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円の幾何:円周角・接線・方べきの定理を座標から証明する

対象読者: 本テーマ第 1〜3 章(ベクトル・合同と相似・正弦定理と余弦定理)と、三角関数の加法定理を学んだ人。円周角や接線は中学の知識で足り、場合分けの議論は仮定しません。

前提となる記事:三角比と三角形の計量:正弦定理・余弦定理から Heron・Bretschneider の公式まで

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円周角の定理は、中学では図を描いて「中心が三角形の中にあるとき、外にあるとき」と場合を分けて示すことの多い定理です。この章では、円周上の点を角度で表して計算することで、場合分けをせずに円周角・接線・方べきなどの性質を示します。読み終えると、4 点が同じ円の上にあるかを角の大きさで確かめたり、点から円に引いた線の長さの積を計算したりできるようになります。

  • 円周上の点を O+r e(θ)O+r\,e(\theta)(e(θ)=(cos⁡θ,sin⁡θ)e(\theta)=(\cos\theta,\sin\theta))と書くと、2 点を結ぶ弦のベクトルは 2rsin⁡β−α2 e ⁣(α+β2+π2)2r\sin\frac{\beta-\alpha}{2}\,e\!\bigl(\frac{\alpha+\beta}{2}+\frac\pi2\bigr) になります(補題 2.2)。弦の長さと方向が一度に出るので、以降の証明は計算になります。
  • 円周角の定理は、円周上の点 PP から弦 ABAB を見込む角が、PP が OO と同じ側にあれば中心角の半分、反対側なら π\pi から半分を引いた値になる、という形で証明します(定理 3.1)。点の配置による場合分け(中心が三角形の内側か外側か)が要りません。
  • その逆(同じ側から同じ角で見込む点は同一円周上にある)は、cot⁡\cot(cot⁡θ=cos⁡θ/sin⁡θ\cot\theta=\cos\theta/\sin\theta)を使った補題で証明します(補題 3.3、定理 3.4)。内接四角形の条件、接弦定理もここから従います(定理 3.5、定理 4.3)。
  • 方べきの定理は、直線上の点の 2 次方程式の解の積です(定理 5.2)。その逆、2 円の根軸(2 円に関する方べきが等しい点の集まり)が直線であること、3 円の根心の存在、2 円の位置関係と共通接線の本数(命題 6.1)まで進みます。
  • Ptolemy の定理、Brahmagupta の公式、蝶の定理などの円の名定理は、次の章(円の名定理)に回します。この章の定理は、そこで <Ref> されます。

1. 動機 — 円周角の定理の「場合分け」をなくす

Section titled “1. 動機 — 円周角の定理の「場合分け」をなくす”

高校の円周角の定理の証明は、円の中心 OO が円周角を作る三角形の内部にあるか、辺上か、外部かで場合分けします。さらに 4 点が円周上にある条件(円周角の定理の逆)では、点が弦の同じ側にあるか反対側にあるかでまた分けます。図を描くと場合分けが見えますが、図に頼る証明は、描かなかった配置の取りこぼしが起きやすい証明でもあります。

この章では、円周上の点を角度の媒介変数で表して、弦のベクトルを 1 本の式で書くところから始めます。点 PP の位置が円周のどこにあっても、同じ式が使えます。場合分けは、式の中の正弦の符号として現れ、その符号が「PP が OO と同じ側か」という幾何的な意味を持つことを示します。

前章までの記号を使います。三角形・角 ∠ABC\angle ABC・符号付き面積 S(A,B,C)S(A,B,C)・外心と外接円(補題 4.1[三角比と三角形の計量])などです。S(A,B,P)>0S(A,B,P)>0 は、PP が有向直線 A→BA\to B の左側(AA から BB へ向かって進むときの、進行方向の左手側)にあることを表します。

定義 2.1(円)↗

中心 OO、半径 r>0r>0 の円とは、集合 Γ(O,r)={x∣∣x−o∣=r}\Gamma(O,r)=\{\boldsymbol x\mid|\boldsymbol x-\boldsymbol o|=r\} のことをいう。円周上の点は O+r e(θ)O+r\,e(\theta)(θ∈R\theta\in\mathbb{R})と書ける(定理 7.4[指数・対数・三角関数をきちんと定義する])。円周上の相異なる 2 点を結ぶ線分を弦といい、∠AOB\angle AOB を弦 ABAB の中心角という。

補題 2.2(弦の方向と長さ)✓

任意の実数 α,γ\alpha,\gamma について

e(α)−e(γ)=2sin⁡α−γ2  e ⁣(α+γ2+π2)e(\alpha)-e(\gamma)=2\sin\frac{\alpha-\gamma}{2}\;e\!\Bigl(\frac{\alpha+\gamma}{2}+\frac\pi2\Bigr)

である。したがって ∣e(α)−e(γ)∣=2∣sin⁡α−γ2∣|e(\alpha)-e(\gamma)|=2\bigl|\sin\frac{\alpha-\gamma}{2}\bigr| で、det⁡(e(x),e(y))=sin⁡(y−x)\det(e(x),e(y))=\sin(y-x) である。

証明(補題 2.2)

和積の公式(系 4.3[三角関数])から cos⁡α−cos⁡γ=−2sin⁡α+γ2sin⁡α−γ2\cos\alpha-\cos\gamma=-2\sin\frac{\alpha+\gamma}2\sin\frac{\alpha-\gamma}2、sin⁡α−sin⁡γ=2cos⁡α+γ2sin⁡α−γ2\sin\alpha-\sin\gamma=2\cos\frac{\alpha+\gamma}2\sin\frac{\alpha-\gamma}2。よって e(α)−e(γ)=2sin⁡α−γ2(−sin⁡m,cos⁡m)e(\alpha)-e(\gamma)=2\sin\frac{\alpha-\gamma}2\bigl(-\sin m,\cos m\bigr)(m=α+γ2m=\frac{\alpha+\gamma}2)で、(−sin⁡m,cos⁡m)=e(m+π2)(-\sin m,\cos m)=e(m+\frac\pi2)(定理 7.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] の 1)。e(⋅)e(\cdot) は単位ベクトルなので長さが出る。最後の式は cos⁡xsin⁡y−sin⁡xcos⁡y=sin⁡(y−x)\cos x\sin y-\sin x\cos y=\sin(y-x) である(加法定理)。

