コンテンツにスキップ

三角形の名定理:Euler 線・九点円・Simson 線・Fermat 点・Erdős–Mordell の不等式

対象読者: 本テーマ第 4 章(円の幾何)と第 6 章(三角形の五心・チェバ・メネラウス)を学んだ人。位置ベクトルの計算と三角関数に慣れていることを仮定します。

前提となる記事:円の幾何:円周角・接線・方べきの定理を座標から証明する、三角形の五心とチェバ・メネラウスの定理:重心座標と符号付き面積で示す

生 Markdown

三角形の形はいくらでも変えられるのに、ある3つの点がいつも一直線に並んだり、9つの点がいつも同じ円の上に乗ったりする、という不思議な事実があります。この記事では、それが偶然ではないことを、座標とベクトルの計算で一つずつ確かめます。あわせて、3つの頂点までの道のりの合計が最も短くなる点はどこか、という素朴な疑問にも答えます。

  • 三角形には、重心・外心・内心・垂心という「中心」があります(前の章 三角形の五心とチェバ・メネラウスの定理)。この章では、それらの間の関係を、外心を原点にとったベクトルで調べます。垂心は H=A+B+CH=A+B+C と書けるので、Euler 線(外心・重心・垂心が一直線上にあって OG:GH=1:2OG:GH=1:2)は一行で出ます(定理 2.1)。
  • 九点円は、中心が OO と HH の中点、半径が R/2R/2 の円で、辺の中点・垂線の足・AH,BH,CHAH,BH,CH の中点の 9 点が乗ります(定理 2.2)。
  • Euler の三角形の定理 OI2=R2−2RrOI^2=R^2-2Rr は、内心の位置ベクトル I=aA+bB+cCa+b+cI=\frac{aA+bB+cC}{a+b+c} の長さを計算するだけで出ます。系として R≥2rR\ge2r を得ます(定理 3.1)。
  • Simson 線(外接円上の点から 3 辺に下ろした垂線の足は一直線上にある)とその逆は、円周上の点の媒介変数表示と回転行列の計算で、場合分けなしに証明します(定理 4.2)。
  • Fermat 点(3 頂点までの距離の和が最小の点)は、すべての角が 120∘120^\circ 未満なら 3 辺を 120∘120^\circ で見込む点、そうでなければ鈍角の頂点です(定理 5.2)。Erdős–Mordell の不等式は、余弦定理と相加相乗平均だけで証明します(定理 6.1)。
  • 角の二等分線に関する反射で、1 点で交わる 3 直線がまた 1 点で交わる直線に移ること(等角共役点。折り返した 3 直線の交点のこと)を、三角関数形の Ceva の定理から示します(定理 7.1)。

1. 動機 — 偶然に見える一致を、計算で説明する

Section titled “1. 動機 — 偶然に見える一致を、計算で説明する”

外心 OO、重心 GG、垂心 HH は、三角形の形によってばらばらに動きます。それなのにこの 3 点はいつも一直線上に並び、しかも OG:GHOG:GH がいつも 1:21:2 です。九点円の 9 つの点も、三角形が変わるたびに別の位置を取りながら同じ円周に乗ります。この「偶然」は、図の補助線で説明されることが多いのですが、ベクトルで書くとほとんど自明になります。

その鍵は、原点を外心にとることです。そのとき ∣a∣=∣b∣=∣c∣=R|\boldsymbol a|=|\boldsymbol b|=|\boldsymbol c|=R で、内積は辺の長さで書けます。∣A−B∣2=2R2−2a⋅b=c2|A-B|^2=2R^2-2\boldsymbol a\cdot\boldsymbol b=c^2 から

a⋅b=R2−c22,b⋅c=R2−a22,c⋅a=R2−b22\boldsymbol a\cdot\boldsymbol b=R^2-\frac{c^2}{2},\quad\boldsymbol b\cdot\boldsymbol c=R^2-\frac{a^2}{2},\quad\boldsymbol c\cdot\boldsymbol a=R^2-\frac{b^2}{2}

です(以下この 3 式を (∗)(\ast) と呼びます)。この関係と、前の章で証明した重心・外心・内心・垂心の公式だけで、この章の前半の定理が出ます。後半(Simson 線、Fermat 点、Erdős–Mordell の不等式)は、別の道具(円周上の媒介変数表示、距離の和の最小化、三角形の面積と正弦)を使います。

この章では三角形 ABCABC の辺を a=∣BC∣a=|BC|、b=∣CA∣b=|CA|、c=∣AB∣c=|AB|、面積を SS、s=a+b+c2s=\dfrac{a+b+c}{2}、外接円の中心・半径を O,RO,R(定理 3.2[三角形の五心とチェバ・メネラウスの定理])、内心・内接円の半径を I,rI,r(定理 4.2[三角形の五心とチェバ・メネラウスの定理])とします。r=2Sa+b+c=Ssr=\dfrac{2S}{a+b+c}=\dfrac{S}{s}、R=abc4SR=\dfrac{abc}{4S}(補題 4.1[三角比と三角形の計量])です。

定理 2.1(Euler 線)✓

三角形 ABCABC の外心 OO、重心 GG、垂心 HH は一直線上にあり、OH→=3 OG→\overrightarrow{OH}=3\,\overrightarrow{OG}、すなわち OG:GH=1:2OG:GH=1:2 である(正三角形では 3 点が一致する)。

証明(定理 2.1)

OO を原点にとる。垂心は h=a+b+c\boldsymbol h=\boldsymbol a+\boldsymbol b+\boldsymbol c(定理 3.3[三角形の五心とチェバ・メネラウスの定理])、重心は g=a+b+c3\boldsymbol g=\dfrac{\boldsymbol a+\boldsymbol b+\boldsymbol c}{3}(定理 3.1[三角形の五心とチェバ・メネラウスの定理])なので h=3g\boldsymbol h=3\boldsymbol g である。h=0\boldsymbol h=\boldsymbol 0 でなければ GG は線分 OHOH を 1:21:2 に内分し、3 点は直線 OHOH 上にある。h=0\boldsymbol h=\boldsymbol 0 なら g=0\boldsymbol g=\boldsymbol 0 で、3 点は一致する。

