(t)\,dt。右辺は AA について線形なので、A(t)=tjA(t)=t^j(j=0,1,2,3j=0,1,2,3)で確かめればよい。∫0htj dt\int_0^ht^j\,dt は h, h22, h33, h44h,\ \tfrac{h^2}2,\ \tfrac{h^3}3,\ \tfrac{h^4}4 で、h6(0j+4(h2)j+hj)\dfrac h6\bigl(0^j+4(\tfrac h2)^j+h^j\bigr) は j=0j=0 で hh、j=1j=1 で h6⋅3h=h22\tfrac h6\cdot3h=\tfrac{h^2}2、j=2j=2 で h6⋅2h2=h33\tfrac h6\cdot2h^2=\tfrac{h^3}3、j=3j=3 で h6⋅32h3=h44\tfrac h6\cdot\tfrac32h^3=\tfrac{h^4}4 となり一致する(00=10^0=1)。

例 3.4(円錐台・角錐台の体積)

底面積 B0B_0 の底面から高さ hh の位置に面積 B1B_1 の平行な断面をもつ錐台(錐体の頂点側を平行な平面で切り落とした立体)では、高さ tt の断面は相似で、その線形の大きさは tt の 1 次式なので、A(t)A(t) は 2 次式である。A(0)=B0A(0)=B_0、A(h)=B1A(h)=B_1、A(h2)=(B0+B12)2A(\tfrac h2)=\Bigl(\dfrac{\sqrt{B_0}+\sqrt{B_1}}2\Bigr)^2 なので、定理 3.3 から

V=h6(B0+(B0+B1)2+B1)=h3(B0+B0B1+B1)V=\frac h6\Bigl(B_0+(\sqrt{B_0}+\sqrt{B_1})^2+B_1\Bigr)=\frac h3\bigl(B_0+\sqrt{B_0B_1}+B_1\bigr)

である。

命題 4.1(球の体積)✓

半径 rr の球の体積は 43πr3\dfrac43\pi r^3 である。

証明(命題 4.1)

中心を (0,0,r)(0,0,r) とすると、高さ t∈[0,2r]t\in[0,2r] の断面は半径 r2−(t−r)2\sqrt{r^2-(t-r)^2} の円板で、面積は π(r2−(t−r)2)\pi\bigl(r^2-(t-r)^2\bigr)(円板の面積 πρ2\pi\rho^2 は 定理 6.8[ℝ^d の変数変換公式と極座標] の d=2d=2、Γ(2)=1\Gamma(2)=1)。これは 2 次式なので、定理 3.3 から m=2r6(0+4πr2+0)=43πr3m=\dfrac{2r}6\bigl(0+4\pi r^2+0\bigr)=\dfrac43\pi r^3。

球面の面積は r2σ(S2)=4πr2r^2\sigma(S^2)=4\pi r^2 です。これは球の体積を rr で微分したもの(ddr43πr3=4πr2\dfrac{d}{dr}\dfrac43\pi r^3=4\pi r^2)に等しく、表面積の定義と整合しています。

定理 4.2(球帯の面積(Archimedes))✓

−1≤a<b≤1-1\le a<b\le1 に対し、単位球面の球帯 Z={ω∈S2∣a≤ω3≤b}Z=\{\omega\in S^2\mid a\le\omega_3\le b\} の面積は σ(Z)=2π(b−a)\sigma(Z)=2\pi(b-a) である。したがって半径 rr の球面で、高さ hh の球帯の面積は 2πrh2\pi rh、つまり球帯の面積は高さだけで決まる。

証明(定理 4.2)

ω3=cos⁡ϑ\omega_3=\cos\vartheta なので、命題 6.10[ℝ^d の変数変換公式と極座標] から

σ(Z)=∫02π ⁣ ⁣∫arccos⁡barccos⁡asin⁡ϑ dϑ dφ=2π[−cos⁡ϑ]arccos⁡barccos⁡a=2π(b−a).\sigma(Z)=\int_0^{2\pi}\!\!\int_{\arccos b}^{\arccos a}\sin\vartheta\,d\vartheta\,d\varphi=2\pi\bigl[-\cos\vartheta\bigr]_{\arccos b}^{\arccos a}=2\pi(b-a).

(sin⁡ϑ\sin\vartheta の原始関数が −cos⁡ϑ-\cos\vartheta であること:定理 6.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する]。積分は微積分学の基本定理 定理 5.4[積分の基本定理と定積分] で計算する。cos⁡\cos の逆関数が arccos⁡\arccos であること:定義 9.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する]。)半径 rr では面積が r2r^2 倍、高さが r(b−a)=hr(b-a)=h なので r2⋅2πhr=2πrhr^2\cdot2\pi\dfrac hr=2\pi rh。

単位球面 S2S^2 の上で、2 点 B,CB,C を結ぶ最短の線は、B,CB,C と原点を含む平面による大円の短いほうの弧です。その長さは、BB と CC のなす角(=arccos⁡(B⋅C)=\arccos(B\cdot C)、単位円の弧の長さが角に等しいこと:定理 8.2[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])に等しいので、球面上の距離を角で測ります。

定義 5.1(球面三角形)↗

A,B,C∈S2A,B,C\in S^2 が 1 次独立(同一の大円上にない)とする。任意の x∈R3\boldsymbol x\in\mathbb{R}^3 は x=ξ1A+ξ2B+ξ3C\boldsymbol x=\xi_1A+\xi_2B+\xi_3C とただ 1 通りに書け(命題 2.1[空間座標と空間ベクトル])、

T={x∈S2∣ξ1,ξ2,ξ3≥0}T=\{\boldsymbol x\in S^2\mid\xi_1,\xi_2,\xi_3\ge0\}

を球面三角形という。辺の長さを a=arccos⁡(B⋅C)a=\arccos(B\cdot C)、b=arccos⁡(C⋅A)b=\arccos(C\cdot A)、c=arccos⁡(A⋅B)c=\arccos(A\cdot B)(∈(0,π)\in(0,\pi))とし、頂点 AA での角を、接ベクトル tB=B−(A⋅B)A\boldsymbol t_B=B-(A\cdot B)A、tC=C−(A⋅C)A\boldsymbol t_C=C-(A\cdot C)A(どちらも AA に垂直で、AA から BB、CC へ向かう大円弧の向き)のなす角 ∠A=∠(tB,tC)∈(0,π)\angle A=\angle(\boldsymbol t_B,\boldsymbol t_C)\in(0,\pi) と定める。B,CB,C での角も同様である。

定理 5.2(球面の余弦定理)✓

球面三角形について、cos⁡a=cos⁡bcos⁡c+sin⁡bsin⁡ccos⁡∠A\cos a=\cos b\cos c+\sin b\sin c\cos\angle A である。

証明(定理 5.2)

∣tB∣2=1−(A⋅B)2=1−cos⁡2c=sin⁡2c|\boldsymbol t_B|^2=1-(A\cdot B)^2=1-\cos^2c=\sin^2c(AA は単位ベクトル)で、c∈(0,π)c\in(0,\pi) なので ∣tB∣=sin⁡c|\boldsymbol t_B|=\sin c。同様に ∣tC∣=sin⁡b|\boldsymbol t_C|=\sin b。また tB⋅tC=B⋅C−(A⋅B)(A⋅C)=cos⁡a−cos⁡ccos⁡b\boldsymbol t_B\cdot\boldsymbol t_C=B\cdot C-(A\cdot B)(A\cdot C)=\cos a-\cos c\cos b。したがって cos⁡∠A=cos⁡a−cos⁡bcos⁡csin⁡bsin⁡c\cos\angle A=\dfrac{\cos a-\cos b\cos c}{\sin b\sin c} である。

辺が十分小さければ、球面は平面に近く、cos⁡a≈1−a22\cos a\approx1-\tfrac{a^2}2 などの展開から平面の余弦定理 a2=b2+c2−2bccos⁡Aa^2=b^2+c^2-2bc\cos A が得られます(三角比の章の 定理 3.1[三角比と三角形の計量])。

次に面積です。頂点 AA を北極にとると、AA で角 ∠A\angle A をなす 2 本の大円弧の間の月形(2 つの半円で囲まれた領域)の面積が、角に比例します。次の補題の証明は、座標を回して加法定理で確かめる長い計算ですが、言いたいことは「月形の面積は角の 2 倍(全周の角 2π2\pi なら球面全体の 4π4\pi)」だけです。初めは証明を飛ばし、結果 σ(LA)=2∠A\sigma(L_A)=2\angle A を受け取って Girard の定理に進んでも流れは追えます。

補題 5.3(月形・扇形の面積)✓

球面三角形 TT(頂点 A,B,CA,B,C)について、LA={x∈S2∣ξ2≥0, ξ3≥0}L_A=\{\boldsymbol x\in S^2\mid\xi_2\ge0,\ \xi_3\ge0\}(ξi\xi_i は 定義 5.1 の係数)とおく。0<ε≤π0<\varepsilon\le\pi について

σ(LA∩{x∣x⋅A>cos⁡ε})=∠A (1−cos⁡ε)\sigma\bigl(L_A\cap\{\boldsymbol x\mid\boldsymbol x\cdot A>\cos\varepsilon\}\bigr)=\angle A\,(1-\cos\varepsilon)

である。とくに ε=π\varepsilon=\pi で σ(LA)=2∠A\sigma(L_A)=2\angle A である。

証明(補題 5.3)

α=∠A\alpha=\angle A とおく。f1=tB/∣tB∣\boldsymbol f_1=\boldsymbol t_B/|\boldsymbol t_B|、f3=A\boldsymbol f_3=A、f2\boldsymbol f_2 を f1,f3\boldsymbol f_1,\boldsymbol f_3 に垂直な単位ベクトルで tC⋅f2>0\boldsymbol t_C\cdot\boldsymbol f_2>0 となるもの(tB,tC\boldsymbol t_B,\boldsymbol t_C は 1 次独立なので ≠0\ne0)とし、f1,f2,f3\boldsymbol f_1,\boldsymbol f_2,\boldsymbol f_3 を行とする直交行列を OO とする。OtB=∣tB∣e1O\boldsymbol t_B=|\boldsymbol t_B|\boldsymbol e_1、OtC=∣tC∣(cos⁡α e1+sin⁡α e2)O\boldsymbol t_C=|\boldsymbol t_C|(\cos\alpha\,\boldsymbol e_1+\sin\alpha\,\boldsymbol e_2)(cos⁡α=tB⋅tC∣tB∣∣tC∣\cos\alpha=\dfrac{\boldsymbol t_B\cdot\boldsymbol t_C}{|\boldsymbol t_B||\boldsymbol t_C|}、tC⋅f2=∣tC∣sin⁡α>0\boldsymbol t_C\cdot\boldsymbol f_2=|\boldsymbol t_C|\sin\alpha>0)で、OA=e3OA=\boldsymbol e_3。x=ξ1A+ξ2B+ξ3C=(ξ1+ξ2A⋅B+ξ3A⋅C)A+ξ2tB+ξ3tC\boldsymbol x=\xi_1A+\xi_2B+\xi_3C=(\xi_1+\xi_2A\cdot B+\xi_3A\cdot C)A+\xi_2\boldsymbol t_B+\xi_3\boldsymbol t_C なので、OxO\boldsymbol x の水平成分(x1,x2x_1,x_2 成分)は

ξ2∣tB∣(1,0)+ξ3∣tC∣(cos⁡α,sin⁡α)\xi_2|\boldsymbol t_B|(1,0)+\xi_3|\boldsymbol t_C|(\cos\alpha,\sin\alpha)