命題 2.3(弦の長さと中心角)✓

円 Γ(O,r)\Gamma(O,r) の弦 ABAB の中心角を ω=∠AOB∈(0,π]\omega=\angle AOB\in(0,\pi] とすると、∣AB∣=2rsin⁡ω2|AB|=2r\sin\dfrac\omega2 である。したがって 2 つの弦の長さが等しいことと、中心角が等しいことは同値である。

証明(命題 2.3)

A=O+re(α)A=O+re(\alpha)、B=O+re(β)B=O+re(\beta) とすると、補題 2.2 から ∣AB∣=2r∣sin⁡β−α2∣|AB|=2r|\sin\frac{\beta-\alpha}2|。cos⁡ω=e(α)⋅e(β)=cos⁡(β−α)\cos\omega=e(\alpha)\cdot e(\beta)=\cos(\beta-\alpha) なので、β−α≡±ω(mod2π)\beta-\alpha\equiv\pm\omega\pmod{2\pi} で、β−α2≡±ω2(modπ)\frac{\beta-\alpha}2\equiv\pm\frac\omega2\pmod\pi。∣sin⁡∣|\sin| は周期 π\pi の偶関数なので ∣sin⁡β−α2∣=sin⁡ω2|\sin\frac{\beta-\alpha}2|=\sin\frac\omega2(ω/2∈[0,π/2]\omega/2\in[0,\pi/2])。sin⁡\sin は [0,π/2][0,\pi/2] で狭義単調増加(定理 7.3[指数・対数・三角関数をきちんと定義する] の 3)なので、後半が従う。

円周角の定理を、見込む角の値として正確に述べます。円周上の点 PP が、弦 ABAB を境にして中心 OO と同じ側にあるか反対側にあるかで、値が変わります。

証明は 3 段で進みます。まず弦の補題で PA→\overrightarrow{PA}、PB→\overrightarrow{PB} の向きと長さを書き、cos⁡∠APB\cos\angle APB を求めます。次に、その符号が ω2\frac\omega2 と π−ω2\pi-\frac\omega2 のどちらになるかを、PP の位置(角度 γ\gamma の範囲 (i)、(ii))ごとに調べます。最後に、行列式の符号から PP が直線 ABAB のどちら側にあるかを調べ、OO の側と比べます。なお e(μ)e(\mu) は、xx 軸の正の向きから角 μ\mu だけ回った向きの単位ベクトルなので、μ\mu の差が 2 本のベクトルの向きの角度の差になります。

定理 3.1(円周角の定理)✓

円 Γ\Gamma の中心を OO、弦 ABAB の中心角を ω=∠AOB∈(0,π]\omega=\angle AOB\in(0,\pi] とする。Γ\Gamma 上の点 P≠A,BP\ne A,B について、

  1. ω<π\omega<\pi のとき、PP が直線 ABAB について OO と同じ側にあれば ∠APB=ω2\angle APB=\dfrac\omega2、反対側にあれば ∠APB=π−ω2\angle APB=\pi-\dfrac\omega2 である。
  2. ω=π\omega=\pi(ABAB が直径)のとき、∠APB=π2\angle APB=\dfrac\pi2 である。
証明(定理 3.1)

平行移動で OO を原点に、正の倍率の拡大で rr を 11 にしてよい(どちらも角の大きさと、点が直線 ABAB のどちら側にあるかを変えない)。cos⁡ω=e(α)⋅e(β)=cos⁡(β−α)\cos\omega=e(\alpha)\cdot e(\beta)=\cos(\beta-\alpha) から、A,BA,B の名前を必要なら入れ替えて(∠APB\angle APB は A,BA,B について対称)A=e(α)A=e(\alpha)、B=e(β)B=e(\beta)、β=α+ω\beta=\alpha+\omega とできる。P=e(γ)P=e(\gamma) とする。

補題 2.2 から PA→=λA e(μA)\overrightarrow{PA}=\lambda_A\,e(\mu_A)、PB→=λB e(μB)\overrightarrow{PB}=\lambda_B\,e(\mu_B)、ここで λA=2sin⁡α−γ2\lambda_A=2\sin\frac{\alpha-\gamma}2、λB=2sin⁡β−γ2\lambda_B=2\sin\frac{\beta-\gamma}2(P≠A,BP\ne A,B なので ≠0\ne0)、μB−μA=β−α2=ω2\mu_B-\mu_A=\frac{\beta-\alpha}2=\frac\omega2。したがって

cos⁡∠APB=PA→⋅PB→∣PA∣∣PB∣=λAλB∣λAλB∣cos⁡ω2.\cos\angle APB=\frac{\overrightarrow{PA}\cdot\overrightarrow{PB}}{|PA||PB|}=\frac{\lambda_A\lambda_B}{|\lambda_A\lambda_B|}\cos\frac\omega2.

λAλB>0\lambda_A\lambda_B>0 なら ∠APB=ω2\angle APB=\frac\omega2、λAλB<0\lambda_A\lambda_B<0 なら cos⁡∠APB=cos⁡(π−ω2)\cos\angle APB=\cos(\pi-\frac\omega2) なので ∠APB=π−ω2\angle APB=\pi-\frac\omega2(ともに [0,π][0,\pi] の元)。

符号を調べる。γ\gamma を (α,α+2π)(\alpha,\alpha+2\pi) にとる(P≠AP\ne A)。(i) β<γ<α+2π\beta<\gamma<\alpha+2\pi のとき、α−γ2∈(−π,−ω2)\frac{\alpha-\gamma}2\in(-\pi,-\frac\omega2)、β−γ2∈(−π,0)\frac{\beta-\gamma}2\in(-\pi,0) でどちらも sin⁡<0\sin<0 なので λAλB>0\lambda_A\lambda_B>0。(ii) α<γ<β\alpha<\gamma<\beta のとき、α−γ2∈(−ω2,0)\frac{\alpha-\gamma}2\in(-\frac\omega2,0) で sin⁡<0\sin<0、β−γ2∈(0,ω2)\frac{\beta-\gamma}2\in(0,\frac\omega2) で sin⁡>0\sin>0 なので λAλB<0\lambda_A\lambda_B<0。