定理 2.2(九点円)✓

三角形 ABCABC の辺 BC,CA,ABBC,CA,AB の中点 Ma,Mb,McM_a,M_b,M_c、頂点から対辺に下ろした垂線の足 Da,Db,DcD_a,D_b,D_c、頂点と垂心を結ぶ線分 AH,BH,CHAH,BH,CH の中点 Pa,Pb,PcP_a,P_b,P_c の 9 点は、N=O+H2N=\dfrac{O+H}{2} を中心とする半径 R2\dfrac R2 の円の上にある。

証明(定理 2.2)

OO を原点にとると h=a+b+c\boldsymbol h=\boldsymbol a+\boldsymbol b+\boldsymbol c、n=12(a+b+c)\boldsymbol n=\tfrac12(\boldsymbol a+\boldsymbol b+\boldsymbol c) で、

ma−n=b+c2−a+b+c2=−a2,pa−n=a+h2−h2=a2.\boldsymbol m_a-\boldsymbol n=\frac{\boldsymbol b+\boldsymbol c}{2}-\frac{\boldsymbol a+\boldsymbol b+\boldsymbol c}{2}=-\frac{\boldsymbol a}{2},\qquad\boldsymbol p_a-\boldsymbol n=\frac{\boldsymbol a+\boldsymbol h}{2}-\frac{\boldsymbol h}{2}=\frac{\boldsymbol a}{2}.

よって ∣Ma−N∣=∣Pa−N∣=R2|M_a-N|=|P_a-N|=\dfrac R2 で、NN は線分 MaPaM_aP_a の中点でもある。したがって MaPaM_aP_a はこの円の直径である。垂線の足 DaD_a は、直線 BCBC 上にあるので Da−MaD_a-M_a は C−BC-B の実数倍、また AA と HH はともに頂点 AA からの垂線上にある(定理 3.3[三角形の五心とチェバ・メネラウスの定理])ので、その中点 PaP_a も、DaD_a もこの垂線上にあり、Da−PaD_a-P_a は BCBC に垂直なベクトルの実数倍である。よって (da−pa)⋅(da−ma)=0(\boldsymbol d_a-\boldsymbol p_a)\cdot(\boldsymbol d_a-\boldsymbol m_a)=0 で、DaD_a は MaPaM_aP_a を直径とする円(命題 5.5[平面ベクトルと座標] の 4)、すなわち上の円の上にある。b,cb,c についても同様。

証明の考え方は、中点 MaM_a と、頂点 AA と垂心 HH の中点 PaP_a が、ともに NN から R2\dfrac R2 の距離にあって NN をはさんで反対側にある(つまり MaPaM_aP_a が直径になる)ことをまず確かめ、垂線の足 DaD_a はこの直径を直角に見込む点になるので同じ円に乗る、というものです。

OGHNABC
外接円(細い線)、九点円(点線)、Euler 線(O, G, H を通る直線)。G は O と H を 1 : 2 に内分する。N は O と H の中点で九点円の中心
ABCMaMbMcDaDbDcPaPbPcHN
九点円の 9 点。黒い丸が辺の中点 Ma, Mb, Mc、白い丸が垂線の足 Da, Db, Dc、四角が AH, BH, CH の中点 Pa, Pb, Pc。9 点とも点線の円(中心 N)の上にある

定理 3.1(Euler の三角形の定理)✓

外心 OO、内心 II、外接円の半径 RR、内接円の半径 rr について、∣OI∣2=R2−2Rr|OI|^2=R^2-2Rr である。系として R≥2rR\ge2r である。

証明(定理 3.1)

OO を原点にとる。内心は i=aa+bb+cca+b+c\boldsymbol i=\dfrac{a\boldsymbol a+b\boldsymbol b+c\boldsymbol c}{a+b+c}(定理 4.2[三角形の五心とチェバ・メネラウスの定理])で、∣a∣=∣b∣=∣c∣=R|\boldsymbol a|=|\boldsymbol b|=|\boldsymbol c|=R と (∗)(\ast) から

∣aa+bb+cc∣2=(a2+b2+c2)R2+2ab(R2−c22)+2bc(R2−a22)+2ca(R2−b22)=(a+b+c)2R2−abc (a+b+c)\begin{aligned} |a\boldsymbol a+b\boldsymbol b+c\boldsymbol c|^2&=(a^2+b^2+c^2)R^2+2ab\Bigl(R^2-\frac{c^2}2\Bigr)+2bc\Bigl(R^2-\frac{a^2}2\Bigr)+2ca\Bigl(R^2-\frac{b^2}2\Bigr)\\ &=(a+b+c)^2R^2-abc\,(a+b+c) \end{aligned}

(abc2+bca2+cab2=abc(a+b+c)abc^2+bca^2+cab^2=abc(a+b+c) を使った)。したがって ∣OI∣2=R2−abca+b+c|OI|^2=R^2-\dfrac{abc}{a+b+c}。ここで abc=4RSabc=4RS(補題 4.1[三角比と三角形の計量])、S=rsS=rs、a+b+c=2sa+b+c=2s なので abca+b+c=4Rrs2s=2Rr\dfrac{abc}{a+b+c}=\dfrac{4Rrs}{2s}=2Rr である。∣OI∣2≥0|OI|^2\ge0 から R2≥2RrR^2\ge2Rr、すなわち R≥2rR\ge2r を得る。

例 3.2(辺 13, 14, 15 の三角形)