である。(1,0)(1,0) と (cos⁡α,sin⁡α)(\cos\alpha,\sin\alpha) は 1 次独立なので、ξ2,ξ3≥0\xi_2,\xi_3\ge0 は、水平成分が扇形 {s e(0)+t e(α)∣s,t≥0}\{s\,e(0)+t\,e(\alpha)\mid s,t\ge0\} に入ることと同値で、e(φ)=sin⁡(α−φ) e(0)+sin⁡φ e(α)sin⁡αe(\varphi)=\dfrac{\sin(\alpha-\varphi)\,e(0)+\sin\varphi\,e(\alpha)}{\sin\alpha}(加法定理で確かめられる)から、これは φ∈[0,α]\varphi\in[0,\alpha] の r e(φ)r\,e(\varphi)(r≥0r\ge0)の全体である。球座標で Ox=ω(ϑ,φ)O\boldsymbol x=\omega(\vartheta,\varphi) とすると水平成分は sin⁡ϑ e(φ)\sin\vartheta\,e(\varphi) なので、0<ϑ<π0<\vartheta<\pi の点は φ∈[0,α]\varphi\in[0,\alpha](2π2\pi を法として)のとき、かつそのときに限り OLAOL_A に入る(両極は測度 00)。x⋅A=cos⁡ϑ>cos⁡ε\boldsymbol x\cdot A=\cos\vartheta>\cos\varepsilon は ϑ<ε\vartheta<\varepsilon である。σ\sigma の直交行列による不変性(命題 6.4[ℝ^d の変数変換公式と極座標])と球座標表示から σ=∫0α ⁣∫0εsin⁡ϑ dϑ dφ=α(1−cos⁡ε)\sigma=\int_0^\alpha\!\int_0^\varepsilon\sin\vartheta\,d\vartheta\,d\varphi=\alpha(1-\cos\varepsilon)。

方針は次のとおりです。三角形の 3 辺をそれぞれ含む 3 つの大円で球面を 8 つの三角形に分けると、月形の面積の式が 3 本得られます。これを足し、球面全体の面積 4π4\pi との関係を使うと、三角形 1 つの面積だけが残ります。

定理 5.4(Girard の定理)✓

単位球面上の球面三角形 TT の面積は、内角を A,B,CA,B,C として σ(T)=A+B+C−π\sigma(T)=A+B+C-\pi である。半径 rr の球面では r2(A+B+C−π)r^2(A+B+C-\pi) である。

証明(定理 5.4)

εi∈{±1}\varepsilon_i\in\{\pm1\} に対し Tε={x∈S2∣εiξi≥0 (i=1,2,3)}T_{\varepsilon}=\{\boldsymbol x\in S^2\mid\varepsilon_i\xi_i\ge0\ (i=1,2,3)\} とおく。8 つの TεT_\varepsilon は S2S^2 を覆い、共通部分は {ξi=0}∩S2\{\xi_i=0\}\cap S^2(大円)に含まれるので σ\sigma 測度 00 である(命題 6.4[ℝ^d の変数変換公式と極座標] により大円は赤道に移る)。T=T+++T=T_{+++} で、T−ε=−TεT_{-\varepsilon}=-T_\varepsilon、対心写像 x↦−x\boldsymbol x\mapsto-\boldsymbol x は直交行列 −I-I なので σ(T−ε)=σ(Tε)\sigma(T_{-\varepsilon})=\sigma(T_\varepsilon) である。t0=σ(T+++)t_0=\sigma(T_{+++})、t1=σ(T−++)t_1=\sigma(T_{-++})、t2=σ(T+−+)t_2=\sigma(T_{+-+})、t3=σ(T++−)t_3=\sigma(T_{++-}) とおくと、8 つが 4 組の対心の対になるので

4π=σ(S2)=2(t0+t1+t2+t3).4\pi=\sigma(S^2)=2(t_0+t_1+t_2+t_3).

一方、LA=T+++∪T−++L_A=T_{+++}\cup T_{-++} なので 補題 5.3 から t0+t1=2∠At_0+t_1=2\angle A。頂点 B,CB,C の役割を取り替えて同じ議論をすると(LB=T+++∪T+−+L_B=T_{+++}\cup T_{+-+}、LC=T+++∪T++−L_C=T_{+++}\cup T_{++-})t0+t2=2∠Bt_0+t_2=2\angle B、t0+t3=2∠Ct_0+t_3=2\angle C。3 式を足すと 3t0+t1+t2+t3=2(A+B+C)3t_0+t_1+t_2+t_3=2(A+B+C) で、t1+t2+t3=2π−t0t_1+t_2+t_3=2\pi-t_0 を代入して 2t0+2π=2(A+B+C)2t_0+2\pi=2(A+B+C)、すなわち t0=A+B+C−πt_0=A+B+C-\pi である。半径 rr では面積の定義 r2σr^2\sigma による。

定義 6.1(凸多面体)↗

有限個の閉半空間 {x∣ni⋅x≤ci}\{\boldsymbol x\mid\boldsymbol n_i\cdot\boldsymbol x\le c_i\}(ni≠0\boldsymbol n_i\ne\boldsymbol 0、i=1,…,Ni=1,\dots,N)の共通部分 PP で、有界かつ内部が空でないものを凸多面体という。PP の頂点は PP の端点(PP の相異なる 2 点を結ぶ線分の、両端以外の点にならない点)、面は P∩{ni⋅x=ci}P\cap\{\boldsymbol n_i\cdot\boldsymbol x=c_i\} のうち 2 次元のもの(一直線上にない 3 点を含むもの)、辺は相異なる 2 つの面の共通部分のうち線分(両端が異なるもの)であるものをいう。頂点・辺・面の個数を V,E,FV,E,F とする。凸多面体の面・辺・頂点は次の 3 つの性質をもつ(6.2 節の 定理 6.4 で証明する)。

  • (P1) 各面は凸多角形で、頂点は PP の頂点である。1 つの頂点から引いた対角線で n−2n-2 個の三角形に分けられる(扇形分割)。
  • (P2) 各面の(凸多角形としての)辺は PP の辺であり、各辺はちょうど 2 つの面に含まれる(したがって各辺はちょうど 2 つの面の辺になっている)。
  • (P3) 相異なる 2 つの面の共通部分は、空、1 つの頂点、1 本の辺のいずれかである。

(P1)〜(P3) は図を描けば当たり前に見えますが、定義は不等式の集まりでしかないので、「面が多角形になる」「辺のまわりにちょうど 2 枚の面がある」ことは証明が要ります。まず平面の場合(半平面の共通部分が凸多角形になること)を示し、それを各面と、辺を横切る平面での断面に当てはめます。

ここからの 2 つの補題は、「不等式で定義した図形は、見た目どおり尖った点(端点)をもつ凸多角形になる」ことを厳密に言うためのものです。端点を「どの不等式が等号で成り立っているか」で言い換える(そのとき等号になっている不等式を「効く」不等式とよびます)と、平面なら 2 本、空間なら 3 本の独立な境界が交わる点が端点だと分かり、端点が有限個であることも出ます。図では当たり前でも定義が不等式だけなので証明が長くなります。初めは主張だけ受け取って、6.3 節に進んでも構いません。

補題 6.2(半平面・半空間の共通部分の基本性質)✓

d=2d=2 または d=3d=3 とし、K={y∈Rd∣aj⋅y≤bj (j=1,…,M)}K=\{\boldsymbol y\in\mathbb{R}^d\mid\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol y\le b_j\ (j=1,\dots,M)\}(aj≠0\boldsymbol a_j\ne\boldsymbol 0)とする。y∈K\boldsymbol y\in K で aj⋅y=bj\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol y=b_j となるとき、不等式 jj は y\boldsymbol y で効くということにする。

  1. KK は閉集合で、KK の内部は {y∣aj⋅y<bj (j=1,…,M)}\{\boldsymbol y\mid\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol y<b_j\ (j=1,\dots,M)\} である。したがって KK の境界の点では、どれかの不等式が効く。
  2. 不等式 jj が y∈K\boldsymbol y\in K で効き、y=(1−t)u+tu′\boldsymbol y=(1-t)\boldsymbol u+t\boldsymbol u'(u,u′∈K\boldsymbol u,\boldsymbol u'\in K、0<t<10<t<1)ならば、jj は u\boldsymbol u でも u′\boldsymbol u' でも効く。
  3. y∈K\boldsymbol y\in K が KK の端点であるための必要十分条件は、y\boldsymbol y で効く不等式の aj\boldsymbol a_j の中に 1 次独立な dd 個があることである。とくに KK の端点は有限個である。
  4. KK が有界で原点を内部に含むとする。単位ベクトル e\boldsymbol e に対し、半直線 {τe∣τ≥0}\{\tau\boldsymbol e\mid\tau\ge0\} と KK の共通部分は {τe∣0≤τ≤ρ}\{\tau\boldsymbol e\mid0\le\tau\le\rho\}(ρ>0\rho>0)の形で、このうち KK の境界にある点は ρe\rho\boldsymbol e だけである。
証明(補題 6.2)

1: KK は、連続関数 y↦aj⋅y\boldsymbol y\mapsto\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol y による閉区間 (−∞,bj](-\infty,b_j] の逆像(閉集合)の共通部分なので閉集合である。すべての不等式が y\boldsymbol y で狭義に成り立つとき、δ=min⁡j(bj−aj⋅y)/∣aj∣>0\delta=\min_j(b_j-\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol y)/|\boldsymbol a_j|>0 とおくと、∣w∣<δ|\boldsymbol w|<\delta ならば Cauchy–Schwarz の不等式(定理 4.1[式と証明])から aj⋅(y+w)≤aj⋅y+∣aj∣∣w∣<bj\boldsymbol a_j\cdot(\boldsymbol y+\boldsymbol w)\le\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol y+|\boldsymbol a_j||\boldsymbol w|<b_j なので、y\boldsymbol y は内部の点である。逆に jj が y\boldsymbol y で効けば、ε>0\varepsilon>0 について aj⋅(y+εaj)=bj+ε∣aj∣2>bj\boldsymbol a_j\cdot(\boldsymbol y+\varepsilon\boldsymbol a_j)=b_j+\varepsilon|\boldsymbol a_j|^2>b_j なので、y\boldsymbol y のいくらでも近くに KK の外の点があり、y\boldsymbol y は内部の点でない。

2: bj=aj⋅y=(1−t) aj⋅u+t aj⋅u′b_j=\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol y=(1-t)\,\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol u+t\,\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol u' で、aj⋅u≤bj\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol u\le b_j、aj⋅u′≤bj\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol u'\le b_j、1−t>01-t>0、t>0t>0 である。どちらかが狭義の不等式なら右辺は bjb_j より小さくなるので、両方とも等号である。

3: d=3d=3 の場合を書く(d=2d=2 でも同じ議論になる。必要性では N\mathcal N の元がすべて 1 つの a=(a1,a2)≠0\boldsymbol a=(a_1,a_2)\ne\boldsymbol 0 の実数倍になる場合だけを考えればよく、外積の代わりに a\boldsymbol a を直角に回した w=(−a2,a1)\boldsymbol w=(-a_2,a_1) をとる。十分性では、1 次独立な 2 個 a,a′\boldsymbol a,\boldsymbol a' に垂直な z\boldsymbol z を平面の基底 命題 3.1[平面ベクトルと座標] で z=αa+βa′\boldsymbol z=\alpha\boldsymbol a+\beta\boldsymbol a' と書いて ∣z∣2=0|\boldsymbol z|^2=0 を得る。端点の個数は (M2)\binom M2 以下になる)。y\boldsymbol y で効く不等式の aj\boldsymbol a_j の集まりを N\mathcal N とする。