次に側を調べる。補題 2.2 から AB→=2sin⁡β−α2 e(⋅)\overrightarrow{AB}=2\sin\frac{\beta-\alpha}2\,e(\cdot)、AP→=2sin⁡γ−α2 e(⋅)\overrightarrow{AP}=2\sin\frac{\gamma-\alpha}2\,e(\cdot) で、2 つの ee の偏角の差が γ−β2\frac{\gamma-\beta}2 なので、

det⁡(AB→,AP→)=4sin⁡β−α2 sin⁡γ−α2 sin⁡γ−β2.\det(\overrightarrow{AB},\overrightarrow{AP})=4\sin\frac{\beta-\alpha}2\,\sin\frac{\gamma-\alpha}2\,\sin\frac{\gamma-\beta}2.

(i) では 3 つの sin⁡\sin がすべて正(ω2∈(0,π2]\frac\omega2\in(0,\frac\pi2]、γ−α2∈(0,π)\frac{\gamma-\alpha}2\in(0,\pi)、γ−β2∈(0,π)\frac{\gamma-\beta}2\in(0,\pi))で PP は A→BA\to B の左側、(ii) では sin⁡γ−β2<0\sin\frac{\gamma-\beta}2<0 で右側にある。一方、det⁡(AB→,AO→)=det⁡(e(β)−e(α),−e(α))=det⁡(e(α),e(β))=sin⁡ω\det(\overrightarrow{AB},\overrightarrow{AO})=\det(e(\beta)-e(\alpha),-e(\alpha))=\det(e(\alpha),e(\beta))=\sin\omega で、ω<π\omega<\pi なら正(OO は左側)、ω=π\omega=\pi なら 00(OO は直線 ABAB 上)である。以上をまとめると、ω<π\omega<\pi のとき (i) は PP が OO と同じ側で ∠APB=ω2\angle APB=\frac\omega2、(ii) は反対側で ∠APB=π−ω2\angle APB=\pi-\frac\omega2 である。ω=π\omega=\pi のときは ω2=π−ω2=π2\frac\omega2=\pi-\frac\omega2=\frac\pi2 で 2 つの場合の値が一致する。

系 3.2(タレスの定理)✓

ABAB が円の直径ならば、円周上の A,BA,B 以外の点 PP について ∠APB=π/2\angle APB=\pi/2 である。逆に ∠APB=π/2\angle APB=\pi/2 ならば PP は ABAB を直径とする円周上にある。

証明(系 3.2)

前半は 定理 3.1 の 2。後半は、∠APB=π/2\angle APB=\pi/2 が (a−p)⋅(b−p)=0(\boldsymbol a-\boldsymbol p)\cdot(\boldsymbol b-\boldsymbol p)=0 と同値で、これが ABAB を直径とする円であること(命題 5.5[平面ベクトルと座標] の 4)による。

ABPQOωω/2π − ω/2
円周角の定理。中心角 ω の弦 AB を、O と同じ側の点 P から見ると ω/2、反対側の点 Q から見ると π − ω/2

円周角の定理の逆を証明します。見込む角の大きさが「弦の同じ側にある点が円の内側・円周上・外側のどこにあるか」を教えてくれることを、補題として示します。

方針は、角の大きさを cot⁡\cot の大小に置き換えることです。cot⁡\cot の大小は点 XX の座標の 2 次式 q(X)q(X) の符号で決まり、q(X)=0q(X)=0 がちょうど円の方程式になります。こうして、角の大小と点が円の内か外かが結びつきます。

補題 3.3(見込む角と円の内外)✓

A≠BA\ne B とし、TT を S(A,B,T)>0S(A,B,T)>0 を満たす点、Γ\Gamma を A,B,TA,B,T を通る円(補題 4.1[三角比と三角形の計量])、O′,ρO',\rho をその中心と半径とする。S(A,B,X)>0S(A,B,X)>0 を満たす点 XX について、

∠AXB>∠ATB  ⟺  ∣XO′∣<ρ,∠AXB=∠ATB  ⟺  ∣XO′∣=ρ,∠AXB<∠ATB  ⟺  ∣XO′∣>ρ\angle AXB>\angle ATB\iff|XO'|<\rho,\qquad\angle AXB=\angle ATB\iff|XO'|=\rho,\qquad\angle AXB<\angle ATB\iff|XO'|>\rho

である。

証明(補題 3.3)

XX が A→BA\to B の左側にあるとき、u=A−X\boldsymbol u=A-X、w=B−X\boldsymbol w=B-X とすると、det⁡(u,w)=2S(A,B,X)>0\det(\boldsymbol u,\boldsymbol w)=2S(A,B,X)>0(前章の 命題 6.2[平面ベクトルと座標] の 1)。θ=∠AXB\theta=\angle AXB とおくと、命題 4.5[平面ベクトルと座標] の 1・2 から u⋅w=∣u∣∣w∣cos⁡θ\boldsymbol u\cdot\boldsymbol w=|\boldsymbol u||\boldsymbol w|\cos\theta、det⁡(u,w)=∣u∣∣w∣sin⁡θ\det(\boldsymbol u,\boldsymbol w)=|\boldsymbol u||\boldsymbol w|\sin\theta で θ∈(0,π)\theta\in(0,\pi) なので、cot⁡θ=u⋅wdet⁡(u,w)\cot\theta=\dfrac{\boldsymbol u\cdot\boldsymbol w}{\det(\boldsymbol u,\boldsymbol w)}。0<θ1<θ2<π0<\theta_1<\theta_2<\pi なら cot⁡θ1−cot⁡θ2=sin⁡(θ2−θ1)sin⁡θ1sin⁡θ2>0\cot\theta_1-\cot\theta_2=\dfrac{\sin(\theta_2-\theta_1)}{\sin\theta_1\sin\theta_2}>0(加法定理)なので cot⁡\cot は (0,π)(0,\pi) で狭義単調減少である。κ=cot⁡∠ATB\kappa=\cot\angle ATB とおき

q(X)=(A−X)⋅(B−X)−κdet⁡(A−X,B−X)q(X)=(A-X)\cdot(B-X)-\kappa\det(A-X,B-X)