S=84S=84、R=13⋅14⋅154⋅84=658R=\dfrac{13\cdot14\cdot15}{4\cdot84}=\dfrac{65}8、r=8421=4r=\dfrac{84}{21}=4。∣OI∣2=(658)2−2⋅658⋅4=4225−416064=6564|OI|^2=\Bigl(\dfrac{65}8\Bigr)^2-2\cdot\dfrac{65}8\cdot4=\dfrac{4225-4160}{64}=\dfrac{65}{64}、∣OI∣=658|OI|=\dfrac{\sqrt{65}}8 である。確かに R=658≥2r=8R=\dfrac{65}8\ge2r=8。

円周上の点を単位円周上の e(θ)e(\theta) で表します(外接円の半径を 11 に拡大してよい。共線性は拡大で変わらない)。まず 1 本の弦に下ろした垂線の足を計算します。

補題 4.1(単位円の弦に下ろした垂線の足)✓

A=e(α)A=e(\alpha)、B=e(β)B=e(\beta)(A≠BA\ne B)、P=e(γ)P=e(\gamma) とし、PP から直線 ABAB に下ろした垂線の足を FF とすると

F=12(A+B+P−e(α+β−γ))F=\tfrac12\bigl(A+B+P-e(\alpha+\beta-\gamma)\bigr)

である。

証明(補題 4.1)

m=α+β2m=\frac{\alpha+\beta}2、δ=β−α2\delta=\frac{\beta-\alpha}2、n=e(m)\boldsymbol n=e(m) とすると、n⋅A=cos⁡(α−m)=cos⁡δ=n⋅B\boldsymbol n\cdot A=\cos(\alpha-m)=\cos\delta=\boldsymbol n\cdot B なので、直線 ABAB は {x∣n⋅x=cos⁡δ}\{\boldsymbol x\mid\boldsymbol n\cdot\boldsymbol x=\cos\delta\} である。PP からの垂線の足は F=P−(n⋅P−cos⁡δ)nF=P-(\boldsymbol n\cdot P-\cos\delta)\boldsymbol n(補題 2.2[三角形の五心とチェバ・メネラウスの定理])。和積の公式(系 4.3[三角関数])から A+B=e(m−δ)+e(m+δ)=2cos⁡δ nA+B=e(m-\delta)+e(m+\delta)=2\cos\delta\,\boldsymbol n、e(γ)+e(2m−γ)=2cos⁡(γ−m) n=2(n⋅P)ne(\gamma)+e(2m-\gamma)=2\cos(\gamma-m)\,\boldsymbol n=2(\boldsymbol n\cdot P)\boldsymbol n なので、右辺は 12(2cos⁡δ n+2P−2(n⋅P)n)=P−(n⋅P−cos⁡δ)n=F\tfrac12\bigl(2\cos\delta\,\boldsymbol n+2P-2(\boldsymbol n\cdot P)\boldsymbol n\bigr)=P-(\boldsymbol n\cdot P-\cos\delta)\boldsymbol n=F に等しい。

次の定理の証明は二段構えです。1 では、3つの足 D,E,FD,E,F を上の補題で計算し、D−ED-E と E−FE-F がどちらも同じ向きの単位ベクトルの実数倍になることを示します。2・3 では、D,E,FD,E,F が作る三角形の面積を PP の座標の式で書き、それが円周上でちょうど 00 になることから、∣P∣2−1|P|^2-1 に比例する形に決まることを示します。

定理 4.2(Simson 線とその逆)✓

三角形 ABCABC の外接円を Γ\Gamma とし、平面の点 PP から直線 BC,CA,ABBC,CA,AB に下ろした垂線の足を D,E,FD,E,F とする。

  1. P∈ΓP\in\Gamma ならば D,E,FD,E,F は一直線上にある(Simson 線)。
  2. 逆に D,E,FD,E,F が一直線上にあるならば、P∈ΓP\in\Gamma である。
  3. さらに、OO を Γ\Gamma の中心として S(D,E,F)=R2−∣OP∣24R2 S(A,B,C)S(D,E,F)=\dfrac{R^2-|OP|^2}{4R^2}\,S(A,B,C) である。
証明(定理 4.2)

Γ\Gamma を単位円、A=e(α)A=e(\alpha)、B=e(β)B=e(\beta)、C=e(κ)C=e(\kappa) としてよい(3 の比は平行移動と拡大で変わらない)。この証明の中に限り、R(θ)R(\theta) は回転行列、II は単位行列を表す(外接円の半径は 11 である)。

1 P=e(γ)P=e(\gamma) とする。補題 4.1 から D=12(B+C+P−e(β+κ−γ))D=\tfrac12\bigl(B+C+P-e(\beta+\kappa-\gamma)\bigr)、E=12(C+A+P−e(κ+α−γ))E=\tfrac12\bigl(C+A+P-e(\kappa+\alpha-\gamma)\bigr)、F=12(A+B+P−e(α+β−γ))F=\tfrac12\bigl(A+B+P-e(\alpha+\beta-\gamma)\bigr)。回転の性質(命題 6.3[平面ベクトルと座標] の 3)から e(κ+α−γ)−e(κ+β−γ)=R(κ−γ)(A−B)e(\kappa+\alpha-\gamma)-e(\kappa+\beta-\gamma)=R(\kappa-\gamma)(A-B) なので、

D−E=12(I−R(κ−γ))(B−A),E−F=12(I−R(α−γ))(C−B)D-E=\tfrac12\bigl(I-R(\kappa-\gamma)\bigr)(B-A),\qquad E-F=\tfrac12\bigl(I-R(\alpha-\gamma)\bigr)(C-B)

である(2 つ目も同様)。行列の等式 I−R(θ)=R(θ2)(R(−θ2)−R(θ2))=2sin⁡θ2 R(θ2−π2)I-R(\theta)=R(\tfrac\theta2)\bigl(R(-\tfrac\theta2)-R(\tfrac\theta2)\bigr)=2\sin\tfrac\theta2\,R\bigl(\tfrac\theta2-\tfrac\pi2\bigr) が成り立つ(R(−t)−R(t)=2sin⁡t(01−10)=2sin⁡t R(−π2)R(-t)-R(t)=2\sin t\begin{pmatrix}0&1\\-1&0\end{pmatrix}=2\sin t\,R(-\tfrac\pi2))。補題 2.2[円の幾何] から B−A=2sin⁡β−α2 e(α+β2+π2)B-A=2\sin\frac{\beta-\alpha}2\,e\bigl(\frac{\alpha+\beta}2+\frac\pi2\bigr) なので、ψ=α+β+κ−γ2\psi=\dfrac{\alpha+\beta+\kappa-\gamma}{2} として

D−E=2sin⁡κ−γ2sin⁡β−α2  e(ψ).D-E=2\sin\tfrac{\kappa-\gamma}2\sin\tfrac{\beta-\alpha}2\;e(\psi).