(必要)N\mathcal N に 1 次独立な 3 個がないとする。まず N\mathcal N のすべてに垂直な w≠0\boldsymbol w\ne\boldsymbol 0 をとる。N\mathcal N に 1 次独立な 2 個 a,a′\boldsymbol a,\boldsymbol a' があれば w=a×a′\boldsymbol w=\boldsymbol a\times\boldsymbol a' とする。これは 0\boldsymbol 0 でなく、a,a′\boldsymbol a,\boldsymbol a' に垂直である(補題 2.3[空間座標と空間ベクトル] の 4、2)。N\mathcal N の他の元 a′′\boldsymbol a'' については a,a′,a′′\boldsymbol a,\boldsymbol a',\boldsymbol a'' が 1 次従属なので、sa+s′a′+s′′a′′=0s\boldsymbol a+s'\boldsymbol a'+s''\boldsymbol a''=\boldsymbol 0 となる自明でない係数があり、s′′=0s''=0 なら a,a′\boldsymbol a,\boldsymbol a' が 1 次従属になるので s′′≠0s''\ne0、すなわち a′′\boldsymbol a'' は a,a′\boldsymbol a,\boldsymbol a' の 1 次結合で w\boldsymbol w に垂直である。N\mathcal N のどの 2 個も 1 次従属なら、N\mathcal N の元はすべて 1 つの a≠0\boldsymbol a\ne\boldsymbol 0 の実数倍である(N\mathcal N が空なら a=e1\boldsymbol a=\boldsymbol e_1 とする)。a\boldsymbol a に平行でない基本ベクトル ek\boldsymbol e_k をとって w=a×ek\boldsymbol w=\boldsymbol a\times\boldsymbol e_k とすればよい。この w\boldsymbol w について、効く不等式は y±εw\boldsymbol y\pm\varepsilon\boldsymbol w でも等号のままで、効かない不等式 jj は ε∣aj⋅w∣<bj−aj⋅y\varepsilon|\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol w|<b_j-\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol y となる小さな ε>0\varepsilon>0 で成り立つ。よって y\boldsymbol y は KK の相異なる 2 点 y±εw\boldsymbol y\pm\varepsilon\boldsymbol w の中点で、端点でない。

(十分)a,a′,a′′∈N\boldsymbol a,\boldsymbol a',\boldsymbol a''\in\mathcal N が 1 次独立で、y=(1−t)u+tu′\boldsymbol y=(1-t)\boldsymbol u+t\boldsymbol u'(u,u′∈K\boldsymbol u,\boldsymbol u'\in K、0<t<10<t<1)とする。2 から a⋅u=a⋅u′\boldsymbol a\cdot\boldsymbol u=\boldsymbol a\cdot\boldsymbol u' などが成り立ち、z=u−u′\boldsymbol z=\boldsymbol u-\boldsymbol u' は a,a′,a′′\boldsymbol a,\boldsymbol a',\boldsymbol a'' に垂直である。命題 2.1[空間座標と空間ベクトル] により z=αa+βa′+γa′′\boldsymbol z=\alpha\boldsymbol a+\beta\boldsymbol a'+\gamma\boldsymbol a'' と書けるので、∣z∣2=z⋅(αa+βa′+γa′′)=0|\boldsymbol z|^2=\boldsymbol z\cdot(\alpha\boldsymbol a+\beta\boldsymbol a'+\gamma\boldsymbol a'')=0、すなわち u=u′\boldsymbol u=\boldsymbol u'。よって y\boldsymbol y は端点である。

(有限性)同じ計算で、1 次独立な aj,ak,al\boldsymbol a_j,\boldsymbol a_k,\boldsymbol a_l に対する連立方程式 aj⋅x=bj\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol x=b_j、ak⋅x=bk\boldsymbol a_k\cdot\boldsymbol x=b_k、al⋅x=bl\boldsymbol a_l\cdot\boldsymbol x=b_l の解は高々 1 つである(2 つの解の差は 3 つのベクトルに垂直なので 0\boldsymbol 0)。端点はこのような 3 つ組の解なので、その個数は (M3)\binom M3 以下である。

4: 原点は内部の点なので、1 からすべての jj で bj>0b_j>0。τ≥0\tau\ge0 について τe∈K  ⟺  τ (aj⋅e)≤bj (∀j)\tau\boldsymbol e\in K\iff\tau\,(\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol e)\le b_j\ (\forall j) で、aj⋅e≤0\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol e\le0 の jj では常に成り立つ。KK は有界なので aj⋅e>0\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol e>0 となる jj がある(なければ半直線全体が KK に入る)。ρ=min⁡{bj/(aj⋅e)∣aj⋅e>0}>0\rho=\min\{b_j/(\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol e)\mid\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol e>0\}>0 とおくと、τe∈K  ⟺  0≤τ≤ρ\tau\boldsymbol e\in K\iff0\le\tau\le\rho である。0≤τ<ρ0\le\tau<\rho ではすべての不等式が狭義に成り立ち(aj⋅e>0\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol e>0 なら τ aj⋅e<ρ aj⋅e≤bj\tau\,\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol e<\rho\,\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol e\le b_j、そうでなければ τ aj⋅e≤0<bj\tau\,\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol e\le0<b_j)、τ=ρ\tau=\rho では最小を与える jj が効くので、1 から境界にある点は ρe\rho\boldsymbol e だけである。

補題 6.3(半平面の共通部分としての凸多角形)✓

平面の有界な集合 K={y∈R2∣aj⋅y≤bj (j=1,…,M)}K=\{\boldsymbol y\in\mathbb{R}^2\mid\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol y\le b_j\ (j=1,\dots,M)\}(aj≠0\boldsymbol a_j\ne\boldsymbol 0)が、一直線上にない 3 点を含むとする。ℓj={y∣aj⋅y=bj}\ell_j=\{\boldsymbol y\mid\boldsymbol a_j\cdot\boldsymbol y=b_j\} とおく。

  1. KK の端点は n≥3n\ge3 個あり、番号を適当に付けて A1,…,AnA_1,\dots,A_n とすると、i<j<ki<j<k のすべてについて S(Ai,Aj,Ak)>0S(A_i,A_j,A_k)>0(定義 6.1[平面ベクトルと座標])となる。すなわち A1A2⋯AnA_1A_2\cdots A_n は反時計回りの凸 nn 角形(定義 5.5[合同と相似])である。KK は凸結合 ∑kλkAk\sum_k\lambda_kA_k(λk≥0\lambda_k\ge0、∑kλk=1\sum_k\lambda_k=1)の全体に等しく、三角形 A1AkAk+1A_1A_kA_{k+1}(k=2,…,n−1k=2,\dots,n-1)の和集合である。
  2. 線分 AkAk+1A_kA_{k+1}(k=1,…,nk=1,\dots,n、An+1=A1A_{n+1}=A_1)を KK の辺とよぶ。各辺は、ある jj について K∩ℓjK\cap\ell_j に等しく、両端以外に KK の端点を含まない。したがって AkA_k を含む辺は Ak−1AkA_{k-1}A_k と AkAk+1A_kA_{k+1} の 2 本だけで(A0=AnA_0=A_n)、この 2 本は相異なる直線上にある。
  3. 各 jj について、K∩ℓjK\cap\ell_j は空集合、KK の 1 つの端点、KK の 1 本の辺のいずれかである。
証明(補題 6.3)

KK は凸である(命題 6.1[図形と方程式] の 2)。端点は有限個である(補題 6.2 の 3)。

(a) 直線との共通部分。 直線 {p0+te∣t∈R}\{\boldsymbol p_0+t\boldsymbol e\mid t\in\mathbb{R}\} と KK の共通部分の tt の範囲は、有界な閉集合(KK が有界閉集合)で、KK が凸なので区間である。したがって空でなければ閉区間で、共通部分は線分(1 点のこともある)である。とくに K∩ℓjK\cap\ell_j が空でなければ線分 [p,q][\boldsymbol p,\boldsymbol q](p=q\boldsymbol p=\boldsymbol q もありうる)で、その両端は KK の端点である。実際、p=(1−t)u+tu′\boldsymbol p=(1-t)\boldsymbol u+t\boldsymbol u'(u≠u′\boldsymbol u\ne\boldsymbol u'、u,u′∈K\boldsymbol u,\boldsymbol u'\in K、0<t<10<t<1)なら、補題 6.2 の 2 から u,u′∈K∩ℓj\boldsymbol u,\boldsymbol u'\in K\cap\ell_j となり、p\boldsymbol p は K∩ℓjK\cap\ell_j の中で u\boldsymbol u と u′\boldsymbol u' の間にあって、端でなくなる。

(b) KK は端点の凸結合の全体。 端点の凸結合は KK に入る(凸性を繰り返し使う)。逆に y∈K\boldsymbol y\in K を通る直線を 1 本とり、(a) により KK との共通部分を線分 [u,u′][\boldsymbol u,\boldsymbol u'] とする。u\boldsymbol u は KK の内部の点でない(その直線上で u\boldsymbol u の先は KK の外)ので、補題 6.2 の 1 からある ℓj\ell_j 上にあり、(a) から u\boldsymbol u は 2 つの端点の凸結合である。u′\boldsymbol u' も同様で、y\boldsymbol y は u,u′\boldsymbol u,\boldsymbol u' の凸結合なので、端点の凸結合である。KK は一直線上にない 3 点を含むので、端点がすべて一直線上にあることはなく(凸結合も同じ直線上に乗る)、n≥3n\ge3 である。

(c) 番号の付け方。 一直線上にない P,Q,R∈KP,Q,R\in K の重心 GG で効く不等式 jj があるとすると、GG は PP と QRQR の中点 MM(≠P\ne P)を結ぶ線分の両端以外の点なので、補題 6.2 の 2 から jj は PP と MM で効き、さらに Q,RQ,R でも効く。すると P,Q,R∈ℓjP,Q,R\in\ell_j となって矛盾する。よって GG は KK の内部の点で(補題 6.2 の 1)、GG を中心とするある開円板は KK に含まれる。2 つの端点を通る直線は有限本なので、この円板の中の、GG を通りそのどれとも平行でない線分の上に、どの直線にも乗らない点 OO がとれる(各直線との交点は高々 1 つ)。OO を原点にとる(平行移動しても KK は同じ形の不等式で書け、SS も変わらない)。

端点 AA は KK の内部の点でない(内部の点は KK 内の小さな線分の中点になる)ので、A=r e(φ)A=r\,\boldsymbol e(\varphi)(r>0r>0、e(φ)=(cos⁡φ,sin⁡φ)\boldsymbol e(\varphi)=(\cos\varphi,\sin\varphi))と書くと、補題 6.2 の 4 により、AA は半直線 {τe(φ)∣τ≥0}\{\tau\boldsymbol e(\varphi)\mid\tau\ge0\} 上の KK の点のうち原点から最も遠い点で、この半直線上で境界にある点は AA だけである。とくに相異なる端点の偏角は相異なる。端点を偏角の小さい順に Ak=rke(φk)A_k=r_k\boldsymbol e(\varphi_k)(φ1<φ2<⋯<φn<φ1+2π\varphi_1<\varphi_2<\dots<\varphi_n<\varphi_1+2\pi)と並べる。加法定理(定理 6.4[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])から

S(O,Ak,Al)=12det⁡(rke(φk),rle(φl))=12rkrlsin⁡(φl−φk)S(O,A_k,A_l)=\tfrac12\det(r_k\boldsymbol e(\varphi_k),r_l\boldsymbol e(\varphi_l))=\tfrac12r_kr_l\sin(\varphi_l-\varphi_k)

で、OO の選び方から O,Ak,AlO,A_k,A_l は一直線上にないので(命題 6.2[平面ベクトルと座標] の 2)、sin⁡(φl−φk)≠0\sin(\varphi_l-\varphi_k)\ne0 である。

i<j<ki<j<k をとり、g1=φj−φig_1=\varphi_j-\varphi_i、g2=φk−φjg_2=\varphi_k-\varphi_j、g3=2π−(φk−φi)g_3=2\pi-(\varphi_k-\varphi_i) とおく。これらは正で、和は 2π2\pi、どれも π\pi でない。命題 6.2[平面ベクトルと座標] の 3 から