とすると、det⁡(u,w)>0\det(\boldsymbol u,\boldsymbol w)>0 の下で ∠AXB>∠ATB  ⟺  cot⁡∠AXB<κ  ⟺  q(X)<0\angle AXB>\angle ATB\iff\cot\angle AXB<\kappa\iff q(X)<0 であり、等号・不等号の向きも同様に対応する。q(X)=∣x∣2−(a+b)⋅x+a⋅b−κ(det⁡(a,b)−det⁡(a,x)−det⁡(x,b))q(X)=|\boldsymbol x|^2-(\boldsymbol a+\boldsymbol b)\cdot\boldsymbol x+\boldsymbol a\cdot\boldsymbol b-\kappa\bigl(\det(\boldsymbol a,\boldsymbol b)-\det(\boldsymbol a,\boldsymbol x)-\det(\boldsymbol x,\boldsymbol b)\bigr) は x\boldsymbol x について 2 次の項が ∣x∣2|\boldsymbol x|^2 で、1 次の項が線形なので、平方完成して q(X)=∣x−m∣2−ρ02q(X)=|\boldsymbol x-\boldsymbol m|^2-\rho_0^2(m\boldsymbol m はある点、ρ02\rho_0^2 はある実数)と書ける。q(A)=q(B)=0q(A)=q(B)=0(u\boldsymbol u または w\boldsymbol w が 0\boldsymbol 0)、q(T)=0q(T)=0(κ\kappa の定義)なので、∣a−m∣2=∣b−m∣2=∣t−m∣2=ρ02|\boldsymbol a-\boldsymbol m|^2=|\boldsymbol b-\boldsymbol m|^2=|\boldsymbol t-\boldsymbol m|^2=\rho_0^2 となり、ρ02≥0\rho_0^2\ge0 で MM は 3 点 A,B,TA,B,T から等距離にある。外心の一意性(補題 4.1[三角比と三角形の計量])から M=O′M=O'、ρ0=ρ\rho_0=\rho である。したがって q(X)<0  ⟺  ∣XO′∣<ρq(X)<0\iff|XO'|<\rho など。

定理 3.4(円周角の定理の逆(4 点が同一円周上にある条件))✓

A≠BA\ne B とし、P,QP,Q を直線 ABAB 上にない点とする。

  1. P,QP,Q が直線 ABAB について同じ側にあるとき、A,B,P,QA,B,P,Q が同一円周上にある   ⟺  ∠APB=∠AQB\iff\angle APB=\angle AQB。
  2. P,QP,Q が直線 ABAB について反対側にあるとき、A,B,P,QA,B,P,Q が同一円周上にある   ⟺  ∠APB+∠AQB=π\iff\angle APB+\angle AQB=\pi。
証明(定理 3.4)

1: S(A,B,P)S(A,B,P) と S(A,B,Q)S(A,B,Q) が同符号なので、負のときは A,BA,B を入れ替えて正としてよい(∠\angle は A,BA,B について対称)。Γ\Gamma を A,B,PA,B,P を通る円とすると、補題 3.3(T=PT=P、X=QX=Q)から ∠AQB=∠APB  ⟺  Q∈Γ\angle AQB=\angle APB\iff Q\in\Gamma で、これは 4 点が同一円周上にあることである(A,B,PA,B,P を通る円は 1 つだけなので)。

2: (⇒\Rightarrow)4 点が円 Γ\Gamma 上にあるとする。中心 OO と弦 ABAB について、P,QP,Q は反対側にあるので、一方は OO と同じ側、他方は反対側(ABAB が直径なら OO は直線上で、どちらも π2\frac\pi2)。定理 3.1 により ∠APB+∠AQB=ω2+(π−ω2)=π\angle APB+\angle AQB=\frac\omega2+(\pi-\frac\omega2)=\pi(または π2+π2\frac\pi2+\frac\pi2)。(⇐\Leftarrow)Γ\Gamma を A,B,PA,B,P を通る円とする。Γ\Gamma は直線 ABAB の両側に点を持つ(定理 3.1 の証明の (i)、(ii) の範囲の γ\gamma はどちらも空でなく、それぞれ直線 ABAB の別の側に対応する)ので、QQ と同じ側にある Γ\Gamma 上の点 Q∗Q^* をとれる。定理 3.1 により ∠AQ∗B=π−∠APB\angle AQ^*B=\pi-\angle APB(P,Q∗P,Q^* は反対側)で、仮定から ∠AQB=π−∠APB\angle AQB=\pi-\angle APB なので ∠AQB=∠AQ∗B\angle AQB=\angle AQ^*B。Q,Q∗Q,Q^* は同じ側にあるので 1 により A,B,Q∗,QA,B,Q^*,Q は同一円周上にあり、その円は A,B,Q∗A,B,Q^* を通る円 Γ\Gamma である。よって Q∈ΓQ\in\Gamma。

次の定理は、四角形の向かい合う 2 つの角の和を、直前の定理に当てはめたものです。S(A,B,P)S(A,B,P) の符号は PP が有向直線 ABAB のどちら側にあるかを表すので、2 つの点で符号が逆なら、その 2 点は直線の反対側にあります。

定理 3.5(円に内接する四角形の条件)✓

凸四角形 ABCDABCD(前章の 定義 5.5[合同と相似])について、次は同値である。

  1. 4 点 A,B,C,DA,B,C,D は同一円周上にある。
  2. ∠A+∠C=π\angle A+\angle C=\pi。
  3. ∠B+∠D=π\angle B+\angle D=\pi。
  4. 1 つの頂点の外角が、その対角(向かい合う頂点の内角)に等しい。
証明(定理 3.5)