同様に C−B=2sin⁡κ−β2 e(β+κ2+π2)C-B=2\sin\frac{\kappa-\beta}2\,e\bigl(\frac{\beta+\kappa}2+\frac\pi2\bigr) から E−F=2sin⁡α−γ2sin⁡κ−β2  e(ψ)E-F=2\sin\tfrac{\alpha-\gamma}2\sin\tfrac{\kappa-\beta}2\;e(\psi)。D−ED-E と E−FE-F は同じ単位ベクトル e(ψ)e(\psi) の実数倍なので、D,E,FD,E,F は方向 e(ψ)e(\psi) の直線上にある。

2・3 PP を平面の任意の点とする。垂線の足 D,E,FD,E,F は PP の 1 次式(F=P−(n⋅P−c)nF=P-(\boldsymbol n\cdot P-c)\boldsymbol n の形)なので、q(P)=det⁡(E−D,F−D)q(P)=\det(E-D,F-D) は P=(x,y)P=(x,y) の 2 次以下の多項式 q=c1x2+c2xy+c3y2+c4x+c5y+c6q=c_1x^2+c_2xy+c_3y^2+c_4x+c_5y+c_6 である。1 により qq は円周 x2+y2=1x^2+y^2=1 の全点で 00 である。−1<y<1-1<y<1 のとき、x=±1−y2x=\pm\sqrt{1-y^2} の 2 点で q=0q=0 で、x2=1−y2x^2=1-y^2 を代入すると (c3−c1)y2+c5y+c1+c6+x(c2y+c4)=0(c_3-c_1)y^2+c_5y+c_1+c_6+x(c_2y+c_4)=0 なので、2 つの xx の値で足し引きして (c3−c1)y2+c5y+c1+c6=0(c_3-c_1)y^2+c_5y+c_1+c_6=0 と c2y+c4=0c_2y+c_4=0 が −1<y<1-1<y<1 のすべての yy で成り立つ(x=1−y2>0x=\sqrt{1-y^2}>0 なので 2 式に分けられる)。2 次以下の多項式が 3 つ以上の相異なる根をもつなら係数はすべて 00 なので(y=−12,0,12y=-\tfrac12,0,\tfrac12 を代入して係数の連立 1 次方程式を解けばよい)、 c2=c4=c5=0c_2=c_4=c_5=0、c3=c1c_3=c_1、c6=−c1c_6=-c_1、すなわち q(P)=c1(∣P∣2−1)q(P)=c_1(|P|^2-1)。P=OP=O(原点)のとき、垂線の足は辺の中点で、q(O)=det⁡(A−B2,A−C2)=14det⁡(B−A,C−A)=12S(A,B,C)≠0q(O)=\det\bigl(\tfrac{A-B}2,\tfrac{A-C}2\bigr)=\tfrac14\det(B-A,C-A)=\tfrac12S(A,B,C)\ne0 なので c1=−12S(A,B,C)≠0c_1=-\tfrac12S(A,B,C)\ne0。よって q(P)=12S(A,B,C)(1−∣P∣2)q(P)=\tfrac12S(A,B,C)(1-|P|^2)、S(D,E,F)=12q(P)=1−∣P∣24S(A,B,C)S(D,E,F)=\tfrac12q(P)=\dfrac{1-|P|^2}{4}S(A,B,C) で 3 を得る(R=1R=1)。D,E,FD,E,F が一直線上にある   ⟺  S(D,E,F)=0  ⟺  ∣P∣=1\iff S(D,E,F)=0\iff|P|=1 なので 2 も従う。

系 4.3(Steiner 線)✓

外接円上の点 PP の直線 BC,CA,ABBC,CA,AB に関する対称点 Pa,Pb,PcP_a,P_b,P_c は一直線上にあり、この直線(Steiner 線)は垂心 HH を通り、PP の Simson 線と平行である。

証明(系 4.3)

Pa=2D−PP_a=2D-P などなので、Pa,Pb,PcP_a,P_b,P_c は D,E,FD,E,F を PP を中心に 2 倍に拡大した点で、定理 4.2 の 1 から一直線上にあり、方向は Simson 線と同じ e(ψ)e(\psi) である。垂心は H=A+B+CH=A+B+C(外心が原点)で、補題 4.1 から Pa=2D−P=B+C−e(β+κ−γ)P_a=2D-P=B+C-e(\beta+\kappa-\gamma) なので、H−Pa=A+e(β+κ−γ)=e(α)+e(β+κ−γ)=2cos⁡α−β−κ+γ2  e(ψ)H-P_a=A+e(\beta+\kappa-\gamma)=e(\alpha)+e(\beta+\kappa-\gamma)=2\cos\dfrac{\alpha-\beta-\kappa+\gamma}{2}\;e(\psi)(和積の公式)。これは e(ψ)e(\psi) の実数倍なので、HH は PaP_a を通る方向 e(ψ)e(\psi) の直線、すなわち Steiner 線の上にある。