S(Ai,Aj,Ak)=S(O,Ai,Aj)+S(O,Aj,Ak)+S(O,Ak,Ai)=12(rirjsin⁡g1+rjrksin⁡g2+rkrisin⁡g3)S(A_i,A_j,A_k)=S(O,A_i,A_j)+S(O,A_j,A_k)+S(O,A_k,A_i)=\tfrac12\bigl(r_ir_j\sin g_1+r_jr_k\sin g_2+r_kr_i\sin g_3\bigr)

である(sin⁡(φi−φk)=sin⁡g3\sin(\varphi_i-\varphi_k)=\sin g_3)。g1,g2,g3g_1,g_2,g_3 がすべて π\pi より小さければ 3 項とも正で、S(Ai,Aj,Ak)>0S(A_i,A_j,A_k)>0 である。

そうでなければ、和が 2π2\pi なので π\pi を超えるものがちょうど 1 つある。SS は 3 点の巡回で変わらない(命題 6.2[平面ベクトルと座標] の 1)ので、(Ai,Aj,Ak)(A_i,A_j,A_k) を巡回させた 3 点を (X,Y,W)(X,Y,W) とし、偏角を ψX<ψY<ψW\psi_X<\psi_Y<\psi_W(必要なら 2π2\pi を足す)、ψW−ψX<π\psi_W-\psi_X<\pi となるようにできる(π\pi を超える間隔が WW から XX へ戻る部分になるように巡回させる。具体的には、g3>πg_3>\pi なら (X,Y,W)=(Ai,Aj,Ak)(X,Y,W)=(A_i,A_j,A_k)、(ψX,ψY,ψW)=(φi,φj,φk)(\psi_X,\psi_Y,\psi_W)=(\varphi_i,\varphi_j,\varphi_k) で ψW−ψX=g1+g2\psi_W-\psi_X=g_1+g_2。g1>πg_1>\pi なら (Aj,Ak,Ai)(A_j,A_k,A_i)、(φj,φk,φi+2π)(\varphi_j,\varphi_k,\varphi_i+2\pi) で差は g2+g3g_2+g_3。g2>πg_2>\pi なら (Ak,Ai,Aj)(A_k,A_i,A_j)、(φk,φi+2π,φj+2π)(\varphi_k,\varphi_i+2\pi,\varphi_j+2\pi) で差は g3+g1g_3+g_1。いずれも 2π2\pi から π\pi を超える間隔を引いたもので π\pi より小さい)。加法定理で確かめられる等式

sin⁡(ψW−ψX) e(ψY)=sin⁡(ψW−ψY) e(ψX)+sin⁡(ψY−ψX) e(ψW)\sin(\psi_W-\psi_X)\,\boldsymbol e(\psi_Y)=\sin(\psi_W-\psi_Y)\,\boldsymbol e(\psi_X)+\sin(\psi_Y-\psi_X)\,\boldsymbol e(\psi_W)

(xx 成分は、加法定理で展開すると (sin⁡ψWcos⁡ψY−cos⁡ψWsin⁡ψY)cos⁡ψX+(sin⁡ψYcos⁡ψX−cos⁡ψYsin⁡ψX)cos⁡ψW=cos⁡ψY(sin⁡ψWcos⁡ψX−cos⁡ψWsin⁡ψX)=sin⁡(ψW−ψX)cos⁡ψY(\sin\psi_W\cos\psi_Y-\cos\psi_W\sin\psi_Y)\cos\psi_X+(\sin\psi_Y\cos\psi_X-\cos\psi_Y\sin\psi_X)\cos\psi_W=\cos\psi_Y(\sin\psi_W\cos\psi_X-\cos\psi_W\sin\psi_X)=\sin(\psi_W-\psi_X)\cos\psi_Y。yy 成分も同様に sin⁡(ψW−ψX)sin⁡ψY\sin(\psi_W-\psi_X)\sin\psi_Y になる)から、s=sin⁡(ψW−ψY)/sin⁡(ψW−ψX)s=\sin(\psi_W-\psi_Y)/\sin(\psi_W-\psi_X)、s′=sin⁡(ψY−ψX)/sin⁡(ψW−ψX)s'=\sin(\psi_Y-\psi_X)/\sin(\psi_W-\psi_X) として e(ψY)=s e(ψX)+s′ e(ψW)\boldsymbol e(\psi_Y)=s\,\boldsymbol e(\psi_X)+s'\,\boldsymbol e(\psi_W) と書ける。0<ψY−ψX<ψW−ψX<π0<\psi_Y-\psi_X<\psi_W-\psi_X<\pi、0<ψW−ψY<π0<\psi_W-\psi_Y<\pi なので 3 つの sin⁡\sin はすべて正で、s,s′>0s,s'>0 である。μ=(s/rX+s′/rW)−1>0\mu=(s/r_X+s'/r_W)^{-1}>0 とおくと

μ e(ψY)=μsrXX+μs′rWW,μsrX+μs′rW=1\mu\,\boldsymbol e(\psi_Y)=\frac{\mu s}{r_X}X+\frac{\mu s'}{r_W}W,\qquad\frac{\mu s}{r_X}+\frac{\mu s'}{r_W}=1

なので、点 Q=μe(ψY)Q=\mu\boldsymbol e(\psi_Y) は線分 XWXW の両端以外の点で、KK に入り、端点でない(とくに Q≠YQ\ne Y)。YY は同じ半直線上で KK の最も遠い点なので rY>μr_Y>\mu である。h(τ)=S(X,W,τe(ψY))h(\tau)=S(X,W,\tau\boldsymbol e(\psi_Y)) は τ\tau の 1 次式で、h(0)=S(O,X,W)=12rXrWsin⁡(ψW−ψX)>0h(0)=S(O,X,W)=\tfrac12r_Xr_W\sin(\psi_W-\psi_X)>0、h(μ)=0h(\mu)=0(QQ は直線 XWXW 上)なので、τ>μ\tau>\mu で負になる。よって S(X,W,Y)=h(rY)<0S(X,W,Y)=h(r_Y)<0、すなわち S(Ai,Aj,Ak)=S(X,Y,W)=−S(X,W,Y)>0S(A_i,A_j,A_k)=S(X,Y,W)=-S(X,W,Y)>0 である。

以上で A1⋯AnA_1\cdots A_n は反時計回りの凸 nn 角形で、(b) から KK はその凸結合の全体である。三角形 A1AkAk+1A_1A_kA_{k+1} の和集合になることは 定理 7.2[図形と方程式] の証明の (a) による。

2. 辺 AkAk+1A_kA_{k+1} について g(y)=S(Ak,Ak+1,y)=12det⁡(Ak+1−Ak,y−Ak)g(\boldsymbol y)=S(A_k,A_{k+1},\boldsymbol y)=\tfrac12\det(A_{k+1}-A_k,\boldsymbol y-A_k) とおく。これは y\boldsymbol y の 1 次式で、1 から(巡回で SS が変わらないことも使って)l≠k,k+1l\ne k,k+1 では g(Al)>0g(A_l)>0 である。KK の点 y=∑lλlAl\boldsymbol y=\sum_l\lambda_lA_l では g(y)=∑lλlg(Al)≥0g(\boldsymbol y)=\sum_l\lambda_lg(A_l)\ge0 で、等号は l≠k,k+1l\ne k,k+1 の λl\lambda_l がすべて 00 のとき、すなわち y\boldsymbol y が線分 AkAk+1A_kA_{k+1} 上にあるときに限る。したがって直線 L={g=0}L=\{g=0\}(命題 6.2[平面ベクトルと座標] の 2 により直線 AkAk+1A_kA_{k+1})と KK の共通部分は辺 AkAk+1A_kA_{k+1} で、他の端点はこの直線上にない。辺の中点 MM のいくらでも近くに g<0g<0 の点(KK の外の点)があるので、MM は内部の点でなく、ある不等式 jj が MM で効く。補題 6.2 の 2 から jj は Ak,Ak+1A_k,A_{k+1} でも効き、ℓj=L\ell_j=L、K∩ℓj=AkAk+1K\cap\ell_j=A_kA_{k+1} である。AkA_k を含む辺は、他の端点を含まないことから Ak−1AkA_{k-1}A_k と AkAk+1A_kA_{k+1} だけで、S(Ak−1,Ak,Ak+1)>0S(A_{k-1},A_k,A_{k+1})>0(1 と巡回)から Ak−1,Ak,Ak+1A_{k-1},A_k,A_{k+1} は一直線上にないので、2 本は相異なる直線上にある。

3. K∩ℓjK\cap\ell_j が空でなければ、(a) から両端が端点の線分 [Aa,Ac][A_a,A_c] である。Aa=AcA_a=A_c なら 1 つの端点である。a<ca<c とし、Aa,AcA_a,A_c が隣り合わない(c≠a+1c\ne a+1 かつ (a,c)≠(1,n)(a,c)\ne(1,n))と仮定する。すると a<b<ca<b<c となる bb と、b′<ab'<a または b′>cb'>c となる b′b' がある。1 と巡回から S(Aa,Ac,Ab)=−S(Aa,Ab,Ac)<0S(A_a,A_c,A_b)=-S(A_a,A_b,A_c)<0、S(Aa,Ac,Ab′)>0S(A_a,A_c,A_{b'})>0 なので、1 次式 S(Aa,Ac,⋅)S(A_a,A_c,\cdot) の符号が AbA_b と Ab′A_{b'} で異なり、線分 AbAb′A_bA_{b'} は直線 AaAc=ℓjA_aA_c=\ell_j と両端以外の点 ZZ で交わる(命題 6.1[図形と方程式] の 1)。jj は Z∈KZ\in K で効くので、補題 6.2 の 2 から AbA_b でも効き、Ab∈ℓjA_b\in\ell_j、S(Aa,Ac,Ab)=0S(A_a,A_c,A_b)=0 となって矛盾する。よって Aa,AcA_a,A_c は隣り合い、K∩ℓjK\cap\ell_j は 1 本の辺である。

面の(凸多角形としての)辺は、補題 6.3 の 2 の意味で、面の平面の直交座標(下の証明の (P1) で作る)で見た辺とします。

定理 6.4(凸多面体の面の構造)✓

凸多面体 PP(定義 6.1)について、次が成り立つ。

  • (P1) 各面 FF は、その平面の直交座標で見て凸多角形 A1A2⋯AnA_1A_2\cdots A_n(n≥3n\ge3、定義 5.5[合同と相似])であり、その頂点 A1,…,AnA_1,\dots,A_n は、FF に含まれる PP の頂点のすべてである。FF は三角形 A1AkAk+1A_1A_kA_{k+1}(k=2,…,n−1k=2,\dots,n-1)の和集合である(扇形分割)。
  • (P2) 各面の辺は PP の辺である。PP の各辺はちょうど 2 つの面に含まれ、その 2 つの面の両方で辺になっている。PP の辺の両端は PP の頂点で、辺はそれ以外の頂点を含まない。
  • (P3) 相異なる 2 つの面の共通部分は、空、1 つの頂点、1 本の辺のいずれかである。
  • (P4) PP の各頂点 vv について、vv を含む面の個数と vv を含む辺の個数は等しい。
証明(定理 6.4)