A,B,C,DA,B,C,D が反時計回りの凸四角形なので S(A,B,D)>0S(A,B,D)>0、S(B,C,D)>0S(B,C,D)>0、すなわち S(B,D,C)<0S(B,D,C)<0 で、AA と CC は直線 BDBD について反対側にある。定理 3.4 の 2(弦 BDBD、点 A,CA,C)から 1   ⟺  ∠BAD+∠BCD=π\iff\angle BAD+\angle BCD=\pi、つまり 2 である。同様に S(C,A,B)>0S(C,A,B)>0、S(A,C,D)>0S(A,C,D)>0 から BB と DD は直線 ACAC について反対側にあり、1   ⟺  ∠B+∠D=π\iff\angle B+\angle D=\pi すなわち 3 を得る。4 は 2・3 の言い換えである(外角は π\pi から内角を引いたもの)。

補題 4.1(直線と円の位置関係)✓

円 Γ(O,r)\Gamma(O,r) と直線 ℓ={x∣n⋅x=c}\ell=\{\boldsymbol x\mid\boldsymbol n\cdot\boldsymbol x=c\}(∣n∣=1|\boldsymbol n|=1)について、δ=∣n⋅o−c∣\delta=|\boldsymbol n\cdot\boldsymbol o-c| とすると、共有点の個数は δ<r\delta<r のとき 22、δ=r\delta=r のとき 11、δ>r\delta>r のとき 00 である。δ=r\delta=r のとき、共有点 TT は OT→⊥ℓ\overrightarrow{OT}\perp\ell を満たす。

証明(補題 4.1)

ℓ\ell 上の点は x=o+(c−n⋅o)n+sn⊥\boldsymbol x=\boldsymbol o+(c-\boldsymbol n\cdot\boldsymbol o)\boldsymbol n+s\boldsymbol n^\perp(n⊥=R(π2)n\boldsymbol n^\perp=R(\frac\pi2)\boldsymbol n、s∈Rs\in\mathbb{R})とただ 1 通りに書け(命題 3.1[平面ベクトルと座標])、∣x−o∣2=(c−n⋅o)2+s2=δ2+s2|\boldsymbol x-\boldsymbol o|^2=(c-\boldsymbol n\cdot\boldsymbol o)^2+s^2=\delta^2+s^2 である。これが r2r^2 に等しいのは s2=r2−δ2s^2=r^2-\delta^2 のときで、解は δ<r\delta<r で 2 個、δ=r\delta=r で 1 個(s=0s=0)、δ>r\delta>r で 0 個。s=0s=0 のとき OT→=(c−n⋅o)n\overrightarrow{OT}=(c-\boldsymbol n\cdot\boldsymbol o)\boldsymbol n は n\boldsymbol n の倍数で、ℓ\ell の方向と垂直である。

定義 4.2(接線)↗

円とちょうど 1 点で交わる直線を、その円の接線といい、共有点を接点という。補題 4.1 により、円周上の点 TT における接線は、TT を通り OT→\overrightarrow{OT} に垂直な直線 {x∣(x−t)⋅(t−o)=0}\{\boldsymbol x\mid(\boldsymbol x-\boldsymbol t)\cdot(\boldsymbol t-\boldsymbol o)=0\} である。

接弦定理は、接線と弦のなす角が、その弦の反対側の円周角に等しい、という主張です。証明は円周角の定理と同じく e(θ)e(\theta) で書き、cos⁡\cos の値に付く符号の因子を比べます。sgn⁡\operatorname{sgn} は符号を取り出す記号で、正の数には 11、負の数には −1-1 を対応させます。

定理 4.3(接弦定理)✓

円周上の点 AA における接線上の点 T≠AT\ne A と、円周上の点 B≠AB\ne A、P≠A,BP\ne A,B について、TT と PP が直線 ABAB について反対側にあれば、∠TAB=∠APB\angle TAB=\angle APB である。

証明(定理 4.3)

OO を原点、r=1r=1 としてよい。A=e(α)A=e(\alpha)、B=e(β)B=e(\beta)、P=e(γ)P=e(\gamma)、接線の方向は e(α+π2)e(\alpha+\frac\pi2)(OA→\overrightarrow{OA} に垂直)で、AT→=τ e(α+π2)\overrightarrow{AT}=\tau\,e(\alpha+\frac\pi2)(τ≠0\tau\ne0)と書く。補題 2.2 から AB→=2sin⁡β−α2 e(α+β2+π2)\overrightarrow{AB}=2\sin\frac{\beta-\alpha}2\,e(\frac{\alpha+\beta}2+\frac\pi2) で、2 つの単位ベクトルの偏角の差は β−α2\frac{\beta-\alpha}2 なので

cos⁡∠TAB=sgn⁡(τsin⁡β−α2)cos⁡β−α2.\cos\angle TAB=\operatorname{sgn}\Bigl(\tau\sin\frac{\beta-\alpha}2\Bigr)\cos\frac{\beta-\alpha}2.