3 頂点までの距離の和 f(P)=∣PA∣+∣PB∣+∣PC∣f(P)=|PA|+|PB|+|PC| を最小にする点を調べます。たとえば3つの町を結ぶ道の分岐点をどこに置けば道のりの合計が最も短くなるか、という問題です。証明の流れは、(i) 最小値をとる点があること、(ii) すべての角が 120∘120^\circ 未満なら、その点は頂点ではないこと、(iii) 頂点でなければ微分して 00 になることから 120∘120^\circ の条件が出ること、の3段階です。まず最小値が存在することを示します。

補題 5.1(距離の和の最小点の存在)✓

平面上の相異なる 3 点 A,B,CA,B,C について、f(P)=∣PA∣+∣PB∣+∣PC∣f(P)=|PA|+|PB|+|PC| は平面上で最小値をとる。

証明(補題 5.1)

ff は連続である(∣⋅∣|\cdot| の連続性は三角不等式による)。f(P)≥∣PA∣f(P)\ge|PA| なので、f(P)≤f(A)f(P)\le f(A) を満たす点は閉円板 K={P∣∣PA∣≤f(A)}K=\{P\mid|PA|\le f(A)\} に入る。KK 上の点列 PnP_n を f(Pn)→inf⁡Kff(P_n)\to\inf_Kf となるようにとる。PnP_n の xx 座標、yy 座標は有界なので、定理 6.3[実数の完備性とコーシー列] を 2 回使って、収束する部分列 Pnk→P0P_{n_k}\to P_0 がとれる。ff の連続性から f(P0)=inf⁡Kff(P_0)=\inf_Kf で、KK の外では f>f(A)≥inf⁡Kff>f(A)\ge\inf_Kf なので、P0P_0 は平面全体での最小点である。

定理 5.2(Fermat 点)✓

三角形 ABCABC について、f(P)=∣PA∣+∣PB∣+∣PC∣f(P)=|PA|+|PB|+|PC| とする。

  1. ∠A,∠B,∠C\angle A,\angle B,\angle C がすべて 2π3\dfrac{2\pi}3 未満のとき、∠AFB=∠BFC=∠CFA=2π3\angle AFB=\angle BFC=\angle CFA=\dfrac{2\pi}3 を満たす点 FF が存在し、ff の最小点はこの FF だけである。
  2. ある頂点(たとえば AA)の角が 2π3\dfrac{2\pi}3 以上のとき、ff の最小点は AA だけである。
証明(定理 5.2)

準備: FF が頂点と異なり、uA=AF→∣AF∣\boldsymbol u_A=\dfrac{\overrightarrow{AF}}{|AF|}、uB=BF→∣BF∣\boldsymbol u_B=\dfrac{\overrightarrow{BF}}{|BF|}、uC=CF→∣CF∣\boldsymbol u_C=\dfrac{\overrightarrow{CF}}{|CF|}(単位ベクトル)が uA+uB+uC=0\boldsymbol u_A+\boldsymbol u_B+\boldsymbol u_C=\boldsymbol 0 を満たすとする。任意の点 PP について、単位ベクトルとの内積は長さ以下(定理 4.1[平面ベクトルと座標] の 5)なので

∣PA∣=∣AP→∣≥AP→⋅uA=AF→⋅uA+FP→⋅uA=∣FA∣+FP→⋅uA.|PA|=|\overrightarrow{AP}|\ge\overrightarrow{AP}\cdot\boldsymbol u_A=\overrightarrow{AF}\cdot\boldsymbol u_A+\overrightarrow{FP}\cdot\boldsymbol u_A=|FA|+\overrightarrow{FP}\cdot\boldsymbol u_A.

B,CB,C についても同じ式を足すと、f(P)≥f(F)+FP→⋅(uA+uB+uC)=f(F)f(P)\ge f(F)+\overrightarrow{FP}\cdot(\boldsymbol u_A+\boldsymbol u_B+\boldsymbol u_C)=f(F)。等号は 3 つの不等式がすべて等号のとき、すなわち AP→\overrightarrow{AP} が uA\boldsymbol u_A の非負の実数倍(PP が AA から FF の向きの半直線上)かつ BB からの半直線上にあるときで、uA+uB+uC=0u_A+u_B+u_C=0 から uA,uB\boldsymbol u_A,\boldsymbol u_B は平行でないので 2 つの半直線は FF でしか交わらず、P=FP=F である。よって FF は ff の唯一の最小点である。

1 最小点 F0F_0 が存在する(補題 5.1)。F0F_0 が頂点 AA だったとする。単位ベクトル d\boldsymbol d と t>0t>0 に対し f(A+td)=t+∣AB→−td∣+∣AC→−td∣f(A+t\boldsymbol d)=t+|\overrightarrow{AB}-t\boldsymbol d|+|\overrightarrow{AC}-t\boldsymbol d| で、第 2・3 項は t=0t=0 で微分可能(定理 7.2[導関数の定義と基本的な微分法])なので、e^B=AB→/∣AB∣\hat{\boldsymbol e}_B=\overrightarrow{AB}/|AB|、e^C=AC→/∣AC∣\hat{\boldsymbol e}_C=\overrightarrow{AC}/|AC| として

lim⁡t→0+f(A+td)−f(A)t=1−d⋅(e^B+e^C).\lim_{t\to0+}\frac{f(A+t\boldsymbol d)-f(A)}{t}=1-\boldsymbol d\cdot(\hat{\boldsymbol e}_B+\hat{\boldsymbol e}_C).