Hi={x∣ni⋅x=ci}H_i=\{\boldsymbol x\mid\boldsymbol n_i\cdot\boldsymbol x=c_i\} とおく。面 G=P∩HiG=P\cap H_i は一直線上にない 3 点を含むので、その平面 HiH_i は GG から決まる(3 点を通る平面はただ 1 つ、命題 3.1[空間座標と空間ベクトル] の 2)。とくに相異なる面の平面は相異なる。また、法線ベクトルが平行でない 2 平面 {m⋅x=c}\{\boldsymbol m\cdot\boldsymbol x=c\}、{m′⋅x=c′}\{\boldsymbol m'\cdot\boldsymbol x=c'\} が点 x0\boldsymbol x_0 を共有すると、交わりは直線 {x0+τ m×m′}\{\boldsymbol x_0+\tau\,\boldsymbol m\times\boldsymbol m'\} である。実際、交わりの点 x\boldsymbol x について z=x−x0\boldsymbol z=\boldsymbol x-\boldsymbol x_0 は m,m′\boldsymbol m,\boldsymbol m' に垂直で、m,m′,m×m′\boldsymbol m,\boldsymbol m',\boldsymbol m\times\boldsymbol m' は 1 次独立(補題 2.3[空間座標と空間ベクトル] の 1 から det⁡=∣m×m′∣2≠0\det=|\boldsymbol m\times\boldsymbol m'|^2\ne0、命題 2.1[空間座標と空間ベクトル])なので z=αm+βm′+γ m×m′\boldsymbol z=\alpha\boldsymbol m+\beta\boldsymbol m'+\gamma\,\boldsymbol m\times\boldsymbol m' と書け、m,m′\boldsymbol m,\boldsymbol m' との内積から α∣m∣2+β m⋅m′=0\alpha|\boldsymbol m|^2+\beta\,\boldsymbol m\cdot\boldsymbol m'=0、α m⋅m′+β∣m′∣2=0\alpha\,\boldsymbol m\cdot\boldsymbol m'+\beta|\boldsymbol m'|^2=0。係数の行列式は ∣m∣2∣m′∣2−(m⋅m′)2=∣m×m′∣2≠0|\boldsymbol m|^2|\boldsymbol m'|^2-(\boldsymbol m\cdot\boldsymbol m')^2=|\boldsymbol m\times\boldsymbol m'|^2\ne0(同補題の 3)なので α=β=0\alpha=\beta=0 である。逆に、直線上の点は m×m′\boldsymbol m\times\boldsymbol m' が m,m′\boldsymbol m,\boldsymbol m' に垂直(同補題の 2)なので両方の平面にある。法線が平行な相異なる 2 平面は交わらない。

(P1) 面 F=P∩HF=P\cap H、H=HiH=H_i、n=ni\boldsymbol n=\boldsymbol n_i とする。平面の直交座標: n\boldsymbol n に平行でない基本ベクトル ek\boldsymbol e_k をとり、f1=n×ek/∣n×ek∣\boldsymbol f_1=\boldsymbol n\times\boldsymbol e_k/|\boldsymbol n\times\boldsymbol e_k|、f2=n×f1/∣n∣\boldsymbol f_2=\boldsymbol n\times\boldsymbol f_1/|\boldsymbol n| とおく。補題 2.3[空間座標と空間ベクトル] の 2〜4 から、f1,f2\boldsymbol f_1,\boldsymbol f_2 は n\boldsymbol n に垂直で互いに垂直な単位ベクトルである(∣n×f1∣2=∣n∣2∣f1∣2−(n⋅f1)2=∣n∣2|\boldsymbol n\times\boldsymbol f_1|^2=|\boldsymbol n|^2|\boldsymbol f_1|^2-(\boldsymbol n\cdot\boldsymbol f_1)^2=|\boldsymbol n|^2)。f1,f2,n\boldsymbol f_1,\boldsymbol f_2,\boldsymbol n は 1 次独立(1 次結合が 0\boldsymbol 0 なら、各ベクトルとの内積で係数が 00)なので、点 p∈H\boldsymbol p\in H を固定すると、任意の x\boldsymbol x は x=p+sf1+tf2+un\boldsymbol x=\boldsymbol p+s\boldsymbol f_1+t\boldsymbol f_2+u\boldsymbol n とただ 1 通りに書け(命題 2.1[空間座標と空間ベクトル])、n⋅(x−p)=u∣n∣2\boldsymbol n\cdot(\boldsymbol x-\boldsymbol p)=u|\boldsymbol n|^2 から x∈H  ⟺  u=0\boldsymbol x\in H\iff u=0 である。HH の点 p+sf1+tf2\boldsymbol p+s\boldsymbol f_1+t\boldsymbol f_2 に (s,t)(s,t) を対応させると、∣sf1+tf2∣2=s2+t2|s\boldsymbol f_1+t\boldsymbol f_2|^2=s^2+t^2 なので、距離・内積・角は保たれる。

この座標で、不等式 jj は (nj⋅f1)s+(nj⋅f2)t≤cj−nj⋅p(\boldsymbol n_j\cdot\boldsymbol f_1)s+(\boldsymbol n_j\cdot\boldsymbol f_2)t\le c_j-\boldsymbol n_j\cdot\boldsymbol p となる。係数が両方 00 になるのは nj\boldsymbol n_j が f1,f2\boldsymbol f_1,\boldsymbol f_2 に垂直、すなわち nj\boldsymbol n_j が n\boldsymbol n の実数倍のときで、このとき左辺は HH 上で一定であり、FF の点で成り立つので HH 全体で成り立つ。これを除くと、FF は 補題 6.3 の仮定(有界、一直線上にない 3 点を含む)を満たす半平面の共通部分で、その境界の直線 ℓj\ell_j は H∩HjH\cap H_j(nj\boldsymbol n_j が n\boldsymbol n に平行でない jj)である。

FF の端点は、FF に含まれる PP の頂点と一致する。実際、PP の頂点で FF に含まれるものは明らかに FF の端点である。逆に a\boldsymbol a が FF の端点で、a=(1−t)u+tu′\boldsymbol a=(1-t)\boldsymbol u+t\boldsymbol u'(u≠u′∈P\boldsymbol u\ne\boldsymbol u'\in P、0<t<10<t<1)とすると、不等式 ii は a\boldsymbol a で効くので 補題 6.2 の 2 から u,u′∈P∩H=F\boldsymbol u,\boldsymbol u'\in P\cap H=F となり、a\boldsymbol a が FF の端点であることに反する。補題 6.3 の 1 から (P1) が従う。

(P2) の前半: 面の辺 ss を含む面はちょうど 2 つ。 面 F=P∩HiF=P\cap H_i の辺 s=[p,q]s=[\boldsymbol p,\boldsymbol q](p≠q\boldsymbol p\ne\boldsymbol q)をとる。補題 6.3 の 2 から、nj\boldsymbol n_j が ni\boldsymbol n_i に平行でないある jj について s=F∩ℓs=F\cap\ell、ℓ=Hi∩Hj\ell=H_i\cap H_j(直線)である。ℓ⊂Hi\ell\subset H_i なので P∩ℓ=F∩ℓ=sP\cap\ell=F\cap\ell=s。x=(p+q)/2\boldsymbol x=(\boldsymbol p+\boldsymbol q)/2、d=q−p\boldsymbol d=\boldsymbol q-\boldsymbol p とおく。

PP の内部の点 z\boldsymbol z を 1 つとる。z\boldsymbol z ではどの不等式も効かない(補題 6.2 の 1)ので z∉Hi⊃ℓ\boldsymbol z\notin H_i\supset\ell、したがって w=z−x\boldsymbol w=\boldsymbol z-\boldsymbol x は d\boldsymbol d に平行でない。ν=∣w∣2d−(d⋅w)w\boldsymbol\nu=|\boldsymbol w|^2\boldsymbol d-(\boldsymbol d\cdot\boldsymbol w)\boldsymbol w とおくと ν⋅w=0\boldsymbol\nu\cdot\boldsymbol w=0、ν⋅d=∣w∣2∣d∣2−(d⋅w)2=∣d×w∣2>0\boldsymbol\nu\cdot\boldsymbol d=|\boldsymbol w|^2|\boldsymbol d|^2-(\boldsymbol d\cdot\boldsymbol w)^2=|\boldsymbol d\times\boldsymbol w|^2>0(補題 2.3[空間座標と空間ベクトル] の 3、4)。平面 Π={y∣ν⋅(y−x)=0}\Pi=\{\boldsymbol y\mid\boldsymbol\nu\cdot(\boldsymbol y-\boldsymbol x)=0\} は x\boldsymbol x と z\boldsymbol z を通り、ℓ∩Π={x}\ell\cap\Pi=\{\boldsymbol x\} である(ν⋅(τd)=0  ⟺  τ=0\boldsymbol\nu\cdot(\tau\boldsymbol d)=0\iff\tau=0)。Π\Pi は内部の点 z\boldsymbol z を含むので、どの HkH_k とも一致しない。

断面 K′=P∩ΠK'=P\cap\Pi を、(P1) の証明と同じく Π\Pi の直交座標で見ると、Π\Pi 上で一定な不等式(nk\boldsymbol n_k が ν\boldsymbol\nu に平行なもの)は x∈K′\boldsymbol x\in K' で成り立つので除けて、K′K' は有界な半平面の共通部分である。z\boldsymbol z を中心とする小さな球は PP に入るので、K′K' は一直線上にない 3 点を含む。K′K' の境界の直線は Π∩Hk\Pi\cap H_k の形である。x\boldsymbol x は K′K' の端点である:x=(1−t)u+tu′\boldsymbol x=(1-t)\boldsymbol u+t\boldsymbol u'(u,u′∈K′\boldsymbol u,\boldsymbol u'\in K'、0<t<10<t<1)なら、不等式 i,ji,j は x\boldsymbol x で効くので 補題 6.2 の 2 から u,u′∈Hi∩Hj∩Π=ℓ∩Π={x}\boldsymbol u,\boldsymbol u'\in H_i\cap H_j\cap\Pi=\ell\cap\Pi=\{\boldsymbol x\} である。補題 6.3 を K′K' に使うと、x\boldsymbol x は K′K' の頂点 AmA_m で、x\boldsymbol x を含む K′K' の辺は Am−1AmA_{m-1}A_m、AmAm+1A_mA_{m+1} の 2 本だけ、それぞれ相異なる直線 λ=Π∩Hk\lambda=\Pi\cap H_k、λ′=Π∩Hk′\lambda'=\Pi\cap H_{k'} 上にある。不等式 kk は x\boldsymbol x で効くので、x\boldsymbol x が p,q\boldsymbol p,\boldsymbol q の中点であることと 補題 6.2 の 2 から p,q∈Hk\boldsymbol p,\boldsymbol q\in H_k、すなわち Hk⊃ℓH_k\supset\ell。HkH_k は Am−1A_{m-1} も含み、Am−1∈ΠA_{m-1}\in\Pi、Am−1≠xA_{m-1}\ne\boldsymbol x なので Am−1∉ℓA_{m-1}\notin\ell。よって G1=P∩HkG_1=P\cap H_k は一直線上にない 3 点 p,q,Am−1\boldsymbol p,\boldsymbol q,A_{m-1} を含む面である。同様に G2=P∩Hk′G_2=P\cap H_{k'} も ss を含む面で、Hk∩Π=λ≠λ′=Hk′∩ΠH_k\cap\Pi=\lambda\ne\lambda'=H_{k'}\cap\Pi から Hk≠Hk′H_k\ne H_{k'}、G1≠G2G_1\ne G_2。