一方、定理 3.1 の証明と同じ計算(λA,λB\lambda_A,\lambda_B の符号の議論は α,β,γ\alpha,\beta,\gamma の取り方によらない)で cos⁡∠APB=sgn⁡(λAλB)cos⁡β−α2\cos\angle APB=\operatorname{sgn}(\lambda_A\lambda_B)\cos\frac{\beta-\alpha}2。ここで λAλB=4sin⁡γ−α2sin⁡γ−β2\lambda_A\lambda_B=4\sin\frac{\gamma-\alpha}2\sin\frac{\gamma-\beta}2 である。さらに側を調べると、det⁡(AB→,AT→)=2τsin⁡β−α2sin⁡(α−α+β2)=−2τsin⁡2β−α2\det(\overrightarrow{AB},\overrightarrow{AT})=2\tau\sin\frac{\beta-\alpha}2\sin(\alpha-\frac{\alpha+\beta}2)=-2\tau\sin^2\frac{\beta-\alpha}2 の符号は −sgn⁡τ-\operatorname{sgn}\tau、det⁡(AB→,AP→)=4sin⁡β−α2sin⁡γ−α2sin⁡γ−β2\det(\overrightarrow{AB},\overrightarrow{AP})=4\sin\frac{\beta-\alpha}2\sin\frac{\gamma-\alpha}2\sin\frac{\gamma-\beta}2 の符号は sgn⁡(sin⁡β−α2)sgn⁡(λAλB)\operatorname{sgn}\bigl(\sin\frac{\beta-\alpha}2\bigr)\operatorname{sgn}(\lambda_A\lambda_B) である。T,PT,P が反対側であることは、この 2 つの符号が反対であること、すなわち sgn⁡τ=sgn⁡(sin⁡β−α2)sgn⁡(λAλB)\operatorname{sgn}\tau=\operatorname{sgn}\bigl(\sin\frac{\beta-\alpha}2\bigr)\operatorname{sgn}(\lambda_A\lambda_B) と同値で、これは 2 つの余弦の式の符号因子が一致することである。ゆえに cos⁡∠TAB=cos⁡∠APB\cos\angle TAB=\cos\angle APB、∠TAB=∠APB\angle TAB=\angle APB を得る。

OABPT∠TAB∠APB
接弦定理。A における接線上の点 T と、直線 AB について T と反対側の円周上の点 P。∠TAB = ∠APB(図ではともに約 120°)

定義 5.1(方べき)↗

円 Γ(O,r)\Gamma(O,r) と点 PP に対し、pow⁡Γ(P)=∣P−O∣2−r2\operatorname{pow}_\Gamma(P)=|P-O|^2-r^2 を PP の Γ\Gamma に関する方べきという。PP が円の外にあれば正、円周上なら 00、内にあれば負である。

定理 5.2(方べきの定理とその逆)✓

  1. 点 PP を通る直線が円 Γ\Gamma と X,YX,Y で交わるとき、PX→⋅PY→=pow⁡Γ(P)\overrightarrow{PX}\cdot\overrightarrow{PY}=\operatorname{pow}_\Gamma(P) である(接するときは X=YX=Y とする)。とくに PP が円の外にあるとき、PP から引いた接線の接点を TT とすると ∣PT∣2=pow⁡Γ(P)|PT|^2=\operatorname{pow}_\Gamma(P) である。
  2. 相異なる 2 直線 ℓ1,ℓ2\ell_1,\ell_2 が点 PP で交わり、ℓi\ell_i 上の相異なる 2 点 Xi,YiX_i,Y_i(i=1,2i=1,2、どれも PP と異なる)が PX1→⋅PY1→=PX2→⋅PY2→\overrightarrow{PX_1}\cdot\overrightarrow{PY_1}=\overrightarrow{PX_2}\cdot\overrightarrow{PY_2} を満たすならば、X1,Y1,X2,Y2X_1,Y_1,X_2,Y_2 は同一円周上にある。
証明(定理 5.2)

1: 直線を P+tdP+t\boldsymbol d(∣d∣=1|\boldsymbol d|=1)と書くと、円との共有点は ∣p+td−o∣2=r2|\boldsymbol p+t\boldsymbol d-\boldsymbol o|^2=r^2、すなわち

t2+2t d⋅(p−o)+pow⁡Γ(P)=0t^2+2t\,\boldsymbol d\cdot(\boldsymbol p-\boldsymbol o)+\operatorname{pow}_\Gamma(P)=0

の解 t1,t2t_1,t_2(X=P+t1dX=P+t_1\boldsymbol d、Y=P+t2dY=P+t_2\boldsymbol d。接するときは重解)である。2 次式 (t−t1)(t−t2)(t-t_1)(t-t_2) との係数比較で t1t2=pow⁡Γ(P)t_1t_2=\operatorname{pow}_\Gamma(P) なので、PX→⋅PY→=t1t2∣d∣2=pow⁡Γ(P)\overrightarrow{PX}\cdot\overrightarrow{PY}=t_1t_2|\boldsymbol d|^2=\operatorname{pow}_\Gamma(P)。接線の場合は X=Y=TX=Y=T で ∣PT∣2=pow⁡Γ(P)|PT|^2=\operatorname{pow}_\Gamma(P)。

2: X1,Y1X_1,Y_1 は ℓ1\ell_1 上の相異なる 2 点で、X2∈ℓ2∖{P}X_2\in\ell_2\setminus\{P\} は ℓ1\ell_1 上にない(ℓ1∩ℓ2={P}\ell_1\cap\ell_2=\{P\})ので、X1,Y1,X2X_1,Y_1,X_2 は一直線上にない。これらを通る円 Γ\Gamma をとる。ℓ2\ell_2 は Γ\Gamma と X2X_2 ともう 1 点 Y′Y'(接するなら Y′=X2Y'=X_2)で交わり、1 を ℓ1\ell_1 と ℓ2\ell_2 に使うと PX2→⋅PY′→=pow⁡Γ(P)=PX1→⋅PY1→=PX2→⋅PY2→\overrightarrow{PX_2}\cdot\overrightarrow{PY'}=\operatorname{pow}_\Gamma(P)=\overrightarrow{PX_1}\cdot\overrightarrow{PY_1}=\overrightarrow{PX_2}\cdot\overrightarrow{PY_2}。ℓ2\ell_2 の方向ベクトル d\boldsymbol d で PX2→=ξd\overrightarrow{PX_2}=\xi\boldsymbol d、PY′→=ηd\overrightarrow{PY'}=\eta\boldsymbol d、PY2→=ζd\overrightarrow{PY_2}=\zeta\boldsymbol d と書くと ξη=ξζ\xi\eta=\xi\zeta で、ξ≠0\xi\ne0 なので η=ζ\eta=\zeta、Y2=Y′∈ΓY_2=Y'\in\Gamma である。