d=e^B+e^C∣e^B+e^C∣\boldsymbol d=\dfrac{\hat{\boldsymbol e}_B+\hat{\boldsymbol e}_C}{|\hat{\boldsymbol e}_B+\hat{\boldsymbol e}_C|} とすると、これは 1−∣e^B+e^C∣1-|\hat{\boldsymbol e}_B+\hat{\boldsymbol e}_C| で、∣e^B+e^C∣2=2+2cos⁡A>1|\hat{\boldsymbol e}_B+\hat{\boldsymbol e}_C|^2=2+2\cos A>1(∠A<2π3\angle A<\frac{2\pi}3 より cos⁡A>−12\cos A>-\frac12)なので負である。したがって十分小さい t>0t>0 で f(A+td)<f(A)f(A+t\boldsymbol d)<f(A) となり、AA が最小点であることに反する。B,CB,C も同様なので、F0F_0 は頂点ではない。

F0F_0 が頂点でないので、任意の d\boldsymbol d に対し g(t)=f(F0+td)g(t)=f(F_0+t\boldsymbol d) は t=0t=0 で微分可能で、g′(0)=d⋅(uA+uB+uC)g'(0)=\boldsymbol d\cdot(\boldsymbol u_A+\boldsymbol u_B+\boldsymbol u_C)(定理 7.2[導関数の定義と基本的な微分法])。gg は t=0t=0 で最小なので g′(0)=0g'(0)=0(補題 2.5[平均値の定理とテイラーの定理])。d=uA+uB+uC\boldsymbol d=\boldsymbol u_A+\boldsymbol u_B+\boldsymbol u_C とすると ∣d∣2=0|\boldsymbol d|^2=0、よって uA+uB+uC=0\boldsymbol u_A+\boldsymbol u_B+\boldsymbol u_C=\boldsymbol 0 である。∣uA+uB∣=∣uC∣=1|\boldsymbol u_A+\boldsymbol u_B|=|\boldsymbol u_C|=1 から 2+2uA⋅uB=12+2\boldsymbol u_A\cdot\boldsymbol u_B=1、すなわち uA⋅uB=−12\boldsymbol u_A\cdot\boldsymbol u_B=-\tfrac12 で、同様に他の組もそうである。F0F_0 から A,BA,B を見る向きは −uA,−uB-\boldsymbol u_A,-\boldsymbol u_B なので ∠AF0B=2π3\angle AF_0B=\dfrac{2\pi}3、他の角も同じである。逆に、3 辺を 2π3\dfrac{2\pi}3 で見込む点 FF では内積がすべて −12-\tfrac12 なので ∣uA+uB+uC∣2=3+6⋅(−12)=0|\boldsymbol u_A+\boldsymbol u_B+\boldsymbol u_C|^2=3+6\cdot(-\tfrac12)=0 となり、準備の議論から FF は唯一の最小点である。したがって F0F_0 がその点であり、存在も示された。

2 ∠A≥2π3\angle A\ge\dfrac{2\pi}3 とすると ∣e^B+e^C∣2=2+2cos⁡A≤1|\hat{\boldsymbol e}_B+\hat{\boldsymbol e}_C|^2=2+2\cos A\le1。任意の点 PP について、∣PB∣=∣PB→∣≥PB→⋅e^B=∣AB∣−AP→⋅e^B|PB|=|\overrightarrow{PB}|\ge\overrightarrow{PB}\cdot\hat{\boldsymbol e}_B=|AB|-\overrightarrow{AP}\cdot\hat{\boldsymbol e}_B、∣PC∣≥∣AC∣−AP→⋅e^C|PC|\ge|AC|-\overrightarrow{AP}\cdot\hat{\boldsymbol e}_C なので

f(P)≥∣AP∣+∣AB∣+∣AC∣−AP→⋅(e^B+e^C)≥f(A)+∣AP∣(1−∣e^B+e^C∣)≥f(A).f(P)\ge|AP|+|AB|+|AC|-\overrightarrow{AP}\cdot(\hat{\boldsymbol e}_B+\hat{\boldsymbol e}_C)\ge f(A)+|AP|\bigl(1-|\hat{\boldsymbol e}_B+\hat{\boldsymbol e}_C|\bigr)\ge f(A).

等号なら、∣PB∣=PB→⋅e^B|PB|=\overrightarrow{PB}\cdot\hat{\boldsymbol e}_B から PB→\overrightarrow{PB} は e^B\hat{\boldsymbol e}_B の非負の倍数で PP は直線 ABAB 上、同様に PP は直線 ACAC 上にあり、2 直線は AA でしか交わらないので P=AP=A である。

定理 6.1(Erdős–Mordell の不等式)✓

三角形 ABCABC の内部の点 PP から辺 BC,CA,ABBC,CA,AB までの距離を p,q,rp,q,r とすると、

∣PA∣+∣PB∣+∣PC∣≥2(p+q+r)|PA|+|PB|+|PC|\ge2(p+q+r)

である。

証明(定理 6.1)

x=∣PA∣x=|PA|、α1=∠BAP\alpha_1=\angle BAP、α2=∠PAC\alpha_2=\angle PAC とおく。PP は内部の点なので p−a=β(b−a)+γ(c−a)\boldsymbol p-\boldsymbol a=\beta(\boldsymbol b-\boldsymbol a)+\gamma(\boldsymbol c-\boldsymbol a)(β,γ>0\beta,\gamma>0、定理 5.4[平面ベクトルと座標] の 3)で、角の加法(補題 5.3[合同と相似])から α1+α2=A\alpha_1+\alpha_2=A。直線 ABAB への距離は 補題 2.2[三角形の五心とチェバ・メネラウスの定理] と 命題 4.5[平面ベクトルと座標] から r=xsin⁡α1r=x\sin\alpha_1、同様に q=xsin⁡α2q=x\sin\alpha_2 である。

余弦定理(定理 3.1[三角比と三角形の計量])と加法定理 cos⁡A=cos⁡α1cos⁡α2−sin⁡α1sin⁡α2\cos A=\cos\alpha_1\cos\alpha_2-\sin\alpha_1\sin\alpha_2(定理 6.4[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])から

a2−(bsin⁡α1+csin⁡α2)2=b2cos⁡2α1+c2cos⁡2α2−2bccos⁡α1cos⁡α2=(bcos⁡α1−ccos⁡α2)2≥0.a^2-(b\sin\alpha_1+c\sin\alpha_2)^2=b^2\cos^2\alpha_1+c^2\cos^2\alpha_2-2bc\cos\alpha_1\cos\alpha_2=(b\cos\alpha_1-c\cos\alpha_2)^2\ge0.