逆に、ss を含む面 G=P∩HlG=P\cap H_l をとる。Hl⊃ℓH_l\supset\ell で、GG は ℓ\ell 上にない点 g\boldsymbol g を含む。0<t<10<t<1 について yt=(1−t)(x+θd)+tg\boldsymbol y_t=(1-t)(\boldsymbol x+\theta\boldsymbol d)+t\boldsymbol g、θ=−t ν⋅(g−x)(1−t) ν⋅d\theta=-\dfrac{t\,\boldsymbol\nu\cdot(\boldsymbol g-\boldsymbol x)}{(1-t)\,\boldsymbol\nu\cdot\boldsymbol d} とおくと ν⋅(yt−x)=0\boldsymbol\nu\cdot(\boldsymbol y_t-\boldsymbol x)=0 で、tt が小さければ ∣θ∣≤12|\theta|\le\tfrac12、すなわち x+θd∈s\boldsymbol x+\theta\boldsymbol d\in s なので、GG の凸性から yt∈G∩Π\boldsymbol y_t\in G\cap\Pi。yt∈ℓ\boldsymbol y_t\in\ell とすると g=(yt−(1−t)(x+θd))/t\boldsymbol g=\bigl(\boldsymbol y_t-(1-t)(\boldsymbol x+\theta\boldsymbol d)\bigr)/t は ℓ\ell の 2 点の係数の和が 11 の 1 次結合で ℓ\ell 上にあることになるので、yt≠x\boldsymbol y_t\ne\boldsymbol x である。したがって K′∩(Π∩Hl)K'\cap(\Pi\cap H_l) は相異なる 2 点 x,yt\boldsymbol x,\boldsymbol y_t を結ぶ線分を含む。Π≠Hl\Pi\ne H_l で両者は x\boldsymbol x を共有するので、nl\boldsymbol n_l は ν\boldsymbol\nu に平行でなく(平行なら同じ平面になる)、Π∩Hl\Pi\cap H_l は K′K' の境界の直線である。補題 6.3 の 3 から K′∩(Π∩Hl)K'\cap(\Pi\cap H_l) は(2 点以上を含むので)x\boldsymbol x を含む K′K' の辺で、Π∩Hl∈{λ,λ′}\Pi\cap H_l\in\{\lambda,\lambda'\}。HlH_l は 2 本の相異なる直線 ℓ\ell と Π∩Hl\Pi\cap H_l を含むので、同じ 2 本を含む HkH_k または Hk′H_{k'} に等しく(平面は一直線上にない 3 点で決まる)、G∈{G1,G2}G\in\{G_1,G_2\} である。

以上から ss を含む面はちょうど G1,G2G_1,G_2 の 2 つで(FF はそのどちらか)、Hk∩Hk′=ℓH_k\cap H_{k'}=\ell(相異なる 2 平面がともに ℓ\ell を含む)から G1∩G2=P∩ℓ=sG_1\cap G_2=P\cap\ell=s、すなわち ss は PP の辺である。さらに G1G_1 の平面 HkH_k の中で ℓ=Hk∩Hk′\ell=H_k\cap H_{k'} は G1G_1 の境界の直線で、G1∩ℓ=sG_1\cap\ell=s は 2 点以上を含むので、補題 6.3 の 3 から ss は G1G_1 の辺である。G2G_2 でも同じである。

(P2) の後半。 PP の辺 e=G∩G′e=G\cap G'(G=P∩HG=P\cap H、G′=P∩H′G'=P\cap H'、H≠H′H\ne H')をとる。ee は 2 点以上を含むので H∩H′H\cap H' は直線 ℓ\ell で、e=P∩ℓ=G∩ℓe=P\cap\ell=G\cap\ell。ℓ\ell は GG の平面の中で GG の境界の直線なので、補題 6.3 の 3 から ee は GG の辺である。前半から ee を含む面はちょうど 2 つで、それは G,G′G,G' であり、ee は両方の辺である。ee の両端は GG の頂点、すなわち PP の頂点((P1))で、ee に含まれる PP の頂点は GG の端点なので、補題 6.3 の 2 から両端だけである。

(P3) 相異なる面 G=P∩HG=P\cap H、G′=P∩H′G'=P\cap H' について、H∩H′H\cap H' が空なら G∩G′G\cap G' は空である。そうでなければ H∩H′H\cap H' は直線 ℓ\ell で、G∩G′=G∩ℓG\cap G'=G\cap\ell。ℓ\ell は GG の境界の直線なので、補題 6.3 の 3 からこれは空、GG の 1 つの頂点((P1) により PP の頂点)、GG の 1 本の辺のいずれかで、最後の場合は 2 つの面の共通部分である線分なので PP の辺である。

(P4) 頂点 vv を含む面の個数を fvf_v、辺の個数を eve_v とし、v∈e⊂Gv\in e\subset G となる(辺 ee、面 GG)の組の個数を 2 通りに数える。vv を含む面 GG では、vv は GG の頂点で((P1))、GG に含まれる PP の辺は GG の辺と一致する((P2):面の辺は PP の辺、PP の辺 e⊂Ge\subset G は ee を含む 2 つの面の両方で辺)。補題 6.3 の 2 から vv を含む GG の辺はちょうど 2 本なので、組の個数は 2fv2f_v である。一方、vv を含む辺は (P2) からちょうど 2 つの面に含まれ、その面はどちらも vv を含むので、組の個数は 2ev2e_v である。よって fv=evf_v=e_v。

6.3. 球面への中心射影と Euler の多面体定理

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PP の内部の 1 点を原点にとると、00 は各半空間の内部にあるので ci>0c_i>0 です。

次の補題は、多面体の表面を原点から見た影絵のように球面に写し、表面の三角形が球面三角形になって球面を隙間なく覆う、と言うものです。これで Girard の定理が使えるようになります。証明の 3 は位相の言葉を使います。コンパクトは有界で閉じた集合のこと、稠密は「どんなに小さい領域にもその集合の点がある」ことです。

補題 6.5(多面体の球面への中心射影)✓

凸多面体 PP の内部に原点があるとする。

  1. ∂P\partial P の点 x\boldsymbol x に x/∣x∣\boldsymbol x/|\boldsymbol x| を対応させる写像 π:∂P→S2\pi:\partial P\to S^2 は全単射である。
  2. PP の面 FF の扇形分割の三角形 T={ξ1p+ξ2q+ξ3r∣ξi≥0, ∑ξi=1}T=\{\xi_1\boldsymbol p+\xi_2\boldsymbol q+\xi_3\boldsymbol r\mid\xi_i\ge0,\ \sum\xi_i=1\} について、π(T)\pi(T) は球面三角形(頂点 p^,q^,r^\hat{\boldsymbol p},\hat{\boldsymbol q},\hat{\boldsymbol r})である。
  3. すべての面の扇形分割の三角形に対する像 π(T)\pi(T) は S2S^2 を覆い、相異なる 2 つの像の共通部分は σ\sigma 測度 00 である。
証明(補題 6.5)

1: 補題 6.2 の 4 を d=3d=3、K=PK=P に使うと、各 u∈S2\boldsymbol u\in S^2 に対し、半直線 {tu∣t≥0}\{t\boldsymbol u\mid t\ge0\} 上にある ∂P\partial P の点はただ 1 つで、ρ(u)u\rho(\boldsymbol u)\boldsymbol u(ρ(u)>0\rho(\boldsymbol u)>0)の形である。∂P⊂P\partial P\subset P(PP は閉集合)の点 x\boldsymbol x は内部の点である原点と異なるので、x\boldsymbol x は半直線 {t π(x)∣t≥0}\{t\,\pi(\boldsymbol x)\mid t\ge0\} 上の ∂P\partial P の点であり、x=ρ(π(x)) π(x)\boldsymbol x=\rho(\pi(\boldsymbol x))\,\pi(\boldsymbol x)。したがって π\pi は全単射で、逆写像は u↦ρ(u)u\boldsymbol u\mapsto\rho(\boldsymbol u)\boldsymbol u である。

2: TT は面 F⊂{ni⋅x=ci}F\subset\{\boldsymbol n_i\cdot\boldsymbol x=c_i\}(ci>0c_i>0 なので原点を含まない平面)内の三角形で、p,q,r\boldsymbol p,\boldsymbol q,\boldsymbol r はこの平面内の一直線上にない 3 点なので、1 次独立(原点を通らない平面内の 3 点は、アフィン独立なら 1 次独立)である。TT の点は ξi≥0\xi_i\ge0 の 1 次結合で、中心射影はこれを正の定数倍するだけなので、π(T)={ξ1p^+ξ2q^+ξ3r^∈S2∣ξi≥0}\pi(T)=\{\xi_1\hat{\boldsymbol p}+\xi_2\hat{\boldsymbol q}+\xi_3\hat{\boldsymbol r}\in S^2\mid\xi_i\ge0\}(正の係数の変更を除いて同じ錐)で、球面三角形である。

3: まず ∂P\partial P が面の和であることを示す。1 により π:∂P→S2\pi:\partial P\to S^2 は連続な全単射で、∂P\partial P は有界閉集合なのでコンパクト(定理 5.2[コンパクト性])、したがって π\pi は同相写像である(系 6.5[コンパクト性])。∂P\partial P の点 x\boldsymbol x は、ある ii で ni⋅x=ci\boldsymbol n_i\cdot\boldsymbol x=c_i を満たす(補題 6.2 の 1)。x\boldsymbol x を通る平面 {ni⋅y=ci}\{\boldsymbol n_i\cdot\boldsymbol y=c_i\} がちょうど 1 種類(同じ平面を与える不等式は同一視する)なら、他の不等式は x\boldsymbol x で狭義に成り立つので、x\boldsymbol x の近くではこの平面の点がすべて PP に入り、x\boldsymbol x は 2 次元の面に属する。相異なる 2 平面の交わりは直線で、どの平面も原点を通らないのでこの直線も原点を通らず、π\pi による像は原点と直線の張る平面と S2S^2 の交わり(大円)に含まれる。そのような直線は有限個なので、2 種類以上の平面に乗る点の像は σ\sigma 測度 00 の集合に入り、その補集合は S2S^2 で稠密である(S2S^2 の空でない開集合は、ある点 u\boldsymbol u のまわりのキャップ {y∈S2∣y⋅u≥cos⁡ε}\{\boldsymbol y\in S^2\mid\boldsymbol y\cdot\boldsymbol u\ge\cos\varepsilon\}(0<ε<π0<\varepsilon<\pi)を含む。これは直交行列で球帯 {ω3≥cos⁡ε}\{\omega_3\ge\cos\varepsilon\} に移るので、命題 6.4[ℝ^d の変数変換公式と極座標] と 定理 4.2 から測度は 2π(1−cos⁡ε)>02\pi(1-\cos\varepsilon)>0 で、測度 00 の集合には含まれない)。したがって 1 種類の平面だけに乗る点は ∂P\partial P で稠密で、面は有限個の閉集合なので、面の和は ∂P\partial P に等しい。各面は扇形分割の三角形の和(定理 6.4 の (P1))なので、π\pi が全単射であることから像は S2S^2 を覆う。相異なる 2 つの三角形 T,T′T,T' の共通部分は、同じ面の中なら対角線または頂点(定理 7.2[図形と方程式] の証明の (b) から、A1AkAk+1A_1A_kA_{k+1} と A1AlAl+1A_1A_lA_{l+1}(k<lk<l)の共通部分は直線 A1Ak+1A_1A_{k+1} 上にある)、異なる面なら 定理 6.4 の (P3) により辺・頂点・空で、いずれも線分または点に含まれる。π\pi は単射なので π(T)∩π(T′)=π(T∩T′)\pi(T)\cap\pi(T')=\pi(T\cap T') で、線分と原点が張る平面と S2S^2 の交わり(大円の一部)に含まれ、σ\sigma 測度 00 である。

補題 6.6(頂点のまわりの角の和)✓

上の設定で、PP の頂点 vv について、vv を頂点にもつ扇形分割の三角形 TT の像 π(T)\pi(T) の、v^\hat v での(球面三角形としての)角の総和は 2π2\pi である。