定理 5.3(根軸と根心)✓

  1. 中心が異なる 2 円 Γ1,Γ2\Gamma_1,\Gamma_2 について、{P∣pow⁡Γ1(P)=pow⁡Γ2(P)}\{P\mid\operatorname{pow}_{\Gamma_1}(P)=\operatorname{pow}_{\Gamma_2}(P)\} は、中心を結ぶ直線に垂直な直線である(根軸)。2 円が 2 点 X,YX,Y で交わるとき、根軸は直線 XYXY である。
  2. 中心が一直線上にない 3 円について、3 本の根軸は 1 点で交わる(根心)。
証明(定理 5.3)

1: pow⁡Γ1(P)−pow⁡Γ2(P)=−2p⋅(o1−o2)+∣o1∣2−∣o2∣2−r12+r22\operatorname{pow}_{\Gamma_1}(P)-\operatorname{pow}_{\Gamma_2}(P)=-2\boldsymbol p\cdot(\boldsymbol o_1-\boldsymbol o_2)+|\boldsymbol o_1|^2-|\boldsymbol o_2|^2-r_1^2+r_2^2 は p\boldsymbol p の 1 次式で、係数ベクトル o1−o2≠0\boldsymbol o_1-\boldsymbol o_2\ne\boldsymbol 0 なので、零点集合は o1−o2\boldsymbol o_1-\boldsymbol o_2 に垂直な直線である(命題 5.5[平面ベクトルと座標] の 2)。2 円の共有点では両方の方べきが 00 なので根軸上にあり、2 点 X≠YX\ne Y を通る直線は 1 本だけなので根軸は直線 XYXY である。

2: 根軸 ℓ12,ℓ23\ell_{12},\ell_{23} の法線ベクトル o1−o2\boldsymbol o_1-\boldsymbol o_2、o2−o3\boldsymbol o_2-\boldsymbol o_3 は、中心が一直線上にないので 1 次独立で、2 直線はただ 1 点 ZZ で交わる(命題 3.1[平面ベクトルと座標])。ZZ では pow⁡1=pow⁡2=pow⁡3\operatorname{pow}_1=\operatorname{pow}_2=\operatorname{pow}_3 なので、ℓ13\ell_{13} にも属する。

共有点の個数は、2 円の交点の座標を中心を結ぶ軸に沿って計算して調べます。共通接線は、直線を (n,c)(\boldsymbol n,c) の組で表し、条件を満たす組の個数を数えて 2 で割ります。同じ直線が (n,c)(\boldsymbol n,c) と (−n,−c)(-\boldsymbol n,-c) の 2 通りの組で表されるので、数えた個数は本数の 2 倍になるからです。

命題 6.1(2 円の位置関係)✓

半径 r1,r2>0r_1,r_2>0、中心間の距離 d>0d>0 の 2 円 Γ1,Γ2\Gamma_1,\Gamma_2 について、共有点の個数と共通接線(2 円の両方に接する直線)の本数は次の表のとおりである。

条件共有点共通接線
d>r1+r2d>r_1+r_2(離れている)04
d=r1+r2d=r_1+r_2(外接)13
∣r1−r2∣<d<r1+r2\lvert r_1-r_2\rvert<d<r_1+r_2(交わる)22
d=∣r1−r2∣d=\lvert r_1-r_2\rvert(内接)11
d<∣r1−r2∣d<\lvert r_1-r_2\rvert(一方が他方の内部)00
証明(命題 6.1)

共有点: O1=(0,0)O_1=(0,0)、O2=(d,0)O_2=(d,0) と座標を取ると、共有点は x=d2+r12−r222dx=\dfrac{d^2+r_1^2-r_2^2}{2d}、y2=r12−x2y^2=r_1^2-x^2 で決まる。因数分解すると

r12−x2=(r1+r2−d)(r2+d−r1)(d+r1−r2)(d+r1+r2)4d2r_1^2-x^2=\frac{(r_1+r_2-d)(r_2+d-r_1)(d+r_1-r_2)(d+r_1+r_2)}{4d^2}

である。右辺の最後の因子は正で、最初の 3 つの因子のうち、どの 2 つの和も正(2r22r_2、2r12r_1、2d2d)なので、負の因子は高々 1 つである。したがって y2>0y^2>0(共有点 2 個)は 3 つの因子がすべて正、すなわち ∣r1−r2∣<d<r1+r2|r_1-r_2|<d<r_1+r_2 のとき、y2=0y^2=0(1 個)はどれかが 00 のとき(d=r1+r2d=r_1+r_2 または d=∣r1−r2∣d=|r_1-r_2|)、それ以外は y2<0y^2<0(0 個)である。

共通接線: 直線を {n⋅x=c}\{\boldsymbol n\cdot\boldsymbol x=c\}(∣n∣=1|\boldsymbol n|=1。(n,c)(\boldsymbol n,c) と (−n,−c)(-\boldsymbol n,-c) は同じ直線)と書く。補題 4.1 から、これが Γi\Gamma_i の接線であることは n⋅oi−c=εiri\boldsymbol n\cdot\boldsymbol o_i-c=\varepsilon_ir_i(εi=±1\varepsilon_i=\pm1)と同値である。2 式を引くと n⋅(o1−o2)=ε1r1−ε2r2=:κ\boldsymbol n\cdot(\boldsymbol o_1-\boldsymbol o_2)=\varepsilon_1r_1-\varepsilon_2r_2=:\kappa で、o1−o2=(−d,0)\boldsymbol o_1-\boldsymbol o_2=(-d,0) なので n1=−κ/dn_1=-\kappa/d。これを満たす単位ベクトル n\boldsymbol n は、∣κ∣<d|\kappa|<d なら 2 つ、∣κ∣=d|\kappa|=d なら 1 つ、∣κ∣>d|\kappa|>d なら 0 個で、n\boldsymbol n が決まれば cc も決まる。したがって (ε1,ε2)(\varepsilon_1,\varepsilon_2) の 4 通りについて (n,c)(\boldsymbol n,c) の個数 NN を数えて 2 で割れば、直線の本数が出る((n,c)↦(−n,−c)(\boldsymbol n,c)\mapsto(-\boldsymbol n,-c) が (ε1,ε2)↦(−ε1,−ε2)(\varepsilon_1,\varepsilon_2)\mapsto(-\varepsilon_1,-\varepsilon_2) に対応して 2 対 1 だから)。ε1=ε2\varepsilon_1=\varepsilon_2 の 2 通りでは ∣κ∣=∣r1−r2∣|\kappa|=|r_1-r_2|、ε1≠ε2\varepsilon_1\ne\varepsilon_2 の 2 通りでは ∣κ∣=r1+r2|\kappa|=r_1+r_2 である。