sin⁡α1,sin⁡α2>0\sin\alpha_1,\sin\alpha_2>0 なので a≥bsin⁡α1+csin⁡α2a\ge b\sin\alpha_1+c\sin\alpha_2。両辺に xx を掛けて ax≥br+cqax\ge br+cq、すなわち ∣PA∣≥br+cqa|PA|\ge\dfrac{br+cq}{a}。頂点を A→B→C→AA\to B\to C\to A と取り替えて(a→b→c→aa\to b\to c\to a、p→q→r→pp\to q\to r\to p)、∣PB∣≥cp+arb|PB|\ge\dfrac{cp+ar}{b}、∣PC∣≥aq+bpc|PC|\ge\dfrac{aq+bp}{c}。足すと

∣PA∣+∣PB∣+∣PC∣≥p(cb+bc)+q(ca+ac)+r(ba+ab)≥2(p+q+r)|PA|+|PB|+|PC|\ge p\Bigl(\frac cb+\frac bc\Bigr)+q\Bigl(\frac ca+\frac ac\Bigr)+r\Bigl(\frac ba+\frac ab\Bigr)\ge2(p+q+r)

である。最後は t>0t>0 について t+1t≥2t+\dfrac1t\ge2((t−1)2≥0(t-1)^2\ge0 より)を使った。

この定理の証明の方針は、三角関数形の Ceva の定理の「正弦の積が 11」という条件に帰着させることです。折り返すと各頂点での正弦の比が逆数になるので、3つの比の積も 11 の逆数、つまり 11 のままになり、折り返した3直線もまた1点で交わります。証明の前半は、折り返した直線がたしかに辺 BCBC などの内部の点を通ることを、向きつきの角で確かめる部分です。

定理 7.1(等角共役点の存在)✓

三角形 ABCABC の内部の点 PP をとる。直線 APAP、BPBP、CPCP を、それぞれ角 AA、BB、CC の二等分線に関して折り返した(対称移動した)3 本の直線は、三角形の内部の 1 点 P∗P^* で交わる。

証明(定理 7.1)

APAP が辺 BCBC と交わる点を DD、BPBP と CACA、CPCP と ABAB の交点を E,FE,F とする(PP は内部の点なので重心座標(定理 5.4[平面ベクトルと座標] の 3)が正で、P=αA+βB+γCP=\alpha A+\beta B+\gamma C と書くと D=βB+γCβ+γD=\dfrac{\beta B+\gamma C}{\beta+\gamma} などは辺の内部の点である。AD,BE,CFAD,BE,CF は PP を通る)。三角関数形の Ceva の定理(定理 5.2[三角形の五心とチェバ・メネラウスの定理])により

sin⁡∠BADsin⁡∠DAC⋅sin⁡∠CBEsin⁡∠EBA⋅sin⁡∠ACFsin⁡∠FCB=1.\frac{\sin\angle BAD}{\sin\angle DAC}\cdot\frac{\sin\angle CBE}{\sin\angle EBA}\cdot\frac{\sin\angle ACF}{\sin\angle FCB}=1.

頂点 AA で、u=AB→\boldsymbol u=\overrightarrow{AB}、w=AC→\boldsymbol w=\overrightarrow{AC} とし、p′\boldsymbol p' を ∠(u,p′)=∠(AD→,w)\angle(\boldsymbol u,\boldsymbol p')=\angle(\overrightarrow{AD},\boldsymbol w) となる角の内部の方向とする(u\boldsymbol u から、w\boldsymbol w に向かう向きに θ′=∠(AD→,w)\theta'=\angle(\overrightarrow{AD},\boldsymbol w) だけ回転した方向で、0<θ′<∠A0<\theta'<\angle A)。det⁡(u,w)>0\det(\boldsymbol u,\boldsymbol w)>0 として一般性を失わない。偏角の加法性(命題 4.5[平面ベクトルと座標] の 4)から p′\boldsymbol p' から w\boldsymbol w への偏角は ∠A−θ′∈(0,π)\angle A-\theta'\in(0,\pi) なので、同 2 から ∠(p′,w)=∠A−θ′\angle(\boldsymbol p',\boldsymbol w)=\angle A-\theta' で、DD は辺 BCBC の内部の点なので角の加法(補題 5.3[合同と相似])から ∠A−θ′=∠(u,AD→)\angle A-\theta'=\angle(\boldsymbol u,\overrightarrow{AD}) でもある。同 1 から det⁡(u,p′)>0\det(\boldsymbol u,\boldsymbol p')>0、det⁡(p′,w)>0\det(\boldsymbol p',\boldsymbol w)>0 なので、p′=su+tw\boldsymbol p'=s\boldsymbol u+t\boldsymbol w と書くと s=det⁡(p′,w)det⁡(u,w)>0s=\dfrac{\det(\boldsymbol p',\boldsymbol w)}{\det(\boldsymbol u,\boldsymbol w)}>0、t=det⁡(u,p′)det⁡(u,w)>0t=\dfrac{\det(\boldsymbol u,\boldsymbol p')}{\det(\boldsymbol u,\boldsymbol w)}>0(命題 3.1[平面ベクトルと座標])。したがって AA から p′\boldsymbol p' の方向の半直線は線分 BCBC の内部の点 D′=sB+tCs+tD'=\dfrac{sB+tC}{s+t} を通り、これが折り返した直線 AD′AD' である。同様に E′,F′E',F' をとると、

sin⁡∠BAD′sin⁡∠D′AC=sin⁡∠DACsin⁡∠BAD\frac{\sin\angle BAD'}{\sin\angle D'AC}=\frac{\sin\angle DAC}{\sin\angle BAD}