証明(補題 6.6)

vv は PP の端点なので、v∈T=conv⁡{p,q,r}v\in T=\operatorname{conv}\{\boldsymbol p,\boldsymbol q,\boldsymbol r\} ならば vv は TT の頂点である(そうでなければ vv は PP 内の線分の内部の点になる)。vv を頂点にもたない三角形の像は、v^\hat v を含まない閉集合なので v^\hat v から正の距離にあり、十分小さい ε\varepsilon について、キャップ Cε={x∈S2∣x⋅v^>cos⁡ε}C_\varepsilon=\{\boldsymbol x\in S^2\mid\boldsymbol x\cdot\hat v>\cos\varepsilon\} は vv を頂点にもつ三角形の像の和に入る。そのような三角形 TT では、係数 ξ1\xi_1(v^\hat v の係数)は v^\hat v で 11 なので連続性から CεC_\varepsilon で正で、π(T)∩Cε=Lv^∩Cε\pi(T)\cap C_\varepsilon=L_{\hat v}\cap C_\varepsilon(月形、補題 5.3)。その面積は ∠T(1−cos⁡ε)\angle_T(1-\cos\varepsilon) で、補題 6.5 の 3 から重なりは測度 00 なので、∑T∠T(1−cos⁡ε)=σ(Cε)=2π(1−cos⁡ε)\sum_T\angle_T(1-\cos\varepsilon)=\sigma(C_\varepsilon)=2\pi(1-\cos\varepsilon)(球座標で ∫02π ⁣∫0εsin⁡ϑ dϑ dφ\int_0^{2\pi}\!\int_0^\varepsilon\sin\vartheta\,d\vartheta\,d\varphi)。1−cos⁡ε>01-\cos\varepsilon>0 で割ると ∑T∠T=2π\sum_T\angle_T=2\pi である。

証明の方針は次のとおりです。多面体の表面を三角形に分けて球面に写し、Girard の定理で球面の面積 4π4\pi を内角の和で表します。各頂点のまわりの角の和が 2π2\pi であることを使うと、V,E,FV,E,F の関係式が出ます。

定理 6.7(Euler の多面体定理)✓

凸多面体の頂点・辺・面の個数について V−E+F=2V-E+F=2 である。

証明(定理 6.7)

Legendre の方法で示す。内部の 1 点を原点にとる。面 FiF_i(nin_i 角形)を 定理 6.4 の (P1) の扇形分割で ni−2n_i-2 個の三角形に分ける。三角形の総数を F′F'、辺(三角形の辺)の総数を E′E' とすると、各面で対角線が ni−3n_i-3 本増えるので

F′=∑i(ni−2),E′=E+∑i(ni−3),V−E′+F′=V−E+∑i1=V−E+FF'=\sum_i(n_i-2),\qquad E'=E+\sum_i(n_i-3),\qquad V-E'+F'=V-E+\sum_i1=V-E+F

である(各面の辺は PP の辺で、PP の各辺はちょうど 2 つの面の辺なので、面の辺を合わせると EE 本)。(P2)(定理 6.4)により、多面体の各辺は 2 つの面に、扇形分割では各面の辺はちょうど 1 つの三角形に含まれ、各対角線は同じ面の 2 つの三角形に含まれるので、三角形の辺はすべてちょうど 2 つの三角形に属し、3F′=2E′3F'=2E' である。

補題 6.5 により、F′F' 個の球面三角形が S2S^2 を(測度 00 の重なりを除いて)敷き詰めるので、Girard の定理(定理 5.4)を足して

4π=∑T(∠1+∠2+∠3−π)=∑v∑T∋v∠T(v)−πF′.4\pi=\sum_T\bigl(\angle_1+\angle_2+\angle_3-\pi\bigr)=\sum_{v}\sum_{T\ni v}\angle_T(v)-\pi F'.

頂点ごとの角の和は 補題 6.6 により 2π2\pi なので、4π=2πV−πF′4\pi=2\pi V-\pi F'、すなわち F′=2V−4F'=2V-4。したがって V−E+F=V−E′+F′=V−32F′+F′=V−12F′=V−(V−2)=2V-E+F=V-E'+F'=V-\tfrac32F'+F'=V-\tfrac12F'=V-(V-2)=2 である。

系 6.8(Descartes の角欠損の定理)✓

凸多面体の各頂点 vv について、vv に集まる面の(平面内の)内角の和を θv\theta_v とするとき、角欠損 2π−θv2\pi-\theta_v の総和は 4π4\pi である。

証明(系 6.8)

各面は凸 nin_i 角形で(定理 6.4 の (P1)。面の平面の直交座標は角を保つ)、内角の和は (ni−2)π(n_i-2)\pi(合同と相似の章の 系 5.6[合同と相似])。すべての面で足すと ∑vθv=∑i(ni−2)π=(2E−2F)π\sum_v\theta_v=\sum_i(n_i-2)\pi=(2E-2F)\pi(面の辺は PP の辺で、各辺はちょうど 2 つの面の辺なので ∑ni=2E\sum n_i=2E。定理 6.4 の (P2))。よって ∑v(2π−θv)=2πV−(2E−2F)π=2π(V−E+F)=4π\sum_v(2\pi-\theta_v)=2\pi V-(2E-2F)\pi=2\pi(V-E+F)=4\pi(定理 6.7)。

7. 正多面体と正多角形による敷き詰め

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定義 7.1(正多面体)↗

凸多面体で、すべての面が合同な正 pp 角形(p≥3p\ge3)であり、各頂点にちょうど qq 個の面と qq 本の辺が集まる(q≥3q\ge3)ものを正多面体といい、{p,q}\{p,q\} の型であるという。

頂点に集まる面の個数が頂点によらず一定であることは、定義に必要な条件です(面がすべて合同な正三角形でも、頂点ごとに集まる面の数が 33 と 44 で違う多面体があります)。一方、辺の条件は面の条件から従います。頂点に qq 個の面が集まれば、定理 6.4 の (P4) により辺もちょうど qq 本集まるからです(定義に辺の条件も書いてあるのは、証明で使う形を明示するためで、定義の対象は狭くなりません)。

定理 7.2(正多面体は 5 種類)✓

正多面体の型 (p,q)(p,q) は (3,3)(3,3)、(3,4)(3,4)、(4,3)(4,3)、(3,5)(3,5)、(5,3)(5,3) のいずれかで、(V,E,F)(V,E,F) はそれぞれ (4,6,4)(4,6,4)、(6,12,8)(6,12,8)、(8,12,6)(8,12,6)、(12,30,20)(12,30,20)、(20,30,12)(20,30,12) である。

証明(定理 7.2)

各面は pp 本の辺をもち、面の辺は PP の辺で、各辺はちょうど 2 つの面の辺である(定理 6.4 の (P2))ので pF=2EpF=2E。各頂点に qq 本の辺が集まり、各辺に含まれる頂点はちょうど両端の 2 つ(同じく (P2))なので qV=2EqV=2E。定理 6.7 に代入すると 2Eq−E+2Ep=2\dfrac{2E}q-E+\dfrac{2E}p=2、すなわち E(1p+1q−12)=1E\Bigl(\dfrac1p+\dfrac1q-\dfrac12\Bigr)=1 で、E>0E>0 なので 1p+1q>12\dfrac1p+\dfrac1q>\dfrac12。分母を払うと pq−2p−2q<0pq-2p-2q<0、すなわち (p−2)(q−2)<4(p-2)(q-2)<4。p−2,q−2≥1p-2,q-2\ge1 の整数で積が 44 未満のものは (1,1),(1,2),(2,1),(1,3),(3,1)(1,1),(1,2),(2,1),(1,3),(3,1) だけで、これが 5 つの型である。E=(1p+1q−12)−1E=\Bigl(\dfrac1p+\dfrac1q-\dfrac12\Bigr)^{-1}、V=2EqV=\dfrac{2E}q、F=2EpF=\dfrac{2E}p を各型で計算すると定理に書いた値になる(たとえば (3,5)(3,5) では E=(13+15−12)−1=30E=\bigl(\tfrac13+\tfrac15-\tfrac12\bigr)^{-1}=30、V=12V=12、F=20F=20)。

例 7.3(5 種類の正多面体の座標)

φ=1+52\varphi=\dfrac{1+\sqrt5}2(φ2=φ+1\varphi^2=\varphi+1)とする。正四面体は (1,1,1),(1,−1,−1),(−1,1,−1),(−1,−1,1)(1,1,1),(1,-1,-1),(-1,1,-1),(-1,-1,1)、立方体は (±1,±1,±1)(\pm1,\pm1,\pm1)、正八面体は (±1,0,0),(0,±1,0),(0,0,±1)(\pm1,0,0),(0,\pm1,0),(0,0,\pm1)、正二十面体は (0,±1,±φ)(0,\pm1,\pm\varphi) とその座標の巡回置換(12 点)、正十二面体は (±1,±1,±1)(\pm1,\pm1,\pm1) と (0,±1φ,±φ)(0,\pm\tfrac1\varphi,\pm\varphi) とその座標の巡回置換(20 点)である。たとえば正二十面体の頂点 (0,1,φ)(0,1,\varphi) と (0,−1,φ)(0,-1,\varphi)、(1,φ,0)(1,\varphi,0) の間の距離の 2 乗はそれぞれ 44、1+(1−φ)2+φ2=2−2φ+2φ2=41+(1-\varphi)^2+\varphi^2=2-2\varphi+2\varphi^2=4 で、辺の長さは 22 である。この座標の点集合の凸包が各型の正多面体になることは知られていますが、すべての辺・面の確認は本書では省略します(上の 定理 7.2 は、型が 5 つに限られること、すなわち必要条件を示すもので、存在の証明ではありません)。

定理 7.4(正多角形による平面の敷き詰め)✓

平面を、合同な正 pp 角形で隙間も重なりもなく敷き詰め、辺と辺で接している(どの頂点も、どの正多角形の辺の内部にも来ない)とする。各頂点にちょうど qq 個の正多角形が集まり(q≥3q\ge3)、各頂点で、そこに集まる qq 個の正多角形のその頂点での内角の和が 2π2\pi である(頂点のまわりの一周を qq 個の内角がちょうど埋める)とする。このとき (p,q)(p,q) は (3,6)(3,6)、(4,4)(4,4)、(6,3)(6,3) のいずれかである。

証明(定理 7.4)

正 pp 角形の内角はすべて等しいので、凸多角形の内角の和(系 5.6[合同と相似])から各内角は (p−2)πp\dfrac{(p-2)\pi}{p} である。仮定から、頂点に集まる qq 個の内角の和は 2π2\pi なので q⋅(p−2)πp=2πq\cdot\dfrac{(p-2)\pi}p=2\pi、整理して (p−2)(q−2)=4(p-2)(q-2)=4。p−2,q−2≥1p-2,q-2\ge1 の整数解は (1,4),(2,2),(4,1)(1,4),(2,2),(4,1) で、(p,q)=(3,6),(4,4),(6,3)(p,q)=(3,6),(4,4),(6,3) である。

注意 7.5(内角の和が 2π という仮定について)

定理 7.4 の太字の仮定は、図では「隙間も重なりもない」ことから読み取れますが、本書ではそこを証明せず、仮定として明示しています。導くには、まず敷き詰めを集合の言葉で定め(正多角形の和が平面全体で、どの 2 つの共通部分も面積 00)、次に (i) 頂点の近くに来る正多角形は有限個であること(各正多角形の面積は同じ正の値なので、有界な範囲に入る個数は面積の比較で抑えられる)、(ii) 頂点を中心とする十分小さい円板が、そこに集まる qq 個の正多角形によって、その頂点での内角を中心角とする qq 個の扇形に分けられること、(iii) 扇形の面積が中心角に比例すること(命題 8.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])を示し、扇形の面積の和が円板の面積に等しいことから内角の和 2π2\pi を得ます。補題 6.6 は、球面の上で同じ考え方によって角の和を求めたものです。

実際、正三角形・正方形・正六角形による敷き詰めはそれぞれ存在します(正三角形の格子、正方格子、蜂の巣)。

多角形とは、内部が重ならない有限個の三角形の和集合とします(任意の単純な多角形はこの形に分けられますが、本書では扱いません)。面積は m2m_2 です。

定義 8.1(組み替え合同)↗

多角形 P,QP,Q が組み替え合同(P≈QP\approx Q)であるとは、内部が重ならない凸多角形 P1,…,PmP_1,\dots,P_m(P=⋃PiP=\bigcup P_i)、Q1,…,QmQ_1,\dots,Q_m(Q=⋃QiQ=\bigcup Q_i)と等長変換 fif_i で fi(Pi)=Qif_i(P_i)=Q_i となるものがあることをいう。