  • d>r1+r2d>r_1+r_2: どの場合も ∣κ∣<d|\kappa|<d で N=8N=8、4 本。
  • d=r1+r2d=r_1+r_2: ε1=ε2\varepsilon_1=\varepsilon_2 では ∣r1−r2∣<d|r_1-r_2|<d で 2×2=42\times2=4、ε1≠ε2\varepsilon_1\ne\varepsilon_2 では ∣κ∣=d|\kappa|=d で 1×2=21\times2=2。N=6N=6、3 本。
  • ∣r1−r2∣<d<r1+r2|r_1-r_2|<d<r_1+r_2: ε1=ε2\varepsilon_1=\varepsilon_2 で 44、ε1≠ε2\varepsilon_1\ne\varepsilon_2 では 00。N=4N=4、2 本。
  • d=∣r1−r2∣d=|r_1-r_2|: ε1=ε2\varepsilon_1=\varepsilon_2 で ∣κ∣=d|\kappa|=d、1×2=21\times2=2。N=2N=2、1 本。
  • d<∣r1−r2∣d<|r_1-r_2|: N=0N=0。

2 円の中心が一致する場合(同心円)は、半径が異なれば共有点も共通接線もありません。

例 6.2(共通接線の本数を数える)

r1=3r_1=3、r2=1r_2=1 の 2 円で、中心間の距離が d=5d=5 なら d>r1+r2=4d>r_1+r_2=4 なので共通接線は 4 本、d=4d=4 なら外接で 3 本(接点を通る共通の接線を含む)、d=3d=3 なら ∣r1−r2∣=2<3<4|r_1-r_2|=2<3<4 で 2 本、d=2d=2 なら内接で 1 本、d=1d=1 なら小さい円が大きい円の内部にあって 0 本である。

  • 複素解析の円円対応(等角写像)。円周角の定理の逆の言い換え「4 点が同一円周上にある   ⟺  \iff 複比が実数」は、1 次分数変換が円を円に移すことの土台です。後の章の反転:円と直線の名定理で、円と直線を同列に扱う見方を学びます。
  • 代数幾何。定理 5.2 の「2 次方程式の解の積」は、円と直線の交点の個数を重複度も含めて数える Bézout の定理の一番小さい場合です。方べきは円の方程式 ∣x−o∣2−r2=0|x-o|^2-r^2=0 の値そのもので、円の束は方程式の 1 次結合として表せます。
  • 射影幾何。根軸・根心は、円の束(2 つの円の方程式の線形結合の全体)を考えると自然に現れる直線で、後の章の極と極線へつながります。

演習 8.1易

半径 55 の円の弦 ABAB の長さが 66 であるとき、中心角 ω\omega について sin⁡ω2\sin\dfrac\omega2 を求めよ。また、円周上の点 PP から弦 ABAB を見込む角 ∠APB\angle APB のとりうる値の sin⁡\sin を求めよ。

解答

命題 2.3 から 6=2⋅5sin⁡ω26=2\cdot5\sin\frac\omega2、sin⁡ω2=35\sin\frac\omega2=\frac35。定理 3.1 により ∠APB\angle APB は ω2\frac\omega2(中心と同じ側)または π−ω2\pi-\frac\omega2(反対側)で、どちらの場合も sin⁡∠APB=sin⁡ω2=35\sin\angle APB=\sin\frac\omega2=\frac35 である。

演習 8.2標準

半径 55 の円の中心 OO から距離 1313 の点 PP がある。PP から引いた接線の接点を TT とするとき ∣PT∣|PT| を求めよ。また、PP を通る直線が円と X,YX,Y で交わり、∣PX∣=8|PX|=8 であるとき、∣PY∣|PY| を求めよ。OO を通る直線の場合はどうなるか。

解答

pow⁡(P)=132−52=144\operatorname{pow}(P)=13^2-5^2=144 なので、定理 5.2 の 1 から ∣PT∣=12|PT|=12。割線では ∣PX∣⋅∣PY∣=144|PX|\cdot|PY|=144(PP が円の外なので PX→\overrightarrow{PX} と PY→\overrightarrow{PY} は同じ向き)から ∣PY∣=18|PY|=18。OO を通る直線なら交点までの距離は 13−5=813-5=8 と 13+5=1813+5=18 で、確かに 8⋅18=1448\cdot18=144 である。

演習 8.3標準

2 円 x2+y2=4x^2+y^2=4 と (x−3)2+y2=1(x-3)^2+y^2=1 の根軸を求め、2 円の位置関係を答えよ。

解答

方べきの差は x2+y2−4−((x−3)2+y2−1)=6x−12x^2+y^2-4-\bigl((x-3)^2+y^2-1\bigr)=6x-12 なので、根軸は x=2x=2(定理 5.3 の 1)。半径は 2,12,1、中心間の距離は 3=2+13=2+1 なので外接し(命題 6.1)、接点は (2,0)(2,0)、これは根軸上にある。

  • H. S. M. Coxeter, S. L. Greitzer, Geometry Revisited, Mathematical Association of America, 1967 — 第 2 章(円のいくつかの性質:円周角・方べき・根軸)。
  • Roger A. Johnson, Advanced Euclidean Geometry, Dover, 2007 — 円と根軸・根心の古典的な扱い。
  • Robin Hartshorne, Geometry: Euclid and Beyond, Springer, 2000 — 円周角の定理を公理から証明する立場(この章は座標から証明した)。
  • Marcel Berger, Geometry II, Springer, 1987 — 円・球の幾何と円束。

このテーマの 100 本ノック(100 問)

執筆: Claude Code(Sonnet 5.5)、Claude Code(Opus 5.5)・監査 2 回(Claude Code)・最終 2026-10-12

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