などの逆数の関係が 3 つの頂点で成り立つので、D′,E′,F′D',E',F' に対する三角関数形の積はもとの積の逆数、すなわち 11 である。再び 定理 5.2[三角形の五心とチェバ・メネラウスの定理] により、AD′,BE′,CF′AD',BE',CF' は 1 点 P∗P^* で交わり、これは 定理 5.1[三角形の五心とチェバ・メネラウスの定理] により三角形の内部にある。

注意 7.2(名前のついた点(定義のみ))

重心 GG の等角共役点を Lemoine 点(類似重心)といい、定理 7.1 によって存在が保証される。三角形の 3 つの垂線の足を結んでできる三角形を垂足三角形(orthic triangle)という。辺の中点を結んでできる三角形(中点三角形)の内接円(定理 4.2[三角形の五心とチェバ・メネラウスの定理])を Spieker 円といい、その中心を Spieker 中心という。これらの点・円の性質(Lemoine 点の座標、Brocard 点の存在、Spieker 円の中心が重心と内心のどこにあるか)は本書では扱わない。出典: R. A. Johnson, Advanced Euclidean Geometry, Dover。

  • 凸最適化。Fermat 点の問題 min⁡∑∣P−Ai∣\min\sum|P-A_i| は、幾何学的中央値(Fermat–Weber 点)の最小化で、目的関数は凸(距離は凸関数)です。定理 5.2 の準備の議論 ∣PA∣≥AP→⋅uA|PA|\ge\overrightarrow{AP}\cdot\boldsymbol u_A は、劣勾配による最適性の証明そのものです(凸解析)。点の個数が増えると 120 度の条件は「単位ベクトルの和が 0\boldsymbol 0」に一般化されます。
  • Steiner 木。頂点を結ぶ最短のネットワークは、Fermat 点(120∘120^\circ で 3 本の辺が交わる分岐点)を使います。
  • 複素数と三角形の中心。外心を原点とする座標で垂心が A+B+CA+B+C であることは、複素数平面で九点円・Euler 線・Simson 線を扱う標準的な道具です。後の章の複素数平面と作図で再び出会います。
  • 射影幾何。等角共役点は、三角形に関する 2 次の変換(Cremona 変換)の最も簡単な例です。

演習 9.1易

A=(0,0)A=(0,0)、B=(4,0)B=(4,0)、C=(0,3)C=(0,3) の三角形の外心 OO、重心 GG、垂心 HH、九点円の中心 NN と半径を求め、定理 2.1 を確かめよ。

解答

直角三角形なので外心は斜辺 BCBC の中点 O=(2,32)O=(2,\tfrac32)、R=52R=\tfrac52。垂心は直角の頂点 H=A=(0,0)H=A=(0,0)。重心 G=(43,1)G=(\tfrac43,1)。OH→=(−2,−32)\overrightarrow{OH}=(-2,-\tfrac32)、OG→=(−23,−12)\overrightarrow{OG}=(-\tfrac23,-\tfrac12) で OH→=3OG→\overrightarrow{OH}=3\overrightarrow{OG} である。N=O+H2=(1,34)N=\dfrac{O+H}2=(1,\tfrac34)、九点円の半径は R2=54\dfrac R2=\tfrac54。確かに Mc=(2,0)M_c=(2,0)(ABAB の中点)と NN の距離は 1+916=54\sqrt{1+\tfrac9{16}}=\tfrac54 である。

演習 9.2標準

辺 13,14,1513,14,15 の三角形で、外心 OO と内心 II の距離を求めよ(定理 3.1 を使う)。

解答

例 3.2 のとおり、R=658R=\dfrac{65}8、r=4r=4 から ∣OI∣2=R2−2Rr=6564|OI|^2=R^2-2Rr=\dfrac{65}{64} で ∣OI∣=658|OI|=\dfrac{\sqrt{65}}8 である。

演習 9.3標準

AB=AC=1AB=AC=1、∠A=2π3\angle A=\dfrac{2\pi}3 の三角形で、f(P)=∣PA∣+∣PB∣+∣PC∣f(P)=|PA|+|PB|+|PC| の最小値を求めよ。辺 BCBC の中点 MM での値と比べよ。

解答

∠A=2π3\angle A=\dfrac{2\pi}3 なので 定理 5.2 の 2 により最小点は AA で、最小値は f(A)=0+1+1=2f(A)=0+1+1=2。∣BC∣2=1+1−2cos⁡2π3=3|BC|^2=1+1-2\cos\dfrac{2\pi}3=3 で ∣BC∣=3|BC|=\sqrt3。MM では ∣MB∣=∣MC∣=32|MB|=|MC|=\dfrac{\sqrt3}2、∣MA∣=12|MA|=\dfrac12(直角三角形 AMBAMB から)で、f(M)=12+3≈2.23>2f(M)=\dfrac12+\sqrt3\approx2.23>2 である。

  • H. S. M. Coxeter, S. L. Greitzer, Geometry Revisited, Mathematical Association of America, 1967 — 第 1 章(三角形に関する点と直線:Euler 線・九点円)、第 3 章(共線と共点:Simson 線)。
  • Roger A. Johnson, Advanced Euclidean Geometry, Dover, 2007 — Euler 線・九点円・Simson 線・等角共役点の古典的な扱い。
  • Marcel Berger, Geometry I, Springer, 1987 — 三角形の中心の座標による扱い。
  • Zvi Drezner, Horst W. Hamacher (eds.), Facility Location: Applications and Theory, Springer, 2002 — 幾何学的中央値(Fermat–Weber 問題)の最適化の側面。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

この記事の誤りを報告する ・運営: 夢現技研合同会社 ・料金 ・利用条件 ・特定商取引法に基づく表記

© 2026 夢現技研合同会社 ・コード例は MIT ライセンスです。