≈\approx が同値関係であること(反射・対称は明らか。推移は、QQ の 2 通りの分割の共通部分 Qi∩Qj′Q_i\cap Q'_j(凸多角形)を新しい小片にとれば、fif_i と gjg_j の合成で移せる)と、P=⋃PjP=\bigcup P_j、Q=⋃QjQ=\bigcup Q_j(それぞれ内部が重ならない)で Pj≈QjP_j\approx Q_j ならば P≈QP\approx Q であること(小片の和集合をとる)は、定義から従います。

補題 8.2(平行四辺形と長方形)✓

長方形 R=[0,a]×[0,b]R=[0,a]\times[0,b] と、平行四辺形 Πt\Pi_t(頂点 (0,0),(a,0),(a+t,b),(t,b)(0,0),(a,0),(a+t,b),(t,b)、0≤t≤a0\le t\le a)は組み替え合同である。

証明(補題 8.2)

Πt={(x,y)∣0≤y≤b, tyb≤x≤a+tyb}\Pi_t=\{(x,y)\mid0\le y\le b,\ \tfrac{ty}b\le x\le a+\tfrac{ty}b\} なので、R∖ΠtR\setminus\Pi_t は三角形 UU(頂点 (0,0),(0,b),(t,b)(0,0),(0,b),(t,b))、Πt∖R\Pi_t\setminus R は三角形 U+(a,0)U+(a,0) で、R=(R∩Πt)∪UR=(R\cap\Pi_t)\cup U、Πt=(R∩Πt)∪(U+(a,0))\Pi_t=(R\cap\Pi_t)\cup(U+(a,0)) である(t≤at\le a により UU と U+(a,0)U+(a,0) は重ならない)。R∩ΠtR\cap\Pi_t は動かさず、UU を平行移動で U+(a,0)U+(a,0) に移せばよい。

補題 8.3(三角形と長方形)✓

三角形 ABCABC の最長辺を BCBC(長さ cc)、AA から BCBC への高さを hh とすると、ABCABC は c×h2c\times\tfrac h2 の長方形と組み替え合同である。

証明(補題 8.3)

B=(0,0)B=(0,0)、C=(c,0)C=(c,0)、A=(p,h)A=(p,h) と座標をとる。BCBC が最長なので p2+h2≤c2p^2+h^2\le c^2、(c−p)2+h2≤c2(c-p)^2+h^2\le c^2 で、h>0h>0 から ∣p∣<c|p|<c、∣c−p∣<c|c-p|<c、したがって 0<p<c0<p<c である。AB,ACAB,AC の中点 M=(p2,h2)M=(\tfrac p2,\tfrac h2)、N=(c+p2,h2)N=(\tfrac{c+p}2,\tfrac h2) をとり、三角形 AMNAMN を NN のまわりに半回転する(A↦CA\mapsto C、M↦M′′=(c+p2,h2)M\mapsto M''=(c+\tfrac p2,\tfrac h2))と、台形 BCNMBCNM と合わせて平行四辺形 BCM′′MBCM''M(底辺 cc、高さ h2\tfrac h2、横のずれ t=p2<ct=\tfrac p2<c)になる。補題 8.2 により、これは長方形 c×h2c\times\tfrac h2 と組み替え合同である。

BCAMNM”
三角形 ABC を中点 M, N を結ぶ線で切り、上の三角形を N のまわりに半回転させると平行四辺形 BCM''M になる。これを切り貼りすると、底辺 c、高さ h/2 の長方形になる

補題 8.4(長方形と正方形)✓

辺の長さ a,ba,b の長方形は、一辺 ab\sqrt{ab} の正方形と組み替え合同である。

証明(補題 8.4)

長方形を回転して b≤ab\le a とする。a>2ba>2b のときは、長方形を長辺の中央で 2 つに切って積み重ね、a2×2b\tfrac a2\times2b の長方形にする(組み替え合同)。辺の比 max⁡/min⁡\max/\min は、r=a/br=a/b から r/4r/4 または 4/r4/r になり、これを繰り返すと比が 22 以下になる。したがって b≤a≤2bb\le a\le2b としてよい(面積は不変なので ab\sqrt{ab} も不変)。

s=abs=\sqrt{ab}、t=b(a−b)t=\sqrt{b(a-b)} とおく。s2=b2+t2s^2=b^2+t^2、t2<a2t^2<a^2、t≤bt\le b(a≤2ba\le2b による)。補題 8.2 により R=[0,a]×[0,b]R=[0,a]\times[0,b] は平行四辺形 Πt\Pi_t(頂点 (0,0),(a,0),(a+t,b),(t,b)(0,0),(a,0),(a+t,b),(t,b))と組み替え合同である。Πt\Pi_t の辺 (0,0)→(t,b)(0,0)\to(t,b) は長さ t2+b2=s\sqrt{t^2+b^2}=s である。この辺の方向の単位ベクトル u^=(t,b)/s\hat{\boldsymbol u}=(t,b)/s を第 1 軸とする座標(等長変換で移した座標)で見ると、Πt\Pi_t は底辺 ss で、もう 1 辺のベクトル (a,0)(a,0) の成分が (ats, abs)\bigl(\tfrac{at}s,\ \tfrac{ab}s\bigr)(高さ abs=s\tfrac{ab}s=s)の平行四辺形で、水平のずれ ats\tfrac{at}s は 0≤ats≤s0\le\tfrac{at}s\le s(at≤s2=ab  ⟺  t≤bat\le s^2=ab\iff t\le b)を満たす。補題 8.2 を(回転して)使うと、Πt\Pi_t は s×ss\times s の正方形と組み替え合同である。

定理 8.5(Bolyai–Gerwien の定理)✓

面積の等しい 2 つの多角形は、組み替え合同である。

証明(定理 8.5)

三角形 TT の面積を ATA_T とすると、補題 8.3 から T≈c×h2T\approx c\times\tfrac h2 の長方形(面積 ATA_T)、補題 8.4 から一辺 AT\sqrt{A_T} の正方形に ≈\approx。同じ補題を長方形 1×AT1\times A_T に使うと、これも一辺 AT\sqrt{A_T} の正方形に ≈\approx なので、≈\approx の対称性と推移性から、T≈[0,1]×[0,AT]T\approx[0,1]\times[0,A_T] である。多角形 P=⋃TiP=\bigcup T_i の三角形 TiT_i を、対応する長方形 1×ATi1\times A_{T_i} に取り替え、これらを積み重ねると、P≈[0,1]×[0,m2(P)]P\approx[0,1]\times[0,m_2(P)](小片ごとの和集合による)。面積の等しい 2 つの多角形 P,QP,Q は、同じ長方形に ≈\approx なので、推移性と対称性から P≈QP\approx Q である。

注意 8.6(立体では成り立たない(Hilbert の第 3 問題))

空間では、体積の等しい 2 つの多面体を、有限個の多面体に切り分けて組み替えることは、一般にはできません。たとえば立方体と、それと等体積の正四面体は、組み替え合同ではありません。Dehn(1900)が、組み替えで保たれる不変量(二面角と辺の長さから作る量)を使って示しました。この不変量の不変性の証明は長いので、本書では扱いません(出典: M. Aigner, G. M. Ziegler, Proofs from THE BOOK の Hilbert の第 3 問題の章)。錐体の体積が 13\tfrac13 になることは、組み替えでは示せず、定理 3.2 のように積分(極限)が必要です。

また、凸多面体の Euler の多面体定理 V−E+F=2V-E+F=2 は、曲面上の Gauss–Bonnet の定理(定理 6.3[曲線と曲面])の多面体版(角欠損の総和 =2πχ=2\pi\chi)の例です。球面の位相不変量 χ=2\chi=2 が、系 6.8 の 4π4\pi として現れています。

  • Gauss–Bonnet の定理と Euler 標数(differential-geometry、algebraic-topology)。Girard の定理 σ=A+B+C−π\sigma=A+B+C-\pi は、曲面上の測地三角形の面積と角の和(Gauss 曲率の積分)の公式の最も簡単な例です。凸多面体の角欠損は離散的な曲率で、その総和 4π4\pi は 2πχ2\pi\chi(球面の Euler 標数 χ=2\chi=2)にあたります。
  • 測度論。定理 3.1 は Fubini–Tonelli の定理の幾何的な言い換えで、体積を積分で定義することの必然性(錐体の 13\tfrac13 は組み替えでは出ない)を示します。
  • 群と対称性(algebra)。正多面体の対称性の群は、正四面体が S4S_4(回転群 A4A_4)、立方体・正八面体が S4S_4、正十二面体・正二十面体が A5A_5 です。定理 7.2 の分類は、有限回転群の分類につながります。
  • 非ユークリッド幾何。球面上の三角形の角の和が π\pi を超える分が面積になること(定理 5.4)は、双曲面では逆に π\pi に足りない分が面積になることと対になります(注意 5.7[合同と相似])。

演習 10.1易

高さ 66、下底の半径 44、上底の半径 22 の円錐台の体積を求めよ。

解答

断面は高さ tt の 1 次式の半径の円板なので、断面積は 2 次式(例 3.4)。A(0)=16πA(0)=16\pi、A(6)=4πA(6)=4\pi、A(3)=π⋅32=9πA(3)=\pi\cdot3^2=9\pi から 定理 3.3 により V=66(16π+36π+4π)=56πV=\dfrac66(16\pi+36\pi+4\pi)=56\pi。

演習 10.2易

3 つの角がすべて直角である球面三角形(球面の 8 分の 1)の面積を 定理 5.4 で求め、14π⋅4\tfrac14\pi\cdot4 と比べよ。

解答

σ=π2+π2+π2−π=π2\sigma=\dfrac\pi2+\dfrac\pi2+\dfrac\pi2-\pi=\dfrac\pi2。単位球面の面積 4π4\pi の 18\tfrac18 は π2\dfrac\pi2 で、一致する。

演習 10.3標準

正十二面体の各頂点の角欠損を求め、総和が 4π4\pi であることを確かめよ。

解答

各頂点には正五角形が 3 個集まり、正五角形の内角は 3π5\dfrac{3\pi}{5}(系 5.6[合同と相似])なので、θv=9π5\theta_v=\dfrac{9\pi}5、角欠損は 2π−9π5=π52\pi-\dfrac{9\pi}5=\dfrac\pi5。頂点は 2020 個(定理 7.2)なので総和は 20⋅π5=4π20\cdot\dfrac\pi5=4\pi(系 6.8)。

演習 10.4標準

すべての面が三角形で、面が 88 個ある凸多面体の頂点の数と辺の数を求めよ。

解答

3F=2E3F=2E から E=12E=12。定理 6.7 から V=2+E−F=2+12−8=6V=2+E-F=2+12-8=6。(正八面体がその例である。)

  • Peter R. Cromwell, Polyhedra, Cambridge University Press, 1997 — 多面体・正多面体・Euler の多面体定理の歴史と証明。
  • H. S. M. Coxeter, Regular Polytopes, 3rd ed., Dover, 1973 — 正多面体の分類。
  • Martin Aigner, Günter M. Ziegler, Proofs from THE BOOK, Springer — Hilbert の第 3 問題(Dehn の不変量)と Euler の多面体定理の章。
  • Robin Hartshorne, Geometry: Euclid and Beyond, Springer, 2000 — 面積の理論と Bolyai–Gerwien の定理(第 5 章)。
  • Marcel Berger, Geometry II, Springer, 1987 — 球面幾何、球面三角形の面積。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)、Claude Code(Opus 5.5)・監査 4 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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